じゃ、いきます。久々に温泉編の続き…
次の日。
目を覚ますと、もう太陽は最高点に到達していた。
「いやいや、寝すぎだろ…」
隣では美貴がまだ寝ている。こいつも大分飲んでたしな。
どれ、ちょっと美貴のかわいい寝顔でも拝んでおくか…
「ぷっ…」
俺が目にしたのは、口をぱっくりと開け涎をたらしながら爆睡している美貴の顔。
「ったく…夜とは別もんだな…まあ、かわいいっちゃあかわいいけど。」
と、そのとき。
「…う〜ん…」
不機嫌全開、といった感じで美貴がうめいた。
「お、起きたか。」
「ん、うん…っだぁ〜…頭いたい…」
「まあ、あれだけ飲めばな。」
「何いってんのよ、あんなの飲んだうちに…あ〜きもちわるぅ…」
「ったく…せっかくの旅行で二日酔いなんかになってんじゃね〜よ。」
「うるさいわねぇ…」
「さてと、今日どうする?」
「え〜…寝とく…」
「いやいや、せっかくの旅行だっつのに、おまえは久々に休日を取るお父さんか。」
「だってぇ〜…起き上がる気になんないんだもん…」
「ったく…で、実際体調だいじょうぶか?」
「うん…最悪。」
「そっか…」
「ちょっと、そんな心配そうな顔しないでよ、たかが二日酔いなんだから…寝てたら治るわよ。」
「くっくっく…」
「何がおかしいのよ?」
「いや、普通そういうのって風邪とかだよなぁ〜、と思って」
「いいじゃない。風邪と違って二日酔いは移んないわよ…近くにいても。」
「当たり前だろ。」
「…」
美貴が突然黙り込んだ。心なしか表情が曇っている気がする…
やっぱ相当調子悪いのかな…
と、
「…あっ、もう大分よくなってきたかも。」
「嘘?つーか、はやっ!」
「へへ…いいかげんそろそろ起きないとね…」
「大丈夫か?無理すんなよ?…」
「大丈夫だってば、ほら、」
そういうと美貴は俺に向かって手を突き出した。
「…?」
「ほ〜らぁ〜!!」
「ん?なんだよ?」
「手!持ってよ。」
「へ?」
何がなんだかわからないが取り合えず言われた通りに美貴の手をつかむ。
「よし。はい、次は引っ張って。」
「ああ、そういうことねって、オイ!」
「何よ?」
「おれはホームヘルパーかっつの!自分で起きれるだろーが。」
「あっいきなり体調が悪く…」
「嘘つけ。」
「ああ、立ちくらみが…」
「いやいや、まだ立ってないから、まだ立ってないから!」
「…ねえ、早く。引っ張ってよ。」
美貴が上目遣いにねだるようにしていった。
「…わかったよ。」
俺は内心ドキドキしながら美貴を引っ張り上げようとした。
すると…
グイッ、ドサッ!
「ってて…何すんだよ。」
「へへ〜…」
「ったく…ほら、起きるぞ。」
「ねえ、このまま…いっしょに寝ちゃおっか。」
そういうと美貴は布団を目元まで引き上げて、いたずらっ子のように笑った。
「ば…ばか。んな冗談言ってないで早く起きるぞ。」
「え?ばれた?ちぇっ、せっかく布団に入ってきたら関節決めてやろうと思ってたのに。」
「あほ。そんなことだろうと思ったよ。」
「…」
「ほら、起きろよ。」
「…そんなんじゃないわよ…。」
「ん?なんだって?」
「…ううん。なんでもない。」
よいしょっ、と美貴を立たせたとき、俺はあるものを目にした。
「く…くくっ…」
「…?何笑ってんのよ?」
「ん?いやなんでもない…」
「なによそれ?」
「あっそうだ、あのふたり、どうしてるかな…」
「ふたりって…あやちゃんと梨華ちゃん?」
「そうそう、まだねてんのかな?」
「…そうなんじゃない…?」
「おれ、起こしに行ってくるわ。」
「ふ〜ん…あの二人の寝顔でも見たいの?変態。」
「ばか、ちげ〜よ…寝顔に期待できないのはもうわかったしな…」
「ん?なに?」
「いやいや、なんでもない…じゃ、行ってくるわ。」
がらがらっ。
「…なによあいつ…」
俺が二人の部屋に入ると、そこは地獄絵図だった。
「うあぁぁ〜、あたまいたいよぉぉ〜…」
「う〜ん、いっそ殺してぇ…」
悲痛なうめき声。ウジ虫のようにはいつくばる二人…
「おい、お前ら大丈夫か?」
「あぁ〜、何よぉ〜。こんな弱ってる私たちをどうするつもりぃ…」
「そうよそうよ…体は売っても…心は売らないわよっ…」
「誰がお前らの今の姿見て襲う気になるかっつの。」
「ううぅ〜…いった…わねぇ〜…」
「ゆるさない…んだから…」
「はいはい、そんなことよりお前ら、一気に気分がよくなるもん見せてやるからついてきな。」
「気分が…良くなるものぉ〜…?」
「なんなの…それ…?」
「はいはい、こっちこっち。」
『う〜…』
バイ○ハザードの這いつくばるゾンビのような二人を従えて、俺は部屋へと戻った。
がらがらっ。
「なによぉ〜別に何も無いじゃ…」
「あ、あやちゃんに梨華ちゃん、おはよ〜!」
「み、み、美貴たん?」
「美貴ちゃん!?」
「ん?なによ二人とも…」
「ぷ、ぷ、ぷはははっははっはぁぁ!!!!」
「きゃはははあはははははは!!!!」
と。突然堰を切ったように二人が笑い出した。
「な、なによう…?」
「か、かみかみぃ…」
「ぼっ、ボッサボっサしてる…」
「へ?う、うそ!?」
そういうと美貴は洗面台へ行った。
「き、きゃぁぁぁ!」
そこで美貴はようやく自分髪がどうなっているかが分かった。
髪はボサボサ、デコ丸出し。それは普段の美貴からは想像もつかない姿だった。
「あ、あんたねぇ!知ってたなら言いなさいよ!」
「いや、これは直したらもったいないなぁ…と…」
「ば、ばかぁ!」
「いやぁ〜、いいものがみれたねぇ〜」
「ほんと、美貴ちゃんかわいい☆○○君、教えてくれてありがと!」
「だろ?二日酔いなんて吹っ飛ぶよな。」
「…!っこの大馬鹿やろぉぉぉ!!!」
ばき!どか!ずびしっ!!!
「ごふっ…」
『お〜…』
「…」
突っ込んだ後も美貴の顔は、未だすっきりしていなかった。
「…もう一回くらい殴ってもいいぞ。」
「…何いってんのよ?」
「いや…」
違うのか…?…だめだこりゃ。