●モー娘。結婚式 殺人事件●

このエントリーをはてなブックマークに追加
1仲沢悠子
― 登場人物 ―
裕子・・・主人公。30歳を迎えめでたく本日結婚
光男・・・裕子の結婚相手。職業ミュージシャン、音楽プロデューサー

問題編、スタートです!
2仲沢悠子:2001/05/01(火) 05:16 ID:/1yiD5x2
「まぁ、綺麗な花嫁さんだこと」
親戚のおばさん達が口々に言う。
私は白無垢姿でロビーに座り、式を挙げるのを待っていた。
30歳という年齢の結婚は世間では遅いかもしれない。
でも30年、特にここ6年という年月は、私にとって無くてはならない年月。
そしてあの人と結婚できる事が、がむしゃらに頑張ってきた私への、
神様からのプレゼントだろう。
向こうから、紋付袴の人がゆっくり近づいてきた。
私は綿帽子をゆっくり上げて、その人・・・光男と目を合わした。
そして光男は私の姿を見て、微笑みながらこう言ってくれたのだった。
「すごいかわいい。うん。いい。めっちゃ似合ってる」
「・・・ありがとう」照れながら私が言う。
「つんくさんも似合ってるで」
「おいおい、今日から夫婦やねんから、さん付けはやめようや。『光男』でええで」
「そんな急に呼び方変えられへんよ」「それもそうやな」「あはは」
光男が隣に立ったので、おばちゃん達が一斉にカメラのフラッシュを浴びせる。
「ほんまあんたらお似合いやなあ。おばちゃんらな、裕ちゃんがデビューしてからずっと「つんくと結婚したらええのに。嫁に貰うてくれへんかなぁ」って思とってん。
よかったなあ」
おばちゃんの発言に2人苦笑しながら、式の時間になった。
仲人のまことさん夫妻も一緒に、神殿へ向かった。

つづく
3仲沢悠子:2001/05/01(火) 05:19 ID:a1pTPpw.
しめやかに行われた式も無事終わり、私達は杯を交わし、晴れて夫婦となった。
白無垢から色内掛けに着替え、またロビーに向かった。
今から盛大な披露宴が始まる。
業界内の結婚式という事で、招待客は500名。
もちろん、カメラはシャットアウトしている。(後で記者会見はやる予定)
私は角隠しが重いのでそんなにキョロキョロできなかったが、たくさんの有名人が
来て下さっていた。光男が楽曲提供した五木さん、森さん、TOKIOの皆さん、
浜崎さん、観月さんなどや、事務所の先輩の堀内さん、高山さん、森高さん。
・・・でも今日の主役は花嫁の私。こんなすごい方達の中で主役を張れるなんて
光男に感謝しなければと思う。その時
「裕子ー!おめでとう!」
矢口がこっちに来た。後ろからなっちも微笑みながらついてきた。
「裕ちゃん、きれいだよ!なっちも早くお嫁さんになりたいべさ」
「ありがとう。あんたらも早くしーや」
「裕子に言われたくないよーだ」
矢口は相変わらず憎ったらしく、そしてかわいかった。

実はモーニング娘。は、3ヶ月前、解散した。
私にはとても悲しい出来事だった。

つづく
4仲沢悠子:2001/05/01(火) 05:20 ID:a1pTPpw.
「裕ちゃん、本日はおめでとうございます」
圭ちゃんと圭織も来た。「とうとうなんだねえ」圭織が感慨深そうに言った。
「そういえば、今日はお祝いの歌、歌ってくれるねんな。よろしくな」
と私が言うと、圭ちゃんが親指を立てて
「まかせてよ!ほんとに最後のみんなで歌うモーニング娘。の歌だもん。
気合入ってるよ!」
・・・ほんとに最後のみんなで歌うモーニング娘。の歌・・・。
圭ちゃんのその一言でみんながちょっと落ち込んだ。
「・・・あ、ごめん」圭ちゃんが謝る。
「ううん。気合入れて、いきまっしょい!!」なっちが言った言葉で少し場が和んだ。そして「なかざわさーん!来ましたよー!」
と、加護と辻が現れた。一気に場が明るくなった。
「かわいいー」「きれいれすー」と言いながら、二人は私にベタベタさわってきた。
「汚れるっちゅーねん。さわったらアカンって」「いやー、かわいいですね」
「ほんと、きれいれすよねー」とその時
「あっ!裕ちゃん発見!!」大きな声がした。見るとごっちんだった。
「おめでとう。裕ちゃん」早くも涙もろいごっちんの目は潤んでいた。
「もう!泣かんとってやー。ぶっさい顔で写真写んのいややねんからー」
みんなで大笑いしていたら、そっとこっちに向かって来る一人の女の子・・・。

つづく
5仲沢悠子:2001/05/01(火) 05:21 ID:a1pTPpw.
「福ちゃん!!」なっちが叫んだ。
「明日香・・・。来てくれたんやね」
私は久しぶりに会う明日香に、なつかしさがいっぱい込み上げてきた。
「裕ちゃん。ご結婚、おめでとうございます」
「明日香ー!」
私は明日香に招待状は出したものの、来てくれるかとても心配していた。
何故なら明日香は引退した今、業界との接触を避けていたからだ。
明日香が照れくさそうに言う。
「裕ちゃん。すごいきれいだね」
「ありがとう。明日香」なっち、圭織、矢口、圭ちゃんも明日香と会えてうれしそう。
「みんな、集まってるねー!」
子供を抱いた女性がやってきた。あやっぺだ。
「あ!子供だ!」加護と辻が子供と遊びだした。
おかげで、ゆっくりあやっぺと話ができそうだ。
「裕ちゃん、おめでとう」母親の貫禄がついてきたあやっぺが言った。
「ありがとう。あやっぺ。あれ?旦那さんは?」
「あ、向こうではたけさんとしゃべってる。・・・うふふ、裕ちゃん、やったね」
「何が?」「えー、旦那がつんくさんなんだよ。すごいじゃーん」
「はは、そうかな」「そうだよー」
ふと、あやっぺの子供の顔が見えた。そしてその顔は旦那そっくりだった・・・。

つづく
6仲沢悠子:2001/05/01(火) 05:25 ID:z0C.Jp/.
「中澤さん!」横を見ると、石川と吉澤が来ていた。
「本日はおめでとうございます」石川が変な声で言った。
「ありがとう。来てくれたんやね。元気にしとった?」「はい」吉澤が答える。
「きれいな着物ですね。ドレスも着るんですよね?まさかピンクは着ないですよね。
30歳だし・・・」「うるさい!石川。一言多い!」「スミマセン・・・」
みんなが笑う。私は一人一人の顔を見て思った。
そういえば、モーニング娘。が新旧あわせて全員揃うなんて事なかった。
今日は『スペシャルモーニング娘。』というところかも。
・・・ううん、一人欠けている。行方不明のあの子・・・サヤカ。
サヤカがいたら全員揃うのに。皆も心配している。今日の式の事は芸能ニュースで
流れているから、顔だけでも出してくれたら・・・。
「新婦様、そろそろ披露宴の方が始まりますので、金屏風の前へ、お願いします」
「は、はい」
ホテルの人に言われたので、移動する。「みんな、あとでな」
「裕子ーがんばれー」「裕ちゃん、素敵ー」
後ろから冷やかす声が聞こえてきた。『みんな変わってへんな』と私は思った。
ここ3ヶ月で環境も変わっただろうに・・・。私だけ幸せ独り占めして堪忍な・・・。

半年前、突然スポーツ新聞がすっぱ抜いた記事。
「モーニング娘。3ヵ月後に解散決定!!!!!!!!」
私は何も聞いてなかったからとても驚き、すぐに光男に電話して
「どーゆーことなん!?ほんまなん!?」と詰め寄った。

つづく
7仲沢悠子:2001/05/01(火) 05:26 ID:z0C.Jp/.
結局解散は本当だった。Y社長の独断で決定したそうだ。
巷ではあと一年ちょっとはいけるといわれていた。
でも、賞味期限ギリギリより、惜しまれるくらいがその後のソロがやりやすいと
判断したらしい。(SPEEDをお手本にして)
メンバーのその後は
なっち・・・助演クラスの女優。(月10)
圭織・・・籍はあるが実質引退。彼氏と同棲中。
矢口・・・脇役クラスの女優。(月9)
圭ちゃん・・・和田さんの下、マネージャー業の修行中。
ごっちん・・・歌手ソロ活動、主演のドラマも予定されている。
吉澤・・・雑誌のモデル活動。今はCANCANの専属。
石川・・・アニメ声優。現在少女アニメの主人公の声をやり、主題歌も歌っている。
加護・・・中学卒業後、辻とデュオを組み、デビュー予定。
辻・・・中学卒業後、加護とデュオを組み、デビュー予定。

あやっぺ・・・主婦。旦那が失業中のため、生活が最近苦しいらしい。
明日香・・・プー
サヤカ・・・行方不明

モーニング娘。はもうないけど、みんなそれぞれ旅立ち、そして今日私の結婚式に
来てくれたことを私はうれしく思った。
金屏風の前には、光男が立っている。私は横に立った。
私は「光男の奥さん」という地位を手に入れたのだった。

つづく
8仲沢悠子:2001/05/01(火) 05:27 ID:z0C.Jp/.
お色直しは後3回。派手婚はちょっと疲れるのがたまにキズだ。
ケーキ入刀も終わり、式は中盤に入っていた。
司会の徳光さんが、電報を読んだ。
「本日は誠にご愁傷様・・・?あ?ううん。失礼いたしました。本日は誠におめでとう御座います・・・」
「???・・・いやがらせの電報?・・・しょうがないか。有名人同士だし・・・」
4回目のお色直しの時、さっきの電報の事を係りの人に聞いてみた。
言いにくそうだったけど教えてくれた。
「兜森、という名前だそうですが・・・」
「かぶともりー?知らんな。誰やろ?」

次の入場は2人であゆ&つんくのデュエット曲を、裕子&つんくで歌いながら入場。
そして、その後にモーニング娘。達のお祝いの歌だ。
ドアの前で私が言う。
「こんな幸せでええんかな?なんか怖なってきた。」
「何ゆうてんねん。あほか。お前は人一倍頑張って来たやないか。
幸せは当然やろ」
手をぎゅっと握って光男が言ってくれた。
「うん・・・。ほんま幸せ・・・」
目の前のドアが開いた。そしてスポットライトが二人を照らした。

つづく
9名無し娘。:2001/05/01(火) 08:37 ID:OpZN1z5k
おもろそう。誰が犠牲者なのか。
10仲沢悠子:2001/05/01(火) 23:51 ID:UTw7K7DU
♪ tonight 寂しくて眠れない長い夜は

  あなたとの思い出に 抱かれて眠る

デュエットしながらゆっくり会場に入る。
私は水色のフワフワのカクテルドレスで、同じ色の生花を髪に飾っていた。
光男は白いタキシードを着ていた。
招待客のみんながたくさんの祝福の拍手をしてくれる。
こんな形で光男と歌えるなんて、夢のようだ。
テーブルの1つ1つを順番に回りながら、私達は歌った。
浜崎さんのテーブルに行った時、歌いたそうな顔をしていたのが印象的だった。
娘。テーブルは、特に盛り上がってくれた。
テーブルの席順は

       矢口 安倍
     辻        福田
  加護             石黒
     石川       飯田
        吉澤  保田
          後藤
と、こんな感じ。
新旧入り混じっている上に、仲が良い悪いもあるので席順には苦労した。
あやっぺの横には子供椅子もある。
1卓に11人+子供はきついが、みんな一緒の席にいてほしかったから
我慢してもらう事にしたのだ。
みんなが本当に心から祝ってくれているのかはわからない。
でも、この笑顔には嘘は無いはずだ・・・。

つづく
11仲沢悠子:2001/05/01(火) 23:53 ID:UTw7K7DU
―安倍の回想―

今、私はおいしい料理を食べている。
少ないお給料から三万円払って・・・。お祝いだからしょうがないけど。
2人はとてもお似合いだとは思う。
でも・・・裕ちゃんはあの事を知らない。
知ってしまったらプライドの高い裕ちゃんの事だから、何をするか想像がつく・・・。
悪い自分が心の中でひょっこりと顔を出す。ニヤニヤと笑いながら。
いつもニコニコしている私は「悪いなっち」を心の中で飼っていた。
そうでもしないとやっていけなかった。
心にもう1つ部屋を作って、そこで罵倒をくり返す。
言いたい事が言えない・・・いじめられていた時の事がトラウマとなって・・・。
自己防衛の為に悪いなっちは生まれた。
でも多重人格ではない。なぜなら悪いなっちは決して表には出てこないから。
そして悪いなっちの悪魔のささやきは、本当の私の願望なのだから・・・。
「ねえ、悪いなっち?あれを言ったら裕ちゃんどうなるかなあ?」
「あははは。あんた言いたいんだべさ?言いたくて言いたくてしょうがないんだべさ。
言っちゃえ!言っちゃえ!」
「でも・・・どうやって?私が言ったってばれるのはすごくイヤだし・・・」
「そうね!あんたいいコで天使のなっちだもんね!ぎゃははははははは!!」
どうする?言う?言わない?
そうね、チャンスがあれば・・・。

つづく
12仲沢悠子:2001/05/01(火) 23:54 ID:UTw7K7DU
―保田の回想―

裕ちゃんはいい人と結婚したわね。つんくさんなんて最高じゃない!
ずっと音楽に携わっていけるんだもの。すごくうらやましい・・・。
私は娘。解散後ソロでデビューできると思っていた。
Y社長に「お前は和田のとこいって修行して来い」と言われた時、正直喜んだわ。
「ソロデビューの準備に入ったんだわ!
きっと和田さんが私のマネージメントをしてくれるのね。やったあ!!」
・・・それなのに!それなのに何故!?
まさかマネージャーにさせられるとは思ってもみなかった。
これからまた、事務所は新しいハロプロを立ち上げ予定。
私はそのマネージャーを任される事となった。
くやしい。
私は裏方ではなく表舞台に出たい。
なぜこういう人事になったのか・・・。
私は知っている。
私を陥れた人物を・・・。

つづく
13仲沢悠子:2001/05/01(火) 23:55 ID:UTw7K7DU
―辻の回想―

初めて親戚以外の結婚式に出た。
中澤さんはとってもきれいだ。
辻もあのドレスを着たい・・・。
辻はまだ未成年だから、けっこんするには親の承諾がいる。
でも、もうちょっとしたら・・・。
幼くして芸能界に入った私。
そこらへんにいる女の子よりも、大人の汚い世界を知っている。
その汚い波をくぐって、私はここまで来た。
なのに、なのに、なのに、なのに・・・。
どうしてこんな事になってしまったのだろう。
あいちゃんはどうなんだろう?
聞いてみたい。でも、私達はもう前ほど仲良くない。むしろ悪い方だ。
2人とも大人になってしまったという事なのだろうか。
昔みたいに心を開いて話せたら・・・。
相談できたなら・・・。

つづく
14仲沢悠子:2001/05/02(水) 02:54 ID:3449JxDU
―福田の回想―

一緒にデビューした裕ちゃん。
最初は怖かったけど、実は温かいやさしい人だった裕ちゃん。
出会ったときから大人だったけど、今日の裕ちゃんはすごく女らしい。
幸せを掴んでよかったね。
なっちも圭織も矢口も圭ちゃんも元気そうでなによりだ。
あやっぺも幸せそうだし、子供は旦那に似ている。
私は娘。をやめて何をしていたんだろう。
何もかも中途半端。芸能活動も、学校も・・・。
今、私は次に何をすべきなのかが自分でもわからない。心が空洞なのだ。
そういえばサヤカはどうしているんだろう。誰も連絡先を知らないらしい。
サヤカも私の様に悩んでいるんだろうか?一度会って話がしたい。
・・・ほんとは娘。やめたくなかった。
でも、あることが理由で学業専念をいいわけにやめざるを得なかった。
そしてそれは、私のせいでは無いのに。
後藤さんという人が新メンで入ってきた時はすごくびっくりした。
それよりももっとびっくりしたのはその後の入ってきた4人。
あの時私はものすごい衝撃をうけた!その後ショックで3日間寝込んだくらい・・・。
だけど戻れるものならあの日に戻ってやり直したい。
そして私もラブマシーンをみんなと一緒に歌いたかった・・・。

つづく
15仲沢悠子:2001/05/02(水) 02:56 ID:3449JxDU
―飯田の回想―

いいなあ裕ちゃん。私も早く結婚したい。
でも、あの人は売れないミュージシャン・・・。ずっと先かも。
裕ちゃんも30まで独身だったんだもん。カオリはまだ若いし大丈夫ね。
それにしても、明日香にあやっぺ、ひさしぶりだなあ。
あの頃はがむしゃらに頑張ってた。
今はまあ、幸せと言えば幸せかな?裕ちゃんほどではないけど。
??
あ!!
今見えた。
見えたわ!!
まさか・・・。
自分では気づいてないようだけど「あの顔」だわ!!
何か・・・何か起こりそうな予感・・・!

つづく
16仲沢悠子:2001/05/02(水) 02:57 ID:3449JxDU
―吉澤の回想―

結婚式はあまり食べてはいけない身なので、ツライ。
太りやすい体質の私は、モデルという職業ははっきり言って苦痛だが、
すごくやりがいがあり、毎日がとても楽しい。
偏食もすごかったが、ここ1年で克服せざるを得なかった。
モデルという仕事は自己管理がものをいう。
太ったり肌が荒れてしまっては、すぐに干されてしまうのだ。
CANCANの専属モデル。
この話を頂いた時は本当にうれしかった。
みんな自分の個性を生かした仕事を、解散前から考えていた。
私だけは考えられなかった。歌・・・?お芝居・・・?
「ボーイッシュでかわいいモデルを探してたんです」
そう編集の人にいわれたとき、私の生きていく道はこれだ!!と思った。
モデル後の事は、モデルをしながらゆっくりと考えればいいのだから・・・。
娘。に入ったのもただ、なんとなく歌手になりたいと思ったから。
そしてやる気もあまりないまま娘。は解散・・・。
私はツイているのかもしれない。
ううん、一番ツイてるのは中澤さんかも。今日はとっても幸せそう。
そして一番ツイていないのは・・・。かわいそうにね・・・。

つづく
17仲沢悠子:2001/05/02(水) 02:58 ID:3449JxDU
私達は高砂の席に着いた。
次は招待客からのお祝いのお言葉、そして歌だ。
まず、堀内孝雄さんから、お祝いのお言葉をいただいた。
そして徳光さんの紹介。
「モーニング娘。!新旧夢の初共演で歌っていただきます!
曲は『ハッピーサマーウェディングです。お願いします!」
なっちが歌う前一言。
「つんくさん、ご両家の皆様、本日は誠におめでとうございます。
そして裕ちゃん、ほんとにほんとにおめでとう!
裕ちゃんも一緒に、この最後のモーニング娘。で歌ってください!」

♪コングラッチュレーショーン ハイ!

ハピサマの曲が始まる。
高砂から降りた私に、一枚の紙が渡される。
「裕ちゃんのセリフだよ。」
なっちが微笑む。
みんなで歌う。明日香やあやっぺが、知らないメンバーと共に歌う。
なんて素晴らしいことだろう。
私は今までの事を思い出し、涙があふれてきた。
「裕ちゃん、がんばって!」
矢口が体を支えてくれる。

♪パーオパーオパッパパラーノパッパッパラーノ パッパッ

 「紹介します。シャ乱Qボーカルのつんくさん。
  背はまあ低いほうだけど やさしい人
  私にいつも 素敵な歌を歌ってくれるの
  だってお父さんが
  「歌好きの人に悪い人はいない」って言ってたし
  ねっ おとーさん」

他の招待客も、歌を知っている人達が一緒に歌い、会場内はハピサマの
大合唱となった。
「ありがとう・・・。みんなほんまにありがとう・・・」
全ての人に心から感謝した。
もちろん、メンバーには特に・・・。

そしてこれが私の人生の中で、幸せの絶頂だった。

つづく
18仲沢悠子:2001/05/02(水) 03:01 ID:3449JxDU
>>9
ありがとうございます。がんばります。
あなたも推理してください。
ってまだ事件は起こってませんが・・・。
19名無し娘。:2001/05/02(水) 06:52 ID:v/j9CZQ6
回想のないメンバーは事件に絡んでこないの?
それとも後で出てくるの?
流れを崩す質問だったらゴメンね。
20仲沢悠子:2001/05/02(水) 23:23 ID:6dPWolQw
>>19
読んでいただいてありがとうございます。
今からまた書きますので読んで下さい。
21仲沢悠子:2001/05/02(水) 23:24 ID:6dPWolQw
―加護の回想―

会場内は大盛り上がり状態で、ハピサマを歌い終わった。
中澤さんはめっちゃ幸せそうやった。
つんくさんも、うちらの事見てめっちゃうれしそうやった。
みんなで歌えて、ほんま楽しかったわ。
それより気になる事がある。
うちは最近、ののがうっとーしくなってきて、ちょっと避けとった。
それでしばらく距離おいてつきおーとったんやけど、今日久々ちょっと喋った。
・・・のの、なんか変わったんちゃうか?
うちのせいなんかなあ?どないしょう。
さっきからフッと見せるあの顔・・・。
何かを思いつめたようなあの表情・・・。
なんかいやな予感や。うちのカンは当たる方や。
今さら「何かあったん?」とは聞きづらいし。
うちもいろいろあったさかい、ののに構ってるのがウザなってもーたから・・・。
気になる。
ののはこの2人の結婚、心から祝ってんの・・・?
ほんでうちも、心から祝ってるんやろか?

つづく
22仲沢悠子:2001/05/02(水) 23:25 ID:6dPWolQw
―後藤の回想―

久しぶりのハピサマ。気持ちよかった―。
娘。の歌は、ソロコンサートでは歌わない事になってたので、うれしかった。
事務所も私の「娘。色」を早く払拭したいみたいだし、しょーがないけど。
社長に「お前は工藤静香や、永作博美みたいになるんだ」と言われてちょっと
プレッシャーだけど、ユウキの事もあるから頑張んないと。
・・・ユウキ。今頃家で何してるかなあ。
きっと・・・。泣いてるね。
かわいい弟を泣かせるなんてヒドイ!
私はこの結婚絶対に絶対に認めない!
この結婚は最初から破綻。
なぜなら私がぶち壊すからね。
もちろん、もう網に魚は掛かったけどね。
さあ、どうやって料理しようかな・・・?

つづく
23仲沢悠子:2001/05/02(水) 23:26 ID:6dPWolQw
―石川の回想―

ああ、中澤さんのドレスすっごくカワイイ。
でも私が着たらもっとカワイイのに・・・。
30のくせに、あんなふわふわのドレス着たってねえ・・・。失笑よ。
ピンクのドレスはさすがに着ないようね。安心したわ。
私の時はもっとフリフリで、プリンセスダイアナみたいにしよう。
最近の私はアニヲタ仕様でフリフリ&ピンクにも拍車がかかったみたい。
これも一種の職業病ってやつかも。
キモい男ばかりとはいえ、コアなファンがいっぱいいてくれてよかった。
芸能界に生き残れたんだもの。
保田さんみたいになっちゃあ、オ・シ・マ・イって感じだものね。
それにしてもつんくさんもあんな30女のどこがいいんだろ?
私のほうが若くてかわいくてスタイルもいいのに・・・。
何度考えたって納得いかない!
・・・あの夜の屈辱。
思い出すたびにはらわたが煮え繰り返るわ!!!
・・・フフフ。でも大丈夫。2人の幸せは・・・長くないわ。
だってそれはね・・・。

つづく
24仲沢悠子:2001/05/02(水) 23:27 ID:6dPWolQw
―石黒の回想―

久しぶりに人前で歌うと気持ちいい。
ここ3年、家事や子育てに夢中でこんな気持ち、忘れてた。
裕ちゃんの人生設計は思い通りなの・・・?
私は全て時期を見誤った。
ラブマシーンで、娘。は終わりと思ったから引退した。そして恋に走った。
なんで私はもっと先のある人と結婚しなかったんだろう。
つんくさんは曲も作れるし歌も歌える。ドラマまで出てる。
バンドのボーカルっていつの世も残っていけるものね。
それに比べてドラマーは・・・。
チェッカーズのクロベエはどこいった?TOKIOの松岡君は男前だもの。
まことさんは・・・。仲人席にいるまことさんは七五三みたいね。
はあ・・・。出るのはため息ばかり。
これから私どうなっちゃうんだろ?
子供を二世タレントにするにしても旦那似だし・・・。
裕ちゃんは私よりもいい暮らしをするんでしょうね。
子供もかわいい子(少なくてもうちよりは)が生まれるでしょうね。
結局娘。の衣装も作らせてもらえなかったし・・・。
せめて・・・せめて裕ちゃんが普通の人と結婚していてくれたならば・・・。
私もこんな悪い事、考えないで済んだかもしれないのに・・・。

つづく
25仲沢悠子:2001/05/02(水) 23:28 ID:6dPWolQw
―矢口の回想―

みんなで大合唱のハピサマ。
会場全体が幸せムードでいっぱいにあふれた。
12人で歌えた事はほんといい思い出になるだろうな。
サヤカがいてくれたら・・・。もっともっとよかったのにね。
ねえ、裕ちゃん。
本当に結婚しちゃうの!?
それでいいの!?つんくさんでいいの!?
・・・裕ちゃんに結婚前に言いたかった言葉。とうとう言えずじまいだった。
裕ちゃんとの楽しかった日々・・・。
思い出しただけで涙が出ちゃいそうだよ。
「矢口も早くいい男みつけやー」
・・・うん。そうだね。みつけなきゃ・・・ね。
でも裕ちゃん?
あなたは私に一番言ってはいけない言葉を言ったんじゃない・・・?
あの言葉は私にとって、鋭利な刃物だったよ。
心臓刺されて、グリグリっと回された感じだったよ。
気づいてる・・・?
気づいてたらあんなこと言わないか・・・。

つづく
26名無し娘。:2001/05/03(木) 03:35 ID:ZPbxVyWY
超期待sage。
がんばってください。
27名無し娘。:2001/05/03(木) 21:53 ID:eRfhAfwk
なるほど、そういう趣向か。
28名無し娘。:2001/05/03(木) 22:02 ID:4x/IWkMw
川‘▽‘)|θ<このスレ本当に面白いと思う?

( ´D`) <ぶち殺してやる!!って中沢さんが言ってました
29仲沢悠子:2001/05/04(金) 00:30 ID:UdO3/DC.
「これで最後やね」
「うん。ちょっと疲れたけどな。でも時間たつのんて早いなあ。もう終わりで」
なにしろ式が始まって6時間経っていた。実際に顔は疲れていたかもしれない。
でも2人とも終始笑顔を絶やさずにいた。自然に顔がほころんでいた。
幸せってこんなものかもしれない・・・と私は改めて思った。
披露宴は終盤を迎えた。
最後の入場はキャンドルサービス。
そして衣装は真っ白なウェディングドレス。
大人っぽく体のラインが出るマーメードラインのものを選んだ。
ビール腹ではかっこ悪いので、この日の為に禁酒していた。
おかげですっきり着こなせている。
頭には何千万もするティアラ(レンタルだけど)をのせ、
一国の王女になった気分だ。背筋も心なしかピンと張る。
白いユリのブーケは新地時代の友達が作ってくれた。
誰にあげようか・・・。そういえば、稲葉の貴ちゃんが欲しがってたっけ。
光男は私のドレスの白が映えるように、黒のタキシード姿だ。
火をつけるトーチを右手に持ち、左腕に私が手を組む。
「新郎新婦キャンドルサービスにて、ご入場です。近くに来られましたら盛大な
拍手をおねがいします!」
徳光さんの声が響き、ドアがバッと開いた。
カメラのフラッシュを浴びながら、テーブルにあるキャンドルに、二人でオレンジ色の
火をともしながら歩いていく・・・。

つづく
30仲沢悠子:2001/05/04(金) 00:31 ID:UdO3/DC.
娘。テーブルにつくと、圭ちゃんがカメラを構えていた。
矢口と辻の間からトーチを伸ばす。
火をつけるとみんなの顔がぼわっとオレンジになった。
かわいい顔がたくさん並んでいた。
「こっちむいてー!」
圭ちゃんに向かって2人がニッコリと微笑んだ。
「イェーイ」「ヒューヒュー」
みんながひやかす。
「サンキュ!」
一言そう言って次のテーブルに向かう。
そして私達は最後に、高砂の横の3mにあるメインキャンドルに点火し、
われんばかりの拍手の中、席に座った。
徳光さんが言った。
「次の出し物の人が準備に時間がかかっているので、写真タイムといたします。
皆様、どうぞ高砂のお席に行って、新郎新婦とお写真を御撮りくださいませ」
たくさんの人たちが私達の後ろに立って、写真を撮っていく。
娘。達が11人後ろに並んだ時は、さすがに場内からも歓声が湧き起こった。
歴代モーニング娘。12人+プロデューサーつんく。
皆が写真を撮りたがったので、撮影会みたいになってしまった。
「この写真、売れるんじゃない?」
「どこ向いたらいいかわかんないよー」
娘。達が後ろでぎゃあぎゃあ騒いでいた。
聞こえてくるかん高くかわいらしい声達を聞いて、私はまた
懐かしい気持ちになった。
(あの頃はほんま楽しかったなぁ)
でも今日から新しい門出。
もう人生冒険はできないかもしれないけど、今まで通り一生懸命やっていくしかないのだ。そう。今度は光男と2人で。
あれ?
なんか光男の顔色がすぐれないみたいだけど・・・。
どうしたんだろう。飲まされすぎたのかしら?
顔は笑ってるから・・・大丈夫かな?

つづく
31仲沢悠子:2001/05/04(金) 00:33 ID:UdO3/DC.
全てのスピーチが終了し、会場が暗くなった。
「それでは新郎新婦より、ご両親様へ花束贈呈でございます!!」
私は花束を持って、後ろの金屏風に立っているお母さんに歩いていった。
光男は自分の両親へ花を渡す。
両親への手紙・・・私にはもう母親しかいないのでお母さんへの手紙だが、
やればお涙頂戴に違いない。
だから私はあえてやらなかった。
もちろんちゃんと前の日にお母さんに渡した。
書きながら何度も涙がこぼれてきたのは言うまでもない。
娘。テーブルの横を通るとみんなが口々に
「おめでとう!」「よかったよー」「幸せにね」
と言ってくれた。みんな泣いている。ごっちんなんて号泣している。
私も泣きそうになったけどグッとこらえた。
ちょっとでも泣いてしまうと、もう涙が止まらないのは目にみえていたからだ。
・・・光男の動きが変だ。ドレスの私よりゆっくりと歩き、右に体が少し傾いていた。
やっぱり酔ってるのかな。
新郎の挨拶は大丈夫かしら?
親に花束を渡すと、新郎の父が両家代表の挨拶をした。
そして最後の締めは、光男の挨拶だ。
「えー・・・。本日はお忙しい中、たくさんの方にお集まりいただきまして誠に
ありがとうご・・・ざい・・・ま」
バタン!!
光男が前のめりに倒れた。
私は何が起こったのかわからず、光男の倒れた背中を見ていた。
ざわざわ・・・。
会場がざわめく。
我に返った私は
「光男!!」
と叫び、光男を起こそうとした。
ヌルッ。
手袋かすべり、湿った感触が手に伝わる。
「キャアアアアア!」

私の白い手袋は、ジワァと赤く染まっていった。

つづく
32仲沢悠子:2001/05/04(金) 00:35 ID:UdO3/DC.
気づくと私は白い天井を見ていた。
(ここ・・・どこ・・・?)
「裕子!気ぃついたんか。よかったあー」
「お・・・母さん?」
周囲を見回すとそこは病院の個室のようだった。消毒薬の匂いがする。
「あれ・・・なんで私こんなとこおるん?」
「裕子・・・」
お母さんが私の手を痛いくらいに握り、泣いている。
はっ!
そうだった。光男が、光男が・・・!
「お母さん!!!光男は?光男はどこなん!?」
お母さんが憐れむような目で私を見た。
私はその顔で全てを悟った。
「うそ・・やろ?」
「・・・病院運ばれた時にはもう・・・」
「うそや!そんなんうそに決まってる!!」
何がなんだかわからない。
パニック状態に陥った私はベットの上で暴れたため、すぐDrを呼ばれて鎮静剤を
打たれた。
どうゆうこと?光男は・・・死んだの?さっきまで横にいたじゃない!
幸せになろうねって約束したじゃない!
薄れゆく意識の中、私は心の中で叫んでいた・・・。

つづく
33仲沢悠子:2001/05/04(金) 00:36 ID:UdO3/DC.
次に目が覚めた時、部屋は暗かった。
お母さんが横で椅子に座ったまま眠っている。
私はお母さん、と呼ぼうとして異変に気づいた。
「・・・・・・・・・・・・・!!!???」
声が出ないのだ。なんで?
「・・・・・・・!!!」
お母さんの肩をゆらし起こした。
「あ、起きたんか?調子はどーや?」
「・・・・・・・!!!」
喉を指差し、声が出ないという事を、必死でゼスチャーで伝えた。
すぐにお母さんが枕元のボタンを押して、Drを呼んだ。
「・・・ショックによる失語症ですね」
いとも簡単に説明されてしまった。
声が出ない事がこんなに苦しいなんて!
いろいろ聞きたいことがありすぎて頭の中でパンクしそうなのに。
しかたがないので、お母さんに筆談で質問する。
[ 光男はどこにいるの? ]
「この病院にはおらん」
[ だから、どこ? ]
「・・・警察のほうで調べるゆうて・・・まだ遺体は返ってきてない・・・」
遺体!!
ああやっぱり、光男は・・・。あの血は・・・夢じゃなかった。
不思議と涙は出ない。たぶんまだ光男の姿を見ていないからだろう。
そんなことより光男が何故死んだのか・・・。それが今一番知りたい事だった。
[ なんで光男が警察に調べられなあかんの? ]
まさか・・・。
「裕子、落ち着いて聞きてや。つんく・・・光男さんは・・・ナイフで刺されたんや。
殺されたんや」
「!!」

つづく
34仲沢悠子:2001/05/04(金) 00:52 ID:EQBsgKcI
>29 「終わりで」× → 「終わりやで」〇

>33 「聞きてや」× → 「聞いてや」〇

チェックしたつもりだったのですが・・・スミマセン。
  
35名無し娘。:2001/05/04(金) 03:11 ID:6pb.734c
話にのめり込んでまったく気付かなかったYO!
頑張って書いてチョ
36娘。さんだよもん:2001/05/04(金) 03:52 ID:9ReUihKg
まだ問題編が続いてるんだよね?
続ききぼーん
37仲沢悠子:2001/05/05(土) 00:25 ID:nJr.a372
―飯田の回想―

あの時はほんと、ビックリした。
挨拶中につんくさんが倒れ、裕ちゃんも叫び声を上げて気を失ってしまったからだ。
何が起こったかわからず、他の子達もただ、ボー然とつんくさんと裕ちゃんが
担架で運ばれていくのを見ていた。
その後わけのわからぬまま社長に言われ、ホテルの1室に娘。達が集合していた。
その部屋はホテル最上階の豪華なスイートルーム。
今日、つんくさんと裕ちゃんが泊まるはずだった部屋だった。
めちゃくちゃ広いリビングにベットルーム、それにゲストルームが2つあった。
あまりの豪華さに不謹慎ながらカオリはちょっとウキウキしてしまった。
娘。達はリビングに集まっていた。
「つんくさん、病気だったのかなあ?」
なっちが最初に口を開いた。
「そういえば最後の方、顔色悪かったような気がするけど」
圭ちゃんが心配そうに言った。
「裕ちゃんまで倒れちゃって。キャーって・・・何があったんだろ?」
とカオリが言ったらよっすぃーが
「私・・・ちょっと見えたんだけど・・・」
「何が・・・見えたの?」
石川が不安げな顔でよっすぃーに聞く。
「うん・・・。中澤さんがつんくさんを起こそうとしたみたいなんだけど・・・。
自分の手を見て「キャー」って叫んだの」
裕ちゃんが自分の手を見て叫んだ?
「なんでやろ?」「なんれ自分の手を見て叫んだんれしょう?」
と加護と辻が同時に言った。
「ねえ、裕ちゃんの手袋って白だったよねえ」
後藤がいきなり深刻そうな顔で言い始めた。
「私がさあ、裕ちゃんの手が見えたとき・・・かたっぽだけが黒く見えたんだよねえ」
「ライトの加減じゃないの?遠かったし」
あやっぺがすかさずつっこむ。
「うーん。でもかたっぽだけだよお?」
明日香は居心地悪そうに、少しはなれて座っている。
ボソッと矢口が言った。「裕ちゃん大丈夫かな」
みんな黙り込んでしまった。
この部屋にいつまでいればいいんだろうか。
この時私たちには事件のことを、まだ知らされていなかった。

つづく
38仲沢悠子:2001/05/05(土) 00:26 ID:nJr.a372
―安倍の回想―

私達11人は3時間も同じ部屋に閉じ込められた。
外では記者会見予定だったリポーターや雑誌記者がウロウロしているので
ほとぼりが冷めるまで待ってるように、と社長に言われたからだ。
あやっぺの子供は旦那さんが連れて帰っていたので、あやっぺはホッとしていた。
みんなおしゃべりに花を咲かす気分ではなく、広い部屋にそれぞれ居心地のいい
場所を見つけ、テレビを見たり、寝たり、本を読んだりしていた。
私はリビングのソファーに座って、差し入れされたスナック菓子を
無言で食べていた。飲み物は冷蔵庫から出して勝手に飲んだ。
『あんた、言ったの?』
悪いなっちが話しかけてきた。
『ははは。ご想像におまかせしまーす』
『またまた、いい子ぶっちゃってさ。知ってんだよ私』
『知ってるなら聞かないでよね』
『ぎゃはは。それもそうだべ。ところで今回の出来事、笑えたさ』
『ふふ。結婚式で花嫁花婿がぶっ倒れちゃあ、おしまいだよね』
「なっち、ねえなっち」
急に呼ばれて体がビクッとなった。
「あ、ああカオリ。何?」
「カオリもポッキー欲しいんだけど食べていい?」
「ああ、どーぞどーぞ。一人で食べちゃってゴメンね」
カオリに声をかけられた時、悪いなっちはすーっと消えていった。
そしてその後すぐ、テレビを見ていた石川が叫んだ。
「みなさーん。これ見てくださーい!つんくさんが・・・死んだそうです!!」
あわてて全員がテレビの前に座った。
テレビ画面の上のほうで速報が流れた。
   
     「先ほど都内の病院にてシャ乱Qボーカルで
     音楽プロデューサーのつんくさんが
     出血多量のため、亡くなられました」

まさか・・・。
その時頭の中が真っ白になっていった。

つづく
39仲沢悠子:2001/05/05(土) 00:27 ID:nJr.a372
―加護の回想―
   
     「先ほど都内の病院にてシャ乱Qボーカルで
     音楽プロデューサーのつんくさんが
     出血多量のため、亡くなられました」

このテロップを見て思わず
「うそやん・・・ドラマみたい」
と言ってしまった。
他の人らは言葉を無くしてしもて、部屋がシーンとなった。
一番最初に泣き出したのはののだった。
「どうして?どうしてれすかー?」
ののが泣き出したのをきっかけに、みんなも泣き出してしまった。
もちろん、うちも含めて。
特に後藤さんはすごい号泣してた。
福田さんという人は涙をこらえながら、でも涙があふれてきて止まらへん、
といった感じで泣いてた。
私はののと抱き合って泣いた。
つんくさんが死ぬなんて・・・。
すごいやさしい人やった。いろんな事教えてくれた。
イヤな事もそらあったけど、人が死んだ時はええことしか浮かばへんねんなあ・・・。
「のの、もう泣かんといて。ののが泣いとったら私も涙止まらへん・・・」
「あいちゃん・・・。悲しいれす。クスンクスン」
ののはうちの前で、小さい子供の様に泣きじゃくった。
うちは、そんなののの両手を取り、ギュッと握った。
「泣かんとってーな。なあ、のの?お願いやから泣かんとってー。ヒックヒック」
泣き声はすすり泣きに変わっていった。
・・・?
あれ?
掴んでるののの手を見たとき、私はめっちゃびっくりした!!
一瞬涙が止まったで、ほんま。
ののが塗ってんのが、透明のマニュキュアやったたから気づいたんやけど・・・。
爪に間に付いてる赤いの、それ・・・血?

つづく
40仲沢悠子:2001/05/05(土) 00:28 ID:nJr.a372
―矢口の回想―

つんくさんの死!
衝撃的なニュースに私達はどうしていいかわからず、ただ泣きじゃくっていた。
原因は出血多量・・・?
一体これはどうゆうことなんだろうか。
その時、社長が部屋に飛び込んできた。
「みんな・・・テレビ見たか?」
すすり泣く私達の姿を見て、社長は悟ったようだった。
「・・・警察の人が話を聞きたいと言っている。・・・今日はここに泊まってもらう事に
なりそうだ」
「警察!?」「なんで警察が来るんですか?」
「つんくさんはなんで死んじゃったんですか?」
「裕ちゃんはどうなったのですか?」「ここに泊まるって・・・どうゆうことですか?」
興奮状態でみんなが一斉に質問を社長にぶつけたので、社長は手を前に出し
「ちょっと待って。皆、落ち着いて」
と言った。
「もう少ししたら、警察の人がホテル内の部屋で事情聴取を始めるらしい。
で、皆にも話が聞きたいと言ってきたんだ。
いや、なんで警察が絡んでくるかと言うとだな・・・その、つんくは・・・
ナイフで刺されて死んだんだ」
「!!」
私はびっくりして両手で口を押さえた。
つまり、それって・・・。
「つんくは、殺されたんだ。これは殺人事件なんだ!!」
社長の言葉で部屋は静まり返った。私達は固まってしまった。
殺・・・され・・・た?
殺人事件・・・?
それって誰かがつんくさんを殺したってこと?
警察の事情聴取って・・・。
疑われてるの?
私達が?まさか!
裕ちゃんはどうなったの?
・・・私は声にならない質問をずっと繰り返していた。

つづく
41仲沢悠子:2001/05/05(土) 00:32 ID:nJr.a372
また明日書きます。
読んで頂いている方がいてとてもうれしいです。
ありがとうございます。
42名無し娘。:2001/05/05(土) 04:08 ID:c9aV9LUY
毎日楽しみにしてます。
質問なんですけど、回想を重ねて物語が進んでいくスタイルは
何か参考になさってる小説とかあるんですか?
43名無し娘。:2001/05/05(土) 14:30 ID:1O6BnQIw
小説総合スレッドにリンクしていい?
44名無し娘。:2001/05/05(土) 14:33 ID:1O6BnQIw
・・・・と、思ったら書かれてた。ゴメソ
45仲沢悠子:2001/05/06(日) 01:03 ID:/Pyz6qUs
>>42
えっと、参考にしてるものは別に無いです。
でもそう言われてみて思い出したのですがマンガで「瑠璃の爪」というのがあるのです。
それはいろんな人の証言で話が進んでいくのです。
読んだ時「おもしろいなあ」と感じたので、それが頭の隅に残っていたのかも・・・。
ちなみに作者は山岸涼子です。
登場人物が多いので1人1人の内面を書くのに、この「回想」を使う事にしました。
稚拙な文章でお恥ずかしいのですが、これからもがんばりますので読んで下さい。

>>43=44
ありがとうございます。

では書きます。
46仲沢悠子:2001/05/06(日) 01:03 ID:/Pyz6qUs
薄暗い病室のベットの上で、私はずっと考えていた。
これは夢なの・・・?それとも現実・・・?
さっきまで私は幸せの絶頂にいた。
たくさんの人達から祝福され、新しい人生へのスタートを切ったはず
だったのに・・・。
光男・・・。
死んじゃったの?本当に死んじゃったの?もうどこにもいないの?
ガチャっと病室のドアが開いた。
お母さんだった。
「裕子・・・。警察の方が話を聞きたいゆうて・・・。あんた、大丈夫?」
警察・・・。
何を聞かれるんだろう。
今は誰にも会いたくない。ましてや警察なんて・・・。
でも、警察にそんな事言ったって通じないであろう事はわかっていた。
コクッとうなずく。
「警察には声が出えへん事・・・先生から説明してもらってるさかいな」
お母さんの後ろから男の人が2人ヌッと出てきた。
部屋のドアを閉め、「どうもどうも・・・」と言いながら入ってきた。
「警部補の熊井です。こっちは刑事の尾見谷です」
尾見谷という若い刑事がベコッと頭を下げた。
「この度は・・・何と言っていいのやら・・・。中澤さんの体調がすぐれないのは
わかっておるんですが・・・。何しろこれは事件ですから。
少し質問をさせていただきますが、よろしいかな?」
小太りの中年、熊井警部補が申し訳なさそうに言う。
私は軽くうなずいた。

つづく
47仲沢悠子:2001/05/06(日) 01:05 ID:/Pyz6qUs
ベットの横にある折りたたみのイスに熊井警部補が「失礼します」と言って
座った。ミシミシっとイスから音がした。尾見谷刑事は立ったままだった。
「光男さんは、右脇腹をナイフで刺されての出血多量にて、死亡されました」
ナイフで・・・刺されて。
私の右脇腹がチクッと痛んだ。
「と、そうでした。中澤さんは声が・・・。おい、あれ」
熊井警部補が指示すると、尾見谷刑事は鞄から『らくがき帳』を出した。
「面倒ですが、これに書いて質問に答えて下さい」
と初めて尾見谷刑事が喋った。
私はうなずき、差し出されたらくがき帳と黒いマーカーペンを受け取った。
熊井警部補が言う。
「質問はすぐに済みます。ですが少々、残酷な質問をするかもしれませんが
それはお許し願いたい。
さっそくですが、あなた達・・・光男さんと中澤さんは今日結婚式という
ことでしたが、入籍のほうはもう済まされていましたか?」
最初の質問がこれだった。
私は警部補の質問の意図がわからなかったが、[ いいえ ]と書いた。
区役所には明日行く予定だった。・・・2人で。
「そうですか。では次に式を挙げる前など、光男さんの様子に変わったところは
ありませんでしたか?」
少し考えて紙に書いた。
[ 特になかったと思います ]
「じゃあ、式の最中には?」
[ キャンドルサービスが終わったくらいから少し調子が悪そうでした ]
「ほう・・・」
熊井警部補が尾見谷刑事の方をチラッと見る。
尾見谷刑事が手帳にさらさらと書いている。
「では・・・。光男さんを恨んでいた、というような人物はご存知ありませんか?」
「!!」
光男が恨まれる?
光男は怨恨で殺されたと警察はみているってこと・・・?
[ わかりません ]
「そうですか・・・。いや、失礼しました。結構です。
ご協力ありがとうございました。これで今日は帰ります。」
警部補がイスから立ち上がった。ギシッとさっきよりすごい音がなった。
ドアの前で立ち止まり、クルッと後ろを向いて言った。
「また伺うと思いますが、その時はご協力お願いします。
中澤さんも気を落とさずに・・・では」
向こうが頭を下げたので私も下げた。
尾見谷刑事も頭を下げ、一緒に部屋を出て行った・・・。

つづく
48仲沢悠子:2001/05/06(日) 01:06 ID:/Pyz6qUs
―石黒の回想―

「つんくは、殺されたんだ。これは殺人事件なんだ!!」
衝撃的な言葉を残して、社長が部屋を出て行った。
マスコミへの対応に忙しいのだろうか。
慌しく部屋を出るその後ろ姿を、私はただボーっと見ていた。
みんながまた泣き出した。
そして『殺人』という事と、『警察』という言葉にみんな怯えた感じになった。
なっちはソファーのそばで膝を抱えて座り込んでいた。
矢口は窓の外を見ていた。時々涙をぬぐいながら。
圭ちゃんはソファーに座りじっと一点をみつめている。
「チーン!」カオリが鼻をかむ。
その音がマイクを通したかのように部屋中に響き渡った。
「さっきごっちんが言ってた黒い手袋って・・・」
「・・・たぶん血だったんだね」
後藤と吉澤という子が部屋の隅で話し合っている。
明日香は相変わらず冷静っぽく、ソファーの端っこに一人離れて座っていた。
後の3人はゲストルームでテレビを見ているようだった。時折話し声が聞こえる。
私は子供の事が気がかりだったので、誰もいないもう1つのゲストルームに行き
自宅に電話を入れた。
「もしもし?シンちゃん!?ニュース見た?うんうん。すごいみんなショックで
泣いちゃってて・・・。警察が来るんだってさ・・・。うん。
今日は帰れないと思うから・・・子供の事頼むね」
ピッ。
用件だけ言って携帯を切った。
・・・どうしよう。
警察に話を聞かれるって事は・・・。
あの事言わなくちゃいけないの・・・?

つづく
49仲沢悠子:2001/05/06(日) 01:07 ID:/Pyz6qUs
―福田の回想―

あやっぺが携帯電話を持って別に部屋に行くのが横目に見えた。
きっと家に電話しているのだろう。
私も電話しなければ。きっと家族は心配しているに違いない。
そう思うが体が動かない。
ただソファーに座り、じっとしていた。
・・・なんで私はここにいるんだろう。
もう娘。じゃ無いのに。私のいる場所は無いはずなのに。
それにしても、つんくさん・・・死んじゃったんだ・・・。
人が死んじゃうのってあっけないんだなあ。
さっきまであんなに元気だったなんて信じられないよ・・・。
とその時、いきなり目の前にコップが差し出された。
「明日香、これ飲みなよ」
圭ちゃんがコーラを持ってきてくれたのだった。
「ありがとう・・・」
ほんとはあんまり炭酸は好きではないのだが、一口飲んだ。
口にたくさんの泡がシュワーッと広がる。
飲んでみて気づいたのだが、すごく喉が渇いていたようだ。
続けてゴクッゴクッと、コーラを喉に流し込んだ。
圭ちゃんが私の横に座った。
「ねえ、明日香のお家の人、心配してるんじゃない?」
「うん・・・そうだね・・・」
こんな時にも人に気を配れるなんて、圭ちゃんはすごい・・・と思う。
「電話・・・してくれば?あやっぺも戻ってきてるし、あっちの部屋開いてるよ」
「あ、本当だ」
あやっぺはいつの間にか部屋に戻ってきていた。
「じゃあ・・・してくるね」
ようやく重い腰を上げて、携帯をバッグから出した。
矢口の姿が目に入る。
矢口は大きなガラス窓の前に立ち、ずっと外を眺めていた。
そして私が、あやっぺがさっき入っていった部屋に足を踏み入れようとした時、
隣の部屋から怒ったような、責めてるような声が聞こえてきた。
立ち聞きするつもりはなかったのだが、ドアが少し開いているみたいで
声が漏れている。
「なんで、言われへんのよ」
「ねえ、ののちゃん。言ってみて」
「ひっく・・・ひっく・・・。それは、言えないのれす・・・」
泣いてるのはあの、辻という子みたいだった。
でも私には関係ない・・・。
電話を掛けるため、私はドアをそっと閉めた。

つづく
50仲沢悠子:2001/05/06(日) 01:08 ID:/Pyz6qUs
―保田の回想―

明日香が電話をしに行った。
私も家に連絡したほうがいいのかなあ。心配してるだろうな。
あれこれと考えていると、トゥルルル・・・と電話が鳴った。
みんなビクンッ!!とした。
加護と辻と石川も、隣の部屋から出て来る。
「出て・・・。誰か出てよぅ・・・」
なっちが泣きそうになって言う。
矢口は電話の音が聞こえないかのように、後ろを向いて窓を見たままだ。
「カオリもやだよー」
カオリが哀願の目でこっちを見た。
「・・・しょーがないなあ」
私が電話を取った。
電話は内線で、警察の人だった。
事情聴取を、あと15分後に始めたい、との事だった。
順番はそちらで決めて下さい、とも言われた。
全員がリビングに集まり、順番を決める事になった。
「じゃんけん」「くじ引き」「あいうえお順」「年齢順」
どれにするかで揉めた。みんなとにかく1番はいやなのだ。
「だって・・・警察ってなんか怖いしさ・・・」「何聞かれるかわからないし」
「でも誰かが1番に行かなきゃならないんだし、1番公平なのって・・・くじ引き?」
「そうだね。やっぱ公平にくじ引きだよね」
結局話し合った末、私が細長い紙に番号を書いて、それをみんなが引く事に
決定した。そして結果

1.石川 2.石黒 3.安倍 4.後藤 5.吉澤 6.福田
7.加護 8.保田 9.飯田 10.辻 11.矢口

という順番に決まった。
すると、石川が泣き出した。
「1番はいや。こわいー。絶対やだー!!」
こんな時に駄々をこねる石川に、私は腹が立った。
「公平にくじ引きにしたのに!何今さら言ってんのよ!甘えるんじゃないわよ!」
本気で石川を叱った。
「圭ちゃん・・・いいじゃん。怒らないであげて。私が・・・変わるから」
あやっぺがこう言ってくれた。さすがに子供を産んだ人は肝っ玉がでかいと思った。
「えー!本当にいいんですかー!!ありがとうございますぅー!
このご恩は一生忘れません!」
調子のいい石川に、今度は心底あきれ返った。
というわけで、順番は1番があやっぺ、2番が石川となったのだった・・・。

つづく
51仲沢悠子:2001/05/06(日) 01:30 ID:ZSafDYTA
―吉澤の回想(1)―

事情聴取の順番が決まった。
私は5番。
ちょうど真ん中くらいかな。
それにしても、リカちゃんには笑った。
あんなに嫌がらなくても・・・リカちゃんらしいけど。
ピーンポーン♪と部屋の呼び鈴が鳴った。
警察の人が呼びに来たのかと思い、部屋の空気が一気に緊張した。
でも入ってきたのは女のマネージャーさんだった。
「みんな、気づかなくてごめんね。さっ、これに着替えて!楽になるよ」
そう言って、大きな荷物をドスンと置いて、いそいそと出て行った。
飯田さんが開けると、それはジャージだった。11枚入っていた。
そういえば・・・みんな披露宴に出た格好をしたままだったのだ。
それも時間が経ち過ぎていて、おしゃれな服がしわしわのヨレヨレになっていた。
もし着物の子がいたら、もっと早く気づいたかもしれない・・・。
私は雑誌の撮影で使った、プラダのワインレッドのフォーマルドレスを
安く買わせて貰えたので、今日はりきって着てきたのだった。
・・・気に入ってたのに。
ヘロヘロになったプラダは、なんか悲しかった。
「やった。着替えよ!」
ごっちんが一番に着替えだした。
52仲沢悠子:2001/05/06(日) 01:32 ID:ZSafDYTA
―吉澤の回想(2)―

「よっすぃーも早く着替えなよ」
サイズはみんなにピッタリ合うものだった。
色のほうは適当に選ばれたのか、時間が無かったのでかき集められたのかは
わからないが、バラバラだった。
「私のサイズにピンクがない〜」
とリカちゃんが言った。
保田さんがギロッと睨む。
リカちゃんは黙って他の色を着た。
「楽だねぇ」と安部さんが言った。
豪華なスイートルームにジャージの女が11人・・・。
ちょっと笑いそうになったけどこんな時なので我慢した。
「あーん。取れちゃったよー」
突然ごっちんが叫んだ。
見たら、ごっちんが着てきた黒のドレスのショールにスパンコールがいっぱい
ついていたのだが、それが1つ取れて床に落ちていた。
「高かったのになあ・・・」
スパンコールを拾い上げながら、ごっちんが呟いた。
またピンポーン♪と鳴った。
今度は本当に警察の人だった。また部屋に緊張が戻る。
「行ってくる」
それだけ言って、1番の石黒さんが部屋を出て行った。
ふと、辻と目が合う。
辻はずっと泣いていたらしく、まぶたがかなり腫れている。
そういえばさっき、違う部屋で加護とリカちゃんとなんか話している
みたいだったけど・・・。
心配だ・・・。

つづく
53名無し:2001/05/06(日) 02:08 ID:YL3BG7K.
御苦労さまです。
毎日読んでます。
54名無し娘。:2001/05/06(日) 21:07 ID:TlA5zi22
わけあってあげ
55ゆっけ:2001/05/06(日) 23:34 ID:4G3eqeZU
石川のわがままぶりがホントっぽくてィィ!
56仲沢悠子:2001/05/07(月) 00:05 ID:YzlKw8q.
眠れない・・・。
月明かりが照らす部屋が眩しいくらいに感じられる。
こんな日に眠れるわけないか。さっき薬で眠らされたしね・・・。
あ、そうだ。
明日また刑事さんが来るだろう。
その時に聞きたいことが山ほどある。
さっきは喋れないのがもどかしくって聞きそびれてしまったし。
声が出ないなんてほんとどうかしてる!
自分では強い強いと思っていたのに、私って案外脆かったんだ・・・。
私はさっき貰ったらくがき帳とマーカーペンを、横の引き出しから取りだした。
質問事項を書き出していく。
書きながら・・・思う。
「光男に会いたい。会いたい・・・」
私はこれからどうなっていくのだろう。
明日のスポーツ新聞は、きっと一面トップだ。
“つんく殺される!!中澤裕子悲劇の未亡人!!”
・・・なんてね。
冗談でも考えてなきゃ、やってられない気分だった。
未亡人っていえば・・・。籍は入ってないから、戸籍はきれいなままなんだ。
ああ!さっきの熊井警部補の質問の意味が、今わかった。
・・・光男の財産欲しさに私が彼を殺したのかも・・・という事を、きっと確かめたかったのね。
馬鹿馬鹿しい。そんな事あるわけ無いじゃない!
私は彼を尊敬していた。そして彼の才能に惚れた。
一生ついていきたいと、心から思った。
愛情は・・・お金なんかじゃ買えないんだから。
私はめいっぱい努力して、光男との永遠の誓いを手に入れたのだから・・・。

つづく
57仲沢悠子:2001/05/07(月) 00:07 ID:YzlKw8q.
―石川の回想(1)―

石黒さんが事情聴取から帰ってきたので
「どうでした?どんな感じでした?」
と聞いたのに、
「次の人、お願いします」と警察の人が言ったので何も聞けずじまいだった。
こんなんじゃあ、保田さんに怒られてまで2番目にして貰った意味無いって感じ。
私ってついてない。
エレベーターに乗り、少し降りた階の部屋へ警察官の案内で行く。
その部屋は小さなシングルルームで、刑事さんが2人いた。
一人は50代くらいで、もう一人は30代後半くらいだった。
ドラマで見た事あるような質問をされ、私は全て正直に答えた。
その辺は楽勝だった。
・・・でも実は刑事さんに、1つ質問があった。
ただその質問をする事によって私が疑われないか心配だったから躊躇していた。
「ご協力、ありがとうございました」
と、事情聴取が終わった。
え?終わっちゃった。どうしよう!?
58仲沢悠子:2001/05/07(月) 00:08 ID:YzlKw8q.
―石川の回想(2)―

その時、50代の方の刑事さんがニッコリ笑って言った。
「マンガの・・・ “リカっち!!ポジティブライフ!” でしたっけ。
ほら、テレビで朝やってる。あれの主人公の声、石川さんなんですってねえ・・・。
いやぁ、孫がまだちっこいんですが、大好きでねえ」
それを聞いた30代の方の刑事さんが言った。
「え!椛田警部のお孫さんも好きなんですか?
実はうちの娘も大ファンなんですよ!いっつも真似してますよ。」
「えー、本当ですか。とっーても、うれしいです。ありがとうございます」
最近はヲタだけじゃなくて、子供達にも人気あるのね。さすが私。
「ここで、あのセリフ、やってくれませんか?あれ・・・かわいいですよね」
30代が顔を赤らめて言った。
おじさんにも人気あるのね。さすが私。
「いいですよ。― チャーミースマイル!!」
「おーっ」ぱちぱちと二人が拍手をする。
この瞬間、私はチャンス!!と質問をした。
「あのぉ、私も1つ聞いてみたい事が・・・。いえ、ちょっと興味があるだけなんですけど。
あっ、私、刑事物のドラマが大好きで・・・。
ほら!あれ・・・なんていうんでしたっけ・・・?そうそう!家宅捜査ってありますよね。
それは・・・つんくさんの家・・・被害者の家もするんですか?」

つづく
59仲沢悠子:2001/05/07(月) 00:09 ID:YzlKw8q.
―後藤の回想(1)―

なっちが部屋に帰ってきたので、私の番になった。
でも事情聴取もすぐ終わった。
つまんない質問ばかりされた。
憶えてる分だけ適当に答えておいた。
私が部屋に帰ってくると、リカちゃんがよっすぃーに何やら自慢気に話していた。
「よっすぃーの番だよ」
私が言うと
「あ、うん。行ってくる」
と言って、さっさと部屋を出て行った。
リカちゃんはちょっぴりつまんなそうだった。ほっぺが少しふくらんだ。
圭ちゃんがソファーに座っていたので、横に座った。
テーブルの上に置かれたお菓子をつまむ。
疲れていたのかいつもよりも、甘いチョコレートがおいしく感じられた。
圭ちゃんが話しかけてくる。
「ねえごっちん、どんなこと聞かれたの?」
「うーん。別に、大した事ない質問ばっかだったかな」
「そっか」
それから私と圭ちゃんは、しばらく他愛も無い話をしていた。
しばらくするとまぶたが重たくなってきた。
60仲沢悠子:2001/05/07(月) 00:10 ID:YzlKw8q.
―後藤の回想(2)―

「眠いの?ごっちん。」「う・・・ん」
「じゃあさ、もうごっちんの番は終わったし、向こうのベットルームで寝てきなよ。何かあったら起こすし」
「うん・・・。そうする・・・オヤスミ・・・」
ベットルームへフラフラ歩いていくと、バンッ!と足をぶつけた。
「イデッ!」
誰かのバッグを足に引っ掛けていた。
口が開いてしまったのか、中のものが飛び出してしまった。
「あーあ、もう・・・」
中のものをバッグにしまう。ハンカチ、ティッシュ、口紅、ブラシ・・・。
ん?
これ・・・。
「ごっちん!何やってんの!?」
「あ、圭ちゃんこれ」
「もう!私のバッグじゃん。・・・カメラ?」
私は圭ちゃんのカメラを見て考えついた。
「カメラがどうかした?」
「これに犯人が写ってたりして・・・。圭ちゃんこれ警察の人に現像してもらえば?」
一瞬、圭ちゃんの顔色がサッと変わったのを私は見逃さなかった。
「そ、そうだね。いい考えかも・・・。さ、もういいから。おやすみ!ごっちん」
圭ちゃんに背中を押され、私はベットに横になった。
・・・私なんか変なこと言ったかなあ。圭ちゃんなんか焦ってた・・・?

つづく
61仲沢悠子:2001/05/07(月) 00:11 ID:YzlKw8q.
―辻の回想―

みんなが順々に事情聴取に行く。
とうとう飯田さんが行ってしまった。
残るのはあと2人・・・私と矢口さんだけ。
そして次は私。
どうしよう。
正直に言ったら信じてもらえる?
でも警察に捕まるのはいやだ。
どうすればいい・・・?
でも、あいちゃんですら気がついた・・・。
この爪の間の血。
今、手を洗えば大丈夫かもしれない。
けれどもきっと指紋を調べればわかってしまう・・・。
違うの!違うの!私じゃない!
つんくさんを殺したのは私じゃない!!
・・・だって、最初から・・・。
「辻〜。次あんただよ〜」
飯田さんが帰ってきたみたいだ。
どうしよう・・・。どうしよう!

つづく
62名無し娘。:2001/05/07(月) 00:51 ID:2o97bq0o
本日もごくろうさまです。
63仲沢悠子:2001/05/07(月) 23:20 ID:ozb/wneE
悲しみの夜が明けた。
事件のことはとっくに昨日のことになってしまった。
あれから一睡もできなかった。
テレビを見たいのだが、Drに止められている。新聞も読ませてもらえない。
でもしょうがない。
ショックで声が出ないんだから・・・。
それに、ワイドショーはこの事件で持ちきりだろう。
言葉の凶器が飛び交う・・・。
面白いようにマスコミに取り上げられているのが、目にみえる。
私は食欲が全くなかったが、味の薄い病院の朝食を3分の1程むりやり食べ、ボーっとしていた。
体は睡眠を求めているのに、頭は冴えている。そんな感じだった。
お母さんは何も言わず、ずっとそばにいてくれている。
今の私にはそれがありがたかった。
そして、トントンと部屋がノックされた。
お母さんが「ハイ」と言ってドアを開けた。
「裕子・・・昨日の警察の人よ」
コクッと私がうなずく。
「どうぞ、お入り下さい・・・」
昨日の2人の刑事さんだった。

つづく
64仲沢悠子:2001/05/07(月) 23:22 ID:sQDD5Fnk
お母さんが部屋を出て行った。
「おはようございます。お加減はいかがですか・・・?」
「見てわからんのかい!」
と言ってやりたかったが、声が出ないので言えない。
よく見ると、2人の目の下に隈ができていて、疲労感が漂っている。
・・・この人たちも徹夜したの?
声が出なくてよかった、とこの時だけ思った。
「昨日の今日で、申し訳ありませんなあ。失礼します。・・・よっこいせ」
熊井警部補がイスをきしませて座る。
尾見谷刑事は昨日と同じで立ったままだった。
「じゃ、さっそくですがまた質問を・・・」
私は「ちょっと待って」というゼスチャーをし、枕の下かららくがき帳を取り出す。
そして夜に書いた質問を、警部補に見せたのだった。
私が書いた質問を黙って読む熊井警部補。尾見谷刑事も横から覗き込む。
「・・・お答えできるのもありますし、できかねるものもあります。
それに、まだわかってない事もありますしね」
それを聞いて不服そうに見つめる私に、警部補がこう言った。
「じゃあ、とりあえずお話できる事を全部話します。それでよろしいですか?」
私は深くうなずいた。

つづく
65仲沢悠子:2001/05/07(月) 23:28 ID:PDQZth8E
「まず、今現在、犯人はわかっておりません。捜査中です。
ですが死体の解剖結果から、光男さんが刺された時間は披露宴中・・・。
それには間違いありませんので、おのずと犯人像が浮かんできます」
披露宴中・・・。
「もちろん、あなた方は何度もお色直しをされて、会場を出て行っていますね。
その間の時間も含めますが・・・。
あの日は、ホテル側も厳重な警備体制でした。不審者は中に入れないという状況でした」
私は食い入るように警部補をみつめる。
「つまり。ホテル関係者・・・または」
警部補がここで咳払し、鋭い目つきになった。
「または招待客の中に、光男さんを殺した犯人がいる可能性が高い、
と我々警察ではみています」
そんな・・・。
そんなの信じられない!
あきらかに動揺している私に、尾見谷刑事が
「大丈夫ですか?」
と心配そうに聞いてきた。
「大丈夫です」というゼスチャーをする。
ズキン!頭痛がする。手でこめかみを押さえた。
「話・・・続けても大丈夫ですか?」
熊井警部補も心配そうに私を見る。
コクリと頭を振り、「続けてください」とゼスチャーした。

つづく
66仲沢悠子:2001/05/07(月) 23:29 ID:PDQZth8E
「ホテル関係者、それとおもな招待客の事情聴取は済んではいます。
ですが、招待客の人数が半端じゃなかったので、出席者の全員終えるには時間がかかりそうです。」
招待客の事情聴取・・・。
まさか娘。達もされたの?
そんな・・・かわいそうに。
警察なんて・・・怖かったでしょうに。
そういえばみんなどうしてるんだろう。あの子達のことすっかり忘れていた。
光男が死んだ事・・・。もうとっくに知っただろう。そしてきっと悲しんでるだろう。
マスコミに追いかけられて嫌な思いしてないだろうか。
社長やマネージャーはちゃんと娘。達を守ってくれているだろうか・・・。
「凶器は果物ナイフ。全国の100円ショップに卸されている物でした」
果物ナイフ・・・。
「で、ですね。ナイフの刺し傷に・・・おかしな点が・・・ありまして」
熊井警部補が奥歯に物の挟まったような言い方をした。
「それが・・・。一度、ナイフを横腹に差した後にですね・・・。
グッグッっと一度もナイフが抜かれることはなく、さらに二度に渡って深くナイフが差し込まれていたんです。
しかもそれには・・・
間違いなく時間差がありました」
私はその警部補の言葉の意味が、どういう状況を表わしているのかを
すぐに理解できなかった。
「つまり、光男さんは三回刺された、という事になります」
「!!」

つづく
67名無新:2001/05/08(火) 00:31 ID:EidEewaM
毎日書いてくれてありがとう。
68名無し娘。:2001/05/08(火) 23:00 ID:oI.ryjRs
最初は興味無かったが、だんだん面白くなってきた。
一応マジレスさせてもらうと、これだけ大風呂敷を広げて最後に全部納められるのか?
まぁ、プロットは有るんだろうけど、尻切れトンボにはならないでくれ。
69仲沢悠子:2001/05/09(水) 00:25 ID:VdZbCYHU
―矢口の回想(1)―

いつの間に寝てしまったんだろう。
目を開けると、部屋に光りが差し込んできていた。
(今・・・何時?)
部屋の中はシーンと静まり返っていた。
時折聞こえる寝息が、この部屋に他にも人がいる事を教えてくれた。
私はシングルソファーの上で座ったまま寝てしまったようだ。
首と足がだるく、痛い。
首をコキコキ回しながら部屋を見渡すと、ジャージの女の子が3人寝ていた。
ロングソファーの右端にカオリ。その反対側に圭ちゃん。
なっちが大の字になって、ソファーの下に敷かれたペルシャ絨毯の上でスヤスヤ寝ている。
他の子達は・・・?
ベットルームを覗く。
大きなキングサイズのベットにあやっぺと明日香が寝ていた。
ゲストルームはごっちんとよっすぃーが。
もう1つのゲストルームには石川と加護が寝ている。
1人、足りない・・・。
辻は?
まさか・・・昨日あれから帰って来てないの?
70仲沢悠子:2001/05/09(水) 00:27 ID:VdZbCYHU
―矢口の回想(2)―

昨日の夜、警察の事情聴取が夜遅くまで続いたので、順番が最後だった私は
ずいぶんと待たされた。
終わった子が1人、また1人と眠っていく。
リビングには、まだ事情聴取が終わっていないカオリ、辻、私の3人と、
床ですでに眠り込んでいるなっちだけになった。
しばらくして圭ちゃんが帰ってきたので、次のカオリが出て行った。
ソファーに座って圭ちゃんにどんな事を質問されたか聞いていた。
辻は横で青い顔をして座っている。
握られたこぶしがかすかに震えている。
圭ちゃんが
「何ビビってんのよ、辻。大丈夫、大丈夫。怖くないよ」
とやさしく言葉をかけた。
「・・・・・・・・・・」
辻は何も言わない。
「どうしたの?なんか、あった?」
様子のおかしい辻を、変に思った私が聞くと
「なんれもないのれす!・・・おトイレに・・・行ってきます・・・」
そう言って、トイレに立った。
「あの子、さっきから何かおかしいよね」「なんか考え込んじゃってる感じ?」
2人で心配していると、カオリが帰ってきた。
「あれ?辻は?」
「あ、トイレ行ってる」
「ふーん。そう。辻〜。次あんただよ〜」
カオリがトイレに向かって叫んだ。
71仲沢悠子:2001/05/09(水) 00:28 ID:VdZbCYHU
―矢口の回想(3)―

トイレから出てきた辻の顔色は、青いのを通り越して真っ白になっていた。
びっくりした私は
「ちょっと辻、どっか悪いんじゃない?寝てたほうがいいよ!
私が先行くし。あんたは明日にして貰えるように警察の人に言っといてあげるから」
でも辻はイヤイヤと首を振って
「だ・・・大・・・丈夫れす。いってきます・・・」
そう言ってユラユラと部屋を出て行った。
30分ほどたった頃だろうか。
ピンポーン♪と呼び鈴が鳴った。「最後の方お願いします」と警察官が来た。
「は、はい」
慌てて私が行く。
・・・あれ、辻は?
ホテルのシングルルームに通された私はまず辻を探した。
でも部屋に辻はいなかった。すぐに前に座っている刑事さんに聞いた。
「あのお、辻はどうしたんですか?」
「あ、ああ。辻さんですね。辻さんは・・・」
「辻さんは?」
「ちょっと今は、お答えできません。でも大丈夫です。ちゃんとホテルにいますよ」
「はあ?」
大丈夫だしホテルにいる。なのに、今はお答えできない??
何を答えられないの?
・・・でも結局私への職務質問が始まり辻の事はそのままになってしまった。
「ふー」
部屋に戻った私はソファーに深く腰おろした。そしてそのまま疲れて寝てしまったのだった・・・。
辻・・・。
一体何があったの?

つづく
72仲沢悠子:2001/05/09(水) 00:33 ID:B6vTJvyQ
―石川の回想(1)―

なにやら騒がしかったので、私は目が覚めた。
横に人が寝ているのでギョッとした。
でもそれはあいだった。
「なんで一緒に寝てるんだっけ・・・?」
あ、そうか。昨日ホテルに泊まったんだった。
昨日の事件を思い出した私は、少しブルッと身震いした。
そして寝ぼけまなこのまま、騒がしい声のする方へ向かった。
リビングで騒いでいたのは、矢口さんと飯田さんと安倍さんと保田さんだった。
「どーかしました?」
みんなが険しい顔でこっちを振り向く。
「な、な、なんですか?怖いですよみなさん」
「辻が帰って来てないんだって・・・」
安部さんが言った。
「ええ!ののちゃんが?」
保田さんが
「矢口曰く、ホテルにいるのは間違いないらしいんだけど・・・」
と言うと、矢口さんが
「本当だよ!私、警察の人から直接聞いたんだから」
とムキになっていた。
「昨日すごく顔色悪かったし・・・。やっぱりなんかあったんじゃないの?」
心配そうに飯田さんが言う。
私はピーンときた。
ののは絶対事件に関係している・・・。
73仲沢悠子:2001/05/09(水) 00:34 ID:B6vTJvyQ
―石川の回想(2)―

昨日の夜、あいと2人で聞き出そうとしたけど、ののは頑なに言おうとしなかった。
あの子は変なところでガンコだから。
私も見た。
爪の中の血らしきもの・・・。
酸化して黒くなってたけど。
私は自分の事情聴取が終わった後すぐに寝てしまっていたので、その後ののがどうなったかは
わからないのだった。
「石川、昨日辻と加護と一緒にいたよね。なんか言ってなかった?」
保田さんに質問されて、返答に困った。
言っても・・・いいのかな。でも勝手に喋んなってあいに怒られそうだし。
でもどっちかっていうと言いたい・・・んだけど、どうしよう。
そして私が口を開こうとした時みんなはとっくに向こうを向いて、「あーでもない、こーでもない」と話していた。
・・・いつもこうなんだから。もういいわ。
教えないことに決定した。
そうそう・・・。
つんくさんの家、もう調べられてるかもしれない・・・。
アレがばれませんように。
神様・・・お願い!

つづく
74仲沢悠子:2001/05/09(水) 00:35 ID:B6vTJvyQ
―吉澤の回想―

「よっすぃー、起きて。大変なの」
「え・・・。まだ眠いよ・・・」
「お願い、起きて!」
うっすら目を開けるとリカちゃんの顔があった。
「ううん・・・」私は反対側に寝返りを打った。まだ眠っていたかった。
「ごっちんも起きてよ!大変なのよ!」
横にいるごっちんはビクともしない。死んだように寝ている。いつものことだ。
「ののが・・・ののちゃんがいないの・・・。帰ってこないのっ・・・!」
ガバッ!!
私は飛び起きた。
「リカちゃん!それを早く言ってよね!!」
リカちゃんの言葉を聞いてさすがにごっちんも薄目を開けた。
動きはかなり鈍いが起きようと努力していた。
「一体どーゆーことなのよ!」
キツイ口調でリカちゃんに言ってしまった。
「と、とにかくリビングに来て・・・。でも、どうして私が怒られなきゃならないの?」
リカちゃんが恨めしそうな目で私を見る。
「ゴメン」
私はリカちゃんに怒っていたのではなかったのだ。
自分に腹が立っていた。とても。
昨日の辻を見て、なんだかいやな予感がしていたのだ。
なのに私は何もしていない。ただ、心配していただけ。
実は辻の悩みを本人から直接聞いてなかったとはいえ、・・・知っていた。
それに様子がおかしい事はかなり前から気づいていた。
まさか辻、思いつめて・・・。
私はリビングに駆け込んだのだった。

つづく
75名無し娘。:2001/05/09(水) 04:48 ID:IvswURBw
むむむ…。どうなんねん。
細かい描写が多くていい感じ!
76名無し娘。:2001/05/09(水) 16:35 ID:QrgARGeo
ちょっと絞れてきたかなあ。
77仲沢悠子:2001/05/09(水) 23:23 ID:BbnWF/pc
>レス下さってる方々。
ありがとうございます。何か書いてあるとうれしいものですね。

>>68
ハウッ!(汗
御意!・・・です。
とにかく絶対に完結させますのでこれからも読んでいただければうれしいです。
78仲沢悠子:2001/05/09(水) 23:25 ID:BbnWF/pc
―福田の回想―

リビングがなんだか騒がしい。
私はすでに目覚めていたけれど起きる気にもなれず、ずっとベットでグズグズしていた。
横であやっぺが寝ているが熟睡している。
たまにいびきをかいていた。
実はあやっぺのいびきで起きてしまったのだった。
家のベッドでは無いので、眠りが浅い時にちょっとでも物音がすると「はっ!」となってしまうのだった。
(今日は家に帰れるよね)
そう考えると心が少し軽くなる。
・・・私は事件のことを考えていた。
つんくさんは・・・いつ、どこで、誰に、どうやって、殺されたんだろう。
どうやって、だけはわかっている。
ナイフで右脇腹を刺され出血がひどく、それが元で死んだ。
出血がひどく・・・か。キズが深かったんだろうか。
昨日刑事さんに一体どんなナイフだったのかを聞いてみた所、果物ナイフだと教えてくれた。
あの場面、最後の新郎挨拶の場面をよく思い出してみる。
花束贈呈で後ろに向かって歩いていく時、遠くてそんなにはっきり見えなかったけど、
つんくさんに近寄っていく人はいなかったような気がする。
歩くのはかなりゆっくりだったけど、立ち止まってはいなかった。
そして、金屏風の前に左から裕ちゃんのお母さん、裕ちゃん、つんくさん、つんくさんの両親、と並んで立っていた。
右脇腹っていうと・・・。右側には裕ちゃんが立っていた。
でもそんな変な動きしてなかったし・・・っていうか、裕ちゃんが刺すわけないか。
ってことはもうその前にすでに刺されてた・・・?
でもおかしいじゃん。
だって、刺されたのにつんくさんは我慢していた?
ナイフ刺されたままずっといたって事?

つづく
79仲沢悠子:2001/05/09(水) 23:27 ID:BbnWF/pc
―石黒の回想(1)―

「いない!!」
そう思ってあわてて飛び起きた。
「わっ!びっくりした」
明日香が驚いた顔をしてこっちを向いた。
・・・あ、そうか。ホテルにいるんだった・・・。
いつも横で寝ている子供がいないので、私はかなりあせった。
私が「・・・おはよ」と言うと
「・・・おはよう。勝手に横で寝てごめんね。びっくりさせた?」
と明日香が言った。
「あ、ううん、こっちこそ驚かせてごめん・・・。
うちの子どこいったんだろうと思ってあせっちゃった。寝ぼけてた」
ははは・・・と2人笑う。明日香とこうやって笑うなんて、何年ぶりだろう。
昨日の夜、事情聴取が終わった後、この部屋が開いていたのでここで寝たのだった。
本当は早く家に帰りたかった。
事情聴取が済めば帰れるかもしれない、と思ったから石川さんと順番を代わったのに、
「マスコミがうるさいからここにいたほうがいい」
とマネージャーさんに言われてしまったので、仕方なく泊まる事にしたのだ。
「明日香、起きてたの?」
「うん。ちょっと考え事してた」
「そう。なんかあっち騒がしいね。何かあったのかな?」
「さっきからずっとだよ。私トイレ行きたいし、あっち・・・行く?」
「そうだね。起きよ!」
80仲沢悠子:2001/05/09(水) 23:28 ID:BbnWF/pc
―石黒の回想(2)―

2人でリビングに行く。
全員起きて集まっているようだった。
ただ、なんだかみんなオロオロしている。中には泣いてる子もいた。
「おはよう・・・」
状況の飲み込めない私はとりあえず朝の挨拶をした。
「あやっぺ・・・。福ちゃん・・・」
今にも泣きそうななっち。
「どうかした?」
「辻が・・・辻が・・・。どうしよおー」
両手で顔を覆って、泣き出してしまった。
加護という子が目を真っ赤にして言った。
「絶対嘘や!ののはそんな子とちゃう!」
「そうだよ。そんなの私、信じないよ!」
吉澤と言う子が、ポロポロ涙を流して叫んだ。
「ハアァァァ」とカオリが大きなため息をつく。その姿はかなり落胆していた。
私と明日香は訳がわからず、顔を見合し困惑していた。
矢口が方を震わせながらうつむいて、ソファーに座ってる。
私はその横に座り、矢口の肩をそっと抱いた。
小さな矢口はフランス人形のようにかわいらしく、そして儚かった。
「一体、どうしたの?私達にも教えて?」
「・・・辻が・・・」
辻?
そういえば1人足らない気がする。辻って子がいない?
矢口が「ううっ・・・」と泣き崩れた。そして言った。
「辻が・・・警察に・・・連れて行かれた」

つづく
81仲沢悠子:2001/05/09(水) 23:33 ID:i0TBw6aQ
光男が三回刺されていた!
私は衝撃の事実に血の気がスーっと引いていくのがわかった。
意識が一瞬遠のく。
「中澤さん!大丈夫ですか?熊井さん、今日はこの辺でやめたほうがいいんじゃ・・・」
尾見谷刑事が慌ててベットに駆け寄ってくる。
そして、枕元の呼び出しボタンを押そうとするので、私はその手を掴んだ。
尾見谷刑事が私のほうを見る。
「・・・・・・・・・」
ゆっくり首を横に振る。
そして「大丈夫です」ということを伝えるため微笑む。いっても口の端を上に上げるのが精一杯だったけど。
「・・・いいんですか?本当に大丈夫なんですか?」
コクッとうなずく私を尾見谷刑事の丸い大きな目が心配そうにみつめる。
そして熊井警部補に向かって「続けましょう」と言った。
「・・・三回とも刺した人物が同一とは限らないのですが、果物ナイフについた指紋を検証したところ・・・
1人分の指紋しか発見されませんでした。
そして、先ほどその指紋を持つ人物が特定されました」
「・・・!!」
「ですが今のところその人物の名前は言えないのです。申し訳ない」
犯人が・・・見つかったって事?
でもどうして名前を教えてくれないんだろう。
知りたい!

つづく
82仲沢悠子:2001/05/09(水) 23:34 ID:i0TBw6aQ
私は胸の前で手を合わせ、「お願いします」と頼む。
「いや・・・本当に申し訳ないんだが、言えないんですよ」
熊井警部補が一息つき、こう言った。
「私の口からは」
私の口からは・・・?
バッ!と尾見谷刑事をみた。
尾見谷刑事も首を振る。
「えー中澤さん、今日退院されるらしいですな。きっとまわりからいろんな情報が入ってくると思いますが、
くれぐれもマスコミには気を付けていただきたい。
あと・・・。いや、何でもありません。
では、お疲れのようですし、聞きたいことも2,3あったんですが、また今日の夜にでもご自宅の方に
伺わせていただきます。じゃあ、後で。おい、尾見谷。いくぞ」
尾見谷刑事は何か言いたそうだったが、
「・・・失礼します。お大事に」
そう言って2人は出て行った。
1番肝心な事、教えてくれないなんて・・・。
私は長編推理小説の、最後の犯人がわかるところだけページが破られていて読めない・・・。
そんな気分だった。
家に帰れば何か情報が入る・・・確かそのような事を警部補が言っていた。

指紋は・・・一つ。
刺されたのは・・・三回。

一体、誰が・・・?
光男・・・。
「裕子、終わったみたいやね」
お母さんが病室に入ってきた。
「お母さん、私、今すぐ退院するわ!」
「あんた・・・喋ってるやん!」
「あ・・・ほんまや。声出てる・・・!」

つづく
83名無し娘。:2001/05/10(木) 00:11 ID:AKr/GHXI
ゴア!辻がつれていかれたのか!!
それはそうと、いつ頃くらいに完結するのですか?>作者さん
84仲沢悠子:2001/05/11(金) 00:41 ID:hAn8.fyY
―加護の回想(1)―

そんなん・・・嘘や。誰か嘘やってゆうて!
ののが・・・ののが・・・!
涙があふれて止まらへん。
昨日のつんくさんの死よりも衝撃を受けたうちは、頭がパニックになっていた。
石黒さんが矢口さんに聞く。
「一体、どうしたの?私達にも教えて?」
福田さんも心配そうに矢口さんを見ている。
「辻が・・・警察に・・・連れて行かれた」
「ええ!それどうゆうこと!」
驚く2人。
矢口さんのその言葉で保田さんと後藤さんも泣き出してしまった。
「さっき・・・。さっき辻がいないから、社長に電話して・・・。
でも事務所の電話には誰も出なかったから、マネージャーの携帯に電話したら・・・
大変な事になったって言うの。
ナイフ・・・。つんくさんを刺したナイフに・・・辻の指紋があったって・・・」
「ってことは、辻さんがつんくさんを・・・?」
「わあああ!」
うちはたまらず、声を上げた。
「ちゃうわ!ののはそんな恐ろしい事でけへん!
そらナイフにののの指紋がついとったかもしれへんけど、せやからゆうてののが刺したんちゃう!
うちはわかってる、わかってるんや・・・」
涙が滝のように流れる。鼻水もめっちゃ出てきたけど、そんなんに構ってられへんかった。
「でもあいちゃん、昨日見たでしょ?」
後ろから声がした。
振り向くとリカちゃんがおった。
85仲沢悠子:2001/05/11(金) 00:42 ID:hAn8.fyY
―加護の回想(2)―

リカちゃんがうちの両肩に手をポンッと置いた。
「やっぱりメンバーに隠し事はいけないと思う。昨日の、ののちゃんの・・・言ってもいい?」
リカちゃんの顔は無表情だった。ちょっと・・・こわい。
「うん・・・」
「みなさん、あいちゃんからもお許しが出たので、石川が昨日のののちゃんの事・・・お話します」
「石川。やっぱり何か辻から聞いてたのね!」
保田さんが怒った口調で言った。
「いいえ、何も聞いてません。っていうかののちゃんは何も教えてはくれませんでした。
でも、私達・・・見たんですよ」
「何を?」後藤さんが身を乗り出す。
「ののちゃんの爪の間に血が付いてました」
うちは目をギュッとつむった。・・・ののの爪が頭に浮かぶ。
「えええ!!」
飯田さんの大きな体がのけぞった。
「じゃあ、じゃあさ、ほんとにののが・・・」
よっすぃーがガクッと膝を落とす。
「みなさん、これが真実です・・・真実なのです・・・」
りかちゃんが瞳をキラキラさせ天井を見つめ、往年の大女優のように言った。
うわっ。酔ってる・・・。たぶんいつもの癖のヒロイン病やろう。
でも、こんな時にやるやなんて・・・。
うちはほんまに腹が立ってリカちゃんに軽く殺意が芽生えた。
でもほんまに殺す事はせーへんやろう。
人を殺せるほどのエネルギーって・・・。

・・・のの・・・。

つづく
86仲沢悠子:2001/05/11(金) 00:43 ID:hAn8.fyY
―安倍の回想(1)―

部屋中が暗く重い空気でいっぱいになった。
すごく広い部屋なのに、まるで4畳半の部屋に詰め込まれたようで息苦しい。
ピンポーン♪呼び鈴が鳴った。
インターホンに1番近い場所にいたのは私だったので仕方なく、ビクビクしながら出る。
「はい・・・」
「あ、アタシよ。開けて」
サブマネージャーだった。私はホッとした。
もうマスコミが私達の居場所を突き止めているかもしれないので、ちゃんと誰だか確認してから
ドアを開けるようにと、さっきの電話で注意されていたのだった。
もちろん、警察は外で警備にあたってくれているが、用心にこした事は無い。
サブマネがコンビニの袋を大量に抱えて、部屋に入ってきた。
「これ・・・朝ごはんね。ルームサービスでもよかったんだけど、他の人がこの部屋に入ってくるのは
ちょっと避けたかったからさ・・・。
みんな、気を落とさないで。
まだ決まったわけじゃないんだし・・・ね」
そう言ってサブマネがシクシク泣いている加護をぎゅっと抱きしめた。
「あ、そうそう、圭ちゃん。これ警察の人から預かってきた」
サブマネが圭ちゃんに茶色い封筒を手渡した。そして
「・・・もうちょっと、ここで我慢しててね」
こう言って、バタバタと帰っていった。
コンビニの袋に中にはおにぎり、サンドイッチなどやお菓子が入っていた。
実は泣きすぎたのでちょっとお腹が減っている。
私は鮭のおにぎりとトンカツ太巻き、そしてウーロン茶をチョイスした。
矢口は「いらない・・・」と言って食べなかった。
「食べた方がいいよ。もっと元気でなくなるよ。はい」
矢口におかかおにぎりを渡す。
「・・・ありがと。なっち」
みんな無言でちょっと遅い朝食をとった。
87仲沢悠子:2001/05/11(金) 00:44 ID:hAn8.fyY
―安倍の回想(2)―

「圭ちゃん、結局現像頼んだの?」
ごっちんがサンドイッチをほお張りながら小声で言った。
封筒をガサガサ開けながら圭ちゃんが言う。
「うん・・・。きのうごっちんに言われたしね。なんかヒントになればいいなと思って。
あ、やっぱネガはないや」
写真がたくさん出てきた。50枚くらいあっただろうか。
「ごっちん、何を言ったの?」
私が尋ねるとごっちんが答えた。
「昨日の晩、圭ちゃんのカメラ見て思いついたの。何か事件のことが偶然写ってたりしてって」
「なるほどね」
感心した。
いつもボーっとしてやる気があるのか無いのかわからないごっちんだったけど、中々鋭い。
「・・・みんなで見てみる?」
「うん。じゃあ、回し見していこうか」
圭ちゃんから適当に円になって、写真を横の人に回していく事になった。
「おかしな写真があったら、真ん中に置いて。それをあとでじっくり検証していこう」
圭ちゃんが提案した。
みんなうなずく。
私は圭ちゃんの横にいたので、すぐに写真が回ってきた。
1枚目・・・なんだべ、これは。
主役の二人が写っていない。いや、写っているが顔が切れている。
2枚目・・・ひ、ひどい。
ピンぼけ・・・?
前のおじさんのはげ頭にピントがあっている。新郎新婦が向こうにいるのがボヤーっとわかる。
見る写真見る写真、全部こんなのだ。ある意味おかしな写真だらけなのだった。
きれいに写っているのは圭ちゃんが写っているものだけ。つまり、圭ちゃん以外の人が撮った物は大丈夫。
カメラの調子が悪かった訳じゃないんだよねぇ。
・・・?
みんなも首をかしげていたのだった。

つづく
88仲沢悠子:2001/05/11(金) 00:46 ID:hAn8.fyY
―後藤の回想(1)―

写真が回ってくる。
私は圭ちゃんの横にいたけど反対側から回していったので、写真を見る順番は最後だった。
写真に変わったとこはない。
が、しいて変わったとこがあるといえば、それはほとんどまともな写真が無い・・・という事だった。
みんな首をかしげている。
「保田さん、写真撮るのヘタッピですね」
とリカちゃんが言った。
「悪かったわね!」
いつもの圭ちゃんならこう言うと思った。なのに
「うん・・・ホント・・・ヘタだね」
とあっさり肯定したので驚いた。
サッと横を見ると圭ちゃんの目が少しうつろだったのが気になった。
写真にはまるでギャグ?と思えるほどに主役の2人がきちんと写っていない。
ピンボケしているか切れてるか・・・。
高砂にいる裕ちゃんが写っている物はうまく撮れていた。
でも、横に写ってるのはつんくさんではなく、仲人のまことさんの奥さん・・・。
私は写真を見ていると・・・なんだか悪意が渦巻いているように感じた。
ねえ、圭ちゃんこれ・・・わざとじゃない?
でもみんながいる前でそんな事聞けない・・・。
89仲沢悠子:2001/05/11(金) 00:47 ID:hAn8.fyY
―後藤の回想(2)―

「あ!!」
カオリが1枚の写真を見て叫んだ。
「何々?何か写ってるの?」
「うん・・・。一応真ん中置いとくね」
やぐっつぁんとよっすぃーも真ん中に写真を置いた。
何も無かった写真は最後の私が茶封筒に仕舞っていく。
「!?」
1枚の写真が手元に回ってきた時、私は愕然とした。
それはロビーで撮った物だった。
笑顔の裕ちゃん、圭ちゃん、辻、カオリがピースして並んでいる。
確か裕ちゃんがお色直しで部屋を出た後、撮ったのだろう。
とても楽しそうだ。
裕ちゃんのドレスは真紅で小さな薔薇がたくさんついているものだった。
私達はそれを見て「赤い日記帳ドレスだー」と言っていた。
そしてそれは圭ちゃんが撮ったのではないのできれいな写真だった。
後ろに人が何人か歩いているのも写っている。

これ・・・。
まさかこれ・・・。
あの子!?
「何か写ってましたか?」
加護にこう言われてハッとする。
「あっ、ううん。いや、辻がいたから・・・」
加護が悲しそうにうつむく。
「ご、ごめん。加護、ごめんね」
私は加護の頭を撫でた。
どうしよう・・・。
・・・私はその写真をそっと封筒に仕舞ったのだった。

つづく
90仲沢悠子:2001/05/11(金) 00:49 ID:hAn8.fyY
>>83
もうちょっとかかりそうです。
気長にお願いします。
「ゴア!」にちょっとワラタ!
91名無し娘。:2001/05/11(金) 01:15 ID:Z07gsCS6
気になって毎日見に来てます。
92名無し:2001/05/11(金) 02:25 ID:/oxvvMHc
なかなか本音を話さない。
しかしそれが現実。
93娘。さんだよもん:2001/05/11(金) 22:01 ID:sr6G.S7A
あんまり下すぎるのもアレなんで
浮上させてみてもいいですか?<現在558
94仲沢悠子:2001/05/12(土) 01:11 ID:04/Zm782
―保田の回想(1)―

写真・・・。
まさかみんなで見るとは思わなかった。
写真なんて撮るんじゃなかった・・・。カメラなんて持ってくるんじゃなかった・・・。
みんなも変に思っているのがわかる。
あの時の私はどうかしてたんだ・・・。
「じゃあ、写真を検証しようか」
一通り見終わったので私は、真ん中に置いてある3枚の写真を手に取った。
「まずこれ。誰がみつけたの?」
「私」
矢口が小さく手を挙げた。
その写真は左端で裕ちゃんが半分に切れて、そしてつんくさんが笑って写っていた。
入場の写真ぽかった。裕ちゃんのドレスの色は淡いグリーンだった。
なっちが言った。
「グリーンのドレスって・・・いつぐらい?最初の方?」
「確か・・・お色直し2回目でした。着物の後でしたね」
とよっすぃーが言った。
「えーよっすぃー、そんなの覚えてるの?」
石川がよっすぃーに聞いた。
「うん、まあ・・・職業柄ね。なんだったら全部覚えてるよ。書き出そうか?」
「書いて書いて」
ドレッサーの上にあったホテルの名前入りのメモに、よっすぃーが書き出していく。

[ 色内掛け(着物)→グリーン→黄色→水色→赤→白(ウェディングドレス) ]
[ 紋付袴      →グレー      →白    →黒              ]   

「この下のは何?」
「ああ、つんくさんのだよ」
「ええ!よっすぃー、つんくさんのまで覚えてるの?私なんて裕ちゃんのドレスしか見て無かったよ・・・」
石川が大げさに驚いた。
「ふーん、ってことはこの写真は2回目のお色直しの入場だね」
メモと写真を見比べてカオリが言った。
「それでこれの何がおかしいの?」
あやっぺが矢口の方を向く。
「うん・・・。後ろに写ってる人・・・お笑い芸人みたいな人?
手にナイフ持ってる・・・」
「ホントだ!!」

つづく
95仲沢悠子:2001/05/12(土) 01:12 ID:04/Zm782
―保田の回想(2)―

右手に銀色に光るナイフを持って手を挙げて振り回している・・・。
でも顔がものすごい笑っている・・・。かなりハイテンション?
「この人誰なの?」
なっちがマジマジと写真を見ている。
「見せてください」
加護がなっちから写真を受け取る。
「なーんや。フジモンやん」
「何?そのふじもんって」
加護の話によれば、大阪で大人気の漫才師、『FUJIWARA』の藤本という人でつんくさんとは
昔から仲がいいらしい。ちなみに相方は原西という人で、横に写っていた。
「でもこの人が持ってるナイフ・・・ホテルのだよね」
明日香がポツリと言った。
「昨日私、刑事さんに聞いたんだ。つんくさんが刺されたのはどんなナイフだったのかって。
凶器は果物ナイフって言ってた。ホテルの食器のナイフじゃないみたい・・・」
さすが明日香。なかなか鋭い質問を刑事さんにしている。
フジモンという人の持っているナイフはどう見てもシルバーナイフ。果物ナイフではない。
「なあんだ。料理食べながら振り回してただけか。」
よく見ると食べている物が口から出ている。・・・きたない。
「ってことは、これは関係ないね」
娘。達の検証で、フジモンは「白」となったのだった。
96仲沢悠子:2001/05/12(土) 01:13 ID:04/Zm782
―飯田の回想(1)―

1枚目の写真は結局何もなかった。
2枚目の写真はよっすぃーが見つけたもの。
そして3枚目は・・・カオリが見つけたもの。
「同じような写真だねぇ」なっちが言った。
2枚の写真は「写真タイム」と言われた時のものだった。
裕ちゃん、つんくさんを間に後ろに歴代の娘。達がズラリ並んでいる。

後    石川  吉澤  後藤  保田  飯田  石黒
中       安倍  辻  矢口  加護  福田
前         まこと つんく 裕子 まこと嫁

みんな別々の所を向いていた。
そういえば、いろんな人に「こっち向いてー」とか言われてキョロキョロしてたっけ。
「これ誰が撮ったの?」
後藤が圭ちゃんに聞いた。
「確か・・・平家のみっちゃんが『撮ってあげるー』って言ってくれたんだったと思う。で、カメラ渡したの」
「いい写真だよね・・・」
カオリが呟く。
そしてフッと思い出す。サヤカの顔を。
サヤカもこのフレームに収まっていたならもっといい写真になっただろうな・・・。
「で、これとこれ、誰がみつけたの?」
と圭ちゃんが聞いたのでカオリとよっすぃーが手を上げた。
他のみんなが写真ををじっくり見る。
「これ・・・ののちゃんの顔・・・」
石川がみんなに見せた。
それはカオリが選んだ写真じゃないほうだった。
よっすぃーが言った。
「辻の表情・・・。すごく変でしょ?」
97仲沢悠子:2001/05/12(土) 01:14 ID:04/Zm782
―飯田の回想(2)―

小さくてはっきりわからないけど確かに変だった。
辻は下を向いている。そしてすごくびっくりしたような、それでいて辛そうな・・・。
なんとも言えない表情だった。
しかもそれは写真で見る限り、つんくさんの右脇を見ている・・・?
「汗かいてんのかな。おでこテカってるね」
あやっぺが言った。
「まさか・・・この時・・・なの?」
みんなが唾を飲み込む。
辻の手の位置はちょうどつんくさんの頭で見えない。
「ねえなっち、横にいて気づかなかった?」
「何も・・・」
なっちが青ざめた顔で言った。
加護がその写真を食い入るように見ている。何も言わずに・・・。
そんな加護を見てカオリはせつなくなる。
加護と辻・・・。
なっちとカオリも同じような関係だった事があった。
・・・でもそれは遠い昔の事なのだ。
「このもう一枚の方は何が変なの?私にはわかんないや」
矢口がカオリが選んだ写真を持って、聞いてきた。
カオリは悩んだ。どうしよう・・・。言っていいものか悪いものか・・・。
矢口の持った写真を覗き込んで圭ちゃんが言った。
「なっちがまことさんになんか耳打ちしてるね」
その写真はみんな顔の方向は違うけど前を見ている。
なっちだけ横にいるまことさんの方を向いて、いかにも『ひそひそ話』をしている。
みんな・・・。気づいて。カオリは恐ろしくて言えない・・・。
98仲沢悠子:2001/05/12(土) 01:15 ID:04/Zm782
―飯田の回想(3)―

「ねえこの時なっち、まことさんに何言ったの?」
圭ちゃんが聞いた。
「うーん。・・・めでたいですね、とかそんな事だったかな?」
答えるなっち。その顔は・・・微笑み。
「確かにまことさんの顔はひきつってる・・・けど、緊張したらこんな顔よくしますよねえ?」
とよっすぃーが言う。
「ケラケラ。なっちの顔、超ヘンだよ〜」
矢口がその写真を見て笑いころげながら言った。
そう!それなの矢口!
「ホントだー。安倍さんすごく、ぶさいくです」
石川がはっきり言う。
なっちが石川から写真を奪い取る。
「えー失礼な。ちょっと見せてよ・・・ほんとだあ!こんな顔で写ってんの、やだー」
なっちは笑っている。
みんなも笑っている。
カオリは・・・笑えない。
「これのどこが変なんですか?飯田さん?」
よっすぃーが言った。
「まさか、なっちの顔っていうんじゃないでしょうね」
圭ちゃんがこっちを見る。
やっぱり、みんな気づいてない・・・。本人も。
しょうがない・・・今はみんないるから言わないでおくことにしよう。
・・・なっちには後で2人きりになった時話そう。
「そうなの。だって圭ちゃんがおかしな写真って言ったでしょ?だからカオリはその写真を選んだのよ」
みんながドッと崩れる。
「カオリ・・・。相変わらずだね」
明日香がボソッと言った。

つづく
99名無し:2001/05/12(土) 01:40 ID:pzzarvCQ
上げた方がいいのかな?
今日は遅めの更新ですね。
100名無し娘。:2001/05/12(土) 02:30 ID:5FM8cc5Y
dat行き回避という意味ならageる必要はありません。スレ汚し失礼しました。
101あはは:2001/05/12(土) 15:17 ID:sj2GtNg6
この小説を読んでいるやついるのかよ(w
102名無し娘。:2001/05/12(土) 18:54 ID:BzVvYstc
>>101
はーい。
103仲沢悠子:2001/05/13(日) 00:38 ID:aPNFWJaA
私は1人、家に帰った。
・・・2人の新居に。
家は光男が少し前に建てた物だった。
当時週刊誌に “つんくモー娘。御殿!なんと3億円” と書かれていた家だ。
ここに、私はもうすでに3ヶ月前から住んでいたのだった。
帰る家はここか、京都の実家しかない。
事務所からは家の前にはマスコミがいっぱいいるので、どこかホテルにでも避難した方がよい、と言われた。
光男の遺体がいつ帰ってくるかわからないので、東京にいなければならない。
だから京都には帰れない。帰ったところで静かな田舎町に迷惑がかかる・・・。
でも私は無理にでもこの家に帰って来たかった。
光男とのたった3ヶ月だけれども、思い出の家に・・・。
タクシーで病院を出る。事務所の男の人2人が一緒だった。
お母さんも家に行く、と言う。でも私は断った。
お母さんが憔悴していくのを見ていられなかったし、あの家で1人になりたい・・・そう思ったからだ。
妹夫婦が泊まっているホテルに電話をした。
心配そうな声の妹に、お母さんをタクシーで迎えに来てくれと頼んだ。
明日京都へ帰る予定だったが、光男の葬儀などがあるかもしれないのでもう少し東京にいるとの事だった。
「電話とか呼び鈴切っとくさかい、連絡は携帯にちょうだい」
私はそう言って、お母さんと妹と病室で別れた。
タクシーに乗ってる途中、コンビニで新聞を大量に買ってきてもらった。
車の中でその記事だけを読んでいく。
ナイフに指紋があったことは書いてあったが、誰の物かはまだわからない。
そして三回刺されていた事はどの新聞にも書いてなかった。
事務所の人に聞きたいことがいっぱいあったが、タクシーの運転手さんがマスコミにバラさないとも限らない。
私は喉まで出ている言葉を飲み込み、家まで我慢していた。
案の定、すごい人が家の前を囲っていた。
「中澤さん、今の心境・・・」
リポーターを振り切り、むりやり家に入る。TVカメラが何台も見えた。
もう、もみくちゃだった。
なんとか玄関にたどりついた。

つづく
104仲沢悠子:2001/05/13(日) 00:40 ID:aPNFWJaA
3人で玄関に入る。
まず呼び鈴の音を切り、電話線を引っこ抜く。
そしてカギと雨戸をチェックした。
そして薄暗いリビングのスイッチをいれた。パッと部屋が明るくなった。
皮のソファーに座る。ひんやり冷たい。
事務所の1人がお茶を入れてくれている。
もう1人が私の前に座った。
「大丈夫ですか・・・?」
「大丈夫なわけ・・・ないやろ」
「・・・」
お茶が運ばれてきた。テーブルにそっと置かれる。
そして、2人並んで私の前に座る。
「・・・なあ、犯人わかった?」
「・・・いいえ」
「怪しい人おるんちゃうの?」
「・・・」
「指紋の持ち主、わかったって警察の人言うとったで」
「・・・」
「なあ!教えて―や!」
私は急に声を荒げた。
「あんたら知ってるんやろ!?誰なん犯人は!!」
2人が顔を見合わせる。
「・・・知りません」「・・・」
「・・・知らん?嘘ついてもあかんで!あんたら知ってるんやろ?うちに教えんで誰に教えんねん!」
ガシャーン!
私は怒りに任せて思わずテーブルの上の湯飲みを床に叩きつけた。
湯飲みの破片と熱いお茶が飛び散った。
2人は黙ってうつむいたままだ。
「・・・なあ、お願いやから教えて。・・・なんで言われへんのよ」
涙がこぼれてきた。
でもこの時の涙は光男を亡くした悲しみで流した涙ではなかった。
怒りとくやしさの涙だった。
「私には・・・知る権利・・・あるんちゃうの・・・」
「・・・」
その時1人が口を開いた。
「すみません・・・。社長の命令ですから」
「!!」

つづく
105仲沢悠子:2001/05/13(日) 00:42 ID:aPNFWJaA
私は驚いて立ち上がり、こう言った。
「やっぱり知ってたんやん!この嘘つき!社長が言うたんか!?何を!?
あんたら社長に命令されたからってうちにシラきるつもりやったんか!
ほんなら何か、社長に死ねって言われたらあんたら死ぬんか!!」
2人に罵声を浴びせまくる私。
頭に血が上り、興奮していたのだった。
「・・・」「・・・」
「もおええ!!帰って!1人にして!」
服を掴んでソファーから立たせ、2人の背中を力任せに押し玄関まで連れて行く。
「あ・・・あの・・・中澤さん、なにかあったら電話」
「うるさい!黙れ!!」
2人をドアから追い出し、ガシャン!とカギを閉めた。
そして私はその場でヘタヘタと座り込んでしまった。
「なんで・・・教えてくれへんの・・・?なんでよ・・・」
顔はもう涙でぐちょぐちょだった。
社長は何か知っているくせに、私に隠そうとしている。
社長の顔を思い浮かべ、私はムカムカ腹が立ってきた。
「あのおっさん、何やねん!!」
バンッ!
拳で自分の太ももを叩いた。怒りで痛みはあまり感じなかった。
・・・10分ほど玄関にいただろうか。
「社長に・・・電話して直接聞くしかないな・・・」
少し冷静になった私はゆっくり立ち上がり、リビングに戻る。
20畳もあるリビングは、1人では広すぎる・・・。

つづく
106仲沢悠子:2001/05/13(日) 00:47 ID:a3KSpcbg
―ある女の回想―

あっ、家に帰ってきたみたい。
ばたばたと何人か走り回る音がする。
犯人はまだ・・・見つかってないみたいだ。
・・・でも容疑者はいる?
誰なんだろう。
ガシャーン!
わっ、怒ってる。
大丈夫かな?
相変わらず興奮したら怖いなあ。

一旦ヘッドフォンを置く。
「ふー」

つづく
107仲沢悠子:2001/05/13(日) 01:10 ID:65ZWnn1U
社長に電話しようと私が携帯を手にしたその時、携帯が鳴った。
着信画面を見ると、『みっちゃん』となっていた。
平家のみっちゃんだ・・・!!
私は急いで電話にでた。
「もしもし?もしもし?」
うわずった声で電話にでる。
『裕ちゃん!?平家やけど・・・』
「みっちゃ〜ん」
安堵の涙がこぼれる。
さっきまで味方がいなくて、急に仲間が助けに来てくれたような、そんな気持ちになったからだ。
「みっちゃ〜ん。うちもう、どないしたらええかわからへん・・・」
『裕ちゃん、どないしたんよ。大丈夫か?
さっき事務所の人に病院聞いてな。行ったんやけどもう退院したって言われてん。
今どこ?家?』
「うん・・・」
『声出てるやん・・・。よかったな。昨日大変やったやろ?』
「うん、うん・・・」
私は「うん」しか言えなかった。
みっちゃんのやさしい声がいやに懐かしく聞こえる。
『つんくさんの事・・・。なんて言ったらいいか・・・。とにかく元気だしや!しかよう言わんけど・・・』
「うん・・・」
『なんか心配やわ。私今からそっち行こか?』
「うん・・・。ありがとうみっちゃん。でも・・・大丈夫。みっちゃんの声聞いたらちょっと元気になったわ」
『ほんま?』
「ほんま。それに今家の前、リポーターとかいっぱいおるから来んほうがええわ・・・。
気持ちだけ貰っとく。ほんまにありがとう・・・」
『・・・裕ちゃんがそう言うんやったら・・・。でもなんかあったらすぐ私の携帯、電話してや!
すぐ駆けつけるから。絶対やで!」
みっちゃんの心強い言葉に、元気が少しだけ沸いてきた。持つべきものは友・・・心に染みる。
そうだ!
みっちゃんは知らないだろうか?
犯人の事を。
『ほんなら裕ちゃん、お大事にな・・・』
「ちょっと待って!!」
『・・・何?やっぱりそっち行こか?』
「ちゃうねん!。なあみっちゃん、光男が刺されたナイフに指紋ついとってん。知ってるやろ?」

つづく
108仲沢悠子:2001/05/13(日) 01:12 ID:65ZWnn1U
携帯電話を持つ手が汗で湿ってきた。
「誰の指紋か知らん?」
『・・・』
みっちゃんは黙っている。
「知ってるんやね!誰なん!?うちに教えて!」
『・・・。それは・・・言われへんわ・・・』
みっちゃんまで!!みっちゃんまで私に隠し事するの!?
「誰も・・・誰も教えてくれへんねん・・・。みっちゃんだけは・・・みっちゃんだけは教えてくれるやろ・・・?」
『・・・』
「みっちゃん!!あんたも社長に口止めされてんのか!」
『・・・そうや』
「あんたまで・・・。私の味方やと思ってたのに・・・」
一気に天国から地獄に落とされたような気分になり、私はまた泣いた。悲しくて泣いた。
友達だと思ってたのに・・・。
『・・・あんな、裕ちゃん。裕ちゃんは社長が裕ちゃん憎うてみんなに緘口令しいてると思ってるん?』
「それ・・・どうゆう意味よ?」
『今、裕ちゃんの心はボロボロやろ?そんな裕ちゃんに追い討ちかけるような事できると思う?』
「・・・?」
みっちゃんは何を言いたいの?
『裕ちゃんがその人を知りたくてしょうがないんは痛いほどわかるよ。
でも、まだその子が犯人って決まったわけちゃうし・・・。』
「・・・その子?」
『アッ!!』
2人ともしばらく無言になった。
・・・まさか!!
「みっちゃん!!まさか娘。の中におるんか!?」
『・・・』
「みっちゃん!!」


ピッ。
携帯を切った。
その場に私は立ちすくむ。

・・・辻?辻って言ったの?
「・・・なんで、辻がそんなことするのよ」
独り言を呟く。
辻はそんな事できる子じゃない。
なんでこんな事になっちゃったの・・・?

つづく
109仲沢悠子:2001/05/13(日) 01:13 ID:65ZWnn1U
―ある女の回想―

ん?・・・今、辻って言った?
ふーん、辻なんだあ。意外だったなあ。

つづく
110仲沢悠子:2001/05/13(日) 01:16 ID:65ZWnn1U
>みなさま
お気づかい、ありがとうございます。
sageでも大丈夫なんですよね。安心しました。
まあ、もしなんらかの事(スレが消える等)があっても
ワードに保存していますので、スレをもう1回立てさせて貰います。
下にあったおかげで「し」にやられずに済みました。(w
一応、毎日更新する予定ですので、これからもよろしくです。
111名無し娘。:2001/05/13(日) 09:29 ID:fMVIrYto
ふむふむ、二人ほど目星をつけました。ある女・・・想像はつくけど、なんで?
112名無し娘。:2001/05/13(日) 09:30 ID:fMVIrYto
sage
113名無し娘。:2001/05/13(日) 14:15 ID:QghICjg6
ぐっ・・・。
一週間程見れない。
ガンガレ仲沢悠子。
114仲沢悠子:2001/05/13(日) 22:02 ID:t1uBSzpA
今日は早めです。
115仲沢悠子:2001/05/13(日) 22:03 ID:t1uBSzpA
―福田の回想―

「はぁ・・・」
ため息ばかりがこの部屋を飛び交う。
結局写真には何もヒントになるようはものは写ってなかった。
誰も何も喋ろうとしない。
リビングでずっと座っているだけ。
TVの音だけがやかましく部屋に響いている。
TVのワイドショーはまだはじまらないようだ。
早く帰りたい・・・。
後藤さん、吉澤さん、石川さん、加護さん、そして辻さんと、私がやめてから入ってきたメンバー。
私はじっと見つめた。

後藤さん・・・すごく芸能人っぽい。華がある。なにより輝いている。
でもさっきからちょっとおかしい。汗びっしょりだ。熱でもあるのかな・・・?
吉澤さん・・・背が高くてかっこいい。そしてスタイルも抜群にいい。
何かを考えている横顔がきれいだ。
石川さん・・・華奢で可憐で女らしい。守ってあげたくなる感じ。
声も個性的で男の人に好かれそう。
加護さん・・・辻さん・・・とてもかわいらしく、愛らしい。
(辻さん)  周りの空気がパーっと明るくなる・・・。

・・・この人達が選ばれるのならわかる。
でも、どうして私だったんだろう・・・。
あの人はなぜ私だけに執着したんだろう・・・。

今はもう・・・わからない。

つづく
116仲沢悠子:2001/05/13(日) 22:04 ID:t1uBSzpA
―安倍の回想―

わるなっちが顔を出した。
『なんかお通夜みたいだべ』
「ほんと、しけてるよね。本番はまだなのにさ」
『さっきの写真、やばかったべさ』
「ほんと。まさかまことさんの焦った顔が写ってるなんて。汗かいたよ」
『あんたの顔もやばかったっしょー』
「うん。すごくぶさいくだった。私もあんな顔するんだね。いつも天使の微笑みしてると思ってたのに」
『たぶんあれ、私の顔だよ』
「・・・嘘でしょ。あんた外には出ない・・・はず」
『一瞬出たんだべ。無意識に』
「・・・困る。そんなの困る」
『大丈夫。変な顔で済んだんだべ。誰も気づいてねーべ』
「そうだよね。カオリも違う意味のおかしな顔って言ってたもんね・・・」
その時肩をちょいちょいと叩かれた。
わるなっちは消えた。
「なっち・・・」
「何?カオリ」
「ちょっと話があるんだけど・・・」
「?」
「ちょっとここじゃあ・・・」
周りを気にしながらカオリが言った。どうしたんだろう。いやに神妙な顔つきだった。
「あっちの部屋に・・・行く?」
「うん」
私達がベットルームに行きかけた時、ピンポーン♪と鳴った。
あやっぺが出てくれた。
「ああ、どうも・・・。はい。今開けます・・・」
「誰なの?」
私が聞いた。
「うん・・・。警察だって。みんなにまた話を聞きたいって・・・」
そう言ってパタパタとドアのほうへ行った。
警察・・・!
一瞬部屋に緊張感が走った。
そして結局、私はカオリの話を聞きそびれたのだった。

つづく
117仲沢悠子:2001/05/13(日) 22:06 ID:t1uBSzpA
―矢口の回想(1)―

私は辻の事、そして裕ちゃんの事をずっと考えていた。
ううん、辻の事3割、裕ちゃんのこと7割だったかもしれない。
裕ちゃん・・・。悲しんでる・・・?
矢口は悪い子・・・?
その時、人が来たようだった。
警察の人が3人部屋に入ってきた。
昨日の刑事さん2人に新しい人がもう1人。
私達は全員ソファーに座った。
刑事さんたちは立ったままだ。先生と生徒のような感じだった。
「おはようございます。昨夜は眠れましたでしょうか?」
みんな返事しない。
「オッホン。
えー、昨日はご協力ありがとうございました。・・・辻さんの事はもう知っておられますね・・・」
みんなの顔がこわばる。
「いろいろ話を聞いたのですが、それについて少しお話を聞きたいのですが・・・」
「あのっ!・・・ののちゃんは今・・・?」
加護が聞く。
「辻さんは少し錯乱していまして・・・。未成年ですし、弁護士さんと連絡をとってあらためて・・・ということに
なりました。今は警察病院の方で安静にしています」
「・・・そうですか」
それを聞いて加護は少し安心していたようだった。牢屋に入れられているとでも思っていたのだろう。
「すみません。裕ちゃんは・・・?」
今度は私が質問した。
ずっと気になっていたのだ。
「裕ちゃん・・・ああ、中澤さんですね。昨日は倒れられてから入院されました」
「入院!?」
「とはいっても先ほど退院されて、自宅に帰られたようです」
「そうですか・・・。よかった」
私はホッとした。
「申し遅れました。私、警部の椛田です。隣にいるのが大和刑事」
大和という40前くらいの刑事がペコッと頭を下げる。昨日いた人だ。
「それでこっちが・・・」
「渡引です。よろしく」
20代後半くらいの若い刑事がみんなに握手を求めた。
「こら・・・渡引」ギロッと睨む椛田警部。
「・・・すみません」
渡引さんはどうやらミーハーらしかった。
118仲沢悠子:2001/05/13(日) 22:06 ID:t1uBSzpA
―矢口の回想(2)―

「で、みなさんにお聞きしたいのは・・・。辻さんの言っている事が本当かどうかです」
部屋中シーンとなる。
「辻さんが昨夜言うには・・・。
辻さんがつんくさんを刺した、のには間違いないのですが・・・」
「!!」
辻・・・。ホントにやっちゃったんだ・・・。
見ると加護はうつむいて肩を震わせていた。
「ナイフの出所がわからないのです。家から持ち出してきたものなのか、買ってきたものなのか・・・。
そこで、質問をしますと、『最初からそこにあったのれす。あったのれすよ』としか言わないんですよ。
その後少しパニックになられまして・・・。病院に連れて行ったのですが・・・」
よっすぃーの顔色が青くなった。
「で、実はここだけの話として聞いていただきたいのです。他言無用でお願いしたいのです」
全員の真剣な目が椛田警部に向けられる。
「ナイフには辻さんの指紋が付いてました。いや、辻さんの指紋しか付いていませんでした」

「しかしです。しかしですよ。つんくさんは同じナイフで三回刺されているんです。
しかもナイフが一度も抜かれた形跡は無く、そしてそれは時間をおいて三回刺されています」
「!!」
みんな驚きを隠せなかった。
一体どういうこと?
「辻さんが刺した・・・三回刺したなら指紋は辻さんの物だけで、いいのです。
でもナイフの出所を言えない。しかもセリフが『最初からあった・・・』これはとても重要な証言なんです。
犯人が辻さん以外にもいる・・・と言うことになりますから」
「他にも犯人がいる・・・!?」
私は警部の言葉にドキッとした。
「で、辻さんは普段嘘をつける方なのか知りたいと思いまして・・・。
その辻さんの言っている事を信じられれば、またそこから事件の解決の糸口が見つかるかもしれませんしね」
「なるほど・・・」
カオリが言った。
その時加護が言った。
「刑事さん・・・。ののちゃんはいい子です。私はいたずらをされたことはあっても、嘘をつかれたことはありません。
ののちゃんのいうことは、たとえパニくってたとしても嘘ではないです。本当です!」

つづく
119仲沢悠子:2001/05/13(日) 22:07 ID:t1uBSzpA
―加護の回想―

「ののは嘘なんかつけへんわ!あほか!」
椛田警部にこう言うてやりたかったけど、ののの心象が悪くならへんように慎重に言葉を選んだ。
落ち着いて言うただけあって、刑事達はうんうんとうなずいた。
他の人たちもののは嘘をつく子やないと証言してくれた。
「すると・・・あれだな」
「そうですね。もう少し時間を前にずらして考えてみましょう・・・」
刑事達がなんやごにょごにょ話だした。
ののが殺したんやないんかもしれん・・・!犯人は他にもおるんや。
うちは少しだけ光が見えたような気がした。
その時突然ヒステリックな声で
「私です!私なんです!」
全ての視線が声のするほうへ一斉に向く。
その人物は立ち上がって、刑事さんの方を見て言った。
「私なんです・・・。つんくさんを刺したのは私なんです・・・。ごめんなさい」
「う・・・そ」
よっすぃーが目をまん丸にさしてその人物の事を見つめる。
なん・・・て?今なんて?
「ごめんなさい・・・。わああああ」
号泣するその人物にうちは卒倒しそうになった。
「あんた・・・何言ってんの?正気なの!?」
保田さんが怒鳴る。
その人物とは・・・。
「ねえ、嘘よね!嘘って言ってよ!!ごっちん!!!」

つづく
120名無し:2001/05/14(月) 00:16 ID:e4Dt5lEY
むむ。
辻、後藤…。あと一人か。
121仲沢悠子:2001/05/14(月) 23:52 ID:qAp0DAdI
―吉澤の回想―

ごっちんは泣きじゃくりながら言った。
「私を・・・逮捕してください。逮捕してください!!」
ほんとなの?ごっちん・・・。
ごっちんは他のメンバーの顔を全く見ようとしない。
保田さんがごっちんの前に立ち、肩を強く揺さぶる。
「ねえ、嘘でしょう?ごっちん!ねえ・・・」
ごっちんは目をそらしたままだった。
「・・・お話うかがいます」
椛田刑事が言った。
大和刑事と渡引刑事はびっくりしたのか、ごっちんを見たまま立ちすくんでいた。
「おい・・・」
「は・・・はい」
渡引刑事がごっちんを連れて行こうとした。
思わず私は叫んでいた。
「やめて!!連れて行かないで!」
フッとごっちんが私のほうを振り向く。
そして・・・力なく笑った。
「・・・!」
私は今の笑顔の意味はわからなかった。
でもごっちんの決心を見た気がして、その場で動けなくなってしまった・・・。
パタン。
ドアの閉まる音。
ごっちんと3人の刑事が出て行った。
そしてすすり泣く声だけが部屋に残った。

つづく
122仲沢悠子:2001/05/14(月) 23:56 ID:uiw9Q4rU
―石川の回想―

余りに早い展開に私はついていけず、あ然としていた。
頭の中で整理する。
えーと、ののが刺して、ののの指紋も発見されて、だからやっぱり犯人はのので、
でもごっちんが私がやったって自首(?)して、連れて行かれて・・・。
「2人が犯人なんですかー!」
と大きな声で言ってしまった。
でも、誰からの反応も無い。みんなぐったりしていた。
「もう・・・わけわかんないよ・・・。早く家に帰りたいよ・・・」
安部さんが言った。
「後藤さんが先につんくさんを刺したんだね・・・。」
福田さんが冷静に言った。
この人はののともごっちんとも一緒に仕事していない。
だから・・・他人事みたいに言えるんだわ、と思った。
ちょっと腹が立った私は福田さんに言った。
「どうしてそんな事わかるんですか?ののより先にごっちんが刺しただなんて・・・。見たんですか!」
みんながパッと顔を上げて、福田さんに注目する。
福田さんが「え?」という顔をして私に言った。
「だって・・・。辻さんはこう言ってたんでしょ?『最初からそこにあった』って。ナイフの事じゃないの?」
そういえば刑事さんがそんな事を言っていた。
今この中に冷静な人が1人いてくれてよかったわ、と思った。
「すみません・・・。そうでした。頭が今、混乱しちゃってて・・・。」
私は素直に謝る。
「しょうがないよ、石川。私も混乱しまくってて何が何だかわからないもん・・・」
飯田さんが私に言った。
「でもさ・・・」
矢口さんが口を開く。
「辻はさあ、なんか昨日から様子おかしかったじゃん・・・。
ごっちんって・・・そりゃあ、あんな事があったからいつもと同じじゃないけど・・・。
おかしな様子はなかったと思わない?」
「そういえば・・・普通だったかも。いつも通りマイペースだったし」
保田さんが言った。
私もごっちんを特別変だとは思わなかった。
「でも、さっきちょっと変だったよ」
福田さんが言った。
また、あなたですか!?・・・なんか・・・目立ってませんか?

つづく
123仲沢悠子:2001/05/14(月) 23:57 ID:uiw9Q4rU
―飯田の回想―

「明日香、どうゆう風に変だったのよ後藤は」
私が尋ねる。
「うーん。変って言うかすごい汗かいてたんだよね。熱でもあるんじゃないかって思うくらい・・・」
「いつ!?」「いつですか!」
圭ちゃんとよっすぃーが同時に言った。
「みんなでぼーっとしていた時・・・。写真見た・・・後?」
「ああ、警察が来る前ね」
なっちが言った。・・・結局なっちにはあのこと言えないままだった。
圭ちゃんが首をかしげながら言った。
「写真見てる時は・・・普通だったような・・・」
「そういえば・・・。1枚の写真見て固まってたような・・・」
加護が話し出した。
「後藤さんに何か写ってますか?って聞いたら、辻が写ってたから言うて・・・。
うち、ののの名前聞いてちょっと落ち込んでしもてん。そしたら、頭撫でてくれたんやけど・・・」
「どんな写真?」
「たぶん・・・中澤さんが辻とかと撮ってるやつ。きれいに撮れてるやつ」
圭ちゃんの顔が「きれいに撮れてる」に反応してちょっとひきつる。
「その写真、探してみます?」
と石川が言ったので、
「そうね。もう一回写真見てみようか」
と、カオリが袋から写真をまた出したのだった。

つづく
124仲沢悠子:2001/05/14(月) 23:58 ID:uiw9Q4rU
―保田の回想―

「とにかく、そのごっちんが見てたのってきれいに撮れてたのね?」
よっすぃーが加護に聞く。
コクッとうなずく加護。
きれいに撮れてる写真・・・。数えるほどしか、ない。
私は恥ずかしさに穴があったら隠れてしまいたかった。
「これ・・・かなあ。うん。これや。ののも写ってるし」
加護が言った。
その写真の裕ちゃんは真っ赤なドレスを着ていた。
横に私と辻とカオリがいる。
確かお色直しで裕ちゃんが退場した時、トイレに行こうと席を立ったら裕ちゃんが歩いて行くのが見えたので、
介添えさんに頼んで撮ってもらったのだった。
「赤い日記帳ドレスだ・・・」
私が言った。
「みんなで・・・そう言ってひやかしたっけ・・・」
なっちが呟いた。
石川が写真を見ながら言う。
「うーん。変な所はありませんけど」
「カオリにも見せて!・・・特別変わったところは無い・・・なあ」
「加護、マジでこの写真なの?」
矢口が聞いた。
「はい。絶対これです。他のは違います」
写真はあやっぺが見た後、明日香に渡された。
そして何かをみつけたのだった。
「・・・ねえ。この奥に写ってる人・・・。後藤さんだよね」

つづく
125仲沢悠子:2001/05/15(火) 00:02 ID:i70iEGEg
―石黒の回想―

確かに人が奥に数人写っていた。
でもそれはとても小さい・・・。
「どれ?」
私が明日香に聞く。
「これ・・・」
明日香が指差した場所には後藤らしき人物が写っていた。
「まさしく後藤だよね。これ」
カオリが言った。
「ほんま・・・。後藤さんや。・・・でもなんで自分が写ってた事言わへんかったんやろ?」
と加護さんが言った。
大阪弁がとてもかわいらしいなと思った。
「ごっちんだよね」「うん。ごっちんだ」
吉澤さんと石川さんが口々に言う。
「加護の気のせいだったんじゃないの?」
矢口にそう言われて加護さんはシュンとなった。
「ま、いいじゃない。おかしな所があったって思ったんだよね、加護は。
そういうのって大事だよ。後でやっぱり!とかあるしさ」
圭ちゃんが加護さんを慰める。
私はもう一度写真をしげしげと見た。
・・・でも何も無い。
写っているのは真っ赤なドレスの裕ちゃんと、圭ちゃん、辻さん、カオリ。
そして遠くにベージュのドレスを着ている後藤・・・。

つづく
126名無新:2001/05/15(火) 00:18 ID:YR1Mibbg
なんか伏線がすでにあるっぽいので、前のやつ読みかえそ。
127名無し娘。:2001/05/15(火) 01:02 ID:KLqoFCME
写真の件は気付きました。更新期待してます。
128仲沢悠子:2001/05/15(火) 23:40 ID:ewudR9FM
私はショックだった。
まさか辻が光男を刺したなんて・・・。
信じられない。
頭の中のスクリーンに、今までの辻との思い出が映る。
初対面の時のあどけなさ、なぞなぞをした事、いちびっている辻に怒った事etc・・・。
・・・何が彼女をそうさせたのだろう。
みっちゃんの話によると今は錯乱状態で病院にいるらしい・・・。
真相を早く知りたい!あの子に直接話を聞いてみたい・・・!
その時また携帯が鳴った。
画面を見るとさっきの事務所の1人だった。
「もしもし」
『な、中澤さんですか・・僕です』
「なんやの」
さっきの事を思い出してちょっと不機嫌気味に言った。
『警察から今・・・事務所のほうに電話がありまして。
夕方に昨日の刑事さんがそちらに行くそうです。
で、その事について話をしたいから連絡をくれ、とのことなんですが・・・』
「うちが電話したらええんか」
『はい・・・。大丈夫ですか?』
「はよ、番号言うて」
番号を聞いて「ほな」と言ってすぐに電話を切った。
今日の夕方に来る・・・のか。

つづく
129仲沢悠子:2001/05/15(火) 23:52 ID:sV2lNEcE
「090か・・・。携帯やな」
ピッポッパッ。念の為、非通知で掛けた。
「もしもし、あの・・・」
『もしもし。あっ、中澤さんですね?私です。熊井です。今朝はどうも。
喋れるようになったそうで。いやあ、よかった。本当によかった!』
熊井警部補は喜んでくれていた。しかしそれはもう紙に書いてもらわなくてよい、という安堵感なのかもしれない。
『今日の夕方そちらに伺いたいのですが・・・。よろしいですか?』
「・・・はい。構いません」
『しかし、そっちにはマスコミがたくさんいるみたいで・・・』
そうだった。
一応勝手口もあるけれどそっちにも張っているだろうし・・・。でも間違いなく正門よりはましだろう。
勝手口の方の門は小さいし、ドアまでの距離が短いからそっちにしてもらおう。
でも、勝手口の門はセンサーで動かない。自分で開けねばならないのだった。
とりあえず私は勝手口の場所を警部補に伝えた。
『わかりました。じゃあ、こうしましょう。まず近所に着いたら一度電話します。
家の中の勝手口の近くで待っていて下さい。そして私は門の前でもう一度、今度はコールだけします。
その時、門のカギを開けにだけ外に来て下さい。すばやく家に入れるようにします。よろしいですか?』
「・・・はい」
私は携帯番号を教え、電話を切った。

つづく
130仲沢悠子:2001/05/15(火) 23:53 ID:sV2lNEcE
「はぁ・・・。なんだか疲れた・・・」
キッチンに行って冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターを出す。本当はビールを飲みたかったけど我慢する。
トクトクトク・・・コップに注ぎ一気に飲んだ。
「ふう」
食器棚が目に入る。
その中に飾ってあるペアのティーセット。
私が好きなロイヤルコペンハーゲンのもの。
この間、初めて堂々と一緒に百貨店へ買い物に行った時、買った物だ。
これは思い出の品となってしまうのだろうか・・・。
光男は・・・いつ帰ってくるんだろう。
しかし帰ってきたとしても、もう笑ってはくれない。話してもくれない。歌ってもくれない・・・。
私は光男の動かない姿を見て、正気でいられるか自信が無い・・・。
光男の・・・歌が聞きたい。
「そうや!」
私は光男の仕事部屋に向かった。
彼の仕事部屋は、音楽の設備が揃っている。
レコーディングもできる“つんく♂スタジオ”。
そこに確か彼の生録テープがあったはずだ。
無性に光男の歌が聴きたくなった私はすぐさま仕事部屋に向かった。

つづく
131仲沢悠子:2001/05/15(火) 23:54 ID:sV2lNEcE
―ある女の回想―

あっ、電話だ。
・・・警察が来るのか・・・。
見つかるかもしれないな。

・・・と、こっちの部屋に移動っと・・・。

つづく
132仲沢悠子:2001/05/15(火) 23:58 ID:sV2lNEcE
今日はここまでです。少なくてごめんなさい。
133名無し娘。:2001/05/16(水) 01:04 ID:92JjDzZc
期待age
134名無し娘。:2001/05/16(水) 03:54 ID:agl0iorM
こんな毎日更新してくれる人はいないゾ!
135名無し娘。:2001/05/16(水) 07:57 ID:hoIbly0k
ちょっと予想と違うなあ。後藤??
136名無し娘。:2001/05/16(水) 20:44 ID:cMzurbcQ
気付くとなんか嬉しいね。期待sage
137仲沢悠子:2001/05/16(水) 22:38 ID:ntKN37fc
この家は5LDKだ。
1階には20畳のリビング、12畳のダイニングキッチン、和室の客間、光男の防音仕様の仕事部屋。
2階は私達の寝室と、使っていない個室が2つ。リビングの上は吹き抜けになっている。
この広すぎる家に1人きりでいると、なんだか寒々しく感じられる。
・・・主人のいない家。
家も悲しんでいるのだろうか。いつもよりライトが薄暗く見えた。
カチャ。仕事部屋をそっと開ける。
広い部屋に様々な音楽設備が置いてある。
出窓の下にギターが立てかけてあった。私はそれを手にとりポロンと鳴らす。悲しい音がした。
ギターを置き、カセットテープやMDが収められている棚に行く。
大量すぎて探せないかもしれない。でも確かここに・・・。ガサガサとMDを見ていく。
これかな?というものを全て持ち、デッキにセットした。
『♪♪♪』光男の歌声が聴こえてくる。聴いた事の無い歌だ。誰かの新曲だろうか。
私は自分の目当ての歌をひたすら探した。そして20枚目くらいでやっと聴こえてきた歌。
「光男・・・」
ツーっと涙が頬を伝う。
この家に引っ越してきた夜、彼が私に歌ってくれた歌・・・。
5日後には大阪にいる光男の両親に挨拶に行く予定だった。
「気持ち込めて歌うわ。記念に録音しとこっと」
そう言って録音したこのMD。
その歌はシャ乱Q時代の歌、『大阪エレジー』

♪御堂筋を一人歩く 惚れた女と待ち合わせ・・・
  そんな全てを愛してる どんな誰よりずっと
  君の全てを愛してる 今日も歩こう 大阪中♪

「大阪行ったら・・・歩こな一緒に」
「うん!」
・・・あの会話をしたのは夢だったのか。まるで昨日の事のようだ。
MDを取り出し、ケースにしまう。
お守りにしよう。
私はそう決めて部屋を後にした。

つづく
138仲沢悠子:2001/05/16(水) 22:40 ID:ntKN37fc
―ある女の回想―

歌が聞こえてきた。
・・・何?この歌。
鼻をすする音がする。

・・・泣いているの?

つづく
139仲沢悠子:2001/05/16(水) 22:41 ID:ntKN37fc
夕方。携帯が鳴った。
『熊井です。今、近所にいます。やはりマスコミがウロウロしています。先ほどの作戦でいきましょう。
用意をお願いします』
作戦とは大げさな・・・。
「わかりました」
私はお勝手のあるダイニングに行った。カーテンを少しあけ、外の様子をうかがう。
塀は高くて家の外は見えない。でも人がたくさんいる気配を雰囲気で感じ取った。
5分後、コールが鳴る。
私は深呼吸をし、意を決してお勝手のドアを開けた。
すばやく走り、外から私が見えないようにドアにピッタリお腹をつけ一気ドアを引いた。
サッと2人の人影が庭の地面に映る。
1人がドアを素早く閉めた。
塀の外は騒然となっているようだった。
「早く家に」
尾見谷刑事が言う。
私達は勝手口へ滑り込んだ。
「・・・中澤さん、大丈夫ですか・・・?」
いきなり走ったのとドキドキしていたのが重なって、私は「ハァハァ」と息を切らしていた。
「大・・・丈夫です。ハァ・・・こちらへどうぞ・・・」
胸を押さえながら、リビングへ2人を案内する。

つづく
140仲沢悠子:2001/05/16(水) 22:42 ID:ntKN37fc
ポコポコポコ・・・。沸かしているコーヒーのいい匂いがリビングに香る。
ウェッジウッドの客用ティーセットに、まず2人分を私は注ぐ。
チラッと見る。・・・食器棚のペアのティーセット。私はそれに手を伸ばしかけ・・・やめる。
結局客用をもう1つ取り出し、それにコーヒーを注いだ。
「お待たせしました」
トレーに乗せ2人の元に運ぶ。
「いや、お気づかいなく」
熊井警部補はそういいながら
「いい香りですね」と言った。
「どうぞ召し上がって下さい。せっかく入れたんで・・・」
「そうですか。じゃあせっかくですからいただきます。おい、お前も貰え」
カップに砂糖とミルクをたっぷり入れながら熊井警部補が尾見谷刑事に言った。
「・・・いただきます」
尾見谷刑事はブラックのままコーヒーを一口飲んだ。
ズズゥとすすりながら熊井警部補が言った。
「体のお加減はいかがですか?」
「おかげさまで・・・。声も出ますし」
うんうんとうなずく。そしてキョロキョロしながら「立派なお家ですねえ。すごい広くて・・・」と言った。
「あの。光男は・・・いつここに返してもらえんのでしょうか?」
「そうでした。その事をまずお伝えしなければと思ってたんですよ。
明日、昼にはお返しできると思います。検死の結果もわかりましたので、そのことについては後ほど・・・」
返す、返さないなんてまるで物のやり取りのようで少しイヤな気分になった。
「・・・で、今朝の話なんですが、誰かから聞かれましたか?」
辻の事だ。
「はい。・・・あの、ほんまなんですか?私、信じられへんくて・・・。まさか、あの辻が・・・」
「彼女に詳しい事を我々も聞きたいのですが、なんせパニックになっていましてね。病院にまだ入院している
状況なんですわ」
「・・・私も早く理由を知りたいです」
「何か心当たりはありませんか?」
「心当たり?」
「例えば・・・光男さんと辻さんの関係とか」

つづく
141仲沢悠子:2001/05/16(水) 22:43 ID:ntKN37fc
はあ?
光男と辻の関係?どうゆう意味?
「プロデューサーと歌手ですけど」
「いや、そうではなくて・・・ですね。それ以上の」
「・・・それって、男女の仲って意味ですか?」
私は眉間に皺を寄せる。
申し訳なさそうな顔をしながら警部補がうなずく。
「ちょっと待ってください!そんな・・・。だって辻はまだ子供ですよ!?そんな事・・・」
「そうですね・・・。彼女が光男さんと知り合われた時・・・つまりデビューですか。12歳だとは聞きました。
でも考えて下さい。彼女はもうすぐ17歳です。法律上でも結婚できる年なんですよ・・・」
「絶対無いです!!そんな事絶対に無いです!」
「断言できますか?」
「できます!!」
私は興奮して声を張り上げていた。
「・・・すみません。傷つくような質問をしてしまいまして・・・。しかし、捜査なんで・・・」
「・・・わかってます」
でも・・・こんな質問って悲しすぎる・・・。
尾見谷刑事は黙って横でメモを取っていた。
「いや、実はですね。もう1つ聞きたいのですが・・・。つんくさんと・・・後藤さんの関係は?」
ごっちん!?
なぜここでごっちんの名前が?まさか・・・まさかごっちんも!?
「今日の昼間ですね。後藤真希さんが自首してきました」
「!!」

つづく
142仲沢悠子:2001/05/16(水) 22:45 ID:ntKN37fc
問題はいつまで続くのでしょう?
早く解決編にいきたいんですが・・・。
もう少しお付き合いお願いします。
143名無し娘。:2001/05/17(木) 00:19 ID:osRKsqew
このペースで十分満足ですよ。
144名無し娘。:2001/05/17(木) 10:45 ID:qvHbOpMM
長ければ長いほど楽しみがいがあります。
頑張ってください.
145名無し娘:2001/05/17(木) 20:24 ID:I2RNNlnM
ふむふむ、そうか探偵役は、、、
146仲沢悠子:2001/05/17(木) 22:41 ID:f7TWZyhA
「つんくさんを刺したのは私だ・・・と。我々も驚きましたよ、本当に。
そこでまたこの質問なんですが・・・光男さんと後藤さんも何もなかったのでしょうか?」
ごっちんが・・・ごっちんが・・・。
血の気が引いていく。顔面蒼白なのが自分でもわかる程に。
嫌な汗を背中に感じる。そして心臓のドッキンドッキンという鼓動が神経の末端までに広がる。
フラッとよろけてしまった。ソファーに手をついてなければ体を支えられない。
「中澤さん!!」尾見谷刑事がバッと立ち上がった。
「・・・すみません。後藤が自首って聞いて・・・。ほんまなんですか?」
ズキンズキン・・・。
また頭痛がしてきたのだった。
「・・・本当です。少し休憩した方がいいですね・・・」
尾見谷刑事が心配そうに見ている。
私の体はプルプルと震えだした。毛穴という毛穴から冷たい汗がブワッと噴出す。
「ちょっと・・・失礼します」
そう言って洗面所に駆け込んだ。
「ウェ・・・ゴボッ・・・ウェー・・・」
大理石でできた洗面台に胃の中のものを全て吐き出す。
朝食べたものも消化されていなかったらしく、最初に水分と一緒に出てきた。
そして胃はからっぽなのに体が吐く行為を繰り返し、胃液のみを洗面台にぶちまけていた。

つづく
147仲沢悠子:2001/05/17(木) 22:47 ID:xbdGcgoI
「ハアハア・・・」出すものを出し切ったという感じでなんとかおさまる。
鼻にツーンと嫌な臭いが残った。鼻と口ってつながってるんだなあとこういう時に思い出す。
パッと顔を上げる。大きな鏡に写る私・・・。ひどい顔。死人のように生気が無い。
私は蛇口を思い切りひねり、バシャバシャと顔を洗った。
「・・・すみません。お待たせしました・・・」
戻ってきた私の顔を見て彼らはギョッ!とした。
「顔色悪すぎますよ。一度お休みになったほうが・・・」
「心配無用です・・・。早く・・・早く話の続きを・・・」
2人は顔を見合わせ
「そうおっしゃるなら・・・。でも体調がおかしくなったらすぐに言ってくださいよ」
胃がギリギリ痛む。
精神的なショックが体に追い討ちをかけ、私は生まれて初めての「ボロボロ」を味わっていた。
「・・・先におうかがいしておきますが、セクハラだったら謝ります。今・・・吐かれてましたよね。まさか・・・」
えっ・・・妊娠・・・?
していたらどんなに心の救いになっただろうか。
「それはありません」私はきっぱり言った。
「そうですか。失礼しました。どうかお気を悪くなさらないで・・・。では本題へ戻ります。
どこまで・・・言いましたかな?そうそう、後藤さんが自首してきまして・・・。
光男さんと後藤さんの関係などは・・・どうですか?」
「光男とは・・・無いと思います。後藤は若い男の子にしか興味が無いって本人から聞いたことありますし・・・。
光男は後藤のプロデューサーをしてましたので、彼女の話はよく聞きました。
確かにかわいがっていましたけど、妹っていうか・・・そういう恋愛感情は全く感じられませんでした・・・」
「ふむ・・・そうですか」
と警部補は腕を組み、難しそうな顔をしていた。

つづく
148仲沢悠子:2001/05/17(木) 22:48 ID:xbdGcgoI
「ほんまに・・・ほんまに後藤が光男を刺したんですか・・・?私には・・・辻の事もやけど信じられへんのです。
理由がわからんと・・・信じられません・・・」
私の小さな声が震える。
大きな声を出すとまた洗面所にいかなくてはならない。体も小刻みに震えていた。
「実は・・・まだ話の続きがあるんですが・・・。ですが中澤さんの体はもう限界だと思います。
一度横になって下さい」
話の続き?
「話の続きがあるんですか・・・?聞かせてください」
「いや、しかし」
私は体を前に乗り出そうとした。体勢を変えるたびに、胃が何かにつかまれたようにギリッと痛む。
気になる事を言われて横になれるわけが無い。
「今、聞きたいんです・・・!!」
力なく叫ぶ。吐き気を感じたが、それを無理矢理飲み込む。
前に座っている2人はいたわりと同情の入り混じった表情で私を見つめている。
「・・・ごめんなさい。私の事心配してくれてるんですよね・・・。顔色・・・相当悪いですもんね。
私自身も限界なのはわかっています。私の・・・体なんですから。
でも気になったまま眠れませんし、私知りたいんです。些細な事でも。・・・そうや。
こうしましょ?今からベッドルームで話してください。だったら、横になりながら聞けます・・・」
2人また顔を見合しこう言った。
「・・・中澤さんがそれでいいのなら私達は構いませんが。本当に大丈夫なんですか?」
念を押してくる警部補に私はうなずいた。
「2階へどうぞ・・・」
トントン・・・。手すりを持ち、ゆっくり階段を上る。

つづく
149仲沢悠子:2001/05/17(木) 22:49 ID:xbdGcgoI
―ある女の回想―

後藤が自首・・・?
へぇ。面白いことになったかも。
・・・チッ、寝室に行くのか。話聞けないじゃん。
まあいい。
そろそろ、行ってみますか・・・。

つづく
150仲沢悠子:2001/05/17(木) 22:50 ID:xbdGcgoI
「2階も広いですなあ・・・」またキョロキョロしている熊井警部補。
「ほんとに」吹き抜けからリビングを見下ろす尾見谷刑事。
ベッドルームにはドレッサーのイスしかないので、個室にある座椅子を2つ運び込んでもらう事にした。
「こちらです」ドアを開け、寝室に案内する。
「こりゃまた・・・広いですな」口をあけ部屋を見渡す。
「うらやましい・・・。といってる場合じゃない。早く中澤さん、横になって下さい」
部屋にはセミダブルベットが2つ並んでいる。私は奥のベッドに入った。
その横に刑事さん達がガタガタと座椅子を置く。
座椅子の高さは低く、私は横を向いて話を聞かねばならなかった。
しかい体は横にしただけでかなりマシになった。
「では・・・。話を続けます。今日自首してきたのは後藤真希さんです」
「・・・はい」
「そして・・・。そしてもう1人自分がやったと・・・自首してきた人物がいました」
「ええ!」
もう1人自首?
そんな馬鹿な!!
「それは・・・後藤さんの弟、ユウキ君です」

つづく
151名無し娘。:2001/05/18(金) 03:18 ID:jRiIVMWk
う〜ん、解らん。
152名無し娘。:2001/05/18(金) 07:09 ID:8R3lAChM
僕も分かりません
153名無し娘:2001/05/18(金) 07:49 ID:6fNGKoj2
ああ、なるほどね。上手い手を考えたね。それなら後藤自首納得。
154名無し娘 。:2001/05/18(金) 09:52 ID:vLj9.UAI
>>7
>加護・・・中学卒業後、辻とデュオを組み、デビュー予定。
>辻・・・中学卒業後、加護とデュオを組み、デビュー予定。
高校卒業後の間違い?
155仲沢悠子:2001/05/18(金) 23:10 ID:0yLwx9.E
>>154
ばれちゃった・・・。
実は書いてから「ん?」て思いました・・・。
今さらですが訂正します。
加護・・・辻とデュオを組み、デビュー予定。
辻・・・加護とデュオを組み、デビュー予定。
「中学卒業後」はいらないのでした。ごめんなさい。
では本日分の更新です。
156仲沢悠子:2001/05/18(金) 23:12 ID:0yLwx9.E
―加護の回想―

後藤さんが連れて行かれたあとの事やった。
後藤さんがつんくさん刺して、その後ののが刺したん・・・?何でや。なんでこんな事になってしもたんや。
もう、うちいやや。なんでこんなショックな事が立て続けに起こるんや?
どうしたらええんや・・・!
うちのぶつけようの無い気持ちは胸の中で膨らんで、爆発寸前やった。
その時、誰かの携帯が鳴った。
それはよっすぃーの携帯だった。
「はい・・・。・・・え!!ユウキ?」
みんなの視線がよっすぃーに集まる。
「もしもし?ユウキ?
・・・そう。聞いたの・・・。・・・うん・・・うん・・・。
でもここに来てどうすんの?・・・・・・。」
よっすぃーが携帯から顔を離して言うた。
「ユウキが・・・話があるから、ここに来ていいかって・・・」

「ごっちんの事聞きたいって・・・。警察の人はくわしいこと教えてくれなかったらしいの・・・」
しばらく沈黙になったけど
「いいんじゃない?」
保田さんがみんなに同意を求めた。みんなうなずいた。
「来ていいって。・・・わかった。じゃあ待ってる」
よっすぃーが携帯を切った。
「家のほうに警察から電話があったって・・・。それでごっちんがどんな様子だったかを聞きたいって。
タクシー飛ばして来るから20分ぐらいで来れるらしいよ・・・」
「・・・ショックだっただろうね」
飯田さんが青い顔で言うた。
「うん・・・。でも、ユウキはここの場所知ってんの?」
保田さんがよっすぃーに聞く。
「ああ、それは事務所の人に聞いたそうです。私の携帯番号も」
「そう」
友達がこんな事になっただけでこんな気持ちになんのに、身内がなんて・・・。気が狂いそうになるやろな・・・。
うちはユウキ君の気持ちを思うと胸が締め付けられた。

つづく
157仲沢悠子:2001/05/18(金) 23:29 ID:WAPwOjS2
―福田の回想―

「お邪魔します・・・」
そう言って部屋に入ってきた男の子は笑えるほど後藤さんとソックリだった。
泣き腫らした目・・・。お姉さんがあんな事になってだいぶ泣いたのだろう。
「ここ、座って・・・」
矢口がユウキ君をソファーに座らせた。
「何か飲む?」
カオリが気を使ったが、彼は左右に首を振った。
意気消沈している彼は見ていられないほど痛い痛しかった。
「ごっちんは・・・今どこに?」
「・・・警察に行ったようです。お母さんも急いで行きました・・・」
「そっか・・・」
沈黙が部屋を包む。
みんな彼になんて言ったらいいかわからず、彼が何かを話し出すまでじっと待っていた。
彼がやっと口を開く。
「あの・・・。姉ちゃんは・・・姉ちゃんは何でつんくさんを・・・?」
その声は弱々しく、少し震えていた。
「・・・。それは・・・私達にもわからないのよ・・・」
圭ちゃんがやさしく言った。
「姉ちゃんが!・・・姉ちゃんが自首・・・するまでどんな様子だったか教えてもらえませんか・・・?」
キッと私達を見据えるその目には、覚悟が見えたような気がした。

つづく
158名無し娘。:2001/05/20(日) 00:37 ID:WyxIVH8M
―安倍の回想―

圭ちゃんがこれまでの経緯を話す。
辻が逮捕された事、いつもと態度は変わってなかった事、さっき刑事さんが来た時いきなり自首したこと・・・。
彼は一言も漏らすまいとして真剣な表情だった。
「だから・・・。いきなりだったの。ごっちんが刑事さんに言った時、私達もすごく驚いちゃって・・・」
「どんな些細な事でもいいんです。なぜ姉はいきなり自首したのか・・・。僕には納得がいかないんです!
何か・・・ありませんか?他の人もありませんか!?」
「うーん、無い・・・ていうか、ごっちんが変だったっぽい事はあったんだけど・・・」
とよっすぃーが言った。
「お願いします!教えて下さい!!」
「うん・・・。加護がね・・・」
今度はよっすぃーが加護が変だと思った、写真を見ていた時の事を話した。
彼は何かを考えているようだった。そして、こう言った。
「・・・その写真、見せてもらえませんか?」
「いいけど・・・。でもほんとに何もなかったよ」
「お願いします!!」
石川が袋から取り出して、写真をユウキ君に渡した。
彼は写真をじっと見ていた。
そしてその顔に、あきらかな狼狽の色が広がる・・・。
「わあああああああ!!!!!」
いきなり彼は雄叫びのような声を上げた。
バッと立ち上がり、頭を抱え込む。
私達はいきなりの彼の行動にビックリしたのだった。

つづく
159仲沢悠子:2001/05/20(日) 00:43 ID:WyxIVH8M
―石黒の回想―

どうしたのかしら・・・この子・・・。
「と、とにかく座って」
「ちょっと、ユウキ!落ち着いて!!」
みんながなだめても彼には全然関係なかった。1人唸り声のようなものをあげている。
両手の拳はきつく握られ、その場に立ち尽くしている。
「どこ行くの!!待ちなさい!」
圭ちゃんが大声で叫んだ。
彼はいきなり走り出し、部屋から飛び出して行ったのだ。
「何・・・?なんかやばいんじゃあ・・・?」
なっちが怯えた目でドアを見つめる。
吉澤さんが彼を追いかけるように慌てて部屋を駆け出した。
その後に続いて、みんなも追いかける。
ドアの向こう。
ホテルの廊下。
・・・そこには泣きじゃくりながら警備をしてくれている警官に、何かを話している彼がいた。
「・・・違うんです。姉ちゃんはやってません・・・。姉ちゃんは・・・。僕を・・・僕を・・・。
やったのは僕です!!姉ちゃんは、やっていない!僕がつんくさんを刺しました!!」

つづく
160仲沢悠子:2001/05/20(日) 00:44 ID:WyxIVH8M
―飯田の回想―

「もう・・・。何がなんだかわかんないよ・・・」
カオリはこの2日で何回このセリフをいっただろうか。
こんな所に閉じ込められて、入ってくるのはテレビからの情報だけ。
辻、後藤、ユウキ。誰かこの3人の事を説明してくれー!
叫びたいのをグッと飲み込んだ。
元リーダーの私が取り乱してはならないのだ。
「・・・ユウキも行っちゃったね・・・警察」
「あの姉弟は驚かせすぎですよ。まさか、ビックリカメラとか!?」
石川がそう言ってキョロキョロ周りを見回す。
「・・・石川。んな事あるわけないじゃん」
圭ちゃんが低い声でつっこむ。
「・・・すみません」
長い静寂の後、明日香が言った。
「そういえば、あの写真見て変になってたよね。あの子。やっぱり何か写ってんのかな」
そうだ、忘れてた!!
ソファーの下に落ちたままだった写真を急いで拾い上げる。
ユウキの指の形に両端がへこんでいる。きつく持っていたからだろう。
「どう見ても、普通だ」
矢口がしげしげ見つめる。
赤いドレスの裕ちゃん、黄色い服の圭ちゃん、青い服の辻、スカイブルーの服のカオリ・・・。
「待ってください!!」
よっすぃーがもう1度写真をじっくりみる。
そしてクロゼットへ走り、その扉を力任せに開けた。そして何かを探し出し、手に持って戻って来る。
「見てください!これ、見てください!!」
「それ、誰の服?」加護が聞く。
右手に持っている服は黒のノースリーブのシンプルなドレス。左手にはスパンコールのたくさんついたショール。
「ほら、これ・・・。なのに・・・、ね!!」
「あ!!」
「私、気づかなかったよ!ちくしょう・・・。」
よっすぃーがうな垂れた。
写真の謎は解けたのだった。

つづく
161仲沢悠子:2001/05/20(日) 00:46 ID:WyxIVH8M
・・・ユウキ
ユウキガミツオヲ?
思考回路が停止しそうだ。
「続けても・・・いいですか?」
しっかりしろ!と自分に言い聞かせ「お願いします」と言った。その声もまた震えていた。
「・・・ところがですね、中澤さん。後藤姉弟は自分がやった、としか言わないんです。
いつ刺したのか、どうやって刺したのかそれについてはだんまりを決め込んでる調子です。
お互いをかばいあっている・・・か、もしくは・・・」
「・・・もしくは?」
「他の誰かをかばっているか、です」
今までの穏やかな表情から一転し、警部補の目がキラリと鋭く光る。
尾見谷刑事も顔を上げ、私の表情を読み取るかのような仕草をした。
「さっきも言ったように検死の結果が出ました。それと同時にあなた方が当日着ていた衣装も調べました。
光男さんの衣装から血液反応が出たのは黒のタキシードのみ。
これが裏付けてくれる事はこうです」
警部補が小さな一枚の紙を私に渡す。
「読めますか?」
2重に見えるその文字を、目を凝らし見る。

白→着替え→着替え完了→黒→キャンドルサービス→写真タイム→スピーチ等3組→花束贈呈→挨拶

「これ、何でしょうか・・・」
「結婚式の進行です。黒のタキシードを着てから挨拶までに、光男さんは3回刺されています。
時間にして約1時間。犯行が行われたのはこの間です」
あの時間は人生最高の時間だったのに・・・。まさか最悪への序幕だったなんて・・・!

つづく
162名無し娘。:2001/05/20(日) 00:52 ID:sVmF6jtE
「ビデオ撮影の方をホテルに頼まれてましたよね。申し訳なかったのですがお先に見せていただきました。
しかし披露宴中、会場の外は撮影されていません。
ですからそこはホテルの従業員と、中澤さんの証言だけが決め手となります。
ホテルの従業員は変わったところは特になかった・・・と言っていました。中澤さんはどうですか?」
目を閉じ考える。
光男のやさしい笑顔。微笑みを返す私。・・・また胃が痛む。今度はシクシクと。
「・・・無い・・です」
「そうですか」
熊井警部補がもぞもぞと腰を上げ座椅子に座りなおす。
尾見谷刑事はまたさらさらと何かをメモに書き込んでいった。
「ビデオは・・・ビデオには何も?」
私が質問した。
「キャンドルサービスで入場の時です。
会場は薄暗くなるのですが、もちろんあなた方にはスポットライトが当たっていました。
1卓1卓火をつけて回っている映像が映し出されていました。
ただ・・・運が悪いと言いましょうか、辻さんそして後藤さんがいるテーブルの映像は撮った角度が悪くて・・・。
あ、これ見てください」
彼はまた紙を取り出した。今度のはさっきのよりも少し大きめのものだ。

        矢口 安倍
    〇         福田                〇新婦
   ●            石黒              ●新郎
    辻           飯田
     加護       保田
      石川 吉澤 後藤

「これはキャンドルサービスの時の場所なんですが・・・。お2人は矢口さんと辻さんの間に入ってろうそくに
火をつけてます。場所の誘導はホテルの先導係がやっていました。
ビデオカメラは石川さんの真後ろから撮っていたようです。
カメラは2人のアップが中心でした。
そこで光男さんの表情に注目し見ていましたところ、一瞬・・・
そう、まさしく「痛いっ」という顔が映ってたんですよ」

つづく
163仲沢悠子:2001/05/20(日) 00:58 ID:PVWvQ3Bc
そんな・・・。
あの時に・・・刺された・・・。
キャンドルの炎でオレンジになったかわいらしい面々が頭に浮かぶ。みんなの笑顔・・・。
そして私は光男の横にいながら気づいてあげられなかった・・・。
「例の辻さんは加護さんの影になって見えません。後藤さんに至っては全くカメラに入っていませんでした。」
私は頭を巡らす。
あの時・・・あの時・・・。
「我々は、光男さんの右側ににいた辻さんが刺したのはこの時で間違いないだろうと考えています。
ナイフには彼女の指紋がありましたしね」
辻が刺したのには間違いない・・・。
でも何故?どうして?
「早く彼女が落ち着きを取り戻してくれれば、我々も証言が得られて助かるのですが・・・」
辻は光男を刺した。
それは紛れも無い事実。
辻に直接会って話を聞いてみたい。でも今それは許されない事だろう・・・。
「光男さんは何度も言うように三回刺されています。これでそのうちの一回はわかりました。
ただ、辻さんは錯乱状態になりながらこう言ってました。
『最初からそこにあったのれす。あったのれすよ』と。
主語が抜けていますが、最初からそこにあった物・・・・それはナイフと考えられます。
この発言が意味するもの、わかりますか?」
「?」
「ナイフが光男さんのお腹に刺さっていた。だから自分も刺した。
つまり辻さんは二回目か三回目、もしくは二回目と三回目の二度、刺したことになります」
最初からそこにあったのれす・・・。
だから辻は刺したっていうの?
もしそこに無かったのなら・・・。

つづく
164仲沢悠子:2001/05/20(日) 01:00 ID:PVWvQ3Bc
昨日更新途中でつながらなくなったのでその分も一緒に更新しました。
「名無し娘。」で2回もageちゃいました・・・。
疲れています・・・。鬱です。失礼しました。
165あ名無し娘。:2001/05/20(日) 01:44 ID:a2ASRabQ
>>164
かちゅ〜しゃつかいなよ
166名無し娘。:2001/05/20(日) 03:08 ID:uEXtXnO2
大作だ。
167名無し娘。:2001/05/20(日) 06:58 ID:T1Gv570w
続ききぼ〜ん
168名無し娘:2001/05/20(日) 09:57 ID:EyhCyUqY
残る一つは、矢口か、、、、

盗聴女がなにゆえ出てくるのかがわからん。
169sage:2001/05/20(日) 10:52 ID:L1uVMcEs
楽しみにしています
170名無し娘。:2001/05/20(日) 17:43 ID:uAn4PkkY
盗聴女=石川
171名無し娘。:2001/05/20(日) 17:46 ID:AjziRtrU
http://green.jbbs.net/music/862/dotemaru.html
このサイトの管理人です。

2ちゃんねるの人へ

今回の事はかなり頭にきています。
けれど、相手の挑発に乗ったらさらに付けこまれるよと助言があったので
その後は我慢しているつもりです。ここには、本当にこのHPを見たくて来てくれた人もいるはず。
その人たちに迷惑をかけてしまって申し訳なく思ってます。
なぜ、僕がこんなに叩かれなきゃいけないのかは分からないけど、あなたたちはひどいよ。
通り魔だ。
最近、よく事件が起こってるけど、きっとあなたたちのような人が事件を起こすんだ。きっと。
確かに加護ちゃんの写真の件は行き過ぎだったかもしれないけど、叩かれたこととは無関係だと思う。
きっと僕のプロフィールを見て、外見で判断したんだろう。
きっとプロフィールを出さなければ叩かれなかっただろう。
僕にとって、真実をさらけ出すのはものすごく冒険だったけど、 それを踏みにじられた。
ずるいよ、2ちゃんねるの人たちは。
僕は負けないよ。ほかの同じ境遇の人たちのためにも。
172名無し娘:2001/05/20(日) 17:57 ID:OmI5zzC6
>>171
石川はホテルに缶詰なんだから違う。残る関係者は一人しかいない。
173名無し娘。:2001/05/20(日) 18:07 ID:uAn4PkkY
犯人=辻・吉澤・矢口
174名無し娘。:2001/05/20(日) 19:36 ID:NsNxs4DY
盗聴女は市井?
175仲沢悠子:2001/05/21(月) 00:36 ID:2fbfy/ZM
「この辻さんの発言の信憑性は今のところ半々です。普通の状態じゃありませんでしたしね。
警察としてもそのまま鵜呑みにはできんのですよ。
一応、他のメンバーの方々にも話はうかがいました。彼女は嘘をつく子では無いとみなさん言っておられました。
中澤さんはどう思われます?」
いたずらっ子の辻。お茶目な辻。・・・無邪気な辻の顔が浮かぶ。
「・・・そんな時にとっさに嘘をつけるほど、気転の利く子では無いと・・・」
「ふむ・・・。わかりました。これで辻さんの事は全部お話しました。次に後藤姉弟の話をします」
「・・・はい」
「辻さんの発言を本当だと仮定します。するとこういうことになります。
一回目がナイフを持って刺した人物。
二回目が辻さんor他の人物。
三回目が辻さんor他の人物。
ナイフを持って刺した人物=他の人物で無いなら残る犯人は2人。
ナイフを持って刺した人物=他の人物ならば残る犯人は1人。
二回目と三回目に辻さんが刺していたのなら残る犯人は1人。
私の言っている意味わかりますか?」
ややこしい事を考える力は残っていなかった。
ただわかることは、辻の他に犯人がいるという事だけだった。
今、説明を受けてもわからないのだけはわかっていたので、黙って頷いておいた。
「残る犯人が2人なら、後藤姉弟で人数は合います。
しかし2人は黙秘を続けていて・・・。こっちも困っとるんですが・・・。
あっ、ユウキ君はこれだけ最初に言っております。自分がナイフを持ってきて刺したのだ、と。
その後は何も話してくれません」
ユウキ・・・?
ユウキがナイフを持ってきた?
「また失礼な話になりますが、光男さんとユウキ君の関係は・・・」
プロデューサーと歌手です。という答えを求めているのではないのは、3度目の同じ質問で読み取れた。
「男同士ですよ・・・」
「それはわかっています。でも芸能界ではよくあることだと・・・。ユウキ君はかわいらしい顔をしてますし・・・」
「光男にそんな趣味は無いです」
「ふむ・・・。では中澤さんとユウキ君はどうでしょう?」

つづく
176仲沢悠子:2001/05/21(月) 00:37 ID:2fbfy/ZM
―保田の回想(1)―

西日が部屋に入ってきた。
オレンジ色の夕焼けが部屋に夜を運ぼうとしている。
部屋はとても静かで、とても9人いるようには思えなかった。
なっちと矢口は一眠りすると言ってゲストルームのベッドに横たわっていた。
あやっぺもベッドルームに引きこもっている。
カオリと加護はTVの前でじっとしている。
よっすぃーと石川は窓の下に座り込んだまま動かない。
明日香と私はソファーに寝転がり、ぼーっとしていた。
さっき、写真のことは渡引刑事に話しておいた。
参考にするとは言っていたけど・・・。
その時携帯がなった。私のだった。
みんな疲れがピークに達していたのか、私のほうに見向きもしない。
明日香だけがチラリとこちらを向いたけど、すぐに興味なさげに顔を元の位置に戻した。
私は部屋を移動する。空いているゲストルームに。
着信画面にでていた名前が・・・『サヤカ』だったからだ。
みんなには行方は知らないと言っている。
いや、私も実際には今サヤカが何をしていて、どこにいるかは知らない。
ただ携帯の番号だけ知っていた。
お互いの番号が変わったときだけ連絡していたのだ。
私は詳しく何も話さない。サヤカも何も言わない。
繋がっていたのは携帯だけ・・・。
私は部屋のドアをしっかり閉めた。
177仲沢悠子:2001/05/21(月) 00:38 ID:2fbfy/ZM
―保田の回想(2)―

部屋に入った私はベッドに腰掛け、ピッとボタンを押した。
「・・・もしもし」
『・・・圭ちゃん?アタシだけど』
「サヤカなの?・・・久しぶりだね。・・・ニュース見た?」
『つんくさん死んだんだってね。いやあ、びっくりしたよ』
なぜかはきはき答えるサヤカに違和感を覚えた。
・・・人が1人死んだんだよ・・・?しかも知り合いなのに・・・。
『ねえ、圭ちゃんは今どこにいるの?』
「ちょっと・・・閉じ込められてるっていうか・・・。メンバー全員ホテルにね・・・」
『へえ。全員?なんか楽しそうじゃん。
っていうかメンバーってさ、解散したんでしょ?“モーニング娘。”は。元メンバーの間違いじゃないの?』
何となく棘のある言い方に私は少しカチンときた。
「あ、うん。それはそうなんだけど・・・」
『アタシもそっち行きたいな。ねえ、いいでしょ?アタシも元メンバーだよ』
返答に困る。
そりゃあ明日香もあやっぺもいるのだからサヤカが来たっていいはず。
でも今さらどうして・・・?
結婚式にだって一応誘った。行かないと言ったのはサヤカじゃないの・・・。
「来たって・・・何も無いよ?」
「昔の仲間が集まってんでしょ?まあ、結婚式に出席しないでおいてこういうのもなんだけど・・・。
アタシだって会いたいんだよ。みんなに」
「うん・・・」
呼んでもいいのだろうか?サヤカは・・・私のカンだけど・・・昔のサヤカじゃない。
嫌な予感がする・・・。
『ダメ?・・・ダメならしょうがないね・・・』
悲しそうなサヤカの呟きに私は思わず言っていた。
「じゃあ、おいでよ。明日香もあやっぺもいるんだよ・・・なつかしいでしょ?」

つづく
178仲沢悠子:2001/05/21(月) 00:39 ID:2fbfy/ZM
―市井の回想―

はは。
相変わらず圭ちゃんはやさしいねえ。
そんなんだから事務所にいいようにされちゃうんだよ。
もう昔のアタシじゃないんだよ。
・・・あー楽しみ。

つづく
179仲沢悠子:2001/05/21(月) 23:52 ID:Z6dLeX1g
―吉澤の回想―

誰かの携帯が鳴ったみたいだ。
でも今はそんな事に興味はなかった。
同じ考えがさっきから何度も何度もクルクル回る。
ごっちんはユウキを庇っている・・・。私は確信していた。
ってことはユウキがやったのも確実なの?
あの写真・・・。
ごっちんが小さくベージュのドレスを着て写っていた写真・・・。
あの日のごっちんの服装は、ノースリーブのロングドレスに同じ素材のショール(スパンコール付き)。
着替える訳がない。最初からこの部屋でジャージに着替えるまであの黒のドレスだった。
・・・よくよく写真を見ると、体つきがゴツゴツしていて・・・まるで男・・・。

ユウキは来ていた。
披露宴に。
ごっちんのドレスを着て。

「ねえ、よっすぃー?私達いつになったら帰れるのかな・・・」
隣にいたリカちゃんは三角座りをしてうつむいていた。
「わかんない・・・」
私は何気なく上を見上げた。
そこにはキラキラと光る豪華なシャンデリアがあるだけだった。

つづく
180仲沢悠子:2001/05/21(月) 23:53 ID:Z6dLeX1g
―石川の回想―

もうやだ・・・。
こんなとこに何時間もいたらおかしくなっちゃう・・・!
ののとごっちんとユウキがやったんでしょ?
それでいいじゃない。
刑事さんだって、つんくさんが三回刺されたって言ってたんだから・・・。
3人で決定なのよ。きっと。
早くお家に帰りたい・・・。
「ちょっと・・・。みんな聞いて欲しいんだけど・・・」
片手に携帯を持った保田さんがいきなり話し出した。
保田さんが声を掛けたのか、安部さんと矢口さん、石黒さんが他の部屋から出てきた。
何なんですか?もう・・・。
「サヤカが・・・ここに来るって」
サヤカ・・・?
まさか市井さん?
「圭ちゃん!サヤカって・・・」
飯田さんがビックリした顔をしている。
「・・・そう、市井紗耶香。ニュース見て・・・電話くれた・・・」
「圭ちゃん!!」
いきなり矢口さんが大きな声で保田さんに怒鳴りつけた。
「サヤカと・・・連絡取り合ってんの!?」
保田さんは黙っている。
「そんな・・・。私知らなかったよ。・・・サヤカと連絡取り合ってんなら言ってくれてもよかったじゃない!」
「・・・ごめん」
「何か・・・すっごく今、寂しかったよ・・・」
「ゴメン・・・矢口」
矢口さんの言い方は、本当に寂しそうで私もちょっとだけ悲しくなった。

つづく
181仲沢悠子:2001/05/21(月) 23:55 ID:Z6dLeX1g
―矢口の回想(1)―

サヤカは行方不明だった。
ある時から連絡がとれず、思い出すたびに心配していた。
圭ちゃんとサヤカと私。
第一次追加メンバーの3人。
同時期にモーニング娘。に入って、一緒にがんばった仲間。
サヤカはまだ中学生で・・・。人一倍気を使って、よく胃を悪くしていていた。
あの頃、裕ちゃんとあやっぺは特に厳しくて・・・。でも3人で乗り切ってきた。
私がタンポポに入って、オリジナルメンバーとも仲良くなっていった。
正直、タンポポに1人だけ選ばれた時はうれしかった反面、どうしようかと思ったよ。
2人と距離ができたらどうしようって。
でも2人は「私達も絶対矢口には負けないよ。選ばれた限りは頑張って欲しいと思ってる。お互いがんばろうね」
と言ってくれた。
そして・・・プッチモニ結成。2人はとてもうれしそうだったよね。
圭ちゃんとサヤカとごっちん・・・。
この時に2人の絆が一層深まった・・・のなら、私は一体なんだったんだろう・・・。
圭ちゃんとサヤカの絆は切れていない・・・。
私は切れてしまっている・・・。
ひどいよ、サヤカ。やめるときも全然相談してくれなかったじゃん。
私はサヤカの事、かわいい妹だと思ってたよ。なのに・・・。
心に冷たい風が吹くのを感じずにはいられなかった。
182仲沢悠子:2001/05/21(月) 23:56 ID:Z6dLeX1g
―矢口の回想(2)―

私は怒りを圭ちゃんにぶつけた。
圭ちゃんは「ごめんね」しか言わない。
「矢口・・・。気持ちはわかるけど、圭ちゃん責めても仕方ないよ」
あやっぺになだめられ、私はプイッとそっぽを向いてソファーにどかっと座った。
「ねえ、圭ちゃん。サヤカが来るって・・・本当に?」
なっちが聞いた。
「うん・・・。みんなに会いたいって・・・」
「市井さんですか・・・。なつかしいですね」
「サヤカは今、何してるの・・・?」
明日香が質問する。
「うん・・・。実は携帯番号しか知らなくて・・・。詳しい話はあんまり・・・」
圭ちゃんがチラッと私の方を見る。
携帯知ってるだけでも上等でしょ?私はサヤカの事なーんにも知らないんだからっ!
「やぐちぃー。機嫌直しなさいって。サヤカに会えるんだからさ。今日連絡先聞けばいいじゃん。ね」
カオリが子供をあやすかのように頭をナデナデしてくる。
・・・そういう問題じゃないよ!
「あと1時間ぐらいしたら来ると思う・・・」
圭ちゃんが小さな声で言った。
私の方を見ている。
その視線に私は気づかない振りをした。

つづく
183仲沢悠子:2001/05/23(水) 00:05 ID:yokmjaJ2
「では中澤さんとユウキ君はどうでしょう?」
熊井刑事の質問に私はビクッとする。
私とユウキの関係・・・。
どうしよう。
本当の事を言おうか。でも・・・。
もし言ってしまったらユウキの犯行の動機に裏づけができてしまうかも・・・。
「ユウキ・・・君は事務所の後輩で、後藤の弟。それ以外はなんの関係もありません・・・」
「そうですか・・・。わかりました。
これで重要な質問は終わりました。細かい事はまたということで・・・。
さあお休みになって下さい。しかし、中澤さん1人では心配だな・・・」
「・・・母を呼びます。事務所の人にガードしてもらって来てもらいます」
「そうですね。お母様がいてくだされば我々も安心です。お母様が来られるまで一応我々はこの家にいます。
何かあってからでは遅いですしね。よろしいですか?」
・・・私が自殺でもすると思われているのだろうか。
「はい。お願いします」
「・・・と、お母様が来られるまで光男さんの仕事部屋などがあれば見せていただきたいのですが・・・。
ヒントになるようなものもあるかもしれませんし」
どうやら私の心配ではなく、光男の部屋を調べたいらしい事がこのセリフでわかった。
「リビングの横にドアがあります。『つんく ♂スタジオ』というプレートがかかっています。そこが光男の仕事部屋です」
「失礼ですが今日、何もその部屋から持ち出していませんか?」
「今日ですか?・・・光男の歌の・・・MDを・・・1枚」
「それだけですか?」
「はい」
「わかりました。もしかしたら後で聴かせて頂くかもしれません。では早速下に・・・」
2人は立ち上がり座椅子を手に持った。
「あ・・・。座椅子直さなくてもいいです。母が使うかもしれないので・・・」
「そうですか?」
座椅子を手から離し、部屋を出て行こうとした。その時熊井警部補が言った。
「中澤さんはとにかく今、体を休める事です。我々は必ず犯人を逮捕します。
ですから・・・変な気は決して起こさないで下さいよ・・・。何かあれば携帯にすぐ電話して下さい」
尾見谷刑事が心配そうにこっちを見、そしてドアをそっと閉めた。

つづく
184仲沢悠子:2001/05/23(水) 00:07 ID:yokmjaJ2
―飯田の回想―

圭ちゃんが「サヤカがここに来る」と言ってから1時間が経とうとしていた。
矢口はずっと拗ねたままだった。
圭ちゃんがサヤカと連絡取っていたなんて・・・初耳だった。
カオリと圭ちゃんも仲がいい。
でもその事は言ってくれてなかった。少なからずカオリもショックだったのは間違いない。
でも・・・矢口ほどではないと思う。
矢口は・・・圭ちゃんからもサヤカからも裏切られたような気持ちだろう。
ちっちゃな矢口がもっとちっちゃく見えた。
辻の事で胸を痛めている加護も、いつもよりちっちゃく見える。
「飯田さん・・・。市井さんは何しに来るんでしょう・・・。うち、ののの事知られんのいやや・・・」
不安そうに加護が言ってきたのでこう答えた。
「そうだね。あんた達あんまりサヤカと一緒に仕事してないもんね。
・・・でも後藤とサヤカは師弟関係で仲よかったし・・・。
サヤカはもしいろんな事知ったとしても、人に言いふらすような子じゃないよ。だから大丈夫だよ」
加護は納得したのか、黙っていた。
ピンポーン♪呼び鈴が鳴る。
サヤカだ。
部屋の前に立っている警察の人にはあらかじめサヤカが来る事を圭ちゃんが伝えていた。
圭ちゃんがインターホンに出る。そして私達に向かって
「サヤカ。来たよ」
と言った。
私はワクワクした。
サヤカ・・・。
どんな風になった?

つづく
185仲沢悠子:2001/05/23(水) 00:08 ID:yokmjaJ2
―安倍の回想―

「ちっーっす!」
手を上げて部屋に入ってきた女の子・・・。
それはサヤカだった。でもサヤカじゃなかった。
「久しぶり、なっち。ん?何固まってんのよー」
髪の毛は肩よりちょっと長いくらいで・・・。色は茶色と金髪の間くらいで・・・。痩せていて・・・。
顔も化粧っ気の無い、ほとんどすっぴんで・・・。
「何?アタシ変わってないでしょ?」
「う、うん・・・」
サヤカなんだけどサヤカじゃない。・・・目が違う。
整形したとかそんなんじゃなくて・・・。目つきが鋭すぎる。獲物を狙う猛獣・・・。
私は虎を想像した。・・・怖い。
「なっちは痩せたねえ。あの、なんだっけ映画撮ったじゃん。つまんないの。
あの時はすごかったよねー。太もも話題になったよねえ。あー、なつかしい。あははは」
サヤカはいきなり私に攻撃するかのように毒舌を浴びせる。
・・・笑えない。久しぶりに会って開口一番それなわけ?
「カオリ、おひさー!!」
カオリも、サヤカの私に対する言葉に引いていた。
「相変わらずデカイね」
何かいちいち気に障る言い方をサヤカはしていった。
「あやっぺー!久しぶり。旦那のぶーちゃんは元気?」
「明日香・・・。本当に久しぶりだね。学業がんばってる?
っていうか辞めたんだってー?ガッコ。私と同じ中卒だ。ぎゃはは」
「吉澤に加護!あんた達がんばってるねー。モーニング娘。は所詮踏み台だもんねえ。なーんつって」
「石川・・・。ふふ。ま、いいや」
「そうそう、さっき圭ちゃんに言い忘れたけど圭ちゃんマネー」
「いい加減にしなよ!!サヤカ!!」
矢口がすごい形相でサヤカを睨んでいた。
「・・・矢口。いたの。小さくて見えなかったわ。わはは。久しぶりぃー!!」
「久しぶりぃーじゃないよ!!みんなに失礼な事ばっか言って!
サヤカは・・・なんかサヤカじゃない!!前のサヤカじゃないよっ!!」
矢口は顔を真っ赤にして怒っていた。

つづく
186仲沢悠子:2001/05/23(水) 00:09 ID:yokmjaJ2
―石黒の回想―

サヤカは・・・どう言ったらいいんだろう。
初顔合わせの時のサヤカ・・・。「抱いて!Hold on me」で初のオリコン1位をとって喜ぶサヤカ・・・。
「ちょこっとLOVE」をがんばって歌うサヤカ・・・。後藤を叱るサヤカ・・・。
「市井は絶対帰って来るよ!」そう言って娘。を去っていったサヤカ・・・。
どのサヤカとも一致しない。
輝きが無い。・・・ううん、それどころか荒んでいるのがありありとわかり、目だけがギラギラしていた。
自分の旦那をぶーちゃん呼ばわりされてむかついたのは確かだったけど、言い返せない雰囲気をサヤカは
醸し出していたのだった。
怒りをあらわにしている矢口にサヤカはこう言った。
「・・・何熱くなってんのー?冗談だよ、冗談。久しぶりの再開だよ。そんな怒んないでさ」
サヤカが矢口に触れようと出した手を、矢口は振り払う。
「なんで・・・連絡くれなかったのよ。なんで圭ちゃんにだけ携帯教えてんの?」
サヤカは一瞬キョトンとした顔をし、そして「ぶははは」と吹き出した。
「なんだ。矢口、もしかして妬いてんの?」
「そ・・・そんなんじゃないよ!ちょっと・・・寂しかっただけだよ・・・」
「ふーん」
サヤカは勝手に冷蔵庫を開け、コーラを取り出し飲む。
「ごめんね。矢口」
・・・まるで心のこもっていない「ごめんね」に、私は鳥肌が立った。

つづく
187仲沢悠子:2001/05/23(水) 00:10 ID:yokmjaJ2
―福田の回想―

コーラを片手に持ったまま、地べたに座るサヤカ。
声を・・・掛けづらい。
サヤカはもう昔のサヤカじゃない。それだけはわかる。
「でもねえ、矢口?矢口はさっきアタシに「前のサヤカじゃない」って言ったよね。
前のサヤカって何よ?アタシはアタシじゃん。あんたも失礼な事言ったよ」
睨みあう2人。
「もう・・・やめて。久しぶりなんだよ。矢口にはサヤカの事言わなくて悪かった。謝るから。
サヤカももっと和やかにいこーよ。ねっ」
圭ちゃんが気を使っている。
みんなは黙ってそのやり取りを見ていた。・・・私も。遠くにサヤカを感じながら。
初代メンバーで中々馴染めなかった私が、追加メンバーが入ってきて・・・仲良くなれた。
特にサヤカとは年が1こ違いで最初に仲良くなったのだった。
「福田さん。・・・明日香って呼んでもいい?」
まだあどけない表情のサヤカ。
あの頃と比べるのは間違っているかもしれない。それにしても・・・。
「ほら、みんなこっち来て」
圭ちゃんがサヤカをソファーに座らせ、私達を手招きする。
一瞬、躊躇しながらも私はサヤカの横に座った。

つづく
188名無し娘。:2001/05/23(水) 02:20 ID:GqyhL0lw
荒まないでくれ…
189あ名無し娘。:2001/05/23(水) 02:37 ID:Tcs4OTx2
中澤とユウキの関係?
続き気になるのぉ
190名無し娘:2001/05/23(水) 11:55 ID:/LHrkNB.
そこはよく判るんだけどねえ

石川とつんくの関係、石黒とつんくも、、、安倍はどっちを中澤に言ったんだ。
中澤と矢口の関係もなあ。

中澤とユウキの関係をつんくに言った奴が真犯人?
191あ名無し娘。:2001/05/23(水) 19:39 ID:mBuapQKE
まことはどうしたんだろうか

暫らくかかりそうだし推理用スレでも立てますか?
192名無し娘:2001/05/23(水) 20:55 ID:eGTnknB2
>>191
いいかもしんないね。推理をガンガン書きこまれたら作者もやりづらいだろうしね。
推理をするほうも作者に気を使って書くよりもいい。
193仲沢悠子:2001/05/23(水) 23:52 ID:3S3TRvK.
みなさま、こんばんは。そろそろ問題編も終盤に近づいてまいりました。
推理用スレですが、私としてはこれ以上スレ乱立を避けたいと思っています。
それと問題編が終わったら解決編を一気に書き込みしたいと思っていました。
一気に書き込むのに少し時間を頂こうと考えてましたので、その間に皆さんにここで推理していただくのは
どうでしょうか?保全も兼ねれるので私としてはそれの方がありがたいのですが・・・。
私の中ではもうラスト決まってますので、問題編後は何を書いてもらっても結構です。
いかがでしょうか?
ちなみに問題編(おおげさに言い過ぎてしまいました)は今週で終了予定です。
よろしくです。
あと感想や質問、おかしなところは今まで通り書いて下さるとうれしいです。
それと市井ちゃんファンの方、荒ませてごめんなさいね。
194仲沢悠子:2001/05/23(水) 23:53 ID:3S3TRvK.
刑事さん達が部屋を出て行ってから1時間半くらいたった頃、部屋をノックされた。
「裕子。大丈夫か?」
お母さんだった。電話をしてからすぐに来てくれたのだ。
私はベッドに寝たまま「なんとかな・・・」と言った。
「なんか食べるもんでも作ろか?それか果物剥こか?」
「バナナ」
「え?」
「バナナ食べたい」
「バナナってあんた・・・大嫌いちゃうの?」
「冗談に決まってるやん・・・。ほんまは何もいらんねん。欲しなったらまた言うわ」
「・・・冗談言えんねやったら、大丈夫やな。よっこらしょっと」
さっき刑事さんが座っていた座椅子にお母さんが座る。
「外、すごい人やったわ。事務所の人が押しのけてくれへんかったら、お母さん家入れへんかったで」
「そうやろな・・・。事務所の人は?」
「今、下で刑事さん達にお茶いれてくれてはるわ。刑事さんらも、もうちょっと居るらしいで」
「ふーん」
「・・・光男さん、明日ここに帰ってくんねんて?」
「うん・・・」
帰ってくる・・・。もう生きてはいないけど・・・。
「向こうの両親は?どないしてはんの?」
「・・・元々ホテル取ってはって・・・そこにいてはるみたい。ここには明日来はるねんて・・・」
「ここに泊まらはったらええのに。・・・まあ、裕子がこんなんやし、向こうさんも気遣うてくれはったんやろか」
「たぶん・・・そうやと思う」

つづく
195仲沢悠子:2001/05/23(水) 23:54 ID:3S3TRvK.
「でもほんま・・・立派な家やねえ。広いしきれいし」
「メンテナンス代がかかってしゃーないって、光男が言うとった」
「そらそうやろねえ。・・・あんたここにずっと住むんか?」
「・・・うち1人では広すぎるし・・・。籍もまだ入れてへんからここは光男の両親のもんやから・・・」
「そやったな。・・・あんた京都に帰ってきてええねんで。お母さんと一緒に住んだらええやん」
「うん・・・」
「でもこんな事になんのやったら、光男さんの子供でも出来てたら少しは慰めに・・・」
子供・・・。
もし私のお腹の中に光男の子供がいたなら・・・。
・・・私はできちゃった結婚は絶対嫌だった。
何故なら、30女がそんなことをするとバッシングの種になる。マスコミのいい餌だ。
それが特に人気のある人やお金持ちだったりすると世間の妬みはピークに達する。
光男は女性にそんな人気があるほうではなかった。しかし、お金を持っている。
それに若くてかわいい女の子のプロデュースをたくさんしている。
その中で30女を選び、しかも子供が出来たなんて事になれば、私の策略と思われるのがオチだ。
何人ものそんな芸能人を見た後では、できちゃった結婚など私のプライドが許さなかった。
でも・・・今となっては・・・。
「ごめんごめん。裕子。お母さん、ヘンな事言うてしもて・・・」
私が黙ってしまったので、気を悪くしたのかとお母さんは思ったらしかった。
「・・・裕子、寝たんか?」
・・・私は眠った振りをした。
そしていろいろ考えていた・・・。
・・・辻。・・・後藤。・・・そして・・・ユウキ。

つづく
196仲沢悠子:2001/05/23(水) 23:56 ID:3S3TRvK.
―加護の回想―

全員がソファーに座った。市井さんを取り囲むように。
「あれー?何か人数足りなくないー?・・・裕ちゃん・・・はいないよね、さすがに。
あ!後藤がいないじゃん。それと・・・辻?」
市井さんの言い方がうちにはなんかしらじらしく聞こえた。・・・気のせいかもしれんけど。
「あ、あの・・・実はね・・・」
「わかった!つんくさん刺したんだ!当たりでしょ・・・?」
シーン。部屋が静まり返る。みんなの顔がひきつっていた。
「辻が?後藤が?それともどっちも!?
いやあ、まさか娘。から犯罪者が出るとは。誰が想像しただろうね。しかも殺・人・犯!」
何この人・・・。すごい腹立つ!
ソファーの上にふんぞり返りギャハハと笑っているその姿にうちは激しく怒りを覚えた。
「あんた、茶化してんの!?いい加減にしなよ!さっきからズバズバ言いたいこと言って・・・。
・・・空気読めなくなってんじゃない!?」
大声で怒鳴ったのは石黒さんやった。そして目を吊り上げ
「何よ!殺人犯って。まだ決まったわけじゃないんだよ!サヤカ・・・あんた変わったよ!
嫌な人間に変わったよ!!」
ハアハア息を切らし、一気に捲し立てた。
「ふふん。まあ、月日が経ちゃあ人も変わりますよ。あやっぺだって子供産んでお尻でっかくなってるじゃん」
しゃあしゃあと言いのける市井さんに
「もう帰って!あんた最悪だよ。もう会いたくない!!出てって!!」
悲鳴をあげるように言うた矢口さんは泣いていた。
「同じ・・・仲間だったのに。ヒック。こんなサヤカだったら会いたくなかった・・・」
「矢口・・・」
保田さんはオロオロしとった。
・・・でも市井さんの表情は冷たく、まるで氷のようやった。

つづく
197仲沢悠子:2001/05/23(水) 23:57 ID:3S3TRvK.
―石川の回想―

ほんと最悪・・・。
いくら空気が読めないと言われてる私でもあんな事は言わない・・・。
市井さんとは少ししか一緒に仕事していないけど・・・こんな人じゃなかった。
「サヤカー、ほんっとマジ、帰ってくんない?」
飯田さんが怒った調子で言った。そして冷たく言い放った。
「だってさ、こんな時にだよ?みんなまいってんの。ね。わかる?
なのに、好き勝手言っちゃって・・・。今日の事でもうカオリはサヤカの事忘れるわ。
だから帰って」
飯田さんって結構言うんだあ。こわくないのかなあ・・・。
「帰らないよ。アタシ」
普通の顔をして市井さんが言った。・・・ふてぶてしいわ・・・。
「サヤカ・・・今日のところは帰って。ねっ?お願い」
「なっちも文句あんの?あるんだったらはっきり言いなよ!」
「私は・・・別に・・・」
安倍さんが市井さんに睨まれて動かない。蛇に睨まれた蛙って感じ?
安倍さんは怯えていた。
よっすぃーとあいは、顔が怒っていたけど、黙ってじっとその場を見ている。
私は・・・ただ市井さんが恐ろしかった。
「とにかく!」
市井さんが立ち上がった。
「いろいろあるんだー。おもしろいネタが。みんなも聞きたいでしょー!?」
その時市井さんとバチッと目が合ってしまった。
ニヤニヤ笑う市井さん・・・。
黒い影が私の心を通り過ぎていった。嫌な・・・予感・・・?

つづく
198仲沢悠子:2001/05/23(水) 23:58 ID:3S3TRvK.
―吉澤の回想―

この人・・・何様!?
辻はともかく、ごっちんとは仲良かったんでしょう?
なのに全然驚きもしないどころか悲しむでも無く、むしろ楽しんでるようにしか見えないよ!
「ネタ・・・なんて聞きたくありません」
私は勇気を出して市井さんに言う。勇気を出さねば言えない程、市井さんには凄味があったのだった。
「はは。言うねえ、吉澤。さすがスーパーモデルだね。ほんと仕事に自信がある人は違う!ははは」
市井さんが笑っている。でも目は笑っていない。私は背中がゾクッとした。
「スーパーモデルなんかじゃありませんよ・・・。ただの雑誌モデルです・・・」
「んなことわかってるよ!あんたには嫌味も通じないの?ったく・・・」
コーラをグビグビッと一気に飲み干した市井さんが保田さんの方を向く。
「圭ちゃんは?聞きたくない?もしかしたらつんく殺人事件のヒントになるかもしれないよ」
事件のヒント?この人・・・何か知ってるの?
その時、部屋の電話が鳴った。
飯田さんがドスドス歩いて(怒っていたから)受話器を取る。
「もしもし・・・。え?釈放?後藤・・・ですか?そうですか・・・。はい・・・。はい・・・。
いや、でも・・・。・・・はい。わかりました。・・・失礼します・・・」
今ごっちんが釈放って言った!?
「飯田さん!!」
「・・・後藤がね・・・釈放されたって・・・。でも家は誰もいないし・・・一旦こっちに来てもいいかって・・・弁護士さんが。
家はヤなんだって。でも・・・」
チラッと飯田さんが見る。・・・市井さんを。
ニヤニヤ笑っている姿は無気味だった。
「後藤に会えんのー!うわあ、楽しみ!師弟愛が復活したりして!」
弾んだ声とはうらはらに、相変わらず笑っていない目・・・。

つづく
199名無し娘。:2001/05/24(木) 04:28 ID:FnkgyKb6
なんかこういう市井もいいかも…。
200名無し娘:2001/05/24(木) 09:36 ID:.GBx99ks
ドロドロになってだめになったモー娘。を市井が快刀乱麻を断つように
次から次へ一刀両断にしていくんでしょ。

たぶん、後藤と中澤が来て解決編に突入するんでしょう。ただ、一つだけ
気がかりな点が、、、刑事の名前が尾見谷ですがこれはなんか関係してく
るんでしょうか?もしそうならとても真犯人は判らないです。そこには
逃げて欲しくないです、作者さま。
201>200:2001/05/24(木) 18:00 ID:FRKkkluc
ただ登場人物の名前をオーディション参加者とかから借用してるだけだろ。パロディだな。
202仲沢悠子:2001/05/24(木) 22:39 ID:WXsGkKqg
刑事の名前なんですが、全く関係ございません。201さんの言うとうりです。
名前の付け方もちょっと失敗しちゃったかなって思っています。
だいたい「熊井」っていうのも「熊沢(だったよね。しずかさん)」のつもりで間違っていたんですよね。
恥ずかしいです。ごめんなさい。普通の名前にすればよかった・・・。
203仲沢悠子:2001/05/24(木) 22:40 ID:WXsGkKqg
―矢口の回想―

サヤカが・・・娘。を脱退してから今までどんな風に過してきたのか。
この荒み様は尋常ではない。
自分を高めるためにあえて娘。を脱退したんじゃないの?
これじゃあ自分を高めるどころか・・・。
「後藤がここに来る前に帰って」
カオリがサヤカに言った。
「ヤダよ。それに後藤だって私に会いたいはずだもんねー」
「・・・そんなあんたの姿は見たくないよ。後藤は。カオリだって見たくなかった・・・」
「何よ?今のアタシはそんなにヒドイ?別に激痩せも激太りもしてないし、肌もドーラン塗らなくなったから
前よりきれいだよ?髪の毛だって茶色いけど痛んでないし。枝毛ゼロが自慢なくらい」
サヤカはセミロングの髪の毛を右手でクルクルしながら、立っているカオリを上目遣いに睨んでいた。
「あのねえ、そんな事言ってんじゃ無いの!!見てご覧よ!みんなあんたのこと嫌がってんの。
人傷つけて・・・すごい攻撃的で・・・目がギラギラしてて・・・とにかく怖いの!
あんたが嫌な人間になるのかは勝手!でも・・・私達まで不快にさせるのはやめてよね!」
私は思わずサヤカに本音をぶちまけていた。
サヤカが私を見る。・・・怖い。・・・そしてニヤッ笑ったあとアハハハ・・・と笑い転げた。
「言われちゃったなあ、矢口に。そんなにアタシ怖い?
まあ、あんた達と違っていろーんな体験してきたからね。
・・・娘。辞めてからさあ、アタシ最初はガンバローって思ってたんだ・・・。ギター練習して、ボイトレもして。
もちろん留学もしようとしてた・・・。だけど・・・」
サヤカがうつむく。両手で顔を覆った。そして肩を震わす・・・。
・・・サヤカもしかして泣いているの?今までの態度はイキがっていただけなの?
圭ちゃんも心配そうにサヤカを見ている。
なんだかサヤカがかわいそうになった私は、側に行って慰めようかどうしようか悩んでいた。
「サヤカ・・・」
声を掛けたその時だった。
手の隙間から見える。ギラギラしたものが2つ・・・。
「ぷぷぷ。だっせー矢口、騙されてやんの!ギャハハハ!!」

つづく
204仲沢悠子:2001/05/24(木) 22:45 ID:ovzhr1a2
―保田の回想―

部屋に笑い声だけが響く。・・・たった1人だけの笑い声。
「・・・ははは。こんな子供だましに引っかかるなんて矢口は大人だよー。ほんと」
サヤカの憎まれ口はとどまる事を知らないかのように、どんどん出て来るのだった。
あ然としている矢口にサヤカは・・・
「矢口さあ。今アタシの事かわいそうって思ったでしょ?
・・・同情だったらいらないんだよ!」
ドスのきいた声を張り上げられ、矢口の顔が青ざめていった。
サヤカがここへ来た目的は何なのか?・・・私はそればかり考えていた。
そしてここに呼んだことを深く後悔していた・・・。
「サヤカは・・・今まで・・・。どうしてたの?何でそんな風になっちゃったの・・・?」
明日香がサヤカに恐る恐る聞いた。
サヤカは視線を明日香に移し、そしてニコッと笑った。
「明日香は聞きたい?アタシの4年間」
コクッと頷く明日香。
「負け犬の同士からの質問じゃ、答えないわけにはいかないね!ククク・・・」
負け犬!?
明日香はサヤカの言葉にひどく傷ついた様子だった。
「・・・あんた言葉が過ぎるよ!明日香に謝りなさいよ!」
私もとうとうサヤカの暴言にブチ切れた。平手打ちの一発でもかましてやろうと思った。
しかしサヤカは表情も変えず、こう言ってのけた。
「だってほんとの事じゃん。明日香はねえ、学業に専念するから辞めたんだよ、娘。を。
なのに、ガッコも辞めてんじゃん。ただの負け犬だよ、明日香は。
それに『負け犬の同士』って言ったんだよ?自分の事棚に上げてるわけじゃないんだしさ。
あっ!圭ちゃんももうすぐ仲間入りになるのかな・・・もしかして?もしかすると!アハハハ・・・」
愉快そうに笑うサヤカ・・・。
私は絶句した。
もう・・・最低だ・・・。サヤカは・・・最低の人間に成り下がってしまったのだ・・・。
♪ピンポーン
と呼び鈴が鳴った。きっとごっちんだ。
・・・でも・・・ごっちんに会わせたくない。
こんなサヤカ見て欲しくない・・・。

つづく
205仲沢悠子:2001/05/24(木) 22:47 ID:ovzhr1a2
寝た振りをしていたつもりだったのにいつの間にか眠っていた。
その時私は夢を、見た。

光男が前を歩いている。
私は追いかける。必死で。
走って走ってようやく追いついた。
光男の腕を掴む。
そして顔を見る。
笑っている光男。
でも私の方を見ていない。
こっちを見て!私を見て!
光男に叫ぶ私。
でも光男は遠くを見たままで私には見向きもしない。
ねえ!こっちを見て!私を見て――――――――――!!

「・・・ぅこ、裕子・・・、裕子!」
ハッ!!
「裕子・・・すごいうなされとったで。大丈夫か・・・?」
そこには心配そうなお母さんの顔があった。
とても・・・怖い夢・・・・・・リアルな。
「夢・・・見てた。ハア・・・。めっちゃ汗かいてしもたわ」
「いや、ほんまやね。タオルと着替え持ってくるわ。タオルは洗面所やったな?」
お母さんが部屋を出て行く。
「・・・光男」
私は彼の名前を小さな声で呼んだ。リアルな夢に怯えながら。

つづく
206仲沢悠子:2001/05/24(木) 22:48 ID:ovzhr1a2
タオルで汗を拭く。
背中はお母さんが拭いてくれた。
洗いあがりのスウェットは肌にひんやりして気持ちよかった。
「汗かいたから、のど渇いてるやろ?」
お母さんがそう言って、1階に下りたついでに持って来てくれたミネラルウォーターとグラス。
私はそれを飲んだ。・・・おいしい。
「お母さん・・・。私どれくらい寝てた?」
「うーん。1時間くらいかなあ。びっくりしたわ。お母さんもな、ちょっとウトウトしとったんよ。
ほんなら変な声聞こえるさかい、あんた見たらえらいうなされとったから。ひきつけかなんかと思たくらい」
「夢見悪いとなんか気分悪いわ」
「そやなあ」
・・・ゆっくり眠れる日が来る事はあるのだろうか・・・?
「あ、そうそう。まだ刑事さん下にいはったよ。なんかバタバタしてはったわ」
何か見つかったのだろうか・・・。
それとも事件に進展が?
気になったので
「私、1回下行くわ」
と、ベッドから降りる。しかし体がフラっとよろけた。
「あんた、無理しなや・・・」
「大丈夫やって。ゆっくり行くから」
そう言って、お母さんに体を支えてもらいながら階段を下りた。

つづく
207名無し娘:2001/05/25(金) 07:47 ID:uG7okJTs
>>201&作者さん

多分そうだろうとは思ったんだけど念のためにね。本格推理小説なんかだと
オーディションに落された尾見谷が犯人で刑事がその兄なんて展開もありか
と思うんだけど、それだと今回は伏線がまったくないので推理のしようがな
いなあ、、、とね。
208201:2001/05/25(金) 16:59 ID:P9YG8mNI
>>207
それは思いつかなかったなぁ。全登場人物の名前がモーニング娘。と何か関係ある人の
名前になってるのに最初から気付いていたから。それで尾見谷刑事だけが尾見谷の兄だったり
したら反則だもんな。
209仲沢悠子:2001/05/26(土) 00:03 ID:THlyVvfc
下に行くと、刑事さんたちはリビングから玄関に向かおうとしていたらしかった。
事務所に人が見送ろうとしている。
尾見谷刑事が私に気づき、「中澤さん・・・大丈夫なんですか?」と言った。
「おお!中澤さん。あんまり眠られてないのでは?」
熊井警部補が振り返りこっちにくる。
「少し・・・寝ました。あの、帰られるんですか?」
「一声かけようか迷ったんですが・・・せっかく眠ってらっしゃるのを起こすのもなんですし、
事務所の方もいて下さっていたので言付けて帰ろうかと思ってたとこですわ」
「光男の・・・部屋から何か見つかりました?」
「それが・・・残念ながら特に気になるようなものは・・・」
「そうですか・・・。ご苦労様でした」
私はペコッと頭をさげた。
「もしよければ、事務所の方に言付けておいたこと、今言っておきますが?」
「何かわかった事でも?」
「いや、わかった事ではないのですが・・・。あ、中澤さんはソファーに座ってください」
私とお母さんはソファーに腰掛けた。刑事さんたちは「すぐお暇しますから」と言って立ったまま話した。
「まず1つ・・・後藤さんが釈放されました」
「後藤が!?」
「はい。彼女は弟の・・・ユウキ君を庇っていたらしいです。我々も一旦署に戻って詳しく話を聞かねば何とも
いえませんが・・・」
ごっちんは犯人じゃない・・・。ユウキを庇っただけ・・・。
「その・・・ユウキ君はどうもお姉さんの服を着て結婚式に紛れ込んでおったようです。
それは1枚の写真からわかった事なのですが」

つづく
210仲沢悠子:2001/05/26(土) 00:04 ID:THlyVvfc
ユウキは来ていた。私の結婚式に・・・。
「・・・写真に写っていたんですか?」
「そうです。・・・それともう1つ、辻さんが落ち着きを取り戻してきたそうです。今日にでも話を聞けそうですわ」
辻が・・・。
「あのっ!・・・辻とユウキの話で、何かわかったらすぐ教えて欲しいんです!夜中でも構わないんで
電話して貰えませんか?」
私は警部補に頼んだ。
「・・・絶対とは約束できませんが・・・それでもよければ」
「構いません」
私は必死だった。どんな小さい事でもいいから知りたかった・・・。
「わかりました。いや、長々とお邪魔しました。また明日来ますんで、お願いします」
そう言って2人はこの家を後にした。
事務所の人も明日の朝に来る、と言って帰ろうとしたので私は聞いた。
「なあ、あの子ら・・・娘。らはどうしてんの?」
「は、はいあの・・・。ホテルに・・・。全員一緒に・・・」
「どこのホテル?」
「それは・・・あの・・・。結婚式のあった所・・・です」
「全員?なんで?」
「いや、マスコミなどがうるさいですし・・・社長がそうしろって・・・」
「・・・そう。何号室に居んの?」
狭い部屋に閉じ込められていたらかわいそうだなあと思って質問したのだが、返ってきた返事が
「・・・最上階のスイートです」
「!!」
それって・・・私と光男が泊まる予定だった部屋じゃない!!
「社長が・・・空いているからって・・・」
あの・・・狸オヤジめ。・・・でも今はもうそんな事どうでもよくなってきていた。
「もう少しそこにいてもらう予定になっています。・・・では僕も明日また来ますので。」
そう言って彼は出て行った。

つづく
211仲沢悠子:2001/05/26(土) 00:06 ID:THlyVvfc
―後藤の回想(1)―

私がユウキを庇っていたのがバレて、釈放されることになった。
まさか・・・ユウキが自首してくるなんて・・・馬鹿なコ。
姉ちゃんの親切・・・ううん、『償い』を無駄にしやがって。
・・・ユウキ・・・。
本当にやったの?本当につんくさんを刺したの?・・・いつ?どうやって?
・・・そんなにアンタは・・・好きだったの?
弁護士さんが家に帰りましょうと言ったけど、家にはお母さんもいないし(ユウキの方にいる)
マスコミはまだ私達の事や辻の事を知らないはずだけど、つんくさんの事で家の周りにいるかもしれない・・・。
仲間達がいるホテルのほうがいいかもしれない・・・。
そう考えて私はメンバーのいるホテルに戻る事にした。
・・・みんな、何も言わないでごめん。
部屋に行ったらとにかく謝ろう。・・・心配かけてごめんねって。
弁護士さんとホテルの部屋に到着した私は呼び鈴を鳴らす・・・。
はいと出た声はカオリだった。
「・・・後藤・・・です」
カチャとドアが開いた。
背の高いカオリの顔を見上げた。カオリの目は・・・潤んでいた。
「後藤!お帰り」ギュッとカオリが私を強く抱きしめた。・・・うれしかった。
「あのー、それでは後藤さんのことよろしくお願いします。何かあればまたお電話しますので」
そう言って弁護士さんは帰っていった。
「あ、あの、カオリ・・・」
「うん。みんな後藤のした事わかってるから。ユウキの事はビックリだったけど・・・」
「ごめんね・・・」
溢れてくる涙を止める事は無理だった。
怖かった・・・警察が。悲しかった・・・ユウキが。馬鹿だった・・・私が。
みんながいるこの部屋に帰ってきて私は安心したのだった。
・・・ここに来てよかった。
212仲沢悠子:2001/05/26(土) 00:07 ID:THlyVvfc
―後藤の回想(2)―

カオリは私が帰ってきたことをとても喜んでくれている。
なのに、ドアの前に立ちはだかり中に入れてくれようとしないのだった。
・・・なんで?
「あ、あのね後藤。実は今お客さんが来ててね・・・。お客さんっていうのも変なんだけどさ。
いやー、あんまりー、どうなんだろうねー、うーん」
カオリが意味不明の言葉を発する。
「誰が来てんの?」
「後藤にはさあ、あんまりーカオリ的には会わせたくないってゆーか」
「ひどいな、カオリ」
カオリの後から姿を見せた人・・・。
「い・・・いちーちゃ・・・ん」
「後藤!元気だった?」私にニコッと笑う。
「市井ちゃん!市井ちゃんなの!?ほんとに?いちーちゃん!!」
私は興奮して市井ちゃんを連発する。
「早く中に入りなよ後藤。ね。・・・カオリも」
カオリの眉がピクッと動く。・・・なんか険悪な感じ?
でも私にはどうでもよかった。
市井ちゃんに再会できたことが嬉しかったし、それより私の心は不安でいっぱいだったので、
市井ちゃんという頼もしい人がいてくれる!という思いが私を元気にしてくれた。
市井ちゃん・・・どうしてた?何してた?聞きたいこといっぱいあるよー。
・・・でもリビングに足を踏み入れた時に、なぜか異常に重苦しい空気を感じた。

つづく
213仲沢悠子:2001/05/26(土) 00:08 ID:THlyVvfc
明日で問題編、終わります。
214名無し募集中。:2001/05/26(土) 05:11 ID:/2gGCFyg
僕には全然わかりません。
215名無し娘:2001/05/26(土) 19:47 ID:qBiqZ1fM
ムズイ。読み返してもわからん。
216名無し娘:2001/05/26(土) 21:51 ID:f3GgSE4A
この事件の最大の謎は、刺された時につんくが騒ぎ出さなかった事だ。その理由で
考えられるのは犯人が何故刺したか判っていて、しかもそれに対して同情的だった
場合だ。おそらくつんくは最初に刺された傷が致命傷ではなく式の最後まで耐えら
れると思ったに違いない。花嫁である中澤にとって晴れの舞台である結婚式を無事
にすませてあげたいと願い耐えたと思われる。つんくの誤算は二度三度と刺された
ために出血多量となり致命傷に至ってしまった事であろう。この事から最初に刺し
た犯人達に殺意は無かったと考えられる。おそらく結婚式を台無しにして二人を別
れさせ愛する者を取り戻すのが目的であったのであろう。

すると動機から考えてユウキと矢口が怪しい。おそらく両者とも中澤と関係があっ
たものと考えられる。後藤がユウキを庇ったのもそのあたりの事情を知っていたか
らだと考えられる。辻はキャンドルサービス時の位置から偶然にナイフを発見して
しまったものと考えられる。おそらく発作的な犯行で明確な理由は無いものと思わ
れる。矢口も発見しやすい位置にいた。矢口の場合は致命傷に至らないユウキの犯
行を目撃してとっさの思いつきで致命傷を与えるべく刺したと考えられる。その際
に指紋を拭ったためにナイフには辻の指紋しか残らなかったのではないだろうか。

以上の推理から犯行を犯したのは、ユウキ・矢口・辻の3人と考える。
217仲沢悠子:2001/05/26(土) 23:07 ID:PrHwRQPE
―市井の回想(1)―

後藤が警察から戻ってきた。どうやら後藤は犯人じゃないらしい。
どういう状況なのかがあまり飲み込めていない。
しまった・・・。もう少しネコを被っておくべきだった・・・。
「ごっちん!!」
吉澤が後藤の姿を見て、抱きしめた。そして涙を流しながら
「心配した・・・心配したよー」と言った。
後藤も泣きながら
「ごめんね・・・ごめんね・・・」と何度も言った。
美しい友情ってやつ?他のみんなもごっちんが帰ってきたことにホッとしているようだった。
「とにかく、帰ってきてくれてよかったよ」
圭ちゃんが抱き合った2人の傍らによりそった。・・・アタシのいないプッチモニ・・・。
「ねえ、ごっちん。やっぱりユウキは」
「石川!!」
石川が後藤に話し掛けようとしたら、カオリが慌てて石川の口を押さえた。
・・・ユウキ?今、石川はユウキって言った・・・?
「ユウキって後藤の弟の?ユウキが何?」
私が聞いても誰も教えてくれない。・・・あたりまえか。
でも後藤はこの部屋で今まであったやり取りを知らないので
「あのね・・・市井ちゃん・・・」と口を開いた。それを
「言わなくていい!!」
矢口がしゃしゃり出てきた。後藤は不思議そうな顔をしている。
「やぐっつぁん・・・。どうしたの?」
「いいから後藤は黙ってて!」
大声で怒鳴られ、後藤はビクッとなった。
218仲沢悠子:2001/05/26(土) 23:08 ID:PrHwRQPE
―市井の回想(2)―

そして矢口は感情を押し殺してアタシに言った。
「・・・もう、後藤に会ったからいいでしょ・・・?サヤカ・・・帰りなよ」
「・・・市井ちゃん。帰っちゃうの・・・?」
子犬のような目をしてアタシを見る後藤。懐かしい・・・目。
・・・ここで帰ってもよかったのかもしれない。
なっちの・・・カオリの・・・あやっぺの・・・明日香の・・・圭ちゃんの・・・矢口の・・・
吉澤の・・・石川の・・・加護の・・・アタシを蔑んだような視線。
でもアタシは何しにここに来たんだろう。・・・何もかも破壊するため・・・でしょ?
過去を・・・。そしてこれまでのアタシを。
アタシはみんなの視線を振り払い矢口に睨みをきかす。そして
「だからまだ帰んないって言ってんじゃん!しつこいよ!!」と怒鳴りつけた。
後藤がビックリした顔でアタシを見つめる・・・。
「ねえ、後藤?アタシここにいてもいいよね。ここでいろいろ話すことがまだあんの。
それはそれは楽しいお話なんだよ」
「楽しい・・・お話?」
そう。楽しい・・・。
「みんな表面はいい子だもんね。でも実際心の中はドロドロしてんでしょ?
アタシ知ってんだよ」

つづく
219仲沢悠子:2001/05/26(土) 23:09 ID:PrHwRQPE
家にはお母さんと私の2人きりになった。
お母さんも疲れていたので、隣の部屋に布団を敷いて寝てもらうことにした。
初めは「裕子の横で寝る」と言っていたが、光男のベッドは使って欲しくなかったし、1人になって考えたいのも
あったので「何かあったらすぐ起こすから」と言って横の部屋に移動してもらった。
広い部屋に1人・・・。
帰ってすぐに壁に吊るした白いユリのブーケは枯れていて、下に花がゴロンと落ちていた。
「枯れちゃった・・・か」
私はそっと枕の下からMDを出した。・・・お守り。これは私だけの・・・。
もう1つ取り出したもの。それは1冊の・・・。
・・・これは光男のお守り・・・?
そして・・・どれくらい時間がたったのか、携帯が鳴った。
熊井警部補だった。
辻が落ち着いたので話が聞けたらしい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな!!!
そんなまさか・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!
光男・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!


□□ 問題編  終わり □□
220仲沢悠子:2001/05/26(土) 23:11 ID:PrHwRQPE
というわけで問題編、やっと終了です。

アリバイトリックなどはありません。(なので全て時間はあいまいになっています)
それと本格推理小説ではないことだけはご了承下さい。
解決編を書くのに10日くらいはかかりそうですので、待っていて下さればありがたいです。
文章云々はともかく、毎日更新した自分を誉めておきます。
問題編のご愛読ありがとうございました。

>>216さん
1日フライングです。(w
詳しいコメントをしたいのですが、解決編後に・・・。
あまりに鋭いのでドキッといたしました。

では10日後に。
221娘。さんだよもん:2001/05/26(土) 23:17 ID:tkvlmUIo
問題編お疲れさまでした。
これから真犯人を考えるために全部読み返してみます。
222はんぺら:2001/05/27(日) 01:30 ID:E/GRKOII
お疲れさん。
面白かった。解決編楽しみにしてます。
あと、推理するのはいいけども、
詳しく書き込んじゃうのは良くないと思うぞ。
223名無し娘:2001/05/27(日) 08:57 ID:lUkgLX9Q
216です。
>1日フライングです。(w
>詳しいコメントをしたいのですが、解決編後に・・・。
フライングしてしまいました(w
解決編を楽しみに待ってます。

>あと、推理するのはいいけども、
>詳しく書き込んじゃうのは良くないと思うぞ。
申し訳無い(w
あれでもだいぶ省略して書いたので許してくだされ。誰がどの情報を握ってるとか
つんくに色々チクッたのはとかね。

最後に一つだけ、Yのドドメを刺す情報を握っているのはIだと思う。

ではでは、後は皆さんにお任せして解決編を待ちます。
224てうにち新聞新入社員:2001/05/27(日) 10:30 ID:d4N3/mYI
問題編お疲れ様でした。
僕も推理をと思ったら、少しパズルが足りない。
もう一回読み直してみるか。
解決編も期待してます。
225名無し娘。:2001/05/28(月) 17:13 ID:eWblbgl.
倉庫行き テスト。
226age:2001/05/28(月) 17:35 ID:nCZ9x6h6
age
227てうにち新聞新入社員:2001/05/28(月) 20:18 ID:P.gTJzBg
謎は全て解けた(w
保全
228名無し娘。:2001/05/28(月) 21:36 ID:CF4ejH.M
面白いね。推理せずに、ただただ解決編を期待して読むよ。
229名無し娘。:2001/05/28(月) 23:18 ID:aYfb4IYE
age
230名無し娘。:2001/05/29(火) 15:34 ID:IQ65gKSM
「じっちゃんの名にかけて」

って福田なら言いそうだ(w
231名無し娘。:2001/05/29(火) 23:09 ID:oKwqw9pw
>>230
そういや、福田のじいさんは強烈なキャラだったね。
久しぶりに思い出したよ。
232名無し娘。:2001/05/30(水) 04:35 ID:hhqkIrhM
>>222-223
問題編を終えた今、作者はむしろガンガン推理を
書いてくれることを望んでいると思うんだが
233名無し娘。:2001/05/30(水) 09:05 ID:5ZVr1/zk
つんくがかばうのなら、ゆゆたんがあやιい。
234名無し娘。:2001/05/30(水) 11:30 ID:u66gyAcE
市井がなぜ寺田邸をチェックしてたのか?
235名無し娘。:2001/05/30(水) 12:58 ID:Zx3OOjXA
>>233
中澤の悪行がばれないようにかばったっていう解釈は? それと二人目以降は該当
しないかもね。
>>224
事件が起こる前から用意して盗聴してるってのは別な目的があったのかなあ
寺田邸でつんくがののを・・・なんてのもありうるか。

つんくは石黒と関係があった可能性がある
つんくは石川よりも中澤をとった
つんくは辻に関係を迫った可能性がある

中澤はユウキと関係があった可能性がある
中澤は矢口と関係があった可能性がある

保田はつんくか中澤のどちらかに恨みを抱いていた
後藤はユウキの事で中澤に怒りを感じていた
安倍はつんくの女性関係について情報を握っていて話したがっていた
飯田は写真に写っている何かに気がついたが自分から言うのは差し障りがあった
福田は辞めた本当の理由に関して複雑な思いがある

吉澤・加護は特に重要な隠された謎はないと思われる
市井については不明、まだ情報が少なすぎる。だが犯人とは思えない。
236あ名無し娘。:2001/05/30(水) 19:07 ID:sxQX6QIw
わざわざでてきたまこと夫妻はどうなんでしょうか?
気になって仕方がない(w
>>235
つんくと石川にかんする何かが
寺田邸にあるってことかなぁ〜
237名無し娘。:2001/05/30(水) 21:26 ID:S8c7ymoo
>>236
まこと夫妻ねえ、、、動機がないような。つんくとまことが男色?(w

つんくと石川に関する何かはそうでしょう。中澤が持ち出したMDに秘密を解く
鍵が隠されているんじゃないかな。
238名無し娘。:2001/05/31(木) 01:23 ID:W//YKThA
>>235
> 中澤は矢口と関係があった可能性がある

 矢口の片想いじゃ? 中澤の早くいい男見つけろ発言を自分の想いを
知らない無神経な一言だと最初の矢口の回想は言っているのでは

> 飯田は写真に写っている何かに気がついたが自分から言うのは差し障
> りがあった

 悪なっちの顔以外にもってこと?

>>236
 まこと夫妻はっていうかまことは事件に絶対絡ませなければならない。
安倍がまことに何かに言ったシーンが実は事件とは何も関係がありませ
んでしたで済むわけないからね(安倍の言葉が明かされるだけで済ませ
るのもNG)。
 そういうわけでまことを事件に絡ませると、まことは>>237が言うようにつ
んくと関係を持っていて、安倍からつんくと誰か(石川?)の関係を告げら
れて逆上して「辻の手の上から」ナイフをさらに押し込んだっていうのはど
う?

>>236-237
 石川に関する何かは中澤が「誰かの新曲だろうか」と思ったMD(持ち出
したのとは別のMD)か、寝室で見つけたつんくの日記っぽいもののどち
らかでしょう。
239名無し娘。 :2001/05/31(木) 08:57 ID:DCn11BSA
>>238
なるほど(まことの件)色んなケースが想定できるんだねえ。
可能性を考えていくと関係者の半数くらいは「この人が犯人
です」って作者に言われたら納得するしかないな(w
240名無し娘。:2001/06/01(金) 13:58 ID:FcEGI3gc
hozen
241名無し娘。:2001/06/02(土) 12:08 ID:P1r/gEJA
hozen
242あ名無し娘。:2001/06/02(土) 18:38 ID:lRGhmUgY
>>240
>>241
保全より犯人誰やと思う?(w
243名無し娘。:2001/06/02(土) 22:27 ID:brYx3sXM
矢口。
244名無し娘。:2001/06/02(土) 22:54 ID:gb/eax8.
216=223=235=240

>>242
ちゅうわけで推理らしきものはもう書いたよ
245名無し娘。:2001/06/02(土) 23:45 ID:1AtPP.Sw
第1候補 1ユウキ 2中澤 3辻(まこと)
第2候補 1中澤 2辻(まこと) 3中澤
第3候補 1ユウキ 2辻 3まこと

>>244 >>216
矢口がいつどうやってつんくを刺せるのかわからないのだが……。
発見しやすい場所っつっても、中澤が間にいるんだぞ?
246名無し娘。:2001/06/02(土) 23:51 ID:1AtPP.Sw
>>223
> 最後に一つだけ、Yのドドメを刺す情報を握っているのはIだと思う。

犯人を指摘するための情報が解決編で出るなんて、
推理小説では御法度なんですが……。

>>220
> 本格推理小説ではないことだけはご了承下さい。

ってことなのかなあ。これで片づけられちゃうのかなあ。
247名無し娘。:2001/06/03(日) 01:32 ID:H08mL78.
>>246
223は作者じゃないじゃん。223の推測だろ。
248( `.∀´)マンセー:2001/06/03(日) 01:37 ID:noa4KzkQ
新シリーズ開幕。
今月こそは我らがダーヤスを一位に!
http://www.sh.rim.or.jp/~pumpkin/choice/

ヤッスーをぶっちぎりの一位にしよう
ヤッスーが一位になったとたん再集計はじめやがった
http://hpcgi1.nifty.com/yosito/rannkinngu/9rannkinngu/mesganq.cgi?
249名無し娘。:2001/06/03(日) 08:44 ID:kXIws1Nk
>>245=246
結婚式のキャンドルサービスってのを思い浮かべてくれると判り易いんだが
花嫁&花婿はかなり密着するし背後は完全に死角になってる。更に火を灯し
た後に二人揃って回るからつんくは矢口に背を向ける事になる。二人三脚み
たいな状態になるのでテーブルから離れる時は矢口側につんくがくる。花嫁
の後ろには係員が付くが花婿にはつかないのが普通なので無防備だしね。
250名無し娘。:2001/06/04(月) 01:43 ID:16SIudao
>>247
 うん、それはわかってるよ。>>223が言うような展開が、作者の>>220のよう
な発言で片づけられちゃうのかなあ、ってことです。

>>249
 娘。テーブルのキャンドルに火をつけているシーンはビデオに録られていて、
そのカメラは石川の後ろから撮ってる。で、その時つんくが「痛いっ」ていう顔を
してるってことは(その時刺されたとするならば)刺したのは辻(あるいは中澤)
しかあり得ない。
 さらにナイフは3回、時間差を置いて刺されてる。ってことは少なくともキャン
ドルサービスの時に1回刺されたのならば、あとの2回は別のシーンで刺され
たということになるわけで、矢口がキャンドルサービスの時に刺したという説に
は疑問を抱かざるをえません。
「時間差を置いて」の時間差が数分以内の短い時間でもいいのなら話は別で
すが……(キャンドルサービスだと数分どころか1分程度で済んじゃうんじゃな
いかとも思うけど)。
251名無し娘。:2001/06/04(月) 09:13 ID:RW9HckeY
>>250
キャンドルサービスで娘。達がいるテーブルに来るまでには相当の時間が
かかるはず、最初の方でユウキに刺されていると考えるなら、、、

確かに矢口よりも保田や石黒のほうが怪しいとは思う。二人のどちらかが
犯人だとするとどこで刺したのかがわからない。作者がわざわざ位置関係
まで図で説明しているのはテーブルでの座り位置・キャンドルサービス・
写真撮影・挨拶だ。辻の指紋しかついていないとすれば最後の挨拶時には
誰も触れない事になる。すると写真撮影時に辻が刺した(まことが係わっ
たかどうかは別にして)として時間差っていうのを考慮すれば残るはキャ
ンドルサービス時しかない。この時に変な動きをせずに刺すチャンスがあ
るのは矢口だ。保田や石黒は席が遠すぎる。

キャンドルサービス開始  ユウキが刺す
キャンドルサービス娘卓  矢口が刺す
写真撮影タイム      辻(+まこと)が刺す

だと思う。
252名無し娘。:2001/06/04(月) 23:43 ID:b54Cuk4c
251だが

キャンドルサービス開始  ユウキが刺す
キャンドルサービス娘卓  辻(+まこと?)が刺す
写真撮影タイム      誰かがナイフを握らずに押し込む

こういう可能性はあるな。その場合だと写真撮影時に犯行可能な位置に
いるのはまことと矢口だ。ここで動機の面に帰ると、安倍は中澤に知ら
せる情報を握っていたのだから、それを聞いたまことがつんくを刺すと
いうのは解せない。すると残るのはやはり矢口である。

ただこれが指紋の証拠に対してとっていい解釈であるのならば推理は根
底から崩れてしまう可能性がある。押し込んで指紋が付かずという犯行
ならば誰にでも可能だからだ。そうなれば三人目は推理不可能だ。
253仲沢悠子:2001/06/04(月) 23:49 ID:g47cADe2
ごめんなさい。もう少しかかりそうです。
自分で10日って言っておきながら申し訳ないです。
完結させるのって難しいですね・・・。とくにラストが決まりません。ハァ。

いろいろな推理おもしろいですね。
その手があったか!というものもあるし、なかなか鋭いものもありますね。
がんばります!
3日ぐらいにわけて書きます。よろしくです。
今週中には必ず・・・。
254名無新:2001/06/05(火) 01:01 ID:ilAN.NqM
がんばってね。応援してます。
255名無し娘。:2001/06/05(火) 22:08 ID:8sPIeglc
( `.∀´)<私はヤってないわよ!
256名無し娘。:2001/06/05(火) 23:39 ID:aGqm6NCc
从#~∀~#从 <わてかてヤってません
257名無し娘。:2001/06/06(水) 23:28 ID:n2PdGl0c
解決編まだか?
258名無し娘。:2001/06/06(水) 23:56 ID:vEv7TdH.
>>257
もうちょっとで書くらしいよ。と、せかしてみる。
259名無し娘。:2001/06/07(木) 00:18 ID:YNaaCJlU
あ〜早くよみたいです。期待してますよ〜。
260名無し娘。:2001/06/07(木) 00:37 ID:fCGYKmMc
>>259
おいおいあげるなよ
261名無し娘。:2001/06/07(木) 06:58 ID:NMbcIosI
今夜に期待。
262仲沢悠子:2001/06/07(木) 22:52 ID:4o9x4ZLI
更新です。遅くなりました。ごめんなさい。
次の更新もちょっと時間下さい。

今回は1番目に刺した人があきらかになります。
が、謎は全て解けてないのです。何故「日記」なのかは今は聞かないで下さい。
徐々にあきらかになっていく予定ですので。
263仲沢悠子:2001/06/07(木) 22:54 ID:4o9x4ZLI
―日記(1)―

モーニング娘。のみんな。そしてユウキ。
私が起こした過ちを許してください。
たぶん・・・許してはもらえないかもしれませんが、私の気持ちを書きました。
自己満足でしかないのはわかっています。
でも私がなぜあんな事をしたのかを、あなた達には知っておいてもらいのです。
直接会って言いたかったのですが・・・勇気のない私をどうかあざ笑ってください。
そしてこれを読んだら・・・。
私の事など忘れてください。
この愚かな、私を。

彼を・・・光男を最初に刺したのはこの私です。私は彼を心から愛していました。
狂おしい程に愛していました。そして「結婚しよう」と言われた時、天にも昇る気持ちでした。
愛する人と一生を共にできる喜び。女に生まれてきてよかったと、心から実感した瞬間でした。
なのにどうして彼を刺さねばならなかったか・・・。
理由を書きますが、その理由によってある人達を傷つけるかもしれませんが真実を語るのに必要なので
許して下さい。
そして、決して勘違いしないで下さい。
私が選んだ道であって、その人達や光男のせいでもない・・・。
全て私の卑怯で汚い、邪悪な心が巻き起こした事なのですから。
264仲沢悠子:2001/06/07(木) 22:55 ID:4o9x4ZLI
―日記(2)―

私が彼にプロポーズされたのは約1年前でした。彼の建てた新しい家に引っ越したのは結婚式の3ヶ月前。
そう、その日は奇しくもモーニング娘。の解散翌日でした。
・・・私は自分が一番幸せを掴んだのだと、優越感に浸っていました。
私が光男と同居を開始してすぐのことです。
ある日、彼は仕事で2日ほど家を空けたのです。
私はその時、彼の仕事部屋に入り勝手にいろいろ見ていました。
そして・・・クローゼットにあった彼のギターケースを何気に開けてしまったのです。
なぜあんな物開けたのか・・・自分でも不思議でした。
中には1冊の赤い日記帳が入っていました。
悪いとは思いましたが好奇心には勝てず、ページをめくりました。
そこには、彼の情熱的な愛のメッセージのようなものが書き連ねてありました。
日付がなかったので、最初は作詞に使うものだと思いました。
でも・・・それは違いました。
読めば読むほど誰かに向けて書かれていた事が切々と伝わってきたのです。
しかもそれは、決して私に向けられたものではありませんでした。
読み込んでいくうちに、その一途な愛が誰に向けられたものかを知り私は動揺してしまいました。
それは・・・明日香に送られた愛情の数々だったのです。
私は裏切られた気がして一晩泣き明かしました。でもその時私は自分に言い聞かせました。
「これは以前の彼が書いた物。今彼が愛しているのは私1人だ」と。
帰ってきた彼に日記帳を見たことなど言えるはずもなく、そのまま式の日が近づいてきました。
265仲沢悠子:2001/06/07(木) 22:56 ID:4o9x4ZLI
―日記(3)―

不安との闘いでした。
彼が真面目な顔をするたび私の心臓はドキッとします。別れを告げられたらどうしよう・・・と。
でも彼はいつも通りやさしく、愛してくれました。私のおかしな態度には一切気づかずに。
そして・・・結婚式の前日。
彼が寝静まったのを見計らい、私は彼の仕事部屋に行きました。
目的はもちろんあの日記帳でした。
気にしないようにしていたけれど、頭の隅にずっと残っていたのです。
式を明日に控えていたのに確認せずにはおれず、ページを開きました。
前に見た時から何も書かれていない事を信じて・・・。
そして日記には、あの日最後に見た所からは全く書き込まれていませんでした。
とてもホッとしました。
明日香への気持ちは過去のものなんだ、とうれしくなりました。
私は晴れ晴れとした気持ちで、ベッドにもぐり込みました。
明日は式なんだから早く寝よう、そう思ったのになかなか寝付けませんでした。
それどころか、どんどん嫌な予感が心の中に渦巻いていったのです。
私の嫌な予感はいつも当たるのです。
私は・・・またベッドから抜け出し今度はリビングに行きました。
そして置いていた大阪のクラブで働いていた時の友人に作ってもらった白いユリのブーケに・・・
未使用の果物ナイフを隠しました。
なぜそんな事をしたのかは・・・。
自分を守るためでした。
式にはメンバーが来る・・・。明日香も。
もし光男がまた明日香に心が傾きでもしたら・・・私は悲しみで生きていけないだろう、そう思いました。
私は自分を刺すつもりでナイフを隠したのです。
仮に私が死ねば、明日香なんかより私の事を一生背負って生きていってくれるだろう・・・と。
この浅はかな考えは、あの時私にすればとても素晴らしい考えだったのです。
266仲沢悠子:2001/06/07(木) 22:58 ID:4o9x4ZLI
―日記(4)―

そして、あの時嫉妬に狂った私がとった行動は・・・。
「彼を殺して私も死ぬ」でした。

なのに彼を殺す事はできませんでした。私も死ねませんでした。
しかも光男はそんな私をかばってくれたのです。
・・・馬鹿な私はその時にやっと彼の愛に気づいたのです。
包んでくれるような、大きな愛に。
今さら後悔しても遅いのです。
私は自分で自分の幸せを壊してしまったのだから。
最愛のものをこの手で壊してしまったのだから・・・。
267仲沢悠子:2001/06/07(木) 22:59 ID:4o9x4ZLI
―日記(5)―

ユウキ。

あなたは見てたんだね。私のした事。
こんな私をかばってくれてありがとう。そしてごめんね。
あなたにも早く素敵な恋人ができるように願っています。

辻。

あなたが光男を刺したと聞いた時は最初耳を疑いました。
でもやっぱりあなたはやさしくていい子だったので、安心しました。
警察に行ったときは怖かった事でしょう。
私があんな事をしなければこんな目に合わずに済んだのにね。本当にごめんなさい。
そして・・・見ていてくれてありがとう。あなたのおかげで全てを告白する決心がつきました。

ごっちん。

ユウキの事では迷惑かけてごめんね。あなたにもつらい目あわせてしまってごめんなさい。
プロデューサーまで奪ってしまって・・・。謝っても謝り足りないほどです。
芸能界のトップを目指してがんばってね。あなたならできると思います。

明日香。

明日香は全然悪くないのに名前出してごめんね。嫉妬はしたけど私は明日香の事大好きだよ。
久しぶりに会えて本当にうれしかったよ。
自分の夢に向かってがんばって。応援しています。
268仲沢悠子:2001/06/07(木) 23:02 ID:4o9x4ZLI
―日記(6)―

なっち、カオリ、圭ちゃん。

いろいろつらい事もあるだろうけどお仕事がんばって下さい。
あなた達と過ごした日々の事は忘れません。
迷惑かけてごめんなさい。

吉澤、石川、加護。

こんな最低の先輩でごめんなさい。
仕事がんばりなよ。常に上を目指してね。

あやっぺ。

いろいろ迷惑かけてごめんね。
旦那さんと子供大事にしてあげてね。そしてずっと幸せでありますように。

矢口。

こんな事になっちゃって矢口に会わせる顔がありません。
矢口は絶対幸せになるんだよ!!絶対だよ!!

サヤカ。

会えなかったけど誰かもしサヤカに会ったら伝えて下さい。
ずっとずっと応援してるって。


謝って許されない事はわかっています。
でも、謝らせて下さい。
ごめんなさい。本当にごめんなさい
                   

                      中澤裕子
269名無し娘。 :2001/06/08(金) 00:03 ID:OGYTqMS6
予想外!
270私、里歌ちゃん:2001/06/08(金) 00:37 ID:kk.KW2sk
!!
271名無し娘:2001/06/08(金) 00:40 ID:ek4sB7kQ
ちょっと泣きそうになた
272名無し娘。:2001/06/08(金) 00:50 ID:2Ywbe9/E
 私の発言→ >>238 >>245 >>246 >>250
 やっぱり思ったことは全部口に出さないと損なんだな……。はあ……。

 最初は>>245にあるように

  1 ユウキ〔黒のタキシードに着替えてから入場までの間〕
  2 中澤〔キャンドルサービス〕
  3 辻(&まこと)〔写真タイム〕

 と考えていました。その後再読したとき、さらりとただの場景描写っぽく描
かれているブーケの伏線に気付きました(というか伏線かもしれないと思い
ました)。それで、ブーケに隠したナイフでキャンドルサービスの時に刺した
のかと考えたのですが、そうなると最初のユウキのがなかったことになって
しまい、あと1回を無理矢理捻り出したのが第2候補となっている

  1 中澤〔キャンドルサービス〕
  2 辻(&まこと)〔写真タイム〕
  3 中澤〔倒れたつんくにとどめを刺すようにもう1回〕

 これです。しかし3はかなり無理が……。花束贈呈の時かとも思ったので
すが、その時の中澤には変な様子はなかったと明日香も言ってるし……。
 第3候補は

  1 ユウキ〔黒のタキシードに着替えてから入場までの間〕
  2 辻〔キャンドルサービス〕
  3 まこと〔写真タイム〕

 という考えだったのですが、これはもうありませんね。
 あと、まことはどうなんだろうなあ。辻の手の上からというのもちょっとアレ
かなあっていう気もしてるんですけどね。
273あ名無し娘。:2001/06/08(金) 01:52 ID:RHaNJc3w
中澤(仲沢も)がんばれよーー
274名無し某:2001/06/08(金) 01:55 ID:dFg02KR6
ちゃむは最後まで荒れキャラなのかな?
続きが気になる
275名無し娘。 :2001/06/08(金) 09:21 ID:NC9DZc.Q
日記?

もしかして中澤を落し入れるために誰かが用意した物なんじゃないの?
それとも、、、、自・・・

作者さんの言葉を信じるのなら一番は中澤ってことなんだろうけどね。
276名無し:2001/06/09(土) 01:25 ID:WIdVD8Vo
いよいよ終焉へ・・・・・・

俺の中では最高峰の小説のひとつと言っても過言じゃない。
277名無し娘。:2001/06/09(土) 10:39 ID:zRYRnq.Y
今晩全真相が分かるの? 早く読みたい。
278名無し娘。:2001/06/10(日) 23:28 ID:8rzkLXUk
はやく続きが読みたくて、毎日、来てるのですが…。
気長に待ちましょう。
279名無し娘。:2001/06/11(月) 00:01 ID:6YQmuPdM
>>278
急かしてるのか遅くてもいいと言ってるのか
280名無し某:2001/06/11(月) 17:47 ID:F6XSJg3s
期待sage
281名無し娘。:2001/06/11(月) 21:03 ID:VJlLsbZU
>>279
早く読みたいんだけど、まあ、いいものが出きるのならば
いくらでも待つというような複雑な心境ですな。
282名無し娘。:2001/06/12(火) 23:12 ID:Q8exebZE
はやく…してください…がまんできません〜〜〜
283仲沢悠子:2001/06/12(火) 23:34 ID:jMCvMffM
ごめんなさいーーー!
今週中に必ず・・・。
でも完結はその次になりそうです。
本当にごめんなさい!!!
284名無し:2001/06/13(水) 04:25 ID:yTH8Q4j2
いやいや、がんばっていいのを書いて下さい。
285仲沢悠子:2001/06/13(水) 22:38 ID:gYACLuyA
こんばんは。やっとここまで書けました。
小説って始まりよりも、終わらせる事の方が大変なんですね。ヒィヒィ言ってます。
今日で事件の犯人全てがわかります。
ここからどんでん返しは無理なので・・・そのままストレートに文章を受け取ってください。
終了まであと2回になりそうです。(もしかしたら3回になるかも)
新メンが決まるまでに終わらせねば!!がんばりますのでもう少しお付き合い下さい。
では更新です。
286仲沢悠子:2001/06/13(水) 22:45 ID:LJeAvn2g
結婚式・・・あの事件から1週間経った。
私がこの事件の詳細を「元モーニング娘。」に伝えることになったのだった。
UFA事務所の一室にメンバーが揃う。

安倍さん、飯田さん、福田さん、石黒さん、保田さん、矢口さん、市井さん、
後藤さん、吉澤さん、石川さん、加護さん、そして辻さん・・・。

みんな憔悴しきっていた。
当たり前だろう。
それほどに今回の事件は衝撃だったのだから。
事件についてちゃんと知りたいというメンバーからの希望により、ここにみんな集まったのだった。

「初めまして。刑事の尾見谷です。今回私が事件についてお話する事になりました。
よろしくお願いします」
皆が小さくお辞儀をしてくれた。
私は中澤さん以外のメンバーに会うのは今日が初めてだった。
皆テレビで見るより案外小さいな・・・と思った。
そしてここにいるのは人の死を悲しむ普通の女の子(女性)なのだった。
287仲沢悠子:2001/06/13(水) 22:48 ID:336nUoPI
私はまず、中澤さんが走り書きしたらしい赤い日記帳に書かれた物を読み聞かせた。
それは娘。達にあてた手紙だった。
全員、真剣に耳を傾けていた。
読み終わると共に福田さんが堰を切ったように泣き出した。
「そんな・・・。裕ちゃん・・・私のせいなんだ・・・」
それに続いて他の人達も泣き出した。
「明日香は・・・悪くないよ・・・」
「そうだよ」
「裕ちゃんが福ちゃんの事大好きだって書いてあったし・・・」
自分のせいで・・・と思っている福田さんに何人かが慰めている。そして
「裕ちゃん・・・」
「どうして・・・?裕ちゃん・・・」
「・・・中澤さん・・・」
中澤さんに問うように呟く。
しかしここに中澤さんはいないのだった。
288仲沢悠子:2001/06/13(水) 22:49 ID:336nUoPI
事件の内容を話さねばならない。仕事なのだから。
しかしこんな辛い仕事は刑事になってから無かったのではないか?と思わずにいられなかった。

落ち着きを取り戻した頃、私が言った。
「・・・では事件について、時間を追って説明いたします。よろしいですか?」
一斉に12人の目がこちらを向いた。
「まず、中澤さんは式の前日ブーケの中にナイフを隠しました。
ナイフを詳しく調べた結果、ユリの花粉がわずかですが付着していたのが確認できました。
そして中澤さんが寺田光男さん・・・つんくさんを刺す瞬間・・・そのやり取りを誰も見ていませんでした。
いえ、正確には1人を除いてですが・・・」
後藤さんと目が合う。が、彼女は辛そうな表情をしパッと私の視線を遮断するようにうつむいた。
「中澤さんがつんくさんにナイフを刺した時間はキャンドルサービス入場直前、場所は入場するドアの前です。
ホテル関係者に詳しく話を聞いたところ、先導の者はトーチ(キャンドルに火をつける道具)の先端に
自分のライターで火をつけようとした所ライターのオイルが切れており、慌ててそこを歩いていたバイトに
火を借りに行ったそうです。
介添えのおばさんは、トイレの場所を聞かれ説明したことがあったと言います。
・・・まさか新婦が新郎を刺すなんて・・・夢にも思わなかったので、2人が一緒に並んでいた時の事は
頭の中で省いていたんでしょう。
だから最初の事情聴取の時は「おかしな点はなかった」と証言したのだと思われます。
その一瞬の間だったのでしょう。
中澤さんがつんくさんを刺したのは。
しかしつんくさんは中澤さんの行為をかばい、そのまま入場してしまいます。
そしてその出来事を遠目ながら目撃した人物が1人いました。後藤さんの弟ユウキ君です」
その時飯田さんが後藤さんに問い掛けた。
「ユウキは・・・本当に見たの?」
しかし彼女は返事をしない。
「飯田さん。その事については警察の方でユウキ君から話を聞いていますので私が答えます。
彼はあの日、披露宴に行かなかった・・・いや行けなかった。
なぜなら・・・彼は中澤さんを好きだったからです」
部屋中が少しざわめいた。が、すぐに静寂が戻った。
後藤さんは唇をぎゅっと噛み締めていた。
私は話を続けた。
289仲沢悠子:2001/06/13(水) 22:50 ID:336nUoPI
「ユウキ君は自分の愛する人が他の人と結婚する式には出席したくなかった。
だから式の招待を断り、家に篭っていました。
でも気が変わったのです。
彼は中澤さんのウェディングドレス姿を一目見たくなりました。
しかし頑なに「行かない」と言っていたのに、ホテルで事務所関係の人に出会ったら変に思われる・・・。
そこで彼はあることを考えつきました。
お姉さん・・・真希さんの部屋から服を拝借し、変装してホテルに入り込む事にしたのです。
厳重な警備のホテルもお姉さんに変装する事により、すんなり入れたということです。
ですが、いくら似てるといっても男と女ですし、知り合いに会えば一発でばれてしまいます。
彼はその日使われていない同じフロアーにある小部屋を探し、そこでじっとしていたそうです」
「あの写真に写っていたのが・・・」
吉澤さんが独り言のように呟いた。
「・・・そうです。皆さんもお気づきの通り、保田さんのカメラで撮られた写真・・・。
赤いドレスを着た中澤さんと保田さん、辻さん、飯田さんの後に小さく写っていた後藤さんは、
ベージュのドレスを着ていました。しかしあの日後藤さんは黒いドレスを着ていたのです。
写真に写った人物は・・・後藤真希さんではなく後藤ユウキさんでした。
ユウキ君本人がこれを認めました」
ユウキ君が変装して披露宴に潜り込んでいた事については、皆写真を見て知っていた事なので
あまり反応がない。
しかしユウキ君が中澤さんに想いを寄せていた事に関しては、一様に驚きを隠せない様子だった。
「ねえ、刑事さん。・・・裕ちゃんがナイフをブーケに隠したんですか?」
市井さんがいきなり質問をしてきた。
彼女はテレビで見なくなってだいぶ経つが、あまり変わっていなかった。
ただ目だけが鋭さを増し、やんちゃをして警察に連れてこられた時の若者のその目に似ている・・・。
さっき皆が泣いていた時、泣いていないのが市井さんだけだった事も印象深い。
「・・・ええ。本人もそう言ってましたし。何か?」
290仲沢悠子:2001/06/13(水) 22:51 ID:336nUoPI
市井さんだけが他の人に比べてリラックスして見えた。
なぜなら彼女はスニーカーを脱ぎ、ソファーの上であぐらをかいていたからだ。
少し横柄とも取れる態度で彼女は言った。
「だってさ、ナイフの指紋は辻のだけだったんでしょ?
裕ちゃんがあの日つんくさんを刺した時はウェディングドレスだったから当然手袋してるだろうし
それはいいとして、ナイフをブーケに隠したのはいわゆる『衝動的』になんでしょ?
だったら指紋がついててもおかしくないじゃん」
市井さんの質問はなかなか鋭いところを突いていた。
しかし、それについては答えは出ていた。
「裕ちゃん・・・寝る時きれいな爪がぐちゃぐちゃになったら嫌だって言って・・・。
いつも手袋して寝てた・・・から・・・?」
こう言ったのは矢口さんだった。
「矢口さんのおっしゃる通りです。
市井さんが疑問に思われた指紋・・・。これは我々もおかしいと思っていたのです。
新しいナイフだったのですが、パッケージから取り出す時に普通指紋が付くはずです。
しかも中澤さんは当初自分を刺そうとしていたので、指紋など気にしてなかった筈なのです。
で、皆さんもご存知のように中澤さんは爪・・・ネイルアートですか。これに命をかけていらっしゃいました。
前日に中澤さんが行きつけのネイルサロンに行っていました。
そこの話では付け爪にアートしてもらい、本人の爪は短くカットしたそうです。
実は中澤さんは和装もあったために爪を短く切っておられました。
しかし以前、綺麗な爪を保つためには手袋をして寝るように、とサロンの方にアドバイスを受けていた
中澤さんは、爪を切ったにもかかわらずいつもの癖で手袋をして寝ようとしていた。
だからナイフには指紋が付かなかったと考えられます。
そして式の時、指紋が付かなかったのも・・・市井さんのおしゃった通り、ウェディングドレス姿を
思い浮かべるとわかりますが、手袋をされていたからなのです」
「ハア・・・なるほどね・・・」
飯田さんが何かを頭に思い浮かべている様子で言った。
291仲沢悠子:2001/06/13(水) 22:52 ID:336nUoPI
「よろしいですか?」
私は市井さんに問い掛けた。
コクリと彼女は首を縦に振った。納得したようだ。
「では次に話を進めます」
辻さんが青ざめた顔でこっちを見ている。その横で加護さんが心配そうに寄り添っていた。
こんな時だったが、なんだか微笑ましく思った。
「2人はキャンドルサービスで入場しました。・・・つんくさんはナイフを刺したまま。
その時の傷は確かに浅かったのでしょう。つんくさんも1時間くらいなら耐えられる、そう思ったのです。
ですがここで次の事件・・・いいえ事故が起こったのです」
私がここまで言った時、とうとう辻さんが涙を堪えきれなくなったのかまたシクシクと泣き出してしまった。
「辻さん・・・。この事は言わねばならないのです。あなたが辛いのはわかります。
しかしこれはあくまでも『事件』ではなく『事故』なのです。だから・・・」
加護さんが気を使って辻さんにハンカチを差し出したが、彼女はそれを断わった。
そして右手で涙をグイッと拭って、「大丈夫れす」と言い自分のポケットからミニタオルを出し、
改めて目の辺りをそれで擦った。
「・・・では続けます。ここからは辻さんに聴取した事を元に話します。
モーニング娘。の皆さんの席にキャンドルサービスでいった時です。
つんくさんは辻さんの横に立ちました。つんくさんの右脇腹の辺りに座っている辻さんの顔が近づきました。
辻さんが気づきます。・・・つんくさんのタキシードが微妙に浮いています。
そっと上着をめくりました。
なんとそこには・・・ナイフが。しかも血が滲んでいます。
慌てた辻さんはそれを「抜こう」としたのです」
「!!」
292仲沢悠子:2001/06/13(水) 22:54 ID:336nUoPI
驚きの視線が辻さんに集まった。
加護さんだけがたぶん辻さん本人から話を聞いていたのだろう。驚いた様子は無くじっと動かない。
「じゃあ・・・。ののちゃんはわざとつんくさんを刺したんじゃ・・・無い・・んだ」
石川さんが一段と甲高い声で辻さんに言った。
辻さんは言葉を発しない。代わりに加護さんが言った。
「そうや・・・。ののはわざとやったんちゃうねん。・・・つんくさんを助けようとして間違えて刺してしもてん。
それで気が動転して・・・。パニックになったらしい・・・」
「・・・それだったら・・・言ってくれたら・・・よかったのに」
矢口さんがやさしく言った。
それを聞いて辻さんはブンブン顔を振って
「でも・・・私が刺したのに間違いないのれす。間違いな・・・ヒックヒック」
涙が止まらない様子の辻さんは痛々しかった。
「ねえ、刑事さん。早く続き教えてよ」
1人表情を変えない市井さんが私に言った。皆が訝しげに市井さんを見る。
仲が悪いのか・・・?
「は、はい。では話を続けます。
えー、不運にもその時・・・辻さんがナイフを持った時、つんくさんは火をつけ終わり体勢を元に戻そうとしました。
そこでナイフを持った辻さんは手が滑ったそうです。
そして・・・ナイフを抜くどころか反対に奥に刺してしまったのです」
辻さんが頭を抱えた。背中をかすかに震わせながら。
そんな辻さんの肩を加護さんがそっと抱いてあげていた。
「辻さんは動揺します。シャツに滲んでいた血が指先についています。
・・・しかしつんくさんはそ知らぬ顔をして他のテーブルに行ってしまいました。
写真やビデオにも映っていましたが・・・辻さんはひどくつんくさんのお腹の辺りを気にしていました。
彼女の話によりますと、なぜつんくさんのお腹にナイフが刺さっていたのか不思議だったが、それよりも
自分が刺してしまった事実に恐怖に怯えていました。
そしてその後の出来事に「どうしよう、どうしよう」と1人悩んでいたそうです。
で、パニックに陥ったというわけなのです」
293仲沢悠子:2001/06/13(水) 22:55 ID:336nUoPI
「辻・・・。裕ちゃんが日記に書いてた意味が今わかったよ・・・」
安部さんが涙を流しながら辻さんに語りかけた。
「私・・・知らなかったから・・・辻がわざとじゃないって・・・だからここになんで辻がいるの!?って
ずっと思ってた。釈放されたっていうのは聞いてたけど・・・未成年だからかなって・・・勝手に思ってた。
ゴメンね。辻。裕ちゃんの言う通りだよ・・・。
辻はやさしくていい子だったよ・・・」
「ああ。私もそう思ってたんだ。辻さん・・・ゴメンね」
石黒さんも謝る。
「よかった・・・。よかったよ・・・」
泣き笑いの表情で吉澤さんが言った。その横で後藤さんも笑みを浮かべながら泣いている。
「もー、なんでもっと早く言わないのよー。事故じゃんそんなの。ったく辻は・・・心配ばっかかけてー!」
泣きじゃくった飯田さんが辻さんの元に行き、覆い被さるように抱きしめた。
皆、今日の中澤さんの告白だけでもショックだっただろう。
しかし辻さんの事にもずっと胸を痛めていたに違いない。
だからこそ、辻さんの『事故』について胸を撫で下ろし、安堵の涙を流していた。
しかし、また市井さんだけが冷めた目で他のメンバーを見ているのだった。
・・・感情が欠如してしまったのだろうか?
そんな事を考えていたら彼女とバチッと目が合ってしまった。
・・・彼女の瞳は何か人を威圧する。私は少し背中がゾクッとした。
「で、結局つんくさんを3回目に刺したのは誰な訳?もったいぶらずに言ってよ?」
「サヤカ!口の利き方に気をつけなよ!」
保田さんが怒鳴る。
「はいはい。刑事さん、すみませんでした」
ふてぶてしく市井さんが私に謝った。
その態度があんまりなので少しムカついたが、ポーカーフェースを装い私は話した。
「・・・じゃあ言います。3度目につんくさんを刺したのは・・・。
目撃者がいました。・・・辻さんです。
それが起こったのは写真タイムの時です。
致命傷となる3度目にナイフを刺したのは・・・つんくさん、本人です」
294名無し:2001/06/14(木) 00:15 ID:l35kQu.E
ゴア!
邪魔してすんません。おもしろい!!
295名無し娘。:2001/06/14(木) 09:50 ID:mvZiIuRQ
中澤?何故?わけがわからん!!まーおもろいからいいけど。
296名無し娘。:2001/06/14(木) 14:19 ID:LOUm3X7Y
マジで?推理はずれた・・・。
鬱だ・・・。でも生きていこう。
297どっちの名無しさん?:2001/06/15(金) 01:03 ID:MIV92XUs
面白いYo!!
298名無し娘:2001/06/17(日) 01:27 ID:STJv1cMQ
まだかなまだかな
299名無し娘。:2001/06/19(火) 03:04 ID:Yh3z0e0g
とりあえず保全
300名無し娘。:2001/06/19(火) 04:23 ID:bO4uG80.
>>299
さ、さ、sageミスだぁ〜っ!カッコわり〜!
301名無し娘。:2001/06/19(火) 20:39 ID:oCg.vG2M
今夜は続きあるよね?もう限界だよ。
302名無し娘。:2001/06/21(木) 00:40 ID:GklC82ok
つんくが刺した続きが気になる…。
303名無し娘。:2001/06/21(木) 21:02 ID:/odUOSDI
やはり、被害者に、犯罪を起こした「悪」の全ての原因を
おしつけるという「金田一」的解決法に持っていくのか。
304名無し娘。:2001/06/21(木) 21:03 ID:/odUOSDI
305名無し娘。:2001/06/21(木) 21:04 ID:/odUOSDI
やべえ、下げねえと
306名無し娘。:2001/06/21(木) 22:03 ID:oVWVwjAQ
さげろー
307名無し娘。:2001/06/22(金) 00:51 ID:H0jaBgsg
放置プレイ継続中
308名無し娘。:2001/06/22(金) 01:00 ID:YtyDTRKc
サゲマクレホゼム
309名無し:2001/06/22(金) 11:16 ID:i0v/1PdU
ガンバの仲間たちぃ〜
310名無し娘。:2001/06/22(金) 15:31 ID:4raAi0wE
sage sage
311ギャラクティカマグナム:2001/06/22(金) 20:52 ID:K/1l4kt.
サ・ゲ・ル・ノ・レ・ス・・・
312名無し娘。:2001/06/22(金) 21:51 ID:F9nmLftQ
取りあえず状況報告が欲しいな。もう書く気がないのかって不安になるよ
313名無し娘。:2001/06/23(土) 01:07 ID:BgA1nKhk
まさか、作者のみに何かが…
314名無しさやりん:2001/06/23(土) 02:22 ID:LoH2hjsY
sageるっす
315名無し娘。:2001/06/23(土) 23:11 ID:/LHrkNB.
実は被害者は作者だった(w
316名無し娘。:2001/06/24(日) 01:05 ID:FRKkkluc
やっぱりもう書く気はないのかな?
ていうか、もしかしてこのスレ自体ネタ?最初から結末は用意されていなかったとか?
317娘。さんだよもん:2001/06/24(日) 02:08 ID:fuoJovP6
>>316
それは言い過ぎだろ
ここまで書いておいてネタってことはないよ
ゆっくり待ちましょう
318仲沢悠子:2001/06/24(日) 02:26 ID:vuGBStNM
明日書きます。
遅くなってすみません。
それと保全して下さってた方々、ありがとうございます。
319名無し娘。:2001/06/24(日) 02:47 ID:AGKyTu.g
>>318
明日でおわるの?
320どっちの名無しさん?:2001/06/24(日) 05:22 ID:9hpbf/GY
頑張って下さい。期待してます!
321名無し娘。:2001/06/24(日) 06:19 ID:sT/sVJ/2
すっごく楽しみにしてます!オイラもよそでネタ書いてるんで
大変さはわかります!頑張ってください!!
322名無し娘。:2001/06/24(日) 17:04 ID:J6/kaT1s
保喪
323仲沢悠子:2001/06/25(月) 00:38 ID:1Y3vRiW2
―中澤の自供(1)―

式当日・・・。明日香の顔を見たとき、私は昨日の夜考えていた事を恥じました。
他のメンバーにも顔向けができないほど恥じていました。
みんな私と光男を祝福してくれている・・・これだけで心に潜んでいた悪魔は消え去ったのです。
光男も明日香に対して、久しぶりに会った友達のような態度で接していました。
私はとても安心しました。
光男にとって明日香はやっぱり過去の人なんだわ・・・と。
昨日の私の行動も一種のマリッジブルーだったのかもしれない・・・と。
しかし、その考えは光男の言葉によってかき消されてしまいました。
みんなで歌った「ハピサマ」。
歴代モーニング娘。が新旧一緒になって歌った・・・あの時が1番幸せだったのかもしれませんね・・・。
1人お色直しを終え、赤いドレスの私にドア付近で待っていた光男が言いました。
「ほんま、赤い日記帳みたいやな。」
ズキンとなぜか私の心は痛みました。
『赤い日記帳』と聞いて光男の日記帳を思い出したからです。
そして追い討ちをかけるようにこう言いました。
「さっきのハピサマ最高やったな。・・・やっぱり福田はええわ・・・」
明日香の名前を出した光男の目にはもう・・・私のことなど映っていませんでした。
・・・ナーバスになっていた私の被害妄想だったのかもしれません。
でも・・・。
悲しかった。そしてとても悔しかった。
324仲沢悠子:2001/06/25(月) 00:39 ID:1Y3vRiW2
―中澤の自供(2)―

披露宴の最中にも彼はちらちら明日香の方を見ていました。
その目はプロデューサーとしての目か、1人の男としての目なのかは私にはわかりませんでした。
でもそんな彼に私はもう我慢できませんでした。
・・・次のお色直しで使うユリのブーケ。
私はあのナイフを使う事を決心しました。
ただ、昨日との考えとは違っていました。
「彼を殺して私も死ぬ」
2人で死ぬ事にしたのです。
・・・嫉妬と独占欲の塊でした。あの時の私は。
私はこんなに光男を愛してる。だから光男も私と同じくらい、いえそれ以上に私だけを見ていて欲しい・・・。
それが叶わないなら、いっその事・・・。
係りの人に誘導され、私はまたドア付近で待っている光男の横に立ちました。
こんな会話をかわしました。
「これで最後やね」
「うん。ちょっと疲れたけどな。でも時間たつのんて早いなあ。もう終わりやで」
その時誰に見られてもかまわない、そういう気持ちで彼と向かい合わせになってお腹を刺しました。
タキシードの上からだとナイフが刺さらないような気がしたのでそっと上着の下からナイフをすべり込ませて。
彼はナイフに気づき体を回しました。
その勢いで彼の右脇腹にナイフが・・・。彼の顔が苦痛に歪みます。
光男のその顔を見たとき私は我に返りました。
そして取り返しのつかない行為をした事に気づき、私は慌ててナイフを抜こうとしました。
その手を彼は振り払います。そして素知らぬ顔をして
「腕組んどけ」
そう言いました。
325仲沢悠子:2001/06/25(月) 00:40 ID:1Y3vRiW2
―中澤の自供(3)―

「裕子・・・どうしたんや?なんでこんな事したんや・・・?」
私はただ人を刺してしまった事に急に怯え、言葉がでません。
「ナイフのキズは浅い。でも抜いたら血が出る。もうちょっとで式終わるから・・・
それまでこのままでおる」
呆然としている私に優しく彼はこう言ったのです。
私は声を振り絞って言いました。
「み・・・つ・・・お・・・。ごめん・・・。光男があんまり明日香・・・ばっかり見てるから・・・」
光男の顔がハッとなりました。
「・・・俺・・・お前の事傷つけとったんか・・・。ごめんな。俺って、最低やな。結婚式に他の女見てるなんてな。
でも、ちゃうで。俺は福田の事1人の歌い手として見てるんや。
お前への想いとはちゃうに決まってるやんけ」
そう言って光男は私に微笑みました。
「裕子・・・今やったこと忘れろ。・・・俺だけのこと考えとけ。俺もお前だけの事考えるから。
・・・大丈夫や。俺が1人の女として愛してんのはお前だけや。堂々とせえや。
・・・これからは一生、寺田光男が寺田裕子をプロデュースしていく。
でも、今はつんくとして最後の中澤裕子プロデュースや。
・・・お前今から最後のステージ始まんねんぞ。楽しそうな顔しろ!嬉しそうな顔しろ!」
明日香を・・・見ていたのはプロデューサーとして・・・だった事を知り、私は後悔しました。
それを邪推した私・・・光男の愛が信じられなかった私をかばおうとさえしてくれている・・・。
大きなドアの向こうから音楽が聞こえてきました。
そしてバッとドアが開き、眩しい程のスポットライトが私を照らしました。
私はその瞬間「主演:中澤裕子」という舞台に立ったのです。
卑怯な私は光男を刺した事を記憶の中から消去し、「幸せな花嫁」を演じたのでした。
326仲沢悠子:2001/06/25(月) 00:41 ID:1Y3vRiW2
―中澤の自供(4)―

誰も見ていないと思ってました。・・・私と光男だけしか知らない事だと思っていました。
でも・・・1人だけ見ていた人がいたんですよね。

・・・ユウキ。

ユウキは・・・彼は私を愛してくれていました。
その愛は幼くてかわいらしい、そしてこっちは時として疎ましくなるほど直線的な愛でした。
彼に愛を打ち明けられたのは二年前。
ひと回り以上も年下の男の子からの告白・・・。それはもう、びっくりしました。
しかも彼は後藤の弟だったし・・・。
その頃私は娘。脱退後、ソロで頑張っていました。
光男との交際が本格化した頃でした。
「付き合ってる人おるから」
そう言って軽く彼をあしらっていました。
若いときによくある年上の女性に憧れる・・・そのようなものだと思っていたから。
でも彼は何度も何度もアタックしてきました。
・・・正直悪い気はしませんでした。
若い男の子に言い寄られる自分に少し酔っていたのかもしれません。
今思うと思わせぶりな態度をしていたのかも・・・申し訳ないと思っています。
だからユウキが自首した、と聞き私の衝撃は計り知れないものでした。
それほどまでに光男を憎んでいたのかって。
・・・でも違ったんですね。
彼は私が光男にした事を見ていたんですね・・・。
そしてユウキが私をかばってくれたなんて・・・。
ユウキがナイフを持ってきたのが自分だと言っていた・・・それを聞いた時、ユウキが私を
かばって自首したんだという事がわかりました。
彼の愛は幼いながらも・・・深いものだったんですね。
ユウキには本当に悪い事をしました・・・。
・・・こんな私の事は早く忘れて欲しいです。
327仲沢悠子:2001/06/25(月) 00:42 ID:1Y3vRiW2
―中澤の自供(5)―

何故今まで自首しなかったか・・・?
それは・・・。
実は・・・光男を刺した時から私は現実逃避をしようとして・・・。
その時の記憶を自分の心の中で封印してしまいました。
「幸せな花嫁」そして「不運な花嫁」を無意識に演技していたのです。
・・・なんて身勝手な人間なんでしょうか。

記憶が戻ったのは結婚式の翌日です。
刑事さん達が朝、病院に来ましたよね。
あの時はまだ記憶は戻っていませんでしたが、何かが私の頭をノックするかのように何度も頭痛がしました。
刑事さんが事件の説明している間中、ずっとです。
私が嘘をついてるつもりが無くても体は反応していて、胃が痛くなったり・・・。
そして次に刑事さん達が家にきた時、私が洗面所に吐きに行ったの覚えてます?

あの直前から・・・まるでサスペンス映画のように・・・私の頭の中でフラッシュバックしたのです。
恐ろしかった。
自分が。
そして光男を殺したのは私だ・・・私なんだ・・・。
自分を責めました。

洗面所から出る時に自首しようと決めました。
でも・・・結局私は自首をしませんでした。
どうしても私以外の犯人が知りたかったからです。
犯人・・・その時聞いていたのは辻と後藤でした。なので光男を刺した理由を知ったら自首しようと・・・。
・・・ただ怖かったから・・・伸ばし伸ばしにしていただけかもしれません・・・。
328仲沢悠子:2001/06/25(月) 00:43 ID:1Y3vRiW2
―中澤の自供(6)―

記憶が戻り洗面所から出てきた私に刑事さん達は優しく気づかって下さいました。
その事はとても感謝しています・・・。

まだ話の続きがあるとおっしゃったので、体調不良の私はベッドで話を聞くことになりました。
その話を聞いたら、今度こそ自首しよう・・・そう決めて・・・。
ですがそこでユウキの自首を聞かされ、頭が混乱してしまいました。
だって光男は三回刺されていたんです。その内の1回は・・・私。ならば私以外の犯人は2人じゃないと
おかしい。辻が刺したのは間違いなさそうだ・・・。
という事は、後藤とユウキ・・・。どちらかが嘘をついてる。私はそう考えました。
後藤には動機が無い・・・。でもユウキには・・・ある。
頭の中で思いを巡らせているうちに刑事さんから決定的な話をされました。
「ユウキがナイフを持ってきて刺した」と。

この時確信しました。ユウキは私をかばっているんだと。
私が光男を刺したのを目撃したんだ・・・と。
だからユウキが変装してホテルに紛れ込んでいた、というのを後に聞いた時「やっぱり・・・」と思いました。

とにかく自首をしよう・・・そう決めていたのですが母の顔を見たくて・・・また時間を延ばしてしまいました。
すると、後藤が釈放されたと聞き、またまた私は混乱しました。
じゃあ、誰が光男を刺したのか?それを知るまで・・・自首は出来ない・・・。

数時間後、警部補から電話を頂いて・・・辻の証言から最後に刺したのが光男本人だと知り・・・。
光男が書いた赤い日記帳のページを破って燃やしました。・・・誰にも読んで欲しくなかったから。
破った残りのページに急いでメンバーに手紙を書き・・・警部補に電話したんです。

辻は・・・ある意味被害者です。もちろん加害者は私です。
私が光男をナイフで刺さなければ・・・辻はあんな事にならずに済んだのに・・・。
本当に申し訳なく、そして少しホッとしています・・・。
殺意があったんじゃなくて・・・その正反対で助けようとしていたんですよね・・・。
でも、その刺し傷が・・・。

光男は私をかばって自分で刺したんでしょうか?それとも辻をかばって?それとも両方?
329仲沢悠子:2001/06/25(月) 00:44 ID:1Y3vRiW2
―中澤の自供(7)―

とにかく、光男が死んだ事に変わりはないんです。そして私が光男を殺したという事も・・・。
紛れの無い真実なんです。
ごめんね、光男。
ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・。
好きだった・・・。愛していた・・・。私だけを見ていて欲しかっただけなのに・・・。

私・・・夢を見ていたんですよ。毎日。すごくリアルでした。

光男が前を歩いている。
私は追いかける。必死で。
走って走ってようやく追いついた。
光男の腕を掴む。
そして顔を見る。
笑っている光男。
でも私の方を見ていない。
こっちを見て!私を見て!
光男に叫ぶ私。
でも光男は遠くを見たままで私には見向きもしない。
ねえ!こっちを見て!私を見て――――――――――!!

これ・・・昨日の晩も見ました。
あの日記帳を読んでしまった日から・・・。
毎日毎日・・・。
330仲沢悠子:2001/06/25(月) 00:45 ID:1Y3vRiW2
遅くなって申し訳ありませんでした。
いいわけ・・・はやめときます。
今回は中澤の自供編でした。次回(最終回?)は他のメンバーの心情編です。
・安倍はどんな秘密を掴んでいたのか?
・飯田が知っている『あの顔』とは?
・保田をマネに推薦したのは誰?
・石黒、石川、吉澤、加護はどうかかわっているのか?
・そして後藤姉弟は?
・福田が娘。を辞めた理由は?
・辻はどうなるのれすか?
・ある女って誰(バレバレ)?なんで盗聴していたのか?
残された謎を1つ1つ解いていきます。
また少し時間下さい。よろしくです!
※尾見谷にも秘密があったりする・・・。(杏奈ちゃんとは関係ないよ)
331あ名無し娘。:2001/06/25(月) 01:00 ID:KflWV75s
>>330
良くがんばった!!
オモロカタヨ
332名無し娘。:2001/06/25(月) 02:42 ID:TjSvPp/Q
エピローグ期待してるよ。
333名無し娘。:2001/06/25(月) 02:49 ID:IECzdu0I
早く書けとは言わないから、たまに状況報告してね。
334名無新:2001/06/25(月) 06:30 ID:jCVu7vkg
おもろいっす。ほんと
335名無し娘。 :2001/06/25(月) 09:28 ID:pWpLoZws
毎回楽しませてもらっています、ただひとつ言わせてもらえれば
中澤は自首ではなく出頭でないとおかしいよ。
自首はまだ事件が何処にも発覚していない時に使う物で、
事件発覚後では出頭になりますよ。
336名無し娘。:2001/06/26(火) 03:32 ID:eFwZcaKM
おもろけりゃええやん。
保全。
337名無し娘。:2001/06/26(火) 13:38 ID:ak2/PwSg
>・辻はどうなるのれすか?
ワラタ
338名無し娘。:2001/06/27(水) 19:01 ID:zDOFe0QA
( `.∀´)<だから、ヤってないって言ったでしょ!
339名無し娘。:2001/06/28(木) 04:12 ID:Taj/F77U
本当に中澤がやったのか……
340\(^▽^)/:2001/06/28(木) 10:18 ID:34OZUY8s
\(^▽^)/仲沢さん。おつかれさまです!!!!!!!
ずっとよんでました!ほんとーにおつかれさまです!
ところで・・・・更新はいつですかー?
341\(^▽^)/:2001/06/28(木) 10:19 ID:34OZUY8s
す、すいません!あげてしまいました!
ごめんなさいsage
342名無し娘。:2001/06/28(木) 21:33 ID:Om/dFK0M
ふうむ、確かに中澤と辻とつんくならば条件はクリアしているが、、、
それだと実際には犯人がいないのと同じ事になってしまうな。中澤を庇う
覚悟をしたつんくが自ら・・・というのもいまいち納得しかねる。

ちゃんとした犯人がいてこその推理物だと思うのだが、、、もっとも、こ
の後に大どんでん返しで裏で糸を引いていた真犯人がいたという展開なら
余計なお世話か、、、
343名無し娘。:2001/06/28(木) 21:38 ID:W9pQqpNM
あげるなよ
344名無し娘。:2001/06/30(土) 04:03 ID:tics82V.
sageおけさ…寒い…
345くそったれ娘、:2001/07/01(日) 00:48 ID:S3LrEHDA
( ´D`)y-~~<晒しage
346山田君:2001/07/01(日) 19:20 ID:I2HSZQqQ
おもしろ〜い!
よくこんな事考えられるね。

わしゃ〜厨房じゃけぇ、犯人わからんかったよ
347\(^▽^)/:2001/07/02(月) 02:52 ID:nWGWA/x.
まだですかー?
348どっちの名無しさん? :2001/07/02(月) 04:42 ID:griJobQg
26歳美人教師一家の画像です
http://r1.ugfree.to/~angriff/up1/862.jpg
http://r1.ugfree.to/~angriff/up1/863.jpg
ここのお嬢さん
モーニング娘。の歌が大好きでカラオケといえば、娘。を歌っていた
んだって。小学校の算数の先生だったらしいがなかなか可愛い。
殺されたんかな。
349仲沢悠子:2001/07/03(火) 00:57 ID:guGTN6dg
今週中に書きます。
終わる・・・かな?
とにかく、がんばります!
350名無し娘。:2001/07/03(火) 01:32 ID:foozvLuU
ま、のんびりでいいからがんばってね。
351山田君:2001/07/03(火) 12:37 ID:7JNUVrsw
ゆっくりでもええから、頑張りんさい。気長に待っとるけ〜。
352名無し娘。:2001/07/05(木) 01:48 ID:n9ynWyrY
待ってます。
353どっちの名無しさん? :2001/07/06(金) 00:57 ID:U6AC6TMA
期待してます♪
354名無し娘。:2001/07/07(土) 02:33 ID:NMbcIosI
保全
355名無し娘。:2001/07/08(日) 01:16 ID:2inbh4EM
jpxrm
356どっちの名無しさん? :2001/07/08(日) 01:40 ID:BosWanGs
もう日曜ざますよ。
357仲沢悠子:2001/07/08(日) 20:53 ID:E3LGpDss
「致命傷となる3度目にナイフを刺したのは・・・つんくさん、本人です」
私はこの事件最後の犯人の名を言った。正確には犯人ではないのだが。
「つんくさんが・・・自分で自分を?」
保田さんの問いかけに「そうです」と答えた。
「辻はそれを見たんだ・・・」
吉澤さんが辻さんの方に顔を向けた。辻さんが深くうなずいた。目には涙を浮かべていた。
「もう一度写真タイムの時の1枚の写真を思い出してください。
辻さんが下を向いていて、すごくびっくりしたような顔でつんくさんの右脇を見ていたものがあったでしょう?
あの時、辻さんはつんくさんを刺してしまった事に怯え、そして心配し傷の辺りを凝視していました。
しかしつんくさんは何事もなかったかのように普通に振舞っていました。
写真タイムも終わり、式は何事も無く続きます。
辻さんはずっとつんくさんから目を離せませんでした。
そして・・・式も終盤、花束贈呈となりました。
一瞬開場は暗転になり、スポットが高砂の新郎新婦を照らします。
中澤さんが先に前に出ます。つんくさんはその後からついていくような形になりました。
結婚式とは花嫁さんが主役です。スポットも中澤さん中心にあたっています。
光がつんくさんにあたっていない瞬間が、ビデオで確かにありました。
たぶん・・・。立った時に本能的に何か感じたのでしょうか?もう、ダメだと・・・。
つんくさんはその時服の上からナイフをグッと深く突き刺したようです。
辻さんは暗くて見えづらかったけど、右の手のひらを右脇腹に手を当てるつんくさんを見たのです。
手のひらをあのナイフの位置に押し当てたつんくさんを・・・」
「うう・・・」
ポロポロと涙をこぼしながら、辻さんがまた泣き出した。
「つんくさんが・・・最後の犯人・・・」
気の抜けたような声で、石川さんがつぶやいた。
「そんな・・・」
矢口さんが口を手で押さえながらうつむいた。
358仲沢悠子:2001/07/08(日) 20:54 ID:E3LGpDss
「・・・以上がこの事件の全てです」
ためいきが部屋中に響く。
みんな泣いていた。声を出さずに。静かに・・・。
市井さんだけがまた泣いていなかったが、さすがに事件の全貌を知りうつろに目を傾けていた。
・・・悲しい事件。
リーダーと慕っていた人が犯人。
仲間の1人が事故とはいえ刺してしまった事実。
そして・・・その行為をかばうために自分を刺しそれが致命傷となった、自分達の生みの親とも言うべき人の死。
明らかに落胆している彼女達に、何と声を掛けていいのかわからない。
1人の刑事としては何もなくても、1人の人間として何か言葉を掛けたい。

その時コンコンと部屋をノックされた。
「終わりましたでしょうか・・・?」
事務所の社長が顔を出した。
「あ、はい」
「どうも、ご苦労様でした」
ペコッと礼をされ、私も礼を返した。
もう帰って下さい、という無言の態度を読み、私は署に戻る事にした。
「皆さん・・・どうか・・・気を落とさずに・・・」
これが私がモーニング娘。達に言える、慰めの言葉だった。
刑事としてではなく、ファンとしての。
安部さん、飯田さん、福田さん、石黒さん、矢口さん、保田さん、市井さん、
後藤さん、吉澤さん、石川さん、辻さん、加護さん・・・。
皆が小さく頭を下げてくれた。
「失礼します」
そう言って私は事務所を後にした。
359仲沢悠子:2001/07/08(日) 21:01 ID:FUCRwsYU
― エピローグ1 福田(1) ―

刑事さんの話が終わり事務所で解散となったので、私は1人タクシーで帰る事にした。
行き先を告げると、ゆっくり車が動き出す。
あまりにいろいろな事がありすぎて頭の中がごちゃごちゃになっていた。
後に流れる景色を見ながら私は1つ1つ整理していく。

「みんな表面はいい子だもんね。でも実際心の中はドロドロしてんでしょ?
アタシ知ってんだよ」

サヤカはあの日――結婚式の日、ホテルの部屋ででこう言った。
なんだか心を見透かされたようで私はうつむいた。
その時矢口が怒りを爆発させて怒鳴った。
「あんたなんか、仲間じゃない・・・!例え・・・心に何か押し隠している物があったとしても、
全て言えばいいってもんじゃないっ。そんな人の心こじ空けてどうしようっていうの?
あんた、自分が孤独だからって人も巻き込もうとしてんじゃないの?
帰れ、帰れ、帰れ、帰れ!!」
「そうだ!帰れ!」「帰って!」皆が口々に叫んだ。
後藤さんだけが何が何だかわからないといった様子でオロオロしていた。
サヤカはグッと私達をただ睨み続けるだけ・・・。
圭ちゃんがサヤカの手を取り、半ば強引に玄関へ連れて行った。
小さな声でサヤカに囁いて、何か言いたげなサヤカを力任せにドアの外に追いやった。
おとなしく帰ったようで、その後部屋には静寂が戻った。

心に押し隠すもの・・・。自分だけの思い。・・・誰にもぶつけられる事の決して無い。
みんなは・・・あるの?
私には・・・あるよ。
360仲沢悠子:2001/07/08(日) 21:02 ID:FUCRwsYU
― エピローグ1 福田(2) ―

あの人は・・・どうしてあんなにも私に執着したんだろう・・・。
私は歌が歌いたかった・・・それだけなのに。

私はあの人のせいで歌を止める事を余儀なくされた。
理由はあの人が、私を好きで好きでたまらなかったからだ。
そんな理由だけでやめさせられる・・・?普通はそう思うだろう。
でもあの時期・・・シャ乱Qのメンバーの淫行事件が発覚し、その問題について事務所はすごく
過敏になっていた。
また事件を起こされては困る・・・。
今が1番大事な時・・・事務所にとっても、シャ乱Qにとっても、モーニング娘。にとっても。

私はあの人の事を好きでもなんでもなくて、ただプロデューサーと歌手の関係として尊敬はしていた。
あの人ははっきり気持ちを伝えてはこなかった。
後から和田さんに聞いた話によると『初恋』に近い感情でいい大人がどうしていいかわからなかったらしい。
私はそんなあの人の態度に気づいてはいたがわざと素知らぬ振りをした。
その態度がまた、あの人の心に火を点けていったようだ。
あの人の私への対する想いが尋常でなくなってきた時、和田さんが私に言った。
「助けてくれ、福田。お前のせいでつんくがどんどんおかしくなってきてる。
他のメンバーも薄々おかしいと思いだしてきている。
・・・あいつはマジでお前に惚れてる。お前しか目にうつっていない。
でも、まだお前は14歳。まだ14歳なんだ。
この事が世間に露見したら・・・もう終わりだ。例え何も無かったとしても、噂が広まるだけで・・・しゅうの事件
からまだ時間がちょっとしか経ってない。今このスキャンダルは痛い。
つんくもプロデューサーとしてようやく世間に認められてきた所なんだ。
娘。としてはお前を失うのはかなりの痛手になる・・・のは十分承知でお願いする。
自主的に脱退して欲しい。この通りだ」
お父さんほどの歳の違う人に土下座されて・・・私は頷くしか選択できなかった。
361仲沢悠子:2001/07/08(日) 21:03 ID:FUCRwsYU
― エピローグ1 福田(3) ―

結局今回の事件の発端も、あの人が私に執着したからじゃん・・・。
裕ちゃんは私を恨んでないって言ってたけど当たり前じゃない。もし恨んでたらそれこそ逆恨みでしょ?
裕ちゃんが刺したっていうのはショックだったし、裕ちゃんの気持ちを思うととても居たたまれない気持ちには
なるけれど・・・。
私は悪くない。

私の夢を奪っておいて、勝手に死んでいったあの人は一体なんだったのだろう。
そしてこんな中途半端に生きている今の私って・・・。

その時タクシーのラジオから音楽が流れてきた。
聞きなれた歌・・・私の卒業ソングだった。
前奏に被せてDJがリスナーのはがきを読む。
『天国に行ってしまったつんくさんに捧げます。私はこの歌が1番好きでした・・・』
この歌を・・・あの人は泣きながら作ったと言っていたっけ。

♪ I never for get you 忘れないわあなたの事
    ずっと側にいたいけど ねぇ仕方ないよね ああ泣き出しそう ♪

涙がツーっと頬をつたった。
今までも何度か泣いたけどそれはあの人の死に対してではなかったように思う。
事件への衝撃や、かわいそうな裕ちゃんを思ってのものだった。
でも今ここで、車の窓を見つめながら涙している私は・・・あの人がもういないという悲しみで初めて泣いている。
この曲・・・大好きだった。私の為に作ってくれた心のこもった歌。
この曲を聴くたびに想い出すのだろう。
きっと・・・あの人の事を。
362仲沢悠子:2001/07/08(日) 21:05 ID:FUCRwsYU
今日は少なくてごめんなさい。
順番を入れ替えたりしたほうがいいかなって思ったりして・・・。
次回は一気に書けると思います。
金曜日までにはいきますのでよろしくです。
363名無し娘。:2001/07/08(日) 21:16 ID:Fcj67UzI
期待下げ。
364(`.∀´):2001/07/08(日) 23:47 ID:ylVtZsjw
0(`.∀´)0   \(`.∀´)/
   ヤッ        スー♪
365ぽち3号:2001/07/09(月) 02:19 ID:ZM8AtsUg
無理しないでがんばって下さい。
366:2001/07/10(火) 11:03 ID:DHrShFuM
hozem
367名無し娘。:2001/07/10(火) 17:06 ID:O.A2n7mQ
やっぱ、仲沢さんの小説たまんねーなぁ・・
368名無し娘。:2001/07/11(水) 17:51 ID:A.2D.9JA
ほぜ
369娘。さんだよもん:2001/07/12(木) 23:23 ID:3qviOYCM
保全しつつ待ちまくり
370三村:2001/07/13(金) 21:56 ID:JTFD67zM
まだかよっ!
371名無し娘。:2001/07/13(金) 23:03 ID:26.x5b6s
372仲沢悠子:2001/07/14(土) 00:30 ID:tO6vtnWs
三村につっこまれちゃった・・・。
ごめんなさい。明日になります。
今頑張ってます。
373名無しさん:2001/07/14(土) 00:30 ID:qn1icM0I
>>372
がんばれ〜! 待ってますよ。
374三村:2001/07/14(土) 16:54 ID:TgLPrPL2
あしたかよっ!・・・・・おっけー。
じゃあ夜の12時以降に書き込んでくれ。今日の。
頼むよっ!
375仲沢悠子:2001/07/14(土) 21:07 ID:I8MBoZ5.
― エピローグ2 飯田(1) ―

「なっち、一緒に帰らない?」
事務所で解散になった後、カオリはなっちを誘った。
「うん。いい・・・けど」と珍しいな、という顔のなっち。
「何か食べて帰らない?」「それいいかも」
フフフ・・・と二人で笑う。
外はもう薄っすら暗くなりかけていた。でも夕日はビルに隠れて見えない。
「北海道だったら・・・きれいな夕日が消えていく瞬間見れただろうね・・・」
カオリは故郷、北海道の壮大な夕焼けを思い出していた。
帰っても・・・いい頃かも。そう、思いながら。

2人であるイタリアンレストランに入る。まだ時間が早いからか、お客は私達の他に1組だけだった。
グリーンのチェックのテーブルクロスがかわいいそのお店は、カオリと彼がよく利用していた。
値段がリーズナブルなわりにおいしくて、何より雰囲気がよかったので2人のお気に入りだった。
ウェイターに注文をし、大きなガラス瓶から注がれた水を飲んだ。ちょっとレモンの味がする。
一息ついた所でなっちが言った。
「ショックだったね・・・裕ちゃんが・・・」
カオリの心にまたブルーな感情が湧きあがる。
「ほんとだよね。まさか・・・だったな」
「幸せになれると思ってたのにね・・・」
伏せ目がちに言うなっちの顔は本当に悲しそうだった。
しばらくすると料理が運ばれて来る。事件はショックだったけどお腹は減っていた。
2人とも無言で目の前の料理を平らげていった。
そしてデザートのコーヒーとクレームブリュレを食べていた時カオリは意を決して問い掛けた。
「なっち・・・。なにか悩んでることない?」
いきなりの質問に「はぁ?何言ってんの?」という態度のなっち。
「どうしたの?カオリ急に」
「う・・・ん」
言うべきなのだろうか。それとも・・・。この期に及んでまだ迷っていた。
376仲沢悠子:2001/07/14(土) 21:08 ID:I8MBoZ5.
― エピローグ2 飯田(2) ―

「なっちは何も悩みは・・・ないなあ。今のところ。ほんとに」
「本当に?」
いつも通りの笑顔で答えるなっちの瞳をカオリはじっと見つめた。
「本当に何もないってば」
「そう。・・・うん。じゃあ、いいんだ」
やっぱり、言えない・・・。言ったってしょうがない。
でも本当の友達だったら・・・言うべき事なのか・・・。
カオリは底の方に残っている濃いコーヒーを飲み干した。ちょっと粉っぽかった。
「・・・カオリこそ、もしかして何か悩んでるの?なっちでよければ相談に」
「ううん!カオリも何もないよ!ごめんね。変な事聞いて。あーおいしかった。ごちそう様でした」

・・・言わない事に決めた。
きっと言ったらなっちはパニックになる。長年一緒にいたんだもん。想像がつく。
カオリは・・・影から応援する。それしかできないけど。
たぶん、気づいてるのカオリだけだし、他の人にバレなければそれはそれでいい事だもの。

「・・・カオリ?どうかした?」
なっちが不思議そうにカオリを見ている。
「え・・・」
「だってまた一点見つめしてんだもん。どっか行っちゃってたよ」
「アー、ごめんごめん。いや、なんかなっちと2人でご飯食べんのも久しぶりだと思っちゃってさあ。
浸っちゃったみたいだわ」
「くすくす。カオリは変わんないね!」
肩を小刻みに震わせてなっちが言った。
・・・これでいいんだ・・・。わかんないけど。今は・・・これで・・・。

なっちがコーヒーを飲み終わった所で店を出、帰ることになった。
タクシーを拾える大通りに出るまでの道で、歩きながらカオリはなっちに言った。
377仲沢悠子:2001/07/14(土) 21:09 ID:I8MBoZ5.
― エピローグ2 飯田(3) ―

「なっち、カオリ一度北海道に帰ろうと思うの」
「里帰り?」
「違う」
「えっ、それってじゃあ・・・」
不安そうな顔で見上げるなっち。
「うーん。カオリもう芸能界はいいやって感じなのね。それに・・・やっぱ結婚するんだったら今のうちに
親孝行しときたいしね」
笑顔で小さななっちを見下げるカオリ。
「え・・・!もしかしてカオリ、結婚するの!?ウソォー」
「っていうか・・・プロポーズされてて・・・。あっ、でも結婚するのはまだまだ先だよ。
まだ若いんだもん。でもね、とにかく芸能界は引退する事に決めたの。
でさ、カオリはなっちの事はずっと応援していきたいと思ってる。
だから、何かあったら絶対に相談してくれるって約束して欲しいの。1人で考え込まないで・・・さ」
いつのまにか手を繋いで歩いていた。・・・あの頃のように。
なっちはぎゅっと力をいれてカオリの手を握り、言った。
「うん・・・。わかった。何かあったらカオリに相談するよ。・・・でも・・・結婚かぁ。いいなあー」
「なっちは女優頑張って。カオリは花嫁修業に励むよ!」
「とうとう違う道、歩いていくんだね・・・。北海道から出てきてずっと一緒だったのに」
少しシンミリした空気が漂う。
繋いだ手をブンブン振り、カオリはわざと明るい声で言った。
「お互いがんばっていこーよ!今まではライバルだったけど、これで本当の友達になれるよ!」
「そう・・・だね」
なっちが天使の笑顔を向けてくれた。
カオリは何年かぶりにこの笑顔を素直に受け止めた・・・気がした。

なっちと別れ、タクシーに乗る。
(・・・なっちが相談してくれる日がいつか来るのだろうか・・・?)
カオリはあの日のことを思い出していた。
378仲沢悠子:2001/07/14(土) 21:10 ID:I8MBoZ5.
― エピローグ2 飯田(4) ―

私達は一緒に北海道から上京し、一緒の部屋で共同生活をしていた。
最初はすごく楽しかった。ルームメイトがなっちでよかったと思っていた。
でも、いくら仲がよくても仕事も一緒、家に帰っても一緒ではだんだん相手に対して疎ましさを感じる
ようになってくる。お互いにそう思っていたはずだ。
ケンカの数も増えてくる。
カオリはいろんな人に不満をぶちまけストレスを解消していた。聞いてもらうだけで気持ちが楽になった。
そんなカオリに対してなっちは他の人に何も言わなかった。どんどん、溜め込んでいくタイプだったから。
そんななっちにカオリは「いい子ぶって・・・」とまたムカツイていた。
ある日なっちの部屋を、CDを借りようと思ってノックした。・・・返事がない。
「寝ちゃった・・・?」
そーっとドアを開ける。なっちは寝ていた。お目当てのCDが机の上にあるのをみつけたので勝手に借りよう
とした。何気になっちを見る。ベッドでスヤスヤと気持ちよさそうにしていた。
その時、なっちの顔がうーんと歪んだ。
「!!」カオリは目を疑った。
その顔は・・・ひどく恐ろしい形相だった。なっちなのになっちでない、天使の微笑みの両極端にある恐ろしい
顔だった。そう、あの写真タイムのなっち・・・あの顔だ。
「・・・・・・・」恐ろしい顔でなっちは何か言っていた。怯えながらも好奇心にかられたカオリはそーっと
なっちの側に寄り、ブツブツいっている口に、耳を近づけた。

「黙れ。うるさい。指図すんな。お前達なんか死ね。みんな大嫌いだ。調子に乗るな・・・」

自分の耳を疑った。到底普段のなっちの口から出てくることの無い憎しみの篭った言葉・・・。
「ククク・・・」とその表情で笑うなっちにカオリは背筋が凍った。
あまりの恐ろしさにカオリは部屋を出ようとしたが余りに慌てていた為、机に足をぶつけた。
ガシャガシャと机の上に積んであったCDの山が音を立てて崩れていった。
「う・・・ん」
なっちが軽く寝返りをうつ。ハッとしてカオリは恐々振り向く。
かわいいなっちがかわいい寝顔でそこにいた。いつものなっちだった。
「なんだったの?今のなっちは・・・」
379仲沢悠子:2001/07/14(土) 21:12 ID:I8MBoZ5.
― エピローグ2 飯田(5) ―

カオリは思い悩んだ。
そう言えばケンカをしても、心をぶつけ合うという事はしていなかった。
なっちは心に黒いものを溜め込んでいる・・・。それがあの顔なんだ・・・。
吐き出しちゃえばいいのにと思い、その後なっちにそれとなく本音を言わそうと振ってみたりするのだけど
いつも上っ面な答えしか返ってこないのだった。

あの時からずっとカオリはなっちを注意して見ていた。
前からカオリは人をじっと見る癖があったので、変には思われなかったようだ。
あの顔が・・・寝ている時以外に出て来るようになったのは・・・「ふるさと」の後ぐらいだった。
なっちはあの時、「ふるさと」の責任を1人で負った。
実際にはなっちの責任じゃないしみんなもなっちのせいだとはこれっぽっちも思っていない。
だって、あれはなっちだけの曲じゃないし・・・。
でもなっちの中ではたぶん「安倍なつみwithモーニング娘。」だったのだろう。
その上、「ふるさと」の傷が癒える間もなく「ラブマシーン」の超大ヒット。
「なっちは落ち目」「後藤人気No1」などとマスコミに言われなっちは激しく傷ついたはず・・・。
でもなっちは天使の微笑みでがんばった。痛々しいほどがんばっていた。
・・・時折フッと見せるあの顔はなっちの心の悲鳴だったのだろうか。

結婚式であの顔を見たときはびっくりした。ああ、なっちは心から祝福していないんだ・・・そう思った。
つんくさんが刺されたと聞いた時、ほんのちょっと「まさか・・・なっちが?」と疑ってしまったほどだ。
今、カオリにできることはなっちの相談に乗ってあげる事だけ・・・。
なっちの心の負担を軽くしてあげれたら、どんなにいいだろうか・・・。

タクシーが止まった。
カオリは愛する彼が待つ家に返る。カオリは彼が大好きだ。彼もカオリを愛してる。
カオリだけ・・・だよね?幸せになれるよね。
玄関のドアを開けた。
「ただいまー」
380仲沢悠子:2001/07/14(土) 21:13 ID:I8MBoZ5.
― エピローグ3 安倍(1) ―

カオリに誘われて、久しぶりに2人で食事をした。
店に入った時はガラガラだったのに、帰る頃にはもう空席がなく、レジの前には若い女の子達やカップルが
10人ほど並んでいた。私達はコソコソと会計を済ませ、顔を隠すように店を出た。
外はもうとっくに日が暮れていた。
「この店、おいしかったよ。いい店知ってんねカオリ」
「でしょー。また来ようね。他のメンバーも一緒に・・・さ」
「うん・・・みんなで来たいね」
カオリは「そうだね」と言ってにっこりと私に微笑んだ。
その笑顔はまるで初めてオーデションで会った時を思い出されるような・・・カオリの笑顔。
「また連絡するね」
「絶対!絶対だよなっち!何でもいいからカオリに相談してよね!」
カオリは何度も念を押した。
そして私達はお互いにタクシーを拾い、それぞれの家路へと向かったのだった。

20分程でマンションに着き、私はベッドに横たわった。
・・・悩みか。
言えるくらいなら・・・。
『悪いなっちは存在しないもんね。くすくす・・・』
悪いなっちがまたヒョコっと心の隙間から顔を出した。
『でさ、あんた結局裕ちゃんには言えなかったんだべさ。意気地が無い奴』
「うるさいよ!・・・今となっては裕ちゃん言わなくて正解だったと思ってるよ・・・。福ちゃんの事だけで裕ちゃんは
つんくさんを刺したんだよ。もし、今回なっちが言った事で刺してたらと思うと・・・ゾッとするよ」
381仲沢悠子:2001/07/14(土) 21:14 ID:I8MBoZ5.
― エピローグ3 安倍(2) ―

あれは・・・つんくさんが裕ちゃんとの結婚報告を事務所にしに来た時の事・・・。
まことさんがいつに無く真剣な表情でつんくさんを呼び出したのをたまたま見かけた。
私は2人の後をつけた。何故だかわからないけどつけた。
階段の踊り場でヒソヒソ話していたので、私は見つからないように姿勢を低くして話が聞こえる場所に移動した。

「・・・ええんか?中澤でお前ほんまええんか?」
「だから、ええから結婚すんねん。まこっちゃん、さっきから何でそんなに怒っとんねん?」
「わかってるやろ!俺の気持ち!」
「シー!まこっちゃん声大きいて。」
「お前・・・俺の事、どないするつもりや」
「・・・もしかしてまこっちゃん、その事心配しとるんか?」
「・・・そうや」
「あんなあ、まこっちゃん・・・。お前も嫁おるやないか。でも俺なんか文句言うたか?」
「だから、俺のは完全なカムフラージュやんけ。うちは親がうるさかったし・・・まあ、美樹の事嫌いや無いで。
でも俺はお前の方が好きやねん!わかっとるやろ?」
「だから、家庭をお互い持っても今まで通り会っとけばええやん。俺は男の中ではまこっちゃんが一番好きや。
それでええんちゃうんか?」
「・・・ええけど・・・ええねんけど・・・」
「な。まこっちゃんとは今まで通り。約束する。それに仲人頼んだんも、まこっちゃんの事思てや」
「俺を思って・・・?」
「そうや。(ボソボソ)みたいに思えるやろ」
「つんく・・・!やっぱりお前は俺の事・・・!」
「当たり前やないか。あ!それよりまこっちゃん、今の気持ちをまた詩に書いたらええんちゃうか?
俺の為に書いた「こんなにあなたを愛しているのに」みたいなせつないやつ」
「お!それええかも・・・。あの歌でつんくに俺の気持ちわかってもらえたしな」

つんくさんとまことさんは・・・デキてるってこと!?うそ!
私は人の秘密を知り、なんだかワクワクした気持ちで家に帰り、さっき言ってた
「こんなにあなたを愛しているのに」の歌詞カードを見た。
382仲沢悠子:2001/07/14(土) 21:15 ID:I8MBoZ5.
― エピローグ3 安倍(3) ―

「・・・プッ!これまことさんがつんくさんの事想いながら書いたの?そう思ったらめちゃ笑えるー!」
その歌は相手に想いを伝えたいのに、伝えられないという歌詞で、なっちは不倫とかそういう系の歌だと
思っていた。(実際、不倫ドラマの挿入歌だったらしいし)
「♪こんなにあなたを愛しているのに あなたに伝える手段がない♪か。で、詩が伝える手段だったんだ」
私はケラケラと1人笑いこけた。

裕ちゃんとつんくさんの結婚には何も異議はなかった。
良かったねって感じだった。
なのに・・・どうしてだろう。結婚をぶち壊してやりたい衝動に駆られたのは。
モーニング娘。のマザーシップと言われた私を差し置いてプロデューサーと他のメンバーが結婚するから?
『それだべ!』
悪いなっちは前よりも頻繁にでてくるようになっていた。
『なっちがなんでも一番だべ!そんな結婚壊しちゃえ!!』
「できないよ・・・。そんな事」
『なっちが恋をした時みんなにすごく叩かれたのに、こっちは祝福されてるんだよ。
そんなのズルイべ!』
「・・・確かにズルイ。なっちなんかマスコミやファンにどれだけ言われたか!」
『言っちゃえ言っちゃえ!だってつんくはまことと別れる気ないんだべ?
それを聞いたらいくら裕ちゃんでも怒って婚約破棄するっしょ』
「・・・だね」

でも結局言う事はなく、式の日になってしまった。
しかも幸せそうな裕ちゃんを見たら、さすがに言えなかった。
結局・・・まことさんに言ったんだけど。
383仲沢悠子:2001/07/14(土) 21:16 ID:I8MBoZ5.
― エピローグ3 安倍(4) ―

高砂に座るつんくさんの横にはニコニコうれしそうに終始笑顔のまことさん・・・。
2人の会話を立ち聞きした時、1箇所聞こえない所があったけど、あれはたぶんこうゆうことだろう
と思い、まことさんに耳元で呟いた。

「まことさんとつんくさんの結婚式みたいですね」

図星だったのだろう。今までの笑顔はどこかへ吹き飛び、顔をピキッとひきつらせるまことさん。
わかりやすい人・・・。
写真に取られたのはこの時だったのだろう。
・・・でも私、あんな顔してたの・・・?すごく変な顔だったな。何の他意もなく言ったようにしたつもりなのに、
あんな顔で言われたら、脅しみたいに聞こえたかもしれない。
『あれは悪いなっちだべ』
「え・・・」
『だから、あれは悪いなっちの顔だべ。表に出れるようになったんだべ!』
「う・・・そ」
『まことをビビらせるように出て行ってやったべ。ぎゃはは。
もうすぐ天使のなっちはいなくなるかもしれないよ。ぎゃはははは!!』
あざ笑う悪いなっち。私は思わずベッドから起き上がった。
「そんな・・・」
1人しかいない部屋に、私のヒステリックな声が響く。
『あんたが作ったんだべ。嫉妬や悪意、そして僻み根性を誰にも知られたくないあんたが悪いなっちを
作ったんだよ。あんたは自分しか愛せない奴だべ。他人とは常に一線引いて付き合ってたべ。
そんなあんたは自分すら否定するのか?悪いなっちもなっちだべ!』
「やめてっ!!」
悪いなっちが1人歩きし出した・・・。そんな・・・。どうしよう。
その時・・・パッと見た鏡には・・・なっちだけどなっちじゃない顔が映っていた。
あの写真の顔・・・?
いやだ!怖い!私は多重人格なの?病気なの!?誰か助けて!!!
『誰も助けてはくれないよ。今まで助けてきたのは悪いなっちだべ』
「うるさいよ!!」
ああ、どうしよう。お母さんに・・・言っても帰って来いって言われるだけだ。
室蘭に帰るなんて・・・まだ東京でやり残した事があるもの・・・早すぎる。
・・・カオリ?そうだ!カオリに相談を・・・。
384仲沢悠子:2001/07/14(土) 21:17 ID:I8MBoZ5.
― エピローグ3 安倍(5) ―

そういえば「悩みがあったら言え」ってあんなにしつこく言ってたけど・・・。
悪いなっちの写真を見つけたのもカオリで・・・。まさかカオリは気づいてたのだろうか?
悪いなっちの存在に・・・。
とにかく、電話しよう。カオリになっちの悩み全てぶちまけて聞いてもらおう。
私は受話器に手を伸ばした。
カオリは家に帰っていた。そして親身に私の悩みを聞いてくれた。
4時間も話していたのに、カオリは全然嫌がらずに聞いてくれた。
それに悩みを打ち明けると、カオリは嬉しそうだった。やっと本当の友達になれたね、と言ってくれた・・・。
もっと・・・もっと早くこうしていろんな事話してたなら、悪いなっちはとっくにいなくなっていた筈なのに。
友達って・・・大事だよ。すごく身に染みたよ。
ありがとう、カオリ。カオリのアドバイス通り、私1度病院行ってみるよ!
私は受話器を置いた。なんか心が軽くなった気分だった。
そして悪いなっちの「チッ!」という舌打ちが遠くから聞こえたような気がした。
「あ・・・」
電話機の緑のランプがチカチカしているのに気づく。・・・留守電だ。誰だろう?
私は再生ボタンを押した。
「ピーッ。イッケン デス。」


「――まことです。お前・・・もし俺等の事、人に言うたら・・・殺すから」
385仲沢悠子:2001/07/14(土) 21:18 ID:I8MBoZ5.
今日はここまでです。
なっちのとこはサイコ風(?)に終わらせてみました。
1人1人結構長くなってしまいそうです。
2人か3人ずつ書くつもりなので、あと最低三回で終了ですね。
長くなってしまって本当に申し訳ありません。省くところがわかんなくって・・・。
っていうかこれでも省いてるんですけど・・・。(鬱
ではまた来週に。なるべく早くしまっす!
386名無し娘。:2001/07/15(日) 00:04 ID:qmZ2B7jk
俺、この小説の中でなっちのキャラ設定が一番好きだったのよ。

この小説ももう終わるのかぁ・・・
387名無し娘。:2001/07/15(日) 01:03 ID:C8r0.ZTU
謎解き後のほうが面白いよ、マジで。
でも痛いくらいに切ない話だな。
下品ではないが本人たちには読んで欲しくないね(w
388三村:2001/07/15(日) 09:27 ID:mKfK.OkE
おもしれーよっ!
また来週まってるよっ!
389名無し募集中。。。:2001/07/15(日) 11:46 ID:eXHdyqNk
市井の独白がどうなるのか楽しみだ
390manbo:2001/07/15(日) 17:27 ID:NrcdKdh.
私も楽しみにまっています
391eAc1Aag240.tky.mesh.ad.jp:2001/07/15(日) 23:33 ID:0V7jKD2I
s
392あ名無し娘。:2001/07/15(日) 23:38 ID:p417kjJ6
つ、続くとはおもわんかった・・・
393娘。さんだよもん:2001/07/16(月) 00:21 ID:cd24WTDg
すごく面白いっす
全キャラの後日談期待してます
がんばって下さい
394どっちの名無しさん? :2001/07/16(月) 02:36 ID:oZ1JWElE
キャラ設定とは分かっていながらも、なんかリアルで楽しめます。
仲沢さん文章上手だね。
395名無し娘。 :2001/07/17(火) 22:43 ID:TGy6pqWc
保全させていただきます。
Good Job!
396悠子さん :2001/07/18(水) 05:49 ID:tl0HlafA
楽しみで毎日見てる。
頑張って最後まで書いてくださいね
397ナナシ娘。:2001/07/19(木) 03:39 ID:ZrkzH/dg
保全
398名無し娘。:2001/07/19(木) 07:07 ID:I/90BsxI
楽しみに待っています
399名無しっ娘。:2001/07/20(金) 10:00 ID:iho3.yBg
npa
400仲沢悠子:2001/07/21(土) 18:32 ID:hzB2JyWc
400ゲット!
というわけで、明日(日曜)いきます。
401名無し娘。:2001/07/21(土) 19:22 ID:XE8t7JyI
ふうやっと更新か。
今これしか読んでいないから頑張ってね。
402(((((:2001/07/22(日) 23:07 ID:x8FDKwSo
まだ?
403仲沢悠子:2001/07/22(日) 23:53 ID:HfAxVy0.
― エピローグ4 石黒(1) ―

事務所からの帰り道、私は1人で考え事をしたくなった。
たまたまそこにあったオープンカフェに立ち寄ることにし、店に入った。
「いらっしゃいませ。お1人様ですか?」
席は目立たない奥の場所を指定し、ロイヤルミルクティーを注文した。
裕ちゃん・・・。
私は裕ちゃんの事を考えながら運ばれたポットの紅茶をカップに注いだ。
裕ちゃんは男っぽいところもあったけど・・・ペアのティーセットとかにこだわったりして、かわいかった。
「うちは人生の酸いも甘いも知ってるんやで」そう言いながら、結婚にとっても夢見ていた裕ちゃん。
夢をこんな形で失うなんてあの頃は思ってもみなかっただろうな・・・。
でも・・・まさか、愛する人を嫉妬で刺すなんて私には考えられない。
私だったらどうする?
もしお腹に子供がいなくて、結婚するのに彼が昔の女の影を引きずっていたら・・・?
「ちょっとだけ結婚生活を我慢してすぐ離婚して慰謝料がっぽりいたたく」かな?
ビックリするほどの現実主義的な答えが浮かんだ事に、私は少しおかしくなって噴出しそうになった。
でも結婚するってこうゆうことだし。
『愛』だけじゃ何も生まれない。『夢』だけでは生活できない。
裕ちゃんはつんくさんを愛しすぎたあまりにああいう事件を起こしてしまった訳だけど、たぶん結婚
していても遅かれ早かれ、ダメになっていたんじゃないだろうか?
つんくさんが明日香の事を特別に気に入っていたのは初代メンバーなら皆気づいていた。
明日香が娘。を辞めたのもそれが原因かもしれない・・・とメンバー内でも噂になっていた。
その事は裕ちゃんも知っていたはず。
「勉強がしたいから」と公言してはばからない明日香に、誰も真意を問いただす事はできなかった。
やっぱり、明日香が辞めたのはつんくさんのせいなの・・・?
ただ、今もその想いをつんくさんが引きずっていたなんて思いもよらなかった。
裕ちゃんもかなり驚いただろう。
なぜなら・・・幸せそうだったのに。
そう、あの日の2人はとても。
404仲沢悠子:2001/07/22(日) 23:54 ID:HfAxVy0.
― エピローグ4 石黒(2) ―

その日、旦那から昼間に電話が掛かってきた。
『今日の夜、お客さん連れて帰るから。カップルね。お祝いだから何か豪華な食事頼むわ』
カップルって誰なの?と聞いても「それは帰ってからのお楽しみ」と言って教えてくれない。
お祝いでカップルって事は結婚祝いなのかしら?
私は慌ててリビングを掃除し、車で買い物に出かける。
食材を買い、飾る花を後で届けてもらうように注文し、急いで家に戻った。
料理にとりかかりながら「誰が来るのかなあ?」と少しワクワクしていた。
夜8時ごろ、ピンポーンとベルが鳴る。
「連れて来たよーん」と旦那の後に立っている男性。
「夜分すんませんな」
「わぁ、つんくさん!ご無沙汰してます!・・・え?」
つんくさんの後ろにはほっそりした女性がヘヘヘという顔で立っていた。
「ゆ、裕ちゃん!?まさか・・・カップルって・・・」
驚きのあまりその場で腰を抜かしそうになってしまった。
「こいつら結婚するんだって!彩も驚きだろ?俺もマジでビックリしたよ」
つんくさんと裕ちゃんが・・・結婚?本当に!?
「黙っててごめんな。あやっぺ」
「えええ!付き合ってたの?知らなかったあ。結婚・・・するんだあ。うわあ」
「ま、そうゆう事になりましてん」
「おめでとー!とにかく、上がってよ。早く乾杯しよ!」

その日は朝まで4人で飲み明かした。
幸せそうな2人。裕ちゃんも今までで1番輝いてた。つんくさんもうれしそうだった。
偽りには・・・見えなかった。
だから私はあんな馬鹿なことをしてしまったというのに。
いつからこう、つまらない心の狭い人間になってしまったのだろうか。
私は幸せを手に入れたはず。なのに・・・なのに・・・。
405仲沢悠子:2001/07/22(日) 23:55 ID:HfAxVy0.
― エピローグ4 石黒(3) ―

大好きな歌を歌って、芝居にも挑戦して、バラエティーでも活躍して・・・。
娘。脱退後、裕ちゃんの仕事振りはとても凄かった。
人生を謳歌するってこうゆう事なのかもしれないと、ブラウン管の向こうにいる裕ちゃんを見ながら
思った。

私は自分に言い聞かせる。
自分自信で決めて、違う夢に向かって発進したんだから妬んではいけないよ、と。
あなたには優しい旦那もいるじゃない。かわいい子供がいるじゃない。暖かい家庭があるじゃない。
・・・そうよね。欲張ってはいけない。何もかも手に入らないから人生楽しいんだよね。
アイドルの地位を蹴って奥さんとお母さんになった。
でも、私のもう1つの夢、デザイナーにはなれなかった。
娘。の服をデザインしたかった。できると思っていた。・・・でも現実は甘くはない。
事務所に今の旦那との熱愛がバレて仕事と恋愛どっちをとるか決断を迫られた時、もう娘。でやり残した事
はなかったから恋愛を選択した。娘では完全燃焼したから。
そして私はもう1つの夢、デザイナーにも賭けてみたかった。
強く願えばそれは現実に叶うと思ったから。娘。のように。
子育てで忙しく、毎日が過ぎていく。私はもがき苦しむ。
テレビを見ると昔の仲間がスポットライトを浴び、たくさんの人から愛されている・・・。
一度経験したあの快感はそう簡単に忘れる事が出来ない。
今まで何人の歌手や女優が結婚し引退したのに、また芸能界へ舞い戻って来たのだろう。
でも私は多くを求めない。
いろんな事を同時に両立させるほど、器用じゃないから。
今はいい妻いい母として頑張っていくしかないのだから・・・。
そんな私の思いをぐしゃぐしゃに踏み潰されたような気がした。
裕ちゃんのとても幸せそうな顔がとても憎らしく見えた。
だって、歌手で女優で世間からも祝福されて世界一の幸せな花嫁になって子供を産んで家庭を作って・・・。
406仲沢悠子:2001/07/22(日) 23:56 ID:HfAxVy0.
― エピローグ4 石黒(4) ―

ただ裕ちゃんが羨ましかった。
何もかも手に入れていく裕ちゃんが・・・。
裕ちゃんは私よりも多くの物を掴んでいく。妬ましい。
わかってる!私が選んだ道なのに妬むなんておかしい事ぐらい!
小さな悪戯してもいいよね?ちょっとぐらい不快な思いさせてもいいよね・・・?

刑事さんには事情聴取の時、正直に言った。
「私はつい、出来心で嫌がらせの祝電を送りました」

『兜森』という名を使って、弔電みたいな文の祝電を送ったのは私。
まさか、読まれるとは思っていなかったけど。
ホテルでは電報をチェックし、ああゆう電報があると絶対に渡さないらしいけど、今回は電報の数も
半端じゃなかったようなので、間違いで混じってしまったのだろう。
本当はつんくさんの自宅に送るつもりだった。それなら必ず目を通すだろうから。
でも直前になってホテルに送ったのは何だか少し怖くなってしまったから。
嫌な女・・・。
私ってもっとサバサバしてたはずなのに。やる事もちっこくて笑っちゃうわ。
「はぁ」
深い深い溜息をついた。
裕ちゃん、ごめんね。素直に祝福してあげられなくて。
平凡で刺激の無い毎日が嫌だった。それを人のせいにしてた。
でもそんな平凡が幸せだった事に気づいたよ・・・。
早く家族の待つ家に帰ろう。温かい家に。

私は新しい夢を考えながら家路を急いだ。
かっこいいお母さん、かっこいい奥さん。
こう呼ばれたいのが今の私の、夢。
407仲沢悠子:2001/07/22(日) 23:58 ID:HfAxVy0.
次書いたのですが、気に入らないので書き直して明日にします。ごめんなさい。
しばし、お待ちを・・・。
408名無し娘。:2001/07/23(月) 00:29 ID:1Q/pOqNU
仲沢さん、お疲れ様です。マジファソには辛いけど、娘。のダークサイドを
うまく描いていると思います。
409名無し娘。:2001/07/23(月) 00:45 ID:.I4WAg8E
今日の「堂本兄弟」中澤がゲストだったんだけど、
ここの内容(特に安倍エピローグ)思い出して
素直に見られなかった(笑)
410名無し娘。:2001/07/23(月) 01:38 ID:ijReD7/s
前々から思ってたけど仲沢さん、ヲタ歴長いねぇ・・・って、仲沢悠子を名乗ってるから当然か(藁
ほんといい小説だよ・・・


堂本兄弟のゲストだったってマジ?!・・・誰か事務所に言ってくれよ。鬱だ
411名無娘。 :2001/07/23(月) 03:54 ID:.tMGoI3A
最初から一気に読んだら時間かかったぁ
でもおもしろ。
412名無し娘。:2001/07/23(月) 04:04 ID:6.QIIxbg
祝電への伏線って>>24だけ?
413仲沢悠子:2001/07/23(月) 22:52 ID:0HqJ4ZOY
― エピローグ5 保田(1) ―

刑事さんの話が終わった後、私はダメ元で、サヤカに「久々に家に来ない?」と誘った。
「別に、いいけど」
と、そっけない態度だったが、サヤカは同意してくれた。
ごっちんも誘おうかと思ったけど、社長に呼び出されていたので私は先に出て行ったサヤカの後を
追ったのだった。

正直、今日事務所にサヤカが現れた時はびっくりした。
一応メールでその旨を伝えたのは私だけど、サヤカはもう私たちの前に顔を出さないんじゃないか、と
思っていたからだ。
「サヤカ・・・。今日は来てくれてありがとね。来づらいかなぁと思ったんだけど・・・。
この間の事もあったしさ」
「別に、圭ちゃんにお礼言われる筋合いは無いよ。アタシはこの事件にちょっと興味があっただけ」
クールな表情で淡々と話すサヤカ。
でもそんなサヤカもさすがに、さっき事件の全貌を知った時悲しみを押し殺している表情をしていたのを
私は見逃さなかった。
タクシーを拾い、私のマンションに向かう。
そこに到着するまでの間、他愛の無い会話でお茶を濁した。
本当はサヤカにいろいろ聞きたかった。
今までどういう生活をしてきたのか。そしてこれからどうするのかを。
でもこの間、ホテルからサヤカに出て行って貰おうとした時、私が言った言葉。

「全てを知る事になんの意味があんの?知らない方がいいことが、世の中にはたくさんあるんだよ」

そう言ってしまった手前、私がいろいろ詮索するのはまた、サヤカを怒らせることになりそうなので
言葉を飲み込んだ。
414仲沢悠子:2001/07/23(月) 22:55 ID:g6jU5LVs
― エピローグ5 保田(2) ―

「さあ、上がってよ。ちょっと散らかってるけど」
足の重いサヤカの背中を押し、部屋に招き入れた。
そしてテーブルとベッドの間まで連れて行った。
サヤカはベットにもたれかかるようにして、ラグマットの上に腰を下ろした。
「お茶でいーい?」
私が狭いながらもキッチンと呼ばれる場所から声をかける。
「っていいながら、お茶しかなかったりして」
とお盆にグラス2つとベットボトルを乗せ、部屋の真ん中にある小さなテーブルに持っていった。
サヤカの対面に座りコポコポとグラスにお茶を入れる。
たまにボゴッという音を立て、ペットボトルから茶色い雫がテーブルに飛んだ。
「はいどうぞ」
お茶の入ったグラスをサヤカの前に置くと彼女は「ありがと」と小さくお礼を言った。
私は自分の分を注ぎながら、サヤカに話し掛けた。
「あのね、サヤカ。私決めた事があるの。・・・聞いてくれる?」
「・・・何?」
サヤカは興味無さ気に爪をバチンパチンと弾いていた。私は構わず話を続けた。
「人間っていつかは死ぬんだよね・・・。病気とか事故とかで明日死んじゃうかもしれない。
つんくさんが死んで・・・それを強く感じた。
で、決めたの。私はマネージャーなんかやらない!
音楽に携わる仕事を・・・それが裏方で日の目を見なくても・・・やりたいの!
・・・だからやめるわ。事務所」
サヤカは私の最後の言葉にピクッと肩をかすかに反応させ、チラと顔を上げ私を覗き込むように見ながら、
「・・・やめたって何もないよ」
とポツッと言い1度止めた爪を弾く仕草をまた始めた。
「そうかもしれない。でも音楽に携われるなら芸能界でなくってもいいじゃない?
お母さんのカラオケ教室継いでもいいって思ってる。・・・私、歌ってるだけで幸せなんだ」
サヤカは返事をしてくれず、ただつまらなそうに床を見つめていた。そして、言った。
「圭ちゃんは・・・そんな夢みたいな事まだ言ってんの?」
415仲沢悠子:2001/07/23(月) 22:56 ID:g6jU5LVs
― エピローグ5 保田(3) ―

「え・・・」
「そんな甘いもんじゃないよ。世の中は。私だって・・・」
サヤカはいきなりその場に立ち上がった。
今にも私に掴みかかろうかという雰囲気だったので、思わず私は肩をすくめた。
「アタシ、後悔してるんだよ!自分1人じゃ何も出来ないんだよ!ちょっと有名になったくらいじゃ何も
出来ないんだよ!!」
サヤカの拳は強く握られ、プルプルと震えていた。
全身からすごいエネルギーを放出させ、そのエネルギーは怒りから来るものだと見て取れた。
私は怯えた目でサヤカを見ていた。
「1度栄光を掴んだ者が、そんな誰にも聴いてもらえないのに、歌ってるだけで幸せだ、なんて・・・。
圭ちゃん後できっと後悔する!アタシは断言できるよ」
サヤカの瞳が薄っすらと濡れているように見える。
フーっとサヤカは自分を抑えるかのごとく息を整えた。そして落ち着いた口調で言った。
「・・・マネージャー断るのは賛成。でも事務所やめちゃダメだよ。
音楽に携わる仕事なら、事務所のミュージックスクールの講師とかさせて貰いなよ。
チャンスがまた巡ってくるかもしれないし。
とにかく、事務所やめていいことなんか1つも無いよ。時期を急いでいい事なんか1つもないよ」
「・・・サヤカ・・・」
私はサヤカを見上げた。そこには私を心配してくれる友人の顔があった。
あの頃のサヤカの顔が。
私は思い切って聞いてみる事にした。
「・・・ねえ、サヤカ。一体これまでに何があったの?サヤカはなんでそんな風に・・・」
「アタシ帰るわ・・・」
自分のバッグを鷲掴みにし、玄関の方へ足早に去ろうとするサヤカ。
そんなサヤカを私は追いかけ、引き止める。
416仲沢悠子:2001/07/23(月) 23:01 ID:I9utZSkg
― エピローグ5 保田(4) ―

「ちょっと待ってよ。ねえサヤカ」
私はサヤカの左手を引っ張っていたが、既にサヤカの右手は玄関のドアノブを持ちドアを半分
引き寄せ、向こうには共有廊下が見えていた。
「離して!」と抵抗するサヤカに
「だって・・・」
と必死で腕を掴んで離さない私。
すると急に抵抗をやめたサヤカが私を見据えた。そして
「圭ちゃん。この間言ったでしょ?全てを知る事になんの意味があんの?
知らない方がいいことが、世の中にはたくさんあるんだよって。だから・・・アタシは言わない」
と言った。私は1つの言葉も出ない。
「1人になりたんだ。ごめん、帰らせて」
私は気持ちとはうらはらにサヤカの細い腕を離すしかなかった。
「アタシさぁ・・・」
背中越しにサヤカはこう言った。
「もう、昔の私じゃないし、昔の私には戻れないけど圭ちゃんの事は応援しつづけていく・・・から。
圭ちゃんが私の夢叶えてくれたらいいのにって思ってるから・・・」
サヤカは1度も振り向かずに、部屋を出て行った。ばたんとドアが閉まり部屋には静寂が戻った。

玄関に残された私はそこにしゃがみこんだ。
私の目からは大粒の涙がボロボロと流れ落ちた。
何故だろう。もうこのままサヤカと会えないのでは?という予感が頭をよぎった。哀しい予感だった。
なのに黙ってサヤカを見送るしかなかった。「追いかけて来ないで」とサヤカの背中が、私を拒絶していたから。
「サヤカ・・・」
私の仲間。
歌について熱く語り合った仲間。
辛い時を一緒に乗り越えた仲間。
この時モーニング娘。は解散していたけれど、私の中で今、本当にモーニング娘。が終わった気がした。
417仲沢悠子:2001/07/23(月) 23:02 ID:I9utZSkg
― エピローグ5 保田(5) ―

1人になった部屋で、私は考えていた。
あの写真・・・。結婚式の写真を変な風に撮ったのはわざとだった。
裕ちゃんだけが幸せになるなんて・・・許せなかった。精一杯の嫌がらせだった。
・・・ごめんね。裕ちゃん。私、心に余裕がなかったんだ。裕ちゃんの事大好きなのに。

あの時の私は妬みが服を着て歩いているようなものだった。
「圭ちゃんは仕切るの上手だし、マネージャーに向いている」とつんくさんに言ったのは裕ちゃんだった。
それをつんくさんが社長に言い、私は和田さんの所に修行に行くように、と告げられたのだ。
もしかすると・・・裕ちゃんなりの優しさだったのかもしれない。
娘。解散後、行き場の無い私を心配し、芸能界に残っていられるように・・・。
でもそれはただの有難迷惑だった。
私には芸能界に未練は無い。ただ歌に携わっていたいだけ・・・。
だからってあんなつまんない事してしまうなんて。私は今猛烈に後悔してる・・・!

ずっと私の胸にサヤカの言葉がずっとリフレインしている。
聴いて貰えない歌を歌う事がはたして幸せなのか・・・?
事務所に残ってチャンスを待ったほうがいいのか・・・?
私にサヤカの夢を叶える事ができるのだろうか。
「世の中は甘くない・・・か」
きっとサヤカは事務所を辞めて、理不尽な思いをたくさんしたのだろう。それを私に教えてくれたんだ。
同じ失敗はして欲しくないって。だから・・・時期をみよう。きっとチャンスが来るはずだもの。
サヤカ、そして裕ちゃん。私がんばるよ。絶対がんばるから!!

カタカタ・・・私はPCを立ち上げ、毎日の日課、メールのチェックをする。
「あっ、和田さんからだ」

件名:デビュー
演歌歌手としてデビューの話が持ち上がりました。
明日事務所にP.M3:00来て下さい。   和田
418仲沢悠子:2001/07/23(月) 23:03 ID:I9utZSkg
今日はこれで終わりです。次は後藤ともう1人誰かです。
早く書き上げたいです。

>>412
伏線少なかったですね。言われて気づいた・・・。
祝電送った事に関しては、>>48でちょっと触れてたりするのですが・・・。
419名無し娘。:2001/07/24(火) 00:16 ID:rynsxgM2
お疲れ様です。
盗聴女?が誰かわかって無いのは俺だけか?
420名無し娘。:2001/07/24(火) 03:09 ID:LNyAxa82
>>419
多分。さすがに、それは途中で分かったぞ。
421名無し娘。:2001/07/24(火) 03:47 ID:J2h44zI2
>>420
わからん・・・鬱だ
422娘。さんだよもん:2001/07/24(火) 06:40 ID:fuoJovP6
>>419
あの時点で登場してないメンバーは誰?

>仲沢さん
いつもすごく面白いです。
後日談はメンバーへの思いを拾い上げていってるみたいで読んでて嬉しいです。
続き待ってます。
423名無し娘。:2001/07/26(木) 01:46 ID:4rCBR5lc
保全
424名無し娘。:2001/07/27(金) 00:16 ID:6TgjIOzc
保全
425ぼかあねえ:2001/07/27(金) 00:18 ID:n/Vu4WNc
>>424
ヲイヲイ
426名無し娘。:2001/07/27(金) 21:22 ID:6aTpLNd6
(`.∀´)<マネージャーなんかで終わらないわよ!!!
427仲沢悠子:2001/07/28(土) 00:47 ID:e8ykizXw
土か日に書きます。
428名無し娘。:2001/07/28(土) 02:29 ID:aPAlNI7E
たのしみ、たのひみ。
429ナナシ娘。:2001/07/29(日) 04:04 ID:LfRQdbuY
保全
430三村:2001/07/29(日) 19:27 ID:ueNkn8ec
まだかよっ!
431名無し娘。:2001/07/29(日) 22:12 ID:fc7cJfVQ
おーい!
432仲沢悠子:2001/07/29(日) 23:25 ID:bEjz.h/.
更新夜中になります。
お待ちください・・・。
433名無し娘。:2001/07/29(日) 23:50 ID:TK/ImMmA
>>432
はーいっ。
がんばって。
434仲沢悠子:2001/07/30(月) 02:52 ID:mA/PkOqI
― エピローグ6 後藤(1) ―

せっかく市井ちゃんと話したかったのに、社長に呼び出されたから一緒に帰れなかった。
久しぶりに会ったあの日、市井ちゃんはみんなから冷たい目で見られていた。
後で圭ちゃんに何があったのか聞いても何も教えてくれなかった。
圭ちゃんが市井ちゃんと連絡取り合ってるなんて知らなかったし、その事はやぐっつぁんもショックを
受けてる感じだった。もちろん私もショックだったけど。
ちょっと近寄りがたい雰囲気になっていた市井ちゃんだったけど、私には大好きな市井ちゃんだった。
あーあ。話したかったな・・・。
マネージャーに送ってもらう車の中で、私はずっと市井ちゃんの事を考えていた。

「明日は15時に迎えに来るから」
マネージャーはそう言って、帰っていった。
「ただいまー」
玄関に入ると、ユウキがどこかに出かけようとしていた。
「あ、姉ちゃん。おかえり」
「ユウキ・・・?どっか行くの・・・?」
「・・・姉ちゃん、事務所行ってきたんだ。みんな来てた?」
「うん・・・。」
「俺、ちょっと出かけて来るから」
「あっ、ちょっと待・・・」
私の言葉を無視し、どこに行くのかを教えてくれないまま、深くキャップをかぶったユウキは行ってしまった。
ずっと落ち込んでたユウキだったけど・・・遊びに行く元気がでてきたのかな?
裕ちゃんからのみんなに一言宛てた手紙の事、話そうと思ってたのに・・・。
ま、あとでいいか。
私は自分の部屋に行き、楽な服装に着替えた。
脱いだジーンズがアコーディオンのようになっている。面倒くさいのでそのままにしておくのは毎度の事。
おもむろに私は勉強机の1番上の引出しをあけた。
そしてグリーンのかわいい封筒を取り出した。
435仲沢悠子:2001/07/30(月) 02:53 ID:mA/PkOqI
― エピローグ6 後藤(2) ―

表には女の子らしい文字で『後藤真希様☆』と書かれていた。
裏には『真希ちゃんファンより』とある。
中の便箋を出す。それは薄っぺらい一枚の紙。
今から4ヶ月程前に送られてきたもの。
「一体誰からだったんだろう・・・」
切手の貼られていないその手紙は家に直接投函されたものらしい。
最近は減ってはいたけど、悪戯が多いのでいちいち読んだりしないようにしていた。
小包は絶対開けない。(何が入ってるかわかんないし事務所からもきつく言われた)
写真が入ってそうな手紙も開けない。(やらしい写真が入ってた事があったから)
でもあまりに薄っぺらいその手紙は私の心を惹いた。差出人が書いていない事は気になったけど。
剃刀なども入ってない感触だったから、私はその手紙の封を切った。
そこにはかわいい文字が綴られている。文面を読みながら私の顔色が変わっていくのが自分でもわかった。
「・・・うそでしょ・・・?」

『真希ちゃんの弟のユウキ君は中澤さんとつきあってるよ。
でも中澤さん、つんくと結婚するんだよね。ってことは中澤さん二股だね。
ひどい事する人は嫌いだし、真希ちゃんの弟が悲しい思いをしているので
手紙に書きました。
信じて貰えないかもしれないけど本当です!1度確かめてみては?
                              真希ちゃんファンより

P.S モーニング娘。解散は残念だけど、真希ちゃんのこと応援し続けるよ☆』

変な手紙だと思った。やっぱり悪戯かよって思った。
ユウキと裕ちゃんなんてまさか・・・。だって裕ちゃんはつんくさんと結婚するんだよ!?
歳もそーとー離れてるしありえないよ・・・。
とは思ってはみたものの、ふと気にかかる事があったのを思い出した。
最近元気の無いユウキ。裕ちゃんの結婚式に絶対行かないと言い張るユウキ・・・。
まさか・・・?
436仲沢悠子:2001/07/30(月) 02:54 ID:mA/PkOqI
― エピローグ6 後藤(3) ―

裕ちゃんとユウキが付き合ってるなんて絶対信じられなかったけど、なんとなく気になった私は
できるかぎりユウキの行動に気をかけていた。
手紙の差出人が誰だかわからないのに信じるなんてどうかしてたかもしれない。
ただ、ユウキの落ち込み様は今まで一緒に育ってきた中で見たことも無い姿だったから、
もしかして・・・と思わざるを得なかった。
ユウキに直接聞いてみるしかないのかな・・・。
もしそうだと言われても私はどうすればいいのかわからない。
それに本当にそうだったとすれば私はきっと裕ちゃんを憎むだろう。
つんくさんとの結婚だってあんなに祝福してあげたのに・・・。
それがあんな幸せそうにしておいて、私の弟にひどい仕打ちをしてるんだよ?
今までそんなに弟をかわいいだとか思った事なくて、むしろウゼーッって思ってたくらいだったけど、
もしユウキがひどい扱いうけて落ち込んでるのなら、私は家族として許せない。
絶対許せないよ・・・!
でも、この手紙の内容が本当だとは限らない。
だから私は結局ユウキに聞けず、暗いユウキを見守る事しか出来ないまま日は過ぎていった。

1ヶ月程経ったある日の夜、私が仕事から帰ってくるとユウキが出かける用意をしていた。
落ち込んでいたユウキはどこにいったのかというほど、弟はウキウキしていて上機嫌だった。
玄関でスニーカーを履いているユウキの後姿に私は聞いた。
「なんか、いい事あった?」
振り向いたユウキは満面の笑顔でこう言った。
「へへ・・・ちょっとね」
外に出て行くユウキ。
あの笑顔・・・。まさか。もしかして?
なんとなくピンときた私は慌てて靴を履いた。そしてユウキの後をそっとついていくことにした。
437仲沢悠子:2001/07/30(月) 02:55 ID:mA/PkOqI
― エピローグ6 後藤(4) ―

大通りでタクシーに乗り込むユウキ。
私もうまいこと少し後ろを走っていたタクシーをつかまえ、「あの、タクシーを追って下さい」と言った。
ユウキは一体どこへ・・・?
しばらく走った時、見覚えのある景色に気づいた。
この道って・・・歌の練習に行った事のある・・・そうあの人のスタジオがある場所に向かってる?
もしそうだとすればユウキはもうすぐ車を降りるかも・・・。
私はすぐに清算ができるように財布を出しておこうと、バッグに手をつっこんだ。
固い感触が手に触れた。
バッグには財布の他に、最近凝っているデジカメが入っていた。
娘。としての活動もあとわずかだったので、記念にたくさん写真を取ろうと持ち歩いていたのだった。
何か撮れるかもしれない・・・。
私は財布とデジカメをバッグから取り出しておいた。
その時、前のタクシーがハザードをつけた。
「どうします?」
運転手さんに言われ「私も降ります」と言った。
やっぱりユウキは・・・。
閑静な住宅街をいそいそと歩いていくユウキ。
私も後をそーっとついていく。
たぶん、普段だったらバレバレの尾行だっただろう。
でもユウキは全然私に気づかない。もう、周りが見えないほど浮き足立っているようだった。
大きな家の前でユウキは立ち止まった。そして門の前に行った。
外灯がパッとついた。人が敷地に入るとセンサーが反応して外灯が点くようになっているのだ。
「泥棒避けや」とつんくさんが言っていた・・・。
私はカメラを思いっきりズームにしてユウキの姿を追った。
今のデジカメは多少暗くてもたいがいのものは写る。外灯の明かりだけが頼りなのは間違いないけど。
PCに取り込んで、明るくする事も可能なのだ。
ユウキがつんくさんの家に入っていく姿を、私は何度もシャッターを切っていった。
438仲沢悠子:2001/07/30(月) 02:55 ID:mA/PkOqI
― エピローグ6 後藤(5) ―

「やっぱり・・・ユウキと裕ちゃんは・・・」
帰りのタクシーの中、あの手紙の内容が本当だった事を知った。ショックだった。
私は知っていた。
つんくさんは今、日本にいない事を・・・。2泊3日で海外に仕事で行ってることを。
つまり、今家にいるのは裕ちゃん。この間引っ越したって聞いた。
ユウキと裕ちゃん・・・。そんなの信じられないよ。
でも・・・。今日のユウキの笑顔。ユウキがよければそれでいい・・・かも。
ユウキが割り切って付き合ってるなら、私がとやかく言うことじゃないかもね。
家に着いた私は、「何してたんだろ」って思った。
そして、ユウキの笑顔を思い浮かべ「これでいいならいいじゃん!」って感じになった。
つんくさんもかわいそうだけど・・・私の心に閉じ込めておこう。
この事で気を揉むのは今日で終わりにしよう。
私は軽くシャワーを浴びて、寝る事にした。
でも、なんだか探偵モドキの事をしたからか、なんだか興奮して眠れなかった。

バタンッ。
夜中の3時ごろだっただろうか。
隣にあるユウキの部屋のドアが閉まった。
「帰ってきたんだ・・・」
そういえば喉も渇いたし、お茶飲むついでにユウキに声を掛けようと思って、ベッドから抜け出した。
ユウキの部屋の前に立つ。「ユウ・・・」
「・・・ひっく、・・ウグッ・・・・・・・・・ヒック」
ユウキが声を殺して泣いているのが聞こえた。
「ユウキ!!」
私は部屋のドアを開け、赤い目をして泣いている弟の元へ駆け寄った。
「姉・・・ちゃん・・・。・・・ウッ・・・ヒック」
今目の前にいるユウキと、幼い頃近所の子にいじめられて泣いていたユウキの姿と重なった。
「どうしたの!ユウキ!姉ちゃんに言いなさい!何があったのよ!?」
439仲沢悠子:2001/07/30(月) 02:56 ID:mA/PkOqI
― エピローグ6 後藤(6) ―

ユウキはずっと裕ちゃんが好きだった。
思い切って裕ちゃんに告白もした。裕ちゃんははぐらかしてばっかりいた。
でも一回りも歳下の男の子から告白されて、困っていたのかもしれない。
傷つけちゃいけないって思ったのかもしれない。
何度か2人で会ったりしていたそうだ。その時はHな事はしていなかったみたいだけど・・・。
でも結局裕ちゃんはつんくさんと結婚する事になった。
ユウキはとても大きなショックを受けた。
そう、ここまでは私もユウキの片想いって事でしょうがないって思えるよ。
でも・・・つんくさんが留守の日、裕ちゃんはユウキを呼び出した。
そして・・・。

裕ちゃんがユウキにした仕打ちを私は許せなかった。
デジカメで撮った写真をマスコミに流そうとまでしていた。
ただ、マスコミに流すとユウキだってばれちゃ困るし・・・。つんくさんもかわいそう・・・。
そして私が思いついたのは、結婚はさせる。
派手な結婚式を挙げさせておいて、すぐに離婚できないようにする。
そして天国から地獄へ一気に落とすように写真をネタに裕ちゃんを強請る。
ユウキが苦しんだ期間、裕ちゃんにも苦しんでもらおう。
もちろん、私は表に出ない。誰かに強請る役をやってもらうんだけど。

私は結婚式までこんな事をずっと考えていた。ユウキの変わりに私が復讐しようって。
でも・・・そんなバカな事しなくてよかった。
ユウキが私に変装して写真に写っているのを発見した時は、心臓が止まるかと思った。
まさかユウキがつんくさんを嫉妬のあまり刺したのかって。
そんなに裕ちゃんを愛していたの?って。
人を刺すという行為はいけないことだと思う。
でも私みたいに下衆な考えじゃなく、純粋に思うからこそつんくさんを刺したんだ・・・。
私が強請るなんて考えじゃなくて、直接裕ちゃんに文句を言っていたら・・・と後悔した。
だから私はユウキをかばって、「私がやった」と言ったんだ・・・。
440仲沢悠子:2001/07/30(月) 02:57 ID:mA/PkOqI
― エピローグ6 後藤(7) ―

そして、真実はもっと純粋なものだった。
ウェディングドレスの裕ちゃんを1目見たかったユウキ・・・。
さらに、つんくさんを刺してしまった裕ちゃんを目撃し、それをかばったユウキ・・・。
ユウキの事、姉ちゃんは何もわかってなかったね。
ごめんね。ユウキ・・・。そしてゴメンね、裕ちゃん。裕ちゃんもつらかったんだね。

グリーンの便箋を見つめながら私は机の前にずっと立っていた。
思えば、この手紙が始まりだった・・・。
誰なんだろう。
この手紙の送り主。
私の家を知っている人。
ユウキと裕ちゃんの関係を知っている人。
一体・・・誰?
何気なく、封筒を鼻の近くに持っていった。クンクンと匂いをかいだ。
無臭だった。
無臭だったけどなんだろう。
「いちーちゃんの匂い・・・?」
441仲沢悠子:2001/07/30(月) 03:00 ID:mA/PkOqI
うまく文章がまとまらない!
もういっぱいいっぱいです。でもがんばります。
ユウキと裕ちゃんに何があったかはユウキ編で・・・。
次、水曜ぐらいにはいきます。
442あ名無し娘。:2001/07/30(月) 03:01 ID:aTeGhH0o
ごくろお
443名無し娘。:2001/07/30(月) 03:27 ID:ovxOx2fA
仕事柄、小説の持ち込み原稿読む機会あるんですけど、
仲沢さんクラスはなかなかいませんよ、実際。
444どっちの名無しさん?
なんかいい!