1 :
ブレア娘 :
小説書いてます。まだ、序盤までしか書いてませんが、
感想とか書いてくれたら嬉しいです。
2 :
ブレア娘 : 2001/03/13(火) 02:47 ID:dP0K2MxA
第1章:撮影開始!
「さぁ!今日は、魔女が住むという森にやって来ました〜」
壮大でありながらもどこか厳かな森を背景に中澤の最後の仕事となる番組の撮影が始まる。
【モーニング娘。魔女の森でLOVEマシーン!】と題された脚本には
モーニング娘。面々が森の奥に進み、只キャンプをするというたわいも無い内容が記されている。
もちろん機材は最新式。一応荷物は彼女達が持つ事になっている。
「海外だべ〜、イタリアだべ〜。なっちなんか興奮してきた〜」
「矢口、ちっさいから迷子になっちゃうよ〜」
安倍と矢口のの元気な声が一層場の雰囲気を盛り上げる。
其の横では、辻と加護が何時もの様にくだらないギャグを連発している。
気だるそうな後藤もカメラが向けば笑顔を作り、「よっすぃ〜」と、吉澤との親密さをアピールする。
「カオリはぁ〜…」
と目を何時もよりも大きく開かせて今の気持ちを語る飯田を相手にせず
「さぁ!みなさん!はりきっていきまっしょい!」
と、そそくさと司会を進行する。
保田と石川は話しに乗り遅れたと後悔しながらも、一向は森に入っていった…。
3 :
ブレア娘。 : 2001/03/13(火) 02:48 ID:dP0K2MxA
第2章:森の道
出発から30分後、さすがに足場は悪くなり、モーニング娘。に疲労の色が見えてきた。
「安倍さぁ〜ん、この道きついですねぇ〜」
さすがに、石川のアニメボイスには疲労の色は見えなかった。
「いや〜、室蘭の雪道に比べたらまだまだだべ〜」
こんな会話も台本通りの会話である。
「人生って素晴らしい〜ほらいつもと〜同じ道だって〜…」
飯田のハミングにしては大き過ぎる声が突然森に響きわたる。
「圭織〜。いきなりなんだよ〜」
「だって〜、病は気からって言うじゃん〜だから…」
矢口の疑問に意味不明な解答をしつつも、かすかに彼女達に笑顔が戻った。
と、其の時、
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
辻の声が森を駆け巡る。
「なんか、もりのなかにいるのれす…」
「のの、そんなの森なんだから動物ぐらいいるよ。さ、もうちょっとだからがんばろ!」
吉澤の優しい言葉に辻は再び元気を戻すも、“何か”の存在は脳裏から消えなかった。
4 :
ブレア娘。 : 2001/03/13(火) 02:48 ID:dP0K2MxA
第3章:帰れない霧
撮影開始から一時間、もうどの方向から来たのかすらモーニング娘。には皆無である。
後はスタッフ達が頼りという所だろう。
しかし、彼女達はあまり不安ではなかった。所詮テレビであり、安全は保証されていると思ったからだろう。
そんな彼女達の安心感に影を落とすものが現れた。
「やぐちさん。なんかめのまえがみえなくなってきたのれす」
「ねー、祐ちゃん、なんか霧が出てきたよ…」
「大丈夫!矢口は私がが守るって!あ、辻もやで!」
頼もしい声に辻も矢口はホッとするも、中澤も不安は拭えないようだ。
「ちょっとプローデューサーさん…」
一同は立ち止まり、中澤とプロデューサーが何やら話し合いを始めた。
その間にも霧はどんどん深くなって行き、泣きそうな辻を「大丈夫や」と加護が諭す声だけが辻を支えた。
話し合いが終ったのかプロデューサーが大声で
「この先にキャンプポイントがあります!今日の撮影は辞めて其処で休みましょう!」
其の結論を聞いた一同はホッと胸をなでおろす。
5 :
ブレア娘。 : 2001/03/13(火) 02:48 ID:dP0K2MxA
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
其の時、また辻が奇声を発する。
「あ、あしをなにかがつかんだのれす〜」
そして、深い霧の中を一目散に辻が駆け抜ける。
「あかん!あいつただでさえ、さっきので神経質になってたのに気ぃ付かんかった!」
「祐ちゃん!追いかけなきゃ!」
何時もの様に激しい走り方で保田が辻を追いかける。
「圭ちゃん、危ないよ!」
と、矢口が間髪入れず保田の後を追う。
「ちょっと、私を置いていかないでよ」
後藤が感情をあらわにして吉澤を連れて霧の中に消えて行く。
「だめだべ!みんなばらばらになっちゃうべ!」
この混乱時に、冷静さを欠かしてはいけないと言うプレッシャーが中澤の判断を狂わせた。
「石川!圭織!私となっちはあいつらを追う!あんたらは加護を連れてきてぇな!」
と言い残し、中澤と安倍も霧の中に消えて行った。
なんで自分達が追いかけるのか疑問に思った石川だが、モーニング娘。のリーダーである中澤の判断なので、そんな疑問は吹き飛んだ。
「石川、プロディーサーさんの所に居た方が…」
「飯田さん!早く追わないと皆ばらばらになっちゃいますよ!」
飯田と加護の手を強く握り締めて3人も霧の中へ…。
遠くでプロデューサーの声がした。
飯田は確かに其れを聞いた。しかし、この自分を強く握り締める手にはかなわなかった。
6 :
ブレア娘。 : 2001/03/13(火) 02:49 ID:dP0K2MxA
第4章:10人目のピンチランナー
「はぁはぁはぁはぁ…」
全速力で走る辻はまるでいつもの、のほほんとしたキャラとは別人だった。
どれ程の道を曲がり、どれ程の木を掻き分けたのだろう。辻の足は擦り傷だらけだった。
彼女のスピードは、自らが意思につまづくまで速さを増して行った。
つまづいた辻の目には、視界の開ける場所が映り、やっとの事で追い着いた保田は激しく、
「辻!駄目でしょ!はぐれちゃったらどうするつもりなの!」
すると、辻の目に涙が溜まり始め、保田に懸念したが、
「やすださん!きりがはれたのれす!」
と、嬉しそうにはしゃぎ、保田には其の涙が嬉し涙だと痛いくらいに分かった。
矢口や石川達は次々に其の場所に集結した。
皆、走り疲れたのか、言葉も絶え絶えで辻の安全を喜ぶも、彼女達は気付いていた。
スタッフとはぐれた事を。しかし誰も其の事は口には出さない。
現実を見とめたくないのからなのではない。もっと重要な事が起こっていたからだ。
足りないのだ、1人。
「なんで…。なんでいないんだべ?どうしてだべ?」
「なっち!しっかりして!カオリの勘だとね、スタッフの所にいるんだと思うよ。カオリの勘は良く当たるんだから!」
「でも、いないんだべ!どこにそんな証拠があるんだべ!」
「静かにしろ!全部私の責任だよ!あの時、皆をまとめられていたら…」
「み…みんな…ののがわるいのれす…。ののが…」
「そなこと無い。無いで、のの…。」
やはり、どんな時でも加護の言葉は辻のもろい心を支える柱になった。
そんな2人を尻目に安倍は一番責任を感じていると思われる人物に牙を向けた。
7 :
ブレア娘。 : 2001/03/13(火) 02:49 ID:dP0K2MxA
第5章:真昼の尋問
まだ、あの和気藹々とした出発から2時間しか経過してないと言うのに、彼女達は何時間分もの時間に感じられた。
「ねぇ、ごっちん…。どうして、よっすぃーを置いてきたんだべ!」
「私に聞かないでよ!よっすぃーが勝手にこけたのよ」
予想もしなかった返答に一同は戸惑うが、今度は石川が牙を向けた。
「後藤さん!今のはあまりにも無責任ってものじゃないですか!よっすぃーが可哀想です!」
「じゃぁ何?今から森の中に探しに行けっての?それじゃぁ私が迷っても良いんだ?わかった、今から森の中に行ってき…」
其の瞬間、後藤の左頬に中澤の熱い衝撃が走り尻を地面についた。
「馬鹿!こんな状況でそんな事言う奴がおるかぁ!紗耶香が聞いたら泣くで!」
“沙耶香”と言う言葉に何を見たのか、後藤は大粒の涙を流し始めた。
「だって、私達、一生懸命走ってて、よっすぃーがこけちゃって、周りが霧で見えなくて、一人になるの怖くて…」
堰を切ったかのように隠していた言葉たちが溢れ出す。
「私が悪いのよ…私が悪いのよ…」
リピートしてるCDの様に何度も何度も呟き、目は虚ろになっていく。
「…なっち、言い過ぎたかも…」
「私も言い過ぎました…」
それ以上後藤を責める者はいなかった。
8 :
名無し娘。 : 2001/03/13(火) 02:49 ID:goCInv5U
sageっも知らずに小説を書き始めるのが今の流行ですか?
9 :
ブレア娘。 : 2001/03/13(火) 02:50 ID:dP0K2MxA
まだ、これまでしか書いてませんが、がんばります。
10 :
ブレア娘。 : 2001/03/13(火) 02:51 ID:dP0K2MxA
あ、すいません!
11 :
Vシネマニア : 2001/03/13(火) 02:51 ID:uyu3d1Vg
確かにsageてやった方がいいと思いますよ。
テーマソングはDisposable Teens.
12 :
名無し娘。 : 2001/03/14(水) 00:09 ID:ChAtXExQ
小説書いてる者同士、お互いがんばりましょう。
13 :
ブレア娘。 : 2001/03/16(金) 02:18 ID:WL1d0dqU
えっと、続き書きました。
まだ、学校とかで忙しくてあまり早くは書けませんが、良かったら見てください。
14 :
ブレア娘。 : 2001/03/16(金) 02:19 ID:WL1d0dqU
第6章:テントへ
「よっすぃー!よっすぃー!」
元気のある娘達で叫び続けてもう何時間だろう。日ももう落ちかけている。
其の有り様はまるで森が燃えている様にも見えた。
「アカンわ。今日はもう無理や。はよぉテント作らな!」
あの重かった荷物が今になって彼女達を助けた。
荷物の中にはテントなどキャンプ道具一式、少しの食糧。
「ホンマ、番組様様やな…。あ、其の番組のせいで今ここにおるんやったっけ…」
そこに矢口が、叫びすぎたのだろうか少しかすれた声で、
「祐ちゃん、これから私達どうなるのかな…」
と、いつもとは打って変わって、弱気な発言をこぼした。
「大丈夫や、ここに皆でおれば、明日スタッフ達が見つけに来てくれるよ…、多分…」
中澤の言葉一つ一つに確実に絶望が見え隠れのを矢口は見逃さなかった。
夜になるに連れ、他の娘達にも変化が見えてきた。
後藤はあの鬱状態のまま何やら呟いたり奇声を上げたりしている。
辻は責任を感じてか加護が話しかけているのにも関わらず枯れた花の様にしぼんでいる。
石川に至っては最早「死にたくない!」などと半狂乱し始めて入る。
唯一変わらずにいるのは飯田くらいだ。
15 :
ブレア娘。 : 2001/03/16(金) 02:19 ID:WL1d0dqU
一時間後。
モーニング娘。を森が包み、其れを深く暗い闇が包む頃、彼女達はようやようやく3つのテントを作り上げた。
「よーし、今日はここで夜が明けるまでテントにいましょう!吉澤は、あいつの事やから上手くやってるで!」
さすがに皆の前ではリーダーとして冷静に仕切る中澤だが、声に張りが無いのは皆、暗黙の了解だった。
「中澤さん、うちはののと一緒に居てあげたいんやけど…」
「そうやなぁ、じゃぁ…なっち!加護と辻と一緒のテントに入ってぇな!」
「なんでなっちだっぺ?もっと静かな人とがいいべさ!祐ちゃんがやんなよ!」
「うちはぁ…」
と、横目で未だに鬱状態の後藤を見ながら
「こーゆー訳やから…」
と、気の毒そうに安倍を説得した。
「後、保田と圭織は…石川を…」
結局、安倍と加護と辻、中澤と後藤と矢口、石川と飯田と保田の3つの班に分かれた。
「圭ちゃん!石川!がんばろーね!」
「…」
「がんばるって何をだよ、圭織!」
「ほらぁ!石川!元気出そうぜ!ほらほら、ほいっってね」
どうやらこの班は大丈夫そうだな、と思い中澤は
「さ、後藤、矢口、はよぉ寝るで」
と二人の手を引きテントの中に入っていった。
「なっち、2人を…ほんま頼むで…」
「任せてだべ。ほら辻、加護早く入ろ!」
こうして、彼女達が9人のモーニング娘。として最後の瞬間が終った。
16 :
ブレア娘。 : 2001/03/16(金) 02:20 ID:WL1d0dqU
第7章:テントにて
それぞれのテントに入ってから3時間後。
森の奥の鳥か動物かの何かの声と時々後藤の奇声がする。
月の光すら雲に遮られ、それはまるで彼女達の希望のように、うっすらとしていた。
「飯田さん保田さん、起きてますかぁ?」
「カオリは起きてるよ。なに〜石川?」
「私も…なんか眠れなくって」
さすがの保田もこのような状況には弱いらしい。
「みなさん、こーゆードラえもんの話知ってますか?ある日、のび太君、家出しちゃうんです。で、無人島に行っちゃうんです。でも、そこから帰れなくなっちゃうんです。
のび太君はドラえもんが迎えにくるって信じてたのにそれから何十年もドラえもんは来なかったんです。そこでのび太君死んじゃうんです。」
「…」
「のび太君が死ぬのは冗談ですけど…。」
飯田も石川が何を言いたいのか分かったが何も言えなかった。
そんな沈黙を破ったのはぽつんと言う小さな音だった。
……!
「ひっ!何ですか!」
「雨…?雨だよ、圭織、石川」
「その音よりも、なんか人の声…しなかった?」
「いやっ!神様助けて神様助けて!まだ死にたくないです!」
石川の欲にまみれた願いが雨の音を消して行った。
17 :
ブレア娘。 : 2001/03/16(金) 02:20 ID:WL1d0dqU
中澤のテントでは
「よっすぃーごめんなさい、市井ちゃんごめんなさい…」
この二つの言葉だけがこのテント内に不気味に響いていた。
其の声は3時間も呟き続けたせいか
「祐ちゃん…」
「分かってる、後藤も辛いんや。今はそっとしておこう。」
……!
「雨…か」
「ねぇ、祐ちゃん、今雨の音と一緒に…人の声が聞こ…」
其の瞬間、後藤がいきなり立ちあがりテントを抜け出した。
「よっすぃー!よっすぃーでしょ!会いたかったよ!」
雨の中を後藤はしゃがれた声、いや最早声というよりもうなり声を上げながら森の中へ走り出した。
其の早さは辻を追いかける時の早さよりも数倍早かった。
「アカン!矢口!私は後藤を追いかける!あんたはここで待ってるんやで!」
そう行って中澤はテントを抜け、後藤を追いかけた。
18 :
ブレア娘。 : 2001/03/16(金) 02:20 ID:WL1d0dqU
時を同じくして安倍のテントでは加護がしきりに辻を慰めている。
安倍も眠れないのか、加護と一緒になって辻をあやしている。
「安倍さん、亜依ちゃん、ありがとうなのれす…」
「気にすることないべ!なっちさっきはひどい事いって悪かったべさ!
安倍も辻を拒否した事が心残りだったのだろう。
「でも、なんか辻が元気になって良かったべ!なんか安心したらトイレ行きたくなったべ!」
「安倍さん、うちも今行きたいと思ってたんですよ。ののと3人で行きません?」
「そうだべな〜。辻、一緒に行くべ。」
「はい、ののもいくのれす。」
「んー、ちょっと暗いけど森の方まで行くべ!さすがにテントの前じゃね」
と、3人は森の方へ歩いて行った。
「ここら辺だべか?あまり森の奥まではいると危険だべから…」
……!
「雨やねん。早く用済ませないと…」
「ねぇ、今なんか声がしたべさ…。人の…」
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!何かがうなりながらこっち向かって来てるで!」
「け、けさのあれです…!ののをおってきたのれす!にげなきゃ…」
と言い残し辻が森の奥へ走り、消えて行った。
「のの!危ないで!」
「辻!駄目だべ!戻ってくるべさ!」
そんな2人の言葉も辻には届かず、走りつづけた。
「お、追いかけるべさ!」
そう言って、安倍と加護は、森に誘われる様に奥へと辻を追いかけて行った。
19 :
ブレア娘。 : 2001/03/16(金) 02:21 ID:WL1d0dqU
ここまでです〜。まだがんばります!
20 :
名無し娘。 : 2001/03/16(金) 02:36 ID:BA5aw75o
祐ちゃん → ×
裕ちゃん → ○
21 :
名無し娘。 : 2001/03/16(金) 02:38 ID:2YDOyDP.
保田=ヘザー(だっけ!?あのブサイクの名前)
っていうイメージがある。
保田=森の魔女
っていうイメージがある。
これじゃ保田一人で足りそうだ。
22 :
ブレア娘。 : 2001/03/16(金) 02:50 ID:WL1d0dqU
>>20 指摘ありがとうございます!漢字気付かなかったです(汗)
23 :
名無し娘。 : 2001/03/18(日) 07:54 ID:.8ewxGTU
やっぱり、映画のように、これからの人間関係は悪くなるの?
見たくないような見たいような(w
24 :
ブレア娘。 : 2001/03/21(水) 20:23 ID:Mwiygec2
久々の更新です。色々事情で遅れてしまいました。
25 :
ブレア娘。 : 2001/03/21(水) 20:25 ID:Mwiygec2
第8章:混乱〜矢口の場合〜
「裕ちゃん戻ってくるよね」
取り残された矢口を振り出した雨とあの声が掻き立てる。
「あの声確かによっすぃーだった」
生きているとは思わなかった吉澤の存在が矢口を取り巻いた。
「あ、皆に裕ちゃんとごっちんの事言わなきゃ…」
不思議と矢口は落ち着いている。やはり後藤の狂い振りに驚いているのだろうか。
矢口は軽い足取りで安倍のテントへ向かう。
「なっち、ごっちんがいきなり出ていっちゃって裕ちゃんが…。あ、いないんだ」
そう言うと今度は飯田のいるテントへ向かった。
「あ、皆いるね」
「だ、誰ですか!」
石川の恐怖に怯えた声が聞こえた。
26 :
ブレア娘。 : 2001/03/21(水) 20:26 ID:Mwiygec2
「私、矢口だよ」
「あ、矢口。どうしたの?なんか変な声が矢口のテントから聞こえたけど…」
飯田がきょとんとした表情で尋ねた。
「あぁ、ごっちんがいきなり叫び出して出ていっちゃって、裕ちゃんが追いかけて行ったの。あ、なっち達もいなかったよ」
冷静な口調で矢口は淡々と簡潔に今の状況を話した。
まるで自分は関係ないかのようなその口調に保田は反感を覚えた。
「え!矢口!どういう事?どうなっちゃってるの!なんでそんな冷静なのよ!」
保田が怒りをあらわにして矢口を責める。
モーニング娘。の中でも仲間意識の強い保田は黙ってはいられなかった。
「知らないよ、圭ちゃん。私は裕ちゃんに待ってろって言われただけだし」
保田の怒りがまるで届かないかのように、その淡々とした口調に保田は意標をつかれた
27 :
ブレア娘。 : 2001/03/21(水) 20:26 ID:Mwiygec2
「何言ってるの、矢口!カオリ達バラバラになっちゃったんだよ!」
さすがの飯田も今の状況の悪さに焦りを隠せずにはいられなかった。
大きな目をぱっと見開き、矢口をずっと見つめた。
「んー、大変だけど仕方ないよ。あ、そろそろ私寝るね。ここで寝て良いよね」
今にも寝ようとする矢口に、飯田と保田は憎しみすら感じ始めた。
そして飯田が矢口に食ってかかろうとした時、石川が沈黙を破った。
それは今までの怯えた声ではなく、何か確信に満ちた声だった。
「みなさん、こーゆー話知っていますか?」
28 :
ブレア娘。 : 2001/03/21(水) 20:27 ID:Mwiygec2
第9章:混乱〜石川の場合〜
「みなさん、こーゆー話知っていますか?」
突然の見当違いの発言に、ただでさえ矢口の態度に怒り気味だった保田が石川の胸ぐらをつかんだ。
「石川!こんな時までドラえもんの話するつもり!?」
そんな保田をもろともせず石川は話を続けた。
「昔とある船が沈没したんです。その中で助かった4人の男がいるんですよ。その四人は救命ボートに乗って助かったんです。でも食糧も底を尽いた時彼らはどうしたと思います?」
いきなり何を話すんだといった感じで飯田が石川に言った。
「ねぇ、石川。なんで今そんな事…」
飯田の言葉をさえぎるかのように矢口が元気に答える。
「んーっと、4人のうちの1人を海に落とした、かなぁ?1人分の食糧が浮くしね」
矢口のあまりに残酷な発言に保田はうろたえながらも石川をつかむ手の強さは増す一方だった。
29 :
ブレア娘。 : 2001/03/21(水) 20:27 ID:Mwiygec2
「ふふ、矢口さん惜しいですよ。でも食糧は底を尽いたんでそれは無理ですよ。正解は“1人を食糧にする”なんです。クジを引いて決めたんですよ。結局、残った3人は緊急避難って言う法律で無罪なんです。ちなみに骨まで食べたんですって」
そう言い終わると、石川は荷物から出しておいたサバイバルナイフを保田の、石川をつかんでいる手に突き立てた。
「骨まで食べたってのは冗談ですけど」
あまりの痛みに奇声を発しながら地面を這いつくばる保田を見た石川は、
「圭ちゃん!」
「あんまりうるさいと、食べちゃいますよ」
と声には似合わないとても狂気に満ちた言葉を放った。
「あ、なるほどね。石川頭良いね」
目の前の状況を把握しての矢口の言葉は果てしなく冷たさを含んでいた。
「ありがとうございます、矢口さん。今日はまだ荷物に食糧があるからまだ食べませんよ、ふふ」
30 :
ブレア娘。 : 2001/03/21(水) 20:28 ID:Mwiygec2
第10章:真夜中の脱出
同じテント内で繰り広げられている残酷な光景に飯田は目をつむりたかった。
しかし、保田が手から血をだらだらと流し、涙している姿を見ないフリするほど冷たくはなれなかった。
あいにく、矢口と石川は何やら打ち解けていて世間話をしている。
「…圭ちゃん…立てる?今が逃げるチャンスだよ…」
どうやら飯田は保田とこの場を逃げることに決めたらしい。
声は決して小さいとは言えないが、石川と矢口の会話の声と雨の音にかきけされてしまっていて、2人には聞こえなかった。
「圭織…ありがとう…私は…立てるよ」
「良い?1,2,3で逃げるよ…」
「うん…分かった…。せーの…」
そう言うと保田は態勢を治し始めた。
31 :
ブレア娘。 : 2001/03/21(水) 20:28 ID:Mwiygec2
「いち…」
2人の視線が自分達に向いていない事を飯田は確かめる。
「に…」
こっそり、決して音を立てないように飯田は保田と共に逃げ出す構えをした。
「さん!」
その言葉と同時に飯田と保田は石川達のいるテントから逃げ出した。
雨に濡れながら2人は走った。テントからできるだけ離れるように。
保田に吹きつける雨が、血と涙を流していった。
しかし、そんな2人の決死の作戦にも石川達は動揺しなかった。
「どうなるですか〜〜〜?」
石川は笑いながら矢口に相談した。
「んー、後で追いかければ良いよ。後、みんなのテントからもって来ようよ」
「そうですね、矢口さん。“狩り”って言うのは逃げている獲物を捕まえる事ですからね」
その言葉を聞き矢口も納得した様だ。常に冷静さを保っている。
「食糧もって来るのは明日にしましょうよ。それよりこんな話知ってますか?」
「え、何々?教えてよ」
こうして、彼女達の夜は更けていった。
32 :
ブレア娘。 : 2001/03/21(水) 20:32 ID:Mwiygec2
今のところここまでです。
>>23 はい、映画みたいに人間関係悪くなると思います。
更新あげしときます。
33 :
名無し娘。 : 2001/03/21(水) 20:57 ID:54hL2PVI
石川ってこういう役どころ多いですな。。。いや、好きですけどね。
34 :
名無し娘。 : 2001/03/22(木) 17:46 ID:FEIv7Lc.
更新ageしない方がいいと思うけど。
読んでる人はちゃんと読んでるんだし。
あらされても文句言えないよ。
35 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:36 ID:p9ncshqE
続きです。
>>34 指摘ありがとうございます。
これからはsageでいきますね。
36 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:39 ID:p9ncshqE
第11章:朝の風景
―もうどれくらい歩いたべ?
右手に辻を連れて安倍は森の中をさまよっていた。
―30分前
「け、けさのあれです…!ののをおってきたのれす!にげなきゃ…」
と森の中へ走り出した辻を追って加護と安倍は連れ戻そうとした。
安倍は小学校時代陸上の経験があり走ることには慣れていたが、
いかんせん雨の中の森だ、足場は悪い
ましてや暗闇の中だ。頼りは辻の走る足音くらいだ。
37 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:39 ID:p9ncshqE
しかし、一緒に走り出した加護とも離れないように手を引きながら懸命に走っていた。
ところが辻と安部達の差は開くどころか思ったより徐々に縮まっていった。
「捕まえた…。辻!勝手に走って行ったら危ないべ!」
息切れしながらも辻の愚行が許せなかった安倍は辻を激しく責めた。
加護も安倍に同感なのか、うんうんと頭を頷かせている。
「ごめんなさいなのれす…。でもでも…」
最早謝って済む問題では無いと悟っている安倍はもうそれ以上は責めはしなかった。
38 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:40 ID:p9ncshqE
ここは森の奥だ、もうテントには戻れない。
「今日はここで野宿だべ!文句は無いべな!?」
本当は安倍自身野宿などしたくはない。しかし無駄に歩いてさらに迷うよりはましだと判断した。
「それじゃぁ寝るべ!絶対、離れちゃ駄目だべよ…あ、2人ともトイレは…?」
そう質問すると2人はもじもじしだし、答えなさそうなので悟った安倍は
「んー…いつまでも子供じゃ無いんだべ…」
と愚痴をこぼし、皆就寝した。
雨はもうやんでいた。
―朝
右手に辻を連れて安倍は森の中をさまよっていた。
左手には何も持たずに…。
39 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:40 ID:p9ncshqE
第12章:狩りの開始
朝になると彼女達の“狩り”はすでに始動した。
「テントにはけっこう食糧ありましたね、矢口さん」
「うん、そうだね。これなら今日一日まだいけるかもね」
そんな会話をしながら森を歩く事2時間が経ち、獲物を探しつづけた。
彼女達は森の中の、石がたくさん散らばっている場所に出た。
人間の三大欲求である食欲が彼女達を狂わせているのか、
絶望感がそうさせているのかは分からない。
しかしもう“狩り”が始まっているのは事実である。
40 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:41 ID:p9ncshqE
「森って結構広いね、石川。獲物見つかるかな?」
「見つかりますよ。そう信じましょうよ。そうじゃなきゃ私達、餓死しちゃいますよ」
そんな事を話している石川の目に1つの靴が地面に落ちているのが入る。
「矢口さん、獲物、けっこう近くにいるみたいですよ」
「うん、そうだね!」
2人はまるで宝捜しの様に辺りを探した。
木の陰、木の上、石の陰、人が隠れる事ができるありとあらゆる場所を探した。
探す事ものの10分、石川が獲物を発見した。
「ふふ、リスさん、はっけ〜ん」
それは、靴の発見場所から数十メートルはなれた所にあった。
41 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:41 ID:p9ncshqE
「石川、これ新鮮じゃないから食べれないよ。なんか時間経ってそうだよ」
「そうですね。矢口さん。これは駄目ですね」
そう言い残すと2人ともガスッと“それ”を1蹴りして去って行った。
「矢口さん、私、絶対死ぬのはいやですよ。」
「大丈夫だって!楽しくうやろうよ!」
「そうですね。それよりも早く明日の分の食糧探さないといけませんね」
とても死体を目にした後の会話ではなかった。
42 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:42 ID:p9ncshqE
第13章:混乱〜中澤の場合〜
「全く…ここはどこなんやろうなぁ…」
目覚めた中澤の開口一番はこの言葉だった。
「はぁ…全く散々な最後の仕事や…」
吐く言葉全てが愚痴になっている。
さすがにこの年で森の中での野宿は体にこたえたのだろう、体が動かないらしい。
「酒飲みたいわぁ…」
そんな理想ばかりを並べ、他の娘。達の事など気にしていない中澤がそこにあった。
43 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:42 ID:p9ncshqE
昨夜、中澤は後藤を見失っていた。
さすがに若さには勝てなかったのか後藤との距離は広がる一方だった。
そしていつの間にか今いる場所で寝ていた。
「あぁ…私だけでも助からんかなぁ…」
その言葉を放ったとき中澤ははっとした。
―私、こんな嫌な女だったっけ?
まるでその考えを振り払うかの様に、昨夜の雨で濡れた髪をブンブンと振りまわした。
44 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:43 ID:p9ncshqE
第14章:仮初の友情
「ねぇ辻、そろそろ話してくれねぇべか?」
繋いだ右手を離すと安倍は辻に聞いた。
「な、なんのことなのれすか?」
突然の安倍の言葉に戸惑いを隠せない辻。
「なっち、聞いてたんだよ。昨日の夜、辻と加護がどっか行くの…。
私の隠しておいたチョコを持って…」
45 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:47 ID:p9ncshqE
―安倍達が野宿を始めて1時間くらいした頃のこと。
「ねぇあいちゃん。おきてますか?」
「起きてるで。なんかズボンが気持ち悪くてな」
どんな時でも辻にリラックスさせるために加護流のシャレを言った。
それが本当にシャレなのかは半信半疑だが。
「ちょっときてほしいのれす」
そう言うと、安倍を起こさぬ様、何やら慎重に安倍の服から何かを取り出したようだ。
46 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:50 ID:p9ncshqE
あげししまいました…。
多重カキコとかで…。すいません
47 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:51 ID:p9ncshqE
「こっちなのれす」
「ちょっと、のの!危ないねん!まってぇな」
淡々と道をずっと歩く辻。なにやら石のたくさんある所に出たようだ。
「ちょっと!のの!どうしたん?足元がぐらつくで」
「これ、ちょこなのれす。あべさんがかくしていたのれす。
これをもってふたりでにげるのれす」
辻の突拍子の無いセリフに加護はとっさに反論した。
「そんな!安倍さんはうちらを守ってくれてるんやで!そんな事あかん!」
加護の怒りに満ちた言葉は辻の怒りを爆発させた。
48 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:52 ID:p9ncshqE
「やっぱそうなのれす。きのうだってあべさんのいうことにうなずいていて、
もうあいちゃんはのののみかたではないのれす!」
どん!っと加護を突き放すと辻は石の道を戻って行った。
「のの!そなことない!のの!危ないで!」
そんな言葉を辻は聞いていたが無視をして来た道を戻って行った。
途中、ガツッ!と音がしたが辻は振り返らず走りつづけた。
10分くらい走ると安倍の「すぅ」という寝息が聞こえた。
辻は安倍に付いて行くと決め再び就寝した。
49 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:52 ID:p9ncshqE
「アテテテ。こけてもうたぁ…」
足場が悪いせいで加護は膝をすりむいていた。
「のの…!うちはののの味方やで…」
すぐさま立ち上がり辻を追いかけた。
だが数十メートル走った時、また態勢をくずしてしまった。
ドス!とても低く鈍い音が石場に響き渡った。
そして、それ以上加護は走る事もこける事も無かった。
50 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:53 ID:p9ncshqE
「辻、あの時2人で帰ってきたべか?ねぇ!辻!」
「あべさんものののみかたではないのれすね…」
辻の今までに聞いたことの無いくらい低く暗い声がした。
「ちょこなんかずっとたべてればよいのれす!」
チョコを安倍に投げつけ辻は安倍の元から走り去って行った。
安倍も辻の行いに愛想が尽いたのか追う事はなかった。
51 :
ブレア娘。 : 2001/03/22(木) 18:54 ID:p9ncshqE
今日はここまでです。
sageし忘れてしましました。
リロードするとsageが消えてしまうんですね…。
52 :
名無し娘。 : 2001/03/25(日) 00:26 ID:73dFo.ac
保全
53 :
名無し娘。 : 2001/03/25(日) 16:55 ID:JQSlx1qo
おもしれーなぁ
ブレアは見てないんだけど
クリムゾンの迷宮を思い出したよ
たまに文脈が変だったり誤字が目立つけど(w
面白いのであんま気にならない
がんがれよ
54 :
ブレア娘。 : 2001/03/26(月) 02:08 ID:tqtTlyuI
>>53 感想ありがとうございます!
文脈が変なのは、小説書くのが今回が初めてなんですいません!
明日には更新できると思いますので、良かったら見てやってください。
55 :
ブレア娘。 : 2001/03/26(月) 19:03 ID:tqtTlyuI
第15章:狩人と獲物
加護の死体を見てから数分後、矢口と石川はとある獲物を見つけていた。
それは1人でチョコレートをほうばっていた。
「ふふ、りすさんの後には豚さんね」
石川は目の前の動く獲物に半ば興奮していた。
「はぁ、なっち1人きりになっちゃったべな…」
その重い口調とは裏腹に黙々とチョコレートを食べる安倍。
そう思った矢先、安倍は石川と矢口が近づいてくるのに気付いた。
「あ、梨華ちゃん!矢口!良かったぁ!なっち1人でさみしかったべ〜!」
安堵に満ちた声でそそくさと2人に近づいていく。
「あ、ねぇ2人とも。チョコ食べるべか?」
そんな言葉に二人は顔を見合わせて笑い合った。
56 :
ブレア娘。 : 2001/03/26(月) 19:03 ID:tqtTlyuI
「アハハハハハ!ねぇチョコですって、矢口さん」
「んー、なんか勘違いしてるよね」
何の事かと不思議がる安倍の左腕に衝撃が走るまで、それほど時間はかからなかった。
「いっっっ!り、梨華ちゃん…」
先ほどは打って変わっての恐怖に満ちた声が逆に2人を刺激した。
「安倍さ〜ん。私達チョコなんかじゃ満足じゃないんですよ」
「なっち、うちらは狩りをしてるんだよ」
安倍には何がなんだかさっぱり理解が出来なかった。
しかし、左腕の痛みだけは感じることが出来た。
「わ、わかったべ!隠してあるクッキーもあげるべ!」
ポケットをごそごそする安倍を2人は嘲笑った。
「なっち、うちらはね、お肉が食べたいの。もう分かるでしょ?」
まさか、と思っていた事を平然と話す矢口に安倍は驚嘆した。
石川の持っているナイフが自らの鮮血で鈍く光る。
腕が痛い…。もうすぐ殺される…。逃げられない…。
現実をつきつけられて安倍は最早生きる事を諦めた。
57 :
ブレア娘。 : 2001/03/26(月) 19:05 ID:tqtTlyuI
「…。食べるなら…食べれば良いべさ…」
左腕を押さえながらも安倍は観念の意を伝えた。
それはまさに蛇ににらまれたカエルの様な状態だった。
手足が震える…。痛いんだろうなぁ…。死にたくない…。
それらの思いを振りきるように目をつむり、
これから自分の身にふりかかる惨劇の最後の準備をした。
「…。なんかつまらないよ。やめよう、石川」
安倍は耳を疑った。この状況でそんセリフが出るなんて…。
矢口の言葉に安倍は驚きながらも一筋の希望を見出した。
しかし、今はしゃいでは矢口の気分が変わる…。
それだけは阻止しようと、カエル状態を続けた。
58 :
ブレア娘。 : 2001/03/26(月) 19:06 ID:tqtTlyuI
「どうしてですか、矢口さん。せっかくの生きた獲物ですよ」
「石川。うちらは“狩り”をしているんだよ。
狩りってのは逃げる獲物を追いかけるんであって、
こんな観念した獲物なんか狩ったってつまんないじゃん」
そう言えばそうだと納得したように石川は頷いた。
「なっち、もう行って良いよ」
そう言われた安倍は、逃げてる様には見えないように
振り返りながら少し早めに歩き出した。
そろそろ、あの2人には見えなくなるべな…。
後ろを気にしながらも少し歩く速さを落とした。
そう思った矢先、遠くから石川の高い声がした。
「安倍さ〜ん、またね〜!」
安倍は全速力で走り出した。
「食べられてまたまるべか!」
59 :
ブレア娘。 : 2001/03/26(月) 19:10 ID:tqtTlyuI
「食べられてまたまるべか!」→「たまるべか!」の
間違いでした。
60 :
名無し娘。 : 2001/03/27(火) 02:10 ID:iHQLH/DY
オモシロイヨ
61 :
名無し娘。 : 2001/03/29(木) 03:22 ID:BVDqrYSs
読んでます。
続き待ってます。
62 :
名無し娘。 : 2001/03/29(木) 06:46 ID:4xGa26k6
気長に待ってるんで続けてね。
63 :
ブレア娘。 : 2001/03/29(木) 22:37 ID:GAB.kXcg
>>60-63
ありがとうございます!
最近バイトが忙しくて書けなかったんですよ。
がんばるんで、これからもヨロシクお願いします!
64 :
ブレア娘。 : 2001/03/29(木) 22:39 ID:GAB.kXcg
第16章:悪者は…
「さぁて、そろそろ私も動くかな…」
よっこいしょといった感じで腰を上げると中澤は気の向くままに歩き出した。
メンバーを探すよりも出口を探そう。それからでも皆は助かる、
根拠のない自信が中澤を動かしていた。
出口を探している途中、木々の間から人の話し声が聞こえた。
この声は…後藤か?
「ごめんね…よっすぃー。見放しちゃって…。本当にごめんね…」
泣きながら吉澤に抱きつく後藤は、髪もぼさぼさでアイドルとは思えない風貌だった。
「私ね、ずっと探してたんだよ…。雨の中ずっと…。
でもね、あの時よっすぃー私を呼んでくれたじゃん…?
だから私絶対よっすぃーに会いに行かなくちゃって…。本当にごめんね…」
男か女かも分からないくらいしゃがれた懺悔の声も、
森の中ではまるで獣の叫び声の様だった。
後藤は吉澤の髪が泥だらけなのを知ると雨のせいで泥まみれの自分を差し置いて
「ねぇ、よっすぃー、髪、汚れてるね…。私洗ってあげるよ…」
と、声とは全く違った優しい顔で言った。
65 :
ブレア娘。 : 2001/03/29(木) 22:40 ID:GAB.kXcg
中澤はその声がする所へ足を運んだ。
だがその瞬間、中澤に猛烈な吐き気が襲った。
確かにそこには後藤と吉澤がいた。いや、吉澤だったものが…。
そこにいる吉澤は全身泥と血だらけで、体も曲がるはずの無い方向に曲がっていたのだ。
「あかん…完全に狂っとる…」
そう思ったが中澤はその場を離れられなかった。
どうして…私はこんな奴は勘弁や…。そう思うがまだ心にはリーダーとしての心があった。
66 :
ブレア娘。 : 2001/03/29(木) 22:40 ID:GAB.kXcg
「後藤!何してるんや!」
木々を掻き分け後藤の前に飛び出た中澤に驚きもせず、
せっせと水溜りに吉澤の顔を押し付けていた。
「何って裕ちゃん…。見たら分かるでしょ?よっすぃーの髪洗ってるのよ…」
後藤の目は間違いなく正気だった。
むしろ生き生きしているものがあった。
「馬鹿!良く見てみぃ!吉澤は…吉澤はもう死んでるんやで!」
ばちっと後藤の頬を叩いたが後藤は主張しつづけた。
「裕ちゃん!よっすぃーを勝手に殺さないでよ!
あの時はぐれちゃったけどまた会えたのよ!
裕ちゃんだってよっすぃーが無事で安心でしょ?」
涙のせいか雨のせいか、後藤の瞳は潤んでいた。
「だったらなぁ!後藤!吉澤に聞いたれ!」
この言葉がどれだけ重いかは中澤は知っていた。
だが、それでしか元の後藤を取り戻す方法は無い事も知っていた。
「ねぇ…よっすぃー?よっすぃーは私の事好きだよね…?
私はよっすぃーが好きだよ…。ねぇ答えて…」
67 :
ブレア娘。 : 2001/03/29(木) 22:40 ID:GAB.kXcg
しばらく時が流れた。
その間は風が吹き鳥が鳴く普通の森だった。
「答えてよ…よっすぃー…。ねぇ…やっぱ…私がよっすぃーを殺しちゃ…」
そう後藤が言いかけた瞬間、中澤は足元にあった大きめの枝を持ち上げ、
吉澤の死体を殴りつけた。
枝が折れては、また違う枝を拾ってきた。
骨の砕ける音、顔に飛び散る血。
足が震える…。手の感触…。
中澤は目をつむった。決して開ける事など出来なかった。
後藤は呆然として中澤を見つめていた。
「はぁはぁ…、これでどうや。吉澤を殺したんは私や。
後藤が殺したわけじゃないで…。悪いのは全部私や…。後藤じゃない…」
吉澤を殴り終わった中澤が尻をぺたんと地面につけた。
「裕ちゃん…」
今まで我慢していた涙が止めど無く溢れ出した。
一瞬、元の後藤の優しい声が聞こえた気がした。
「ほら、後藤。こんな殺人者とおったら危ないで…。さっさとどっか行きぃな」
涙を流している後藤に、中澤は冷たい言葉を告げた。
だが、後藤は中澤から離れては行かなかった。
「なんや、荷物が増えてしもうたなぁ!」
2人はくすくすと笑いあった。
久々に、この森に笑顔が取り戻された。
68 :
ブレア娘。 : 2001/03/29(木) 22:47 ID:GAB.kXcg
>>60-62
やっぱ、感想とか書いてくれると励みになります!
一言でも良いので書いてくれると嬉しいです。
なるべく早く更新できるようにがんばりますね。
69 :
名無し娘。 : 2001/03/30(金) 13:45 ID:vLLH8KNg
がんばれぃ
70 :
名無し娘。 : 2001/04/03(火) 00:24 ID:72K.1y6U
期待hozen
71 :
ブレア娘。 : 2001/04/03(火) 03:33 ID:DEVhMgF6
>>69-70
ありがとうございます。
今日中に更新したいと思います。
しかし、これって、スレッドが一番下まで行ったらどうなるんですか?
72 :
名無し娘。 : 2001/04/03(火) 13:30 ID:xa1gInIg
書き込みがあれば問題ないよ。
73 :
F氏 : 2001/04/04(水) 01:52 ID:XkEqy0ko
保全しときます
がんばれぇ!
74 :
名無し娘。 : 2001/04/04(水) 10:36 ID:y.dy2kq2
元ネタのブレアウィッチプロジェクトより怖い・・・。
更新楽しみにしてます。
75 :
ブレア娘。 : 2001/04/05(木) 03:31 ID:/jnZvZmk
書きこんでくれた皆さんへ。
ありがとうございます!
更新するのが大幅に遅れてしまってます。
行き当たりばったりの思いつきで文を書いてるのでスットクがないんですよ。
>>71で言ったことも出来なかったので、なるべく早く(金曜までには絶対!)
更新しますので、見てやってください。
誰がどう死ぬかは大体頭の中で想像ついてるのであとは文にするだけです。
書きこんでくれたみなさん、本当にあいrがとうございます。
76 :
木村 : 2001/04/05(木) 12:32 ID:t8rcV1/o
がんばってね。この話、面白いですね。
読んでて引込まれる描写がいいと思います。
ホラー系、バイオレンス系が好きなんでそういうリアルなシーンを期待しています。
あんまり無理しないで更新を続けていって下さいね。
77 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 02:54 ID:H4jkuoTc
久々の更新です。
結構量書いたので一気に載せます。
感想書いてくれた皆さん、ありがとう!
78 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 02:55 ID:H4jkuoTc
第17章:魔女を見た
いたい…あしがいたい…。
辻は安倍と別れた後、ひたすら森を歩いていた。
西も東も分からない状態だった為、結局は同じ所をぐるぐるしていた。
そして、見覚えのある場所についた。
辻はそこで見てしまった、加護の死体を。
「あいちゃん、しんじゃったのれすか」
無機質なその声は、底知れない冷たさを帯びていた。
しかし辻はすぐに歩き続けた。もちろん涙など流さなかった。
79 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 02:55 ID:H4jkuoTc
―私、魔女を見たんや。
歩き始めた辻は、そう加護の声が聞こえた。
辻は再び加護の死体の所に早足で戻っていった。
そして加護の死体に馬乗りになり、胸ぐらを掴むと上半身を起こした。
「あいちゃん、いまなんていったのれすか」
怒りを表現するように加護に言った。
―ののが私を殺したんや。ののは魔女なんや。
その言葉は辻の心に脳に直接響き、彼女自身を突き刺した。
辻は拳を高く振り上げ加護の顔を殴りつけた。
「いつまでののをばかにしたらきがすむのれすか!」
辻が殴るたびに、彼女の心に加護が言った。
―ののは人殺しや、魔女や、魔女や。
殴る、言う、殴る、言う…。
そのいたちごっこは、夜が訪れるまで続いた。
80 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 02:56 ID:H4jkuoTc
第18章:星に願いを
「圭ちゃん…もう夜だね…。カオリ、今日一日がすごく長く感じたよ。」
飯田が、隣で傷ついた右手を抑えている保田の少しでも
紛らわせようと、沈黙を破った。
昨夜、石川と矢口のテントから抜け出した二人は
出来るだけ離れた場所で、今日一日誰にも見つからないように隠れていた。
飯田は、保田の手の負傷を少しでも癒すためだと言っていたが、
本当は只怖いだけで、その事を保田は悟っていた。
それでも一緒にいてくれている飯田に、保田は目の奥が熱くなった。
81 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 02:56 ID:H4jkuoTc
圭織、怖いんでしょ?私なんか足手まといだよ。
いつでも置いていって良いんだよ。」
いつになく弱気な保田に、飯田は笑顔で「大丈夫だよ」と答えるしか出来なかった。
「ほらぁ圭ちゃん!見て!星がきれいだよ。私達のこと見えてるのかなぁ?
あ、そうだ、星に願い事しようよ!助かりますようにって!」
保田はあまり乗り気ではなかった。それよりも只、手が痛かった。
「じゃぁ圭ちゃん、私が圭ちゃんの分まで願い事してあげるよ」
森の木々の隙間から見える、木漏れ日のような星空に向かって
飯田は目をつぶり始めた。
82 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 02:57 ID:H4jkuoTc
数秒後、保田が何を願ったのか聞いてみた。
「えへへ、カオリね、“早く皆に会えますように”って祈ったんだ」
飯田が満面の笑みで答えた瞬間、保田の顔が怒りで歪んだ。
「圭織!あんた、この手を見て言ってるの?
この痛みが分からないの!?所詮他人事なのね!」
激しく憤慨する保田に飯田は危険を感じ謝罪した。
「ごめん!圭ちゃん!カオリ、無神経だった!
今から願い事を変更してもらうね」
保田を落ち着かせるつもりが、かえって逆上させてしまった事に
飯田は少し後悔したが、なにもこんな事で怒らなくても…とも思った。
再び飯田が目を閉じようとした瞬間、二人の前方で
ガサガサと、何かが近づいてくる音がした。
願いはもう成就されていた。
83 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 02:57 ID:H4jkuoTc
少しずつ近づいてくる足音に、飯田は怯え、保田は殺気立っていた。
そしてその足音の持ち主は微かな月の光によって映し出された。
その人物は手に木の枝を構え、少し震えていた。
「だ、誰だべ!なっちだべ!」
そう、それは安倍だった。
「なっち!?私だよ、カオリだよ!やった!願い事叶ったよ、圭ちゃん!」
飯田が喜びながら安倍に抱きつこうとした。だが、
「待つだべ!まさか、圭織たち、なっちの事食べようとしてるだべか?」
安倍が涙声で聞いてきた。
「石川達に…会ったのね…でも、私たちも…」
飯田が言い終える前に、保田が安倍に襲いかかった。
一瞬何が起こったのか飯田は把握できなかった。
84 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 02:58 ID:H4jkuoTc
しかし、目の前で保田が安倍の首を絞めていた。
「なっち…。なっちまで私たちを殺そうとするのね…。
いい度胸じゃない…。上等よ。あんたなんかに殺されてたまるか!」
安倍のもがき苦しむ声が、静かな森を再び狂気に包み込んだ。
周りは暗い。月や星の光がせめてもの照明だ。
でも…飯田には鬼が見えた。
保田の顔が、暗くてもはっきり鬼に見えた…。
85 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 02:58 ID:H4jkuoTc
「た…すけ…て…、か……お…り………」
安倍のその声に飯田がはっと我に戻った。
安倍を助けなくては、本能が彼女に命じた。
「やめて!圭ちゃん!」
保田の体に思い切り体当たりを喰らわせた飯田は、
すかさず咳き込む安倍をかばった。
ヒィー…ヒィー…ゲェ……ゲェ……。
安倍の今にも嗚咽しそうな声を背後に飯田は保田に言った。
「圭ちゃん!なんでこんな事するのよ!カオリ、許さないよ!」
今までに見せたことない顔で飯田は激怒した。
86 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 02:59 ID:H4jkuoTc
しかし、保田も黙ってはいなかった。
「はぁ!何言ってるのよ!石川達を覚えてないの!?
なっちだって何するか分からないのよ!見たでしょ?
木の枝を構えていたのよ!?殺らなきゃ殺られるのよ!大体、圭織!
あんたが、あんな事願うからこんな目に会うんでしょ!」
安倍が泣いている。
自分もあの時はメンバーを信じていなかったからだ。
だから、こんな仕打ちされるのは仕方がない。
そんな安倍を飯田がそっと抱きしめた。
「大丈夫だよ、なっち…。私たちが一緒にいるよ…」
87 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 03:01 ID:H4jkuoTc
やはり、そんなやさしい言葉に保田が喰ってかかった。
「まだそんな事言ってるの!?いい加減やめなさいよ!」
しかし飯田は冷静に保田を説得した。
「圭ちゃん!なっちのこの右腕見えないの?血が…出ているんだよ。
圭ちゃんと一緒の被害者でしょ?
私には圭ちゃんの痛みがはっきり言って分からない。
でも…、でもなっちなら分かるんじゃないの?」
「それとこれとは話は別よ!じゃぁ良いわよ、私、一人で行くから」
88 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 03:02 ID:H4jkuoTc
今にもどこかに走り去っていきそうな保田を飯田は見放すことが出来なかった。
「ま、待って!もし…、もしまた襲われた時、人数多い方が
なにかと有利なんじゃない?だから…」
飯田は、石川達がまた襲ってくるとは思いたくなかった。
しかし、今保田を引き止めるにはこのような事を言うしかなかった。
「そうね…、確かにそうだわ。わかった。
でもね、なっち。裏切ったら私は容赦なくあんたを殺すからね」
安倍はビクッと震えた。それは飯田にも伝わった。
大丈夫…と飯田は安倍をなだめ、目を閉じた。
―お願いです、圭ちゃんを…元に戻して…。
いつの間にか、星は雲に覆われていた。
89 :
ブレア娘。 : 2001/04/06(金) 03:04 ID:H4jkuoTc
今日はここまでです!
あんまり量書いて無かったですね…。
これからは、もっと早く更新できるように頑張りたいと思うので
見てくれている皆さん、是非これからもヨロシクお願いします。
90 :
名無し娘。 : 2001/04/06(金) 03:23 ID:hgooeQMg
いつも楽しみに読んでるよ。
>>67の中澤と
>>79の辻萌え
しかし、他の小説とか読んでても中澤っていろいろと使えるキャラなのに
脱退したら使いにくくなるだろな。
91 :
名無し娘。 : 2001/04/07(土) 00:34 ID:j9usN9Wg
期待age保全age
92 :
ブレア娘。 : 2001/04/10(火) 19:55 ID:GMVnHM5I
久々の更新です。
最近かなりピッチ遅いですけど必ず最後まで書くので
良かったら見てください。
感想も書いてくれると嬉しいです。
>>90さん
感想ありがとう!
中澤はキャラが立っているから使いやすいんですよね。
>>91さん
がんばるので、ヨロシクです。
93 :
ブレア娘。 : 2001/04/10(火) 19:55 ID:GMVnHM5I
第19章:扉を叩く
あれから約三時間が過ぎた。
吉澤を砕いたあの感触が未だに手に残っている…。
それを拭うかのごとく後藤の手をぎゅっと握り締め中澤は
体を休める場所を探していた。
多少はましになったとはいえ、後藤の心の傷は癒えてはいない。
夜にもうすぐなろうと言うこの夕刻に、休む場所を探すのは難儀だ。
しかし偶然にも中澤は木々の奥になにやら家らしき建造物があるのを発見した。
森の中にそびえ立つその家は不気味としか言いようが無かった。
「助かった…。しかし、なんでこんな所に建物が…?」
そんな疑問も、疲れ果てている後藤を見たら吹き飛んでしまった。
二人は恐る恐る家に入っていった。
94 :
ブレア娘。 : 2001/04/10(火) 19:57 ID:GMVnHM5I
椅子の無い机。電球の無いシャンデリア。
壁も床も何も張っていない、一面真っ白だった。
家の中は荒れに荒れていて、生活感がみじんも感じられなかった。
今はそんな事は言ってられないと言わんばかりに中澤は
休むことが出来る場所を探していた。
家中をくまなく探しているとベッドを見つけることが出来た。
「良かった…。これで休めるで…」
中澤は後藤をベッドに寝かせると自分も腰をベッドに降ろした。
改めて考えてみると、自分はなんて面倒なことをしているんだろう、
中澤は何も無い天井を見ながらそう思った。
すると安心したのか、中澤の腹の虫がなった。
「そう言えばなぁんも食ってなかったなぁ…」
のそのそと歩き出した中澤は、家の中に食料が無いか探し始めた。
このまま自分だけで逃げてしまおうか…。何度か中澤はそう思った。
しかし、今は食料を探す事に専念していた為、行動を起こすまでには至らなかった。
気がつくと中澤は階段にぶち当たった。
「下り階段か…。地下室に食料庫でもあるかな…」
ためらいも無くその階段を降りていった。
95 :
ブレア娘。 : 2001/04/10(火) 19:58 ID:GMVnHM5I
階段を降りるとひとつの古びた扉が目に入った。
「なんか食い物あったら儲かりもんやな…」
立て付けが悪かったのか、その扉はとても開け辛く、ノブを回しても開くことはなかった。
ドン!ドン!ドン!ドン!
どうにか開けようと何度となく体当たりをした末、
やっとの思いで扉は開くことが出来た。
その反動で、中澤は部屋の中に勢いよく飛び込んでしまった。
「アイタタタ…。ちょっと力みすぎたかな…」
腰を打った為さすろうと思った時、手に不快な感触が広がった。
グシャ…。気味の悪い粘着質の音がした。
恐る恐る手に平を見た中澤は驚愕した。
蟲が…無数の蟲が中澤の手の中で潰れていた。
中には死にかけでもがいている蟲もあった。
床をよく見ると、その床全体に蟲がはびこっていた。
中澤は奇声を上げて部屋を出ようとした、が、扉が開かない。
先ほどの体当たりのせいで、ただでさえ開き辛かった扉が
さらに立て付けが悪くなり、完全に中澤をこの部屋から出すことを許さなかった。
少しでも立ち止まると、足元から蟲が這い上がってくる。
中澤は部屋の中を奇声を上げながら部屋を走り回った。
焦りと混乱の為つまづいてしまった中澤は床に倒れ込んだ。
もうだめだ…とそう思った瞬間、トントンと扉を叩く音がした。
96 :
ブレア娘。 : 2001/04/10(火) 19:58 ID:GMVnHM5I
後藤が助けにきた…そう思った中澤は、
「助けて!助けてぇな!」
と、蟲まみれになりながらも、精一杯の声を出し、扉に一気に駆け寄った。
これで助かる…。胸の中にやっとの思いで希望が見えてきた。
が、しかし声を上げた瞬間、扉を叩く音が凶変した。
ドンドン…ダダダダン!ダンッ!ダンッ!
中澤は呆然とした。後藤じゃ…ない?
そう思った矢先、何かが扉に突き刺さる音が聞こえた。
中澤の中の希望は、一瞬にして恐怖心と絶望感になった。
蟲が這い上がってくる事よりも、今、正体不明の来訪者の事が、中澤を押しつぶしていた。
タン!
なんと目の前にはナイフの先端が飛び出していた。
その時、中澤は悟った。殺される…?
それ以前にもそう思っていたが、今、実際目の前にナイフが見えた事によって
あやふやだった思いが現実化した。
吉澤が死んだ事により、死がより身近なものに感じられたのだ。
そして今目の前で、確かにナイフを持った何者かが自分を探しているのだ。
ダンダン!ドンドン!
その音はいっそう大きくなり、中澤を絶望の淵に追いやっていた。
「いやや…。いやや…。」
そして、ドカン!と大きな音がした瞬間、目の前に何者かが現れた。
「キャーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
中澤の悲鳴が家中に響いた。
97 :
ブレア娘。 : 2001/04/10(火) 20:02 ID:GMVnHM5I
ここまでです〜!
次の章がまだ途中なんです。
がんばります!
98 :
ブレア娘。 : 2001/04/11(水) 01:16 ID:UdBgMrwQ
第20章:扉を開く
中澤のかん高い声が響き、その来訪者は耳をふさいだ。
「きゃ〜!なんですか、今の声!?」
そう、石川だ。その後ろには芳しくない様子で矢口が立っていた。
そして矢口は目の前の光景に吐き気を覚えた。
―10分前。
「ねぇ石川。本当にあの家に人が入っていったの?」
石川が例の家の中に人物が入っていくのを見たらしい。
その人物は中澤と後藤である。
しかし矢口と石川はそれを知らない。
「はい、確かに見ましたよ。もう夕方なんであまり見えなかったですけど。」
そう言うと二人は“狩り”をする為に
中澤たちに遅れる事数分、家の中に入っていった。
「なんか不気味な家ですよね、矢口さん」
「うん、早くこんな家出たいよ、石川」
そんな会話をしていると、石川が真剣な顔をして、口に人差し指を当てた。
「しっ、誰かが階段降りていきますよ!」
音を立てずに石川達はその人物を尾行した。
石川の右手には、保田と安倍を傷つけたナイフが握り締められていた。
99 :
ブレア娘。 : 2001/04/11(水) 01:16 ID:UdBgMrwQ
「ねぇ石川。なんかドンドン音がするよ…」
忍び足で階段を降りていくと、古びた扉が見えた。
「開かないね…。中の人が鍵でもかけたのかな?
しかも、なんか…叫んでる…?」
ノブを回しても扉は開きそうもない。
中ではなにやら走り回ったりする音や走り回るがする。
「矢口さん!多分、中の人は私たちに気付いているんですよ!
ここは、紳士的に振舞えば、警戒心を解く事ができるかもしれません!」
そう言いながら石川はトントンと控えめに扉をノックした。
すると、扉の中から声がした。
「助けて!助けてぇな!」
青ざめた石川が焦りながら言った。
「た、大変です、矢口さん!中の人が完璧に気付いてしまいました!
助けを求めてますよ!助けがくる前に早くしないと!」
しかし矢口はあまり乗り気ではなかった。
聞こえた声は確かに中澤の声だったからだ。
「ねぇ、石川。今のって裕ちゃ…」
今目の前の獲物が逃げてしまうのではないかと焦る石川は、
「ポジティブ!」
と屈託もなく言い放ち、矢口を言いくるめた。
100 :
ブレア娘。 : 2001/04/11(水) 01:17 ID:UdBgMrwQ
なんとかして開けようと扉を必死に叩く石川
ドンドン…ダダダダン!ダンッ!ダンッ!
その強さは音を聞くだけでも増していってるのが分かる。
「このままではラチがあきません!」
そう言うと、ナイフを扉に思い切り突き立てた。
タン!と音をたてたそれは、先の方だけが扉を突き破った。
しかしそこ止まりだった。
「石川…もう開かないよ…。ここは見逃さない…?」
中澤を助けたい…。この森に来てから初めて誰かをかわいそうと思った。
吉澤がいなくなった時でさえ、どこかで他人事だと思っていた。
しかし今回は中澤だ。矢口にとって中澤の存在は大きかった。
「ねぇ石川…。もうやめ…」
そう言い切る前に、石川は扉に体当たりを始めた。
ダンダン!ドンドン!
大きな音を立てながら石川は必死で体当たりをしている。
「最終手段です!やっぱり体を使うべきですよね!」
そう言いながら何度も何度も体当たりを繰り返す石川はどこか楽しげだ。
目の前の、助けを呼んでいる獲物を追い詰めている自分に酔いしれているのだろう。
そして、ドカン!という音と共に石川は扉を打ち破った。
101 :
ブレア娘。 : 2001/04/11(水) 01:17 ID:UdBgMrwQ
「今の中澤さんの声だったんですね。耳がキンキンしますよ」
そう矢口に目を向けると、矢口は嘔吐を繰り返していた。
「矢口さん…?どうしたんですか?いきなり吐き出しちゃって?」
「どうしたって…。裕ちゃんが…。裕ちゃんが…
これを見て、どうしたら吐かずにすむのよ!」
矢口の小さな手が指し示す方向には中澤がいた。
その中澤の顔は恐怖に歪み、数え切れない程の蟲に覆い尽くされていた。
石川はそれをまじまじと見つめこう言った。
「こんな蟲まみれじゃ食べれませんねぇ。でも中澤さんっていつもは威張ってるけど、
あんがい弱虫なんですね。だって、こんな顔して死んでるんですよ。
でも人ってあまりに怖いと死んじゃうんですね。勉強になります」
そんな石川を見て矢口は思った。
私、何やってたんだろう。
102 :
ブレア娘。 : 2001/04/11(水) 01:18 ID:UdBgMrwQ
第21章:孤独と再会と
「いったい何の声だったんだろう…?」
後藤は中澤の悲鳴聞いた後、恐怖でベッドから降りれなかった。
「裕ちゃんの声だったよね…」
しばらく気持ちを落ち着かせてから後藤は家中、中澤を探した。
「裕ちゃん?裕ちゃん?」
必死で探す後藤は、ある異変に驚いた。
後藤の目には沢山の足跡がある下り階段が映っている。
その足跡は泥にまみれていた。
そして何より驚いたのは、その足跡の数が1人分にしては多すぎるのだ。
「地下に…行ったの…?」
誰が答えてくれる訳でもなく、後藤はつぶやいた。
恐る恐る後藤は階段を降りていった。
そこで後藤は悲鳴を上げた。
しかし声はしゃがれていた為、音にはならなかったが、
後藤の顔は悲しみと恐怖に歪んでいた。
103 :
ブレア娘。 : 2001/04/11(水) 01:18 ID:UdBgMrwQ
その目の先には、中澤が壁にもたれていた。
その周りには1人分と思われる足跡と、それ程多くはない蟲がいた。
震える腕をなんとか抑え、後藤は中澤を揺さぶった。
「裕ちゃん…裕ちゃん…?ねぇ裕ちゃん…!」
激しく揺さぶられる中澤の体…。飛び散る蟲…。
それでも中澤はしゃべる事はなかった…。
ねぇどうしたら良いの…。
1人取り残された後藤は膝を抱えうずくまった。
みんな、私を1人にする…。よっすぃーも…裕ちゃんも…。
…市井ちゃんも…
メンバーとの初対面…。ダンスの練習…。プッチモニの合宿…。
いつも後藤のそばには市井がいた。
…!
上の方で声が聞こえた。
後藤は自分を止める事ができずに走り出した。
「市井ちゃん!市井ちゃんでしょ!?」
そう、後藤は市井の声をどこからか聞いていたのだ。
家中を叫びながら探し回った。
104 :
ブレア娘。 : 2001/04/11(水) 01:19 ID:UdBgMrwQ
…!
上の方で声がする…。2階…いや、3階に…いるの?
後藤は階段を一気に駆け上り3階に上がった。
「市井ちゃん市井ちゃん!」
…!
右の部屋から声がする。
後藤は胸を半ば弾ませながら軽い足取りで右の部屋に向かった。
「市井ちゃん…」
涙を我慢できるはずもなく、市井に駆け寄った。
「市井ちゃん…。私、ずっと1人で寂しかったんだよ…。
私、本当に寂しかったんだよ…。」
後藤は今までの孤独全てを市井に投げつけた。
それを市井は優しく微笑みながら見つめていた。
外はすっかり暗くなるも、後藤だけには市井の顔ははっきり見えた。
まるで太陽の光が差しているかのように。
「市井ちゃん…もっと近くに寄って良い?
私、もう1人で寒がるのは嫌だよ…」
そう言うと後藤は窓に向かって歩き出した。
3階の窓の外で、市井は両手を広げて待っていた。
「市井ちゃん…やっと会えたよ…」
後藤は窓の枠に足を乗せ市井に飛びついた。
その顔は、本当に穏やかな顔だった。
今までとったどんな写真よりも、今の後藤は優しい顔をしていた。
会いたかった、市井ちゃん…
彼女は最期にこう言った。
105 :
ブレア娘。 : 2001/04/11(水) 01:19 ID:UdBgMrwQ
結構更新しました。
良かったら感想書いてください。励みになります。
106 :
名無し娘。 : 2001/04/11(水) 02:27 ID:yx0imeo6
加護と吉澤に続いて中澤、後藤がOUTか。
ペースが上がってきたね。
石川は最後まであのままだろうけど、矢口はちと変わってきたかな。
あとは辻と保田の出方次第か。
吉澤×→中澤×と信頼できる人間がいなくなって
後藤が狂っていく様子が上手いな、と思ったよ。
でもやっぱいちごまは外せないのね(w
107 :
名無し娘。 : 2001/04/11(水) 15:55 ID:vwFPOW4c
これこわーい
108 :
名無し娘。 : 2001/04/11(水) 16:16 ID:b20Kenr2
いいねえ。応援さげ。
109 :
名無し娘。 : 2001/04/12(木) 00:24 ID:CmoZrCrM
石川の壊れっぷりがナイス!
期待sage
110 :
名無し娘。 : 2001/04/13(金) 11:26 ID:gqK4lq86
よく読み返してみると
何人も壊れてるんだが
誰も殺されてないし誰も殺してないんだよな
面白いね
111 :
山田まりや : 2001/04/13(金) 18:36 ID:iRC9Q1tM
こわいこわい。
マンコシーンはあるの?レズシーンハアルノ?
112 :
名無し娘。 : 2001/04/13(金) 18:42 ID:TeYhbs92
>>111 sage入れない癖に「マンコシーン」「レズシーン」だとよ。
消えろヴォケ
113 :
ブレア娘。 : 2001/04/13(金) 22:39 ID:OgTXgge2
みなさん感想ありがとうございます!
本当に励みになります。これからも頑張りますね。
>>106 上手いなんて言われると嬉しいです。
自分的には、市井出すのは無理矢理かな?って思ったんですけどね。
>>107 怖いと思われるとさいわいです。
文章が下手なので怖さ表現できているか不安だったんです。
>>108 応援ありがとう!
もう終盤に差し掛かるので楽しみにして下さい。
>>109 石川って自分の中では裏があるって思ってるんです。
だから、壊すには徹底的に変にしようと思ったんです(笑)
>>110 あ、それに気付いてくれて嬉しいです!
彼女達の死因に間接的に関係はあるものの、殺してはいないんです。
でも、この先殺すことあるかもしれないですね…
>>111 んー、多分そのシーンは無いと思います。
市井と後藤がちょっとそれっぽかったかな。それが限度です。
>>112 確かに直接的な表現ですけどね(笑)。
sageだとこちらもやりやすいのは確かです。
114 :
ブレア娘。 : 2001/04/13(金) 22:41 ID:OgTXgge2
あ、更新は今夜少しします。
115 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 00:55 ID:Ktc9exwY
第22章:友達として
矢口はまだ気分が優れていないようだ。足取りは重い。
それもそのはず、あの中澤の死体を見てしまったのだから。
矢口はあの後、石川を待たせ、中澤の死体を移動させていた。
せめてもの償いなのだろうか、数多くの蟲を払っての行為だ。
そんな矢口を石川は退屈そうに見つめていた。
あんなに冷たい裕ちゃん始めてだ…
中澤の体温がかすかに残っている手は妙な違和感を感じていた。
「矢口さん。どうしたんですかぁ?歩くペース落ちましたよ〜。
まだ家が見えるじゃないですかぁ〜。速く歩かないと獲物が逃げちゃいますよ。
私、もうお腹ペコペコですよ〜。あ、矢口さん!食べられてみます?」
矢口はギョッとした。そんな矢口を見て石川は笑った。
「冗談ですよ、矢口さん。お腹が空いてるからって元気無くしちゃだめですよ。
ほら!矢口さん!ポジティブポジティブですよ!」
石川のダークな冗談は、冗談にはとても聞けなかった。
しかし矢口はそんな石川を軽蔑する事はできずにいた。
中澤を見た時から、石川の顔に自分の顔が重なって見えるのだ。
私たち…魔女みたい…。
石川の手に握られたナイフが闇の中で冷たく光る。
その輝きを見ているだけで、“狩り”をしている自分が思い出される。
もう…戻れないよね…。後悔する久しぶりだよ…。
矢口は自分をあざ笑った。
116 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 00:57 ID:Ktc9exwY
その時、家のある方から何かが地面にぶつかる鈍い音がした。
「ねぇ…。今何か音しなかった?」
矢口はその気味の悪い鈍い音が妙に気になった。
「え?そうですか?私、何も聞こえませんでしたけど…」
そう石川が言うも、矢口はいても立ってもいれずに
その音がした家に戻って行った。
「なんだ、速く走れるんじゃないですか〜」
感心しながら矢口を追いかけていった。
家の周りを探すも、その異様な風景は即座に分かった。
「後藤…」
矢口は唖然とした。この短い時間の間に2人の死体を目にしたからだろうか。
「ねぇ、どうして笑ってるの…?」
涙声のその叫びは森に虚しく響いた。
「そんなの簡単ですよ。ごっつぁんは死にたかったんです。
そうじゃなきゃ笑えませんよ、ね、矢口さん」
石川の声も自分の声に聞こえてしまう。
矢口は耳を塞いだ。しかし、石川はしゃべり続けた。
「それよりも、これって今死んだばかりですよね。
じゃぁ…ふふ。狩ってはいませんけど、運も狩りのうちですよね」
そう言って石川はナイフで後藤を切りつけようとした。
「ん〜、なんか念願って感じですよね!」
心が弾み石川も多少興奮気味だ。その時、
「ねぇ、石川。もうやめない?こういう事するの」
矢口が言った。
117 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 00:58 ID:Ktc9exwY
石川は耳を疑った。まさか矢口がそんな事を言うなんて…。
「矢口さん?お腹いっぱいなんですか?どうしちゃったんですか?
せっかくの獲物なんですよ!」
“狩り”に出て以来、石川は初めて感情的な言葉を放った。
「いくら…いくらお腹が空いてても、人間を…仲間を食べれるの!?」
矢口は涙ながらに言った。
「そんな…矢口さん…」
石川も半泣き状態だ。
このままでは2人とも人の心を保てなくなるかもしれない…。
そう悟った矢口は決心した。
「私、もう行くね…。もう石川とは一緒にいれない。
私にも責任あるもんね、“狩り”始めた事。
これ以上一緒にいたら、私、石川の事嫌いになるかも知れない、
もちろん私の事も。だから、ここでお別れだよ。
森から抜け出したら、また…会おうね…」
涙を流しながら矢口はそう言い残し森の奥へ消えていった。
118 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 00:58 ID:Ktc9exwY
残された石川はナイフをポケットにしまい込んだ。
「矢口さん、私の事嫌いになっちゃったのかな…」
石川はワッと泣き出してしまった。
こんなに泣いたのいつぶりだっけ…。
モーニング娘。に受かった日の夜以来かな…。
「…。私…矢口さんの事、好きだったんだぁ…」
“狩り”を初めて以来、たくさんの話をし、笑いあった2人は、
もはや親友と呼ぶにもふさわしいくらいの間柄になっていた。
「矢口さん、お腹いっぱいになったら、また仲良くしてくれるかな…」
そう思った石川は再びポケットからナイフを取り出した。
「私には…もうこれしか無いのよ…」
石川は自分にそう強く言い聞かせた。
ナイフは力強く握られた。
119 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 00:59 ID:Ktc9exwY
第23章:友達でいて
はぁはぁ…。。
夜の森で、辻の絶え絶えの息が生々しく聞こえてくる。
すでに彼女の両手は加護の血でまみれている。
加護の死体は見るも無残で、顔は原形をとどめてはいなかった。
「はぁはぁ…ののは…ののはまじょなんかじゃないのれす…」
泣きじゃくる辻を誰も慰めるものはいなかった。
辻は加護の死体から自分の体をどかすと、しりもちをついた。
「あいちゃんがいけないのれす…」
何度もそう自分に言い聞かせた。
友達だと思っていた…。親友だと思っていた…。
「そうおもっていたのは、ののだけなのれすか…?」
今まで殴り続けていた加護の死体に抱きつき、そう問いただした。
「あいちゃん…なんでしんじゃったのれすか…。
ののをおいていかないでくらさい…」
この壮大な森の中で、小さな辻はさらに小さく見えた。
120 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 01:00 ID:Ktc9exwY
その時、辻の心に加護の声が響いた。
―のの、私はののの友達や
それは自分の妄想だと辻は分かっていた。
でも、それは今の彼女を罪から解放した。
「ほんとうに、ごめんなさいなのれす…」
そう言うと辻は立ち上がり、周りをきょろきょろと見渡した。
「ちょっとまっててくらさい、あいちゃん」
辻は3メートルほど後ろに咲いている一輪の花を摘んできた。
「あいちゃん、きっとこれあいちゃんににあうのれす。
…ののはこのもりからかならずぬけだすからみまもっててくらさい」
辻は花を加護に添えて再び力強く歩き出した。
―がんばれ!のの!
辻は即座に振り向いた。確かに聞こえた、加護の声が。
「あいちゃん!ののはどんなことをしててもいきるのれす。
だれにもののをころさせないのれす!」
辻の心にはまだ闇が潜んでいた。
121 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 01:01 ID:Ktc9exwY
更新しました。
もうほぼ終盤です。
しかし、まだラスト考えてないんですよね…。
あと、応援してくれているみなさん、ありがとう!
122 :
名無し娘。 : 2001/04/14(土) 18:18 ID:re7jLUmw
面白いわ〜。特に辻のキャラがたまらないよ。
123 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 21:50 ID:Ktc9exwY
第24章:感謝の気持ち
深夜。安倍はなかなか寝付けなかった。
そんな安倍を、飯田はただ見ているだけしか出来なかった。
「ねぇ圭織…。圭ちゃんは…?」
保田は、つい1時間前に勝手にどこかに行ってしまったのだ。
その理由は飯田も知らない。
「分からない…。でも、今の圭ちゃんに何を言っても無駄だよ…。
だから…待つしかないよ」
やはり飯田は保田のことが心配らしい。
しかし安倍は…。
「ねぇ、今のうちに…なっち、逃げたいべ…」
安倍は先ほどの保田が脳裏に焼きついてしまっていた。
「大丈夫。寝ていれば朝になって、圭ちゃんも帰ってくるよ」
安倍の肩を抱きながら飯田は言った。
「そうしたら、また圭ちゃんが襲ってくるべ…。寝たら…殺されるべ…。
目をつぶるのが怖いべ…」
そう安倍が涙ながらに言うと、木々の奥からガサッと音がした。
安倍は条件反射で飯田の陰に隠れた。
「圭ちゃん…?」
怯える安倍を抱きしめながら、飯田が恐る恐る尋ねる。
「何、警戒てるのよ!私よ!」
やはり保田だった。しかも手には何かを持っている。
保田は心配をしていた飯田を尻目に、豪快に腰をおろした。
124 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 21:51 ID:Ktc9exwY
「圭ちゃん…。何してきたの…?」
飯田の質問を待ってましたと言う感じで、保田は嬉しそうに答えた。
「知りたいの?仕方ないわね。これを見なさい」
保田は手に持っていたものを地面にばら撒いた。
いつの間にか月が再び顔を出し、それらを照らした。
そこには鋭くとがった石と木の枝があった。
「これ…何だべ?」
安倍も飯田の影からソロリと顔をのぞかす。
「これはね、武器よ」
保田はとがった石の先を撫でながら言った。
よく見てみるとその先には血がついていた。
「…け…圭ちゃん…それ…」
飯田が指差し、それを示した。
「あぁ、これね。安心しなさい、たかが血よ。
これの性能を調べる為にリスとか捕まえて殺したのよ。
これが結構切れ味良くてね。木の枝も最初は不安だったんだけど
とがってて太いのを選んだから、石に引けを取らないわ」
嬉しそうにガッツポーズをする保田は不気味だった。
「リスなんて、どうやって捕まえたの…?」
「素手でよ!」
即答だった。安倍と飯田はなぜか納得できた。
125 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 21:52 ID:Ktc9exwY
「でもね…まだ石川達に対抗できるか分からないの。
だって、私まだ人間を試してないんだもの
相手はナイフでこっちは石と木…。リスだけじゃ駄目なのよ」
そう言うと、保田はバッと立ち上がり飯田を蹴飛ばし、
安倍を押し倒し馬乗りになった。
「だからね。なっち、悪く思わないでね。私は圭織と生きるから」
武器の石を振りかざし安倍を今にも殺そうとする保田。
その状況を見て飯田は
「キャーーーーー」
と絶叫した。
安倍はというと、再びの恐怖に涙を洪水のように流し、ひきつけを起こしていた。
「圭ちゃん・・・あんた人間じゃないべ!あんた魔女だべ!」
最期に、安倍は強気になり、言いたい事を言ってしまった。
保田の手の石の鋭さが安倍には丸見えだ。
「うるさいのよ!この豚!」
保田が一気に安倍の顔に石を振り下ろした。
ザクッ!安倍は首を思い切り横にずらし、なんとか保田の攻撃を回避した。
石は地面に半分ほど突き刺さりもう抜けないようだ。
―ハッピーサマーウェディング踊れて良かったべ…。
そんな悠長なことは考えてはいられない。
すかさず保田は木を取り出し、もう一度安倍に突き刺そうとした。
今度ばかりは安倍は覚悟をした。
石が邪魔で首をずらす事など出来ない。
―もう駄目だべ…!
目を閉じで最期の瞬間を迎えようとした安倍の耳にドガッと鈍い音が聞こえた。
―痛く…ない…。じゃぁ何の音だべ?
126 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 21:53 ID:Ktc9exwY
静かに目をあけると、そこには石を持った飯田が息を切らしながら立っていた。
保田は横で頭を抱えてもだえている。
「圭織!圭ちゃんを…刺しちゃったんだべか…?」
飯田は横に首を振った。
「違うよ…。手元にあった石で、圭ちゃんの後頭部殴っちゃったの…」
飯田は泣き出しかけている。人を傷つける事は慣れていないようだ。
「圭ちゃん…ごめん…。痛かった…?」
まだもだえている保田に謝った。
安倍は即座に体を立ち上がらせ飯田の手を握った。
「早く!早く逃げよう!このままじゃなっち殺されてしまうべ!」
「でも圭ちゃんが…」
飯田はまだ保田が気になるのか、乗り気ではない。
「圭ちゃんを見たべか!?本当に一緒にいて大丈夫だべか?」
そう安倍は顔中涙でぐしゃぐしゃにしながら哀願した。
安倍の頬に先ほどのとがった石をかわした時にできた傷が、生々しく血を流す。
しかし、まだ迷う飯田の足に激痛が走った。
「圭織…あんた行かないわよね…」
保田は握っていた木を飯田のふくらはぎに突き刺した。
「い、痛い!痛い!」
とっさに保田から体を遠ざけ傷口を手で塞いだ。
しかし、その指から血はめどなく溢れ出す。
「圭織!」
安倍が大声で叫ぶ。
飯田は決心した、安倍についていく事を。
「圭ちゃん、ごめん!」
そう言いながら安倍に肩を貸してもらい、飯田たちはその場から逃げ出した。
127 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 21:53 ID:Ktc9exwY
追いかけようと保田は立ち上がるも後頭部の痛みでよろめいてしまい倒れた。
その時、保田の腹の中心に熱が走った。
保田はそこを見ると、先ほどのとがった石の半分が自分を貫通していた。
保田は痛むよりも先に泣いた。
「謝るくらいなら…行かないでよ…」
保田が久しぶりに弱々しい声を発する。
―私さ、傷ついた私にずっと一緒にいてくれた圭織に感謝してるんだよ。
だから、どうしても圭織をこの森から脱出させたかった。
でも、やりすぎちゃったのかな…。
もう声に出すのも辛い。心で思うしか出来なかった。
本当は直接飯田に言いたかった言葉だ。
―魔女か…。ふふ…そうかもね…
安倍のあの時の顔が浮かんでくる。
あ…もう目がかすんできた…。舌も動かない…。
でも…でも最期だけ言わなきゃ…。
保田は全身の力を振り絞りこう叫んだ。
「生きろよーー!!!!!!」
その言葉を言い終わると、役目を果たしたかのように保田は息絶えた。
128 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 21:55 ID:Ktc9exwY
更新しました。
>>122 23章で、最初は辻は良い子になる話だったんですけどやめました(笑)。
やっぱ、壊れていると何かと使いやすいので(笑)。
129 :
ブレア娘。 : 2001/04/14(土) 21:57 ID:Ktc9exwY
ラスト寸前なのに、話が出来てない…。
最近ちょっと更新ペース早過ぎましたかね?
感想お待ちしてまーす!
130 :
名無し娘。 : 2001/04/17(火) 10:14 ID:Lf4MBZ5M
期待してまっせ!
131 :
名無し娘。 : 2001/04/17(火) 14:14 ID:Yn14WCQU
もう続かないの?
132 :
名無し娘。 : 2001/04/18(水) 00:13 ID:9hvpFTcQ
異常嗜好殺人者
解離性同一性障害
詐病
公開精神鑑定
133 :
名無し娘。 : 2001/04/18(水) 23:34 ID:9R0cupZo
保田はホントにリスを素手で捕まえそうだ。
ラストの展開期待してまっせ!
134 :
ブレア娘。 : 2001/04/20(金) 00:03 ID:O8hasvlY
第25章:出現
―朝、眩しい朝。朝は大好き。目の前が明るいから。
真夜中に保田が死んだ事を矢口は知らなかった、今それを目にするまでは。
目の前が見えなくなった、歪んで何も見えなかった。
でも…血の赤だけは色を変えずに見える。
それと同時に急激な吐き気が矢口を襲った。
しかしもう胃には何も入っていない為、唾液だけが吐き出された。
何が起きているの…。
中澤、後藤、保田。メンバーである3人が死ぬなんて事を
改めて考えてみると、やはり現実そんな事がありえる訳が無い。
これは…夢だよ…。夢に違いないよ…。
自分の柔らかな頬を思い切りつねった。血が出るほどつねった。
135 :
ブレア娘。 : 2001/04/20(金) 00:04 ID:O8hasvlY
やはり矢口は痛みを感じた。再び絶望感に満ち溢れるその時、
矢口は背後に何者かの息遣いがするのを聞いた。
振り返ると、そこには辻が太い木の枝を手に立っていた。
すると辻は矢口にいきなり襲い掛かってきた。
ブン!
矢口の耳元を辻の鉄槌がかすめる。
一瞬気付くのが早かったお陰で矢口は辻の攻撃をかわすことが出来た。
体格は2人とも似たり寄ったりなので、いくら自分が年上とはいえ危険だ。
辻の目はもはや殺意に満ちて、どんどん近づいてくる。
怖い…。なんで…なんで…。なんで…石川…。
いきなり石川が草むらから姿を現し、辻の髪を掴み首元にナイフを突きつけた。
「のの〜、やって良い事と悪い事ってわかりますかぁ?」
136 :
ブレア娘。 : 2001/04/20(金) 00:05 ID:O8hasvlY
久々&短い更新です。
まだラスト考えてませんが、一応、無難な所まで更新しました。
読んでますよ〜。頑張ってください。
そして保全
138 :
名無し娘。:2001/04/23(月) 17:55 ID:IryjbHqc
期待保全
139 :
名無し娘。:2001/04/24(火) 00:47 ID:LazYvJAk
きたいあげ
140 :
名無し娘。:2001/04/24(火) 19:13 ID:pKQerXDI
段々と面白くなってきてる。普通、逆なのに。
気長に待ってるんで、納得できるまで練ってくださいね。
141 :
名無し娘。:2001/04/24(火) 21:22 ID:LazYvJAk
ここって地味料だよね・・・。
142 :
ブレア娘。:2001/04/25(水) 23:06 ID:BP0eoPNA
なんか保全しないといっちゃうそうなので、じしゅ保全します。
ラスト考えました。あとはかくだけです。
143 :
名無し娘。:2001/04/26(木) 00:05 ID:v1/N9qko
おぉ、ブレア娘。頑張ってくれ&保存
144 :
名無し娘。:2001/04/26(木) 00:07 ID:vG05Xtzc
保存するならageだぜ。
期待してるぜ!
145 :
名無し娘。:2001/04/26(木) 00:12 ID:v1/N9qko
↑初心者ウザ
作者頑張れよ!
146 :
ブレア娘。:2001/04/27(金) 00:01 ID:ZWpJWSN2
ほぼ一週間ぶりです。すいませんでした。
もうラスト寸前です。今回の所までしか書いてませんが楽しんでください。
感想とか書いてくれると嬉しいです。
>書き込んでくれたみなさん
ありがとうございます。
見ててくれてる人がいてすっごく嬉しいです。
147 :
ブレア娘。:2001/04/27(金) 00:03 ID:ZWpJWSN2
第26章:本当の気持ち
「石川…なんで…なんでここに…」
矢口は今にも辻の首を切り裂こうとする石川に聞いた。
「矢口さん。もう大丈夫ですよ。
おなかが空いてると人って反射神経が鈍るんですもんね。」
そう笑顔で答えながらも、辻の髪を掴む手の強さは増していった。
「やぐちさんは、やすださんをころしたのれす…。
あいちゃんもころしたのれす…。ののもころすのれす…」
低い声でそう呟く辻。
「何言ってるのよ、辻…。私は圭ちゃんも加護も殺してなんかいないよ…。
私たちが殺したのは…」
その先を矢口は言えなかった。
148 :
ブレア娘。:2001/04/27(金) 00:06 ID:ZWpJWSN2
それでも辻は、
「やぐちさんはひとごろし…りかちゃんもひとごろし…」
壊れたテープレコーダーの様に何度も繰り返した。
矢口はその言葉に耳を塞いだ。
…聞きたくない…
そう叫びたかった。すると石川が少し怒り気味にこう言った。
「のの、こんな話知ってますか?
昔、とても綺麗な女の人がいたんですけど、そのお母さんがとっても悪い人なんです。
お母さんは、女の人に男を誘惑させて、お金をむしり取っていたんです、髪の毛も。
女の人はお母さんを責めたんですが、一番汚いのは自分だと気付いて自殺したんです。
人の事言えないって事ですよね。…髪の毛むしりとったのは冗談ですけど」
そう言うと、石川はナイフをさらに辻の首に突きつけた。
首からは血がだらだらと流れ、ナイフをつたり地面へと吸収されていった。
「ののは人の事言えますかぁ?」
辻の耳元で石川が大声で聞いた。
「ののは…だれもころしてないのれす…」
顔中汗まみれになりながらも石川に反抗する辻。
149 :
ブレア娘。:2001/04/27(金) 00:07 ID:ZWpJWSN2
「じゃぁ手に付いている血は誰のなんですかぁ?」
さらにナイフを突きつける。
辻は黒目を、目の端っこまで持っていき、すさまじい形相で石川を睨んだ。
「これは、あいちゃんのちれす。
でもあいちゃんはのののことをおこってないのれす。
おこっていたらなぐっているとちゅうになにかいってくるはずなのれす。
だからののはわるくないのれす。わるいのはやぐちさんとりかちゃんなのれす」
石川は不思議な顔しながら辻の言った事を考えてみた。
そして、加護の死体が頭に浮かびひとつの答えに辿り着いた。
「あー、のの。あいちゃんころしちゃったんですねー。
なぁんだ、本当に人の事言えないじゃないですか、この人殺しさん」
嬉しそうに笑いながら石川は辻の尻にひざで蹴りをいれた。
「うるさいのれす。ののはなにもわるいことはしてないのれす。
わかりました。りかちゃんがやすださんをころしたのれすね。
ひとごろしさん。ひとごろしりかちゃ…」
辻が言い終わる前に石川は辻の髪の毛を思い切り上に引っ張った。
辻は背伸びしなくてはならないほどに髪を引っ張られた。
「あまりうるさいとはげちゃいますよー。
あ、でもどうせすぐ食べられちゃうから関係ないですね」
150 :
ブレア娘。:2001/04/27(金) 00:08 ID:ZWpJWSN2
今まで呆然と目の前の2人を見てるだけしか出来なかった矢口だが、
“食べる”と言う言葉に素早く反応してしまった。
「石川…まさか…まさかまだ“狩り”を…」
「当たり前じゃないですか。矢口さんはお腹空いてますよね?
そのためにわざわざ今まで尾行してたんじゃないですかー。
ちょっと探偵気取りで楽しかったですよ。
お腹がいっぱいになればまた2人で行動しましょうね」
矢口に悪寒が走った。石川の目は確かに本気だ。
その目を見ていると、まるで自分が悪い事をしているような錯覚に落ちてしまう。
辻がばたばたともがき始めた。その度に髪の毛が何本も落ちる。
矢口の目は涙で溢れかえった。
「遅くなった事怒ってるんですか、矢口さん?
ヒーローは遅れて現れるってよく言うじゃないですかー。
ナイスタイミングで現れたじゃないですかー…。
あと、もう少しでののに殺されていたんですよ…。
だから…だからそんな顔しないで下さい…。
また私と仲良くして下さい…。お願いです…」
石川の顔がだんだん涙で歪んでいく。
151 :
ブレア娘。:2001/04/27(金) 00:08 ID:ZWpJWSN2
今になって石川の気持ち分かった矢口は自己嫌悪に陥った。
…私、今まで石川の事狂気の塊だと思っていた…だったら…
だったらもっと早く言ってくれたら…
涙を拭って今の気持ちを石川に話そうとしたその瞬間、矢口は目を疑った。
頭の中をこの森に来てからの記憶が駆け巡った。
いったい何が起こっているのか分からなかった。夢かと思った。
しかし、その考えもすぐに消えた。
「石川!あんたはヒーローにはなれへんで!」
聞き覚えのある声…。まさかでしょ?だってあの人は…。
声を聞いた瞬間、すぐさま後ろを振り返った石川は混乱した。
しかし、振り向いた時、その人物は石川の額を木で殴りつけた。
152 :
ブレア娘。:2001/04/27(金) 00:10 ID:ZWpJWSN2
ここまでです。
誰が登場したかは…次の更新で明らかです(笑)。
ドッキリオチ?(w
はたまたは、平家登場?創造膨らみます。
頑張ってください
154 :
名無し娘。:2001/04/28(土) 03:27 ID:76caqMR6
マスク復活か?
155 :
名無し娘。:2001/04/28(土) 06:14 ID:NFSGSkBY
こんなとこで「つづく」なんてヒドイな(w
156 :
ブレア娘。:2001/04/29(日) 18:36 ID:FJH6Oq8c
第27章:最後の話
…この感触は何?確かに額は痛いけど…この手の感触は…?
崩れゆく石川は手に妙な感触を感じていた。
それからすぐ、矢口に血が降り注いだ。
「きゃーーーーーーー!!」
矢口はけたたましい声で叫びわめいた。
その目の先には赤々と切れ目の入った辻の首があった。
そして辻は重力の力に負け地面に倒れ込んだ。
石川が殴りつけられた衝撃により、只でさえ突きつけていたナイフが
辻の首を切り裂いていたのだ。
石川がその事に気付くには時間はそんなにいらなかった。
「や…矢口さん…ど…どうですか…か…狩りに成功しましたよ…」
先ほどまでの声とは別に石川の声は裏返っていて震えていた。
手には辻の血を吸ったナイフが鈍く光っている。
「石川!声が震えとんで!人殺すのがそんなに怖かったか?」
聞き覚えのあるその声は少し笑い気味にそう言った。
157 :
ブレア娘。:2001/04/29(日) 18:38 ID:FJH6Oq8c
「裕ちゃん…なんで…なんでここにいるの…?それに…なんで石川を…辻を…!」
本当は平常心など保っていられない矢口だが、
突如現れた中澤の様子があまりにもおかしい為、なんとか自分を保たねばと必死だった。
「そ…そうです…わ…私、ののを…殺しちゃったじゃないですか…!」
石川も震える声を何とか落ち着かせ、死んだはずの中澤を問い詰めた。
「はぁ?あんたら何言ってんねん!私が死んだ?後藤みたいな事言うなや!
私はな、気絶しとっただけや。私が怖いくらいで死ぬと思ったか!?
心臓の音とか脈計ったんかいな!揺さぶっても起きれんもんは起きれんのや。
つーかな、今のではっきりしたわ。あの時、私を殺そうとしたのはあんた達なんやな。
だったら私も容赦せぇへん。私な、人殴る事はもう慣れてしまってん」
吉澤を殴った時に感じた嫌悪感は、石川を殴るときには微塵も残ってなかった。
「でも…裕ちゃんは…冷たかった…体が冷たかった…」
矢口は嬉しいのか嬉しくないのか自分でも分からなくなった。
「矢口…。心配してんやな。やっぱ矢口は良い子やな。
でも思い出してみぃ?地下なんてもとからひんやりしてる所やん。
そこで体温がどうだの言うのはおかしいで。
第一、矢口、あの時矢口は平常心を保って私の体温計ったん?
現に私はこうして生きてるんや」
…確かにあの時、私は裕ちゃんが死んだと思って混乱してた…
中澤の言葉を聞くたびに自分達が、中澤が死んだ、と決めた事が勘違いに思えてきた。
しかし、中澤の言葉に1つだけ疑問を矢口は持った。
その疑問を持ったのは矢口だけではなかった。
「中澤さん…今、ごっつあんもって言いました…?」
石川が矢口に代わりそう言った。
「あぁ後藤の事か…」
そう言うと中澤は勝手に語りだした。
158 :
ブレア娘。:2001/04/29(日) 18:38 ID:FJH6Oq8c
「あの時な、誰かが私を蟲だらけの部屋から連れ出してくれたんや。多分…矢口やな。
そんでな、その時は本当に私は気絶しとったんや。
でも、その後、体を揺さぶられたんや、後藤に…。
そんで私は気付いたんやけど、ちょっと気付くのが遅くて後藤が飛び出してしまってんや。
なんか市井がどうだの言ってたかな。上の方でなんか音がしてたんや。
私は追いかけようと思ったんやけど、行き違ったら大変だと思って外に出たんや。
そこで、後藤!!!って叫んでいたんや。
そしたらな…3階の窓からうっすらやけど人影が見えたんや。
夜やったからよくは見えへんかったけど、後藤だった。
私は、後藤!って叫んだ。早く合流せなあかんと思ったからや。
でも、後藤は狂ってた…。市井の名前ばっか呼んでいたんや。
挙句の果てに3階の窓から飛び降りたんや。
そんで地面に打たれた時、後藤は笑ってたんや。
私な、その後藤がモーニング娘。辞めていく私にかぶって見えたんや。
私もこんな風に死んでいくのかなって…。
そう思ってたら私、笑っていたんや、後藤の事見て。
で、こう思ったんや。“私だけ死んでたまるか!”ってな。」
159 :
ブレア娘。:2001/04/29(日) 18:39 ID:FJH6Oq8c
石川も矢口も口を出せずに中澤の話を聞いていた。
…狂ってる…裕ちゃん狂ってる…
矢口はそう感じ取った。もちろん石川も。
「だから、石川。辻みたいに死んでもらうで。
人の事言えなかったのは辻だけじゃなかったみたいやなぁ」
中澤が倒れている石川をあざ笑うかのように言った。
「待って…裕ちゃん!今までの事見てたの!?」
「当たり前や。石川も言うてたやん、“ヒーローは遅れて現れる”って。
だから遅れてきたんや。私は石川よりも遅れた。だから私の方がヒーローっちゅー事や。
そろそろ、石川!死んでもらうわ」
中澤がそう言うと石川は上半身を起こしナイフをブンブンと振り回した。
「な…中澤さんは人殴る事に慣れたようですけど…
わ…私なんか人殺す事に慣れたんです…!
だ…だから、中澤さん、私も殺しちゃいますよ!」
矢口から見てもそれは石川の強がりだとは分かった。
ナイフも声も震えていたからだ。
「な…中澤さん…あなた魔女です!
わ…私は…ののを…殺しちゃって…後悔しました…。
人の事言えませんけど…中澤さんは魔女です!魔女です!」
石川は立ち上がり、ナイフを構え戦闘体制に入った。
「な…中澤さん…。こんな話知ってますか?
復活する悪役はすっごく弱いんです。体も腐ってるんですって…。
腐ってるのは冗談ですけど…」
そんな石川を中澤は笑った。
「はぁ?私が悪役!?人の話聞いてないんか!
私はヒーローやで!魔女でもないんや!」
中澤も石川も戦闘体制に入り、その場に緊張感が溢れた。
160 :
ブレア娘。:2001/04/29(日) 18:40 ID:FJH6Oq8c
「矢口?お願いがあるんやけど、石川の腕ふさいでくれへんか?
ナイフ持ってたんじゃ危なっかしくて近づけんわ!」
矢口は驚いた。この2人の命は自分が握っている重大さに気付いた。
しかし、石川は背後に矢口がいるも、振り返る事は無かった。
中澤も石川も、矢口を信頼している。しかし、矢口は勝手に体が動いていた。
両手で石川の脇を下からすくい上げ、両腕をふさいでいた。
…私…石川と裕ちゃんを…天秤にかけたんだ…
「や…矢口さん…」
かすかに聞こえた石川の声。
矢口は聞こえない振りをして目をつぶった。
ドン!ドコ!バキ!
石川の体が木で殴られていくのが体を伝わる。
中澤が5発ほど殴ると矢口は体を石川から離した。
すると石川は再び地面に倒れ込んだ。
「矢口!よくやったで!さすがは矢口や!」
石川にはもうほとんど気力が残っていない。もはや死を待つだけだ。
「最期になんか言う事あるか?最後の情けや」
中澤がそう言うと、石川は最期の力を振り絞り、矢口を呼んだ。
矢口は石川の側に寄ることが出来なかった。
「や…矢口…さぁ…ん…」
石川の舌はもう上手くまわらなくなってる。
しかし、その声が涙声なのは分かる。
矢口はいても立ってもいられず、石川の側に行った。
161 :
ブレア娘。:2001/04/29(日) 18:40 ID:FJH6Oq8c
「や…ぐち…さん…。こんな…はな…し…知って…ますかぁ…?
いち…日目の…テントでの…お…喋り…とっても…楽しかっ…たんです…
これか…らも…こう…して話して…いけたら…良いなって思いま…した…。
これは…冗談…無しですよ…」
石川の目から涙が零れ落ちた。矢口も涙を流した。
…ごめんね…石川…ごめんね…
3分前に戻れたなら…矢口は神様に祈った。
そんな2人を中澤は呆れながら見ていた。
「ほな、そろそろ死んでくれへん?」
木を振り上げた中澤はそう言った。
矢口は中澤を止めようとしとうと思った矢先の事だった。
そして、中澤は石川の頭を、腹を再び殴り続けた。
石川の顔は、まるで殴られていないかのように…笑っていた。
「また…また私を笑うんか!」
中澤は執拗に顔を痛めつけた。
矢口の顔に石川の血が飛びついた。
辻と石川の血をまとった矢口は、中澤を見ている事しか出来なかった。
あぁ、裕ちゃんが私に見える…。裕ちゃんも私も魔女なんだ…。
矢口は、中澤が石川を殴り終わるまで放心状態だった。
162 :
ブレア娘。:2001/04/29(日) 18:42 ID:FJH6Oq8c
更新しました。今週中には完結しすると思います。
伏線は使い果たした気がします。
感想お待ちしてますー!
163 :
名無し娘。:2001/04/30(月) 00:48 ID:cCE2hqIg
あげてもいい?
おもろいから作者がんばれ!
164 :
名無し娘。:2001/04/30(月) 01:13 ID:9kORdqKg
こーゆー中澤の使い方は新鮮でいいね。
バトロワ小説の中澤って大抵序盤で瞬殺か善人のまま憤死だもんな。
165 :
名無し娘。:2001/04/30(月) 01:22 ID:.PGYh8KQ
そだね。たまには型にハマった中澤像じゃなくて、
深層心理というか絶対に持ってる屈折した部分も欲しい(w
166 :
名無し娘。:2001/04/30(月) 03:24 ID:cCE2hqIg
たしかに中澤は新鮮だったね。
俺の中では名作だ、これ。
167 :
名無し娘。:2001/05/01(火) 02:01 ID:8lSmed6A
石川のセリフ
>冗談ですけど→最後の>冗談…無しですよ…
が何かヨカタ…
最後まで期待sage
168 :
名無し娘。:2001/05/02(水) 17:27 ID:zG03tRao
保全さげ
がんばってくれ。
169 :
名無し娘。:2001/05/02(水) 17:47 ID:JHKZhSlA
期待するならあげようぜ!
170 :
名無し娘。:2001/05/02(水) 18:41 ID:zjbsaRMY
保全sage
171 :
名無し娘。:2001/05/03(木) 03:05 ID:oMZsoarg
sage
172 :
名無し娘。:2001/05/03(木) 09:35 ID:ZOliy/qE
保全
173 :
さいぼしくん:2001/05/03(木) 13:00 ID:PtVjdc8c
(∂ゝ∂)
174 :
名無し娘。:2001/05/04(金) 00:39 ID:lBCjSUd.
保全
175 :
名無し娘。:2001/05/05(土) 12:05 ID:7t1dBVbE
保全
176 :
ブレア娘。:2001/05/05(土) 17:45 ID:v8LCSAxg
さくしゃです。
いま、IMEがこわれてしまって、こうしんがおくれてしまいました。
すいません。
まもなく、つづきができるので、たのしみにしてください。
ほぜんしてくれたみなさん、ありがとう!
177 :
名無し娘。:2001/05/06(日) 16:03 ID:3vJDJX32
hozen
178 :
ななし:2001/05/07(月) 00:00 ID:GvJ5NHeY
hozen
179 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 02:21 ID:N.Y7/te2
ブレア娘。よ、はやくラストきぼーん
180 :
ブレア娘。:2001/05/07(月) 16:51 ID:JprWXnmY
第28章:痕跡
目の前には3人の死体。笑っている中澤。
そして…血にまみれた私の腕。
決して責める事はできない。私もそうだったから。
“狩り”をしている時には気がつかなかった。人を殺す事の重さ。
圭ちゃん、なっち、確かにあの時、私は殺そうとしていた。
でも、殺せなかった。まだ自分の中に理性があったのだろう。
しかし、先ほど石川を押さえ込んだとき、私は自分の意思で動いていた。
理性があったにもかかわらず、殺人の片棒を担いでしまった。
いや、殺したと言っても過言ではないか…。
冷静になれば自分の罪は消えるのかもしれない、
そんな浅はかな考えを矢口は信じていた。
でも、石川が殴られる音が…耳から離れてくれなかった。
181 :
ブレア娘。:2001/05/07(月) 16:51 ID:JprWXnmY
「矢口!落ち込むなや。あんたも私と一緒で嬉しいやろ?
でさ、ちょっとこれ見てみい。何やと思う?」
突然中澤の手が目の前に出された。
その手には、なにやら茶色い物の入った銀紙が乗っていた。
「これは…チョコ?」
自然に答えている自分に矢口は驚いた。
何かが自分の中で壊れてしまったんだ、そう確信できた。
「そうや、チョコや。圭坊の死体からちょっと離れていたところにあったんや。
こんな状況でもチョコを食ってる奴と言ったら…」
「なっち…」
「そうや、なっちや!辻や石川の話を総合すると、
吉澤、加護、後藤、それとこいつらが死んだんや」
そう言いながら、中澤は石川の死体を蹴り上げた。
吉澤が死んだ事に矢口は少し反応したが、詳細を聞く気にはなれなかった。
「圭織はどうだか知らんが、少なくともなっちは生きてる事になるな」
その言葉に矢口は安心した。
「で、次に圭坊が握っている木を見てみい。血が付いてるやろ?
しかも深めに。これはつまり、なっちが怪我をしているって事や。
地面を良く見ると血の跡があるし。なんで圭坊がなっちを傷つけたかは知らんけどな。
でもなっちの死体はここにはない。つまり圭坊を殺して逃げたって事や。」
182 :
ブレア娘。:2001/05/07(月) 16:53 ID:JprWXnmY
また矢口は安心した。
圭ちゃんに殺されずにすんだんだ。
深く傷を負うくらいで済んだんだ。
血が流れるくらいで済んだんだ。
なっちが圭ちゃんを殺したんだ。
私だけじゃないんだ。
「つまり遠くに行ってる確率は低いんや。足に怪我してたらなおさらや。
後な、地面がこの前の雨で緩くなってるお陰で、ほれ見てみい。
足跡や。なっちは体重が重いからな、かろうじて見えるんや」
矢口は立ち上がり、中澤の指差す地面を見ると確かに足跡がある。
地面が乾きつつも、体重の重いなっちの足跡はかすかに見えていた。
矢口は中澤の観察力に圧倒された。
そして、その執念の深さに恐怖よりも哀れみを感じた。
「あと少し地面が乾いていたらアウトやったな。運がええわ。
さて、殺しに行くか。多分こっちの方角にいるはずや。」
自信に満ちたその声はとても弾んでいた。
「で、でもさ、裕ちゃん。もし、なっちが隠れていたら駄目じゃない?
特に私なんかなっちに恐れられていると思うよ。」
「大丈夫や。こっちには考えがある。安心しぃな」
何か企みがあるのだろう。しかし矢口はそれを気にしなかった。
…裕ちゃんに任せておけば大丈夫。そう確信していた。
そしてその足跡がある方向に歩き始めた時、矢口はハッと気付いた。
…私、なっちを殺す気なんだ…
そう思った矢先、矢口は振り返り石川の死体へ駆け寄った。
「やっぱ私が魔女かも…」
そう言い、矢口は石川の死体を1発蹴り上げた。
そんな矢口を中澤は呆れながら見ていた。
183 :
ブレア娘。:2001/05/07(月) 16:54 ID:JprWXnmY
更新遅れてすいませんでした。
保全してくれたみなさん、ありがとうございます!
184 :
名無し娘。:2001/05/08(火) 09:02 ID:DVXliJNo
hozen
185 :
のの:2001/05/08(火) 23:37 ID:cJ86fTjg
( ´D`)<ののはしなないのれす
186 :
名無し娘。:2001/05/09(水) 08:47 ID:ORU2cK8o
hozen
187 :
ブレア娘。:2001/05/09(水) 23:34 ID:vlbsRUsg
第29章:歯車
どれくらい歩いたのかな?そんなに歩いてはいないはず。
今は休憩してるけど、足は限界がきている。
足は、血は引いたものの未だに激痛が走る。
なっちは…深刻な顔をしている。
それもそうだよね。仲間に殺される寸前だったんだもん。
飯田はなんとかこの場を和ませようと打開策を考えた。
「人生って素晴らしい〜ほらいつもと〜同じ道だって〜…」
突然飯田が歌いだした。
「圭織…、その歌好きだね。確か、この森に来た時も歌ってなかった?」
安倍の顔に少しばかり活気が戻った。それだけで飯田は満足した。
「うん、カオリこの歌大好きだよ!だって人生って楽しいじゃん!素晴らしいじゃん!
みんなに会えたし、みんなの事大好きだし!」
…人生が素晴らしいか…安倍は思った。
室蘭時代いじめられた事、後藤にメインを奪われた事。
それが素晴らしいと言えるの?安倍は自分に聞いた。
188 :
ブレア娘。:2001/05/09(水) 23:35 ID:vlbsRUsg
「ねぇ…圭ちゃんの事なんだけど…」
飯田がポツリと呟いた。安倍は飯田が何を言いたいかは予想がついた。
「圭ちゃんの事許してほしいんだ…。石川の事も…。」
「でも、なっちは…もう誰も信じれないべ…」
「そんな事言わないで…。カオリたち仲間じゃない…」
「こんな…森の中で仲間に殺されかけて、それでも人生って素晴らしいのかな?」
「…。それでもカオリは圭ちゃんも石川も、みんなの事大好きだよ…」
「…」
「みんなでこの森抜け出したら、またみんなで歌おうよ、ねっ。」
「…」
緊迫した会話が終わろうとした時、気の抜けるような“ぷぅ”という音がした。
飯田は顔を赤らめながら、
「あ、カオリちょっとトイレ行ってくるね」
と、安倍から離れていった。
「ちょっと、近くで良いべさ?それとも、なっち付いて行こうか?」
「え!音聞かれたら恥ずかしいじゃん〜!エッチー。ちょっと時間かかるかも。
本当に恥ずかしいから、ちょっと離れるね。」
苦い顔でお腹をさすりながら飯田は歩いていった。
視界から飯田が消えると安倍は膝を抱え座り込んだ。
189 :
ブレア娘。:2001/05/09(水) 23:35 ID:vlbsRUsg
…人生が素晴らしい、本当なのかな。
石川、矢口、圭ちゃん。私を殺そうとした。
それは、この森がいけないの?それとも…。
圭織、私だって皆を信じたい…。でも…。
私も、圭織のように笑いたい…。どうしてそんなに強いの…?
できる事なら昔に戻りたい…。この森に来る前に…。
皆で笑っていた時に。皆に名前を呼んでほしい。
「なっち!」
そう、そんな感じに……?え?
「なっち!」
空耳じゃない…。裕ちゃんの声だ…。
圭ちゃんから逃げてきた方向から声がする。
“みんなの事大好きだよ”
ねぇ圭織。なっち、人生が素晴らしいかどうか、みんなの事信じれるか試してみる…。
裕ちゃん、矢口、辻、加護、よっすぃー、ごっつぁん、圭ちゃん、石川、そして圭織。
みんなの事が大好きだって事、もう1回確かめてみる。そしたら、みんなで歌おうね。
だから、もうちょっと…もうちょっとトイレしててね…。
190 :
ブレア娘。:2001/05/09(水) 23:36 ID:vlbsRUsg
安倍は飯田が行った方向にある木に、何かをくくり付けた。
そして、痛みで疼く、不安で震える左腕の傷を摩りながらその声の方向に走っていった。
「裕ちゃん!」
「人生って素晴らしい〜ほらいつもと〜同じ道だって〜…」
飯田は用をたしながら歌っていた。
中澤の声を、安倍の声を飯田は聞いていなかった。
「今、なっちの声が…した?」
矢口は不思議な感覚に襲われた。嬉しいのか嬉しくないのか、自分でも分からない。
「矢口!あんたは距離を取って付いて来な!」
「う、うん」
中澤は右手に木を握り締め、体の後ろに隠した。
矢口は、石川の手から取ったナイフをぎゅっと握った。
そうして中澤と矢口は、安倍の声がする方向に走っていった。
191 :
ブレア娘。:2001/05/09(水) 23:39 ID:vlbsRUsg
次の更新で、たぶんラストです。
もうちょっとがんばります!
感想かいてくれると、さいわいです。
192 :
名無し娘。:2001/05/10(木) 21:00 ID:se98Rjlc
ガンバレ!ブレア娘。
193 :
名無し娘。:2001/05/11(金) 01:58 ID:RnzJ5nXU
hozen
194 :
名無し娘。:2001/05/11(金) 02:00 ID:RnzJ5nXU
hozen
195 :
し:2001/05/11(金) 02:54 ID:0BPY5NJY
196 :
名無し娘。:2001/05/12(土) 00:39 ID:vjNP/9VA
気付け飯田ーーーー!
197 :
あはは:2001/05/12(土) 00:39 ID:0IG.Ps2U
この小説を読んでいるやついるのかよ(w
198 :
名無し娘。:2001/05/12(土) 01:40 ID:43QsLB.A
>>197 んなこといちいち書かない!
>作者さん
私は読んでますよー。ラスト楽しみです。
199 :
名無し娘。:2001/05/12(土) 05:32 ID:MUHg4AKU
俺も読んでるよん。
それもドキドキしながら。
200 :
名無し娘。:2001/05/13(日) 00:35 ID:617Rd/q.
sage
201 :
名無し娘。:2001/05/13(日) 21:41 ID:eEugae3s
ラスト期待保全
202 :
名無し娘。:2001/05/14(月) 02:59 ID:.FmIZkng
203 :
名無し娘。:2001/05/14(月) 03:04 ID:ZaUNjzq.
204 :
山本:2001/05/14(月) 04:08 ID:/cyWETFg
205 :
ブレア娘。 :2001/05/14(月) 21:57 ID:0Wf7H5tA
みなさん、ありがとう!
更新が遅れてすいません!明日あたり、できそうです。
206 :
レッド ゼッツリン:2001/05/16(水) 00:45 ID:77LU3yRE
保田が普通の被害者から狂気にとりつかれる役に変わるあたりがスムーズで上
手い。
飯田、安倍ペアがどうなるのか楽しみ。
ただ、矢口が石川に同調するあたりに心理や行動の描写がなさすぎたのはねら
ったのかもしれないけど、矢口だけ全体的に不自然に感じる。今後の矢口のま
とめ方(消え方?)に期待。
207 :
ブレア娘。:2001/05/16(水) 20:17 ID:9ICunKOo
第30章:信じる心
「なっち!なっち!なっち!」
中澤の声は走れば走るほど近くに聞こえる。
「裕ちゃん!」
その度に安倍はそう声を張り上げた。
「裕ちゃんも頭良いな…」
走る中澤と距離をとって走っている矢口はつくづくそう思った。
中澤の考え、それはリーダーと言う立場を利用した考えだった。
この森の中、リーダー中澤としての信頼は絶大だ。
現に後藤が中澤を信頼しきっていた。
もし、精神的に崖っぷちの時、信頼の置ける人物の声がしたら…。
その考えは見事的中し、今安倍と中澤は互いの存在を確認している。
…私は裕ちゃんのことを信頼しきってる…
自分の行動が理解できないまま、矢口は立ち止まった。中澤が立ち止まったからだ。
208 :
ブレア娘。:2001/05/16(水) 20:18 ID:9ICunKOo
「はぁはぁ、なっち、見つけたで…」
中澤の手に力が入る。
「はぁはぁ、裕ちゃん、ちょっとお願いがあるべさ…」
息切れしながら2人は再会の言葉を交わさずにいた。
「なんや…?お願いって」
最後のお願いくらい聞いてやろうと中澤は思った。
リーダーの自分を信頼してくれた、せめてものお礼のつもりだ。
「あ、あのね…ちょっとこっちに来てほしいんだ…。ちょっと歩くけど良いべか?」
「歩きながらでええか?」
「うん」
そして、安倍はもと来た道を中澤と共に戻って行った。
中澤は安倍に気付かれる事なく、矢口に手で「ついて来い!」と合図した。
209 :
ブレア娘。:2001/05/16(水) 20:19 ID:9ICunKOo
なんでこんな事になっているんだろう…。
そうだ、一昨日からこうなってしまったんだ。
怖かった、あの夜1人にされてすごく怖かった。
真っ暗で、とても真っ暗で…。
だから…石川達のいるテントに行ったんだ…。
今なら分かる。私は裕ちゃんがいなくちゃだめだったんだ…。
私は、待っていた。ずっと裕ちゃんを待っていた。
裕ちゃんに「待ってろ」って言われたから。
でも…裕ちゃんは帰ってこなかった。朝になっても帰ってこなかった。
だから…私は“狩り”…いや、“探し”ていたんだ。裕ちゃんを…。
なんで気付かなかったんだろう…。なんで石川と行動を共にしたのだろう…。
答えはすぐ分かった。守ってもらいたかったんだ、私…。
石川が圭ちゃんにナイフを刺した時、石川が強者、圭ちゃんが弱者に見えた。
だから私は…強者についた。自分を守るために。
石川は裕ちゃんの代わりだったんだ。
裕ちゃんが死んだと思った時、私は石川の事を怖いと思った。
だから別れた。もう“裕ちゃんの代わり”じゃなくなったから。
裕ちゃんは死んじゃったのだから。
でも、裕ちゃんが生きている事が分かった時、私は再び石川を捨てた。
“代わり”は本人の前では所詮“代わり”でしかないのだから。
そう…だから私は裕ちゃんを信じる。ついて行く。
裕ちゃんしか私を助けてくれない。そう、絶対そう。
私は魔女…そう魔女。そしてそんな私が信頼している人も魔女。
魔女は私だけじゃない。
でも、でもなんだか私、何か忘れている気がする…。
210 :
ブレア娘。:2001/05/16(水) 20:21 ID:9ICunKOo
一週間も更新遅れてすいませんでした!
感想かいてくれたみなさん、ありがとう!
指摘してもらうと、こっちも文章を勉強できるんでありがたいです。
211 :
レイク:2001/05/16(水) 22:27 ID:vEIdtZ4Q
こんばんわ。レスありがとうございました。
読みましたよ、これ(「ブレアウィッチ娘プロジェクト」)。
おもしろいっすねぇ〜、先が気になります。
どうやったら、そう人を引き込むような小説がかけるのか・・。
勉強になりました。更新楽しみにしています。
212 :
レイク:2001/05/16(水) 23:12 ID:6EslkPPY
そうそう、書き忘れた事あったんですよ。
例の保存屋さんの件。どこかで聞いた(書いてあった)んだけど
保存屋さんのBBSってとこがあって、保存依頼が出てると保存して
くれるみたい。
誰か読者の方にやってもらったらいかがですか?
213 :
レイク:2001/05/16(水) 23:14 ID:6EslkPPY
つーか、俺が依頼しときゃいいのか。(ワラ
214 :
ブレア娘。:2001/05/17(木) 17:16 ID:gAaOZTMQ
更新遅れててすいません!
「世にも奇妙な娘達」で時々小説人って名前で書いているんで、
「更新遅ぇ〜よゴルァ!」って人は、そちらも読んでみてください。
215 :
ブレア娘。:2001/05/17(木) 17:21 ID:gAaOZTMQ
遅レスすいません
>>192 ありがとうございます!
もうそろそろでラストなんで、ぜひ楽しんでいってください。
>>196 飯田はこれからの展開にからんできますよ〜。
>>198 ありがとうございます〜。
読んでくれている人がかいてくれると、うれしいです!
>>199 ドキドキしてくれましたんですね。本望です!
>>203 どこらへんがこわかったですか?教えてもらえると、これからの向上になります。
>>レッド ゼッツリンさん
指摘ありがとうございます!
矢口については、1つ前の更新でちょっと書きました。
これからも指摘おねがいします。
>>レイクさん
色々とありがとうございます!
レイクさんの小説も、1人1人キャラおもしろくて、楽しいです!
更新もすっごくはやくて。みならいます(w。
216 :
レイク:2001/05/17(木) 19:27 ID:exa.8NHU
いえいえ・・。
そんなたいそうな事はしておりませんので・・。
そうそう、保存屋さん見ていただけました?
ブレア娘。さんの、ちゃんと載ってましたよ。
保存屋さんがすばやく、仕事してくれたみたいですね。
小説について、矢口大好きなんで、先が気になります。
自分のペースでがんばってください。
217 :
レイク:2001/05/18(金) 17:59 ID:lhgTzipI
ほぜーんっ。
218 :
名無し娘。:2001/05/18(金) 19:48 ID:pRN9E30w
レイク発見、ブレア娘。面白上げ。
219 :
名無し娘。:2001/05/18(金) 19:51 ID:wa3wcGXs
世にも奇妙な娘達って何?
220 :
名無し娘。:2001/05/18(金) 20:19 ID:UZBFgMtY
221 :
名無し娘。:2001/05/18(金) 22:19 ID:wa3wcGXs
>>220 おもしろいね。
あがってないから知らんかったよ。
教えてくれてサンクス
222 :
名無し娘。:2001/05/19(土) 00:15 ID:0ZkEcEXA
さげ 意味はないが
223 :
名無し娘。:2001/05/19(土) 00:44 ID:JgOgAzl.
あげ 意味はないが
224 :
名無し娘。:2001/05/19(土) 01:35 ID:FDDXuONs
面白いです。
ラストまで頑張ってください。
225 :
椎名旋:2001/05/19(土) 02:07 ID:rrRDlRvA
アンタ巧スギ。
ブレア娘万歳!
保全。ってナニ?(I'm初心者)
226 :
名無し娘。:2001/05/20(日) 09:58 ID:IHSmwxTQ
hozen
227 :
名無し娘。:2001/05/21(月) 11:14 ID:EQFFZMF6
h
228 :
名無し娘。:2001/05/22(火) 01:20 ID:zJheEj7E
229 :
ブレア娘。:2001/05/22(火) 17:36 ID:IexbniHI
第31章:忘れそうだった
「ふぅ」
用をたし終わった飯田は安部の元に向かった。
…なっち、少しは落ち着いたかな?
飯田は安倍に、1人になれて落ち着ける時間を与えようとしたのだ。
もちろん、久々のお通じが来た事は偶然だが。
…どれくらい時間がたったのかな?
久々のお通じだけに、それなりの時間は要した。
…なっちのいる方向に向かってしたから迷わないね。
迷わないように配慮した飯田は、真っ直ぐ道を進んでいった。
…結構離れていたのね…
これではぐれたらメンバーに顔向けできない、飯田はそう思った。
しばらく歩くと何やら話し声が聞こえてきた。
…なっち、だれかと合流できたの…?
そう思うと飯田は嬉しくなり、その声がする方向へ飛び出そうとした。
しかし、飯田の目に何かが入ってきた。
それは、木にくくりつけられていた細く長く曲げられた2本の銀紙だった。
この森に銀紙があるだなんて不自然だ…、飯田はそう直感した。
その2本の銀紙はクロスしていて、「×」を意味しているようにも見えた。
よく見てみるとそれはチョコの銀紙だった。
飯田はそれが安倍の物だとすぐ分かった。
…来るなって事…?
飯田は、安倍の意図が分からないまま野性的直感で身をその場に潜めた。
230 :
ブレア娘。:2001/05/22(火) 17:37 ID:IexbniHI
「はぁはぁ…裕ちゃんここでいいべ…」
安倍は膝に手を当てて走り続けた体を休ませた。
「はぁはぁはぁ…なっち…歩きながらって言ったやん…」
中澤の顔にも疲れの顔が見える。その息遣いは安倍よりも荒かった。
そしてチラッと後ろを振り返ると矢口が木の陰に隠れているのが見えた。
「裕ちゃん…」
気付かれた?中澤はそう思ったが、安倍は気付かなかったようだ。
「裕ちゃん…矢口と梨華ちゃん…会ったべか?
私は会って…殺されそうになった…。私は裕ちゃんを信じて良いの?」
涙を目に溜めながら中澤に聞いた。
「…もちろんや…もちろんやで…」
中澤は体の後ろに隠している木を力強く握り締めた。
「じゃぁ…じゃぁさ…なんで木を隠してるの…?
それにね、さっきから矢口…着いて来てるでしょ…?」
中澤は心臓が一瞬止まったかと思うくらい驚いた。
…こいつ、ずっと知って私を呼んだんか?
「ただの、護身用って言うか、無いよりはましだからだよね…?
でもね、梨華ちゃんが見当たらないの…どうして…ねぇどうして…」
安倍は痛む左腕を横に平行に伸ばし、手を精一杯開いた。
「なんの占いや、なっち?そんな事しても石川は戻ってこないで。
加護も辻も吉澤も圭坊も後藤もみんな死んだんや。
飯田はよぉ分からんけど、なっち知ってるか?」
中澤はするりと木を取り出した。
231 :
ブレア娘。:2001/05/22(火) 17:38 ID:IexbniHI
…嘘だ。絶対にそんなの嘘だ。
飯田は涙をこらえながらも、その真実を否定した。
今すぐ飛び出せばなっちを助ける事ができるかも知れない。
でも…でもどうして、なっち?
その手は出てくるなって意味なの?
「圭織は…死んだよ」
その安倍の言葉の意味が飯田には分かった。
でも、私、そんな事望んでないよ…
私は…みんなで助かりたい…私だけが助かりたくない…
「ほんまか?なっち?殺したとちゃうんか?圭坊みたいに」
「なっちは…誰も殺してない…」
「あー、そーですか。でもな、私と矢口は…」
その先を中澤が言う前に安倍が手で制した。
「待って。それ以上言わないで。」
232 :
ブレア娘。:2001/05/22(火) 17:38 ID:IexbniHI
…裕ちゃんは人を殺したのかな…
まさか!なっちは何考えているんだろう…
でも、この恐怖感は何…怖い、正直怖い。
なっちは信じたい…私は「モーニング娘。」で良かったと思いたい…。
なっちは信じているのかな…裕ちゃんを…みんなを。
でも…みんなが死んだって事は信じたくない…。
じゃぁなっちは裕ちゃんを信じないの…?
ここの森に来てから、なっちは誰かを信じたのかな…
辻は加護をどっかに連れて行っちゃったし…圭ちゃんもなっちの事を…
矢口も梨華ちゃんもなっちの事を…
…なっちはみんなの事嫌い?
ううん、大好きだよ。大好き…。
…なっちはみんなの事疑ってる?
ううん、そんな事無い。でも、この森に来てからは…
横目で飯田に答えを求めようとしたが、飯田は背中を向け、震えていた。
あ、そうだ。さっき、裕ちゃんと会ってから、ここに戻る時、
なっちは、矢口も木の事も分かっていた、気付いていた。
でもさ、その時、なっちは裕ちゃんたちに背中を向けていたんだ。
矢口がいたにもかかわらず、裕ちゃんが木を隠してるにもかかわらず…。
私…私…信じていたんだ。今の今まで。忘れそうだった…。
233 :
ブレア娘。:2001/05/22(火) 17:39 ID:IexbniHI
「やったーーー!!!」
安倍は突然叫びだした。その高らかな声は、この深い闇のような森に、
一筋でありながらも力強く差す光のようだった。
その声に飯田は顔を上げ、安倍を見つめた。
すると安倍は笑顔で…しかし涙を流しながらこう言った。
「えへ…裕ちゃん、矢口。私ね、みんなの事信じれたんだよ!
だからね…だから私は…なっちはこのままでいたいんだ…!」
安倍は広げた左手をピースの形にした。
…なっち…?何する気…?ねぇなっち…?
飯田は飛び出そうとした、が、かすかな風にゆれる銀紙が飯田を許さなかった。
…この銀紙が…なっちの答えなの…?
そして安倍は笑顔のまま目をつぶり、思い切り口をあけた。
そして、体全体の力を使って安倍は、自らの舌を噛んだ。
安倍の口から血が少し噴出し、安倍は大地に倒れ込んだ。
234 :
ブレア娘。:2001/05/22(火) 17:39 ID:IexbniHI
中澤も飯田も唖然とした。飯田は引き付けを起こしそうになった。
だが、今見つかっては安倍に顔向けができない。そう思い、飯田は口を手で押さえ込んだ。
しかしその手も、拭いきれない程の涙で濡れた。
…私、泣いてる?
矢口は泣いている自分に気がついた。
あぁ、そうか、そうだったんだ。
忘れている事、やっと思い出せたよ、なっち…。
忘れそうだったよ…。
私ね…誰を信じるとか、それ以前にね…
私…みんなの事大好きだったんだ。
235 :
ブレア娘。:2001/05/22(火) 17:49 ID:IexbniHI
更新遅れてすいません!
これじゃぁ、週一になってしまう…早くできるようにがんばります!
>>レイクさん
保全ありがとうございます!
矢口が好きなんですね、一寸矢口(w
小説頑張ってください!
>>218 ありがとうございます〜!面白いなんて思われて嬉しいです。
>>219-210
「世にも奇妙な娘達」どうでしたか?「スポットライト」とか書いたのです。
終わりが「Fin」になってるのが僕の作品です。
>>224 ありがとうございます!ラストはもうそろそろ(更新頻度により)です!
最後まで楽しんでください!
>>椎名旋
巧いですか?嬉しいです!
どこら辺が面白かったか教えてくれると幸いです。
>>228 ありがとうございます!
感想とか書いてくれるとさらに嬉しいです(w
保全してくれた皆さん、ありがとうございます!
236 :
椎名旋:2001/05/22(火) 19:17 ID:M8ywQ10E
心理描写トカ、死にへの持って行きかたなど…具体的には後藤のコワれかたあたりが気に入ってます。
あと、いちーちゃん出してくれておおきに(藁
237 :
名無し娘。:2001/05/22(火) 20:26 ID:/kpQEDSI
おもれえおもれえ
238 :
ポルノ:2001/05/22(火) 21:11 ID:rBwOl51.
スンゲーいいっす・・
なっち・・何かエエわあ・・
これで生きてるの、中澤、飯田、矢口だけか・・・・
続き期待
239 :
レイク:2001/05/22(火) 21:13 ID:ErxSEqo.
なっちは自ら死を選んだんですね・・・。
この行為の影響は3人にとってとっても大きいものだと思いました。
この先の3人の心理が気になりますね。
がんばってください、応援しています。
240 :
椎名旋:2001/05/23(水) 18:55 ID:/J5GIIZ.
こないだsageミスってた(藁
>>236)。
i-modeは辛いス。
241 :
ぼかあねえ:2001/05/24(木) 18:20 ID:fYbg5ERY
ほ
242 :
名無し娘。:2001/05/25(金) 03:14 ID:x14jyO/M
わっしょい!
243 :
ぼかあねえ:2001/05/25(金) 16:31 ID:izKFM5G6
たのすぃみだ
244 :
名無し娘。:2001/05/27(日) 10:00 ID:gVnzyB2o
作者がんばれ保全
なっちってとことん良い奴だな。
頑張ってください
246 :
名無し娘。:2001/05/28(月) 16:52 ID:FT.ji/mg
保全
247 :
ブレア娘。:2001/05/29(火) 00:50 ID:X1N2Uw1w
更新遅れてすいません!
じかんが、すくなくて・・・。
あしたにでも更新できます。ってゆうか、とんでる?
248 :
名無し娘。:2001/05/29(火) 13:20 ID:xJfwN0bM
age
249 :
ポルノ:2001/05/30(水) 18:43 ID:Dmh98Sds
更新期待。sage
250 :
レイク:2001/05/31(木) 03:40 ID:ue9vQxz2
ほぜーんレイク!!カンペキュデュエア!!BYジーコ
251 :
名無し娘。:2001/06/01(金) 23:27 ID:KpWTSk26
hozendayo
252 :
レイク:2001/06/02(土) 22:12 ID:Cfp3GFU.
ホゼーンレイク!!がんばってーなぁ〜♪
253 :
名無し娘。:2001/06/03(日) 21:30 ID:bKQfi2.6
保全だす!
254 :
ブレア娘。:2001/06/03(日) 21:59 ID:XefdcGDM
すいません、あとちょっとです・・・・
こんなに、おくれてしまって・・・。すいません、まじで。
255 :
ポルノ:2001/06/04(月) 16:14 ID:M1RrCJEE
保全です。待ちますよ、いつまでも
256 :
名無し娘。:2001/06/05(火) 21:10 ID:1oFlFYUg
作者がんばってね保全
毎日覗きにきてます。
( `.∀´)<おもろいよ
259 :
ポルノ:2001/06/08(金) 20:47 ID:79IlmgT2
さて、保全しとくか。
260 :
ブレア娘。:2001/06/08(金) 23:30 ID:k2w8Bb4w
すいませーん、じかんがなくて。。。
あした、いじでも、かきます。
おもしろければマターリでいいよ。
262 :
ポルノ:2001/06/09(土) 16:56 ID:aSQzkWJw
263 :
名無し娘。:2001/06/11(月) 18:16 ID:QZQ1JR12
hozen
264 :
名無し娘。:2001/06/12(火) 23:19 ID:vjNP/9VA
保全。作者殿、あまり気負いすぎぬように…。
265 :
名無し娘。:2001/06/13(水) 00:47 ID:N6LRo.mw
保全。がんばれ!まってるから、おくれていることは気にするな〜
266 :
名無し娘。:2001/06/14(木) 22:50 ID:MK9tXujc
hozen
267 :
ブレア娘。:2001/06/15(金) 02:02 ID:IS6s.oL6
やっと更新です。予告がはずれてすいません!
268 :
ブレア娘。:2001/06/15(金) 02:05 ID:IS6s.oL6
第32章:大好き
加護の死体を見つけた時、正直自分の気持ちが分からなかった。
“狩り”っていう名目で強がっていたけど…心のどこかで私は泣いていた。
だから、「新鮮じゃない」とか言って、手を出さなかった…違う、手を出せなかった。
最初になっちを襲ったときは…?やっぱり、心がブレーキをかけていた。
やっぱり“狩り”を理由にして…。
だって、私が私を止めないと…石川が何したか分からないんだもん。
家の時だってそう。私は確かに乗り気じゃなかった。これは確信できる。
だって…裕ちゃんがいたんだもの…。
だから、後藤が死んだときは正直に悲しむ事ができた、泣く事ができた。
“狩り”って言うブレーキがなくなったから…裕ちゃんが見つかったから…。
早く気付けばなっちを助けれたかな…。ううん、それはありえない。
だって、裕ちゃんが決めた事だもの。
私の中で裕ちゃんは絶対の存在だった。
だから、石川を容易く見捨てれたんだ。
私は裕ちゃんと言う存在で、みんなの事が見えなくなっていたんだ。
でも、みんなはもういない…。
じゃぁ私はどうしたら良い…?
―喜べば良い?
裕ちゃんが生き残っているから。
―悲しめば良い?
どっちにしろ、私は魔女には変わりない…。
みんな死んじゃったから。
269 :
ブレア娘。:2001/06/15(金) 02:06 ID:IS6s.oL6
ボサボサの髪が、さらにぐしゃぐしゃにされる。
中澤は髪を手で、かき混ぜるように乱した。
「なっちまで、私を笑うんか!なっちまで…」
弱々しいその声とは裏腹に、中澤の足は、安倍の死体をガンガン蹴っていた。
その力は強まると思われたが、次第に弱くなっていった。
「なぁ矢口。私、魔女なんか?」
背中を向けて中澤が聞いてきた。
「…。私も、だよ」
矢口は頭で色々考えを巡らせながら、そう答えた。
「“も”って何や!やっぱり矢口も私の事を魔女やと思ってるんか!?」
再び安倍が強く蹴られる。
…うん、思ってる。
それは言えなかった。大好きな裕ちゃんが悲しむから。
じゃぁ裕ちゃんを助けるにはどうしたら良いの…。
270 :
ブレア娘。:2001/06/15(金) 02:07 ID:IS6s.oL6
ガサッ!
近くで音がした。
「誰や!」
中澤が音の方向を向くと、恐る恐る飯田が出てきた。
飯田は涙をぼろぼろ流し、全身が痙攣していた。
もはや、立っているのが限界だろう。
…見つかった…でも動けない…。足が震えて動けない…。
足は小枝を踏みつけていた。これが音の原因だろう。
「なっち、嘘つきよったんやな。あんたか?圭坊殺したんは?」
飯田はブンブンと首を横に振るう。
何かを喋ろうとしても、引き付けを起こしてしまって上手く喋れない。
「喋らんとさっさと殺してまうで!」
中澤の目は本気だった。飯田は手で、待ってくれと表現し、
落ち着くはずも無い心を、なんかと鎮めるために時間をもらった。
271 :
ブレア娘。:2001/06/15(金) 02:07 ID:IS6s.oL6
…圭織、生きていたんだ…
嬉しい。けど、裕ちゃんは圭織を殺すんだろう…。
例え、例えこの森を抜け出せても、警察につかまっちゃうのかな…。
そんな、どっちみち、裕ちゃんが不幸になるだけじゃない。
裕ちゃんが魔女のまんまじゃない…。
どうしたら…。裕ちゃんを助けたい…。
「圭織、足、怪我してるな、どうしたんや?」
中澤が飯田を怖がらせないように聞く。
「け…圭ちゃんが…」
それ以上は言えなかった。
「はぁん、そうか、圭坊、狂ったんやな!こら傑作や!
なぁ矢口!魔女は圭坊やで!うちらは魔女やないんや!」
中澤が歓喜の声で矢口に言った。
272 :
ブレア娘。:2001/06/15(金) 02:08 ID:IS6s.oL6
吉澤を見放した後藤が魔女になって、それでバラバラになった。
で、加護を辻が殺して魔女になって、そんな辻を石川が殺して…。
石川に襲われた圭ちゃんが魔女になって…。その石川を裕ちゃんが殺して…。
そうか、魔女って伝染するんだ。人の心に伝染するんだ…。
だったらさ、私のする事は1つ。
「圭織、ずっと見てたんか?」
飯田は、重く頷く。
「はぁ、あんたも薄情やなぁ。早よ、なっちの所に行きな!」
中澤が突然飯田の胸ぐらを掴んだ。
273 :
ブレア娘。:2001/06/15(金) 02:09 ID:IS6s.oL6
大好きな裕ちゃん。私が守ってあげる。
裕ちゃんは魔女じゃないよ。
だって…今魔女の裕ちゃんを、私が殺すんだから。
ね、私、優しいでしょ?裕ちゃん。
魔女は伝染するの。だから、私に移すだけ移して死んで良いよ。
それに、圭織殺しちゃ圭織がかわいそうだし。
あ、もちろん裕ちゃんの方が好きだけど。
大好きな裕ちゃんの為なら私、1人で魔女になれるよ。
だから、後の事は心配しないでね…。
矢口は、石川の持っていたナイフを力強く握り締めた。
274 :
ブレア娘。:2001/06/15(金) 02:12 ID:IS6s.oL6
ここまでです〜。更新できなかった上に、こんなに短くてすいません!
>>ALL
本当は一人一人にレスつけたいのですが、数が多すぎて、、、すいません!
でも、保全してくれた皆さん、感想かいてくれたみなさん、本当に感謝です!
こんな小説読んでくれて、楽しみにしてくれていて嬉しいです!
本当にありがとうございます!
>>274 うーん、良いとこで終わったね。
続きがんばって!
276 :
ポルノ:2001/06/15(金) 18:38 ID:HZqSiGkQ
YATTA!
更新されてる!
もう次の更新期待です!矢口の行動、気になりますねえ。
姐さんも、飯田も気になるヶド。
277 :
名無し娘。:2001/06/15(金) 23:32 ID:scSQMYgc
更新がんばれage。
278 :
レイク:2001/06/15(金) 23:47 ID:sxt70.Pg
がんばってください。応援してます。
279 :
名無し娘。:2001/06/15(金) 23:48 ID:scSQMYgc
応援するならageだって!
280 :
名無し娘。:2001/06/16(土) 00:32 ID:3n/JKwe6
今、
>>274まで読み終わりました。
面白いですね。ラストはどうなるんでしょう?
281 :
名無し娘。:2001/06/16(土) 00:38 ID:sIngsbB6
>>280 面白いならageて、みんなに見てもらえ!(w
283 :
椎名旋:2001/06/16(土) 09:30 ID:hENdEmUE
荒らし防止sage
284 :
名無し娘。:2001/06/18(月) 00:53 ID:2p78kfuM
おもしろage
285 :
名無し娘。:2001/06/18(月) 02:55 ID:rzQ1OKT2
全部読むのに2時間かかった・・・
最高だよ、この小説!
ブレア娘、本を出版できるだけの才能あるって!
続きに期待!!
286 :
レイク:2001/06/18(月) 14:30 ID:lhgTzipI
>>285 そうだね。俺もそう思う。改めて読み直してすげーっておもった。
287 :
名無し娘。:2001/06/18(月) 21:59 ID:lwJwpaFs
でも、あんまり知られてないよね・・・・。
さっきバトロワ見て感動〜!
289 :
ブレア娘。:2001/06/19(火) 02:29 ID:Snf1kGjQ
290 :
ブレア娘。:2001/06/19(火) 02:38 ID:Snf1kGjQ
>>275 良いところで終わったと自分でも思いました(w。
続き、期待してください。もうそろそろ、終わりますけど。
>>ポルノさん
矢口の行動…。想像ついてる人、いると思いますよ。
>>レイクさん
いっつもありがとうございます〜。一寸矢口みてますよ〜。
今度、感動書きにいきますね。
>>279 応援ありがとう〜。ageると、荒らされちゃうみたいです。
>>280 ラストは…ってここじゃ言えませんけど、みなさん納得してくれるか不安です…。
>>282&椎名旋
sageありがとうございます〜。やっぱ、小説はageると、不評なんですね。
291 :
ブレア娘。:2001/06/19(火) 02:38 ID:Snf1kGjQ
>>285&レイクさん
そ、そんなに褒められると、嬉しいです!
ただ、思いつくままに書いてるだけですよ。
>>287 どうなんでしょうか?いったい何人の人がこの小説見てるんでしょうね?
僕も知りたいです(w。
>>288 バトロワ面白いですよね。
実は、モー娘。の「バトロワ」読んでから、小説書こう!って思ったんです。
>>ブレア娘。
終わったらさびしいが
たのしみだYO!
293 :
レイク:2001/06/19(火) 07:26 ID:a1ll/PMA
二つ並行してしばらくやるのかぁ〜、がんばってくださいね。
294 :
名無し娘。:2001/06/20(水) 21:44 ID:LwsbOqJE
h
295 :
名無し娘。:2001/06/21(木) 19:10 ID:ovEceixI
ほぜーん
296 :
名無し娘。:2001/06/23(土) 02:53 ID:d0aN/8Rc
保全sage
297 :
名無し娘。:2001/06/23(土) 16:46 ID:ZJodLgeE
ほぜーん
298 :
名無し娘。:2001/06/25(月) 00:36 ID:SHr6oSwA
保全!
299 :
レイク:2001/06/26(火) 01:08 ID:PKU3Y51M
保全レイク。
300 :
名無し娘。:2001/06/28(木) 04:03 ID:gC9UfzSM
保全!!
301 :
名無し娘。:2001/06/30(土) 03:59 ID:Z7S4M8Ao
こっちも更新して欲しいsage
302 :
名無し娘。:2001/06/30(土) 20:59 ID:nuU/L31o
age
303 :
名無し娘。:2001/07/01(日) 14:11 ID:yDCMbdH2
ホゼン
304 :
名無し娘。:2001/07/03(火) 00:55 ID:o0AAY5so
保全
もう、7月だよ・・・
306 :
名無し娘。:2001/07/05(木) 18:27 ID:n9ynWyrY
hozen
放置はイヤだよ・・・放置は・・・
308 :
名無し娘。:2001/07/07(土) 14:40 ID:jsdwh8Hs
ほぜん
309 :
名無し娘。:2001/07/08(日) 11:27 ID:pVmdqvEc
続きは、まだですか?
310 :
名無し娘。:2001/07/09(月) 23:16 ID:ehkKvMUc
hozen
311 :
名無し娘。:2001/07/11(水) 00:02 ID:fsZKwNdw
あと少しガンバレ!ガンバレ!
ブレア娘。カンバッーク!
313 :
名無し娘。:2001/07/13(金) 01:44 ID:wKp74x..
続き・・・
まだか・・・
315 :
ブレア娘。:2001/07/16(月) 02:03 ID:2kBJ6OkM
すいません!QUIZの方ばかり更新していました!
次はこっちです。本当にすいません!
316 :
名無し娘。:2001/07/16(月) 02:54 ID:M5YZOMcw
期待してるよ!!
やっと、続き読めそうだな。
がんばって!
もう完全放置かと思ってた。
いや〜よかった、よかった。
319 :
名無し娘。 :2001/07/18(水) 00:27 ID:Pnqqw8Yk
クイズもいいけどブレアもね
保全
田裸
圭の
全然スレ違いだが、
ブレア2はマリリン・マンソンの曲らしいね
そういえばLIVE会場の近くに、ブレア2のラッピングバスが
停まってたな。
323 :
名無し娘。:2001/07/24(火) 01:10 ID:jEvvoqXQ
ホセ
(゜д゜)<あらやだ!
325 :
名無し娘。:2001/07/26(木) 23:32 ID:UrrrDWIk
まだ〜?
(゜д゜)<保全!あらやだ!
327 :
名無し娘。:2001/07/30(月) 01:41 ID:ljO98cpU
まだですか?
328 :
名無し娘。:2001/07/31(火) 05:44 ID:aLFR3J.A
(゜д゜)<あら、まあ
329 :
ぼかあねえ:2001/08/01(水) 01:07 ID:yd.rgxLU
ー
(゜д゜)<もう8月?あらやだ!
(゜д゜)<保全!あらやだ!
332 :
名無し娘。:2001/08/04(土) 14:16 ID:HSEq8qao
333 :
名無し娘。:2001/08/05(日) 03:22 ID:aEsLHTdk
334 :
名無し娘。:2001/08/06(月) 19:42 ID:N206JpQo
(゜д゜)<保全!あらやだ!
336 :
名無し娘。:2001/08/08(水) 01:26 ID:7uIvPsnU
337 :
名無し娘。:2001/08/09(木) 00:10 ID:kgFfhZ3c
338 :
ぼかあねえ:2001/08/09(木) 00:33 ID:kUImf496
放置なら放置と言ってほしい・・・。
後少しで更新してくれるそうだ
340 :
ブレア娘。:2001/08/09(木) 19:23 ID:O2iDyWGQ
第33章:真心
「じゃぁな…」
中澤は木を天高く持ち上げた。
「待って!裕ちゃん!」
飯田は耳を疑った。助けてくれる?そんな甘い考えが頭を巡った。
「なんや?矢口?」
手は木を持ち上げたままだ。中澤は顔だけ横に向けた。
「あ、別にこっち向かなくても良いよ」
すると中澤は飯田を再び睨みつけた。
矢口はニコニコ笑っている。飯田は少し不気味に感じた。
「ねぇ、裕ちゃん。これからうちらどうなるのかな?」
少しずつ中澤に近づく矢口。
「さぁな」
「この先の事とか、怖い?」
また一歩近づく。ボソッと矢口が呟いた。
「怖ない。あんた何言ってるんや?私は今から圭織を…」
「怖いんでしょ?」
今度は二歩近づいた。矢口の声はだんだん強くなっていった。
「矢口…?」
振り返ろうとする中澤。
「裕ちゃん!圭織が逃げちゃうよ!」
「あ、そ…そやな」
すると矢口がナイフを構え出した。中澤には見えていないが飯田は目を丸くしている。
飯田の痙攣は一層激しくなった。
「裕ちゃん、矢口は裕ちゃん大好きだよ」
「ふぅん」
中澤は軽くあしらった。飯田を殺す事に集中しようとしたのだ。
「ねぇ、怖いんでしょ?大丈夫あたしが何とかするから!
ね!怖いんでしょ?生きて帰れるかとか、警察につかまったりするとか。
私は裕ちゃんの為なら何でもするから、大丈夫だよ。
全部私のせいにして良いから。だから…。だから…。」
341 :
ブレア娘。:2001/08/09(木) 19:23 ID:O2iDyWGQ
…!
鈍い音がした。言葉では言い表せれないほど気持ちの悪い音。
「あ…やぐ…?」
中澤は地面へと沈んでいった。矢口の手に血まみれのナイフが光る。
「ね?怖い?」
矢口は嬉しそうに言った。それでも中澤は恐怖と痛みの余り何もいえなかった。
飯田は腰を抜かしてその光景をただ見ていた。
「怖いんだろ…」
低い声がする。矢口の声とは思えない。
「怖いんだろ!怖いなら怖いって言え!ほら!言えよ!」
ガンガンと中澤を蹴り飛ばす。
「私が何でもするって言ってるじゃん!裕ちゃんの変わりに魔女になってあげんだよ!」
すると矢口は中澤の耳に囁いた。
「だから…死んだ方が楽なんだよ…」
そう言いはなった瞬間、矢口は狂ったようにナイフを中澤の体に突き立てた。
何度も何度もあの気持ちの悪い音がする。飯田にも血が飛び散る。
中澤の着ていた服が真紅に染まる。
「ほらぁ!怖くなくなっていくでしょ?大丈夫だよ。私にまかせて!」
矢口の真心はそれからも続いた。
342 :
ブレア娘。:2001/08/09(木) 19:24 ID:O2iDyWGQ
五分ほどなのだろうか。実際にはもっと長いかもしれないし、もっと短いかもしれない。
しかし、飯田にはそれが数ヶ月の事のように感じられた。
「裕ちゃん…」
矢口は中澤に口付けをした。それからきつく抱きしめた。
「あはっ。あははは!」
突然矢口が笑い出した。
「はははは!これが魔女なんだぁ。変な気分…」
矢口の目は確かに正気を保っている。
その目で飯田を見つめる矢口。
「ねぇ、裕ちゃんこれで幸せだよね?」
飯田は痙攣が止まらない。いつの間にか涙も溢れていた。
「だってさ、警察につかまる前に殺してあげたんだよ?
これで裕ちゃんは犯罪者じゃないんだ。魔女だって私が代わりになってあげた。
それに、生きて帰れるかどうかの不安もなくなった!
ほら!怖い事全部、私がなくしてあげたじゃん!」
飯田は涙を拭った。赤い。どうやら顔にまで血が飛んできていたようだ。
「私が…魔女なんだぁ」
すると矢口はおもむろに立ち上がった。手にはナイフを握り締めている。
飯田と矢口の目が合った。その間を風だけが通り過ぎていった。
343 :
ブレア娘。:2001/08/09(木) 19:24 ID:O2iDyWGQ
反省します…。みなさん、保全ありがとうです!
新作ありがとうございました。
345 :
ぼかあねえ:2001/08/10(金) 00:41 ID:/H5lwLRI
good job!
346 :
レイク:2001/08/10(金) 00:44 ID:loBKLFLE
お疲れ様です。待ってました。
347 :
ブレア娘。:2001/08/10(金) 01:28 ID:3qOjpu6Q
本当に更新遅れてすいません!
注意されなきゃ更新しないなんて…駄目駄目ですよね…
これからは「QUIZ」と同時進行で行きます。
と言っても、こっちは終盤ですが…。
348 :
ポルノ:2001/08/10(金) 09:18 ID:UOkM3eV.
更新待ってました!
どっちもがんばって下さい!
349 :
(0^〜^0)@狼:2001/08/10(金) 13:35 ID:R2oyDks.
これって実話?
350 :
名無し娘。:2001/08/10(金) 18:25 ID:9iUD3hhg
久々の更新ご苦労さん!
あと少し、がんばって!
351 :
名無し娘。:2001/08/10(金) 23:33 ID:IYskYfrk
しっかし、作者が力入れてるであろうクイズの方は寂れてるね(w
352 :
名無し娘。:2001/08/12(日) 09:41 ID:NQSTz9Mo
hozen
353 :
名無し娘。:2001/08/13(月) 07:34 ID:eEugae3s
保全だよ
354 :
(0^〜^0)@狼:2001/08/13(月) 17:54 ID:Ab4EY1Sw
これって実話?
完結するまで保全!
ボブおもしろい・・・
(`ζ.´;)<んま!保全!
358 :
(0^〜^0)@狼:2001/08/15(水) 19:22 ID:vQOAp.ac
ほんとに実話?
まだ言うかッ!
360 :
名無し娘。:2001/08/16(木) 21:22 ID:rwn1exmI
保全
362 :
名無し娘。:2001/08/17(金) 14:31 ID:5kEIx8eU
構うな
363 :
名無し娘。:2001/08/18(土) 02:29 ID:vV//6BiI
364 :
名無し娘。:2001/08/18(土) 16:12 ID:0I4GjXZE
保全
保全。
366 :
名無し娘。:2001/08/19(日) 02:51 ID:nifmM72c
367 :
名無し娘。:2001/08/19(日) 14:26 ID:35MU79iQ
368 :
名無し娘。:2001/08/19(日) 16:42 ID:wvyvuBjI
保全しまーす
まだ残ってた
おはよう。朝の保全です。
371 :
名無し娘。:2001/08/21(火) 00:36 ID:ooKG2Pog
372 :
名無し娘。:2001/08/21(火) 05:18 ID:WLUQqIMA
期待しています。
373 :
名無し娘。:2001/08/22(水) 00:11 ID:H/eTldAo
kako逝き危険警報発令中
374 :
名無し娘。:2001/08/22(水) 07:33 ID:m8Gq5qqI
(゜д゜)<あらやだ! 保全!
(‘ζ.´;)<んま!保全
緊急事態発生?
警戒警報発令中?
何か沢山消えてるので、念のため保全させてもらっても良いでしょうか?
378 :
名無し娘。:2001/08/23(木) 22:53 ID:HOAePiHU
保全
379 :
黄鵡4村:2001/08/24(金) 07:17 ID:qzjyvht2
QUIZ消えちゃったよ。
380 :
名無し娘。:2001/08/24(金) 21:56 ID:RZOTQw5M
保全
381 :
名無し娘。:2001/08/25(土) 03:00 ID:7PkEIipE
前回の保全から6時間以上経ったのでそろそろ保全
383 :
名無し娘。:2001/08/26(日) 00:55 ID:eb/hAzfE
保全しとく
ほぜん
386 :
ブレア娘。:
うわ・。QUIZ消えちゃいました…。ショックでかい…