1 :
RIFF:
2 :
あkldfsldかjf:2000/10/29(日) 03:19
OH!これを上げないと俺がモー娘板に来た意味がない。
3 :
RIFF:2000/10/29(日) 11:57
経過報告13
六月十二日
私とノノジャーノンは今日、国際心理学会で披露された。私達は関心の的になった。田原教
授と桜井博士は、私達のことが自慢そうな様子だった。
最初うけていた印象とは反対に、私は田原教授がちっとも天才とは思えなくなってきた。た
しかに頭は良いに違いないが、その頭脳も、自己猜疑のもやの下でもがいているようだ。彼は
みんなに天才だと思われたいのだ。そして自分が巨人のあいだで竹馬に乗って歩きまわってい
るのがばれるのではないかと恐れているのだ。
これに比べれば桜井博士のほうは、まだましな方だと言えよう。しかし彼の知識範囲は、あ
まりにも限られているように私は思う。彼は伝統にのっとって、せまい専門教育をうけてきた
のだ。彼の読める外国語が英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語しかないのを知って、私
は驚いてしまった。
彼らは天才のふりをしていたのだ。手探りで仕事をしている凡人にすぎない。彼らだけでは
なく私が知っている人間はすべて、見かけ倒しだった。
世界中から集まった権威であるはずの彼らの議論を聞いていても私には不毛に思えてしかた
なかった。
このことを田原教授の下で研究をしている学生の一人に聞いてみた。
「つまりきみは長い道程を急ぎすぎたんだよ」と彼は言った。「きみはいまとびきりの頭脳を
もち、はかりしれない知能と、大方の人間が一生かかって吸収するよりもたくさんの知識を得
た。だがきみはアンバランスだ。きみは物事を知っている。物事が見える。しかし理解力とか
寛容とかいうものが未発育のままなんだよ。きみは彼らをいかさま師だというが、あの二人が
いつ、自分達が完璧な超人だと言った?彼らは凡人。きみは天才だ。」
私は天才なのか?そうは思わない。教育学の婉曲語法を借りれば、私は特殊なのである。私
は生涯を通じて特殊であったというわけだ。
学ぶという事の奇妙さ。奥深く進めば進むほど、存在すら知らなかったものが見えてくる。
4 :
RIFF:2000/10/29(日) 11:57
それから今回の研究発表の中で田原教授が私が知らなかったことを明らかにした。
知能の極点においてノノジャーノンの行動が変則的になったというのである。彼の報告によ
ればノノジャーノンは、あるときは作業を行うことを拒否し――明らかに空腹なときでも――
またときには、問題を解いても、食物を摂ろうとはせず、籠に体をぶつけるのだという。
この情報が私に隠されていたということはすぐにわかった。その理由を推測して嫌悪の情に
かられた。
私には思ったほどの時間はないのかもしれない・・・・・・
あげてみます。
6 :
名無し:2000/10/30(月) 03:10
名作集でも2chでも読んでいたんだけど。
おれ、好きだよ、これ。
でも、ほら名作集とかだと、ヤグチューとかいちごま、いしよしみたいに
基本的に娘。をいい人というので書いてあるのはレスありそうだけど
ここの中澤とか矢口みたいな部分だしちゃうと敬遠されちゃうかもね。
頑張ってねー
>>6 どうやら、そういう部分もありそうですね・・・名作集の雰囲気じゃないのかも知れません。
(その辺のところは考えずに移転してしまいました。)
レスありがとうございました。頑張ります。
8 :
RIFF:2000/10/30(月) 21:09
経過報告14
六月二十三日
今日のことだった。ノノジャーノンが私に噛みついたのだ。私は今日、実験室へノノジャー
ノンに会いにいった。ところが、籠からとりだしてあげた私の手に、彼は噛みついたのだ。私
はもとの籠にもどして、しばらく様子を見守っていた。ノノジャーノンはいつになく機嫌が悪
く、険悪な気分のようだった。実験動物の係りを受け持っている学生がノノジャーノンは変わ
ってきているといった。前よりも非協力的で、迷路を走ることをこばみ、一般の刺激にたいす
る反応も減退している。食事もずっと摂っていないという。これはどういうことを意味するの
か。誰もが動揺している。
9 :
RIFF:2000/10/30(月) 21:10
六月二十五日
ノノジャーノンは餌をあたえられてはいるが、もう迷路を走ろうとはしない。みんなはノノ
ジャーノンを私になぞらえている。ある意味では、私達はおなじ新種なのだ。みんなはノノジ
ャーノンの振舞いは、ことさら私に関係はないというふりをしている。だがしかし、この実験
に使用された他の動物たちも、奇妙な振舞いを示している事実は、隠し難いものなのだ。
桜井博士と田原教授は、もう私に実験室へ来ないようにいった。彼らの考えている事はわか
るが、私には受け入れがたい。私はやはり計画通りに彼らの研究を推進する役目をつとめるつ
もりである。科学者としての彼らにそれ相当の敬意をはらいながら。しかし彼らの限界は百も
承知している。もしなんらかの解答があるものなら、この私の手で探し出したい。こうなると
にわかに、時間がきわめて貴重なものに思われてきた。
六月二十九日
私は自分だけの実験室を提供され、研究をすすめる許可を得た。実験室に簡易寝台を運んで
きた。
六月三十一日
桜井博士は、私が働きすぎると考えている。田原教授は私が、一生かかる研究と思考をわず
か数週間のうちに圧縮しようとしているという。休息が必要だとは自分でもわかっているが、
なにか内部のやむにやまれぬものに駆りたてられているのだ。ノノジャーノンの急激な退化の
原因を、なんとしてもつきとめねばならない。私にも同様の現象が起こるものなのか、起こる
とすればいつか、それを探り出さなければならないのだ。
七月四日
桜井博士あての書簡(写し)
同封にて私の報告『ノノジャーノン効果。または増進せる知能の構造的ならびに機能的研究』
をお送りいたします。それをお読みの上、公に発表していただきたいのが、私の希望であります。
ごらんのとおり、私の実験は完成しました。私はこの報告中に、私の発見した全ての公式を
含め、また補遺として、その数学的分析も添付してあります。むろんこれらが実際的立証を待
つものであったことはいうまでもありません。
あなたと田原教授のために重要だと考えて(私の為であることは勿論)、私は結果に誤りが
あってはならぬと、再三再四、検討をくわえました。遺憾ながら、結果はすべからざるもので
した。とはいえここに、人間知能の作用および人間知能の人工的増進に関する法則に一片の知
識を付け加えることができたということは、科学の為に喜ぶべき業績であると考える次第です。
怱々
辻 希美 拝
報告書添付
七月五日
あまり感情に流されてはいけない。私の実験でわかったいろいろな事実や結果は明瞭だ。そ
して私自身の急速な知能上昇の事実も、桜井博士、田原教授の二人の展開した外科手術による
知能の三倍化が、人間知能の増進にたいする実際的応用の可能性皆無かほとんど皆無に等しい
という事実を、覆い隠す事は出来ないのだ。
ノノジャーノンに関する記録やデータを検討してみると、ノノジャーノンは肉体的には未だ
に幼年期にあるにも関わらず、知能的にはすでに老化の兆しをみせていることがわかる。運動
能力は損われ、腺分泌にも全体的な退化がみられるし、統合作用の衰弱も刻一刻と速さを加え
ている。
また一方、進行性健忘症のつよい徴候もみられる。
私の報告にも記してあるように、こうした肉体的ならびに精神的な症候群は、私の公式を適
用すれば、統計的に重要な結果を伴って予知することができるのだ。
私とノノジャーノンがうけたところの外科的刺激は、結果として、あらゆる精神過程を激化
し、促進することになったのだ。
私があえて『ノノジャーノン効果』と名付けたこの意想外な発展は、知的機能促進の論理的
な促進段階にほかならないのだ。ここに立証をみた諸仮説を一言にしていえば、次の様になる。
すなわち、人為的に増進された知能は、その増進に要した時間に正比例して、同じ速度で退
化していく。
まだ書く能力が残っている間に、私の考えた事を、この経過報告に記しておくとしよう。し
かしながら、いろんな徴候からみると、私の知能退化は非常に急速なものであるらしい。
感情の不安定と物忘れとに、私はすでに気付きはじめている。これは最初の燃えつき症候群
である。
七月十日
退化は進行している。私は放心状態をつづけている。昨日ノノジャーノンが死んだ。明け方
四時半、川べりを歩きまわって実験室に戻ってみると死んでいた。――体を横にして、檻の隅
に伸びていた。まるで眠りながら走っているようだった。
解剖の所見は私の予測が正しかったことを示している。ノノジャーノンの脳は正常の脳に比
し重量が減少し、脳回の全般的萎縮と脳溝の開大が見られた。
同じ事が現在私にも起こりつつあることを考えると恐ろしい。
ノノジャーノンの亡骸を小さな金属の容器に入れ、家へ持ち帰った。彼を焼却炉に投げ込ま
せるのは忍びない。ゆうべ夜が更けてから彼を裏庭に埋めた。墓に野の花を供えながら私は泣
いた。
七月十五日
桜井博士が、またわたしに会いにきた。わたしはドアをあけず、帰ってくれるようにいった
。一人にしておいて欲しかったのだ。わたしはわずかなことにもびくつき、神経質になってき
ている。自殺の想念をふりはらうのがむずかしい。こうした内省の記録が、いかに重要なもの
であるかを、たえず自分にいいきかせている。
わずか一、二ヶ月前に読んで、面白いと思った本を、もう一度ひらいてみて、ぜんぜん憶え
ていないと知ったときの気持ちは、なんとも奇態なものだ。
なにかにすがりつかねば、どうしてもやりきれない。なにかわたしが、いままで学んだもの
に。ああ、神さま、おねがいです。なにもかも奪い去らないでください。
七月十九日
わたしはときどき夜になると散歩にでかけます。昨夜などは、自分のすんでいる住所もわか
らなくなってしまいました。警官がわたしを連れてかえってくれました。ふしぎなことですが
ずっと以前にこれとそっくりおなじ状態に自分がおかれたような気がします。
七月二十一日
どうして思い出せないのでしょう。なんとかして闘わなければなりません。わたしがだれな
のか、どこにいるのかもわからずに、何日もベッドで寝たっきりでいます。すると突然、稲妻
のように、すべてがぱっとよみがえるのです。健忘症にみられる心身耗弱状態です。老衰の徴
候――第二の幼年期です。わたしはそれが訪れるのを眺めることができるのです。じつに残酷
なばかりに論理的です。わたしはあまりにも多くを、あまりにも速やかに学んできました。こ
んどはわたしの頭脳が、急激に退化していくのです。わたしはそんなことになりたくない。闘
わねばならない。昔の記憶・・・ぽかんとした表情、まのぬけた笑い、嘲笑する人たち。いや
だ――おねがいです――二度とあんなにはなりたくない・・・・・・
七月二十三日
わたしは最近まなんだことがらを忘れはじめました。
わたしは『ノノジャーノン効果』の報告書を読みかえしてみて、これは別な人間が書いたも
のではないかという、はなはだ奇妙な印象をうけました。わたしには理解さえできない部分が
あるのです。
運動機能に障害がおこってきた。わたしはいつもなにかに蹴つまずいている。ワープロを使
うことが、しだいに困難になってきた。
七月二十三日
ワープロの使用をまるっきりやめてしまったです。統合作用が思わしくないのです。だんだ
んと動きがにぶくなるのが感じられるのです。
七月三十日
1週間ぶりで、またペンをとることにしました。しかし、指のあいだから砂がもれるように
、書くことが思いどおりにならない。わたしの手もとにある本は、いまのわたしには難しすぎ
るものばかりです。わずか二、三週間前には、ちゃんと読んで理解できたのに。
わたしの身に起こっていることを、だれかに知ってもらうためには、ぜひともこの報告をつ
づけなければならないのだと、たえず自分にいいきかせています。でも言葉をかんがえたり、
漢字を思いだしたりすることが、だんだん困難になってきました。ごく簡単な言葉でも、いち
いち辞書をひかなくてはならないのです。いらいらいらいらします。
桜井博士は、ほとんど毎日やってくるのですが、わたしはだれにも会わないし、だれとも話
をしないのれすといったです。彼は罪を感じているようです。みんなそうです。でもわたしは
、だれも責めようとは思わないです。なにが起こるかはわかっています。でも残念な気持ちも
あります。
八月十日
書くことはむずかしいれす。ぜんぶの言葉を字引で見つけなくちゃならないのは大変でいつ
も疲れてしまうれす。
そのうち名案を思いついたれす。長くてむずかしい言葉のかわりにやさしい言葉を使うよう
にすればいいのれす。これで時間がはぶけます。わたしは一週カンに一回はノノジャーノンの
おハカに花束をささげているのれす。おとうさんはそれを見てかなしそうな顔をしたのれ、お
とうさんもノノジャーノンがしんでかなしかったのでしょう。
八月二十五日
ののは前の報告書をみていたのれすがおかしなことがあるものれす。自分の書いたものがま
るっきり読めないのれす。いくつかわかることばもあるのれすがぜんたいの意味はちっともわ
かりません。
市井先生が戸口までやってきたのれすがののは帰ってくらさい合いたくないのれすといった
れす。先生が泣いてののも泣いたれすがののはどうしても入れたくなかったわけはののは笑わ
れたくなかったかられす。ののはあんたなんかもうきらいれすといったれす。そしてもう二度
と利口になんかなりたくないれすといったれす。それはウソれす。ののは先生が好きれすし利
口にもなりたいのれすが先生をかえらせるためにそういったのれす。
おねがいれす・・・どうか読み書きだけは忘れさせないれくらさい・・・・・
後はラストだけです。
もう出来ているのでここまで読んでくれた人は教えてください。
この鯖にきてからはじめて読んだんですがなんかいいっすね。
俺の好きな雰囲気です。
25 :
名無し娘。:2000/10/31(火) 01:51
この日曜日には原作を読み返しました。
RIFFさんのノノジャーノンがUPされなかったら、当面読み返す予定もありませんでした。
で、原作とノノ比べると、登場人物の顔が浮かぶぶんだけノノの方がよいですね。
(前にも同様の感想を書きましたが)
終わってから一気に読むよ… ガンバレsage
レスありがとうございます。では、ラストの分です。
八月二十八日
ののわ今日ばかなことをやってしまったれす。もう前みたいに市井先生のキョウ室にいるん
じゃないことを忘れてしまったのれす。ののわはいっていって前のようにキョウ室のうしろの
席にすわると市井先生がへんな顔をしてののをみて辻さんといったれす。
ののわこんにちわ先生きょうわ勉きょしにきたのれすがいままで使ていた本をなくしてしま
いましたといったれす。
先生わ泣きだして教室から出ていてしまったのれみんなはののを見たのれすがほとんどのひ
とがのののくらすにいたひとでわなかたれす。
そのとき突ぜんしじつのことやののの頭がよくなったことをおもいだしたのれありゃののわ
またつじってるをやっちゃったのれすといったれす。先生がもどてくる前に教室を出たれす。
ああいうことわ二どとやりたくないれす。市井先生にのののことをかわいそーとおもわれた
くない。ののはののがむかし天さいでいまわ本を読むこともできなくて字もうまくかけないっ
てことをだれもしらないところにいきたいれす。
ののをだれもしらないところにいったらそしたらののは本を買っていしょけんめいれん習し
てしじつをするまえのののよりもりこうになりたいれす。
いちいせんせいもしこれを読んでもののをかわいそーとおもわないでくらさい。ののわりこ
うになるための二度目のきかいをあたえてもらたことをうれしくおもていますなぜかというと
この世かいにあるなんてしらなかったたくさんのこともおぼいたし、ほんのちょとのあいだだ
けれどそれが見れてよかたとおもているのれす。
どうしてまたばかになてしまたかののがなにかわりいことをしたかわからない。きっとのの
がいしょけんめやらなかったからかもしれない。でもうんといしょけんめにべんきょーすれば
もうちょとりこーになって言葉もみなわかるよおになるれしょうね。
そういうわけれすからののわりこうになるようにがんばるれす。いろんなことをしることや
りこうになることわいいことれす。いますぐまたりこーになりたいな。すわって一日じう本が
読めたらいいな。
さよならいちいせんせいさくらいはかせみなさん・・・・・・
ついしん。どーかついでがあったらうらにわのノノジャーノンのおはかに花束をそなえてやてください。
( ´D`) < これで終わりれす。みなさん読んでくれてどうもありがとうございましたれす。
感想とか、ここがわかり難かったとか、ここをこうすればよかったとか教えてくらさい。
お願いします。てへてへ。
30 :
25:2000/10/31(火) 08:10
ついにラストまで行きましたね。
やっぱ、これ泣けるわ。拍手。
追伸
28の手前で、1つ補完を書いてもらえませんか。
バカに戻ってから、元の雇い主の所に戻って、親切にされたといいながらも、
「おまえ、頭よくなったんだってな」ってからかわれるくだり(相当うろおぼえです
)
を、つんくやモ。で書いてもらえませんか?
31 :
ののこっこ:2000/10/31(火) 08:13
β
(´D`)< きたちょうせんまんせー
ノノ
(ノ ノ
儿
>>30 そうなんですよ。ラスト前でもう一度、モー娘。をからませなくちゃ物語としてダメですよね。
そう思ったんですが、辻が脱退してから娘。と接点を持たせる事が出来なかったので(力不足)・・・。
申し訳ございません。一応、考えてみます。補完部分。
面白かったです。
お疲れ様。
34 :
>RIFFさん:2000/10/31(火) 22:45
30です。
補完しないと「物語としてダメ」なんてこと全然ないです。
このままだって、小説ものの中では久々の大傑作ですよ。
ホントにご苦労様でした。
(補完が考えつかれたのなら「なお嬉しい」ってことですので・・・)
>>33 ありがとうございます。読んでくれて嬉しいです。
>>34 身に余るお言葉、恐縮です・・・・。まあ原作の力ですけどね。
補完部は未だ考え中です・・・・ひらめいたら書きますね。
36 :
名無し娘。:2000/10/31(火) 23:50
おお、完成したか。
頑張ったね、
>>36 はい。ありがとうございます。
読んでいただいて感想などもらえると嬉しいです。
38 :
そば:2000/11/01(水) 01:09
いいっすねぇーー。泣けました。
恥ずかしいのでsageます。