再開。
センクス。
再開は明日から…つっても様子見かなあ…
4 :
21:2000/10/31(火) 00:45
ほぜ〜ん。
5 :
濡れ衣:2000/10/31(火) 01:59
ほぜーん
プッチモニ。
-1-
「じゃあ、行ってくるね。」
「気をつけてね、変な人の誘いに乗らないのよ、あと…」
「はいはい。大丈夫だって。」
母親の小言を遮って少女は家を出た。少女の名前は後藤真希。今年で中学3年生だ。彼女
は去年から、夏休みの間は家を空けて海に行く事にしていた。その理由は、そこの海で彼
女の大切な人の『市井紗耶香』という娘が亡くなったのだ。そのため後藤は、その海に少
しでも長くいたいがために夏休みを返上して、その海に向かうのだ。後藤は忘れようとは
思っているが忘れられずにいた。それほど大切な人だったのだ。
家を出て電車に揺られ、後藤はその海の最寄の駅で降りた。
「圭ちゃん!」
後藤は手を振って一気に駆け寄った。
「よっ! 元気だった?」
「うん。」
圭ちゃんこと保田圭は、市井の親友であった。彼女も、夏休みにはここに来る事にしてい
る。彼女は、この近くに別荘を持っていて、後藤はそこに居させてもらっているのだ。2
人は保田の家の車へと乗り込んだ。
「じゃあ、お墓参りから行こうか?」
「……うん。」
そうして2人は、墓地へと移動した。
-2-
「……。」
後藤と保田は市井の墓の前で手を合わせた。しばらくして目を開けてしゃがんでいた後藤
は立ち上がった。そして、
「……骨もないのにね……。」
無表情にそう呟いた。保田はそれにただ頷くしか出来なかった。
「仕方ないよ……。」
―翌早朝。後藤は起き上がって外へと出た。潮風がまだ重いまぶたを撫でた。後藤は大き
く伸びをして海に行く事にした。保田の別荘から海へ行くのには10分しかかからない。
海へ着くと後藤は履いていたサンダルを脱いで砂浜を歩いた。朝日がまだキツクないため
か砂は温かった。後藤はTシャツを脱いで、ホットパンツとキャミソールタイプの水着だ
けになった。ゴーグルをつけて、海へ向かって駆け出して一気に飛び込んだ。
―海の中。後藤はとりあえず潜れるだけ潜った。とりあえず10mほど潜り上を見ると、
朝日がボォっと光っているのが見えた。息が続く限り、潜ったままで薄暗い海の中を泳ぎ
つづけた。しばらく泳いでいると目の前に何かが見えた。
「?」
魚と思っていたが、近づくと違った。人……だった。さらに近づくと、女の人だとわかっ
た。しかも、何もつけていなかった。裸だった。その女の人はこちらに気づいていなかっ
た。しばらく見ているとその人と目が合った。後藤はいきなりの出来事に、海水を吸い込
んでしまった。なので慌てて浮上した。
「ブハアッ!!ウッ、ゲホッ……ゴホッ……ウぇ……」
砂浜に手をついて後藤は海水を吐き出した。ビリビリと喉が焼けるように熱くなった。そ
れに涙目になりながら、後藤は海のほうを見た。さらに辺りを見回したが、服などは落ち
ていなかった。
-3-
「人魚ォ?」
保田がフライパンを片手に後藤のほうを向いて呆れながら言った。後藤はキッチンのそば
に置いてある食卓テーブルに肘をつきながら言った。
「人魚はあくまでたとえだけどさぁ…でも本当に泳いでたんだよ、裸で。」
「ふぅ〜ん。で、どんな人だったの?」
保田は背を向けて料理をしながらも後藤に聞いた。
「どんな…だったっけ? 女の人っていうよりも女の子ぽかったけど……。」
「女の子、ね……。よっぽど度胸あるね、その娘。だって全裸でしょ?」
「うん。ゴーグルも何もつけてなかったよ。」
保田が今作った料理を後藤の前に並べながら言った。
「ま、人魚ってことにしとけば。後藤らしくね。」
「もぉ〜、子ども扱いすんなよぉ〜。ったく……」
―その日の昼。後藤はビーチでアイス売りのバイトをしていた。バイトというか保田の手
伝いだ。別荘でボーッとしているのもなんだから、ということで後藤から保田に頼み込ん
で手伝いをさせてもらっているのだ。しかし後藤は、岩場のそばに座り込んで海を眺めて
いた。朝見たあの少女のことが気になっていた。
「人魚……なのかなぁ……。」
そう呟いていると後ろから保田に軽くチョップされた。
「アンタから手伝うって言ってといて早速サボってんじゃないの!」
「だはははっ……ゴメン、ゴメン。」
後藤はチョップされた頭をかきながら笑った。
再開。とりあえず読み直しってとこです、はい。
つうか起こしてないよ、まだ。。。
ようは時間稼ぎさ。藁
-4-
「ほら、戻るよ。」
「はぁ〜い。」
後藤は立ち上がって保田を追いかけた。保田が後藤を見てすかさず言った。
「アイス忘れてるっちゅ〜うの!」
「ああ、アハハッ……。」
後藤はヘラヘラしながら岩場に戻ってアイスが入った箱を持ち上げた。その時見上げた崖
の所に人がいた。白いワンピース姿の少女だ。なんとなく今朝見たあの娘に似ているよう
な、そんな感じだった。後藤は確かめてみたくなった。保田が後藤に近づいた。
「後藤〜、行くよ。」
「圭ちゃん。これ……。」
後藤は保田にアイスを渡して一気に崖に向かって駆け出した。
「ちょお! 後藤! 」
「暗くなる前には戻るからぁ〜!」
後藤はそう叫んで行ってしまった。
「ったく、もぉ〜。」
「ハァ……ハァ……」
後藤は崖への道を全速力で走っていた。どうしても確認したかった。何でここまでこだわ
るのかもよくわからないが、とりあえず後藤は考えるのをやめて、崖へと向かった。
-5-
走ること10分。後藤はようやく先程少女が立っていた崖のところまで来た。だが、少女
の姿は、すでにその場になかった。グルリと1回転して周りを見回してみるが、やはり姿
はなかった。後藤はその場にへたり込んだ。
「あ〜あ……遅かったかぁ〜……もしかして幽霊……? なわけないか……。」
そうやってブツブツと独り言を言っていると、崖の周辺にある茂みのほうからガサリと音
が聞こえた。小動物かと思えばそれまでなのだが。後藤はある種の望みをかけて音のした
ほうへと一気に向かった。後藤が近づいていくと、音が後藤から逃げるように遠くなって
いった。
「!」
後藤は一気に駆け出して茂みの中に突っ込んだ。
「あっ……。」
白いワンピースがヒラリと木の間を抜けていくのが見えた。やっぱり。後藤は瞬時にそう
思って追いかけた。後藤は足の速さには自信があったが。向こうもなかなか速い。しかし
後藤もここまできたら追うのをやめるわけにいかない。ひたすら追いかけた。そうして追
いつづける事数分。ようやく向こうも疲れてきたのか、だんだん距離が縮まっていった。
そうしてついに眼前へと迫った。後藤はうんと手を伸ばし、とうとう相手の腕を掴んだ。
「キャッ!」
後藤に腕を掴まれてその少女は後ろのほうへと倒れこんだ。後藤はそれを受け止めるかの
ようにして背中から地面に倒れた。
「いでっ!」
-6-
後藤は痛さでしばらく声が出なかった。その後藤の上にいる少女は起き上がると振り向い
て後藤のほうを見た。いや、睨んだ。後藤はますます動けなくなった。正に蛇に睨まれた
蛙といったところだ。後藤は愛想笑いをするぐらいしか出来ずにいた。
「アッ、ハハハハ……。」
「何なの、あなた?」
おとなしそうな容姿とは裏腹に結構きつめに返された。後藤は無理やり身体を起こした。
少女はそれと同時に立ち上がった。後藤はそんな少女をじっと観察した。褐色の肌。肩よ
りちょっと長い黒髪は真中で分けられて下ろされていた。白いワンピースからは、すらり
と細くて長い足が、膝からのぞいていた。何より印象的なのが、その鋭い瞳だった。後藤
はひととおり少女を観察すると、地面に腰を下ろしながらその少女を見上げて言った。
「ごめんなさい…ただ気になったんです。」
「気になった?」
「あの…今朝早く、海で泳ぎましたか? その…は、裸で…。」
「泳いだけど。」
少女はあっけなく言った。少女があまりにもサラリと言ってのけたため後藤はちょっと驚
いた。何も言い出さなくなった後藤に少女が言った。
「で、それだけが聞きたかったの?」
「あ、その……いや……えっと……友達……。」
「?」
「友達になりませんか? せっかくだし……。(なぁ〜に言ってんだろ…うわ〜…)」
「……ふざけないで……。」
それだけ言って少女は後藤を置いて行ってしまった。
「はぁ〜あ……そら怒るよねぇ〜……でも、なりたかったな…友達。」
-7-
日がすっかり落ちた頃。後藤は保田の別荘へと戻ってきた。
「ただいまぁ〜……。」
「ただいまじゃないでしょ! まったくもぉ〜、どこで遊んでたのよ!」
後藤が戻ってくるなり保田は怒鳴った。
「ごめんなさい、明日はちゃんと手伝うから! だから許して、ねっ?」
後藤は子犬のような眼差しで保田を見つめた。そんな目で見られてしまうから保田もつい
「今回だけだよ! ったく……。」
そんな感じで結局許してあげてしまうのだ。保田は後藤を許すとキッチンに戻って夕食の
準備をし始めた。後藤もキッチンに向かい手を洗った。保田が料理をしながら横にいる後
藤に聞いた。
「ねえ。何で崖のほう行っちゃったの?」
「……あのね。今朝の女の子…ぽかったんだよ。それで確かめたくなってさ。追っかけた
んだ。」
「ふぅ〜ん……で?」
「つかまえたよ。」
「つかまえたって、あんたね…。ま、いいわ。それで? 」
「今朝見た女の子だった。裸で泳いでましたよね、って聞いたら。そうだ、って。」
保田が少し笑いながらさらに聞いた。
「…どういう会話なのよ、それ。で、そのあとは?」
「……なんかさ。私、訳わかんなくなっちゃって。とっさに、友達になりませんか、とか
言っちゃって……そしたら、ふざけないで!って……置いてかれちゃった。」
-8-
保田がそれを聞いて苦笑いをした。
「その娘が怒っちゃうのもわかる気するわ……。」
「だってぇ……あ〜あ、でも友達にはなりたかったよ、本当に。」
「はいはい。とりあえず……その娘とあんたがまた出会える事を願っといてあげるよ。さ
てと、ご飯食べよっか。」
「うん。」
後藤はベッドの中で寝れずにいた。どうしてもあの少女の事ばかりが頭に浮かんできてし
まう。
「どんな名前なんだろ…いくつで…どこに住んでるのかな? はぁ〜、ゴメンね、市井ちゃ
ん……。」
後藤はベッドの脇に置いてある市井の写真に目をやってそう呟いた。あの少女に会った事
によって、後藤は初めて市井と出会った時と、同じような気持ちになっていた。
「また会えるといいなぁ〜………。」
―翌日。後藤はビーチに出て、アイス売りをしていた。暑さのせいのためか、箱の中のア
イスはすぐに減っていった。しばらくの間ビーチを歩き回って、誰もいないような所まで
来てしまった。後藤は、再び人の多いところに引き返そうとしたが止めた。目の前に…あ
の少女がいたからだ。後藤は近くに置いてある船の間にすかさず隠れた。そしてそっと顔
を出した。少女はまだ後藤に気づいてないようだった。
-9-
「(どうしよ…どうしたら上手く話せるかな…。)」
後藤は考えた。でもどうしてもいい案が浮かばない。その時、箱の中の2本のアイスが目
にとまった。かなり幼稚ではあるが…後藤はそう思いながらもすっくと立ち上がった。
「あのぉ〜……。」
「!」
不意の呼びかけに少女は目を見開いて後藤のほうへと振り返った。後藤が一歩近づくたび
に少女も一歩後退した。1分ほどそれを繰り返した。
「(ラチあかねぇ……) アイス食べませんか?」
後藤は満面の笑みを浮かべて少女に言った。その笑顔に魅せられたのかはわからないが、
少女はようやく肩の力を抜いて答えた。それでもきつめの口調は相変わらずだった。
「いいけど……。」
「はい、どぉ〜ぞ。」
後藤はそのきつめの態度に怖じる事もなくアイスを手渡した。思えば市井も……最初の頃
はやたらきつかった訳で。それを思えば、この少女のきつさはまだまだ後藤にとっては許
容範囲だ。
「ありがとう……。」
少女は後藤からアイスを受け取った。後藤がその場に座ると、少女も座った。しばらく波
の音を聞きながら2人でアイスを食べていた。後藤はアイスを食べている間、少女を観察
した。髪は…真中分けではなくて8:2に分けられていて、前髪は垂らされていた。その
せいなのかこの前よりもうんと大人びた印象を受けた。服装は、上は白い薄手のパーカー
だった。その下には黒のキャミソールが透けて見えた。下はホットパンツだ。褐色の肌の
細い足がすっと伸びていた。後藤はしばらく少女に見入ってしまった。
-10-
そんな後藤に気付いて、少女が後藤に言った。
「なに?」
「あ……そ、そういえば初めましてじゃないのに、名前…まだ言ってなかったなぁ、って。
あ、私後藤真希って言います……年は……15です。」
そのとき、少女が一瞬顔を引きつらせた。後藤はそれを見逃さなかったが、あえて追求は
しなかった。もしかしたら彼女は、いきなり自己紹介なんかし始めた自分に嫌悪を感じて
しまったがためにそういう表情になってしまったのかもしれない。そう思いながら、少女
を見つめていると、
「私は……石川梨華。」
すっと後藤から目線を外してそう言った。
「石川さん……かぁ。ここに住んでるんですか?」
「うん、まぁ……。」
「私は、夏休みの間だけ、こっち来る事にしてるんですよ。」
「そう……。」
「すいません、急にぺらぺらしゃべりだしちゃって……図々しいですよね。」
「そうは……思わないよ。」
そう言ったかと思うと、石川は立ち上がった。そして座っている後藤を見て言った。
「私……今日行くところあるから……。アイスありがとう。」
「あ、梨華ちゃん……。」
後藤を置いて歩き出した石川を後藤はとっさに呼んだ。石川は背を向けたまま、
「! ……その呼び方……やめて。」
「あ、ごめんなさい……。」
そうして石川は歩いてどこかに行ってしまったのだった。
今日の分の読み直し…
ゆっくり〜ゆっくり〜♪
-11-
石川がいなくなったあと、後藤はたまらず砂浜の砂を蹴り上げた。
「なんだよぉ〜…怒る事ないじゃん…。」
後藤はブツブツと愚痴をこぼした。それでも石川の事が気になっている自分がいたりする。
「(なんか…嫌いになれないんだよね…どうしてだろ…。)」
後藤は立ち上がり砂を払うと、海の家へと戻っていった。
「ただいまぁ〜。」
「あ、後藤。おかえり。全部売れた?」
「うん。ハイ、売上げ。」
後藤はそう言ってハーフパンツのポケットから小銭やら札を出して保田に渡した。保田は奥
に一旦奥に入って売上げを店長に渡すと、缶ジュースを持って戻ってきて、後藤に渡した。
「はい、お疲れ様。」
「ありがと…。」
後藤は缶ジュースをもらうと、畳の上に座った。保田もその隣に座った。
「どしたの? 元気ないじゃん。」
「あのさ…さっきまたアノ娘に会ったんだ。」
「へぇ、また会えたんだ。…なに? あんたまた怒らせちゃったとか?」
保田がうつむく後藤を下から見て聞いた。
「怒らせたっていうか……なんっなんだろ……あ〜、もう……。」
後藤が頭を掻いて困り顔でそう言った。保田もそんな後藤の顔を見て苦笑した。
-12-
「……そういえば、名前とか聞いたの?」
「うん…一応…。えっと、石川梨華…。」
「石川……あ〜、聞いたことあるわ。親がいくつも会社経営しててさ。娘たちもバリバリの
キャリアウーマンなんだって。その娘は…末っ子なのかな? 聞いたことない名前だし。」
「そんなにスゴイところの……ふはぁ〜、身のほど知らずだったかも……。」
「私の立場ないじゃん。一応これでも『お嬢様』なんだからね、もう。」
「圭ちゃんは別だよ。……もう会わないほうがいいのかな……。」
「アンタさぁ…そんなに気になるんだったら、もっと話せばいいじゃん。」
「気に……なってるのかな、やっぱ……。」
「いい機会じゃないの? いい思い出もっと作りなよ、ねっ?」
保田が後藤の肩を優しく抱いて言った。後藤はそんな保田に優しく微笑んで言った。
「うん……ありがとう、圭ちゃん……。」
―翌日の早朝。後藤は再び海に来ていた。泳ごうとして来たのだが、いきなり天気が急転
して雨が降りだした。後藤は仕方なく元来た道を歩き始めた。
「もぉ〜……せっかく起きたのにぃ〜……。」
後藤は別荘に向けて全速力で駆け出した。その途中で、目の前に人影を見つけた。雨で濡
れた前髪をよけて見てみると、
「あっ……石川梨華……。」
後藤の目の前から数十メートルほど先に石川がいた。後藤に背を向ける形で歩いてはいた
が、後藤にはすぐに石川だとわかった。
-13-
後藤は、ほんの一瞬だけ声をかけるべきか否かで迷ったが、気がついたら、
「あの……。」
石川の背後に迫って声をかけていた。石川は驚いて振り向いた。
「あっ……。」
「この前はどうも。……1人ですか?」
「うん……。」
石川は黒のキャミソールにジーンズタイプのホットパンツという軽装だった。なので、全
身濡れていた。後藤は自分の頭にかけていたパーカーを取って、石川に差し出した。
「あの、これ……。」
「いいよ、気にしなくても……。」
「いいですってば。」
そう言って半ば強引に後藤は石川の頭にパーカーをかぶせた。
「ありが…」
石川がそう言いかけた途端に、後藤は走り出していた。
「ちょっと待って…。」
石川は慌てて止めようとしたが、後藤はすでに追いかけられないぐらい遠くまで走ってい
た。雨の中、石川はしばらく後藤のその後ろ姿を眺めていた。
一方、後藤は…
「何やってんだ、私…。」
びしょぬれの髪をかきあげながら息を弾ませた。どうしてかあの場から逃げたくなってし
まったのだ。
今日の分ですよ。
読み返し中……
24 :
濡れ衣:2000/11/03(金) 01:24
さすがに4つも同時進行で読んでるとややこしくなってくる。
保全下げです
-14-
後藤は後ろを振り向いた。石川が追いかけてくるような気配はなかった。それに少しだけ
安心して後藤は、別荘へと戻った。
「ただいまぁ〜。」
そう言って中へ入ると、エプロン姿の保田が手を拭きながら奥から出てきた。
「おかえり。あ〜らら、やっぱずぶ濡れか。」
「だって、急になんだもん…。」
「はいはい、ちょっと待っててね。今、タオル持ってくるから。」
「うん。」
保田が再び奥に引っ込むと後藤は座ってビーチサンダルを脱いだ。砂がべっとりついてい
るのを床に落とした。足についてる砂も落とした。そうしていると保田が戻ってきて、
「はい、タオル。」
そう言って後藤の頭に白いタオルをかぶせた。
「ありがと。」
保田にお礼を言って、後藤はわしわしと頭を拭いた。保田が不思議そうに聞いた。
「あれ? そういえばアンタ、出るときパーカー着ていかなかったっけ?」
後藤の頭を拭く手が一瞬だけ止まった。再びその手を動かして、
「忘れちゃった…んだ。」
「……? なんかあったでしょ。」
保田はすぐに後藤の嘘を見破ってしまった。
「…あはは。圭ちゃんには、かなわないなぁ〜……。」
-15-
「逃げたって? ……なんで?」
後藤の話を聞いて保田は驚き呆れた。
「なんっていうんだろ…よくわかんないけど…いたくなかった。」
「だからってねぇ〜……逃げてどうすんのさ。」
「う〜…もう…自分でもわかんないよ〜。」
そう言って後藤は下を向いてしまった。保田は大きくため息をつきながらも、後藤の頭を
撫でて、
「…なんかさ、今のアンタ見てると…紗耶香がいた頃のアンタ思い出すよ…。」
それを聞いて、後藤は垂れていた頭を起こして保田のほうを見た。
「市井ちゃんがいた頃の…私?」
「うん。なんかね…変なの。」
保田がそう言ってふっと笑った。後藤はそれを聞いて口をとんがらせた。
「変って…なんだよぉ〜…。」
「悪い意味じゃないから。さ、ご飯食べようか。」
保田はそう言って立ち上がった。
「えっ? えっ? わかんないよぉ〜。ちゃんと説明してよぉ〜。」
―なんかさ、今のアンタ見てると…紗耶香がいた頃のアンタ思い出すよ…。
朝食を食べて部屋に戻ったあと、後藤はさっき保田に言われた言葉を何度も反芻させた。
「どういうことなんだろ…う゛〜…わっかんないよぉ〜…ああぁ〜、もうっ!」
後藤はベッドの倒れこんだ。
今日の分。。。
休みなのに疲れてる…
-16-
「……ほえ?」
後藤は目を覚ました。あのまま寝てしまっていたらしい。
「ごとぉ〜、昼ゴハンだよ〜。」
下から保田が後藤を呼んだ。
「アハハ……ゴハンばっか。」
後藤は1人でそう言って笑って、部屋を出た。
「……雨、やまないね。」
皿の上でフォークを遊ばせながら後藤が言った。保田も手を止めて窓のほうを見た。
「うん。せっかくだからさっさと宿題終わらせちゃえば?」
「うっ…ん。そうだね……。」
「……どしたの?」
「えっ? なにが?」
「元気ないなぁ〜、って。」
「……そう、かなぁ……。」
「石川って娘のこと…?」
保田の問いかけに後藤はハッとしたように顔を上げた。図星とかそういうのではなく
て、なんとなく反応してしまった。
「後藤?」
「あっ……ち、違うよ。宿題いっぱいあるからさ。嫌だなぁ、って……。」
そうは言ってみたものの、後藤はその答えに自分で疑問を感じた。
「(なぁ〜んか……自分でもわかんないや……。)」
今日の分。
31 :
濡れ衣:2000/11/05(日) 00:41
ほぜむ
細かいことだけど-15- の最後のとこ”上”が抜けてるね。
気悪くしたらスマソ。
-17-
―昼食後。雨は降り続いていた。後藤は仕方なく部屋に入り、宿題をする事にした。
宿題を開始して30分。
「…このχを…おぉ…わっかんないよ〜、あ゛〜っ、もう。」
基本問題のページはなんとか解いていったものの、応用になった途端にわからなくな
り、後藤はテキストを閉じて、またベッドに飛び込んだ。後藤は天井に顔を向けた。
「……。」
そのまま目を閉じる。雨の音だけが耳に入ってくる。『あの日』も…雨が降っていた。
目を開けていられないくらいの強い雨。荒れた海。
―およそ一年前。まだ市井がいた頃、後藤は市井とともに朝早く起きては海で泳いで
いた。後藤にとっては泳ぐことはもちろん好きだったが、何よりも大好きな市井と一
緒にいられるのが嬉しかった。
「しっかし…後藤もあきないねぇ〜。」
市井はそう言いながらTシャツとカーゴパンツを脱ぎ捨てて、水着になった。
「うん、泳ぐの大好きだもん。」
後藤もTシャツを脱ぎ、水着になった。そうして2人は軽く身体を動かしてさっそく
海に入った。腰ぐらいまで海に浸かった。市井が、
「う〜、ちょっと冷たいね。」
「うん、ちょっと。」
「向こうも曇ってら…。」
市井は空を見上げて言った。後藤も一緒に見た。確かに曇っていた。
-18-
「うん、曇ってる…。」
「…やめとく?」
市井が後藤に目を向けて聞いた。
「ちょっとぐらい大丈夫だよ。泳ごうよ、市井ちゃん。」
「そうだね、せっかく来たし。ちょっとぐらいなら大丈夫だよね。」
そう言って市井は少し構えた。後藤が、
「あのさ…市井ちゃん…。」
「ん? なに?」
「勝負…しない?」
「勝負? 別にいいけど。」
「あのね、じゃああのオレンジの浮き玉のところまでどっちが先につくか。」
そう言って後藤ははるか向こうの浮き玉を指差した。今、2人がいるところからは
米粒ぐらいにしか見えない。市井はちょっと笑って、
「ハハ…遠いいなぁ…。んで? 勝負つうからには、なんかあるの?」
「うんとね、負けたら勝った人の言う事なんでも聞くの。」
「なんでも? うはぁ〜……負けらんないねぇ〜。」
「私も負けないよ。」
「おっ…そうこなくっちゃね。」
2人は顔を見合わせてお互い見つめ合ったあと、再び正面を向いて構えた。
「よぉ〜い、ドンッ!」
今日の分。
>>31 気は悪くしないよん。誤字・脱字はこっちのミスだから。
気がついたら書いといてください。
35 :
名無し娘。:2000/11/06(月) 01:46
hozen
sage
38 :
濡れ衣:2000/11/06(月) 01:59
何か起こりそうsage
-19-
市井の掛け声で、2人は海に飛び込んで泳ぎ始めた。2人は少し身体を海に沈めて
前へ向かって進んだ。いつもより進みにくかった。海流が変わっていたようにも思
えた。しかし2人とも最初のうちは勝負に夢中であまり気にはかけなかった。出だ
しは市井が一歩リードしていたが、しばらくして後藤が市井を抜いた。
「(おおっ……早いな……。)」
市井はそう思いながら、一旦呼吸をするために上に上がった。
「ふっ……! 空が……。」
空はすっかり暗くなっていた。そして……
「雨だ……。」
大粒の雨が一気に降り注いできた。市井は泳ぐのをやめて後藤を探した。とりあえ
ず目指していた浮き玉に向かって泳いだ。そうしていると、浮き玉のそばから後藤
が顔を出しているのが見えた。
「…ご、とぉ!」
泳ぎながら市井は声を張り上げた。今浮き上がった後藤は、状況に混乱して、
「いちいちゃん!」
怯えてそう叫んだ。が、雨のせいで後藤の声は市井には全く聞こえなかった。それ
でも怖がっているのはわかった。市井は急いで後藤のほうへと向かった。が、波が
高くてなりなかなかたどり着けない。それでも必死に泳いでなんとか後藤のそばに
たどり着いた。
-20-
「後藤。」
「市井ちゃん…どうしよ。」
「大丈夫だよ、落ち着きなよ。」
市井は混乱しかけている後藤を励ますように強く言葉をかけた。雨はますます強く
なり、水位も一気に増したように思われた。2人は、岸からどんどん遠ざかってい
た。
「いい、後藤。しっかり捕まってなよ。」
市井は後藤の腕を掴んで、しっかり浮き玉に巻きつけた。後藤は言われた通りに、
しっかり捕まった。2人は、何度か大きな波にのまれかかったが、そのたびに何と
か必死に持ちこたえて、助けを待った。そうして30分が経過した。岸のほうに目
をやると、人が集まり始めていた。よく見ると、保田もいた。市井は、後藤の肩を
叩いて、
「後藤、もうすぐで戻れるよ。もう少しの辛抱だからね。」
「……うん。」
2人はびしょ濡れになりながらも、笑顔で向き合った。
と、その時……
「い、市井ちゃん!」
後藤が後ろを見て叫んだ。その後ろに、2人を覆うかのように波が迫った。体が動
く前に2人は波にのまれた。
ほい、今日の分。
明日以降、新規更新。
42 :
濡れ衣:2000/11/07(火) 00:36
ほぜむ
待ってました!
続きが楽しみ〜
-21-
波に飲み込まれながらも、後藤はなんとか溺れまいと水中の中で浮き玉をつないで
いる綱に捕まった。もう片方の腕には、市井の手が掴まれていた。しかし次第に、
飲み込んだ水が後藤の意識を奪っていった。その時に、後藤が感じた最後の感覚は
鼓膜がはじけ飛びそうなほどの耳の痛みと、市井の手が自分の手からすり抜けてい
くという感覚――
「……市井ちゃん。」
うたた寝。その間に見た思い出したくない夢。耳の辺りに涙が伝った。後藤がいる
部屋にある天窓から見える空は晴れていた。ようやく雨がやんだ。事故に遭ったあ
の日。市井が後藤の前から消えた……死んだあの日。後藤は市井とともに岸には帰
ることはなかった。市井の遺体は見つかっていない。再三の捜索が行われたものの
一ヶ月で打ち切られた。そのあとに遺体の無い葬式が行われた。後藤はその当時は
涙を流す事は無かった。信じられない。そんな思いでいっぱいだった。泣いたのは
それから何週間も経ってから、後藤の右手の甲についた5センチほどの細い傷。市
井が、後藤の手を掴もうとしてついた傷だ。その傷を見ると、まだ死にたくない、
という市井の声が聞こえてきそうで。後藤は耐え切れず、大きく嗚咽した。
「市井ちゃん、逢いたいよぉ……。」
かなわない願いを呟いて、後藤は再びベッドに伏して泣いた。
久々。
更新です。
札幌は雪降りそうなくらい冷え込んでるたつ〜の!藁。
死体が見つからなかったってのが
いろいろ想像をかきたてたれるな〜。
>>45 こっちは20度以上で暑かったっす。
実際、そう言う事故多いからなぁ…遺体が見つからない水難事故
48 :
濡れ衣:2000/11/08(水) 01:53
市井は生きていると期待
-22-
どのくらい泣いていただろう。ようやく落ち着いてきて、後藤は再び身体を返して
天窓のほうを向いた。空は時間も時間なだけに夕日で赤く染まっていた。後藤は、
鼻をすすりながら、身体を起こして部屋から出て、一階へと降りた。リビングで雑
誌を開いている保田に涙で濡れた顔を見られまいと、音を立てずに素早くその後ろ
を通り抜けて洗面台で顔を洗った。洗面所からリビングに戻ると、保田がソファに
かけながら身体をねじって後藤のほうを向き、
「宿題、終わった?」
「うん、もうちょいかな……。」
後藤は保田に、まだ少し腫れている目に気づかれないように、顔を少し下げて答え
た。そして、
「ちょっと…海…行ってくる。ゴハンまでには帰るから。」
そう言ってリビングから出て、玄関に行きビーチサンダルを履くとすぐに外へと出
て行った。保田はそれを見送って、再び正面を向き、雑誌に目をやりながら、
「……また紗耶香の事思い出してたのかな……。」
別荘を出て、後藤は砂浜をひょこひょこと歩きながら、真っ赤な夕日が反射してい
る海に目をやった。まぶしすぎて、たまらず目を細める。その時、さくりと砂を踏
む音が後藤の真後ろで聞こえた。後藤はすぐに振り向いた。夕日のせいで目に光点
が浮かび、誰かはわからなかった。次第に目が治り始めて、
「あ……。」
その人物が石川である事がわかった。
更新です。
夕日っていいよね。ぼ〜。。。
参ったな。市井を思い出してめそめそしてる
後藤に萌える
-23-
石川は何も言わないで、手にもっていた後藤のパーカーを後藤に手渡した。
「……ありがとう。風邪、ひかなかった?」
「あ、はい……わざわざどうも……。」
会ったばかりだから仕方ないにしても、あまりにもよそよそ過ぎる会話。さっき石
川から突然逃げ出すような感じで去った事もあってか、それに負い目を感じた後藤
は、
「時間……空いてます?」
不自然に写らないように何とか笑顔を作って…正確には泣いたせいで顔が固まって
たので、だ。石川は、一瞬どう答えていいかわからない顔になったが、特に表情を
変える事もなく、
「……空いてるけど。」
「じゃあ、一緒に見てましょうか。夕日。」
我ながら不器用すぎだと、後藤は思った。でもこのまま何も話さないで石川を帰し
てしまうよりは、よっぽどマシだ。後藤は石川の返事を待った。少し経った後、石
川はそらしていた視線を再び後藤に合わせて、そして微笑んだ。初めて見る石川の
その表情に後藤は魅せられていた。呆けてる後藤に石川が、
「いいよ、見よう。」
「……あ、ありがとう。」
2人はそう交し合ったあと、夕日のほうを向いて、しばらくの間、その場を動かな
かった。
更新です。
二人で夕日を見る
青春だな
55 :
濡れ衣:2000/11/10(金) 00:34
不器用な後藤、いいね。
-24-
時間が経つにつれて、夕日が沈んでゆき、辺りも闇に包まれ始めてきた。そして、
夕日が海の彼方に消えた。暗い砂浜に打ち寄せる波の音だけが響いた。後藤が物惜
しそうに、
「……沈んじゃいましたね。」
「うん……。」
石川もどことなく寂しい感じに言った。
「……帰りましょうか。」
「うん……。」
そうして2人は砂浜をあとにして、海沿いの道路を歩き始めた。歩くたびに、2人
の、昼間の雨で濡れた砂浜の砂のついたビーチサンダルが、じゃりじゃりと音を立
てた。しばらくの間は、その音と、時折2人を通り越していく車の走る音しか聞こ
えなかった。2人は何も話すことなく、歩きつづけた。そして2人は、保田のいる
別荘へと続く小道の前に着いた。この小道を上り歩けば別荘だ。後藤は立ち止まっ
て、
「じゃあ、私はここで……。」
「うん……じゃあね。」
そっけない別れの言葉。背を向けて、数歩歩き出した石川に、後藤は、
「……あ、あのぉ!」
-25-
石川はすぐに振り返って、
「なぁに?」
鋭くて、それでいて真っ直ぐな石川の視線。少し離れていても、なぜかその視線に
緊張してしまう。後藤は、一息吸って、
「夕日、一緒に見てくれて…ありがとう。嬉しかった…よ。」
一瞬迷ったが、後藤は敬語を使うのをやめた。後藤の言葉を受けて、石川は、
「そう。 ……今度、もう一回見ようか?」
「!」
思ってもいなかった石川の言葉に、後藤はハッとした表情になって固まった。少し
して唇が震えた。もちろん怖いのではない。嬉しくて、だ。後藤は震える唇を、軽
くかんで、
「うん!」
満面の笑みで、そう答えた。石川はそれに頷いて、
「それじゃ、またね。」
小さく手を振って、歩き出し、闇の中へと消えていった。後藤も石川が見えなくな
るまで手を振った。石川の姿が視界から消えて、後藤は手を下ろして、満足げの表
情で別荘へと帰っていった。
「圭ちゃん、ただいまぁ〜!」
後藤がそう言って、砂で汚れた足を拭いていると、奥からエプロン姿の保田が来て、
「おう、お帰り。ゴハンちょうど出来たところだから。」
「うん。」
後藤は鼻歌混じりに足を拭いた。
更新です。
はぁ〜、寒いわ。足がひりひりする。
>>58 風邪ひくなよ。
後藤、元気になってえがった。
石川と後藤か、良いな。続き期待
テレビでも見たい・・>いしごま
61 :
名無し娘。:2000/11/11(土) 17:54
<center>
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
79 :
ぎっち:2000/11/11(土) 17:57
俺も手伝うぜ
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
99 :
名無し娘。:2000/11/11(土) 17:58
氏ね
うぜえよ偽者
101 :
名無し娘。:2000/11/11(土) 17:59
100
あぼーん
なにやってるんですか
あぼーん
あぼーん
────────Ψ判決Ψ────────
うぜえよ偽者
__ /--二- - 三三三三二二==λ__
●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●〆 ̄ ̄ ̄  ̄ ̄≒●●●●●●●
●●●●●●≠ _ ミミヽ》》●●●●●
●●●●●●● ━━┓ ┏━━━ヘ丶 | |》》》●●●●●●
●●●●●●●| | ▲◆▲┃ ミ▼▼▲▲ゞ | |‖ )●●●●●●
●●●●●●●┫|  ̄ ノ___ミミ | | |●●●●●●●
●●●●●●●●|┃ |▲▼▲》》 | | |●●●●●●●
●●●●●●●●|| | ∈= | | |●●●●●●●
●●●●●●●●|| | ┏━━━━━┯_ ヽヽ | ●●●●●●
●●●●●●●┃| ノ - - - |\\ |●●●●●
●●●●●●●| | | \η●●●●
●●●●●● ∪ | ┃●●●
●●●●●《|ヽ ミミミミ彡彡 〆 ┃●●
●●●●| 人ヽミミミヾヾ丶彡彡彡彡彡ノノ ┃
107 :
名無し娘。:2000/11/11(土) 18:01
>>103 アンチlogがいろんな手管をつかって荒らしてるの
ここlogスレだったのか
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
119 :
名無し娘。:2000/11/11(土) 18:04
logは荒らし歓迎らしいぞ
あぼーん
121 :
名無し娘。:2000/11/11(土) 18:05
kagoは荒らし嫌いらしい
122 :
名無し娘。:2000/11/11(土) 18:05
そんなガラクタを 大切そうに抱えていた
周りは不思議なカオで 少し離れた場所から見てた
それでも笑って言ってくれた "宝物だ" と
大きな何かを手に入れながら 失ったものもあったかな
今となってはもうわからないよね
取り戻したところで きっと微妙に違っているハズで
君がいるなら どんな時も 笑ってるよ
君がいるなら どんな時も 笑ってるよ 泣いているよ 生きているよ
君がいなきゃ何もなかった
自分自身だったか 周りだったか それともただの
時計だったかな 壊れそうになってたものは
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
131 :
名無し娘。:2000/11/11(土) 18:06
おもしろくないからって荒らすな
あぼーん
あぼーん
あぼーん
135 :
名無し娘。:2000/11/11(土) 18:16
ヤンタン楽しみだね
136 :
名無し娘。:2000/11/11(土) 18:19
安倍の歌詞が楽しみ♪
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
143 :
名無し娘。:2000/11/11(土) 23:15
更新しても無駄
ポッキーの日限定CM、石川と後藤のツーショットがあったらしい
まだ、見てない。はー、見てー・・ってもうポッキーの日終わってるし
-26-
後藤と保田は夕食を食べながら、
「あのさ、なんかあったの?」
「ん〜? なんで?」
後藤が口の中に入っていたご飯を大きく飲み込んで、聞き返した。保田は、皿の上
でスプーンを遊ばせながら、
「いや、だってさ。出てく時は……なんか沈んでる感じだったし、さ。」
「……ああ、まあ……ね。やっぱ気づかれてたか、はは……。」
「何となく……だけどね。なんか……良くない事でも思い出したのかなぁ、って。」
保田は『紗耶香』という言葉を出さないように注意を払った。しかし後藤は、
「市井ちゃんの……夢見ちゃってさ。」
はっきりと名前を出した。保田は垂れていた頭を驚きの表情とともに上げた。そん
な保田を見て後藤は、
「……私さ、もちろん今でも悲しいよ……市井ちゃんの事。でも、それは寂しいっ
て事なんだよね。いないっていう事が。」
「えっ? じゃあ……」
「うん。なんかさ……今でもどっかで生きてるんじゃないかなぁって……すごく現
実逃避なんだろうけど。ごめんね……圭ちゃんもツライのにね……。」
「私は……後藤とは逆っていうか。もうあきらめてるっていうか……。」
「市井ちゃんは死んだ、ってもう理解してるんだよね。」
保田が詰まった言葉を後藤は自分に言い聞かせるかのようにハッキリと言った。
更新です。
>>144 画像版にあるかも。探してみるか…
148 :
名無し娘。:2000/11/12(日) 06:07
149 :
名無し娘。:2000/11/12(日) 06:12
-27-
後藤の言葉に保田は、
「……うん。」
少し時間を置いてから答えた。後藤は、皿に残った一口分のご飯を口に入れると、
立ち上がって、
「ごちそうさま……。」
「あ、後藤……」
「大丈夫だよ。私も、どっかでは……あきらめてるから。でもさ……まだ、やっぱ
り切り替えられないんだよね、圭ちゃんみたいには。」
後藤はそう言うと、キッチンのほうへ食器を持っていって、洗い始めた。少しして
保田も食べ終えると、キッチンに食器を運んだ。保田の置いた食器に手を伸ばして
後藤は黙々とそれらを洗った。後藤は、数分も経たないうちにそれらを洗い終える
と、蛇口を閉めて、タオルで手を拭いた。後藤の後ろにいた保田は、
「ごめんね……後藤の気持ちも考えないで……私、」
「いいよ。」
後藤は保田のほうへと振り向いた。そして、
「圭ちゃんは何も悪くないよ。悪いのは……全部、私だからさ。」
そう言って笑った。悲しい笑顔。保田は後藤を抱き寄せた。
「後藤、あんたの……せいじゃないよ。そんな風に思わないで……。役には立たな
いだろうけど、つらかったら助けになるから……だから、ねっ?」
暖かい保田の体温を肌に感じながら、後藤はゆっくりと身体を離した。そして再び
保田に笑顔を向けた。今度は愁いを含んではいない笑顔だった。
「ありがとう、圭ちゃん。」
更新です。
ふむ
-28-
―夜。なかなか寝つけない後藤は、ベッドの中で部屋の天窓のほうを眺めていた。
規則的にまばたきをしながら、そこから見える青白い月を見ていた。今日は、色々
ありすぎた。なのに寝つけない。それに腹を立てるわけでもなく、後藤は月を眺め
つづけた。
市井ちゃん……あの日、市井ちゃんと勝負したかったのはね……。気持ち、伝えた
かったから。普通に言うのも、なんかなぁって……思ってさ。それに自分の中でも
もう一押し欲しいなぁって……だから勝負して、勝ったら……勝ったら伝えたかっ
た。市井ちゃんへの気持ち、全部。でも、市井ちゃん、いなくなっちゃった。私の
気持ちは、どっかに置きっぱなし……。市井ちゃんが……もういないのはわかって
る。死んじゃったんだって。
死んだの?
それなら骨は?
見つかってないよ。
自分で……自分の目で、確かめたいよ。
でないと、いつまでたっても、前、進めないんだもん。
希望なんて、ほとんどないってわかってる。
小さな希望でも、すがりたい……
「……。」
鳥の声。後藤はゆっくり目を開けた。朝が来た。
更新です。
明日の週刊女性恥ずかしいけど買うぞsage
-29-
「おはよう。」
起きた後藤は、部屋から出て、キッチンで朝食を作っている保田の背後から声をか
けた。
「おはよぉ〜、ちょっとそこのお皿取って。」
「うん……。」
いつもと何ら変わらない朝の風景。
朝食を食べ終えると、後藤はさっそく外に出ようとした。保田が慌てて、
「ちょっと、ちょとぉ〜。これからお手伝い行くんでしょうが、どこ行く気?」
「……。」
保田がそう言うのも無理はない。アイス売りの手伝いに行くには、あまりにも荷物
が大きすぎたからだ。後藤の手には潜水用の道具を詰めたバッグが握られていた。
保田は声を落ち着けて、
「なんで潜るの?」
「探すの……」
「なにを? 指輪でも落としたの?」
後藤は首を横に振って、
「市井ちゃんを……探すの。」
「えっ? それって……」
「骨でもいいから……この目で確かめたい、から……。」
後藤はそれだけ言うと、保田が言葉を出す前に外へと駆け出していた。
続き気になる
今日の更新はお休みです。
ほぜむ・・・
休みか・・・
-30-
後藤は海に来ると、さっそく潜水具を着け始めた。準備運動をして、借りてきた酸
素ボンベを背負うと海に入った。暗い海を手持ちのライトで照らし、後藤は海の中
を散策し始めた。骨らしきものはないかと、ひたすら探した。しかし、そんなに簡
単に見つかるわけもなく、ボンベの中の酸素がなくなってきたので、後藤は浮上し
た。
「ぷはぁっ! ……ハァ、ハァ……」
背負っていたボンベを外して、後藤は岩場に座り込んで、息を直した。しばらく海
を眺めていた後藤は、うつむいて泣き始めた。見つかるわけもないのに、それを心
のどこかでわかっていても、いざ現実を見せつけられると、やはり悲しくて仕方な
かった。
「い……ち、ちゃ……うっ……」
「どうしたの?」
「!」
不意の呼びかけに後藤は驚いて、泣いた顔も隠さないで、振り向いた。そこにはワ
ンピースをまとった石川がいた。
「あっ……」
後藤は慌てて前を向きなおして、涙で濡れた顔を必死で拭った。そんな後藤の後ろ
から石川がハンカチを差し出した。
「はい……。」
-31-
「ありがとう……。」
後藤はそれを受け取って涙を拭いた。石川は後藤の隣に座って、
「なにか……あったの?」
「それより、どうして……ここに?」
「私、毎日散歩してるから……。こっちのほうに足跡がついてるなんて珍しいなっ
て思って。ただの通りかかりだよ。」
「そう、ですか……。あ…な、泣いてたわけじゃないよ……これは、目に海水が……」
「嘘だよ。」
苦しい嘘をつこうとしている後藤に石川が言った。
「ごめんなさい……。」
後藤は素直に謝った。石川は、
「別に……話したくないなら聞かないから。誰だってそういう話は持ってるし……。」
そう言って、後藤から視線を外して、海のほうに向けた。後藤も海のほうを向くと、
「大切な人が……死んじゃったんだ、この海で……」
「そう、なんだ……。」
「でもね、骨は見つかってないんだ。だから……潜って探そうかな、って……馬鹿だ
よね、見つかるわけも……ないのに。そう自分で悟っちゃったら……悲しくなってき
てさ……。」
「そんなに、好きだったんだ……。」
後藤は首を縦に振った。
更新です。
切ねぇなぁ…。
最近、名作版でもいしごま小説増えてる。
続き期待
-32-
「すごく好きだったよ……大好きだった。でも……私のせいで死んだようなもんだか
ら。こうやって泣いてる自分が……嫌でしょうがないよ……。」
「えっ?」
後藤は膝を抱えて、顔を伏せて、
「私が……無理して泳ぎに誘ったんだ。泳ぐ直前に曇ってきてさ。その人は心配して
やめようかって言ったのに、私が、泳ごうって無理強いして……それで……」
それ以上は聞かなくても、石川はある程度どのような結果になったかはわかった。後
藤は肩を震わせて泣いていた。石川は、再び海へと視線を向けた。しばらくの間、そ
こには波が岩に当たる音と後藤がすすり泣く声が聞こえるだけだった。
市井ちゃん……待ってよぉ……いち……ちゃ……
「……ん……。あっ……」
「起きた?」
石川の柔らかい笑顔。後藤の頭は石川の胸に預けられていた。後藤は慌ててそこから
顔を外した。
「私、寝てた……?」
「うん。」
「あ……ごめん。散歩の途中だったのに……枕代わりにまでなってもらって……。」
「いいよ、気にしなくても。」
気負ってる後藤を、石川が優しく笑いながら諭した。
更新です。
>>168 いしごま確立したのはロケン郎だからなァ…すげえよな
本日お休み…
-33-
後藤は石川から身体を離した。空を見上げると、太陽が真上にあった。
ぐぅ〜……
後藤の腹が鳴った。後藤は慌てて腹を押さえた。恥ずかしくなり、再びうつむいた後
藤に石川が、
「もうお昼だし、ゴハン食べようか?」
そう言って石川は立ち上がると、後藤の手をひいて立たせた。
「……どこで?」
「私の家で。嫌ならいいけど……」
石川はそう言って、掴んでいた後藤の手を離しかけた。
「あっ……。」
「嫌じゃないよ。」
後藤は石川の腕を握り返して、笑顔でそう答えた。そうして後藤は潜水具をバッグに
詰めて、借りていたボンベを返すと、石川と一緒に海をあとにした。この前のように
海沿いの道路を歩いて、石川の家へと向かった。石川の家は、保田の別荘のあるとこ
ろから、上へと進んだところにあった。海から歩いて30分ほどして、ようやく着い
た。木でできたゲートをくぐって、気に囲まれたうねった小道をさらに5分をほどか
けて上っていくと、家が見えてきた。
更新です。
字数制限消えたかな?嬉
気→木
だよね
-34-
2階建てのログハウス作りの建物だった。玄関前の段の少ない階段を上り、石川は鍵
を取り出して開けた。振り返って、後藤を呼ぶ。
「さ、どうぞ。」
「あ、うん……。」
後藤は重いバックを持ち上げると、導かれるままに中に入った。居間は、高そうな家
具がたくさん並んでいた。保田が『石川はお嬢様だ』と言っていたのも、頷けた。
「座りたいところに座ってて、今食べるもの作るから。ちょっと待っててね。」
「ありがと……。」
後藤はボーっとしながら、石川に返事した。それは豪華なものに目を奪われたわけで
はなかった。気がついたら、石川のほうばかりを見ていた。
「(どうしてだろ……私は……市井ちゃんが……)」
「今、お湯沸かしてるから。」
後ろから石川の声が聞こえて、後藤はびくりとして振り返った。石川はそんな後藤を
見て、目を丸くして、
「どうしたの?」
「なんでも……ないよ。ははは……」
後藤のそんな言葉に煮え切らないものを感じたのか、石川は難しい顔になった。そん
な石川に、後藤は何か言葉をかけたくなって、
「あ、あのさぁ……ここ1人で暮らしてるの?」
「うん。家族は東京に住んでるの。ここは私だけだよ。」
石川の顔は相変わらずのままだった。
-35-
後藤は石川のその表情にまずいものを感じながらも、なんとかそれを解かせるために
言葉を続けた。
「へぇ……こんな広いところで、一人暮らしかぁ。でも、学校は……?」
「もう行ってないの。今は通信だよ。」
「そうなんだ……。でも、どうして1人で……? 寂しくないの?」
「……ここを、離れたくないの。」
「なん……」
そう言いかけた時に、キッチンのほうで鍋が吹き零れる音が聞こえた。石川はキッチ
ンのほうへと行ってしまった。数分経って、石川が、トレイに食事をのせて居間に戻
ってきた。
「簡単なものだけど……」
そう言いながら、作ってきたものをテーブルに置いた。チキンのリゾットだ。トマト
の匂いが後藤の鼻をついた。食欲をより一層そそられた。後藤は座ると、
「いただきます。」
そう言ってさっそく食べ始めた。見た目はシンプルだが、味は満足がいくものだった。
後藤は一気に平らげた。グラスの水を飲み干して、
「ふぅ〜……ごちそうさま。おいしかったよ。」
石川も後藤のその満足そうな表情に、素直に嬉しくなった。
更新です。
-36-
ここに来た本来の目的を果たしたので、2人はなかなか話せずにいた。そんななか後
藤が、
「さっきの続きなんだけどさぁ……どうして、どうしてここを離れたくないの? 海が
好きなの?」
「そうじゃないよ。嫌いでもないけど……。」
「……もしかして、海がないと死んじゃうの?」
「えっ? どうして?」
後藤の突拍子もない言葉に、石川は驚いた。後藤も自分で聞いて、馬鹿だなぁ、と感
じた。
「あの、さ……裸で泳いでたでしょ? 見ちゃったんだよねぇ〜……。」
「あぁ……。」
石川は特に恥ずかしさを感じてる風でもなく、何気に視線を落とした。後藤は、前髪
をかきあげながら、1人で吹きだし笑いをして、
「でね…そん時に、『人魚だぁ』って思っちゃってさぁ〜。」
笑う後藤を見て、石川も少し笑いながら、
「違うよぉ、人魚じゃないよ。」
「じゃさ、どおして……裸で?」
「そうだなぁ……」
石川は視線を上に合わせて、少し考えた。
-37-
「なんかね……ふっ、て思ったの。どういう感じなんだろぉ、って。朝早かったし。
誰もいなかったから。でも、真希ちゃんに見られてたんだね。」
石川は目を細ませて笑いながら、後藤のほうを見た。最初の頃よりも、柔らかく自分
に接する石川を、後藤は新鮮に感じた。それと同時に、石川への何らかの感情が、湧
いてきてるのも。話を終わらせたくなくて、後藤は話をつないだ。
「そぉなんだ。あ〜、なんかすっきりしたよ。梨華……さん。」
この間、『梨華ちゃん』と呼んで、あまりいい反応をされなかったので、とっさにさ
ん付けで石川を呼んだ。石川もあの時のことを思い出したのか、
「あ……梨華ちゃんでいいよ……この前は変なこと言ってゴメンね。」
「謝んなくてもいいよ、梨華ちゃん。」
後藤はさっそく石川をそう呼んだ。石川は自分の名前を呼んだ後藤の顔を見て、何か
を思い出したのか、悲しそうな表情になり、視線を下げた。それに気づいた後藤は、
「……どうしたの?」
「なんでもないよ……。」
石川は相変わらず視線を下げたままでそう言ったが、語尾が震えていたのを後藤が聞
き逃さなかった。後藤は石川の肩に手を置いて、軽く押した。そうすると石川の顔が
窺い知れた。
「梨華ちゃん……。」
更新です。
いい感じ
石川に謎ありだな
なんかすげー久しぶりに小説って読んだ。悲しいシリーズ以来かな。
イメージの石川はまさにこんなお嬢なんだよな。でも本当は・・・という所。
.
-38-
もしやとは思っていたが、石川の目からは、一筋の涙が流れていた。後藤は口を半開
きのままで、石川を見つめた。少しして、後藤は、
「……どうしたの?」
涙の理由を石川に尋ねた。石川は指で目元をなぞるようにして涙を拭うと、
「ちょっと懐かしくなっちゃって……。」
「えっ? ど…」
「それだけだから。気にしないで。」
後藤の言葉を遮って、石川は口元だけで笑ってそう言うと、ついていた膝を床から外
して立ち上がった。そしてテーブルの上の食器を持つと、キッチンのほうへと行って
しまった。後藤は床に座ったまま、それを目で追うしかできなかった。
「(懐かしい……って?)」
疑問が一つ消えた途端、新たな疑問が生まれた。
―数分後。キッチンから聞こえていた水の流れる音が止まった。石川が戻ってきた。
ソファに座りなおしていた後藤は振り向いて、
「あのさ……もう今日は帰っていいかな。仕事、任せてきちゃってるんだ。やっぱ戻
ったほうがいいかなって思って。」
石川はソファに向かって歩を進めながら、
「そう……それなら仕方ないね。」
ソファに手をついてそう言った。気のせいか、石川の表情は、後藤には、安堵に包ま
れたようにも見えた。
更新です。
-39-
「ゴハンありがとね。おいしかったよ。」
「そう……。ありがとう。」
愛想笑いのような笑顔。こんな笑顔なら笑ってくれないほうが、後藤にとってはまだ
マシだった。
「それじゃあ、行くよ。」
調子を荒げて言葉を吐き出す。石川は、後藤が気分を害したであろう事を気づかない
わけではなかったが、何も言いはしなかった。背を向けてドアノブに手をかけた後藤
に、
「また……来てね。」
「……。」
後藤は返事を返さなかった。ドアを開けると、さっさと出て行ってしまった。
「いらっしゃいませ〜。あ……後藤じゃん。」
接客中の保田が、海の家の入り口に立っている後藤に声をかけた。後藤は何も言わな
いで店に入り、席に着いた。不機嫌そうに座っている後藤に呆れてしまったのか、保
田は店の奥に行ってしまった。後藤は、砂でざらついているテーブルに顔を伏した。
その時、コーラの瓶が置かれた。顔を上げると保田だった。
「おごり。」
保田はそれだけ言って、再び他の客の注文を取りに行った。
-40-
保田のおごってくれたコーラの瓶が空になった頃、客足は一旦途絶えた。保田が、後
藤の前に座った。後藤は、
「ジュース、ありがと……。」
「その代わり明日は一杯働いてもらうけどね。」
保田はそう言ってニヤリと笑った。後藤もつられて笑った。保田は、笑うのをやめる
と、
「で、気ぃ済んだ?」
「あ……うん、まぁ……。最初っから、期待なんてしてなかったけどさ。」
「ほんとはね……止めたかったよ、後藤のこと。でも、それで少しでも前に進めるか
も、って思ったらさ。」
「前か……。市井ちゃんのことは……忘れられないと思う。でも、それだけに縛られ
ててもダメなんだよね。だからさ、もう潜って探すって事はしないよ。いつかどっか
に流れ着いてくるのを待つよ。」
「それも難しいような気ぃするけど……。」
保田は思わず苦笑いをした。そして、
「話し変わるけどさぁ。どっかでご飯食べてた?」
「えっ? どうして…」
「や。ほっぺに……ね。」
保田はそう言いながら自分の頬を指で指した。後藤はそれを見て自分の頬を拭った。
-41-
「これは……」
「誰かの家、行ったんだ。」
「な、なんでぇ……?」
「だってこの辺、お店なんてないしさ。別に言いたくないなら、聞かないけど。」
後藤は少しうつむいてから顔を上げて、
「あの、ね……石川梨華の家、行ったの。」
「へぇ〜。いつからそんなに仲良くなってたのさ、あんたたち。」
「たまたま、会ったんだよ。で、家に行って、ゴハン食べたの。そんだけ……だよ。」
「その割には…」
「な、なに……?」
やたら動揺している後藤に、保田は笑い出すのを必死にこらえながら、
「機嫌、良くないなって。あんた、その娘と一緒だった時は、嬉しそうな事多かっ
たからさ。」
「そう見えてたの……?」
保田は深く頷いた。後藤はそれに一瞬恥ずかしそうな顔をしたが、その表情はすぐ
に強張った。
「でもさ、なんかギクシャクしちゃったんだ……。私も、変な態度取っちゃったし。
それに……なんか梨華ちゃんのこと、わかんなくなっちゃって……。」
遠い目をしてそう言う後藤の話を、保田は聞き始めた。
更新です。
この板、閉鎖になったらlogの小説読めなくなってしまうのか・・・。
例え閉鎖になってもどこか他の所で続き書いてくれる気はないのだろうか?
log、今までありがとう・・・そしてさようなら
>>196 書くよ。自分のHPでは書かないから。芸板ぐらいかな。
でも100%決まったわけでないみたいだから。今は静観中。
196〜199の光景見たことある。
デジャブだ
明日…正確には本日23時過ぎ更新。
ただし今週はテストだからまちまちだと思ふ。
気にせず頑張って。
臨時書き込みです。
このスクリプトの是非も考え直すべきかも知れないけど、とりあえず975417675
-42-
「……わかんなくなったって?」
「なんていうかぁ…陰があってさ。でもね、すごくいい笑顔見せる時もあるんだよ。
でも……」
「陰が…ある?」
保田の言葉に後藤は頷き、続けた。
「泣いちゃったんだ……名前、呼んだだけで。」
「呼んだだけで? なんで、また…」
「聞いたよ。そしたら…懐かしくなった、って。」
「? ごめん…ますますわかんないんだけど。」
保田は額に手を当てて、難しい顔になった。
「だからわかんないって言ってるんじゃん……。いいよ、自分で何とかするから。」
「何とかって? あまり言いたくないから、そんな言い方したんじゃないの?」
「それは……そうかもしれないけど……でも、気になるよぉ……。」
「……。」
保田が後藤を見つめた。突然のことに後藤は、
「な、なによぉ……どしたのさ、圭ちゃん。」
「どっちが気になるのかなぁ、ってさ。石川って娘と『懐かしい』っていうのは何
なのかって事とさ。」
更新です。
ほぜむ
更新は土曜より再開いたします。
明日再開。
気合入れてこう。<自分
-43-
後藤が少し動揺した顔つきになった。
「それって…」
「好奇心なのか、恋なのかってねぇ〜。」
からかうような口調で保田が言った。
「……恋? そんな事、ないよ…そんなの…違うもん。」
ろくな反論も出来ないまま、後藤はしゅんとしてため息をついた。それを見て、保
田は、からかうのをやめて言った。
「とりあえずさ……気になるなら聞けばいいじゃん。それしか言えないよ、あたし
だって。でも、本人が聞かれたくない事かもしれないんだったら、あまり聞くもん
じゃないけどね。」
そう言っていると、客が店に入ってきた。うつむいたままの後藤の後ろ頭をぽんぽ
んと叩くと、保田は再び接客し始めた。しばらくすると、保田が気づかないうちに
後藤は店からいなくなっていた。
「恋……なのかな?」
店を出た後藤は、人気のない貸しボート置き場に立って、海を見ながら呟いた。返
答があるわけでもなく、後藤は波の音に聞き入っていた。
「市井ちゃん……私……」
それ以上は、言葉にも出せないで後藤はその場に座り込んだ。結局、後藤は仕事に
戻らずに、夜までその場に居続けた。
更新です。
212 :
黄板:2000/12/03(日) 01:15
チャム…
-44-
―夜。夏とはいえ、風強くなり、肌寒さを感じた。後藤は立ち上がり、別荘に帰る
ことにした。いつもどおり、道路に沿ってゆるやかな坂を登り歩いた。考え事をし
ているわけでないのに、どこかぽっかり抜けた感じになっていた。後藤は原因がわ
からないまま、歩きつづけた。そうして、別荘へと続く小道の前にたどり着いた。
だが、そこから歩が進まなくなった。しばらくそこに立ち尽くしたあと、後藤は再
び坂を降りて歩き始めた。
坂を下り、歩きつづけて二時間ほど経った。後藤は目的地にたどり着いた。墓地だ。
潜水具を入れてあるバッグから懐中電灯を取り出して、墓地内を歩き、ある墓の前
に立った。市井の墓だ。風で吹き飛ばされている花を、綺麗に整えて、後藤は手を
合わせた。合わせていた手を解いて、後藤は顔を上げて墓前に向けた。
「市井ちゃん……私さぁ……市井ちゃんの骨、見つけらんなかったよ。……ごめん
ね、市井ちゃん。」
後藤は墓前の前に跪いて、顔を伏せた。冷たい風が吹き込んで、後藤の体を冷やし
ていった。
「(寒い……このまま寝てたら、どぉなるんだろう……夏だから死なないのかな、
なんか、どぉでもよくなってきちゃったよぉ……ケータイ鳴ってる……圭ちゃんか
なぁ……眠い……)」
更新です。
なんかエキセントリックになった。。。
保全書き込みを行います。975904203
-45-
「ごとぉ! ホラ、起きなって。ほら! 起きろぉ〜!」
何回か頬を叩かれて後藤は目を開けた。目の前にいたのは保田だった。墓石を背に
して、後藤はまだぼーっとした頭の中で状況をつかもうとした。とりあえず口を開
いて、
「あ〜……圭ちゃん。今、何時ぃ……ヘックショイ!」
「ったく、あんたって娘はぁ……。」
保田は愚痴りながらも、自分の来ていたナイロンジャケットを後藤の体にかけると
立たせて、乗ってきたタクシーのほうへと共に向かった。すっかり体の冷えた後藤
をタクシーに乗り込ませて潜水具の入ったバッグをトランクに入れると、さっそく
別荘に向けてタクシーを走らせた。タクシーの中で徐々に体温を取り戻し始めた後
藤は、再び保田に聞いた。
「……圭ちゃん、どうしてわかったの?」
まだ残った寒さのせいで唇が震えた。保田は後藤の肩を抱いて引き寄せると、
「あとでちゃんと話すから……。」
そう言って後藤の体をさすった。保田の心配そうなその表情に、後藤はそれ以上は
聞くことをやめた。ただ一言、
「心配かけてごめんね、圭ちゃん……。」
そう詫びると目を閉じて、そのまま眠りについた。
更新です。
さすが後藤、墓場で寝てるとは
本日お休み。
-46-
―朝。後藤は目を覚ました。頭が重かった。
「う……頭痛いよぉ……。」
呻くようにそう漏らすと、
「…ったく、もぉ。夏っていってもあんなトコで寝てたら馬鹿でも風邪ひくわよ!」
ベッドのそばにいた保田がぼやきながら、冷水でタオルを絞り後藤の額に当てた。
「あ…圭ひゃん…ありがと…」
後藤は目をとろんとさせて、少しつらそうにしながらも、いつものヘラヘラ笑いを
保田に見せた。それを見て保田は、やれやれといった顔をしながらも、優しく後藤
の頭を撫でて、
「とりあえず、早く直そうね。」
そう言って洗面器の水を取り替えるために部屋を出て行った。後藤は保田が部屋を
出るところまでを見届けると、重くて仕方がないまぶたを閉じた。
―携帯鳴ってる……。寒い。出なきゃいけないけど…出たくない。あ、止まった。
う…誰かいるのかな…? 誰? なんか言ってる。代わりに携帯出てるのかなぁ。
誰だろう…目ぇ開かないや…
どっかで聞いたような声。好きな声。大好きな市井ちゃんとは違う声。大好き……
今は…わかんない。今、私って…誰が…
更新です。
最近、雑誌見てると思うのだが…ごまいしといしよしの比率が…
うん、俺もそう思う…比率的に…
-47-
額に冷たさを感じて、後藤は再び目を開けた。
「ごめん、起こしちゃったね……。」
保田だ。後藤は、なんとか声を振り絞って、
「ねぇ…圭ちゃん…」
「なに? 喉、渇いた?」
後藤は小さく首を振って、
「違うの……圭ちゃんさ、昨日の夜…私のケータイにかけた?」
「うん、かけたよ。帰ってこないんだもん、それがお墓で寝てるなんてねぇ……。」
「その時さ…誰、出た?」
後藤のその問いかけに、保田は少し言うのを迷った風にして、
「……石川って娘、だったよ。」
「!」
後藤は勢いよく体を起こした。が、立ちくらみに似ためまいがして、すぐまた後ろ
に倒れた。保田が呆れて、
「もぉ…病人なんだからさぁ。びっくりしたのはわかるけど……。」
「だって、さ……どうして……そんなトコにいたんだろうって。」
「知らないよ……その娘も、あんたみたいに急にお墓参りしたくなったんじゃない
の。とりあえず、今は寝ておきなさいよ、ねっ?」
「……わかった……。」
保田に諭されて、後藤は再び目を閉じた。
更新です。
今日はいしよしって感じ。>めざまし、Mステ
233 :
忘:2000/12/09(土) 18:48
病人の後藤といえば愛物語を思い出す。
といってもタナコのトコで頂いたものだが。
たまには小説読むために一日を潰すのもいいもんだな
本日お休みです。
臨時保全書き込みを行います。976470272
-48-
―また……来てね
梨華ちゃん……すごく寂しそうだった。それなのに、私はすごい嫌な態度とっちゃ
った。それなのに、梨華ちゃんは私の代わりに携帯に出て、圭ちゃんを呼んでくれ
た。どうしてお墓にいたかは知らないけど……。どうしてだろう? 知り合いの人
のお墓があるのかな。でも……夜に来るって事は、よっぽど親しい人のでない限り
はそんなないよね。『懐かしい』ってそういう事だったのかなぁ。でも、どうして
私を見て懐かしいって事になるんだろ? わかんないや……。聞きたいよ。でも、
圭ちゃんは聞いちゃいけない事かもって言ってたなぁ。う〜、もういいや。聞かな
くても……本人も嫌がってたしさ。お礼も言わなきゃいけないし、どっちにしろ会
いに行く口実はできたんだから……。会いに…
「…行こう。」
後藤は目を開けて、天窓を見た。空がかすかに明るくなりかけていた。もうじき朝
が来る。頭は…すっきりしていた。どうやら風邪は治ったようだ。寝すぎたせいで
まだだるさが残ってはいたが、外出できなくはない。後藤はベッドのすぐ横のテー
ブルに置いてある市井との写真に目をやった。少しして、立ち上がると、その写真
の入っている写真立てを倒した。
「……ごめんね、市井ちゃん。」
更新です。
本日お休み。
-49-
まだ朝もやの残る中、後藤は石川の家に向かって坂を登り歩いていた。もしかした
ら、石川が日課にしているといっていた朝の散歩の道中に出くわすかもしれない事
を期待しながら、後藤は足を進めていった。そうして石川の家へとつづく小道の入
り口の前へと着いた。その場で意味もなく5分ほどぐるぐる回ってから、後藤は小
道を歩いていった。小道を歩いて数分して、石川の家の前へと着いた。外から見た
だけでは石川が家にいるかどうかもわかるはずもないのだが、インターホンを押す
勇気がなかなか出てこない後藤は、玄関前の階段に腰を下ろして、自分が今歩いて
きたほうの小道のほうを眺めていた。家を取り囲っている木々が、風で葉を鳴らし
ている。それと同時に香ってくる緑の匂いを、大きく吸い込みながら、後藤は時間
が経つのを待った。数十分ほどして、後藤は下げていた顔を上げて、
「……なんて話そうかな。」
会いに来たのはいいが、何を話せばいいのやら……後藤は、必死で言葉を探し始め
た。次第に後藤のなかに不安にも似たようなものが襲ってきた。後藤は、後ろのほ
うを見ながら立ち上がり、そのまま後ろ歩きで小道のほうへとゆっくり進み、踵を
返して、その場から走り去ろうとした。が、振り返ったその目の前には、石川が立
っていた。
「あっ……。」
「……真希ちゃん。」
驚きで声を失った後藤とは逆に、石川は後藤の顔を見るなり、あの柔らかい笑顔を
後藤に見せた。
更新です。
次回は金曜日です。
粛清防止書き込み
-50-
後藤は、目の前の石川の顔を直視する事ができないでいた。恥ずかしさなのかもど
かしさなのかはわからない。でも、見れないでいた。しゃべりだす事が出来ないで
いる後藤に、石川が、
「どうしたの? 何か…家に忘れ物でもしてた?」
何とか後藤がしゃべりだす事ができるように気を使って、言葉をかけ始めた。そん
な石川の気遣いに、助けられて、
「ううん。違うよ……。来たのは…お礼を、言いたかったから。」
ようやく言葉を出して、石川のほうを見て、
「おととい…お墓で代わりに電話出てくれて…ありがとう。梨華ちゃんが出てくれ
なかったら、風邪だけじゃ、すまなかったかもしれないから……。」
「風邪…ひいちゃったんだ。もう、大丈夫なの?」
石川の顔色が一気に変わって、心配そうな表情で後藤のほうを見た。後藤は、うん
うんと頷いた。そして、
「あと、ね……この間……ここ来た時、ちょっと棘のある言い方して…ごめん。」
「謝らなくていいよ……。真希ちゃんが、また来てくれて…嬉しいから。」
石川は、そう言うと、後藤の手を握って、再び笑いかけた。その時、後藤は、石川
に対する自分の気持ちが、前の時とは変わり始めているのに気がついた。
「……梨華ちゃん。」
「なに?」
「一緒に、散歩……行こうか。」
更新です。
次回は日曜日
保全書き込みを行います。
977058003
-51-
後藤は、石川と共に砂浜を歩いていた。後藤の後ろを石川がついていく、そんな感
じだ。次第に、あたりがさらに明るくなり始めてきた。もうすぐで朝が来る。しば
らくして後藤は後ろに石川がいないのに気がついた。慌てて、見回すと百メートル
ぐらい離れたところで、石川がしゃがんでいる。後藤は小走りに駆け寄った。
「どうしたの?」
「あ…ごめんね。気になって…」
そう言って石川は砂の中のビール瓶のかけらを見せた。誰かが割ったまま、ほった
らかしにしていったのだろう。後藤はそう思いながら、石川の手の中のそれを睨み
つけた。よく見ると、石川の手のひらに一筋の血がにじんでいた。
「梨華ちゃん…切った?」
「えっ? あ…そうみたいだね。」
石川は特に慌てるでもなく、ビール瓶のかけらを持ち替えて、傷口を見てそう言っ
た。後藤はそれに一瞬拍子抜けしながらも、
「と、とにかく…ばい菌入っちゃうよ…治さなきゃ。」
「これぐらい平気だよ。」
石川は相変わらずだった。
「なにを悠長に…もぉ!」
そう言って、石川の細い腕を掴んで、もと来た道を引き返し、石川の家へと向かっ
た。
更新です。
次回は火曜日
保全書き込みを行います。
977232603
-52-
―石川宅。中に入り、拾ってきたビール瓶を捨てると、後藤は、
「…救急箱は?」
「そこだよ。」
石川がそう言いながら、リビングにある棚の一つを指差すと、後藤はすぐさまそち
らへ行って、救急箱を取り出し、石川をソファに座らせた。救急箱を開けて、消毒
液、ガーゼ、包帯を取り出す。
「大丈夫だよ……。」
石川は後藤の気遣いに戸惑いながらそう言った。
「ダメだよ……。」
そう言いながら、後藤は石川の怪我した手のひらの傷口に消毒液をつける。石川は
一瞬眉間に皺を寄せて、痛みを体現した。
「ほら…痛いんじゃん。」
後藤が、そう言いながらガーゼを当てて、包帯を丁寧に巻き始める。石川は、もう
何も言わず、後藤が手当てを終えるのを待った。
「……よし。はい、終わり。これでもう大丈夫だね。」
そう言って、後藤は石川に向かって微笑んだ。石川もつられて微笑み、
「ありがとう。」
その時、2人の視線が今までになかったぐらい長く合ったままになった。後藤が、
ゆっくり顔を石川に近づけていく。
更新です。
人いない…泣
大丈夫、ちゃんと読んでますよ。
海の彼方に初のラブシーンか?
しかし、唐突でないかい?
255 :
名無し:2000/12/19(火) 23:21
座敷童子のようにひっそりと観察してます……
そして、今はちょっぴりピーピング・トムな気分。
どきどきどきどき………
ageちゃいやん(i_i)しくしく
この前のMステ、FUNといしごまあったね、意外性あって良い感じ
続き期待ー>小説
クソ寒い冬に夏の海が舞台の小説読むのもイイもんだ。
>>253 最近リアクション求めているな
logちゃん、寂しがりやなのね(w
logの小説ではふられてばかりの後藤。
ここでは幸せになれるのやら。
>>254-260
logの「人いない…泣」の一言でこのレスの付きぶり(W
自分も含めてだけど、ただ黙ってROMしてる奴って多いいだね。
-53-
石川のほうへと顔を近づけて、あと数センチのところでぶつかりそうになると、後
藤の瞳に映った石川の唇が、
「いや…」
確かにそう言った。後藤は慌てて身を引く。そして、
「ごめん……。」
一瞬の間に噴きだしてきた額の汗を、手のひらで拭う。振り向くのが怖かったが、
なんとか石川のほうへと向きなおした。石川は手当てされた包帯に目線を固定して
いる。後藤はなんとか気を取り直して、
「いきなり…キス、なんてねぇ。」
自嘲しながらそう言った。石川は相変わらず包帯のほうに目をやっている。その口
は固くへの字に、閉ざされている。後藤は、数分前の自分の行為を素直に反省した。
それと同時に、今の自分の気持ちを確認した。
「(私は……) 梨華ちゃん、こっち…向いて。」
後藤が嘆願するようにして声を出した。それに圧されてなのか、石川はゆっくり顔
を上げる。後藤は立ち膝で石川の座るソファに数歩で寄って、石川の手の上に自分
の手を重ねて、
「梨華ちゃん……好き、だよ……。もしよかったら…一緒にならない?」
石川は焦点を合わせないまま、しばらくまばたきを繰り返して、
「……いいよ。」
笑顔ではなく、ほとんど無表情に近い顔でそう言った。
更新です。
次回は土曜日。
ほっ…
保全書き込みを行います。
977580007
-54-
―夕方。後藤は保田の別荘に戻ってきた。
「ただいま。」
ほどなくしてエプロン姿の保田が玄関までやってくる。後藤の顔を見るなり、
「アンタぁ! 何日、バイトサボる気なのっ!」
「ゴメン、ほんっとにゴメン! 明日は絶対に出るから。」
後藤の必死に謝る姿に、保田もそれ以上怒るに怒れなくなってしまった。いつもの
事なのだが。保田は小さく息を吐いて、
「絶対に、だよ。それと朝出る時はちゃんと言ってきなさいよ。病み上がりだから
余計に心配したわよ。どこ、いたの?」
「……。」
後藤は一瞬黙り込んでしまった。別に言っても大した事はないところなのではある
が。
「……石川さんのトコ?」
保田が見事に言い当てる。後藤は何も言わずに頷いた。保田が口元を笑顔で緩ませ
て、
「何も隠さなくてもいいじゃん。良かったね、仲良く…なったんだ。」
「う、ん……。」
少し返答に迷った風な後藤の返事。保田はそれには気づけずに台所のほうに戻って
いった。
更新です
次回は月曜日です。
本日お休み…申し訳ない
うぬぬ…残念
今更だけど女同士って事に疑問もってないんだね
logさんの小説中のメンバー
ちょっとはその事で悩んだりして欲しいな〜。
淡い恋心っぽい所は大好きです。
っつーかlog小説好きです。
うわ〜ん
狼板って事忘れてた〜
>今更だけど女同士って事に疑問もってないんだね
そう言われれば...忘れてた
273 :
チャーミー石川とチャレンジモーニング娘。:2000/12/26(火) 12:35
略してチャミモニ
>>270 そういうことについて触れてることもあれば触れてないときもありますな。。。
ま、焦らずに眺めておいてください。。。
お知らせ
バイトのため、小説にまで頭回りません。。。
なので、1月5日のバイト終わるぐらいまでは今みたいな状態が続きます。
読者の方々…すんまそん
-55-
「(仲良く……は、なってきたんだけどさぁ……)」
テーブルに肘をつきながら、手に持ったスプーンに映る自分の顔を眺めながら、後
藤はさっきの出来事を思い出していた。
『梨華ちゃん……好き、だよ……。もしよかったら…一緒にならない?』
『……いいよ。』
「(なんていうか……私の言い方も言い方だね。好きだけどさ。もうちょい仲良くな
りたいって言えばいい事なのに。梨華ちゃんがあんな言い方になっちゃったのも…
そのせい、だよね。そうじゃないなら……女の子同士って変じゃない?って事、な
のかなぁ…う〜…なんか、なんかヤダなぁ)」
「後藤、ご飯冷めるよ。」
後藤は我に帰って、目の前にいる保田に気づく。
「どうしたのさ。珍しいね、ご飯目の前にしてもボーっとしてる後藤ってさ。お腹
痛いの?」
「違うよ……違う。」
後藤はヤケ気味に食事を口に詰め込んでいった。保田に相談してみようか、と思っ
たが、やめた。
「(いいかげん……自分で考えなきゃね)」
更新です。
どうにも質問されるタイミングが…
更新ののろさに問題があるんだけどさ。
>log
何のバイト始めたの?
>>270 君かわいい
保全書き込みを行います。
978120004
>>277 郵便局です。
どうやら今年はもう更新できそうにありません。
また来年に、新世紀に。
保全書き込みを行います。
978291007
保全書き込みを行います。
978510617
保全書き込みを行います。
978654612
保全書き込みを行います。
978784207
保全書き込みを行います。
978955221
-56-
夕食後。後藤はベッドに仰向けになり、天窓から見える星を眺めていた。市井がい
たころは、保田と一緒に3人で見たり、市井と2人きりで見ていた星空。石川とは
見たような、見ていないような、じっくり眺めてはいなかったと思う。つい昨日ま
では、それができるだろうと当たり前のように思っていたが、今では、遠い夢のよ
うになってきた。石川に、嫌われてしまったかもしれない。思い込みは良くないこ
とは、わかっているつもりでも、そう思わずにはいられない。息を吐いて、うつ伏
せ気味になり、ベッド脇のサイドボードに置いてある、今朝倒した市井の写真を起
こしてやる。写真の中の市井は、笑っている。はにかみ気味の不器用な笑顔だ。最
初は、市井のこういうところに、苦労もさせられたが、今思ってみると、市井のそ
んなところも大好きになっていた。今はもう見れない……
「そっかぁ…」
後藤は気づいたように呟き、再び身体を仰向けにして、先ほどの状態に戻る。石川
もどちらかというと、市井のように不器用な笑顔の時が多い…とは言っても石川と
はまだ数回しか会ってないので断言はできないが。そうは言っても昼間見せたあの
表情を、否定できるわけでもない。それこそ思い込みもいいところなのだから。
「……会いたいなぁ。」
石川のことを考えるうちに具体的な希望が口から出た。昼間のことを弁解云々とか
そういうことではなくて、ただ単純に石川に会いたくなった。早く朝が来てくれる
ように。後藤は目を閉じた。
更新です。
次回は木曜日。
保全書き込みを行います。
979218004
-57-
うるさく響く雨の音。後藤は目を覚ました。空が曇っているため、時間がわからな
い。顔を横に向けて、時計に目をやる。6時だ。
「……仕事、休みかな。」
身体を起こして、呟いた。起きたばかりのボーっとした頭の中で、今日の予定を考
える。食事を摂って、すぐに石川に会いに行こう。
【今日は、全国的に雨でしょう。】
後藤はリビングに降りて、つけたTVを目に映す。TVの時刻のテロップが6時30分
を表示した時、上からめざまし時計の鳴る音が聞こえた。少しすると、保田が降り
てきた。
「おはよ、圭ちゃん。」
リビングに入ってきた保田に、笑顔で言った。保田も笑顔で、
「おはよ。今、ご飯作るからね。」
そう言ってキッチンに向かった。ここに来て、いつもと何も変わらない朝の風景。
「今日は、仕事休みだよね?」
ひととおり食べて、コップの牛乳に口をつけながら、後藤が保田に聞いた。保田は
雨だれに濡れた窓に目をやって、
「そだね。今日は、お休みかな。とりあえず電話…」
言いかけたとき、電話のベルが家中に響いた。
更新です。
土曜日。
291 :
名無し募集中。。。:2001/01/13(土) 19:13
Age
-58-
「はい、もしもし。」
電話に出た保田の背中を、後藤は眺めていた。電話に出た保田の声が、だんだん低
くなっていく。保田はメモを取りながら、相槌を繰り返している。数分して、保田
は受話器を置いた。いつもと違う雰囲気に、後藤は、
「どうかしたの?」
すかさず保田に聞いた。保田は書いていたメモに一瞬、視線を移して、
「見つかったって…」
保田の別荘から、車で20分ほどのところにある、決して大きくはない警察。後藤
と保田は、タクシーから降りて、そこに入った。
「すいません。」
入るなり、保田は中年の男を呼び止めて、メモを見せる。男に導かれて、2人は歩
いた。階段を使い、地下一階に降りて、薄暗い廊下の突き当たりに着いた。
「ここだよ。」
中年の男が、そう言って、鉄製のドアを押し開けた。そのドアの上には、遺体保管
所、と白色のプレートに黒字で書いてあるものが掛けられていた。消毒液を始めと
した、さまざまな薬品の匂いが流れ込む。たまらず、後藤は保田の腕を掴む。部屋
の広さは10平方メートルといったところで、奥のほうにはそれぞれが引出しのよ
うになっている巨大な冷蔵庫が置いてある。おそらく遺体を入れているのであろう。
天井は5メートルと、高めではあるが、突き出して設置された蛍光灯で、普通の部
屋とは大差のない印象をもたせる。
-59-
部屋の真中には4つのカートが置かれている。それぞれに黒い皮製の袋が置かれて
いる。大きさから見て、入っているのは遺体だと、保田と後藤でもすぐにわかった。
中年の男が、机に向かっていた男に声を掛けて、来客が来た事を告げると出ていっ
た。今出ていった男ほど老けてはいないが、若くもない男は、立ち上がり、掛けて
いた眼鏡を直し、書類に目を通して、
「っと…保田さん、ですか?」
「はい。」
保田ははっきりとした口調で答えた。男はそれを聞いてから、
「呼んだのは…電話で話したとおりです。…」
そう言って、男が少し困ったような顔になった。少しして、再びドアが押し開けら
れた。後藤と保田が振り向くと、そこには2人の夫婦が立っていた。後藤と保田は
その2人を知っている。市井の両親だ。保田はすかさず会釈する。後藤も少し遅れ
て会釈する。一瞬だけ、後藤は顔を上げるのを躊躇した。わずかに額を濡らし始め
た汗が、保管所特有の冷気で冷やされる。
「…後藤?」
保田が心配そうに顔を覗き込む。後藤は顔を上げた。が、目の前に立っている市井
の両親に視線を向けることはできなかった。男がそこにいる全員に、
「電話でもお話したとおり、先日、市井紗耶香さんのものと思われる白骨遺体が、
そこの海にある小さな島で遊んでいた若者に発見されました。検死の結果、歯形
は一致しました。市井紗耶香さん本人です。」
男が視線を遺体の入っている袋に移した。後藤の、心臓が大きく音を立てた。
更新です。
次回は月曜日。
保全書き込みを行います。
979578004
市井は生きてるものだと思ってたんだけど・・・
霊安室の暗い感じが出てるのはいいと思う
保全書き込みを行います。
979749004
なんとな!市井は死んでたのか???
こうくるとは思わなかった。これからどうなるんだろう…
-60-
「……。」
一同が見守る中、男が遺体の入っている袋のジッパーを開け始めた。男は、ジッパ
ーを全て開けると、口を大きく開いた。後藤たちの目に、少し黄ばんだ白い物体が
入る。人骨だ。市井の両親が歩み寄って、それらに目を落として、触れ始めた。し
ばらくして母親の嗚咽が響く。それに後藤は思わず耳を遮る。あの日の記憶が甦る。
―市井の捜索が打ち切られた翌日の、葬式の日だ。黒服の人々が、骨も何も納めら
れていない空っぽの墓を眺めていた。市井の両親とは、事故の翌日に病院のベッド
で会っていた。2人とも、その時よりすっかり痩せていた。後藤は涙を拭い、菊の
花と線香の匂いが混じった空気を大きく吸い込む。市井の両親が、後藤の隣にいる
保田に近づいて、
「圭ちゃん、色々ありがとう。あの子のこと、忘れないでね。」
「はい。」
後藤は、そのやり取りに目を向けれず、靴のつま先に目をやっていた。少しして、
「真希ちゃん。」
市井の母親に名前を呼ばれて、後藤は顔を上げた。しかし、目を合わせることは、
とてもじゃないが、できなかった。なぜなら市井が死んだ原因は、自分にもあるか
らだ。いや、自分のせいである。それが、後藤を苦しめる。それなのに、市井の母
親は、後藤に笑顔で語りかけている。次第に、後藤の中で何かが弾け飛ぶ。
身勝手なさぼり、すんまそ…
更新です。
ドンマイ!
302 :
保全:2001/01/22(月) 00:32
原因は全て( `.∀´)です。
303 :
保全:2001/01/24(水) 06:01
全て( `.∀´)が保全するわよ!
304 :
保全:2001/01/26(金) 13:48
全て( `.∀´)が保全するわよ!
305 :
保全:2001/01/27(土) 23:37
保全
306 :
保全シネ:2001/01/27(土) 23:39
さっさと首連れ
hozen
更新まってます保全かきこ
保全書き込みを行います。
980940603
だー更新まだかよ待ち遠しいよぉ保全カキコ
LOG姉さん他の小説書くのもいいがどれか完結させて
から書いてくれません?
>>311 この間一個完結したが…。
一本に絞ったところで更新頻度は変わらないと思いますよ。
保全書き込みを行います。
981199804
-61-
何かに乗り移られたかのように後藤は、
「私の…私のせいで市井ちゃんが死んだんです。全部、全部私のせいです…」
市井の両親に焦点が合っていない虚ろな目で、後藤は何度もそう繰り返した。市井
の両親は、何も言えずにそんな後藤をしばらく見ていた。繰り返していくうちに、
後藤の目が潤んでいき、その場に腰を落としたかと思うと、後藤はわぁっと泣き始
めた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…全部私が…」
嗚咽と共に、後藤は謝り続ける。許しを乞おうという気はなくても、それしか言葉
が見つからない後藤はそれしか言えなかった。隣にいた保田が、後藤をなだめる。
市井の両親は、その時どんな表情だったか、半ば混乱していた後藤には確認できな
かった。だが市井の両親は、おそらく自分を恨むだろう、ということの覚悟は後藤
にはできていた――
「…後藤。」
保田に肘を捕まれて、後藤は顔を上げた。見ると、市井の両親が横にはけていた。
次は、後藤たちが遺骨を見る番だ。震える唇を噛んで、後藤は保田と一緒に遺体袋
のほうに歩み寄る。黒い袋の中に、黄ばんだ骨。所々が、粉になっている。ふと保
田の手が骨に伸びる。保田は指先で何度か骨を撫でると、ため息をついて指を離し
た。ようやく彼女の中で、落ち着いたというところであろう。後藤も、恐る恐ると
いう感じで骨に触れる。ザラリとした感触に、見た目と裏腹に軽い質感。生前の市
井の姿はあるわけもなかった。
-62-
しばらくして、後藤も骨から手を外す。保田が、もういい?という感じで、後藤を
覗き込む。後藤は頷いた。後藤の視線の隅に市井の両親の影が映る。後藤は、その
表情を窺いたくても窺えなかった。
警察駐車場。市井の両親が、車に乗り込み、車内から窓を開けて、
「…それじゃあ、あさってに葬式で。」
市井の母が保田に言った。
「はい。」
保田は歯切れよく返事する。誰も話し出さないという、妙な間があく。そんな間を
作ったのは後藤だ。彼女は、市井の母親に聞こうとしたのである。市井の事で、自
分を恨んでいるのか、と。だが、そんなことを聞かれたところで、誰が素直にはい
そうですと言えるだろう。そう思うと、気後れがして後藤は口をつぐんだ。
しばらくエンジンの音だけがその場に響く。市井の母が窓を閉めながら、保田たち
に頭を下げて、車は発進した。車が視界から消えると、
「…帰ろうか。」
保田が言った。
2人は、タクシーを使わずに少しだけ歩き始めた。
-63-
後藤と保田は、互いに言葉を交わさないまま、緩やかな坂を降りていく。朝降って
いたはずの雨もすっかり止んで、雲の切れ間から洩れてくる太陽の光が、濡れたア
スファルトを一気に乾かしていく。湿っぽい空気が2人にまとわりつく。湿気が、
2人を黙らせる。そのまま警察前の坂を折り切って、大きな道路の前に辿り着いた。
「タクシー乗る?」
強くなってきた太陽光から目を守るように、手で顔に影を作りながら、保田は後藤
に訪ねた。後藤は頷き、前方にある乾いたガードレールに手をついて、道路のほう
を向いた。保田も同じようにして横につく。車は来るものの、タクシーは来ない。
少しの間があって、
「後藤……紗耶香の事は、アンタのせいじゃないからね。」
保田が言った。一年前も後藤は保田にそう言われた。その時の後藤は、耳に入れた
ままで否定も肯定もしなかった。そんな気力もなかった。
「……圭ちゃんには、わかんないよ。だって、そうなんだもん。私があの時市井ち
ゃんを誘わなかったら…」
後藤の言葉の語尾が濁る。保田が間に入る。
「違うよ。後藤のせいじゃ…」
「いいよ! 慰めなんて…いらないよ。圭ちゃんの優しさ……間違ってるよ。」
最後の一言に一瞬間ためらったものの、後藤は言ってしまった。つんざくように響
いていた虫の声がすっとひいた。それでも、後藤は自分の言った言葉に耳鳴りを覚
える。後藤は、その場から走り去った。制止を求める保田の声の断片だけが、後藤
の耳を掠めた。
更新。
冬に夏のお話…ふむ。
次回は火曜日。
明日はバイトだべさ
間違ってる優しさ、か。痛いな。じゃあ間違ってない優しさって何だろうね。
320 :
まる:2001/02/05(月) 02:44
logっていくつ小説掛け持ちしてんだよ?3つか?すげーな・・・。
>320
5つぐらいじゃない?
322 :
まる:2001/02/05(月) 17:30
5つですか・・・。そりゃすごい。発言数がコテハン2位なのもうなずけますね。
-64-
朝の雨の気配が、嘘のようにひいている。
空には雲ひとつない。天気予報が見事に外れた。
まとわりつく湿気と、アスファルトから放射される熱に体力を奪われながら、後藤
は道を走って海に向かった。溢れてくる涙が視界をぼやけさせる。そのたびに一旦
止まっては涙を拭って再び走り出す。
息も絶え絶えになり、喉が灼け、履いていたスニーカーの靴紐が切れかかった頃、
後藤はようやく海に辿り着いた。胸板を叩く心音を手で抑えながら、後藤は砂浜に
降りて、この間市井の骨を探そうと、海へ潜った地点に向かった。
目的の場所につき、後藤は岩場に座り、砂だらけのスニーカーを脱いで放った。道
中でくじいた足を生温い海水に浸けてやる。足をそのまま、後藤は顔を上げた。今
いるところは上にある崖のおかげで今は日陰だ。汗ばんだ身体も少しづつ乾き始め
る。海から足を出して、後藤は岩に身体を落とす。首だけをだらりと空中に投げ出
して、逆さになった視界から、後方の砂場を見る。一瞬目を閉じて、息を吸い込み
開けると、人影が映った。
後藤は大きく目を開ける。白いスカートを波風に翻す――
「……梨華ちゃん。」
呼ばれた石川は、微笑する。
更新です。
次回は木曜日
微笑。くぅー。涙。
-65-
「そっち、行っていい?」
波の音に混じって響く石川の声。後藤は口を閉じて、身体を起こし、石川に背を向
ける形で、
「…いいよ。」
少し拗ねた感じの口調で言った。
石川は後藤に背を重ねて、岩場に座る。後藤の首に、石川の髪が触れる。その匂い
が、潮に混じる。背に、穏やかな石川の心音が伝わる。後藤は、しばらくそれに身
を委ねる。
心地よさに少しだけ我を失っていた後藤は、この間の石川への告白を思い出す。
「(……そういえば、返事……。いいよって言ってたけど……)」
「どうして…」
漏れた石川の言葉に後藤は顔を上げる。言葉は続く。
「そんなに…」
ふと石川の背中が消える。後藤は後ろに倒れる。石川が後藤の頭を両手と腿で受け
止める。
「…悲しい目をしてるの?」
真っ直ぐな――怖いぐらい真っ直ぐな石川の後藤を見つめる視線。
後藤は息を止める。
石川は、腿に後藤の頭を乗せたまま、上から真っ直ぐ見つめる。
更新です。次回は土曜日
真っ直ぐ石川。よすぎる。
今日は更新ないのですか?
石川、後藤を救ってやってくれ。
-66-
後藤は石川の視線から逃れるように、顔を横に向けて、
「……見つかったんだ。市井ちゃんの骨。」
吐き出すように言った。
「そうだったんだ……。」
石川が少しバツの悪そうな顔になる。
後藤が続ける。
「でもね、市井ちゃんの骨が見つかった事は……嬉しいって言ったらおかしいけど、
ほっとした。」
「そう。」
「悲しかったのは……圭ちゃんに酷い事言っちゃったから。」
「一緒に住んでる人だっけ?」
「うん。市井ちゃんの両親は、私のことを恨んでるって言ったら、そんな事ないよ
って慰めてくれた。」
「そうじゃないの?」
保田の意見に同意する石川に、後藤は顔をしかめる。
後藤自身も、考えすぎだと気後れをしていなくもないのだが、それでも自分を責め
ずにはいられない。
「……わからない。」
後藤はそう答えて、石川の問いから逃げる。
そのまま二人は言葉を交わさずに、そのままそこに居続けた。
更新。
次回は火曜日
あとは後藤の成長次第?
でも時間しか解決できないこともあるしね。大切な人の死なんてその最たるものだし。
よかった、ここは荒らされてないな。
logの他の小説は凄い事になってる(怒
-67-
昼過ぎになって、夕日が海に沈もうとしていた。
後藤と石川の二人は、一切動かずに言葉も交わさないで、岩場に身を任せていた。
一瞬吹いた冷たい風に、後藤は鳥肌を作る。
石川は後藤の肌をさすってやる。
「……帰らないの?」
「帰れないよ。圭ちゃんに……酷いこと言っちゃったから。」
後藤は自分を蔑んで笑う。
「馬鹿だよね……。圭ちゃんの優しさに支えられてたトコもあったのに。自分で
否定してんだから。」
と、後藤は付け加えた。
「馬鹿だね。」
間をあけずに石川が言った。
後藤は石川のストレートな言葉に、傷つきもしたが、間違ってもいないので大き
な声を出して笑った。石川も後藤に付き合って、声を漏らして笑った。
後藤の頬を水滴が濡らした。
頭をずらして石川の肩越しに暗くなり始めている空を見上げると、すっかり雲に
占領されていた。
「雨だ。」
と言って、何時間かぶりに後藤は立ち上がった。
「家、来る?」
辺りの闇に顔を染めた石川が、後藤を見上げて聞いた。
更新です。
「馬鹿だね。」 ←石川よく言った。
あれーやっぱりエンディングモードなのかなあ。どっちだろ。
338 :
名無し佳奈:2001/02/14(水) 01:13
あげ
log小説過去にも何度か荒らされた事があったけど過去最大の荒らしに”家政婦梨華とひとみお嬢様”
が見舞われてる。
388も荒らし目的のあげみたいだし。
logに小説、書く意欲が失せてしまわないかが心配だ。
>339
同感。
”家政婦梨華とひとみお嬢様” の荒らしはいくらなんでも酷すぎない?
-68-
後藤は石川の言葉に甘えさせてもらう事にした。
二人は海を離れて、車道に出て、うねる坂道を登り歩いて石川の家へ向かった。
歩き始めは、雨は霧吹から放出された水のように細やかな、軽いものだったが、
坂にさしかかった頃には、噴水から出てくる水のような、重い雨に変化した。
二人はみるみるうちにびしょ濡れになる。
頭から流れてくる雨に、あぷあぷしながら、石川が後ろにいる後藤のほうへ振
り返る。
「ねぇ! 走ろっか?」
高い石川の声が雨音に掻き消されながらも後藤の耳に入る。後藤は何も言わず、
足を踏み込み、駆け出して、石川を通り過ぎる。石川は踵を返して後藤を追う。
そのまま競い合うようにして二人は走る。
走ってから数分で、石川の家の前へと辿り着いた。後藤から玄関前のステップ
を上がる。
「あっ!」
「な、何!?」
後藤は石川の声に驚いて振り返る。いかにも困った、といった顔をした石川。
「鍵、なくしちゃった。」
「えっ……!」
口を開けっ放しの後藤の顔を見て、石川がくすくすと笑い出して、銀色の鍵を
眼前に突き出す。
「嘘だよ。」
後藤は頬を膨らませて恥ずかしそうに目を伏せる。
更新です。
あれ。甘い。どうした。。
まとまらなかった。。。
すんまそ。。。
保全書き込みを行います。
982575004
-69-
「はい、タオル。」
居間に戻ってきた石川は、後藤にタオルを渡して、自分も身体を拭く。
雨は、更に激しさを増してきたようで、窓ガラスを容赦なく叩いている。
「雨、ひどいね。」
鼻をすすって、後藤がカーテンを閉じている石川に言う。
「……うん。何か、食べる?」
「ごめん。食欲、ないや。」
「そうだね…」
次の瞬間、外が閃光で輝き、落雷の音がして、家の明かりが全て落ちた。
暗黒と、沈黙。
部屋の置時計の秒針の音が、外の雨音と同じぐらい大きく聞こえる。
後藤が呟く。
「停電だね。」
「うん。」
石川も特に気にしたようでもなく、淡々と返す。
「…直してくる。」
と、石川が居間を出ようとすると、後藤が腕を掴んで制止する。
「こっちのほうが落ち着くから……。」
「…わかった。」
後藤の気持ちを察して、石川は素直に応じる。
さて、救いの停電になるのかな。石川たのむぞ。。
-70-
真っ暗な居間。
ソファに掛けたきり、石川と後藤はしゃべらない。
照明の落ちた部屋は、時間が経つにつれて後藤を苦しめ始めた。
落ち着くどころか、嫌なものを絶え間なく連想させる。
暗い海の中。薄暗い霊安室。
後藤は小さくうめいて、石川にしなだれる。
「やっぱり、直してくるよ…」
「…いいよ。」
震える声で、懇願する後藤。
石川は、泣きじゃくる子どもをあやすように後藤を抱き寄せて、話し始める。
「私も……少し前まではこうだった。」
「えっ?」
後藤は、石川に身体を預けたまま、聞き返す。
「死んじゃったんだ、大好きだった人……。」
あっさりと言う石川。
後藤は顔を上げる。
石川が後藤の頬を両手で包む。石川の手の熱が後藤に伝わる。
暗闇に慣れた後藤の目に、石川の顔が浮かぶ。
「あなたに似てた。」
後藤は驚きに目を見張る。
更新です。
う〜ん、ちょっと唐突かな??うまく着地を。。
大好きだった人氏んだ?・・・ゴトに似てる似てる・・・
よ・・・
すいません、本日更新なし…
ガッコ行くと余計に疲れる。。。
-A strange life-の放棄宣言はショックデカすぎ。
時間かけてもいいから、ここも放棄するなんて言わないでくれよ。
途中放棄って最低だな。
356 :
名無し募集中。。。:2001/02/24(土) 00:26
みーんな荒らしのせいなの
357 :
名無し募集中。。。:2001/02/24(土) 00:30
放棄か・・・てうにち(新)と同レベルだぞ
358 :
名無し募集中。。。:2001/02/24(土) 00:33
彼氏ができたらしいから最近忙しいんでしょう
ーーーーーーーーーーーーーーーー終了ーーーーーーーーーーーーーー
360 :
名無し募集中。。。:2001/02/24(土) 00:34
嘘だろ
361 :
名無し募集中。。。:2001/02/24(土) 00:47
そうかよしじゃあlogにうたを送ろう。うろおぼえで歌詞カードもなくて耳コピーだけれどもそれでもうたおう。かーねとのートロンボーンとー打つためのドライフルーツあやふやで見栄ばかり春ぅーぼーくタチのドーナツトークぅー髪を名がーくのバーしてみてー後ーには何ももどらないと知るはずー意味のない言葉をぅ繰り返すだろうぅー向うの見えない花束のようぉーあまいニヒリズムが笑う時にもーあらあらあらばらばンドゥリーアラバアンンデュリムふぉぉ手ブ子ローとエナメル靴とぉーぉバートのスターコレクターメキシコの混戦電話ー君のないロマン手しずむぅー今何時かかぁしることよりーぃ時計の中を開けてみてみたいからあぁありふれた言葉を抱きしめるだろうロム神野の見えない花束の様ぅ気付くのは何時でも過ぎたあとだろうゥあららあらら番ドリームすふぉーをおかしい哺ドイツも他だすれ違うことがセオリー寒い冬ゥのイン力にぃートリックと何時も赤いボクシンググローブ意味のない言葉を繰り返すだろウルム港の見えない花束のようあまいニヒリズムが笑う時にもあらラララら部案鳥蒸すふぉーぉ羅武アンドリームスフォー
362 :
名無し募集中。。。:2001/02/24(土) 00:52
まるで人気作家みたいに、素人が同時に何本も小説書くことに問題あるんじゃない?
363 :
名無し募集中。。。:2001/02/24(土) 00:53
いいやん。好きにさせれ
364 :
名無し募集中。。。 :2001/02/24(土) 00:53
てうにち(新)生きてるかなぁ
365 :
名無し募集中。。。:2001/02/24(土) 00:59
logは人気作家ジャン?同じような小説ばっかかいてる何とか次郎とか言う人並みジャン?
366 :
名無し募集中。。。:2001/02/24(土) 01:01
赤川?
367 :
名無し募集中。。。:2001/02/24(土) 01:07
ブランドしか着ないとかのたまう禿も次郎?
log0076ほど愛されてるモ板作家はいないと思うよ。
これでlogがネカマだったら最高なんだが・・・
ネカマ装ってくれない?
祭りをしようぜ
まとまりませんでした、ごめんなせえ……
鬱
-71-
石川は後藤に話し始める。
二年前の夏に、一つ年下の少女と出会い、そして失った事。
後藤が質問を挟んだ。
「どうして?」
「溺死だって……。」
「そっか……。」と言って、後藤は目線を落とす。
石川は更に続ける。
遺体はすぐに上がって、この間後藤が眠っていた墓地に埋葬された事。
少女が死んでから、彼女はこの家に住み続けている事。
「ずっと? 一年中?」
後藤が聞くと、石川は頷き、自嘲気味に言った。
「離れらなくなっちゃって……。ズルズル引きづってるの。親も別に
反対しなかったから。」
石川の話が終わって、後藤も一緒に黙り込む。
後藤は、自分と似た経験をしていた石川に対しての自分の接し方に恥
ずかしさを、そして憤りを覚える。
自分の話を聞いて、石川はどう思っていたのだろう。
後藤はそれまでの自分を苛んだ。
更新です。
ひとつ年下の少女って、ちょっと待ってよ。。まさか、よ(以下略)
本日お休み……
-72-
後藤は石川に、今にも泣きそうな顔を向けて聞いた。
「……つらかった?」
「どうかな…、悲しかったよ。死んじゃった直後は、ずっと泣いてた。
でも、時間が経つと……個人差はあると思うけど、悲しくなくなって
くるの。慣れ、なのかな。」
石川は、話をしてリラックスしたのか、ソファに深く身体を沈める。
話を聞いた後藤は、今までの石川を思い出す。小さな疑問が、一本の
線でつながった。窺うように石川を見る。
「初めて……、梨華ちゃんって呼んだ時さ、覚えてる?」
「……うん。」
石川は申し訳なさそうな顔で返事をして、続けた。
「なんか重なっちゃって……、怒鳴ってごめんね。ダメだね、他人に
まで当たって。」
次の瞬間、後藤の腕が、石川の身体を抱きしめる。
少し力が強かったのか、石川の顔が少しだけ歪んだ。しかし、しばら
くすると石川も後藤を抱きしめた。
ぱらぱらと窓を叩く雨の音。少し弱まったようだ。
後藤が、石川を抱きしめている腕を緩めて身体を離し、石川と向き合
う。
更新です。
慣れ、なのかねー。。 さてこれで前へ進めるか、二人とも。
378 :
じゃないコレクション:2001/03/02(金) 03:57
319 名前:じゃない投稿日:2001/02/05(月) 01:59
間違ってる優しさ、か。痛いな。じゃあ間違ってない優しさって何だろうね。
325 名前:じゃない投稿日:2001/02/07(水) 00:52
微笑。くぅー。涙。
329 名前:じゃない投稿日:2001/02/09(金) 01:45
真っ直ぐ石川。よすぎる。
333 名前:じゃない投稿日:2001/02/12(月) 00:03
あとは後藤の成長次第?
でも時間しか解決できないこともあるしね。大切な人の死なんてその最たるものだし。
337 名前:じゃない投稿日:2001/02/13(火) 23:59
「馬鹿だね。」 ←石川よく言った。
あれーやっぱりエンディングモードなのかなあ。どっちだろ。
343 名前:じゃない投稿日:2001/02/16(金) 00:41
あれ。甘い。どうした。。
348 名前:じゃない投稿日:2001/02/21(水) 00:09
さて、救いの停電になるのかな。石川たのむぞ。。
351 名前:じゃない投稿日:2001/02/21(水) 23:24
う〜ん、ちょっと唐突かな??うまく着地を。。
373 名前:じゃない投稿日:2001/02/27(火) 01:17
ひとつ年下の少女って、ちょっと待ってよ。。まさか、よ(以下略)
377 名前:じゃない投稿日:2001/03/02(金) 01:41
慣れ、なのかねー。。 さてこれで前へ進めるか、二人とも。
-73-
「取り消すよ……。」
後藤の言葉に石川は首を傾げた。後藤は続ける。
「一緒にいたい、ってやつ。嫌いになったとか…そういうんじゃない
よ。」
必死に言葉を取り繕う後藤に、石川は柔らかく笑った。が、少し寂し
そうな表情になる。
そんな石川を見て、後藤は自分が石川に惹かれているという事と、石
川も自分のことを嫌いではないという事を改めて認識する。
後藤は石川の手をそっと握る。
「ちょこっとだけでいいから、助けて欲しいんだ……。梨華ちゃんが
ついてるんだってことだけでも、だいぶ楽になるから。」
沈黙が続く。
石川が後藤の手に自分の手を重ねて、後藤にもたれる。
後藤は、無言の返事を受け取り、目をつぶる。
後藤にとっての長い一日がようやく終わった。
「……。」
カーテンを通り抜ける淡い光に後藤は目を覚ました。ソファに横にな
っていた。石川は、いない。薄目で部屋を見回す。
更新
あれ。取り消しちゃうのか後藤。それでいいのー?
確かに長い一日だった。約2ヶ月だ。。
-74-
後藤の視線の隅を白いものが掠った。
顔を上げると、石川だった。手に、水を注いだグラスを持っている。
石川がソファに腰を落とす。
スカートの裾が起こした風が後藤の頬を撫でる。
「おはよ……。」
後藤は、目をこすりながら呟いた。
「おはよう。はい…」
石川は、水で濡れた手で後藤の手をとり、もう一方の手で持っていた
グラスを手渡した。グラスの中の氷が音を立てる。
後藤は起き上がって、グラスの水を飲む。冷たい水が、空っぽの胃を
刺激して、眉間の辺りをつんとさせる。
「ありがと……。」
グラスを置いて、石川のほうに顔を向ける。と同時に、石川は立ち上
がり窓のほうに向かい、カーテンを小さく開ける。
「散歩、行こうよ。」
わずかに差し込む朝日で後藤のほうからは石川の顔は見えなくなる。
それでも、後藤は石川のほうに笑顔を向けて頷く。
-75-
2人は、かすかに薄暗さの残る中、海に向かった。
後藤は、Tシャツと膝で切られたジーンズを、石川は、白のワンピー
スをまとっていた。サンダルを脱いで、砂浜を裸足で歩き出す。
昨日の雨を十分に含んだ砂は、少し冷たいぐらいだった。
海に沿って、砂浜をゆっくり歩き始める。
時に後藤が先を歩いたり、石川が先を歩いたり、2人で並んで歩いた
り、手をつないで歩いたり――
気がつくと、薄暗さは消えて、すっかり明るくなっていた。
子どもが、夕日が沈むのを名残惜しそうにするように、後藤と石川は
朝日が昇りきることを惜しんだ。
「ねぇ…」
と言って、石川は海のほうを指差す。後藤は石川の指差すほうに目を
やる。
黒い海と青い空が、かすかに霧がかってるものの、分かれているのが
わかる。
後藤は石川の真意がわからず、石川のほうに目を向ける。
「海の彼方って、何があると思う?」
石川も後藤のほうを向いて聞く。
-76-
しばらく黙り込んだあと。
「どっかの国、とか……。」
後藤は困惑しながら答えた。
石川は口元に薄く笑みを浮かべながら、
「昔ね。おばあちゃんが言ってたんだ。海の彼方には、天国があるん
だって。前までは信じてなかった…けど…」
と、言いかけながら、石川の顔から笑みが消える。突然駆け出して海
に飛び込んだ。
後藤は一瞬間出遅れて、石川を追う。
2人は、砂浜から数十メートル泳いだところで、顔を出す。
石川はワンピースがまとわりついているのか、安定した姿勢をとれず
にいた。後藤が石川を引き寄せて安定させる。
「なんで…急に、危ないよ!」
後藤は声を荒げる。
「信じたかった……信じたくなった。天国が、あるって……。」
石川は、後藤に抱きつくと、わっと声を出して泣き始めた。
後藤は、石川を受け止めながら岸まで泳ぎ着いた。
石川をしっかりと立たせて、ワンピースの裾を絞ってやる。濡れた髪
も撫でて、水を落とす。
更新です
おもいなぁ…話が…
-77-
後藤は、涙と海水で濡れた石川の顔を手で拭うようにして撫でる。
石川はもう落ち着き始めていた。
間もなくして、後藤は石川を抱き寄せた。
互いの服に染み込んだ海水の匂いが香る。
「天国はないかもしれないけど……。でも、私は市井ちゃんの…なん
ていうかな…魂はこの海にいるのかなぁって思うよ……。ちょっとク
サイかな…ははっ……。」
後藤は、石川から身体を離して、照れくさそうに言った。
2、3回石川が鼻をすする音が響く。消えたと思った途端、石川が吹
きだして小さく笑った。
石川につられて後藤も笑い出す。
波の音の大きさには負けている二人の笑い声。
ふと、石川の笑い声だけが消える。後藤の肩越しに海を見ていた。
後藤がそれに気づくと同時に、石川が後藤に飛びついた。
「ありがとう。」
後藤の耳に石川の声が聞こえた。後藤は、ジワジワと胸が熱くなるの
を感じた。無論さきほど飲んでしまった海水のせいではない。
「こちらこそ……。」
後藤は溢れる感情を一言に込めた。
更新だっぴょ〜ん!
ふぅ………
あぼーん
あぼーん
394 :
名無し募集中。。。:2001/03/10(土) 23:29
感動しました
395 :
名無し募集中。。。:2001/03/10(土) 23:31
>>392 常駐ヒッキーでぶヲタ、いい加減にしとけよ。
396 :
取り巻き:2001/03/10(土) 23:33
とてもおもしろい作品ですね。
ところで作者さんは森内閣についてどう思いますか?
397 :
名無し募集中。。。 :2001/03/10(土) 23:34
>>393はネタなの?荒らしなの?半端はやめとけよ。
保全書き込みを行います。
984398404
-78-
「……。」
後藤はそわそわと足を惑わせる。
目の前には、保田の別荘。
砂まみれの足とにらめっこをする。着いてからずっとそんな感じだ。
「……なんか、やっぱ……」
助けを求めるように、後ろにいる石川の方を向く。
「だめだよ。」
石川はきゅっと眉毛を吊り上げて後藤の背中を押して、玄関前の低
いステップに足を乗せさせる。
思い切りのよすぎる石川に、後藤は苦笑する。
とその時、玄関のノブが回った。
後藤と石川はじっと窺う。
保田が顔を出す。ステップにいる後藤と目が合う。
一瞬間、時が止まったような感覚。
「あ……圭ちゃ……」
と、後藤が言いかけると、「あんたねぇ」と呟きながら保田が近づ
いた。後藤の腕をむんずと掴む。
殴られようが、叩かれようが、と後藤は覚悟を決めて奥歯を食いし
ばる。
-79-
「明日お葬式なんだから服用意しなきゃいけないのにどこほっつき
歩いてるのよ!」
保田の言葉は間違っているわけでもなかったが、昨日保田を罵って
しまった後藤にとっては少しずれていた事は確かだった。
拍子抜けして口を開けたままの後藤に、後ろの石川は小さく笑う。
「……誰?」
保田が後ろの石川に気づく。石川が後藤の後ろから顔を出すと、な
るほどといった顔つきになる。
「ったく……、なにやってんだか。入んなよ、2人とも。」
保田は、海水で濡れて、足を砂まみれにしている二人を見てため息
をつきながら、別荘へ招き入れた。
後藤がシャワーに入ってる間。
石川は立ってリビングを見回した。
「たぶん、入るよね。後藤、図体でかいから。」
二階から戻ってきた保田が、バスタオルと後藤のラグランTシャツ
と膝のあたりで切ったジーンズを手渡す。
「ありがとうございます。」
石川は、多少の毒はあるものの、どことなく後藤への愛情を感じさ
せる保田の言葉に微笑ましさを感じる。
更新
(●´ー`●)保全エージェント今までありがとう
私の出番はありますかね?
>>402 どうぞ。藁
気持ちだけでも嬉しいですよ
保全書き込みを行います。
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406 :
名無し募集中。。。:2001/03/16(金) 13:13
ろぐたんハァハァハァ
-80-
石川はリビングの大きな窓から別荘の前に広がる青い空を眺めてい
た。
「後藤、迷惑かけなかった?」
と、後ろにいる保田が声をかけた。
石川は、昨夜の事を思い返し、首を振って笑顔を見せる。
保田は、言葉のない返事を受け取りテレ笑いをする。
2人は自然と話し出す、話題は後藤だ。話すのはもっぱら保田のほ
うで、内容は後藤犯したの失敗談などである。端々の言葉に毒は感
じられるものの、嫌味などは全くなかった。
やんちゃな妹とその姉。石川には後藤と保田がそう映った。
保田と話してるうち、石川は思い出した。
後藤の話では、保田も市井と親しかったらしい。
市井の死は、保田にとっては、後藤の比にならないほどの傷を遺し
たはずだ。それなのに、決して他人――後藤に当たろうとはせず、
そして後藤に罵られてもこうやって受け入れている。
この人は本当に強いんだな、と石川は思った。
更新
-81-
「梨華ちゃ〜ん、いいよ〜。」
後藤が鼻歌混じりにバスタオルで頭を拭きながらリビングに入って
きた。
「うん。」
石川は立ち上がって、後藤と入れ違いにリビングを後にする。すれ
違う瞬間、石川は後藤に向かって微笑んだ。後藤は石川の表情が意
図するものを掴めなかったが、つられて笑顔で背中を見送る。リビ
ングに視線を移すと、ソファに座っている保田が後藤を見ていた。
目が合って間もなくして、保田の口元がふっと緩んだ。後藤はソフ
ァに向かう。
リビングまで微かに聞こえてくる浴室で水が跳ねる音。
それを間に挟みながら、保田と後藤はポツリポツリと話し始める。
「頭、冷えた?」
保田は全く臆する気配も見せず聞く。後藤は静かに頷いたままで、
「圭ちゃんに当たちゃって……ごめん。」
「別に気にしてないよ。」
保田は困ったような笑いを混じらせて続ける。
「ただ、いっこだけ言いたいのは……気にするな、っていうんじ
ゃなくて。もちろん、開き直れって言うんでもなくて……。卑屈
にならないで、紗耶香の分も力いっぱい生きろってこと。」
-82-
「力いっぱい……。」
後藤が自信のなさそうな顔つきで保田を見る。
「紗耶香に……命、拾ってもらったんだから。」
と、言って保田は後藤から顔をそむける。後藤はどうしていいか
わからなくなって、後ろを向いている保田の肩を子どもが母親に
やるような感じで抱きしめる。
「圭ちゃん……ありがとう。」
保田は何も言わなかった。が、後ろから回された後藤の手を力強
く握りしめていた。
二階の後藤の部屋。
後藤はベッドに座って、保田が手配してくれた自分の制服を箱か
ら出していた。開け放ってる窓から潮風が吹き込んできて髪を乱
す。
石川はというと、数十分前に、まだ少しだけ不安げな顔つきだっ
た後藤の肩をバシリと叩いて笑顔で背を向けて、家へと帰ってい
った。
「よし、と……。」
満足げな顔でベッドに広げた制服を眺める。
後藤は、石川と保田という二人の大切さを改めて感じていた。
更新
mattemasita
俺が2番目に好きな小説っす。一番は家政婦。
『you&I vs the world』は名作っす。
頑張れよ〜
保全書き込みを行います。
2-972883557
-83-
日が暮れて、夜が来る。
「おやすみ、後藤。」
「おやすみ、圭ちゃん。」
後藤と保田はそれぞれの部屋で床に着いた。
朝。
後藤は用意した制服を着て、黒い靴下を履き、一階へと降り、保
田とともに朝食を摂る。リビングに食器がかちゃかちゃと鳴る音
だけが響く。
「行こっか?」
朝食を摂り終え、食器を片付け終えた保田がソファに座りTVを
眺めていた後藤の肩を叩く。後藤は何も言わないで立ち上がる。
別荘の玄関から出ると、日光が後藤と保田に直射する。外気は湿
っぽく、制服のブレザーを着込んでいる後藤の身体はすぐに汗ば
み始めた。
「後藤、脱いでてもいいんだよ?」
先に玄関前のステップを降りた保田が後藤を見上げる。
「いいよ、行こう。」
後藤はステップを一気に駆け降りて、別荘の前に広がる森にある
小道に入った。
-84-
後藤と保田は別荘前からタクシーに乗り込み、墓地へと向かった。
墓地に隣接する寺に、人の塊が出来ていた。
その中に、市井の両親の姿があった。
「こんにちわ。」
保田の挨拶に合わせて、後藤は市井の両親に頭を下げる。
市井の両親の表情はおとといよりも落ち着いた感じであった。
後藤と目が合うと、市井の母親はにこりと笑った。
後藤は、真っ直ぐ見れなくなって目を離してしまう。
気づいた保田が他人わからない様に、後藤の腰を叩く。後藤は保田
に苦笑いを向けるしか出来なかった。
太陽が真上に近づき始めた頃。
納骨の時間となり、寺にいた市井の両親や親戚、そして後藤と保田
は墓地へと移動する。
じりじりと蝉がうるさい。合わせたように火をつけた線香が香を漂
わせる。
僧が御経を詠み始める。その場にいる全員が数珠を片手に手を合わ
せる。
更新。
.
交信
-85-
「後藤。」
後藤は隣の保田の肘つつきで御経が読み終わったことに気がつく。
合わせていた手を下ろして、墓石に向かって顔を上げる。市井の両
親が木箱を持って、墓石の奥に遺骨を納めていた。
後藤は心の中で市井にさよならを告げる。
納骨が終わり、市井の親戚が全員帰っていった。
「圭ちゃん、真希ちゃんは?」
寺の中で、湯飲みを片付けていた保田に市井の両親が聞く。
「いない、ですね……。」
保田はぐるりと建物の中を見回す。
墓地。
後藤は、墓の隣にあるヤカンを取り上げて、太陽光で温くなった水
を雑巾に含ませると、丁寧に市井の墓石を拭き始めた。
一通り拭いて、新しい線香に火をつける。
「これでゆっくり眠れるね……。」
後藤は墓石に向かって微笑む。
「後藤。」
保田の声に後藤は振り向く。
-86-
保田のほうを振り向いた後藤は表情がこわばる。保田の後ろに市井
の両親が立っていたからだ。
「帰るんだって。挨拶するよ……。」
保田が後藤に駆け寄る。後藤は小さく頷いて、市井の両親のほうへ
歩幅を小さくして寄り、自分の中で心の準備を済ませて、顔を上げ
る。
「私は…」
語尾が震える。やはり両親を目の前にすると、自分の言おうとして
いる言葉が酷く自分勝手なものに感じられて仕方がない。
と、その時、暖かい手が汗ばんだ後藤の手を握る。市井の母親の手
だ。驚いて顔を上げる後藤。
「紗耶香の分もうんと人生を楽しんでね。それが…償いだから。」
市井の母親の言葉は、決して嘘偽りなんてなかった。最期の一言に
もこれから後藤が背負っていかなければならない罪の意識を認識さ
せる意味合いが含まれていたからだ。
後藤は溢れる涙を必死にこらえながら首を縦に振って、市井の母親
の手を握り返す。
汗で肌に張り付くシャツ。汗ばんだ手のひら。太陽で灼けつく髪の
毛。
-87-
その日の夕方。
昼間よりも風が強く、暑さが和らいでいる。
岩場に普段着姿の後藤と石川の姿があった。
「償い……って言葉、すごく重いけど……でも、当然なんだよね。」
後藤は目の前に広がる海を見据える。
「つらい?」
隣に座っている石川が問い掛ける。後藤は首を左右に振って、
「もう、大丈夫だよ。」
「もう?」
後藤は石川の問いには答えないで笑顔を返す。
石川が困惑していると、後藤は立ち上がり夕日で染まってはいるが、
暗い海に飛び込む。
「気ぃ〜持ちぃいい〜!」
「危ないよ。」
石川は、昨日自分が後藤に言われた言葉をそっくり返す。海に入っ
た後藤は左右いっぱいに口を開いてけたけた笑っている。
次の瞬間、後藤の笑い声がはたと止む。海に入ってる後藤と岩場に
立っている石川の目が合う。
-88-
間もなくして、後藤が両手を広げる仕草をすると、石川が海へ飛び
込んだ。しゅわあ、と海水が泡を立てる。石川が飛び込んだ時に跳
ね上がった海水が後藤の頭をさらに濡らす。
後藤は立ち泳ぎで石川のほうへ寄って、手をつなぐ。二人は岩場の
ほうに寄って身体を安定させる。
少しすると、夕日が沈みかかっていた。毎日、飽きるぐらいに見て
いる光景。後藤は呟いた。
「綺麗だね。」
「うん。」
後藤は、握り合っていた手を顔まで引き上げる。石川は手のほうに
目を向けて、後藤のほうを見つめる。
二人の顔が近づく。触れ合う唇。
浮き沈みする体が岩に擦れる。
数週間後。
長かった夏休みが終わり、後藤が家に帰る日になった。
「後藤、荷物まとめた?」
保田がドアから顔を出して夕日で真っ赤になった後藤の部屋を覗く。
頷く後藤。
二人は別荘からタクシーに乗り込んで駅へと向かう。
-89-
タクシーの中。保田と後藤は後部座席に座っていた。
「最近、全然石川さんと会ってなかったんじゃない?」
「うん、まぁね。」
ぼーっと返す後藤。保田はそれ以上を聞かなかった。
後藤は石川とケンカしたわけではなかった。石川の事を嫌いになっ
たわけでもない。会うタイミングを逃していた、という感じである。
今日帰る、という事は石川に話した。来年も――これからも夏にな
ったら来るという事もである。
会っておけばよかった、と後藤は後悔をする。
「はい、お弁当。」
開けた電車の窓から保田が後藤に手渡す。一拍置いて、発車のベル
が鳴る。
「また、来年ね。」
後藤は少しだけ声を張り上げる。保田は笑顔で頷いて後藤の頭をぐ
しゃぐしゃと撫でる。がくんと大きく車体が揺れて、進行し始める。
保田の姿が見えなくなってから、後藤は窓を閉めた。窓の外に広が
る海を凝視する。視界の中に、石川らしき人物の人影を感じて身を
乗り出す。トンネルに入り、遮られる。後藤はシートに身を沈める。
-90-
一年後。
「じゃあ、行ってくるね。」
「気をつけてね、変な人の誘いに乗らないのよ、あと…」
「だから大丈夫だってば。」
相変わらずの母親の言葉に後藤は笑って言いながら家を出る。
電車に揺られて目的の駅に着く。夕日で、空の雲が鉛色に近い。
去年と全く変わっていない。後藤はタクシーを捕まえると市井の墓
がある墓地に向かう。
市井の墓石に道中で買った花を添えて手を合わせる。
「今年もあっついねぇ、市井ちゃん。」
待たせていたタクシーに乗り込み、後藤は海に向かう。適当な場所
で降りて、裸足に履いていたシューズを手に持って砂浜を歩き、岩
場に向かう。岩場のそばには古い足跡もなかった。
後藤は、最近降り続いていた雨のせいだろうと楽観しておく。
人の気配を感じて振り向くと、石川がいた。去年よりもまた大人び
ている。でも、去年と変わらない笑顔。後藤は口を開く。
「夕日、一緒に見ようか?」
「うん。」
-完-
あっさりと。
やっぱ暗いなぁ。藁
個人的には暗いの好きだから万々歳ってことにしておこう。しておいて…
だらだらしちゃったけど、長らく読んでいただいた読者に感謝。多謝。
では。
つまんね。
うい、おつかれさんでした。救われたですね。よかったよかった。
石川の死んじゃった相手は誰だったんだー。。キニナル
>>429 そういや、深く触れずに終わったな。
読者の想像におまかせってことかな?
とりあえずお疲れさん。
うむ…お疲れ
俺的に楽しんだ。俺も暗いのが好き
また、なんか書くなら適当な場所で教えて…わかりやすいトコな…。
そんで、ここは終了でいいのかい?
最初はもっとファンタジー的な話になるのかなと思っていたのだが、意外にも最後
までそういう方向に流れていく事なく展開してるんやね。
個人的には市井の死体が出てきたとこがピーク。
436 :
名無し:2001/03/26(月) 02:55
なんじゃここ
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@`@`@`
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ここって保全する必要あるのかな…
あげ