世にも奇妙な娘達

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「お疲れ」
「じゃあねよっすぃー、あ、結局今日も来なかったね。
 3日も連絡がつかないらしいし・・・」
「そうだね・・・・何処いったんだろうね」
そう言うと私は足早に今まで居た楽屋を後にする。
いつもは皆と一緒に帰宅するんだけど、最近は違う。
急いで通る橋の下の川は、白い泡を上げている。
家にはあの人が待ってるんだ・・・いや、待たせてるんだ。
焦る事はない。
だって彼女はそこから逃げられないのだから。
これからも、永遠に私の物。
247: 2001/04/17(火) 23:58 ID:oKmoP7C2
ある日、電気屋へ冷凍庫を買いにいった。
街頭のテレビではあの人の失踪が騒がれていたけれど、そんな事は私にはどうでもいい。
だって、これで永遠に離れる事はないのだもの。
今日は家族が誰もいない。その隙を狙ったのだから当たり前だ。
電気屋に運ばせた冷凍庫を私の部屋まで運んでもらった。
女の子の部屋に冷凍庫なんか運び込むのだから、
不思議そうな顔をしていたが、わざわざ客に用途を質問する訳もない。
私は、電気屋が帰ったことを確認すると、押し入れを開けた。
彼女はとても綺麗でまだ生きているかのようだ。
いつまでもこうして見ていたい。
しかし、このままでは腐ってしまう。
私は、小柄な彼女を押入れから抱き、ベッドに寝かせた。
空いたスペースに冷凍庫を入れ、プラグを刺した。
鈍い動作音がし始め、庫内を冷やし始める。これでも一番音の小さい物を買った。
完全に冷えるまで私は、彼女の準備を始めた。
こんな寒い中に薄着で閉じ込めたら、可哀想だ・・・・。
彼女は深い眠りについているので、私が着させてあげなければいけない。
オーバーやマフラー、毛糸の帽子などとにかく着込ませる。
やっぱり、彼女は可愛い。とても18歳には見えない。
まあ、年齢なんか深い眠りにつけば何の関係も無いんだから・・・・・。
248: 2001/04/17(火) 23:59 ID:oKmoP7C2
「そろそろ冷えたかな」
何故そんな事を言ったのかは解らない。
とにかく、私は冷凍庫のドアを開ける・・・中はとても冷えていた。
私は、彼女を抱えるとその中へ優しく、優しく座らせた。
「ふぅ・・・・・・・・・・」
疲れがどっと押し寄せてきた。とにかく、これで私のやるべき事は終わった。
冷凍庫の戸を閉めようとしたとき、私は思い出した。
「あ、一人じゃ寂しいだろうな・・・・・」
部屋にあったプーさんの縫いぐるみを、彼女に抱えさせてあげた。
「元々、あなたの物なんですからね」
249: 2001/04/18(水) 00:02 ID:dQkoEHyk
それから3年ほどたった。
メンバーは変われど、未だにモーニング娘。は存在していた。
「お疲れ、今日はいつもと違って帰るの早いんだね」
「あ、ちょっと用事が有るんだよ。じゃあね梨華ちゃん」
今日は、なぜかあの人の顔が無性に見たくなってきた。
毎日、見ているはずなのに、何故なんだろう。
私は歩く足を早めた。相変わらず、汚い川は泡を吐きつづけている。
部屋に入るとすぐ、荷物をベッドに投げて押入れのふすまを開く。
中には、青い冷凍庫。その扉を開く。
「ただいま。今帰ってきたんですよ」
氷の精。
触ると、脆く崩れそう・・・。
でも、目を閉じている顔はとてもやさしくて、私を包んでくれそう。
「いつ見ても綺麗ですね・・・・・矢口さん」