1 :
sack:
hehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehe
hehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehe
hehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehehe
2 :
sack:2001/07/30(月) 21:32 ID:TcGj2LSo
w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!
w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!
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w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!w@r3z!
3 :
SN:2001/08/01(水) 23:37 ID:0UqcdoYY
このスレ、もらっちゃいますね〜。
小説書きます。
黒板にまず大きくマルを描いた。そしてちょっと離れて小さなマルを3つ描く。
「あのれすね、まずさいしょの
ひとがさんにんにしんせつにするんれす」
そう言うと、大きなマルから小さなマルに向かってく矢印を3本描いた。
「れれすよ、そのしんせつにされた
さんにんは、さいしょのひとにれなくてれすね、
まったくべつのさんにんに、そのおかえしをするんれす」
小さなマルから離れた所に、さらに小さなマルを3つ描き矢印で結ぶ。
「こうしていけばれす、しんせつがずっとひろがっていくんれす。
さいごにはせかいじゅうのひとがしあわせになれるとおもうんれす。
…ろうれしょう?」
5 :
title:2001/08/01(水) 23:40 ID:0UqcdoYY
『ペイ・フォワード』 (原題「Pay It Forward」)
アメリカ・カリフォルニア州。
「すごいなぁ」
少女はピアノが好きでこの楽器店に良く来ていた。家が貧乏で
買うことなんて出来ないが、ここで試し弾きをするだけでも満足だった。
その軽やかな音を聞いていると思う。欲しいなぁ。
「こんにちは」
ある日、いつものように少女が試し弾きをしていると、老婦人が
話しかけてきた。「あなた、ピアノが好きなのね?」
「えぇ」その笑顔を見て、優しそうな人だなぁと少女は思った。
「ピアノを持ってはいないのかしら?」
「はい。あの、うちじゃちょっと、そんな贅沢は出来ないから」
「私の家にね、誰も使ってないピアノがあるのよ」そこで老婦人はちょっと
黙ってから続けた。「もし良かったらなんだけど、そのピアノあげましょうか?」
7 :
1:2001/08/01(水) 23:43 ID:aPMNm1X.
日本・横浜市。
少年は学校でいじめにあっていた。毎日が乾いていてつまらなかった。
橋から川を見下ろすと、ふいに涙が出て来た。
僕はなんで死なないでいるんだろう? なんで生きているんだろう?
「どうしたの? まさか死のうとか思ってる訳じゃないよね」
急に話しかけられた。女の人。社会人だと思う。たぶん知らない人。
「もしかしてキミさぁ、いじめられてない?」
その人の言葉に僕はハッとなった。どうして解ったんだろう?
「どうして解ったか不思議って顔ね。アザよ。その手のアザ」
少年が両手を後ろに廻すとその女性は微笑んで言った。
「ねぇ。コーヒー飲みたくない? おごってあげるけど」
この人は誰なんだろう?
なんで僕なんかに、優しくしてくれるんだろう?
8 :
1:2001/08/01(水) 23:46 ID:siBn5wPY
イタリア・ミラノ市。
その女性は病院から退院したばかりだった。退院したばかりなのに
これからの仕事探しを考えてひどく憂鬱そうな顔だった。
足を引きずる女なんて誰が雇ってくれるんだろう?
もう何度目の面接なんだろう? あたしはまたダメかなぁ。
小さな会社で、社長直々に面接だった。
社長は女性の引きずる足を見た後、履歴書をじっくりと読んだ。
断る理由を考えているんだろうか? 女性がそう思った時、社長が言った。
「うちで良ければ働いてくれ」女性は最初意味が解らなかった。
そして始まる仕事の日々。
足をひきずる彼女は仕事が遅かったが、社長は「最初は誰だって
仕事は手間取るものだ」と優しく教えてくれた。
女性は涙がこぼれた。足手まといになるのは雇う前から解ってたのに
こんなにも優しくしてくれるなんて。
9 :
1:2001/08/01(水) 23:47 ID:siBn5wPY
助けられた者達は全員、なぜ自分が助けられたのかわからなかったが
助けた側の者達は皆一様にこのように言った。
「もし私に感謝をすると言うなら、そのお返しは
まったく他の3人にそれぞれ返してあげて欲しい」
そしてピアノがしたかった少女、高校生の男、病み上がりの女性は
この言葉を胸に刻み込み、その通りに実行し、
そして同じ言葉を相手に告げた。
10 :
1:2001/08/01(水) 23:49 ID:siBn5wPY
この3件は世界中で起きている事例の、ほんの一部にすぎない。
自分が受けた親切は、3人の他の人へと親切にする事で恩返しする。
このシステムはすでに全世界レベルの話になっていて、
システムの発する光は鎖のようにゆっくりだけど
確実に世界中を繋いで、そして優しく包んでいった。
11 :
1:2001/08/01(水) 23:51 ID:xFCYiEkg
このシステムは『ペイ・フォワード』と呼ばれた。
意訳をするなら「幸福の先贈り」とでも言ったところだろうか。
この世界中に幸福をもたらしたシステムが
小さな日本の、当時14歳の少女がたった1人で考え出し、
そして実行したものだったなんて、いったい誰に想像出来るだろう?
12 :
SN:2001/08/01(水) 23:57 ID:R85AcMYA
第1話終了です。
娘。のメンバーが誰も出てなくてすみません。
2話目からは出ますんで。
13 :
Roses:2001/08/02(木) 01:09 ID:r8PvEZKI
いい話っすね。感動させてくれたあなたへの感謝の気持ちを
3人に親切にすることで表したいと思います☆
14 :
名無し娘。:2001/08/03(金) 05:19 ID:TTgzKRMo
>>12 おもしろそうですね・・・
SNさんの書くのって
好きなんスよ・・・・
アレ(ユリ●リ)は、続き書かないんですか?
15 :
SN:2001/08/03(金) 23:11 ID:ikyfU6fI
あぁぁ。まだ小説総合スレッドにも登録してないのに見てくれる人が
いるなんて…。断言しても良いです。ここを見てるの貴方達2人だけです。
でも、こんなスレタイトルなのによく見つけましたねぇ。すごい。
>>13 あはは。うまいですね。この作品は同名映画に感動して娘。小説に
しようと思って書いたものですので良かったらビデオでそちらもどうぞ。
…ってなんで私、感動したからって娘。小説にしようって思うんだ?
頭は大丈夫なのか?
>>14 うぅぅ。作者名で読んでもらえるなんて嬉しい限りです。
これからも精進させていただきます。貴方のためにも。
ユリマリっすか! これはまた懐かしい…って程昔でも無いけど。
私にとって矢口作品は完結しないのジンクスの先駆けとなった作品です。
そうですね。この作品が終わったらまた書いてみようかな…。
東京都はお茶の水のとある私立中学校は夏休みを
目前に向かえて、生徒達もとても浮き足立っていた。
そんな教室の1つのホームルーム中、その問題発言は飛び出した。
「来週から夏休みやなぁ。この学校は宿題を出さへんよう
やから、担任のうちが勝手に、クラスのみんなに宿題を出します」
えぇ〜っ。生徒達はいっせいに声を出して反対した。
しかし言い出した教師はその声に耳を貸さない。
「えぇか? 始業式前の登校日あるやろ? それまでに、
世界中の人が幸せになれるような方法を考えて来るんや」
17 :
2:2001/08/03(金) 23:14 ID:ikyfU6fI
中澤裕子は、この学校では人気のある方の先生だった。
中澤は色々な問題を教師と生徒の両方の立場から考え、さらにその結果が
納得の行く形になるまで先生同士で徹底的に話し合う事もあるような女性だった。
適当にはぐらかしたりしない。その姿勢が生徒に受けていた。
しかしその妥協しない姿勢は、ごく一部の教師と生徒からは疎まれてもいた。
18 :
2:2001/08/03(金) 23:16 ID:ikyfU6fI
クラスがいっそうざわざわとする中で、1人が代表するように立ち上がった。
「中澤先生、そんなの無理です。世界なんて変えられる訳ありません」
クラス委員の福田明日香だった。確かに委員としての役目と責任は
きっちりと果たせる。しかしこういう大人びた所は気にいらない。
あんたみたいな子供を減らすための宿題なのになぁ。
中澤は生徒達に聞こえるように大きなため息をついた。
「福田、無理って何や? 考えるのくらい出来るやろ。宿題は
『考えてくる事』や。出来んでもえぇ。それじゃ今日はこれまで」
中澤がそう言うと生徒達は次々と帰っていった。
残ったのは掃除の係の数人と、掃除と関係ないただ1人だけだった。
19 :
2:2001/08/03(金) 23:17 ID:ikyfU6fI
「なかざわせんせいのしゅくらい、むずかしいなぁ」
辻希美はのろのろと帰る準備をしていた。
用があって残っていた訳では無い。準備が遅かったので
一番最後に教室を出る事になっただけの話だ。
掃除係が、お前まだ居るのかよ? という目で見たので、辻はあわてて教室を出た。
暑い道を帰りながら辻は考えていた。
夏休みまでまだ1週間もあるのに、辻はもう宿題を考えていたのだった。
「ののはちょっととろいから、もうかんがえていなきゃなのれす」
20 :
2:2001/08/03(金) 23:18 ID:ikyfU6fI
辻は担任で英語教師の中澤の事が好きだった。
はっきり言って辻は頭もそれほど良くなく、人並みに出来るのは
体育だけと言った、どっちかと言うと落ちこぼれに近い生徒。
そんな他人よりちょっととろい辻の事をうっとうしがらずに、
質問にも相談にも付き合ってくれた先生は中澤だけだったのだ。
そんな中澤からの宿題だけに、辻としては
絶対に名案を考え出したかった。
21 :
2:2001/08/03(金) 23:20 ID:ikyfU6fI
しかしこれと言った案も出ないまま日は過ぎ、とうとう明日の終業式を迎えた。
その夜の辻は一旦宿題の事は置いておいて、
夏休みに何をしてあそぼうか? を考えるのに夢中になっていた。
海に行きたい。おいしいものを食べたい。お祭りに行きたい…。いっぱいある。
「とりあえず、あいぼんとまいにちプールにいくれす」
加護亜依。辻の親友だ。クラスは違うけど同じ学校に通っている。
家同士も結構近いため、2人は放課後によく遊んでいた。
22 :
2:2001/08/03(金) 23:21 ID:ikyfU6fI
ふと、つけっぱなしのテレビから歓声が聞こえた。
「なんれしょう?」
辻が見たその時に、何気なくうつってた映像。
それが、辻の頭にある考えをひらめかせた。
23 :
2:2001/08/03(金) 23:23 ID:ikyfU6fI
それはグラスタワーの映像だった。
1つのワイングラスの下に、3個のワイングラスが立って
まるでピラミッドのようになっている映像。そして上から注がれたワインは
きれいにピラミッドを作っているすべてのグラスに広がっていく。
美しい画だった。
1つのグラスを支える3つのグラス。
上からこぼれたワインを受け取る3つのグラス。
そしてワインは百を越えてそうなグラスの全てに注ぎ込まれた。
辻の目はテレビの前で輝きを放っていた。
「これれす!」
24 :
SN:2001/08/03(金) 23:25 ID:ikyfU6fI
第2話目終了〜。
やっと娘。も出て来たんで小説総合スレにでも登録してきまっす。
25 :
Roses:2001/08/03(金) 23:52 ID:5cOhn53A
ああ、登録しちゃうんですか、、、
なんか自分だけのものにしたいという
邪な考えがでてくるね
26 :
:2001/08/04(土) 02:43 ID:HBtJA1Ik
SNさんへ
ここらでいっちょ長篇をお願いしまふ!
応援してまふ!
28 :
名無し娘。:2001/08/05(日) 03:26 ID:aEsLHTdk
29 :
名無し娘。:2001/08/05(日) 07:48 ID:uqgE9Kw2
SNさん発見! 続き期待してます。
それにしても、なんちゅうスレに…(w
30 :
SN:2001/08/05(日) 23:08 ID:uvrhP.aw
2話目にしてすでに話に破たんが見え隠れ…。泣きそう。
>>25 ここ書き込みした後、ラウンジ見て帰って来たらすでに
このレスがありました。まだ小説総合スレに書く前だったので
書いてきませんでした。もう少しだけ独り占め気分をどぉ〜ぞ!!
>>27 長篇って、私のイメージだとシアターとか導かれし娘。みたいな
イメージしか無いんですよ…。こんな短いうちから破たんしかけてる今
絶対無理だと思います。ごめんなさい。
>>29 毎回、自分でもスレを乗っ取った(人聞き悪い)後思うんですよね。
もうちょっと人が覗きたくなるようなスレにしたら良かったかもって。
終業式の日、辻はさっそく中澤先生に報告した。
つたない絵を黒板に描いて喝舌の悪い口で一生懸命説明する。
「…ろうれしょう?」
「なるほど。つまり『ペイ・フォワード』って感じやな」
こんなに元気いっぱいの辻を見たのを中澤は初めてで嬉しくなる。
「ぺい? ふぉわぁーろぉ?」
32 :
3:2001/08/05(日) 23:10 ID:uvrhP.aw
中澤は辻の案を面白いと思った。お金がからんでこないのが辻らしい。
しかし、まだ夏休み前なのにもう答えられては
それはそれで面白くない。中澤は言った。
「そうや。『ペイ・フォワード』や。幸福の先贈りってな。
親切を他の3人に贈るねぇ。良い考えや思うで。でもな、
まだ夏休みはこれからや。もっともっと、良い考えが出来るかも知れへん。
しっかり考えてみぃ。もっと煮詰めてみるんや。実行可能になるように、な?」
「につめるんれすか?」
「そうや」そう言って中澤はポン、と辻の頭に手を置いた。
「辻! ほな、登校日に会おうな!」
33 :
3:2001/08/05(日) 23:12 ID:uvrhP.aw
帰り道、辻はずっと考えていた。
「このかんがえでいいとおもうけろなぁ。
なかざわせんせい、なんでもっとかんがえろっていったんらろぉ?」
学校と家のちょうど半分くらいまで歩いた時、辻は思った。
「そうれす! じっこうしてみればいいんれす。
そうしたらなかざわせんせいもわかってくれるはずれす」
先生に誉められる、そんな期待を夢見る笑顔になっている。
辻はいつの間にか走り出していた。
34 :
3:2001/08/05(日) 23:13 ID:uvrhP.aw
「のの〜、プール行こぉ〜」
「ごめんね、あいぼん。ののね、ちょっとやることがあるのれす」
夏休み初日から辻はさっそく作戦を開始した。
困ってる人を見つけて親切にする。その際に他の3人に親切にするように言う。
これを3人分。たったそんだけ。簡単なはずだった。けど。
「なかなかこまってるひとっていないのれす」
結局、記念すべき初日は誰にも親切に出来なかった。
35 :
3:2001/08/05(日) 23:14 ID:uvrhP.aw
以外と困っている人は少なかった。
本当は結構いるのだろうけど、まだまだ子供の辻には
見抜けないのか、時間ばかりが過ぎて行く。
「もしかしてなかざわせんせいがいってたのってこういうことかなぁ?」
毎日毎日困った人を探しているのに出会えない。
辻は1度も亜依とプールに行っていなかった。
36 :
3:2001/08/05(日) 23:15 ID:uvrhP.aw
困った人探しを始めて1週間。
「あっ」
やっと出会えた。その少女は明らかに困っている。
明らかに困っているのに、手を差しのべたのは辻だけだった。
「どうしたのれすか?」
「うん。あのね、私、落とし物をしちゃったの」
辻の顔は警戒心を呼び起こさないのか、少女はすんなり答えた。
「なにをれす?」
「指輪。いつの間にか指から抜け落ちちゃったみたい」
少女は右手の薬指を辻に見せて言った。
37 :
3:2001/08/05(日) 23:17 ID:uvrhP.aw
「ののもいっしょにさがしてあげるのれす」
辻がそう言うとその少女は大きく遠慮した。
「えっ、良いよ。私もね、もう見つからないと思ってるんだ。
だって、無くしたのってもう何時間も前なんだもん」
よく見るとその少女の目は赤く腫れていた。泣いていたんだ。
「ふたりのほうがさがしやすいれしょ? がんばるのれす」
「…ありがと。ねぇ、お名前教えて?」
今にも走り出しそうな辻が動きを止める。
「ののれすか? ののれす」
「ののちゃんね? よろしく。私は石川梨華。梨華っち、って呼んで」
38 :
SN:2001/08/05(日) 23:20 ID:uvrhP.aw
第3話題終了です。ヘロヘロじゃない? 私?
ちなみに今回の話は感動して泣くなんて事、絶対ありませんので。
よろしくお願いします。
原作映画は私、泣いたんですけどね。
( ´D`)「ののれすか? ののれす」言いそう‥‥
ガムバッテくらはい!
40 :
Roses:2001/08/06(月) 08:47 ID:h4PbAZbs
ぜんぜんヘロヘロじゃないっすよ〜。
続き楽しみにしてるからがんばってね☆
41 :
SN:2001/08/07(火) 23:06 ID:H1gCEgn2
さてさて。きょうこそ小説総合スレッドに登録してくるっす。
あの人にはお世話になりっぱなしなので無視は申し訳無いんですよね。
>>39 ( ´D`)ノ アーイ! ごめん半角カナ打てなくて。
>>40 ありがとうございます。今日もまったり行きますね。
「ろんなゆびわなのれすか?」
「銀色の指輪。大した高価なものでも無いのよ。
その辺の露店で買ってもらったものだから」
大した高価なものではないのに、目を泣き腫らして何時間も探す
必要があるだろうか?
値段以上の価値がある事は辻にも理解できる。
2人は梨華が落としたと思われる場所を何回も往復した。
43 :
4:2001/08/07(火) 23:09 ID:H1gCEgn2
日が暮れかけてきた。
「ののちゃん。もう良いよ。ありがとう。
こんな見ず知らずの私のために、一生懸命になってくれて」
「でも、みつかってないよ? らいじなゆびわなんらよね」
「それは、そうだけどぉ…」梨華の顔が泣きそうになる。
「じゃあ、さがそぉよ。おひさまがれているうちに」辻はまだ笑顔だった。
「でもののちゃん。もう疲れたでしょ?」
「ののはへいきれす。りかちゃんつかれた? やすんれてもいいれすよ」
「ううん。私も一緒に探す。ありがと、ののちゃん。頑張ろうね」
44 :
4:2001/08/07(火) 23:11 ID:H1gCEgn2
そして。
見つけた。
排水溝のすみっこにひっかかってる銀色で丸い物体。
「あっ! ねぇ、りかちゃん、もしかしてあれ?」
「そうだ! うん、間違いないよ! やったぁ」
しかし排水溝は濁った水と泥がひたっていて
手を伸ばして取るのは梨華にはためらわれた。
45 :
4:2001/08/07(火) 23:12 ID:H1gCEgn2
「ののちゃん、待ってて。今木の枝かなんか探してくる」そう言って梨華が
走り出そうとした時、辻が言った。
「とれました」
振り返った梨華が見たのは、袖をまくり上げた辻が
その腕を泥だらけにしながらリングを持っている姿だった。
梨華の目から涙がこぼれた。
46 :
4:2001/08/07(火) 23:14 ID:H1gCEgn2
「よかったれすね」
リングと辻の腕についた泥を洗い流しながら、辻はそう言った。
梨華はやっと涙がおさまりかけていた。
「ののちゃん。この指輪ね、私、とってもとっても大好きな人から
初めてもらったプレゼントだったの。露店で買ってもらったものだけど、
私にとってはね、お金なんかに換えられない大事な大事な指輪なの」
辻は黙って聞いていた。
47 :
4:2001/08/07(火) 23:16 ID:H1gCEgn2
「いま私ね、ののちゃんのために何でもしてあげたい気分。ねぇ夕食。
梨華っちと一緒に食べようか? もうね、お寿司でも何でも良いよ」
お寿司。
その言葉に辻の胸はキュンとなるが、がまんして頭を振って断る。
「ののちゃん?」
「あのれすね。このおかえしはののにじゃなくて、られか
ほかのひとさんにんにしんせつにしてあげてほしいのれす」
「えっ? どういう事?」
「ほかのさんにんにしんせつにしてもらえると、ののはうれしいのれす。
『ペイ・フォワード』っていうんれす。」
48 :
4:2001/08/07(火) 23:17 ID:H1gCEgn2
「ぺい・ふぉわぁど?」
梨華の問いかけに辻は頷いた。そして辻は梨華にさよならの挨拶をすると、
梨華が止める間も無く帰っていった。
家に着くと、帰りが遅くなりすぎだと母親に怒られてしまった。
49 :
4:2001/08/07(火) 23:19 ID:H1gCEgn2
残された梨華は、辻の言った言葉を考えていた。
「『ペイ・フォワード』かぁ…。
でも私は、やっぱりののちゃんに一番に恩返しがしたいよ」
すっかり遅くなってしまった。梨華はちょっと急ぎ足で駅に向かう。
帰る途中で梨華は道路に座り込んでいる男の姿を目にしたが
横目でちらっと見ただけで、立ち止まる事はなかった。
そして梨華の姿は駅に消えていった。
50 :
SN:2001/08/07(火) 23:20 ID:H1gCEgn2
第4話終了ですです。
さっそく登録してきますですです。
51 :
名無し娘。:2001/08/07(火) 23:38 ID:o6fav9SQ
ウーン、続きが気になる! 面白いですよ。
なぜかご謙遜気味のSNさん。がむばってください。
52 :
名無し娘。:2001/08/07(火) 23:56 ID:sAvf5sIc
小説総合スレッドの者です。気に掛けていただいて嬉しいです。
ここまで一気に読みました。早く続きを読みたい気分ですが、
ご自分のペースで頑張ってください。
53 :
名無し娘。:2001/08/08(水) 00:40 ID:foTn3pEY
貴方の作品、どれもいいですね
今回のも頑張ってください。こっそり応援してます
54 :
Roses:2001/08/08(水) 00:43 ID:S0JcMphc
りかっちファンの俺に最高の展開。
ごっちんも出ないかな〜。
やっと1人だけだけど、助ける事が出来た。
辻は梨華ちゃんが『ペイ・フォワード』を広めてくれてる事を祈りつつ、
次の日からすぐまた困ってる人探しに出かけた。
56 :
5:2001/08/08(水) 23:14 ID:eb286yWo
『ペイ・フォワード』が広がって行く。そう思う事はとても魅力的で、亜依や友達と
遊べない事は辻にとって大した問題では無かった。
亜依とのプールの約束を断り、友達とも遊ばず、
昼近くなると街に出かけて行き夕方に家に帰ってくる。
そんな夏休みを過ごしている辻。
『ペイ・フォワード』が広まって、中澤先生を驚かせたい。誉められたい。
ののちゃんが考えたの! すごい! と亜依や友達が驚いたりして。
そんな思いが辻を動かしていた。
57 :
5:2001/08/08(水) 23:16 ID:eb286yWo
そしてまた誰も助ける事が出来ずに1週間が過ぎた。
「むずかしいなぁ」
朝に出かけて、夕方帰ってくる。
そんな毎日同じような日を繰り返したある日、
辻は公園のベンチで座ってる女性を見かけた。
58 :
5:2001/08/08(水) 23:17 ID:eb286yWo
全身を黒っぽい服に包んでいる。顔は下を向いていてわからなかった。
ベンチは日陰にあるとは言え太陽はかんかんに照っているのに。
暑くないのかなぁ? と思いながら辻は自転車で街を駆け巡った。
しかしこの日も特に何も無く、辻はうな垂れて家に帰ろうとした。
「あれっ?」
帰る途中に見た公園。
行く時に居た女性がまだ居たのだ。
しかもポーズもほとんど変わっていなかった。
59 :
5:2001/08/08(水) 23:18 ID:eb286yWo
辻は自転車を止めて近寄って行った。
日陰だから解らなかった。近寄って解った。このお姉さん、すごい金髪。
ちょっと怖いけど、これだけ近寄って何も言わずに帰るのはもっと怖い。
「あの、なにしてるんれしょうか?」
女性からの返事は無かった。辻は続けた。
「のの、いま、なやみのかいけつを
てつらってるんれす。ののでよければそうだんにのります」
ずっと黙っていた女性は、辻のその言葉で顔を上げた。
若い。まだ少女だ。黒ずくめの服が辻に勘違いをさせていたのだ。
そして少女は口を開いた。若い声。
「何、お前? 宗教かなんか?」
「ちがうれす。ののはなやみをかいけつしたいんれす。
こうみえてもけっこうたよりになるんれすよ」辻は胸を張った。
60 :
5:2001/08/08(水) 23:20 ID:eb286yWo
「お前さぁ、私、こんな格好なんだよ? しかも金髪で。怖くないの?」
その若い顔の中の若い瞳からは
やる気とか元気とか、そう言ったものが感じられなかった。
いわゆる死んだ魚のような目。良く見ると顔も魚っぽい?
辻はさすがにそれは言わないでおこうと思った。
「のの? それあだ名? ふぅん。私は真希。後藤真希って言うんだ」
61 :
SN:2001/08/08(水) 23:28 ID:eb286yWo
第5話終了です。ちょっと短かめ。
新メン追加までに終わらないかも???
>>51 本当っすか? その言葉、嬉しいです。
続きもまったり進んで行く予定です。
>>52 こちらこそいつもお世話になっております。
これからもよろしくお願いしますね。無理しないで行くので。
>>53 泣く程嬉しかったです。どれもって・・・!
なんだか自信がもてました。
>>54 じつは読んだときすごくびっくりしました。
当てられてるし! とか思ったです。
62 :
Roses:2001/08/08(水) 23:33 ID:S0JcMphc
やたー!ごっちんでたー!ありがとぉー
63 :
名無し娘。:2001/08/09(木) 02:59 ID:ugu1zLvw
ゴチーンだ!果てしなく期待してまふ
64 :
和田:2001/08/09(木) 09:47 ID:twu627Ow
期待sage
65 :
和田:2001/08/09(木) 09:47 ID:twu627Ow
あげちまった
66 :
名無し娘。:2001/08/09(木) 13:00 ID:VHQ6v1WI
やっと待ちに待った新作だ!と思ったら昼休みシュウリョーだ・・・
家に帰ってから読ませてもらいま〜す。
なんだかスケールの大きなお話ですね。
ののヲタの俺的に(o^-')b グッ!
マターリマターリがんばってくらさいね♪
「母さんがさぁ、再婚したいんだって。
何だよ、今さら。ずっと母1人子供3人で楽しくやって来たじゃんって感じ」
真希がぽつぽつと話しだすのを、辻は横に座って聞いた。
「あたらしいおとうさんがきらいなんれすね?」
「いや、良い人だと思った。姉さんも弟もそう言ってる」
「じゃあなんれれす?」
その辻の問いを聞いて真希は、辻を思い切り睨みつけた。
「何で!? バカじゃないの、お前?
わかるでしょ? 気にくわないんだよ。それだけ」
69 :
6:2001/08/10(金) 01:50 ID:B7W3rMVU
辻はやっぱり首をかしげてた。
「…わかんないれす。きらいじゃないんれすよね?
きらいじゃないひとがかぞくになるなら、いいとおもうんれす」
その答えを聞いた真希は、ぽかんと辻を見つめて
そして笑い出した。
「のの。 実はお前、バカだろ」
「そんなことないれす」
辻がちょっとふくれた顔をすると、真希はさらに笑った。そして
「うん、そうだ。そんな事無い」と言った。
70 :
6:2001/08/10(金) 01:52 ID:B7W3rMVU
真希が立ち上がって、自分のおしりをぱんぱんはたいた。
「さ、もう帰ろうか。ののも帰りなよ」
辻はそれでも座ったままだった。
真希が辻を見ると、辻はちょっと落ち込んで見えた。
真希を助けてあげたかったのに、助けられなかったと思っていたからだ。
だから辻は、真希の言葉にすごくびっくりした顔をした。
「のの、今日はありがとう。お前のおかげでだいぶ気楽になったよ」
「…え? のの、まきちゃんのやくにたてたんれすか?」
今度は真希がその言葉に驚いた。
「立ったよ! 超役に立ったって」
71 :
6:2001/08/10(金) 01:55 ID:B7W3rMVU
真希は辻を立たせると、おしりをはたいて砂を落としてあげた。
そして辻の目線まで顔を下げて言った。
もう真希の目は濁っていない。輝きを放っている。
真希はきれいな顔をしていた。なんでさっきは魚みたいだと思ったんだろう?
「本当に、感謝してるよ。ありがと。実は今日
ずっとここ居たんだけどさ、私に話しかけて来たの、ののだけだった」
辻の顔はぽかんとしたままだったけど。
「本当は私も認めてはいるんだけど、
納得できなかったんだよ。ののの言葉聞いてすっきりした」
だんだんと辻のほっぺに赤みが増してきた。
「のの、まきちゃんのやくにたてたんれすね!」
「だからぁ、そうだって何度も言ってんじゃん」
真希は辻の2つしばりの髪の毛を引っ張りながら言った。
「いたた。いたいれす。あの、らったらおねがいがあるんれす」
72 :
6:2001/08/10(金) 01:57 ID:B7W3rMVU
辻と別れた後、真希は
家に帰りながら辻からのお願いについて考えてた。
「『ペイ・フォワード』ぉ? 何、それ。
そんなのやってどうするんだよ? 広まりっこ無いって」
真希の携帯電話が鳴った。
見ると着信名には親友の名前が出ている。真希はすぐ出た。
「もしもし、市井ちゃん? うん、真希。バイト終わった?
そうそう。お泊まりの事でしょ? 何日が都合良いって言ってた…」
楽しそうに話す真希の頭の中からは、さっきの辻との会話は
すっかり消え去っていた。
73 :
SN:2001/08/10(金) 02:03 ID:B7W3rMVU
第6話終了ある。
御盆はお休みするある。申し訳無いある。
>>62 まぁ、もともとここで出る予定だったんです。
>>63 あぁぁ、期待はそこそこにしておいてくださると嬉しいです。
>>64-65 ageるのかよ!(三村)
>>66-67 原作が壮大だったんで、こっちもちょこっとだけ壮大に。
辻の雰囲気を壊してなきゃ良いですが。まったり頑張りますです。
74 :
名無し娘。:2001/08/10(金) 02:56 ID:OqYYOyPc
おっとこんな時間に更新。1時間近く気づかずにうろうろしてました。
クールなごっちん。果たして彼女にペイフォワードは伝わるのかっ。
続きに期待してまするある。
75 :
Roses:2001/08/10(金) 03:32 ID:n/QadOmA
ごっちんの性格がうまくでてますね。
次は市井ちゃんの番なのかな?
いちいち固定で書かれるのウザいっすか?
76 :
ななしっこ:2001/08/10(金) 16:33 ID:uowXLKn6
>>75 固定でもいいんじゃないですか?
>>SNさん
ほんと面白い。これよんでDVD買おうと思ったよ。
77 :
和田:2001/08/11(土) 15:06 ID:WoWMS4Es
保全しよう
78 :
:2001/08/12(日) 01:59 ID:cPvvE1X2
ahyahyahyahya
79 :
:2001/08/13(月) 00:43 ID:aSKqfbjA
80 :
:2001/08/13(月) 00:46 ID:Jzt305JA
バイト先でサンプルの「ペイ・フォワード」借りてきたよー
今からみますー
81 :
名無し娘。:2001/08/13(月) 14:14 ID:swrNbmwo
82 :
和田:2001/08/13(月) 21:13 ID:s8of0rMo
hozen
83 :
(0^〜^0)@狼 :2001/08/13(月) 22:10 ID:wm0yh.hI
?
84 :
名無し娘。:2001/08/14(火) 06:43 ID:qcXKxvmc
SNさん
がんがってね・・・保
85 :
名無し娘。:2001/08/14(火) 22:53 ID:DSa93o/I
最近は一日2回保全しとかにゃ怖いね。
86 :
SN:2001/08/14(火) 23:13 ID:8c5sCQho
あぁ良かった。消えてないよ。なんかすごい一気に消えたよね。
>>74 変な(?)時間の更新にも関わらず発見早いですね。感謝です。
頑張りますね。
>>75 性格出てます? そこが一番手こずるんですよね。こんな事言うか?
って考えると止まらなくって。コテハンでも全然良いっすよ。って言うか
急に名無しになられたら、あの人来なくなっちゃったなぁ。ってさみしく
なっちゃうと思いますんで。
>>76 ありがとう! でも買う程見直さないかもだからレンタルをお勧めします。
>>78 もしかして1さん!? スレお借りしてますね…あははは。
>>80 どうでした? 私は泣いたんですけど。結構良いでしょ!?
>>83 本物? 最近よく解らないんですよ。ゴメンナサイ。
>>77 >>79 >>81 >>82 >>84 >>85 ありがとうございます。
おかげで消えずにすみましたです。
朝からものすごい雨だった。
「これじゃ、きょうはむりれすね」
辻は人助けに出かけるのを諦めた。さてどうしよう。
ひさびさに出かけないとなると、特にする事も無い。ふいに
亜依の顔を思い出した。そう言えば夏休みなのに全然遊んでいない。
「あいぼんちにあそびにいこおっと」
88 :
7:2001/08/14(火) 23:16 ID:8c5sCQho
しかし。
「あら、ののちゃん。ごめんねぇ、亜依ってば
昨日からおばあちゃんの家に泊りに行ってるのよ」
亜依は家に居なかった。
「亜依ってば、ののちゃんに言っていかなかったの?」
辻は首をたてにふった。
89 :
7:2001/08/14(火) 23:18 ID:8c5sCQho
亜依の家からの帰り道、辻はずっとうつむいて帰って来た。
夏と冬の休み、亜依は毎回おばあちゃんの家に泊まりに行く。
今までの亜依ならそのつど辻に
一言『行ってきまぁす』と言ってくれて、お土産も買って来てくれた。
なのに今回は辻に一言も言わずに亜依は言ってしまった。
「きっとおみやげもかってきてくれないれす」
辻の目にじわっと涙が浮かんだ。
「もうあそんれくれないかも」
90 :
7:2001/08/14(火) 23:19 ID:8c5sCQho
「ごめんね、あいぼん」
辻は夏休みの前に亜依と毎日プールに行こうと約束していた事を
思い出した。なのに『ペイ・フォワード』に夢中になってたばかりに
その約束は一度も果たされなかった。
そう言えば今年の夏は花火大会もお祭りも行ってない。こんなの初めて。
遊ぼうよ、と言ったのに断られる。
自分が昨日まで亜依にやってきた事なのに、やられるとこんなに辛い。
「あいぼんがかえってきたらちゃんと
あやまろう。そしていっしょにプールにいこおっと」
だいたい亜依は1週間くらいで帰ってくる。きっと今回もそうだよね。
91 :
7:2001/08/14(火) 23:21 ID:8c5sCQho
でも。
亜依が北海道に行く事を何も言っていかなかった事が気になった。
「のの、あいぼんをおこらせちゃったのかなぁ」
辻はずっと自分を責めていた。責めるうちに『ペイ・フォワード』にも疑問を持った。
本当にこんな事が広がるの? 考えた当初は素晴らしいアイディアだと
思ったけど、不安定な要素が多すぎる事に今さらながら辻も気付き始めていた。
続けてくれない人がいたら、そこで終わる。
梨華ちゃんと真希ちゃんが『ペイ・フォワード』をしてくれてなかったら終わり。
中澤先生の言う通りだったかも。
だいたいこんな事やってるから友情にもひびが入ったんじゃない!
辻は結論を出した。
「もう『ペイ・フォワード』なんてやめるれす」
この日は結局雨はおさまらなかった。
92 :
SN:2001/08/14(火) 23:23 ID:8c5sCQho
第7話終了です。
たいした進まなくて申し訳ないです。
93 :
Roses:2001/08/14(火) 23:35 ID:kQYDNtLg
待ってました!うう引っ張るなぁ。
ごっちんのその後の行動が気になるぅ〜。
>>76.
>>86 ありがとうございます。固定で書かしてもらいます。
>>83は騙りです。相手にしないでいいよ。
おぉ更新してる♪
お盆休みは体ヤスメテーネ
95 :
和田:2001/08/15(水) 09:52 ID:3IXzYQwg
更新され始めたようで
保全
「亜依ちゃん、スイカを切ったから食べなさいな」
「はぁい。いただきまぁ〜す」
加護亜依は北海道に来ていた。
父方の実家は北海道で母方の実家が奈良県の亜依は毎年
冬は奈良県に行き夏は北海道で過ごす。
この日は晴天。北海道とは言え、夏はやっぱり暑かった。
97 :
8:2001/08/15(水) 23:07 ID:S75D3exE
飛行機と電車とバスを乗り継がなきゃ来れない亜依のおばあちゃん家は
かなりの田舎だった。
近くには小川が流れる草原があり、遠くには昼間でも暗い森がある。
しかし亜依の印象としては『何もない』場所というのが強い。
かじりつくと、スイカはとてもおいしく、
覗き込むおばあちゃんの笑顔は優しかった。
98 :
8:2001/08/15(水) 23:09 ID:S75D3exE
亜依はこの夏休み、1度も辻と遊んでない事について考えてた。
「何か私、嫌われるような事しちゃったかなぁ」
辻とこんなに遊ばなかったのは出会ってから初めてじゃない?
亜依もとまどって、そして落ち込んでいた。
「あのね、おばあちゃん。私、いつもなら1週間くらいで帰るじゃない?」
「そうだねぇ」
亜依は少し黙って悩む。そして言った。
「ねぇ今回だけ、もっとずっと居ても良い?」
99 :
8:2001/08/15(水) 23:10 ID:S75D3exE
亜依は夏休み最後の日近くまでおばあちゃん家に居る事にした。
おばあちゃんもお母さんも問題なく許してくれた。
辻との事はひとまず置いておいて、北海道でぎりぎりまでゆっくり過ごす。
「あっ。登校日があったんだっけ」
亜依はちょっとだけ悩んで「良いや、別に」と結論を出した。
うっかり忘れてた事にしよう。飛行機のキップを先に買っちゃえば後で
気付いてもしょうがない、って話になるんじゃないかなぁ?
100 :
SN:2001/08/15(水) 23:14 ID:S75D3exE
第8話終了〜そして100〜。
しかし短いね。我ながらゴメンです。
>>93 はいはい。コテハンでどうぞ。後藤かぁ。後藤…。
>>94 もう休めたよー! これからは頑張りますよ。
>>95 和田マネ、さすがに仕事熱心だね。
辻加護のすれちがい
次の展開に期待・・・。
辻希美は母親に頼まれて買い物に向かっていた。
親友の加護亜依も居なく、ペイ・フォワードのための外出もやめた辻は
おつかいくらいしか外出しなくなっていた。
暑い中、のろのろと歩く辻は自転車にも乗らない程にやる気がない。
そんな風に歩く辻の後ろから声がした。
「ロッシュ! ちょっと、ロッシュ! ねぇ誰か止めて〜」
103 :
9:2001/08/16(木) 23:09 ID:YKDuHXxU
見ると白い犬が1匹、辻に向かって走ってきていた。
わぁ可愛い、と腕をのばす辻。ふとおかしな事に気付いた。
すぐ側に居るみたいなのに犬はなかなかこちらに来ない。
だんだんと大きくなる犬の影。でもまだ来ない。
そして辻は気付いた。もしかしてあの犬、すごく大きい?
そう思った直後、辻はその犬の体当たりを受けて尻もちをついた。なおかつ
顔をベロベロと舐められていた。
「あはは。くすぐったいれす。あはははは」
104 :
9:2001/08/16(木) 23:10 ID:YKDuHXxU
やっと飼い主が息を切らしながら追い付いてきた。
「はぁはぁ、ロッシュを、はぁ、止めてくれて、はぁ、ありがとうね」
「ロッシュっていうんれすか? このこ」
辻はあらためてその犬を見た。キミ、割とカッコ良い名前だね。
「はぁ、うん。本名は、はぁ、ロシナンテって。はぁ、言うんだけどね。はぁ」
「かわいいれす」
顔を舐めてもらったお礼に辻は、頭をくしゃくしゃに撫で返した。
105 :
9:2001/08/16(木) 23:11 ID:YKDuHXxU
やっと飼い主の息が落ち着いてきた時でも辻とロシナンテはまだ
じゃれあい続けていた。
「すごいね。ロッシュってばキミの事すっごく気にいったみたい」
「えへへ。このこ、おねーちゃんのいぬれすか?」
「ぶー。うちに来てくれるお客さんの犬。散歩させるのも仕事なんだ」
辻はこの時初めてトリマーという職業を知った。犬のお世話をしてお金が
もらえるなんて! 大きくなったらこの仕事につこう、と辻は思った。
さっきまで将来はアイスクリーム屋になるつもりだったけど。
106 :
9:2001/08/16(木) 23:13 ID:YKDuHXxU
「ごめんね。ちょっとおしりとか汚れちゃったね。
でも捕まえてくれてありがとね。ねぇ、名前は? 何て言うの?」
「ののれす。ののってよんれくらさい」
「ののちゃんね? お姉ちゃんの名前はなつみって言うの。よろしくね。
ねぇ、ののちゃん、うちのお店に来ない? ロッシュのお礼をしたいからさ」
お礼。その言葉を聞いて辻は『ペイ・フォワード』の事を思い出した。
「もうね! ロッシュだけじゃなくて、いっぱい他に動物居るんだよ」
こんな事やめよう。そう決めた後なのに、人を助けてしまった。
辻は首を横に振りながら「おれいはいいれす」と言って立ち去ろうとしたが、
その腕をなつみがつかんだ。
107 :
SN:2001/08/16(木) 23:15 ID:YKDuHXxU
第9話も簡単ながら終了〜。
短く切ると毎日のアップが可能で嬉しいですね。
>>101 まぁ、まったり作品なんでまったりどうぞ。
108 :
名無し娘。:2001/08/17(金) 00:06 ID:8z2.HFYE
面白い作品ありがとう。
SR氏のは安心して読めるよ。
ところでここで質問していいか分からないけど
SRさんの他の作品を教えてもらえますか?全部見たいんで。
「あなたの声〜」「ベストフレンド」は見てます。あと何かありますか?
うぅ〜ん、まったり♪
次は誰がでてくるんだろ
110 :
Roses:2001/08/17(金) 10:29 ID:9Erq7Xi.
うにょ?ドラクエ5で見たような展開・・・
111 :
名無し娘。:2001/08/17(金) 15:28 ID:op7YBH4o
昼下がりの保全
「ちょっと休もうか」
なつみはそう言うと辻を連れて近くの公園に行った。
「ここで待っててね。ロッシュをお願い」そう言って走り出すなつみ。帰って
来たその両手にはそれぞれオレンジジュースが握られていた。
「はい、どうぞ。そんな元気の無い顔見せられたらそのまま返せないっしょ」
なつみは胸を張る。「お姉ちゃんに言ってごらん? こう見えても頼りになるんだよ」
辻はなつみの顔を見た。その笑顔は本当に可愛らしく、辻は天使って
こんな感じかなぁなんて思った。もちろん本物を見た事なんて無いけど。
2人はベンチに座る。
辻はオレンジジュースをひとくち飲むと、ゆっくりと話しだした。
亜依との事、そして『ペイ・フォワード』の事。
113 :
10:2001/08/17(金) 23:12 ID:6/m1JNZs
「そっかぁ。親友とギクシャクしちゃってるんだぁ」
「ののがやくそくやぶっちゃったのがわるかったのれす」
しゅんとする辻の頭をなつみはぽんぽんと叩いた。そしてロシナンテも
元気出せとでも言いたげに辻ににすり寄って来た。
「ちゃんと謝ったら大丈夫だよ」なつみは優しい声で言う。「ののちゃんはそんな素敵な
事してたんだから。友情ってね、簡単に始まるけど、簡単には終わらないんだよ」
「そうれしょうか?」辻がなつみを見上げる。
「そうだよ。だってののちゃんとなっちはもう友達じゃない」
114 :
10:2001/08/17(金) 23:13 ID:6/m1JNZs
辻はぱちぱちさせて聞いた。
「なっち?」
「そう、なっち。友達にはそう
呼んでもらってるの。ののちゃんも呼んで。なっち、って」
辻はちょっと赤くなりながら「なっちおねえちゃん」って呼んだ。
するとなつみは笑顔で「なぁに? ののちゃん」って呼び返してくれた。
「えへへ。なんれもない」オレンジジュースがおいしかった。甘くて冷たい。
115 :
10:2001/08/17(金) 23:14 ID:6/m1JNZs
「これでののちゃんの『ペイ・フォワード』は終わりだね」
オレンジジュースを飲み干したなつみが答えた。
「だってそうでしょ。なっちさっき助けてもらったし。これで3人目だもんね」
辻はきょとんとしている。
「なっちも誰か3人に親切にしたら良いんだよね?」なつみは続ける。「これで
ののちゃんの分はおしまい。だから明日からはその亜依ちゃんと遊べるじゃない」
116 :
10:2001/08/17(金) 23:16 ID:6/m1JNZs
なつみは立ち上がると、まだ座ったままの辻に言った。
「やっばいなぁ。だいぶ時間たっちゃった。
じゃあね、ののちゃん。今度なっちのお店に遊びに来てよ」
なつみはロシナンテを連れて走って帰って行った。辻はずっと手を振っていた。
優しいお姉ちゃんだったなぁ。辻はなつみの事を考えた。
あっ。
そして気付く。なつみのお店の名前なんて聞いていなかった事を。
辻は泣きそうな顔になった。さっきまでここにあった優しさは? 幻だったの?
117 :
SN:2001/08/17(金) 23:24 ID:6/m1JNZs
第10話もつつがなく終了です。破たんはあれども、ですが。
>>108 ありがとう。その一言、本気で嬉しいです。質問全然良いですよ。
って言うか他のところでされたらきっと気付かないです。
きちんと完結してるのはその2本しか無いですよ。
あとは全て未完の尾道三部作ならぬ矢口三部作が倉庫のどっかに。
あと名義が違うけど今読めるのは「ミニポポ探偵団」の3話目と、
「仮面ライダーのの」の第1話だと思います。こんなものかな?
これで間違い無くアナタはSR,SN通です。
>>109 あはは。まぁ、辻の担当分の3人は一応終わった事だし、ねぇ?
>>110 あぁ! 言われてみれば! アレだよね? あの勇者とフローラが
街で出会う所。私ドラクエ5大好きなんですよ。5回くらい解いてます。
全然意識してなかったのに…。深層心理に焼き付いてたのかも?
>>111 ありがとうございます。このスレ乱立→すぐdat逝きの中で残るのは
難しいですよね。
(゚д゚)ガーン!そういえば3人で終わりだたね(ワスレテタヨ
でも新しい展開が待ってるし、れっつらごう♪
119 :
名無し娘。:2001/08/18(土) 00:36 ID:cKDIRlKE
おお、いよいよ天使(●´ー`●)の出番が来たか(号泣
相変わらず安倍の書き方が巧いですね。
次の展開を楽しみに待ってます。
120 :
名無し娘。:2001/08/18(土) 00:54 ID:Dgl6V07E
おお、なっち登場。パーティーがどんどん増えていくと
嬉しくなりますねえ。
121 :
Roses:2001/08/18(土) 09:33 ID:agCo4rRY
本物のなっちを見ているようだ・・・うまい!
あっ、ドラクエ好きでしたか。よかった。
怒られるかもしれないって思ってた。
122 :
名無し娘。:2001/08/18(土) 16:51 ID:rVnhAQpw
ほぜん
123 :
名無し娘。:2001/08/18(土) 18:45 ID:nl8YPI5E
hozen
124 :
名無し娘。:2001/08/18(土) 19:16 ID:nl8YPI5E
mamenihozen
125 :
:2001/08/18(土) 19:22 ID:dYdSGeXk
126 :
名無し娘。:2001/08/18(土) 20:41 ID:.DbKgu4c
件みいら
127 :
名無し娘。:2001/08/18(土) 23:02 ID:/jy1LDQ2
狼がながれてきたので保全
128 :
名無し娘。:2001/08/19(日) 04:41 ID:1BhFIBtE
129 :
ぼかあねえ:2001/08/19(日) 05:30 ID:XU99.c2.
>>108 あなたの声〜も、氏の作品だったのか!!
ありゃあ感動したべ・・・・・
俺の中で時駆けより上にあるべ・・・
つまり一番好きな作品だべさ・・・
ごっちん・・・ごめんね・・・
130 :
108:2001/08/19(日) 17:26 ID:iLC1fGoA
>>117 ご返答ありがとうございます。
今から探して読んでみます。楽しみっす。
>>129 あなたの声〜はマジで名作だよね。
オレも一番好きかな。なっち、ごっちん…泣けるよ。
また読みたくなってきた。
131 :
名無し娘。:2001/08/19(日) 21:28 ID:9bCCs92A
保全sage
その後、辻希美は加護亜依にどう謝るか仲直りの後で何をして遊ぶかを
ずっと考えて過ごしたが、肝心の亜依は帰ってこなかった。
亜依のお母さんによると夏休み最終日前日の8月30日まで帰ってこないらしく
辻が「とうこうびはろうするんれしょう?」と聞くと亜依のお母さんは「あら。あの子
行かないつもりかしら?」と今気付いたように答えた。
夏休みの約束を断り続けた辻には今さら他の友達からの誘いも来ない。
本当は何て事無いんだろうけど、約束を断り続けた手前こっちからも誘いづらい。
辻は残りの長い夏休みのほとんどを家の中で過ごした。
133 :
11:2001/08/19(日) 23:13 ID:ZaNQIiYc
一応辻は登校日の朝、亜依の家に行ってみたが案の定いなかったので
辻は1人で学校に向かった。
夏休みに誰とも遊んでいない辻は登校日で久しぶりに顔を合わせるというのに
話をしたのは3人ほどしかいなかった。
何となく落ち込んでる風な辻に話しかけづらいオーラが出ているように。
登校中も下校後ももちろん亜依はいない。
辻は思う。亜依が、友達がいないとこんなにも学校は退屈だったなんて。
134 :
11:2001/08/19(日) 23:15 ID:ZaNQIiYc
ベルが鳴って中澤先生が来た。中澤は全員の名前を呼んで出席を確認するとさっそく
「じゃあ廊下側の1番号前から」と夏休み前に出した宿題の回答を聞きはじめた。
「地球で1つの国にしたら良いと思います」
「えっと、あの。考えつかなかったです」
「この世からぁ、お金を無くす、とか?」
一応みんな考える事はしているようだった。内容の濃い薄いは別としても。
「よし、次は」そこで中澤は言葉を切った。福田明日香かぁ。考えて来たんやろか。
宿題出した時はばからしいって顔してたもんなぁ。「福田、発表しぃ」
しかし。
135 :
11:2001/08/19(日) 23:16 ID:ZaNQIiYc
「すみません、中澤先生。考えたんですけど、これと言うのが思い付かなかったです」
まともな答えだった。しかもちゃんと中澤の目を見て答えている。
中澤は顔に出さずに驚いた。まぁ、福田みたいな答えの決まった勉強ばっかり
している子のために出した宿題やからなぁ、こう答えてもらえれば問題無いわ。
中澤は、福田は目も合わせずに思い付きませんでしたと言うと思っていたのだった。
「そっか、しゃあないな。じゃあ次」
中澤は改めて福田を見た。そして改めて驚いた。
あの福田が微笑んでる! 何があったんやろ?
でもまぁ、宿題の効果としたら文句無しやなぁ。中澤はノートで口を隠して笑った。
136 :
11:2001/08/19(日) 23:17 ID:ZaNQIiYc
答えたり答えられなかったりしながらも発表は続いて行った。
座席順に聞いていって次が辻の番というその時、中澤は辻を飛ばして
辻の後ろの席の子を先に発表させた。ちょっとざわざわする教室。
えっ? と辻は中澤を見た。中澤は呼んだ子を見ていて目が合わなかった。
たった1本。繋がっていた糸が切れて、辻は本当にひとりきりになった気がした。
137 :
11:2001/08/19(日) 23:19 ID:ZaNQIiYc
そして辻以外の全員が発表し終わったところで中澤は腕を組んだ。
「なるほどなぁ。みんな結構まじめに
考えてくれて先生嬉しいわ。じゃあ最後に辻、発表しぃ」
中澤先生がそう言うとクラスの全員が辻を振り返って見た。
辻はゆっくりと立ち上がり、小さな声でうつむいたまま言った。
「…おもいつきませんれした」
辻がそう言うとクラスからはやっぱりなぁ、辻だもん、と声がした。
えっ? 今度は中澤が辻を見た。うつむいている辻とは目は合わなかった。
138 :
SN:2001/08/19(日) 23:27 ID:ZaNQIiYc
第11話終了です。
>>118 え? 何だろ、新しい展開?
>>119 そっすか? そんな言われると照れちゃいますね。
>>120 私も他の人の小説読んでるとそうです。だんだん出てくるのが
すごくわくわくするんですよ。
>>121 好きですよ〜ドラクエ。特に5が一番好きなんですよ。
ビアンカが良かったです。可愛いかった。
>>122-128
>>131 ありがとうです。なんかまた急にたくさんスレ立ちましたよね。
>>129 あらあら。ありがとうございます。ちなみに私の心の1位は
SUNSUN39号さんのエスパー真希です。すごく感動しました。
>>130 ありがとうございます〜。あれは不思議なくらいほめられましたよ。
139 :
名無し娘。:2001/08/20(月) 03:44 ID:qAvwd5hM
期待しています
ののたん、どうしちゃったんだろ・・・。
元気だせワッショイ!ワッショイ!
141 :
名無し娘。:2001/08/20(月) 20:43 ID:iacErgqo
ま、こんなこと言うのもアレだけど、
どうせ表記するなら、「あたしの声〜」が正解だよね。
学校の帰り道、中澤は辻を呼び止めた。
「どうしたん、辻ぃ?
なんでさっき『ペイ・フォワード』の事言わなかったん?」
振り返った辻の目には涙がたまっていた。
その顔を見て中澤は大きなため息をついた。
「辻、送っちゃるからうちの車乗ってき」
車内は2人とも無言だった。
車は辻の家では無く、辻の家から目と鼻の先のパスタが評判の喫茶店で止まる。
不安そうに見上げる辻に中澤は笑顔を見せた。
「担任同伴なんや。寄り道しても怒られんやろ。さぁ、降りや」
143 :
12:2001/08/21(火) 01:01 ID:XS6gAdsU
喫茶店に入ってもやっぱり2人は無言だった。うつむいてる辻とコーヒーを飲む中澤。
ふぅ。やっぱりうちから話さなかったらあかんか。
コーヒーを飲み終えると中澤は聞いた。
「なぁ、辻。先生、なんで辻に最後に発表させようとしたかわかる?」
辻は首を横に振る。中澤はゆっくりと切り出しはじめた。
「先生なぁ、この間居酒屋行ったんよ。ひとりさみしくな」
辻がうつむいたままくすっと笑った。中澤も微笑んだ。
144 :
12:2001/08/21(火) 01:03 ID:XS6gAdsU
「おっ、笑ろたな? まぁ聞き。でな、じゅうぶんまったりして
さぁ出よう思たらな、お金が足りへんのよ。300円。先生超あせったわぁ」
「…それれ、ろうしたんれす?」
辻のあいづちに中澤は目だけを向けた。
「先生、みっともなくなカウンターで財布ひっくり返して
小銭まで数えたんやけど、どう考えても足りん。そこで友達を呼ぼう思たらな」
「はい」
「なんと! 親切な人が『もしかしてお金足りないんですか?』って
言ってくれてな。その足りない300円、くれたんよ」
「おおぅ」さっきまで泣きそうだった辻は居なくなっていた。「それれ?」
145 :
sage:2001/08/21(火) 01:04 ID:XS6gAdsU
「先生な、もらうのは悪いからあとで返します言うたんやけど、
『良いんです。その代わりこのお返しは他の3人に返して欲しいんです』って
その子言ったんや。もう先生すっごく驚いたわ」
辻も目を丸くしている。「うん、それれ?」
「でな、その子にもしかして『ペイ・フォワード』とか言わへん?
あんた何で知ってるん? って聞いたんよ。その子も驚いとったわぁ」
「そうれすかぁ…」
そこで辻ははっとした顔になり、またうつむいてしまった。
そんな訳ない。いくら何でもそんな早く広まんないよ。
実行したての時はすぐ広まると思ってた辻も、そんな考えはもう持っていない。
「…? あ! もしかして、先生のつくり話やと思ってるやろ?」
辻はうなづいた。
146 :
12:2001/08/21(火) 01:05 ID:XS6gAdsU
「つくり話やないで。辻が『ペイ・フォワード』を
もう実行してた事なんて先生知らへんかったもん」
「うちのママとかにきいたんれしょ? ろうせ」
「いや、ほんまの話なんやて! 知ってるやろ?
先生を助けてくれた子は安倍って名前の子やったんけど」
辻はちょっと考えて、やっぱり首を横に振った。「きいたことないれす」
無理もない。安倍とはなつみの名字だが、なつみは辻の前で
名字は名乗っていなかった。
147 :
12:2001/08/21(火) 01:06 ID:XS6gAdsU
「嘘やろ? だってその子はののちゃんから聞いた言うとったで」中澤は驚いた顔を
して見せた。「あ、そうや! ののちゃん宛に伝言も預かって来てるんやでぇ」
そんな都合の良い話ある訳ないよ! 辻は顔を上げた。
その口はきゅっと結ばれて、目がちょっとうるっとしてる。
うっ。中澤は固まる。
この顔だ。怒りだしそうな泣き出しそうなこの顔をされると言葉につまる。
「せんせい。ののかえります」
辻はそう言うと喫茶店を出て行ってしまった。ぽつんと残された中澤は
しばらくしてから辻の出て行ったドアに向かって呟いた。
「伝言…聞かへんの?」
コーヒーカップを手に取ると空だった。なので水を飲む。「ホンマなのになぁ」
まぁ、あと1週間で9月、新学期や。その時話せば良いか。
148 :
SN:2001/08/21(火) 01:10 ID:XS6gAdsU
第12話題終了です。うっかり上がってしまいました。
自分でもびっくりのミス。
>>139 ありがとうです。まぁ、期待はそこそこにまったり読んでください。
>>140 わかりずらかった? ごめ〜ん。
>>141 あはは。まぁあんな泥臭いタイトルつける人あんまり居ないから。
ちなみに私は「君から貰った切ない勇気」ってタイトルを見て、
あぁ私も泥臭いタイトルで書こう、って思って名付けたんですよ。
健太の影響かよ! って感じ。
149 :
ぼかあねえ:2001/08/21(火) 04:00 ID:FlLPdlH6
>>138 エスパー真希!!!!!!
「私は笑って唇を噛んだ」
いいっすね〜。
がんばってくらはい。
え〜話しだ・・・ちょっと感動した♪
まっ昼間から鳥肌立っちゃったよ(ゾクゾク
続きガンバってね
面白カキコ
152 :
108:2001/08/21(火) 14:57 ID:APvY7Ukk
いいことを実践してる( ´D`)が一番かわいそうな目に。
でも、なっちは約束を守ってくれたようでうれしいっす。
「仮面ライダーのの」見てきました。面白かったです。
くそスレになりそうな所を救ってましたね。
「ミニポポ探偵団」はまだ見つかってないですが(ミニモニ探偵団とは
違いますよね?作者名が違うんでたぶん違うと思うんですが)
もうちょっと探してみます。
あと「あたしの声〜」でしたね。すいません。
7月終わりの土曜日。
その日の石川梨華は上機嫌だった。失くしちゃったと思った指輪も見つかったし、
何と言っても2人っきりで旅行に行ける事が梨華の機嫌を良くしていた。
相手は約束の時間を過ぎても来ていないがまだ気にならない。
高校生活最後の夏休みとは言え、泊まりがけで旅行に行けるなんて!
「あと5分たっても来なかったら携帯に電話しよう」
そして5分経過。来ない。頼んだアイスティーも来ない。
梨華が電話しようと携帯を持ったその時、メールが届いた。
『後ろにいます』
えっ? と思った梨華が振り返ると待ち人はそこに居た。
「お待たせしました」アイスティーも同時に来た。
154 :
13:2001/08/21(火) 23:06 ID:UYNM6Wig
「遅いよ、よっすぃー。何飲む?」
「ごめんごめん。うん、じゃあアイスコーヒー」
よっすぃーこと吉澤ひとみが席に座る用意をする間に梨華はアイスコーヒーを注文する。
梨華が待ち切れないように聞く。「ねぇ。旅行の行き先、考えてくれた?」
「うん、考えた。紀州。和歌山に行こうよ」吉澤はそう言ってバッグから
ホテルガイドや交通マップをどっさりだした。
「紀州? 何があるの?」
吉澤は照れたように笑って「ラーメン」と言った。
155 :
13:2001/08/21(火) 23:08 ID:UYNM6Wig
「紀州かぁ」きれいな言葉だな、と梨華は思った。「うん。よっすぃーが良いなら
そこに決定ね。じゃあ、旅館とかも決めなきゃね」
ウェイトレスがコーヒーを持って来ると梨華は「私がやるね」と言って
ミルクとガムシロップを入れてゆっくりとかき混ぜ出した。
その様子を見て吉澤は笑う。
「嬉しいけど、そこまでしてくれなくても良いよ」
梨華はそれには答えずに話しだした。「ねぇ聞いて。この間ね…」
156 :
13:2001/08/21(火) 23:09 ID:UYNM6Wig
「ふぅ〜ん、『ペイ・フォワード』ねぇ」吉澤はコーヒーを飲んだ。「まぁ、指輪を
見つけてくれたそのののちゃんって子には感謝しなきゃ、だよね」
「私達の想い出の指輪だしね。…ねぇ、なんか素敵だよね、こういうのって」
「でも流行らないよ」吉澤はあっさり言った。
「え? どうして?」
「今の日本じゃそういうの無理じゃない? 他人には無関心って人ばっかだし」
その言葉を聞いて梨華はほほえんだ。
「そうだよねぇ。他人だったら、難しいよねぇ」
157 :
13:2001/08/21(火) 23:10 ID:UYNM6Wig
その言い回しに吉澤は疑問を感じた。「どういう事?」
「ねぇ、よっすぃー? さっき」梨華はアイスティーに口をつける。「私がコーヒーを
頼んであげてミルクとガムシロ入れてあげたの嬉しかったでしょ?」
「あっ」吉澤は気付いた。「まさか、梨華ちゃん…」
「その、まさか」梨華がほほえんでる。「この親切のお返しは、誰か私以外の
別の3人にしてあげてね」
158 :
SN:2001/08/21(火) 23:17 ID:UYNM6Wig
第13話終了なり。
>>149 良いですよね〜、エスパー真希。私も何度読み替えしたか。
だいぶ自分が書く上でも影響受けたし。ちなみに私はよっすぃーとの
対決の「1分、切った」からが好きです。
>>150 本当に!? 何か嬉しいような不思議な感じです。
頑張りますよ〜。そんな風に言われたら力も入りますって。
>>151 仮面ライダーののは1の書かない発言見て、じゃあ、って書いたんですが、
思い付くままに書いたら矛盾だらけになっちゃって続きを書いてくれてる
人に本当に申し訳ないです。でもまだやってるんだよねぇ。すごいです。
159 :
SN:2001/08/21(火) 23:46 ID:K92HuuyQ
>>158 の
>>151 ってのは
>>152 の間違いです。
あらためてもう1つレス。
>>151 ありがと。狼からわざわざ見に来てくれて嬉しいです。
ところでスレッドの圧縮なかなか無いですねぇ。新メン入り待ち?
160 :
名無し娘。:2001/08/22(水) 01:01 ID:vwKQm59c
梨華ちゃん、それ親切じゃなくてお節介じゃ・・・(w
ベストフレンドの2人思いだしたよ、あれも良かった♪
次はいったい誰が登場するんだろ
まだかなぁ。
石黒彩はあせっていた。
今日はやっと取り付けた大本命とのデートで、バンドをやってるその彼は
忙しい人だから遅刻なんてする訳にいかないってのにどうして。
どうして私はお腹が痛くてトイレで待ってるんだろう?
163 :
14:2001/08/22(水) 23:09 ID:1qHE67h2
あぁもう! こんな時に限ってこうなるんだから!
石黒の顔に脂汗が浮かんでいた。やばい。時間に間に合わないかも。
片想いなのは解っている。
それだけに約束の時間に遅れても待っていてもらえる自信がない。
電車の中で危険信号が飛んだため慌てて駆け込んだ駅のトイレ。
見ると石黒の前に3人の女性が居る。でも次のトイレを探す気力はもうなかった。
はぁ。気が遠くなりそう。石黒は腕時計を見た。
164 :
14:2001/08/22(水) 23:10 ID:1qHE67h2
まいったなぁ。せっかく良い服着てるのににおいとか
ついたらどうしよう? 走ったから髪とか崩れてる?
まったく! 普段は逆に出なくって困るくらいなのに!
1人が出て来て1人が入った。あと2人。腕時計を見る。まだ大丈夫…?
ふと、そこで前の女性が振り返った。
「あの、大丈夫ですか? 顔、真っ青ですよ?」
165 :
14:2001/08/22(水) 23:11 ID:1qHE67h2
「大丈夫です。どうもありがとう」嘘だけど、そう答えた。
「良かったら先に使ってください。あたしは平気だから」
その子が女神のように思えた。17、8歳か。よく見るとその顔は天才的に可愛い。
また1人が出て来て1人が入った。待ってるのは石黒とその子だけになった。
マジでやばい。たぶん顔から流れる汗の量は倍になってる。
余裕が無い。石黒は上目づかいで「本当に、良いの?」と聞き直した。
166 :
14:2001/08/22(水) 23:12 ID:1qHE67h2
その子は微笑みながら「ええ」と言った。「高そうな服着てるし、髪もメイクも
バッチリで、時計ばっか見てる。お姉さん、今日大事な日なんでしょ?」
その言葉とその思いやりに石黒は涙ぐみそうになる。感動した。
「そうなの」石黒も青い顔ながら微笑み返すと名刺を取り出して「本当に
助かるわ。今度絶対お礼する。ここ電話して。必ずよ」と言った。
その子は名刺を受け取った後、照れたような困ったような顔をした。
「あのぉ、お礼って言うか、その代わりって言うかなんですけどぉ…」
167 :
14:2001/08/22(水) 23:14 ID:1qHE67h2
個室が空いて石黒が先に入った。
…ふぅ。助かった。
さっきの子、本当に可愛いかったな。人に親切にする子はやっぱ違うわ。
でも何だっけ? さっき言ってたの。『ペイ・フォワード』だったっけ?
よく解らないけど、他人に親切にする運動なのかな?
まぁ良いや。あの女の子にお返し出来たら私はそれで良いんだし。
「後で考えよっと。それよりデート、デート!」
石黒は時計を見た。良かった、まだ何とかデートには間に合いそうだ。
全速力で走れば。
168 :
14:2001/08/22(水) 23:15 ID:1qHE67h2
「ごめんねぇ」吉澤ひとみが手をあわせながらトイレから出てくると、石川梨華は
大きな荷物に腰掛けて待っていた。
「ううん。私は良いよ」梨華は本当に気にしてない。「それよりもう大丈夫?
せっかく和歌山まで旅行に来た初日にねぇ。おなか壊しちゃうなんて」
「でも悪い事ばかりじゃなかったよ」吉澤はさっきの出来事を梨華に話した。
「すごい! 『ペイ・フォワード』もう実行したんだぁ」
手を叩いて喜ぶ梨華に吉澤は照れる。
「あ、でも梨華ちゃんこそ本当にトイレ行かなくて良いの? いっつも
しないよ、しないよ、なんて言ってるけどさ」
梨華はただ微笑むだけだった。
169 :
SN:2001/08/22(水) 23:19 ID:1qHE67h2
第14話終了っす。ちょっとあまりキレイじゃない話で
申し訳ないっす。
>>160 おぉ〜。わざわざありがとうです。私も行きやすくて良いです(笑)
>>161 って事で次は石黒でした。石黒って。
170 :
108:2001/08/23(木) 00:23 ID:0IXrvpWA
>>160 ありがとうございます。
やっと読めました。ミニポポ。
ただの推理ものだけじゃなくて加護のさりげない優しさ
などホッとしました。加護のフォローがないと( ^▽^)が
かわいそ過ぎますよね。
これでSR、SN通っすね(w
最後の2行目にワラタ・・・でも
>>168 するよ
172 :
名無し娘。:2001/08/23(木) 02:21 ID:n.gXcF12
>>171 しないよ
2行目より最後の行、質問にただ微笑で返す石川のほうが俺は笑えた。
173 :
:2001/08/23(木) 12:36 ID:U/BfEqh6
緊急事態発生?
警戒警報発令中?
何か沢山消えてるので、読んでいる小説は保全します〜
念のため時々保全させてもらっても良いでしょうか?
175 :
名無し娘。:2001/08/24(金) 01:22 ID:2jlQvyxQ
圧縮あったんでしばらくは安全だと思うけど保全
176 :
:2001/08/24(金) 08:37 ID:SplMkoRM
177 :
名無し娘。:2001/08/24(金) 23:28 ID:CeCUinao
ぬわんとあやっぺ登場。
ほのぼのしてていい感じっすね。
178 :
:2001/08/25(土) 10:57 ID:QZG.pguI
179 :
:2001/08/26(日) 00:04 ID:PnN8uWXE
180 :
:01/08/26 12:24 ID:siypZWlU
保