美少女スパイ成膳任〜ソニンたんは不死身Part6

そんなこんなで12/18北海道新聞
「海を渡る風　コリア―ニッポン　２ ソニンは歌う」をテキストうぷします。

テレビのトーク番組で流ちょうな韓国語や民族学校時代の思い出を披露する。
「彼氏にするなら韓国人がいい」と言う。雑誌の企画では鮮やかな黄色のチマチョ
ゴリを着てみせた。
アップテンポの歌とダンスで人気のグループ「EE JUMP」のソニン（18）。漢字
で膳任と書く。デビュー当初から在日韓国人であることを隠さずに活躍する、お
そらく初めてのアイドルタレントだ。
でも、本人は拍子抜けするほど気負いが無い。「国籍を隠してまで芸能活動をし
ている人がいるなんて、デビューするまで知りませんでした。今になってすごい
ことをしたんだなっていう感じ」

在日韓国・朝鮮人の歌手や俳優は少なくない。けれども、そのほとんどがその本
名も出自も隠している。日本社会に根強い偏見で人気が下がるのを恐れるからだ。
韓国の映画がヒットし、日本人女性が韓国人歌手の「追っかけ」をするようになっ
ても、なぜか変わらない。
ソニンをあえて本名で売り出したのは所属プロダクション、ハーモニープロモー
ション社長の和田薫(36)だ。
在日が多い大阪市生野区で生まれ育った和田は、小学校の卒業式の一場面が忘れ
られない。日本人だと思っていた仲の良い友達の何人かが聞きなれない名前で呼
ばれて証書を受け取ったのだ。
友達が在日と知ったショックと、本名を明かした勇気への驚き。彼らがその後、
進学や就職に苦しむ姿にも触れてきた。

ソニンは2000年夏、「SPEEDのような歌手になりたい」とオーディションを受け
た。「本名で出場した在日三世」が和田の目に留まった。
「大上段な大義があるわけじゃない。芸能界でだれもやったことがないことをや
りたかっただけ。子供のころの友人たちへのメッセージでもあります。もう、そ
んな時代ではないんだと」
在日韓国人二世で、芸能界と間近に接してきた映画監督崔洋一(51)。彼は、芸能
界に今なお残る差別や偏見を肌で感じている。そんな思いが、作品を生むエネル
ギーにもなってきた。「この世界では、歌手はいい歌を、監督は面白い映画を残
したやつが勝ちなんだ｣
その崔の目に、くったくのないソニンのような若い世代はどう映るのか。
｢豊かさの中で育った在日三世や四世は、自分の帰属性を突きつめることをしな
いよな。だから、民族は風化していく。その良しあしは分からないけど･･･｣
日曜日の十六日午後、札幌市中央区のサッポロファクトリーアトリウムが四千人
で埋まった。
オリコン初登場で十位を記録した初のソロ作品の宣伝イベント。ステージでは真っ
白なジャケットとパンツ姿の160�aの体がまりのように跳ねた。「ソニーン」｢ア
ンニョーン（こんにちわ）」の歓声。ソニンは今、しっかりと若者の心をとらえ
ている。
ステージの後の握手会。ソニンに握られた手を、大切そうにコートの襟元にしま
いこんだ十代の女性ファンは言った。｢彼女が韓国人っていうのは知っています。
でも『ザイニチ』って何ですか？」
ソニンと彼女を取り巻く空気のあまりの無邪気さ。そこに批判はあるかもしれな
い。しかし、アトリウムの中は間違いなく、ほとばしるような一体感に満ちてい
た。（敬称略）