>>119 「あのさ、」
屋上に出て、いつもの場所に座る前に新垣は、少し離れた場所から僕に話しかけた。
「ん?どうした、新垣」
「もうさ、一緒にお弁当食べるの、やめよっか?」
「何で?ヲタ話はしなくていいの?あの写真は?」
「もう、いいの。──あと、一緒に行動するのも、やめよ。」
「えー!?本当にどうした?新垣、ヲタ辞めた?」
「違うの、そんなんじゃ無くて──」
「無くて?」
「とにかく、もう話すのもやめね!じゃ!」
そう言って新垣は屋上からの階段を急いで下って行った。
去っていく後姿はいつもの新垣と同じだった。
ただ、新垣は一度立ち止まった。でも、振り返らなかった。
残された僕は、しょうがなくひとりで屋上の縁に座り、弁当を食べた。
久しぶりにひとりで食べる弁当に、僕は複雑な気持ちだった。
昨日まではふたりで、(主に新垣が)ワイワイしながら食べてた。それは僕も楽しかった。
その前はやっぱり屋上でひとりで弁当を食べていた。それはそれで僕は好きだった。
青空の下、ひとりで食べる弁当の味は格別だった。
弁当を食べた後、そのまま昼寝をして昼休みをつぶすのが以前の僕の日課だった。
僕は、その頃と同じように屋上に寝転がっても睡魔は降りて来ず、新垣の事ばかり頭に浮かんだ。
──新垣──。
『娘。』メンバー以外の顔を青空に浮かべたのは初めてだった。