LIFE IS KICK

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49吉澤・ソーパランチャイ
「こんちわ〜。」
練習風景を眺めていた吉澤の真横を見覚えのある顔が通り過ぎた。
吉澤の事を全く気に留める様子も見せず
派手な金髪の小柄な少女は手にした縄跳びを飛び始めた。
(なんか見た事あるな・・)
この少女に会った事がある。
吉澤はそう感じていた。
少女は小柄だが上半身はTシャツごしでもわかるくらい脂肪のとれた無駄のない体つきをしている。
下半身、特にふくらはぎは遠めに座る吉澤にもわかるくらい筋肉質で走り込んでいる事が伺える。
(プロか?)
吉澤の視線はその少女に釘付けになった。
およそ15分ほど縄跳びをこなしたその少女は手にグローブ、
足にスネ当てをつけてリングに上がり、
すぐ傍にいた練習生らしい者に声をかけた。
「ちょっとさぁ、悪いんだけどスパーの相手してくれない?」
一応16オンスの重いグローブをはめているようだが、ヘッドギアはしない。
「感覚つかみたいんだよね。」
「試合前だからさ、会長に言われる量だけじゃ足りないんだよね〜。」
そう言ってその少女はけらけら笑った。
吉澤は少女の声を聞いて彼女が誰だか思い出した。
(矢口・・か?)