飯田圭織がそばにいた生活

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16かおりんご
「おはよう」

床にうずくまっていた僕はその声で目が覚めた。

圭織は、僕の部屋にいた。

「汚い部屋だろう?」
「そんなことないよ。おもちゃ箱みたいで、かわいいよ」

「あのさ、僕のこと……どう思う?」
「大好きよ。当たり前じゃない。私はあなたの物なんだから」

僕は1日に3、4回こんなことを聞く。僕の記憶はとても曖昧
で目を覚ますたびに、自分のこと以外はほとんど忘れてしまって
いる。しかし、圭織やモー娘。のことはおぼえている。

「ごめんなさい私、そろそろ仕事に行かなくちゃならないの」
「え、もういっちゃうの」

話を始めてまだ数分しか経っていないというのに。

「今日は、大事なレコーディングがある日なの」
「僕はそんなにつまらないかい」
「そんなことないけど」
「ふん、芸能人気取りしやがって。お前はどうせ、モー娘。の中でも
 一番人気がないブスなんだろ」
「……。さようなら」
「おい、待てよ」

僕は決心していた。今こそ、ずっと計画していたことを実行する時だ。
記憶の中で忘れていなかったあることを。


=つづく=