>>10 「おはよう、新垣」
「──お、おはよ」
次の日の朝、新垣は珍しく僕より先に、僕の隣の自分の席に座っていた。
僕は昨日の約束通り、新垣の欲しがっている写真を持って来ていので、
隣の席でうつむく新垣に話しかけた。
「新垣、約束のアレ、今渡そうか?」
「──う、うん。今はあれだがら、昼休みにね」
新垣は少し動揺しながらそっけない返事をした後、僕の顔も見ずに教室を出て行った。
いつもなら『娘。』関係の話には飛び付いてくる新垣だったのに、今日の新垣は違った。
いつもと何か違うな──1時限目の準備をしながら僕は思った。
4時限目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
いつもならすぐに新垣から、昼ごはん一緒に食べよう、と誘いがあるのだが、今日は無かった。
僕は不思議に思って新垣に話しかけた。
「新垣?今日のお昼(御飯)は?」
「──その事で、ちょっと話しがあるの」
新垣は元気無くそう言って、僕といつもの屋上に向かった。
昨日までは屋上までの間、服の裾を引っ張ったり、手をつないだりして、
新垣が僕を引っ張って行くんだけども、今日はそんな事は無かった。
むしろ、僕が前を歩いて、新垣が三歩程後をとぼとぼと歩いて来ていた。
時折、後を振り返り、新垣は何かを気にしていた。
──やっぱり何かおかしいな。
僕はうつむいたまま付いて来る新垣を見て、そう思った。