1 :
くそったれ娘。:
(∂ゝ∂)<yo−チェックイットアウトー
2 :
くそったれ娘。:2001/05/03(木) 02:19 ID:B57d.I/Q
(∂ゝ∂)<yo−チェックイットアウトー
誰が市井を殺したの?
「私」と後藤が言いました
私のこの手で私が殺した
誰が市井の死ぬのを見たの?
「私」と加護が言いました
小さなこの目で死ぬのを見た
誰がその血を受けたのか?
「私」と辻が言いました
小さなお皿で 私が受けた
誰が経かたびらを作るのか?
「私」と石黒が言いました
針と糸で 私が作る
誰がお墓を掘るのだろう?
「私」と飯田が言いました
すきとシャベルで私が掘ろう
誰が牧師になるのだろう?
「私」と矢口が言いました
小さな聖書を持って 私が牧師になろう
誰がおつきをしてくれる?
「私」と石川が言いました
もしも暗やみでなかったら 私がおつきになりましょう
誰がたいまつ持つのかい?
「私」と中澤が言いました
おやすいご用だ 私が持とう
誰がおくやみ受けるのか?
「私」と安倍が言いました
愛ゆえ深い私の嘆き 私がおくやみ受けましょう
誰が棺を運ぶのか?
「私」と吉澤が言いました
もしも夜でないのなら 私が棺を運びましょう
誰が讃美歌歌うのか?
「私」と福田が言いました
椅子に座って言いました 私が讃美歌歌いましょう
誰が鐘を鳴らすのかい?
「私」と保田が言いました
なぜなら私は力がある 私が鐘をつきましょう
可哀想な市井のために
鐘の音が鳴り響いたとき
全ての娘。たちは ため息ついてすすり泣いた
5 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 02:15 ID:KwencDJI
こんなの見てる奴はよっぽど暇だろ?
マザーグースって知ってるか?
6 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 20:51 ID:Uuu74UoM
パタリロ
7 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:12 ID:GlLiuGXk
人間なら誰しも遅かれ早かれ直面する疑問が1つある。
それは、人間というものはどの程度の外傷性ショックまで耐えうるのか?という疑問である。
答え方は人によってまちまちで、星の数ほど有るが、肝心の答えの方は煎じ詰めると、
結局のところ次のような問いになる。
《当の本人がどれほど切実に生き延びたいと思っているか?》
8 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:13 ID:GlLiuGXk
○月×日
嵐の為に船が沈み、岸に打ち上げられて2日になる。
今朝、島を歩幅で測った。かなり大きい!
幅はいちばんある190歩、長さは端から端まで267歩。
見たところ島には食べる物は何も無い。
私の名前は、吉澤 ひとみ。
これは私の日記だ。救助されたら(いつのことか?)すぐに処分できる。
マッチが大量に有るから。
マッチとヘロイン。この2つだけは大量に有る。
だけど、どちらもここでは1銭にもならない、アハハ。
だから書こうと思う。暇つぶしになるからね。
込み入った事を全て白状すると……いいじゃない、時間が有るんだから!
ヘロイン密売にかかわる様になったのは、モーニング娘。になってからだ。
つんくさんに言われて、最初は睡眠薬を売るだけだった。
が、しばらくして、つんくさんの≪秘密の保管室≫の管理がひどくズサンである事を発見した。
薬の出入りを知る者は1人もいないのだ。
やぐっつぁんなど、ヘロインを両手に一杯ずつおおっぴらに持ち出した。
ごっちんは、その場で飲んでいた。
私はいつも用心深かった。それが私の処世術。
娘。メンバーの誰にも解らない様に横流しを始めた…。
9 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:14 ID:GlLiuGXk
○月×日
昨夜ボートが流されて、島の北側の水深10メートルくらいの沖合に沈んだ。
あんなボートはどうでも良い。礁を越えて来たので、船底が穴ぼこだらけになっていた。
すでに役に立ちそうな物は持ってきてある。
40リットルの水。裁縫セット。救急セット。それに、救命ボートの点検日誌と思われる、
私が今、書いているこの本。とんだお笑い草よね。
食料が備わっていない救命ボートなんて聞いた事ある?
ここに書いてある最後の点検報告の日付は、1972年9月22日よ。
私が生まれる前の日付じゃない!
おっと、忘れちゃいけない、ナイフが2本あった。1つはなまくら、もう1つはまあまあの鋭さだ。
それにフォークとスプーンが1本ずつ有る。ナイフは鉛筆を削るのに役立っている。
この鳥の糞がはね散っている岩の島から抜け出す。
私は絶対に死なない。ここから脱出する。絶対に。必ず脱出してやる。
P.S
所有物を列挙したとき、1つ忘れていた物が有った。
純粋ヘロイン2キロ。六本木の末端価格で3500万ほどになる。
が、ここではゼロ、1銭にもなりゃしない。
おかしいじゃない、アハハッ!
10 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:17 ID:GlLiuGXk
○月×日
ついに食べたわ。しかし食べたと言えるかどうか。
島の中央にある岩の1つにカモメが1羽とまっていた。
そこではどの岩も雑然と積み重なって山のようになっている。
それに、どの岩もカモメの糞だらけだ。
私は手ごろの石を拾うと、岩山を登り、出来る限り接近した。
カモメは逃げようともせず、岩の上に立ったまま黒光りする目で私を見つめていた。
私の腹が鳴ってもカモメは怯えもせず、飛び立たなかったので、びっくりした。
石を力まかせに投げつけると、カモメの横腹に命中した。
カモメはギャ−と大声を発し、逃げようとしたが、右の翼を折られてしまったので飛び立てない。
私が岩山をよじ登り捕まえようとすると、カモメはピョンピョン飛び跳ねて逃げ始めた。
白い羽の上を血が、ほんの少し流れているのが見えた。
その糞カモメには散々てこずらされた。
中央の岩山の反対側で、岩の間の穴に足を突っ込み、危うく踝の骨を折るところだった。
11 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:19 ID:GlLiuGXk
遂にはくたびれだしたが、結局、島の東側で捕まえた。
カモメの奴が本気で海へ逃げて水を掻いて逃げようとしていたところを、
尾の羽根をギュッと握って捕まえてやった。
奴はくるりと振り返り、私の手を嘴でつつき出した。
私は片方の手で奴の脚を掴み、もう一方の手で首をへし折ってやった。
首が折れる哀れな音を聞くと、大いなる満足感を覚えた。
昼食にありつけるんだからね。そうでしょ?アハハ!
私はカモメを“野営地”まで持って帰ったが、羽根をむしり内蔵を取るよりも早く、
つつかれた時に出来た傷をヨードチンキで消毒した。
鳥はあらゆる種類の細菌を持っているからだ。こんな所で細菌感染したら、もうおしまいよ。
12 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:20 ID:GlLiuGXk
カモメの解体は大変スムーズに運んだ。が、悲しい事に火を使う事は出来ない。
島には草1本生えて無いし、流木も全く無い。救命ボートも海に沈んでしまった。
マッチで焼いても、硫黄臭くて食べられない。
仕方なく生で食べた。胃が直ちに吐き出したくなった。
胃には同情したが、吐き出すなんて許す訳にはいかない。
吐き気が収まるまで数を逆に数え続けた。この手はいつも効く。
まったく恐ろしい鳥だわ。おかげで踝の骨を折りそうになったし、嘴でつつかれて手に傷を負った。
明日、もう1羽捕まえたら、拷問してなぶり殺しにしてやろう。こいつは簡単に殺しすぎたわ。
こうやって書いていても、ちょっと下に目をやれば砂の上に有る切断された頭が見える。
黒い目が、生気を失ってどんよりしているにもかかわらず、まだ私をあざ笑っているように見える。
カモメには知能という物が僅かなりとも有るのかしら?
カモメは食べても大丈夫な鳥なのかしら?
13 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:21 ID:GlLiuGXk
○月×日
今日は食い物無し。カモメが1羽、岩山のてっぺんの近くにおりたけど、
接近する前に飛び立ってしまった、アハハ!
さっきのカモメが戻ってきて、捕まえる事ができたら、殺す前に目をくり抜いてやる。
くそっ、お腹が減ったわ。
14 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:22 ID:GlLiuGXk
○月×日
今日はカモメ無し。手に鋭い方のナイフを持って海に入り、水が腰までくる所まで歩いた。
そこで4時間、太陽の光に焼かれながら微動だにしなかった。
2度、失神しそうになったが、数を逆にかぞえ、何とか持ち堪えた。
魚は1匹も見えなかった。只の1匹も。
15 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:23 ID:GlLiuGXk
○月×日
カモメをもう1羽殺した。殺し方は前と同じ。今度捕まえたら、なぶり殺しにしてやると思ったが、
お腹が空き過ぎていて、それどころではなかった。内臓を取ると、即かぶりついた。
そのあと内臓も搾って食べてしまった。
活力が一気によみがえるさまがハッキリと感じられる、なんとも奇妙な感覚を味わった。
もう、駄目なんじゃないかと思い始めていた所だったの。
中央の大きな岩山の陰に寝そべっていると、色々な声が聞こえてくるような気がした。
父の声、母の声、友達の声。
しかし、最悪なのは私を玩具にしているつんくさんの声だ。
「さあ、おやりなさい」
どこからともなく声が聞こえてくる。
「そう、そう、ちょっと嗅いでごらん。嫌な事なんか忘れちゃうよ。気持ちイイよ……」
しかし、私はヘロインなどいちどもやった事が無い。睡眠薬さえ飲んだ事が無い。
16 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:24 ID:GlLiuGXk
○月×日
飛行機が1機飛んできた。島の上空を真っ直ぐ横切った。
私は岩山のてっぺんに登って手を振ろうとした。
が、足が穴にはまってしまった。カモメを初めて殺した日にはまったのと同じ穴だと思う。
踝の骨を折ってしまった。複雑骨折だ。まるで銃で撃たれたようになった。
信じ難いほどの激痛。苦痛のあまり悲鳴を上げた拍子にバランスを崩し、
狂ったように腕を回転させたが、倒れてしまい、頭を打った。
そのまま目の前が暗くなり、気が付くと既に夕暮れだった。
頭を打った所が切れていて、少し失血した。
踝はタイヤの様に腫れており、全身が陽に焼けて酷い状態になっていた。
あと1時間も陽に晒されていたら、水脹れになっていたと思う。
足を引き摺って戻り、情けなさのあまり泣き、震えながら夜をすごした。
頭の傷は右のこめかみのすぐ上の所に有り、そいつを消毒して念入りに包帯を巻いた。
頭の方は浅い頭部挫傷に脳震盪だと思うが、踝の方は……酷い骨折で、2・3箇所、折れている。
これからカモメの奴をどうやって追いかけたら良いのかしら?
あれは沈んだ船の遭難者達を探している飛行機に違いない。何しろ暗かったし、あの嵐だったから、
救命ボートは沈没地点からだいぶ離れた所へ流された筈である。
捜索の飛行機はこっちの方にはもう戻ってこないかもしれない。
くそっ、忌々しい、踝が酷く痛むわ。
17 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:25 ID:GlLiuGXk
○月×日
救命ボートが乗り上げた南側の小さな白い砂浜に、救助を求める印を作った。
1日かかった。日陰で休み休みやったが、それでも2度、失神した。
体重が1キロほど減ったのではないかと思う。殆どは脱水によるものだろう。
しかし、今、座っている所から、1日がかりで書いた4文字が見える。
白い砂の上に並べられた黒い石が、上下3メートルの“HELP”の文字をかたどっている。
飛行機がやって来たら見逃す筈が無いわ。もし又やって来たら。
足が休み無くズキズキと痛み続けている。腫れが更に増しており、
複雑骨折した所の周りが酷く変色してしまった。変色がかなり進行している様だ。
シャツできつく縛っているので、痛みを少しは和らげる事が出来るが、
それでも酷い激痛で、眠る代わりに気を失っている。
足の切断が必要かもしれないと思い始めた。
18 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:26 ID:GlLiuGXk
○月×日
腫れも変色も更に酷くなった。明日まで様子を見よう。
切断が必要になったら、なんとかやれると思う。
マッチで鋭い方のナイフを殺菌出来るし、針と糸は裁縫セットに入っている。
包帯はシャツを使えば良い。“鎮痛剤”だって2キロも有る。
本来は鎮痛剤としては使わないが、しかし、貰えるんだったら誰も拒否はしないでしょ。絶対に。
なっちなんか、気持ち良くなれると思ったら、“森林の香り”と言うふれこみの、
芳香剤だって嗅ぐんだから!嘘じゃない!
19 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:27 ID:GlLiuGXk
○月×日
足を片方切断する事に決めた。4日間何も食べていない。
これ以上延ばしたら、切断中にショックと空腹から失神し、失血死する危険性が出て来る。
それに、どんなに悲惨な状態になっても、私は生きていたい。
今すべき事は解っている。最後の手段だが、何とか成功させる事が出来ると思う。
これまでどんな困難も切り抜けてきたではないか。
それに最近は素晴らしい義足も有る。片足でもたいして不自由せずに生きていけるでしょ?
さて、私がどれほど頑張れるか見る事にしよう。幸運を祈ろう。
20 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:29 ID:GlLiuGXk
○月×日
やった。
痛みが一番心配だった。痛みには強い方だが、体力が落ちているので、
空腹と苦痛の為に切断中に失神してしまう可能性も有ると思った。
しかし、この問題はヘロインが綺麗に解決してくれた。
私は袋の1つを開けると、ヘロインの粉をたっぷり2つまみ取って鼻から吸い込んだ。
最初は右の鼻孔からから、ついで左の鼻孔から。
感覚を麻痺させる爽やかな氷が、鼻孔を上って脳の隅々にまで広がって行くような感じがした。
それは昨日、日記を書き終えてすぐ……9時45分の事だった。
次に時計に目をやった時には、影が移動していて、私の体に少し陽があたっていた。
時間は12時41分だった。とろとろ眠ってしまったのだ。
こんなに気持ちの良い物だとは夢想だにしなかったわ。今まで何故、馬鹿にしていたのか解らない。
痛みも、恐れも、惨めさも……みんな消えてしまい、穏やかな陶酔感だけが残った。
切断はそうした状態で行った。
21 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:30 ID:GlLiuGXk
実際には激しい痛みが有り、始めの方に集中して起こった。
しかし、その痛みは他人の痛みの様で、自分の体から遊離した物の様に感じられた。
面食らったが、興味深くもあった。解って貰えるかしら、この感じ?
モルヒネをベースにした強力な薬をやった事が有る者なら、多分解るんじゃないかと思う。
痛みが和らぐばかりでなく、ある精神状態が作り出される。心が静穏になるのだ。
なぜヘロインの虜になる者がいるのか、これで解った。
“虜になる”と言う言葉が一番よく使われているが、随分強い言葉の様に思われる。
勿論、ヘロインをいちどもやった事の無い人々が使う言葉だ。
しかし、切断も半ばを過ぎると、痛みが段々私の物として実感される様になってきた。
幾度も気が遠くなりかかった。
口の開いた白い粉の入った袋に熱い眼差しを向けたが、必死の思いで目を逸らした。
また居眠りでもしてしまったら、気を失うのと同様、確実に失血死してしまう。
私は数字を百から逆に数え始めた。
22 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:32 ID:GlLiuGXk
一番注意しなければならないのは失血である。1滴の血といえども無駄に流してはいけない。
失った血は、体内の造血組織が補給するまで失われたままだからね。
切断を終えた時、脚の下の砂が血で黒くなっていた。
切断は12時45分丁度に始め、1時50分に終えた。
ただちにヘロインをやる。量は前よりも増やした。
私は苦痛の存在しない灰色の世界に吸い込まれ、5時近くまでそこに留まった。
われに返ると、太陽は西の水平線に近く、青い大海原の彼方から黄金の光を投げかけていた。
生まれて初めて目にする得も言われぬ美しさだった……
今までに感じた全ての苦痛がその一瞬に報われた。
1時間後、ヘロインをもう少し吸い込み、日没を存分に楽しんだ。
日が暮れて間もなく、私は……。私は……。
23 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:33 ID:GlLiuGXk
ちょっと待って。“4日間”何も食べていないという事書いたよね?
弱り果てた体に活力を補給するとなると、差し当たり自分自身の体を利用するより無い状態なのよ。
その事書いたよね?
それから、サバイバルというのは精神の問題なの。
優れた精神の持ち主でないと優秀なサバイバーにはなれない。
こんな状況に陥ったら誰だって同じ事をする、何て言って、自分の行為を正当化するつもりは無い。
行儀の良い頭を持った普通の人には、こんな考えはまず浮かばないと思う。
心配は要らない。誰にも知られる筈が無い。
島を離れる時は、この日記帳を必ず処分するのだから。
私は用心に用心を重ねた。
徹底的に洗ってから食べた。
24 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:34 ID:GlLiuGXk
○月×日
切断個所の痛みがずっと続いている。時々耐え難いほどになる。
しかし、治癒過程で起こるしつこい痒みの方がもっとたちが悪い。
私は傷口を無茶苦茶に掻きたい衝動に何度も襲われた。
シャツの包帯を引きちぎり、傷口を引っ掻いて、指をじくじくした柔らかい肉の中に突っ込み、
縫合の糸を引っ張り出して、砂の上に血をどばどば流してやりたい。
この恐ろしい強烈な痒みから逃れられるなら何でもしてやる。
そんな心境に何度なった事か。
そういう時は、まず百から数を逆に数え、それでも駄目ならヘロインの世話になった。
これまでにヘロインをどれ位吸い込んだのか、さっぱり解らないわ。
しかし、切断以来殆どずっと“酔い”続けている。ヘロインは空腹感を抑えてくれるの。
お腹が空いている事さえ解らなくなってしまう。お腹の奥深くに微かな痛みを感じるだけだ。
そんな痛みはまったく気にならない。
が、ヘロインを食物の代わりにする事は出来ない。ヘロインにはカロリーなど無いと考えるべきだ。
時々、私はあちこち這ってみて、エネルギーがどの位残っているかテストしてみる。
体力は確実に落ちていっている。
あぁ、そうせずに済めばと思うが……また切断が必要になるかもしれない。
25 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:35 ID:GlLiuGXk
P.S
飛行機が又飛んで来た。高すぎてどうしようも無い。空に刻まれた飛行機雲しか見えなかった。
それでも私は手を振った。手を振り、叫んだ。見えなくなった時、思わず泣いてしまった。
暗くなって、辺りの物が見えなくなってきた。食べ物が目に浮かぶ。
私はあらゆる種類の食べ物を考え続けた。
ラザニア、ガーリック・トースト、エスカルゴ、ロブスター、プライム・リブ、ピーチ・メルバ、
ロンドン・ブロイル、パウンド・ケーキ、バニラ・アイスクリーム、ホット・プレッツェル、
べーグル・サーモン、べーグル・アラスカ、べーグル・ハム、オニオン・リング。
ポテトチップスをオニオン・ディップに付けて食べ、アイスティーをごくごく飲み、
フライド・ポテトをむしゃむしゃやる。
100,99,98,97,96,95,94、
くそっ、くそっ、くそっ。
26 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:36 ID:GlLiuGXk
○月×日
今朝、カモメが1羽、岩山の上に降りた。丸々と肥った大きな奴だわ。
私はシャツを巻いた脚を上げて庇いながら、野営地という事にしている岩陰に座っていた。
カモメが岩にとまるとすぐ、私は涎を流し始めた。
まるでパブロフの犬ね。赤ん坊の様に、ぞろっと涎を垂らす。赤ん坊の様に。
手ごろな石を拾い上げ、カモメの方に這い進み始めた。
たいして期待していなかった。すぐに飛び立ってしまうに違いないと思っていた。
が、それでも、試してみなければならなかった。
万が一、あのように横柄で丸々と肥った鳥を捕まえる事が出来たら、
予定している次の切断を無期延期する事が出来るだろう。
私はカモメの方へ這い進み続けた。時々傷口が岩に当たって、激痛が全身を駆け巡った。
私は這い続けた。カモメが飛び立つのを今か今かと待ちながら。
27 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:37 ID:GlLiuGXk
カモメは飛び立たなかった。
それどころか鳥の将軍の様に肉がたっぷり付いた胸を突き出し、威張った様な足取りで歩いている。
そして、時々嫌らしい小さな黒い目で私を見る。
と、私は石の様に身を強張らせ、そいつが再び行ったり来たりしはじめる迄、
数を百から逆に数え続ける。カモメが翼をばたつかせるたびに、胃が氷詰めになった。
涎は止まらなかった。どうする事も出来なかった。
私は赤ん坊の様に涎を垂らし続けた。
奴に忍び寄るのにどの位かかったのかしら?
1時間?2時間?近づけば近づく程、益々心臓が高鳴り、奴が美味しそうに見えてきた。
段々からかわれている様な気がしてきて、命中可能な所まで達するや否や、
奴はきっと飛び立ってしまうに違いないと思い始めた。
腕と脚が震えだし、口がからからに渇き、傷口が激しく疼く。
ヘロインの禁断症状と考えざるをえない。しかし、こんなに早く出て来るものなのかしら?
ヘロインを使用しはじめて、まだ1週間にもならないのに!
大丈夫。ヘロインは必要だわ。まだ沢山残っている、沢山。
日本に戻って治療が必要になったらお金が要る。そうでしょ?
28 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:39 ID:GlLiuGXk
命中可能な位置にまで達すると、とたんに石を投げたくなった。
外すに違いない、それも1メートルも、必ず外す、絶対外す。
狂った様にそう思い込んでしまったの。
それで、もっと近寄らざるをえなくなって、天を仰ぎながら岩山を這い登り続けた。
肉が削げ落ちて案山子の様になった体から汗が噴き出してきた。
歯が腐りだした事、もう書いたかしら?
迷信深い裕ちゃんなら、きっと言うだろうな。それは、食べたからだって、あれを…。
アハハッ!もっと科学的にならないと!
私は止まった。前にカモメを捕まえた時よりずっと近い位置にまで達した。
が、まだ投げる決心が付かない。私は指が痛くなるまで石をきつく握り締めた。
どうしても投げる事が出来なかった。外したらどういう事になるか正確に知っていたから。
あの最後の瞬間に奴が飛び立たなければ、至近距離まで這い進み、
石を投げずに捕まえる事が出来たと思う。
運が良ければ、這い登って、首を絞める事も出来た筈だわ。
が、奴は翼を広げ、飛び立った。
私は奴に向かって喚きながら膝で立ち、満身の力を込めて石を投げつけた。
29 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:41 ID:GlLiuGXk
当たった。
カモメは喉を絞って一声ギャ−と鳴き、岩山の向こう側へ落ちた。
私は奇声を上げ、きゃっきゃっ笑いながら、切断した方の脚が岩に当たろうと、
傷口が開こうとお構い無く、這って岩山のてっぺんを越え、向こう側へ出た。
が、バランスを崩し、頭を岩に勢い良くぶつけてしまった。
酷い瘤が出来たが、その時は頭を打った事にさえ気付かなかった。
頭の中にはカモメの事しか無く、私は余りの幸運に狂喜していた。
なにしろ、命中したのよ!それも翼に命中したのよ!
カモメは翼をばたつかせながら砂浜に向かって転げ落ちていった。
片方の翼が折れて、腹側が血に赤く染まっていた。
私は出来る限り速く這い進んだが、カモメの方がもっと速かった。へんてこな競争ね!アハハッ!
手の事さえ無ければ、捕まえられたかもしれない…距離は僅かずつだが詰まりつつあったのだ。
手は大事にしなければならない。また切断が必要になるかもしれないから。
しかし、手を庇いながら這ったつもりだったが、
狭い砂浜に達した時には掌に引っ掻き傷が出来ていた。
G−SHOCKの腕時計を岩のごつい出っ張りに当ててガラス蓋を粉々に砕いてしまった。
30 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:43 ID:GlLiuGXk
凄まじい鳴き声を上げながら翼をばたつかせて水の中に入ったカモメを、私は掴んだ。
尻尾の羽根をぎゅっと一掴みしたの。
が、次の瞬間、羽根はするりと拳から抜けてしまった。
私はそのまま海に倒れ込み、水を飲んで噎せ、鼻を詰まらせた。
海の中を尚も這い進んだ。泳いで追おうともした。
が、シャツの包帯が傷から外れ、私は沈み始めた。
やっとの思いで浜まで戻ると、激しい疲労で全身がぶるぶると震えだし、
泣き、叫び、逃げたカモメを呪った。
カモメは徐々に遠ざかりながら長い間見える所に浮いていた。
私はカモメに戻って来るよう懇願したりもしたようね。
しかし、礁を越えた時にはもうカモメは死んでいたと思う。
なんという骨折り損だろう。
“野営地”まで帰るのに1時間近くかかった。
ヘロインを鼻から大量に吸い込んだが、それでもなおカモメに対する憤懣は消えなかった。
結局捕まらないというのなら、何故あんなに焦らさねばならないの?
何故あっさり飛んで逃げてしまわなかったの?
31 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 22:43 ID:GlLiuGXk
○月×日
左足を切断し、ズボンを包帯代わりにして傷を覆った。
奇妙な事だ。切断中ずっと、私は涎を垂らし続けた。だらだら、だらだら、垂らし続けた。
カモメを見ている時と同じだ。止めようとしても止まらない。
しかし、我慢して暗くなるまで待つ事にした。
で、百から逆に数えだした……20回、あるいは30回!アハハッ!
それから……。
いつまでも言い続けた。
コールド・ロースト・ビーフ。コールド・ロースト・ビーフ。コールド・ロースト・ビーフ。
あっ!タイトルは↑
33 :
名無し娘。:2001/05/09(水) 01:49 ID:GunKPqYI
すごい。名作の予感
34 :
し:2001/05/11(金) 01:55 ID:NFByxIMU
35 :
し:2001/05/11(金) 02:04 ID:/4WxPQWY
>>33 こんな糞スレ読んでるなYo!
言っておくけど、元ネタ有りだから。
てゆーか、ほとんど丸写し(藁
○月×日
2日間、雨が降り続いている。それに風も強い。
苦労して中央の岩山から岩を幾つか運んできて、這い入る事が出来る位の穴を作った。
小さな蜘蛛を1匹捕まえた。逃げようとした処を指で摘んで食べた。
とても美味しい。汁が口の中に広がった。
積んだ岩が落ちて生き埋めになるかもしれないという思いが頭をよぎった。構いやしないわ。
嵐の間ヘロインを嗅いで“陶酔”し続けた。
雨が降ったのは2日では無くて3日だったかもしれない。
或いは、1日だけだったかも? しかし、2回は暗くなったと思う。
うとうととまどろむのが好き。痛みも痒みも感じない。
絶対に生き延びてみせるわ。こんなに頑張っているのに犬死にする筈が無い。
1日の半分は意識が朦朧とした状態にあり、残りの半分は傷口が痒く、
湿気のため激痛が走る。
だが、諦めるものか。絶対に。死んでたまるか。このまま犬死にしてたまるか。
38 :
33:2001/05/13(日) 02:14 ID:LBAWTgA6
>>36 いいんじゃねーNo!
元ネタ知らないんで今後も期待。
>>38 おっ!
まだ居たのか。こんな糞スレ見てるの俺とアンタ位だろ?
○月×日
太陽が漸く顔を出した。晴れ渡った美しい日だ。
今ごろ鶴ヶ島では、みんな尻まで凍えさせているんじゃないかしら。いい気味ね。
今日は素晴らしい日だった。この島に来て以来、最良の日と言っても良い。
嵐の間出ていた熱も引いたようだ。
穴から這い出した時、衰弱の為体が震え出したが、
1、2時間、陽を浴びながら熱い砂の上に横たわると、再び人心地つき始めた。
這って南側の浜に行くと、嵐に流されて来た流木が幾つか打ち上げられていた。
救命ボートの板も何枚か有った。板の幾つかに昆布などの海藻が付いていた。
食べた。酷い味だった。実家の最中を食べている様な感じだった。
しかし、今日の午後は体力がだいぶ回復した様な感覚を覚えた。
流木を引き上げて、波打ち際から出来るだけ遠くまで運び、乾かした。
マッチは殆ど使っていないので、箱の中には防水マッチがまだたっぷり残っている。
そのうち誰かがやって来るだろうから、木はその時に燃やせば信号になる。
誰も来ないと言うなら、料理をする時に使えば良いわ。
さて、1嗅ぎする事にしましょ。
○月×日
蟹を1匹見つけた。殺し、小さな火を起こして焼いた。
今夜は、久しぶりに神を信じる事が出来そうな気分になった。
42 :
名無し娘。:2001/05/13(日) 12:54 ID:q.W.mAt2
>>41 オレも見てる・・・。
ガンガンガンガレ。
○月×日
今朝、前に石で砂浜に書いたHELPの文字が嵐で殆ど消されてしまっているのに気付いた。
しかし、嵐が収まったのは……もう3日前の事ではなかったかしら?
ヘロインのせいでこんなに訳が解らなくなっているのだろうか?
気を付けなければいけない。量を減らそう。
船が近くを通った時、まどろんでいたのでは堪らないわ。
文字を書き直した。が、丸1日かかり、へとへとになってしまった。
蟹を見つけた所へ行って、又見つけようとしたが、収穫は無かった。
文字を書くのに使った石で両手に擦り傷が出来たので、
激しい疲労にも関わらず素早くヨードチンキで消毒した。
手は大事にしなければならないわ。どんな事が遭っても。
○月×日
今日、岩山のてっぺんにカモメが1羽とまった。が、命中可能な所まで近づく前に飛び去った。
出来る事なら、奴を地獄へ送り込んでやりたかった。
そこで、奴に加護の黒目がちな小さな目を永遠に突かせるの。
アハッ!
アハッ!
ハッ!
○月×日
右脚を膝の所から切断。大量に失血。ヘロインを用いるも激痛やまず。
外傷性ショックで死ぬなんて言うのは、だらしのない奴らよ。
要するに、あの問いね。
当の本人がどれほど切実に生き延びたいと思っているか?
《当の本人がどれほど切実に生きたいと思っているか?》
手が震える。手に裏切られたら、もうおしまい。そんな恩知らずな事はさせないわ。絶対に。
あれほど大事に育ててやったのだから。皆望みどおりにしてやり、何不自由させなかった。
裏切らん方が良いわよ。後で悔やんでも知らんからね。
今は少なくともお腹は空いていない。
真ん中から割れた救命ボートの板が有った。一方の端が尖っていた。そいつを使った。
涎が流れたが、なんとか自分を抑え、待った。
それから、考え始めた……ああ、よく食べに行った焼肉の事を。
鶴ヶ島のお気に入りのお店〈アサヒビール館〉には、
なっちみたいな豚を丸々ロースト出来る大きなBBQ炉が有った。
私と梨華っちは夕暮れのポーチに座り、ビアンのテクニックなんかを話し合っている。
すると、微風が豚肉の焼ける甘やかな匂いを私達の所まで運んでくる。
ああ、裏切り者の後藤真希め、これが豚肉の焼ける甘やかな匂いよ!
○月?
もう一方の脚も膝から切断。1日中ずっと眠い。
「ひとみ、この手術は必要なんですか?」
アハハ。手が震えた。まるで老人の、中澤さんの手だ。
憎たらしい。爪の下に血が入り込んだ。瘡蓋。
保健室に有ったお腹がガラス製の人体模型を覚えている?
あれになったような気分だ。ただただ見たくない。どうしようもない。
やぐっつぁんがよくそう言っていたっけ。
楽屋の隅に立っていると、アルバ・ローザのジャケットを羽織ったやぐっつぁんが
つかつかと近づいてくる。
「中澤さんと上手くやってるかい」と訊くと、やぐっつぁんが、
「駄目だね、どうしようもねえや」と答える。女。やぐっつぁんか、懐かしいわ。
あの街にずっと居れば良かった。ここはどうしようもねえや、やぐっつぁんの言うとおりだよ。
アハハ。
しかし、適切な治療と義足によって、私は生まれ変わった様に不自由なく暮らせる筈だわ。
そうしたら、ここへ戻って来て、メンバーのみんなに言ってやろう。
「ここで。全てが。起こったんです」と。
アハハ!
○月×日
死んだ魚を見つける。腐っていて、酷い匂いだった。でも食べてしまった。
吐きたくなったが、ぐっと我慢した。生き延びるのよ。
結局、ヘロインを嗅いでうっとりした。夕暮れ。
○月
怖いけど、やらねばなるまい。
しかし、そんなに上の太腿動脈をどうやって縛って止血すれば良いの?
なにしろ、関越自動車道ほども太いのよ。
なんとかしなければならない。腿の一番上の所に印を付けた。
涎が止まってくれたらと思う。
○
今日は……ちょいと休んでも……良いだろう……だから……マクドナルドへ……
出かけて行って……牛肉100%のパティに……スペシャル・ソース……レタスに……
ピクルス……オニオンも入れて……胡麻入りバンズで出来上がり……
ディ……ダディ……ダディドゥデドダディー……
51 :
名無し娘。:2001/05/15(火) 00:22 ID:3SulnnHo
(○^〜^○)<hozen
52 :
名無し娘。:2001/05/17(木) 01:00 ID:i17S.c1o
○がつ
今日、顔を水に映してみた。まるで皮を1枚だけ被った骸骨だわ。
既に頭がおかしくなっているのかしら? そうに違いない。
今や私は怪物だ、気味の悪い異形の怪物だ。
股の下には何も無い。奇妙な生き物。
砂の上をえっちらおっちら肘で漕ぎ進む、胴体にくっついた頭。
蟹だ。ヘロインに酔い痴れる蟹。
市井さんはつんくさんの事をそう呼んでるんじゃなかったっけ?
右や左の旦那様、私は哀れな麻薬中毒の蟹でございます、
どうか10円玉を恵んでくださいまし。
アハハハ
“人は食によって創られる”と言うが、これが本当なら、私は全く変わっていない事になる!
糞っ、外傷性ショック、外傷性ショック、外傷性ショックなんて有りやしないのよ!
アハッ!
53 :
名無し娘。:2001/05/17(木) 01:01 ID:i17S.c1o
○/△△(?)
父親の夢を見た。父親は飲むと標準語が喋れなくなる。
言うに値するような事が有る訳では無いので、ちっとも構わない。
糞馬鹿野郎に言葉は要らない。
私はあんたの家を出てとても嬉しいよ、ゼロのカスのスカのパーの学会員の糞親父め。
ちゃんと出て行ってやった。しっかり歩いて出て行ってやった。でしょ?
ざまあみやがれ。手で歩いて出て行ってやったわ。
しかし、もう切り取れる物が無い。昨日、両耳を切り取った。
左手が右手を洗っている 右手がしている事を左手に知られぬように
ジャガイモが1つ、2つ、3つ、4つ ドアにも収納出来る冷蔵庫を買った
アハハ
かまわないわ。この手でも、あの手でも。良き食物、良き肉、良き神、さあ食べましょ。
チャ―ミーの指の様な細い指は、まるでカステラ菓子のレディ・フィンガーの様な味がする。
完
54 :
名無し娘。:2001/05/17(木) 01:04 ID:i17S.c1o
55 :
33:2001/05/17(木) 02:16 ID:dmgnIurc
完結ありがとう( ● ´ ー ` ● )
56 :
名無し娘。:2001/05/18(金) 03:21 ID:LrLaIGPk
ありがとう
57 :
名無し娘。:
age