25 :
メダルマ:
「よっすぃ〜、早く〜!」
りかちゃんは嬉しそうに駆け出した。
外は一面の銀世界。この冬一番の大雪。
毎日目にする道路も、信号も、建物も、みんな真っ白な雪が包み込んでいる。
私の心の中みたいだ。
私の心の中のあらゆる感情も、みんな真っ白でキレイな梨華ちゃんで包み込まれている。
そのおかげで、どれだけ私が救われてきたか・・・。
そう考えて、私はクスっと笑ってしまった。
我ながらクサすぎる。
「何やってるんだよぉ、えいっ!」
「うあっ!?」
雪を見つめたままぼうっとしている私に向かって、りかちゃんは思いっきり雪玉を投げつけてきた。
「つめた〜い!!くっそー、お返しだ!」
私は足元の雪をすくい上げ、梨華ちゃんに投げつけた。
見事命中!
「きゃ〜!!つめた〜〜い!」
梨華ちゃんは首をすくめて跳ね上がった。
でも、その顔はすごく嬉しそうだ。
「よ〜し、よっすぃ〜、勝負だっ!!」
「私に勝とうなんて百年早い!」
私たちはしばらくの間、おもいっきり雪合戦を楽しんだ。
ああ、何年ぶりだろう、こんなに夢中になって遊んだのは。
そう、こんな風に、いつも梨華ちゃんはひねくれてしまった私の心を真っ白にしてくれる。
しばらくして、梨華ちゃんは突然手を止めた。
「お、降参?」
私がニヤニヤして聞くと、梨華ちゃんはぽてぽてこちらのほうに歩いて来て私の手をにぎった。
「えへへ」
梨華ちゃんはちょっと恥ずかしそうに笑った。
「よっすぃ〜といると、真っ白になれた気がするの」
「!」
私の驚いた顔を見てか、梨華ちゃんは慌てて付け加えた。
「あ、心のことだよ!肌ももうすぐ真っ白になる予定だけど・・・」
無防備な表情を見せる梨華ちゃんを、私は思わず抱きしめた。
腕の中の梨華ちゃんは、冬の匂いがした。
「よっすぃ〜、あったかい」
梨華ちゃんの腕が私の背中にまわされる。
私はゆっくりと目を閉じる。
梨華ちゃんもあったかいね。
私は梨華ちゃんにとって、私にとっての梨華ちゃんのような存在でありたいと思うよ。
いつまでも、いつまでも。
この雪はすぐに解けてしまうけど、
この真っ白な世界の中で抱き合ったことは、きっと一生忘れないよ。