世にも奇妙な娘達

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48砂嵐の結末
矢口はその日、大ポカをした。
「やっばーい!野球中継のこと考えてなかった。」
ビデオの録画予約のことだ。
前半30分間、野球の試合が録画してある
ビデオテープを観て、はじめて気付いた。
しかし、矢口はこの時、野球中継も途中までしか
映っていないことなど、気にも留めなかった。

その二日後、久しぶりのオフの日。
映画を観ることにした。
事件が起こって、犯人がいて、というようなサスペンスもの。
普通に観て、普通に展開を楽しみ…
普通に最後の30分間寝てしまった。
「えっ!あっ、ええっ!終わってんじゃん。」
当然悔しい、自分のした事が原因とはいえ非常に悔しい。
それが直接、自分のせいで無い事に、矢口はまだ気付いていない。
49砂嵐の結末 : 2001/02/14(水) 23:23 ID:ivEZsncg
それに気付いたのは、レンタルビデオを借りたときだ。
借りたビデオが壊れていたのだ。後半が砂嵐だった。
ビデオ店に文句を言いに行ったが、目の前でビデオを再生され、
2時間全部、観せてもらった。いや、見せつけられた。
帰ってみて、ビデオデッキがオカシイのかといろいろ再生してみた。
しかし、ビデオデッキは、普通に作動した、ある一点以外は普通に。
いろいろ、ビデオをとっかえひっかえ再生してる内に、
ドラマの結末・スポーツの結果・クイズ番組の最終問題、
この全ての映像に差し掛かると、砂嵐になった。
これで矢口はうすうすだが、感づいた。
ビデオ録画・映画・レンタルビデオ…
「結末がわからなく…なってるの…私。」
微かに人生に絶望を感じた、だが、じきにそれは治るものだと信じた。
信じていた…。
50砂嵐の結末 : 2001/02/14(水) 23:24 ID:ivEZsncg
信じていた…のだが。
だんだんその症状は、酷くなっていった。
日常の生活にも支障をきたしていくようになっていったのだ。
例えば、食事時の談話。
オチのありそうな話になると途端に耳の聞こえが悪くなる。
雑誌のいろんな記事、所々がぼやけて見える。

「なんかの病気なんだよきっと、うん!そうだよきっと。」
病院へ行ってみた。だが…
「あなたの症状は…………………………なので……………です。」
聞こえない。医者の口元がぼやけて見える。
薬などは出なかった…。
「多分、新しい、今治すことの出来ない病気なんだよ。」
自分を勇気づける矢口だったが…。
51砂嵐の結末 : 2001/02/14(水) 23:25 ID:ivEZsncg
「もうだめだよ…。」症状は最悪になった。
とうとう、矢口は自殺を決める。
洗面器に水を張り……手に剃刀…………………そして薄れる意識……
…………………………………………………
………起きる矢口、………「ええっ!生きて…る?」
あるはずの手首の傷が無い。

今の矢口に『自殺』と言う人生の結末は、
ビデオに録画されたドラマの結末と同じように、
見ることは出来なくなっていた。

〜了〜