1 :
cosmicbaby:
かごまき小説です。
2 :
名無し娘。:2000/11/21(火) 22:17
終了
3 :
名無し娘。:2000/11/21(火) 22:17
エロいのネ!
4 :
名無し娘。:2000/11/21(火) 22:18
かごまきって時点で駄目
5 :
第1話:2000/11/21(火) 22:21
「後藤さん、後藤さん」
加護が、私の服の裾を引っ張る。
「私のダンス、見てください」
(またか)と私は、内心、ガックリくる。
加護の教育係に任命されてから、三ヶ月が過ぎた。
私たちは、コンサート用のダンスの、自主練習をしていた。
6 :
第1話:2000/11/21(火) 22:21
「じゃあ、やってみ?」
あんたにゃ、もったいない、と口ずさみながら、加護は、ぴょこぴょこ動いた。全然ダメだ。
「加護のパートはそうじゃないでしょう? ほら、こっちはこうやって」
私は、自由時間を自分の練習に使って、スタジオでは、加護のダンスを教えていた。
(なっちや裕ちゃんはいいな。自分の時間がたくさん持てて)
(今までだったら、私が手取り足取り教えてもらってたのに)
7 :
第1話:2000/11/21(火) 22:21
加護は、うーんと、と呟きながら、動きを止めてしまった。
「ねえ、加護。あんた、ヤル気あるの?」
イラだちが、口調をキツいものにする。
加護は、うつむいて、しゅん、となってしまった。
彼女が悪いんじゃない、ってことは分かってる。
8 :
第1話:2000/11/21(火) 22:22
でも、
「あとは自主トレしてな。通しで出来るようになったら、また見せにおいでね」
解散、解散〜、と手をパタパタさせて、私は立ち上がった。ジャージのホコリを払い落とす。
加護は何かいいたそうだったけど、無視してリハーサルスタジオから出た。
ちら、と振り向くと、加護は、まだ立ち尽くしたまま、こっちを見ていた。
9 :
第1話:2000/11/21(火) 22:22
自動販売機の前で、よっすぃをつれたやぐっちゃんと会った。
「よお、ごっちん」
元気良く、やぐっちゃんは片手をあげて私のあだ名を呼んだ。
「ちょっとさ、ごっちんと私、二人きりで話したいから、あんたはあっちに行ってな」
と、よっすぃに通路の奥を指し示した。
「はい。じゃあ、また後で、矢口さん」
「おう」
よっすぃは、やぐっちゃんと話をするとき、心持ち中腰になって、視線を同じ高さにする。
やぐっちゃんの方が年上なのに、そんな二人の様子を見てると、なんだか立場が逆に見える。
10 :
第1話:2000/11/21(火) 22:22
向こうへ歩いていくよっすぃを眺めていた私の横顔に、やぐっちゃんが話しかけてきた。
「ねえ、ごっちんさ。加護にキビしく当たりすぎてない?」
腰に手を当てて、私を見上げて、やぐっちゃんは云う。
「そんなこと、ないですよ」
不服そうな声を出して、返事する。
「ごっちんは、新人の頃、そんな風に、されてた? もっと、優しく教えてもらってたハズだよ」
表情がこわばるのが分かる。
11 :
第1話:2000/11/21(火) 22:22
「紗耶香ももういないんだしさ、ごっちんはもう一人前だ、って自覚持って貰わないとね」
得意げに話を続けるやぐっちゃん。
「……私が頼んで教育係になった訳じゃないもん」
やぐっちゃんの眉がぴくりと動く。
「──ごっちん!」
強い口調。
12 :
第1話:2000/11/21(火) 22:23
「私だって、まだモーニング娘。に入って、一年たってないんだよ。もっと、市井ちゃん
に教えて欲しかったこと一杯あったのに、どうして私だけ、こんなしんどい目して、加護
の相手してやらないといけないのさ」
ヤバい。泣きそうだ。
目を丸くしているやぐっちゃんを置き去りにして、私はその場から走って逃げた。
角を曲がったところに、加護が立っていた。私は、彼女を突き飛ばして、そのまま走った。
尻もちをついて、首だけこっちを向けている加護の姿が視界の隅に映った。
13 :
第1話:2000/11/21(火) 22:23
「亜依ちゃん、だいじょうぶ?」
辻が、加護に手を差し出す。
ごめんな、と、加護は辻の手を借りて、立ち上がる。
「後藤さん、私のことキライなのかな……」
加護は、小さな声でつぶやく。
「もっとダンスの練習をしてから、後藤さんに見せてあげるといいのよ」
辻が、加護の肩をポンポン叩いて言う。
「そうだね、ありがとう」
加護は、なんとか笑顔を作って、返事する。
14 :
第1話:2000/11/21(火) 22:23
「ほら、辻。あんましサボってちゃダメだよ。16ビートの練習、すんだの?」
飯田が、辻の頭を押さえつけるように現れる。そのまま、ぐりぐりと撫でる。
辻は、身体を縮めながら、嬉しそうに顔をくしゃくしゃにする。
「飯田さん、はい、ちゃんと終わりました」
「じゃあ、あと10回、ここでやってみ?」
辻はニコニコと、奇妙なステップで歩き出す。
加護は、二人からそっと離れ、そのままとぼとぼとリハーサルスタジオに戻っていく。
15 :
第1話:2000/11/21(火) 22:24
(もうみんな帰っちゃったかな)
2時間ほど、楽屋でうじうじしていた。
みんなのトコロに戻るのもなんだか恥ずかしいし、今日はタクシー券もらってたから、
別々に解散することになっていた。
別に、懐かしんでるとかじゃなくて、ただ、楽屋に、ちょこっとLOVEのジャケットが
置いてあったんで、何の気なしに、ぼんやり眺めていた。
16 :
第1話:2000/11/21(火) 22:24
「……ごっちん」
がちゃり、と楽屋の扉が開く。1人でいた私に、裕ちゃんが話しかけてきた。
裕ちゃんは、ちら、と、私が見ていたジャケットに視線を落として、
「あんたな、ひどいこと言うようやけど、もうそろそろ、紗耶香から卒業せなアカンで」
かっ、と頬が赤くなるのを感じた。
きっと、やぐっちゃんが、裕ちゃんにチクったんだ。
がたん、と私はイスを蹴って、立ち上がった。
裕ちゃんが、心持ち、後ろに下がった。
17 :
第1話:2000/11/21(火) 22:24
みんなみんな、市井ちゃん、市井ちゃん、って。
私が、ずっと、市井ちゃんをひきずってるって思ってるんだろうか?
「裕ちゃんはいいよ。自分のことだけやってればいいんだから。私はタイヘンなんだよ。
今でも精一杯なのに、加護の面倒なんて見てられないよ」
「ごっちん、それは違うで。教育係っていうのはな、新人の世話を通じて、自分自身が、
いろんなことを覚えていくんやで。いつまでも、そんな甘えたこと言うてたら、紗耶香も
悲しむで」
18 :
第1話:2000/11/21(火) 22:24
また市井ちゃんだよ。
もういいよ、その名まえは。
誰も、私の気持ちなんて分からない。
誰も、分かってくれようとはしない。
「市井ちゃんが、モーニング娘。をやめなきゃ良かったんだ。そしたら、私はまだいろん
なことを教えてもらえたんだ。あの四人のせいだ。あの四人が入って来たから、市井ちゃ
んは辞めちゃったんだ」
「ごっちん、あんた言ってることメチャクチャやで──」
「加護なんて、大っキライ!」
19 :
第1話:2000/11/21(火) 22:25
ぱあん、と。
裕ちゃんは、私の頬を叩いた。
「あんた、言うてええことと、悪いことがあるで」
「裕ちゃんも、大っキライだあ!!」
叫んで、楽屋を飛び出した。
どうして、こんなに泣けてくるんだろう。
どうして、こんなに悲しいんだろう。
20 :
第1話:2000/11/21(火) 22:25
きっと、私のことを誰も分かってくれないからだ。
私がこんなに悲しくてツライのに、みんなは理解してくれないからだ。
泣き顔を見られたくなくて、私は、電気のついていないリハーサルスタジオに飛び込んだ。
先客がいた。
私の足音に、びくっ、と身体を硬直させたのは……加護だった。
「後藤さん……?」
窓から差し込む月明かりを頼りに、ずっとダンスの練習をしていたんだろうか。
21 :
第1話:2000/11/21(火) 22:25
「加護、あんたまだいたの?」
加護からは、私の泣き顔は暗くて見えてないみたいだった。
「えっと……後藤さんに、上手になったところを見てもらおうと思って、一生懸命、練習
してました」
照れてるのか、えへへっ、と笑う。
私は、また涙が出てきた。
今度は、私自身が情けなくて。
22 :
名無し娘。:2000/11/21(火) 22:25
2話はなくていいです
23 :
第1話:2000/11/21(火) 22:25
くうぅぅぅっ、と鼻を鳴らして泣きだした私に、加護はビックリして走り寄ってきた。
「後藤さん、どうしたんですか。ごめんなさい、泣かないでください」
それでも泣きやまない私につられて、加護も泣き始めた。
「ごめんなさい、後藤さん、ごめんなさい」
加護はちっとも悪くない。
私は、加護が謝るのをやめさせようと、鼻声で必死で話した。
「私のほうこそ、ごめんね。一緒に、ダンスの練習しようね」
「はい」
その日は夜遅くまで、二人で居残り練習をした。
第1話終わりです。
25 :
名無し娘。:2000/11/21(火) 23:09
きゃー!!!おもしろかったです。
思わず引きこまれちゃいました。これからも続けてくださいね〜
かわいひ
少女漫画の味わいだね、加護実父逮捕あたりに期待
28 :
名無し娘。:2000/11/22(水) 14:10
萌えage
29 :
アレキサンドロ大佐:2000/11/22(水) 15:40
つまらん
30 :
しんまま。:2000/11/22(水) 15:43
この小説大好き〜♪
初めて小説全部読んだ♪
これからに大期待〜
31 :
第2話:2000/11/22(水) 23:07
「後藤さーん後藤さーん」
コンサートリハーサルのまっただ中である。
加護は、ふらっ、といなくなった後藤を捜して、衣装室やらスタジオやらをうろついていた。
別に後藤に用事がある訳ではない。
ただ、飯田にべったりの辻を見ているウチに、後藤に甘えたくなっただけだ。
32 :
第2話:2000/11/22(水) 23:08
加護は、楽屋を覗いてみる。誰もいない。
出ていこうとして、加護は、後藤のカバンを見つけた。だらしなく口のチャックが
全開になっていた。
(後藤さんのカ・バ・ン〜♪ 後藤さんのカ・バ・ン〜♪)
きちんと閉めてあげようと、チャックに手を伸ばし、ふと、カバンの中に、可愛いハンド
タオルを見つけた。
加護は、このタオルに見覚えがあった。
後藤は、このタオルをとても大切にしていて、汗をかいてもこれは使わないのだ。
ただ、毎日毎日、カバンに忍ばせているだけで。
33 :
第2話:2000/11/22(水) 23:08
加護は、悪いことをするみたいに、キョロキョロと辺りをうかがった。
そーっ、と、ハンドタオルを、取り出してみる。
繊細な飴細工を取り扱うようにおずおずと、顔に近づけ、匂いをかいでみる。
(石けんのニオイだ)
なんだか、加護は嬉しくなった。
くんくんと、笑顔でニオイを嗅ぎ続けた。
34 :
第2話:2000/11/22(水) 23:09
「ふわああ、暑いねえ。汗でビチョビチョだよ気持ち悪い」
どかどかと、楽屋に騒がしく入ってきたのは保田だ。
加護は、文字通り、飛び上がった。
イタズラを見つかった子どものように、オドオドと、
「あ、あの、保田さん、おつかれさまです」
後藤に教わった挨拶をする。
保田は、加護の不審な挙動には気付いていないようだ。
35 :
第2話:2000/11/22(水) 23:09
「ん、加護もお疲れだね。お、タオルあるじゃん、貸してよ」
ひょい、と加護の手から、保田はハンドタオルを取った。そのタオルで、汗だらけで、
メイクも崩れてきている顔を拭こうとした。
「ダメですっ」
加護は、保田が苦手だった。もっと言うと、怖かった。でも、勇気を出して、保田の手に
飛びついた。
「おっ、反抗するのか。いいじゃん、減るもんじゃなし」
保田は面白がって、タオルを高くかかげた。
36 :
第2話:2000/11/22(水) 23:09
「返してください。おねがいです、返してください」
「返して欲しくば、私から奪いとるがいい」
加護はぴょんぴょん飛び上がって、なんとか取り返そうと奮闘した。
空中で、指先がタオルに触れ、ぎゅっ、と掴む。
37 :
第2話:2000/11/22(水) 23:09
びりっ。
「あっ」
「ああっ」
びーーーーーっ。
加護の体重に引っ張られて、ハンドタオルはキレイに二つに裂けた。
「ああああああっ」
加護は、真っ青になった。
38 :
第2話:2000/11/22(水) 23:10
「破けちゃったね……ゴメンゴメン」
保田は、少しバツが悪そうに言った。
加護は聞いてはいなかった。
(後藤さんのタオルを破っちゃった)
(後藤さんは、すごく大事にしてたのに)
茫然としている加護に、保田は、ああ〜そうだ、忘れ物忘れ物……とか言いながら、楽屋を出て行ってしまった。
39 :
第2話:2000/11/22(水) 23:10
「ほら、5分後に、ステージで通しやるで」
「トイレトイレ〜」
「あれ、加護ここにいたんだ」
モーニング娘。のメンバーたちが、ぞろぞろと楽屋に戻ってきた。
加護は、血の気が引く思いだった。実際、軽いめまいを覚えていた。
絶望的な気持ちで、自分の名まえを呼びながら歩いてくる後藤の笑顔を見ていた。
第2話書いてる途中でテレホになっちゃいました。
また、続き書きます。
20日のダイバー聴いて思いついたん?
やっぱりおもしろいです!
つづきが気になる
誰がなんと言おうが、こういう話好きだ。
頑張れ作者。
44 :
第3話:2000/11/23(木) 07:19
そんな加護に突然便意が襲いかかってきた!
目の前には後藤が笑みを浮かべながら歩いてくる。
「どうしたの?早く行くよ?」
我慢していた加護だったがもう限界だ。
「ご、後藤さん見ないでぇえええええ!」
力無く喘ぐような小さな声でそういうと同時に加護は
便を漏らしてしまった。大好きな後藤の前での脱糞。
目の前がまっ白になっていく加護だった。。。つづく
45 :
名無し娘。:2000/11/23(木) 13:46
47 :
第2話:2000/11/24(金) 23:41
「あれ、加護ここにいたんだ」
練習ちょこっとサボっちゃってた。加護をほったらかしにしちゃったな、と、少し反省し
つつ、楽屋に向かうメンバーたちと合流した。
んん? って思った。
どうして、加護は泣きそうな顔してんだろ?
48 :
第2話:2000/11/24(金) 23:41
「どうしたのさ加護」
加護は、いやいやをするように、首を振った。
そして、彼女の手元を見た。
「ああああああっ!」
大声で叫んだ。
メンバーたちが、みんな、どうした? って顔で私を見た。
のぼせたように、頭がふらふらした。
49 :
第2話:2000/11/24(金) 23:41
「加護、それあんたやったの? 加護、それ、あんたが、マジでやったの?」
早口で、二回、加護に問いただした。
加護は口を半開きにしたまま、立ち尽くしていた。
身体じゅうの血が、一気に沸騰した。
「バカーーーッ!!」
50 :
第2話:2000/11/24(金) 23:42
渾身の力を込めて、加護の横っ面を張り倒した。
加護は、すっ転んだ。
そして、びーっ、と泣き出した。
「加護のバカ、加護のバカ、加護のバカーッ!」
泣きたいのは私の方だ。
51 :
第2話:2000/11/24(金) 23:42
「ちょ、ちょっとあんた」
慌てた様子で割り込んできたのは、裕ちゃんだ。
肩をぐい、と掴んで、無理やり私を振り向かせた。本気で怒っていた。
「あんた、いきなりなにすんのや。顔叩くて、ウチらはみんな、プロやねんで、あんた
一体──」
裕ちゃんの言葉は途切れた。私は、怒りでブルブル震えていた。
「そのタオルは、市井ちゃんが最後に私にくれた、ずっと大事にしてたお守りだったんだ。
ホントに、ホントに大事にしてたんだ。それ、もう売ってないんだよ。ああ〜〜〜ッ!」
52 :
第2話:2000/11/24(金) 23:42
私は半分、パニックになっていた。
地団駄を踏んで、叫んだ。
加護が、怯えたように、私を見ている。私は、加護を睨み付ける。
びくっ、と、加護は全身をケイレンさせるように震わせた。
口を開いて、何か言おうとして、
でも、嗚咽しか漏れなかった。
ただ、悲しかった。
53 :
第2話:2000/11/24(金) 23:43
別に、市井ちゃんのことをずっと引きずっていた訳じゃない。
でも、想い出くらいは、大事にしてたっていいじゃんか。……もう、昔みたいに、一緒に
歌ったり踊ったりは、一生出来ないんだから。
メンバーのみんなは、同情めいた目で、どこか私を遠巻きに見ていた。それは、これまで
心のどこかで感じていた、あの感覚をハッキリと意識させた。
つまり、私は、独りなのだ。
54 :
第2話:2000/11/24(金) 23:43
市井ちゃんが、私とメンバーをつないでいてくれた。私は、1人では、メンバーにとけ
込めない。
今だって、だから、みんなは腫れ物にでも触るように私のことを見ている。私は、独り
なんだ。
歯を食いしばって、泣くまい、と思ったけど、ダメだった。ぽろぽろと涙がこぼれた。
私は楽屋を飛び出した。
55 :
第2話:2000/11/24(金) 23:43
誰にも何もいわないで、私は家に帰った。
コンサートのリハーサルをすっぽかすカタチになってしまった。でも、今の、こんな精神
状態じゃあ、とても練習なんて出来ない。
(いいや、もうどうなったって)
なげやりな気持ちで、ベッドで毛布にくるまっていた。
(私にとって、モーニング娘。ってなんだったんだろうな……)
56 :
第2話:2000/11/24(金) 23:44
確かに、私は自分で望んで、モーニング娘。になった。
メンバーのみんなは大好きだ。
でも、じゃあ、どうやって仲良くなったらいいのか、私には分からない。
これまで、ずっと1人でやってきた。自分には才能もあると思ってた。だから、1人は淋
しい、なんて考えたりすることはなかった。
なかったのに。
57 :
第2話:2000/11/24(金) 23:44
でも、今は……例えば、やぐっちゃんが裕ちゃんに甘えたりする場面を見ると、羨ましく
思う。辻が飯田さんにつきまとってるトコロを目撃したりすると、なんだかチクリ、と胸
が痛む。
それは、私が初めて、甘えたい、って感じた人のことを思いだしちゃうから。
もうあの人はいないってことを、思いだしちゃうから。
(……あのタオル、向こうに置きっぱなしにしちゃったなあ……)
悲しいな。
淋しいよ。
58 :
第2話:2000/11/24(金) 23:44
夜の十二時を過ぎてから、家に私を訪ねてきた人がいた。
圭ちゃんだ。
こってりと怒られるんだろうなあ、と思ったんだけど、圭ちゃんは、私の部屋に入って
きて、二人っきりになった途端に、
「ごっちん、ゴメンっ!」
床に額を押しつけて、ホントに土下座したのだ。
ビックリした。
「どどどどうしたのさ圭ちゃん、なんで謝るの、やめてよおお」
私は、なんとか起こそうと、圭ちゃんの頭をつかんで引っ張ったけど、びくともしなかった。
59 :
第2話:2000/11/24(金) 23:44
「ごっちんの大切なタオル破ったの、私なんだ。私がふざけて、加護をからかったから、
加護は一生懸命取り返そうとして、だから、悪いのは私1人なんだ」
えええっ! と私は硬直した。
しばらくは、頭が真っ白になった。
そして、圭ちゃんが言ってたことを、ようやく理解してきたとき、もう一度、私は驚いていた。
60 :
第2話:2000/11/24(金) 23:45
「ごっちん、私を殴っていいよ。私さ、バツが悪くて、楽屋に行かなかったんだ。そした
ら、後からこんなことがあった、って裕ちゃんから聞いてさ、もうどうしていいか分かん
なくなっちゃって、でも、とにかく謝らないと、って思って、でも、加護も帰っちゃうし、
とにかくごっちんに先に誤解を解いておこうって思って、リハーサル終わったら、すぐに
ここにすっ飛んで来たんだ」
私は、さっきから、全然怒ってなかったんだ。
圭ちゃんの告白を聞いても、なにも、怒りは湧いてこなかった。
61 :
第2話:2000/11/24(金) 23:45
(そりゃあ、あの時はめまいがするか、ってくらい怒り狂ったけど、でも、もう収まっち
ゃった。それよりも、想い出が無くなっちゃったことと……私は、モーニング娘。の中で
も独りなんだ、ってことの方が悲しくて、それで……)
圭ちゃんの話を聞いてみたら、なんだ、加護は全然悪くなかったんだ。
加護も、帰っちゃったのか。顔、叩いたからね。ショックだっただろうな。
62 :
第2話:2000/11/24(金) 23:45
そうだ。
私はふいに、気付いた。
加護は、私のことを慕ってくれていた。
後藤さん、後藤さんって、こんなろくでもない私に、ついてきてくれてた。
(私は、取り返しのつかないことをしちゃったんじゃないだろうか)
(私のことを信頼してくれてた加護に、ひどいこと……)
明日、加護は出てくるだろうか?
その時、謝ったら、許してくれるだろうか?
63 :
第2話:2000/11/24(金) 23:45
「ね、圭ちゃん……加護、怒ってた?」
圭ちゃんに、こわごわと訪ねる。
圭ちゃんは、そっと顔をあげて、
「ん、落ち込んでたって話だけど、怒ってはなかったみたい。ゴメンね、私、あれから
加護には会ってないんだ。みんな、裕ちゃんから聞いた話なんだ」
「そっか」
もう、加護は、私が教育係でいることをイヤがるかも知れない。……それは、仕方な
いことだ。
私は、いつだって、自分から独りになっていたんだ。
64 :
第2話:2000/11/24(金) 23:46
「圭ちゃん、ありがとね。とりあえず、明日、加護に謝るよ」
きっと許してはくれないだろうけど。
「ほんっとに、ゴメン、ゴメンね、ごっちん」
もう一度、圭ちゃんは、頭を床につけた。
私はもういいからさ、と圭ちゃんを立たせた。本当に、もうちっとも怒っていなかったから。
圭ちゃんが帰ったあと、私は、もやもやした気持ちのまま、眠りについた。
65 :
第2話:2000/11/24(金) 23:46
お母さんが、私を起こしにきたのは、午前六時だった。
「……なんて時間に起こすのよ、もう」
ぶつぶつと、文句を言う。もう一度寝ようとして、
「加護ちゃんが玄関に来てるのよ」
ってお母さんの言葉に、跳ね起きた。
どうして加護が?
私は、どたどたと足を鳴らして階段を下りた。隣りの部屋のユウキが「うるさいよ、真希
ちゃん」って文句言ってた。無視だけど。
66 :
第2話:2000/11/24(金) 23:46
「加護、どうしたの、こんな朝から」
息せき切って言う私に、
「後藤さん、昨日は、ホントにごめんなさいでした」
加護は、ペコリと頭を下げた。私は、むしろ、加護の手から目が離せなかった。加護の手
は、バンソウコウだらけで、見るからに痛々しかった。
「なに? ケガしたの?」
67 :
第2話:2000/11/24(金) 23:46
加護は、腰のポーチから、タオルを取り出し、両手で私に差し出した。
ぐねぐねと、下手クソに、縫い合わせてあった。
「ごめんなさい。キレイにできなくて。いっしょうけんめい、縫ったんですけど。こんな
時間になっちゃいました」
そのタオルを見てる視界が、ぐにゃぐにゃと揺れた。
ぽたぽたと、涙がこぼれた。
(加護は、朝まで、裁縫してたんだ)
(こんな私のために)
68 :
第2話:2000/11/24(金) 23:47
「こんなんじゃダメですか?」
不安げに私を見上げる加護。
私は、教育係失格だよ。私は、人にモノを教えられるような人間じゃないよ。だって、
いっつも、加護に謝らせてばかりいるんだもの。
「ごめんね、ごめんね加護」
私は、加護をぎゅっ、と抱き締めた。
69 :
第2話:2000/11/24(金) 23:47
「ありがとうね、加護。このタオル、一生大切にするよ。ゴメンね」
市井ちゃんがくれたタオルを、加護がキレイにしてくれた。
すっごく嬉しいよ。
一生の宝物だよ。
70 :
第2話:2000/11/24(金) 23:47
リハの反省会。
みんな、夏先生の話を真剣に話を聞いている。
でも、加護だけは、うつらうつらと頭が舟を漕いでいる。
夏先生は、めざとくそれを見つけ、
「こらぁ、加護ッ──」
「ダメっ」
私は、加護を起こさないように、つかつかと歩いてきた夏先生の間に立ちはだかる。
71 :
第2話:2000/11/24(金) 23:47
「今日は、加護は寝かせてあげてください。私がちゃんと話は聞いて、あとで加護に言っ
てきかせますからっ」
夏先生は、私の剣幕に、うーん、じゃあ、後藤、あんたに頼むよ、と引き下がる。
「なんやねん、あんたら」
裕ちゃんが、あきれたような声で言った。
私は、たはははっ、と小声で笑った。
第2話おしまいです。
第3話に続く予定です。
名作集ではなく敢えてここで書いたことを評価したいです。
頑張って下さい。
ここ無くなったら、ドコに行こうかな。。。。
決まったら教えてください。続き読みたいです。
めちゃくちゃ面白いんですけど、第1話は何処で読めるのでしょうか?
>>78 失礼、本気で気づかなかった(藁
ここは第2話だけかと思ったもので
読みやすい文章の小説はいいねぇ。
作者さんガンバってください。
泣けた。
第三話も楽しみだよ。
.
83 :
第3話:2000/12/04(月) 00:21
「ちょっとごっちん、加護さあ、なんとかしてよ」
朝、まだ半分寝ぼけていた私に、圭織がいきなり不満げな声をかけてきた。
「ふぇ? 加護がなんかしたの?」
「なんかしたのじゃないよ。昨日さ、加護が、辻のことをいきなり殴ったんだよ。
持ってたマイクで」
うわ、痛そうだ。
84 :
第3話:2000/12/04(月) 00:22
「なに、ケンカなの?」
圭織の後ろに隠れるようにしている辻に、話しかける。
「ケンカじゃないです。話してたら、いきなりゴンて。そのまま、走って帰っちゃいました」
ふーん。昨日は、加護、仕事終わったらすぐいなくなっちゃった、って思ったら、そんな
ことしてたんだ。
「おはようございまーす」
話の途中、ちょうど加護がやって来た。加護は、私と圭織と辻の三人がたむろしてるのを
見て取ると、逃げようとした。
85 :
第3話:2000/12/04(月) 00:22
「コラ、加護。こっちおいで」
すでに背中を向けていたけど、びくり、とその場に止まった。おそるおそる、といった風情で、
私たちを振り向く。私は、唇だけで笑って、手招きする。
笑顔のまま、問いただす。
「ねえ、加護。あんた、昨日、辻のこと、殴ったんだって?」
「え……でも……」
「殴ったの?」
「はい……」
加護は、俯いて答えた。
86 :
第3話:2000/12/04(月) 00:22
「辻に、謝りな」
とりあえず、そうしないと話が進まない。
「イヤです」
加護はハッキリと言った。
「いいから、謝りなさい」
「イヤですー!」
叫んで、その場から走り去った。
う……。
圭織と辻の視線が痛い。
一応、私は加護の担当だからさあ、謝らせることさえ出来ない、ってのは、ヤバいよなあ。
私がナメられてる、ってことになっちゃうんじゃないかなあ。
87 :
第3話:2000/12/04(月) 00:23
「たははは……」
適当に、愛想笑いしてみる。圭織と辻は、真顔のままだ。
「じゃーねぇ」
そのまま、バイバイ、と手を振りながら、後ろ歩きで、フェードアウトした。これじゃあ、
加護とたいして変わらないな、とか思いながら。
◇
88 :
第3話:2000/12/04(月) 00:23
圭ちゃんと私は、会議室で待ってるように言われていていた。この二人、ってことは、プッチの
ことなのかな? って思った。
市井ちゃんが抜けて、二人になってしまったプッチモニは、これからどうなっていくんだろう。
「なんだかさあ、自信なくしちゃうよ」
私は待ち時間の間、圭ちゃんに今朝の出来事について話した。圭ちゃんも、石川さんの教
育係だ。同じ悩みを持つものとして──でも、石川さんは、圭ちゃんの言うこと、ちゃんと
きくからなあ。
89 :
第3話:2000/12/04(月) 00:23
ぐちぐちとこぼす私に、
「ごっちんさあ、加護の話、ちゃんと聞いてあげたの?」
圭ちゃんが言う。私は、肩をすくめて、答える。
「そんなの、殴った方が悪いに決まってるじゃん。圭ちゃんだって、石川さんが辻に同じ
ことしたら、とりあえず謝れ、って言うでしょ?」
「そりゃそうだけどね……」
まだ、内々の話だけど、加護は、今は二人しかいないタンポポに入ることが決まっている。
このままじゃあ、圭織と雰囲気が悪くなってしまう。
それは、加護にとっても、つらいことだ。
私が、なんとかしないといけないんだけど……。
90 :
第3話:2000/12/04(月) 00:24
「あ〜あ」
私は、頭の後ろで腕を組んで、大きくのびをする。
(市井ちゃんだったら、こんな時、どうするんだろうなあ。やっぱ、ケジメをつけて、ビシッ、
とキビシク注意してくれるんだろうなあ)
でも、私は、いいコだったから、市井ちゃんは楽だったに違いない、うん。
「ごっちんへの教育についてさ、紗耶香はけっこう気苦労多かったみたいだよ。私もいろいろ
相談されたもん。こんな風に指導したいんだけど、いいかな、とか」
91 :
第3話:2000/12/04(月) 00:25
圭ちゃんが、私の頭の中を覗いたみたいな返事をしてきた。どうやら、考えていたことを
口に出してたみたいだ。
「加護はさ、私のこと、どうみてるんだろ。友だちの延長なのかな?」
私が、市井ちゃんを尊敬していたみたいには、加護は私のことを思ってくれないのか?
私は、首をがっくりと下げて、ため息をついた。
92 :
第3話:2000/12/04(月) 00:25
落ち込む出来事は、その後も続いた。
二人が呼び出された理由が分かった。
プッチに、吉澤を入れて、活動を再開する、とマネージャーから告げられたのだった。
「……それは、プッチモニじゃないとダメなんですか? 違うユニットにする訳にはいか
ないんですか?」
私も、ええっ、と思ったけど、圭ちゃんが受けたショックはよほど大きかったみたいだ。
マネージャーさんに、まるでくってかかるような勢いで、いろんなことを聞いていた。
93 :
第3話:2000/12/04(月) 00:25
私は、なんか、茫然と、圭ちゃんとマネージャーさんの会話を聞いていた。
(いろんなことが、どんどん変わっていく)
過去を、過去のままで、置いておく訳にはいかないみたいだ。大切な思い出も、どうでも
いい記憶も、同じように、どんどん上書きされていく。
急き立てられるように走って、走って、私たちは、一体どこへ連れていかれるんだろう。
しなくちゃいけないことは山積みで、でも、休んでるヒマはなくて、大問題が次々とやっ
てきて、
(あの頃に帰りたいよ……)
ガラにもなく、弱音を吐きたい気分になっていた。
94 :
第3話:2000/12/04(月) 00:26
「後藤さん……」
扉の外に、加護がいた。
小声で、私を呼んでいた。
今のプッチ増員の話、聞いていたのかな?
私は、疲れていた。
今は加護の相手をするだけの気力がなかった。
あっちに行ってな、ってカンジで、加護に向かって手をひらひらさせた。加護は、ぎゅっ、
と唇を噛んで、いなくなってしまった。
95 :
第3話:2000/12/04(月) 00:26
(もういいよ。私は市井ちゃんみたいには出来ないよ。加護にとっても、こんな教育係、
役立たずなことこの上ないよね)
自虐的に、そう思った。
96 :
第3話:2000/12/04(月) 00:26
マネージャーさんとの打ち合わせも終わり、楽屋へ向かう道すがら。
「ねえ、圭ちゃん。これからどうしようか」
圭ちゃんは聞こえていないのか、ブツブツと口の中でなにかつぶやいていた。
「ちょっと、ごっちん、ここにいたんか」
楽屋から、裕ちゃんが顔を出した。
すごく慌ててるみたいだった。
97 :
第3話:2000/12/04(月) 00:27
「加護がな、タイヘンなことしでかしてん。つんくさんの襟首締め上げて、モーニング娘。
なんか、やめたるねん、とかわめいたらしいで。そのことでな、あとでごっちんに、つんく
さんから話あるみたいやで」
なんだか、めまいがする思いだった。
神さまは、私に、なにをさせたいんだろう。
(問題児加護)
そのフレーズが、脳裏にどーん、と鳴り響いた。
続き……ます。
Xデーには間に合わせたい……って、それじゃあ遅すぎるのかな(笑
99 :
第3話:2000/12/04(月) 20:11
「加護おぉッ!」
私は、裕ちゃんに、加護のコトを聞いてすぐ、スタジオを走り回った。そして、ついに、
喫茶コーナーで小さくなってた加護を見つけた。
「ちょっと加護、私と一緒に来な。いいから、一緒に来るんだよ」
襟首をつかんで、ひきずるようにして、つんくさんのトコロに連れていった。
「おう、後藤。なんやもう……加護も一緒か」
つんくさんは、一人で、スタジオにいた。
タバコをふかしながら、コーヒーを飲んでいた。
「加護、今度こそ、謝るんだよ。ほら、つんくさんに、ごめんなさい、って言うんだよ」
加護は、ぷい、って感じで横を向いてしまった。
情けない。
私はなんて情けないんだろう。
結局、私は、加護にとって、教育係でもなんでもなかったんだ。
私は、つんくさんに頭を下げた。
「ごめんなさい」
もうダメだ。
今日で、加護の担当を外させてもらおう。
頭を上げられなかったのは、下を向いたまま、泣いてしまっていたからだ。
私ってダメダメだ。
(ごめんなさい)
私、市井ちゃんみたいになれなかったよ。
前から薄々気づいていたけど、やっぱり、私には教育係なんてムリだったんだ。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
頭を下げたままの私につられたのか、加護も、ペコペコ謝りだした。
つんくさんは、びっくりしたような声で、
「いや、ちゃうねん。ちゃうねんて。後藤を呼んだんは、謝って欲しかったからと違うで」
とにかく、なんか飲んで落ち着いてや、と、コーヒーを出された。加護は、ホットミルク
を甘くしたヤツをもらってた。
つんくさんによると、こういうことらしい。
加護が、スタジオにいきなり乱入してきて「プッチモニはずっとプッチモニのままにして
下さい」とつんくさんに懇願したというのだ。
なんの話や、と答えたつんくさんに「プッチモニはずっと3人なんです。後藤さんと保田
さんと市井さんは、仲良しなんです」と。
つんくさんが訳が分からないまま黙っていると、エキサイトしてきたのか、関西弁まるだ
しで「代わりに、私もタンポポには入らへん。後藤さん、イヤがってるから、だから、私
たちが入らへんかったら、市井さん帰って来るんやったら、ウチがモーニング娘。を辞
めるねん」と、わめき散らしてしまった、ってのが、コトの顛末らしい。
「テンパったら、訳の分からんこと言い出すんは、後藤そっくりやな」
つんくさんに、苦笑い混じりに言われて、私は赤面した。
昔、似たようなことを、裕ちゃんに言ってしまったことを思い出していた。
もしかしたら、そんな気持ちが、加護への態度として現れてしまっていたのかも知れない。
敏感にそれを感じ取った加護が、こんな行動に出たとするなら、半分くらいの責任は、私
にあるんだろう。
新しいプッチモニを作ることを、私たちに無断で決めてしまって、悪かった、と、つんく
さんは、しきりに詫びた。
「私たちがどうこうする問題じゃないですから」
そう言うと、後藤と保田の気持ちを考えないままに物事を決める、ってのは良くないこと
やな、やっぱり、と、つんくさんは答えた。
スタジオから出て、加護と二人っきりになるのを待って、
「私のことを心配してくれるのは嬉しいけど、暴走する前に、私に一言相談してよね」
「……はい」
「でも、ありがと」
頭を撫でてあげると、加護はようやく笑った。
その足で、加護を辻のトコロへ連れていった。
加護の話はこうだ。
辻は、飯田さんのことを、加護に自慢したらしい。自分の教育係は立派だと。最初からモ
ーニング娘。にいるメンバーに教えてもらってるのは自分だけで、彼女はいろんなことを
知ってる。
それに引き替え、と、加護の教育係のことを(つまり、私のことだ)を言おうとしたので、
思わず手にしていたマイクで殴った、と言うのだ。
なにかを言い出す前に、ってのは、つまりは加護も充分私の頼りなさを実感してるという
訳で(……面目ない)確かに、そんな理由だったら「どうして辻を殴ったの?」って質問
にもその場では答えられないだろうなあ、とは思う。ますます面目ない。
「とりあえず、ちゃんと謝っておこうね」
「はーい」
辻は、飯田さんと一緒にいた。
そりゃあ、飯田さんは頼りになるよ。辻が自慢したくなる気持ちも分かる。
飯田さんは、私たちの顔を見るなり、先に謝ってきた。
「ごっちん、ごめんねー、辻から聞いたよ。なんか、失礼なコト、言ったんだよね」
言ってないと思うんだけど、辻は、飯田さんに、どんな失礼な台詞を告白したんだろ?
「ほら、加護も謝るんだよ」
「ごめんなさい」
私たちの様子を見ていて、飯田さんはぽつりと、
「彼女がどれだけごっちんのことを大事にしてたか――今の二人を見てると、よく分かるよ」
と、こぼした。
(ねえ、加護)
そっと、加護に耳打ちする。
(加護も、飯田さんが教育係だったら良かったのにね。そしたら、自慢出来たよね――)
ぶー、と加護はふくれっ面になって、私の服の裾をつかんで、
(後藤さんがいいです)
そう言い切った。
私は、そんなにイイもんでもないんだがなあ、と思うのだが。
(これからもイロイロ教えて下さい)
素直にしている加護は、とても可愛い。
ついつい甘やかしてしまいそうだ。
まあ、頼ってくれてるんだから、それなりに私も気合い入れて、頑張んないとね。
◇
「後藤さあ、加護の教育のことで、悩んでるみたいだよ」
楽屋に保田は一人、携帯電話で話をしている。
『私だって、昔はメチャクチャ悩んでたこと、圭ちゃんも知ってるじゃん。ホントはさ、
私なんて、全然、人にモノ教えられるようなニンゲンじゃなかったんだよ』
「うん。そんなこと、言ってたよねえ」
保田は、懐かしく、その頃のことを思い出していた。
『でもさ、心細そうな声で頼ってこられるとさ……ガンバんないとダメだ、って思って、
自分に気合い入れてたよ。私さ、教育係だったけど、いっぱい、いろんなことを教えても
らったよ。その点については、あの子に感謝してる』
保田はふう、とため息をつく。
ホントは、後藤の話をするつもりじゃなかった。
保田も、保田なりの悩みがあって、電話をかけたのだ。
でも、言い出せなかった。これは、もう、彼女とは関係のない話だから。
「それをさ、一回、あいつに言ってあげなよ。そしたら、きっと、元気出ると思うんだ」
『ダメだよ。私は、後藤が自分で乗り越えられるように、教育したつもりだよ。いつまで
も、私に頼ってちゃダメなんだし。これはね、後藤と加護の問題なんだ』
「相変わらず、キビしいね、紗耶香」
私も、紗耶香に頼ってちゃあダメなんだよね、と、保田は受話器から唇を離して、つぶやいた。
楽屋の外に、人の気配がした。
「じゃあね。ガンバってね」
『うん。圭ちゃんもね』
携帯を切る。
同時に、石川が、不安げな表情で、楽屋の扉から顔を出した。
「よう、石川、どうしたの。そんな泣きそうな顔しちゃってさ」
「保田さ〜ん」
パタパタと、保田に走り寄ってくる石川の姿を見、保田はため息をつきながら、笑った。
◇
忙しい一日が終わった。
「後藤さんッ」
加護はまだまだ元気そうだ。タックルをかけるように、私の腰にしがみついてきた。
「今日も、頑張りましたぁ」
偉かったねえ、と、適当に誉めてあげて、頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
「やーん」
イヤがっているのかそうでないのか、曖昧な抵抗を見せて、加護は、結局は私の手に頭を
擦り付けるようにしてくる。
ははは、加護、可愛いなあ。
ホント、可愛いよ。
なんとなく、
小声で、ぼそりと、
(――亜依ちゃん)
と呼んでみた。
加護は、聞こえなかったらしく、目をぱちくりさせて、
「はい? 後藤さん、何かいいました?」
ははは、聞こえなかったか。まあいいや。
「ううん、なんでもない。一緒に帰ろっか」
「はい」
荷物を背中にしょって歩き出した私の隣りに、加護は、スキップしながら並んだ。
(私が、あの人のことを、市井さんから市井ちゃんって呼ぶように変わったのって、いつ
頃からだったっけ)
そんなことを考えながら、
二人で、手をつないで、帰った。
(終わり)
【BGM:ダディドゥデドダディ】
ん〜、たいした山場がある訳でもなく、のほほんと終わりです。
ありがとうございました。
121 :
ティモ:2000/12/04(月) 21:12
ムッチャ良かった
このような、名スレもあるのに
閉鎖は悲しい・・・
ええ話やんけ〜、チョッピリ潤んでしもたわ・・・
次書く時も2chで書いておくれ 閉鎖しなかったら。
作者さんお疲れさま、そしてありがとっす。
いいもの読ませてもらいました。
特に2話ではベタな展開だったけど泣きそうになった…。
また小説書いて欲しいです。
最高っす、いいもの読ませていただきました^^
面白かったです。
小説「亜依ちゃんと私」(名作).doc で保存しました。
次回作を期待sage
これは良い小説を見つけた。さわやかなテイストで良いですな。
130 :
名無し募集中。。。:2000/12/10(日) 23:24
131 :
娘。:2000/12/10(日) 23:50
sayounara
132 :
むむむむ娘:2000/12/10(日) 23:56
はあとはあと
……まだ、あるみたい。
よかった、続きが読めそうっす。
新しいの、っていうか、続きです。
小説「まきちゃんとわたし」
「亜依ちゃん」
ってはじめて呼ばれたとき、すっごくうれしかった。
でも、どう返事していいか分かんなくて、聞こえないフリしちゃった。
あのあと、手をつないで帰ったんだけど、ドキドキしてたの、きづかれなかったかな?
わたしはこっそりこっそり、心のなかで後藤さんのことをまきちゃん、って呼んでる。
ひみつなんだけど。
まきちゃんは、わたしのきょういく係で、いろんなことを教えてくれる。なきむしだけど、
じまんの先生なんだ。
今日の仕事は、まきちゃんとはべつべつ。
矢口さんやののちゃんが遊んでくれるけど、なんだかつまんなかった。
「加護さん、お金、持ってきましたよ」
マネージャーさんにおねがいして、きゅうりょうの中から少しだけ、お金を先にもらった。
ほんとは、お母さんが貯金してくれているんだけど、マネージャーさんに、どうしてもみ
んなにはナイショで買いたいのがある、って言ったらきょうりょくしてくれたんだ。
(ごせんえーん)
お母さんに言えば、くれるんだけど、なにに使うのかちゃんと報告しないといけないから、
ダメなんだ。
「あいちゃん、いっしょに帰ろ!」
ののちゃんが、いきなりわっ、とうしろから話しかけてきて、ビックリした。
「今日は、一人で帰るから、ゴメーン」
「どうしてどうしてー?」
「どうしても!!」
ぶんぶん、と手をふりまわして、ののちゃんをおいはらった。今日は、ひみつのおかいも
のの日なんだ。
わたしは、一人で電車にのって、新宿にいった。
新宿駅は、ひとでいっぱいだった。
もうすぐ、まきちゃんの誕生日。
おめでとう、っていって、プレゼントをわたすんだ。へへへ。
メイクさんからきいた、シルバーの指輪のお店はすぐに見つかった。きれいなのとか、
かわいいのが、いっぱいあって、どれにしようか迷った。
ううん、迷うことなんてなかった。
(う……)
みんな、1万円よりも高い。
わたしは、ウサギのサイフの中の、たたんだ5千円をのぞきこんだ。ぜんぜん、足りなかった。
(うう……)
メイクさんは、大人だから、ねだんの高いのを買うんだね。まきちゃんもわたしもまだ子
どもだから、こんなに高いのはいらないんだ。
でも、どうしよう、とわたしは、ちょびっと困った。
と、道ばたのアクセサリー屋さんが目にはいった。
(わあ……これなら買えそうだ)
しゃがみ込んで、あれこれながめる。
だいじょうぶ、今度は、ちゃんとえらべるよ。
めちゃくちゃカワイイのを見つけた。
パンダのイヤカフだ。
しかも、2500円。
ってことは、ふたつ買えば、おそろい、ってことになる。
それは、とてもステキなことのように思えた。
「すいませーん、これ二つください」
今日のおかいものにすっかり満足して、お金をはらう時になって、
「消費税込みで、5250円になります」
がーん、ってなった。
こぜには、まだあるけど、それを使ってしまうと、帰りの電車に乗れないのだ。
頭のなかで、パンダのイヤカフをつけたまきちゃんとわたしが、笑いながら草原を走って
いくシーンがうかぶ。
……まあいいか。
のこったお金できっぷを買って、帰れるところまで行こう。あとは歩きだ。
わたしは、かみぶくろを受けとって、だいじにカバンの中にしまった。
――その日、家に帰ったとき、もう深夜の一時をまわっていた。
お母さんにモノスゴクおこられた。
遅くなったワケも言わなかったから(だって誰にもひみつだから)ずっと正座の刑になった。
眠い。
ふわあああ、とあくびをする。
「加護、眠そうだね」
「あ、後藤さん、お疲れさまでした」
まきちゃんは、あの日に一回だけ『亜依ちゃん』って呼んでくれたけど、また『加護』に
もどってしまってるのだ。ざんねん。
仕事は終わって、今は、それぞれで今日のはんせい会をしていた。教育係のペアでやるん
で、わたしはまきちゃんと二人でいられて、うれしかった。
(まだ誕生日にははやいけど、もうわたしちゃおうかな?)
まきちゃん、よろこんでくれるかな?
パンダきらい、って言われたらどうしよう。
うーん、明日にしようか。
わたしはカバンをもったまま、明日の台本になにか書き込んでるまきちゃんのまわりを
ウロウロしていた。
「ん? どしたの加護。なんかあるの?」
まきちゃんに話しかけられて、けっしんを決めた。
「後藤さん、ええとですね。もうすぐ、後藤さんの誕生日じゃないですか」
「あ、ちゃんと覚えててくれたんだ。言われなかったら、わたしからアピールするトコロ
だったよ」
まきちゃんは、ケラケラと笑った。
よし、わたすぞ!
背中に紙袋をかくして、
「ん、ちょっと待って」
まきちゃんは、ケータイを取りだして、耳にあてた。
(……ちぇっ。やるきまんまんだったのに)
がたん、とイスをけって、まきちゃんは立ち上がった。
「うんうん、今スグに行く!!!!」
びっくりマークをたくさんつけて、まきちゃんは大声をだした。そのまま、楽屋から走って
でていってしまった。
ののちゃんや保田さんも、びっくりしたみたいな顔で、まきちゃんを見ていた。すぐに台
本読みに戻ったけど。
わたしはどうしようか迷った。ただ、電話に出たときに、表情がすごくかわったのが気に
なった。
なので、こっそりあとをつけることにした。
まきちゃんはスグに見つかった。
ろうかのつき当たりの、コピー機があるトコロで誰かと話をしていた。
相手は、たなの陰にかくれて、だれなのかよく分からない。
ただ、まきちゃんは、とてもうれしそうだった。
それは、わたしが見たことのない……どこか甘えてるみたいな、子どものまきちゃんだった。
(あんなまきちゃんヤダ……)
わたしの知らないまきちゃん。
だれかに笑っているまきちゃん。
ちらっ、と、相手の姿がみえた。
――市井さんだった。
なぜだか分かんないけど、いきなり、鼻の奥がつん、ってなった。
(泣くな、泣くんじゃないぞ)
まきちゃん、市井さんのこと、大好きだもんね。
きっと、誕生日のお祝いにきてくれたんだ。
市井さんも、まきちゃんのこと、大好きだったし。
あの二人は、わたしとまきちゃんよりも、もっともっと仲良しだったんだ。
わたしは、二人を見ていられなくて、自分のくつのつま先をじっとみていた。
だから、まきちゃんが、すぐそばまで来てることに気づかなかった。
「あれ、加護、ここにいたんだ。今日は、これくらいにして、帰ろっか」
まきちゃんは、ゴキゲンだった。
顔をあげると、まきちゃんの耳元に、きらきらしたイヤリングを見つけた。
さっきまでは、つけてなかった。だって、わたしのをつけてもらおうと思って、ねらって
たから。
だから、それは市井さんからのプレゼントなんだ。
イヤリングは、とてもキレイで、まきちゃんに似合っていた。なによりも、今のまきちゃん
の笑顔にマッチして、まきちゃん自身が、すごくキレイに見えた。
やっぱり、市井さんは、まきちゃんのことが良くわかってる。
がさっ、とわたしの手で、紙袋が鳴った。
(それにひきかえ、わたしの買ったパンダの耳かざりなんて、すごく子どもっぽい。なん
だか、すごく安物みたいだよ)
恥ずかしかった。
わたしが子どもなのが、恥ずかしかった。
「先に戻ってます」
そう言って、わたしは廊下を走った。
トイレにかけ込んで、だれもいない、って確認したトコロで、ぶあっ、って涙がでてきた。
手の中の紙袋を、くしゃくしゃにして、ゴミ箱に捨てた。
ポロポロと涙をこぼして、泣いた。
(大人になりたいよう)
(はやく、大人になりたいよう)
こんなにまきちゃんのことが大好きなのに、わたしは子どもすぎて、お誕生日をお祝いし
てあげることもできないんだ。
「亜依ちゃん……」
ののちゃんの声に、ひいっ、とのどから息を吸い込んだ。
「亜依ちゃん、どうしたの?」
心配そうな、ののちゃんの声。
でも、泣いてるトコロを見られた恥ずかしさから、
「なんでもあらへんっ! なんで覗きみたいなことしてるねん」
大阪ことばで、どなってしまった。
りょうてで口もとを押さえて立ってるののちゃんをつきとばすようにして、わたしはトイレから出た。
(ゴメン、ののちゃん)
でも、口に出してあやまれるよゆうは、わたしにはなかった。
◇
明日から、またコンサートツアーがはじまるので、今日はメンバーみんな、ホテルに泊ま
る日だった。
わたしは、自分の部屋にとじこもって、電気もつけないで、ひざをかかえていた。
夜中、わたしの部屋に、だれかがたずねてきた。
こんこん、とドアをノックされた。
がばっ、とわたしはベッドから起きあがった。
(加護、起きてる?)
外からの声は、まきちゃんだった。
わたしは、だだだたっ、と走っていって、ドアをあけた。
廊下のあかりがまぶしくて、しばらくは、目をぱちぱちさせてた。
「こんばんわ。夜遅くにゴメンね」
ジャミロクワイのトレーナーと、ジャージ姿のまきちゃんがたっていた。
「入っていい、かな?」
うん、全然いいよ、と答えて、わたしは部屋のなかにもどった。部屋のあかりをつけた。
まきちゃんは、さっきまでわたしが寝てたベッドにあぐらをかいて座った。
「そのさあ、なんで加護が怒ってんのか、よく分かんないんだよね」
こまってるような、なやんでるような表情で、あたまをバリバリかいた。
「とりあえず、お礼だけ先に言っとくよ。ありがとうね、加護」
まきちゃんは、ニッコリ笑って、耳をこちらに向けた。
あの、パンダのイヤカフがゆれていた。
「……でさあ、私鈍感だから、ホントに、加護が何を怒ってるのか分かんないんだよね。
ゴメンね。謝るし、なんでも言うこと聞くからさ、機嫌なおしてよ」
市井さんが、後藤さんと一緒にいるトコロを見たんです。それだけです。
って答えると、ありゃあ、あれ、見られちゃってた? ってまきちゃんはおどけた口調で言った。
「市井ちゃんが、誕生日オメデトウ、って言いに来てくれたんだよね。で、市井ちゃんに
いろいろ報告してたんだ。私も加護の教育係になって、成長したよ、って。加護にいろん
なこと教わって、少しは立派になったかな? って」
市井さんのことを嬉しそうに話すまきちゃんを見て、いつの間にか、わたしはぶーっ、と
ほっぺをふくらましてたみたい。嫉妬してたのか? カワイイヤツめ、とまきちゃんはわ
たしの頭をかかえて、ぐりぐりしてきた。
まきちゃんて……どうして、こんなに……ふう。
なんだか、いろんな胸のつっかえが、なくなっていくみたいだ。
うん、これが、わたしの、まきちゃん先生なんだ。
わたしは、すぽっ、とまきちゃんの腕から抜け出して、さっき、なんでも言うことキクっ
て言ってましたよね、じゃあ、一回だけ、わたしのことを亜依ちゃん、って呼んでくださ
い、と言った。
「う……」
まきちゃんは、しばし硬直したのち、ぼそりと、
「――亜依ちゃん」
と言った。
「はい」
「……」
「……」
二人して、赤面した。
ずっと黙ってたら、気まずくなってきたので、
「どうして、そのパンダを後藤さんが持ってるんですか?」
話題をかえようと、聞いてみた。
「辻がさあ、これ、持って来てくれたんだよね。亜依ちゃんから後藤さんへみたいです、
って言って」
まきちゃんは、カードをひらひらさせて言った。
そうだ、メッセージカードを入れてたんだ。
「『まきちゃん、たんじょうびおめでとう』って、少し照れるけどね、はははは」
あああっ、ついつい、いつも心のなかで呼んでるノリで、まきちゃん、って書いちゃってた!!
恥ずかしい……
わたしは、顔がまっかになっていくのを感じた。
こめかみのあたりが、ドキドキいってるのがわかる。
まきちゃんは、まがおになって、わたしをぎゅう、って抱きしめてくれた。
耳もとで、
「加護、ホントにありがとうね。すっごくうれしいよ。私、加護の教育係でホントに良か
ったよ。ありがとうね」
なんどもなんども、ありがとう、ありがとう、って言ってくれた。
わたしは、
わたしは、また、泣いちゃった。
うれしくて。
「ん――なに、モジモジしてんの?」
「もうひとつ、おねがいがあります」
「えー、さっき聞いたじゃんか」
「ダメなら、いいです」
「言うだけ言ってみなよ」
「……今日、いっしょに寝てください」
その夜は、朝までそんなに時間はなかったけど、
まきちゃんの腕まくらでぐっすり眠った。
明日、ののちゃんに謝ろう。
あと、ありがとうも言っておかないとね。
第1話、おしまい!
163 :
名無し娘。:2000/12/12(火) 22:26
ええ話やないですか、どの話も。
いつか本当に閉鎖する
その日まで
続けてください。
こういうのもいいね。・・・なんか懐かしい気がする。
無理しない程度に頑張ってな。
心、温まるいい小説ですね。
cosmicbabyさん、また感動してしまいました。
次の話、期待してます。
ののたんがキーマンで嬉しいですv(^^)v
いい話しやなぁ〜〜なご〜み
168 :
モーヲタ理事長:2000/12/13(水) 21:11
♪亜依ちゃん、どうしてそんなに可愛いの?♪
超超超超いい感じ。
170 :
受験生:2000/12/15(金) 00:41
これをageずに何をageる
171 :
非処女ゴマキ:2000/12/15(金) 01:54
暇なときに読もうっと
172 :
:2000/12/15(金) 02:23
素晴らしい!!!
173 :
名無し募集中。。。:2000/12/15(金) 02:26
読んだほうがいいのか?
174 :
名無し募集中。。。:2000/12/16(土) 05:26
まきちゃん
加護hozenn
sage
hozenn
自動保全エージェントに来て欲しいです。
179 :
21:2000/12/23(土) 00:30
ほぜ〜ん。
保全してるよ。面倒くさいので登録書き込みはしてなかったし、
登録スレ一覧を更新してなかったけどね。
なので、放置しても大丈夫、じゃなかった、
あんな無機質な書き込みに頼らないで、なるべく感想とかでフォローしてあげてね。
続き期待してますです
182 :
チャーミー石川とチャレンジモーニング娘。:2000/12/26(火) 12:42
略してチャミモニ
sageといてやるよ。
感謝しな。
保全書き込みを行います。
977990408
185 :
21:2000/12/28(木) 23:00
再開して欲しいです。
「おはようございまーす」
「おはようございまーす」
今日は、新曲のダンスレッスンの日。
朝から、まきちゃんのようすがヘンだった。
なんか、いつもより、顔があかいんだ。
わたしは、まきちゃんがきになって、練習にしゅうちゅうできなかった。
「こらぁ、加護。お前、なにやってんだよ!」
なつ先生におこられてしまった。
「やる気がないんだったら、そこで見てろ。練習の邪魔するな」
かべぎわを指さされて、わたしはとぼとぼと歩いた。
「加護、大丈夫? これ、ムズカシイからね」
まきちゃんが、わたしの肩をぽんぽん、とたたいて、はげましてくれた。
その手が、とても熱くて、びっくりした。
「後藤さん、もしかして、熱があるんじゃないんですか?」
「ん……ちょっと風邪っぴきなんだ。でも、熱冷まし飲んでるし、へいき
へいき」
耳もとで話してくれたんだけど、吐息がすごくあつい。すごくしんぱいだよ。
まきちゃんは、わたしの頭をなでて、レッスンの輪にもどっていった。
れんしゅうに身がはいらないまま、でも、かべぎわでダンスをおぼえた。
「よし、一旦休憩。加護、お前いまのやってみ?」
なつ先生が、タオルで汗を拭きながら、いう。わたしは、ぐったりとパイプ
イスに座りこんだまきちゃんを目でおっていた。
「加ぁ護ぉ!!」
「ごめんなさいっ」
なつ先生の怒りがばくはつする前に、あやまったのはまきちゃんだった。
わたしのところに走ってきて、加護は今日は調子悪いみたいなんです、
って言ってくれた。
病気なのは、まきちゃんの方なのに。
きゅうけい時間に、すこしでもからだを休ませないといけないのに。
「わたしは大丈夫です。やります」
まきちゃんに心配かけちゃダメだ。
わたしは、一生けんめいおどった。でも、足をクロスさせてターンすると
ころで、どうしても分からなくなって、ストップしてしまった。
「大丈夫、できてるよ。あとは、こう、ひねるだけだよ」
まきちゃんが、わたしのそばに来て、あれこれ言ってくれた。わたしの
パートを踊ってみせてくれた。
まきちゃんは、笑顔をつくっていたけど、ほんとうにつらそうだった。
目がうるんでる。頬があかくなってる。ひとことしゃべるたびに、肩で息
をすいこんでる。
まきちゃんにしんぱいばかりかけてる。
まきちゃんにめいわくばかりかけてる。
「やめてくださいッ! わたし、自分でできますから」
まきちゃんは、目をまるくしてた。
そうだね、でしゃばって、ゴメンね、とまきちゃんは言って、イスに戻
っていった。
あ……。
わたし、なにやってんだろう。
くやしかった。
顔があげられないで、床をじっとみてた。
「今日はムリだね。加護は一日、見学だよ。はい、じゃあ休憩終わり。
みんな集まって」
鼻をすすって、わたしはみんなといれちがいでかべぎわに戻った。まき
ちゃんに、さっきのあやまりたかったんだけど、目があわせられなかった。
次の日。
まきちゃんは風邪っぴきのままだった。わたしは、ついついまきちゃんの
ことで胸がいっぱいになって、調子をとりもどせないでいた。
わたしは、どんどん遅れていった。
なつ先生のきげんもどんどんわるくなって、スタジオ全部がイヤなふんいき
になった。
わたしは、一番うしろで、みんなとあわせてステップをふんでいる。
まただ。
また、あのターンのところで、引っかかってしまった。
わたしは、イライラして、だん、とつよく床をふんだ。
みんな、びっくりしたのか、わたしをふりかえった。
(しまった)
なつ先生がさけぶ。
「はい、曲止めて。加護、なんで出来ない? ちょっと後藤! あんた、
教育係だろう? なに教えてんだよ」
「ごめんなさい」
まきちゃんは、顔をあおくして、頭をさげた。
それは、それは、せきにんを感じてるからじゃなくて、病気だからなんだ。
わたしは、まきちゃんと先生のあいだに立った。
ものすごく、腹がたった。
あんまりにも腹がたって、泣いてしまった。
「わたしが悪いんです。ま──後藤さんは悪くないです」
まあまあ、うまくいかない日もあるさ、と飯田さんが、あいだに入ってくれる。
「ごめんね、加護。出来ないのは、私がしゃんとしてないからだよね。
ほんと、ごめん」
そう言って、わたしの頭に手をおいて……まきちゃんはしゃがみ込んでしまった。
「ごっちん?」
「後藤さんッ!」
さっきから、まきちゃん、ふらふらしてたんだ。
わたしは、パニックになった。
なつ先生にわめきちらして、わたしがいむ室に連れていく役になった。
まきちゃんは、ベッドによこになると、すぐにすう、と眠った。つかれてるんだ。
わたしは、いむ室で、いっしょうけんめい、ダンスの練習をした。
たおれてしまうくらい、まきちゃんもガンバってるんだ。
少しでもまきちゃんに心配かけないように、って、すごく集中した。
ときどき、きゅうけいして、まきちゃんのひたいのタオルを取りかえた。
まきちゃんは、苦しそうだった。
なんども寝がえりをうってた。
(イヤな夢でもみてるのかな?)
なんど目かの、タオル取りかえの時に、おそるおそる、まきちゃんの手に、わたしの手をかさねてみた。
いきなり、ぎゅっ、とにぎってきて、起きてたのかな? ってびっくりした。
……まきちゃんは、起きてなかった。
ただ、ちょびっと、涙をながして、
「いちーちゃん……」
ってささやいたんだ。
それは、とても子どもっぽい、いつものお姉ちゃんのまきちゃんとはぜん
ぜんちがう、甘えた、それでいて泣きそうな声だった。
わたしは、まきちゃんの手を、つよくにぎり返した。ドキドキしながら、
みみもとで
──市井さんが、呼んでたみたいに、
──声のマネをして、
「後藤……」
って、いってみた。
まきちゃんは、そのとたん、ガバっ、て起きた。
おおあわてで、キョロキョロして、小声で(なーんだ)っていった。
「あれ、加護? 私、どうしたんだっけ?」
まだ、目のはしっこに、涙をためてて、すこし、鼻をすすった。
そっか、途中で倒れちゃったんだね、とひとりごとを言った。
「あーあ、私、ダメだね。大事な時なのに、風邪なんて引いちゃって。
テンションも最悪だし、体調もグダグダだし、もう私、ダメダメだよ……」
ひざをかかえて、頭をうずめてしまった。
(こんなときに、市井ちゃんがいたら……)
そのつぶやきを、わたしはハッキリと聞いた。
わたしは、手をグーにして、たちあがった。
「後藤さん、見ててください」
なんどもなんども、ここでれんしゅうした、ダンス。
(たんたん、たたたん)
まきちゃんが、見ててくれる。
テレビ本番のときよりも、きんちょうした。
でも、メロディを口ずさみながら、キレイに、おどることができた。
「すっごーい、出来てるじゃん、加護」
まきちゃんは、目をまるくして、はくしゅしてくれた。すっごくうれしかった!!
「後藤さんは、寝ててください。スタジオにもどって、今日のぶん、ちゃ
んとおぼえてきます。後藤さんに、おしえてあげます。だから、ムリしな
いで、ちゃんとカラダをやすめて──」
(わたしだって……わたしだって……)
それいじょうは、コトバにならなかった。
まきちゃんは、おいでおいで、ってわたしをベッドのそばまで来させて、
ぎゅっ、ってしてくれた。
「わたしだって……ちゃんとやれます。ガンバります。だから、たよりないかも
知れないケド、わたしも頼ってください。いっしょうけんめい、ガンバりますから。
だから、だから……」
鼻水で、まきちゃんの肩のあたりをよごしてしまった。まきちゃんは、ぜんぜん気に
しないカンジで、わたしの背に回した手で、ポンポン、ってたたいた。
「私の知らないうちに、加護もお姉さんになったんだね。そうだね。加護、頑張って
るモンね」
はい、チーンして、とさしだされたティッシュで、鼻をかんだ。
じゃあ、さっそくお願いしようかな、とまきちゃんは言った。
「実はさ、まだ、ふらふらなんだよね。今日のレッスンは、加護にお任せしていいかな?」
「はいっ!!」
右手をあげて、きりっとした顔で、元気に答える。
「じゃあ、もう少し寝るよ。お休み」
「お休みなさい」
まきちゃんは、ホントに、すぐに寝てしまった。
(がんばるぞー)
わたしは、まきちゃんの頭をなでなでしてから、いむ室をでた。
第2話終わりです
いつもいつも、消されないように書き込みしてくれて、ありがとうございます
ほんわか
200 :
21:2000/12/29(金) 23:40
もっと〜。
201 :
rt.ctktv.ne.jpさん:2000/12/29(金) 23:58
頑張って!楽しみにしてるよん
加護の自伝みたいで、おもしろいっす。
いいです〜★ほんわかいです〜*^^*
くだらないスレたててる自分に自己嫌悪…
205 :
名無しよーん:2000/12/30(土) 16:23
@ @
( ´д`)<いいこあいぼんもええな〜。。
でもうちわうちやっ……ひっひっひっ……
さてわたしはだれでしゃろっ?
206 :
あいぼんのあんこ:2000/12/31(日) 00:26
ええはなしや… これからもがんばってくださ〜い!
応援してます!
207 :
名無し娘。:2000/12/31(日) 00:29
あいちゃんは〜、たろうの〜嫁になる〜。
保全さげ。
小説としては稚拙かもしれないが、心温まる内容は読んでて心地よい。
そのうち、やぐよしでも書いてくれると嬉しいな。なんて・・・わがまま。
小説というよりは戯曲かな。
でも全然稚拙だとは思わないよ。
作者さん頑張ってくださいね。
211 :
名無しあいぼんぬ:2001/01/03(水) 20:55
あげ
212 :
矢口狂い:2001/01/03(水) 21:11
亜依ちゃんと私。
何の関係もありません。
213 :
あいぼんハート:2001/01/03(水) 21:12
みにもにがでた
214 :
後藤:2001/01/03(水) 23:08
さむいわ
215 :
名無し募集中。。。 :2001/01/03(水) 23:10
216 :
名無し募集中。。。:2001/01/04(木) 05:55
続きが読みたいヅラ・・・。
ここのあいぼんマジかわいい。
優しいゴマもいいっすね〜。
保全書き込みを行います。
978706804
保全書き込みを行います。
978818403
219 :
名無し募集中。。。:2001/01/08(月) 16:23
続ききぼん・・・
保全書き込みを行います。
979131603
221 :
矢口より:2001/01/11(木) 19:36
矢口の活躍を出せ
つづき、おねがい・・・・。
期待sage
まだ?
VTRお願い!
保全
保全書き込みを行います。
980008204
228 :
名無し:2001/01/21(日) 20:34
( ´D`)<「じかいさくにきたいなのれす」
保全書き込みを行います。
980262023
保全書き込みを行います。
980485208
231 :
名無し募集中。。。:2001/01/27(土) 22:34
保全
232 :
ツンク:2001/01/27(土) 22:52
age
233 :
かぎょちゃん:2001/01/28(日) 05:55
あげ
「まきちゃんとわたし」の第1話…
加護は実際は1人で電車に乗れない…
235 :
かぎょちゃん:2001/01/28(日) 07:07
あげ
かぎょちゃんサン!!!タイヘンダネ!!!!!ハハハハハハハッハハハヤヤッヤヤヤヤッヤyッビッビイビ!!
保全書き込みを行います。
980798404
保全書き込みを行います。
980960403
保全書き込みを行います。
981145804
保全書き込みを行います。
981306008
保全書き込みを行います。
981507607
保全書き込みを行います。
981745208
koi
保全書き込みを行います。
982085404
↑これって、荒らしてるんすか?
ノハヽヽ
( ´D`)<このスレめいさくいたでみたのれす
うう…続き読みてぇよ
かあいいなぁ〜。
こんなかあいい小説読んだことないよ。
......
age age
251 :
名無しさん:2001/02/23(金) 21:50
age
あげ
濡れ衣@本物 濡れ衣@偽者 濡れ衣@他所者 SUNSUN39号 てうにち新聞社新入社員
cosmicbaby Sの住人 チーズ サカナ log0076 大河好き かおりんご アルティメット娘。
名無し作者 代打娘。 吟遊詩人 ベスト!名無し娘。1 マングース西浦 pico DICE
( ´ Д `)気だるいのは生まれつきなの ヘンリ猪口
これらの人は全員逝って下さいね。
お願いします。リソースの無駄になります。
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あいぼむsage