世にも奇妙な娘達

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217君の為なら僕は、死ねる
ある日、僕は矢口さんに恋をした。
思いきって告白してみると、意外にもあっさりとOKをもらった。
そうして僕らは付き合い始めた。


付き合いだして数日。
矢口さんは急にこんな事を訊いてきた。

「ねぇ、私の為に死ねる?」

僕にはその時、何故そんな事を訊いてきたのかわからなかった。
しかし矢口さんを愛していたのは事実だし、「死ねない」と答える理由もなかった。
僕は少し照れながら答えた。

「君の為なら僕は、死ねる」

矢口さんは可愛らしい笑顔を浮かべていた。

その夜、僕らは結ばれた。
218君の為なら僕は、死ねる : 2001/04/08(日) 04:06 ID:iIx.g.Yk
朝…二人の時間。僕はただ天井を見つめていた。
横には矢口さんが眠っている…その幸せを噛み締めながら。

その可愛い寝顔を見つめていると矢口さんは急に目を開ける。

「私の為に死ねる?」

またこの質問だ。

「…ああ」

「ちゃんと『君の為なら僕は死ねる』って言って」

「…『君の為なら僕は死ねる』…これでいい?」

「うん!ありがと!…大好きだよ!…じゃあゴハン作るね」

矢口さんは笑顔を浮かべてベッドを下りた。
219君の為なら僕は、死ねる : 2001/04/08(日) 04:07 ID:iIx.g.Yk
矢口さんはキッチンに立ちながら言う。

「私ね、独占欲が強いんだ…その…人を愛したら私だけの物にしたくなるの」

「ふぅん…」

「だからね、私だけの物になって」

矢口さんはそう言いながら振り返り、僕の方へ駆け出してくる。
そして僕と矢口さんの体が接触する。

その瞬間僕の全身から力が抜けた。腹のあたりが…熱い。
僕の体から何かが飛び出ている。包丁の柄の部分に見えるが、そんな事はどうでもいい。
矢口さんが何か喋っている。

「アナタはさあ…私の為に死んでくれるんだよね…それだけ愛してくれてるんだよね。
 私もアナタの事が大好き。愛してる。だから…私だけの物になってくれるんだよね。
 私の為なら死んでくれるんだよね?」

そう。僕は君を愛していた。君も僕を愛していた。
それでいいじゃないか。
今なら照れずに何度でも言える。

「君の為なら僕は、死ねる」

薄れゆく意識の中、僕はこの言葉を繰り返していた。

矢口さんは狂気といえるほどの笑顔を浮かべて僕を見つめていた。〜完〜