矢口さんと安倍さんはランチセットを口に運んでいる。
一方、僕はカオリさんが過去の恥ずかしい話に耐えるため口に押し込んだので既に平らげてしまった。
矢口さんはレタスにフォークを突き刺し僕の方を向いた。
「山本君、カオリさんみたいな人がタイプなの?」
僕は焦った。矢口さんの口からは予想もしなかった言葉が飛び出した。
「昔は…ね。今は良く分からない。なんせ、3年振りの再会だからね。」
「ふぅん。しかし、本当に料理上手いんだね、あの人。これ凄く美味しいよ。」
矢口さん達は至福の表情でカオリさんの料理を味わっている。
安倍さんが口を開き、彼女からは予想も出来ない言葉を吐いた。
「山本君って進んでるんだね。あんな綺麗な人と仲良しなんて。」
僕は咳き込んだ。何を言ってるんだ?安倍さんまで…
「なっち男の子で話せるの山本君くらいだから…」
矢口さんは口の中の料理を飲み込み、安倍さんに顔を向ける。
「なっちは、素は可愛いんだから自信持ちなよ。」
「ええ?なっち…可愛くなんか…その…ネクラだし…」
安倍さんは俯いて黙り込んでしまった。そのまま黙々と食事を続ける。
いつの間にか2人とも商事を終了させていた。