1 :
名無し募集中。。。:
何が一番効く?
2 :
名無し募集中。。。:04/08/23 20:45
俺はあれ使ってるよ
目の筋肉のストレスを和らげてくれるやつ
愛ストレッチとかいうやつ
3 :
名無し募集中。。。:04/08/23 20:45
涙
4 :
名無し募集中。。。:04/08/23 20:51
ロートリセ
白目がきれいになる
5 :
名無し募集中。。。:04/08/23 21:04
バイシン
6 :
名無し募集中。。。:04/08/23 21:17
心のダム
7 :
名無し募集中。。。:04/08/23 21:57
俺はサンテFXネオ
これは初めて点眼した時は最高。
今じゃなんとも感じないが
三三三三三三三三三三三三三三三三三
| |:| |:| |:|∋o .| |
| |:| |:| |:|ノハヽ | |
| |:| 三三 |:|o・∀・) .| |
| |:|_|:|______|:|⊂ノ | |
| |:|○|:|*@*@*@*○|:|二二二二二| |
| |:| ̄|:| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|:|: ノ_,ハ,_ヾヽ | |
| |:| 三三 |:|从VvV从<・・・・・
| |:| |:| |:|::::(l⌒i⌒l)::::| |
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このスレ死んだままなら小説
はじめます
DRIFTING GIRLS。
━1━
目覚まし時計が鳴った。カーテンの隙間から光が漏れている。
寝室。石川は横になったまま手を伸ばし、目覚まし時計を止めた。
そして目を閉じたまましばらく動かない。今日が始まった事を確認しているのだ。
ダンスレッスン。ぼんやりとした頭で繰り返す今日の予定。
それまで見ていた夢の風景が、一瞬にしてスタジオまでの道のりとスタジオ内の風景に変換された。
夢の余韻は取り戻せない。少し落胆しながら起きる石川。
しかし夢を思い返そうとはしなかった。きびきびとした足取りで洗面所へ向かう。
歯を磨きながら携帯電話をチェックする。辻からのメールが来ていた。
“梨華ちゃん今日の仕事なに?”変顔写真は送信されていなかった。
卒業が間近になった頃から辻は、石川に対して妙に素直な態度を見せていた。
二人にとって、その関係が特別なものであり、そしてそれは、
同じ仕事場で働いているという理由から来るものだけではない事を辻は実感したかったのだ。
大人っぽくなってきたよね、と石川が言う度に辻はなおさらそれを意識した。
変顔送信を止めたのも辻が考えた大人への意識だった。
勿論石川自身もそれに気付いた。
「でも、やっぱり無いなら無いで寂しいかな。」
そう思い、石川は今日の予定を告げる内容のメールと自分の変顔を送信した。
今日の予定に、ダンスレッスンだけではなく、辻がこのリクエストにどう応えてくれるか、
それを待つ事も加わった。
身支度を整えると石川はスタジオへ向かうタクシーに乗った。
午前九時七分。
━2━
レッスンスタジオに使われている大和ビルは、都内だが人の通りが比較的に少ない場所にあった。
モ娘。を始めとして、松浦亜弥、後藤真希など他のハロプロのタレント達も常に利用していたが、
ファン、いわゆる追っかけの連中にはまだ見つかっていなかった。
信頼のおけるスタッフによって管理された三階立てのスタジオは、警備も行き届いていて、
メンバーもリラックスして仕事に望めた。
リラックス出来る仕事場、という価値はとても有意義な事だった。
リラックスした状況からいかにして、コンサートやテレビ収録の本番へ自分を切り替えられるか、
この集中力こそが重要だからだ。
一階にある会議室。男と女が言い争いをしていた。
「今日ダンスを一通り合わせるのは・・・ギリギリですね。」
「ギリギリなんですよ。すでに。出来れば今日完成させてほしい。」
「無理です。いいものを目指さないというなら可能ですけど。」
「いいものじゃなくてもいいですよ。とりあえず今日完成したものを撮影して・・・」
話を最後まで聞かずに女の方が立ち上がり、そのまま部屋を出て行った。
「夏先生、ちょっと・・」
男は腕組みをして椅子に深くもたれかかった。
そして、先刻からのやり取りを立って見ていた夏のアシスタントに言った。
「呼んで来てよ。先生を。話途中なんだから。」
アシスタントの女は黙って部屋を出て行った。
男は煙草をくわえた。部屋に残ったもう一人の男が話しかけた。
「藤野さん、言い争っても解決にはなりませんよ。
夏先生はいつもギリギリにいいものを仕上げてきたじゃないですか。」
くわえかけたタバコを口から離して男が言った。
「いいものとかどうでもいいんだよ。俺は、上から今日仕上げて来いって言われて来ただけなんだから。
それを伝えたら、あの女が表現者ぶって機嫌損ねたんだろ。
森川、お前も俺みたいに仕事に距離感持ってやった方がいいぞ。」
部屋のドアが開いて夏が入ってきた。
「失礼しました。今日中に仕上げます。可能です。」
それだけ言うと夏は部屋を再び出て行った。
藤野は森川に向かって誇らしげにうなずいて見せた。
夏は会議室のドアを閉めると、思い詰めた表情でロビーの方へ向かった。
ひんやりとした色のプラスチック製の長椅子に腰掛けると軽くうつむき、そしてまた前を向いた。
「浅村さん。モーニングはいつ来るんだっけ?」
後ろに立っていたアシスタントに聞いた。
「あと三十分くらいで集まりはじめると思います。」
夏はそれを聞くと、またうつむいて何か考え始めた。
午前九時二十七分。
━3━
大和ビル地下駐車場の警備室。
小奇麗に整理された室内には香水の匂いが舞っている。
平井は朝食のパンを食べ終わると手を丹念に拭いた。
神経質な性格をよく表わしていた。
スタジオの入り口は正面玄関だけでなく地下にもあり、
利用者は特別な理由が無い限りは、この地下駐車場にある入り口から入ってくる事になっていて、
正面玄関は普段は閉じられていた。
関係者以外の車は駐車場に乗り入れる事を禁止されていて、
タクシーで来た場合は寸前で降りてから徒歩で来るように決められていた。
これらはファンを始めとして外部に情報が漏れない為の手段だった。
ざわざわと駐車場内が騒がしくなってきた。
「モ娘。ご一行様が到着されたんだろう。ふん、ガキ共が。」
平井がテーブルの上にあった成人雑誌の類を丁寧に仕舞いこみながら呟いた。
五期と、藤本を除く六期メンバーが駐車場内にぞろぞろと入ってきた。
新垣が早口に言う。
「まこっちゃん、タクシーの中で寝過ぎだから。」
小川が寝ぼけ眼で体をかきながら言う。
「ガキさんが起こしてくれなかったらアタシあのまま寝てたね。」
横から高橋がボソリと言った。
「っていうか運転手さんが起こしてくれるっしょ。」
沈黙の余白を道重が埋めた。
「あーテレビの電源切り忘れたかも。」
高橋が言った。
「何かテレビやっとったっの?」
亀井はただニコニコと笑っていた。
歩きながら一人携帯電話をいじっていた田中はふと足を止めて振り返った。
紺野が地下の天井を見上げていた。
「ポンちゃん、どうしたと?」
その姿勢を変えずに紺野が言った。
「ん・・・今、揺れなかった?」
全員が足を止め紺野の方を向いた。
「あ、何でもないみたい。気のせいだね。行こうか。」
再び全員が歩き出した。
入り口の横にある警備室のドアから平井がカギを手に持ち出て来た。
「あ、おはようございまーす。お疲れ様でーす。」
七人が声を揃えて言った。
平井が笑顔で答える。
「おはよー。今日は早くからなんだね。頑張ってね。」
「ありがとうございまーす。」
平井が入り口をカギで開ける。七人はもう一度礼を言うとスタジオ内に入っていった。
その後姿を見ながら、平井はそれまでの笑顔を崩さないまま小声で呟いた。
「オツカレサマデースだと。疲れてなんかいないよ。バカにしやがって。」
七人の最後尾にいた紺野が足を止めて振り向いた。
平井は今の言葉が聞こえたのかと思い一瞬慌てたが、紺野が自分の方を見ていない事にすぐ気付いた。
また紺野は上を見上げていた。
メンバーも今度は気に留めず階段を昇り始めていた。
平井は警備室に戻り、カギの匂いを消そうと手を拭いた。
午前九時四十三分。
━4━
スタジオに向かう空調の効いたタクシーの中で飯田は、ぼんやりと窓の外を見ていた。
今さっきまで、卒業後について事務所で打ち合わせをしていて、
これからどんな仕事がしたいんだ、と聞かれて思わず黙り込んでしまった自分を思い返していた。
「卒業後?歌手ですよ。」とバラエティ番組で言った様には言葉は出なかった。
急に一人ぼっちになった気分だった。タクシーが信号待ちで止まった。
窓の外ではコンクリートの上で陽炎が震えている。
矢口が手招きをしている。
その幻に自分はどう答えたらいいのだろうか。自分は今まで何処にいたのだろうか。
タクシーが走り出そうとしている。自分はこれから何処に行くのだろうか。
幻ではなかった。慌てて運転手に止めてもらい、車を降り近づく。
日差しを手で遮りながら矢口が言う。
「やっぱりカオリ。」
「どうしたの?」
「コンビニ寄ろうと思って。」
コンビニはスタジオから歩いて数分の所にあったが、
メンバーが直接このコンビニを利用する事は禁止されていた。これもスタジオ利用が外部に知られない為だった。
矢口はスタジオから距離のあるコンビニを見つけ、タクシーを降りたところだった。
「行くなら早く行こう。結構時間ギリギリだから。」
コンビニに入ると冷たい空気が体を貫いた。飯田はその温度差に軽くめまいを起こした。
矢口は氷のみを手に取ってレジへ向かう。
それだけの為に・・・と飯田は軽く苛立った。
矢口が振り返って聞いた。
「カオリは何も買わないの?」
飯田が矢口の顔を見ずに答える。
「ああ、大丈夫、大丈夫。」
コンビニを出て、飯田は強い日差しに体を押さえつけられそうになって思わず黙り込んだ。
矢口は早速大騒ぎしている。
「熱いー。どうかしてるよ。ホント。」
いつも笑い転げている矢口。
矢口はいつかは来る卒業の事を考えているのだろうか。
そいて、今いる他のメンバーにしても何を考えてるのだろうか。
それを分からない自分は今まで何をやってきたんだろう。
・・・・・リ、・・・・オリ、・・・カオリ、カオリ?
矢口が呼んでいた。
「・・・ん?ああ、何?もう行く?」
「今日交信一回目ね。大丈夫?暑いからね・・・。」
時計を見て矢口が言った。
「ギリギリだね。タクシーまた拾うよりこのまま行った方が早いね。」
二人は足早にスタジオへ向かった。
午前九時五十分。
━5━
中澤は台本を見返しながら深呼吸をした。あと数分で生放送のラジオの本番が始まる。
慣れたレギュラー番組ですら毎回緊張をする中澤だったので、今日の特別番組に対する緊張は尚更だった。
「緊張するんですね。中澤さんでも・・・いや変な意味じゃなくて。」
コーヒーを持ってきたもう一人のパーソナリティが話しかける。
中澤はコーヒーを受け取ると、笑顔を見せて言った。
「緊張・・しますよ。物凄く。何故かそう見られないですけど。」
「いつも堂々とされていられるから。何でも来い、みたいなね。」
中澤は無言で首を横に振って否定した。
「まもなく本番でーす。」
ブースの向こうから声がして、中澤の身が引き締まった。
ヘッドフォンを耳に当てスタッフの指示を待つ。
「本番行きまーす。・・・・3,2,1,・・・」
スタッフのキュー出しに次いで音楽が流れる。
ブース内外共に緊張感が走るが、中澤は自分の事で手一杯だった。
スタッフから合図を受けて、パーソナリティが喋り出すと、
中澤は改めて深呼吸をした。
「みなさん、こんにちわ。今日のこの時間は・・・・・」
喋りながらウインクをするパーソナリティ。中澤は引きつった笑顔を返した。
「・・・・え〜、それでは、今日のこの特番にふさわしい素敵なパーソナリティを、
もう一人紹介しましょう。中澤裕子さんでーす。」
飛び跳ねる様な柔らかな声を中澤の声が引き継いだ。重く。
「こんにちわ。中澤裕子です。」
重くなった空気を、関西人の本能で瞬時に読み取った。そして一言。
「・・・あれ?」
その絶妙の間に、緊張感に満ちていた空気が和んだ。
「あれ?じゃないですよー。中澤さん。今日はよろしくお願いしますね。
えっと・・・裕子さんでいいですよね?」
「あ、はい。よろしくお願いします。」
重さから一転して広がった和んだ空気を感じ、安堵の気持ちを覚えながら中澤がそう答えた。
それからは、当人が自分らしいと思える、そして人が求める、
言葉に淀みの無いいつもの中澤裕子だった。
午前十時二分。
自分で言うのも何だがこりゃすぐ落ちるな
落ちなかったしとりあえず続き載せてみる
━6━
スタジオでダンスレッスン用に使われるのは、主に二階にあるリハーサル室だったが、
三階にも同様にリハーサル室があり、こちらは二階のそれよりも大きな部屋で、
大人数の場合やPA機材などを利用する場合に使われた。
メンバーの誰よりも早くスタジオに来ていた吉澤は、
この大きなリハーサル室の真ん中で寝転びながら一人で絵を描いていた。
つい数分前、五、六期のメンバーが挨拶に顔を見せた所だった。
顔を見るなり体をすり寄せてきた小川を軽くあしらい、拗ねた表情をわざとさせた。
頭をぽんぽんと叩き慰めると、いかにも他の用事に手一杯という素振りを見せ、
無言でメンバーを部屋から追い払った。
吉澤が仕事以外の時間にメンバーと話す事は殆ど無く、大体が絵を描いているか、
本を読んでいるか、音楽を聴いてるかだった。
それは仕事への、自分が感じる新鮮さを保つための方法だと吉澤自身は考えていた。
白い紙に色鉛筆をでたらめに走らせ続けていると、
自分の気付かなかった何かが解放されている様な気持ちになった。
描いた何枚かの絵を吉澤が満足気に眺めていると、ドアを開け藤本が入ってきた。
「あー、よっすぃー来てたんだ。」
「うーん。」
「絵描いたんだ、見せてよ。」
藤本が近づいてくると吉澤は絵を裏返しにして言った。
「あーあーまだまだ。出来てないから。それからでいいっしょ。」
「ああ、まあいいけど。皆揃ったから集まれって。」
「分かった。先行ってていいよ。」
絵を見られるという事は、秘密を知られてしまうような恥ずかしくにやけた感覚があった。
藤本が部屋から出て行くのを見て、吉澤はカバンに一枚ずつ絵をしまいこんだ。
吉澤は階段を降り二階へ向かった。
午前十時七分。
━7━
「先生、モーニング全員、リハーサル室に集まりました。」
一階ロビー。一人で考え込んでいた夏に、二階から降りてきた浅村が声をかけた。
夏は無言でうなずいた。
地下から入ってきたメンバーの誰もが、
ロビーで観葉植物の陰に隠れて物思いにふけっていた夏には気付かず通り過ぎてしまう所だった。
「おはよう。」と声をかけられてようやく気付いたメンバーは、挨拶を返すだけで、
誰もそれ以上の特別な話をしようとはしなかった。
夏はその表情だけで、他の何も寄せ付けない状況である事を感じ取らせていたのだった。
特別な不安を感じたメンバーは、今日のレッスンが始まれば、
自分の不安も解けるだろうし、夏の表情も柔らかくなるだろうと考えた。
そしてレッスンの成果次第か、と考え直して、いつもより早めにジャージに着替え、
レッスンを待つ体勢を整えた。
飯田と矢口は、特に夏との関係が長い事もあり、表情の変化を敏感に感じ取った。
そして後輩メンバーに対し、早めにリハーサル室に集まろうとうながした。
実際には自分達が一番遅れていたのだが、誰も、藤本でさえもそれを指摘しなかった。
それ程までに飯田と矢口が夏の変化を、メンバーに更に生々しく伝えたのだった。
夏は誰に言うわけでもなく「よし。」と声を出すと立ち上がって、
二階への階段を上り始めた。
夏への通達を済ました藤野が降りてくる所だった。
藤野が言った。
「あ、お疲れ様でした・・・というより先生はこれからが仕事ですね。
じゃあ、さっき言った様に今日までに・・よろしく。あとは森川が今日のマネージャー担当なんで・・・。」
すれ違いざま、思い立ったように夏が言った。
「やっぱり藤野さんも少し話しを聞いていってもらえますか。すぐ済む事なんで。
この後の仕事は・・・」
「ああ、いや少しなら。何か・・・」
「ええ、すぐ済みますから。」
二階リハーサル室。メンバーは浅村の指示によってストレッチを始めていた。
ドアを開けて夏と藤野が入って来た。
先ほど挨拶を済ました藤野がいる事にメンバーは疑問を感じた。
メンバーの多くは藤野に好印象を持っていなかった。
藤野は事務所のスタッフの中でも、マネージャーなどと違い、
普段から一緒に行動する事の多い人間ではなかった。
メンバーにとっては、自分達のいない場所で自分達の将来を勝手に決めてしまう、仮面の陪審員だった。
メンバーの警戒心が強まった中、夏が口を開いた。
「ストレッチやったままでもいいから聞いてもらえるかな。
今日、始める前にちょっと話があるんだけど・・・。」
夏の表情は今までとは違い明るくなっていた。
午前十時十一分。
━8━
トイレから戻ってきた加護が言った。
「何や?これ」
テーブルの上に散らかる菓子の類。
辻がぶっきらぼうに答えた。
「見りゃ分かるじゃん。お菓子でしょ。」
「何で散らかってるんやって事。」
加護が菓子を片付けながら言う。
それを阻止して辻が言う。
「ちょっと。食べてる途中。」
大きなため息をついて加護が椅子に座った。
控え室。二人はダブルユーとしてグラビアの撮影スタジオに来ていた。
数日前から二人は口げんかを繰り返していた。
言い争いの時間は日を追う毎に短くはなっていた。
結局、それはどちらかがため息をついて終わった。
そして数分後にはどちらかが短い争いに再び火を点けるのだった。
火種は常に些細な事で、言葉尻だったり、ふとした仕草だったりだった。
この争いのそもそもの発端が何だったのか、二人はすでに覚えていなかった。
ただ、互いに残る後味の悪さのみを引きずっていた。
加護のため息を聞いた辻は、くすぶってる火種をまた意識した。
そして口を開きかけたが、すぐに止めて同様にため息をついた。
二人の潤滑油になる事の多いマネージャーだったが、
今は打ち合わせで席を外していた。
辻がテーブルの菓子を掻き分けカバンを拾いあげた。
必要以上に大きな音を立てたので加護が思わず辻を見る。
視線を感じた辻も加護を見返したが、
二人ともに何の言葉もなく、すぐに視線をそらした。
辻は携帯電話をカバンから引っぱり出してメールをチェックし始めた。
“今日の仕事はいつものスタジオでダンスレッスンだよ。
ののは撮影だよね。がんばってね。あいぼんによろしく。”
石川からだった。
石川には加護との最近の関係について伝えてはいなかった。
石川に無駄な気遣いをさせたくなかった。
辻は改めて“あいぼんによろしく。”を見直した。
辻は数日前から加護に何度も電話をしようとしていた。
「仲直りしよっか。」
「仕事何だっけ。」
「一緒に行こっか。」
「・・・・・・」
電話で話しかける内容をあれこれと考えるだけで、結局携帯電話を放り投げる。
どうせすぐ会うし・・・と思って携帯電話をしまいこむ。
貼ってある加護と撮ったプリクラを見たくなかったのでカバンの奥へ奥へと押し込める。
メールなら・・・と思い直しても、カバンの奥から引っぱり出す手間を考え止める。
それを毎日繰り返していて、今朝も例外ではなかった。
同時送信されていた画像には、目をつむり大口を開けた石川の、精一杯の変顔が映っていた。
辻はそれを見て口元を緩めた。
もう一度“あいぼんによろしく。”を見直した。
そして加護と二人で撮ったプリクラを手で軽く触れると、
そっぽを向いている加護に、気まずさを押し殺して呼びかけた。
「・・・あいぼん。梨華ちゃんから・・、ほら。」
加護は無言で椅子から立ち上がって、辻の隣に近づいた。
辻は加護が見やすい様に携帯を上下左右に傾けた。
加護がそれに合わせて首を動かしながら言った。
「・・・ん。・・大丈夫。見えるから。」
携帯を動かす手を止めて辻がぼそりと言う。
「・・・ね、梨華ちゃん。あいぼんによろしく。って。」
「・・・うん。」
石川のふざけた表情を二人はただ真剣に見つめていた。
控え室のドアが開いた。
「じゃ、辻も加護も準備して。撮影行くよ。」
部屋の空気が一瞬にして変化した印象を受け加護が言った。
「おーし。じゃ、のの。行こう!」
辻もそれに答える。
「うん!・・・あ、ちょっと待って。」
辻は携帯のカメラを自分に向けると、目を半開きにし、鼻の穴と口を全開にしてシャッターを切った。
そして“ありがとう梨華ちゃん。”とだけ文字を打つと、送信ボタンを押した。
・・・・・・・・・・“送信できませんでした。”
もう一度送信ボタンを押した。
・・・・・・・・・・“送信できませんでした。”
マネージャーが言った。
「辻、あとにしなさい。みんな待ってるから。」
「・・・うん・・・。」
辻は不思議な思いを残したまま携帯電話をテーブルに置いた。
辻は加護と手をつなぎ撮影現場へ向かった。
午前十時十七分。
━9━
しばらく放送が続き、中澤は再び空気の変化を感じ取った。
ブースの外の人の行き交いが多くなっていた。
一人のスタッフが足早にブース内に入ってきた。
そして中澤とパーソナリティに紙を渡すとすぐにまたブースを出て行った。
パーソナリティの顔が真剣になる。
「・・・ええと、すいません。ここで臨時ニュースが入ったので、
報道フロアの方へ切り替えたいと思います。・・・どうぞ。」
パーソナリティがカフを下げる。中澤が紙を見て言った。
「地震速報・・・都内であったと書いてありますけど、揺れましたか?」
「・・・うーん、分かんないですね。」
「番組の途中ですが臨時ニュースをお伝えします。本日午前十時・・・」
「中断10分なんで休憩して下さい。」
ニュースが流れ出したが、すぐにスタッフの声がかぶさった。
ブースの外へ出た二人にスタッフが話しかける。
「分かりませんでしたね。全く。」
「・・・・・局地的な地震で、被害の詳細は詳しく分かり次第お伝えします。
もう一度繰り返します。本日午前十時十五分頃、都内〇〇区〜〜で局地的な強い地震が起きました。」
全員がニュースに集中する。
「・・・えー、申し訳ありません。ただ今入った情報によりますと、
本日午前十時十五分頃、都内〇〇区〜〜で起きた強い揺れの原因は地震ではなく、
爆発で起きた振動によるものだという事です。・・・」
スタッフがざわめき出す。
「テロか何かかな。怖いね全く・・・。」
「・・・・爆発の原因は未だ分かっていません。大きな被害にあったのは、
〇〇区〜〜の大和ビルです。」
中澤は意識が遠のいた。いつも使っているレッスンスタジオの名前だった。
ニュースを聞こうとするが、スタッフの言ったテロという言葉が自分の中で生々しく蘇り邪魔をする。
レッスンスタジオと周囲の景色を思い返すが、すぐにテロの響きが黒く塗りつぶす。
「・・・・被害の詳しい状況に関しては分かり次第お伝えします。
もう一度繰り返します。本日午前十時十五分頃、〇〇区〜〜の大和ビルで爆発があった模様です。
爆発の原因は分かっていませんが、爆発で起きた振動により、強い揺れが局地的に起こり・・・」
中澤は青ざめた顔でマネージャーの元に近づいた。
「姐さん。まだ何も分かってないから、落ち着いて。きっと、会社からも連絡あるから。」
早口で中澤が聞く。
「電話は?してないの?」
「事務所に?じむ・・」
「じゃなくて、スタジオに。今日はスタジオに誰か居るの?居ないよね。」
「スケジュールは分からないよ。スタジオには・・・」
落ち着いた態度を見せるマネージャーに中澤はいらついた。
「番組、あと1分で再開しますが、番組短縮です。ニュースを引き続きやるそうです。
じゃ、スタンバイよろしくお願いします。」
スタッフが二人の会話を制した。
言葉を噛み殺した中澤にマネージャーが言った。
「今電話するから。ラジオの方、お願い。」
ブースに入る時にパーソナリティが声をかけた。
「知ってる場所なんですか?」
「はい。」
とてもそういう心境ではなかったが何とか笑顔を作って、一言、そう答えた。
そして二人は無言でブース内の椅子に座り、ヘッドフォンを耳に当てスタッフの指示を待った。
「・・はい、ニュースをお伝えしました。番組の方は予定を変更して、
まもなく終了する事になります。その後はニュースをお伝えする事になります。
中澤さん。今日はありがとうございました。短い時間でしたけどね。
また、こういう機会があったらいいですよね。」
「はい、そうですね。・・楽しかったですよ。また是非、ご一緒したいですね。」
懸命に言葉を見つけて喋る中澤だったが、意識はブースの外で電話をするマネージャーの方に向いていた。
電話を終えたマネージャーは中澤に向けて両手で×の印を作って見せた。
「・・・では、またの機会にお会いしましょう。」
続けてパーソナリティは目で合図をして、言葉のタイミングを計ろうとした。
「・・・さよーならー。」
しかし結局、中澤はその声を出せずにただ手を震わせていた。
午前十時三十一分。
━10━
普段は人通りが多くない大和ビルの周囲に今は人だかりが出来ていた。
車の通りも滞り、交通整備の警察官の声がクラクションの音とヒステリックに交差する。
人ごみを分け入り大和ビルに救急車とパトカーが近づこうとするが、
その速度は非常にゆっくりとしたものだった。
パトカーの中から警察官が大声を出し、人をどけようとするが、殆ど効果は無かった。
痺れを切らしたように、遠目の距離に止められた数台のパトカーから走ってきた警察官が、
人と人の間に体を押し込み、どうにか隙間を作る。
速度を上げた救急車とパトカーが大和ビルに近づく。
しかし、正確には大和ビルのあった場所に、だった。
そこには大きな穴しかなかった。
瓦礫すら見当たらず、スプーンでくり抜かれた様に、地面の土や石がむき出しになっていた。
あっという間に立ち入り禁止の看板が、大和ビルのあった場所を取り囲む線を作った。
更には中が見られない様に大きな囲いが立てかけられていった。
囲いの中で警察官と救急隊員達が会話を交わす。
「どうしたらいいんだ。これから・・・」
「連絡がある。すでに爆発物処理班は他の場所にも不審な物が無いか探しに行った。」
「ここには本当に何も無いのか?」
「見て分かるだろう。爆発した後だよ。」
「死体は?」
「俺は爆発したとか聞いてないぞ。」
「不審者の情報は無いのか?」
「俺に聞いても分からないよ。」
「死体は?」
「お前しつこいな、見れば無いのは分かるだろう。」
「じゃ我々は何の為に来たんだ?」
「俺に聞いても分からないよ。」
「どうしたらいいんだ。これから・・・」
囲いの外では防護機材を着用した救急隊が、
集まっていた野次馬に対し、放射線のチェックを始めていた。
そして囲いの内側に彼らが入ってくるのを見て、警察官と救急隊員達は生きた心地がしなかった。
放射線に対し自分たちが裸同然である事に今更ながら気付いたからだった。
しかし、放射線はどこからも全く検知されなかった。
全員がただ無言で立ち尽くした。
大和ビルの跡地も、かすかに起こる風が石をわずかに転がすだけで何も言わなかった。
午前十一時九分。
第一部 終わり
55 :
名無し募集中。。。:04/08/24 21:32
2部まだ〜?
>>55 2部はまだ書き始めたばっかりです
いつになるか分かりません
すぐ落ちるだろうと思って一気に載せたけど試験発車のつもりでした
58 :
名無し募集中。。。:04/08/25 01:17
ここで書いても人はこない悪寒
59 :
名無し募集中。。。:04/08/25 01:21
>>58 リアルダブルユーや田中の一人ぽっちっぷりを拾ったのは
狼のネタスレからだったので書いたんだけど考え直してみます
60 :
名無し募集中。。。:04/08/25 01:26
けっこう好きかも。続き楽しみにしてますよ。
61 :
名無し募集中。。。:04/08/25 01:29
小説・いいらさんの目薬
いいらさんが目薬をさしてくれと言ったのは
確か雨が降る前のこんな生暖かい日でした。
その時私はあいぼんの肩を叩いてました。
おっぱいが大きいあいぼんは肩がこりやすいそうです。
「目薬?私がですか?」
「そうよ。早くしてよ。何してるのよ」
怒っています。何様のつもりなんだろう?
私は普通に疑問でした。
いいらさんの大きな目で入らないなら
人類の大半の目には目薬は入りません。
とりあえずあいぼんの肩を叩かねば。
いいらさんには待って貰って私は
生暖かいかい肩叩き機。と何度も呟いていると
いいらさんが急に怒りました。
「さては紺野もつんくさんみたいに私をリストラする気ね!」
62 :
名無し募集中。。。:04/08/25 01:46
>>60 ありがとう
でも多分落ち次第&二部仕上げ次第他に引っ越します
まだ読んでないけど保全しに来た
66 :
名無し募集中。。。: