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132続きを書いてみました
その声は夏の風にまぎれて消えてしまいそうだった。ああ。
 ほかの誰かがこの状況を見たらどうおもうだろうか。そんな悩ましい思いも悪くない。
それでもこんな俺の隣にあの石川がいる、それだけは誰にも否定できない事実なのだ。
「少し照れちゃうね」
 そういってはにかむ彼女の顔を見ていたら、「いとおしい」その言葉の意味が分かる気がする。
そして不意に彼女を抱きしめたい衝動に駆られた。もうこの瞬間に地球がなくなったってかまわない。
誰に見られたっていいさ。そうおもった。そして。

 でもやっぱり出来なかった。

 それにしても女の子の髪の薫りはどうして男の心を締め付けるのか。石川の髪から漂うシャンプーの
香りはこの夏空そのものかもしれない。明るくて、清らかで、少しだけ妖艶な感じで。そうだ。抱きし
めたかったのはあのシャンプーの、そして石川の香りのせいだったんだ。そうに決まっている。彼女が
好きとか嫌いとかではなくて。意気地なしの俺はそう言い訳を考えるのが精一杯だった。