もうすぐプール開きで嫌だ・・・私胸小さいし><

このエントリーをはてなブックマークに追加
274 ◆acuAAs.52c
>>249

新垣のそれからの生活は、あの男子と出会う前のサイクルに戻っていた。

朝遅刻する。
休み時間には友達とおしゃべりする。
『娘。』の話題になるとヲタバレしない様に十分に注意を払う。
昼休みは弁当を教室で友達と食べる。
午後の授業は、ほとんど寝る。
目が覚めると帰りの会になってる。
寝言で『娘。』の事を口走ってないかビクビクして辺りを見回す。
自作データブックを見ながら、ひとりで帰る。

「ふぅ」
帰り道で新垣は、ため息を吐いた。新垣は自分でも何か足りないと感じていた。
以前にも亀井のバイトの関係で、新垣はひとりで帰る事が多かった。
でも、新垣は寂しくなかった。新垣には『娘。』がいたから。
『娘。』ががんばっている写真を見つめると、新垣は元気が出てた。

新垣は立ち止まり、瞳を閉じた。
以前は『娘。』メンバーの一生懸命踊りながら、一生懸命歌う姿がすぐに浮かんだ。
でも今は、あの男子の顔が新垣の想像の一番手前に浮かんだ。
しかし、すぐに亀井の顔が浮かんで、男子の顔に重なった。
新垣は慌てて目を開け、残像を手で振り払った後、また歩み出した。

「あいつのバカ!亀のバカ!」
新垣はホッペを膨らませ、ひとりごとを言いながら帰った。
275 ◆acuAAs.52c :2005/06/21(火) 21:32:28 0
>>274

それからというもの、新垣の中であの男子の存在は、日に日に増すばかりだった。
授業中も休み時間も、朝も昼も夜も、テレビを見たりラジオを聞いている時も、
コンサートの時も、イベントでキッズと握手している時も、いつも脳裏にはあの男子の存在があった。
「もう我慢できないよ」
そう思わず口にする程に、新垣はその男子の事を想っていた。

ある放課後、亀井が新垣の所まで来て言った。
「急にバイト入っちゃったから、もう帰るね」
「そう」
「わかってるよね?」
「うん」
新垣は元気なく答えた。
──あいつと一緒に帰るな!って事でしょ──新垣は分かっていた。

亀井が教室を出たのを確認して、ため息を吐こうとした新垣に問題の男子が話しかけた。
「ちょっと、新垣。亀は何かあんのか?」
久しぶりの二人だけの会話で、新垣は内心喜び、口元が緩んだ。
でもすぐに亀井との約束を思い出して、笑顔は消えた。

新垣がいつもの様に、そっけ無い返事を続けていた所、その男子が怒って、
久しぶりに一緒に帰ろう、と新垣を教室から連れ出した。
新垣は抵抗した。でも、それはフリだった。
本当は新垣は嬉しかった。
276 ◆acuAAs.52c :2005/06/21(火) 21:34:31 0
>>275

またあの時と同じ、駅前の橋の近くのベンチ。

そこにあの男子は、あの日のように新垣を座らせた。
久しぶりの二人きり、しかし新垣には不安があった。
また亀井に見られているんじゃないかと、亀井にバレて私もバレちゃうんじゃないかと。
新垣はその男子の問いかけにも、変わらずそっけなく答えていた。

そっけないなんて嘘だった。
新垣はその男子の声を聞く度に、視線が合う度に、肩が、体が震えた。
でも、新垣はそれをその男子に悟られぬよう、平静を装った。
自分がヲタバレする事と、この男子と一緒にいれない事、その二つを天秤にかけ、
新垣の心は揺れていた。しかし、新垣の胸は揺れなかった。

いきなり、その男子が爆発した。
「何も無いわけ無いだろ!
 前はさ、一緒に『娘。』談義もできたしさ!
 亀もさ、新垣もさ、友達だったろ?それが話さなくなっちゃってさ、どうしたんだよ
 あの元気な新垣はどこ行った?
 新垣、聞いてるか?新垣」
その言葉を聞いた新垣は、葛藤のつるがほどけ、涙した。
そんな新垣を見て、泣かした男子が何度も、ゴメン、と謝った。
新垣は、亀井が、今日のバイトは時間がかかる、と言ったのを思い出し、安心してまた涙した。

落ち着いた新垣は、初恋の男子の方に向き直して言った。
「ありがとう。あんたが、私の事、心配してくれてるってのはわかった」
それは新垣の心からの気持ちだった。
その後も、やさしく問いかけてくる目の前の男子に新垣は、
新垣と亀井がした、あの朝の話のすべてを話した。

新垣の頬からは涙が、心からはモヤモヤがすでに消えていた。