【小説】リア消だったら誰に告ってた 第2章【ハーン】
作者様たちの登場までの間、つまらないものですが、ちょっと場つなぎいたします。
―― 河田純子 『終わらない時間』から ――
ぼくたちが、二人で会うために初めて待ち合わせしたのは、去年のいまごろだったね。
それほど多く車も通らない、あまり人が上ることもない歩道橋の上。
緊張しながらきみを呼び出した公衆電話。
一秒が長かった。
教室ではいつでも近くにいたぼくたち。
これが恋だなんて、なぜかまるで思わなかったけど。
あいつと知り合ってから、いつのまにか、なんだかきれいになったね。
そんなきみをふと見つめてしまうぼく。
うれしい気持ちと、さびしさの間で、揺れる心‥‥。
たそがれてゆく街。交差点を二人で渡る。
指を一本だけからめて、恋人のように。
きみを笑わせようとして、つぎつぎ冗談ばかり言って。
澄んだ笑い声がぼくには心地よかった。
いつだっただろう。
「好きな人ができたら、わたしにも必ず報告してね」なんて言ったね。
いま思う。そのとき、ぼくには、大好きな人がもういたんだ。
そして、いまもぼくの横できみは風に髪をなびかせて。
この、優しい二人の時間がこのまま、そっと停まればいいのに。
ときどき、哀しい目をしたまま微笑む、きみの心はわからないまま、
いくつかの甘い想い出も、少しずつセピアに色あせて遠ざかる。
その半分さえ、言葉にならない、こんなに切ない気持ち。
口に出せなくて。
こうして会うことが、できなくなる日がもうすぐそこに近づいてる。
そこから気をそらせたくて。
残されたわずかな時間を思い切り、悔やまないように過ごしたいから。
この、優しい二人の時間がこのまま、ずっと続くといいのに。
かなわないそんな思いに胸を痛めながら、
それでもぼくは、祈る。
きみの願いがきっとかなうようにと。
きみの新たな日々が、いつも希望にあふれたものであるようにと。
そして、
ぼくらは卒業する。
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イメージは舞波ですが、
ヒロイン役は読者でご自由に設定してお楽しみください。