21世紀

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26名無し募集中。。。
のび太とドラえもんに別れの時が訪れます。それは、なんともあっさりと...

のび太はいつものように、宿題をせずに学校で叱られたり、はたまたジャイアンに
いじめられたり、時にはスネ夫の自慢話を聞かされたり、未来のお嫁さんであるは
ずのしずかちゃんが出来杉との約束を優先してしまう、などどどと、とまあ小学生に
とってはそれがすべての世界であり、一番パターン化されてますが、ママに叱られ
たのかもしれません。とにかく、いつものように、あの雲が青い空に浮かんでいた、
天気のいい日であることは間違いないことでしょう。
そんないつもの風景で、ドラえもんが動かなくなっていた...

当然、のび太にはその理由は分かりません。喋りかけたり、叩いたり、蹴ったり、
しっぽを引っ張ってみたりもしたでしょう。なんの反応も示さないドラえもんを見ての
び太はだんだん不安になってしまいます。付き合いも長く、そして固い友情で結ばれ
ている彼ら、そしてのび太には動かなくなったドラえもんがどういう状態にあるのか、
小学生ながらに理解するのです。その晩、のび太は枕を濡らします。
27名無し募集中。。。:03/08/28 19:54
ちょこんと柱を背にして座っているドラえもん...

のび太は眠りにつくことができません。泣き疲れて、ただぼんやりしています。無駄
と分かりつつ、いろんなことをしました。できうることのすべてをやったのでしょう。
それでも何の反応も示さないドラえもん、泣くことをやめ、何かしらの反応をただただ、
だまって見つめ続ける少年のび太。当然ですがポケットに手を入れてみたり、スペア
ポケットなんてのもありましたが動作しないのです。そして、なんで今まで気付かな
かったのか、のび太の引き出し、そう、タイムマシンの存在に気がつくのです。ろく
すっぽ着替えず、のび太はパジャマのまま、22世紀へとタイムマシンに乗り込みます。

これですべてが解決するはずが...
28名無し募集中。。。:03/08/28 19:56
のび太は、なんとかドラミちゃんに連絡を取り付けました。しかし、のび太はドラミ
ちゃんでもどうにもならない問題が発生していることに、この時点では気が付いてい
ませんでした。いえ、ドラミちゃんでさえも思いもしなかったことでしょう。 「ドラえもん
が治る!」、のび太はうれしかったでしょう。 せかすのび太と状況を完全には把握
できないドラミちゃんはとにもかくにも20世紀へ。しかしこの後に人生最大の落胆を
することになってしまうのです。動かないお兄ちゃんを見て、ドラミちゃんはすぐにお
兄ちゃんの故障の原因がわかりました。正確には、故障ではなく電池切れでした。
そして電池を交換する、その時、ドラミちゃんはその問題に気が付きました。

予備電源がない...

のび太には、なんのことか分かりません。早く早くとせがむのび太にドラミちゃんは
静かにのび太に伝えます。

『のび太さん、お兄ちゃんとの思い出が消えちゃってもいい?』
29名無し募集中。。。:03/08/28 19:59
当然、のび太は理解できません。なんと、旧式ネコ型ロボットの耳には電池交換時
の予備電源が内蔵されており、電池交換時にデータを保持しておく役割があったの
です。そして、そうです、

ドラえもんには耳がない...

のび太もやっと理解しました。そして、ドラえもんとの思い出が甦ってきました。
初めてドラえもんに会った日、数々の未来道具、過去へ行ったり、未来に行ったり、
恐竜を育てたり、海底で遊んだり、宇宙で戦争もしました。鏡の世界にも行きまし
した。どれも映画になりそうなくらいの思い出です。
30名無し募集中。。。:03/08/28 20:01
ある決断を迫られます...

ドラミちゃんは、いろいろ説明をしました。ややこしい規約でのび太は理解に苦しみ
ましたが、電池を交換することでドラえもん自身はのび太との思い出が消えてしまう
こと、今のままの状態ではデータは消えないこと、ドラえもんの設計者は、設計者の
意向で明かされていない(超重要極秘事項)ので連絡して助けてもらうことは不可能
であるという、これはとっても不思議で特異な規約でありました。ただ修理及び改造
は自由であることもこの規約に記されていました。

のび太はドラミちゃんにお礼を言います。そしてドラえもんは「このままでよい」と
一言、告げるのです。ドラミちゃんは後ろ髪ひかれる想いですが、何も言わずにタイム
マシンに乗り、去っていきました。 のび太、小学6年生の秋でした。
31名無し募集中。。。:03/08/28 20:02
あれから、数年後...

のび太の何か大きく謎めいた魅力、そしてとても力強い意志、どこか淋しげな目、
眼鏡をさわるしぐさ、黄色のシャツと紺色の短パン、しずかちゃんが惚れるのに時間は
要りませんでした。外国留学から帰国した青年のび太は、最先端の技術をもつ企業に
就職し、そしてまた、めでたくしずかちゃんと結婚しました。そして、それはそれは
とても暖かな家庭を築いていきました。ドラミちゃんが去ってから、のび太はドラえ
もんは未来に帰ったとみんなに告げていました。
そしていつしか、誰も「ドラえもん」のことは口にしなくなっていました。
しかし、のび太の家の押入には「ドラえもん」が眠っています。あの時のまま...
32名無し募集中。。。:03/08/28 20:03
のび太は技術者として、今、「ドラえもん」の前にいるのです。小学生の頃、成績が
悪かったのび太ですが、彼なりに必死に勉強しました。そして中学、高校、大学と進
学し、かつ確実に力をつけていきました。企業でも順調に、ある程度の成功もしまし
た。そしてもっとも権威のある大学に招かれるチャンスがあり、のび太はそれを見事に
パスしていきます。そうです、「ドラえもん」を治したい、その一心でした。人間と
はある時、突然変わるものなのです。それがのび太にとっては「ドラえもんの電池切
れ」だったのです。修理が可能であるならば、それが小学6年生ののび太の原動力
となったようでした。自宅の研究室にて...
33名無し募集中。。。:03/08/28 20:04
あれからどれくらいの時間が経ったのでしょう。しずかちゃんが研究室に呼ばれまし
た。絶対に入ることを禁じていた研究室でした。中に入ると夫であるのび太は微笑
んでいました。そして机の上にあるそれをみて、しずかちゃんは言いました。
『ドラちゃん...?』のび太は言いました。『しずか、こっちに来てごらん、
今、ドラえもんのスイッチを入れるから』

頬をつたうひとすじの涙...

しずかちゃんはだまって、のび太の顔を見ています。この瞬間のため、まさにこのた
めにのび太は技術者になったのでした。なぜだか失敗の不安はありませんでした。
こんなに落ち着いているのが変だと思うくらいのび太は、静かに、静かに、そして丁
寧に・・・・何かを確認するようにスイッチを入れました。ほんの少しの静寂の後、
長い長い時が繋がりました。

『のび太くん、宿題は済んだのかい?』

ラえもんの設計者が謎であった理由が、明らかになった瞬間でもありました。
あの時と同じように、空には白い雲が浮かんでいました。 
34名無し募集中。。。:03/08/28 20:05
――--、..,
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ニ __l___ノ
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|( ̄`'  )/ / ,..   宿題は済んだかい?
`ー---―' / '(__ )
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