絵里と青春を過ごしたい 03☆

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12夏の思い出Part1
夏休み、僕は田舎の祖母の家に来ていた。

ある日の昼間、山の中を1人で散策している時、白いワンピースの女の子と出会った。
女の子は「こんな所で何をしているの?」と人懐こそうに話しかけて来た。
僕は特に何もする事がないので、その女の子と川辺リで話し込んだ。

女の子は名前は「えり」と言った。
彼女は地元の子で、綺麗な顔立ちと飛びきりの笑顔が印象的だった。
そしてたまに見せる陰鬱な表情も・・・

それから毎日その子と遊んだ。
一緒に花を摘んだり、水浴びをしたり、果物を取ったり・・・

彼女の家に遊びに行ったりもした。古い木造の家だった。
不思議と家にはいつも誰もいなかったけど、僕たちは取って来た果物を一緒に食べたりした。
そして僕が夕方になって帰ろうとすると、えりはいつも寂しそうに引きとめようとした。

僕はその誘いには乗らず、毎日お祖母ちゃんの家に帰ったけど、
秘め事をしているような気分で「えり」のことは誰にも話さなかった。
13夏の思い出Part2:03/07/26 05:34
そして僕は東京に帰る日が来た。 えりは「思い出に」と髪飾りをくれた。
「また今度ここに来た時遊ぼう」と僕が言うと、えりは寂しそうに笑っただけだった。

髪飾りをお祖母ちゃんの家に持ちかえり、東京に帰るための支度をしていると、
お祖母ちゃんがその髪飾りを偶然見つけ「それをどこで手に入れた?」と顔色を変えて聞いてきた。

その髪飾りは、火事で家が全焼して家族全員死んだところの女の子がよくしていたもので、お祖母ちゃんが昔女の子に上げたものだというだという。
僕がえりのことを話すと、お祖母ちゃんは首をかぶって「あの娘はこの世に未練があったんだねえ・・・」と言った。

僕はそんなことがあるはずがないと、えりの家に行ったが、そこは完全な焼け跡で花が生けてあるだけだった。

僕があまりのことに呆然としていると、ふと「ありがとう」というえりの声が聞こえた。
涙が止まらなくなり、僕はその場から走って立ち去った。


えりの髪飾りは、今でも大切に僕の机にしまってある。