世にも奇妙な娘達

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2保田の休日
「いかがですか?充分お楽しみいただけましたか?」
「ええ、勿論」
「トップアイドルであるモーニング娘。のあなたがキ○ィちゃんのファンとは、我々社員
 も鼻高々ですよ。」

太陽が傾きかけたサ○リオランド。
保田は、この日ほど芸能人に、モーニング娘。になれたことを感謝したことはなかった。
趣味で集めていたキ○ィちゃんグッズ。そのことがサ○リオの社長に伝わり、このサ○
リオランドに招待されたのだ。
 「さあ、今日は特別です。あなたにとっておきのプレゼントがあるんです」
案内を努めるその若い社員は、にこやかに微笑んだ。
「え?まだ何かあるんですか?」
既に保田の両手には持ちきれない程のグッズでいっぱいだ。
「本物のキ○ィちゃんに会わせてあげますよ」
3保田の休日 : 2001/02/09(金) 21:25 ID:bf6gA2mw
「本物?」
一瞬、保田は男の言っている意味が解らなかった。
どういうこと?着ぐるみとなら、さっき一緒に写真撮ったけど……。
今一つ要領を得ないまま、保田は男の案内するランド内のオフィスのある建物の地下に
降りて行く
「いいですか?これは絶対内緒ですよ」
ウィンクする男に生返事をしながら頷くと、エレベータが停止した。
扉が開くと、動物園やペットショップのような獣の匂いが鼻を突いてくる。
そしてそこには…

「どうです?本物に会った感想は?」
驚きのあまり、保田は暫く声が出せなかった。
そうか。本物とはこういうことだったのか…。
4保田の休日 : 2001/02/09(金) 21:28 ID:bf6gA2mw
目の前のガラス越しに動き回る、生きた、本物のキ○ィちゃん達。
ただ、保田には、それは可愛いと言うより、グロテスクに感じられた。なにしろ顔はあの
ままなのに、体は猿のように毛むくじゃらで、大きさも10センチくらいのものも居れば人間
より大きなものまで居るのだ。それに、鳴き声。「グエッ、グエッ」と叫びまわる様は、その
可愛い顔とはあまりに不釣合いだ。

男はそこから適当なサイズのものを一匹取り出し、飼育係らしき女性に手渡した。
「お楽しみはこれからですよ。今から作り立てのキ○ィちゃんグッズをさし上げますから」
その言葉に、保田は不吉なものを感じたが、果たしてそれは的中した。
「グエッ、グエーッ!!」
激しく暴れるキ○ィちゃん。だが、飼育係は表情も変えずにその首を刃物で掻き切った。
「グええええ!!!!」
断末魔の叫びが途切れるまで、ものの数秒だった。
「いやっ!」
保田は頭を抱えてしゃがみこんでしまったが、男と飼育係はお構い無しに作業を続ける。
ベリベリ…。おそらく頭の皮を剥いでいるのであろう、気味の悪い音が、血の匂いと共に
保田を容赦なく包み込んでいく。

5保田の休日 : 2001/02/09(金) 21:29 ID:bf6gA2mw
そうだったのだ。数々の愛らしいグッズは、全てこうして…。
「あとはこれを乾燥させて、お好きなものに貼りつければ、キ○ィちゃんグッズの出来上がり
 です。何がいいかな。あ、エルメスのバッグにくっつけてあげましょう」
男はそこで初めて、座りこんで震えている保田に気がつき、苦笑した。
「おや、ちょっと刺激が強過ぎましたか?でも、毛皮のコートや鰐皮のバッグとか、女性は
 残酷なものがお好きでしょうに」

その時、奥の方で何かが壊れる音と共に、飼育員らしき人間の悲鳴が上がった。
男の顔が青ざめる。
「しまった、あれが…。」
「グエッ!!!!!!グエエエエエエッ!!」
通路の奥から現れた、その巨大なキ○ィちゃんの動きは、まさに肉食獣の素早さだった。
その長く鋭いツメで男の頭を一瞬で跳ね飛ばし、銃を構える女性飼育員を食いちぎる姿を
保田は呆然と見つめるしかなかった。
私達はキ○ィちゃんが好きだ。そしてキ○ィちゃんは人間の肉が好きなのだ。
保田を見下ろす、愛らしい獣は、口を大きく裂け広げ、白い牙を剥き出しにした。

                終り