世にも奇妙な娘達

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55最新型の恋
近頃、出始めた携帯電話に『人工知能入り携帯電話』と、いうのがある。
人と同じような感情を持った、最先端の人工知能を入れる事により、
コミュニケーションを売りにした商品だ。
後藤は、携帯をそれに買い換えることにした。
「残念ながら、今、品を切らしておりまして、
男性の人工知能の物しか、お渡しできないのですが、
よろしいでしょうか。」
後藤は『人工知能入り』という、言葉に惹かれていたので、
男性であろうが、女性であろうが構わなかった。

後藤が手にした携帯電話の製造記号は『I10−O160』
それに後藤は目を付け、『イトウ・オウイチロウ』
略して『いっちゃん』と、呼ぶことにした、ベタである。
こういう様に、身近な物に愛称を付けることなどよくあることだ。
人工知能というように、何か『生きてる感』があれば尚のことである。
メンバーの中で、先にこの携帯を持っていた、飯田もそうだったように。
56最新型の恋 : 2001/02/16(金) 00:34 ID:5ipu8vqY
こう愛称が付くとなると、情が湧いてくるものだ。
コミュニケーション目的で作られた、人に近い感情を持った携帯電話。
果たしてこれが後藤に必要だったのか?
友達もそこそこ居て、家族も円満。
仕事仲間とも、そう仲が悪い訳でもない。
それに加えてのコミュニケーションが必要だったのだろうか。
新しい物好きの性で買った後藤だったが。
その携帯への情は、徐々に増していった。
それは、芸能人であるという立場が生み出してしまった現状。
男性と話すという機会は弟と、同級生との簡単なやりとり、
それと仕事上の会話ぐらいしかない。
「大丈夫っ、いつでも僕がついてるよ。」
後藤は、優しく話し掛けてくるこの携帯電話に
恋をしてしまったのかもしれない。
後藤はそれではいけないと思っていた。
「そう、機械なんだもん。」
57最新型の恋 : 2001/02/16(金) 00:42 ID:5ipu8vqY
私の携帯電話が鳴る、取ろうとすると切れる。
1コールで切るなら解かるし、出るのが遅いのであるならば納得できる。
だが、通話ボタンを押そうとすると切れる。今週に入って毎日だ。
悪戯かと思ったけど、毎回違う人間で、
掛け返すと、私が切ったと言い張るのだ。

「なんで僕がいるのに他に人が必要なの?」
いっちゃんはこう聞いてきた。
「…だから。せっかく僕が電話を切ってるのに、なんで掛け返すの?
僕が居ればそれで十分でしょ。なのにマキちゃんは…」
(…酷い…人に掛かってきた電話を勝手に切るなんて…。)
「ひどいよ…いっちゃん………ひどすぎるよ!」
後藤は奴に怒りをあらわにする余り、
いつも、奴と話すときと違い、まるで電話を掛けている時の様に、
耳をスピーカーに当て、そう言い放った。

その時だ。
「パカァーーーーーン」
高い爆発音がした…。
58最新型の恋 : 2001/02/16(金) 00:45 ID:5ipu8vqY
「警部補、これは殺人ですね。」
「何故だ?どう見ても心臓発作だろ。」
「それにしてもガイシャが若すぎます。それに、
携帯電話を握って死んでいたのも気になります。
最近、アメリカで携帯電話から不意打ち的に、大きな音を出して、
人をショック死させた事件があったハズです。まぁネットによる情報ですが…」
「そんな事ができるのか…」
警部補は、後藤の死体を見ながら。
自分の手に持っている最新型の携帯電話に感心していた。

〜了〜

「男の独占欲は機械になっても変わらないモノなんでしょうかねぇ。」