LIFE IS KICK

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33吉澤・ソーパランチャイ
かつて吉澤ひとみはキックボクシングの若手ホープとして日本上位ランカーにまで上りつめた選手だった、
当時の吉澤はその攻撃的なスタイルと相手をKOする際の圧倒的な威圧感で観客を魅了する事ができる
まさに”客を呼べる選手”だった。
美形と呼ぶにふさわしい繊細な外観と正反対な恐れを知らないファイトスタイルは対戦相手を怯えさせた。
所属ジムでも、人気もあり1戦ごとに成長していく吉澤は売りだし中の選手だった。
しかし、日本タイトルに挑戦する前に組まれた調整もかねた前哨戦。
タイトル奪取への弾みにするはずだったその試合で、吉澤は偶発的にもらった一撃に沈んだ。
ようやく見つけた心底打ち込める道で、順調に歩み始めた矢先の出来事だった。
吉澤はそれが初黒星だった。
負けるはずのない相手に負けた事がそれ以後なんとなしに吉澤の足をジムから遠のかせた。
最初はしばらく休んだら顔を出そう。
そう思っていたが連絡もなしに休みを続けるうちに吉澤は戻る意志を完全に無くした。
(あんなに頑張っていたのに報われない。なんで?こんな続けても意味なんかない。)
いつからかそう考えるようになってしまった。