世にも奇妙な娘達

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63映画みたいな恋したい。
彼はバツイチだった。17才で、できちゃた結婚。
それを聞いても何故か私は、彼への気持ちが冷めなかった。
「まぁ、よくある話よね。」
今日の私は、なんか変だ。
まるで、運命の人を逃さないようにと、
必死に彼にしがみ付いているみたいだった。
(「恋ちゅうのは、押しが肝心や。押しが肝心やで。」)
裕ちゃんの言葉が脳を駆け回る。

目的地、幼稚園の前。彼が言う。
「此処で待ってて、すぐ来るから。」
「そんな…一緒に行くよ。子供、好きだし。」
『子供、好きだし』は、押しの気持ちが生み出した無駄な言葉だった。
園内から、女の人の声がした。
「はーい、恭平くーん。お父さんが来ましたよー。」
保育士の人が、男の子を連れて近づいてきた。
「なに?新しい彼女?洋二。」
「別れてるんですから、名前で呼ばないで下さい。」
此処は一気に修羅場になり、私はおどおどするばかりだった。
彼は子供の手を引き、
「ありがとうございました。」怒ったように早口で言った。
「いいじゃない、怒らなくても。
恭平もお母さんといっぱい一緒に居たいでしょ?」
保育士は子供の顔の近くで、同意を求めるように、優しく言った。
「………行くぞ。恭平!」
彼は子供を引っ張って、今来た道を戻っていく。
私も無言のまま、彼に付いていった。
出会ってから70後の出来事だ。