1 :
SUNSUN39号:
ついでにコテハンに
2 :
名無し娘。:2000/10/30(月) 20:00
親父の前で全裸になるエスパー真希
3 :
名無し娘。:2000/10/30(月) 20:00
4 :
名無し娘。:2000/10/30(月) 20:01
6 :
なちぺぺ:2000/10/30(月) 20:03
転落した親父を死姦するエスパー真希
私は日本中を旅して、様々な人間とカラダを入れかえた。長身の女、暴走族の男、
鼻ピアスの女、青いスポーツカーの男、舌足らずな女、安倍さん似の痩せた女、
銀杏な女、牧場の女――。秋が過ぎたころには40人くらい過ぎていた。
5人目からは大した罪悪感を抱かず、意識的に入れかえていた。入れかわった人の
その後を気にすることもなかった。長身の女から厚底を履いた女にかわったときなど
感謝してほしいと思ったくらいだ。
10人目くらいからはコツを覚えて簡単になった。唇を噛むのだ。そうするとなぜか
強く念じなくても入れかわれた。
距離もかわった。はじめは30メートルが限界だったけれど、慣れるうちに300メートル
離れた人とも入れかわれるようになった。
しかし、合意の上での「入れかわり」は一度もなかった。私がこんな能力をもっている
ということは、私以外知らなかった。そして、これからも教えるつもりはなかった。
人に自慢できる能力とは思えなかったからだ。教えたとしても誰も信じないだろうし。
私は時々、死について考えた。そして、いつも「私は永遠に死なない」という結論に
辿り着いた。不治の病に冒されたとしても、そのカラダを捨てればいいのだから。
この先私が老いを憂うことはないだろう、と私は思った。精いっぱい生きても、
投げやりに生きても、どんなに成功しても、どんなに失敗してもリセットできる
私の人生は、ひどくつまらないもののような気がした。
永遠の命を手に入れた私は、かわりに何かを失っていた。
太陽を囲む雲がドーナツに見えた。本物の加護亜依は今ごろ豪邸で何を食べてんだろう、
と思いながら、加護亜依のカラダをもった私は午後の公園に入り、ベンチで昼寝を
しているサラリーマンのとなりに座った。
「いい天気ですね」と私は言った。
男は反応しなかった。熟睡しているようだ。
私は男と入れかわった。財布を出し、中を見ると7万7千円入っていた。
「こんなに持ってたら、落としたとき困りますよ」と言って、私はとなりで寝ている
亜依の手に7万6千円を持たせた。千円を残すのは私のこだわりだった。
幼い顔してるな。しばらく亜依の寝顔を眺めたあと、私は亜依のカラダに戻った。
それから公園を出て、パスタが美味しいと評判の店に行き、空腹を癒した。
え?やっと見つけたと思ったらこんなに話が進どる
亜依のカラダに棲むようになってから13日目の土曜日、私は朝から公園に行き、
子供たちと一緒に頭を空っぽにして遊んだ。そして「人生って素晴らしい」と思った。
夕方になり、子供たちが帰ってしまうと、公園の風は急に冷たくなった。
ひとりになった私は、鉄棒で逆上がりをし、砂場の砂を蹴り、ブランコで揺れ、
滑り台を駆け上がり、シーソーにただまたがった。そして、ジャングルジムの
一番高いところに登った。
そこで綺麗な夕焼けを眺めていた私の視界に突然、丸い物体が割り込むように入った。
私は、私に向かって飛んできたそれを両手で捕まえた。――りんごだった。
13 :
4:2000/11/01(水) 06:01
「ナイスキャッチ!」と声がした。見ると、拍手をしながら女がベンチに座っていた。
私がジャングルジムを降りて、その女に近寄ろうとすると、女は「ストップ!」と
言って「ヘイ!」と手を前に出した。
投げろってこと? 私はちょっと考えてから10メートルほど離れた女に向かって
りんごを投げた。女は胸の前で、それを捕った。
「ストラーイク!」
そう叫んで女はまた私にりんごを投げた。そして、私が捕ったのを見て、また
「ヘイ!」と言った。
何だかよくわからないが、私は前よりも力を込めて投げた。
「ストライクツー!」
女はにっこりと笑った。その笑顔を見て、私は「あと一球!」と思った。
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
更新下げです
警報発令中なので不躾ですが保全させて頂きます。
ほぜむ
18 :
4:2000/11/07(火) 00:23
振りかぶって投げたりんごは、美しい弧を描いて女に届いた。「やった」と私は思わず
笑みをこぼした。しかし女の判定は「ボール」だった。
「りんご1個分外れてる」と言って女は球を投げ返した。
まあ、いいだろう。たしかボールってのは3回までいいんだ。余裕をみせて私は次を
投げた。しかし、ボール。その次もボールだった。
「ツースリー!」と言って女は笑った。「フォアボールになるよー」
言われなくてもわかってるよ。最後の一球、私は女の顔を狙って投げた。
私の手を離れたりんごは、ストレートに女の胸に収まった。
「どっち?」と言ったけれど、私はストライクとしか思えなかった。
19 :
4:2000/11/07(火) 00:25
女は無言でベンチに座り、バッグからナイフを出してりんごの皮を剥きはじめた。
「ねえ、どっちよ?」私は女に駆け寄った。「ストライクでしょ?」
女は答えず、りんごを私に差し出した。
「このりんご、美味しいんだよ」
私は受け取って、一瞬ためらったあと、一口かじった。口の中に甘酸っぱさが
ひろがった。
「美味しい」
「ねっ?」
「うん」と言って私は女のとなりに座った。女は、バッグとは別に脇に置いてあった
紙袋からもうひとつりんごを出し、皮を剥き、豪快にかじりついた。
「いっぱいあるから、どんどん食べて」
女は、これでもか、というぐらいの笑顔で言った。
私は「ありがとう」と言った。ちょっと照れ臭かった。顔が赤くなってるかもしれない。
20 :
4:2000/11/07(火) 00:26
「私、梨華。りかっちって呼んでいいよ」
呼ばないだろうけど、私は「うん」と言った。
「あなたは?」
「え?」
「名前、なんていうの?」
一瞬口ごもった。名前を聞かれて「真希」と答えていたのが随分昔のことのように思えた。
「紗耶香」
市井ちゃんの名前を言った。もうこの世にはいない市井ちゃん。でも、私の記憶の中には
たしかに存在していた。
市井ちゃんを消したくない。そんな思いがあって自然と市井ちゃんの名前が出た。
「紗耶香かぁ。いい名前だね」
「うん」
市井ちゃんが褒められた気がして嬉しかった。
「さやりんって呼んでいい?」
梨華は例の笑顔で言った。
私は「嘘。本当は亜依」と言った。
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
22 :
4:2000/11/08(水) 05:56
「亜依かぁ。それもいい名前だね。あいぼんは私の名前好き?」
梨華の質問に私は戸惑った。リカ――特になんとも思わない名前だ。それより「あいぼん」
ってなんだ?
私はとりあえず「大好き」と答えた。
「本当? 嬉しい」と梨華は喜んだ。そして、りんごをもうひとつ袋から出した。
「見て」
そう言って、梨華は夕焼けの空にりんごを投げた。なんで? と私は思った。
そのときだった。りんごが空中でぴたりと止まった。
信じられない光景だった。驚きで言葉を失った私を見て、梨華はにやりと笑った。
さらに信じられないことに、動きだしたりんごが空中に「あいぼん」と描いて
梨華の手に戻った。
「どう?」と梨華は自信たっぷりに言った。
私は梨華の手からりんごを取り、「これ、食べられるの?」と訊いた。
23 :
4:2000/11/08(水) 05:57
「食べられるよ」
梨華は私の手からりんごを取り、ベンチに座って皮を剥きはじめた。慣れた手付きだった。
「あいぼんはお小遣いいくら貰ってるの?」
また、唐突な質問だった。この状況で質問するのは私のほうだろう、と思いながら
「先月はなんだかんだで90万くらいかな」と答えた。
「すごーい。私なんて2千円だよ」
「それもすごいね」
「あいぼんっていくつなの?」
「15」
私は思わず本当の年齢を言ってしまった。本当の亜依は12歳だっけ?
24 :
4:2000/11/08(水) 05:58
「じゃあ私と同い年だ。見えないねー」と言いながら梨華は私にりんごを渡し、
バッグから小銭を出した。100円を1枚と10円を2枚。
「見て」
梨華は公園の出口に設置されてあった自販機に向けてそれを1枚ずつ投げた。
「え? なにやってんの?」
もったいない、と私は思った。
梨華は次に足元の石を拾い、それも投げた。すると、自販機からゴトンと音がした。
梨華は私を向いて「どう?」と言った。その口元には微笑が浮かんでいた。
私は財布から120円を出して「飲茶楼」と言った。
25 :
ぎっち:2000/11/09(木) 05:43
糞虫失せろ!
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
「ぎって」って不愉快だね。いない方がいいね。
28 :
4:2000/11/10(金) 06:13
私からお金を受け取り、梨華は同じようにそれを1枚ずつ投げ、最後に石を投げた。
そして自販機は同じようにゴトンと音をたてた。
「あいぼん、テレキネシスって知ってる?」
「テコキデスシ?」
「そう、テレキネシス。念動力のこと」
私は「知らない」と言った。
「私ね、超能力少女なんだ」と梨華は言った。「信じない?」
信じないわけがない。立て続けに能力を見せられたのだから。
「信じるよ」
「そうだよね。だってあいぼんも持ってるもんね」
そう言って梨華は微笑んだ。
「何を?」
「超能力」
梨華は知っていた。私以外、誰も知りえないことだと思っていたのに。
29 :
4:2000/11/10(金) 06:15
「なんでわかった?」
「だって感じるもん」と梨華は言った。「この公園の前を通ったとき、すぐにわかった。
チカラを持った人がここにいるって」
「はあ」
「あいぼんは私に感じないの?」
たしかに言われてみれば、梨華はどこか人と違う。
「ちょっと、感じる」
「でしょ?」
「あっ」と私は言った。「りんご……」
「そう。あなたとお話がしたかったから私はりんごを投げた。きっかけが欲しかったの」
普通に話しかけてきてもよかったのに、と思ったけど「なるほど」と頷いた。
「それで、あいぼんのはどんな能力なの?」
「あれ? 知ってるんじゃないの?」
「知らないよー。チカラを持ってるのはわかるけど、それがどんなチカラかまでは
わからないよ」
「そうなんだ」
30 :
4:2000/11/10(金) 06:18
「で、どんなの?」
「えっと……」
言いたくなかった。私の能力なんて本当に仕様もないものだ。梨華の能力を見た
あとだけに、なおさらそう思った。
「なんて言ったらいいかな……こう、遠くに行ったりするやつ」
「テレポテーション?」
「そう、それ」
「すごーい」
私はそれが嘘にもかかわらず「まあね」と言った。
「やってみて」
「それはちょっと……」
しまった、と思った。予想できた展開なのに、予想できなかった。
やむを得ず、私は「ただいま」と言った。
「え?」
「今、行って戻ってきたんだよ。わからなかった?」
また幼稚な嘘をついた。しかし梨華は「わからなかった……。どこに行ったの?」と
言った。
31 :
4:2000/11/10(金) 06:20
「えーと、北海道」
「すごーい。そんな遠くまで」
「まあね」
「で、どうだった?」
「寒かった」
「そっか〜」
そう言って、梨華は熱い眼差しで私を見つめた。
私は無理やり話題を変えようと「それより梨華ちゃんの超能力のこと教えてよ」と言った。
「梨華っちでいいよ」
「うん」
「私のチカラは、こんなふうに手で触れたものを自在に操れるってもの」と言って
梨華はりんごに触れ、それを宙に浮かせた。
私は「すごいね」と言いながら、りんごをちょいと触った。すると、りんごは
ストンと落ち、私の足元を転がった。
「何かにぶつかったらそこで終わりなんだ」と梨華は言った。
「なるほどね」
32 :
4:2000/11/10(金) 06:21
「どうかな、私のチカラ?」
「すごい」
それしか言葉が出なかった。
「あ、私に触ってよ。空、飛んでみたい」
「ごめん。重いものは動かせないんだ」
「私、軽いよ」
「う〜んとね、バスケットボールくらいが限界なんだ」
バスケットボールと聞いて私は「あっ」と思った。
「バスケの選手になりなよ。絶対入るでしょ? シュート」
梨華は頷いた。
「入るよ。どこに投げてもね。体育の授業でバスケやったときなんか、ひとりで
33点取ったんだよ」
「33点? もっと取れたんじゃない? ボールがまわってきたらすぐシュートして」
シュートを打つ真似をしながら、興奮して話す私を見て梨華は苦笑した。
「なに?」
「ボール、まわってこなかったんだ。途中からぜんぜん」
「どうして?」と訊いてすぐ、私は何となくその理由がわかった。そして、梨華がそれを
言葉にした。「シュートが絶対入るから」と。
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきました。
34 :
4:2000/11/11(土) 23:41
「暗くなっちゃったね」
私は夜空を見上げ、言った。
「19時33分」梨華が腕時計を見て言った。
「帰らないと、叱られる?」
私は「大丈夫」と答えた。帰る家がない私を叱る人などいない。
「じゃあ、もうちょっと話そう」
「うん」
「あいぼん、あれに乗ろうよ」
突然、梨華は言ってブランコのほうに走った。
35 :
4:2000/11/11(土) 23:43
しばらく黙ってブランコを振り動かしたあと、私は「ソフトボールは?」と言った。
これがあった。りんごでキャッチボールをやったのに忘れていた。
「ピッチャーやったらいいと思う。どんなボールでも投げられるでしょ?」
「漫画より非常識な変化球も、ランディ・ジョンソンが子供に思えるくらい
速いストレートも」と言って梨華は笑った。
「だったら」と私が言いかけると、梨華は遮った。
「ねえあいぼん、私はいくつ三振を取ればいい? 簡単に取れるストライク。
三振ばかりじゃ飽きるからたまに緩い球を投げてヒットを打たれようか?
バスケのフリースロー。目を瞑って投げて、外す。そうしたらゲームは面白くなるかもね。
バレーボールの試合。私のサーブだけで終わっちゃったら他の選手に気の毒だから、
わざとネットに引っ掛けたりして」
「……梨華ちゃん?」
36 :
4:2000/11/11(土) 23:44
「私ね、もうやめたけどテニスやってたんだ。200kmのサーブを打つ女って
テレビや雑誌で騒がれたりしてたの、知らない? 200km出すって、ヒンギスだって
ダベンポートだって無理なのに、私は平気な顔で打ってたの。出そうと思えば
もっと出せたけどね。300kmでも400kmでも。けっこう難しいんだよ。サーブ打つとき、
ラケットに当てないって」
梨華は声を荒らげてつづけた。
「私のサーブは面白いように決まった。面白くなかったけど。でもね、相手にサーブ権が
あるゲームはほとんど取られたから、試合はいつも接戦だった」
「もういいよ」と私は言った。「スポーツは向いてないんだよ、きっと」
「じゃあ私のこのチカラ、何に使えばいい?」
それは難しい質問だった。私はしばらく考えたあと、言った。
「夜、ベッドに寝転んで小説を読んでたとして、そのとき睡魔に襲われたとする。
でも大丈夫。チカラを使えば、わざわざ立たなくても本を本棚に戻すことができる」
37 :
4:2000/11/11(土) 23:52
ゝ‐――――∂――∂――――∂――∂――――ゝ
/ / / /
/ / / /
/ / / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/ / < 私、小説読まないんだ
/ / \__________
/ / / /
/ / / /
∧_/∧ / ∧_/∧ / / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( /▽^)/ (´д` ) / < 私も読まないけどね
(つ つ ⊂/ つ \__________
←λ_ ~) ~)ヽ ←λ_~) ~)ヽ
ヽー(__)_) ゝ ヽー(__)_) ゝ
38 :
4:2000/11/11(土) 23:53
街灯が、梨華の横顔を照らしていた。頼りなく笑うその横顔は、切り取って
永遠に残したいと思うほど美しかった。
「超能力なんて、べつに無理して使わなくていいと思う。使わなかったら
普通の人間なんだし」
「今さらそんなことできる? あいぼんだって使ってるんでしょ?」
「私は……」使ってるけど。
「ほらね」
「でも、むなしい。梨華ちゃんもそうだからテニスやめたんでしょ?」
梨華はブランコから降りた。
「私たちは特別な人間なんだよ」
そう言って足元の石を取ると、「バン!」と叫んでそれを飛ばした。いや、撃った。
街路樹に命中した石は、枝を折って闇に消えた。
「私の手は高性能の拳銃なんだ」と梨華は言った。「たまに人を撃って遊んでる」
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
41 :
4:2000/11/13(月) 03:25
何も言わない私を見て、梨華はにこっと笑った。
「私、前にも超能力を持った女の子に会ったことあるんだ。この話、聞きたい?」
私が頷くと、梨華は話しはじめた。
「そのときは、その子のほうから私に話しかけてきたの。あなた、チカラ持ってる
でしょ? って。その子もチカラを持ってるせいで孤独だったみたい。私たちは
すぐに友達になった。でも、その子は3日も経たないうちに私の前からいなくなった」
「なんで?」
「その子が持ってた能力はリーディング。人の心を読む能力だった」
どういうことかわからず、私は首を傾げた。
「所詮、私とつり合うほどその女は孤独じゃなかったってこと」
42 :
4:2000/11/13(月) 03:28
つまり梨華は「私は誰よりも孤独だ」と言いたいのだろうか。
「あいぼん」
「なに?」
「りんご、最後の一球、ストライクだったよ」
なんだ今ごろ、と私は思った。
「私たち、友達だよね」
梨華は消え入るような声で、ささやくようにそう言った。
一瞬、脳裏に市井ちゃんの顔が浮かんだ。私は梨華の顔を見つめ、低い声で穏やかに
「違うんじゃない?」と言った。
43 :
4:2000/11/13(月) 03:39
梨華は微かに笑みを浮かべ、「ねえ、もう一度キャッチボールしようよ」と言った。
そして、「もう暗いから無理だよ」と言う私の言葉に「大丈夫。私がコントロール
いいこと、知ってるでしょ?」と返して、りんごの入った袋が置かれたベンチに走った。
やれやれ。本当に瞬間移動が使えたら、と私は思った。ここから逃げ出したい。
「いくよー!」
そう叫んだ梨華の手は、りんごではなくナイフを握っていた。遠目にもそれは見えた。
「ああそういうことか」と思ったときには、ナイフは既に梨華の手を離れ、亜依の喉に
刺さっていた。正確に、そして深く。
梨華のコントロールは本当にすごい、と妙に感心した。そして、私は喉の乾きを覚えた。
44 :
4:2000/11/13(月) 03:40
自販機の中には、リンゴジュースと飲茶が1本ずつ入っていた。私は何故かリンゴ
ジュースを取った。リンゴジュースを飲みたい気分、だったのだろうか。
タブを起こした缶に、ゆっくりと口をつけた。喉を通ったそれは、まだ少しだけ冷たさを
残していた。
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
保全下げです
腹痛は昼下がりに街をうろついていた私を突然襲い、世界をモノクロに変え、
全ての音を遠ざけた。
ああ、これだから人生は嫌になる。すれ違う人が皆、幸せそうに見えた。
私はうずくまり、しばらくじっとしていた。
やがて第1の波が過ぎ、街に色が戻ってきた。
トイレに行くのは今しかない! 私は風を切って走った。行き交う人の間を強引に
抜け、とにかく走った。しかし、1分も経たないうちにまた腹がうねりだした。
49 :
5:2000/11/17(金) 20:19
人にぶつかった。背後から「おいちょっと待て」と聞こえたけど、私は無視して走った。
しかし簡単に追いつかれた。
「ぶつかっといて逃げる気?」
私の肩をつかんでそう言ったそいつは、高いのか安いのかわからないサングラスと、
思わず「風邪ですか?」と訊きたくなるようなマスクで顔を覆っていた。
「謝れよ」とそいつは言った。
「ぼーっと歩いてたお前が悪い」と思ったけど「めんごめんご」と言って謝った。
もめている場合ではないのだ。
しかしそいつは「すいませんでした、だろ?」と言って私を放さなかった。
私は人生で初めて殺意を覚えた。カラダを入れかえてこの痛みを教えてやろうか?
50 :
5:2000/11/17(金) 20:20
そいつを突き飛ばし、私は再び走り出した。過去にこれほど一生懸命走ったことがあった
だろうか? こんなに必死になったことがあっただろうか?
「いらっしゃいませ」
ファミリーレストランの店員は愛想のない笑顔でそう言った。
「お手洗いをお借りしたいのですが」などと言う余裕もなく、私はトイレに駆け込んだ。
そして全てから解放され、「人生って素晴らしい」と思った。
生き返った私は過去を水に流し、未来への扉を開けた。そこにはあいつが立っていた。
「謝れよ」
「しつこいよ」
私たちは睨み合った。相手はサングラスとマスクのままだった。
それから約3分後、今度は見ず知らずの女が私に「あのぉ」と声をかけた。
「何か?」
「2名様でよろしいでしょうか?」
それは店員だった。私は「はい。できれば奥のほうの席で」と答えた。
51 :
5:2000/11/17(金) 20:20
「ご注文をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「これは何ですか?」
私はメニューの一番下を指して訊いた。
「そちらはお子様ランチになっております」
「それじゃこれと、あとリンゴジュース」
それを聞いて、向かいに座った馬鹿は笑った。
「ねえねえ、お子様ランチってあんたいくつよ?」
しまった、と思った。「いいじゃん、べつに」と言ったけど、私は普通にお子様ランチを
頼んだ間抜けな自分を恨めしく思った。
「お客様は?」
「ん? あ、えっと、ベーグル」
そんなのあるわけないじゃん! 私がそう言おうとすると、店員が「申し訳ございません。
ベーグルはただいま切らしておりまして」と言った。
「そう。じゃあレモンティー」
「かしこまりました」
店員は私たちに確かめてからメニューをさげた。
「では確認させていただきます。ののたんこっきあるよ〜をおひとつ、リンゴジュースを
おひとつ、レモンティーをおひとつ。以上でよろしいでしょうか?」
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
53 :
5:2000/11/18(土) 08:37
「大体なんで私があんたのランチに付き合わないといけないわけ?」
私ってことは女か……。
「それはこっちが訊きたい」
「でもあんたさぁ、運がいいよ」
「なんで?」
「だってそうでしょ? この私にぶつかって謝らなかったうえに突き飛ばして逃げる
なんて、もし今日私が機嫌悪かったらさぁ、あんた死んでたよ」
「ふ〜ん」
「さらに私とお昼を一緒に食べれるって、ついてる証拠じゃん」
この女バカだな、と思った。あんまり深く関わらないほうが良さそうなので、私は
「そうだよねぇ。私ってラッキー」と言った。
「あんた今、この女バカだなって思わなかった?」
「思ってないよ」
「ならいいけど」
そう言うと女はマスクを外し、サングラスを取った。
54 :
5:2000/11/18(土) 08:38
「驚いた?」
「驚いた」
正直驚いた。バカのくせに、こんな天才的にかわいいとは。
「言っとくけどサインはお断りだから。握手くらいならしてやってもいいけど」
ハァ?
「何で握手すんの?」
「あれ?」
「ん?」
「あんたもしかして私のこと知らない? ほら、私、私」
「誰?」
女は信じられないといった顔になった。
「吉澤ひとみ、知らないの、ねえ? あんた日本人? ほら、どっすーん」
「吉澤ひとみ?」
「CM見たことない? 湯上がりゆでたまご肌の吉澤ってやってるじゃん、化粧品の」
どこかで聞いたことがあるような気がしたけど、私は「知らない」と言った。
55 :
5:2000/11/18(土) 08:39
「あんた変わってる……」とレモンティーを飲みながら吉澤は言った。
「よっすぃーには敵わないよ」と私は言った。
「よっすぃー?」
「吉澤でしょ?」
「うん。あ、なるほど」
よっすぃーは頷いたあと、お子様ランチを食べる私をじっと見つめた。
「何? 食べたいの?」
「あんた名前は?」
名前を訊かれて「亜依」と答えていたのは3日前のことだ。
「梨華。りかっちって呼んでいいよ」
55は下書きだった・・・鬱だ
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
│ はーい、じゃみんな一緒に〜♪ |
\______ _______/
|/
| ̄ ̄ ̄ ̄|
_|____|_
/ノ/ ノ ノ \ヽ
|( | ∩ ∩|)|
从ゝ ▽ 从 /
/  ̄<V> ̄  ̄|⊃ 55は 下書き だった♪
/ ハ o ノ ̄ \ | \ / \ /
(__)/ o | ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧
/__ __ヽ (´∀`∩ (´∀` ) ( ´∀`)
|_|_| ⊂( )⊂( ⊂)⊂( )⊃
| |_ |_ / | | ) ) ) | | |
|___)_) (_) (_) (__)_) (__)_)
58 :
名無し娘。:2000/11/20(月) 21:06
?
.
kitaisage
保全書き込みを行います。974986204
.
保全
65 :
5:2000/11/27(月) 08:27
「あんた、変なやつだね」と吉澤ひとみは言って、レモンティーを一口飲んだ。
「よっすぃーには負けるけど」と私は言って、リンゴジュースを一口飲んだ。
「よっすぃーって何よ?」
「あんたの名前。吉澤だからよっすぃー」
「ああ、なるほど」
66 :
5:2000/11/27(月) 08:27
よっすぃーは納得した。そしてお子様ランチを食べる私をまじまじと見つめた。
「何? 食べたいの?」と訊いた私に、よっすぃーは「あんたの名前は?」と訊いた。
名前を訊かれて「亜依」と答えたのは3日前だったな。そう思いながら私は答えた。
「梨華。りかっちって呼んでいいよ」
67 :
5:2000/11/27(月) 08:28
私はよっすぃーに特別な何かを感じた。もしかしてこれは、梨華が私に感じたもの
と同じものかもしれない。つまりよっすぃーは――。
「超能力、持ってる?」
私はずばり、訊いた。よっすぃーは目を見開いて、「なんでわかった?」と言った。
やっぱり。超能力者同士は引かれあう運命にあるのかも?
私は笑って「だって私も持ってるもん」と言った。
68 :
5:2000/11/27(月) 08:29
「ホント? なら私が何年か言ってみてよ」
「私が何年って?」
「私があと何年生きるか、わかるでしょ?」
「わからないよ、未来なんて」
よっすぃーは、おや? という顔をしたあと、「あー、超能力持ってるって、私と同じ能力
持ってるってことじゃないのか」と理解した。
69 :
5:2000/11/27(月) 08:30
「よっすぃー、わかるんだ?」
私がそう言うと、よっすぃーは外の景色に目をやった。ファミレスの前は交差点に
なっていて、そこには人と車のせわしない往来があった。よっすぃーは横断歩道を
歩いていた女を指差し、「あの不細工、10秒後に死ぬよ」と言った。
「え?」
70 :
5:2000/11/27(月) 08:31
私はよっすぃーの顔を見た。目を細め、微かに笑っていた。2秒後、死ぬと言われた
女を見た。普通に歩いていて、特に変わった様子はなかった。2秒後、腕の時計を見た。
秒針が3つ進んだ。2秒間、目を閉じた。何も見えなかった。
そして目を開けて、また女を見た。女はパタンと倒れた。
「……死んだの?」
「死んだよ」
そう答えたよっすぃーの声は冷たく、透き通っていた。
私は首をかいた。かゆかった。
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
臨時書き込みです。
このスクリプトの是非も考え直すべきかも知れないけど、とりあえず975417696
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保全書き込みを行います。975672002
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作者さんまだですか〜。
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81 :
5:2000/12/07(木) 06:42
「死因は?」私はリンゴジュースを飲みながら訊いた。
よっすぃーは「さあ」と答えて笑った。
外はちょっとした騒ぎになっていて、ファミレス内の客や店員たちはそれを興味深げに
見ていた。
私は騒ぎには構わず、よっすぃーに訊いた。
「私は、あとどれくらい生きる?」
この質問に答えはあるだろうか。そう思って訊いた。
受け皿の縁をなぞっていたよっすぃーは指を止めて、私の顔を睨みつけるように
見つめた。そして「結構しぶとい。80年」と答えた。
82 :
5:2000/12/07(木) 06:43
「ホントに?」
永遠に続くと思われた私の人生に、あと80年という期限が付いていたことが意外だった。
「正確に言うと78年と90日、12時間34分56秒、55秒、54、53……」
80年後、私は超能力を使えなくなって死ぬのだろうか。それとも――。
「この梨華ちゃんのカラダがあと80年ってこと?」
「は? 何言ってんの?」
よっすぃーは眉根を寄せた。
私はリンゴジュースを飲み、「何でもない」と言った。
「でもね」よっすぃーはにやりと笑った。「たった今、80年から24時間に変わりました
ですです」
83 :
5:2000/12/07(木) 06:45
「それは……どういうこと?」
「こういうこと。あんたは24時間後、さっきの不細工とあの世で会えるってこと」
つまり死ぬってこと。
「マジで?」
「マジで」
どうしよう。会っても話すことないんだけど、と私はちょっとあせった。
「でも、なんでよ? なんで80年が24時間になった?」
「変えたから」と言ってよっすぃーは髪をかき上げた。「私は人の寿命がわかるだけ
じゃなく、それを変えることができる」
「それじゃ、さっきの不細工も……」
よっすぃーは頷いて「100年を10秒に変えてやった」と言った。
そのとき、市井ちゃんのカラダを失った日の映像が鮮明に脳裏に蘇った。
84 :
5:2000/12/07(木) 06:46
「紗耶香、こっち」と叫んだ圭ちゃんの顔は恐怖で歪んでいた。
電池でも切れたかのように動きを止め、パタパタと倒れていく人々。その中を私は走った。
車が歩道に乗り上げて、私をはねた。「死んだ」と思った。でも、生きていた。
――店内に「未来予想図U」が流れだした。よっすぃーはレモンティーを飲みながら、
「信じない?」と訊いた。
あの日、圭ちゃんと買い物に行った日に起きた事件は、連日のようにニュースや
ワイドショーで流れ、世間の関心を惹いた。今はあまり見なくなったけど。
「123人がほぼ同時刻に原因不明の死を迎えた。これは超能力者の仕業としか思えません」
テレビで誰かが言ってたな、と私はリンゴジュースを飲み干した。
「信じるよ」
85 :
5:2000/12/07(木) 18:57
よっすぃーはコーヒーを追加注文した。それから私に「怖い?」と訊いた。
「怖いというか……なんで私殺されるんだろ?」
「それはね、ぶつかって謝らなかったから」
まだ根に持っていたようだ。
「でもさっき、私のこと運がいいって言った」
「言ったねぇ。だけどほら、人の心は移ろうものでしょ?」
「気分屋なんだ。で? 123人殺した日は機嫌悪かったとか?」
よっすぃーは一瞬止まったが、すぐに笑みをこぼした。
「ああ、その日はね、そう、機嫌悪かったかな。演技に命懸けてる女優がいてさ、
私のこと顔だけの女優って言ったのよ。もちろんそいつは殺した」
よっすぃーの言葉を聞いていたら、なんだか命がとても軽いもののように思えてきた。
86 :
5:2000/12/07(木) 18:58
私はお子様ランチの旗をまるめながら、「今まで何人殺した?」と訊いた。
「そんなのいちいち数えてないよ」よっすぃーは即答した。「何しろ目醒めたのが
11のときだから」
「今いくつ?」
「15」
「あ、同じだ」
「だから?」
「べつに」
うーん。冷めてるというか、乾いてるというか……。超能力者はこんなやつばかり
なのだろうか? それともこんなやつだから超能力者になれたのだろうか? どっち
でもいいけど。
とにかくよっすぃーは非情だ。しかし魅力的だ。そして私の死は24時間後だ。
87 :
5:2000/12/07(木) 19:00
「ひとつ、助かる方法があるけど」「何?」「聞きたい?」「うん」「ど
うしようかな〜」「じゃあ、いいや」「ぶつかって逃げたことを謝り
なさい。そしたら解除してあげる」「そんなことできるの?」「でき
るよ」「なんかビデオのタイマー予約みたいだね」「あ、コーヒー持
ってきた」「そういえばあのとき私謝らなかったっけ?」「あれは謝
ったとは言えない」「え〜、いいじゃん」「だめ」「じゃあ、ゴメンチ
ャイチャイチャイニーズ」「あんた死にたいの? 謝るってのはね、
ごめんなさい、またはすいませんでした。これ以外は認めないから」
「すんまそんは?」「それはセーフ」「え、いいの?」「特別にね」「ふ
〜ん。でも言わない」「そう。別にいいよ。あんたが死ぬだけだから」
「すいません」
88 :
5:2000/12/07(木) 19:00
「はい?」
「リンゴジュースお代わりお願いします」
「かしこまりました」
店員はよっすぃーの前にコーヒーを置き、私の前からお子様ランチの皿を取り、そそくさ
と厨房に戻って行った。
よっすぃーはコーヒーを飲みながら「その強がり、いつまで続くかね〜」と言った。
強がりではなかった。ただ何となくだけど、死ぬ気がしなかったのだ。今までも何度か
死にそうな目にあった。でも切り抜けてきた。今度も大丈夫なんじゃないか、と私は
楽観していた。
淡々とした感じが好み。
後藤がどう切り抜ける(気があるのか疑問だけど)か
期待。
90 :
5:2000/12/08(金) 21:08
しばらく沈黙がつづいた。私は2杯目のリンゴジュースをちびちびと飲みながら思案を
巡らせた。謝って助かるか、謝らずに死ぬか、普通なら二択だけど普通じゃない私には
このカラダを捨てて助かる、という選択肢もあった。
よっすぃーがコーヒーを置いた。私はすかさず「ちょっと寿命見てもらいたい人がいるん
だけど」と言った。
「誰?」
「メグ・ライアン」
「え?」
「を意識してるか知らないけど、金髪でカラコンしてる居酒屋が似合いそうなおばさん」
そう言って私はよっすぃーの斜め後方に視線を送った。
「あそこで独り、お子様ランチ食べてる人」
91 :
5:2000/12/08(金) 21:09
よっすぃーがそっちを向いた瞬間、私はいつものように下唇をちょっとだけ噛み、
ちょうどハンバーグを口に運んでいたそのおばさんと入れかわった。
本日2度目のハンバーグ。私はよっすぃーの視線を感じながら味わった。
2秒後、よっすぃーはまた梨華のほうを向いた。私はそれより一瞬だけ早く梨華のカラダ
に戻った。
「どうだった?」
「38年。短命と言えるかも」
「そっか」
38年か。24時間じゃなくて38年……。つまり24時間後に死ぬのは梨華のカラダであって
私ではないということだ。
92 :
5:2000/12/08(金) 21:09
「で、そんなこと聞いてどうすんの?」
「べつに。ただ知りたかっただけ」
24時間以内に誰かと入れかわれば助かるとわかり、私は安心した。これで謝らなくていい。
「あのおばさん、殺してほしいの?」よっすぃーは真顔で言った。
「違う違う。そんなんじゃないって」
まったくとんでもない女だ。人を殺すことにためらいはないのだろうか?
……待てよ。そうだ、よっすぃーと入れかわればいい。そうすれば私が助かるだけでなく、
この女の快楽殺人を止めることができる。これは名案だ。私って頭いい〜。
そんな私をおばさんが不思議そうな目で見ていた。しかし見つめ返すと下を向いた。
何が起こったか、おばさんはわかってないだろう。2秒だけだったし、超能力も信じなさ
そうな感じだし。ハンバーグがなくなっていることには気付くだろうけど。
93 :
5:2000/12/08(金) 21:10
そうだ。よっすぃーと入れかわるとしたら、この梨華のカラダが死を迎える直前じゃ
ないといけないのだ。
もし今入れかわったなら、よっすぃーは私が移ったカラダ――それはよっすぃーの
カラダなのでよっすぃーは何もしない可能性もあるけど――に死を設定するだろう。
今度は24時間後なんて余裕を与えず、秒殺するかもしれない。
そして自分のカラダになった梨華のカラダの設定を解除するだろう。
つまり、よっすぃーに状況を把握する時間を与えてはいけない。とすればカラダを
入れかえるのは死の1秒または2秒前ということになる。
「何さっきからボーっとしてんの?」とよっすぃーが言った。
私は「ボーっとするの、趣味なんだ」と言ってアハハと笑った。
.
95 :
5:2000/12/10(日) 14:18
「今、どうなってる?」
「何が?」
「私が死ぬまでの時間。正確に教えて」
「だから〜、謝れば解除してやるって言ってんでしょ」
「だから〜、謝らないって」
よっすぃーは頬を膨らませて「23時間44分33秒、32、31」と言った。
「え、も1回言って」
「23時間44分27秒」
「27秒? とか言ってる間に26秒? 25秒? 24?」
「21」
「あのさ、もっとわかりやすいほうがいいんだよね。例えば12時ぴったりに死ぬとか」
「はぁ?」
よっすぃーは不審者を見るような目で私を見た。
96 :
5:2000/12/10(日) 14:22
「あ、だってほら、自分でもわかってたほうがいいじゃん。そしたら盛り上がれると思う。
あと10秒だ〜、とか。わかるでしょ? この乙女心」
よっすぃーは「わかる」と言った。「で、何時に死にたいのよ?」
「えっと、そうだな〜。じゃあとりあえず午前0時ってことで」
97 :
5:
「で、今何時よ?」
私は秒針まで正確な梨華の腕時計を見た。
「15時3分39秒、40秒、41秒……」
「ちょっと見せて」よっすぃーは私の腕をとった。そして私の顔と時計を交互に
見て「はい、完了。0時に死ぬようセットしたから」と言った。
「ありがとう。助かるよ」