春が過ぎて 夏が来ました。
葉っぱの、のんちゃんは、この春
大きな木の梢に近い、太い枝に生まれました。
そして夏にはもう、厚みのある、立派な体に成長しました。
五つに分かれた葉の先は、力強くとがっています。
のんちゃんは、数えきれない程の葉っぱに、とりまかれました。
はじめのんちゃんは、葉っぱはどれも自分と同じ形をしていると思っていましたが、
やがて、ひとつとして、同じ葉っぱはない事に、気が付きました。
隣の吉澤、右側のアイボン、すぐ上の石川。
みんな春に生まれて一緒に大きくなりました。
春風に誘われて、クルクル踊る練習をしました。日光浴の時は、
じっとしているのがよいと言う事も覚えました。
夕立ちが来ると一斉に雨に体を洗って貰いました。
のんちゃんの親友は、飯田です。
誰よりも大きくて昔から居るような顔をしています。
考える事が好きで物知りでした。飯田はのんちゃんに色々教えてくれました。
のんちゃんが葉っぱだと言う事。木の根っこは地面の下にあって、見えないけど、
四方に張っていて、だから木は倒れない事。目の下にあるのは公園で、おはよう
と挨拶に来るのは小鳥達である事。月や太陽や星が、秩序正しく、空を周ってい
る事。そして巡る季節など、みんな飯田が教えてくれた事です。
4 :
名無し娘。:2001/04/29(日) 17:47 ID:4/HA6vO.
さらし
のんちゃんは「葉っぱに、生まれてよかった」と思うようになりました。
友達はたくさんいるし、見晴らしはよいし、枝はしなやかだし、その上、
風通しも日当たりも申し分無く、お月様は銀色の光で照らしてくれるからです。
夏になると、のんちゃんは、ますます嬉しくなりました。お日さまが早く昇って、
遅く沈むのでたくさん遊べます。カンカン照りの暑さは、なんて気持ちがよいの
でしょう。夜になっても、昼間の暑さが残っているのですから、のんちゃんは気持ち
がよくて、夢を見ている気分です。
公園に木陰を求めて、大勢の人がやってきました。飯田は立ち上がり
「さあ、体を寄せて、みんなで影を作ろう」と呼びかけました。
のんちゃんは飯田に、たずねました。「どうしてそんな事をするの?」
すると飯田は「暑さから逃げ出してきた人間に、涼しい木陰を作って
あげると、みんな喜ぶんだよ」と言いました。飯田の言った通りでした。
木陰にお爺さんやお婆さんが、集まって来ました。子供達も来した。お弁当を
広げる人も居ます。のんちゃん達は、葉っぱをそよがせて、涼しい風を送って
あげました。
「のんちゃん、これも葉っぱの仕事なんだよ」飯田の話を聞いてのんちゃんは
ますます嬉しくなりました。老人達は木陰からでないで小声で、昔の思い出を
話しているようです。子供達は、木に穴を空けたり、名前を彫ったり、いたずら
もするけど、笑ったり走ったり、生き生きしています。
けれど、楽しい夏は駆け足で通り過ぎていきました。たちまち秋になり、十月の
終わりのある晩、突然寒さが襲って来ました。
のんちゃんも、仲間の吉澤も、アイボンも石川も、ブルブル震えてました。
みんなの顔に、白く冷たい粉の様なものが付きました。朝になると、白い粉は溶けて
雫がキラキラ光りました。
「霜が来たのだ」と飯田は言いました。
もうすぐ冬になる知らせだそうです。緑色の葉っぱ達は一斉に紅葉しました。
公園は丸ごと虹になったような、美しさです。吉澤は濃い黄色に、
アイボンは明るい黄色に、石川は燃えるような赤、飯田は深い紫色に……
そしてのんちゃんは、赤と青と金色の三色に変わりました。
何て見事な紅葉でしょう。
一緒に生まれた、同じ木の、同じ枝の、どれも同じ葉っぱなのに、どうして違う
色になるのか、のんちゃんには不思議でした。
「それはね――――」飯田が言いました。「生まれた時は同じでも、居る場所が
違えば、太陽に向く角度が違う。風の通り具合も違う。月の光、星明かり、一日
の気温、何一つ同じ経験はないんだ。だから紅葉する時、みんな違う色に変わって
しまうのさ」
風が変わったのはその時でした。
夏の間、笑いながら一緒に踊ってくれた風が、別人の様に、顔を強張らせて、
葉っぱに襲い掛かってきたのです。葉っぱは堪え切れずに吹き飛ばされ、
巻き上げられ、次々と落ちていきました。
「しばれるべ」「こえー」葉っぱ達は怯えました。そこへ、風の唸り声の中から
飯田の声が、途切れ途切れに、聞こえてきました。
「みんな、引越しをする時なんだよ。とうとう冬が来たんだ。私たちは
一人残らず、ここから居なくなるんだ」
のんちゃんは悲しくなりました。ここはのんちゃんにとって、居心地のよい
夢の様な場所だったからです。
「私もここから居なくなるの?」
「そうだよ。私たちは葉っぱに生まれて、葉っぱの仕事を全部やった。
太陽や月から光を貰い、雨や風に励まされて、木の為にも人の為にも
立派に役割を果したのさ。だから、引っ越すのだよ」と飯田は、答えました。
「飯田さんも引っ越すの?」とのんちゃんは尋ねました。
「私も引っ越すよ」
「それはいつ?」
「私の番が来たらね」
「私は嫌だ!私はここにいるよ!」とのんちゃんは、大声で叫びました。
吉澤もアイボンも石川も、その時が来て、引っ越していきました。
見ていると風に逆らって、枝にしがみ付く葉っぱもあるし、あっさり離れる
葉っぱもあります。やがて木は葉っぱを落して、裸同然にになりました。
残っているのは、のんちゃんと飯田だけです。
「引っ越しするとか、ここから居なくなるとか、飯田さんは言っていたけど
それは―――――」とのんちゃんは胸がいっぱいになりました。
「死ぬ…と言う事でしょ?」
飯田は口を堅く結んでいます。
「私、死ぬのが怖いよ」とのんちゃんが言いました。
「その通りだね」と飯田が答えました。
「まだ経験したことが無い事は、怖いと思うものだ。でも考えてごらん。
世界は変化し続けているんだ。変化しないものは、一つもないんだよ。
春が来て夏になり秋になる。葉っぱは緑から紅葉して散る。
変化するって自然な事なんだ。のんちゃんは春が夏に変わる時、怖かった?
緑から紅葉する時、怖くなかったろう?私達も変化し続けているんだ。
死ぬというのも変わる事のひとつなのだよ」
変化するって自然な事だと聞いて、のんちゃんは少し安心しました。
「この木も死ぬの?」
「いつかは死ぬさ。でも【いのち】は永遠に生きているのだよ」と
飯田は答えました。
葉っぱも死ぬ、木も死ぬ。そうなると、春に生まれて冬に死んでしまう
のんちゃんの一生には、どういう意味があると言うのでしょう。
「ねえ、飯田さん。私は生まれて来てよかったの?」とのんちゃんは尋ねました。
飯田は深く頷きました。
「ウチらは、春から冬までの間、本当によく働いたし、よく遊んだね。まわりには
月や太陽や星がいた。雨や風もいた。人間に木陰を作ったり、秋には鮮やかに紅葉
してみんなの目を楽しませたりもしたよね。それはどんなに、楽しかった事だろう。
それはどんなに、幸せだった事だろう」
その日の夕暮れ、金色の光の中を、飯田は枝を離れていきました。
「さようなら、のんちゃん」
飯田は満足そうな微笑みを浮かべ、ゆっくり、静かに、居なくなりました。
のんちゃんは一人になりました。
次の朝は雪でした。初雪です。やわらかで真っ白でしずかな雪は、じんと冷たく
身にしみました。その日は一日中どんよりした曇り空でした。日は早く暮れました。
のんちゃんは自分の色が褪せて枯れてきたように思いました。
冷たい雪が重く感じられます。
明け方のんちゃんは迎えに来た風に乗って枝を離れました。
痛くもなく、怖くもありませんでした。のんちゃんは、空中にしばらく舞って、
それからそっと地面に降りてきました。
その時初めてのんちゃんは、木の全体の姿を見ました。何てがっしりした、たくましい
木なのでしょう。これならいつまでも生き続けるに違いありません。のんちゃんは飯田
から聞いた【いのち】と言う言葉を思い出しました。【いのち】というのは、永遠に
生きているのだ、と言う事でした。
のんちゃんが降りた所は雪の上です。やわらくて、意外と暖かでした。
引っ越し先は、フワフワして居心地のよい所だったのです。のんちゃんは
目を閉じ、眠りに入りました。
のんちゃんは知らなかったのですが――――――
冬が終わると春が来て、雪はとけ水になり、枯れ葉ののんちゃんは、その水に混じり
土に溶け込んで、木を育てる力になるのです。
【いのち】は土や根や木の中の、目には見えない所で、新しい葉っぱを生み出そうと
準備をしています。大自然の設計図は、寸分の狂いもなく、【いのち】を変化させ
続けているのです。
また 春が巡って来ました。
16 :
名無し娘。:2001/04/29(日) 18:11 ID:c6yscr8M
ううむ
哲学的だ・・・、でっ、終了なんですのん?
17 :
名無し娘。:2001/04/29(日) 18:31 ID:1nD8lO6Q
ちょい感動・・・
とりあえずののかおマンセー
18 :
ないら:2001/04/29(日) 18:59 ID:boCA1zWA
のんちゃん・・・
19 :
( ´ Д `)ゴッツァンデース :2001/04/29(日) 19:56 ID:1pZDMKkg
( ´ Д `)ゴッツァンデース
20 :
名無し娘。:2001/04/29(日) 20:02 ID:AjDyUwpo
これは(・∀・)イイ!
21 :
名無し娘。:2001/04/29(日) 20:04 ID:YnwXOugw
マンセー!
元ネタは「葉っぱのフレディー」とかいう児童文学?
読みたくなりました。
22 :
名無し娘。:2001/04/29(日) 21:33 ID:H4Tg7fvA
いいね。飯田が美化され過ぎてるのも許そう
23 :
名無し娘。:2001/04/29(日) 21:56 ID:Vj/0k1Ik
はっぱ の けいちゃん
・・・じゃ だめか・・・だれか かいてくれ
24 :
名無し娘。:2001/04/30(月) 01:01 ID:AzyW4UUk
やった やった やった やった♪
やんなる位 健康だぁ〜♪
25 :
名無し娘。:2001/04/30(月) 01:04 ID:ckV859T2
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26 :
名無し娘。:2001/04/30(月) 02:56 ID:k4rUuq.c
私は生まれて来てよかったの?
27 :
くそったれ娘。:2001/04/30(月) 03:07 ID:WD/oeme.
@ @
( ‘д‘) 金玉ってののにあるんか?ボケ!
あっ このヅラ合わへんわぁ
28 :
名無し娘。:2001/05/01(火) 00:11 ID:TCk4xq0s
保全
29 :
名無し娘。:2001/05/01(火) 02:25 ID:3gM7iI8Y
なんかいいなぁ、この話
30 :
名無し娘。:2001/05/02(水) 18:02 ID:HirQADiQ
保全してもよかですか!?
31 :
名無し娘。:2001/05/03(木) 01:48 ID:XcNUx/jA
( 。´D`。)<ののが生まれてきた意味が少し分かったような気がするのです。
名作保全。
32 :
名無し娘。:2001/05/04(金) 07:08 ID:rl23hkLk
22世紀に残したい名作スレッド
33 :
名無し娘。:2001/05/05(土) 01:13 ID:WVqaKkpA
保全
34 :
名無し娘。:2001/05/05(土) 15:19 ID:efkFr0Xg
sageで保全してもしかたないのでageた。
良い話しだから多くの人に知ってもらおうよ。
35 :
名無し娘。:2001/05/05(土) 15:23 ID:BzwoQoQA
感動
36 :
名無し娘。:2001/05/05(土) 15:28 ID:2xVP89B.
37 :
名無し娘。:2001/05/05(土) 15:32 ID:6Ky389tk
フレディを読んでも何にも感じなかった俺なのに……。
フレディがのんちゃんに変わっただけなのに……。
なぜ俺は感動しているのだ?
38 :
名無し娘。:2001/05/05(土) 15:50 ID:7bMTqyKI
俺も感動した。でも必ず荒らす奴が出てくるんだ
よなあ…。sageはもったいないしな、みんなが一
通り読んで自然にsagaるのが一番良いけどね。
39 :
名無し娘。:2001/05/06(日) 02:30 ID:dXatZQYE
40 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 12:34 ID:rxUdWlhk
名作保全。
41 :
名無し娘。:2001/05/08(火) 05:28 ID:JmWBDmQU
∋oノハヽo∈
( ´D`)<いいらさんらいすき!
@ノハ@
( ‘д‘)<保全しとくで。
42 :
名無し娘。:2001/05/10(木) 02:41 ID:PkkO7G8A
名作保全。。
43 :
し:2001/05/11(金) 02:29 ID:0BPY5NJY
44 :
し:2001/05/11(金) 02:40 ID:NFByxIMU
45 :
し:2001/05/11(金) 02:55 ID:/4WxPQWY
46 :
名無し娘。:2001/05/11(金) 21:38 ID:yjJCM4IE
っていうかこれ登場人物変えただけの藤作だろ
47 :
名無し娘。:2001/05/11(金) 23:06 ID:PzhP0rWM
>>46 元ネタ自体が有名なので、「盗作」というのとは違うように思う。
パロディーとかオマージュとか、短歌で言えば本歌取りのようなものだろう。
また、
>>37のような感想を持つ人もいたわけで、
元ネタがあったからと言ってこの作品の価値が落ちるわけではない。
48 :
名無し娘。:2001/05/15(火) 01:42 ID:qaTK6ivU
hozen
49 :
名無し娘。:2001/05/18(金) 03:36 ID:LYeMxpvw
名作保全。
50 :
名無し娘。:2001/05/20(日) 06:16 ID:1VdSCvQU
保全するよ。
51 :
名無し娘。:2001/05/23(水) 05:05 ID:oiM7XPRs
保全
52 :
名無し娘。:2001/05/24(木) 07:44 ID:frwnp7V6
保全しておこう。
53 :
名無し娘。:2001/05/26(土) 01:09 ID:XAqfwxWw
ほ
54 :
名無し娘。:2001/06/01(金) 02:45 ID:U8jebMy6
ぜ
55 :
名無し娘。:2001/06/03(日) 04:24 ID:5hg/xZw6
ん
56 :
名無し娘。:
保全