LIFE IS KICK

このエントリーをはてなブックマークに追加
39吉澤・ソーパランチャイ
『もう1度ジムへ戻ってこない?』
石川と話をしてから1週間の間、吉澤は何かにつけて苛立つようになっていた。
今までの日常に感じていたような空虚な感覚ではない、
押さえきれない何かがあの日以来、吉澤の胸の中に渦巻き日ごとに大きさを増す。
バイトを終え、いつも置いている自転車置き場に原付を取りに向かう途中
前から柄の悪そうな2人の男が歩いてきた。
その2人とすれ違った時、吉澤の苛立ちは頂点に達した。
「おう、姉ちゃん、ぶつかってんだけど。」
ほんの一瞬肩が触れただけだったのだが、そのうちの1人が吉澤の背中ごしに毒づいてきた。
吉澤は自分の背中の方へ横顔を向け、片目でその2人を睨みつけるとただ一言
「・・うるせぇ。」とだけ言った。
初めはただからかうつもりで絡んできた男たちは
吉澤の反応に一瞬呆気にとられたが、すぐに周りを取り囲み凄みをきかせてきた。
「あ?よく聞こえなかったよ。ここじゃ人が多くて聞き取りにくい。」
「ちょっと静かに話せるとこ行かねぇ?」
柄の悪い原色のシャツに身を包んだ男が吉澤にこっちへ来い。と顎で合図した。
(うっとうしい奴らだな、女相手に2人がかり?かっこいいね・・)
吉澤は言われるまま2人について行くことにした。