もしも矢口がエッチな幼馴染だったら 2

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380やぐラブ ◆yagu8XjKM.
僕は矢口さんを含む集団を憎悪の念を込め、睨んだ。
勿論、矢口さんじゃない。ブス達だ…
「何であんなやつらが特進入れるんだよ?」
「矢口が立てたテストのヤマを書いたノートのおかげだよ…」
僕の呟きに安倍さんが答える。
「矢口の勘凄く当たるの。時にはなっちも助けてもらってるくらい。
 矢口のおかげでもあるんだ、なっちが女子NO1なのは…ううん。矢口が居なけりゃ無理だった。
 現に中学の時は、1度も矢口より良い成績取ったこと無いんだよ。」
え?女子NO1の安倍さんの成績は矢口さんのおかげ?中学の時は矢口さんの方が好成績?初耳だ、これも。
安倍さんは続ける。
「あの人達、そのノートを使って特進選抜試験をパスしたんだ…きっと。
 矢口が言ってたんだ。最近試験前になると必ずノートが紛失するって。
 それで試験後何事も無かったかのようにあの子達が戻してくるって。
 矢口本人はああ見えて、地道に勉強してるし、ヤマも記憶してるから問題ないんだけど。」
な…何だって?殆どカンニングじゃないか、顔だけじゃなく考えも汚い奴等だ。
安倍さんは更に続ける。身体が少し震えているようだ。
「なっちがネクラと言われようが、何されようが構わない。矢口が良いように利用されているのが嫌なの!
 矢口外見はちょっとチャラ付いてる様に見えるかもしれないけど、本当に凄く良い子なの。
 だから…断れないし、あの子達を疑うのは悪いって文句も言わないの。可哀想だよ、矢口が。」
誰が聞いてもあいつら以外に犯人はいない。ノートを盗んでるのは。
安倍さんの声には怒気が含まれていた。あの安倍さんがこんなに感情を表に出すなんて。
彼女は眼鏡の奥から哀しげな瞳で矢口さんを見つめていた。
 
381やぐラブ ◆yagu8XjKM. :04/07/24 13:19
「よぉ、カズ!お前もやっぱ特進か!」
僕は声の方向に振り返る。イケメン風の男が立っている。
こいつは西村浩人。学年NO2の成績の持ち主だ。加えてサッカー部のエースでもあり、女の子にも大人気。
1年からずっと一緒のクラスだ。
初めはいけ好かない奴と思っていたが、話してみると凄く良い奴で現在僕らは無二の親友だ。
勉強しか取り柄のない僕とは違う、完璧な人間だ。
「浩人…お前も特進に?」
「当たり前だろ。今年こそお前に勝つって言う目標もあるんだぜ。」
「やってみな。返り討ちだよ。」
僕達はお互いに笑いあった。するといつの間にかブス達が僕らの輪の中に入っていた。
「西村君も特進なの〜。超嬉しい〜。これから毎日が薔薇色だね。」
「ねぇ〜勉強教えて、今度〜。」
「いいね、やろう、やろう。西村君に家で勉強会。」
「そ、そうだね…ハハハ…」
浩人は愛想笑いをして、あしらっている。というかこのブス達、僕と浩人じゃ態度が180°違うぞ。
「真里〜。キモカズじゃなくて西村君に隣代わってもらいなよ。」
「おいら、山本君のままで良いよ。」
「こんな勉強だけの奴より、イケメンの西村君の方が絶対に毎日楽しいよ!」
そりゃお前の考えだろう?というか僕もお前の隣なんかは御免だ。

382やぐラブ ◆yagu8XjKM. :04/07/24 13:38
その時チャイムが鳴った。担任の先生が入室してくる。
「おい、皆席に着け、HR始めるぞ。」
僕達は各自席に着いた。
「おい、お前。号令掛けてくれ。」
先生は僕を指名した。僕は仕方なく号令を掛ける。
「起立!礼!着席!」
僕の号令に皆反応し、席に座る。
「さっきはごめんね…おいらのこと嫌いになった?」
矢口さんの呟きに僕は首を横に振った。
「ありがとう。じゃあ改めて宜しくね、山本君。」
僕の心に再び光が差し込んだ。矢口記念日は終わっていなかった。
安倍さんの言うとおり矢口さんは実に良い子だ。ここから新しい物語が始るのか…
僕は自分がドラマの主人公になったような気になり非常に浮かれていた。

この日は始業式など恒例の行事があった。
しかし、新学期初日と言うことで学校は昼には終わり下校となった。
クラスメートがパラパラと帰宅して行く。
「山本君、一緒に帰らない?」
僕は心臓が止まりそうになった。いや気付いてないだけで数秒間停止したかも?
僕は無垢な笑顔を振り撒いている矢口さんを見た。こんな可愛い子と僕が一緒に帰宅?
僕の全身には汗が流れ、脚も小刻みに震える。僕は息を呑んだ。
憧れの女の子と話した初日に一緒に帰宅?夢じゃないのか…一生分の運を使い切ってしまったんじゃ…
僕はその思いを消沈させた。構わない…この先どんな不幸が待っていようが…
今は只…矢口さんと接触したい…そんな不埒な欲望で僕の思考は満たされていた。