1 :
名無し娘。:
2 :
名無し娘。:2001/06/13(水) 00:38 ID:VV3XiWX2
?
3 :
名無し娘。:2001/06/13(水) 00:40 ID:9LzrY1hE
4 :
名無し娘。:2001/06/13(水) 00:41 ID:lQ5n9U5s
惜しいな
5 :
名無しちゃむ:2001/06/13(水) 00:42 ID:11piQsdI
わかった、わかったから一緒にちゃむスレいこう。。。
6 :
名無し娘。:2001/06/13(水) 00:43 ID:07ZgSQCY
ミンナー
レスツケテヨー
カマッテヨー .∩_∩
∧_∧ ∩_∩ ∩_∩ (●´ー⊂ヽイヤー
( T▽T ) ( ´Д⊂ヽクサーイ (`.∀⊂ヽエンガチョー ⊂ ノ
⊂ 1=2 つ ⊂ ノ ∩_∩ ⊂ ノ 人 Y
人 Y 人 Y (〜^◇⊂ヽキモーイ 人 Y し (_)
し(_) ∩_∩し (_) ⊂ ノ し (_) ∩_∩
(0^〜⊂ヽサムーイ 人 Y ( ゜皿⊂ヽチカヨラナイデー
⊂ ノ し (_) @ @ ⊂ ノ
人 Y .∩_∩ ( ‘д⊂ヽシヌウ 人 Y
し (_) ( ´D⊂ヽタスケテ ⊂ ノ し (_)
⊂ ノ 人 Y
人 Y し (_)
し (_)
7 :
名無し娘。:2001/06/13(水) 01:32 ID:TeW4vOpY
8 :
名無し娘。:2001/06/13(水) 02:52 ID:z1EGduHc
?
9 :
名無し娘。:2001/06/13(水) 03:13 ID:EtfdfWI2
ぞぬ監督sage
10 :
名無し野郎。:2001/06/13(水) 03:20 ID:xp1kDj12
〜〜〜〜〜〜〜〜 終 了 〜〜〜〜〜〜〜〜
11 :
名無し娘。:2001/06/15(金) 12:35 ID:YBQZcsx2
「ちくしょう...」
言い知れぬ怒りで顔が真っ赤になっているのを意識しつつ、何とか気持ちの平衡を取り戻した。
まったく韓国人ときたら...
韓国に渡って既に1年が経つものの、いまだにこの人たちのにんにく臭さと
横柄な態度になれることはできない。
娘。たちとの約束がなければ、とっくに投げ出していただろう。
私は...と思い返した。
韓国人に悪態をつくためにここまできたわけじゃないんだ。
一旗上げて錦を飾るために...というのは古すぎるか。
歌手としてここで成功するまでは日本に帰らないと決めたのだ。
12 :
名無し娘。:2001/06/18(月) 12:23 ID:mO.Xj.DM
冷静さを取り戻し、練習を再開した。
悔しいが韓国人のダンスは確かにうまい。
娘。でやっていたことが幼稚園児のお遊戯に思えてしまうくらい激しい。
日本の情報はほぼリアルタイムで入ってくるから、
娘。の活動を見ようと思えば見られるのだが、意識的に遮断していた。
私の目標は娘。を超えることにはないからだ。
私はここで、異国の地でゼロからスタートすることに賭けたのだ。
娘。の過去を売り物にされるのは嫌だった。
もちろん、ここでも私が娘。に在籍していた過去はすぐに流布されるだろう。
それでもいい。
娘。にいた私の記憶に縛られたファンのいない地で成功することに意義を見出したのだから。
13 :
名無し娘。:2001/06/19(火) 12:37 ID:sn5dJZ2.
一年前。
失意の底にいた。
高邁な理想を掲げて娘。を辞めたのは良かったが、母親からは詰られ、
ロンドンへの留学も事務所のバックアップが得られず断念した。
非力だった。
自分の無力さを思い知らされた。
そんなとき、声をかけてきたのがオーロラという事務所のあいつだった。
芸能界では泣く子も黙るという大手事務所の息がかかっているという。
無論、当時はそんなことを知る由もない。
事務所の底意が知れず、不安を抱えていた私にあいつはうまく取り入ってきた。
築いたときには、韓国の労働ビザを取得させられていた。
あのとき、上手く立ち回っていれば、もう少し違う展開になっていただろうか...
いけない...ちょっと気を許すとすぐに思考が不毛な循環に陥る。
胡乱な私...
14 :
名無し娘。:2001/06/20(水) 01:40 ID:mWLd97Qk
市井ちゃん。。。
15 :
名無し娘。:2001/06/20(水) 01:42 ID:xfKvQDL.
キャプテンジャックあげ
16 :
名無し娘。:2001/06/20(水) 02:23 ID:49QFzXfo
台湾で再デビューというテもあるな。
17 :
名無し娘。:2001/06/20(水) 14:01 ID:9tFjnuts
「よし、あがっていいぞ。」
ようやく、あいつからOKが出て今日のッスンは終わった。
「アンニョンハセヨ。」
疲れて座り込むバックの面々を横目にまっすぐ家路へと着いた。
もちろん一人だ。
ラブマが売れて事務所が送迎するようになるまでは娘。でも一人で移動していた。
違和感はない。
あるとすれば、ここが東京ではないこと。日本からほど近いとは言え、異国の地であることだ。
江南のマンションから明洞のスタジオまで地下鉄で1時間弱。
途中、漢江を渡るところで地下鉄は一回地表に出て橋を渡る。
運がよければ漢江の彼方に沈む美しい夕陽が拝める。
空気が乾燥しているせいか、西からの強烈な日差しがストレートに目を射る。
最初は戸惑ったが、慣れてくるとそのスケールの大きい雄大な姿に自分を重ねるようになった。
静かに誓う。
必ず、戻るのだと。
18 :
名無し娘。:2001/06/23(土) 03:46 ID:8K9EZb5Y
ちゃむ元気か
19 :
名無し娘。:2001/06/23(土) 03:46 ID:vuaOzmlI
オジャパメンってどうなったんだろう?
20 :
名無し娘。:2001/06/23(土) 03:57 ID:TzEXRQxc
マウヤケソもどうなったんだろう?
21 :
名無し娘。:2001/06/23(土) 22:44 ID:Zp8M1fXk
ディングディングドラガヌン
22 :
名無し娘。:2001/06/25(月) 01:36 ID:XGu24S26
地下鉄を江南で降りると、歩道に溢れる若者の間を縫うように通り抜け、急ぎ足で家路に着く。
ノボテルホテルの裏側の少し上り坂になった道を登ると大きな屋敷が右手に見える。
その先の路地を右に入ったところに私のマンションはある。
急いでドアを占めると、まっすぐ机に向かいPCのスウィッチを入れる。
ブーンという音とともにWIN98が起動する。
韓国名物のADSL常時接続に加入しているから、ダイアルアップの接続待ちでいらいらする必要はない。
これだけは韓国に来て良かったと思う。
画面にはデフォールトにしているチャットサイトのバナーが景気のいい文句を映し出す。
「もう、あと30分待って、来なかったら、ログアウトするよ(怒)」
怒ってる。
ごめん。
心の中で、舌をだして謝る。
無論、圭ちゃんには見えないだうが。
何はともあれ、レスを返す。
「ごめんごめん。あいつが例のごとくしつこくってさ。間に合ったかな?」
「遅いよぅ〜。おかげでビール2本空けちゃったよ(笑)
ゆうちゃんみたいな酔っ払いになったら、紗耶香のせいだからね(笑)」
そういえば、圭ちゃんはもう二十歳を迎えていたんだっけ。
ほんとに酔っ払ってるんだったら、今日は圭ちゃんの本音が聴けるかな。
23 :
名無し娘。:2001/06/27(水) 00:27 ID:tTrBv/a6
( ´D`)y-~ <面白いのれす。続き楽しみれす。
24 :
22:2001/06/28(木) 03:35 ID:hETA7M4k
>>23 ありがとうございます。励みになります。
練習のつもりで書き始めたので、定期的に更新できるか心許ないのですが。。。
25 :
名無し娘。:2001/06/28(木) 03:56 ID:hETA7M4k
こっちに来て最初の頃は電話で連絡を取っていた。
しかし、近いとは言え、さすがに国際電話だけに電話代がばかにならない。
また、私が在籍していた自分とは比べ物にならないくらい娘。の活動が忙しくなったため、
次第に連絡が途絶え、危うく音信不通になりかけた。
そんな折り、パソコンに嵌まり始めた圭ちゃんが電子メールでの文通(というのだろうか?)
を提案し、私にもパソコンを買うよう促したのだった。
「っていうか、もう立派な酔っ払いじゃないの?」
最近はタイピングにも慣れ、ほぼノータイムでレスポンスできる。
「言うわねぇ(w
漏れは、こないだみっちゃんにも、すっかり飲み友達扱いされちゃったよ(w」
圭ちゃんはどこで覚えたのか、変な言葉使いで書き込む。
ネットに特有の簡略形なのだろうか。
「裕ちゃん、みっちゃん、圭ちゃんでさ、中江兆民の三酔人経倫問答みたいな会話してんでしょ?」
「紗耶香は相変わらず難しいことを言うねぇ。」
そろそろ本題に移ろうか。
「ところでさ、後藤にもいい加減パソコン覚えるように言っといてよ。」
「.....」
しばしの沈黙。
画面が瞬間、凍り付いたように止まる。
26 :
名無し娘。:2001/06/30(土) 02:05 ID:l1E8Ytog
ブラインドタッチの使い手である圭ちゃんがレスを返すことができないでいる。
明らかな動揺が窺える。
後藤に何かあったのだろうか。。。
「ああ、ごっちんね。。。携帯ばっかりやってるからねぇ、あいつは。」
しばし逡巡した後、ようやく画面が動いた。
相変わらず、隠し事が苦手だな、圭ちゃんは。。。
そこが好きなところでもあるけど。
ここはやっぱり、ストレートに聞いた方がいいかな。
「やっぱり何かあったんだね。」
27 :
名無し娘。:2001/06/30(土) 02:28 ID:C45oEUsY
隠し通せないことがわかったのだろう。
今度は、一瞬の沈黙の後、画面に文字が浮かび上がる。
「後藤ね 」
そこでまた、画面が止まる。
動悸が激しくなるのがわかる。
どっくん、どっくんと波打つ心臓の音が聞こえるくらい。
祈るような気持ちで、画面を食い入るように見つめる。
「後藤ね。辞めたよ。」
何のことか、理解できなかった。
いや、理解したくない気持ちが強いだけか。
目の前が真っ白になった。
完全な思考停止。
28 :
名無し娘。:2001/06/30(土) 20:29 ID:auIRnfrY
( ´D`)y-~ なんでまた・・
29 :
名無し娘。:2001/07/03(火) 00:51 ID:o0AAY5so
hozen
30 :
名無し娘。:2001/07/03(火) 19:46 ID:90EMqY72
「新メンバー募集してたことは紗耶香も知ってたでしょ。」
気が付くと、画面に文字が浮かんでいた。
現実に引き戻されて、必死で目が画面の動きを追う。
圭ちゃんのタイピングが続く。
「当初は二人入れて、なっちが卒業っていうシナリオだったんだけどね、
瀬戸さんが三人も入れちゃって、帳尻が合わなくなったから。。。」
黙って続きを待つ。
諦めたように、ゆっくりと文字が打ち込まれる。
「というのが表向きの理由。実際のところは例の広告代理店が動いてたってことしか
今はわからない。」
「そっちの理由だったら、もっと先の予定じゃなかったの?」
「うん。一応、なっち、カオリ、私と順送りのはずだったからね。」
「今辞めさせるのは向こうにとっても得策じゃないはずなのに。。。」
「だから、私達も混乱してるんだよ。若い連中は素直に泣きじゃくって、悲しんでるだけだけどね。」
それはそうだろう。
彼女達は、後藤の加入に際してどのような経過があったのか知らないのだから。
予定外に早まった後藤の脱退。
娘。にはまだ後藤が必要だったはずだ。
ショックから立ち直ると今度は、次々に湧き出してくる疑問の連鎖に思考が拘泥する。
31 :
名無し娘。:2001/07/04(水) 03:07 ID:mpsFfEgc
冷静さを取り戻すに連れ、胸の奥の方でわだかまっていた感情が徐々に形を成す。
それは次第に重みを増して下腹のあたりにずっしりと沈み込む。
どうしようもない寂しさに耐え兼ねて、圭ちゃんに気持ちを委ねる。
「後藤、私には何も言わなかったんだよね。ここんとこ、連絡さえなかった。」
「紗耶香には心配かけたくなかったんだと思う。」
「そうかな。」
何も言われずに、娘。を辞められた方がよっぽどショックだ。
「紗耶香。」
圭ちゃんがたしなめる。
「本来なら、娘。のエース級である後藤が辞めるんだから、卒業にかこつけた興業を山ほど
押しつけられるはずなのに、後藤の場合何もなかったんだよ。」
えっ、どういうこと?
「何もなかったって?」
「あまりにも突然で、娘。やプッチの新曲さえ出せなかったんだ。」
そうだ。娘。はともかくプッチはどうなる?
「プッチはどうなるの?」
「今のところ未定だけど、さすがに後藤がいなくなると自然消滅だろうね。
吉澤もまだそこまで育ってないし。」
圭ちゃん。。。
淡々とキーを打ち込んでいるが、ショックは私以上に大きいかもしれない。
一昨年にユニットを組んで以来、メンバーの中では後藤と一緒に過ごす時間が一番
長かったのだ。
後からプッチに入った吉澤が後藤と同い年で仲良くなったとはいえ、精神的な支えとして
頼られることも多かったはずだ。
ごめん、圭ちゃん。。。
寂しいのは私だけじゃない。。。
32 :
名無し娘。:2001/07/06(金) 14:30 ID:JtgzUEmU
翌朝、通勤客で込み合う地下鉄に揺られながら、昨日の内容を頭の中で整理する。
結局、後藤の脱退は失踪同然の状況で、卒業という言葉は用いられたものの、
私でさえ区切りとして出演できたファィナル・コンサートもできなかったと言う。
丁度ツアーの終了直後で、曲の録音などスケジュールがぽっかり空いていた間隙を
縫うかたちで行われただけに、事務所としても何も手が打てなかったということだ。
いけない、すっかり考え込んで乗り換え駅の舎堂を降り損ねるところだった。
2号線から4号線へと乗り換え、会賢まで一本だ。
今度はもう少し、ゆっくり考えられる。
それにしても不思議なのは、例の広告代理店の動きだ。
彼らが表立って動くことはないため、おそらく実行部隊は業界最大と言われている
芸能事務所の息がかかったところだろう。
そうであれば、あいつが何か知っている可能性はある。
オーロラ経由で当然、情報は入ってくるだろう。
33 :
名無し娘。:2001/07/06(金) 14:33 ID:NezCr.NQ
明洞のスタジオに着くと早速あいつに尋ねた。
「後藤が辞めた件だけど。」
眉ひとつ動かさずにあいつは冷静に応える。
「ああ、その通りだ。」
「知ってたのね。」
思わず目じりが吊りあがっていくのがわかる。
さらに語気を荒げて追求する。
「なんで、言ってくれないのよ!」
「なんで言う必要がある。」
だめだ。
ここは冷静になろう。
これでは、何の情報も引き出せない。
34 :
名無し娘。:2001/07/08(日) 02:15 ID:kolh/D0k
デビューどころの騒ぎじゃなくなったな。
35 :
名無し娘。:2001/07/08(日) 03:48 ID:LzWC9vAI
はぁっと大きく息を吐いた後、深く息を吐いこんで呼吸を整える。
落ち着くんだ。
10,9,8,7...
怒ったときは、10数える...誰かの言葉を思い出す。
あれは圭ちゃんだったっけ。
「ごめん。何か知ってるんだったら、教えてほしいの。」
「...」
「あなたも後藤と私の関係はしってるでしょう?心配なの。」
珍しく下手に出たことで虚を衝かれたのか、どう反応したらいいか戸惑っている。
「そうだな。だが、俺も詳しくは知らない。」
「知ってる範囲でいいの!」
あいつが語り出すのをじっと待つ。
韓国製のマイルドセブンを咥え、ふぅっと煙を吐き出すとようやく口を開いた。
ひどく時間がかかったように感じる。
「例の広告代理店絡みではない。」
「えっどういうこと?」
「オーロラが俺に伝えてきたのはそれだけだ。」
「後藤が自分の意志で辞めたということ?」
「いや、背後が別だというだけだ。後藤の意志ではないと聞いている。」
「どこなの?」
「わからん。オーロラが掴んでいないんだ。業界内の動きではない。」
「...」
「俺が知っているのは、それだけだ。わかったら、レッスンにつけ。」
怒りの感情がすっかり萎み、今度は言い知れない不安が押し寄せる。
後藤...いったいどこでどうしているんだろう。
36 :
名無し娘。:2001/07/09(月) 17:53 ID:cG7veD0U
夜が来た。
いかに大きな不安を心に抱えていても、時間がくれば腹が減る。
そんな自分に軽い嫌悪感を抱くものの、仕方がない。
私も人間だ。
韓国に来た当初はあまりに辛い料理に戸惑ったが、さすがに一年も経つと慣れた。
相変わらず外食ばかりだが、唐辛子の栄養価のおかげか体調を崩すこともない。
いつも帰りに寄るシクタンで軽い夕食を取る。
さすがに今日は重いものを食べる気はせず、カルグクスというきし麺のような麺にする。
韓国うどんをすすりながら、後藤の行動を考えてみる。
事務所絡みではないとすると、例の宗教団体だろうか。
私がモーニングに在籍していた頃から、後藤は何度かその団体の関係する会合に呼ばれていた。
特に嫌がっていた様子はなかったが、もともと冷めた子だ。
親に累が及ぶともなれば泣き言のひとつも言えまい。
その線の可能性は否定できないが、政治的なバックグラウンドまで持つまっとうな団体が、
そのような怪しい行動に出るかは疑問だ。
考えれば考えるほど、なぞは深まるばかりだ。
私はカルグクスを平らげると席
37 :
名無し娘。:2001/07/09(月) 17:58 ID:c5nKRKG.
を立った。
38 :
名無し娘。:2001/07/10(火) 01:23 ID:q6BNfYqY
韓国にはもともと詳しかったんだろうか。
この小説のために調べたんならすごいね。
39 :
名無し娘。:2001/07/10(火) 03:06 ID:KZ4Vac1Q
そういや小説のタイトルは?
40 :
名無し娘。:2001/07/11(水) 23:51 ID:0fdeRS5w
続き期待しています
41 :
36-37:2001/07/12(木) 03:12 ID:kX50XEPg
>>38 以前、年二回くらいの頻度で出張していました。
最近は行けなくなったので、憂さ晴らしに書いてます(w
>>39 いえいえ、タイトルをつけるほどたいしたものではないのです(恥)
>>40 ありがとうございます。本当に励みになります。
あまり頻繁に更新できませんが、何とか最後まで書けるよう頑張ります...
42 :
名無し娘。:2001/07/12(木) 03:13 ID:kX50XEPg
シクタンを後にして家路につく途中、
リッツカールトン・ホテルの丁度裏手に差し掛かったところで携帯が鳴った。
仲間のバックダンサー、イーファからだ。
「ヨボセヨ、どうしたの?」
「サヤカ、今から行ってもいい?」
「え、どうしたの?私は構わないけど...」
「うん、行ってから話すよ。30分くらいで着くから...」
「わかった。待ってるよ。」
電話を切ると、まっすぐ家に向かう。
ノボテルを過ぎれば。もうすぐそこだ。
43 :
名無し娘。:2001/07/12(木) 03:14 ID:kX50XEPg
イーファは漢字で書くと「梨華。」
新メンバーにも同じ名前の子がいたが、どうしているだろうか。
親しくなる前に娘。を離れてしまったから実状はわからないが、
圭ちゃんによれば、「一言多い」子なのだそうだ。
う〜む。よくわからん。
いずれにしても仲良くやっているなら、それに越したことはない。
そうこうしているうちに、こちらの「梨華」が来た。
「サヤカ、ビール買ってきたよ。」
「ちゃんとハイト、買ってきてくれた?」
「ケンチャナヨ!OK、OK、サヤカの好みは覚えてるよ。」
日本では、滅多にお酒を飲む機会はなかったが、こちらに来てすっかりビールの虜になってしまった。
激しいダンスの練習の後、仲間と食事に連れ立っていくうちに自然に飲むようになった。
喉が渇いているところに、ビールをぐいぐいとやる仲間の姿を見て、そんなに美味しいなら
と真似して口をつけたのが始まりだった。
もともと受け入れる素地があったのか、こちらのビールが美味しいからかわからないが、
今では韓国のビールなしに過ごせないほど嵌まっている。
44 :
名無し娘。:2001/07/12(木) 03:15 ID:kX50XEPg
つまみのキムパプ(のり巻き)を手にとりながら、イーファが切出す。
「サヤカ、今日、元気なかったね。何か、心配事あるの?」
「心配してくれてるの、イーファオンニ?ありがとう。」
「仲間だからね。」
イーファは私よりも大分年上だ。
ハローのメンバーで言えばみっちゃんと同じくらいか。
韓国のトップスター、オム・ジョンファやペク・チヨンのバックを努めた後、
私の専属としてついてくれた。
「今日は、サヤカの動き、切れがなかったからね。悩みごとあるときはダンスに出る。」
「そっかぁ。さすがだなぁ。よく観察してるよ。」
「それで、悩み事は何?私でよければ相談に乗るよ。」
「うん、後藤真希がね、モーニング娘。辞めちゃったんだよ。」
「それ、知ってるよ。でも何で、サヤカが悩む?」
45 :
名無し娘。:2001/07/12(木) 03:16 ID:kX50XEPg
モーニング娘。の名はこちらでも有名だ。
韓国政府は公式には日本の音楽や映画などの大衆文化の輸入を制限しているものの、
地下では、というよりは公然と娘。のCDなどが町中で出回っているのが実状だ。
中でも後藤は特に人気がある。インターネットなどで情報が飛び交う御時勢だ。
脱退のことをイーファが知っているのは不思議でない。
改めて、知らなかった自分に嫌気が差す。
「うん、失踪同然の辞め方だったらしくてさ...後藤とは仲良かったから心配なんだ。」
「ソロに専念するんでしょ?」
「そういうことにはなっているみたいだけどね。」
「何が心配?」
「私に言ってくれなかったのがショックでね。」
「仲良かったから?」
「うん。大事なこと決めるときは必ず連絡してくれると思ってた。」
「忙しくて連絡できなかったよ。きっと。何しろ凄いスケジュールね。」
実際、脱退前のスケジュールは娘。本体とソロの両面からガチガチに固められて
寝る暇もないほどだったとされており、それが脱退の原因になったのではと噂されているらしい。
現在は、休養とソロに専念するための充電期間ということで、
マスコミへの露出は抑えられている。
46 :
名無し娘。:2001/07/14(土) 00:11 ID:klzcW4NI
どうも、興味深く読ませてもらってます。
同じ市井モノを書いてる人間として良い刺激になります
(お話のタイプが少し異なるのですが)
どうかマイペースでがんばってください。
47 :
名無し娘。:2001/07/14(土) 03:28 ID:Shxa36Zw
>>46 いや、どうも。恐れ入ります。
下げスレで練習するつもりだったので、
誰も見てなくても続けようとは思っていたのですが、
やはり、見ていただいていると思うと張り合いがあります。
私の方は本当にマイペースになってしまうと思いますが、
お互い頑張りましょう(w
48 :
名無し娘。:2001/07/14(土) 03:31 ID:Shxa36Zw
ひとしきり、後藤について私の知っていることを交えながら語りあった後、
話題は自然と目前に控えた、韓国でのデビューに移っていった。
韓国の音楽界は現在、80%以上がダンス中心のビジュアル志向だ。
私たちも、例に漏れずその一角を占めることになるのだが、オム・ジョンファやペク・チヨン
といった先達達と伍していかなければならないのだから大変だ。
またガールグループではS・E・SやBaby.voxなど、やはり人気の高い実力者がおり、
必ずしも成功が約束されているわけではない。
せっかちな韓国人らしく、普通、新人は2ヶ月くらいプロモートして芽が出なかったら、
それで終わりだという。
う〜ん、厳しい...それだけに遣り甲斐もあろうというものだが...
気がかりなのは、ここ数年で着実によい方向へと向かってきた日韓の関係が
急速に崩れようとしていることだ。
言わずと知れた教科書問題である。
49 :
名無しちゃむ:2001/07/15(日) 04:49 ID:ySDzhFxE
読んでるの、俺だけだと思ってた(w
ユク−リがんばってね。
負けるなちゃむ。韓国だめだったら、台湾がある!
50 :
名無し娘。:2001/07/15(日) 04:58 ID:9S8XlkJ2
ワールドカップの共催を契機とする相互交流の活発化で、
ここ数年の日韓関係は戦後初めて、良好と言える水準に達していたと思う。
ただし、忘れてはならないのは、現在、政治経済の中枢にいる人たちが、
偏向的な反日教育を受けてきたということだ。
小さなきっかけで、大きく揺り戻す可能性を孕んでいることに日本の為政者が
気づいていなかったこと自体、問題外だ。
検定の制度状の問題で、現在、韓国や中国が要求しているような修正には応じられない
としている態度自体が、韓国人の神経を逆なでしていることに何故気づかないのだろう。
検定で通している以上、日本政府が「このような歴史の見方はありですよ♪」と言っている
に等しい、つまり、政府の公式の歴史観と捉えられても仕方がないことに何故気づかない?
実際、韓国語で喋ることに大分慣れてきたとはいえ、日本人であることがわかり、
嫌な思いをする機会が最近、頓に増えた。
友好ムードに隠れて見えなかった、両国の間に深く横たわる深淵について改めて思い知らされる。
51 :
名無し娘。:2001/07/15(日) 05:05 ID:9S8XlkJ2
そのような環境にあって、イーファが自然体で付き合ってくれているのは、
本当に有り難い。
今日も、私のことを心配して、わざわざ寄ってくれた。
オム・ジョンファのバックまで努めたダンサーだ。
それなりにプライドはあるだろうに。
側で寝息を立ててているイーファの横顔にそっと呟く。
ごめんね。
日本人がみんな、そうではないんだよ。
頑張ろう。
イーファのためにも。
私を個人として認めてくれる仲間のために。
52 :
名無し娘。:2001/07/15(日) 05:07 ID:9S8XlkJ2
53 :
名無し娘。:2001/07/17(火) 02:09 ID:fzUu.J/I
時事問題も絡めていて、いい感じですね。
54 :
名無し娘。:2001/07/17(火) 04:29 ID:Y91yyHXI
今日はレッスンを早めに切り上げ、歌番組の公開録画を見学に行く。
もちろん、イーファのつてだが、韓国ではこの手のコネが日本以上に物を言う。
日本では既に廃れてしまったペストテン番組だが、こちらではまだまだ人気がある。
収録の行われるMBCのスタジオはヨイドにある。
日本で言えば兜町に当たるのだろうか、韓国証券取引所を中心に大宇証券や現代証券など
韓国を代表する大手証券会社の高層ビルが立ち並ぶ姿は圧巻だ。
忙しく行き来するビジネスマンと明らかに異質な集団がMBCの周りに列を成している。
歌番組に出演するアイドルの追っかけだろうか。
日本の同年代に比べると幼さの残る風貌の女の子が多いが、
アイドルに対する熱意は日本も韓国も変わらない。
55 :
名無し娘。:2001/07/17(火) 04:40 ID:Y91yyHXI
今日は誰が出るんだっけ?
イーファに確認する。
H.O.T?
どうりで女子高生が多いわけだ。
あの変てこりんな髪型はどうかと思うが、
熱狂的なファンは多い。
すだれのような鬱陶しい髪型が一時期若い男性の間で流行ったが、
あれとてもH.O.Tの影響なしには考えられない。
できればソ・テジを生で見てみたかったが、
今日の出演予定はない。
昨年、衝撃的に韓国音楽界への復帰を果たしたソ・テジだが、
歌番組への出演をOKすることはまずないそうだ。
残念。
今日は、私たちの当面のライバルとなりそうなBaby voxの観察が主眼だ。
5人組の女の子。
どうしてもモーニングと比べてしまいがちだが、スタイルはまったく違う。
歌、というよりはダンスが中心だ。
56 :
名無し娘。:2001/07/17(火) 04:54 ID:Y91yyHXI
いよいよ彼女たちの出番だ。
大きな声でスタッフに挨拶する姿は好感が持てるが、
イーファによれば韓国のアイドルは事務所から礼儀を徹底的に叩き込まれるので、
さして珍しいことではないのだそうだ。
儒教の国、韓国てならではといったところか。
娘。の礼儀については和田さんの躾や裕ちゃんが厳しく指導してくれたおかげで、
私が在籍している間は、芸能界での評判は概ね良かったように記憶している。
郷にいれば郷に従え。
早く、こちらのルールにも慣れなくては。
Baby voxの5人がステージに上がる。
大きい!
身長、どれくらいあるんだろう?
イーファに聞いた。
みんな170cmくらいあるそうだ。カオリが5人並んだようなものか。
曲が始まる。
一応、口を動かしてはいるが、いわゆる口パクだ。
韓国の歌番組は不思議と口パクを許容しているらしく、
放送中の歌手が口パクか実演かわかるようにテロップ表示するそうだ。
ダンス系の歌手はほとんどが口パクになるが、
キム・ゴンモやソ・テジなど実演にこだわる人も少なくないらしい。
ちなみに、口パクは"Lip Sync"と呼ばれ、そう表示される。
それにしても大きいなぁ。
中になっちとASAYANの司会をやってた永作博美さんを足して2で割ったような
可愛らしい女の子がいた。
イ・ヘジンというらしい。
可愛いけど、大きい。
大きな、なっち...なんか変だな。
57 :
名無し娘。:2001/07/17(火) 04:58 ID:Y91yyHXI
>>53 市井の正義感が出せたらと思いました。
さらに格好いい市井を表現したいと思っています(願望)
58 :
名無し娘。 :2001/07/18(水) 00:15 ID:Pnqqw8Yk
何か勉強になるな〜。来年に向けてちょうどいいね。
59 :
名無し娘。:2001/07/19(木) 01:07 ID:KpyJLja6
収録の熱気も冷めやらないまま、イーファとホフで感想を述べ合う。
ホフはビアホールのようなものか。
韓国語では「ホップ」という発音になる。
ドイツの「ホフプロイハウス」などの「ホフ」に由来しているようだが、
詳しいことは解らない。
何はともあれ、乾杯だ。
「やっぱり背が大きいから迫力があるねぇ。」
私が口を開くと、
「うん、Baby v.o.xのダンスはかなりいい具合に仕上がってるね。」
とイーファもかなり危機感を感じている様子だ。
「うちらのダンス、見劣りしない?」
「何、言ってるの!」
怒られた。
「決して負けてないよ、サヤカ。スタジオで見たから、立派に見えるだけ。」
自信家のイーファらしい。
ステージやカメラから離れて大分経つせいか、どうも弱気になりがちだ。
60 :
名無し娘。:2001/07/19(木) 01:20 ID:KpyJLja6
話はそのまま、一週間後に控えている香港合宿へと続いた。
「しっかし、またなんで香港なんだろうねぇ?」
私が素朴な疑問を持ち出すと、
「やっぱり、フェイ・ウォンなんじゃない?」
とイーファが答える。
「そんな、生で見なきゃいけないほど、凄い人なの?」
「!」
なんだか、びっくりしてる様子だ。
「何よぅ。」
「サヤカ、フェイ・ウォン知らないか?」
「うん、知らないよ。」
頭を抱えている。
韓国人は喜怒哀楽が激しい。
ひとしきり、あぁとかうぅとか唸り、何かぶつぶつ唱えた後、ようやく、
「まぁ、見ればわかるね。」
と、訳知り顔にうなづく。
なんだか馬鹿にされているような気がして悔しいが、
知らないのだから仕方がない。
百聞は一見に如かずという。
まずは見てからだ。
61 :
名無し娘。:2001/07/19(木) 01:50 ID:KpyJLja6
香港合宿の後には、いよいよデビューが控えているのだ。
嫌が上にも緊張感は高まる。
合宿はそうした雑念を払拭し、歌やダンスに集中させるために
あいつが企画したのかもしれない。
たまには、いいことを考えるものだ。
ひとしきり、今日の収録や韓国の音楽界について語らい、
心地よく酔いがまわったところで、お開きにした。
何しろ、デビューやその前の合宿を目前にレッスンも厳しさを増す。
明日も早く起きなければ。
ヨイナルの駅で反対方向に向かうイーファと別れ、ひとり地下鉄に乗り込む。
帰宅するサラリーマンで込み合う車内で吊り輪に指をかけ、列車の揺れに体を任せる。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
車窓に映る自分の顔に問い掛ける。
"紗耶香は頑張ってるよな?"
うん
"まだ、頑張れるよな?"
うん...
なんだか自然に涙がこぼれる。
お母さん...
いつになったら会えるの...
紗耶香が韓国でデビューして、活躍できたら、また家族で暮らせるの?
お母さん...
とめどなく流れる涙で視界が霞む。
ぼんやりと車窓に浮かぶ紗耶香が答えてくれる気配はなかった。
62 :
名無し娘。:2001/07/21(土) 03:42 ID:RhF18SXA
早朝の強い日差しに無窮花(ムグンファ)の花が映える。
韓国にも夏がきたのだと実感する瞬間だ。
夜になれば枯れて萎んでしまう一日草。
短いときを賢明に射きる姿に共感するのだろうか。
この花はこの国の国花に指定されている。
私もこの花のようにデビューしても一瞬で消えてしまうのだろうか。
不安はつきまとうが今はやるしかないのだと自分に言い聞かせる。
私の失敗は将来、確実に行われるであろう娘。の海外市場進出にとっても
大きく影響するだろう。その意味でも失敗は許されない。
冷たい水で顔を流し、パンパンと軽く叩く。
さぁ、今日も頑張ろうか。
63 :
名無し娘。:2001/07/22(日) 19:16 ID:0kSUSoYo
(・∀・)イイ!!
64 :
名無し娘。:2001/07/23(月) 01:12 ID:6o3w3yT2
仁川国際空港へ向かうバスの中で香港合宿のスケジュールを確認する。
宿泊は日航ホテル。えらく張り込んだものだ。
娘。のツアーでもそんないいホテルに泊まることはそうなかった。
デビューもしてないのに、ひどくもったいない気がする。
合宿とは云え、実態は香港のメディア回りだ。
特に香港のスターTVは韓国で普及しているケーブルで放送しており、人気が高い。
PVのオンエアが頻繁に行われるので、媒体として決して侮れない存在だ。
韓国では音楽はPVを通して確認する若者が多く、
PVのできの良さがそのままセールスに直結するとも言われている。
PV監督のファンクラブまであるというから、その人気の高さは驚きだ。
でき云々はともかく、まずは媒体での放送枠を押さえておかねば話にならない。
そのための前準備というわけだ。
韓国のメディアを回る前に香港とはおかしな気もするするが、
スケジュール的に今しかできないということらしい。
65 :
名無し娘。:2001/07/23(月) 01:13 ID:6o3w3yT2
もちろん、こないだイーファと話したようにフェイ・ウォンのコンサートも
予定に組まれており、彼女や他のスタッフはそれを一番楽しみにしているようだ。
会場は香港體育館で九広鉄道九龍駅すぐ側だ。
滞在する日航ホテルからは道一つ隔てて、向かいに位置しており、徒歩で数分もかからない。
ここを選択した理由のひとつにはそれもあるようだ。
今年に入って完成したばかりの真新しい空港の建物が視界に飛び込んでくる。
一年前に降り立った金浦空港とは大分違い、明るい印象を与える。
金浦空港の前の大きな道路は有事の際、戦闘機の滑走路として利用されるという話を聞いたが、
ここもそうなのだろう。
南北和解ムードが広がる中でも、依然、交戦状態は続いているということか。
平和ぼけしている日本人の私には到底理解できない緊張状態に韓国の人たちは置かれているのだ。
66 :
名無し娘。:2001/07/23(月) 01:18 ID:6o3w3yT2
>>58 恐縮です。ただし韓国に最後に行ったのは去年の春なので、
また大分状況は変わっているかもしれません。
>>63 どもども。頑張りますね(笑)
67 :
名無し娘。:2001/07/25(水) 00:19 ID:scCZMVIU
本当にタイトル通りになるの?
68 :
名無し娘。:2001/07/25(水) 02:41 ID:Fr9IWXtU
午前9:00出発のアシアナ航空CZ302便は、平日ということもあってか
比較的空いていた。8割がた韓国人、残りは香港なのか中国なのかはわからないが、
とにかく中国系とごく少数の白人だ。
スチュワーデス、いや今はフライトアテンダントと言うのか。毛布を配って歩く。
スタイルのいい韓国人のアガシだ。
隣のイーファはもらった毛布にくるまり早くも熟睡体制に入っている。
私も少し寝ておこうか。香港と韓国の時差は1時間なので時差ぼけの心配はないが、
スケジュールはそれなりにハードだ。休めるうちに休んでおこう。
娘。での生活で得た数少ない教訓のひとつだ。
69 :
名無し娘。:2001/07/25(水) 03:04 ID:Fr9IWXtU
ふわっとした感触とともに機体が持ち上がる。
離陸したようだ。
窓の外に目を遣ると、海岸の向こうに赤茶けた地膚の台地に緑が点々としている。
典型的な韓国の風景だ。
一瞬、ひどく懐かしいような、ひどく去り難い感情を抱いたのは何故だろうか。
このまま、二度と戻れないような、そんな思いが胸の内に去来したのは、
去年の夏、日本を発ってからまだ一度も帰国していないせいかもしれない。
流転の日々。
韓国語は大分上達したし、イーファのように中の良い仲間もできた。
それでも尚、根無し草のように地に足がついていない居心地の悪さを感じ続けているのは、
自分自身に戸惑いがあるせいか。
お前の求めているものはなんだ、紗耶香?
70 :
名無し娘。:2001/07/25(水) 03:08 ID:Fr9IWXtU
>>67 もともとネタスレだったということをお忘れなく(w
でも一応、その方向に向かって進んでいますよ。
大分、遠回りをするかもしれませんが(w
71 :
名無し娘。:2001/07/26(木) 23:32 ID:26YBI1oo
高層ビルを潜り抜けて短い滑走路に降り立つことを想像していたら、
人気のない荒涼とした島の広くて奇麗な空港に私たちの飛行機は着陸した。
拍子抜けしたが、香港の空港もまた新しくなっていたのだった。
降りた途端にむわんとした熱気に包まれる。
韓国のからっとした気候とはまた大分違うが、こういうのも嫌いではない。
アジアの混沌としたエネルギーの源に浸っているようで内側から力が漲ってくるのを感じる。
イミグレーションを抜けるとエアポート・エクスプレスで中心部まで移動だ。
九龍駅までは15分程度。駅からはタクシーに乗りあわせ、日航ホテルに向かう。
ドライバは私の英語がわからないらしく往生したが、なんとか紙に「日航酒店」
と書いてようやく通じた。
ふぅ、やっと着いた。
荷物の整理もそこそこにシャワーを浴びる。旅の汗を流したかった。
一休みしたら、少し街中を散策してこようか。
72 :
名無し娘。:2001/07/29(日) 00:20 ID:FUfdhuOc
73 :
名無し娘。:2001/07/29(日) 23:03 ID:bNTP9Nmo
コン、コン...
ドアを叩く音が聞こえた。
覗き窓から見ると、ベルボーイのようだ。荷物はすべて運んだはずだが...
訝しく思いつつも、ドアを開ける。
「Ms.Ichii?」
「Yes,but...」
「Message for you,Ms.Ichii.」
ベルボーイがメッセージの入っていると思しき封筒を渡す。
こんなところへわざわざ伝言をよこす人物に心当たりはないが。
とりあえず、封を開けて中身を確認しようとしたその時、口元に何か冷たい感触を覚えた。
なに!?
布のようなものをあてがわれていると気づいたときには、既に意識が朦朧としてきた。
次第に遠のいていく意識の中で、韓国語で喋る男の声を聞いたような気がした...
「こちら大同江一号、対象の捕獲に成功しました...」
74 :
名無し娘。:2001/07/31(火) 01:53 ID:kMlgDjrE
ちゃむはどうなるのだろうか・・・
75 :
名無し娘。:2001/07/31(火) 23:48 ID:hB.HZ93.
市井紗耶香が香港から忽然と姿を消した丁度その頃、
保田圭は後藤真希の行方を追うため、弟のユウキに会いに都内キー局のスタジオに向かっていた。
失踪同然に娘。を脱退した後藤はその後、芸能界にも姿を現さず、
保田とも音信が途絶えていた。
脱退から一ヶ月経って、業界で誰も後藤を見たものがいないということがわかり、
保田は居ても立ってもいられなくなったのだった。
76 :
名無し娘。:2001/07/31(火) 23:58 ID:hB.HZ93.
今日は収録の予定はないが、保田はにこやかに挨拶すると、
さも収録を急ぐタレントのようにせわしなくスタジオへと向かった。
「"EE JUMP様"...ここだ!」
ユウキのいる控え室を見つけると、保田はノックもそこそこにドアのノブを回転させた。
ガシャ。ドアを開けるとユウキが一人で漫画を読んでいた。
保田の姿を確認すると、声をあげた。
「保田さん!速かったですね!」
姉譲りの大きな瞳を丸くして驚いている。
77 :
名無し娘。:2001/08/01(水) 00:13 ID:X6obSv9g
「ユウキくん、ごめんね。忙しいとこ。」
保田は挨拶もそこそこに切出した。
「で、最後に連絡してきたのはいつだっけ?」
「脱退宣言した日から一週間くらい経った頃ですね。」
「どこから連絡してきたの?」
「東京駅から。」
東京?新幹線にでも乗ったのだろうか。
「どこかへ行くって言ってなかった?」
「そのときには何も。東京ってのもバックでアナウンスかかったから判ったんですよ。」
保田はふとユウキの言葉づかいが大分丁寧になったのに気づいた。
こんなときに不謹慎なようだが、和田さんの教育は行き届いているようだ。
少し安心した。
78 :
名無し娘。:2001/08/01(水) 00:21 ID:X6obSv9g
「他に何か言ってなかったの?」
「ソニンと話したいって言ってました。」
「?」
「姉さん、モーニング娘。辞める直前は割とソニンと話してることが多かったんですよ。」
「えっ!?知らなかった...そんな仲良かったっけ...あの二人?」
保田には意外だった。
確かに、モーニングの仕事が終わった後もさっさと一人で帰ってしまう後藤ではあったが、
プッチモニの仲間でもあり、それなりに後藤の行動は把握しているつもりだった...
寂しいじゃないか...後藤...
今はそれよりもソニンだ、と思い直す。
「で、ソニンはどこなの?」
79 :
名無し娘。:2001/08/01(水) 00:33 ID:X6obSv9g
「もうすぐ、来ますよ。待ちますか?」
待ちたいところだが、今日はこれからもう一人と約束がある。
30分以内に来なければ去らねばならない。
「うん、待つよ。で、どんな話してたの、あの二人?」
「なんか、ソニンの家の話とか、韓国に行ったことあるか、とかそんな話。」
「ソニンって在日じゃなかったっけ?」
「うん。だから、韓国語話せるのかと思ってたみたいだけど、ソニンって全然だめなんだよね。」
保田には何だか、後藤が韓国に興味を持っているように聞こえた。
ひょっとして紗耶香を追って...
結局、30分以上待ってもソニンは現れず、保田は後ろ髪を引かれる思いでスタジオを後にした。
ただしユウキからソニンの携帯の番号は聞き出したので、後で連絡は取れるだろう。
80 :
名無し娘。 :2001/08/02(木) 03:06 ID:6pX3kP3s
い、意外な展開‥‥
でもやっぱり、いちごまはいいですねー
漏れの中だけでもいいからいちごまフォーエバー!
81 :
名無し娘。:2001/08/02(木) 04:08 ID:lihR3Zag
保田がスタジオを出たのを見届けて、ソニンは控え室に戻った。
「あんた、余計なこと言わなかったでしょうね?」
「大丈夫。具体的なことは何も言ってないよ。」
「これ以上、巻き込まれる人を増やしてはいけないのよ。」
「わかってる。姉さんの安全に関わることだから...」
すべてを悟り、達観したような感のあるユウキだが、やはり姉弟だ。
姉の安否が気にかかるのだろう。
ソニンは自分のせいではないながらも、姉弟が離れて生活せねばならないことに、
後ろめたい気持ちを覚えた。
「ソニンの携帯教えたから、後で電話してくると思う。」
「そうね。下手に動かないよう、うまく言いつくろっておかないと...」
さもないと、保田自身の生命をも危険にさらさせることになる...
ソニンは保田に好意を持っているだけに、そのような事態は避けたかった。
82 :
名無し娘。:2001/08/02(木) 04:33 ID:lihR3Zag
保田はもう一人、後藤の所在について心当たりのありそうな人物を訪ねたが、
捗々しい成果はなかった。。
プッチモニが結成されて暫く立った頃、後藤の紹介で会ったことのある宗教団体の幹部だ。
それも後藤の意志というわけではなく、後藤が芸能界で急成長していることに着目した、
教団側のアプローチであったという。
後藤自身は宗教に対してはニュートラルで、熱心な母親の顔をたてる程度の付き合い方だったらしい。
ということは、宗教の線はないか。
それにしても、2年近くも行動を共にしながら後藤の私生活については殆ど知らなかったことに
保田は戸惑いを覚えた。
紗耶香なら知っていたのだろうか...
ともあれ、やはり鍵はソニンが握っている。
彼女に聞けば、後藤の行方を示す何らかの手がかりが得られるだろう。
保田は携帯を取り出し、ユウキに聞いた番号をプッシュした。
83 :
名無し娘。:2001/08/02(木) 04:46 ID:lihR3Zag
trrrrrrr....trrrrrrrr......
着メロを登録していないソニンの携帯は味気のない電子音を鳴らした。
「ハイ。」
「あっソニンちゃん?」
「ハイ。どなたですか?」
「保田です。ユウキから聞いてると思うんだけど...」
ソニンはとにかく何もしらないの一点張りを貫こうと決め込んでいたが、
保田の真剣な声を聞いて、その決意が揺らいだ。
こんなにも後藤を心配する人たちに隠し事をしなければならないことに後ろめたさを
感じるとともに、このような悲劇に関わらざるを得なかった自分の運命を呪った。
しかし、保田をこれ以上危険な目に合わせる訳にはいかない。
ソニンは意を決して携帯に向かい、はっきりと応えた。
「はい、聞きました。でも私も何も知らないんです。」
84 :
名無し娘。:2001/08/02(木) 04:49 ID:lihR3Zag
>>80 いちごまはやっぱり妄想が膨らみますね。ちょっと暴走気味ですが...(w
85 :
読み:2001/08/03(金) 00:38 ID:xHXS23aw
捗々(はかばか)しい
86 :
名無し娘。:2001/08/03(金) 02:26 ID:B57d.I/Q
保田はソニンの明快過ぎる応対に逆に不信を抱いた。
「ユウキに最後に連絡があったのは東京駅からだって...
で用件がソニンちゃんと話したいってことだったって聞いたんだけど...」
「ええ、私もそう聞きました。でもそのときは結局連絡がつかなかったんです。」
保田は訝しく思いつつも、せっかく話を聞いてくれているソニンの機嫌を損ねないよう、
最新の注意を払いながら、なんとか会話が継続するよう努力した。
87 :
名無し娘。:2001/08/03(金) 02:50 ID:B57d.I/Q
88 :
名無し娘。:2001/08/03(金) 02:59 ID:B57d.I/Q
「ソニンちゃん、後藤と仲良かったんだってね。」
「いえ、仲が良いという程では...」
「後藤って、韓国に興味持ってたの?」
「ええ、そうですね。旅行で行ってみたいというような話でしたけど...」
保田は聞き逃さなかった。
「韓国に行きたいって言ってたのね!」
「ええ...まぁ、飽くまでも旅行で...ということでしたけど...」
やはり後藤は市井を追いかけて韓国まで行ったのか?
ともあれ一筋の光明が見えてきた。
89 :
名無し娘。:2001/08/03(金) 03:02 ID:B57d.I/Q
>読者の皆様
明日から日曜まで出かけますので、更新ができません。
一応、ここまで書き進めて来られたので、保全していただけると助かります。
90 :
名無し娘。:2001/08/03(金) 03:17 ID:VGsUXByE
最近、削除人がやたら小説スレ削除してるよね。保全されてたやつも逝ってた
このスレも気を付けないとヤバイのかな?
91 :
名無し娘。:2001/08/03(金) 17:46 ID:NmFQn2qY
92 :
名無し娘。:2001/08/04(土) 14:14 ID:HSEq8qao
h
93 :
名無し娘。:2001/08/05(日) 03:20 ID:aEsLHTdk
o
94 :
名無し娘。 :2001/08/05(日) 03:25 ID:hI5pil9s
95 :
名無し娘。 :2001/08/05(日) 03:35 ID:hI5pil9s
96 :
名無し娘。 :2001/08/05(日) 03:36 ID:hI5pil9s
97 :
名無し娘。:2001/08/06(月) 02:06 ID:rDoWpG/.
>>90-96
ありがとうございました。
小説スレも削除されているのですか?
鯖の負荷軽減には容量を食いがちな小説スレから...ということでしょうか。
一応、ネタスレへの寄生なのでうまく擬装できているといいのですが...
98 :
名無し娘。:2001/08/06(月) 02:22 ID:rDoWpG/.
うっすらと意識が戻ってくるに連れ、激しい痛みを四肢に感じた。
周囲は真っ暗だ。
何が起きたのか判らぬまま、パニックに陥りそうになる自分を何とか制した。
ハァハァと呼吸をするにも息苦しい。
どうやらかなり狭いところに押し込められているらしい。
覚醒して間もないせいかうまく考えがまとまらないが、
決して快適な状況にあるのでないことは確かなようだ。
ぎりぎりと何かが手足に食い込んでくる感触を確認して、
ようやく縛られているらしいことに気づいた。
ともかく何物かが自分を連れ去ったことは間違いない。
殺していないところを見ると、何らかの方法で利用しようしてはいるようだが...
それが唯一の拠り所か...
99 :
名無し娘。:2001/08/06(月) 02:35 ID:rDoWpG/.
声を出そうとして、猿轡を噛まされているのに気づく。
うぅ...うぅぅ...
我ながら情けない状況だ。
とりあえずどの程度の広さのところに閉じ込められているのか、
脚を伸ばして確認する。
ガン、ガン...
縦方向にはかなり伸びる。2m近くはあるか。
横方向はすぐに足が届くほど近いので1m程度。
高さは膝を立てるとぶつかるくらいだから、50cm前後...
そこら中に足をぶつけてどかどかやっていたのに気づいたのか、
外部でなにやらざわざわとする声が聞こえる。
おもむろに蓋らしきものが開けられ、強い光に目が眩んだ。
誰かが覗き込み、そのシルエットが光を遮る。
「窮屈なところで悪かったな...」
その声は...!!
思わぬ人物の発した声に私は声ならぬ声を上げた。
うぅっ!!ううっっ!!
100 :
名無し娘。:2001/08/06(月) 04:34 ID:nP51y3h6
誰なんだろう・・・
101 :
名無し娘。:2001/08/06(月) 07:39 ID:77bQ7duU
>>97 削除でなくスレッド圧縮にかかっているだけ。
102 :
名無し娘。:2001/08/06(月) 15:18 ID:IrUJR1OU
>>97 板のスレ数が一定数になると内容に関わらず、
最後のレスが古いものから圧縮のためDATAいきになる。
だから書き込み時間が空く小説スレは場合によって保全する。
一日一回保全すれば今のところ問題ないはず。
小説スレは黙認されてるし、ここはエロないから内容で削除なんて
事はないよ。
103 :
名無し娘。:2001/08/06(月) 22:01 ID:6JYuFlpY
おっとDATAだって。
すまん
104 :
名無し娘。:2001/08/08(水) 01:24 ID:7uIvPsnU
105 :
名無し娘。:2001/08/08(水) 02:12 ID:boWhYoPQ
「悪く思わんでくれ。手荒な真似はしたくなかったんだがな。」
そいつは眉ひとつ動かさずに冷徹な口調で言い放ち、
部下と思われる周りの連中に韓国語で命令した。
「拘束はもういいだろう。
何しろ客人は丁重に扱うようにとの指導者同志(トンム)のお達しだ。」
即座に反応し、見覚えのある若者が私の猿轡、そして手足の緊縛を解いた。
ホテルで私にメッセージを届けに来たボーイだ。
今は黒い服に身を包んでいるが、顔の見分けはついた。
戒めを解かれて、人心地がついたせいか、今度は怒りが沸沸と燃え上がる。
「どういうことなのよ!!」
自由になった手で思いっきりひっぱたいてやりたかったが、
ただ者でない雰囲気を漂わせた屈強の男達に制止されるであろうことは明らかだ。
迂闊に手は出せない。
それに、ある言葉が引っ掛かり、反撃の勢いを削いでいた。
「何なの、指導者同志って...」
106 :
名無し娘。:2001/08/08(水) 02:29 ID:boWhYoPQ
「あんた、私を韓国に連れ出しただけじゃ気が済まなくて、今度は北朝鮮にでも売り飛ばす気!?」
「ふっ、察しがいいな。」
そう、こいつは私を韓国に連れてきたオーロラのマネージャー...だったはずだ。
それが何故、こんな誘拐犯のようなことをしている?
勢いで口から出てしまった言葉が否定されなかったことで、背筋を冷たいものが走った。
頭の中に浮かんで来る二文字が重くのしかかる。
拉致...
107 :
名無し娘。:2001/08/08(水) 02:48 ID:boWhYoPQ
「ふっふっ、心配するな。お前は普通の日本人拉致とは扱いが違う。」
「...」
「そう怖がるな。さっきも言ったように、お前は客人扱いだ。素直にしている限りはな。」
「どっ、どういうことよ...」
「キップムジョ...喜び組というのを聞いたことがあるか?」
喜び組...以前、娘の誰かがフォーカスされたとき、同じ号に金正日の愛妾についての
記事が載っていたのを見たような覚えがある...それが確か、喜び組だったはず...
どういうこと?
つまり、私が...!?
「いやあぁぁぁぁぁっ!!」
気がついた時には、我を忘れて叫んでいた。
恐怖とおぞましさで吐き気がすると同時に、激しく寒気を感じてガダカタ震え出す。
何か喋ろうとするが、歯と歯の根が合わずガチガチ言うだけだ。
108 :
名無し娘。:2001/08/08(水) 02:57 ID:boWhYoPQ
「誤解をするな。キップムジョは指導者同志の夜伽をするためのものではない。
もともとは万寿台芸術団から選りすぐった精鋭の舞踊チームだったのだ。」
だからといって身の安全が保証されているわけではあるまい。
私は金正日の脂ぎった顔を思い出して、再び強烈な嘔吐感を覚えた。
「それに、お前を選んだのは金正日指導者同志ではなく、金正男同志だ。」
金正男?聞いたことがない。誰だろう?
私は、震えが止まらないまま、尋ねていた。
「だっ誰なの?金正男って?」
109 :
名無し娘。:2001/08/08(水) 03:01 ID:boWhYoPQ
>>101-103
どもども。スレ圧縮ですか。
なるべく、削除されないよう、更新に努めますので
ご協力お願いします。
110 :
名無し娘。:2001/08/09(木) 07:15 ID:T.Kogsng
111 :
名無し娘。:2001/08/10(金) 05:09 ID:wkAEhIwY
112 :
名無し娘。:2001/08/10(金) 15:52 ID:7AJYNfzg
「金正男同志を知らないのか?」
金正日はかろうじて知ているが、正男というのは初めて聞いた。
あいつはさも馬鹿にしたように、噛んで含めるように説明し出した。
「金正男同志は金正日指導者同志の御子息にて共産党組織指導部課長にあらせられるお方だ。
お前は知らないだろうが、今年5月、日本の出入国管理局で偽造パスポートで入国したところを
収監され、日本でもすっかり有名になったようだ。」
動転してすっかり向こうのペースにはまり気がつかなかったが、
涛々と説明するあいつの姿に疑問を感じた。
なぜあいつは北朝鮮のお先棒を担ぐようなことをしているのだろうか?
と思ったときには既に口に出していた。
「ねぇ、なんであんたは北朝鮮のスパイみたいなことしてんの?」
113 :
ぼかあねえ:2001/08/12(日) 04:00 ID:uFzShw22
ほ
114 :
名無し娘。:2001/08/12(日) 05:13 ID:p1s/7DfM
「朝鮮総聯という団体を知っているか?」
「...」
タバコを一服し、しばらく逡巡した後、煙を吐いて続けた。
「在日韓国人がいるのと同様に在日朝鮮人がいる。両者は似て非なるものだ。
朝鮮戦争後、日本に在住していた朝鮮半島出身者は、どちらかの国籍を選択するよう迫られた。」
在日という言葉は聞いたことはあるが、芸能界では半ばタブー視されていた話題でもあり、
詳しく知る機会はなかった。
実際、芸能人で在日という噂のある人は多かったが、大概は本人が素性を晒すのを嫌がるため、
おおっぴらに語られることはなかった。
大人しく話を聴いているような状態ではないのだろうけれど、なぜこのようなことに自分が巻き込まれたのか、
その背景を知る為にもここは黙って聞かなければ。
何とかこの状況を打開する糸口を掴むためにも。
115 :
名無し娘。:2001/08/12(日) 07:10 ID:521zPp/U
「1955年、母国を朝鮮民主主義人民共和国と仰ぐ、在日朝鮮人が在日本朝鮮人連盟を母体として、
現在の総聯である在日本朝鮮人総聯合会を設立した。
総聯は同じ半島出身でも韓国系の民団(大韓民国民団)と異なり、共和国(北朝鮮)労働党中央の
指導下にある。在日朝鮮人の権利擁護のための活動以外に、偉大なる首領、金日成同志の
精神に基づき祖国統一を果たすため、さまざまな支援活動を行っているわけだ。」
あいつは歴史の先生のように淀み無く流れるように説明する。
私も学校の授業では滅多に発揮しなかった集中力でひたすら聞き入る。
今、テストをしてくれれば100点近く取れそうなのだが。
116 :
名無し娘。:2001/08/12(日) 07:11 ID:521zPp/U
「合法、非合法含めてな。」
「!?」
私は思わずあいつの目を直視した。
にやっと嫌な笑いを浮かべて、あいつは続ける。
「勘違いするな。総聯が日本人拉致に手を染めているわけではない。あくまで間接的な支援だよ。」
「私の場合はどうなるわけ?」
「ふっ。今回は特殊でな。通常、外国人拉致は三号庁舎でも精鋭揃いの作戦部が担当しているのだが、
今回は日本人といっても有名人だ。通常のやり方では通用しないため、統一戦線部から総聯に指示が
降りたわけだ。」
「つまり、あんたが私を韓国に連れだしたときには既に作戦に取り込まれていたったこと?」
「そういうことだ。都合よく、お前がモーニング娘。を脱退した後だったからな。」
なんということだろう。
私は激しい脱力感を感じ、地面にへたりこんだ。
自分の意志で韓国に新天地を求めたつもりが、あいつの掌の上で躍らされていたとは...
私はなんてバカだったのだろう...
簡単に韓国デビュー等という甘い餌におびき寄せられて...
私は...
ごめんよ、後藤...どうやら約束は果たせそうにない...
117 :
名無し娘。:2001/08/12(日) 07:40 ID:QpOYvZBA
「まぁ、平譲までは長い道程だ。道中、細かいことは説明してやるさ。」
あいつはそう言うと、部下と思しき青年に私を立ち上がらせ、
近くに止めてあった黒塗りのベンツに乗るよう指示した。
気がつくと周りを囲む倉庫の屋根の向こうに抜けるような青空が広がっている。
雲ひとつ無く澄み渡った晴天が似つかわしい場面ではなかったが、
私は何だか映画の一こまにでも入り込んだような冷めた感覚でこの状況を捉えていた。
とても現実とは思えない状況にあって、もはや何らの思考を巡らす気力さえ残っていない。
私は言われるままに車へ乗り込んだ。
「北京までは長い。まぁ、ゆっくり休んでいけ。」
車で北京...中国にいるのかぁ...
ぼんやりとそれだけ理解すると、私は深い眠りに落ちていった。
118 :
名無し娘。:2001/08/13(月) 10:19 ID:1Lvzw.26
hozen
119 :
(0^〜^0)@狼:2001/08/13(月) 18:10 ID:Ab4EY1Sw
市井さん頭悪いよ
120 :
名無し娘。:2001/08/14(火) 08:11 ID:34ICQ5rs
hoze-n
121 :
名無し娘。:2001/08/15(水) 00:51 ID:IxBrbNWo
hozen
122 :
名無し娘。:2001/08/15(水) 04:08 ID:3nuwXlnY
保田はソニンとの会見後、後藤の韓国行きの可能性について至急検討する必要性を強く感じた。
ソニンから言質は得られなかったが、あの口ぶりからすると可能性は高いだろう。
目的はわからないが、恐らく滞韓している市井を訪ねるつもりに違いない。
保田は彼女自身、渡韓する必要性についても考えた。
久しぶりに沙耶香にも会いたいし..
しかしオフの日程だけではとても実現できそうにない。
TVか何かの企画で渡航できれば...
そのような考えが甘いものであることは充分承知しながらも、現実のスケジュールを考えると
何か振って湧いたような僥倖を期待せざるを得なかった。
「私も辞めようかな...」
思わず口をついて出た言葉に保田はうろたえた。
自分までもが脱退を意識していたことに改めて驚かされた。
123 :
名無し娘。:2001/08/15(水) 04:10 ID:3nuwXlnY
保田は新メンバーの加入に伴い、事務所の方針がより音楽性よりもタレント性を
重視する方向へと移行している事実を苦々しく思っている自分に気付いた。
今に始まったことではないものの、その思いは古参メンバーが一人、また一人と
辞めていく度に強まっていった。
昨年の四人のメンバー追加以来、娘。の立場は明らかに歌い手としてのパフォーマンスより
タレント性を重視する方向へと変遷していった。
またLOVEマシーンの大ヒットに伴う振付け師の発言権増大化により、パフォーマンスの
力点もより歌からダンスへと移っていった。
幸いなことに保田のダンスに関する評価は決して低くなかったものの、自他ともに認める
歌の実力が発揮されるような曲を与えられることはまずなかった。
124 :
名無し娘。:2001/08/15(水) 04:11 ID:3nuwXlnY
自分なりにその立場を甘んじて受入れ、来るべきときに備えて今は雌伏のときだと
納得してはいるつもりだったのに...
メンバーとして同期でもあり、ミニモニ大ブレイクの立役者として
一時はもてはやされた矢口への待遇を見るに連れ、その思いは強まった。
矢口でさえ、今やメインとなった石川や小学生女子のカリスマと化した
加護の引き立て役としての立場を余儀なくさせられている。
その状況に保田は自分の将来を憂えないではいられなかった。
125 :
名無し娘。:2001/08/15(水) 04:12 ID:3nuwXlnY
後藤の行方を追うことが前向きな行動かどうかはひとまず置いて、
保田は今、身の振り方を真剣に考えなければならない時期に差しかかっていることを
改めて意識した。
「ともかく沙耶香が香港から帰ってきてからだわ...」
後藤が韓国に向かっているのであれば、必ず市井のところへ姿をあらわすであろう。
それまではどのみち動けない。
保田は独りごちて、ラジオの収録に向かった。
その番組も後藤の緊急脱退によりあと数回で打ちきられるのだが...
126 :
名無し娘。:2001/08/15(水) 04:12 ID:3nuwXlnY
保田の意に反して、市井からの音信は途絶えたままだった。
予定通りの日程であればとっくにソウルへ戻っていておかしくなかったが、
戻ってはいても忙しくてPCに向かう暇もないのか...
市井らしくないとは思いつつ、この時点ではまだ不信を抱く余地はなかった。
127 :
名無し娘。:2001/08/16(木) 12:27 ID:KQdTQnXw
128 :
名無し娘。:2001/08/17(金) 02:04 ID:XKYJhUbo
129 :
名無し娘。:2001/08/17(金) 07:54 ID:0qvDHh3A
ほ
130 :
名無し娘。:2001/08/17(金) 13:15 ID:r/iyX8ZY
ぜ
131 :
名無し娘。:2001/08/17(金) 18:55 ID:liR4oymg
ん
132 :
名無し娘。:2001/08/18(土) 00:36 ID:TL5pjsaE
。
133 :
名無し娘。 :2001/08/18(土) 04:10 ID:NR0dHiRk
ん
134 :
名無し娘。:2001/08/18(土) 14:37 ID:ShjKXnxs
あ
135 :
名無し娘。:2001/08/18(土) 20:50 ID:ROs8FkZ.
ほ
136 :
名無し娘。:2001/08/19(日) 00:15 ID:nifmM72c
が
137 :
名無し娘。:2001/08/19(日) 07:40 ID:nifmM72c
み
138 :
名無し娘。:2001/08/19(日) 12:40 ID:SOb2jXFU
る
139 :
名無し娘。:2001/08/19(日) 18:01 ID:vYJB1/HA
ぶ
140 :
名無し娘。:2001/08/20(月) 00:20 ID:gsXa25GE
た
141 :
名無し娘。:2001/08/20(月) 01:30 ID:731P9hK6
目が覚めると車は丁度、大河を渡る大きな橋に差し掛かるところであった。
車窓から覗くと、川面に映える陽の照り返しが眩しい。
対岸に聳える大工場群の煙突から出る煙が、斜めに棚引いている。
西方に傾いていく太陽の日差しが風景全体を赤く染めていく。
気がつけば夕方までぐっすりと寝込んでしまったようだ。
縛めを解かれたことで気が緩んだものか、ともかく眠っている間だけは束の間、
この信じ難い現実を忘れることができた。
ベンツの後部座席で車窓を眺めつつ心地よい振動に揺られてのドライブは、
心地よいものといえない事もない。
しかしながら、現実には手足の拘束こそ外されたものの依然として北朝鮮工作部隊の
掌中にその命運を握られている状態に変わりはなかった。
その事実が重く心にのしかかる。
果たして無事に日本へ帰れる日は来るのだろうか...
新潟で拉致されたという少女の名前はなんと言ったか...
彼女が攫われてからもう十数年の時が経っているはずだ。
生きているなら、これから会うこともあるのかもしれない。
142 :
名無し娘。:2001/08/20(月) 01:32 ID:731P9hK6
143 :
名無し娘。:2001/08/20(月) 02:53 ID:731P9hK6
寝る前にも一度保全
144 :
名無し娘。:2001/08/20(月) 12:00 ID:IoEmSxQE
保全
145 :
名無し娘。:2001/08/21(火) 00:35 ID:ooKG2Pog
146 :
名無し娘。:2001/08/22(水) 00:27 ID:2vdfdyls
147 :
名無し娘。:2001/08/22(水) 07:27 ID:m8Gq5qqI
148 :
名無し娘。: