もしも新垣がヲタバレを恐れる女子高生だったらU

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119 ◆acuAAs.52c
>>10

「おはよう、新垣」
「──お、おはよ」

次の日の朝、新垣は珍しく僕より先に、僕の隣の自分の席に座っていた。
僕は昨日の約束通り、新垣の欲しがっている写真を持って来ていので、
隣の席でうつむく新垣に話しかけた。
「新垣、約束のアレ、今渡そうか?」
「──う、うん。今はあれだがら、昼休みにね」
新垣は少し動揺しながらそっけない返事をした後、僕の顔も見ずに教室を出て行った。
いつもなら『娘。』関係の話には飛び付いてくる新垣だったのに、今日の新垣は違った。
いつもと何か違うな──1時限目の準備をしながら僕は思った。

4時限目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
いつもならすぐに新垣から、昼ごはん一緒に食べよう、と誘いがあるのだが、今日は無かった。
僕は不思議に思って新垣に話しかけた。
「新垣?今日のお昼(御飯)は?」
「──その事で、ちょっと話しがあるの」
新垣は元気無くそう言って、僕といつもの屋上に向かった。

昨日までは屋上までの間、服の裾を引っ張ったり、手をつないだりして、
新垣が僕を引っ張って行くんだけども、今日はそんな事は無かった。
むしろ、僕が前を歩いて、新垣が三歩程後をとぼとぼと歩いて来ていた。
時折、後を振り返り、新垣は何かを気にしていた。
──やっぱり何かおかしいな。
僕はうつむいたまま付いて来る新垣を見て、そう思った。
120 ◆acuAAs.52c :2005/06/19(日) 21:12:04 0
>>119

「あのさ、」

屋上に出て、いつもの場所に座る前に新垣は、少し離れた場所から僕に話しかけた。
「ん?どうした、新垣」
「もうさ、一緒にお弁当食べるの、やめよっか?」
「何で?ヲタ話はしなくていいの?あの写真は?」
「もう、いいの。──あと、一緒に行動するのも、やめよ。」
「えー!?本当にどうした?新垣、ヲタ辞めた?」
「違うの、そんなんじゃ無くて──」
「無くて?」

「とにかく、もう話すのもやめね!じゃ!」
そう言って新垣は屋上からの階段を急いで下って行った。
去っていく後姿はいつもの新垣と同じだった。
ただ、新垣は一度立ち止まった。でも、振り返らなかった。
残された僕は、しょうがなくひとりで屋上の縁に座り、弁当を食べた。

久しぶりにひとりで食べる弁当に、僕は複雑な気持ちだった。
昨日まではふたりで、(主に新垣が)ワイワイしながら食べてた。それは僕も楽しかった。
その前はやっぱり屋上でひとりで弁当を食べていた。それはそれで僕は好きだった。
青空の下、ひとりで食べる弁当の味は格別だった。
弁当を食べた後、そのまま昼寝をして昼休みをつぶすのが以前の僕の日課だった。
僕は、その頃と同じように屋上に寝転がっても睡魔は降りて来ず、新垣の事ばかり頭に浮かんだ。
──新垣──。
『娘。』メンバー以外の顔を青空に浮かべたのは初めてだった。