天使たちが荒野を往く

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1氷雨
天使たちが荒野を往く。

♯1

「よっすぃー!」
突然名前を呼ばれ、吉澤は振り返る。
クラスメートの後藤が放課後すぐで混み合う廊下を、
強引に人を押し退けるようにして駆け寄って来る。
「明日さ、ガッコ終わったらパルコのバーゲン行かない?」
「え? バーゲンって今日からじゃないの?」
「今日でもいいけど、でも、よっすぃー、今日は都合いいの?」
「いや・・・今日はちょっと・・・野暮用っていうか・・・」
「そ。じゃあ、やっぱ明日ね」
「うん・・・」
と、後藤は突然吉澤の目の前まで顔を寄せる。「明日、泊まってもいい?」
吉澤は困ったように笑みを浮かべ、頷く。
後藤が泊まりに来る、ということはつまり、そういうことだ。
にんまり笑うと後藤は、「じゃーねっ」と、手を振ってまた教室に戻っていった。
吉澤の中で、今の会話の何かが引っ掛かった。
まさかね――。
吉澤は心の中で呟くと、思い浮かんだ考えを自嘲気味な薄い笑みで打ち消し、
靴箱に向かって階段を下りていった。
2氷雨:2001/07/30(月) 18:28 ID:iceeLHCo
学校を出て、いつものように電車に乗る。まわりは女子高生の嬌声が弾けていた。
時々あちこちから携帯の着メロが鳴る。
車内は帰宅する学生で混んでいた。吊り革につかまっていた吉澤の目に、遠くのビルの間から薄い夕焼けが映った。
ふと、時計を見る。後藤が誕生日にくれたものだ。
大丈夫。予定通りだ。吉澤は心持ち、形のいい唇を引き締めて顔を上げる。
大きな分岐駅で、またいつものように列車を降りる。帰宅ラッシュを控えた駅は、様々な学生服が行き交っている。
ここからはいつもと違う。
吉澤はトイレに向かう。幸い、一番奥の個室が空いていた。
個室に入ると吉澤は鞄から着替えを取り出し、速やかに紺ブレの制服を脱ぎ、ネクタイを緩めた。
3分後、個室から颯爽と出てきた吉澤は、黒のハーフコートにジーンズという地味な出で立ちだった。
靴も、よくフィットしたグレーのシューズになっている。洒落た感じよりも動きやすさ重視の服装だ。
鏡の前に立って手早く乱れた髪を手櫛で簡単に整えると、貸しロッカーに鞄を放り込み、家とは別方向の電車のホームに降りる。
そして、そのままホームの最後尾まで一定のペースで、人波を縫うようにして歩きつづける。
最後尾まで来ると突然、しかし、さりげなく振り返った。
瞬時に目を凝らす。尾行はされていない。
そこから快速に乗って3駅。降りるとそこは、郊外の高級住宅地が広がっている。
初めて来る場所だが、吉澤の頭の中では、これから行くべきところ、これからやるべきことを、きっちりと理解している。
駅前のロータリーを横切り、迷いなく道を進む。駅から離れるにつれ、人波も疎らになり、やがて吉澤ひとりになった。
3氷雨:2001/07/30(月) 18:29 ID:iceeLHCo
吉澤の後ろで瞬きながら街灯が点いた。すっぽりと夕闇に包まれていく閑静な住宅街を歩きながら、吉澤はコートのポケットに手を突っ込み、その感触を確かめる。
ひんやりとするそれは、いつも吉澤に落ち着きを与えてくれる。
交差点にミラーがあった。吉澤は、目だけで尾行がないのを確認する。尾行なんてないに決まっているが、癖になってしまっていた。
その角を折れるとすぐに、目的の家があった。高い塀が囲む敷地は、隣近所の家の倍はあるだろうか。
きちんと手入れされた庭木のてっぺんがコンクリート塀の上から覗いている。
まずは通り過ぎるだけ。横目で表札を確認する。そして、ひと気がないのを確かめ、再び門の前を通る。
辺りは静まり返り、吉澤の靴がアスファルトを踏みしめる音だけが微かに響いている。
吉澤は立ち止まると塀の上に両手を掛け、軽くアスファルトを蹴ると同時に、肘に一瞬力を込める。
嘘のようにふわりと吉澤の身は浮き上がり、しなやかに塀の向こうに消えた。
素早く庭木の陰に身を隠し、芝生の向こうにある家の中の様子を窺う。1階はカーテンが閉め切られており、中の様子は分からない。
しかし、すでに日は沈み、人がいれば電気を点けるだろうから、誰もいないと判断する。
2階に目をやると、端の部屋に明かりが灯っていた。やはりカーテンが引かれていて中の様子は分からないが、吉澤は四角に切り取られたその明かりを見つめた。
間違いなく「目標」はそこに、いるはずだ。
勝手口に回り、横の配電盤を開ける。思いがけずキィッと金属製の甲高い音が鳴り、咄嗟にカバーを開けるのを止める。
小さく舌打ちしながら、情報通りの配置である事を確認すると、ナイフで必要最低限のリード線を切っていく。これで、警報装置の電源だけが落ちたはず。
4氷雨:2001/07/30(月) 18:31 ID:iceeLHCo
次に勝手口のドアノブに取り掛かる。表玄関はカードキーだが、勝手口はアナログな鍵式だ。吉澤は2本の針金を取り出し、手馴れた動作で鍵穴に差し込む。
まるで手術でもするような繊細な手つきで、15秒も掛からないうちに鍵穴の奥でカチリと小さな音が鳴った。
そっと扉を開け、台所に忍び込む。
薄暗い中に、システムキッチンとカウンター、ダイニングテーブルが浮かび上がる。テーブルの上にはひと盛りのコサージュが彩りを添えている。
吉澤はダイニングを通り過ぎ、シャンデリアが吊られた広大なリビングを通り抜けると、まっすぐに階段へ向かう。
ここで外界からの光は完全に遮断され、真っ暗になる。目を凝らし、手で周囲を探りながら階段に足を掛けた。
家の外観は美しいが、おそらくリフォームしたのだろう、一段一段踏みしめる度に、意外なほど家鳴りがする。吉澤は家鳴りを避けるため、
出来るだけ荷重が集中しないように気を払いながら、1歩ずつ階段を上がっていく。
そのうちに目が慣れてきて、真っ暗な中に周囲の輪郭が浮かび上がってきた。
2階に上がるといくつかのドアがあった。吉澤は一番奥のドアに近づくと、耳をドアに寄せた。
カコ・・・カ、カコ・・・
何の音だろう? ワープロか何かのキーを叩いている?
吉澤は息を殺し、そっとドアを開ける。真っ暗な廊下に光がひと筋伸びた。
5氷雨:2001/07/30(月) 18:32 ID:iceeLHCo
小説始めました。
どっかで見たことある人、いますかね?
ま、この小説、ホントはここで書く予定だったんですけど・・・。
6名無し娘。:2001/07/30(月) 18:34 ID:Y349DjM6
期待してるよ
7名無し娘。:2001/07/30(月) 18:35 ID:i8JSakd2
期待しております。
8山田君:2001/07/30(月) 18:38 ID:OdXh7GUY
一番最初のヤツ(つまりこれ)しか読んでない
続きはそのうち・・・
9名無し娘。:2001/07/30(月) 19:21 ID:wf/LEIw2
>>1
おい、パクリだろ
氏ねよ
10名無し娘。:2001/07/30(月) 19:22 ID:2NlPuRTQ
本物の作者?

あれとはまた違ったストーリー展開にするのかな。
楽しみに待ってます。
11ちろりん:2001/07/30(月) 21:17 ID:KZiG0yHk
本物の作者はここにいます(笑
えー、今は別ハンで、こちらで改訂版を連載中です
ttp://www.geocities.com/rika_hitomi/index.html
>>1
コピペはやめてね!
つか、これで3回目なんだけど・・・同じ人じゃないよね?
12名無し娘。:2001/07/30(月) 21:23 ID:VTgp4RBE
>>11
だよな〜。
HPちゃんとあるのに、わざわざ羊で始めるのおかしいと思ってたよ。
ここはやっぱ1の家臣その他に出てきてもらうべきだな(w
13名無し娘。:2001/07/30(月) 23:32 ID:0MaUV8fo
なんだこりゃ・・・サイアクだな
>>11
改訂版もROMらしてもらってます。
がんばってね〜。
14名無し娘。:2001/07/31(火) 01:41 ID:kMlgDjrE
1のからあげです
15山田君:2001/07/31(火) 10:00 ID:sNUA1bBA
なんと!偽物だったのか
名前違うな〜とか思ってはいたが・・・
16名無し娘。:2001/08/03(金) 19:08 ID:pEsX19Zg
あそこのってコピペ禁止じゃないの・・・?。
17名無し娘。:2001/08/05(日) 22:28 ID:.vv1dDvU
ふあ
18名無し娘。:2001/08/06(月) 20:46 ID:CZZ9MPqs
-
19名無し娘。:2001/08/07(火) 09:00 ID:Hn/86WwQ
あげ
20名無し娘。:2001/08/07(火) 09:02 ID:ZEJSf9zE
ぷー
21名無し娘。
>>12
1の家臣でござる。
この度は殿がかように愚かしき板を立ててしまい、家臣一同お詫びの
言葉もござりませぬ。
殿は先の戦での大敗以来すっかりお心を病んでしまい、昼は村娘をかどわかし、
夜ごと酒を召しては家臣に斬りかかる毎日でござる。 .
奥方様は病で倒れ、折からの飢饉で民は飢え苦しみ、近隣諸国の大名はこれ幸いと
ばかりにわが国との国境を侵し始めている次第にござりまする。
家臣の中にも殿に翻意をいだく者が多く、このままではお家存亡の一大事に
なりかねませぬ。
しかし、ご安心下され。間もなく殿には出家していただく手はずにござる。
殿が寺に向かう途中に手練れの者をひそませ、殿のお命を頂戴する算段が
整っておりまする。その後は殿の甥にあたられる茂名の上(もなのかみ)様を
殿として迎え我ら家臣一同忠勤を尽くす心づもりでござる。
皆様方には迷惑をおかけして、まことに申し訳ござりませぬが、今しばらくの
辛抱でござる。なにとぞ、なにとぞ殿の此度の所業をお許し下さいませ。