さあゆけ! ミニモニ。探偵団

このエントリーをはてなブックマークに追加
1しげプー
 事件は石川のこの一言から始まった。
「ねえ、私のマメ大福、知らない?」
2しげプー:2001/07/22(日) 04:48 ID:Af04Acrc
 収録直前の慌ただしい中、どこまでも呑気な石川に、保田は苛立ちを募らせた。
「知らないわよ! バカ言ってないでさっさと用意しなよ」
「えー、だって……」
「自分で食べたんじゃないの」
 鏡ごしに、後藤が化粧を直しながら興味なさげに言う。
「食べてないよ。さっき、ここに置いたんだもん」
 口を尖らせて、部屋の中央に置かれたテーブルを指さした。厳密に定められているわけではないのだが、楽屋での席順はそれとなしに決まっていた。
「おかしいなぁ。どこ行ったんだろ」
 自分の席の辺りを見渡しながら呟く。諦めがつかない様子で、人差し指を顎にあて、カバンの下を覗き込んだりしている。ヲタが見れば喜ぶであろうその姿も、たえず一緒にいるメンバーにしてみれば苛立ちの原因でしかない。
3しげプー:2001/07/22(日) 04:49 ID:Af04Acrc
 再度、保田の怒鳴り声が飛んだ。
「いいから、準備しなって! もうすぐ、本番だよ」
「は〜い……」
「私のベーグル食べる?」
 隣から吉澤が声をかけた。石川は力無く首を横に振って応える。
「ううん、いい」
 その仕草がかんに障ったのか、今度は飯田が怒鳴った。
「いつまでも、ウダウダ言ってんじゃないの。アンタ、いつものろいんだから、早く着替えなさい!」
 石川は、チラッと飯田の方を向いて、何も言わずに目を伏せた。――別にうだうだなんて言ってないのに。もういらないと思ったから、いいって言ったのに。それにこれ、衣装なのに――。反論したいことは山ほどあったが、やぶ蛇になるのでやめた。
4しげプー:2001/07/22(日) 04:50 ID:Af04Acrc
「のの! 口元にアンコついてるよ!」
 突然、加護が声を張り上げた。全員が一斉に見る。注目され、辻は不安げに視線を巡らせた。そして無意識のまま手を口元に伸ばした。とその時、飯田が叫んだ。
「辻、そのまま! 動かないで!!」
 その声に怯えた辻の肩がピクリと上がる。飯田が足早に近づいて、まさに口元を触れようとしていた辻の腕を掴んだ。そして、褐色に汚れた彼女の頬を指で拭うと、そのままぺろりと嘗めた。
「うん、これは確かにアンコだね」飯田は自分に言い聞かせるように呟いた。
5しげプー:2001/07/22(日) 04:52 ID:Af04Acrc
「辻ぃ!」あきれ返ったように保田が言う。
「私のマメ大福、食べたのののちゃんだったんだ」
「もう、辻ちゃんは食いしん坊なんだからぁ」
 安倍がそうかぶせると、楽屋全体に笑いが起こった。石川もその口調から、特に咎める気はないようだ。加護が辻の肩を抱きながら、笑顔を見せている。
 飯田が「もう、しょうがないね」と言いながら、辻のおでこを軽くこづく。和やかな雰囲気の中、辻の表情だけはこわばったままだった。
「あのぉ。ののは食べてないんですけど」
6しげプー :2001/07/23(月) 01:55 ID:yE5ydBEs
 その辻の一言で、一瞬にして笑い声が消えた。飯田がいぶかしげに辻の顔を覗き込んだ。背後から石川が声をかける。
「いいのよ、気にしてないから」
「そうだよ。辻の意地汚さは、みんな知ってんだから」
 鏡に向かったまま、後藤がそう言う。辻はムッとして応えた。
「ホントに食べてないです!」
「じゃあさ、そのアンコはなに!」
 保田が辻に詰め寄った。その迫力に圧倒された辻は、何も応えられない。
「何とか言いなさいよ!」
「あのー」
 自分の放ったひとことが、とんでもない展開を産んだことに責任を感じたのか、加護が口を開きかけた。
 が保田がそれを「アンタは黙ってなさい!」と一蹴した。
「圭ちゃん、やめなよ。辻も加護もビビッてるじゃん。それに石川もいいって言ってるし」
「圭織は黙ってて。私が怒ってるのはね、大福食べたことじゃなくて、嘘をつくその態度が気に入らないのよ」
「嘘じゃないです!」
 辻は涙ながらに訴えた。だが、状況証拠がそれを否定していた。
7しげプー:2001/07/23(月) 01:56 ID:yE5ydBEs
「泣いたってダメよ! 違うんなら、口元のアンコを説明しなさい!」
「それは……」
「ここにはアンコのお菓子なんて、石川のマメ大福以外ないじゃない! どうしてそんな嘘つくの?」
「もういいって。あとでカオリが言い聞かせるから」
「だいたいね、圭織は辻にあまいのよ。だから、こんなことになるのよ」
 この保田の言葉に、飯田は過敏に反応した。バカにされたように感じたのだ。
「なに? カオリのせい? 圭ちゃんは石川の大福がなくなったのは、カオリが悪いって言うの?」
「そうじゃないって! 私が怒ってるのは、何度も言うように黙って食べたことじゃないんだよ。食べたくせに、食べてないって嘘をつくのが許せないんだよ」
「なんでさ、辻が食べたって決めつけるんだよ。本人は食べてないって言ってんじゃん」
「じゃあ聞くけど、圭織は誰が食べたって思ってんの。辻の口元に付いたアンコの説明は、どうつけんのさ」
「それはさ……やっぱ辻かな」
「ほらぁ、圭織もそう思うでしょ?」
「でもさ、どうしてそれがカオリのせいになんの?」
「もう、だから誰もそんなこと言ってないって!」
8名無し娘。:2001/07/23(月) 19:01 ID:patO96.Q
    





モー娘[矢口]がレイプされていた?
http://user.memberz.to/yaguchi/
ひろゆき@小泉純一郎 ★曰く御自分の目で確かめてください<(_ _)>
僕にも、分かりません。>ひろゆき@小泉純一郎 ★
※現在は、午前中じゃないとつながりませんね。




9しげプー :2001/07/24(火) 04:46 ID:Z.FWsVOo
 ふたりの言い争いは一気にヒートアップしていく。そこへ矢口が割って入った。
「ちょっと、ちょっと。ふたりともやめなよ。もう本番、始まっちゃうよ。それにさ、なんか論点ずれてきてるし」
「そうはいかないよ。悪いことしたら、その場で叱んないと。それが躾ってもんなの」
「だからさ、なんでカオリが怒られないといけないのさ」
「いや、だからさ、圭織が叱られてるわけじゃないんだけど……と、とにかく、辻もさ、反省してるから、圭ちゃんもおさめてよ。なっ! 辻、反省してるよな」
「ののは……」食べてない、と言いかけたが、その前に矢口が口を挟んだ。
「辻!! とにかく、なんでもいいから石川にあやまんな!」
「……ごめんなさい」
「石川もそれでいいでしょ」
「え? は、はい。……ののちゃん、私は気にしてないから」
「はい! これでおしまい。圭ちゃんも納得した?」
「う、うん……」
 完全に納得したわけではなかったが、時間のないこの状況でまだこだわるのも大人げない気がして、しかたなしに頷いた。
10しげプー:2001/07/24(火) 04:48 ID:Z.FWsVOo
「さっ、じゃ本番、本番。スタッフさん待たせてんだから、みんな急いで!」
 矢口がそう言って手を叩く。だが、重苦しい雰囲気の中、誰も席を立とうとしない。
「もう、なんだよ。……石川! アンタのせいだよ。お前が大福、大福って騒ぐから、変な空気になったじゃんよ!」
「私のせいですかぁ。そんなぁ! 矢口さん、酷いですよ〜」
「そうだよね。ダメだよ、梨華ちゃん。辻のこと苛めたりしちゃあさ」
 クールにそう言って後藤が立ち上がった。
「ごっちんまで、そんなこと言わないでよ」
「まあ、梨華ちゃんらしいっちゃ、梨華ちゃんらしいけどね」
 安倍がそう笑ってスタジオへと足を向けた。
「そうだよ、石川のせいでカオリまで圭ちゃんに怒られたじゃん」
「だからそうじゃないって」
 矢口がそう言いながら、飯田の背中を押して出口へと促す。
「まあまあ、梨華ちゃん」
 不満げな石川の肩を吉澤が抱いた。みんな空気を変えようとして、自分をイジッてるのだ、自分はそういうポジションなんだと、頭で理解しながら、何故か釈然としない石川だった。
11しげプー:2001/07/24(火) 04:49 ID:Z.FWsVOo
 憮然とした表情で保田もみんなの後を追って楽屋を出た。残された辻の目には涙がこぼれんばかりに溜まっていた。そこへ加護が声をかけた。
「のの……」
 ここで下手に慰められたら、我慢できずに声を上げて泣きそうだ。何も言わずにそっとして欲しい――辻は黙ったまま、激しく首を横に振った。その思いに気づいたのか気づかないのか、加護は辻の手を握った。
「行こ」
 そう言われて、辻は頷いた。――やっぱりあいぼんはわかってくれてるんだ――そう思うと、それはそれで泪が出そうになった。
 が、楽屋を出たところで、加護の口から出た言葉は、辻にとって意外なものだった。
「ののさぁ……マメ大福、美味しかった?」
「えっ…………あいちゃん、ホントにののが食べたって思ってるの?」
「……ちゃうの?」
 加護の問いかけに、辻は本格的に泣きそうになった。
12:2001/07/25(水) 03:09 ID:Hwkiy0Co
一段落ついたので、ちょっとコメントです。段落と言っても短編小説なんで
一章、二章のようなたいそうな物ではなく、場面展開の一行空け、みたいな
感じですが。

この作品は「推理小説のようなもの」です。派手なトリック等は出てこないのであしからず。

ずっとsageで書いていくつもりなので、誰の目にも留まらずスレの寿命を終えるかも
知れませんが、とりあえず完結することを目標に頑張っていきます。
13名無し娘。:2001/07/25(水) 18:56 ID:y2yfzq/A
>>1
ちゃんと読んでるよ
頑張って続き書いて
14名無し娘。:2001/07/25(水) 19:29 ID:e7EHUoA2
>>1
いい感じですね。頑張ってください。
151:2001/07/26(木) 05:04 ID:T4wLLonA
>>13,14
暖かいお言葉、ありがとうございます。
読んでくれている人がいることがわかっただけでも励みになります。
よければ、また感想なども書き込んでいただければ幸いです。

保全の意味を込めて毎日、少量づつ更新していくつもりです。
物足りない方は、3〜4日に一度、覗いてやってください。

では、続きです。
16しげプー :2001/07/26(木) 05:07 ID:T4wLLonA
 まだまだ若いといっても、さすがはプロである。楽屋でトラブルがあっても、本番に持ち込むようなことはしない。収録は順調に進んだ。
「OKで〜す! じゃ、15分休憩はいります!」
 スタッフに「お疲れさまです」と声を掛けながら、メンバーは前室へと戻った。大きなテーブルがあり、飲み物や週刊誌などが置かれていた。各々、喉を潤わせたり台本を読み直したりしている。スタジオからはセットチェンジしている大道具の音が漏れていた。
「矢口さん、矢口さん」
 台本片手に、次の段取りを確認していた矢口に、加護が近づいた。その後ろには不安げな辻の姿が見え隠れしている。
「なんだよ、オイラ次の段取りで忙しいんだけど」
「さっきのですね、梨華ちゃんの大福の話なんですけど……」
17しげプー:2001/07/26(木) 05:08 ID:T4wLLonA
「はあ? まだそんなこと言ってんの。それより、また本番中に2人で雑談してたでしょ。なんべん注意したらわかんのよ。矢口には背中にも目があるんだから。後列に座ってるからって気ィ抜いたらダメだろ」
 当然のことながら、矢口の背中や後頭部に本当に目があるわけではない。前面に置かれたモニターをチェックしていたにすぎないのだが、日ごろからモニターなど見ずに好き勝手やってる辻加護にとっては、さすが矢口さんなにもかもお見通しだ、と関心するばかりである。
「ごめんなさい……で、その背中にも目がある矢口さんに相談したいんですけど……」
「なにぃ、もう……えっ、辻が食べたのは消え物!?」
「そうらしいんですよぉ」
 消え物とは収録で使う食べ物全般のことである。食べてしまうとなくなってしまうことから、そういう呼び名がついた。
 加護の話によると、辻が食べたのはこの後クイズの賞品で使われる、老舗名店のどら焼きだと言うのである。
18しげプー:2001/07/26(木) 05:10 ID:T4wLLonA
「そうなの?」
 矢口が尋ねると、辻は頷いて見せた。
「じゃ、なんでそう言わなかったの」
「だって……」
 促され、辻はその経緯を話した。楽屋入りする時に、舞台裏に置かれたどら焼きを見つけたそうだ。
「スタッフさんが、いっこあげるから、みんなには黙ってなさいって」
 辻のその言葉を聞いて矢口は台本をくった。確かに、ゲストを交えてのゲームが企画されており、勝者に賞品が出ることが記されている。なにが出るかまでは書かれていない。
「これのこと?」
「たぶん……」
「う〜ん」
19ののたん:2001/07/26(木) 07:55 ID:K7D5LCf.
( ´v`)<ののはたべてないのれす・・・
20うじ:2001/07/26(木) 07:57 ID:rRMqk39I
美少女排泄隊の見すぎ。
21名無し娘。:2001/07/26(木) 08:23 ID:4YPPw02k
なかなか面白そうですね。
続きを楽しみにしています。
22名無し娘。:2001/07/26(木) 08:40 ID:MmxUBKJA
おもしろい!各人の特徴が出てて情景を想像しやすいね
23名無し娘。:2001/07/26(木) 08:42 ID:MmxUBKJA
>>20 なあにそれ?
24名無し娘。:2001/07/26(木) 11:04 ID:WWVMriPo
続きが気になって仕事が手につかないよ
25しげプー :2001/07/27(金) 04:03 ID:nnpENoUM
 矢口は腕を組んで考え込んだ。辻の性格からして、スタッフに言うなと指示されれば守るだろう。今回のように、濡れ衣を着せられる状況なら、喋っても誰も咎めないだろうが、全員が集まっている楽屋でばらしてしまうには、やはり抵抗がある。その辺りは十分理解できた。
「じゃあさ、誰が食べたの? 石川の大福」
 加護と辻は揃って首を振った。
「わかんない……」
「でも、ののじゃないです!」
「わかった。辻の言いたいことはじゅーぶんわかった。でもさ、この件に関しては、もう治まったんだし、今さら蒸し返すことはないと思うんだよ、矢口は」
 そう諭す矢口に、加護が反論した。
「でも、ののはホントに食べてないんですよ?」
「うん、そうだね。それは加護の言う通りだ。でもほら、辻はさ、前にもなっちの持ってきたお菓子を、黙って全部食べちゃったことがあったでしょ」
「……はい……食べちゃいました」
「この間もさ、差し入れのケーキを、お礼言う前に先に食べて、圭織に怒られてたじゃん」
26しげプー:2001/07/27(金) 04:05 ID:nnpENoUM
「……はい……1時間ぐらい、説教されました」
「だろ? だったらさ、いいじゃん大福事件がいっこ増えるぐらい。今からさ、大福食べたの辻じゃないなんて言ったら、じゃあ誰が食べたんだってことになるでしょ。そしたらまた、さっきみたいに変な空気になっちゃうよ。そんなの辻もヤだろ?」
「……はい……ヤです」
 辻は憮然としながらも同意した。矢口は、自分の説得が通じたことに、満足げに頷いた。だが、そこに加護が割って入る。
「でもね、でもね、矢口さん」
「チッ、なんだよお前は。辻が納得してんだから口出すなよ」
「ちゃうんです、ちゃうんですよ」
「な〜にが違うんだよ! オメエは黙ってろバカ!」
 話の腰を折られた矢口は、苛立ちげに返した。だが、加護は怯まない。
「ののは嘘つきじゃないですよ!」
「えっ……」
 これには矢口もまいった。返す言葉が見つからなかった。
27しげプー :2001/07/28(土) 04:33 ID:.ElX7m8A
「ののはね、嘘つく娘じゃないんです。安倍さんのお菓子食べたときも、自分から言ったし、先にケーキ食べたときも、ちゃんと謝ったし、矢口さんの口紅、折ったときも……」
「ダ〜! うるさぁい!! 加護の話は無駄に長いんだよ」
「でも……」
「わかったって。アンタは辻が嘘つきって思われるのが嫌なんだろ。わかったよ、矢口が悪かったよ」
「じゃあ」
 辻加護は顔を見合わせた。自然に笑みがこぼれる。
「ただし! あれは辻の仕業じゃありませんでした、だけじゃみんな納得しないだろうし、さっきも言ったようにメンバーに変な空気が漂うのも、矢口はゴメンだからね」
「……どうするんですか?」
「決まってるじゃん。ウチらで真犯人をさがすんだよ。で、本人の口からみんなに謝ってもらうの」
「えー! 無理ですよぉ」
「加護は辻の無実を晴らしたいんだろ。だったらやるしかないじゃん。取りあえず、アンタたちは石川が最後に大福を見たのがいつだったのか、確認してきなさい。それから、他のメンバーの入り時間、楽屋に入ってからなにをしてたのか。その辺を探るの」
28しげプー:2001/07/28(土) 04:34 ID:.ElX7m8A
「わかりました。で、矢口さんはなにをするんです?」
「オイラ? オイラはねぇ。ほら、捜査の基本は現場百回って言うじゃん。だから、楽屋に戻って手がかりを探してみるよ」
「おお、加護はそんなの、初めて聞きました」
「ののもです。矢口さん、すごいですね〜」
「あったり前じゃん。アンタたち、矢口をなんだと思ってんの? さあ、休憩時間も残り少ないし、さっそく捜査に入るよ」
 矢口が言うと、加護が元気に応えた。
「はい! ミニモニ。探偵団ですね」
「ミカちゃんはいないけどね」
 そう言って辻も笑顔を見せる。その様子に目を細める矢口だったが、厳しい顔つきになって付け加えた。
「ひと言だけいっとくけどね。今のところ、辻! アンタが食べてないって証拠もないんだからね」
 浮かれていた辻の表情が曇る。だが、加護がいっそうの笑みを浮かべて返した。
「矢口さんもね!」
「アンタ、言うね」それに応え、矢口も嬉しそうに笑った。
29名無し娘。:2001/07/28(土) 13:50 ID:epN2GDqs
面白いよ。
30名無し娘。:2001/07/29(日) 00:02 ID:a/Lr/oO2
うん、面白いね。更新を楽しみにしてるよ。
311:2001/07/29(日) 03:31 ID:yPniPb/I
え〜っと。場面転換の一行空けです。と言うことで、今日は更新お休みです。
前回、間違ってageてしまいました。ちょっと反省です。

>>19
そうですね。そんな感じです(w 一応小説なんでのの語は封印してますが、
彼女のセリフは舌っ足らずな感じで読んでもらえれば雰囲気でると思います。
>>20,23
オイラもわかりません。なんでしょう?
>>21,24,29
ありがとうございます。「面白い」の一言だけでも、十分勇気になります。
>>22
あの娘だったらどう言うだろう、こんな時にはどうするだろう、など考えながら
書いているので、そう言ってもらえると、たいへん嬉しいです。
>>30
ごめんなさい。今日は更新ありません。明日は必ず書くので、待っててください。

今後もこのペースで続けていくので、よろしくお願いします。
32名無し娘。:2001/07/29(日) 21:56 ID:E0/.0iRQ
やるねぇ。
先の展開が楽しみ
331:2001/07/30(月) 04:39 ID:OLPkQGo.
>>32
ありがとうございます。これからもやっていきます(なにを?)

では続きです。次のブレイクは2日後の予定です。
34しげプー :2001/07/30(月) 04:40 ID:OLPkQGo.
「どうしたの、ののちゃん」
 ファッション雑誌を読みふけっていた石川が顔を上げた。
「あのぉ、大福のことなんだけどぉ」
「あっ、いいのよ。私、全然気にしてないし」
 辻のことを気づかってか、手を横に振って笑顔で応える。どう返せばいいかわからない辻にかわって加護が言う。
「あっ、梨華ちゃん。そやなくて、いつ大福がなくなったって気づいたん?」
「えっ、それは……みんなに知りませんか? って聞いたときだよ」
 それはそうである。ないとわかったから、声を上げたのだ。つまり本番直前、全員が揃って楽屋にいるときということだ。
「じゃあなぁ、最後に大福見たんはいつ?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「いいから、いいから」
「う〜ん、いつだろ。楽屋に入って、メーク道具とか色々カバンから出して……そんときに大福も出したんだよね。それから……そうだ、よっすぃーとスタッフさんに挨拶に行ったんだ。だから、2人で楽屋を出る前にはあったかな?」
「よっすぃーと楽屋を出たんはいつ?」
「え〜っ、そんなの覚えてないよ」
「じゃあ、楽屋入りしたのは何時ごろ?」
35しげプー:2001/07/30(月) 04:41 ID:OLPkQGo.
「う〜ん、30分ぐらい前かな。マネージャーさんに、本番30分前には、必ず入れって言われてるでしょ。そうだ、今日は私、一番だったんだよ」
 それは本番じゃなくて、入り時間の30分前だろうと加護は思ったが、あえて言わなかった。実際、過密スケジュールの娘。たちは本番ギリギリに楽屋入りすることも少なくない。
「そしたら、梨華ちゃんが入ったときには、誰もおれへんかったの?」
「うん。衣装に着替えてたら、プッチの3人が来たの。で、よっすぃーに聞いたらまだスタッフさんとこ行ってないって言うもんだから、2人で挨拶に行こうってなって。帰ってきたら……ごっちんがひとりで化粧前にいたんだったかな」
「後藤さんひとりだけ? 保田さんは?」
「えっ! そういえば……そうそう、楽屋に帰る途中で、飯田さんと保田さんに会ったんだっけ。これから打ち合わせだって言ってた」
「ふ〜ん。で、楽屋に帰ってきた時にはもう大福はなかったんだ」
「それはわかんない。ずっと大福だけ見てたわけじゃないし。でもね、その後ずっと席に座ってたし、持ってかれたら気づくと思う。なんで、そんなこと聞くの。大福食べたの、ののちゃんじゃなかったの?」
「そっか……うん、わかった。のの、行こ」
 石川の問いには答えず、ふたりはその場を離れた。
36しげプー :2001/07/31(火) 05:28 ID:fZVnYQPQ
 大きな収穫だった。もし大福を盗まれたのが、石川が席を外した際であったとしたら、完全に辻の容疑は晴れるのだ。なぜなら、矢口、辻、加護の3人が楽屋に入ったのは、その後だからだ。
「あいぼん凄い! ののなんか、なんにも訊けなかったのに。古畑さんみたいだったよ」
「そう? ヘヘッ。……じゃ、次は後藤さんに話を聞いてみようか、辻くん」
「はっ! 警部」
 後藤はテーブルから少し離れたところでひとりぼんやりしていた。加護は彼女の前に立つと、中指を額にあて考え込むような仕草を見せた。
「え〜、ちょっといいですかぁ、後藤さん」
「なに、それ? 新しい遊び?」
「いやぁ、実は後藤さんにですね、お聞きしたいことが、ありましてぇ」
「うん、いいよ」
「今日、楽屋入りしたのは何時ごろですか」
「今日はね、どうだろ。本番の30分ぐらい前かな。それまでプッチの仕事だったから、3人いっしょに入ったんだよ」
「フフッ……そうですかぁ。え〜、そのとき楽屋に誰かいましたか」
「梨華ちゃんがいたよ。ねえ、なんでそんな喋り方してんの。なんかのモノマネ?」
「え〜……どうも、古畑任三郎です」
「ああ、そうなんだ。でも全然似てないよ」
「……」
 モノマネを得意とする加護は、後藤の言葉に少なからずショックを受けつつも、尋問を続けた。
37しげプー:2001/07/31(火) 05:29 ID:fZVnYQPQ
 結果、後藤から聞き出したのは次の通りである。プッチの3人が楽屋入りしてすぐに石川と吉澤が出ていった。その後、飯田が楽屋入りする。電話が鳴り飯田、保田の2人が出ていったので、ひとり楽屋に残された。詳しい時間などはまったく覚えていない。
「そうですか、え〜では最後にお聞きしますが、楽屋にひとりでいたとき、メンバー以外の人間は訪ねてきませんでしたか」
「うん、誰もこなかったよ。もう似てないんだから、モノマネやめなよ。それともなんか意味あんの?」
「……」
 モノマネというアイデンティティーを完全否定され落ち込んだ加護に代わって、辻が言った。
「もういっこ、訊いていいですか?」
「いいよ、なに?」
「あの、梨華ちゃんの大福、最後に見たのはいつですか?」
「いつもなにも……私は梨華ちゃんが大福持ってたことすら知らないよ」
「そうなんだ……。行こ、あいぼん……あいぼん、あいぼん!」
「そんなに似てなかったんかな……亜依のモノマネ」
 放心状態の加護の手を、辻は無理矢理引いた。
38名無し娘。:2001/08/01(水) 03:33 ID:hP/LaY7A
なかなか面白い
続き期待してます
39名無し娘。:2001/08/01(水) 03:44 ID:IbzFWdDI
オモシロいっす。
安倍のアリバイ(?)はどーなんだろ?
40:2001/08/01(水) 05:44 ID:c.G0nmV2
恒例の場面転換一行明けです。
お気に入りの小説スレがdat逝きになってしまいました。
続きを楽しみにしていたので、残念です。

>>38
ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです。
>>39
その辺りはおいおい出てきますので。
この件に関してお話したいことがあるのですが、今はその時期でないので
また後日、書き込みします。

続きは明日書きます。
41しげプー :2001/08/02(木) 04:05 ID:waHKNRPQ
 辺りを慎重にうかがいながら、矢口は楽屋のドアをそっと開けた。
「誰もいませんか〜」
 いるはずがない。メンバーはもちろん、マネージャーやスタッフも、スタジオもしくは前室で待機しているのだから。
 矢口は振り向いて廊下に人影がないことを確認すると、ドアの隙間から体を滑り込ませ、後ろ手でゆっくりと閉めた。
 楽屋は会議室ほどの広さである。長手方向の一面の壁が鏡張りになっていて、備え付けのテーブルがある。そこがいわゆる化粧前で、椅子は6脚。反対側の長手方向にはロッカーが並んでおり一番右側が入り口になっている。部屋の中央には、大きなテーブルが置かれており、やはり長手方向に4脚づつ、計8脚の椅子が置かれていた。
 つまり、今入ってきた矢口の右はロッカーの側面、左は壁になっており、正面の鏡には右手を後ろにまわしドアノブを掴んでいる自分の姿が映っていた。
 メンバーの座る場所はだいたい決まっていた。化粧前一番端、いま矢口の立っている正面に後藤。真ん中あたりに安倍。逆側の端、つまり入り口から一番遠い場所が飯田の席。
 テーブルには後藤と背中合わせに石川、その隣に吉澤が座り、一番奥が矢口の席である。矢口の前には辻加護が並んで座り、石川の前には保田が座る。
42しげプー:2001/08/02(木) 04:06 ID:waHKNRPQ
 ちなみに、飯田が一番奥に座るのには理由がある。そこに内線電話が置かれているからだ。
 矢口は、部屋全体を見回しながら、楽屋入りしたときの光景を思い起こした。確か中にいたのは後藤、吉澤、石川の3人だった。
――ドアを開けて「おはようございます」と声をかける。肩を寄せ合って、雑誌か何かを覗き込んでいた石川と吉澤が顔を上げ「おはようございます」と返す。その後ろで、後藤が鏡越しに会釈するのが見えた――。
 あの時、テーブルの上に大福はあっただろうか? まったく思い出せない。
 懸命に記憶の糸をたぐり寄せながら、テーブルへと近づいた。石川が座っていた場所は、今もカバンやら雑誌やらその他諸々で雑然としていた。
「こんだけ散らかってりゃあ、あったってわかんないか」
 そう呟いて、石川のカバンに手を伸ばす。が一瞬、指先が触れそうになって躊躇した。下唇を噛みしめしっかりと頷くと、思い立ったように、自分のロッカーへと向かった。
「捜査にはこれがないと」
 取り出したのは赤と白の軍手だ。
「指紋が付いたら台無しだもんね」
 娘。の楽屋に矢口の指紋が付いてなんの不都合があるのかわからないし、今後指紋の照合など行われるはずがないのだが、なんでも形から入るのが矢口流である。
43名無し娘。:2001/08/02(木) 08:56 ID:nS1knjhU
なんつーか、うまいですね
場面説明も良く出来てるし、人物描写もうまい
他の小説の作者さんですか?
44しげプー :2001/08/03(金) 04:54 ID:Cbn5kjvM
「さて、じゃあ始めますか」
 とは言ったものの、何をして良いのかわからない。取りあえずいつも座っている席に着いて、他のメンバーの動きを思い出そうとするが、これもまったく浮かんでこない。
 化粧前に向かい、手持ちぶさたで前髪を直したり、電話の受話器を取ってみたりしていたが、そんなことをしても新しい発見があるはずもない。ふと足下に置かれたゴミ箱に目がいき、中を覗き込んでみたが、何も捨てられてなかった。
「どうしよう」
 あらためて部屋を見渡す。全体的に散らかっているが、後藤の周りが一番酷い。脱ぎ捨てられた私服が散乱している。飯田や安倍も、上着をロッカーにしまわずに椅子の背もたれに掛けているが、後藤はそれすらせず、椅子の上やテーブルの上でクシャクシャになっている。
45しげプー:2001/08/03(金) 04:55 ID:Cbn5kjvM
 辻加護の周りは、いつも矢口が注意しているし背後がロッカーであることも手伝って、衣類のたぐいこそないが、そのかわり封の開いたスナック菓子やペットボトルがところ狭しと並んでいる。今日は入り時間が遅かったが、いつもならそこにマンガが加わるところだ。
 壁の時計を見上げる。もう残り時間が少ない。楽屋に戻って矢口がしたことと言えば、軍手をはめたぐらいだ。これなら、辻加護に聞き込みを任せないで自分でした方が良かったと後悔したが、今さらもう遅い。
 取りあえず体を動かそうと、テーブルの下に潜ったりするが、何かが見つかるはずもなかった。
 が、彼女は見つけてしまった。ある物をある場所で。左手にはめた赤い軍手でそれを握りしめると、矢口は呟いた。
「そんな、そんなことって……」
46:2001/08/04(土) 03:19 ID:3xlADJxk
一行空けのお休みです。
これまで何とか、このペースを守ってきましたが、そろそろヤバイです。
ストーリーは最後まで決まっているのですが、上手く文章にできません。
風呂敷を広げるのは簡単ですがたたむのは難しいです。

>>43
ありがとうございます。小説を発表するのは今回が初めてです。
今まではネタスレにいたので、人物描写というかセリフ回しは
そのあたりの経験が生かされてるのかもしれません。
47しげプー :2001/08/05(日) 05:56 ID:lXirL1kU
 後藤から話を聞いた後、加護は保田、飯田に、辻は吉澤、安倍にと別れて聞き込みをすることとなった。時間がないせいもあったが、保田に激しく叱られた辻が抵抗を感じたことが大きい。
 保田からは目新しい情報を聞き出せなかった。が、後藤と違い、かなり正確な時間を覚えていた。
「楽屋入りしたのが25分前でしょ、その後圭織が来たのが20分前。すぐに電話が鳴って、打ち合わせするからスタッフルームに来いって言われたんだよ。ホントはなっちと矢口も呼ばれてたんだけど、2人はまだ来てなかったからね。……えっ、途中で石川たちと会ったかって? ……うん、会ったよ。ちょうどスタッフルームから出てくるところだったよ。で、私たちが楽屋に戻ったのが、そうだな、本番まで10分切ってたかな。アンタたちもいたよね? そうそう、なっちがまだだったんだ」
48しげプー:2001/08/05(日) 05:57 ID:lXirL1kU
「ありがとうございました〜」
 その後、飯田にも事情を聞こうとしたのだが、本番の時間になってしまった。
「はい! じゃ本番いきま〜す。5秒前、サン、ニィ……!」
 ADの合図と共に収録が再開される。隣り合わせに座った、加護が辻に小声で聞いた。
「どうだった?」
「うん、あのねぇ。よっすぃーは見てないって」
「なにを?」
「ん〜とねぇ、大福が置いてあったの」
「そうなんだ。見てないんだ。それで?」
「あと、安倍さんもねぇ、大福があったの知らないって」
「ああ、そっか。でも安倍さんはギリギリだったからね、楽屋入ったの。それから?」
「それだけだよ。あいぼんの方はどうだった?」
「へ? それしか聞いてないの?」
49しげプー :2001/08/06(月) 06:12 ID:V4YefhnM
 辻は当然だと言わんばかりにしっかりと頷いた。加護は何か言おうと口を開きかけたが、そのとき、矢口が2人をキッと睨み付けた。(本番中よ)声は出てなかったが、口が確かにそう動いていた。2人は肩をすくめて下を向いた。そしてしばらく経って、また加護が辻に囁いた。
「ののさぁ、なんで他のこと聞かないの? 入り時間とかさぁ」
「だって、よっすぃーは後藤さんと一緒に入ったんでしょ? そのあとは梨華ちゃんがよっすぃーとスタッフさんとこ行ったって言ってたし。安倍さんはののたちよりあとに来たから、聞かなくてもいいかなって」
「でもさ、こういうのはみんなに、おんなじこと聞かないと。そいで、ム、ムジュンテン? ってのをついてくんだよ」
「ふーん。よくわかんないや」
「わかんないか。そういや、加護もよくわかんないや。ハハハッ」
50しげプー:2001/08/06(月) 06:13 ID:V4YefhnM
「!!」
 再度、視線を感じた。矢口だ。目から光線でも出そうな勢いで睨んでいる。セクシービームでないのは確かだ。
 2人は、さも反省してますという風に首をすぼめた。もちろん、本心から悔いているのだが、それが持続しないのが彼女らの持ち味である。
「ところでさぁ、ののはなんでみんなにそんなこと、聞くの?」
「えっ、なんのこと?」
「ほら、大福が置いてあったの、覚えてないかって」
「う〜ん。ののはねぇ、思うんだけどねぇ」
「うん」
「梨華ちゃんって、ホントーに大福持ってきてたのかな?」
 そのとき、スタジオにこの後、行われるクイズの賞品が運び込まれてきた。
 それは老舗名店のどら焼きだった。
51:2001/08/07(火) 04:56 ID:YbFSAwwI
場面転換の一行空けです。

明日は諸事情により更新できません。
続きは明後日書きます。
52名無し娘。:2001/08/08(水) 08:40 ID:KwAUfVEY
hozen
53名無し娘。:2001/08/09(木) 00:28 ID:e7.lkwIM
もうすぐ圧縮有るので念のため保全
54:2001/08/09(木) 05:32 ID:WNguUC52
一日ぐらいは書き込みしなくても大丈夫だろうと思っていたのですが
時期が時期だけに多少の不安はありました。
>>52 >>53さん、心遣いありがとうございます。
きりがないので今後は保全のみにはレスしませんが、1人でも楽しみにしている方が
いるのだと、感謝の気持ちだけは忘れないでいようと思います。

では続きです。
55しげプー :2001/08/09(木) 05:33 ID:WNguUC52
「お前らなぁ、何回言えばわかるんだよ! 本番中は集中しろって言ってんだろーが。このっ、バカ、カス、ボケ、ハゲ、白痴!」
 収録を終えたスタジオの片隅に、矢口、辻、加護の3人の姿があった。もちろん、罵声を浴びせているのは矢口である。
「そんなことよりも矢口さん!」
「加護ォ、お前はホントにめげない奴だな。矢口のことナメてんだろ! いいよ、今度ハロモニの収録んときに、裕ちゃんに叱ってもらうから」
 それはマズイ、と顔を歪めながらも、加護は続けた。
「ホントに出たでしょ。クイズの賞品は、どら焼きだったでしょ!?」
「ん? まあな。で、どうだったのよ。アンタたちの捜査は」
 加護は石川、後藤、保田に対する聞き込みの結果を報告した。例によって、回りくどい話し方だったが、矢口はそれを辛抱強く聞いた。その後、辻も吉澤、安倍の両名とも大福の存在に気づいてない旨を報告した。
「……なるほどね」
56しげプー:2001/08/09(木) 05:34 ID:WNguUC52
「でね、加護は思うんですけど、大福がなくなったのは、梨華ちゃんが挨拶に行ってる間じゃないかなって。だからね、やっぱりののは違うんです」
「なんで加護はそう思うのさ」
「だって、梨華ちゃんは戻ってからずっと座ったままだって言ってるし、その隣のよっすぃーは、大福のこと知らないって言ってるし、そしたら、それまでに大福はなくなったって、加護は思うんですよ」
 矢口は加護の主張にいったん頷いてから、口を開いた。
「でもさ、その隣にいたよっすぃーが犯人かもしれないよ」
「えっ? んーと。それは……ある」
「だろ。まあだけど、みんながいるところで、大福食ってりゃあ、誰か気づくだろうし。加護の言う通りだろうね」
「やった!」
「とすると、取りあえずウチら3人となっちは容疑から外れるね。楽屋入りしたのが、その後だもん」
 矢口がそう言うと、辻と加護は顔を見合わせ、こぼれんばかりの笑みを浮かべた。
「よかったね、のの!」
「うん!」
「お前ら、ホント単純だなぁ。言っとくけどね、真犯人がわからなきゃ、みんなには言えないんだからね」
 見る見るうちに2人の顔が曇る。辻なぞは今にも泣き出しそうだ。
57しげプー :2001/08/10(金) 05:36 ID:/Bv53SdA
「もう〜そんな顔すんなよォ。いちいちひとの発言に反応して。ホント、ホンットに単純なんだから」
「だってぇ……」
「まあ、後は矢口に任せな。悪いようにはしないから」
「矢口さん、楽屋でなんか見つけたんですか?」
 目を輝かせ加護が聞いた。対照的に矢口は顔を曇らせる。
「うん……まあね」と呟いてすぐに明るい表情に戻った。「とにかくさ、アンタたちの話は、すっごく参考になったよ。矢口はこれから頭ん中を整理して、考えなきゃいけないことがいっぱい、いっぱいあるから、アンタたちは先に楽屋に戻ってな」
「……はい」
 よくわからないが、後は矢口さんに任せるしかない。ふたりは頷いて踵を返した。が、スタジオを出かかったところで、矢口が呼び止める。
「ちょ、ちょっと!」
 辻加護が振り返ると、矢口が手招きしている。
「加護、おいで! 辻は行っていいよ」
 ふたりは顔を見合わせ、手を挙げて挨拶を交わすと、加護は小走りに矢口の元へ向かった。
58しげプー:2001/08/10(金) 05:37 ID:/Bv53SdA
「あのさ、加護に確かめて欲しいことがあるんだけど……」
 なにやら相談している矢口と加護を、名残惜しげに見つめながら、辻がスタジオを出る。
「……わかった?」
 矢口がそう確認すると、加護はしっかりと頷き、スタジオの奥へと駆け出した。矢口はその姿を見届け、ひとり考えを巡らせる。
「あれがこうなって、ああなって……もし、こうだとしたら……」
「お疲れさまでーす」
 矢口の姿を見つけたスタッフがねぎらいの声をかけるが、彼女はまったく気づかない。それほどまでに集中していた。そして……。
「よし、これしかない!」
 思案の末、とうとう結論を導き出した。それは複雑な数学の証明問題を解いた感覚に似ていた。だが、違うことがひとつだけあった。それは苦心して解答を出したにもかかわらず、爽快感が伴わないのだ。
――損な役目だね――。矢口は思う。それでも使命感に燃えていた。だがこの時、彼女の行動が、あのような悲惨な結末を導くことになろうとは、思いもしなかったのだ。
59名無し娘。:2001/08/11(土) 00:44 ID:VsHw3uO6
保全あげ
60名無し募集中。。。 :2001/08/11(土) 01:32 ID:VTELX.Fw
>>59
sageでも保全は出来る
61:2001/08/11(土) 05:41 ID:cFpixlT6
場面転換一行空けのお時間がやってまいりました。

>>59
>>60さんの仰るように保全でageる必要はないですね。小説スレは原則sageらしいですし。
ただ作者としては、ageないと人目につかない、でもageると荒らされるかもしれない
というジレンマを抱えています。やっぱり、書く以上はたくさんの人に読んで貰いたいです。
難しいところですね。
62:2001/08/12(日) 05:32 ID:2Msiov5U
すみません、今日は更新なしです。
なんとか明日は書きたいのですが、今日は夕方から予定があり
もう一日、お休みするかもしれません。

いずれにせよ、保全の意味も込めてなんらかのコメントはします。
63名無し募集中。。。 :2001/08/13(月) 00:55 ID:4Rcfd2q2
>>1
続きは気になるのですがマターリやって下さい。
64:2001/08/13(月) 09:13 ID:dvRkiy3U
予定通りというか、予告していたように
今日は更新できませんでした。鬱です。

>>63
ありがとうございます。
あんまりマターリやってると書かなくなりそうなので
てきとうにのんびりやっていきます。
65名無し娘。:2001/08/13(月) 21:47 ID:pwyF7nYY
保全。
66小説更新情報の者:2001/08/13(月) 23:17 ID:CT0C0qDU
小説総合スレッド2で紹介&更新情報掲載しても良いですか?
67:2001/08/14(火) 04:43 ID:cvdlZiwI
>>66
ありがとうございます。ぜひ、お願いします。

さて、ここから事件は解決へと向かうわけですが、以前にも書いたように
あくまでもこの作品は「推理小説のようなもの」であり、
決して本格派推理小説ではありませんので、そこのところはご了承頂きたいです。
「なんだよ、このオチは!」「こんなのインチキじゃねぇか!」
と言われましても困りますのであしからず。
68しげプー :2001/08/14(火) 04:45 ID:cvdlZiwI
 矢口が楽屋に戻ると、私服に着替えたメンバー全員が、テーブルを囲んで待ちかまえていた。
「もう〜遅いよ、矢口! ミーティング始められないじゃんよ」
 一番奥に座る飯田が苛立ちげに言う。
「ごめん、圭織」
 矢口は申し訳なさげに言いながら、末席の加護に近づいた。
「どうだった?」
 加護は頷いて矢口の耳元で囁いた。そして上着のポケットを開いて見せる。覗き込んだ矢口は「よくやったね」と加護の頭を撫でた。
「なにやってんのさ、早く席に着いてよ」
 飯田が急かす。
「あのさ、ミーティングの前に、ちょっと矢口に時間欲しいんだけど」
 矢口が言うと、飯田はあからさまに嫌な顔をした。
「なにぃ!? 後じゃダメなの?」
「うん、ごめんね」
 矢口は申し訳なさそうに下を向いて応える。そして、口元を引き締めると、あるメンバーの顔を見据えた。
69しげプー:2001/08/14(火) 04:45 ID:cvdlZiwI
「ちょっと、こっち来て」
 そのメンバーは、戸惑いながら確認するように自分の顔を指さした。
「そっ。個人的な話があるから」
 矢口が手招きすると、彼女はゆっくりと立ち上がった。他のメンバーは状況が把握できず、ただぼんやりと見ていた。
「あいぼん、違うよね」
 辻が不安げに加護の顔を見上げる。加護はそれに応えず、矢口の顔をジッと見つめていた。そう、この2人だけは、矢口の行動が何を意味するか、知っているのだ。
 呼ばれたメンバーが近づくと、矢口は肩口に手を置いて部屋の隅にと促した。そして、他のメンバーに聞こえないよう、小さな声で囁く。
「あのさ、正直に答えて欲しいんだけど」
 彼女は黙って頷いた。
「石川の大福、食べたでしょ?」
「えっ! だってあれは……」
「辻の仕業じゃないってことは、ウチらもう知ってんの。だからね、嘘つかないで欲しいのよ。もっかい聞くよ。……石川の大福、食べたの圭織でしょ?」
70『TER』及び『Iモード』研究会会長:2001/08/14(火) 04:50 ID:rzLQh0I6
ついに核心に…。(゚д゚;)ドキドキ
71名無し娘。:2001/08/14(火) 19:06 ID:hVHnz4jA
紹介スレからきました。
このスレ初めて知ったよ。
今から読みます。
72名無し娘。:2001/08/15(水) 03:03 ID:qAQwEfpE
> 推理小説のようなもの

まあ矢口が見つけた物が読者に明かされない時点で、
少なくとも推理小説ではないわな。
73:2001/08/15(水) 04:58 ID:AViv95Ew
場面転換、と言うか時間経過を示す一行空けです。
前節が短かったので、今日は休まず更新する予定だったのですが
自分の力不足のため、出来ませんでした。申し訳ないです。

>>71
ありがとうございます。
もし、気に入ってもらえたなら感想でも書いてやってください。

>>72
おっしゃる通りですね(W
その件に関しては、いっぱいコメントしたいことはあるのですが
なにを書いてもネタバレになりそうなので、今はやめておきます。
74名無し娘。:2001/08/16(木) 04:30 ID:LUM0pbK2
次の更新期待してまーっす
75:2001/08/16(木) 06:03 ID:ZIwg1orU
>>74
そう言ってもらえると、ガンバって更新しようって気になります。

感想レスは、本当に力になります。
スレ汚しにならないよう、筆者からのコメントは段落ごとに行ってます。
遅くなるかもしれませんが、必ずレスを返しますので、
ネタバレにならない程度に書き込んで頂ければありがたいです。

では続きです。
76しげプー :2001/08/16(木) 06:04 ID:ZIwg1orU
 楽屋の空気は重かった。早くミーティングを終えて帰りたい。ほとんどのメンバーがそう思っていた。だが、部屋の隅で行われている、矢口と飯田の密談は終わりそうになかった。
「……だかさら、違うって」「……なんでそうなんの!」時折、漏れ聞こえてくる言葉の端々に棘があった。2人の表情も険しい。とてもではないが、声を掛けられる雰囲気ではない。
「なんの話してんだろ」
 安倍が保田の耳元で囁く。
「さあ……」
 ここを治めるのは自分しかいない。保田はそう思いながら、声を掛けるタイミングをはかっていた。だが、事情がわからないだけに難しい。
「もう、いいよ!」
 突然、飯田が声を荒げた。
「ちょ、ちょっと声が大きいって。みんなに聞こえるよ?」
 矢口が慌てる。
「聞こえたっていいじゃん。そうさ、みんなに聞いてもらおうよ!」
「か、圭織、そんな興奮しないでよ」
「どうしたの?」
 ここぞとばかりに保田が訊ねると、飯田は鋭い視線を向けた。
「聞いてよ、圭ちゃん! 矢口がさ、カオリのせいにするんだよ!!」
「はぁ? なんのこと」
 話の見えない保田がそう言って眉をひそめる。飯田は顎でしゃくって、冷たく言い放った。
「言いなよ、矢口」
 矢口は気まずそうにいったん目を伏せた。――言うタイミングを間違ったかな。でも、今日中に解決しておかないと――不安げな表情で、上目遣いに全員の顔を見る。
「あのぉ、実は……石川の大福食べちゃったの、辻じゃなかったん……です」
77しげプー:2001/08/16(木) 06:05 ID:ZIwg1orU
 消え入りそうな声でそう言うと、全員が辻の方を向いた。
「そうなの?」
 石川が優しく訊ねる。かぶせるように安倍が言う。
「じゃ、誰が食べたの? まさか、圭織……」
 辻はどう答えていいかわからず、黙ってかぶりを振った。苛立ちげな保田の声が飛ぶ。
「どうなの、食べたの、食べてないの? 答えなさいよ!」
「あのぉ!」これはまずいと矢口が大声をあげた。「……矢口が説明するから」
 本来なら、こんな形では言いたくなかった。圭織が正直に話すことで、解決したかった。だが、こうなっては仕方がない。矢口は覚悟を決めた。
「今日さ、収録でどら焼きがでたでしょ。辻が食べたのはあれだったんだよ。だから口にアンコが付いてたんだよ」
「そうなの?」
 安倍が訊く。辻は黙って頷いた。
「じゃあ、どうして言わなかったの」
 声を荒げる保田に怯え、萎縮してしまった辻に代わって矢口が答える。
「今日さ、ウチらミニモニ。3人で楽屋入りしたでしょ。その前にスタッフさんに挨拶に行ったんだけど、そんときに辻は収録で使うどら焼きを見つけたらしいんだ。みんなには黙ってるようにって、いっこ貰ったんだってさ」
「口止めされてたんで、言えなかったんだ」
 同情するように石川が呟く。実際、あの状況で馬鹿正直に言いつけを守るのは、この2人ぐらいである。他のメンバーなら、あっさりとどら焼きのことを話すだろう。
「そう言うこと」
 矢口が石川に視線を向けてそう返すと、今度は保田が訊いた。
「それはわかったけどさ。矢口はなんで圭織が食べたって思うわけ?」
78名無し娘。:2001/08/16(木) 15:55 ID:GJh6vTQE
わくわく
79名無し娘。:2001/08/17(金) 03:49 ID:qtVzaYn2
保全
80しげプー :2001/08/17(金) 06:04 ID:ah8x6UOg
 それに矢口が答える前に、後藤が口を開いた。
「ちょっと待ってよ。辻の口元についてたアンコは、本当にどら焼きのだったの?」
「なに? ごっちんは、辻ちゃんが嘘ついてるって思ってるの?」
 後藤の突き放したような言いようが面白くない安倍が訊いた。それに対し、後藤はクールに応える。
「いや、そうじゃないよ。でもさ、こうなったら、なんていうの? やっぱ証拠っつうかさ。一応、確認しとかないとダメじゃん。だって、ウチらの誰かが食べたんだよ?」
「それはそうかもしれないけど……」
「まあまあ、なっち。ごっちんの言うことも一理あるよ。その件に関しては、ちゃんとスタッフさんにウラとってある。矢口が訊いても、答えてくれないだろうから、加護に訊いてもらったんだよ。そしたらさ、確かに本番前、辻にどら焼き渡したって。なっ! 加護」
 加護は立ち上がって頷いた。
「みんなには黙ってなさいって、加護にもいっこくれました」
 そう言ってポケットからどら焼きを取り出し、全員に見えるよう掲げた。
「ホントに辻ちゃんじゃなかったんだ」
 石川が呟いた。
「で、なんで矢口さんは飯田さんが食べたって思ったんっすか」
 今度は吉澤が聞いた。矢口はしっかりと頷いて返す。こんな形にしたくなかった割には、なにやら得意げである。
81しげプー:2001/08/17(金) 06:05 ID:ah8x6UOg
「じゃ、矢口の推理を言うよ。まず、一番に楽屋入りしたのは石川だった。これが本番30分前。そうだよね」
 声を掛けられた石川が慌てて頷く。
「次に入ったのがプッチモニ。の3人。これがだいたい25分前。すぐに石川とよっすぃーの2人はスタッフさんに挨拶に行こうと楽屋を出た。このとき、テーブルの上に大福は置いてあったんだよね?」
 矢口が石川に確認を求める。石川は「そうです」と再度頷いた。
「それから5分後に圭織が楽屋入りして、電話でスタッフさんに呼び出される。圭ちゃんと圭織が2人して出ていったから、ごっちんが1人残されたんだよね」
 後藤が面倒そうに首を数回上下させると、矢口も満足げに頷きかえした。
「その後、石川とよっすぃーが戻って来るんだけど、圭織たちがスタッフルームの前で会ってるんだよね。するとごっちんが1人でいたのはせいぜい3分。ウチらミニモニ。が楽屋に入ったのが、15分前。つまり、石川たちが戻ってすぐにウチらが入ったんだよ」
「うん、そうそう。そうだった」
 吉澤がそう同意するのを目の端で確認しながら、矢口は続けた。
「で、圭織たちが戻ってきたのが10分前」
「そうだね。正確には10分切ってたよ」
 保田がそうフォローする。
「そいで、なっちが入ったのが、本番ギリギリ」
「なっちはいつもそうだからね」
 保田が言うと、申し訳なさそうに安倍が肩をすくめる。実際その時は、なかなか姿を見せないので他のメンバーは相当慌てた。
「……ごめんね」
82名無し娘。:2001/08/17(金) 14:21 ID:5kEIx8eU
83名無し娘。:2001/08/18(土) 03:29 ID:YfwqNbQg
 おもしろいッス。続きが楽しみッス。
 下がりすぎてるようなのであげとくッス。
84しげプー :2001/08/18(土) 05:57 ID:Lt4oLzMc
「まあ今はいいよ、その話は。で、大福がなくなったのがいつなんだろうって考えてみると……」
「もう、話長いよ。もっとさ、簡潔に言おうよ」
 そろそろ飽きてきた後藤が、テーブルにうっぷして言った。彼女にしてみれば、誰が大福を盗んだかなんて興味ないのだろう。
「そ、そう? ごめんごめん。じゃ、簡単に言うと、大福がなくなったのは石川が席を外した間だと思うんだよ、矢口は。だから、取りあえずウチらミニモニ。の3人となっちは違うんだよ。それと、ずっと一緒に行動していたよっすぃーも違う」
「えー! そんなのおかしいよ! なんで決めつけんのさ」
「落ち着いて、圭織。取りあえず矢口の話を聞こうよ」
 興奮する飯田を保田がなだめる。後藤は、また話が長くなるなと、面白くなさそうに下を向いた。
「なんでかって言うとね。戻ってから石川はずっと座ったまんまだったんだよ。着替えも化粧もその前に済ませてたし。少なくとも矢口は石川が動いてんの見てないよ。みんなはどう?」
「うん、そうだった」
 安倍がそう応えたが、すぐさま保田がツッコミを入れる。
「いや、なっちはギリギリだったじゃん、楽屋入りしたの。……確かに、アタシが戻ってから席を立ったのは、そっちの方だけで、こっち側は誰も動かなかったよ。吉澤が後ろ向いて化粧してたぐらいで」
 保田の言う「そっちの方」とは楽屋の奥、ミニモニ。や飯田が座っているあたりで、「こっち側」とはプッチモニ。石川が座っているあたりのことである。
85しげプー:2001/08/18(土) 05:58 ID:Lt4oLzMc
「さっすが圭ちゃん、頼りになるね。ウチらは楽屋に入ったとこだったから、着替えたり化粧したりしたけど、石川の席の方には行ってないよ。これで納得してもらえた?」
「でもさ、楽屋入りしたときはどうなのさ。圭ちゃんはカオリと一緒にうち合わせに行ってていなかったんだから、テーブルの上の大福、見つけて取ったかもしれないじゃん」
「えっ、どういうこと?」
「だからさ、そっから見えるじゃん。圭ちゃんいなかったら」
「ああ、障害物がないから、入り口からテーブルの上が見えるってこと?」
「障害物って、矢口……」
 障害物扱いされた保田が呟く。矢口は敢えてそれには触れずに続けた。
「でもさ、こんだけ散らかってたら気づかないよ。それにウチらが入ったときには石川がいたんだし、取れるわけないよ」
「辻だったら気づくかもよ。食べ物センサーがピピピッて」
 後藤がそう言いながら、センサーのつもりなのだろう、頭の上に人差し指を立てた。それに吉澤が答える。
「でも、そんときはどら焼きのことで頭がいっぱいだったんじゃないの? ……そう言えば、いつ食べたんだろ、どら焼き」
86名無し娘。:2001/08/18(土) 14:42 ID:1uFO4GhU
ホゼン
87名無し娘。:2001/08/18(土) 23:11 ID:42AE34KM
今日は危ないので保全
88名無し娘。:2001/08/19(日) 00:13 ID:NtF69OmA
じゃ私も〜
89名無し娘。:2001/08/19(日) 07:51 ID:35MU79iQ
90しげプー :2001/08/19(日) 08:57 ID:xbQct7fw
「ホントだ。いつ食べたの?」
 安倍が辻の顔を見た。辻は不安げに視線を巡らせながら、小声で答えた。
「あのぉ、着替えるときに、こうやってロッカーに頭つっこんで……」
「そっか、なるほどね」
「え〜と。これで納得してもらえた?」
 ほとんどのメンバーは納得していたが、やはり犯人にされている飯田は面白くない。
「ちょっと待ってよ。なっちは? なっちはさ、自分の座るとこ行くとき石川の席の横、通るじゃん。石川がよそ見してる間に、サッて取ってさ……」
「いや圭織、それはいくらなんでも無理があるよ。あんときはそんな余裕はなかっただろうし、本番直前に入ってきたにも関わらず、なんか食ってたら、たとえ自分が持ってきた物でも、みんな怒るよ」
「もういいよ。先、進めて」
91しげプー:2001/08/19(日) 08:59 ID:xbQct7fw
「そうなると、残ったのは圭織と圭ちゃんと後藤の3人。取りあえずごっつぁんは違うと思うんだよ、矢口は」
「なんでよ、1人でいたんだから、一番怪しいじゃん」
 飯田がムキになって返す。本当に後藤を疑ったわけではないのだろうが、容疑者の1人としては、仲間が減るのは寂しいものである。
「でもね、もしごっつぁんが食べたんだったら、嘘なんてつかないよ。自分が食べたって言うはず」
「さすがやぐっつぁん! よくわかってらっしゃる。アタシは正直者だもんね」
「てか、別にひとの物、勝手に食べてもそんなに悪いと思わないでしょ、アンタ」
「なんだ、そういうことか……」
「残されたのは圭織と圭ちゃんなんだけど」
「圭ちゃんは違うよね」
 後藤が言うと、吉澤も後に続く。
「うん、保田さんは自分が食べといて、辻ちゃんのこと、叱ったりしないと思うよ」
 やはりプッチモニ。の絆は強いようだ。ますます面白くないのは飯田である。なにせ、自分を一番に疑っているのは、同じタンポポのメンバーである矢口なのだ。
「なんだよそれ! じゃあ、カオリは自分で食べといて、辻のこと叱るって言うの!?」
92名無し娘。:2001/08/19(日) 19:53 ID:nPQnVhxc
nozen
93名無し娘。:2001/08/20(月) 01:20 ID:cilb1vYY
gozen
94名無し娘。:2001/08/20(月) 01:45 ID:ZSw6w.sI
ago
95名無し娘。:2001/08/20(月) 01:58 ID:P8h49QN2
犯人が梨華ちゃんじゃありませんように・・・・
96しげプー :2001/08/20(月) 05:18 ID:d.753q2c
「アンタ叱ってないじゃん。アタシが叱ってるとき、辻のことフォローしてたよ?」
 保田のその言葉を聞いて、加護が突然、叫んだ。
「ああ! そうだぁ」
 その声に驚いた保田が訊ねる。
「なになに、どうしたの、加護?」
「あのねぇ、前にねぇ、言ってた。加護とののが中澤さんに怒られてるとき、自分も悪いことしたのに、怒られると思って黙ってたって」
「ああ! それ見たよ!」
 吉澤も加護に負けないぐらいの大声をあげる。
「FANでしょ! FANだよね。確か、中澤さんと、タンポポとカン娘。が出てたときだ。なんだっけ? 遅刻だったっけ。
 2人が叱られてて、中澤さんに『なっ、圭織』みたいなこと言われたんだけど、そんとき飯田さんも遅刻してたんだけど、でも自分も叱られると思って言えなくって、『うん』って応えたって、そう言ってた!」
 吉澤が飯田を指さす。辻加護が中澤に叱られていた理由は、遅刻ではなく忘れ物をしたからなのだが、この際どうでもいい。
「そうなんだよ、矢口が言いたいのはそこなのよ」
 後ろ手を組んで、クマのようにうろうろと部屋の中を歩き始めた。まるで探偵気取りだ。さすがは形から入る矢口である。
「矢口が思うに、石川が大福がなくなったって騒いだとき、圭織は自分が食べたの忘れてたんだよ」
「うん、圭織ならありうるね。交信してたんだよ、きっと」
97しげプー:2001/08/20(月) 05:19 ID:d.753q2c
「酷いよ! なっち」
「まあまあ。それでたぶんね、辻が圭ちゃん叱られてるときに思い出したのよ。『あっ! 大福食べたの、自分だ』って。でも、今さら言えやしない。でも、辻が叱られてるのは可哀想。で、辻のこと庇ったんだよ」
「なるほど、筋は通ってますねえ。あっ、そう言えば飯田さん、あんとき自分のせい、自分のせいって言ってたっけ」
「吉澤! いい加減なこと言うんじゃないよ! カオリ、そんなこと言ってないよ!」
「いや、言ってた言ってた。たぶん罪の意識から自然と出たんだろね」
「違うって!」
 飯田は必死に否定するが、もう誰も耳を貸さなかった。全員が冷たい視線を飯田に送る。
「はい、これで一件落着! さっさとミーティングやって帰ろうよ」
 後藤が、重い空気を変えようとそう言った。いや、彼女は単純に早く帰りたいだけなのだろう。
「なんでだよ! おかしいよ。なんで、カオリが悪者になんのよ!」
 べそをかきながら飯田が叫ぶ。
「でも。ねぇ」
「うん、これだけ証拠が残ってりゃね」
「なにが証拠だよ! 全部言いがかりじゃん! そんなんで犯人にされたら、たまんないよ!」
 誰もなにも応えない。確かに証拠と言える物はなにひとつないが、全員を納得させるだけの説得力はあった。しんとした部屋の中で、苛立ち下に後藤が机を指で叩く音だけが響いていた。
「あのぉ、ののは思うんですけどぉ……」
98名無し娘。:2001/08/20(月) 17:38 ID:qRA6dY0o
保全
99名無し娘。:2001/08/21(火) 00:26 ID:49h18YCM
100しげプー :2001/08/21(火) 05:49 ID:nqzn5hCQ
「なんだよ、辻!」
 犯人扱いされているためか、無意識のうちに威圧的な態度をとる飯田に、辻が怯える。
「まあまあ、圭織……。辻、なに? 言いな」
 と矢口が飯田をなだめつつ辻に先を続けるよう促す。
「あのですね、ののはちょっと考えたんだけどぉ、梨華ちゃんって、ホントに大福持ってたのかなって」
「はあ? なに言い出すんだよ」
「だって、だってね、誰も見てないし。梨華ちゃんの大福」
「そう言やぁ……誰か覚えてる? そこに大福があったの」
 保田がそう言って片手を挙げ挙手を求める。ほとんどのメンバーが首を横に振る。手を挙げたのは石川ただ1人だった。
「アンタ、本当に大福持ってきたの? 本当にテーブルに置いたの?」
「なんでですか、保田さん。持ってきましたよ。そこのコンビニで買ったんだもん」
「その、カバン中に入ってない?」
「入ってないですよ」
 石川は自分のカバンを逆さにしてテーブルに中身をぶちまけた。それを覗き込んだ後藤が言う。
「……ないね。ホントに買ったの?」
「えっ、ちゃんと買ったよ」
「じゃ、レシートは?」
「そんなのもらってないよ」
「なんでもらってないの? 買い物したら、必ず領収書もらいなさいって、言われてるでしょ!」
 リーダーとしての責任感からか、自分が疑われていることもわすれて飯田が指摘する。確かに、事務所からはそう指示されているが、大福一個で請求書をもらうのは野口五郎ぐらいである。
101しげプー:2001/08/21(火) 05:49 ID:nqzn5hCQ
「じゃ、梨華ちゃんが大福持って来たって証拠はないんだ。これは決定的だね」
 後藤が言うと、吉澤が同意する。
「うんそうだね。……で、なにが?」
 が、どうやらよくわかってないようだ。
「だからさ、大福なんて最初からなかったんだよ。だから誰も食べてな〜い! 辻が言いたかったのは、そういうことだよな?」
 後藤が訊くと、辻は頷いて応えた。
「……そう」
「はい! これでおしまい。じゃ、帰ろ。おつかれさま!」
 どうやら、後藤は他のメンバーが理解する前に、うやむやにしてミーティングをせずに解散するつもりらしい。
 だが、そこで今まで黙ってやり取りを聞いていた矢口が口を開く。
「ちょっと待って。ごっちん、残念だけど、石川はちゃんと大福持ってきたんだよ」
 カバンを持って立ち上がりかけていた後藤が腰を落とした。
「もう、いいじゃん。それで納得しとこうよ」
「それはダメだよ。そんなことしたら、石川が可哀想だし。圭織……」
 矢口は飯田を見据えた。
「な、なんだよ」
「最後にもっかい訊くよ。ホントに、ホントに大福、食べてない?」
「もう、なんべん言わせんだよ! カオリはホントに食べてないって!!」
 矢口は視線をそらせた。しばらく思案した後、右手をポケットに突っ込む。
「そこまで言うならしかたないよ。ホントはさ、圭織のこと、追い込みたくはなかったんだけど。……これ、なんだかわかる?」
 矢口は右手を前に差し出した。
102名無し娘。:2001/08/21(火) 20:03 ID:ZBjkeXYs
おもしろすぎです。
加護ちゃんがやさしくていいですね。
ドラマ化しないかな。
それぐらいうまい!
103名無し娘。:2001/08/22(水) 00:14 ID:H/eTldAo
ほのぼのした本格ミステリーですね。今、私の一番のお気に入りです。
kako逝き危険警報発令中
104名無し娘。:2001/08/22(水) 00:34 ID:vwKQm59c
感情とか普段の行動を証拠にするような本格ミステリーなんてあるか(w
105:2001/08/22(水) 05:06 ID:GrTkHwN2
一行空けのお休みです。

この土日は凄かったですねぇ。保全してくれた方々には感謝です。
オイラもお気に入りのスレの保全しまくってました(W
まあ、結果的に圧縮は一度も行われなかったわけですが……。
早く圧縮してもらわないと、落ち着かないです。残るスレ数もわかりませんし。

>>83
ちょっと前にageたいようなageたくないようなことを書きましたが、
今は「小説総合スレッド」で紹介頂いているので、sageで結構です。
>>95
そういう楽しみ方をしてもらうのが、作者としては一番嬉しいです。
>>102
いや〜。ちょっと誉めすぎではないでしょうか。なんだかこそばいです(w
>加護ちゃんがやさしくていいですね。
あそこのくだりは自分でも一番のお気に入りだったりします。
>>103 >今、私の一番のお気に入りです。
そう言ってもらえると嬉しいです。一番の誉め言葉です。
>ほのぼのした本格ミステリー
一応、コメディーのつもりで書いているので、ギスギスしないように気を付けています。
ただね……本格ミステリーじゃ、ないんですよね、これが。
案の定>>104さんにツッコまれてしまいました(W
>>104
まあ「推理小説のような物」と言うことで勘弁して下さい(W
この件に関しては、終了後にまたコメントします。
106名無し娘。:2001/08/22(水) 06:58 ID:dlug8I1I
なんかカオリが悪者で終わりそうで怖い・・・
107名無し娘。:2001/08/22(水) 15:07 ID:Am3sVUGo
@  @
(‘д‘)<ほ、保全や!
108デコッパ:2001/08/22(水) 15:10 ID:JGD3rx9c
あとでゆっくり読んでみます
109名無し娘。:2001/08/22(水) 22:21 ID:V7vrU70g
よい!
110:2001/08/23(木) 05:52 ID:AlX384jU
今日は更新する予定だったのですが、物語は佳境に入り、ある程度書き進めないと
UP出来ない状態になりまして、もう一日お休みさせていただきます。
楽しみにしていただいている方々には申し訳ないです。

書き始めのころは余裕があったのですが、ここ最近は自転車操業状態で
推敲もままならないです。多少、文章が稚拙になっていますが
その辺りはご了承を。

>>106
どんな結末になろうと極悪人はでてこないので、安心して下さい。
>>117
保全はありがたいのですが、sageてもらえると、もっとありがたいです。
>>108
どうでしたでしょうか?気に入ってもらえたなら、感想でも書いてやって下さい。
>>109
ありがとうございます(W

明日はかならず更新します。
111てうにち新聞新入社員:2001/08/23(木) 15:52 ID:f3Rzs/lc
どうもはじめまして
読んでる小説を保全して回ってます。
頑張ってください
112名無し娘。:2001/08/23(木) 23:06 ID:Us.CPviE
クライマックスに行く前にdat逝きは何としても避けたい。
保全
113AM:2001/08/24(金) 00:08 ID:41B4/M7k
いいらさんがっ!・・・・イヤッ・・・・・・
楽しみれす!。
ほぜ
114:2001/08/24(金) 05:33 ID:PvKDw6Hg
>>111
どうも、はじめましてです。圧縮があったようですね。ご苦労さまです。
>>112
今度の日曜が山場ですか。まあ、24hを乗り越えたんですから。
でも、油断は禁物ですね。
>>113
大丈夫ですよ。飯田さんがそんなことするはずないです。……たぶん。

前回、レスリンクを間違ってしまいました。ちょっと鬱です。
というわけで続きです。
115しげプー :2001/08/24(金) 05:34 ID:PvKDw6Hg
 矢口の手には紙屑のようなものが握られていた。
「なに、それ?」
 メンバーが順に覗き込んでは首をひねる。そして最後になった石川が声をあげた。
「あっ! それ大福の袋!」
「そっ。これは大福の入っていたビニール袋だよ。間違いなく、アンタの持ってきたヤツだよね?」
 矢口が両手で15cm角ほどの小さな袋を広げる。石川は目を細めしっかりと確認してから、大きく頷いた。
「そうです、これです!」
「どこにあったの?」
 そう訊ねる保田を、矢口は見据えた。
「どこにあったと思う、圭ちゃん」
「そんなのわかんないよ。わかるわけないじゃん」
「もう、さっさとしようよ。言っちゃえ! まず言っちゃえ」
 早く帰りたい後藤が急かす。矢口は視線を保田から飯田に移した。
「言うよ。圭織、ホントに言っていいんだね?」
 飯田はなんのことかわからないといった表情で首を傾げた。そして鼻をすすると何度も細かく首を縦に振った。
「そこ」矢口の指先は椅子に掛けられた飯田の上着を指していた。「ジャケットのポケットん中にあったんだよ」
「ホント?」
 保田が矢口の肩を引いて顔を覗き込む。
116しげプー:2001/08/24(金) 05:34 ID:PvKDw6Hg
「うん。さっき休憩時間があったでしょ? そんときにさ、なんか手掛かりがないかなって、ここに戻ったんだ。で、見つけた」
「ウソ……ウソだよ!!」
 叫ぶ飯田の声をかき消すように、矢口は大声をあげた。
「ウソじゃないよ! 圭織、もうこれで言い逃れできないからね。たぶんね、矢口が思うにスタッフさんに呼び出されたときなんだよ、盗んだのは。圭織は自分の席から出口に行くのに、石川の席んとこ通るでしょ。そこで大福を見つけてポケットに入れた」
「違うよ、違うって!!」
 飯田が髪を振り乱し、激しくかぶりを振る。
「でもさ、これは決定的な証拠だよね」
 後藤が冷たく言う。
「うん、そうだよね。なっちショックだよ。矢口がなに言っても、圭織じゃないって信じてたのに」
「だから……ち、違う……」
 飯田は力無くその場にへたり込んだ。矢口がそっと肩に手を掛ける。
「もうさ、正直に言おうよ。石川と辻に謝ろうよ。みんなさ、正直に言えば圭織のこと、責めたりしないよ。些細なことなんだからさ」
「あの、矢口さん……」
 石川が口を開いた。
「ん? 石川もそう思うだろ?」
「いや、ちょっと思ったんですけどね、飯田さんって、いつ食べたんですか?」
117しげプー:2001/08/24(金) 05:35 ID:PvKDw6Hg
「えっ、それは……きっと辻と一緒で、着替えるときにロッカーの影に隠れて食べたんじゃない?」
「でも、大福の袋は椅子に掛けてあったジャケットのポケットから見つかったんですよね。それって変じゃないですか?」
 石川の言い分はもっともである。飯田が着替えるためにロッカーに向かったのは、打ち合わせから帰ってきてからだ。もし、そのときに食べたのなら、大福の袋、もしくは袋の入った上着はロッカーになければおかしい。
「じゃ、じゃあさ、スタッフルームに打ち合わせに行く途中で食べたんだよ、たぶん」
「でも、打ち合わせは保田さんと一緒に行ったんですよね」
 いつもはおっとりとしている石川が、人が変わったように質問をたたみかける。矢口は少し慌てた。
「そ、それはさ、圭ちゃんの目を盗んで、こそっと……」
「圭ちゃん! 食べてないよね? カオリが食べてるの、見てないよね?!」
 放心状態だった飯田が顔を上げて、泣きそうになりながら叫んだ。だが、保田はなにやら考え込んだまま、応えようとしない。
「なにか応えてよ! カオリは食べてないって言ってよ!」
 ついに大粒の涙を流しながら飯田が懇願する。すると、保田は首をひねった。
「な〜んか、おかしいんだよね」
118悶悶:2001/08/24(金) 10:59 ID:pYSED71.
犯人が解った。結構簡単だ。
119名無し娘。:2001/08/24(金) 21:52 ID:RZOTQw5M
愛読
120しげプー:2001/08/25(土) 05:40 ID:3a.B2KYw
「おかしくなんかないよ! カオリ、食べてなんかないよ」
 飯田は顔を覆ってうつむいた。
「そうじゃなくってさ……圭織、楽屋に入ったとき、ジャケットなんか着てたっけ」
「だって、そこにあるんだから着てたに決まってるよ」
 矢口が至極もっともな反応を返した。それに保田が応える。
「いや、確かねぇ……片手にカバン持って、もう一方の手にジャケット引っかけてたように思うのよ。どう、圭織」
「……わかんない」
 飯田は顔を伏せたままかぶりを振った。覚えていない、というより、そこまで考える余裕がないようだ。保田は、そんな飯田の反応など意に介さず、宙を睨んで思いを巡らす。
「うん、そうだったよ。だからさ、圭織が楽屋に入ってから、ジャケットはずっとあそこにあったんじゃないかな。一緒にうち合わせ行ったときも、着てなかった気がする」
 飯田が突然立ち上がった。
「そうだよ! カオリ、この格好で行ったんだよ!」
「だよね。するとさ、ずっと椅子に掛けてあったジャケットに、大福の袋が入ってたってのは、おかしいんだよね」
「そうだよね! カオリは違うんだよね!」
「ちょっと、うるさいよ圭織。なんで圭ちゃんはそう思うの?」
「だってさ、考えてみてよ。なんで食べた大福の包みを、椅子に掛けた自分のジャケットに入れるの? 意味ないじゃん」
「じゃ、なに。ってことは、誰かが圭織に罪をなすりつけるために入れたってこと?」
 矢口はそう言いながら、後藤の方を向いた。保田と飯田もそろって後藤を見る。
「なに。なんでアタシを見んの?」
121名無し娘。:2001/08/25(土) 13:06 ID:kEmLCVzM
俺には全然先が見えない。
読解力が無いのだろうか(w
122名無し娘。:2001/08/26(日) 00:01 ID:7E.EEwL6
楽屋の出入りだけを単純に考えると後藤しかいないんだよね。
でも……
123しげプー :2001/08/26 06:04 ID:TCq6.gNE
「だって……ねえ」
「うん。ごっちんはたった1人で楽屋に残ってたんだもんね」
 保田と矢口は顔を見合わせて頷いた。
「え〜! 梨華ちゃんの持ってきた物なんて食べないよ、アタシ」
「なんでぇ! 酷いよ、ごっちん」
 と石川が声をあげるが、誰も賛同する者はいない。
「そりゃあさ、石川が作ってきた物ならそうだろうけど、買ってきた大福だからね」
「矢口さん、それ言い過ぎですよ!」
 石川がそう不満を漏らすが、またも無視される。後藤がその前の矢口に対して応えた。
「絶対、アタシじゃなって。だいたいさ、もっと怪しい人がいるじゃん」
「誰よ」
 と聞き返す矢口を後藤は指さした。
「はぁ? なんで矢口が」
 なんで自分が疑われるかわからない、矢口が眉をひそめる。
「なるほどね」
 プッチモニ。は言葉に出さなくても意志が通じるのか、保田の感が恐ろしく鋭いのか、彼女は後藤の言わんとすることを即座に理解した。
「矢口、アンタその袋、いつ見つけたの?」
「さっきも言ったじゃん。休憩んときだよ」
「誰と?」
「誰とって、矢口1人だよ」
「やっぱりね……そんときに入れたんだ。圭織のジャケットに袋を」
 後藤がそう相づちを打つ。吉澤はまだ理解していないらしく首をひねっている。やはり保田の感がいいのだろう。
「な、なに言ってんの。矢口がそんなことするわけないじゃん」
「うん、そうだね。矢口はしないね」
「そうだよね、圭ちゃん」
 意外にも保田が後藤の言い分を否定した。喜んだ矢口だったが、そう思い通りにいくものではない。
124しげプー :2001/08/26 06:06 ID:TCq6.gNE
「矢口にそんなことする必要はないよ。だって、大福の袋が出てきたのは、圭織のポケットじゃなくて、矢口のポケットだもん」
「そっか、そうですよね。誰も飯田さんのポケットに入ってるの、見てないんですよね」
 ようやく吉澤も理解したようである。これでプッチモニ。の3人が揃った。
「吉澤! オマエ、なに納得してんだよ。だいたいさ、もし、もしだよ、矢口が食べたんなら、いつ獲ったんだよ、大福」
「う〜ん。やっぱ楽屋入りのときじゃないかな」
 と保田が言うと、続いて飯田も叫び声をあげる。
「そうだよ! 石川が目をそらせてるうちに、サッて獲ったんだよ!」
「なんだよ、圭織。プッチの味方かよ! そんなの、無理だって。なっ、石川。矢口じゃないよな?」
「矢口さん、いいですよ。私、気にしてませんから」
「石川!? オマエなに言ってんだよ!」
 プッチモニ。の3人にとどまらず、同じタンポポのメンバーである石川からも見放されたようだ。と言うより、石川は飯田に着いたのか。
「ああ! そうだぁ!」
 と突然、加護が叫んだ。
「どうした、加護。なんだ、言ってみろ」
 さすがはタンポポ、ミニモニ。とふたつのユニットで活動してきた仲である。心強い味方だと、矢口が続きを促す。
125名無し娘。:01/08/26 14:33 ID:tEfiae3E
加護ちゃんなにゆうんだろ?
期待
126ありがとう、神様!
板復活記念保全。