川=‘ゝ‘=|| 『愛国発〜幸福行き』 (^▽^ )U
2 :
名無し募集中。。。:03/11/29 16:42
矢口氏ね!
保全
川=‘ゝ‘=||>ほ
後ほど、ここまでの粗筋を載せます
>>6 前スレの最初の方に粗筋が有ったでしょ?
あれもそのまま載せるけど、その続きの部分の粗筋も俺が書いて載せる
今まとめてるからちょっと待っててね
ほ
ぜ
ん
保全
ほ
ぜ
14 :
名無し募集中。。。:03/11/30 14:00
ん
ほ
ぜ
17 :
名無し募集中。。。:03/11/30 17:30
ん
続き今日は書く人いるんかね?
俺はいつもの転載・修正職人さんじゃないけど
一応は未転載分も保存してある
それで改めて読んでみたけど、物語的にも色々有ったので粗筋をまとめるだけでも結構大変だね・・・
でも何とかまとめてみるよ
あと、登場人物とかも
前スレ埋め立て終わったみたいだよ
まいたんスレも埋め立て終わった
>>19 スイマセン、今週頭には必ず転載します・・・
もう半分の修正はできてるんで。
>>22 どうも乙です
そちらの都合も有ると思うので焦らずにゆっくりやって下さい・・・
保全
防衛
26 :
名無し募集中。。。:03/11/30 23:35
付き合って保全
ほ
せっかく新スレなのに早速保全大会だな・・・
29 :
名無し募集中。。。:03/12/01 01:06
保全だけで1000まで行くか実験中
ほ
ぜ
ん
hozen
34 :
名無し募集中。。。:03/12/01 15:02
勝手に決めんなよw
保全
ほ
し
の
せ
ん
い
ち
保
続き考えてる香具師いる?
これってあらすじ待ちだよな?
ほ
44 :
名無し募集中。。。:03/12/02 00:39
そ
か
わ
ふ
み
え
ぜ
46 :
名無し募集中。。。:03/12/02 01:11
て
ぃ
ま
>>46 どうせ荒らすならもっと面白い事言えよ・・・
ヤバイな、ただの保全スレになりつつある・・・
あらすじはどうなったんだよ・・・
49 :
名無し募集中。。。:03/12/02 01:18
明日の午前0時までにあらすじが書かれなければ、続き書くよ
51 :
名無し募集中。。。:03/12/02 01:21
>>47 人名で繋げたかったんだけど思いつかなかったんだよ
さとう
とうがん
だいこん
まんもす
いちご
ほ
も
高校3年の春。普通の高校生活を送っていた俺とまいに突然の不幸が襲った。
まいが突然の眩暈で倒れ、救急車で運ばれそのまま入院することになった。
検査の結果、軽い肺炎とまいには告げられ1週間ほどで退院できると告げられていた。
しかし、両親に告げられた本当の病名・・・再生不良性貧血 血液の病気である。
本当の病名を知らない俺とまいは、いつものように普通の会話を楽しんでいた。
入院中のまいのお世話は、研修中の看護学生の石川梨華が担当する事になった。
二人は年も近い事もありあっというまに打ち解けていった。
ところが、入院生活が1週間、2週間・・・・伸びていくにつれ、まいのイライラは溜まっていった
そして俺自身も病気に対して疑問を持つようになる。本当は重病ではないのか?
石川を問い詰めたところ、やはり重病だという事が分かった。
この頃、まいは不安からの苛立ちからか病室で暴れる事が多くなった。
もう隠しきれないと思った俺は正直に全て話した。
全てを知ったまいは看護をしてくれる石川にまで暴力を振るうようになった。
だが、それでも今までと変わらず一生懸命に介護してくれる石川に、いつしか惹かれていく自分がいた。
この頃からまいの闘病生活も過酷なものになってきていた。
普通の病室から無菌室へと移動になったまいは、目に見えて衰弱していった。
しかし俺はというと、後ろめたさを感じながらも石川と会っていた。
そして自然と病院からも足が遠のいていった。
時がたち・・・石川の気持ちをまいが気づき、事態は複雑化していくのだが・・・・
石川に惹かれていく俺、そして石川の気持ちに気づき、苦しむまい。
俺、まい、石川の三人は三角関係になってしまった。
そんな中、まいが好きだというアイドルグループ・カントリー娘。との対面が実現した。
カントリー娘。と石川が打ち解けた事も有り、まいの為にカントリーが歌を歌うという企画が実現する事となった。
そして、石川もそれに加わってカントリーと共にステージに立つ事が決まったのだが・・・。
複雑化する三角関係を清算する為、まいは俺に別れ話を切り出してきた。
病気が治るまで別れよう、そして病気が治ってから改めて俺に石川かまいを選ぶように告げて来た。
こうして俺とまいは別れ、恋人同志から病気と闘うための戦友という関係になった。
※カントリー娘。がまいの為に歌うというのは、勿論まいには内緒です。
その当時も今もずっと・・・。
夏になり、俺の前に一人の女性が現れた。
彼女の名は柴田あゆみ。
石川の親友でもある柴田は大変魅力的で、俺は柴田にどんどん惹かれて行った。
柴田も、出会った当初は、石川に対して煮え切らない態度を取る俺に業を煮やし、石川との関係をハッキリさせるように言っていたが、やがて柴田は俺に対して積極的に迫るようになった。
こうして、俺は柴田との浮気をズルズルと続けて行った。
その事に気が付き、石川は酷く傷つき、まいも激怒した。
事態は泥沼化の様相を呈して来たが、まいの主治医・中澤先生の取りなしにより、俺はまいの病気が治るまで誰とも付き合わないという条件を飲み、この泥沼の関係は何とか収束した。
秋になり、俺は体育祭の応援団をやる事になった。
そして偶然にも、まいの親友・藤本美貴も共に応援団をやる事になった。
そんな中、一時期は無菌室に入るまでに衰弱していたまいも徐々に回復し、どうにか外出許可が得られるまでになった。
まいは、石川に支えられて歩行訓練が行えるまでになっていた。
しかし、まいの兄の骨髄は残念ながら適合せず、完治はまだまだ先送りされ、病状が油断ならない状態である事には変わりが無かった。
俺は、まいと同じ病気を克服したという、石川との同僚・後藤真希と会い、まいの病気について色々な事を聞き、勇気付けられたという出来事も有った。
ある日、カントリー娘。のプロデューサー・つんくと久しぶりに出会った俺は、久しく話が出ていなかった「カントリー娘。と石川が同じステージに立ち、まいの為に歌う」という企画を思い出させられた。
その時、俺と一緒に居た藤本を見たつんくは、カントリーと同じステージに立つ人を
石川と藤本とで競わせるオーディションを開催する事を思い立ち、その事を藤本に告げた。
そして、それを受けた藤本は石川に挑戦状を叩き付けた。
そのオーディションは体育祭の同日の夜に行われると決まった。
石川と藤本は、まいの為に歌うという一念でオーディションに向けて必死に練習を重ねていた。
その大変な日が近付いて行く中、柴田に久しぶりに呼び出された俺は、そこで柴田が海外留学をする事を告げられた。
そして、まいの外出許可が正式に出され、まいは俺が応援団として出ている体育祭を見に来る事になった。
その体育祭でリレーに出場した俺は、誤って転倒し大怪我をしてしまった。
それを見た石川は、俺の為に一生懸命に治療をしてくれたが、それを見ていたまいの心は掻き乱され、嫉妬に苦しんだ。
まいはそんな気持ちを俺にぶつけ、石川はそんなまいの姿を見て複雑な思いをした。
まいは、親友である藤本に付き添われ久しぶりの帰宅を果たしたが、その時に藤本やまいの兄に自分の苦しい胸の内を吐露した。
そして、その日の夜、いよいよ石川と藤本による運命のオーディションが開かれた。
石川も藤本も自分の持ち味を最大限に発揮し、白熱した戦いが繰り広げられた。
そして、その勝者を俺が選ぶという事になり、俺は思い悩んだ挙げ句、石川を選んだ。
こうして、まいの為にカントリー娘。と共に歌う人は石川に決定し、あとはそのステージを待つばかりとなったのだが・・・。
今までの話はここまでです。
【現段階での登場人物 】
俺 ・・・小説を読んでるあなた自身です。(三人称で「彼」と表現される事も有り)
川=‘ゝ‘=|| ・・・里田まい スポーツ万能の女子高生。突然不治の病にかかってしまう。彼とは今は別れているが、その思いは変わらず。
( ^▽^) ・・・石川梨華 看護学生。まいの友人でもあり看護担当でもある。彼とまいとの間で自分の揺れる気持ちに苦しむ。
从#~∀~#从・・・中澤裕子 口は悪いが腕は確かな関西出身の女医。彼やまい、石川の良き相談相手でもある。
川VvV从 ・・・藤本美貴 まいの部活仲間、一番の親友でもある。石川とオーディションで争う。
(O^〜^)・・・吉澤ひとみ まいの幼馴染。なんでも話せる仲。(あらすじには書いていないが、夏編では重要な役割を果たした)
(o゚v゚o) ・・・あさみ カントリー娘。のメンバー。たまたま同じ病院に居合わせる。
( ⌒ー⌒) ・・・戸田鈴音 同じくカントリー娘。のメンバー。
友情出演 田中義剛(カントリーが、まいの入院している病院にたまたま現れるキッカケを作った)
川σ_σ|| ・・・柴田あゆみ 石川の親友。彼を誘惑し一時期は泥沼の関係になる。突然、海外留学を表明。
ξξ “ З.“) ・・・斉藤瞳 柴田の先輩の女子大生。彼の隣人でもある。
( ´ Д `) ・・・後藤真希 石川と同じ、研修中の看護学生。かつて、まいと同じ病気を克服した経験が有る。
(●´ー`) ・・・安倍なつみ つんくのマネージャー。冷静沈着だが、時折違った一面を見せる。
つんく ・・・石川VS藤本のオーディションの仕掛け人。時々現れては、彼らを混乱させて行く。
まいの家族 ・・・厳格な父、娘思いの優しい母、そして喧嘩ばかりしているが実は妹思いの兄。まいと合わせて4人家族。
64 :
名無し募集中。。。:03/12/02 15:20
あーーーーーーーーーーーーーー
保全以外しやがったなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
続きまだー?
保全
>>50 先程あらすじをまとめた者ですが、続きをよろしくお願いします
68 :
名無し募集中。。。:03/12/02 20:37
保全
保守
ほ
71 :
名無し募集中。。。:03/12/03 00:11
さ
か
な
お
き
保全
あっという間に過疎スレになりますた (;^▽^)
74 :
名無し募集中。。。:03/12/03 02:10
ほ
>>76 明日のこの時間ぐらいまでに誰も書かないんだったらもう俺が書く
そしたら続きをよろしく
>>77 おまいってオーディションの話ずっと書いてた作者さん?
>>79 悪いな・・・オイラも飼育で小説持ってるから
そっちの更新もしなきゃいけなくて最近筆が止まっている・・・
ちなみにオイラは家族の絡みかいた作者です
>>80 そうなんですか
俺は小説なんて書いたのはこれが初めて
だから思い入れも有るしどうにか完成させたい
まあ俺だけが書いたら絶対完成なんて無理だからまた協力して下さい・・・
82 :
名無し募集中。。。:03/12/03 02:56
(´д`).。oO(だったらseekだけでやってりゃいいのに…)
つーかいちいちageてんじゃねーよカス
ちょっと長くなっちゃったんですけど
ドドっと後で更新してよろしいでしょうか?
運動会の翌日、俺は足の怪我もあり一日学校を休むことにした。
朝、学校に連絡をする為に一度起き
その後もう一度眠りに就こうと思ったが
足の痛みで熟睡することはできず、結局昼前には遅めの朝食をとり
今日の夕方には病院に帰るまいに電話してみることにした。
「もしもし?」
まいの声は起きたばかりの声に聞こえた。
「起こしちゃった?」
「ううん、そんな事ないよ。」
「今日さ、帰るんだろ?」
「うん。」
「今からそっち行っていいかな?」
「いいよ。お父さんもお母さんも仕事に出かけちゃったから。」
俺は慣れない松葉杖を共にまいの家に向かった。
>>85 続き
まいの家のインターホンを鳴らすとまいのお兄さんが出てきた。
「どうも・・・」
「あぁ・・・」
「あの、まいは?」
「部屋にいるけど」
「お邪魔しちゃっていいですか?」
「いいけど・・・」
まいのお兄さんは、以前よりも何故か余所余所しく接してきて
俺は少し戸惑った。
それからお兄さんは俺をまいの部屋まで案内してくれた。
>>86 続き
部屋に入ると、まいはまだベットで横になっていた。
「ありゃりゃ、スゴイ事になっちゃったね。」
まいは俺の松葉杖をついている姿を見て少し笑った。
「笑うなって。結構大変だったんだから。」
「すぐ治りそう?」
「捻挫だから、一週間くらいで治るって。」
「よかった。」
それより、俺はまいの目が少し腫れているのが気になった。
「目、どうした?腫れてないか?」
「そう?」
「なんかあった?」
「ううん、ちょっと寝過ぎたかも。」
「それだけ?」
「まぁ、いいじゃん。」
まいはこれ以上突っ込まれるのがイヤなのか言葉を濁していたので
俺もあんまり追求しないことにした。するとまいは突然話題を変えてきた。
すいません。続きあるんですけど連続投稿規制に引っかかってます。
しばらくお待ちください。
>>87 続き
「ねえ、今日さ、どっかいかない?」
「え?どっか行くって?」
「だってせっかく天気もいいしさ、夕方戻るまでの間だけ、ね。」
「いいけど、俺こんなんだから車椅子押してやれねえし・・・」
「そっか・・・。」
まいの表情は笑っていたが、少し寂しそうだった。
考えてみたが、昨日は昨日で俺が怪我したりした為
まいに楽しい思いをさせてやれていなかった。
「じゃあさ、石川さんに電話してみるよ。」
「え・・・・?」
「石川さんだったらさ・・・・」
「イヤ・・・」
「え?」
「イヤ!」
俺はこんなまいを見たことなかったので正直ビックリした。
まいのいいところはどんな時でも人を拒絶しないところにあった。
続く
>>89 「なんで?」
「・・・・・・。」
「なんでさ?」
「梨華ちゃんだけはイヤなの。」
「だって石川さんだったら何かあった時でも助けてくれるじゃないか。」
「何かあった時って何にもない!」
「わかんないだろ?昨日だって久々の外出だったんだから、疲れが出るかもしれないじゃん。」
「大丈夫だって。」
「大丈夫なわきゃねえだろ?」
「でもイヤなの、梨華ちゃんだけはイヤなの!」
「じゃあ、どうすんだよ!?」
「美貴ちゃんとかさ、よっしーとかさ・・・」
「学校あるだろ?」
「じゃ、学校行く。」
俺はだんだん腹が立ってきていた。
今日のまいは何か様子が変だった。
昨日の事とかいろいろあったかもしれないが
妙に子供のように我が儘を言うまいは理解し難かった。
俺自身も自分の怪我とか昨日の一連の事も含めて余裕はなかった。
だから・・・・
続く
>>90 続き
「イイ加減にしろよ!わざわざ出向いてきてるんだからさ!
しかも何でそんなに石川さんの事イヤがるんだよ!
そんな無茶な事ばっかり言うんだったら今日行くのやめようぜ!」
何ヶ月ぶりだろう・・・・まいにこんなに怒ったのは。
まいも、少し驚いている様子だった。
俺とまいの間に妙に居心地の悪い雰囲気が流れた。
どれくらいたっただろう?たった1分と経たないうちにまいが口を開いた。
「わかった。いいよ。梨華ちゃんでも。」
「なんだよ、その口の利き方・・・」
「ごめんなさい、わかりました。梨華ちゃん呼んで下さい。」
俺はまだ、まいの意地の張り方に苛立ちは感じていたが
何ヶ月ぶりかの貴重な外出のまいの事を考えて、これ以上の気持ちを出すのを抑えた。
そして、俺は石川の携帯に電話してみた。
続く
>>91 続き
幸い、石川は今日は昨日の事もあって昼から何も予定を入れておらず休みにしていた。
電話の向こうから聞こえてくる石川も何かしら少し戸惑っているようにも聞こえたが
俺はその時はまいとのやりとりでまだ少し頭に血が上っていた状態だったので
そのことにはあまり気にせずに話した。
石川が来てくれることになったと告げるとまいは
「着替えるから、ちょっと外で待ってて。」
と少しまだ喧嘩腰の状態で俺にそう言った。
まいが着替えるまでの間、なんだかんだ30分も俺は部屋の外の廊下で待たされた。
しばらくすると
「いいよ。」と中から声がした。
部屋の中に入ると、箪笥も開けっ放しで服や化粧道具が散乱しており
まいが、用意に奮闘した残骸が空しく残ったままだった。
そしてそれとは対照的に、まいは白のニットのセーターに
チェックのミニスカートという大凡病人とは思えないくらい着飾っていた。
俺は、まいが不自由な身で一生懸命着替えた様を思い少しだけ胸が痛んだ。
続く
>>92 続き
玄関でも下駄箱の中をひっくり返し、中から眠っていた黒のブーツを引っ張り出した。
それはまいが病気になる前から履いていたものだったが
以前とは違い、まいの足が比べモノにならない位細くなってしまっていて
せっかくのブーツも長靴のようになってしまっていた。
それまでまいは一度も口を開かなかったが
ここへ来て一言ポツリとこう漏らした。
「ブカブカになっちゃった・・・・」
俺は何か一言声をかけてあげるべきだったのかも知れないが
なんとなく言葉が見つからず、ただそれを見つめていた。
そしてまいは
「お兄ちゃん、膝掛けもってきて・・・」
と兄に膝掛けを持ってきてもらい、せっかくおしゃれしたのにも関わらず
そのミニスカートから下を膝掛けで覆ってしまった。
でも俺はどうしてまいがここまでして無理にこんな格好をするのかわからなかった。
続く
94 :
名無し募集中。。。:03/12/03 07:52
保全だけっつうのも難しいねぇ
>>93 続き
結局俺たちは、近くの新しくできた水族館に行くことにした。
石川とは現地で待ち合わせをして、そこまではまいの兄が車で送ってくれた。
その車中では俺もまいも何故か一言も口を聞かなかった。
水族館に着くと、石川がすでに入り口のところで待っていた。
そんな石川も、ピンクのニットにコートを合わせチェックのスカートとブーツという
偶然なのかまいと同じような格好をしていた。
俺はまいの方をチラリと見たが、まいは他の方向を向いたままだった。
その様子はやっぱり石川ろ張り合っている感が否めなかった。
水族館は出来たばかりではあったが、平日とあって客もまばらで空いていた。
続く
>>95 続き
石川は昨日の事もあってか少し疲れが残っている様子だった。
けれども、俺たちを見つめると笑顔で迎え
「いい天気だし、空いててよかったね。」
と声をかけてきた。
「ごめんな、急に呼び出したりして・・・」
「ううん。あたしもね、ココ一回来てみたかったんだ。」
石川はそう言うと、腰を屈めて車椅子のまいに視線を合わせてまいに話しかけた。
「寒くない??」
するとまいは石川に視線を合わさず俯いたまま
「平気。」
と愛想なくなく言った。
俺は二人に昨日何があったのかわからなかったけれど
石川がやけにまいに気を遣っているのだけは理解できた。
それから石川はまいの後ろに回った。そして
「じゃ、行こうか。」と俺に笑顔を向けた。
続く
>>96 続き
中に入ると、大きな水槽の中にたくさんの種類の魚が泳いでいて
新しい水族館とあって照明から内装まですごくキレイだった。
俺たち3人はその一つ一つをゆっくり見て回った。
石川は松葉杖の俺と、車椅子のまいを気遣いつつゆっくりと歩を進めた。
その間、俺と石川は水槽の中の魚や熱帯魚にいちいち歓喜の声をあげたり
楽しく会話したりしていたが、肝心なまいは一言も口をきかず
俺はそんなまいに気遣う石川に申し訳ない気持ちでいっぱいになり
逆に不機嫌にしているまいには苛立ちを募らせていた。
一通り館内を一周て外に出ると、イルカショーがちょうど始まる頃だった。
「ねえ!折角だから観ていこうよ!」
石川はそう言うと、まいの乗った車椅子を押して客席の一番後ろの手すりのあたりに陣取った。
俺もその後についていった。
続く
>>97 続き
「私ね、イルカショー大好きなんだ!」
「そうなんだ。割と子供っぽいところあるんだね。」
俺がからかうと石川は少し怒ったような顔をして
「子供っぽいって失礼ね!」
と言って笑うと、遠くを見ながらこう続けた。
「イルカって人の気持ちがわかるんだって。すごいよね?
考えたらイルカもほ乳類だから私たち人間と同じなの。
私もさ、イルカみたく人の気持ちがわかる看護婦になれたらなって・・・
なーんて、ちょっと臭いコメントすぎたかな?」
そういう石川に、俺は昨日の石川の俺に対する一連の行動を思い出しこう言った。
「大丈夫だよ、石川さんなら。俺、本当昨日それを体感したから。
きっといい看護婦になれるよ。」
「もう、いいわよ。お世辞なんてそれに・・・」
石川は突然言葉を詰まらせ、視線を落とした。
視線の先には車椅子のまいがいた。
俺の場所からだと、まいの表情は全く確認できなかったが
いままでの俺と石川の会話は全部聞いていたはずだった。
続く
>>98 続き
そんな沈黙が3人の間に流れてすぐ、イルカショーが始まり
俺たちの会話はそこで終わった。
イルカショーをみている間、石川は楽しそうに歓声をあげたりしていた。
俺も、子供の頃以来だったのでなんだかんだ結構楽しみつつ拍手を送ったりしていた。
でもその間、石川とまいの間に流れる空気をずっと気に掛けずにはいられなかった。
イルカショーも終わり、時計を見るともう4時を回っていた。
「そろそろ時間ね・・・」
石川はそう言って俺の方を見た。
なので、俺もまいにこう話しかけた。
「病院、戻んなきゃな。」
するとまいは俺から横に視線をそらしてこう言った。
「イヤ。」
「え?」
「イヤ。」
「何言ってんだよ。」
「帰りたくない。」
俺もビックリして石川と目を合わせた。
続く
>>99 続き
「まいちゃん、また来ればいいじゃない?ね?」
石川は子供をあやすような優しい口調でまいにそう語りかけた。
しかし、まいは
「今から買い物でも行こうよ。」
とまたもやとんでもない事を言い出した。
俺はそんな今日一日のまいののことを思い出し
頭に血が上ってくるのが自分でも感じられた。
「一体どうしたんだよ?何か不満でもあるのかよ?」
「別に・・・。」
「じゃ、なんでずっと機嫌悪いんだよ!」
「機嫌悪くなんかないもん。」
「石川さんずっと気ぃ遣ってんじゃねえかよ!」
俺の口調はどんどん荒くなってきていた。
すると石川が止めに入った。
「ね、私の事はいいんだって。喧嘩しないで。」
そう言って石川は車椅子の前に回りまいと同じ高さにかがみ込んだ。
「ね、まいちゃん。絶対また外出できるって。
だから、そうなるように早く病院もどって治療頑張ろ!ね?」
続く
>>100 続き
俺たちの会話とは別に、水族館からは幸せいっぱいの家族やカップルが
笑顔で3人を横切っていった。
空も秋の夕焼けがとても綺麗だった。
「戻れないよ・・・」
「え?」
「戻れない。」
「そんな事ないって!昨日今日だって事実外出できてるじゃない。
それに担当の私が次の外出もちゃんと許可とってきてあげるから!」
「いいよ、そんな無理しなくったって。」
「無理してないよ・・・・」
「変な気ィ遣われるの一番嫌いなんだけど。」
俺はそこまで聞いてもう怒りの限界を超えてしまった。
「いい加減にしろよ!!!」
これには石川も驚いていたようだった。
でも俺はもう止まらなくなっていた。
続く
続きは今晩までに更新します。
あと少しなんですが、ちょっと仕事に向かいますもんで・・・・
作者さん、乙です
続きも楽しみにしています
>>62-63の登場人物の追加
( `.∀´) ・・・保田圭 この物語の舞台となる病院の看護婦主任。
>>101 続き
「今日のお前最低だよ!ワガママばっかりいいやがって!
何様のつもりなんだよ!病気してるからって甘えてんじゃねえよ!
いつからそんなんになったんよ!こっちがどんだけ気ィ遣ってると思ってんだよ。
当たり前?お前がこんな不機嫌だから気ィ遣ってんだよ!そんなんもわかんねえのかよ!」
まいはそんな俺の言葉を受けながらずっと俺を睨み続けていた。
目には涙がいっぱい溜まっているのがわかったが、それらは一滴もこぼれてこなかった。
車椅子に乗ったまいは俺を見上げる。
俺は自分がまいを見下ろした状態になっている事にこの時初めて気づいた。
さっきから石川がかがみ込む理由。
俺という人間の身長から送られる目線の威圧感がまいを妙な強気させていた事を知る。
続く
>>107 続き
『アタシ3月29日生まれでしょ?小さい頃ね、すっごくチビだったんだ。』
『そうなの?』
『成長がね、幼い頃はやっぱ追いつかないんだよ。4月生まれの子とかとは1年も違うし。
子供の1年って大きいからさ。』
『ふうん。』
『だからね、体が小さかった分、気持ちだけは誰にも負けないって思ってた。
結構強気だったんだよ。だから男の子とかにイジメられたって絶対泣かなかった。』
『だから今こんなに男みたいになっちゃったんだ!』
『ちょっと、それどういう意味だよ!?』
『ホラ、そういうの。普通そんな口調じゃないよ女の子は。』
『確かにね(笑)でもだから背が伸びたのはすっごく嬉しかったな・・・』
続く
おっと今まで誰が書いていたのかバレましたね・・・。
>>108 構わず続き(ワラ
秋の風が俺たちの頬をさらっていった。
その風はまいの長い髪をなびかせ、まいの顔を覆った。
髪の間から時折光る何かが俺の胸を少しだけ締め付けた。
沈黙が流れる。
俺は自分で吐いた言葉に大きな罪悪感を感じざるを得なかった。
すると石川がおもむろに、まいの手をとった。
「まいちゃん?」
そして石川はその手を離し、今度はまいの額に手をあてた。
「まいちゃん、帰ろう!」
そういうと石川は表情を切り替え俺にこう言った。
「まいちゃんのお兄さんに連絡して、すぐ迎えに来るようにって。」
俺は突然の石川の行動に呆気にとられていた。
「まいちゃん、いつから?」
まいは相変わらす黙ったまんまだった。
続く
>>111 続き
「電話して、早く!まいちゃん熱あるみたい。来たときからちょっと声が掠れてたみたいで
ずっと気になってたんだけど、今見たら額に汗が滲んでるから。」
今日、石川とまいが言葉を交わしたのは最初の一言くらいだった。
考えたら朝の電話の時点でその事に気づいていた俺は
もっと早く石川にそれを報告するべきだったと後悔した。
それに石川はこんな状況の中、ちゃんとまいの体調の変化を見取っていた。
俺も痛む足を無視して屈み込み、まいの顔をのぞき込むと
汗で前髪が額にくっついていて、顔色も悪く、浅くて早い吐息が苦しそうだった。
俺は慌ててまいの兄に連絡を取り、迎えに来てもらうように連絡した。
続く
>>112 続き
一方石川は自分のコートを脱ぎ、まいに掛けた。
するとまいはそれを振り払った。
「いいよ!」
「駄目!」
石川はそれを拾ってまたまいに掛けた。
「いいってば!」
「寒いでしょ?震えてるもん。」
俺はその言葉を聞いてまいを見ると、手元がわずかに震えていた。
「全然平気だってば!!」
まいはまたそれを振り払った。
「どうして!?」
この時ばかりは石川も強い口調だった。
「格好悪い・・・」
「格好なんか気にしてる場合じゃないだろ?」
「違うの。」
「何が違うんだよ?」
「今日だけは・・・今日だけは普通の元気な頃の自分でいたかったの!
服だって、何だって・・・それに、だからこそ今日は迷惑かけたくなかった・・・
情けないよ・・・自分が・・・アタシって梨華ちゃんみたいに・・・」
まいはそこまで言うと下唇を強く噛み、涙が零れないように少し上を向いた。
続く
>>113 続き
自分を律しようとするまいはもの悲しく、そして妙に美しかった。
不覚にも俺はそんなまいを遠く感じつつも、ずっと見ていた。
車椅子に乗ったまいは病院では気づかなかったがやはりとても小さく感じた。
そしてきっとそれはまい自身が痛いほど感じている。自分の存在の無力さ。
そんなまいを見て石川は何も言わずにもう一度コートを体に掛けた。
そして鞄の中から体温計を取りだし、熱を測ったり脈をとったりした。
まいの瞳からは涙が流れてきていたが、まいはそれを拭おうともしなかった。
石川も完全に仕事の顔になり、震えているまいの肩をさすってやり体を温めてやっていた。
俺はそんな二人を複雑な気持ちで眺めていた。
結局、まいは38度の熱を出していた。
続く
>>114 続き
しばらくするとまいのお兄さんの車が到着した。
まいのお兄さんは車を降りると、走ってこちらまで来て
「すいません、ありがとうございました。」
と一礼すると、まいを抱きかかえ車に戻った。
その頃になると、もうまいは少しグッタリしてきていて
俺たちの方は全く振り返る余裕もなくなっていた。
石川はそれを追って、車椅子を後部座席に乗せるとお兄さんにこう言った。
「申し訳ありませんが、私は彼も送っていかないと行けないので一緒に向かえません。
病院の方には私の方から連絡しておきますので。」
するとお兄さんは
「わかりました。ご迷惑おかけしてすみません。」とそれだけ言うと急いで車を発進させた。
続く
>>115 続き
俺たちはまいの乗った車を二人して見送った。
俺はなんだかまいと俺との間に大きな溝のようなものが出来ていたのを
今日やっと発見してしまった気がして、たまらない気持ちだった。
今日のまいの行動や言葉は強気だったが、明らかに弱くなった気持ちの裏返しだった。
いつの間にあんなに弱気になってしまったんだろう。
俺の知らない間に確実にまいの体も心も病に蝕まれているのを知らされたようだった。
俺はどんどんまいを理解できなくなっていた。
しばらく俺は黙って車の去っていた方を見ていた。
「大丈夫よ、きっと。体力なくなってるから疲れが出たのね。」
石川はそんな俺の方にそう話掛けてきた。
傍らに立っていた石川はもう普段の石川の顔に戻っていた。
続く
>>116 続き
「ごめん・・・」
「何もあなたが謝ることじゃない。まいちゃんを一番傷つけているのは私かも知れないから・・・」
「そんなことないよ!今日のは俺が・・・」
俺がそこまで言うと石川は頭を振って言葉を遮った。
「今回のは誰が悪いってわけじゃないと思う。
でも私の行動がまいちゃんを傷つけていることは確かよ。」
石川はそういった言葉とは裏腹にヤケにしっかりと前を見据えていた。
そして石川は俺にこう言った。
「これから時間ある?」
「・・・とりあえずは・・・。」
「だったらちょっと付き合って、どうせ今日はそんな足だし病院には顔出せないでしょ?
私もさすがに今日はまいちゃんとはもう顔合わせる気分じゃないから。」
「どこ行くの?」
俺の質問には答えず、石川は歩き出した。
ココまででって書きすぎ?
よかったらこの続きをどなたかお願いします。
あと感想もよかったらお願いしますね
切ない・・・
>>118 いや、どうも乙でした
まいと石川、そして俺・・・まいの極限状況の中での関係だから、この三人は生易しい関係じゃなくなって来てるよね
一つの心理小説の趣きを呈してきたね
作者乙
保全
続きかだー?
保全
ほ
作者様・修正転載職人様 いつもありがとうございますm(__)m
∧_∧
( ・ω・)じゃんじゃん食べてください
( つ O―{}@{}@{}-
と_)_)
―{}□{}□{}- ―{}□{}□{}- ―{}□{}□{}- ―{}□{}□{}- 豚
―@@@@@- ―@@@@@- ―@@@@@- ―@@@@@- つくね
―{}@{}@{}- ―{}@{}@{}- ―{}@{}@{}- ―{}@{}@{}- ねこ
―∬∬∬- ―∬∬∬- ―∬∬∬- ―∬∬∬- 鳥かわ
―зεз- ―зεз- ―зεз- ―зεз- 軟骨
―⊂ZZZ⊃ ―⊂ZZZ⊃ ―⊂ZZZ⊃ ―⊂ZZZ⊃ 焼き粗挽きソーセージ
―<コ:彡- ―<コ:彡- ―<コ:彡- ―<コ:彡- イカ丸焼き
ねこってなんだろう?
今日も続きよみたいよ
保全
続きマダー??
保全
ho
zen
保全
保全
ほ
ね
続きまだー?
>>117続き
石川はスタスタと先を歩いていったように思えたが
俺の松葉杖でもいつの間にか追いついた。
こういうところに石川の見えない優しさを感じる。
「ねえ、どこに行くんだよ?」
「ちょっとパァーっと気分変えない?」
「だからどこ行くの?」
石川はそれに答えずに歩き出した。
それから俺たちは最寄りの駅から電車に乗って繁華街に出た。
そして石川は近くのコンビニに入ると
缶ビールやら缶チューハイなどを買い込んだ。
>>138続き
「お酒飲むんだ・・・」
「あら?今時の高校生はお酒も飲んだことないの?」
「え?」
「健全なのね」
石川はそう言うとクスリと笑った。
「いや・・・」
「それくらいの事するでしょ?」
そういうと石川はまた歩き出し
ビル街の中をすり抜けてホテル街に入っていった。
そして、空きのあるホテルを一件見つけるとそのまま中に入ろうとした。
「オ、オイオイ!」
「何?」
「ここって・・・」
「あら、ホテルはさすがに初めて?」
「・・・・」
「まいちゃんと来たことあるでしょ?」
「・・・・どうするつもり?」
「決まってるでしょ?お金は持ってるから」
石川は半ば強引に中に入ろうとしていた。
だから俺は石川の腕を引っ張って引き止めた。
続く
>>139続き
「大丈夫よ。ちょっと飲むだけ。そんな変なことにはならない」
石川は俺にそう言って微笑みかけた。
どうも、その言葉に偽りはなさそうだった。
「外の飲み屋だとまだ疑われるし、何かあったら出て行っていいのよ」
結局俺は石川とホテルの部屋に入った。
部屋に入ると石川は早速缶ビールに手を出し
そして一本を俺に投げよこした。
「付き合ってよ、ちょっとくらい。
今日はあたしが時間あけてあげたんだからさ」
そう言って、石川は缶ビールを空けた。
だから俺も缶ビールを空けた。
すると石川は
「じゃ、とりあえず乾杯」
と言って、俺の缶に自分の缶をぶつけてきた。
そしてその缶ビールをぐぐっ飲みベットに腰をかけた。
続く
>>140続き
「あなたも座ったら?怪我してるんだし」
そう言われて俺もベットに座った。
でもなんとなく場所が場所だっただけに近くには座れず
少し距離を置いて座った。
俺が座ると、石川の視線がチラッとこっちに向けられたのがわかった。
実は石川も石川で少し意識しているようだった。
しばらくの沈黙。
二人は少しずつ慣れないアルコールを胃の中に流していった。
すると石川は突然俺にこんな事を聞いてきた。
「まいちゃんと、ホテル行ったことある?」
「突然だな」
「ま、こういう所に来れば聞くでしょ?」
「まぁ・・・」
「それに知りたいし」
石川は一度も俺の顔を見ずに話しを進めてきた。
続く
ちょっと一回席を外します。
スイマセン・・・1時間くらいしたら再開するつもりです。
>>142 俺、まい側の方の視点でちょっと書きたい事が有るんだけど・・・
その再開後で良いから書かせてもらって良いかな?
>>143 もちろんです。
俺、石川の方しか考えてないから・・・
っていうか先にそっち書いていいよ
>>144 いや、先に書いてもらっていいよ
つーか、むしろ書いて欲しい
>>145 ちょっとじゃ、今から更新していくけど
時間経過があった方が嬉しいところがあるんだよな・・・
>>141続き
俺は少し躊躇したが、こんなところで嘘をついても仕方ないと思い
「あるよ」
と短く答えた。
すると石川は少し俯いて、しばらくするとまた顔を上げた。
「私ね、初めてなんだ」
と言った。
その顔は別にさっきの俺をホテルに連れ込んだ時と同じ表情だったが
心なしか少し余裕がないのがわかった。
「一回だけ?」
「何が?」
「ホテル。まいちゃんと来たの」
「ホテルは・・・1回だけかな」
「じゃ、ホテルじゃない場所では何度もそういう事してるんだ」
石川はそう言ってクスリと笑った。
俺はなんかからかわれているんだと思い、こう言った。
「別に中学生の恋愛じゃないんだから、それくらい当然だろ?」
「中学生でも最近の中学生はいろいろ経験するんじゃない?」
そういう石川の顔は妙に大人びていた。
続く
>>147続き
俺は軽い気持ちでそう言ってみた。すると意外な答えが返ってきた。
「ないよ」
「え?」
「私、そういう事したことない」
「・・・・」
石川は立ち上がり、持っているビールの缶を飲み干した。
そしてコンビニの袋からもう、今度は缶チューハイを取り出した。
「オイ、ちょっとペース早くねえか?」
「大丈夫ってば」
そういう石川の顔はもうほんのり桜色になっていた。
「明日仕事あるんだろ?」
「あるよ〜」
石川は脳天気な声でそう言うと、
また新たに開けた缶チューハイを口にした。
続く
>>148続き
「驚いたでしょ?」
「え?」
「さっきまであんな事言っておいて、今どき処女かよ?って」
石川はそういうと何故か笑い出した。
そしてまた手にした缶チューハイをぐぐっと一気に飲んだ。
俺はそんな石川にどう接していいかわからなかった。
まい以外の女性とこんなところに来たのも初めてだったし
石川の意外な事実の告白も俺を戸惑わせるだけだった。
「あーあ、何言ってんだろうなー!!」
笑いながらそう言うと石川はくるくる回ってベットに倒れ込んだ。
すると石川の持っていた缶チューハイから中身が零れだした。
俺は慌ててそれを取り上げ、ベットに零れたチューハイを拭いた。
「もー、放っといたらいいってばそんなの!」
相変わらず石川は笑ったままだった、というか酔っていたみたいだった。
するとその手を掴んで俺をベットに引き込んだ。
続く
>>149続き
「ちょっと、何すんだよ」
石川は倒れ込んだ俺を見てケラケラ笑い出した。
「お前が引っ張ったんだろ?」
俺がちょっと怒った風に言うと、石川はますます声を高くして笑い出した。
「なんだよ・・・」
そしてその声はいつの間にか泣き声に変わっていった。
「石川さん・・・?」
俺が声を掛けても石川はしばらく泣き止まなかった。
見たことのない石川の姿だった。
俺は運動会の日のまいにしてやったように、石川の背中をさすってやった。
すると、石川はやっと顔をあげて涙を自分の腕で拭いた。
「ゴメン・・・」
「いや、いいんだけど・・・俺でよかったらいろいろ聞くし・・・」
「うん」
石川はそう言うと、体勢を起こしてベッドの上に座った。
続く
>>150続き
俺はホテルに設置された有料の冷蔵庫から烏龍茶を一つ取り出して石川に渡した。
「ありがとう」
「いや」
石川はその烏龍茶を一口飲むと、溜息を一つついた。
「私ね、どうしていいかわからなくなっちゃった。
っていうかね、もうまいちゃんに普通に接することができない・・
私が看護学生という視点というか、夢に向かっている自分として
まいちゃんやあなたに接することは、まいちゃんを傷つけちゃう。」
「どうして?」
「運動会の日、私があなたに対して良かれと思ってしたこと。
よくよく考えてみたんだけどね、まいちゃん不安だったろうなって」
「でも・・そりゃ、仕方ない。まいは今一人じゃ動けないんだし、石川さんだって・・・」
そこまで言うと石川は俺の言葉を止めた。
「違うの。そうじゃない。そんな事はわかってる。
でもあなたがもしまいちゃんだったらどう?」
「え?」
「頭でわかっていたら何でも割り切れる?」
石川の視線はまっすぐに俺に向けられた。
続く
>>151続き
「頭で理解することと、心で納得する事は別よ。
病院では誰もみんなどこか患っているから、刺激はないけれど
一歩外に出ると誰もみんな元気で何不自由なく生活してるの。
その中にポツンと取り残されて・・・それでもって恋のライバルが
テキパキあなたを助けてる様子をみたらどう??」
「・・・・・」
「たまらない気持ちだったと思うな・・・。
そう思うと、今日のまいちゃんのやり場のない気持ち、わかる気がする。
まいちゃん、私に負けたくなかったんだと思う。
自分が病気だって事、今日は感じたくなかったんだろうけどね・・・
やぱっり体は嘘つかないもん・・・気持ちも。」
俺はここまでまいの事を深く考えている石川に驚いた。
看護学生としての石川は出来る人すぎるくらい出来た人だった。
でも今の話はそれだけではない石川の人柄が出ていた。
続く
ヲイ!梨華ちゃんを乱れさせるな だんだんマジヲタとしてむかついてきた
梨華ちゃんは手もつないだ事の無い純粋な子なんだ
もう見てられない
>>152続き
「でもね、私は看護学生なの。まいちゃんの担当なの。」
石川はそう言うと、もう一度烏龍茶を口に含んだ。
俺は一看護学生、いや、看護婦としての石川と一人の女性としての石川
その狭間で揺れ動く石川の気持ちを初めて見せられた。
「それに・・・」
「それに?」
「私ね、こんなに人を好きになったの初めてなの。」
「それって・・・俺の事だよね・・・」
「もちろん。実はね、私今まで男の人と付き合ったことないんだ。」
「え?」
「好きになってもね、必ず相手に付き合ってる人がいたり
親友と同じ人を好きになっちゃったり・・・本当罪な人よね私って」
石川は笑ってそう言ったが、辛い気持ちは隠しきれず目にはまた涙が溜まっていた。
俺はそんな石川の心に打たれていた。こんな石川だからこそ・・・。
続く
>>154続き
「石川さん、優しいから・・・だからきっと・・・」
「そんなことないって、しょうがないだけよ!」
「しょうがないって、石川さんのその気持ちもまいと同じじゃないのか?
頭で理解する事と心で納得する事、違う?」
俺がそう言うと、石川は涙を一つ流しそれを誤魔化すかのように笑った。
そして石川は
「帰ろうか」
そう言って立ち上がった。
「え?」
石川はそそくさと用意をすると、財布からお金を取り出し
サイドテーブルの上に置いた。
そして・・・
「ありがとう」
とだけ言うと、俺の頬に軽くキスをしてそのまま部屋を出て行った。
続く
>>156続く
俺はしばらく石川の去っていった方を見ていたが
石川の想いが散らかっている部屋に一人でいる事はとても辛く
俺もそのまま帰ることにした。
石川にキスされた頬の辺りだけが妙に体温が上がっているのがわかった。
家についた俺は、いろんな想いが頭を渦巻いていて眠れなかった。
まいの事や石川の事、そして俺自身の気持ち・・・
だから、石川の残していった缶ビールを一気に飲み干した。
缶ビールはぬるくなっていて、ひどく苦くそして不味かった。
しばらくして、アルコールも効いてきたのか・・・俺はやっと眠りに就いた。
まだ10時を回っていなかった。
ここまでです。次の方お願いします。
この展開に不快に思われた方、申し訳ありません。
以後もうちょっと考えて書いていきます・・・
>>153 じゃあもう読むなよ・・・
男が主人公として絡んでるからしょうがないじゃん
俺も石ヲタだけど、別にいいと思うけど
作者さん乙
>>143 まいの方で書くって言ってた作者さん
続きマダー?
川=‘ゝ‘=||<保全
162 :
名無し募集中。。。:03/12/05 03:40
ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
梨華ちゃんがキスするわけ無い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
荒らしてんじゃねーよ
164 :
名無し募集中。。。:03/12/05 03:44
梨華ちゃんは超清純派なのでこんな淫乱女にしないでください
>>138から書きなおしてくれ
やり直し
石川さんは未成年ですよ
>>164 age荒らしの言う事なんて聞くわけないじゃん
というわけでこのまま続行↓
167 :
名無し募集中。。。:03/12/05 04:00
>>166 つーか、お前さ、余計なこと言うのやめてくれる?
上がってうぜーだろーが!
石川に幻想抱いてる奴って多いんだな・・・
ってゆーか、別にエロ場面でもないし俺はこの程度なら良いと思うんだが
こんなのもダメっていうんだったら小説に彩りが無くなっちゃう
ちなみに俺も石ヲタだから
作者ですが、やり直しと言われるとさすがに辛いので
この流れは切っていただいて結構です。
やっぱ、なんだかんだ一生懸命考えたので・・・
でもいろいろあるのでボツネタにして下さい。
不快に思われた方、申し訳ありません。
それでは
>>117以降、どなたか続きお願いします。
どんだけヲタがいると思ってんだよ
>>170もコンサ行ったことあるならわかるだろ?こういう考え方の奴もいるって。
性的表現をいやがる奴もいるって事
俺らには理解できんがな
このままでいいと思うが
>>172 それは勿論わかるよ
でも、小説なんだからさ・・・
これはどうしてもダメかな?
どうしてもダメっていうなら仕方無いけど
175 :
名無し募集中。。。:03/12/05 04:30
前にあった石川を性の対象にした小説。
あれは最初からそういう物だったから見ないことは出来た
だが、せっかく初といっていいほどの清純小説に物凄く期待していたんだ
発狂した事は悪いと思うが、梨華ちゃんがラブホなんてのは耐えられない。
見なきゃいいなんて言うが、最初から読んでいてここで中途半端に読まなくなる事も出来ない
性につながる事は避けてください 作者さん
コレ読んでるのってほとんど石ヲタなのか?
里田が俺とそういう関係になったって下りには全く誰も突っ込まないのな。
ま、里田のキャラ的な問題もあるんだろうが・・・・
まあね 確かに清純な感じできてたからね
石川がホテルに誘ったって設定が嫌なのかな?確かにハロプロからは想像できないものだけどね
不特定多数の見る掲示板 色んな人が見てると思う
中には異常な拒否反応示す人もいるんだろうねw円滑に進めるためにもちょっと変えてみては?
軽く手直しって形でいいんで、お願いできないですか?作者さん?
ここでずっとぶち切れられてもこまるからねw
>>176 考えてみれば、俺と里田がそういう事になった場面というのも実は無い
長い事付き合ってたんだからそういう事は当然有ったんだろうけど、この物語はまいの闘病がメインテーマだからね
だから、今回はかなり踏み込んだなというのが素直な感想
しかし、俺はこの場面は支持したいと思うが
じゃあ、せっかく期待してた小説のスレを荒らすような事はヤメロよ・・・
反論があるならちゃんと反論すればいいじゃないか
>>175 そんなに真面目に読んでたのかw
だったらスレのルールには従ってもらわないと・・・
さきほどの作者である私は実は女性です。俺とか言ってたクセしてw
しかも梨華ちゃんヲタなんです。
だから梨華ちゃんの下りを書いてるんですが・・・
そう思うと、まいちゃんヲタの男性にはもっと不快な思いさせてましたね。
ちゃんと書き直したい気持ちはあるのですが
どこからどの辺りまでがダメなのかその基準だけでも教えて下さい。
男性ヲタの気持ちはやはり全部理解できないようで申し訳ありません。
お酒はダメだとかホテルに行くこともダメなんだとか・・・
でも以前柴田さんの絡みでそういう部分があったので思い切っちゃいました。
書き直す努力はしてみますんで・・・
>>179 >>180 すまん。ちょっと感情的になりすぎた。
ここはみなさんに謝ります。
ごめんなさい。
感情を抑えられず暴走した事をお詫びします。
梨華ちゃんがホテルに誘うと言う下りがどうしても許せないんです。どうかお願いします。
それとキスも・・・すいません
頭を冷やしにコンビニ行ったら冷静になれました
>>181 マ、マジっすかーーーー!?
そっちの方が驚きなんだけどw
俺はこの場面は有りだと思うんだけどなあ・・・
確かにホテルっていうのは唐突な感じはしたけどさ
もし書き直すなら、俺と石川のこういうやりとりは残して欲しいな
物語的にも重要な場面だと思うよ、ここは
さっき、里田の場面を書くと言ってた作者ですが・・・
何か書きにくい雰囲気ですね・・・とりあえず、俺と石川の場面とは関係無い部分を書こうと思ってたから、書く事は可能なんだけど
もう少し様子を見るというか、今一度練り直してみます
まいたんヲタの俺が言うのもなんだが・・・
まいたんヲタは少ないから不満も出にくいのさ・・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
今までこういう場面って(柴田の場面を除いては)皆無に等しかったからね
もしかしたら作者さん達が意図的に避けてた面も有ったのかも
でも俺はいつかは有るとは思ってたんだけどね・・・
言われてみれば柴ちゃんくらいしかなかったな。
ここはさといしだから強烈な柴ヲタがいない だから今まで平気だったんだな
俺と石川がデートする場面とかは普通に有ったんだけどなあ・・・
やっぱりここまで来ちゃうとダメなのか
デートとラブホで誘惑とはちがうからなw
柴ちゃんはそういうキャラとして作ったので、うまく行ったのかも・・・と。
メインキャラの二人との対照的な性格に仕上げたつもりですし。
柴田はこの小説ではあくまでも脇役だったからね
メインキャラの一人である石川がこういう行動を取るのとでは読者に対する影響が違うなw
本当みなさん申し訳ありません。
今手直し入れてますので・・・・
それと、お酒飲んじゃうってのも無しなんでしょうか??
石川も石川でやっぱり精神的な荒れみたいなのを出したかったんで・・・
やっぱり頼るべきものがないと何かに当たるっていうか・・・
同人誌やってた経歴があるから、気持ちは良くわかるな・・・
やっぱり18禁モノとかはファンからの拒否反応が凄く強いし。
18禁にする時はわかり易く18禁にしないと本当にクレームが凄い。
非18禁モノだったから、凄く神経尖らせてたよ・・・
>>193 俺は有り
それぐらい精神的に追いつめられてるっていう場面を書きたいならね
ただ他の人は「石川が酒を飲むとはけしからん!」って言うかもしれない・・・
>>193 ここで詳しく書いちゃうとネタバレをする事になっちゃう訳ですが・・・
例えば家出(旅に出る)をしてみるとか、何か仕事上大きな失敗をしてしまうとか・・・
色々あるかと思います。
>>193 すいません、不満を述べたものですがお酒は私的にはおkです
性的なもので無ければ・・
結局ここで荒らしてたっていうか不満ブチまけてた石ヲタって一人だけ?
>>198 俺の見立てでは、ageながら不満言ってたのが一人、ちゃんとsageながら不満を言ってたのが一人
少なくとも二人は居たかと
>>199 俺もちょっと不快だったから(意見は書かなかったが)3人?
>>200 そういう解釈なら拒否反応の出た俺もいれて4人だなw
じゃ、少しずつ更新していきます。
後ほど感想お聞かせ下さい・・・
>>138続き
「お酒飲むんだ・・・」
「あら?今時の高校生はお酒も飲んだことないの?」
「え?」
「健全なのね」
石川はそう言うとクスリと笑った。
「いや・・・」
「それくらいの事するでしょ?」
そういうと石川はまた歩き出し
繁華街のとある大きなビルに入っていった。
そのビルはここらでは一番大きなビルで大きな本屋とCDショップが
すべての階を閉めている、誰でも知っている場所だった。
事実、俺もまいの病気の事を調べるのに
ここの医学専門書コーナーには何度も足を運んだ。
「本でも買うの?」
「いいから着いてきて。」
石川はそう言うと、このビルの関係者かのごとく裏口へ回り
そのまま関係者用のエレベーター乗り込んだ。
そして屋上へのボタンを押した。
続く
>>202続き
エレベーターは俺の心配をよそに上に上がりだした。
「いいの?ココ・・・」
「大丈夫、よくね主任の保田さんに連れてきてもらったの。
保田さんここでバイトしてたことがあるんだって。
何かあったら保田さんの名前出したら怒られないから。
それに最近も保田さんとココへ来たの。お酒の付き合いっていうの?」
「じゃ、よく飲むんだ。」
「ううん、実は初めて。」
「え?!」
俺のその言葉と同時にエレベーターは屋上に着き扉は開いた。
屋上にに出ると石川は早速缶ビールに手を出し
そして一本を俺に投げよこした。
続く
>>203続き
「付き合ってよ、ちょっとくらい。
今日はあたしが時間あけてあげたんだからさ」
そう言って、石川は缶ビールを空けた。
だから俺も缶ビールを空けた。
すると石川は
「じゃ、とりあえず乾杯」
と言って、俺の缶に自分の缶をぶつけてきた。
そしてその缶ビールをぐぐっ飲み石川は屋上の手すりを背に
そのまま腰を下ろした。
「あなたも座ったら?怪我してるんだし」
そう言われて俺も隣に座った。
しばらくの沈黙。
二人は少しずつ慣れないアルコールを胃の中に流していった。
続く
>>204続き
このビルの下はこの辺りでも一番大きな繁華街とあって、
人混みが広がっているはずだったが、ここはそんな場所から隔離された空間だった。
屋上は少し風が強く、秋ももう終わりに近づいた頃の夜で
ちょっとばかり寒さが凍みた。
石川はさっきまいにコートをかけてあげ
まいのお兄さんも結局それにまいをくるんでいってしまった為
ニットのセーター一枚で少し寒そうだった。
だから、俺は自分のジャケットを脱いで今度は石川に渡した。
「風邪ひくよ。」
「いいの、大丈夫。」
「ダメだよ。」
「いいんだってば、風邪引いて私もまいちゃんみたく心配してもらいたいな。」
「おい、何言ってるんだよ。」
俺はちょっとキツイ口調でそう言った。
すると石川は少し困った顔をして笑ってみせた。
続く
>>205続き
「冗談よ。」
「なんだ・・・」
「でも、あながち嘘でもないかな。」
そう言って、石川は俺のジャケットを受け取ると素直にそれを着た。
そして、
「ブカブカ!」
と言って俺に笑顔を向けた。
その笑顔はさきほどの仕事の顔の石川とは全く違った無邪気な子供のようだった。
でも、俺はさっきのその石川の台詞を聞いて出かける前にブーツを履いて同じ事を言った
まいの事を少し思い出した。
「あながち嘘でもないって?」
「怒ってるでしょ?まいちゃんの気持ちも知らずにって・・・」
「いや・・・」
「図星ね。」
「そんな・・・」
「でもね、本当そんなんじゃないの。
病気にならないとわからない事ってあるじゃない?
私、五体満足で健康体そのものだからさ!でも看護する人間としては
病気の人の気持ちってわからなくちゃいけない。」
「うん。」
俺が返事をすると石川はそれを確かめてから
持っている缶ビールをググッと飲んで一息ついた。
続く
>>206続き
俺はそんな石川が心配になり
「大丈夫かよ・・?」
と聞くと、石川はそれには答えず一息溜息を漏らすと話を続けた。
「まいちゃんの担当やっててもね、いっつも思うよ。
骨髄穿刺検査とかね、どんな大人の人でもあまりの痛さに泣いちゃうくらいなの。
でもね、まいちゃんの治療には欠かせないの。
まいちゃん、いっつも本当頑張ってるんだけどね。
こないだ珍しくダダこねたっていうか、行きたくないって。
でも私の仕事はその検査を受けさせてあげることだからさ。
だから『まいちゃん、頑張ろう!』って言ったのね、そしたら・・・」
「そしたら・・・?」
「『梨華ちゃんにはこの痛みはわかんないよ・・・』って言われちゃった。」
石川は俺の方を一瞥すると力のない笑顔を向けその缶ビールを飲み干した。
そしてコンビニの袋からもう、今度は缶チューハイを取り出した。
続く
>>207続き
「オイ、ちょっとペース早くねえか?」
「大丈夫ってば」
そういう石川の顔はもうほんのり桜色になっていた。
「明日仕事あるんだろ?」
「あるよ〜」
石川は脳天気な声でそう言うと、
また新たに開けた缶チューハイを口にした。
すると石川は突然屋上の手すりに寄っかかり・・・
「石川梨華!将来の夢はー、看護婦になる事でーーーす!!!!!」
と大声で外に叫んだ。
「ちょっと、石川さん?」
「いいの、保田さんとかも嫌な事あった時はここで大声出すの。」
そして石川はまたもやそれを続けた。
続く
>>208続き
「石川梨華っ!将来の夢はー看護婦になる事でーーす!!!!!
石川梨華っ!将来の夢は看護婦になる事です!!!!!
石川梨華!将来の夢は看護婦になる事です・・・・
石川・・梨・・華・・・」
最後は泣き声に変わっていた。
石川はそのまま手すりにしがみつき声を出して泣きじゃくった。
俺はそんな石川が不憫でならなかった・・・。
「私・・・もうどうしていいかわかんないよ・・・
まいちゃんの痛みなんかわからないよ・・・やっぱり・・・」
「石川さん・・・」
俺が声を掛けても石川はしばらく泣き止まなかった。
見たことのない石川の姿だった。
俺は運動会の日のまいにしてやったように、石川の背中をさすってやった。
すると、石川はやっと顔をあげて涙を自分の腕で拭いた。
「ゴメン・・・」
「いや、いいんだけど・・・俺でよかったらいろいろ聞くし・・・」
「うん」
俺は石川の買ってきたコンビニ袋から烏龍茶を一つ取り出して石川に渡した。
続く
>>209続き
>>151の一行目を飛ばして
>>152>>154と続きます。
それから
>>156の最後から5行はカットで以下に続きます。
石川は服についた砂埃と手ではたき
「ありがとう、あったかかったよ。」
と言い俺にジャケットを渡した。
そして、そのままエレベーターには乗らず
非常階段を降りていった。
俺はしばらく石川の去っていった方を見ていたが
石川の想いが散らかっているこの屋上に一人でいる事はとても辛く
俺もそのまま帰ることにした。
続く
>>210続き
石川の複雑な想い、俺はそれをちゃんと理解してあげられたのだろうか?
もっと聞きたいことはたくさんあったが、石川は俺が怪我している為
追ってこないようにわざと非常階段を使ったように思えた。
でも、正直な気持ち、今の状態のまいよりかは俺自身わかる気がしていた。
何故ならそれは、俺自身も石川と同じ五体満足の健康体の人間だからだ。
そう思うと、誰がまいの本当の気持ちを理解してやれるのだろう・・・。
今の俺にはそんなまいの気持ちを理解してやれる自信はなくなっていた。
家についた俺は、いろんな想いが頭を渦巻いていてなかなか眠れなかった。
だから、石川の残していった缶ビールを一気に飲み干した。
缶ビールはぬるくなっていて、ひどく苦くそして不味かった。
しばらくして、アルコールも効いてきたのか・・・俺はやっと眠りに就いた。
まだ10時を回っていなかった。
ここまです。感想お聞かせ下さい。かなり不安です・・・
もしかしたら、この作品に関してはこれが最後の投稿になるかもですw
いい感じに訂正できてると思う。これなら不満も出ないと思うし。
しかし、短時間で即訂正できるなんてさすがですね
作者さん、ワガママに応えてくれてありがとう、乙。
文句言ってら香具師らはコレでいいのかちゃんと意思表明汁
不満だけブチまけて、何にも言わないのは反則でつ
ちなみに作者さん、これが最後なんて言わないで下さい
ただでさえ作者減ってるし、女性ならではの視点は他にないし・・・
やっぱ、石川の今回の台詞なんて女性が書くっていうのはいいもんです
よかったら石ヲタなんでしょうが、里田の台詞も書いてやって下さい・・・
>>212-214 ありがとうございました。
今後ですが、ちょっと今回の件トラウマになったので
もうちょっと娘。小説とか読んでリハビリしてきます。
あと、まいちゃんの下りも書いたことありますよ。
たとえば「花火大会を見に行きたい」とよっすぃ〜にお願いする下りは
私の作品です。
この主人公の俺っていうの、全部例えば吉澤に変えれば
今後の展開もある程度は無問題になるな・・・
で、吉澤を誰か他の出演者にすればいい
ほ
>>216 それは今更無理・・・作品の根幹に関わる事だから
もしそれをしたら、今までの作品自体を否定する事になる
保全
保全
今日は続きあるのかな??
保全
吉井怜のドラマ見た
コレと被って泣けてきた・・・
☆ノハヽヽ
川*‘ゝ‘*|| 〜8ノハヽ8〜
( ⊃c■~ (^▽^ )
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄( ◎⊂) ̄ ̄|
| (_(_)工 |
期待ほ
期待ぜ
期待ん
保全
ほ
続きマ━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━ダ????
ほ
ぜ
ん
保全
この前の騒動があったから他の作者もビビッてしまって
書きにくくなってしまっているヨカーン・・・
小説マ━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━ダ????
申し訳ありません、今日は必ず更新しますので、もう少しお待ち下さい
保全
ほ
ぜ
ん
お待たせしております
現在下書き中ですが、もうすぐこちらに投稿しますので、もうちょっと待ってて下さい
お待たせしました。では行きます
>>211続き
いつも通りの学校も、何だかとても空虚な空間に感じられる。
石川と争ったオーディションの翌日、藤本は何だかとても疲れていた。
あまりに色々な事が起き過ぎたせいだろうか・・・一晩寝ても、なかなか疲労が抜けなかった。
友人達に「大丈夫?何か疲れてない?」と声をかけられる事も再三で、その度に藤本は「ううん、何でもないよ」と答えるのだが、「何でもない」わけがないという事は本人が一番よくわかっていた。
昨日の出来事は・・・本当に現実だったのだろうか?
学校に居ても、日がな一日、その事ばかりを考えていた。
「オーディションをで舞台に上がって、歌を歌って・・・美貴、負けたんだよね」
藤本は誰に言うともなしに言った。
思い返せば、その光景がフラッシュバックされる。
昨日の夜から何度も脳裏をよぎった光景である。
「結果は気にしない。ただ受け入れるだけ」
そうは思っていたが、昨日の結果には少なからずショックを受けていたのかもしれない。
続く
>>250訂正
下から6行目の藤本の台詞「オーディションをで・・・」→「オーディションで」
>>250続き
正直言って、自信は有った。
だから、勝てると思っていたのだが、彼は石川を選んだ・・・。
「やっぱ、あの子には敵わないかな」
藤本は、苦い笑いを浮かべていた。
戦い終わって、悔いは無かったが、やはり負けた事を引きずってしまっている自分が居た。
そして、何となく一日を過ごした藤本は、帰り道を一人歩く途中、何となくまいの顔が頭に浮かんでいた。
気が付くと、足は自然とまいの家の方向へと向いて行った。
「まいちゃん、どうしてるかな・・・」
こうして、藤本は昨日から約一日振りにまいの家を訪ねた。
まいの家に着き、インターホンを押すが、返事は無い。
「あれ?誰も居ないの・・・?」
何度かインターホンを押すが、やはり返事は無かった。
「何処行っちゃったんだろう?」
藤本に、まいの行き先の見当がつく筈もなく、暫くその場に立ち尽くしていた。
続く
「・・・・・・・」
藤本はしばらく考えていた。
そして、結局はまいの行き先を知ってそうな人に携帯で聞いてみる事にした。
昨日の今日でもあり、癪だったが、まいの行き先を知ってそうな人を他に思い浮かばなかった。
「しょうがない、彼の携帯に電話するか・・・」
藤本は、渋々と彼の携帯にかけてみる事にした。
「・・・・・・」
しかし、何度かけても、彼が電話に出る気配は無い。
おかしい、何処に行ったんだろう・・・。
「まい、大丈夫か?しっかりしろ」
兄の車で病院へと運ばれる途中、まいはずっとグッタリしていた。
まいの兄は、そんなまいの様子を気に掛け、しきりに声をかけて励まし続けていた。
「もうすぐ着くからな・・・心配すんな」
「お兄ちゃん、ゴメンね・・・また迷惑かけちゃって」
「何言ってんだよ!こっちは迷惑なんかかけられた覚えないよ」
「ゴメン・・・」
まいは、弱々しい声で兄への謝罪の言葉をまるでうわごとのように繰り返した。
まいの兄は、そんな妹の様子が可哀相で、そちらの方を見る事が出来なかった。
続く
>>252続き
「今日はどうしたんだ?アイツとまた何か有ったのか!?」
まいの兄は、妹がまた彼との事で何か辛い思いをしたのではないかと思い、すぐにでもそう問いただしたい気分だったが、まいの今の様子を見るとそんな事を聞けるわけもなかった。
とにかく、一刻も早く病院へと急がなければ・・・。
まいの兄は、更に車を加速させ、病院へと続く道を急いだ。
「もしかしたら・・・」
藤本は、はたと思い当たった。
「もしかして、また病院に戻ったのかも」
藤本は、まいがこの日再び病院へと戻る事は知らなかったのだが、他にまいが行きそうな場所を思いつかなかった。
とにかく、行ってみよう・・・居なかったら、その時はその時だ。
藤本は、まいの家を後にすると、病院の方へと向かった。
とにかく、まいの顔を見たいという気持ちが藤本を動かしていた。
続く
>>253続き
車が病院に着くと、正面玄関には保田主任を始めとする看護婦達数人が待っていた。
「すみません、まいの奴、外出先で具合が悪くなってしまったみたいで・・・」
まいの兄は、不安げな表情でまいの容態を説明しようとした。
「大丈夫です、お話は伺っております。とにかく中へ・・・」
保田は、全て心得ているという風な表情で、テキパキと指示を出していた。
まいの兄は、そんな様子を見て少しホッとしていた。
「まい、もう大丈夫だぞ・・・」
看護婦達により車から運び出されたまいは、もう目も開けていられないといった感じでグッタリしていたが、兄の言葉を聞くとうっすらと目を開け、少し微笑みを浮かべ肯いてみせた。
自分が大変な事になっても、兄貴には心配かけたくない・・・まいは、こんな時にでも自分らしさを貫いているのだろうか。
そんな妹の様子を見ていると、まいの兄はますますやるせない気持ちになった。
「馬鹿、無理すんじゃねーよ・・・」
まいの兄は、まいに聞こえないようにそっと小声で言ったが、それが聞こえたのかどうか、まいはニッと笑ったように見えた。
続く
>>254続き
ストレッチャーに乗せられたまいは、そのまま集中治療室へと運ばれて行った。
「これから、念の為に色々と検査などもしますので・・・しばらくこちらでお待ち下さい」
集中治療室の前まで来ると、保田に止められ、まいの兄はしばらくそこで待つ事になった。
「まい、頑張れよ・・・」
まいの兄はそう言ったが、もうこれ以上は変に頑張って欲しくないという気持ちも湧いてきていた。
あいつは昔からそうだった・・・決して弱音を吐かず、他人には弱い部分を見せたがらない。
そういう頑固な一面も有ったが、兄としては、それが虚勢を張っているだけだというのもよくわかっていた。
本当は、繊細で人一倍寂しがり屋・・・ましてや、こんな大変な病気をしているではないか。
まいの兄は、昨日のやりとりを思い出した。
ああいう風に、もっと甘えてもいいのに。
照れくさくてそんな事は言えないが、これ以上ボロボロになって行く妹を見ているのは忍びなかったのである。
続く
>>255続き
しばらくすると、集中治療室から中澤先生が出て来た。
「先生、まいは・・・」
まいの兄は慌てて中澤先生の側へ駆け寄った。
「大丈夫です。幸い、大事には至りませんでしたので」
中澤先生にそう言われると、まいの兄はホッとしたように息をついた。
「ただ、明日以降の事まではまだ何とも・・・とにかく今夜は安静にしててもらいます」
「わかりました。有り難うございました」
まいの兄はそう言って中澤先生に深々とお辞儀をした。
「とりあえず、両親に連絡して来ます」
そう言うと、まいの兄はその場を後にし、玄関の方へと向かった。
続く
とりあえず、ここでちょっと中断。
30分後ぐらいに再開します。
では再開。
>>256続き
病院の玄関の所で携帯を取り出し、まいの兄は母親と連絡を取った。
そして、今までの経緯を簡単に説明した。
「じゃあ、そういうわけだから・・・後で着替えとか取りに戻るよ」
まいの兄は電話を切ると、少しため息をついた。
母は何とか平静は保っていたようだが、その声からはやはり少し動揺しているように聞こえた。
せっかく家に帰って来たのに・・・僅か一日で、再び病院へと戻ってしまった。
まいの兄は、母を落胆させないように務めて気軽な口調で話したが、やはり母としては心配だっただろう。
「それにしても、今日は一体何が有ったんだ・・・」
少し落ち着くと、今日一日の妹の行動が改めて気になりだした。
続く
>>257訂正
6行目
その声からはやはり少し動揺しているように聞こえた。→その声からはやはり少し動揺している様子が伝わって来た。
>>256続き
「アイツがついていながら、どうしてこんな事に・・・」
そうは考えたくなかったが、やはりどうしても彼の事が頭に浮かんだ。
思い起こせば、まいが彼と付き合い始めた頃・・・まいは、いきなり兄に彼の事を告げた。
「アタシね、彼氏が出来たんだ!」
まいは、見た事も無いような嬉しそうな表情でそう兄に言って来た。
まいに彼氏が出来たのはそれが初めてではなく、中学時代にも居たようだが、その時はすぐに別れたらしい。
そして、高校2年になった頃、まいは今の彼と付き合い始めたのだった。
「ふーん、良かったな」
兄は、そんな風にしか答えず、まいはつまらなそうにちょっと口をとがらせていた。
「何よそれ?他に何か言いようが有るでしょ?」
「別に・・・良かったじゃないか。ま、上手くやれよ」
そう言って、兄はそそくさとその場を立ち去ってしまった。
続く
>>258続き
妹に恋人が出来るというのは、やっぱりちょっと複雑な気持ちだった。
まだまだガキだと思っていたまいが、急に大人びて見えた。
「あいつに彼氏ねえ」
一体どんな奴なんだろう・・・兄として当然それは気になったが、まいの様子はとても幸せそうだった。
その事は兄を安心させもしたし、それと同時に何となく寂しい気持ちも湧いて来るのだった。
それからしばらく経ったある日、まいが彼を家に連れてくると言い出した。
「お兄ちゃん、彼って本当に優しくていい人なんだ・・・」
実に楽しそうに彼氏の自慢話を聞かせる妹の顔を、まいの兄は何か珍しい物を見るような目で眺めていた。
小さい頃はともかく、大きくなってからは兄妹同志でじっくり話す機会もそれほど無くなってはいたが、彼の話の時だけは別だった。
まいは、彼の事をよく兄に話して聞かせていた。
「ね、今度連れてくるから、よろしくね」
「わかったよ」
まいの兄は肩をすくめてそう答えた。
続く
>>259続き
数日後、まいがその彼を伴ってやって来た。
「初めまして・・・」
彼は、緊張気味にそう挨拶して来た。
「こちらこそ、どうも初めまして・・・」
兄はなるべく普通に答えたつもりだったが、実を言うと彼以上に緊張していたのかもしれない。
まいはそんな兄の様子を見てニヤニヤしていたので、兄はまいの方をちょっと睨んだ。
その時、母にも会って色々と話していたが、母も彼の事が気に入ったようで、暫くすると楽しそうに彼とまいとの会話に入っていた。
まいの兄は、そんな様子を黙って見ていたが、まいの顔がこの上なく幸せそうに輝いていたのを今でもよく覚えている。
続く
>>260続き
それから何度かまいの彼には会った事が有ったが、兄から見ても彼はとても良い奴に思えた。
何よりも、まいは彼の事を心から信頼しているようだったし、兄としてもそんな二人の様子を少し複雑な視線で見ながらも、彼になら安心して妹を任せられるという気持ちになっていた。
しかし、そんな平凡だが幸せな日々を送っていた妹を突然の病が襲った。
忌まわしき病は、まいから全てを奪って行った。
まいは、兄がたまに見舞いに訪れても、まいは気丈な態度を崩さず、決して弱い部分は見せたがらなかった。
しかし、病気が進行し、彼とも別れ、そしてよりにもよってその恋敵が自分を世話してくれている看護学生・・・。
これで精神状態がどうかならない方が不思議であろう。
まいの兄も、心を痛めていた。
骨髄が不適合だった事も更に追い打ちをかけた。
「まいの為に何もしてやれないなんて・・・」
彼が味わったのと同じかそれ以上の苦しみを、まいの肉親である兄も受けていたのである。
続く
>>261続き
今日の事も、詳しく知っているわけではないが、まいの事だから、大体の事は予想がついた。
大方、また意地を張ってしまい、自分を追い込んだのだろう・・・。
「素直じゃないな、全く」
まいの兄は、妹のそんな態度を思い浮かべるとまた一つため息をついたが、やはりどうしても頭から離れなかったのは
「アイツがついていながら、妹をこんな目に遭わせやがって」
という気持ちだった。
無論、彼の事を責めるのはお門違いもいいところだというのは充分わかってはいたが、それでも彼がついていながらこんな事になってしまったという感情は拭い去れなかった。
「アイツ、まいの事をしっかり見とけよな」
まいの兄は、虚空に向かって思わず毒づいていた。
続く
>>262続き
まいの兄が、さこれからどうしようかと思案している所で、ふと玄関口を見ると、一人の女子高生が入って来るのが見えた。
「ん?あれは確か・・・」
見覚えのある顔だ。そう思っていると
「あ!まいちゃんのお兄さん・・・こんにちは!」
と、向こうから声をかけてきた。
「あー、君は確かまいの部活の友達の・・・」
「藤本美貴です。お兄さん、お久しぶりですね」
その女子高生はそう挨拶するとニッコリと笑った。
「あー、思い出した、藤本さんか」
まいの兄もそこでようやく彼女の名前を思い出していた。
「昨日も家までまいを送って来てくれたみたいで・・・ゴメンね、挨拶出来なくて」
「いえ、いいんです・・・ところで、もしかしたらまいちゃんが居るかなと思って来てみたんですけど・・・やっぱりまいちゃんはここに?」
続く
>>263訂正
1行目×さこれからどうしようかと→さてこれからどうしようかと
>>263続き
藤本にそう聞かれたので、まいの兄は今日一日の事情を簡単に説明した。
「そうだったんですか、大変だったんですね・・・」
話を聞くと、藤本は表情を曇らせていた。
「でも、わざわざ来てくれて有り難う・・・そうだ、俺はこれから一旦まいの着替えとかを取りに戻るけど・・・君はどうする?」
まいの兄にそう聞かれ、藤本はちょっと考えていたが
「あの・・・まいちゃんには会えないんですか?」
と聞いてきた。
「うん、今のところはちょっとまだわからないんだけど・・・とりあえず待っててくれって事だから」
まいの兄がそう言うと、藤本はまた少しの間考えていたが
「わかりました。ちょっとここで待たせてもらいます」
と言った。
「そう、悪いね・・・じゃあ、またすぐ戻るから」
まいの兄はそう言うと、病院を後にした。
続く
>>264続き
残された藤本は、待合室の椅子へと腰かけた。
時は夕刻過ぎであり、外来の患者などで結構込み合っていた。
「やっぱり、ここに居たのか・・・」
藤本は、自分の勘の正しさを改めて知ったが、それよりも自分が思っていたよりももっと大変な事になっていた事で気持ちは沈んでいた。
彼と石川とまいの三人で出かけていた・・・彼と石川といえば、まさに昨日のオーディションの当事者ではないか!
そんな二人がついていながら、まいがまた倒れてしまうとは・・・。
藤本は、自分がオーディションに敗れたという悔しさとはまた違う感情を抱いて来ていた。
誰にぶつけて良いかわからないようなイライラとした気持ちが高まって来ているのを感じていた。
続く
>>265続き
「そうか、それで・・・」
突然、藤本が突然独り言を言ったので、周りに居た何人かの患者が藤本の方を振り返った。
藤本は、先程彼の携帯にいくらかけても繋がらなかった事を思い出していた。
まいが大変な事になっていた為、電話に出る事は出来なかったのだろうと予測されたが、勘の良い藤本はもっと別な理由を考えていた。
「今も、あの子と一緒に居るに違いないわ」
藤本は、根拠は無いがそう確信していた。
十中八九、そうに違いない・・・藤本は、試しに再び彼の携帯へとかけてみた。
「・・・・・・・」
やっぱり繋がらない。
「ホラ、やっぱりね」
藤本は、ますますその確信を深めていた。
「ふーん、お二人一緒ってわけね・・・」
続く
>>266続き
「まあ、いいけどね」
誰に言うともなしに呟くと、藤本はまた苦い笑いを浮かべていた。
彼も怪我してるんだし、あの子が付いててやらないとね・・・。
頭ではそうわかっていたが、何となく釈然としない気持ちも残った。
『内科の中澤先生・・・』
するとそこへ、そういう院内アナウンスが流れるのが聞こえた。
「中澤先生って・・・まいちゃんの主治医の先生だ」
藤本がそう思っていると、アナウンスに呼び出された当の中澤先生が待合室の前を横切った。
続く
>>267続き
「中澤先生!」
藤本は殆ど無意識にそう言っていた。
中澤先生はビックリして藤本の方を振り向いた。
「アンタは・・・まいちゃんの友達やん。どうしたの?」
中澤先生は、藤本を見て目を丸くしていた。
「いえ、実は・・・もしかしたらまいちゃんが居るのかなと思って・・・」
藤本は、手短に事情を説明した。
「そうだったんや・・・まいちゃん、大変やったけど、今はもう大丈夫やで」
中澤先生がそう言うと、藤本は安心したように息をついた。
「あの・・・まいちゃんに会えますか?」
藤本にそう聞かれ、中澤先生は少し黙っていたが
「うん・・・大丈夫やと思う。今はまだ眠ってるけど・・・そうだ、後で呼びに行くから待っててくれんか?」
と言った。
「ハイ、よろしくお願いします」
藤本はそう言うと、頭を下げた。
どうやら、まいとは面会出来るらしい・・・藤本は少し安心した。
続く
>>268続き
それから暫くの間、藤本はまた待合い室の椅子に座って待っていた。
その間、改めて昨日からの出来事を振り返っていた。
あの時、彼はどうして石川を選んだんだろう?
もしかしたら、始めから勝ち目は無かったのかもしれない・・・そんな事を堂々巡りにボンヤリと考えていた。
「まいちゃんというものが有りながら・・・」
彼が石川と浮気していた事を知った時、藤本はまい以上に憤慨した。
何となく、その頃の気持ちを思いだしていた。
勿論、まいの為に尽くしてくれる石川を責める事はしたくなかったが、それにしても・・・という忸怩たる思いがした。
そんな事をあれこれ考えていると、突然目の前に中澤先生が立っているのが見えた。
「今から、まいちゃんの病室に検診に行くけど・・・一緒に行くか?」
中澤先生はそう聞いてきた。
続く
>>269続き
「ハ、ハイ、行きます!」
藤本は慌ててそう答えた。
「そうか・・・ほな、行こか」
中澤先生に促され、藤本はその後に付き従ってまいが眠る病室へと向かった。
病室に入ると、まいは眠っているようだった。
「まいちゃん、まだ寝てるみたいやな・・・」
中澤先生は、まいを起こさないように小声で言った。
藤本も、足音を立てないようにそっとまいの眠るベッドへと近付いて行った。
すると、まいはゆっくりと目を開け、ベッドの側まで来た中澤先生と藤本の方へと視線を向けた。
「あ、ゴメン、起こしちゃったか・・・」
中澤先生はそう謝ったが
「ううん・・・起きてたから・・・」
と、まいは答えた。
その声は掠れており、痛々しい感じがして、藤本は思わず胸が詰まった。
まいは、視線の先に藤本の姿を認めると
「美貴ちゃん・・・来てくれたの・・・有り難う」
と、声を絞り出すようにして言った。
「まいちゃん・・・」
藤本はそれ以上は何も言えず、ただ黙ってまいの手を握った。
続く
>>270続き
「今日はね・・・まいがワガママ言ったから・・・そのせいで、彼にも梨華ちゃんにも迷惑っけちゃって・・・」
「まいちゃん、もういいよ、何も言わないで!」
掠れた声で今日一日の自分の行動を懺悔しようとするまいを、藤本は途中で遮った。
「まいちゃん・・・大変だったんだよね、ゴメンね、側に居てあげられなくて」
藤本がそう言うと、涙が頬を伝わり落ちて行った。
まいは、ビックリしたようにその様子を見ていた。
「美貴ちゃん・・・どうしたの?泣かないでよ・・・何で美貴ちゃんが泣くのよ」
まいは、そう言って逆に藤本を励ました。
声が掠れていたので、上手く笑えなかったが、それでもちゃんと笑って藤本を励ました。
藤本は、そんなまいがいじらしくて、余計に涙が溢れて来た。
続く
>>271訂正
×迷惑っけちゃって・・・→迷惑かけちゃって・・・
>>271続き
「・・・何か、そう言えば今日の美貴ちゃんちょっと元気無いみたい。どうしたの?」
まいにこう言われ、藤本はちょっとビックリしていた。
まい自身がこんな状態になっているのに、他人のちょっとした様子の変化にも気付くものだろうか?
「ううん、別に・・・何で?」
藤本は涙を拭いてそう言ったが、まいは
「何となく・・・何か、いつもとちょっと違うなって思って。別に美貴ちゃんが泣いたとかじゃなくてさ・・・どことなく、元気無いように見えた」
と言った。
「・・・まあ、元気無いなんて、まいが言うのもおかしいんだけどね」
まいが少し冗談めかして言ったので、藤本も少し笑った。
藤本は、こんな時にでも他人への気配りを忘れないまいに感心していた。
それと同時に、そんなに気を遣わなくてもいいよ・・・と声をかけてやりたい気持ちだった。
続く
>>272続き
「そんな事ないよ・・・まいちゃん、それよりも自分の体を大事にしなきゃ!」
藤本は、まいを元気付けるように、わざと強い調子でそう言った。
「うん、わかった・・・今日は来てくれて本当に有り難うね・・・」
「もういいって。とにかく、お大事にね」
本当はもっと色々と話したい事も有ったのだが、今日はこれ以上話すともっと辛くなりそうなので、藤本はそこで話を打ち切った。
「・・・もうええんか?」
それまで、二人のやりとりを傍らで聞いていた中澤先生はそう声をかけると
「それじゃあまいちゃん、休む前にまた検温とかせなアカンから・・・ちょっとキツイけど頑張ってな」
と、まいに言った。
「それじゃあ、また来ます・・・まいちゃん、またね」
藤本は最後にまいに対して手を振り、病室を後にした。
続く
>>273続き
藤本は、帰り道の途中、ずっと考えていた。
「わからない・・・」
藤本はそう呟いた。
まいの事、彼の事、そして石川の事・・・藤本にはわからない事だらけだった。
まいの病気が、全ての事態を複雑にしている・・・今の藤本にわかるのはそれだけだった。
藤本が帰った後、まいは検診を行う中澤先生と少し話していた。
「先生・・・今日はね、まいは自分が嫌になっちゃった・・・。アタシって本当に子供みたいで。みんなを困らせてばっかり」
「まいちゃん・・・そんな気に病む事は無いと思うで。まいちゃんは病気なんやし・・・そんな事は元気になってから考えたらええやん」
「そうだよね・・・」
まいはそれだけ言うと目を閉じて、やがて眠りに落ちて行った。
中澤先生はそれを見届けると、ふうっと大きなため息をついた。
まいが冒されている病気は、再生不良性貧血だけではない。
何か、心の病にも冒されているのだろうか・・・中澤先生はそんな事を考えていた。
そして、それを治す術を中澤先生は知らなかった。
続く
とりあえずここまでです。
長々と失礼しました。
前回の作者さんは彼(俺)と石川の事が中心に書かれていたので、私はまい側中心に書いてみました。
よろしければご意見・ご感想などをよろしくお願い致します。
>>275 乙です・・・
まいの自分への一人称が変わっているのが悲しい現実ですね・・・
切なすぎでつ
ほ
ぜ
>>275 続くとなっているのと、その後にとりあえずってなっているの見ると
この後の続きも考えているって思ってていいかな?
とりあえず期待で・・・
ほ
>>275 乙です。
当方関西人なのですが、中澤の台詞で関西弁の少しおかしなところ
語尾だけでも訂正してもよろしいでしょうか?
川=‘ゝ‘=||まい保全
>>276>>279>>281 どうもです
今回は、まいの精神が病んでいく過程というか、そういう所を中心に書いてみました
それと、続きは一応は考えてありますが、別の方が書いてもいいですよ
関西弁に関しては・・・私は関東人なので「この関西弁はおかしいよな」って書きながら思ってました(苦笑
やっぱ、似非関西弁になっちゃいますからね・・・
そういうわけで、修正して頂ければ有り難いです
ちょこっとだけだけど休みなので続き書いてみました
>>274 続き
翌日の朝、石川は昨日一昨日の疲れが取れず少し体がだるかった。
それでも出勤してすぐに石川は中澤先生と保田主任に呼び出された。
「悪いな・・・朝から」
「いえ。というか昨日は本当に申し訳ありませんでした」
「お前が謝ることはない。私の判断も少し早すぎたのかもしれない」
石川は昨日の一連の話は多少なりとも自分に責任があると感じていた。
「それでなんやけどな・・・」
中澤は少し話しにくそうに口を開いた。
「保田主任と少し話し合った結果・・・まいちゃんの担当、一回外れるか?」
石川は流石にコレには驚いた。何しろ話しも唐突すぎた。
続く
>>285 続き
「いや、別になコレは石川の仕事があかんから言うてるわけやないねんで。
石川の事を考えての話や。もちろんまいちゃんもやけど」
石川は俯いてしばらく考えていた。
「私としてもな、石川の仕事とプライベートは守ってやりたいんよ。
こないだの事件以来、お前はちゃんとその一線を引いて仕事こなしてた。
けどな、まいちゃんがな・・・」
そこまで言うと中澤先生はその後の言葉を続けるのに躊躇していた。
すると今まで黙っていた保田がこう切り出した。
「里田さん、ちょっと精神科にかかってもらう可能性があるの」
「え?!」
石川の驚きとは裏腹に中澤先生も保田主任もいたって冷静だった。
続く
>>286 続き
「集中治療室で処置されている間はそうでもなかったように見えてんけど・・・
どうもちょっとな・・・様子がおかしいねん・・・」
「様子がおかしいってどうおかしいんですか??」
「子供に返るっていうんかな・・・幼児化に近いな」
中澤は昨夜のまいの様子を思い出して少し顔をしかめた。
「それに・・・検査数値も急激に落ちてきてる。
この原因もどうも昨日の事とは特に関係がないみたいやねん。
発熱の原因も感染症ではないみたいや。だからこれからは注意が必要になってくる」
石川は自分の顔から血の気が引いていくのがわかった。
「そんなに病状は進行してるんですか?」
石川はそんな自分を立て直し、あくまで看護する立場の人間として質問した。
続く
>>287 続き
「以前にも何度かあったけど・・・今朝も実は狭心症の発作起こしてん。
しかも今回のはちょっとひどかったな・・・赤血球の数が圧倒的に足りない・・・」
「!!!」
「よっぽど苦しかったみたい・・・泣きながらナースコール押してきたのよ・・・」
「まいちゃん今までこんな事なかったからな・・・」
3人の空間を沈黙という重い空気が支配した。
保田が石川に語りかけた。
「今すぐ返事をしなくていいの。だから考えておいてちょうだい。
今、里田さんは集中治療室の病室にいるから。後で様子見てきてもいいし。
でも、もし石川としても辛いようなら後藤に変わってもらう。
後藤には話しはしてあるから」
中澤先生も保田主任も石川の様子をしばらく見ていた。
石川は重く疲れ切った体で椅子からフラリと立ち上がると
「少し考えさせて下さい」
とペコリと頭を下げてそのままゆっくりと部屋を出て行った。
ここまでです。お粗末な文章でした
続きお願いします。
一応
>>275さんの続き考えてるを考慮して
どのようにでも転ぶように書いたつもりですたい
乙保全
ほ
ぜ
>>284 川*‘ゝ‘*||<スレ立て自由って誰かが言ってた♪>(^▽^ )
(=^▽^)<保全するのら〜♪
ほ
ぜ
ぜ
ぜ
今日はもう更新ないのー??
300
301 :
名無し募集中。。。:03/12/08 05:04
ほ
ぜ
ん
ほ
ぜ
ん
ほ
ぼ
保全
(=^▽^)<保全するのら〜♪
続きまだー?
ほ
ぜ
________
{ ,---ノノノ□ヽ\
\ ヽヽ 川メ‘ゝ‘*||<保全じてやるぜ!!・・・・・・・・コンコン
Y ̄ ̄⌒⌒⌒⌒ ̄ ̄ ~\
ヽ ※※※※※※※ \
\ ※※※※※※※ \
\ ※※※※※※※ \
\__________ノ
悪里、保全乙
ほ
ぜ
今日は続きありませんか?
ハロキの里田、髪を片方の横に束ねてたんだけど
あの髪型って入院してる女の人のイメージがあって
この小説の「まい」を思い出したよ・・・・
この小説の通り、里田=病弱っていうイメージが定着して来たな・・・
保全
保全
里田が病弱って言われるようになったのも最近だよね?
それも牧場仕事しなくなったから急に体力落ちたんだろうか・・・
ほ
ぜ
ん
大変お待たせしておりますが、現在続編を下書き中です。
明日(っていうか今日の夜)ぐらいにはこちらに投稿出来ると思いますので、もう少しお待ち下さい。
ほ
今夜じゃないのね・・・オヤスミ
ほ
333
保全
里石以外のヲタ以外でこれ読んでる人いる?
里石ヲタ以外はあんまり知らなそうだけどね
保全
ほ
☆ノハヽヽ @ノハ@
川=‘ゝ‘=|| ( ^▽^)
| ̄∪ ̄∪ ̄∪ ̄∪ ̄|
| さといし♪ |
|_________|
保全
続きマダー?
お待たせしました。では行きます。
>>288続き
そこには最も見たくないものが有った。
ベッドに横たわり、既に冷たくなっているまいの体が・・・。
全身が凍り付くような感覚に襲われる。
「まい!!」
そこに近寄ろうとしても、なかなか辿り着けない。
手を伸ばそうとしても、決して触る事が出来ない・・・俺の手をスルリとすり抜け、どんどん遠ざかって行く。
「まい!!」
気が付くと、汗をビッショリかいていた。
「・・・・・・」
まだボーッとした頭を懸命に働かせ、今見たものが夢だったと悟るのに少し時間がかかった。
その時、俺は猛烈な頭痛に襲われた。
「いててて・・・」
どうやらこれは、二日酔いというものだろうか。
前夜飲んだ酒がまだ残っているらしい。
俺は、最悪の目覚めに思わず顔をしかめた。
続く
>>343続き
それにしても、何とも嫌な夢を見てしまった。
それは、俺が最も恐れている事で・・・でも、俺はそれ以上その事を考えるのを止めた。
「俺がこんな事でどうするんだよ・・・」
俺はそう呟くと、ノロノロと布団から這い出した。
「学校休もうかな・・・」
一瞬、その考えが頭をよぎったが、「二日酔いで休みます」とも言えまい。
それに、これ以上学校を休むのも気が引けると思い、俺はどうにか自分を奮い立たせ、学校に行く準備を始めた。
「怪我は大丈夫か?」
「何か顔色悪いぞ」
何とか辿り着いた学校では、俺を心配する級友達に次々に声をかけられた。
相変わらず俺は松葉杖であり、怪我の跡も色濃く残っていた。
「大丈夫、大丈夫だから・・・」
俺はそう答えていたが、実際の所は怪我よりも頭がボーッとしているのが辛かった。
情けない事に、生まれて初めて二日酔いの薬という物を飲んだが、そのお陰でどうにか頭痛は引いて来ていたものの、相変わらず気分は最悪であった。
続く
>>344続き
2時間目が終わった頃、とうとう俺は耐え切れなくなり、教室を抜け出した。
そして、そのまま保健室へと直行した。
「あら、どうしたの?」
保健室へ入って来た俺を見てそう声をかけて来たのは、保健の先生の飯田である。
「いや、ちょっと気持ち悪くて・・・」
俺はそれだけ言うと、保健室のベッドにひっくり返ってしまった。
飯田は、そんな俺の様子を呆れたように見ていた。
「・・・どうした少年、どこが具合が悪いの?」
「え?いやちょっと・・・朝起きた時から頭が痛くて・・・気持ち悪いっつーか」
「ふーん・・・」
飯田はしばらく腕組みをしていたが、やがてニヤリと笑った。
「あんた、お酒飲んだでしょ?」
飯田にズバリと聞かれ、俺はギョッとした。
「いや、まあその・・・」
俺はモゴモゴと言い訳しようとしたが、
「これ、典型的な二日酔いの症状だわね。全く、未成年が何やってんだか」
飯田は全てお見通しといった表情で、俺がダウンした原因を言い当ててしまった。
続く
>>345続き
「まあ、何が有ったのか知らないけど、お酒もほどほどにね」
飯田はそう言うと、ケラケラと笑い出した。
飲酒についてはあまり咎め立てしようとはせず、むしろ面白がっているように見える。
飯田は少し変わり者という評判だったが、やはりその通りだ。俺も思わず苦笑いした。
付け加えておくと、飯田は背が高くてスタイルもかなり良い。
おまけに、ストレートのロングヘアーのかなりの美人である。
「まあ、楽になるまで少し横になって行きな」
飯田はそう言うと、俺に布団をかけてくれた。
「どうも有り難うございます・・・」
こうして俺は、保健室で少し休んで行く事にした。
しばらく横になっていると、体調も少しずつ楽になって行くように感じられた。
ちょっと一息つくと、今度は色々な事が頭をよぎった。
まいの病気の事、そして昨夜の石川の事、そうだ、あれ以来藤本にも会っていない・・・。
そのようなとりとめのない事を、俺はボンヤリと考えていた。
続く
>>346続き
どれぐらい時間が経ったのか、ふと気が付くと、飯田は机に向かって何か書き物をしていた。
「先生・・・」
俺は、そんな飯田に向かって声をかけた。
「なーに?」
飯田はこちらを振り向かずにそう答えた。
俺はひと呼吸置き、こう訊ねた。
「先生は・・・死ぬのって怖いですか?」
飯田は、ちょっとビックリしたように俺の方に顔を向けた。
「・・・どうして?」
「いや、何となくです」
俺はそう言ってチラッと飯田の顔を伺ってみたが、飯田は不思議そうな表情を浮かべていた。
「そうねー・・・あんまり考えた事無いんだけど・・・でも、人間はみんないつかは死んじゃうんだもんね」
飯田は訥々と語り出したが、それは自分に言い聞かせている風でもあった。
「でも・・・私は死ぬのが怖いって考えるよりも、生きてる内にどれだけ頑張れたかっていうのが大事だと思うな。死ぬ時に後悔だけはしたくないから」
飯田は、淡々とそのような話をした。
続く
>>347続き
「そうか・・・死ぬ時に後悔だけはしないように、か・・・」
俺も、飯田の言葉に妙に納得してしまっていた。
「そっか・・・君の彼女、入院してるんだっけか?名前は・・・里田まいちゃんかな」
「ええ、そうです。でも、よくご存知ですね」
「そりゃあ、アンタ、この学校の生徒の事はバッチリ把握してるからね」
飯田はそう言って得意気に胸を反らせた。
「先生、まいの事知ってたんですか?」
「ん?うーん、何度か保健室に来た事が有ったからね。あの子、たまに貧血とか起こしてたから」
そう言われれば、まいは確かに体があまり丈夫ではなかったので、保健室に来る機会も有っただろう。
俺が保健室に来たのは高校生活でこれが初めてだったが・・・。
「あの子・・・今大変なんでしょ?」
飯田は、少し真剣な顔をして俺に聞いてきた。
「ええ、まあ・・・それに俺、まいの事を何もわかってやれてなかったってみたいです」
俺は思わず本音を漏らした。
俺は昨日の出来事が頭から離れないでいた。
続く
>>348続き
「何もわかってやれないとか・・・悩む事なんか無いと思うな。ただ側に居て欲しいんだよ、きっと。それが一番の望みじゃないの?」
飯田にそう言われるまでもなく、きっとそうだろうとはわかっていた。
でも、今の俺がまいの側に居てあげる事が、まいにとって良い事なのかどうか自信が持てないでいた。
「ホント、病気を治す魔法でも有れば、どんなに良いかねえ・・・」
飯田はポツリとそんな事を呟いた。
そう、それはまいが病気になって以来、俺も何度となく思っていた事だ。
そうすれば、まいもこんなに苦しまずに済むのに・・・俺はそう思う度に胸が痛んだ。
「先生、まいは・・・」
この病気に勝てるのか・・・そう聞こうとしたがやめておいた。
何となく、飯田にその答えを聞くのが怖かったのかもしれない。
「・・・いや、何でもないです」
飯田は、そんな俺を見て黙って微笑んでいた。
続く
>>349続き
「ところで君、もうそろそろ具合は良くなったんでないかい?」
飯田にそう言われて気が付いたが、少し休んだお陰でさっきよりも大分体が楽になったような気がした。
「ま、何か有ったらいつでもおいで。私で良かったら相談に乗るよ」
「先生、色々とどうも有り難うございました」
俺はそう言って頭を下げると、保健室を後にした。
「またどうぞ〜」
保健室を出て行こうとする俺の背中に向かって、飯田がノンビリとした声をかけて来たので、俺は思わず苦笑いした。
ふと時計を見ると、もうすぐ昼近い。
「もう飯の時間だな・・・」
俺は、そのままブラブラと学食へと向かった。
まいが大変な事になっていると知ったのは、それからすぐ後の事だった。
続く
>>350続き
学食へ着くと、そろそろ人で混み出す時間に差し掛かろうとしていた。
俺は、自分が座る席を何となく探していたが・・・すると、同じく席を探している藤本の姿が目に入った。
「あ・・・」
藤本の姿を見たのは、一昨日の夜のあのオーディションの時以来だった。
俺は、声をかけるタイミングを伺って何となく藤本の方を見ていた。
やがて、キョロキョロと辺りを見回していた藤本とバッチリ目が合った。
「・・・!!」
藤本は俺に気が付くとハッとした顔を見せたが、プイッと横を向くとそのままスタスタと何処かへ立ち去ってしまったではないか。
「何だアイツ・・・」
続く
>>351続き
やはり、藤本はあのオーディションの事を・・・。
俺は藤本の様子が気に掛かったが、不自由な足ではすぐに追いかけて行くわけにもいかず、諦めてそのまま席を探してそこに腰を下ろした。
席に着いて一息ついたが、周りの人間が松葉杖を持つ俺の事を好奇の目でジロジロと見ているような気がして、少し嫌な気持ちがした。
「何だよ、見せ物じゃねーぞ」
俺はそう思ったが、なるべく気にしないようにしていた。
やがて、どうにか昼飯を食べ終わり、俺は学食を出たが・・・。
果たしてそこには、先程何処かへ行ってしまった筈の藤本が壁を背にして佇んでいるのが見えた。
「藤本さん・・・?」
俺が思わず声をかけると、藤本は俺の方にツカツカと歩み寄り
「話が有る」
と言ってきた。
「話って?」
「いいから。ちょっと来てよ」
続く
>>352続き
藤本は、そのまま人影の無い場所(具体的には、校舎の端の階段の下辺り)に俺を誘導した。
「話って何だよ?」
俺は、改めて藤本にそう聞いてみた。
「昨日ね、まいちゃんに会いに行ったの。そしたら、ちょっと気になる事が有って」
「気になる事?」
「うん・・・」
藤本は、そこで少し逡巡していたが、やがて思い余ったようにまた話し始めた。
「何て言うのかな・・・まいちゃん、ちょっと様子がおかしかったんだ」
「様子がおかしいって・・・どんな風に?」
藤本の表情はやけに深刻そうだ。
それは俺をどんどん不安な気持ちに駆り立てた。
「昨日のまいちゃんね・・・何か子供みたいだった」
「子供みたい!?」
俺は、どういう事か瞬時には理解出来ず、頭が混乱していた。
「・・・つまり、どういう事なの?」
「うん・・・」
藤本は、ためらいがちながらも、重い口を開いて、昨日のまいの様子を少しずつ俺に話し始めた。
続く
>>353続き
藤本が語るまいの様子・・・それは俺の想像を絶していた。
まさか、まいがそんな状態になっているなんて・・・。
俺は自分の顔が青ざめて行くのがわかるような気がした。
「まいちゃん、かなり精神的にヤバイんじゃないかな。それは確かだと思う」
藤本は低い声でそう言った。
「俺のせいだ・・・」
俺は思わず呻くように言った。
藤本はビックリしたように俺の顔を見ると
「そんな・・・貴方だけのせいじゃないと思うけど・・・とにかく、この事を知らせようと思って」
と言った。
藤本がそう言ってくれるのは有り難かったが、俺がまいを追いつめたからこんな事に・・・そういう自責の念は消えなかった。
「ねえ、まいちゃんに会いに行ってあげなよ。今のまいちゃんには貴方が必要なんだってば」
「うん・・・。とにかく、教えてくれて有り難うな」
俺は藤本に礼を言うと、その場を後にした。
藤本は、そんな俺を黙って見送っていたようだが、振り返る気にもなれなかった。
続く
>>354続き
とにかく、こうしてはいられない。
俺は、居ても立ってもいられなくなり、そのまま病院へと向かう事にした。
早い話、学校はそのまま早退してしまったわけである。
一刻も早く、まいの元へと駆け付けなければならない・・・俺は取る物もとりあえず、学校を抜け出すと病院へと直行した。
石川は呆然としていた。
まいが、追い詰められている・・・中澤先生と保田主任にショッキングな宣告をされた時、一気に崖っぷちに追い込まれたような気持ちになった。
「どうしよう・・・」
石川は途方に暮れてしまっていた。
私が、私の力が足りなかったばかりに・・・私が、未熟だったばかりに。
そういうネガティブな考えばかりが浮かんで来ていた。
「私のせいだわ・・・」
思わず視界が涙で滲んだが、それは悔し涙なのか、まいに対する憐憫の涙なのか、それとも悲しみの涙なのか・・・石川自身にも判然としなかった。
続く
>>355続き
俺は途中でタクシーを拾い、病院へと向かっていた。
車中で何度か石川の携帯へとかけてみたが、全く繋がらない。
一体、何が有ったのだろうか・・・俺はますます不安になっていた。
今になって、俺はまいと喧嘩した事を後悔していた。
「俺がキツイ事を言ったからな・・・」
昨日の事を思うと、胸が締め付けられるような思いだった。
タクシーが病院へと到着すると、俺は大急ぎで玄関へと駆け込んだ。
すると、ちょうどそこに保田主任の姿が目に入った。
保田さんは、俺の事を見ると目を丸くしていた。
「あら?今日は学校じゃないの?」
「いや、ちょっと・・・そんな事より、まいに会わせて下さい!」
俺は勢い込んで保田さんにそう頼んだが、保田さんはそれを聞くと少し厳しい顔つきになった。
「残念だけど、今日はダメです」
保田さんにそう言われ、今度は俺がビックリしてしまった。
「何でですか?」
「里田さん、今は面会謝絶です」
保田さんはキッパリと言った。
続く
>>356続き
「・・・どういう事ですか?何でまいに会わせてくれないんですか!?」
俺は保田さんに詰め寄った。
すると、俺の肩をポンと叩く人が居る。
ハッと振り向くと、そこには中澤先生の顔が有った。
「中澤先生・・・」
「まあ、ちょっと落ち着いて。君にも言っておきたいんやけどな・・・」
中澤先生はそう言うと、まいが精神科にかかるかもしれない事、そして病状が悪化している事について淡々と説明し始めた。
「それじゃあ、まいの病気は・・・」
俺は、震える声で中澤先生にそう聞いた。
「まあ、今すぐ命に関わるって事は無いからそれは大丈夫。でも、予断を許さない状況と言えるやろな。それに、まいちゃんの精神状態はもっと深刻なんや・・・」
中澤先生は眉間に皺を寄せ、そう言った。
続く
>>357続き
「それと、もう一つ言っておきたい事が有るんやけどな。石川には、まいの担当を一回外れてもらう事になるかもしれん」
俺は中澤先生のその言葉を聞いてビックリしてしまった。
「そんな・・・!ちょっと待って下さい!まいがこうなったのは石川さんのせいじゃなくて俺のせいなんです!だから・・・」
俺は必死に食い下がった。
「まあまあ、これはな、石川の責任とかそういう事やないねん。とにかく、一度リフレッシュしてもらいたいと・・・そういう意味やから」
中澤先生はそう言って俺を宥めたが、俺は責任を感じていた。
「とにかく、今日はわざわざ来てくれて悪いんやけど、まいちゃんに会わす事は出来ん。ゴメンな」
中澤先生は申し訳なさそうな顔をしてそう言った。
「先生、それで石川さんは・・・」
続く
>>358訂正
1行目の中澤の台詞
×まいの担当を→○まいちゃんの担当を
>>358続き
中澤先生と保田主任はチラッと顔を見合わせた。
「石川は来てるけど・・・」
中澤先生がそう言いかけて言葉を切った。
そして、中澤先生の視線の先には・・・俺は慌てて振り向くと、そこには目を真っ赤にした石川が居た。
どうやら泣いていたらしい・・・石川は泣き腫らした様子だった。
俺が視線を向けると、石川は俺達に向かって静かに頭を下げた。
続く
>>359続き
俺は、何とも言えずに石川の事を見ていたが・・・。
「それじゃあ、もう行かなアカンから・・・石川、後はヨロシクな」
中澤先生はそう言い残すと、保田さんを引き連れてその場から立ち去った。
「・・・・・・」
俺と石川は、しばらく何も言わずに向き合ってた。
「あの・・・」
「ねえ・・・」
しばらく沈黙が続いた後、ようやく口を開こうとしたが、俺と石川の言葉は重なった。
俺と石川は顔を見合わせてちょっと笑った。
「ここじゃ立ち話も何だから・・・ちょっと来て」
石川はそう言うと、俺を病院の外へ連れ出した。
続く
>>360続き
病院の外へ出ると、石川はそのまま俺を病院の中庭へと導き、そこに有るベンチに腰を下ろした。
「何だか、大変な事になっちゃったな・・・」
「そうね・・・」
何を話して良いものかわからず、俺も石川も言葉少なであった。
「まいがこんな事になっちゃったのは俺のせいだよ・・・俺が馬鹿だったんだ」
「そんな・・・私だって、ずっと側に居ながらこんな事になっちゃったんだもん。責任は痛感してるわ」
二人とも、口をついて出るのは自分を責める言葉ばかりだった。
沈痛な面持ちを浮かべて話す俺達の事を、側を通りかかる人は不思議そうな顔をして眺めていた。
「一体、どうすればいいのか・・・私にもわからないわ」
石川はそう言ってため息をついた。
「ねえ、まいとはずっと面会出来ないの?」
俺は、ふと気になった事を石川に聞いてみた。
続く
>>361続き
「え?いや・・・今は大変な状態だけど、容態が落ち着けば面会は可能だと思うよ」
「そうか・・・」
「でも、体の調子は持ち直しても、まいちゃんの心の病気の方が・・・」
石川は相変わらず冴えない表情でそう言ったが、俺は今さっき思いついた事を石川に言ってみた。
「まいさ・・・今は幼児化傾向っていうか・・・そういう状態なんだろ。こういう時は、昔からまいをよく知ってる人が会いに行ってあげた方が良くないかな?」
「うーん、そうかなあ・・・よくわからないけど」
石川は曖昧な返事をしたが、俺はなおも続けた。
「家族もそうだけど、ここはやっぱり昔からのまいの友達が会いに行ってあげるべきだと思うんだよ。まいも、きっと喜ぶよ」
「という事は・・・」
「吉澤ひとみだよ。あいつ、最近まいに会ってないみたいだし・・・吉澤さんにまいに会いに来てもらおうよ」
続く
>>362続き
「そうか、吉澤さんならまいちゃんの幼馴染みだし・・・良いかもね」
石川は心持ち表情を明るくすると、そう言った。
事実、以前は頻繁にまいの病室を訪れていた吉澤も、ここ最近はあまり顔を見せていなかった。
聞くところによると、受験の事やら何やらで色々と忙しいようだが・・・それでも、まいの事を人一倍気に掛けている吉澤である。
ここは、まいの為に一肌脱いで貰おうという事になった。
「よし、それじゃあ早速連絡してみるよ」
続く
とりあえず、今回はここまでです。
最近、吉澤があんまり出てきてなかったので、そろそろご登場願おうと思いました。
というわけで、続きはどなたかよろしくお願いします。
乙でした
ほ
今、続き書いています。
長々書いちゃったんだけど、今晩にでも転載してよろしいでしょうか?
落ちちゃうよ
ほ
ぜ
ん
保全
んだば参ります・・・
>>363続き
俺がそう言うと、石川は力なく微笑んだ。
「いつも・・・ありがとう・・・。」
俺はそんな石川を見て少し胸が締め付けられた。
石川は悪くない。
寧ろ献身的にまいの看護をしている。
なのにどうしてこんな事になってしまったんだろう。
まいも石川も弱り切った精神になってしまった。
今の俺にまいを助けてやる事はできないけれど
まいに携わる石川を助けてやる事こそ俺の役目だと思った。
続く
>>374続き
「石川さん。石川さんも辛いだろうけど、きっとまいも石川さんの事を必要としている。」
「・・・でも・・・」
石川は言葉を続けようとしたが俺はそれをあえて遮った。
「俺、わかるんだ。俺だって、まいとダテに付き合ってきたわけじゃない。
まい、ああ見えて人見知りが激しいんだ。そんなまいが石川さんにはすぐ打ち解けた。
まいは今、子供に戻ってしまったかもしれない。けど、そんな純粋な心に戻ったのなら
石川さんの気持ちは逆にストレートに通じるんじゃないかな・・・。」
俺は、明るく石川にそう語りかけた。
すると石川は何度か自分を励ますように頷き、俺をまっすぐと見つめた。
「なんか頑張れそうな気がする!」
「うん!ま、俺も専門じゃないくせにいろいろ提案しちゃったけど。
でもまいの事を知ってる俺たちだからこそできる事だってあると思うんだ!」
石川の瞳は心なしか輝きを取り戻したようにだった。
続く
>>375続き
「私、もう一度中澤先生にお願いしてくる!」
「そうだよ!それでこそ石川さんじゃんかよ!」
俺たちは長年連れ添ってきた仲間のように堅く握手を交わした。
「じゃ、俺は吉澤に連絡しておくよ。」
「わかった。あたしもまいちゃんの面会謝絶が解け次第連絡する!」
こうして石川は病院に戻り、俺も抜け出した学校へと戻った。
石川はその足で中澤先生の元へ向かった。
「もう少しだけ様子を見て下さい!お願いします!」
石川は今の自分のその強い意志を伝え、頭を下げた。
中澤先生はそんな石川を見て、少し考えていたようだったが
まいのカルテを取り出し、目を通すと突然立ち上がり
ある点滴を一本取り出しそれを石川に見せた。
続く
>>376続き
「それって・・・」
「前に一度投与したことがある。覚えてるか?」
その点滴はまいが無菌室にいた頃にしばらく投与され続けていたものだった。
この点滴は副作用が非常に強く、投与されている間は強い吐き気に襲われる。
当時のまいもこの副作用には、泣き言を漏らしていた。
「これから10日間、これで様子を見る。今回は結果がいい方向に出るとは限らへん。
それにまいちゃんは今あんな状態や。それでも支えていけるか?」
一瞬、石川は戸惑ったが、さっきの彼の言葉を思い出しそれを振り切った。
「はい。」
「結果が出なかった場合のメンタルケアも含めてやで。」
今回はその確率が高かった。今のまいには以前のような体力は無かった。
それでも石川は真っ向からまいと向かってみようと思った。
「もちろんです。」
中澤先生もその石川の強い意志を感じ取った。
「じゃあ、早速やけど今日の夕方から投与を開始する。
経過報告はこまめに。それからバイタルも一時間おきに記録しておくこと。」
「はい!」
石川はそう言うと一礼して部屋を出た。
続く
>>377続き
夕方になり、石川は昨日以来始めてまいの元に向かった。
病室に入るとまいは横になったまま目を開けて天井をボーッと見つめていた。
石川はそんなまいの様子に少し躊躇ったが、思い切って声を掛けた。
「まいちゃん・・・」
まいはゆっくりと顔を石川の方に向けると少し警戒した表情を見せた。
石川はそーっとまいのベッドに近づくと
病室にある椅子に腰掛け視線を低くして話しかけた。
「まいちゃん・・・今日からまたあの点滴するけど・・・頑張れる?」
そして・・・昨日の事はあえて触れないようにした。
するとまいは小さな掠れた声を絞り出しこう言った。
「・・・・イヤ・・・・。」
まいの瞳にはもう涙が溜まっていた。
まいは石川から視線をそらし、また天井を向くと
子供のようにしくしくと泣き始めた。
続く
>>378続き
「まいちゃん・・・」
石川はそんなまいを見て、胸がキューッと詰まる思いだった。
やはりまいの幼児化は本当だった。
「もう・・・イヤだ・・・お家帰りたい・・・」
まいは自分の腕で涙を拭き、幼い少女のようだった。
石川はその腕をとり、手を握ってやると自分のハンカチでまいの涙を拭った。
「お家帰れるように・・・ね?・・・辛いけど頑張ろ。」
石川としてもこれからの事を考えると辛かった。
でも自分は看護婦なのだ。まいの命を助けるには残酷だけど必要な事なのだ。
そう言い聞かして、まいに優しく微笑んだ。
まいはそんな石川の様子をしばらく見つめると、
やっと聞き取れるような声で話始めた。
「梨華ちゃん・・・どんな時でも傍にいてくれる??」
「うん。」
「まいが辛い時、呼んだら梨華ちゃん来る?」
「うん。」
「本当に?」
「・・・うん。」
そこまで話すと石川の目からも自然に涙が零れてきた。
石川はまいにそんな顔を見られまいと俯き、まいの手を優しく包んだ。
今の石川にはそれが最大の愛情表現だった。
続く
>>379続き
「わかった・・・。頑張る・・・だから梨華ちゃん・・・泣かないで・・・」
まいは石川の顔に手を差し伸べ、そっと涙を拭いた。
石川はそんなまいの行動が余計に辛く、ますます涙が止まらなくなった。
けれど、もっと辛いのはまいに違いなかった。
それを支えるのには私しかいない。石川は気持ちを切り替えると
まいの手をギュッと握り、そっとベッドの中に戻した。
するとその様子をずっと見ていた中澤先生が点滴を持って現れた。
「先生・・・」
「大丈夫や。」
中澤先生はそんな不安そうな石川と目を合わせると点滴をスタンドに掛けた。
「まいちゃん、頑張って早くよくなってまた遊びに行こうな。」
中澤先生は笑顔を作ってそう言い、まいの腕をとるとそこに消毒をした。
まいの腕は信じられないほどの細さで、石川はそんなまいの腕を見ると
胸がチクチクと痛んだ。
「大丈夫だよ。注射はチクッてするだけだもんね。」
まいはそんな石川を見て無邪気にこう言った。
そして中澤はゆっくりと針をまいの腕に刺し、点滴を落としていった。
続く
>>380続き
「痛くなかったよ。やっぱ先生はは上手だね。」
「そうか?」
「うん!みんな他の看護婦さんがやるときはもっと痛いんだ。」
「ありがとう、まいちゃん。」
まいはその言葉を聞くと、目を閉じそのまま眠ってしまった。
今日のはほんの序章にすぎず、本番はこれから。
副作用が出てくるのは、早くて明日の朝からだった。
「石川、これからやで。」
「はい。」
「まいちゃんを支えられるのはお前しかおらんねんからな。」
「わかってます。」
石川は気丈にそう返事すると、中澤が去った後もしばらくまいの傍にいた。
そしてこの日からしばらく、石川は病院に泊まり込むようになる。
続く
>>381続き
翌朝、石川が覗いた時にはまいはまだ眠っており
特に変わった様子はなく、午前中はまいも眠ったり起きたりと
まどろんだ状態で過ごしていた。
ところが昼を過ぎると副作用の症状が顕著に表れてきた。
「まいちゃん、気分悪い?」
「・・・お腹痛いよ・・・気持ち悪い・・・」
まいの顔色は悪く、額にも汗が少し滲んでいた。
そして夜になるといよいよ症状も本格的になり
まいは口を聞く事もできず、苦しそうな呼吸の音だけが病室を支配していた。
「まいちゃん・・・頑張って・・・」
石川はそんなまいの背中を一晩中さすってやった。
吐き気はあるけれど、今のまいは点滴での栄養剤投与のみだったので
吐くものもなく、止まらない嘔吐感にずっと苦しんでいた。
続く
>>382続く
翌日も、その翌日も同じだった。
3日目にも入ると、それに寝不足も加わり明らかにストレスの様子も見え始め
ナースコールで石川を呼ぶ事も増え、ベットの上で泣いたり、
もう辞めたいと嘆いたりするようになった。
もちろん体力も弱ってきて、この日はとうとう夜に発熱が見られた。
石川はその間、時間の隙を狙っては彼に連絡をとった。
「いつまで続くのかな・・・」
「一週間って言われたんだろ?もう少しじゃないか。」
「でも・・・もう見てるのも辛いよ。」
「せめて俺が傍についててやりたいけど・・・」
「ううん、いいの。これが私の仕事なんだから。」
「辛くなったらいつでも電話してきたらいいよ。」
「ありがとう・・・」
「吉澤も、面会できるようになり次第すぐ行くって。」
「うん。」
「だから、頑張って!」
その言葉だけを支えに石川は病棟に戻り、
まいの病室へと足を運んだ。
続く
>>383続き
そして4日目。
中澤先生は石川は呼び出した。
「精神科の先生の診断結果やねんけど・・・」
石川がゴクリと唾を飲み込んだ。
「多分、一時的なものだろうって。辛い事が重なりすぎて
それから自分が逃げる為にそうなってるだけだって。
だから、特別病的なものでもないらしいから・・・」
「そうですか。」
「それと、経過報告読んだけど・・・人に会いたがってるって?」
まいが面会謝絶になってから、今日までまいは両親の面会さえ許さていなかった。
「どうして誰もお見舞いに来てくれないの?って。」
「これが吉とでるか凶と出るかはわからんけど
面会者には白衣とマスク着けて貰って、面会謝絶を一回解除しようか。」
石川はそれを聞いて、ここへ来て始めて笑顔を見せた。
「本当ですか?」
「その代わり、親しい人だけや。それと・・・彼にはまだ控えてもらおう。
今はまだ刺激が強すぎるかもしれんから・・・。」
石川はそれを聞いて吉澤の事を思い出した。
続く
>>384続き
「わかりました!」
石川は早速病院の外に出ると、彼に電話しその旨を伝えた。
彼もそれを聞くと吉澤に連絡をとり、明日学校が終わり次第
病院に来てくれるようにお願いした。
翌日、この日は点滴を始めてもう5日目になっていた。
午前中はまいの両親がやってきたが、まいも朦朧としており
ほとんど会話はできず、母親はそんなまいを見て涙を流すばかりで
たった30分の面会時間もあっという間に過ぎてしまった。
そして昼過ぎ、彼と吉澤がやってきた。
「俺、ここで待ってるから。」
彼はそう言うと、吉澤に病室に入るように促した。
病室に入るとまいはこっちを向いて横たわっていた。
「まいちゃん!」
吉澤はあえて明るく話しかけた。
まいはそんな吉澤を見て、目を丸くすると自分で起きあがろうとした。
石川はそれを見て、慌ててベッドの背もたれを少し起こしてやった。
続く
>>385続き
「よっしー・・・」
「頑張ってるって聞いてさ、ちょっと顔見せに来た!」
そうやって普段通りに吉澤は話しかけていたが
手元を見ると、拳が堅く握られて、その手は少し震えていた。
「まい、よっしーと早く遊びたい・・・」
まいは掠れて出ない声を振り絞って、一生懸命吉澤に話しかけた。
「そうだね!じゃあ、治療頑張って早く元気になんなきゃ!」
吉澤の声も最後は涙に震えていた。
「・・・でも・・・もうダメかも・・・まい。
まいが病気だから・・・みんなに一杯迷惑かけてる・・・。
まい、いなくなった方がいいのかも・・・。」
その言葉は今まで言えなかった事が凝縮されているようだった。
事実、いなくなった方がいいなんて言葉は今まで一度たりとも
まいの口から出てきたことはなかった。
続く
>>386続き
「そんな事ないよ!まいちゃんが元気になって欲しいから
だからみんなまいちゃんのお世話するんだ!誰も迷惑だなんて思ってないさ!」
「本当・・・?」
「本当だよ!よっしーはまいちゃんの味方だよ!」
まいはその言葉を聞くと、安心したように弱々しく微笑んだ。
まいがこんな表情を見せたのは本当に久しぶりの事だった。
それを見届けると、吉澤は石川は病室を出た。
病室を出ると、彼も少し目頭を押さえていた。
「聞こえてた?」
「ああ。」
3人ともその日はそれ以上は何も話さなかった。
ただ、3人とも沈んだ気持ちでなかった事だけは確かだった。
もしかしたら・・・もしかしたら・・・
そんな気持ちだけが頭の中を駆けめぐっていた。
続く
>>387続く
6日目。
まいの様子は相変わらずだった。
ただナースコールで石川を呼んだり、泣きじゃくったりする事はなかった。
けれど、それ以外は特に変わった様子はなく
身体の方は依然続く副作用は連日より増しているようだった。
「まいちゃん・・・もう少しだからね・・・頑張れ・・・」
石川の問いかけもまいに聞こえているのだろうか?
病室には石川の背中をさする衣擦れの音とまいの荒い呼吸だけが一日中響いていた。
夜になって軽い夕食を取った石川はその日も彼に連絡した。
「そっか・・・」
「でも、意味がないなんて事はないと思う。」
「うん。」
「私がまだ頼りないのかも・・」
「そんな事ないよ、きっとまいに伝わってるはず。」
石川は毎日まいのその日の様子を連絡したが
正直さすがにあまり詳しく伝えたくなく、会話少なめにして電話を切った。
続く
>>388続く
そしてまいの病室に戻ると、まいが珍しく眠っていた。
石川はまいの元に近づくと、汗で顔にひっついた髪をそっと横に流したやった。
すると、まいがゆっくりと目を覚ました。
「ごめん、起こしちゃった・・・。」
石川がそう言うと、まいは首を横に振った。
「いいの・・・。」
その声は以前のまいの声そのものだった。
「まいちゃん・・・?」
「梨華ちゃん・・・ごめんね・・・」
まいはそう言うと少し息を乱し、苦しそうに目を瞑った。
石川はそんなまいを見て、すぐに背中をさすってやった。
「大丈夫・・・大丈夫だから・・・。」
まいはそう言うと、自ら手を出して石川のその手を制しぎゅっと握った。
「まいちゃん・・・」
「アタシ夢見てたみたい・・・」
「夢?」
「でも全部覚えてるの。梨華ちゃん、アタシの部屋に来て
ずっと傍に居てくれたよね・・・」
石川はまいが小さな声でゆっくりと話す言葉を聞き逃さないように
じっと、黙って聞いていた。
続く
>>389続く
「梨華ちゃんの手・・・あったかかった・・・」
息絶え絶えに話すまいを見て、石川はまいのその手を握りかえした。
「ありがとう・・・梨華ちゃん」
石川の瞳には嬉しさの涙が溢れていた。
やっと通じた・・・石川は今までの張りつめていた気持ちが
一気に和らいでいくようだった。
「今日はでも無理しないでゆっくり休んで。」
石川はまいにそう語りかけると、まいもそれに小さく頷いた。
「梨華ちゃんも泊まり込みしてくれてたんでしょ?」
「え?」
「だから今日は家に帰って休んで・・・」
「でも・・・」
「大丈夫、アタシならもう大丈夫だからさ・・・」
まいは石川の手をもう一度握ってみせ、瞬きを大きくして見せた。
「わかった・・・ありがとう。」
その後もまいはしばらく嘔吐感に苦しんでいたが
背中から伝わる石川の暖かい手のぬくもりを感じて安心したのか
ようやく眠りについた。
それを見た石川も安心し、その日は6日ぶりに家に帰って睡眠をとった。
続く
>>390続く
7日目、朝石川が病院につくとまいの病室の前が少し慌ただしくなっていた。
石川はそんな様子に驚いて、ちょうどナースステーションから出てきた保田主任を捕まえた。
「何かあったんですか?」
「里田さん急変よ。今朝早くに呼吸困難起こして血圧も下がったの。」
石川はその場で一瞬眩暈を起こしそうになった。
「今は?今はどういう状態なんですか?!」
石川は自分を立て直し、保田主任に食らいついた。
「中澤先生の処置もあって、やっと眠ったところ。
石川に話しがあるって中澤先生言ってたから、後で詳しく聞きなさい。」
そう言うと、保田主任は石川の元を去っていった。
石川は早まる鼓動をおさえつつ、まいの病室を覗くと
そこには早朝の連絡で駆けつけた家族がまいのベッドを取り囲んでいた。
そしてまいは酸素マスクをつけられており、
病室内には心拍数を告げる機械音だけが鳴り響いていた。
石川はその様子を見て、なんとなく病室に入ることができないでいた。
続く
>>391続く
すると後ろからポンと石川の肩を叩く人物がいた。
中澤先生だった。
「ちょっと石川、あっちで話そうか。」
そう言うと、中澤先生は石川は伴って小さな職員用の部屋に入っていった。
部屋に入ると、中澤先生は開口一番こう告げた。
「点滴の投与は中止。」
「え?」
「もう無理や。」
「無理って!!」
「まいちゃんの体力が思った以上に低下してる。」
「でもせっかくここまで頑張ったのに!!!」
石川は興奮を抑えきれなかった。
続く
>>392続く
「でもな、石川。辛いけど医学には限度ってものがあるねん。」
「限度って・・・。」
「これ以上今の薬を投与してもまいちゃんの命縮めるだけや。
それに急いで検査部に血液検査の結果出してもらったけど、
数値は全く変わってない。」
「そんな・・・!!」
「あたしらが手を差し伸べてあげられるのはココまでや。
あとは・・・まいちゃんの骨髄に合うドナーが現れるのを待つしかない。
ドナーが現れたところで移植自体も難しい状態になってる。
それは拒否反応っていう移植手術には切っても切り離せないものや。
ドナーが提供する骨髄は移植された身体を敵やと思って攻撃する。
今のまいちゃんの体力が、それに耐えうるかどうか・・・。」
石川は自分の体から血の気が引いていくのがわかった。
「あたしだって助けてやりたいよ!でもな、どうにもならん事もある。
医学の仕事に携わるっていうのは・・・そういう事や。」
中澤先生もグッと下唇を噛みそれ以上なにも言葉にはしなかった。
続く
>>393続き
信じれば夢は叶う。頑張れば努力も実る。
石川はずっとそう信じて生きてきた。
けれど、現実は違った。石川はそんな現実を今こうして見せつけられた。
涙ももやは出てきはしなかった。
ただ、やりきれない想いが怒りとなって自分の中を支配した。
でも望みは全く絶たれたわけではなかった。
石川は居ても絶ってもいられなくなり、もう一度まいの病室を尋ねた。
まいの病室に入ると、家族はもう帰っておりまいが一人眠っていた。
石川はまいの傍に行くと、まいの細い手を取り優しく包み込んだ。
「・・・・まいちゃん・・・・ごめんね・・・・」
石川は眠ったままのまいにそう語りかけた。
石川が点滴のスタンドを見上げるとそこにはもうその点滴はなかった。
昨日までの苦しみはもうなくなったのだろうか?
そのまいは今朝の急変を感じさせないような安らかな表情で眠っていた。
続く
>>394続き
俺は石川から知らせを受け、学校を早退し病院に駆けつけた。
病室のドアを開けると、石川が来客用の椅子に座って
まいの手を握りしめていた。
俺にとって、あの水族館に行った時以来のまいだった。
まいは以前よりもずっと窶れてしまっていて、
変わってしまったその姿に俺も息を詰まらせた。
俺がベッドに歩み寄っていくと、やっと石川がこちらを向いた。
石川は泣きはらしたのか、目を真っ赤に腫らしていた。
「ごめんなさい・・・。」
石川はまいに対してなのか俺に対してなのかわからなかったけれどポツリとそう呟いた。
けれど俺自身、石川のそんな言葉に何も返してやれる余裕はなかった。
二人とも何も言葉はなかった。
ただまいの心拍音だけが機械を通して鳴り響いていた。
俺は立ちくらみがした。頭の中も真っ白だった。
その日からまた俺はまいの病室に通い詰めた。
続く
>>395続き
日に日に弱っていくだけのまいと会うのは辛かったが
今の俺にはそれくらいしかすることが出来なかった。
石川もあの日以来すっかり元気をなくしてしまっていた。
まいはその後、急変したりするような事はなかったが
自分の状態をわかっているのか、俺や石川に
「ありがとう。」という言葉をよく口にするようになった。
外の気候は秋の心地よさから冬の厳しい寒さへ変わり
北海道には白い雪が舞い始めていた。
まいの命の希望はたった一つ。
骨髄移植だけが残された。
第三章・秋はこれで終了です。
今回はあえて里石というものに固執して書きました。
辛い展開になってしまいましたが、
闘病がテーマである以上、いつかは書かなければいけない展開だと思い
思い切って書きました。
そして長々と続いた秋編も一応ここで終わらせてます。
冬にはクリスマスと、お正月というテーマもあるので。
長々と稚拙な文章を読んで頂きありがとうございます。
今後の展開やこれまでの感想などご意見がありましたらお願いします。
乙です
切ない、というか悲しい話ですね・・・
まいがどんどん弱って行くのが悲しい・・・
そんな作者な俺は石ヲタなので
これから食わず嫌いを見ます・・・気持ちが微妙だ・・・
秋編は一番長かったけど一番中身が濃かったと思います
そして、闘病生活の辛さが伝わってくる内容でした
保全
感動保全
403 :
椰子娘。募集中。。。:03/12/12 00:18
ココナッツ保全
どうも乙です
次は「第4章・冬」編のスタートという事で・・・
多分、それが最後の章になると思います
>>407 え?え?
春のまいの誕生日のの管理下ライブは??
ありゃりゃ、またやってしまった・・・。
春の管理下ライブって繰り上げでした?
>>409 繰り上げかどうかは知らないけれど早めるといった下りはでてきたよ
そうそう、説明不足で申し訳無い・・・
「誕生日ライブは早める」という所を書いたのは俺なんでね
当時は「小説がダレている」とか言われてたから、ちょっと早めるような事を書いたという経緯が有りました
でも、小説の状況もその頃とはまた少し変わってるから・・・また色々と考えてます
「第4章・冬」で終わりかな?って言ったのは、ちょうど四季で区切りも良いかなと思ったまでです
どうも色々と説明不足ですみません・・・
>>412 そうですね、もう終盤だし、しっかりと構想を固めた方がいいからね
これからはそのスレをフル活用したいですね
>>413 深い構想ってのはないんだけど、
ちょっとこの冬編の冒頭をこうしたいってのがあって、
それは明日にでもあっちで書きますので。ヨロシク。
>>412 一応打ち合わせ用のURLですって言っといたほうがいいぞ
もしかしたら読者が見て先を知ってしまう可能性がある
ここは本当に狼なのか・・・
今後の事について、打ち合わせスレにちょっと書き込みました
他の作者さん方、もしよければ見て下さい
読者に徹している方は、ネタバレの可能性大なので
この打ち合わせスレはくれぐれも覗かないようにお願いします
それから作者が減っていると思うので
これから書いてみようとか、以前書いてたという方の参加もお待ちしてます
何かあればこの打ち合わせスレに・・・
保全
ほ
ぜ
>>417 別の作者だけど、俺もそこのスレに書き込んでおいたよ
じゃあ、もう少ししたら転載していきます。
>>396続き
【第四章・冬】
「自転車乗れないじゃんね・・・」
今朝とうとう積もってしまった雪を見てまいがそう言った。
「しょうがないじゃん?北海道に住んでるんだからさ」
「ま、いいや。しばらくはまだ平気そうだ・・・」
「は?何言ってんの?お前・・・」
まいはよく降り積もった雪の上を無理矢理自転車で走った。
「危ねえぞーオイ」
自転車のタイヤはどんどん雪に埋まっていく。
そしてハンドルも操作が利かなくなって、バランスを失っていく。
それでもまいは笑いながら自転車を漕いだ。
自転車はグラグラと揺れて、次第に止まってしまい
まいは自転車とともに雪の中にスローモーションで倒れた。
その姿は遠くから見ていても滑稽だった。
続く
>>423続き
「何やってんだ?アイツ・・・」
遠目から冷めた目でそれを眺めていた俺はまいの傍に寄っていった。
まいは雪にまみれて、むくっと起きあがった。
「バカだろ?お前・・・」
まいは俺がそう言っても全く動じずにまた自転車を起こす。
「何?またやるの?」
「なんかね、ムキになってきたよアタシ」
「いや、だから何ムキになってるのかわかんないから」
俺が笑いながらそう言うと、まいが突然雪を投げてきた。
「ちょっとぉ、バカにしてない?」
「だからさっきバカだろ?って言ったじゃん!」
「なんだとーコラ!」
まいはそう言うと立ち上がり、雪を丸めて雪玉を作り出した。
「お前ちょっとは女の子らしい口訊けないのかよ・・・ってオイ!」
そのやけに雪玉はニヤニヤするまいの手によってまた更に大きなる。
「うるせー!!これでも喰らえっ!!」
「ヤベー・・・逃げろっ!」
俺は降り積もった雪に足を取られながらも逃げた。
同じくまいもそのバカでかい雪玉を抱えて追いかけてくる。
「待てー!!!」
去年の冬、俺たちはこんなバカな事ばかりして遊んでいた。
何にも悩む事なんてなかった・・・あの頃は。
日々の一日一日が楽しく、俺たちは笑いながら毎日を過ごしていた。
* * * * * * *
>>425続き
まいと会うためには白衣を着てマスクを着け、帽子を被る。
今、まいがいる部屋は集中治療室のある重病患者が入院する棟の中の一室だった。
そこは、病室に入る前にも扉があって、俺はそこでそれを着用し手を消毒する。
病室には常に緊急用の医療機器が設置してあり、
特に心電図の機械と酸素マスクは、すぐにでも使えるように用意してあった。
「おう。」
「あれ?何それ?どうしたの?」
その日、俺は千羽鶴を持ってきていた。
「クラスのみんなが、運動会見に来てくれたお礼にって。」
「そっか・・・なんか照れくさいね・・・」
「コレまで消毒されちゃったよ。」
「ごめんね・・・、折角のみんなの気持ちなのにね。」
「しょうがないよ。」
続く
>>426続き
俺はその千羽鶴をカーテンのレールに吊るした。
この千羽鶴は藤本の提案で、運動会のあった日から
クラスのみんなで一羽ずつ手分けして折って、それを藤本がこうして繋げた。
今や、それも消毒される。
それだけでなく、この部屋にあるものの全てがそうだった。
だからお見舞いを終え、帰る頃には俺の衣服にも消毒液の匂いが染みついていた。
「どう?今日は。」
「今日はいいよ。比較的。」
「みたいだな。」
まいは今こうして俺と会話をしているが
具合の悪い日は話すらできない日も多く、
そんな日はただまいの手を握ってやることしか今の俺にはできなかった。
今日だって調子はいいが、決して元気に話しているわけではなかった。
声は小さく、呼吸も浅く、そんな時たまに俺はわざと話をするのを辞める。
続く
>>427続き
まいは今、ほぼ完全看護状態だった。
一人で起きあがる事も、自分でごはんを食べることもできない。
ただ寝ているだけの生活。
何度か本やCDを持ってきたが、それらは持ってきた状態のまま
棚に積み上げられていくばかりだった。
「なんか落ち着かないな。」
「どうして?」
「監視されてるみたいだ。」
「そうだね・・・でももう慣れちゃった。」
この部屋のつくりは壁の半分がガラス窓になっていて
ナースステーションから全て見える状態になっている。
だからなのか、この部屋もまいの母親がこまめに片づけていて
綺麗に整頓されていた。
続く
>>428続き
* * * * * * *
「アイツ何やってんだよ・・・」
待ち合わせ時間を30分過ぎても、まいは現れない。
携帯に電話してもまったく出る気配がない。
俺は心配になり、まいの家に向かった。
インターホンを鳴らすと、何故かまいの声。
「俺だよ!俺!どうしたんだよ?!」
すると家の扉が空き、玄関からボサボサでパジャマのままのまいが顔を出した。
「ゴメーン!!!」
まいは起きたばっかりで、今の今まで寝ていたようだった。
「とりあえず、中入って!」
促されるまま、俺も中に入る。
「今さ、シャワー浴びてくるからさ、ちょっとアタシの部屋で待ってて!」
まいはそう言って、風呂場に走った。
俺は言われた通り、2階にあがりまいの部屋のドアをあける。
続く
>>429続き
「・・・何・・だ?・・コレ・・・。」
脱いだ制服もそのまんま、雑誌やなにやらがその辺に散らばっていた。
俺はその光景を見て部屋の入り口で立ち止まってしまった。
すると、その部屋の主であるまいが下から階段を駆け上がってきて
入り口に突っ立っていた俺を押しのけた。
「どいて!」
まいは部屋に入るなり今度は箪笥を引き出し、中のものをその辺に放り投げた。
「オイ・・・」
「あーん、着替え忘れちゃった!!」
そしてお目当ての服が見つかると、
「ゴメン!その辺に座って漫画でも読んどいて!」
と、そのままそれを抱えて下に駆け降りていった。
続く
>>430続き
数分後、戻ってきたまいに俺は聞いてみた。
「こないだ来た時・・・綺麗に片づいてたよね・・・。」
「・・・あの時は徹夜で片づけたの。」
まいは髪を急いでとかしながらそう言う。
「じゃ、普段はこんなに散らかってんの?」
まいはそれには答えず、今度は化粧を始める。
時計を見ると約束の映画はもう始まっている時間だった。
「なぁ・・・コレはちょっとヤバイんじゃない?」
「もー、時間ない時にそんな事言わないでよぉ!!」
「でも、もう映画始まってんぞ。」
「・・・・・。」
俺たちは二人してまいの部屋を掃除した。
それ以来、まいの部屋に何度も行ったことがあるが、
もう開き直ってしまったのか、
最初に来た時のような綺麗に片づいた部屋に入ることは一度もなかった。
続く
>>431続き
* * * * * * *
「ねえ・・・美貴ちゃんとかみんな元気?」
「あぁ、心配してたよ。あんまり見舞いに来れないから。」
「受験だもんね。」
「うん。」
まいと仲がいい藤本も吉澤も、受験が近い事もあって
以前より病院に来る回数は減った。
でも実際のところは、今の状態のまいに会う辛さもあった。
俺もこうして毎日足を運んでいるが
時として、現実を突き出されているようで目を背けたくなる事もある。
と、その時。まいの母親が食事を持って現れた。
俺が軽く会釈すると、まいの母親は
「いつもすいません。」
と言って、こちらに頭を下げた。
まいの母親は一日2回やってくる。
それは昼食時の面会時間と夕食時の面会時間だった。
母親はその為に仕事を辞めたようだった。
続く
>>432続き
「もうそんな時間なんだ。」
まいは食事の時間を嫌うようになっていた。
食事はほとんどお粥と少しのおかずだけだった。
この日も母親の手によって運ばれるお粥を、1口2口ほど食べただけで後は
「もういらない。」
というと、母親はやむを得なくさじを置いた。
これがまいの日常だった。
俺はまいの母親と入れ替わりでいつも帰る事にしていた。
「じゃあ、俺そろそろ失礼します。」
「悪いわね・・・。」
「いえ。」
「じゃあね・・・。」
「おう、明日も来るから。」
こうして俺の一日の見舞いは終わる。
その日の帰り道、俺は買いたい参考書があったので遠回りして
駅の大通りに出た。
そして参考書を手に入れると、一軒のラーメン屋に入った。
このラーメン屋は、元気だった頃のまいとよく一緒に来た。
続く
>>433続き
* * * * * * *
「ラーメン一つと大ライス一つ。」
「アタシも。あっそれから餃子2人前!」
「2人前?お前そんなに食べるの?」
「え?一緒に食べない?」
「半分なら食べられるけど、1人前は・・・」
「わかった、じゃアタシが残り食べるよ。」
「え?!」
まいは大食いで有名だった。
部活の合宿の時もまいが予想以上に食べるので
米が足りなくなって、まい自信が一度自宅に米を取りに戻るという
まいの彼氏の俺としては笑うにも笑えない伝説を持っていた。
続く
>>434続き
「お前、俺恥ずかしくって廊下歩けねえじゃねぇかよ・・・」
「しょうがないじゃん!だって足りないんだもん。」
「たった1週間くらい我慢しろよ。聞いたことねえよ、こんな話。」
「あのね、食べないとやってらんないの。
テニス部は厳しいんだから。どこぞのサッカー部とは違うの!」
「お前サッカー部ナメんなよ!」
「じゃ、地区大会でベスト8に入ったら認めてあげるよ。」
「おう!それくらいやってやるよ。」
「じゃ、入れなかったらラーメン奢ってよ!」
「・・・・・。」
地区大会終了後、俺はまいにラーメンを奢った。
その日もまいはラーメンと大ライスに餃子1人前を平らげた。
続く
>>435 続き
* * * * * * *
俺は自分の目から涙が溢れていた。
ラーメンの味が妙にしょっぱく感じて、
どれだけ食べても、その味は薄くならなかった。
ラーメン屋を出ると、外はやけに寒かった。
涙で霞む視界はクリスマスが近いのか赤と緑のイルミネーションが綺麗だった。
俺はそんな変わりゆく街の季節も感じなくなっている自分に気づいた。
行き交う人は冬の気候に肩を縮ませながらも
師走の忙しさと賑わいに心を幾分か弾ませているようだった。
年末。
そう、もう年越しまであと1ヶ月。
まいの来年は・・・未来はあるのだろうか。
駅までの道のりを一人で歩いていると
後ろから俺を呼ぶ声がした。
俺は目元をもう一度拭いて振り返るとそこには石川の姿があった。
ここまでで終わりです。
続きは他の方お願いします。
俺はしばらく忙しくなるので一週間ほどは執筆できないと思います。
時間があれば参加させてはもらいますのでよろしくお願いします。
>>437 どうも乙です
映画のような手法で面白かったよ
>>438 元気だった頃のまいを書きたくなっただけ
なんかまいっていうのがどういう人間だったかを書いて置きたかった
だからいろいろ最近は里田を調べた。
自転車無理矢理乗る話も、大食いだって事も、部屋が散らかっている事も
ある基本だけは本人の事実を借りて作りました
里田ヲタ的には、読んでてニヤリとするような話だった
本物のまいたんってこんな感じだからね
作者さんは石川ヲタなのにまいたんの事をよく調べて書いてくれて有り難う
保全
ほ
ぜ
この作品を読んで思い出したのが、「ポリスノーツ」というゲームソフトです。
このゲームのヒロインは同じ「再生不良性貧血」に掛かっているという設定でした。
読んでてどこかで聞いたことのある病気・対処法だなと思ったんですね。
久しぶりに引っ張り出して、今やっていたらこんな時間になってしまいましたw
>>444 いやいや、コノ作品を書いてる一人ですが
医療関係に関してはド素人の為、かなり心配しています
ただ、以前に友人が白血病になり亡くなったので
その時の辛い思い出を引っ張り出したり、ネットで調べたりしています。
具体的に何かあればよかったら教えて下さい
>>445 いや、別にこのゲームからの引用と言っている訳では無くて、
しっかり設定されているなぁ・・・と。
このゲームをやってみると、より一層「まい」の心情が読み取れるのではないかなぁ
と思いました。
境遇はだいぶ違うんですけどね
>>446 わかってますわかってます。
そうじゃなくて、何かおかしいな?とかこの小説のあら探しっていうかw
そういうのがあれば教えて下さいと言っただけです
説明不足ですいません・・・
>>447 ん〜、多少違っててもそれは「小説の世界」と言う事で納得出来ますからねぇ。
あら探しできる点は誤字脱字くらいじゃないですかねw
ほ
ぜ
ん
ほ
作者の方は時間があったら打ち合わせスレを覗いたりして下さい。
*打ち合わせスレの方は読者の方はネタバレ有るので読まないで下さい
>>453 見ました
これからもそこを使ってどんどん情報交換などをして行きましょう
ほ
ぜ
ん
今日は続きなしでつか?
小説待ち保全
ほ
ぜ
ん
保全
続きまだー?
ほ
466 :
名無し募集中。。。:03/12/14 16:59
ぜ
俺、前は少し書いてたけど
最近は作者のレベルが上がってきて
流石に入れないんだよな・・・
折角続いてる今の流れブチ壊したくないしな
ほかにもそういう香具師いる?
もうそろそろ佳境だからね
感動期待保全
ほ
ぜ
保全
フセインスレ乱立警報により保全
保全
続きよみたいYO!
誰か続き考えている人いるー?
誰も考えてないようならチョト考えてみようかな・・・
こないだ書いたばっかなんだけどな・・・
俺、今考えてる
今夜辺り更新しようかと思ってたんだけど
>>479 今夜っつーのは今からじゃなくて今日の夜です
紛らわしくてゴメンね
>>481 今、下書きやってまとめてますんで・・・
今日の夜にこちらに投稿しますね
保全
ほ
よく9時間近くも落ちずにもったな・・・
ほ
ぜ
ん
保全
続きマダー?
ほ
マチクタビレター
>>482 ヲイ!日にち的にも今日じゃないじゃないか・・・
忙しい中、いい作品を創って戴いてるのですから、
もうちょっと気長に待ちましょうよ。
お待たせしました・・・では更新致します。
>>436続き
「石川さん・・・」
「何してるの?こんな所で・・・」
石川と病院外で出会うのは久しぶりの事だった。
そう、あれはまいに外出許可が出ていた日以来の事だった。
「俺はまあ・・・ちょっとね。そっちこそどうしたの?」
「うん、まあ私もちょっと・・・」
石川の顔は相変わらず元気が無いように見えた。
まいの点滴治療が思わしくない結果に終わって以来、石川の顔からは笑顔が消えてしまっていた。
俺と出会った時の溌剌さを失っているのを見るのが何より辛い事だった。
「まあ、こんな所で立ち話も何だから・・・そこの喫茶店にでも入ろうか?」
「うん・・・」
俺は石川を伴って、寒い外を逃れるために手近な喫茶店へと入った。
この日はたまたま雪は降っていなかったが、道には前日まで降っていた雪が積もっていた。
続く
>>495続き
「どうしたの?元気無いじゃん」
席に着くなり石川がそう言ったので、俺は少しビックリした。
石川をどうにかして励まそうと思っていた所だったので、ちょっと肩透かしを食らったような感じだった。
「いや、そんな事は無いけど・・・」
俺は石川の顔をまじまじと見つめた。
「私?私の事なら大丈夫・・・心配してくれて有り難うね」
石川がそう言ったので、俺はますます驚いた。
まるで、俺の心の中が読めるような・・・俺の言いたい事を先回りして言われているような妙な感覚だった。
「何か・・・変な感じだな」
俺は思わずそう言っていた。
「え?どうして?」
「いや、何かさ・・・俺の気持ちが全部読まれてるような気がして」
石川はそこで初めて少し笑顔を見せた。
「ああ、そういう事・・・私ね、ずっとまいちゃんと二人っきりだったでしょ?だからね・・・相手の気持ちっていうのかな、そういうのが何となくわかるようになってきたの。ずっとその人の事を考えていれば自然にそうなるのかなって」
続く
>>496続き
「ふーん、そうなんだ・・・何か凄いね」
俺は思わず感嘆の声を漏らした。
まいの看病を本当に献身的に続けていた石川の事だ、いつしかそのような能力が備わっていたとしても不思議ではない・・・俺はそのように思った。
「凄くなんかないよ・・・これって、医療に関わる人ならみんなそうなんじゃないかな。やっぱり患者さんの気持ちがわかるようにならないとダメだと思うし・・・まずは心が通じ合ってないといけないと思う」
石川は俺の言葉に対し、そう答えた。
見れば、石川の顔は真剣そのものだ。
俺は、石川が初めて出会った頃よりも一歩一歩着実に一人前の看護婦への階段を上っているように思え、頼もしく感じた。
まいの病気と共に闘っている内に、石川は一回りも二回りも大きく成長しているのだろうと思えた。
続く
石川は、なおも話し続けた。
「でもね・・・今回は私の力不足は勿論なんだけど・・・医学の限界っていうのかな。そういうのをまざまざと見せられちゃったっていうか」
石川はそこで少しため息をついた。
「医学って素晴らしいんだけど、それでも万能ではないのよね。どんな患者さんでも助けられるっていうわけにはいかない。それが悔しかったの」
石川は、半ば独り言を言うかのような調子で淡々と話していた。
泣いているわけではなかったが、わざと抑えているのか、その話しぶりが余計に石川の無念さ・やりきれない感情を表しているかのようで、俺は何も言えなかった。
「本当に、どんな病気でも治してしまう魔法でも有ればどんなに素晴らしいか・・・」
石川はポツリとそんな風に言った。
やはり、石川もそういう事を思っていたのか・・・石川がそんな事を言うと、余計に重みが有るような気がした。
続く
やはり、石川はまいの病状の悪化に自らの責任を感じているようだ。
自分に対し自信が持てなくなってしまっているように見えた。
「でも・・・まいには石川さんと中澤先生達しか居ないんだしさ・・・頼むよ」
俺は、この喫茶店に入って来た時のように何か石川を励ます言葉を探していたが、口をついて出たのはそんな言葉だった。
石川はハッとしたように俺の方に顔を向けた。
「頼むよ、まいを助けてやってよ・・・」
まいが助かるためには、もはや骨髄移植という道しか残されてはいない。
それは充分わかっているのだが・・・。
しかし、気が付けば俺は石川に対し、そんな哀願の言葉を投げかけていた。
自分ではそんな事を言うつもりではなかったのに・・・それが自分でも不思議だった。
続く
>>499続き
石川は、何ともいえない表情でしばらく俺の顔を見ていた。
それは、懸命に俺の胸の内を覗こうとしているような、俺の気持ちを読もうとしているような・・・そんな気がした。
「・・・わかった。ゴメンね」
そして石川はたった一言、そう言った。
それにどんな意味が込められていたのか・・・知る由も無かった。
多分、その一言には本当に色々な意味が込められていたのであろう。
結果的に石川を困らせるような事を言ってしまったが、俺にもどうしようも無かったのである。
それぐらい、俺も追い詰められていたし、それは石川とて同じだった。
俺は、いつの間にかすっかり冷めてしまっていたコーヒーをグイと飲んだ。
ひどく苦い味がした。
続く
>>500続き
ふと窓の外を見ると、いつの間にかまた雪が降り出していた。
「まいはさ・・・本当にクリスマスが大好きでさ。去年も、本当に楽しそうにしてたっけ・・・」
俺はそんな事を呟いていた。
まいは、小さい頃から本当にクリスマスが大好きで、サンタクロースの存在を信じて疑わないような子だったらしい。
小学校の高学年だが、下手すれば中学に入る頃までサンタさんを信じていたとか居ないとか・・・しかし、ある日まいの兄に
「お前、まさか未だにサンタクロースなんて信じているんじゃないよな?プレゼントは、父さんと母さんが買ってくれてるんだぜ」
とアッサリと言われてしまた。
まいはその時は笑ってごまかしたが、本当はショックで涙を堪えるのに大変だった・・・。
去年のこの時期、まいは苦笑いしながらそんなエピソードを俺に話した。
続く
>>501続き
「そっか、もうすぐクリスマスなんだよね・・・」
石川はどこか遠くを見るような様子でそう言った。
12月に入り、街の様子も段々とその色を濃くし始め、クリスマスが近い事を感じさせていた。
「まいに、何かプレゼントとかあげられればいいんだけど」
俺は何気なくそんな事を言ったが、石川はその言葉を聞くと俺の方に顔を向け、何事かを考えている素振りを見せたが・・・
「まいちゃんの為に・・・例えばパーティーみたいなのが出来ればいいんだけど・・・」
と言った。
「パーティーか・・・でも、出来るの?」
「出来たら、まいちゃんも喜ぶと思うんだけど・・・」
石川は自信が無さそうな様子でそう言った。
もし実現出来れば、確かに素晴らしい事だが・・・果たして出来るのだろうか。
俺も腕組みをして考え込んだ。
続く
>>502続き
去年のクリスマスの頃は、一年後の自分の過酷な運命など想像もしていなかったに違いない。
それを思うと胸が痛んだが、せめてまいの一番大好きな季節であるクリスマスには、何かまいの為にしてあげたい・・・俺も石川もその気持ちは同じだった。
しかし、この時の俺と石川には、これ以上何かを考える気力も無かった。
「それじゃあ、今日は色々と有り難う・・・」
俺と石川は喫茶店を出るとすぐに別れ、俺は再び駅へと続く道を歩いていた。
街を彩る有る色とりどりの綺麗なイルミネーションが雪道に映えていたが、とても悲しい色に見えた。
去年、まいとこの道を通った時とは全く違う景色に見え、俺は一つため息をついた。
「そうだ、もうすぐ期末じゃん」
俺は、たった今まで忘れていたが、もうすぐ期末試験が近い事を思い出し、思わず苦笑いをした。
続く
>>503訂正
>去年、まいとこの道を通った時とは全く違う景色に見え、俺は一つため息をついた。
↓
○去年、まいとこの道を通った時は全く違う景色に見えたものだ・・・俺は一つため息をついた。
>>503続き
それからも、期末試験が近い時期とはいえ、俺はまいを訪れる事を欠かす事は無かった。
まいは、何かすっかり達観したような表情を見せる事が多くなっていた。
そして、まいが話す内容も、昔の思い出話ばかりになって来ていた。
「本当に楽しかったなあ、あの時は・・・」
まいの脳裏には、楽しかった日々の出来事が甦っているのだろうか。
「何言ってんだよ、これからも楽しい思い出をもっと沢山作っていこうぜ」
「うん、有り難う。でももういいの」
俺がいくら励まそうとしても、そんな投げやりな返事をするばかりになっていた。
何よりも、まいがどんどん気力を失っているのを見るのが辛く、それは俺の気持ちもますます暗くさせていった。
続く
>>504 「もうダメだよ、俺・・・」
その日もまいの見舞いを終えた俺は、石川に対してそんな弱音を吐いてしまっていた。
「まいに何を話しても、ああいう返事ばっかりで・・・もうダメだ。俺の力じゃどうにもならない」
俺は、まいを訪れた後は必ずこうして石川に愚痴を言うのが常になってしまっていた。
石川は、そんな俺の愚痴を黙って聞いてくれていた。
石川は、まいの看病もしなければならない上に、俺の泣き言も聞かなければいけないのだから大変であった。
それがわかっていながら弱音を吐いてしまう自分が嫌で情けなくてたまらなかった。
「それじゃあ、期末の勉強しなきゃいけないから帰るわ・・・。受験勉強も有るしね」
俺はそう言い残すと、トボトボと病院を後にした。
石川は、そんな俺の事を黙って見送っていた。
続く
>>505続き
「何とかしなくっちゃ・・・」
彼を見送った後、石川はそう呟いた。
今や、まいも彼もすっかり元気を無くしてしまっている・・・このままではいけない。
「二人に元気を取り戻してもらわないと」
石川には、それが自分の使命であるように思われた。
自分は自分で、この道に対する自信を失いかけていたのだが、それどころではない。
自分の事よりも、まず患者さんの事が大事・・・石川は本能的にそれがわかっていた。
「クリスマスか・・・」
石川はまた一言呟いた。
石川は、何事かを決意している表情だった。
続く
とりあえず今回はここまでです。
お待たせしてしまってどうもすみませんでした。
ほ
作者乙。
保全
ほ
ぜ
ちょっと変わった形式にしちゃったけど
続き書いちゃっていいかな?
更新は多分23〜24時の間だと思われ
ごめんなさい
もう少しかかりそうです
ちょっと長いけど、よろしいですかね?
ちと不安ぽ・・・
>>506続き
12月1日
今日から日記をつけてみる。
日記なんて正直やろうと思った事もないし
3日坊主にさえならない。
でも病院は暇だから、さすがに続くかもね。
今日はずっと熱があった。
今、寝る前の体温、37.9℃
12月2日
朝、息苦しさで目が覚める。
胸が圧迫されてる感じでどの体勢もつらい。
酸素マスクをして、呼吸は少し楽になる。
お兄ちゃんが彼女をつれてきた。
でもしんどくて話せなかった。
カワイイ人だったね、お兄ちゃん。
続く
>>518続き
12月3日
今日は微熱が出ているだけ。
昼から少し輸血する。
それで頭痛はダイブおさまった。
彼が美貴ちゃんからの手紙を持ってくる。
美貴ちゃん、ありがとう。
12月4日
午前中、骨髄穿刺の検査。
移動の為に久しぶりに車椅子に乗る。
上半身を起こしてもらったら
動悸がして胸が苦しくなってちょっとお休み。
梨華ちゃんは励ましてくれたけど
正直ショックだった。
起きあがることもできなくなってしまった。
続く
>>519続き
12月5日
朝から胃が痛く、気分が悪い。
昼になって少し吐いたら血が出てきた。
吐き気止めの点滴を入れるが止まらない。
梨華ちゃんがずっと背中をさすってくれた。
夕方から輸血する。
彼にはこんな格好悪いのみせたくないのに
今日もせっせと足を運ぶ、
血を吐いてる私を見て、顔色が真っ青になってた。
だったら来なきゃいいのにね(笑)
12月6日
夜中から悪寒がしてナースコールを押す。
熱が39.7℃
中澤先生から解熱剤の注射を打ってもらう。
眠れない。しんどい。体が震える。
彼が来ても何も喋る余裕がなかった。
でもずっと手を握ってくれた。
続く
>>520続く
12月7日
熱が下がらない。
咳も出て、呼吸も胸が押されてるようで
浅い呼吸しかできない。苦しい。
酸素マスクの酸素濃度をあげる。
ここ最近で一番辛かった。
握力が弱くなって字がうまく書けない。
>>521続き
その日、俺が病室を訪れるとまいは髪を肩まで切っていた。
「髪、切ったの?」
「・・・うん。」
「どうして?」
「梨華ちゃんとか大変そうだし、もうおしゃれも出来ないから・・・」
聞くんじゃなかったと思った。考えが甘かった。
気分転換に・・・とか、そんな答えが返ってくると思っていた俺。
「そっか・・・。」
俺はそれなのに、気が利く言葉も言えず。
何をやっているんだろう・・・俺は。
まいの顔を見て、下手な笑顔を浮かべる。
「もし退院できたらまた伸ばすよ。」
「『もし』なんて言うなよ・・・。」
まいはその後、俺を見て力ない笑顔を向けてみせた。
続く
>>522続き
「辛い?」
「え?」
「ここに来るの。」
「どうして?」
「アタシのこんな姿見るの嫌でしょ?」
「そんな事ないよ。」
「嘘ついたって顔に書いてあるよ。」
「嘘じゃない!」
「無理しなくていいってば・・・」
「無理だなんて・・・」
「アタシからしばらく離れた方がいいよ。」
「何でだよ・・・」
すると突然まいが咳き込んだ。
それを見ていた看護婦が飛んできた。
看護婦はテキパキとまいの口元をガーゼで押さえる。
そのガーゼはあっという間に赤く染まった。
血だ・・・。
続く
>>523続く
「里田さん、ちょっと横向こうか。」
看護婦の手助けを受け、まいは横向きになる。
まいは看護婦に背中をさすられながら苦しそうに息を整える。
その看護婦は俺の動揺とは対照的に終始落ち着いた口調だった。
「ちょっとおさまったかな。」
看護婦がさすっていた手をとめる。
咳は少しおさまったようだ。
「里田さん、大丈夫?先生呼んでくるから、ちょっとの間辛抱しててね。」
俺はその様子をただ黙ってじっと見ていた。
看護婦がサイドテーブルに大量のガーゼを置いて行った。
「こんなの見たくないよね・・・」
速い呼吸。絞り出すようなまいの声。
でも俺はそれには答えたくなかった。
それは事実だったから。
続く
>>524続き
「・・・大丈夫?」
「ごめんね・・・」
「そんな・・・」
「気管から出血してるんだって。」
まいの病気は血液のいろんな要素が不足する。
だから至る部分の血管が弱くなっていて
ちょっとしたはずみで出血し、
そしてそれを止める要素も少ないから血が止まらない。
体中にはあらゆる部分に青あざがある。
それも、その為に出来たものだった。
別の看護婦が水を持ってくる。
まいがそれでうがいをすると真っ赤になって出てくる。
それは何度行ったところで変わらず、諦めたまいは俺にこう言った。
続く
>>525続き
「帰る?」
「え?」
「昼からずっとこういう状態。だから帰った方がいいよ・・・」
そう言うと、まいはまた咳き込む。
まいの手の指の間からみるみるうちに血が漏れてくる。
俺が慌ててそれをガーゼで押さえようとすると
まいは血だらけの手でそれを取り上げ、自分で押さえた。
「触らないで・・・」
咳込みつつ答えるまい。
するとまた看護婦が来て、まいの介助をした。
しばらくしてそれが落ちつくとまいが言う。
「あなたにこういう事されたくない・・・」
「なんで・・・」
「・・・手が汚れちゃうよ・・・」
俺は胸が詰まって息が出来なかった。
辛すぎた。
涙がどんどん溢れてきた。
まいの前で泣くまいと誓っていたけれど
意識もなく、涙はとめどなく流れてきていた。
続く
>>526続き
「泣かないで・・・」
俺は嘘をつけなかった。
「ごめん・・・俺・・・帰るよ・・・」
まいはそんな俺に安心したかのような笑顔を向けた。
俺はそれも見るのも耐えられず、まいに背を向けた。
そしてまいの病室を出た。
病室を出ると、中からまた咳き込む声・・・。
「里田さん息苦しいね・・・大丈夫大丈夫・・・今先生来るから・・・」
看護婦のまいを励ます声が俺の耳を突き刺した。
俺はその場から逃げるようにして立ち去った。
続く
少し、中断してよろしいでしょうか?
30分以内には再会致します。
>>527続き
俺が白衣を脱ぎ、この病棟から出ると
他の病室から出てくる石川と会った。
「帰るんだ・・・」
「ああ・・・」
俺は石川に泣いていたのをを悟られないように
ずっと俯いて話していた。
すると、石川もそんな俺の様子に気づいたのか
こんな事を言ってきた。
「まいちゃん、見てるの辛い?」
「・・・ああ」
「そう。」
「悪い・・・」
「みんなそうよ・・・昨日はお母さんにもうあんまり来ないようにって・・・」
「まいが?」
「うん・・・、泣くからって。」
俺はそれを聞いて後悔した。
どうして傍についててやれなかったんだろう・・・。
辛いのは俺じゃなくって、まいだった。
続く
>>530 「俺、逃げちゃった・・・」
「いいのよ。」
「俺・・・、どうしていいかわからなくて・・・」
結局俺は病院の廊下で場所も憚らず泣いた。
廊下を通る人はみんな俺に気づいて足早に通り過ぎる。
石川はそんな俺を心配してか、
「もう私も今日は上がりだけど、一緒に帰る?」
と声を掛けてきてくれた。
俺は石川と一緒に帰る事にした。
「ご飯でも食べよっか?」
明るく俺にそう話掛ける石川。
「俺、今食欲ない・・・」
「そんなんじゃダメよ!もうすぐ期末テストでしょ?」
「ああ・・・」
俺があんまり沈み込んでいるので、石川もしばらく黙っていた。
続く
>>531続き
外の空気は俺の頬を刺すように冷たく、
石川の顔もほんのり赤くなっていた。
よく見ると、石川はマフラーもせずに寒そうにしていた。
「マフラーしないで寒くない?」
「あ、今日ね。入院してるの女の子にあげちゃった。」
「女の子?」
「あ、言ってなかったっけかな?
まいちゃんはもう私だけでは手に負えない重病患者さんだから
先輩も担当する事になって、私はその合間に中学生の女の子も見てるの。」
「そうなんだ。」
「本当はね、クリスマスプレゼントは別にしようと思ってたんだけど
その子、もうすぐ手術するから。お守りにって。」
俺は、思った。
大病を患っているのはまいだけではない。
この病院だけでもたくさんの人が入院してるのだった。
辛いのは俺やまいだけではない、何度もそう言い聞かそうとしたが・・・。
続く
>>532続き
歩いていると、石川と俺がよく帰りに寄るカフェがあった。
「じゃ、お茶だけでも。」
そう行って、石川は中に入っていった。
そこは、最近よくあるテイクアウトもできるカフェ。
石川はそこでカフェラテを二つ頼むと、一つを俺に渡した。
「いいの?」
「いいよ、たまには。」
俺たちは道路の面した窓沿いのカウンターに座った。
「ねえ、しばらく本当に来るの辞めたら?」
石川は外を歩く人並みを眺めながら突然呟いた。
「どうして?!」
俺は気持ちが冷静でなかったから思わず口調がキツくなった。
すると石川はゆっくりと話し出した。
「期末テストもあるし、それにまいちゃんもきっと辛いよ。
そんな顔でいられたら、健康体の私だって辛いもん。
まいちゃんは今、不安で不安でしょうがないと思う。
それなのに、頼るべき相手がそんな状態だと余計に不安になっちゃうよ。」
俺は窓に映った自分の顔を見た。
続く
>>533続き
「そういう顔しかできないなら、今はまいちゃんの所に来ないで。
それでもどうしてもまいちゃんを勇気づけてあげたいと思ってるなら・・・
自分の事は自分で立て直して。それが出来ないなら人を勇気づけるなんて無理よ。」
石川の言う事はもっともだと思った。
石川はこの短期間にすごく大人になっていた。それなのに俺は・・・。
「ごめんね、偉そうに言って・・・」
「ううん、なんか石川さんって俺の姉貴みたいだ。」
「そう?」
「俺、少し考えるよ・・・」
「うん。楽しい事、考えよう?ね!」
「楽しい事なんて・・・」
「クリスマスだよ、もうすぐ・・・。」
続く
>>534続き
石川は笑顔で俺の顔をのぞき込むと
なにか企んだような表情をした。
「まいちゃん、喜ばせてあげようよ。ね?」
「そうだね。」
そう言われても、俺はクリスマスの事なんて
今のまいを思うと、とても考える余裕はなかった。
俺は石川と駅で別れた。
その日は帰ってから少しだけテスト勉強をして早めに眠る事にした。
今頃まいはどうしているんだろう。
でも、悲しい事に俺がまいの事を思い出そうとすると
浮かんでくるのは元気だったまいではなく
ベッドの上で咳き込み苦しむまいの姿だった・・・。
俺はこの年なって、その夜は泣き寝入りした。
続く
>>535続き
12月8日
朝少し楽になったので髪を切ってもらった。
ちょっと泣きそうになったけど、今は邪魔なだけだから。
いつかまた伸ばせばいいよね。
昼から咳をすると血が出る。
最初は少しだったけど、量は増えていく。
彼が来たけど帰ってもらった。ちょっと泣かした。
ごめんね。相変わらず、口が悪いのかな?
息が苦しくて、胸の圧迫感と咳が辛い。
眠れない。
もうすぐ期末テストだね。
頑張れ!!
大好きだよ。
以上です。
感想よかったら書いてくださいまし・・・。
特に今回はちょっと不安なのでお願いします。
まいたんも頑張れよ。・゚・(つД`)・゚・。
>>537 良かったよ。
日記形式でまいの心情が綴られているけど、非常に素晴らしいと思います。
ところで、私は別の作者なんですが、例の打ち合わせスレに今後の展開について思うところを書いておくので、出来たら読んでおいて下さいね。
ほ
ぜ
ん
ん
そういう事も有る
保全
ほぜん
ほ
打ち合わせスレにレスしといたよ、作者の一人さん。
ちなみに読者はネタバレ有るかもなので見ないでくらさい。
>>549 どうもです。
私も先程レスしておきました。
>>550 こちらでわざわざ報告し合うのはこれで最期にして
あちらにレスあります。
保全
ほぜむ
保全
まいがまいった
保全
ほ
ぜ
ん
保全
川=‘ゝ‘=||<ヒトイネ
寝るよ保
保全
保田
ほ
ぜ
ん
続きまだー?
保全
ほぜん
ほ
ヒトイネ
ほ
574 :
名無し募集中。。。:03/12/20 04:13
南の国からココナッツ!!!
保全
ほ
ぜ
里田祭りさんのサイト、繋がらなくない?
ほ
保全
ほ
ぜ
ん
ほ
ぜ
ん
川=‘ゝ‘=||<ほ
誰か続き考えている人いるー?
川=‘ゝ‘=||<ぜ
川=‘ゝ‘=||<ん
保全
保全祭りだな
保全
ほ
本日の夜中更新予定です。 しばらくお待ちください。
待ってます。
ほ
ぜ
保全
ほ
ぜ
ん
保全
ほ
ほ
>>536続き
まいは翌日、昨日の喀血の件もあって
肺の検査を受ける事になった。
「まいちゃん、どうしようか?
車椅子辛かったら、ストレッチャー用意するけど・・・」
「ううん、平気。」
石川はベッドの背を少しだけ上げて
まいの背中を支えながらゆっくりと体を起こしてやった。
すると、やはりそれだけ体を動かしただけなに
まいは息切れしてしまい、胸を押さえ込んでしまった。
続く
>>609続き
「本当、無理しない方がいいよ・・・」
石川はそう声を掛けながらまいの背中をさすった。
でも、まいは胸を押さえつつも
「違うの。天井見てるだけってのも結構飽きたし。」
と言って、石川の目をみて微笑んだ。
石川はそんなまいの呼吸が落ち着くのを少し待ってから
まいの体を持ち上げ、車椅子に乗せた。
まいの体はもう痩せきってしまい、
石川一人の力でも持ち上げられるほど軽くなってしまった。
そして石川はまいにマスクをさせ、膝掛けをかけてやって
それから、まいの髪の毛を丁寧に梳かしてやった。
「ありがとうね・・・。」
弱々しい声でまいは石川に礼を言う。
続く
>>610続き
以前、まいは石川に世話をされる事を嫌がった時期があった。
そして、執拗なほどに石川に対抗心を燃やし体に無理をさせた。
でも、今はそんな気力さえなくなってしまったのか
素直に石川のそんな行動に感謝の言葉を口にするようになった。
石川はそんなまいの変わり様が少し寂しかった。
石川はまいを乗せた車椅子を押して病室を出た。
前はこうしてまいの車椅子を押してどこかへ移動する時も
二人の間に話し声は絶えなかった。
けれども今のまいにはそんな余裕さえなかった。
白くなってしまった肌、弱々しい声、そして霞がかった瞳。
どれも以前のまいとは比べものにならない。
そして、しばらく廊下を行くと後ろから声が聞こえた。
「りーかーちゃん!」
その元気な声に振り向くと一人の少女が病室から出てくるところだった。
続く
>>611続き
石川にはもう一人、担当している患者がいた。
彼女は中学生の加護亜衣といった。
亜衣の病気は腎臓の病気で母親から腎臓を貰う手術を明日に控えていた。
それまで亜衣は人工透析を受けて過ごしていた。
「亜衣ちゃん。」
「どこ行くの?」
「ちょっと検査にねー。っていうか亜衣ちゃん、
少しはおとなしくしてないとダメじゃない。」
「わかってるって!」
そう言って、亜衣は石川に笑顔を見せた。
亜衣だって、まだ中学生。
手術の恐怖もあるに違いなかった。
けれども、亜衣にははっきりとした回復の見込みが立っていた。
だからなのか亜衣の表情には以前よりかずっと明るさが増していた。
続く
遅くなってすいません。
この後の更新は今晩に行います。
乙です。楽しみにしてます。
保全
ほ
ぜ
ん
保全
>>578-579 繋がりにくい時間帯がありましたね。携帯から見ても「指定されたサイトは大変混み合っております」という表示が出てました。
他のしたらばサイトも同様に繋がりませんでした。
保全
ほ
ぜ
>>612続き
「ねえ、お姉さんは?お姉さんは名前なんていうの?」
石川に甘えまとわりついていたが
車椅子の前に回り込み、まいにそう話しかけた。
石川は話すことも辛いだろうなと思って、まいを気遣い
まいに変わって話そうとした、その時・・・
「まい。里田まいっていうんだ。」
さっきまで声さえ出さなかったまいがそう言った。
石川はそんなまいに少し驚いた。
「まい姉さんか。まい姉さんって美人だねぇ。」
「え?!あ・・・いや・・・その・・・。」
驚いた事に、まいは照れているのか少し声を出して笑っていた。
まいのそんな様子を見るのは石川にとっては久し振りだった。
だから、検査時間には少し遅れるが、様子を少し見てみる事にした。
続き
修正箇所
2行目の頭に「亜衣は」と入れて下さい。
>>624続き
「ほらほら、笑ったほうがお姉さん綺麗だよ。」
「そんな事ないってば・・・」
「マスク外したらいいのに・・・」
「あ・・・・」
その亜衣の無邪気な言葉を聞いた石川がまいに代わって答える。
「あのね、まいちゃんは今、ちょっと具合が良くないから
外に出るのにマスクしてないと、細菌に感染しちゃうからさ。」
石川の言葉を聞いた亜衣は、それでも怯む事なくまいに話しかけた。
「でも、病気ももうすぐ治るんでしょ?」
核心に触れた言葉だった。
石川も正直な話、今の段階では何も言えず
医療に携わる立場の人間として軽々しく何かを言っていいものかと
少し考えていた。
だから石川は慎重に言葉を選んでこんな事を言った。
続く
>>625続き
「きっとね。だからこうして頑張ってるんだよ。」
するとまいがその語尾を最後まで聞かずに口を開いた。
「治すよ。」
亜衣はそれを聞くとニッコリ笑い
車椅子の前に屈み込み、まいの手をとってやった。
「よかった!じゃあ退院したら遊んでよ!」
「いいよ。亜衣ちゃんも早く退院できるといいね。」
「もちろん!・・・だからまい姉さんも頑張ってね。」
亜衣はまいの手を離し、立ち上がると
「じゃ、またねー!」
と手を振って去っていった。
まいもそんな亜衣に向けて、一生懸命覚束ない手を振った。
続く
>>626 続き
石川はそんなまいを見て、声を掛けた。
「まいちゃん・・・頑張ろうね。」
まいは少し疲れた様子だったけれど、石川のその言葉を聞くと
「うん。」
と明るく返事をした。
それから石川は敢えてまいに話しかけなかった。
少し疲れてしまったかもしれないと思ったからだった。
でも石川はそれでも今日はいいと思った。。
ナーバスになっていたまいの心に明るい光が差し込んだ気がした。
検査が終わり、病室に帰ってからも
まいをベッドに寝かせてやると、石川はすぐにその場を去った。
数分後、まいの病室の様子を覗くと
やはり疲れてしまっていたのか、まいは眠っていた。
続く
>>627続く
亜衣の屈託のない表情、そして明るい声。
今の石川や彼にはしてやれない事。
それに亜衣は同じく体を患っていてまいの気持ちを
石川や彼以上に理解してやれる。
だからなのか、まいはそんな亜衣を見て
少し自分を取り戻したようだった。
今のまいの病状を考えると、決して良い状態ではない。
治療方法の目処もたっていないし、苦痛に対する対症療法、
それだけの日々を送っている。
けれどもまいに少しでも違ったカタチで元気を取り戻してやれたら
そう思っていた石川は今日のその数分の出来事は
久し振りに石川にとっても嬉しい事だった。
閉ざされた病室の世界の中。
今のまいには希望はない。けれども亜衣の元気になる様子を見て
少しでもまいの顔に笑顔が戻れば・・・。
その亜衣の移植手術は明日になる。
その後、亜衣は一時的にまいのいる重病患者の病室に移る。
亜衣の元気になっていく過程がまいの生きる希望になれば・・・
石川はそれを願うばかりであった。
今日はここまでです。
乙です
ちなみに加護の名前は正しくは「亜依」だね
作者乙
ついに加護登場ですね・・・
乙です
保全
ほ
ぜ
>>629 俺、続き書きたいんだけど・・・いいかな?
ほ
ぜ
つ
642 :
名無し募集中。。。:03/12/24 01:16
ココナッツ保全
643 :
名無し募集中。。。:03/12/24 01:21
ココナッツ保全
上げるなよ
イブ保全
ほ
ぜ
ん
「ラストプレゼント」を見た
中身は全然違うが、この小説を思い出した
石川が登場する物語ってやっぱり良いね
ほ
>>650 一作者ですが、そう言っていただけると光栄です。
石川はもちろん、里田にとっては初めてのメインの長編だと思います。
ですから、里石として代表作にあがるような作品になるように
頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします。
ちなみに秋編の後半、例の女性の作者さんがいなくなってから
作者は2人に減ってしまっています。
けれども今、もう一人の方と構想練りながら
リレー小説という枠を超えて頑張っています。
ご期待に添えるかどうかわかりませんが
これからも感想など書いて下さい。
一番の励みになります。
保全
ほ
保全
保全
ほ
ほ
保全
保全
ほ
保守
ほ
666
ほ
>>636 書かないなら書かない
時間かかるなら時間かかるでいいので
意思表明していただかないと・・・・・。
>>668 どうも申し訳ない、ちょっと忙しかったもので・・・
今日は書きますよ
もうちょっと待って下さいね
>>669 すいませんお尋ねしたいのですが
打ち合わせスレとかにも来られてる作者さんですか?
>>671 すいません一読者なのに打ち合わせスレに見てしまいました。
どちらの作者さんでしょうか?
もしよかったら、教えて下さい。
>>672 えーと、管理課絡みの話をよく書いてます
674 :
名無し募集中。。。:03/12/26 02:13
ココナッツ保全
675 :
名無し募集中。。。:03/12/26 02:17
>>669 いつも紛らわしいので聞いておくが
今日とは今晩(正確に言えば今から朝まで)のことなのか?
明晩のことなのか?
いつも待ちぼうけをくらうので教えてくらさい
>>676 今からです。では行きます。
>>628続き
その日の夜、石川は亜依が眠る病室を訪ねた。
ソッと病室の扉を開け、中に入る。
亜依は、静かな寝息をたてて眠っているようだ。
「亜依ちゃん、明日は頑張ってね・・・」
石川は、亜依を起こさぬよう、亜依の寝顔に向かってそっと話しかけた。
「うーん・・・」
亜依は寝返りを打ち、体の向きを変えた。
そして、ちょうど石川の方向へ顔を向けるとパッと目を開けた。
「あ・・・!起こしちゃった?」
「ううん、起きてたよ・・・」
続く
>>677続き
「何だ、寝てるのかと思ったよ・・・」
「いや、寝てたんだけど・・・表に誰か居ると思うと目が覚めちゃった。私って眠り浅いから」
「そう・・・」
石川は改めて亜依の顔を見た。
別に普段と変わらぬ様子に見えたが、亜依の大事な手術はいよいよ明日に迫っていた。
意識してない筈はない。
「ねえ、梨華ちゃん」
亜依は、石川を普段からそう呼ぶのと変わらず、梨華ちゃんという名前で呼んだ。
「なーに?」
「手術って・・・どんな感じなの?」
「うーん、そうねー・・・麻酔をかけるから、お昼寝してる間に終わっちゃうって感じよ」
「ふーん、そっか・・・」
亜依は、そこで少し考え込む仕草を見せた。
続く
>>678続き
「でもさ、もしかしたらだよ、そのまま眠りから覚めないって事も有るんじゃない?」
「え?」
「だからさ、手術が失敗したらそのまま死んじゃうんでしょ」
亜依は、いともあっさりと「死」という言葉を口にした。
石川はそれに驚き、一瞬返す言葉が見付からないほどだった。
しかし、亜依はケロッとした表情をしており、今言った言葉などまるで関係無い風であった。
「何か、そう考えると不思議だね。お昼寝してる間に天国へ・・・」
「亜依ちゃん!!」
それまで黙って亜依の話を聞いていた石川の発した怒声に、亜依はビクッとして体をすくめた。
続く
>>679続き
「死ぬなんて簡単に言うもんじゃありません!亜依ちゃん、どうしてそういう事を言うの?・・・お願いだから、そんな事は言わないでちょうだい」
石川は、亜依に対して切々と説いた。
そんな石川の表情を、亜依もただ黙ってじっと見つめている。
見れば、石川の目にはうっすらと涙が浮かんでいるようだ。
「だって・・・怖いんだもん」
亜依は、俯きながらも、そんな言葉をボソッと呟いた。
やはりそうか・・・亜依は、手術を前にして恐怖心に襲われていたのだろう。
もしかしたら、眠れていなかったのかもしれない。
「亜依ちゃん、怖いのはわかるわ・・・でも、この手術を乗り越えれば病気が治るんだよ?」
続く
>>680続き
「だからさ、頑張ろうよ、ね?」
石川は、そんな亜依を力一杯励ました。
しかし、亜依はまだ顔を上げられないでいた。
「そんな事言ったって・・・手術が上手くいくかわかんないじゃん。上手くいかなかったら・・・」
亜依は、消え入りそうな声で言った。
いつもの元気な亜依とはまるで別人のようだ。
「亜依ちゃん、大丈夫だって。必ず上手くいくから。心配する事なんて無いんだよ?」
石川は、そんな亜依を元気づけようと、優しい笑みを湛えて話しかけた。
先程の真剣な表情とは180度違う顔だったが、亜依に元気になって欲しいという気持ちに変わりは無かった。
続く
>>681続き
「・・・本当に?」
亜依は、すがるような目で石川を見たが、石川は力強く肯いた。
「大丈夫、私達を信じて。だから今日はゆっくり休みなさい」
「うん、でも・・・」
まだ半信半疑といった顔の亜依に向かって、石川はこう言った。
「亜依ちゃん・・・元気になったら、まい姉さんと一緒に遊ぶんでしょ?まい姉さんも待ってるんだから・・・」
石川のその言葉に、亜依は少し笑顔を見せた。
「そうだよね・・・まい姉さんと約束したんだもんね。こんな弱気になってたら、まい姉さんに笑われちゃうね」
亜依は、そう言うと少し照れ笑いをした。
石川も、その亜依の顔を見ると安心したように笑顔を見せた。
続く
>>682続き
「ねえ、梨華ちゃん、ちょっとお願いが有るんだけど・・・」
「なーに?」
「明日の手術の前にさ・・・まい姉さんの顔が見ておきたいんだ。いいでしょ?」
亜依の申し出に、石川はちょっと言葉に詰まった。
「それは・・・」
「ねえ、いいでしょ?まい姉さんの顔を見たら、何か勇気がもらえそうな気がする」
石川は、まいの体の状態の事を考えると、即座には返事が出来なかった。
今のまいは、ちょっと病室の外に出るだけでも大変な労力を必要とするような状態だった。
手術室へ向かう亜依を激励してやるにしても、それはまいの体に無理を強いる事となる。
「梨華ちゃん・・・?ダメなの?」
続く
>>683続き
亜依は、また段々と不安気な表情になった。
ここは、石川としても判断が難しいところだったが・・・。
「わかったわ。まい姉さんに励ましてもらおうね。そしたら、亜依ちゃんも頑張れるよね?」
「うん!」
石川の言葉を聞くと、亜依は安心したようにニッコリと微笑んだ。
「梨華ちゃん、有り難う・・・それじゃあ、明日はよろしくね」
亜依はそう言うと、再びベッドの中に潜り込んだ。
石川は、返事をしてしまってから「そんな約束をしてしまって大丈夫だろうか」と早くも心配していた。
まいに、少し無理をさせてしまう事になるが・・・そんな負担をかけてしまって良いのだろうか?
「梨華ちゃん、ちょっと耳貸してくんない?」
「え?」
「いいから・・・」
石川は、亜依に言われるままに、亜依の顔に自分の顔を近づけた。
続く
>>684続き
そして、殆ど亜依の顔に自分の顔がくっつきそうになる所にまで距離は縮まった。
「梨華ちゃん、実はね・・・」
小声で話しかける亜依の口元に、石川は顔を横に向けて耳を近づけた。
すると、亜依は石川の頬にいきなりキスをした。
石川は、ビックリして慌てて亜依の顔から離れ、目を丸くして亜依の顔を見た。
「梨華ちゃん、大好きだよ!それじゃあ、お休み!」
亜依はそう言うと布団をスッポリと頭まで被ると、布団から右手だけを出すとそれを石川の方に向かって振った。
予期せぬ出来事に石川も暫く呆気に取られていたが、やがて苦笑いを浮かべた。
「しょうがないわねえ、全く・・・」
石川は何となくそう呟くと、亜依の病室を後にした。
続く
>>685続き
亜依と約束してしまった以上、何とかまいに亜依を激励してもらわなければ・・・。
自分の独断で決めてしまっただけに、余計に気が重くなった。
「しょうがないよね・・・」
石川は、夜になり人通りの無くなった廊下でポツリと呟いた。
亜依の手術当日の朝、石川はまいの病室へと検診の為に訪れた。
いつもより少し早い時間に病室に来たので、まだまいは眠っていた。
まいの寝顔を見ながらも、石川は今日の亜依の手術の事に思いを馳せていた。
亜依の手術は、この日の午後に行われる事になっていた。
手術が順調に進めば、夕方前には終わる筈である。
そんな事を考えていると、まいがうっすらと目を開けるのが見えた。
「まいちゃん、おはよう」
石川は、目覚めたまいに向かってそう話かけた。
続く
>>686続き
「おはよう・・・」
まいもそれに答えて挨拶を返した。
「まいちゃん、調子はどう?」
石川は、まいに対していつもと変わらぬ様子で話しかけたが、まいはしばらく石川の顔を見ていた。
「ん?どうしたの?まいちゃん」
「梨華ちゃん・・・アタシに何か話したい事が有るんじゃない?」
まいは、ゆっくりと石川に話しかけた。
「え?どうして?」
「だって・・・何か困った顔してない?そう見えるよ・・・」
石川は少し驚いていた。
自分では普段と変わらないつもりだったのだが・・・。
「そう見える?」
「うん・・・梨華ちゃんって・・・すぐ顔に出るから」
続く
>>687続き
どうやら、石川の微妙な表情の変化などはまいにはお見通しらしい。
石川は少し苦笑いした。
「そうかなあ・・・まあ、いいけどね」
「で?何なの?」
まいにそう言われたので、石川は、亜依が今日腎臓移植の手術を受ける事、その事で不安になっている事、そしてまいの顔を見たがっている事を話して聞かせた。
「まあ、腎臓移植の手術自体はそんなに難しくはないんだけど、その後の合併症とかね・・・ま、亜依ちゃんが不安になる気持ちも凄くよくわかるのよね。だから・・・亜依ちゃんを励ましてあげてくれないかな」
まいは、ひとしきり石川が話し終わるのを黙って聞いていた。
「まいちゃんに無理させちゃうのは本当に申し訳無いと思ってるの。私としても、色々と考えたんだけど・・・」
「わかった。アタシで良ければ、亜依ちゃんに会いに行くよ」
まいは、石川の言葉を遮ると、石川の頼みを快く承諾した。
続く
>>688続き
まいの声は、病気の為にか細いものだったが、その言葉は力強かった。
「ホントに!?まいちゃん、有り難う・・・本当にゴメンね、まいちゃんに迷惑かけちゃって・・・」
「いいよ、そんな事。それよりさ、人に頼りにされるのって久しぶりじゃん。だから・・・ちょっと嬉しいんだよね」
そう言うまいの表情は、いつもより心持ち明るくなったように見えた。
石川は、そんなまいの様子を見てホッとしたのと同時に、嬉しさがこみあげて来た。
「でもさ・・・亜依ちゃんって子・・・アタシの事が好きなのかなあ?」
「さあ・・・」
石川は、まいのその言葉を聞くと昨日の事を思い出し、何故だかちょっと照れくさいような気持ちになり、何となく頬を撫でていた。
続く
>>689続き
そして、その日の午後、いよいよ亜依の手術の時間がやって来た。
石川は、まいを車椅子に乗せると、外出用のマスクをまいに付けた。
何度見ても、マスクを付けたまいの様子は辛そうだ。
病室を出るのだけでも一苦労・・・石川は、自分の頼みを聞いてくれたまいに対し、心の中で手を合わせた。
「それじゃあ、行こうか・・・」
石川は、まいの車椅子を押すと、手術室の方へと向かった。
手術室の近くまで来ると、まいと石川は亜依が運ばれて来るのを待った。
程なくして、周りを医師や看護婦に囲まれ、ストレッチャーに乗せられた亜依が姿を現した。
「亜依ちゃん!」
石川が声をかけると、亜依はその方向へ顔を向けた。
「梨華ちゃん!それに、まい姉さんも・・・」
亜依は、二人の姿を見ると嬉しそうな表情を見せた。
続く
>>690続き
亜依は「ちょっと止めて下さい」と自分の周りの医師や看護婦達に頼み、ストレッチャーを止めてもらった。
石川は、亜依の周りに居た人達にちょっと頭を下げると、車椅子を押して亜居の方へ近付いて行った。
「来てくれて有り難う。勇気百倍ってカンジだよ」
亜依がそんな言葉を言ったので、石川とまいの顔から思わず笑みがこぼれた。
「亜依ちゃん・・・頑張れよ!まい姉さんが付いてるからね」
まいは、マスク越しに亜依に激励の言葉をかけた。
「うん、頑張る・・・元気になったら一緒に遊ぼうね」
亜依のその言葉に対し、まいもニッコリ笑うと大きく肯いた。
「ねえ、まい姉さん・・・ちょっと耳貸して?」
「え?」
「いいから・・・」
石川は、そのやりとりに少しドキッとしたが・・・。
まいは、言われるままに亜依の顔へと自分の顔を近づけた。
続く
>>691続き
石川は、ハラハラしながらその様子を見ていたが、今度は亜依はまいにキスをするでもなく、本当に何事かをまいの耳元で囁いていた。
「・・・ねえ、約束ね?」
「わかった。約束ね」
亜依とまいは、何か約束事をしたようだ。
「じゃあ、指切りしよっか?」
まいはそう言うと、亜依と指切りを交わした。
「・・・それじゃあ、亜依ちゃん、そろそろ行こうか?」
看護婦の一人に促され、ストレッチャーは再び手術室へ向かって動き出した。
「頑張ってね」
最後にまいはそう声をかけると、右手を結んで親指を立てるジェスチャーをした。
亜依もそれに応え、同じポーズを取った。
続く
>>692続き
やがて、亜依を乗せたストレッチャーは手術室の中へと消え、扉が閉められた。
「手術中」という赤いランプが灯り、手術がいよいよ開始される事を告げていた。
まいと石川はそれを何となく見ていたが
「手術は数時間かかるから・・・病室に戻ってようか」
と石川が促し、二人は再び病室へと戻って行った。
「ねえ、まいちゃん・・・さっきは何を約束してたの?」
病室へと戻る途中、石川はまいにそう訊ねたが、まいは
「うん、まあちょっとね」
などと言ってはぐらかしたので、石川はそれ以上は聞かなかった。
「手術、上手くいくといいね・・・」
まいは、ポツリとそんな言葉を漏らした。
「うん、そうだね・・・」
石川も、まいと同じ気持ちだった。
亜依の手術が無事に終わりますように・・・二人は祈るような気持ちだった。
続く
>>693続き
病室に戻ってから数時間の間、まいはベッドに横たわり天井を見上げながら、亜依の手術の事ばかりを考えた。
「頑張れよ・・・」
まいは、虚空に向かって呟いた。
石川は、ナースステーションで今日の仕事を片づけていたが、その間も亜依の手術の事で頭が一杯であり、気が気ではなかった。
何度も時計を見やり、ソワソワと落ち着かない時間を過ごしていた。
「そろそろ終わる頃かしら・・・」
石川は、そっと席を立つと、手術室の方へと向かった。
否が応でも緊張感は高まり、胸の鼓動が早まった。
手術室の前に着くと、まだ「手術中」を示す赤い明かりは付いたままになっていた。
「まだ終わってないのか・・・」
そう思った矢先、灯火していた「手術中」の明かりがパッと消えるのが見えた。
手術は終了したらしい・・・石川はゴクリと唾を飲み込んだ。
続く
>>694続き
手術室の扉が開き、やがて執刀を担当していた医師が出て来た。
「先生、亜依ちゃんは・・・」
医師はチラリと石川の方に顔を向けると、手術用のマスクと手袋を外した。
そして、ニッコリ笑うと、石川に向かって右手でVサインを作ってみせた。
「手術は無事成功しました。後は、しばらく経過を見なきゃいけないけど・・・石川さん、後は頼むよ」
医師はそう言うと、石川の肩をポンと叩いた。
「良かった・・・」
石川は、安心してその場にヘナヘナと座り込みそうになるのを何とか堪えた。
そして、暫くすると、ストレッチャーに乗せられた亜依が手術室から出て来た。
亜依はまだ眠っていたが、穏やかな寝顔を浮かべていた。
「亜依ちゃん、良かったね・・・」
無事に手術室から帰還した亜依へ、石川は労いの言葉をかけた。
石川は、胸が熱くなるのを感じていた。
続く
>>695続き
「まいちゃん!亜依ちゃんの手術、上手く行ったよ!」
石川は、大急ぎでまいの病室へ戻ると、まいに亜依の手術が無事成功した事を伝えた。
「ホント!?良かった・・・」
まいも、心から安心したような笑顔を見せた。
「まいちゃんが激励してあげたお陰だよ。まいちゃん、有り難う」
「何言ってんの・・・手術したのはアタシじゃないし」
石川に誉められると、まいは照れ臭そうに笑った。
「あ、そうそう・・・亜依ちゃんね、もう少し術後の経過を見て、それが良好だったら・・・この特別病棟に来る事になってるの。その時はよろしくね」
石川のその言葉を聞くと、まいはまた嬉しそうな表情を見せた。
「そう、それは楽しみだ・・・賑やかになりそうだね」
まいは本当に嬉しそうだった。
石川も、そんなまいの顔を見て嬉しくなった。
その日の夜、亜依は心配された合併症の心配もとりあえずは無いという診断が下され、まいの居る特別病棟へと入る事が決定された。
続く
>>696続き
「まいちゃん、亜依ちゃんが来たよ」
石川を始め、数人に付き添われながら、ストレッチャーに乗せられた亜依が特別病棟へと入って来た。
亜依は、既に目を覚ましていた。
「まい姉さん・・・ただいま!」
亜依は、まいの顔を見ると、誇らしげに挨拶をした。
まいは、亜依の元気そうな様子を見ると、ニッコリと微笑んだ。
「お帰り、よく頑張ったね・・・あいぼん!」
まいのその言葉を聞いて、石川はビックリしたような顔を見せた。
「あいぼん!?・・・亜依ちゃんの事?」
石川のそんな顔を見ると、亜依はおかしそうにクスクスと笑った。
「そうだよ、あいぼん。さっき、まい姉さんと約束したんだ・・・無事に手術が終わったら『あいぼん』って呼んでね、って。ねえ、まい姉さん?」
「うん、そうだよね、あいぼん」
まいと亜依は、顔を見合わせてニコニコしていた。
こうして見ると、本当の姉妹のようだ・・・石川はそんな事を思った。
続く
>>697続き
「あのね、本当の仲良しの友達には私の事を『あいぼん』って呼んでもらう事にしてるの。だから、梨華ちゃんもこれからはあいぼんって呼んでね!」
「う、うん、わかった。じゃあ・・・あ、あいぼん」
半ば強引に言わされた感じではあったが、石川は亜依に言われた通りに『あいぼん』と呼んだ。
「梨華ちゃんったら、照れちゃって・・・カワイイ!」
亜依にそう言われると、石川は頬を赤らめた。
「なに言ってんの。亜依ちゃん、今日からはここで暫くまいちゃんと一緒になるけど・・・迷惑かけちゃダメよ」
石川は少し咳払いをすると、亜依に対してそう釘をさした。
「うん、わかった。まい姉さん、これからよろしくお願いします」
亜依は、割と素直に石川の言う事を聞くと、改めてまいに挨拶した。
「こちらこそよろしくね、あいぼん」
まいも、亜依に対してそう返事をした。
こうして、暫くの間、亜依とまいは病室を共にする事となった。
続く
12月15日
今日、病室に新たな仲間が増えた。
名前はあいぼん。
とっても可愛くて、まるで妹みたいな子だ。
この子を見ていると、何だかとても元気を貰えるような気がする。
あいぼんの天使のような寝顔を見ていると、幸せな気分になっちゃうよ。
あいぼん、これからもよろしくね。
とりあえず、今回はここまでです。
最後にまいの日記を持ってきましたが、一応、前回の日付から一週間ぐらい経った時の出来事としました。
クリスマスまであと少しという設定で、その事についてちょっと考えている筋書きも有りますが、一応ここで切っておきます。
それと、今回の分のご意見・ご感想などが有りましたら是非ともよろしくお願いします。
>>701 レスしておきました
どうも色々とすみません・・・
ほ
ほ
ほ
ほ
ほ
ほ
日頃この小説をご愛読下さっている皆様、いつも読んで頂き有り難うございます。
さて、私は昨日の分(
>>677-699)を書いていた者ですが、一身上の都合により暫く休筆させて頂きたいと思います。
私はこの作品が大好きであり、是非とも完成させたいと強く願っておりますが、諸般の事情によりまして暫くの間はお休みを頂きいと存じます。
私自身の責任に起因する或る事情による休筆という事が一番の理由でもありますが、少し執筆から離れ、今一度この作品を見つめ直したいという気持ちもありました。
今まで、この作品に関わってこられた他の作者の皆様、そして読者諸兄、小説に関わってくれた全ての皆さん、本当にどうも有り難うございました。
また必ず帰って来ます。
その時まで、しばしの間お別れです。
応援どうも有り難うございました。
末筆になりますが、もう一人の作者さん、色々とご迷惑をかけてしまし本当にすみませんでした。
>>709 ちょっと待てって、とりあえず打ち合わせスレ覗いて
どうも、色々とお騒がせしておりますが・・・。
先程、「もう当分帰ってこない」みたいな事を書きましたが、とりあえず長期休筆っていうのは撤回します。
まあ、色々有りましてつい先走ってしまいましたが・・・もう書きたくないとかそううわけじゃなくて、書きたい事は山ほど有ります。
ただ、諸般の事情により(その辺は詳しくは言いませんが)、ちょっと執筆のペースは落ちるかもです。
その辺をご理解して頂きつつ、これからも見守って頂けると有り難いです。
では、これからもよろしくお願い致します。
ほ
ほ
ぜ
ん
保全
ほ
ほ
ほ
ほ
保全
ほ
ぜ
ん
保全
保守
ほ
ぜ
ん
ホ
シ
ュ
733 :
名無し募集中。。。:03/12/29 13:46
【ゴールデンレス】
このレスを見た人はコピペでもいいので
10分以内に3つのスレへ貼り付けてください。
そうすれば14日後好きな人から告白されるわ宝くじは当たるわ
出世しまくるわ体の悪い所全部治るわでえらい事です
保全
保全
保全しても続きがない罠
>>736 ちょっとペースダウンするだけですよー。
続きは有るよ
ただ、俺は今アクセス規制されてて書き込めないし(これは携帯から書いてる)、もう一人の作者さんも忙しいみたいだし
とにかくもう少し待って下さいな
ほ
(⌒⌒⌒)
☆ノハヽヽ |____|
川=‘ゝ‘=|| .~~c■◎ (^▽^ ) ハイdd♪
( つ旦 )  ̄ ̄ ̄⊂ )
と_)_)  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ .(_(_)
ほ
保全
続きはいつになることやら
>>743 いちいち文句言ってんなよ
書いてもないくせして
ほ
保全
ほ
保全
ほ
保
全
い
ほ
ぜ
ん
い
年内に更新できればと頑張っています。
でももしかしたら来年の頭になるかもなので
その時はごめんなさい。
みなさん、保全して下さってありがとうございます。
保全
ほ
ぜ
ん
保全
ほ
年末年始は保全が大変だなあ
ほ
ほぜん
ほぜん
ホ
ぜ
ん
テスト
☆ノハヽヽ@ノハ@
川=‘ゝ‘=||( ^▽^) ちょっと通りますね♪
三 |∪ ̄ ̄ ̄∪ ̄ ̄|
◎――――――◎
昨年中は色々とお世話になりました
皆さん、今年もよろしくお願い致します
新年保全
ほ
777!
保全
ホ
ゼ
ン
ほ
ぜ
ん
保全ばっかりやなー
川=‘ゝ‘=||<保全するのだ
h
o
z
>>677 の前の部分を書いて行きたいと思います。
とりあえず、途中まで更新します。
>>628続き
学校が終わり家に帰ったらすぐにインターホンが鳴り
玄関のドアを開けると俺の姉の絢香が立っていた。
姉は俺が病院に通い詰めていたせいで
連絡がとれずに心配している両親に代わって俺の元を訪ねてきた。
俺は高校に入学して、学校の寮に入っていたのだが
どうにもこうにも居心地が悪く、規則も厳しかった為に
高校2年の夏休みをきっかけに、小さなアパートを借り
そこで一人暮らしをしていた。
続く
>>790続き
「あれ?戻ってきたんだ。」
「今年からはこっちの大学に通ってるのよ。」
「知らなかった・・・」
「だってあんた春頃から急に連絡取れなくなるんだもん。」
姉は俺の部屋に入るなり、
散らかってしまっていたその部屋を見渡すと
何も言わずに片づけ始めた。
姉は小さい頃から英会話教室に通っていたので英語がかなり得意で、
高校卒業後はハワイの大学に留学していた。
続く
>>791続き
「お母さん、何か言ってた?」
「何かって・・・そりゃ心配してたわよ。」
「そっか・・・。」
「そっか・・・って。あんた、夏休みもこっち帰って来ないし
携帯もよく電源切ってるみたいだし・・・。
あと何ヶ月かで高校卒業するってのに、進路の話も全くないし。」
姉は口にする内容とは裏腹に、表情は明るく怒っている様子はなかった。
「ま、あたしもハワイ行ったり帰ってきたりあんたの事言えないけどね。」
「わりぃ・・・。」
「いいってことよ。でも何かあるなら聞いてかえらなきゃいけないし、
あと、来年どうするのか?これも聞いて帰らなきゃいけない。」
「うん・・・。」
散らかっていた部屋がなんとなく片づくと
姉はキッチンに向かい、お茶を入れ始めた。
続く
>>792続き
「俺、やるよ。」
「いいわよ。それくらい。それより、何かあった?」
姉はお茶を入れるとそれをテーブルの上に置き俺の正面に座った。
姉と面と向かって喋るのは初めてのようでなんとなく落ち着かなかった。
「俺に彼女いたんだ。」
俺は姉にこの一年の事を少しずつ話すことにした。
「聞いてるよ、お母さんから。同じ学校の同級生でしょ?写真も見たことある。」
「でさ・・・。」
「ん?ちょっと待って、『彼女いた』って事は別れたの?」
「あ、と・・・まぁ細かい事は後で話すけど、今も付き合ってるようなもんだけど。」
「よくわかんないな。」
「まぁ、いいじゃん。でさ・・・その子・・・」
俺は姉の興味津々聞くその表情を見て、少しだけその後の言葉を続けるのに躊躇した。
続く
>>793続き
「その子・・・どうした?」
「うん・・・。」
「何なのよ〜。」
姉はふざけた口調で俺の言葉を急かした。
だから、俺は声のトーンを少し落として一語一語繋ぐように話した。
「いや・・・、病気でさ。国の難病指定受けてる病気なんだ・・・。」
姉は俺のその言葉を聞くとさっきまでの表情を一変させて
真剣な眼差しになり、俺の言葉を待った。
「再生不良性貧血っていうんだけど・・・知ってる?」
「・・・ううん、初めて聞いた。」
続く
>>794続き
「体中の血液の要素が足りなくなる病気なんだ。これは骨髄移植をしないと治らない。
でもその骨髄移植のドナーも見つかってないんだ・・・今は・・・。
病気がわかったのがちょうど今年の春で。
それから彼女、ずっと入院してて・・・ここ最近は特に悪くなってきてて・・・。
今は・・・一人で起きあがる事もできない・・・。」
「うん・・・」
「だから俺、その事で頭いっぱいで・・・家に連絡なんてとてもする気になれなかった。」
俺はそこまで言うと、胸が詰まったような感覚を覚え、
姉に向かって頭を下げると「ごめん。」とだけ言って謝った。
続く
>>795続き
姉はしばらくそんな俺を見ていたけど、俺の頭を上げてこう言った。
「で?進路は?考えてないなんて言わないわよね?」
「うん・・・・まぁ・・・なんとなく・・・」
「なんとなくって?」
「俺・・・来年浪人しようかなって思って。」
「浪人?」
「うん、今年はとてもじゃないけど勉強らしい勉強してないし。
それに・・・夢みたいな話だけど、漠然とした夢ができたんだ。」
俺はこの時、最近意識し出していた自分の目標を話す事にした。
続く
今日はここまでです。
保全ばっかりで申し訳ないので途中までUPしました。
続きは近いうちに更新します。
読者の皆様、並びにもうお一人の作者様、
ご迷惑おかけしましてすみません。
年始なもので・・・大目に見てやって下さい。
作者さん乙です
ほ
ぜ
800
ほ
802 :
p6f8a9a.toymnt01.ap.so-net.ne.jp:04/01/02 20:54
ぜ
ん
保全
ho
ze
n
里
田
ま
い
辻加護脱退騒動により緊急保全
石
川
梨
華
保
全
このスレも落ちずによく頑張った!感動した!
読者さんありがとうございます!
読者さんありがとうございます!
というわけで保全
823 :
名無し募集中。。。:04/01/04 16:36
ほ
そ
か
わ
た
か
し
保全
ほぜん
ホゼン
ほ
( o゚д゚o)<うっさい、ゴルァ!
ほ
し
の
あ
さ
み
ほしのあさみ?
保守
保全
ほぜん
ほ
ヒトイネ
ほ
ほ
保全
ヒトイネ・・・
ひたすら保全
保
全
ほ
ほ
ぜ
作者の一人なんですが
しばらく体調を壊し、入院しておりました。
先日退院いたしまして、やっと来週から社会復帰といった感じです。
更新が停滞している事、お詫び申し上げます。
なるべく早い段階での更新目指して頑張ります。
>>859 作者さんお久しぶり
無理しない程度に頑張ってね
>>859 お久しぶりです
あまり無理をなさらないで下さいね
ほ
ほ
ほ
ほ
>>859 |
|ハヽ8〜
|▽^)
|ハヽ☆ おだいじに〜♪
|ゝ‘=||
|⊂ )
ほ
ぜ
869 :
名無し募集中。。。:04/01/10 00:45
ん
ほ
ほ
ほ
ほ
ほ
ほ
連休中に更新します。
ほ
ぜ
ん
保全
ほ
保守
ほ
ぜ
ん
888 :
名無し募集中。。。:04/01/11 21:49
保全
ほ
ぜ
ん
保全
保守
ほ
ぜ
ん
保全
ほ
遂に900
>>796続き
「夢?」
「夢っていうか・・・、俺・・・医学部受けようかと思って。」
「医者になるの?」
「そういう具体的な目標じゃないんだけど・・・。
ただ・・・医学の事をもっと詳しく知りたくなった。」
そう。俺は口にする事こそ初めてだったけど
まいに対して何も出来ない自分への苛立ちなのか、
最近、漠然とそう思うようになっていた。
「医学部か・・・。」
「でも今の俺の成績じゃとても無理なのはわかってるし・・・。」
「そうね。」
「だから・・・」
俺はなんとなく言葉に詰まって、姉から目を逸らしてしまった。
そして逸らせた目線の先の机の上には、
元気だったまいと二人でふざけて撮った写真があった。
姉はその俺の視線を鋭く見抜くと、その写真を手に取った。
続く
>>901続き
「彼女の為?」
「え?」
「彼女の為に・・・医者になるの?」
姉の率直な質問に俺はすぐに返答できなかった。
そして、黙り込んだ俺に対し姉が放った言葉は意外なものだった。
「彼女の為だったら、今すぐその考え捨てなさい。」
俺は突然の姉のその言葉に、驚き視線を姉の目にやった。
すると姉の目も真剣なものだった。
「彼女・・・治る見込みが少ないんでしょ?」
「そんな事ないって!!すぐに元気になるさ!」
「でも、今のままだと?骨髄移植もできないんでしょ?」
「そうだけど・・・そうだけどさ!なんでそれがいけないんだよ!」
俺は少し正気を失って姉に食ってかかった。
「いけないとは言ってないわ。でもやめた方がいいって。」
「何でだよ!!」
俺がそう言うと、姉は手にしていた写真立てを元に戻すと
机の上に伏せて置いた。
続く
>>902続き
「何でそんな事すんだよ!」
俺はその伏せられた写真を立て直しに行った。
すると、姉はその手を遮り、俺の頬をひっぱたいた。
「落ち着きなさいよ!」
俺はその頬の熱い感触を感じつつも、悔しい思いがいっぱいで
頬を押さえる事もせず、溢れてくる涙もそのままにした。
けれども流れる涙は抑える事ができなくなる一方で、少しずつ俺の脳は
クリアに、そして鮮明に落ち着きを取り戻していることは自分でもわかった。
姉はそんな俺を見て立ち上がると、
冷めてしまったお茶を持って台所へ行き、新しいお茶を沸かすと
それを持って、俺の向かいに座った。
俺はその湯飲みから出てくる湯気をしばらく眺めていたが、
やっとそれを手に取ると、その暖かいお茶を喉の奥に通した。
続く
>>903続き
「本当はさ、骨髄移植が出来ない場合の生存率って半分にも満たないんだ。
それにそれまでに試みた治療法も結果を残してくれない。
最初はさ、なんで入院してるんだろ、コイツって思ったくらい。
病名聞いた時だって、どこかで信じてなかったっていうか現実味がなかった。
でも、やっぱり症状はどんどん現れて・・・。
最初はちょっと体動かしただけで息切れしてたり、熱を出したり
でもしまいにゃ歩けなくなって、突然胸押さえて苦しんだり、
気が遠くなるような鼻血を出して・・・こないだは血を吐いた。
俺さ、そんなまいの体の変化を受け入れられなくて・・・。
どう接したらいいかわからない。怖いんだよ・・・見てるのが。
だからさ、せめて病気の事だけでもわかってやりたいって。
別に助けてやれるなんて思ってない・・・ただ・・・」
俺は思った事をそのまま言葉にしていった。
今の俺にはこの事を整理つけて話す事なんてできなかった。
続く
>>904続き
姉はそれをずっと黙って聞いていてくれていたが
俺が言葉に詰まったのを確認すると、穏やかな口調で俺に語りかけた。
「わたしはね、彼女を想う気持ちを責めてるわけじゃないの。
でも、彼女どう思うかな?自分の為に医学部受けるなんて聞いたら。」
「え?」
「辛くないかな?」
「どうして?」
「彼女の為っていうのがさ。きっと彼女たまらないだろうな・・・」
姉はそういうと、少し困ったような顔をして俯いた。
「彼女、少しは覚悟してると思うんだ。もちろん希望も持ってると思う。
でもね、死と隣り合わせなのよ。もしかしてっていう時の事だって考えると思う。
そしたら、自分の愛する人には自分の為に何かに生きてもらうよりも
愛する人が、その人の為に生きて欲しいって考えると思う。」
俺は姉から口から出てくる話を聞いていて
まるでまいの意志を聞かされているような気分になっていた。
それはもちろん俺も少しは考えていた事だけど・・・。
続く
>>905続き
「例えばさ、あんたが風邪引いて寝込んだとして
その看病の為に彼女が一日でも学校を休んだら、嫌でしょ?
それと同じ事が彼女にとっては日常で、きっと引け目を感じながら生きてるんだと思う。」
そこまで話すと姉は
「ま、彼女があたしと同じ考え方してるかどうか本当のところはわからないけど。」
と言って笑ってみせた。
俺はそんな姉の言葉を聞いて、それからそれを話す姉の表情を見て
まいって姉に似てるかな?と少し感じた。
「女ってみんなそんな事考えてんの?」
「そういうわけじゃないけど。逆に言えばあんただからわからないのかもね。」
「え?」
「愛する人だからって事よ。」
俺はそう言われて少し納得した。
冷静さを失っているといえばあまりにも単調な言葉だけれども
今の俺は、弱っていくまいの体しか見えていなくて
その上ろくに話もできないから、まいが今何を考えているかが
掴みきれないでいたようだった。
続く
>>906続き
そしてしばらく考え込んでいたら
俺の目の前にいる姉がすっと立ち上がった。
そして、
「夕飯、まだでしょ?食べる?」
と聞いてきた。俺はそれを聞いてもうそんな時間になっていたんだと気がついた。
そして、今日は病院にまいに会いに行っていない。
姉は俺の返事を聞かずに鞄から財布を取り出して
外に出て行こうとした。
だから俺はそんな姉を呼び止めた。
続く
>>907続き
「時間・・・ないかもしれないんだ・・・。」
「時間?」
「まいの・・・。そう考えたくないけど・・・」
「うん。」
「だから、今年は受験しない。別に避けてるわけじゃなくて
もう少し考えたいんだ。医学部に進む事だって、まいの為だけじゃない。
俺自身、真剣にそう思ってる。俺の為でもあるんだ。」
「わかった。」
「だから、もうしばらくだけはまいの為に時間を割いてやりたい。
それに、望みは消えたわけじゃないんだ。元気になるって俺信じてるし。」
自分から咄嗟に出た言葉だったけれど、さっきよりも冷静に自分の事を話せていた。
姉も姉でそんな俺の言葉を聞いて安心したようだった。
続く
>>908続き
「あんた自信がポジティブになれればと思っただけだから。
さっきまでのあんたじゃ、とてもじゃないけど彼女を支えてあげられなかった。」
「ありがと・・・」
そして姉は玄関のドアに手を掛け
「それから。あたしもしばらくココに泊めてもらおうと思ってるから。
近いうちに彼女紹介しなさい。
それと・・・さっき言ってたみたくあんた自信が本当に元気になるって信じてあげなきゃ。
あんたが不安がってたら、彼女もっと不安になっちゃうでしょ?しっかりしな!」
と言って買い物に出かけた。
それから俺は姉の出て行った玄関をしばらく見つめていた。
俺の迷いは姉に対して自ら言葉にした事や、姉に貰った助言によって
少しずつではあるけれど、溶かされてきたように思えた。
今のまいにしてやれる事、それは特別な事ではない。
俺自身が不安がっていても、怖がっていても
それはより一層まいの心を落としていくだけだった。
まいはそんな俺なんかよりずっと辛い。
続く
>>909続き
それに、もしかしたらまいが元気になるって事
一番俺が疑っていたかもしれない・・・。
だから姉の前でも、あんなにムキになって食らいついた。
一番信じてやらなければいけないのは俺だった。
その日俺は近いうちに姉を連れてまいに会いに行こうと思った。
ここまでです。
更新が遅れた上に、大したことのない文章ですみません。
今回はアヤカを出してみました。
それから、次回はその次の
>>686-699 亜依とのやりとりの部分に少し加筆していきます。
そちらの方は出来次第、こちらで報告し
作品自体は里田祭りさんのところに転載するというカタチになるかと思います。
よろしくお願いいたします。
作者さん乙です
ほ
ぜ
ん
ほ
ぜ
〜8ノハヽ8〜 ☆ノハヽヽ
( ^▽^) 川=‘ゝ‘=|| ちょっと通りますね♪
三 |∪ ̄ ̄| ( O┬O
◎――◎-◎-ヽJ┴◎
キャワ
ほ
ほ
ぜ
ん
保全
ほ
ぜ
作者様・修正転載職人様・皆々様いつもおつかれさまです♪m(__)m
板名変更のお知らせ♪
ハロプロ(里) →ハロプロ(祭)に変更しました♪ 今後もよろしくお願いします♪m(__)m
ほ
>>926 (里)から(祭)に変えたのって、里田への愛情の低下?
ほ
>>928 愛情は低下してませんよ♪ 元々里石ヲタなのでバランスをとっただけです♪
川=‘ゝ‘=||人(^▽^ )
932 :
名無し募集中。。。:04/01/15 15:06
川=‘ゝ‘=||
ほ
ぜ
935 :
名無し募集中。。。:04/01/15 20:27
ん
保全
ほ
ぜ
ん
( ^▽^)<ほ!
川=‘ゝ‘=||<ぜ
ん