1 :
名無し娘。 :
リレーです。
皆で書きましょう。
設定は、月九のHEROみたいな感じでしましょう。
2 :
名無し娘。 : 2001/02/06(火) 19:08 ID:io57yi4Q
(今日から私は、ここで働くのね…。)
梨華が不安そうに入ると、警備員に止められた。
「困るんですよね、取材は…」
(どうしよう…)
石川が困っていると、大学の先輩で今は検察のエースの保田がやってきた。
3 :
名無し娘。 : 2001/02/06(火) 19:12 ID:z6LeGaVc
保田は「氏ね!」と言い放ち、どこかに逝ってしまった・・・。
4 :
大河好き : 2001/02/06(火) 19:21 ID:DTA55ugs
石川はその保田の「氏ね」という言葉に深く傷ついてしまった
そんな石川をみかねて警備員の辻がぽんっと肩を叩いた
「あのひとはいつもああいう感じなのれす 気にしたらダメなのれす」
5 :
名無し娘。 : 2001/02/06(火) 19:33 ID:io57yi4Q
「あの…私今日からここで働く事になった石川っていうんですけど…」
石川がそう言うと、辻はどこかに電話を掛け始めた。
「はい…お通しして宜しいんですね。」
辻は電話を切ると、笑いながら検察庁案内を始めた。
(保田さん…どうしちゃったんだろう?あんなに優しかったのに…)
6 :
名無し娘。 : 2001/02/06(火) 19:39 ID:io57yi4Q
辻に案内された石川は、恐る恐る仕事場に入った。
「今日から、ここで働かれるそうです。あとはお願いしますね。」
辻はそう言い残すと、そそくさといってしまった。
「石川梨華です。よろしくお願いします。」
石川がそういって一礼すると、拍手が起こった。
7 :
名無し娘。 : 2001/02/06(火) 19:51 ID:io57yi4Q
「ようこそ、最高検察庁へ…ウチが検事正の中澤や。」
中澤は、そう言うと名刺を差し出した。
「そんでこっちが、次席検事の安倍や。」
安倍は、石川を睨み付けると再び書類に目を通し始めた。
8 :
大河好き : 2001/02/06(火) 19:52 ID:DTA55ugs
「ありがとうございます これからもよろしくおねがいします」
石川がそうみんなに言うと 背の高い女が声を掛けてきた
「あなたが石川さんね へぇーはぁー」
背の高い女は石川を下から上までまじまじとなめるようにみまわした
「よろしくお願いします あのー何か私のこと知ってらっしゃるんですか?」
「ううん そうじゃないんだけど あなたがあの保田さんの後輩って聞いてたから うん ちょっとね・・・」
石川はまだ彼女の言葉の意味がよくわからなかった
「それにしても、今年に入って新人の検察事務官自分で4人目やで・・」
石川がホッとした顔をすると、辻がやってきた。
「こんにちわれす。」
(え?)
「あのお洋服気に入ったです…。でも、スーツのほうが良いれす。」
(ここって、最高検察庁だよね?)
石川は、頭を抱えた。
「辻!早く行くよ!今日は事件の調書とるんでしょ?」
飯田はそう言い終えるがいなや、辻を連れて外に出てしまった。
「あのー私は何をすれば?」
石川が尋ねると、中澤は手帳を取り出した。
「えーと、検察事務官だから…保田君に付いて下さい。」
中澤は、そう言うと自分の部屋に戻っていった。
(え??説明ってそれだけ??)
「何をキョロキョロしてるべ?さっさと自分の部屋に荷物置いて圭ちゃんの所に居くべ。」
安倍は厳しい口調でそう言うとまるで、「仕事しないなら帰れ!」と言わんばかりの目をしていた。
(そうよ、ここは学校じゃないんだから…)
石川は、言われたとおり荷物を置くと保田の部屋に向かった。
12 :
大河好き : 2001/02/06(火) 20:48 ID:h7oMHadM
「ちょっと厳しすぎんでねえの?」
背の高い飯田は安倍に詰め寄った
「んなことねえべさ 早いうちにここんとこのルール覚えてもらわねっとよ あいつの為にならねえってばよ」
「んだなぁ そうかもしんねぇ」
飯田はうなずいた
「ありっ? ところでよぉ 保田の部屋どこか教えてやったっぺか?」
安倍は「しまった!!」という顔した しかし少し考えて言った
「かわいそうだけど・・・これも勉強だべさ」
13 :
名無し娘。 : 2001/02/06(火) 20:59 ID:GyWxoXgw
しかし、保田の部屋を石川はいつまで経っても見つけられないまま、
3時間ほど過ぎてしまった。
14 :
大河好き : 2001/02/06(火) 21:22 ID:h7oMHadM
「いったい・・・どこにあるのかしら ヤスダさんの部
屋って・・・」
石川は途方にくれた
「誰に聞いても『知らない』って言うし も~どうなってるのこの組織!!」
そこに辻が現れた
「てへてへ ヤスラさんの部屋を教えてあげるのれす てへてへ」
「ほんと!ツジちゃんありがとう!」
辻は石川を案内した
「こんな下の方にあるんだ 保田さんの部屋って・・・」
石川は辻の後ろをあるきながら不安気に声をもらした
「ここの奥のところにヤスラさんの部屋があるのれす」辻は扉を指差した
扉には「死体安置所」と書かれていた
15 :
名無し募集中。。。 : 2001/02/06(火) 21:29 ID:1m0Po1.U
一般書籍板を見習おう。
長文止めた方がいいよ。
――うん。一般書籍板を見習おう……長文はやめた方がいいね。
石川は改めて自分に言い聞かせた。
17 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 05:44 ID:aMi8iJ7Q
読んでるからがんばってね。
18 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 05:50 ID:vdbL0To2
言い聞かせて我に返ると「死体安置所」の扉が改めて目に飛び込んで来る。
「ここ?どう言う事?」悩んでいると背後から辻が声を掛ける。
「実はれすね・・・
19 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 07:59 ID:Utg92Vn6
あげ
20 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 08:01 ID:Utg92Vn6
21 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 09:13 ID:J1LxIidc
はろう
22 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 09:15 ID:fkuxIMVQ
面白いです
23 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 09:17 ID:J1LxIidc
期待してます
24 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 15:42 ID:9Ju6VmIw
石川は、部屋が少なくて足りない事を聞いた。
今は、保田の部屋兼図書館兼資料室になっていた。
25 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 16:38 ID:pENRGsKI
そこで保田は調べ物をしてたらしい。
石川に気付くと、さっきと変わらぬ厳しい口調で言った。
「何しに来たのよ!」
26 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 18:30 ID:l1nzEZFg
石川は微笑した
27 :
ハオラーン : 2001/02/07(水) 18:42 ID:CoGkVThg
「そう言えば私はなにをしにここに着たんだっけ?」
石川はいった。
28 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 19:07 ID:Utg92Vn6
「調書れす。」
辻は、そう言うと書類の束を渡した。
29 :
大河好き : 2001/02/07(水) 19:23 ID:DEVcc0T6
保田は調書の山を見つめていった
「あたしに言わせればこんなのチリ紙交換の材料だわ」
30 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 19:31 ID:xm0WUAh6
その通り保田は調書を鼻紙代わりに使った。
31 :
大河好き : 2001/02/07(水) 19:34 ID:DEVcc0T6
「ヤスラさん たまにはちゃんと読んでくらさい」
辻はあきれたように保田に言った
32 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 19:44 ID:Utg92Vn6
「っとまあ冗談はこのくらいにして…。」
(そうよね。)
石川は、保田を一瞬でも見損なった自分の行いを深く恥じた。
「遅かったんじゃない?」
「すみません。」
33 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 19:50 ID:Utg92Vn6
保田は自分の机から、六法全書を出し鞄に入れると検察庁を出た。
「事件ですか?」
「不倫殺人だって…被害者が『小室哲也』って人で重要参考人が何人か上がってる。」
保田はそう言うと、写真を取り出した。
34 :
大河好き : 2001/02/07(水) 19:56 ID:DEVcc0T6
石川は容疑者の写真を見てびっくりした
「うわっ 有名人ばっか」
35 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 20:04 ID:Utg92Vn6
(この中から絞り込むの?)
石川は、無理だと言わんばかりにため息をついた。
「今ならまだ間に合うから、辞めたら?石川には向いてないよ。」
「え?」
「だって、今無理だと思ったでしょ?」
石川が無言で頷くと保田が続けた。
「検察官ってのは、『真実を追究する事に喜びを感じられるような人』じゃないと
無理よ…。まあ頑張りましょう。」
これが石川が検察で始めて習ったことだった。
36 :
大河好き : 2001/02/07(水) 20:47 ID:CHeXw2Fc
「保田先輩っていっつもエバッてんだもん学校にいたときからそう・・・くっそーチャレンジ チャレンジ!!」
石川は心の中でそうつぶやいた
「チャレンジ・・・それは先輩を追い抜くこと」
「イシカワ 何か言った?」
「あっいえいえ なんでもないんてす(;^▽^)」
37 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 20:48 ID:E1FE9x3E
颯爽と一人の人物が現れた
「紗耶香」!保田に緊張が走る
検察のエース、市井の登場だった
38 :
大河好き : 2001/02/07(水) 22:09 ID:CHeXw2Fc
市井「石川さん かわいそうに保田さんとペアなんですって? ホホホホホ」
「石川! 行くぞ いいから!!」
保田は石川の袖を引っ張った
「あっ はいっ」
39 :
名無し娘。 : 2001/02/08(木) 00:46 ID:5uaq1V1U
「なに、また保田オ・デ・カ・ケしてんの?
まぁ、はりきって新入りの事務官
連れまわしてクタクタにさせなきゃいいけどね。」
おしゃべりな辻から報告を受けた飯田は呆れ顔で言った。
「だいたい保田さんは、検察って仕事を解かってるんれすかね。」
と言う辻にも飯田は呆れ顔だった。
40 :
名無し娘。 : 2001/02/08(木) 01:20 ID:dmoSzp.U
そんな二人の心配を余所に、保田は意気揚揚とオ・デ・カ・ケしている。
保田は玄関で鉢合わせした市井に対し、声を掛けたまでは良かったが
後の言葉が続かない。
緊張感からか、震える声と手で石川を促し、先を急ぐのがヤットであった。
41 :
名無し娘。 : 2001/02/08(木) 01:41 ID:dmoSzp.U
そして石川は、市井へ簡単に自己紹介を済ませ、急いで保田の後を追う。
後を追いながら石川は、これから先についての重要な事を考えていた。
「この物語は『HERO』なの?すると私は松たか子で保田さんがキムタクの配役でいいの?」
だがスグに頭の中を切替え顔を引き締めた。
「こんな事考えてる場合じゃ無いですう。事件事件っと。
ええと確か小室哲也不倫殺人事件だったのですう」
保田と並ぶ様にして門を抜け、通りに出た二人はタクシーを拾い、行き先を告げた。
42 :
名無し娘。 : 2001/02/08(木) 02:35 ID:/MFeVNds
「すみません、テレビ東京に向かって下さい。」
43 :
名無し娘。 : 2001/02/08(木) 05:24 ID:kH7Spku.
「最近、警察ばかりか検察の不祥事が、おおやけになって大変れす。」
ここは、検察庁女子トイレ。
事務官 辻と同じく加護が世間話をしている。
「そうやなぁ、そう言えば不倫ていうのもあるってなぁ」
「その点、ここは大丈夫れす。」
「そうやな、表面上は不倫はおろか恋愛も無理や」
『だって、女ばっかりだもん!』最後は息が合った、まるで漫才だ。
一方現場では
「保田さーん…何も出てきませんよ…警察が捜査してるんでしょ?」
保田は、石川を無視して現場に入って行った。
45 :
名無し娘。 : 2001/02/08(木) 10:43 ID:ydUjWzW.
無視されて頭に来た石川は、保田を追い掛けて 蹴った。
46 :
名無し娘。 : 2001/02/08(木) 15:18 ID:XQiHYBNk
だが保田は平然とした顔で「何やってんの、お前・・・」と軽く石川をあしらうと、
小室哲也の殺害現場となったテレビ東京の一角に張り巡らされてる、
立ち入り禁止のテープを潜り奥へと入って行こうとする。
だが、周囲を沢山の報道陣に囲まれてしまう。
二人は目で合図を交し、咄嗟に腕を組み若いカップルを装う。
(こんなシーン無かったか?ゴメン、それだけだ)
「全く…いくらテレビ局の近所だからって、多すぎよ。」
保田が慌てて腕を引っこ抜いた。
(私嫌われてるのかな?)
「事件があったのは、ここの404号室です。」
二人が階段を上ると、ロープをくぐった
48 :
大河好き : 2001/02/08(木) 23:37 ID:F.icV8y2
404号室に入った保田は部屋の床に横たわる死体をみて声を
つまらせた
石川「保田さんどうかしたのですか?」
保田「一番怪しいと思っていた女が殺されてしまった」
死体はかつてのスーパーアイドル戸沢桃代だった
通称「トモちゃん」と呼ばれていた
49 :
名無し娘。 : 2001/02/08(木) 23:43 ID:RdkFrSeg
二人が立ち尽くしていると背後から声がする。
「何やってんだよ、お前ら!勝手に入っちゃ困るだろうがっ!」
振返ると腕章を付けた捜査員らしき人物が、血相を変えて近寄って来る。
50 :
かいわれ : 2001/02/08(木) 23:53 ID:XhldS3vY
その時だ、
「あれっ!ま・た、保田さん?」
女の声だった。
振り返ると一組の男女のがいた。
保田は、イヤミったらしく、
「あら?また遭ったわねぇ。ボンクラ刑事の孫さん!ユウキさん!」
この場は、死体がある嫌悪感以上に、嫌な空気に包まれた。
51 :
大河好き : 2001/02/08(木) 23:56 ID:F.icV8y2
保田「東京地検のものだが 見ちゃいかんのかね?」
捜査員「まだ現場検証が終わってないんだよ ほら検事さんたちはあっち行ってくれ!!」
石川「あっ そうだったんですか すいません(汗)」
52 :
名無し娘。 : 2001/02/09(金) 00:24 ID:kF2cDhQ6
保田は小さくなっている石川を連れ立って、玄関へ向かう。
「保田さん、アノ刑事さん達とお知り合いだったんですか?」
石川が尋ねると保田は上の空で答えた。
「ああ、以前も現場で出くわした事が有ってね。嫌味なヤツだよ
まあ今はそんな事どうでも良いんだ。ココは小室哲也が
殺害された部屋なのに何故、戸沢桃代ことトモちゃんの死体が・・・」
完全に上の空になり、思考にふける。現場検証はまだ続いている。
53 :
大河好き : 2001/02/09(金) 00:40 ID:QYdbgNE6
石川「いったいこれはどういうことなんでしょうね?」
保田「とりあえず検死待ちだな 二人の死亡時刻がわかればそこから何かわかるはずだしね」
石川「ふたりは恋人同士だったんですよね?」
保田「そう恋人同士¨だった¨んだよ」
54 :
名無し娘。 : 2001/02/09(金) 00:57 ID:kF2cDhQ6
玄関で向き合い「小室とトモちゃんラブラブだった!?」の話をしていると
「保田検事!」と声を掛けたボンクラ刑事のソニンとユウキは
「一応の現場検証が終わりましたので、後はお好きにどーぞ」
そう言い残して、ふて腐れた様子で出て行った。
続いて鑑識が、トモちゃんの死体を運び出して行った。
55 :
大河好き : 2001/02/09(金) 01:06 ID:QYdbgNE6
担架に載せられたトモちゃんの死体が運び出されようとしていた
保田は部屋の中を見回してみた「争った形跡はないな」
「あっ」石川は運び出されるトモちゃんに何かを発見した
「どうした石川?」
「あっ ラベンダーの花が・・・」
56 :
名無し娘。 : 2001/02/09(金) 01:17 ID:kF2cDhQ6
「あっラベンダーの花が・・・咲〜いて〜いる〜〜〜♪」
石川はチョット振りを付けて唄った。「あのなー・・・」
飽きれた保田は石川を無視し、鑑識を呼び止め
トモちゃんの首に掛かっているラベンダーの花を型取った
ペンダントトップの付いたネックレスを手に取り、つぶやいた。
「これは・・・
57 :
名無し娘。 : 2001/02/09(金) 02:16 ID:kF2cDhQ6
「これは・・・」保田は愕然とした。
「もういいでしょうか?」鑑識は保田に確認を取って出て行った。
保田はバックの中から先程の写真とは別の写真を一枚取り出した。
その写真に写っている小室の首にも、ラベンダーのペンダントが掛かっていた。
「そうか!二人は今も愛し合っていたのね。だからトモちゃんはココに来たんだ」
横から石川が写真を奪い取り、得意になって推理した。
#一人でフォローするのってカッコ悪いし、淋しい・・・
58 :
名無し娘。 : 2001/02/09(金) 12:05 ID:Ee7wH7hE
保田が石川の顔をジッと見る
石川は写真を見ていたが 保田の視線に気付き 顔を向ける
「保田検事 なんですか? 私の顔に何か付いてますか?」
「いや そうじゃなくてさあ どうでもいいんだけど
お前さあ・・・・・ ゆで卵みたい・・・・・」
言い終わると保田が独り さっさと部屋を出ていってしまう
「ああ腹減った 何か食べに行かない?」
背中越しで石川に聞いてくる
59 :
名無し娘。 : 2001/02/09(金) 15:29 ID:RP3KfJM.
(なんなのよー、あたしの推理はどーなのYo!)
石川は保田の背中を睨みながら後についていった。
60 :
名無し娘。 : 2001/02/09(金) 17:01 ID:Les.Jvik
するとその視線に気付いた保田が言った。
「睨んでんじゃねーぞ、ゴラァ!」
61 :
大河好き : 2001/02/09(金) 21:54 ID:8FRNp7is
石川「だってアタシのはなし ちっとも聞いてくれないじゃないですか!!」
保田「うっせーなー メシ食った後で聞くってば」
石川「なによ さっきからえばりくさって お昼なんかひとりでとってれはいいでしょ!! 」
保田「大きい声出すなって」
石川「あたし帰る!!」
すると保田は帰ろうとする石川の腕サッと掴んで引き止めた
62 :
名無し娘。 : 2001/02/09(金) 22:05 ID:ol0.RUEw
保田「吉野家半額だぞ。」
石川「私、吉野家行ったことないんです。」
保田「じゃあ行こう、肉食いながら聞いてやるよ。」
63 :
大河好き : 2001/02/09(金) 22:20 ID:8FRNp7is
石川「ふぁたしねぇ モグモグ 気がふゅいたんでふゅよ モグモグ」
保田「ふぁにお?」
石川「ふぁのネックレスねぇ 赤坂にふぁるお店のネックレスふぁの モグモグ・・・」
保田「ふぁんて名のふぉ店なの?」
石川「`ミニモニ`って名前のふぉ店なの モグモグ」
保田「ふ~んモグモグ」
64 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 00:21 ID:U/3qiZwY
二人は吉野家で並んで越し掛け、牛丼をパクついている。
新米の石川は自分の仕事ぶりを早く認めて貰いたいが為に
口一杯に頬張った米粒が飛び散るのも気にせず、尚、話を続ける。
保田は何か別の事を考えている様子で、只相槌を打つだけだ。
並・玉・つゆだくの丼には紅生姜が山の様に盛られている。
「ふぉに角、その゛ミニモニ"と言うふぉ店に行ってみませんか?モグモグ」
石川の口から又、米粒が飛び散った。
65 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 02:00 ID:Ql42okL2
保田はそれに答えなかった。
そのまま長い沈黙…というかただただ丼をかっ込む。
「あっ!やばい。」いきなり手を止める保田。
「どうしたんですか?保田さん。」びっくりする石川。
「半額なの定食だけだったわ。」
「…」石川は唖然とした。
「そんな顔しないでもいいでしょ。きっと『ミニモニ』とかいうお店も、まだ昼休みだって。」
石川は、自分の意見が通った事を確信した。
66 :
大河好き : 2001/02/10(土) 02:27 ID:8dv4DcMw
「この店か・・・」
保田は意外に小さいその店『ミニモニ』に入ろうとした すると店員が保田を制止した
店員「すいませんお客様 当店は紹介制となっております どなたかの御紹介を戴いておりますでしょうか?」
「紹介制?」
石川「このお店 政治家とか大企業の社長さんとか そんな大物さんしかこれないトコみたいなの」
保田「ふうん・・・」
入口には体のおおきな男が睨みをきかせていた
67 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 02:47 ID:Bo33/9ak
店先で門前払いを食らい立ち往生していると
路肩に車が停車し、中から見慣れた顔が降りて来た。
つい先程テレ東脇マンションの現場で別れた筈の二人
そうボンクラ刑事のソニンとユウキだ。
「あれっ保田検事、こんな所で何をなさってるんです?」
68 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 03:30 ID:CiujjRkA
三人は消息を絶った。一年後、彼らのものと思われるビデオテープが
見つかった。
69 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 04:06 ID:Bo33/9ak
突然ソニンが、そう語り出した。ソニンは人目を気にし、小声で話を続けた。
「彼ら、つまりココの従業員だった連中が一年前に消息を絶ったんです。
家族から捜索願いが出されていました。そして我々が戸沢桃代こと
トモちゃんの部屋を捜索したところ、偶然こんなビデオテープが出て来たと言う訳です」
そういって袋に入ったビデオテープを取り出した。
「これが、何か関係有るの?」
保田が尋ねると、ソニンは首をかしげた。
「そうそう、ユウキ刑事後藤が今日も帰れそうに無いって…。」
「あーそうですか。」
ソニンが、警察手帳を見せて入ろうとしたので、慌てて保田が止めた。
(今犯人がいても、逮捕できないし…ここが怪しいってのを上に伝えたの?)
ソニンとユウキが慌てて帰っていったので、保田たちも検察庁に戻った。
二人が検察庁に帰ると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。
どうやら、飯田達の追っていた事件の被疑者の弁護士が、
以前検察にいた福田と石黒になったようだった。
「代議士の息子なんだから、速く釈放してくださいね。」
「では、ゴキゲンヨウ…。」
福田達が去り、保田と石川が重苦しい雰囲気の中入り辛く成っていると、
後に帰ってきた後藤と加護は、あっさり入って行った。
72 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 12:20 ID:H5adKT52
その光景に呆気に取られていた保田と石川も続いて入って行った。
「あー、これは大変っしょっ!」突然安倍次席検事が声を張り上げた。
重苦しい空気の部屋の中に、更に緊張感が走った。
「安倍さん!どーしたんです」保田が安倍に駆け寄って聞いた。
安倍はテレビを指差して答えた。「圭ちゃん写ってるベさ」
テレビのニュースはトモちゃん殺人事件の速報を伝えていた。
勿論、保田と石川が仲良く腕を組んでマンションに入って行く姿も、カメラは捉えていた。
全員の冷たい視線が二人に注がれた。
73 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 15:09 ID:YoI4omig
「あ、これ違いますぅ。これは・・・その・・・マスコミがイッパイ居てぇ・・・
保田検事、みんなに分かるように説明して下さいよ!」
「んー化粧ののりが悪いな・・・ 通販でイイの買うか・・・」
74 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 18:09 ID:TA2aW4co
「ぶわっはっはっはっ.......!」
保田の一言に皆が一斉に笑い出した
≪ブサイクが生意気にカメラ写り気にしてるよ......≫
重苦しい雰囲気は既に吹き飛んでいた
75 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 18:17 ID:A08.wfZk
ただ、辺りには安倍がソフトメンを吸い込むように
食べる音だけが響いていた
76 :
大河好き : 2001/02/10(土) 22:55 ID:8dv4DcMw
その時安部のデスクの電話が鳴った
安部「はい どなた?・・・あっ はいっ!! あっどうもお世話になってます いいえ そんな・・・」
安部の口調が急に変った
保田「なんだ? エライさんか?」
安部「ああ そうなんですか はい ええ ええ はい はーはーはい・・・わかりました・・・」
安部は電話を切り そしてみんなに向かって言った
安部「えーみんな 聞いてくれ えー小室哲哉 および戸沢桃代殺害事件だが・・・調査を中止する!!」
石川「えっ!?」
安部「調査は中止だ! 以上!!」
77 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 00:55 ID:jthSpimA
突然の展開に全員が驚いた様子で、誰も口を開こうとはしない。
寸刻の沈黙を打ち破り、真っ先に食って掛かったのは新米の石川だった。
「一体どういう事ですかぁ。石川納得出来ません、ちゃんと説明して下さいっ!」
安倍に歩み寄り問いただすが、まともな答えは返って来ない。
「聞こえたっしょ、兎に角調査は中止だべ・・・、そーゆー事だべ・・・」
椅子を回転させ背を向けると、再びソフトメンを啜り始めた。
石川は救いを求める様な目を保田に向けたが、保田は何も言わずに自室に戻って行った。
(こんなの間違ってる…。最高検察庁は正義の最後の砦のはず…)
石川は、自室に戻りながらそんな事を考えていた。
(こんなに簡単に諦めちゃうなんて、見損なった…)
石川は、涙を浮かべながらドアを閉めると、その場に泣き崩れた。
79 :
大河好き : 2001/02/11(日) 09:15 ID:KMI86jJk
小室哲哉および戸沢桃代殺害事件に関する膨大な資料が一室に集められた
辻「なんれシュレッダーなんかにかけるのれすか!!」
安部「理由には今はこたえられないべさ はやく入れるべさ!!」
辻「ヤスラさんからもなにか言ってくらはい!!」
保田「・・・まっ いいんじゃないか あたしだったらシュレッダーかけるよりチリ紙交換に出すべきだと思うけどね」
安部「・・・保田 頼むからよけいなことしたらダメだべさ・・・」
保田「余計なこと?・・・なんのことやら なっちゃん明日からアタシ有休とらせてもらいますよ」
安部「それが余計なことっていってるべさ!!」
80 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 13:05 ID:vhgcldoI
安倍は検察庁のエースと呼ばれている保田の事が以前から鼻に付いていた。今回もそうだ。上からの命令に従っている自分の事を、嘲笑っている様な気がしてならない。そんな理由も有るせいか、ついムキになって大声を上げてしまう。
「とにかく、もうこの件から手を引くだべっ!加護ちゃんコーヒー!」
「ほいっ!」
さっきまで自室で泣いていた石川がコーヒーを差し出しながら、例のポーズを取っている。
流石はチャーミー、思いきり浮いている。
81 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 14:00 ID:wPIUovgQ
全員の冷たい視線が二人に注がれた。
82 :
大河好き : 2001/02/11(日) 15:40 ID:KMI86jJk
次の日 有休をとった保田は『ミニモニ』に向かった
「やっぱりあの店が絡んでるに違いないわ そうとうの大物がおそらく関わっているのね なんたって検察に圧力をかけてくるくらいだから・・・」
すると店の前にはボンクラ刑事の二人もいた
保田「何やってんのよアンタたち?」
ユウキ「理由はわからないが突然捜査が中止になってしまったんだ 捜査本部も解散してしまった・・・」
ソニン「`あとの捜査はすべて公安調査委員会に一任するから`って上のひとたちがいうの」
保田「だったらアンタ達もここにいちゃいけないんじゃないの?」
ユウキ「うん そうなんだけど・・・」
ユウキとソニンは顔をみあわせた
83 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 16:30 ID:wPIUovgQ
ソニン「保田さん、わたしたち覚悟は出来てます」
保田はソニンの右肩にのっている
うずらに気がついた。
84 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 16:37 ID:.CqJ/eZE
しかも、そのうずらはイキナリ卵を産んだ。ソニンは何も気付いていない。
(もったいねーな)
保田は思ったが、今はそんな事を気にしてる場合ではない。
ともかく、あれ程犬猿の仲だった保田とソニンの間に連帯感が生まれた事が
今は喜ばしい。
85 :
大河好き : 2001/02/11(日) 16:53 ID:KMI86jJk
保田「じゃ うちらだけでやってしまいますか?」
ソニン ユウキ「やってもイージャン!!」
ソニン「でもどうやって中にはいりましょうか?」
保田は携帯を取り出した「まかせときなさいって」
ユウキ「どこに電話してるの?」
保田「紹介をもらうのさ さる貴いお方から・・・」
ソニン「誰からもらうの 貴いお方?」
保田「古い友人なんだ 成ちゃんだよ」
ユウキ「ナルちゃん? 誰それ?」
86 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 17:04 ID:.CqJ/eZE
「誰だってイージャン!それよりこの間のビデオテープの件なんだけど・・・」
保田はソニンが小脇に挟んでいるテープに視線を送り聞いた。
「そうなんですよ、戸沢桃代ことトモちゃん(以下トモちゃん)の部屋を捜索したら見つかったと言いましたけど、これに凄い物が写ってたんです。何だと思います・・・実はですね、小室とトモちゃんがこの店で万引きしてるのが写ってたんですよ。それで事情を聞こうと思ったら、当時の従業員が三人揃って行方不明に成ってるじゃ無いですか、ビックリしましたよ」
うずらはスッキリした顔で巣立っていった。
87 :
大河好き : 2001/02/11(日) 17:17 ID:KMI86jJk
保田「ふ~ん ということはその3人が怪しいわけか・・・あっナルちゃん久しぶりあのね・・・」
ソニンは保田が一体誰と話しているのかが気になった
ソ「ナルちゃん とうといお方・・・ナルヒト えっ?」
保田「よし 紹介がもらえたぞ 行こう!」
ソ「あっちょとまって そのナルちゃんて もしかして・・・」
『ミニモニ』の店の前にとつぜん大勢の従業員が現れた
「保田ですが 入ってもよろしいかしら?」
「おっ お待ちしておりました どうぞ」
入口にいた体の大きな男も深々と頭を下げていた
88 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 17:33 ID:.CqJ/eZE
流石高級店だけの事は有る。広い店内は、いたる所装飾が施され
この店の格式の高さに相応しい演出をかもし出している。
ソニンとユウキは仕事を忘れ、物珍しそうに店内を物色し、汚い手で色んな所をペタペタと触っている。
89 :
大河好き : 2001/02/11(日) 17:51 ID:KMI86jJk
保田「アンタたちこどもみたいにあっちこっちさわってんじゃないわよ 後ろのカメラがあんたらをにらんでるわよ!」
ソニン「カメラ?」
ソニンは背後にある監視カメラに気がついた
ソニン「こんな高級店なのに 監視カメラがあるなんて・・・」
保田「高級店だからあるんだよ 値段の高いもばっかり置いてあるんだから」
ソニンは思った(あのカメラが二人の万引きを撮ってたんだわ)
その時おもいがけないことが起こった
保田が高級そうな首飾りを一つとると それを自分のポケットにしまいこんでしまったのだ!
ソニンはゾッとした
ソニンが止めようとすると、どこから涌いて出たのか加護がそれを制止した。
(どこから、出てきたのよ?)
(ちょっとな、安倍さんから尾行を頼まれててな。)
どうやら、加護は朝から保田が問題を起こさないように尾行していたらしかった。
「でも、止めなくて良いの?」
ユウキが時計を見ながら尋ねると、加護は頷いた。
91 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 18:25 ID:.CqJ/eZE
頷いたのは良いがソニンは足の震えが止らない。
そんなソニンの心とは裏腹に、首飾りを仕舞い込んだ保田が何食わぬ顔で切り出した。
「この店のオーナーの方はいらっしゃいますか?色々と伺いたい事が御座いまして」
傍に居る男に尋ねた。
(保田の今の行動は、この男に見付から無かったかしら?)
ソニンは手のひらイッパイに汗を掻き、いまだ震えている。
(イージャンイージャン!イージャンイージャン!)
ユウキは祈る様な気持ちで、そっと繰り返えしていた。
加護は、石川の歓迎会で披露するなぞなぞのネタを考えていた。
(この店って、もしかして…)
保田は何を思ったか、先程ポケットに入れた高級そうな首飾りを出すと、レジに向かった。
「これと、これ下さい。」
保田がペンダントを指差すと、店員もそれに応じた。
買い物を終えた保田は、加護を連れてすぐさま店を出た。
「あの二人が、店長呼んだことにして大丈夫なんですか?」
「いいのよ、その位…ところで、このペンダントを安倍ッちに渡してくれる?」
保田は、先程買ったペンダントを加護に渡すと、また歩き始めた。
「どこ行くんですか?」
加護が尋ねると、保田は「小室の家」と言うとタクシーに乗り込んだ。
(このペンダント何やろ?中に砂見たいなんはいってるやん、変なの…)
「お客さん着きましたよー。」
「幾ら?9000円高いよ・・、最高検察庁につけといて…」
運転手が青ざめたのを確認すると、保田はタクシーを降りた。
(小室の家にもしも、あれがあれば…)
保田は、携帯を押しながら頭を働かせていた。
「もしもし?」
「保田です…聞くんだけどさー小室の左手に注射器の後が無かった?」
「な・何でその事を…最高機密のはず…」
電話の声の平家は、明らかにうろたえている。
「監察医がみっちゃんで良かったよ。じゃあ。」
そこまで言うと、保田は電話を切り小室の家を探索し始めた。
95 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 19:08 ID:.CqJ/eZE
暫く探索していたが、何も見付からない。だが、これは当たり前の事だろう。
既に警察が何回も捜索しているのだから。しかし(必ず有る筈だ)保田は信念を持って続ける。
「ふ〜」溜息を一つ付き、何気にテレビの電源を入れる。「これはっ!!!!」
衝撃の事実が保田を襲う。
「又安くなりやがった、しかも二つかよっ!」
通販の番組であった事は言うまでも無い。保田は再び探索を開始する。
96 :
大河好き : 2001/02/11(日) 21:37 ID:KMI86jJk
しかし何もみつからなかった 保田は部屋に置いてあるおしゃれな電話に目をやった
「ずいふんアンティークな電話ね・・・」
保田は電話の側に置いてあるメモ用紙を見た 何か急いでいたのだろうか 紙が乱暴に引きちぎられていた
「何が書いてあったのだろう?」
保田は側にあった鉛筆を手にとり そしてその鉛筆で丁寧にちぎられたメモ用紙をこすっていった
するとちぎられた部分に書かれていた内容がそこに浮き出てきた
保田「・・・もうすぐ・・・お前は・・・死ぬ・・・」
保田はしばらく考えこんだ「なんだろ?」
すると突然部屋の電話が鳴った!
「リリリリリ!!」
97 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 23:04 ID:uMxctsDk
保田は手袋を嵌めたままの手で受話器を掴み、慎重に耳に近付ける・・・。
「はい、検察庁の保田です・・・・・・・・・うわあああ、しまったあああ!間違っていつもの調子で受けちゃったYo!どーしよっ!」
受話器の向こうでは「ツーツーツー・・・」と繰り返している。
保田は悲哀の表情を浮かべ、静かに受話器を置いた。
置いた途端に又鳴った。「リリリリリ!!」
98 :
大河好き : 2001/02/12(月) 02:29 ID:tLklSF16
(どうしよう・・・)
保田は少し考えた そして恐る恐る受話器を取った
「はっ・・・はいっ なんでしょう?」
「あっどーも! 佐山急便です お届けものに来ました!」
保田(あー なんだ この電話インターホンになってるんだ)
保田「ああどうも ちょっとお待ち下さい 今そちらにいきます」
保田は玄関に向かった 乱れている髪を少し整え、そして念のため覗き穴から外を見た
外には二人の男が立っていた 二人とも厚手のコートを身にまとい 一人は銃に弾を込めていた
保田「ヤバイッ!!」
99 :
名無し娘。 : 2001/02/12(月) 02:59 ID:VabC8xoc
裏口にも何人かの男の気配を感じた。
保田「ちっ」
小さく舌打ちをしながらガーターベルトから
コルトを取り出した。
100 :
名無し娘。 : 2001/02/12(月) 03:07 ID:xctfQPfU
「やっ、保田さん…それ…」
石川はびっくりしている。当たり前だ…
「こんなの偽モンに決まってるでしょ!
考えてもみなさい、検察がピストル持ってるわけ無いでしょ。
おもちゃよ、おもちゃ!」
小声で石川を叱った。
101 :
名無し娘。 : 2001/02/12(月) 08:42 ID:oOk.qiLo
「んっ!」保田は一瞬我を疑った。そう、突然の石川の登場。保田の背中に隠れ、震えている石川の顔を肩越しに覗き込み、一言。
「石川、お前・・・ ・・・目が真っ赤だぞ」
「保田検事、事情は後で説明しますぅ。
それより今は、この状況をどうにかしないと駄目なんですよぉ」
恐らく隣の部屋のベランダから進入したのだろう。
裏口、いやベランダに居る男の気配が近付いて来るのが解かる。
「ドンドンドンドンッ!」玄関に居る男達は乱暴にドアを叩いている。
102 :
名無し娘。 : 2001/02/12(月) 12:26 ID:kcOm5/V2
保田は諦めた。自分独りなら何とかこの場を乗り越えられると思っていたが、石川が居るとなると話しは別だ。壁に向かい項垂れる様に両手を頭に持って行く。石川は腰を抜かし、その場にしゃがみ込んでいる。ベランダから入って来た男達は銃を構えている。
「ははは、冗談だろ、撃つなよ、おい。これだってオモチャなんだよ」
指に掛かっていたコルトを床に落とした。
男が歩み寄り、保田の肩に手を掛け自分の方へ向き直させる。(でけぇ〜)大魔人を彷彿とさせる程の大柄な男が不敵に笑っている。保田が口を開こうとしたその時、大魔人は容赦無く振り被って第一球を投げた。ズシンッという音と共に、見事なフォークボールが保田のミゾオチを捕らえた。
「ぐふっ!」悶絶した保田は腹を押させ、体をくの字に折り曲げる。が、男はそれを許さない。保田の襟を掴み上体を起すと、すかさず振り被って第二球を投げた。ストレート。強烈なストレートが保田の顔面を襲った。
(顔は止めて、お願い、顔だけは・・・女は顔が命)
不覚にも『命』ポーズをとってしまう。だが冗談の通じる相手ではない。当然男は遠慮無しに第三球を打ち込む。ゴキッ、何かが砕け散った様な音。保田は力無く床に突っ伏した。泣きじゃくる石川が堪らず叫んだ。
「保田さんの顔がこれ以上醜くなったらどうすんですかぁ」
だが、保田は立ち上がろうとする。髪を振り乱し、口元から血を流し、床に爪を立て、血走った目は天を仰いでいる。まるで
「貞子」
ポツンと石川が呟く。男達が漸く口を開く。
「我々は・・・
103 :
大河好き : 2001/02/12(月) 18:51 ID:WqPTlwck
と大魔人が言いかけたとき 打ちのめされた保田がよろよろと起き上がった
魔人「まだ生きてたか ・・・楽にしてやる これがトドメだ!!」
大魔人はボールを握り そしてモーションに入った
その時! 保田はサッと玄関の戸を開けた
ドキュン ドキュン!!
二発の銃弾が大魔人の巨体を貫いた
暗殺者「なんだ大魔人そこにいたのか?」
殺し屋の男二人はあっけにとられていた
「バタン!」保田は素早く戸を締めた
保田「い・・・石川・・・逃げろ!!」
104 :
名無し娘。 : 2001/02/12(月) 19:34 ID:sdlqDhhg
「でも、こっちにも居るんですぅ・・・」
乱闘のあった部屋の片隅で、もう独りの男が様子を伺っているのが解かる。
石川は足元を確認すると、床に転がっているコルト目掛けてダイブした。
学生時代にテニス部で鍛え上げられた肉体は軽やかに宙を舞い、
片膝を付きながらも一瞬にして銃口を男に向けた。
「動かないでっ!警察よっ!」
手にしたコルトが偽物である事など忘れさせる程の迫力だった。
どうやら石川は、目の前に倒れていた大魔人の左手に握られている、
恐らく本物だと思われるベレッタM84Fには少しも気が付かなかった様だ。
(今フレンドパークに大魔人が出演してる。深い意味は無い)
105 :
大河好き : 2001/02/12(月) 20:47 ID:WqPTlwck
石川と殺し屋の緊迫した時間がしばらく続いた
保田は大魔人がもっていた銃にそっと手を伸ばしていた
パン パン!!
玄関の鍵を外にいる殺し屋達が撃ちこわそうとしていた
保田の手が銃に届いたその時!玄関の戸がバーンと開いた
保田(もうおしまいだ・・・)
「手を上げろ 警察だ!!」
保田「アレッ?」
保田は恐る恐る顔を上げた そこにいたのは殺し屋ではなく ボンクラ刑事の2人だった
106 :
名無し娘。 : 2001/02/12(月) 21:34 ID:VabC8xoc
ソニン「保田さん? よかった無事だったんですね」
ユウキが大魔人の両腕に手錠をかけた。
保田「このメモ用紙は証拠物件だから」
そう言ってメモ用紙をソニンに手渡した。
107 :
名無し娘。 : 2001/02/12(月) 22:01 ID:sdlqDhhg
「ちょっと待ってくれ!」
先程まで玄関に居た、厚手のコートを着た二人の男が部屋に掛け込んで来た。
「私は厚生省薬務局の麻薬取締官だ、そっちの二人も仲間だ」
そう言うと大魔人に駆け寄った。大魔人は手錠の掛かった手で、
胸に刺さった弾丸を抜き取った。「ふう、弾チョキのお陰で助かったよ」
「えっ!って事は私達の方が不審者だったの?私のどこをどう見たら
犯罪者に見えるってんだよ。 こんな美人捕まえてさ。それに・・・」
保田は殴られた頬をさすり、大魔人を睨み付けた。
「えっ!女だったのっ?」
慌てて口を手で覆った大魔人の目が、点に成っている。保田はスカートを履いている。
(
>>101は目が血走ってるけど・・・が正解だったな)
108 :
名無し娘。 : 2001/02/13(火) 02:31 ID:TUJfxv9I
話は15分程前に遡る。
麻薬取締官四人は向かいのビルに潜伏し、小室の部屋を張り込んでいた。
すると不審な男が、室内を荒している。警察に確認を取ると刑事では無い。
慌ててマンションへ向かうと、一人の女が部屋へ忍び込むのが見える。
取締官は二手に分かれ部屋を包囲する。
「あっどーも!佐川急便です。お届物に来ました!」
呼び鈴を鳴らし、銃に玉を込め、突入のタイミングを計る。
だが、中の男に感づかれたらしく扉は一向に開く気配がない。
扉を叩いてベランダの二人に合図を送る。
「ドンドンドンドンッ!」
扉に耳を充て中の様子を探ると、どうやら格闘が始っている様だ。
「ぐふっ!・・・ ゴキッ!・・・ バタンッ!・・・・・・・・・・・・・・・」
(やったのか?それとも・・・グズグズしてられんっ!)
ドアノブ目掛けて引き鉄を引こうとしたその時、同僚がその銃を払った。
「待って下さい!開きますよっ!」
だが遅かった。既に発射された2発の弾丸は方向感を失い、偶然にも仲間の胸を貫いてしまった。呆気に取られ思わず口走った。
「何だ、大魔人そこに居たのか?」
すると、若い二人組がエレベーターを降り、コッチに近付いて来る。
見ず知らずの相手に身分を明かす訳にもいかず、咄嗟に身を隠す。
「あいつ大丈夫か!幾ら弾チョキ着用してるからって、こんな至近距離じゃ」
「平気さ。知ってるだろ、あいつが何で大魔人って呼ばれてるかって」
若い二人組に気付かれない様小声で話していると、玄関前に到着した若い二人組が拳銃を取り出し、同じ様にドアノブ目掛けて発砲し、突入して行った。
「手を上げろ!警察だ!」
開いたドアの隙間から、若い女の声が漏れてきた。
109 :
名無し娘。 : 2001/02/13(火) 03:38 ID:TUJfxv9I
>>107 より続き
「今日の事は暮々も内密にお願いします」
「んー、秘密ですか・・・解かりました。余計な事して申し訳有りませんでした」
保田はゆっくりと頭を下げた。
手錠を外すと、取締官達は何事も無かったかの様に帰って行った。
「所で三人はどうしてココに来たわけ?」
保田はソニンの右手にメモが握られてるのを確認し、ニヤニヤしながら聞いた。
石川は偽コルトを構えたまま、プルプル震えている。
>>108 読み返したら嫌んなった。報知。
二人が検察庁に戻ると、眉間に皺を寄せた安倍と青筋を立てた安倍が出迎えた。
111 :
名無し娘。 : 2001/02/13(火) 14:09 ID:WqB4fI3Y
保田「キャップ、何かを記したメモ用紙だけを押収しました」
安倍「鑑識を急がせる。ところで被者(小室氏)の遺体から
ごく微量の睡眠薬が検出された」
保田「眠らしておいて殺した…」
石川「じゃあ女でも可能じゃないですか保田さん」
保田「う〜む」
安倍「被者の女関係を徹底的に洗ってくれ」
保田、石川「はい!」
112 :
大河好き : 2001/02/13(火) 19:05 ID:lfQ5xbb6
安部は保田と石川を見送ると またデスクにもどり腰をおろした
机の引きだしからカップ緬を取り出すと湯を注いだ
安部「上からは調査はしないようにといわれてるかもしれないけんどもよ そうはいかないのがヒトってもんだべさ」
安部は湯気の行方をながめていた
その時 「はーいみなさんお静かに!!」
入口からいかめしい顔をした男達がどっと押し寄せてきた
「みんな座って座って はい 動かないで!!」
男達は部屋の人間を制止して 入口や窓に立ち塞がった
安部「あんたら誰だべさ!?」
リーダーらしき男が答えた「本庁の公安課の者です えーこの検察庁で違法行為が発覚しましたので調べにまいりました!」
安部「違法行為? 一体何だべさ?」
リーダー「いろいろです」
男達は安部を無視してあちこちの机の引きだしや棚を調べ始めた
(保田ー)
安倍の声は、空しく響くだけだった
115 :
大河好き : 2001/02/14(水) 18:32 ID:Jp13xfgQ
116 :
名無し娘。 : 2001/02/14(水) 21:23 ID:yKuD2fbM
男「ありましたリーダー」
リーダー「これはなんですかな」
引き出しの下のビニール袋を指差している。
ちょうど片手に乗るほどの砂糖袋の様な物だった。
もちろんそれが砂糖袋でない事はすぐに分かった。
安倍「わ、私の物ではない! 誰がこんな所に!?」
リーダーがニヤリとした。
リーダー「とりあえず公安までご足労願いますか」
そう言うと男たちが安倍を取り囲んだ。
117 :
大河好き : 2001/02/15(木) 02:39 ID:M4fWtm5M
安倍「知らん 知らん! これはワナだ!」
リーダー「薬物不法所持で逮捕だ!!」
捜査員たちは安倍に手錠をかけそして両腕をつかんで連れ出した
安倍「お前ら一体誰のさしがねでこんなことやってるだべさ!」
安倍が捜査員に食ってかかった
しかしその声も虚しく安倍は公安の覆面パトカーに乗せられてしまった
118 :
名無し娘。 : 2001/02/15(木) 04:34 ID:9H0i7cbQ
安倍が後部座席に乗り込み終えた時・・・
「はいっカットォ!」メガホンを片手に中澤検事正が満足そうに声を揚げる。
「皆えー演技やったで。このまんまの調子で、本番も頼むさかい」
ゾロゾロと皆が事務所に引き返して来る。そして保田が唇を尖らせて言った。
「裕ちゃん、幾ら甥っ子が遊びに来るからって私達を巻き込まないでよ」
「ははは、そう言うなや圭。しゃーないやん、どうしても警察署の中が
見たいゆーんやさかい。な、協力したってーなー」
「だったら警察署に連れて行って上げれば良いじゃないですか。
ここは検察庁ですよ、『検察庁』!」
「解かってるって、それ位。けど子供やったら細かい事解からんやろ。
それに警察署なんかに恥かしくて頼めるかい。なーお願いや」
「何も刑事ドラマを気取らなくたっていいじゃん、小道具まで用意してさ・・・
結局自分が良い所を持って行くんでしょ。公安に立ち向かう『HERO』って奴」
「ははは、バレとるんかい。まーええやないか、それ位勘弁したってや」
二人の会話に割って入ったのは、男装している後藤だった。
「てゆうか、なんで脇役なのお?後藤はメインなのですよ」
「何て言うのかな〜、圭織も同意ですね。圭織、ハゲヅラ似合わなーい」
「うちなんかセリフすら無いねん」
「ののもれす、おぉおぉおぉ」
中澤の突き刺す様な視線が辻と加護を捉える。
それに気付いた二人は声を揃えて、お決まりのセリフ。「がんばりまっす!」
「とにかく、元気出して行こうぜっ!」中澤が締め、各自本来の仕事に戻った。
命令を無視し、勝手に行動していた保田に腹を立てている安倍だけは、会話に入って来なかった。
そういえば石川も喋って無かった事に、筆者は今気付いた。流石はチャーミー。
119 :
名無し娘。 : 2001/02/15(木) 04:34 ID:9H0i7cbQ
あれから数日、検察庁は平穏な毎日を送っている。
保田は例の事件からは完全に撤退し、通常の業務に戻っている。
ソニンとユウキは職務違反の謹慎処分が解け、別の事件を追っている。
マスコミは芸能人の殺人事件として大きく取り上げているが、
警察の方は愛情のもつれによる殺人及び自殺として、
被疑者死亡という形で既に処理し、事件は終焉を迎えた。
やがて人々の記憶からも全てが忘れ去られるのであろう。
闇に消えた幾多の証拠品と数名の行方不明者の様に・・・。
「あのー、やっぱレースのフリルが付いたのとか、好きなんでしょ?」
保田は山に積まれた下着を指差し、下着ドロ相手に事情聴取をしている。
(何なんですかぁ?これじゃ、ろくな調書が取れないじゃないですかぁ)
石川は、容疑者と楽しそうに話している保田の姿に呆れ、
仕事中のみ掛けている眼鏡を静かに机へ置くと、ゆっくり立ち上がった。
そのまま窓際へ歩み寄り、ブランデーグラスを片手に斜に構えて立ち、
ブラインドの隙間に人差し指を掛けると、その先に現れる情景を楽しむ。
「雪が溶ける様に全てが消えてしまったのね。そして春が訪れる、か・・・」
窓の外には、目と鼻の先に隣のビルが接していて何も見えないが、
たしかに春は、すぐ傍まで近付いている・・・。
≪ 惜しまれつつも強引に そして勝手に 第一話 完 ≫
>>1 へ戻る
120 :
感動の第二話 : 2001/02/15(木) 04:35 ID:9H0i7cbQ
と見せ掛けて、すかさず第二話が始まるのであった(参加者恐らく三名位)
「自民党衆議院議員の石川要三と同じ名前の石川です」
本人は『踊る・・・』の青島刑事を真似た冗談のつもりだったのだろう。
だが、福田・石黒両弁護士が石川要三氏を知っていたかどうかは疑問だ。
流石はチャーミー。
この度、飯田が担当している事件(
>>71 参照)を全員で調査する事となった。
事件の更に詳しい情報は
>>121 が説明する。
121 :
感動の第二話 : 2001/02/15(木) 04:36 ID:9H0i7cbQ
122 :
名無し娘。 : 2001/02/15(木) 05:22 ID:9Tp1qqVM
説明しよう… と思ったが、これまで容疑を否認し続けていた被疑者が一転して容疑を認め、全てを自白し、裏付けも取れたのでそのまま起訴され、事件はあっさり収束した。
一部には被疑者が保田のリーゼントに怯えた為ゲロしたと言う噂が流れたが、事の真相を知る者は居ない…。
惜しまれもせずに、感動の第二話が終了
そしてすかさず第三話『石川歓迎会編」へ
「どーもー、チャーミー石川で〜す。チャオ♪」
「パチ…パチ…パチ…」
「……」
おわり
石川ヲタの罵声を見事に掻い潜り 第三話『石川歓迎会編』強制終了
…まぁ石川の扱いは、この程度で十分だな。
気を取り直して 第四話 『そろそろ真面目に書くぞ編』 へ突入か!?
125 :
名無し娘。 : 2001/02/15(木) 23:57 ID:ctFEx/Fk
ここは、今まで同様、東京地検。
地検だけあって、そうでかい事件は回ってこない。
事件に「大きい小さいはないでしょ。」
「踊る大捜査線」の影響を今、もろに受けている。
お出かけ大好き保田検事の、今日の仕事の始まり始まり!
126 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 01:37 ID:kZQHu2z.
時の経つのは早いもので、もう一日の仕事が終わった。そして全員でカラオケボックスへ遊びに行った。宴が佳境に差し掛かった時、検事正の中澤がマイクを手に取りステージに上がる。場内から割れんばかりの拍手と歓声が上がる。
「ゆ・う・こ!ゆ・う・こ!」
それに応える様に両手を翳し大きく振ると、ゆっくりとお辞儀をする。やがて頭を起すとマイクを口元へ運ぶ。
「今日はミンナ駆け付けてくれて、どうも有り難う!」
場内がシンと静まり返る。
「それでは、これまでに登場したメンバーの紹介をしたいと思いまーす。まずは私、中澤裕子は…」
ドラムロールが流れる。(ドゥルドゥルドゥルドゥル……ジャン!)
「東京地方検察庁に勤める検事正でーす」
一斉に「ウォォォ」と唸り声が上がった。
「続いて紹介するのは…」
中澤の話が長くなりそうなので、変わりに説明しよう。
127 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 01:39 ID:kZQHu2z.
中澤裕子:検事正。甥っ子がいる。言葉使いから察するに関西出身の様。
保田圭:検事。この物語の主役。検察庁のエース。ブサイク。通販好き。
石川梨華:新米の検察事務官。こちらも主役。大学時代、保田の後輩。
安倍なつみ:次席検事。保田を良く思ってない。時折、方言が出る。麺好き。
飯田圭織:恐らく検事。辻とペア。
後藤真希:恐らく検事。加護とペア。
辻希美:恐らく検察事務官。時折、警備員の真似をする。
加護亜依:恐らく検察事務官。辻と仲良し。時折トイレで噂話に華を咲かす。
市井沙耶香:こちらも検察庁のエースと噂されているが、詳細は不明。
福田明日香:元同僚。今は独立して弁護士。
石黒彩:元同僚。今は独立して弁護士。福田と同じ事件を弁護した経験有り。
ソニンとユウキ:警視庁の刑事。通称ボンクラ。以前は保田と対立してた。
小室哲也:既に死亡。自宅マンションで殺害された。物語の最初の犠牲者。
戸沢桃代:既に死亡。小室宅で自殺!?小室とラブラブだった!?
成ちゃん:保田の古い友人。権力者らしい。詳細は不明。
厚生省の麻薬取締官:四名。保田と格闘した大魔人と呼ばれる男が所属。
宝石店『ミニモニ』オーナー:詳細は一切不明。
宝石店『ミニモニ』元従業員三名:一年前に行方不明。
消えた証拠品:ラベンダー型のネックレス、「もうすぐお前は死ぬ」と記されたメモ。
これを読んで一気に冷めてしまった人も居ると思うが、筆者は気にしない。
つーか読んでる人いなそーだな。
(参加者 今の所、身勝手な奴が一名)
128 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 01:41 ID:kZQHu2z.
薄暗い廊下を、銀縁の眼鏡を掛けた若い女が歩いている。何やら束になった書類らしき物を小脇に抱え、無言のまま正面を見据えながら先を急いでいる。長い髪が風になびいている所を見ると、幾らか小走りなのかと伺える。女が見据えている先には「死体安置所」と書かれたネームプレートの張り付けられた扉が有る。
129 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 01:42 ID:kZQHu2z.
女は扉の前へ到着すると足を止め、初めて口を開く。
「どーゆー趣味してるんですかねェ」
書類の束を左手に持ち替え、パチンッとプレートを指で弾く。そして上着の襟を正し、髪を簡単にサッと撫でると咳払いをし、扉をノックする。
「保田検事、石川です。入りますよぉ」
130 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 01:42 ID:kZQHu2z.
ここは最高検察庁の片隅に有る、図書室兼資料室兼保田検事の部屋である。保田が使用している大きなデスクが入り口から見て右奥に、背中側が壁になる様に置かれている。そのデスクとカギ型に並べられて石川のデスクが、入り口近くに中央を向く様に置かれている。正面と左側には本棚が立ち並んでいる。
131 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 01:43 ID:kZQHu2z.
「あれっ、保田検事いらっしゃらないんですか? …何処行ったんだろう?」
石川は手に持っていた書類の束をデスクへ置くと、さして広くもない部屋の中を見渡す。
「又、勝手にどっか行っちゃったのぉ!!」
言葉を吐き捨てると踵を返し、部屋を飛び出した。
132 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 01:43 ID:kZQHu2z.
「ん?石川か…あれ、気のせいか…おっと、続けなきゃ」
デスクの陰から顔を除かせた保田が、又すぐに引っ込む。
「う〜ん、コイツは気持ちが良いや」
床に仰向けに寝そべった保田は、通販で買った『金魚なんとか』に足を乗せニヤニヤしている。下半身がブルブル左右に揺れている。
133 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 01:44 ID:kZQHu2z.
何処を駆けずり廻って来たのか、髪を振り乱し、息をきらせて石川が部屋へ戻って来た。デスクに越し掛け、何食わぬ顔で書類に目を通している保田の姿に怒りをあらわにした。
「保田検事ぃ!一体今まで何処に行ってらしたんですかぁ!あちこち探し廻ったんですよぉ!何処かにお出かけに成る際には、私に声を掛けて下さらないと困りますぅ!」
134 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 01:44 ID:kZQHu2z.
石川の迫力にも顔色一つ変えず、保田は書類から目を離さない。
「ちょっとぉ!私の話を聞いてくれてるんですかぁ!」
そう言って保田が読んでいた書類を奪い取ると、漸く保田は頭を上げた。
「お前さー、さっきから何怒鳴ってんのー?俺はずっとこの部屋に居たよ。それより調書見とかなくて良いのかー?これから被疑者が事情聴取に来るんだろー」
135 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 01:45 ID:kZQHu2z.
やがて被疑者が弁護士と共にやって来た。
その弁護士の顔を保田は知っている。
昔は一緒に仕事をした仲だ。その弁護士の名は…
136 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 04:24 ID:skHDMQbA
弁護士の名前は福田明日香。
検察官の保田が被疑者と話を始めた。
「貴方には黙秘権が有り……。では始めます。貴方のお名前は…?」
137 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 11:43 ID:Qof8XsEU
「や〜!ちょ〜はずかし〜!!」
容疑者のコギャルは照笑いしてる。が目はマジだ。
138 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 11:54 ID:JMw7dKdo
「てめえ、いー加減に吐けよ」
保田がドロップキックをお見舞いする
139 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 12:09 ID:dj4yIdm.
と思ったら、あっさりよけられ自爆。しかも着地に失敗、顔面を強打する。
140 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 16:51 ID:Q9Pn83Eg
それを哀れに思った被疑者は
「おいらは矢口真里だぁぁぁ!!」
と、叫びながら一瞬にしてマウントをとる。
141 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 17:11 ID:GU4E28uA
堪らず石川が二人の間に割って入る。
「第1R終了ですぅ、コーナーへ下がってくださぁい」
142 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 17:24 ID:CgfTcCoM
椅子に腰掛けると保田が息をきらせながら問いただす。
「仕事は何をしてるんですか?」
まるで中田のスルーパスの様に意表を突いた質問、でもなかった。
143 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 17:39 ID:BcL2hJEw
「大学生…」
矢口はAボタンを連打しながら答えた。
すると福田が石川目掛けて、百裂キックを炸裂した。
144 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 17:53 ID:1eaJ0Oe6
それを余所に保田が質問を続けた。
「さては矢口さん、自作自演でしょ?」
「ま、まさか〜、IDよく見てよーって感じなんだけど」
その顔は引きつった笑みを浮かべている。目もマジだ。
145 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 17:58 ID:1eaJ0Oe6
ラウンドガールの福田がリングを一周し終える。
146 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 18:28 ID:4U7PxavE
第2R開始を告げるゴングが、打ち鳴らされた。
保田は見事にオーバーラップし、裏の開いたスペースに走り込んだ。
「ここに起訴状があります。これによると矢口さん、貴方が犯した罪は…」
147 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 23:09 ID:IVy3nqnU
「人を殺しました…」
矢口が保田の言葉を遮った。
皆の視線が矢口に集中する。
「嘘だッぴょ〜ん」
矢口がおどけて言った。すると…
148 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 23:31 ID:IVy3nqnU
「かっかっ!」
タイミング良く福田が例のポーズをとった。
「明日香、アンタ本当は…」保田が呟いた。
気を取り直して保田が言った。
「石川、お前変わりに説明しろ」すると…
149 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 23:55 ID:IVy3nqnU
「解かりました」石川は立ち上がり説明を始めた。
「2001年02月16日金曜日… あ〜したは や〜す〜みっ♪」
フリをつけて唄う石川に皆の視線が集中する。すると…
150 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 00:06 ID:y85LMDMY
「こ〜んやは なんも〜なくて あ〜あっ つ〜まんない〜け〜ど〜♪」
福田が一緒になってフリ付きで唄ってた。
「明日香、アンタって一体…」保田が呟いた。すると…
151 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 00:08 ID:y85LMDMY
(二番の歌詞を知ってるなんて…)
石川は負けずに続けた。勿論、歌じゃなくて事件の説明を。すると…
152 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 00:10 ID:y85LMDMY
「ピーリリリリリーリー♪ピーリリリリリーリー♪ピーピピピピピピー♪…」
福田の携帯の着メロが鳴り、出ていった。
「明日香、アンタそんなにまで…」保田が呟いた。すると…
153 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 00:11 ID:y85LMDMY
「まるッまるッまるまるまる♪フーッ!」
石川だった。すると…
154 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 00:14 ID:y85LMDMY
「もういい!」保田が変わりに説明を始めた。
「2001年02月16日金曜日…」
視線を石川に送ると、石川が腕をプルプル震わせ必至にこらえてた。すると…
155 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 00:46 ID:y85LMDMY
満足して保田は続けた。
「午後八時半頃、貴方はコンビニで万引きをし、注意を受けた店員を殴り
そのまま逃走…。間違い有りませんか?」すると…
156 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 02:32 ID:y85LMDMY
「ええ、間違い有りません」矢口は俯いたまま答えた。
「これは刑法××に記される、窃盗罪及び暴行罪にあたりますね」
保田が聞くと矢口は頷いた。すると…
157 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 03:25 ID:y85LMDMY
「そして一時間程して、貴方は現場となったコンビニに戻ってきて
通報を受けて駆け付けていた警官に、ゲロを吐いたと…
ただ、妙な事も書いてあるんですよ。えー、そのゲロを片付けた
店員によると犯人は二人組だったって…」すると…
158 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 03:54 ID:y85LMDMY
「ち、違いますっ!」これまで顔を伏せていた矢口が顔を上げた。
「私が一人でやったんです。誰も一緒には居ませんでした!」
真剣な眼差しで訴える矢口の唇を奪おうとする保田。すると…
159 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 04:09 ID:y85LMDMY
矢口が下を向いてしまうので、諦めた保田が場を誤魔化した。
「そうですか、ウブなんですね。もう遅いので今日は終わりましょう」
時刻は午後9時。保田は矢口を連れて部屋を出た。すると…
160 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 04:10 ID:y85LMDMY
三人は地検の職員が一同に会している広い応接室の前に到着した。
仕事を終えた中澤検事正を始め、同僚達がテーブルを囲んで
テレビのチャンネル争いをしてた。福田も一緒だ。すると…
161 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 04:11 ID:y85LMDMY
それまで肩を落として俯いていた矢口が顔を上げてテレビを凝視した。
モデルの様なスレンダーなボディにショートヘアが良く似合う、
ボーイッシュな若い女が歌を明らかに下手糞に唄ってた。すると…
162 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 04:12 ID:y85LMDMY
「どうかしました?」保田が声を掛けた。
「いえ、何でもないです…」矢口は又俯いてしまった。
(あれっ?鼻水…)矢口の表情は既に確認出来ないが、
保田は一瞬見せた矢口の鼻水を見逃さなかった。すると…
163 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 04:13 ID:y85LMDMY
「終わりましたか?」
声を掛けた小柄な福田がソファーに埋もれ、立ち上がれないでいる。
「ええ」 「じゃあ起訴に決まりですね?」
「いえ、今日の所は一応保留って事で…」すると…
164 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 04:14 ID:y85LMDMY
「保留???」
その場に居た全員が保田のホクロを注視した。すると…
165 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 04:24 ID:y85LMDMY
「ええ、まあ…」
それだけ言うと保田は愛車のキックボートに乗っかり
「ブルンブルブブンッ!」と声を上げて何処かへ去って行った。すると…
166 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 04:26 ID:y85LMDMY
「ちょっと待って下さいよぉ!あたしも乗せてって下さいよぉ!」
石川が後を追い掛けた。すると…
167 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 19:06 ID:74yQfr2o
つまんなくねーこれ。まじでつまんねーYo
「trtrtrtrtr」
保田の携帯がなった。
「すぐ戻ってくるべさ!」
安倍の怒号が響き渡った。
169 :
名無し娘。 : 2001/02/18(日) 01:28 ID:ksQZnQ/.
受話器を置いた安倍が振り返ると、応接セットの周りで
保田が「ブルンブルン」とキックボードを乗り回していた。
石川は振り落とされない様に必至にしがみ付いてる。すると…
170 :
名無し娘。 : 2001/02/18(日) 02:58 ID:ksQZnQ/.
「つまんなくねーこれ。まじでつまんねーYO」(
>>167 参照)
繰り返し文句を言ったのは、テレビを見てた中澤検事正だった。
テレビは先程の歌番組が終わり、月九のドラマが放映されていた。
主演はキムタクとか言う売れっ子のタレントだ。すると…
171 :
名無し娘。 : 2001/02/18(日) 03:00 ID:ksQZnQ/.
「このドラマ、私達の事をパクリでやってるんじゃない?まったく…」
いつの間にかソファーに座ってる保田が言った。すると…
172 :
名無し娘。 : 2001/02/18(日) 03:47 ID:ksQZnQ/.
皆の態度に腹を立てた安倍次席がテレビの前に立ちはだかった。
50インチの大画面が、安倍の太っ腹に隠れてしまってた。
「そんな事より圭ちゃん、さっきのは一体どう言う事なんだべ。
ちゃんと説明するっしょ」すると…
173 :
名無し娘。 : 2001/02/18(日) 04:10 ID:ksQZnQ/.
「説明ってもなー、んーもう遅いし…お腹も空いたし…
ねー何か食べに行こうよ。あっそれから、えー矢口さん?だっけ。
今日は自宅に戻られて結構ですよ。在宅事件として扱いますから
書類送検で済みますので。ただ、又来て貰いますけどね。
…つー事で良いのかな。さて、食いに行きますか?」
保田が立ち上がった。すると…
174 :
名無し娘。 : 2001/02/18(日) 05:02 ID:ksQZnQ/.
既に誰も居なかった。
ただ独り石川だけがキックボードに乗って、はしゃいでた。すると…
175 :
名無し娘。 : 2001/02/19(月) 00:07 ID:Prek3zNw
突然舞台が切り替わり、ゴツイ顔したバーテンの
画面一杯に映し出された顔で物語が再開した。すると…
176 :
名無し娘。 : 2001/02/19(月) 00:41 ID:Prek3zNw
「泣いてましたね…」
石川がお好み焼き、しかも贅沢な事に広島風のを頬張った。
(鼻水だろ!しかも青っ鼻だ!)
うら若き乙女を気遣い声に出さない優しい保田。すると…
177 :
名無し娘。 : 2001/02/19(月) 01:21 ID:Prek3zNw
「仕方ないんですよねぇ。罪を犯してしまったのですからぁ…」
石川が青海苔だらけの歯茎を隠そうともせずに続けた。すると…
178 :
名無し娘。 : 2001/02/19(月) 02:18 ID:Prek3zNw
その青海苔を一枚一枚丁寧に取りながら保田が返す。
「うーん、でもなー犯罪事実に曖昧な点も有るみたいだし…
まーもう少し時間も有るから、調べてみよっかなー」
待ってました、とばかりに石川が喜んで手を叩いた。すると…
179 :
名無し娘。 : 2001/02/19(月) 02:25 ID:Prek3zNw
「ばーか。ドンパチなんかが有る訳無いでしょーが。
それに、私はもうこんな思いするのは懲り懲りだよ」
見事に折れ曲がりソッポを向いた鼻を懸命に元に戻してた。すると…
(
>>102 参照)
180 :
名無し娘。 : 2001/02/19(月) 02:35 ID:Prek3zNw
ハエを見事に叩き潰した。そして黙祷した。で言った。
「捜査ですかぁ!ヤッタァ又前みたく派手にドンパチやるぞぉ」すると…
>>179-180 逆でした。ははは
181 :
名無し娘。 : 2001/02/19(月) 02:36 ID:Prek3zNw
「ばーか。ドンパチなんかが有る訳無いでしょーが。
それに、私はもうこんな思いするのは懲り懲りだよ」
見事に折れ曲がりソッポを向いた鼻を懸命に元に戻してた。すると…
(
>>102 参照)
もう一回、ははは。
182 :
名無し娘。 : 2001/02/19(月) 02:45 ID:Prek3zNw
「それは元々ですよぉ」石川の天然ボケが炸裂した。すると…
183 :
名無し娘。 : 2001/02/19(月) 02:47 ID:Prek3zNw
「そうだな」と戻すのをやめた保田。すると…
184 :
名無し娘。 : 2001/02/20(火) 01:10 ID:/CCpOPDY
月が沈んで太陽が昇った。すると…
185 :
名無し娘。 : 2001/02/20(火) 01:18 ID:/CCpOPDY
目覚ましタイマーをセットしておいたCDオーディオから
『恋愛レボリューション21』が軽快に流れだした。
石川は目を覚ました。が起きない。『恋レボ』は進んでく。が起きない。
目は覚めてる。がまだ起きない?『恋レボ』は更に進んでく。がまだ起きない?
目を覚ましているのに、起き上がらない?『恋レボ』??
これは何かしらのタイミングを待ってるに違いない。すると…
186 :
名無し娘。 : 2001/02/20(火) 01:54 ID:/CCpOPDY
獲物を捕らえる肉食動物顔負けの俊敏な動きで一気に起き上がった!!
「ほいっ!」っと… 例のポーズも忘れずに… ………。すると…
187 :
名無し娘。 : 2001/02/20(火) 02:00 ID:/CCpOPDY
つーか
>>185 で誰でもオチの分かるネタふって、しかもageておいたのに結局36分後に自作自演か。ははは…。
―――と筆者が書いてる間中、そのままのポーズで待ってくれている優しい石川。すると…
188 :
名無し娘。 : 2001/02/20(火) 02:02 ID:/CCpOPDY
ようやく例のポーズを崩し動き出した石川はいつもの様に服を着替え、いつもの様に鏡の前で紙を整えた。すると…
189 :
名無し娘。 : 2001/02/20(火) 13:39 ID:B9S8.bJM
紙じゃなくて髪だよ(w
190 :
名無し娘。 : 2001/02/21(水) 00:34 ID:LA3SLBDA
紙じゃなくて髪だよ――と何処からともなく嘲笑う声が聞こえてくる。だが石川は顔色一つ変える事無く、そのまま鏡の前で新聞つまり『紙』を整えた。すると…
191 :
名無し娘。 : 2001/02/21(水) 00:50 ID:LA3SLBDA
電話が鳴った。すると…
192 :
名無し娘。 : 2001/02/21(水) 01:01 ID:LA3SLBDA
鳴った電話に向かい近付いて来る石川。鳴る電話。
ドンドン電話に近付いて来る石川。鳴り続ける電話。
ドンドンドンドン電話に近付いて来る石川。鳴り続ける電話。
ドンドン近付き遂に石川が受話器に手を掛けた。すると…
193 :
名無し娘。 : 2001/02/21(水) 01:06 ID:LA3SLBDA
その電話は1メートルもある巨大な電話でした。ちゃんちゃん
と言う遠近感を利用した古臭いネタを思い出した筆者。
読者の中にも思い出した人が多分3人位いた筈だ。
えー脇道に逸れてしまったので話しを元に戻そう。
受話器に手を掛けたまま待ってくれてる石川に悪い。
――遂に石川が受話器に手を掛けた。すると…
194 :
名無し娘。 : 2001/02/21(水) 01:10 ID:LA3SLBDA
石川は巨大な受話器を平然と担ぎ上げた。
「よいしょっと…。はい、石川ですぅ」すると…
195 :
名無し娘。 : 2001/02/22(木) 00:19 ID:osu5BjZ.
「石川、お前何やってんのー今日は早く来いって言ったじゃんかー。もう遅いから先に行ってるよー。それから目的地の地図送っといたからさー、直接きなよー」
それだけ言うと電話が切れた。
石川はバンドエイドを貼ってあげた。すると…
196 :
名無し娘。 : 2001/02/22(木) 00:23 ID:osu5BjZ.
FAXもPCも持ってない事に気が付いた。
「どおなるんですかぁぁぁ…」
困った石川が救いの目を窓の外に向けると一羽の鳩が飛んでいた。すると…
197 :
名無し娘。 : 2001/02/22(木) 00:25 ID:osu5BjZ.
「ピンポーン」と玄関のチャイムが鳴り、出向かえるとバイク便で、そいでもって封筒の中身を確認すると保田検事からの目的地を記した地図だった。
鳩は雲一つ無い大空を自由に羽ばたいていた。すると…
198 :
名無し娘。 : 2001/02/22(木) 00:31 ID:osu5BjZ.
>>197 伝書鳩だと思ったろ。
そんなに都合良くいくかよ、ははは…。
――と筆者が書き込んでいる間に
どうやら都合良く石川が目的地のコンビニに到着したようだ。すると…
199 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 01:32 ID:H6HBYwnc
保田がレジでバイトしてた。
しかも「いらっしゃいませー」と張切ってた。すると…
200 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 01:36 ID:H6HBYwnc
慌てて石川が店に駆け込んで保田に言った。
「ハンペンと大根下さぁい」すると…
201 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 01:42 ID:H6HBYwnc
「お前何調子に乗ってんのー、いい加減気付けよ」
石川の天然ボケに腹を立てた保田が更に続けた。
「こっち来て手伝え、お前事務官だろ」すると…
202 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 01:48 ID:H6HBYwnc
「やー検事さん、済みません手伝って貰っちゃって」
見知らぬ男が現れた。が石川は店長だと悟った。
だってバッチに店長って書いてあるもん。すると…
203 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 01:57 ID:H6HBYwnc
「いえ、私の方は一向に平気ですよ。
昔この手のバイトやってたし接客得意なんですよ。
えーハンペンと大根でしたね。少しお待ち下さいませ」
元マック店員の意地とプライドを掛けた保田。すると…
204 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 02:07 ID:H6HBYwnc
「後は手前共でやりますので、もう結構です」(店長談)
どんなに張切ろうと結局、日の目をみる事は無い保田。
悔し涙にくれながらエプロンを外した。すると…
205 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 02:09 ID:H6HBYwnc
それを石川が奪い取り、カタキを討つ。
すかさず大根を菜箸で摘みだした。すると…
206 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 02:12 ID:H6HBYwnc
「あ、あと玉子も入れて」
保田が追加注文した。すると…
207 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 02:16 ID:H6HBYwnc
………………。すると…
208 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 02:20 ID:H6HBYwnc
保田が更に言った。
「よーく染み込んでる黒いヤツだぞ」すると…
209 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 02:21 ID:H6HBYwnc
「あたしは美白になるんですぅ」
今度は石川が涙ぐむ。すると…
210 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 02:30 ID:H6HBYwnc
「あの、ホントにもう結構なんですけど…」
店長の居た事をスッカリ忘れていた保田が言った。
「あー気にしないで下さい。いつもの事ですから」すると…
「手をあげろ」
何と現れたのは、コンビニ強盗だった。
「何いてるの?」
石川が駆け寄ろうとするのを保田が取り押さえた。
(拳銃持ってるのがわかんないの?)
(本物ですかね?)
(本物ね…非常ベルを簡単に打ち抜いたところから見て、常習犯ね。)
両腕を縛られた店員と保田達は、柱に括り付けられてしまった。
(まずいなー。今日はロシナンテの日なのに…帰れるかな?)
石川の不安を他所に時間だけが刻々と過ぎていった。
(3時間たった。それにしても…金が目当てならさっさと帰れば良いのに…)
213 :
名無し娘。 : 2001/02/26(月) 00:19 ID:cMYlCMmY
土曜日の真昼間、コンビニに一人も客が居らず、
しかも店員までも居ない。
シャッターは設置されてない為、
人通りの激しい表からは中が丸見えになっている。
「3時間かー、早く誰か気付いて通報してよ!」
石川と同じく保田も又、否応無しに焦っていた。
何故なら安倍に、お目玉を食らってしまうからだ。すると…
214 :
名無し娘。 : 2001/02/26(月) 01:01 ID:RSsJOjkI
突然石川がそれまで閉ざしていた口を開いた。
「あのぅ保田検事ぃ、どおでも良い事なんですけど、
『お目玉を食らう』って文章は変ですよ。
それを言うなら『お目玉を頂戴する』
若しくは『大目玉を食らう』だと思うんですけどぉ」すると…
215 :
名無し娘。 : 2001/02/26(月) 01:05 ID:RSsJOjkI
「ははは、解かってるよそれ位。誰かツッこんでくれるかな、
っと思ってワザとしたんだよ。証拠にageてあるだろ。
つーか何で私の心の中が読めるんだよ、お前は」
「あのーそんな事より、今はこの状況をなんとかしないと…」
店長が二人をなだめる様、中に割って入った。
確かに今は言い争いをしている場合ではない。
早く何とかしなければ、安倍に大目玉を食らってしまうのだ。すると…
216 :
名無し娘。 : 2001/02/26(月) 02:44 ID:jzsFN9e.
捕らえられている三人は一斉に声を揚げた。
「そう言えば猿轡されてたんだ!話しなんか出来なかったんだ!」
これが属に言う『目は口程に物を言う』というヤツだ。
と、MUSIXのクイズでやっていたのを石川は知っている。すると…
217 :
名無し娘。 : 2001/02/26(月) 03:20 ID:jzsFN9e.
保田と石川、二人の目は口程に物を言った。
「ふがふがふが!(おまけに今日は火曜日だった!)」すると…
218 :
名無し娘。 : 2001/02/26(月) 03:30 ID:jzsFN9e.
(どっちだって良いじゃないですか、それより今は…)
店長の目は口程に物を言っていたが、
二人は店長の目を見ていなかった。
(石川、お前が先にロシナンテとか言うから…)
(でもロシナンテの日じゃなくて良かったですぅ)
二人の世界に入ってしまっている。すると…
219 :
名無しくん。 : 2001/02/26(月) 19:06 ID:Rk649Iog
そこに飯田さんがきて。
急にばくはつボン!!!
( ´D`)わけわかめなのれす
220 :
名無し娘。 : 2001/02/26(月) 19:20 ID:pUINU2xE
「マスター、半農半ゲイアイドル・・・なんてないよなぁ・・・」
「あるよ」
「・・・・あるんだ・・・」
221 :
名無し娘。 : 2001/02/27(火) 01:41 ID:k8RYO1RA
そう、突然場面は変わり、ここは検察庁の応接室。
安倍は保田の帰りの遅い事に腹を立て
飯田に怒りの矛先を向けた。
すると八つ当りされた飯田は、加護と遊んでいた
辻の所へ行き辻に対し一気に怒りを「ボン!」と爆発させた。
日頃の鬱憤が溜まっていたせいも有ったのだろう。
しかし八つ当りされた辻にとっては堪らない。
「なんでののが怒られるのれすか
わけわかめなのれす…」
だが辻の、この下らない冗談が飯田を冷静にさせた。
「マスター、半農半ゲイアイドル・・・なんてないよなぁ・・・」
「あるよ」
「・・・・あるんだ・・・」
二人の会話が理解できない読者の為に説明しよう。
これは検察独特の符丁、つまり業界用語だ。
一般の読者には解かり辛いので筆者が変わりに解説する。
「のの、本当はタンポポに入りたんでしょ」
「そんな事無いれす、ののはミニモニ。れ十分れす」
「えー圭織がミニモニ。に入りたーい、んだけど…」
身長制限に引っ掛かりミニモニ。に入れないが
密かに憧れている飯田だった。すると…
222 :
名無し娘。 : 2001/02/27(火) 02:22 ID:k8RYO1RA
検察庁でそんな事が起こっているとも知らず
監禁されている保田は現実に引き戻された。
強盗犯の二人組は保田達を従業員用の個室の
隅に縛り付けたまま全く様子を見に来ない。
この位置からでは店内は愚か、
店内に設置された監視カメラの映像を映している
モニターさえも角度的に見る事が出来ない。
扉の向こうに居るであろう犯人達の様子を探る術は無い。
(非常ベルは壊されてるし、ここからじゃ電話も届かない。
せめて携帯でもあればな、そう携帯電話があれば…
携帯電話が…電話が…電話が電話が電話が♪…)
其処から先は唄わなかった。
何故なら他人のパートだったからだ。すると…
223 :
名無し娘。 : 2001/02/27(火) 02:28 ID:k8RYO1RA
(プッチモニには負けないですよぉ)
石川が虎視眈々と下克上を狙っていた。
余談になるが『タンポポのリーダーは私だ』
の質問に対し、スタッフの指示さえ無ければ
間違い無く石川もボタンを押していたであろう事を付け加えておく。すると…
224 :
名無し娘。 : 2001/03/02(金) 02:49 ID:H8TgpE0s
監禁されて早3時間。助けが来る気配は一向に無い。
(一体どうなってんのよ!)
本当にどうなっているのだろう。
3時間もの間、誰一人として客が来てないのだろうか。
それとも犯人が入り口を封鎖、若しくはCLOSEの看板を出し
客が入って来れない状態にしてあるのか。
それとも他に何か…
物思いに耽っていた次の瞬間、我が耳を疑った。
(嘘でしょ…)
耳を澄まし、店内から聞こえて来る犯人達の言葉に神経を集中させる。
(やっぱりそうか、そうだったのか…)
今、店内で繰り広げられている全ての事を漸く悟った。
そしてそれは助けが来る筈など無い事を物語っていた。
犯人達の元気な声が聞こえてくる。
「いらっしゃいませー、有難う御座いましたー」
そう、彼らはコンビニでバイトをしているのだ。すると…
225 :
名無し娘。 : 2001/03/02(金) 03:05 ID:H8TgpE0s
漸く今までの考えが間違いであった事に気付く。
客も店員も居ないと思っていたが、
コンビニは通常通り営業していたのだ。
これでは助けなど来る筈が無い。
保田の顔面から一気に血の気が引いた。
その顔を見た石川は、もっと引いた。
だが店長は石川が血の気の引いた事に気付かない。
石川が地黒だったから、と敢えて言う必要も無いだろう。すると…
その頃検察庁では…
「なっちちょっと良いか?」
「なんだべさ?」
「うちな…栄転すんねん。」
全てはこの一言から始まった。
227 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 07:58 ID:4B.v84Sg
と思ったら、すぐに終わるのであった。
「なっつぁん、なんや嬉しそうやな〜」
「そらそうだべさ。裕ちゃんが出世するんだもん、嬉しいっしょ」
「いいや、そうやないな。邪魔者がおらんようになって
清々したっちゅう顔やったわ、正直に言わんかい!」
「裕ちゃん!そんな事言うと本気で怒るっしょ!
本当は裕ちゃん居なくなったら淋しいっしょ…」
「そうやったんか、ごめんな〜疑ったりして。
娘。いや、地検に中澤さんがおらんのは淋しいんか。
せやったら栄転の話は断わるさかい、心配しなさんな」
だが後に、この話が思わぬ形で現実の物と成る事は
全世界に点在する多くのモーヲタ達も既に御存じであろう。
ただ、その話は又、別の機会に…(ナレーションは森本レオ風に)
◇
それと時を同じくして警視庁に強盗事件発生を知らせる第一報が飛び込む。
「○○町のコンビニに強盗犯が立て篭もってる模様、尚犯人は…」
真っ先に庁舎を脱兎の如く跳び出したのは若い刑事二人だ。
「例のコンビニ強盗かな?」
「何をおっしゃる兎さん、何に乗ってく?脱兎さん?」(ラップ調)
二人はダットサン仕様の覆面に乗り込み現場へと急いだ。
けたたましいサイレンは鳴らさなかった。
変わりに歌を唄ったが、筆者はタイトルを何一つ知らないので
思い思いに想像して欲しい。
荷台のウーハーがズンズンいう筈。
228 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 07:58 ID:4B.v84Sg
パトカーを降りると、店から死角になる位置で制服警官が
手招きをしている。恐らく手首の運動では無いだろう。
隣に作業着姿の男も立っている。どうやら犯人では無さそうだ。
その二点を確認し安心すると、犯人達に感付かれ無い様に
いつでも参加出来る様に密かに特訓をしていた匍匐前進で
傍へ行き、詳しい状況を聞いた。
「本官が連絡を受けました。
この方は運転手で弁当の配送に来たそうです。
仕事を終えて店長にサインを貰いに行くと、見慣れぬ男が
サインしたので店長の所在を問うと、自分が店長だと
名乗ったそうです。不思議に思い本社に確認をとった所
そんな事実は無いと言う事だったので、慌てて派出所に
駆け込んで来たと言う訳です。
その話を聞いた本官が様子を見に来ると、店長と名乗った
男が今世間を騒がしている連続コンビニ強盗犯に
ソックリだったので、驚いて応援を要請しました」
229 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 07:59 ID:4B.v84Sg
確かに、店の中では以前配布されたモンタージュ写真に
似た男が笑顔でバイトしている。
筆者による苦し紛れの、強引なこじ付けのような気もするが、
状況から察するに例の強盗犯に間違い無いだろう。
以前の情報によると、相手は拳銃を所持している筈。
恐らく人質も数名居るのだろう。
人質の身の安全を確保した上で犯人を逮捕しなければならない。
最善の方法と、傾向と対策を探る為に脳細胞を刺激する。
やがて海馬の蓄積した情報を元にして弾き出した答えに
ケアレスミスが無い事を確認すると、前頭葉が判決を言い渡した。
「私が中に入るから、アンタはここに残って現場の指揮を
とってね。中から合図を送るから、そしたら突入するのよ」
相棒にそう言い残し、強盗犯の待つ店内へと独り足を踏み入れた…。
230 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 08:00 ID:4B.v84Sg
「いらっしゃいませー」
音も無く自動ドアが開くと、犯人の一人が歓迎してくれた。
じきに訪れる惨劇の主役に、自身が抜擢されたとも知らずに。
さして広くも無い店内を見渡すと、犯人二人がレジにいる。
他に三人の客。一人は弁当を物色中、残る二人は本棚の所に
居るアベックらしき男女で、仲良さそうに肩を並べて座り込み、
立ち読みしている。
何気ない風を装いアベックの近くへ歩み寄ると、
間違えてエロトピアを掴んでしまわない様、
慎重に雑誌を漁るふりをしながらガラス越しに相棒へと
合図を送った。
やがて一人の客が店内に入って来ると、一直線に弁当の
コーナーへ向かう。それを確認し再び合図を送る。
やがて一人の客が店内に入って来る。続けて合図を送る。
やがて一人の客が店内に入って来る。更に合図を送る。
やがて一人の客が店内に入って来る。繰り返し合図を送る。
やがて一人の客が店内に入って来る。容赦無く合図を…
いつしか店内は、物凄い数の客で溢れ返っている。
店員に扮した犯人達は客の相手をするのに大忙しだ。
(今だ…)
ヴォイトレで鍛え上げた声を張る。
「確保!」――続きは『踊る…』の最終話を参照。
231 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 08:01 ID:4B.v84Sg
◇
――確保!
保田は壁の向こうから流れて来たソプラノに聴き惚れる。
暫くすると店内に通ずる扉が開き、懐かしい顔が覗かせた。
(ソニン!)
全国1000万モーヲタの悲鳴が木霊する中、
保田達は驚くほど呆気なく無事に救出された。
もしかすると日本の警察は優秀なのかもしれません。(笑
この強盗犯はコンビニに押し入り無理矢理働き、店長に
バイト代をせびる常習犯だった。
後に強盗犯は犯行の動機をこう語ったという。
「働かざる者、食うべからず」
232 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 08:02 ID:4B.v84Sg
助けに来た刑事がソニンとユウキだった事を神に感謝した。
「うちの次席には私達が居た事内緒にしてね」
先日携わった事件以来すっかり仲良くなった二人に口止めをし、
本来の目的に入った。
そう、コンビニには矢口の事件について話を聞きに来たのだった。
現場検証で騒然としている中、人目を気にし店長の耳元で聞いた。
「先日の暴行事件の被害者は来てないんですね。
今どちらの方に居るか御存知ですか?」
要領を得た店長も耳元に顔を寄せきた。
「自宅で療養してる筈ですよ」
「だったらですね、その日に働いていた
被害者の方以外の人は居ませんか?
状況を詳しく直接聞きたいんです」
「えー夜働いているのは二人いまして。
殴られた鈴木君、それと天野く〜ん。
ただ天野君も今は居ませんよ、彼は夜8時からですので。
あ、それから万引きの件なんですけど…」
長い話に我慢が出来なくなり、
不覚にも「あんっ」と吐息を漏らしてしまった。
233 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 08:03 ID:4B.v84Sg
思いもよらない突発的な事件に巻き込まれてしまったが、
兎に角目的を果した。安倍に知られない事を祈りつつ、
鞄から布団圧縮袋に包まれたキックボードを取出した。
「これ嵩張るからさー布団圧縮袋に入れて
圧縮させてあるんだ。な、私って頭いいだろ」
「電撃ネットワークは自分ごと入ってましたよぉ」
石川が袋を被ろうとしている。
そんな石川を放っておき、キックボードに乗って
人込みの中を掻い潜る様に颯爽と走り抜けて行くと、
袋を被った石川が慌てて追い掛けて来る。
赤信号に差し掛かり急停車すると石川が追い付き息を切らせる。
「保田検事ぃ…制限速度を…守って下さぁい…」
石川を従え待つ事数秒。やがて迎える緊張の瞬間。
次第に激しさを増す鼓動。恐らく心拍数は、ゆうに200を超えている。
吹きぬける風の助けも有るのか、唇がやけに乾く。
そしてグリーンシグナル…。
タイミング良くコンクリートを蹴り飛ばし、一気に集団の先頭に踊り出る。
そのまま第一コーナーへ突っ込むと、後は独走状態となっていた。
付いて来れる者など最早何処にも居なかった…。
3時間程掛けて目的のマンションへ到着した。
「電車にすれば良かったな…」
「駄目ですよぉ電車で公道走っちゃ。それでも検事ですかぁ」
石川に叱られちゃった。
234 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 08:03 ID:4B.v84Sg
マンションの一室に「鈴木」という表札を発見した。
「東京地検の者です。先日の事で話を聞かせて下さい」
暫くすると扉が開いた。
「うちじゃないですおー、隣だおー警察の御世話になるのはー。
それに、こんな時期に家に来ないでくれるう?
只でさえマスコミが五月蝿いんだから!それともイヤミー」
おっとビックリ鈴木あみ。
「勝った…」思わずガッツポーズした。
ガッツポーズした理由を書くのは余りに可哀想なので
ここでは控えさせて頂く。
隣の部屋の表札も「鈴木」と書かれている。
では改めて。
「東京地検の者です。先日の事で話を聞かせて下さい」
暫くすると扉が開いた。
「は〜刑事さん、えらいすんません。喧嘩なんてするつもり
全然なかったんよ〜。堪忍したって〜な〜」
鈴木紗理奈だった。
「勝った…」再びガッツポーズした。
紗理奈がスッピンだったんだろ?多分…。
235 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 08:04 ID:4B.v84Sg
「保田検事ぃ、こっちですよぉ、しっかりして下さぁい」
石川が手招いている。で三度目の正直。
「東京地検の者です。先日の事で話を聞かせて下さい」
中から大柄な男が姿を現した。
背が異様に高く、年の頃は30代後半と言った所か。
垂れ下がった目は開いているかも分からない程に小さく
歪んだ顎は何とも締りが悪い。
そして恐らく怪我をした所なのだろう、
大袈裟に鼻にガーゼを貼っている。
だが何より目を引くのは、その特徴の有る髪型だった。
モヒカンとでも言うのか、
金色の中央部分のみを残し見事に剃り込まれている。
「負けた…」
自慢のリーゼントが淋しく風にそよいでいた。
何を隠そう、この日を境に保田がリーゼントを封印した
という事実を、読者は知っていたであろうか?
このエピソードを知ってるかー?と学校で自慢しよう!
けどスレッドは建てるなよ。
この糞スレが消えちゃうかもしれないから。
236 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 08:05 ID:4B.v84Sg
「済みませんが、ウド鈴木さんですか?」
相手が頷いたので当夜の事を詳しく聞いた。
「最初にお断わりしますが、一気に喋りますから思い切り
長文に成りますけど、最後までしっかり付いて来て下さいね。
―――えーつまり、こう言う事ですね。
ウッディが一人でレジ仕事をしていると、被疑者が
万引きしたので注意すると逃走した為、慌てて後を追った。
暫くして追い付き肩に手を掛けると、被疑者が
振り向きざまにウッディの鼻を素手で殴り付けてきた。
殴られたウッディはそのまま倒れ込み意識を失った…
と言う事ですね。
でも変ですね、調書のよると万引きしたのは
二人組だったそうですけど…あっそうか!
その時もう一人の天野君と言うバイトの方は
奥に居て現場を目撃していた訳では無いんですね。
じゃー勘違いだったのかな、被疑者も単独犯であったと
供述してますし…。それともう一つ、犯人の顔とか特徴は?
あー覚えてらっしゃらない、まあ意識を失う程の衝撃では
忘れてしまったのも無理は無いですね。
じゃーどうも色々と有難う御座いました。
後日検察庁の方へ来て頂く事になりますけど、
その時は宜しくお願いしますね」
話を終えると、向こうの方で石川が紗理奈にカツアゲされてた。
237 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 08:11 ID:CAFDn5i.
「ピリリリリ…」
何の前触れも無く、突然保田の携帯が鳴った。
虫の知らせかと、慌てて鞄から携帯電話と化粧道具の手鏡を出した。
だが恐ろしい事に、それは虫では無く豚の知らせだった。
「圭ちゃん!今すぐ帰ってくるっしょ!」
手鏡を、もっと恐ろしい顔した紗理奈に向けると紗理奈は退散した。
「解かってるよ、今戻る所だってば…」
やはり強盗事件の事を知られてしまったのかと落ち込む。
それを知ってか知らずか、いやむしろ何も考えてないのだろう、
石川が紗理奈宅をピンポンダッシュしてた。
追い掛けて捕まえると、念の為に問い掛けた。
「石川ー、あの男見て何か感じなかった?」
「はいっ、嘘を付いてると思いましたぁ」
この答えには「ほうっ!」と感心した。石川が続ける。
「だってぇ悪そうな顔してましたよぉ」
「いや、そうじゃなくてさー、何か違和感みたいな…」
「はいっ!きっとあの人が犯人ですよぉ」
(コイツは田舎の方へ左遷して貰おう。教育しても無駄だ…)
石川の頭をイイコイイコしてあげ、残された束の間の一時を
楽しんで貰おうと、仲良く検察庁へ戻る事にした。
238 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 08:19 ID:CAFDn5i.
一同が集まっている応接室に入ると
黙ったまま、無言の、閉口した安倍が出迎えた。
「アホー」
途端に加護の目付きが鋭く変わった。
背広の内側に右手を忍ばせ、おもむろに拳銃を取り出し
一気に窓際に詰め寄ると、横からそっと顔を覗かせ
外の様子を探り、素早く窓を開け銃を構えると目標に照準を
合わせ、何の躊躇いも無く静かに引き鉄を絞った。
銃口から唸りを上げて勢い良く一発の、豆が出た。
その豆は寸分の狂いも無く目標のカラスに襲いかかる。
だがカラスは1万フィート上空を飛んでいた為、惜しくも届かない。
豆鉄砲を食らったカラスは、豆鉄砲を食らった鳩みたいな
顔して飛んでいった。「アホー」
「やったね!」加護が例のポーズをとると中澤が
「アンタもまだまだや。もっと腕を磨かなあかんで」
と将棋に負けた後藤に言っている。
「Zzzz…」後藤は寝てた。中澤はズルしてた。
自分が言われたのかと勘違いした加護が、
ガックシ肩を落としタワシを持ってトイレへ腕を磨きに行くと
負けじと辻もトイレに行く。
隅の方で「圭織のセリフはー?」と存在をアピールしていた。
◇
239 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:49 ID:M4Q8zFFI
戻った保田に悪怯れた様子も無い為、遂に怒りが爆発する。
「圭ちゃん!仕事を放って何処ほっつき廻ってたべさ!」
目の前に立つ保田相手に日頃の鬱憤を晴らしていると、
中澤検事正がソファから立ち上がり、口を挟んできた。
「まあまあそう怒鳴りなさんな。圭だって遊んでたんと
ちゃうやろうし、それ位で堪忍したりー」
怒りは収まっていなかったが
「さあ、みんな仕事に戻りや。頑張っていきまっしょい!」
と、強引に締め括られてしまう。
「裕ちゃん、ちょっと話が有るんだけど…」
各々が仕事に戻るのを尻目に、保田が中澤を促し部屋を出ていった。
その日、職員達は遅くまで仕事に追われていた。
勿論自分も例外ではない。自室に篭り山積みの書類に目を
通していると、ノックも無しに扉が開き中澤が顔を覗かせた。
「なっつぁん、ちょっとええか?」
「見たら解かるっしょ、これを明日までに終わらせなきゃ
いけないんだベ。用なら後にして欲しいだベさ」
「そんなん言わんと姐さんの話聞いてーなー。
なー独りで淋しいんや…」
猫なで声で背後から腕を廻して来る。
「解かったから手を離すっしょ!何、さっきの続き?」
「わー嬉しいわー、けどさっきの話とはちゃうねん。
言うたやんか、栄転の話は断るって。
せやけどアンタええ身体しとるわ〜、ホンマええなぁ…」
◇
240 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:49 ID:M4Q8zFFI
翌日、福田弁護士と共に矢口が地検に出頭した。
事情聴取を行う為に保田が呼んだのだ。
◇
241 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:50 ID:M4Q8zFFI
通い慣れた検察庁の玄関へ到着すると、警備員の格好をした
辻が出迎えた。
「どうもご苦労様れす。おぉおぉおぉ福田さん大変なのれす。
靴紐がほどけてるのれす!」
「は〜、ババンババンバンバン♪は〜どした♪」
これまた古いネタを持ってきたものだと呆れてしまい、
次に来るであろうネタを先にボケておく。
悪いが今は冗談に付き合っていられる程、暇でも無い。
いじける辻に案内を受け、検察庁の片隅にある保田の部屋へ
通される。部屋の在り処は以前から知っているのだが、
今のは少し大人気無かったなと反省し、黙って従った。
「やすら検事、被疑者をお連れしたのれす」
「のの有難う、後で飴買って上げるね。えーそれじゃ矢口さん
中に入って下さい。良かったら明日香、アンタもどうぞ」
デスクに腰掛けている保田の言葉を聞くまでも無く、
矢口を両手で抱きかかえる様にして部屋の中へ入ると、
あの男の存在に気付いた。特徴のあるモヒカン、
そうウッディがコチラに背を向け、椅子に座っている。
これには黙っていられる筈も無く、弁護士として当然の主張をする。
「ちょっと、これはどう言う事ですか!もしかして彼も一緒に
事情聴取するつもりじゃ無いでしょうね。こんなの認める訳
無いでしょう、何を考えてるんですか」
◇
242 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:51 ID:M4Q8zFFI
◇
(普通はそうですぅ)
石川は心中穏やかで無かった。
福田が反論するであろう事は既に心得ていたが、
実際に目の当たりにすると胸の鼓動が高鳴ってくる。
だが保田の物怖じしない態度が、幾らか緊張を和らげてくれた。
そう、何も非難の言葉に臆する必要は無かったのだ。
昨夜の内に、何より心強い味方である中澤から許しを
得ていたのは知っているのだから、心配はいらない。
落ち着きを取り戻し、座ったままほくそ笑んでいる保田の
変わりに承知の事実を明かそうと立ち上がったその時、
何とも悪いタイミングで廊下から嫌な声が聞こえてきた。
「何してるだべ!」
(ありゃりゃりゃ、これはマズイですぅ)
この事を安倍には何も話していない。
反対されるのは目に見えているので、知られない内に
済ませてしまおうと内緒にしていたのだ。
そんな苦労も水の泡となり、事態は危惧していた以上に
思いもよらぬ方向へ向かっている。
慌てて椅子に腰を落とし保田に救いの目を向けると、
眉間に深い縦皺が刻み込まれていた。
243 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:51 ID:M4Q8zFFI
幾ら検事正である中澤が承諾しているとはいえ、
安倍が出て来たとなると面倒な事になりかねない。
頼みの保田も今では苦笑いを繰り返している所を見ると、
打つ手無しと言った風だ。
このままでは全てが台無しになってしまう。
事件の事を何も知らず文句ばかり言う安倍に、
これ以上大きな顔をされては困る。何とかしなければ。
何か黙らせる方法は無いものかと、気持ちばかりが逸る。
最早正義云々よりも安倍の鼻を明かしてやりたい、
そんな気持ちの方が心を大きく支配している事に気付いたが、
気を奮い立たせてくれる物であれば、この際理由など何でも良かった。
落ち着かない拳に力を込めるが良い案など何一つ浮かんで
来よう筈もなく、いよいよ覚悟を決めた。
だが続いて聞こえてきた言葉は余りに意外だった。
「この件に関しては、なっちが許可したっしょ。
圭ちゃん好きにやるといいべさ、責任はなっちが取るっしょ」
二人に続いて安倍が部屋の中に入ってくると、
福田の見えない所で保田にウインクをしている。
これまで口煩かった安倍が何故そう言ったのかは
計り知れなかったが、兎に角この心遣いには堪らなく感謝し、
出し抜こうなどと考えていた浅はかな自分を嫌悪した。
244 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:52 ID:M4Q8zFFI
保田が矢口に向きあって座る様、促した。
福田は扉に背を預け不貞腐れている。
安倍が何やら話し掛けているが、聞いていない様子。
ウッディは自分の隣に腰掛けている。
俯いたまま腰を降ろす矢口の表情は
長い栗色の髪が邪魔になり良く確認出来ないが、
雰囲気から察すると心身ともに相当疲労して居るようだ。
「矢口さぁん、大丈夫ですかぁ?何だか元気がありませんけどぉ」
心配になり横から声を掛けると初めて表を上げた。
(えっ!)堪らず息を呑む。
それは保田も同じだったようで、正面を見据えたまま唖然としている。
向けられた表情は、初めて会った時のそれと比べ
余りに変わり果ててしまっていた。
恐らく一睡もせず、何も口にしていないのだろう。
日焼けし、ふくよかに丸みを帯びていた頬はやつれ、
印象的だった大きな目は輝きを忘れている。
勿論化粧などしている筈も無く、青紫に変色した唇は艶を失い乾ききっている。
たった二日、たった二日間でこんなにも見るに耐えない姿に
成る程思い詰めていたとは、知るよしも無かった。
小さな身体一身に重荷を背負っている痛々しい姿は、
以前の矢口を知っている者なら誰しもが
それを彼女だと気付く事は、無いのかもしれない。
245 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:52 ID:M4Q8zFFI
一刻も早く救いの手を差し伸べなければ、冗談ではなく本当に
死んでしまうかもしれないと、不吉な影が頭をよぎる。
と同時に今すべき事は何なのかと思考を巡らせる。
「ちゃんと食事取ってますぅ?駄目ですよぉ食べないと。
それに女の子なんですから、お化粧くらいしないとぉ。
ほらっ眉毛無くなっちゃてますよぉ」
咄嗟に思い付いた冗談を飛ばし気分を和らげ様とするが、
矢口の耳には届かない。
少し頭を横に傾げたまま虚ろな目をし、口を閉ざしている。
このまま弁解を続けられる精神状態で無いと判断したのか、
保田が安倍次席に目で問い掛けている。
視線の先でゆっくりと瞼を伏せ、頷いていた。
「矢口さん、今日はやめましょう。一旦お引き取り頂いて
又後日にでも体調が戻り次第出頭して下さい」
保田が結論を出すと、虚ろだった目に初めて光が入った。
「大丈夫です。始めて下さい…」
保田がどうした物かと一瞬困惑顔になったが、
先程までの考えを打ち消したのか、改めて顔を引き締めた。
途端その場全体に緊張の糸がピンッと張り詰める。
研ぎ澄まされたその糸に触れた瞬間全てが切り刻まれてしまう
そんな錯覚に陥り、固唾を飲んで見守るしかなかった。
246 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:53 ID:M4Q8zFFI
もう春を迎えようと言うのに、どんよりとした重い空気に
包まれている。そんな中、異例の弁解が遂に始まった。
「解かりました、では始めましょう。前回も言った様に
貴女には黙秘権が有ります。つまり喋りたく無い事は
喋らなくていいって事です。解かりますね」
ややトーンを抑えた落ち着いた口調で切り出すと矢口が再び
生気を失ったが、保田は一向に構う様子も無く平然としている。
もう少し優しく話し掛けて欲しかったが、無闇に時間を
引き延ばしては矢口の負担が増すだけだと判断し、
機械的に言葉を繰り出す声の主に全てを託した。
結局の所、自分が口を挟むべき状況では最早なくなっているのかもしれない。
「では最初に、貴女はコンビニで万引きをしましたが
一体何を盗んだのですか?」
「………」
「どうしました、答えたくありませんか?」
「………」
いつの間にか又俯いてしまっている。
気持ちを代弁しているのか、微かに肩が震えている。
蝋人形を相手に保田が淡々と言葉を発した。
「そうですか、では私が変わりに答えますね。
コンビニで貴女が盗んだ物、それは…」
複数の視線が口元を注視する。
静まり返った部屋の中、ゆっくりと唇を湿らせていた。
247 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:53 ID:M4Q8zFFI
勿体つけるように一端言葉を途切り、
ご馳走を前にした時にする舌舐め擦りを終えると、
皆が次に出てくる言葉を息を呑んで待っている事に
満足したのか、漸く湿らせた唇を開いた。
「それは、『おでん』ですね」
震えていた肩がピクッと反応した。
そしてそれを楽しむように嘲笑っている。
「ははは、しかし貴女も変な物を盗んだもんですね。
普通しませんよ、鍋に手を突っ込んで『おでん』を
盗むなんて真似。どうしてそんな事したんですか?」
「………」
「まあ、出来心だったって事ですかね…」
訳の解からないフォローだったが、何一つ質問に答えられず
肩をすぼめて小さくなっていく矢口を不憫に思っていた
自分も含めたその他大勢の聴衆は溜息を一つ付き、
ホッと胸を撫で下ろした。
いつの間にか保田の方が悪人に成っている事に気付いた。
一連の言動が、今の保田にとっては震えている矢口が
小羊に、ご馳走に見えているのかもしれないと感じさせるに
十分過ぎたせいなのかもしれない。
248 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:54 ID:M4Q8zFFI
そんな気持ちを余所に、当の本人は何食わぬ顔をしている。
ついさっき否定したばかりだが、もしかすると本当に弁解を
楽しんでいるのかと疑いたくなる程の上機嫌な表情とも、
見方によれば見えなくもない。
馬鹿な考えはよそうと小さく頭を横に振り、再び打ち消した。
「では質問を続けます。と言うか、再現フィルムって
言った方が解かり易いかな。貴女がコンビニを
飛び出してからウッディを殴り倒すまでを、この場で
再現してみましょう。じゃあ二人とも立って下さい」
命令口調で言い終え机を簡単に隅に寄せると、
僅かではあるが部屋の中央に空間が生まれ、
二人を其処へ招いた。
矢口は一人で立っているのもやっとの様子なので
自分が力を貸し、寄り添う様に支えになる。
倒れて仕舞わない様しっかりと掴んだ二の腕が、
今にも折れてしまいそうな程に心細く感じたのは、
気のせいではないだろう。
その手の感触が、早く全てが終わって欲しいと願う事しか
出来ないでいる自分を激しく責め立てている。
249 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:56 ID:.XqovAXk
窓から差し込む光は、遮るブラインドのせいばかりでも無く弱い。
昼間だと言うのに蛍光灯の灯りを頼りにしている部屋に、
立ち上がった幾つかの影が大きく伸びると、重い空気が更に
圧迫感を与える。その中を拍子抜けする甲高い声で保田が仕切る。
「じゃ始めましょうか。えー、まず矢口さんが店を
飛び出すっと、はいっ飛び出してー…と言っても狭いから
その場で背を向けるだけで結構ですよ。で次にウッディが
彼女を追い掛ける、はいっ追い掛けて…そう」
掛け声の元、二人は指示された通りに行動する。
とはいえ確かに狭い部屋なので大した演技でもなく、
その場で足を一歩踏み出したりしているだけだ。
隣で力無く項垂れている姿を見ているのがどうにも辛く、
憂鬱になる。
今度は自分が悪の使いに思えてきてならなかった。
「でウッディが彼女に追い付くっと…、はい追い付いたね。
で肩に手を掛けて振り向かせる、はい矢口さん、ゆっくり
振り向いて下さい。ゆっくりね、そう、そう、…はい今だっ!殴って!」
自らの手を叩き保田が合図を送った。
250 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:57 ID:.XqovAXk
だが矢口は殴ろうとはせず、俯いたまま膝をガクガクさせている。
支えている手を離せば間違い無くその場に倒れ込んでしまう、
そう思うとこんな茶番はもう御仕舞にして欲しかった。
だが、そんな気持ちとは裏腹に保田が容赦無く追い討ちを掛ける。
「どうしたんです、殴って下さい、遠慮しなくていいですから」
「………」
「そうですか、殴りたくありませんか。…違いますよね、
殴りたいですよね、出来る事なら…」
もう皆には解かっていた、一体何を言おうとしているのかが。
「そう、貴女は殴りたい、けれどそれが出来ない。貴女が
どんなにもがいた所で彼を殴る事は決して出来ないんです。
何故なら彼の顔に貴女の拳は絶対に届かないんですから」
保田が、堪える事が出来ない程に震えている矢口の腕を掴み
ウッディの顔へ持っていくが、到底届きはしない。
何故ならウッディは身長が『3メートル』も有る巨人なのだから…。
251 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 06:59 ID:.XqovAXk
「さて皆さん、これでお解かり頂けましたね。
この身長が『3メートル』もある彼の顔を、
こんなちっちゃーな彼女が素手で殴り倒す何て事は
決して出来ないんですよ。いいですか、
変わりに私が彼の顔を殴ろうとしても…
ほらーちょっと届きませんねー。
これじゃチビではどうしたって届かないでしょー」
保田が全員へ確認しながら意気揚揚と話しを続けている中、
矢口の限界が近いのか、支えている手への圧力が増してきた。
(もうすぐ、もうすぐ終わりますからぁ)
握る手に力を込め、必死になって言い聞かす。
矢口に、そして自分に。
それを押し退けるように伝わる感触が、矢口の救いを求める
叫びに聞こえ、否応無しに胸が締め付けられた。
「うちの圭織だって届くかどうか解かんないよ。
まぁ仮に届いたとしても巨人を一発で伸してしまう事が
出来るかなー。いや無理だろうなー、んーそうだなー
こうすれば何とか倒せるかな、でも貴女じゃやっぱり無理だし…」
保田が独り言を呟きながら、軽くジャンプした。
とうとう力尽きた矢口が腕を擦り抜け、その場に崩れ落ちた。
252 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:00 ID:.XqovAXk
「違う…私が…違う…」
足元にうずくまり、何かに摂り付かれたかの様に
同じ言葉を繰り返す姿を前にして、誰も口を開けずにいた。
次第に声も途絶え、静寂が訪れた。
寸刻の沈黙の後に、しゃがみ込んでいる小さな肩へ
そっと手を廻した。
「矢口さぁん、大丈夫ですかぁ、しっかりして下さぁい。
椅子に座って落ち着いて下さぁい。ウッディも座ってぇ」
全てが終わった。
どれ程の時間を費やしたのか見当もつかないが、矢口にとって
そして自分にとっても辛く長かった時が流れ去ってくれた。
果して重圧に押し潰されている矢口が救い出される時は
訪れるのかどうか、その確証はどこにも無い。
ただ、今これ程までに思い詰めている矢口を救う手立ては、
他に有りはしない。そう信じてきたのだから、後は矢口が
立ち直ってくれる事を祈るしかない。
机を元に戻して各々の位置を確認すると、保田が幕を閉じる。
「ご覧の様に彼女では今回の犯行は無理です。
従って矢口真里さんを不起訴処分とします」
ホッとした刹那の後、保田が一枚の書類を取り出し
耳を疑うような事を口走った。
「では一体犯人は誰なのか?私はある人物について
少し調べてみました。そうしたら面白い事が解かったんです」
253 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:01 ID:.XqovAXk
(真犯人?どう言う事ですかぁ)
こんな話は知らされていなかった。
保田の話しでは『矢口の無実を証明する』と言う事だった。
(お話が違うのですぅ)
喉元まで来ている言葉が出てこない。
そのまま脳へ送り返し、答えを導き出そうとする。
確かに矢口が何者かを庇っていたのは誰の目にも明白だ。
だが今すべき事は矢口の無実を証明し不起訴処分とする事、
検事としての仕事はそれだけで十分な筈だ。
いずれ真犯人は逮捕され検察庁に送られてくるのだろう。
それを知った矢口はショックを受けるに違いない。
だが今とは状況が明らかに違う。
矢口がどういうイキサツで真犯人を庇っているのかは
知らないが、今回の事件に関して言えば大した罪ではない。
矢口さえ普通の精神状態を取り戻せば、きちんと理解出来る筈だ。
それを何も今こうして錯乱し脅えている矢口に、
死人に鞭打つ様な真似は必要無い。
後日改めて話をすれば済む事なのだから。
答えを探れば探るほど保田の考えている事が解からなくなる。
娘。いや学生時代、教育係として良く面倒を見てくれていた保田が、
今ではスッカリ様子が変わってしまっている。
当時の面影は何一つ残っていない。
254 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:02 ID:.XqovAXk
我に返っても悲劇は終わっていなかった。
其処には正義の仮面を被った醜い悪魔が制裁を加えるのを
楽しむ時に見せる、不敵な笑みが浮かんでいた。
「その人物は『ゆでたまご』が大好物だそうです。
何でも『ゆでたまご』とベーグルしか口にしないそうですから。
しかし、その人物は今年に入ってから
『禁ゆでたまご』を目標に掲げいたそうです。
理由は解かりませんけど、恐らくダイエットか何かでしょうね。
一ヶ月半かー、そろそろ禁断症状が出始めていたとしても
可笑しくは有りませんね。目の前にあれば、つい…」
それまで書類へ落としていた視線を矢口へ浴びせている。
ささやかな抵抗も虚しく実を結ばなかった結果に終わり
全てを諦めたのだろう、全身の力が抜け手足を放り出していた。
裏切られた思いでいる自分も声を出す気力すら無くなり、
止める事など出来無い、ましてや遡る事など出来よう筈も
無い時が、静かに通り過ぎて行くのをただ待つしかなかった。
255 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:03 ID:.XqovAXk
保田が結論を急ぐ、止めを刺すために。
「更にその人物は女性としては身長が高く、おまけに
学生時代バレー部のエースアタッカーだったそうです。
きっと高い打点から力強いスパイクを打つんでしょうね…」
誰ひとり口を挟もうとせず、その時が刻一刻と迫って来る。
狭い部屋の中で保田の声だけが反響している。
「その人物の事を矢口さんは良く御存知の筈ですよ、
親しくお付き合いされている後輩なのですから…
今では立派に歌手として成功されている貴女の親友。
その人物とは――」
――ガタンッ!
椅子から転げ落ち床に突っ伏した矢口は、既に意識を失っていた。
◇
256 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:04 ID:.XqovAXk
◇
「気が付いたん?どうや大丈夫か?」
目を覚ますと見知らぬ女性が傍に腰掛けていた。
「あっうちか?うちの名前は中澤裕子や、裕ちゃん呼んで
ええよ。これでも検事正や、めっちゃ偉いんやで」
中澤と名乗った女性は微笑を浮かべている。
その柔かな笑みと人懐こい関西弁に感情を掻き立てられ、
思わず胸にすがり付き、声を押し殺して泣いた。今日一日
幾度となく堪えていた涙が、堰を切ったように溢れてきた。
これまで人前では常に明るく振舞ってきた。
多少辛い事があってもそれを曝け出す事無く、
無理にでも笑顔を振り撒いてこれた。
時には大袈裟な程に馬鹿な娘を演じたりもした。
けれど今回ばかりは耐えられなかった。
自分には似合わないと決して流さなかった涙が、
ここ数日涸れる事は無かった。
どんなに泣こうと、それが何の意味も持たない事は知っているのに。
裕ちゃんが赤子をあやす様に優しく頭を撫でてくれている。
◇
257 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:05 ID:.XqovAXk
やがて中澤は穏やかな口調で語り出す。「アンタ圭の事…あっ圭ってのは、あのブサイクな
検事の事や。アンタ圭の事恨んでるんとちゃうかー。
せやったらお門違いやわ、圭はなーアンタは知らんと思うけど
優しい娘なんよー。ホンマに優しい娘やわ…」
胸に顔を埋め静かに涙に暮れている矢口の頭を撫でながら、
のんびりと話す。聞いているかどうかは解からないが構わずに続けた。
「圭はなアンタが誰かを庇ってた事、
最初から解かってたそうやわ。アンタは初犯やし、
そのまま起訴しても執行猶予で済むんやさかい、
それでも良かったんやろうけど、一応検事として事実は
明確にせなあかんから、そうもいかんかったんやね…」
矢口が忘れ掛けていた現実に引き戻されたのか、
腕を押し当てて仰け反ると再びソファに横になり背を向けた。
捲り上がった毛布を掛け直し、その背中に向かって諭す様に話した。
「そこで圭は考えたんよ、苦しんでるアンタを助けるには
どうすればええのかってな。そして一つの結論に
達したっちゅー訳や。その結論ってのが…」
この先どう説明すれば良いのか上手く考えがまとまらなくなり、
金髪を掻き毟った。
258 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:06 ID:.XqovAXk
すっかり夜も更け、最近は然程感情の湧かなくなった東京の
夜景が窓に映っている。上京した当時は、この星屑に心を
ときめかせていたものだが、今ではむしろ感傷的になってしまう。
窓には実物より小さい自分の姿も、蛍光灯に反射して薄っすらと
写し出されていた。ぼさぼさに逆立った髪に呆れ思わず失笑する。
いや、本当は何もその姿が可笑しくて笑った訳ではなかった。
昨夜、保田に持ち掛けられた話に応じたまでは良かったが、
最後に来て検事正である自分の置かれる立場が心配になり、
躊躇した事を呆れたのだ。
包み隠さず話しても良いのだろうかと、思い留まった自分を。
だが、これで良いんだよと、窓に写る分身が後押してくれた。
「つまりこう言うこっちゃ。アンタを起訴する訳にはいかん、
それに真犯人も捕まえなーあかんやんか。
まあ有名なタレントさんやったらスキャンダルになるけど、
しゃーないわ。アンタもそれを心配して庇っとったんやろ?」
みつめる背中が大きく波を打っている。
「で、結論は…事件その物を無くしてしまうっちゅーこっちゃ」
言い終えると立ち上がり、重い扉を開き顔だけ覗かせて声を上げた。
「あー石川ー、コーヒー二つ持ってきてー」
それまで扉の向こうで聞き耳を立てていた石川が慌てて、
長い廊下をスキップしながら去っていく。
今の話を聞いて、何かポジティブな事があったのかもしれない。
何だか知らないが自然と笑みが零れて来る。先程のとは違う笑みが。
259 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:08 ID:M4Q8zFFI
振り返ると矢口が上体を起こし、真っ直ぐに伸びた視線を向けている。
その目に遂今し方まで滲んでいた涙は影を潜めていた。
それどころか話の続きを催促しているのか、
涙とは違う輝きを取り戻しているのがハッキリ見て取れる。
その姿が堪らなく愛おしくなり、
知らず知らずの内に小さな手をしっかりと握り締めていた。
「大丈夫、そんなに心配せんでももう大丈夫やから。
アンタもアンタの後輩も…」
矢口の目が潤み、やがて大粒の涙が繰り返し溢れた。
その澄んだ涙を映していた視界が次第に霞んでくる。
いつしかそっと抱き寄せていた。
「あれぇもしかして泣いてるんですかぁ、中澤検事正って
そんなに涙脆かったでしたっけぇ。かぁっわいいですねぇ」
茶化しながら石川がコーヒーを運んできた。
その後では保田がニヤニヤしている。
「まじっすか、うわっ裕ちゃんが泣いてるよー。プププ」
「アンタらなー、人が感傷的になっとるのに水差しよって、
えー加減にせーよ!こらっ石川!待たんかい!」
逃げる石川の後を追い掛け、部屋を飛び出した。
その後姿に、失い掛けていた昔の自分を見る想いだった。
◇
260 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:08 ID:M4Q8zFFI
保田が傍に置いてあったティッシュを、何も言わずに差し伸べてきた。
その表情には先程まであった緊張感の欠片も無くなっている。
差し出されたティッシュを受け取る事をせずに、
何かが出てくるであろう保田の口が動き出すのを、待った。
行き場を失ったティッシュを持つ手が、変わりにプラスチックの
コーヒーカップを掴むと、遂に口が開いた。
「矢口さん、もうお引き取り下さっても結構ですよ。全て終わりましたから」
「えっ?」
「ウッディが被害届を取り下げたんですよ」
湯気の立つコーヒーを口に運びながら事も無げに答える。
飛び出てきた言葉の意味を掴めずボンヤリしていると、
一口啜り終えたカップをテーブルに置き、にこやかに喋り出した。
「最初から変だと思ってたんだけどねー、なーんで
優秀な明日香が貴女の弁護を引き受けたのかなって。
彼女に依頼するには大金が必要でしょ、それに貴女は
犯行を認めてたんだから、そんな大金使う必要も
無いじゃない。それに明日香なら簡単に示談に
持っていける筈なんだよ、それなのに示談する気が
全然無い、これは何かある、そう思って一芝居うったんだ、
明らかに嘘付いてるウッディを追い込みたくってねー。
案の定彼は正直に話してくれたよ、貴女の姿に心を
打たれたのかな?根は悪い奴じゃないのかもね…」
261 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:09 ID:M4Q8zFFI
「彼は明日香に金を貰っていたんだって、
犯人の顔は忘れたって証言する様にってね。
勿論、明日香は示談を持ち掛けて来たんだけど
彼は応じる所か逆に強請ったんだってさ、
本当の事を話すぞって。だから明日香は
何も出来なくて黙って従ってたんだよ、きっと。
そして貴女が生贄となった…
と言っても貴女もそれを望んでたんだっけ」
微笑みを絶やす事無く保田が最後に付け加えた。
「けど今更それを穿り返すつもりは無いよ。
事件が無くなっちゃった以上、
あたしにはどうする事も出来ないんだからね」
喉が乾いたのか、再びカップに口付けていた。
◇
262 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:10 ID:M4Q8zFFI
◇
矢口を連れ立って部屋を後にすると、長い廊下の突当りで
弁護士の福田が誰かと何やら話している。
相手は弁護士仲間の石黒だ。と、もう一人居る。
目を凝らして遠くにあるその姿を探るとそれは、
検察庁のエースと称えられている市井沙耶香だった。
同じ検察庁と言っても自分は東京地方検察庁だが、
市井は検察の最高峰、最高検察庁に勤める検察官だ。
市井が人影に気付き、しっかりとした足取りで歩み寄ってくる。
蛍光灯に照らされ次第にハッキリするその表情は、昔一緒に
地検で仕事をした仲間へ向けるそれとは余りに異なる。
色白の肌が仮面の様な無表情を、より一層引き立てている。
顔を合わせる事無く通り過ぎ様とした瞬間、
擦れ違いざまに市井が囁いた。
「あたし、検事辞めるから…」
最高検察庁へ通ずる廊下に市井の足音だけが響き渡った。
乾いた音に振り返る事無く、再び歩を進めた。
263 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:10 ID:M4Q8zFFI
応接室の前に来ると、仕事を終えた娘。達がテーブルを囲み、
一日の疲れを癒しながら談笑している。
それを横目に玄関へと先を急ぐと、先日にも同じ場面が
あった事を思い出す。振り返るとデジャブでは無いが、
やはりあの時を再現する様に矢口が足を止め、佇んでいた。
声を掛けなくとも今なら理由はハッキリしている。
ゆっくり歩み寄り応接室を覗き込むと、テレビが歌番組を
放送している。司会の徳光和夫が今週のランキングを
発表する所だった。
「第一位は、吉澤ひとみ『恋愛レボリューション21』です。
それではどーぞ」
画面が切り替わり、きらびやかな衣装に包まれた吉澤が
映し出され、ダンスを交えながら軽快に唄い始めた。
横にいる矢口が安堵の表情を浮かべ、それをみつめている。
やがて澄んだ大きな目、いや、ひとみから溢れ出した
一粒の雫が桃色に染まった頬を伝い、流れ落ちていった。
うなされ続けた悪夢から解き放たれた、最後の証なのかもしれない。
264 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:11 ID:M4Q8zFFI
――そうだ、吉澤の歌をBGMにエンディングを迎えるってのどう?
エンドロールが流れると一人ずつ順番に部屋を出ていくの。
あれっていい感じだよね。
そうだな、カメラは斜め上から部屋全体を見下ろす感じで、
テレビを中心に私達の背中が手前に来る様にして…。
それじゃ流すよ。まず最初はリーダー中澤裕子。
はい、立ち上がって退場して下さい。おっビール片手に
ですか、裕ちゃんらしくて良い雰囲気ですな、それは。
で次は安倍なつみ。ゆっくり歩いてよ、カップ麺の汁を
零さないようにね。んもーそんなに頬張ってNG出さないでよね。
次は石川梨華。へー、さり気なく眼鏡を外す所なんかアンタも
段々解かって来たじゃない、そうなの、そう言う絵が欲しいのよ。
全てが終わって日常に戻って行くって言う感じのさ。はい、
よく出来ました。お疲れサン。で、圭織と後藤か。ごめんね
出番が少なくって。もーそんなにつまらなそうな顔しないで、
ねえ笑って!次は辻ちゃんと加護ちゃん。遅くまで
大変だったね。ちょっとー、アイ〜ン体操なんかしてないでよ。
さぁいよいよ私達の番か。よっすぃの歌ももうじき終わりだし
やぐっつぁん、行きますか。
それじゃ私達が消えたら照明落としてくださいね。
あっと!エンドマーク出し忘れないで。それじゃ――
こうして誰も居なくなった応接室の明かりが今、静かに落とされた。
――FIN
265 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:11 ID:M4Q8zFFI
時を刻む秒針の進む音が微かに響く薄暗い部屋の中、
テレビの灯りだけが大きく存在を主張している。
既に吉澤は唄い終わり、決めのポーズを取っていた。
カメラに向かい人差し指を突き刺し、やや折り曲げた上体を
激しく上下に揺すっている。
次の瞬間其処に異変が起こるのだが、それを目撃する者はいない。
ソファとテーブルだけがそれを、ひっそりと見詰めている。
そしてそれは矢口の頬を伝う雫が訴えていた、真実を物語っていた。
彼女の切実なる願いが込められた、涙の本当の訳を…。
人々の記憶からは雪が溶ける様に消えていたであろう。
激しくゆすられた衣装から覗かせた
襟元に咲くラベンダーが
輝きを放ち いつまでも揺れている―― ≪ 人知れず淋しく 第四話 本当に完 ≫
266 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:15 ID:M4Q8zFFI
第四話 あとがき
永らくご愛読頂きまして…
名無し娘。
267 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:16 ID:M4Q8zFFI
とっとと第五話に突入
268 :
名無し娘。 : 2001/03/19(月) 07:17 ID:M4Q8zFFI
「なっちちょっと良いか?」
「なんだべさ?」
「うちな…栄転すんねん。」
全てはこの一言から始まった。
269 :
名無し娘。 :
木村は駄目だな