世にも奇妙な娘達

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164スポットライト
「新曲のパートの振り分けを発表するぞ!」
私はこの瞬間が一番嫌いだ。私はメインなんて勝ち取った事が無い。
大体が後藤とかなっちがメインだ。私なんかは、
「保田はBメロとサビの上ハモ!」
こんな言葉しか向けられない。
いつもテレビでは私以外の人が映っている。
せいぜい私が映っているのが8シーンあれば良い方だ。
165スポットライト : 2001/03/26(月) 01:34 ID:tqtTlyuI
その日、私はいつもとは違う道で帰宅しようとしていた。
ふと「人生相談所」と言う看板を掲げ占い師にも似た風情の老人が路上で暇をもてはやしていた。
人生相談所…。たまにはこう言うことにお金を使うのも悪くない。
そう思い、私は限りなく一般人っぽくその老人に相談をした。
「私、会社の中で影が薄いんです。どうしたら目立てますか?」
こう言えばOLと思って接してくれるだろうと私は図った。
「明日になれば大丈夫です」
まさかそんな子供だましみたいな事を言われるとは思ってもみなかった。
私は少々怒って、急いで家路についた。
166スポットライト : 2001/03/26(月) 01:34 ID:tqtTlyuI
―次の日
「パートを変更する。メインは保田!」
私は信じれなかった。まさか老人の言う通りになるなんて…。
私の心とは裏腹に、レコーディングは着実に進んで行く。
「圭ちゃん、良いなぁ。私なんてBメロとサビの上ハモだってさ」
矢口が私に残念そうに言ってくる。そうか、これが前までの私なんだ。
167スポットライト : 2001/03/26(月) 01:35 ID:tqtTlyuI
私は自分のレコーディングが終ると休憩を取った。
あれ?後藤が泣いてる。私にメインを奪われたからだ。
…私、歌えればメインじゃなくてもがんばれたよ。
あ、なっちが泣いてる。6つもあったソロが私のせいで2つに減ったからだ。
…私、そんな事いっぱいあったけど泣かなかったよ。
矢口がレコーディングでつんくさんにひどく叱られている。
…私はどんなに難しいメロディでも、いつもつんくさんを満足させてたよ。
私だったら…。私だったら…。
168スポットライト : 2001/03/26(月) 01:36 ID:tqtTlyuI
私は帰り道、あの老人をさがした。あの「人生相談所」を。
昨日と同じ場所に同じ格好であの老人がいた。
「ねぇ、私、やっぱ目立たなくて良い。でも私らしくいたいの!」
いきなりこんな事を言って驚くかと思った。でも、
「明日になれば大丈夫です」
そう言ってくれた。
169スポットライト : 2001/03/26(月) 01:38 ID:tqtTlyuI
―数日後
「圭ちゃん!今度の曲さ、なんかめっちゃかっこ良くない!?」
メンバーが出来あがった曲を聞くたびに私に言ってきた。
そんな時私はこう答えるの。
「当たり前じゃない!私がBメロとサビの上ハモ歌ってるんだから!」


Fin