1 :
アルティメット娘。 :
前にストリートファイト娘。というスレで小説書いていたものです。
また、書かせてもらいます。
2011年某月某日、彼女から連絡があった。
「自分の取材をしてほしい」
彼女はそういった。
彼女がアイドルグループ、モーニング娘。を脱退してからもはや数年経っている。
いまさら何故?しかしその答えはすぐに出た。
内容はおそらく暴露話。目的は金であろう。
この手の取材要請はいままでも何度もきていた。しかしその度、事務所の圧力により
つぶされたのだ。
3 :
名無し娘。 : 2001/02/06(火) 18:44 ID:zTP/1b4E
期待age
4 :
名無し娘。 : 2001/02/06(火) 22:02 ID:wFdjbLfU
続ききぼ〜んあげ
5 :
アルティメット娘。 : 2001/02/06(火) 22:56 ID:2gxh4M3s
そのため私は一瞬迷ったが、とりあえず彼女に会ってみることにした。
彼女の名前は、石川梨華。第3次追加オーディションで合格し、加入した4人の
うちのひとりである(このオ−ディション自体不明瞭なことが多いが)。
石川はそのルックスから次期モーニング娘。のセンターに立つといわれ、かなり
の人気を誇ったアイドルであった。しかし、数年前、彼女はグループを去った。
表面上の理由は昔からの夢を追う、というようなことだったと思う。
だがその真相は、男がらみという噂であった。
約束の日。私は少し早めに自宅を出て、10分前には約束したホテルのラウンジ
につく。注文したコーヒーを飲み終わったころ、石川梨華はやってきた。
「はじめまして」
スカートにジャケット。年相応の格好である。私の資料には当然10代の彼女の
写真しかないので、少し違和感があった。
私も挨拶をすませ、名刺を渡す。そして、お互い椅子に腰掛け、取材を始めようと
すると、彼女はここでは嫌だ、と言い出した。ホテルの一室で行おうというのである。
6 :
アルティメット娘。 : 2001/02/06(火) 23:56 ID:rdRgI7vI
通常、人目につくと騒がれるような有名人でもないかぎり、私はそこまではしない。
芸能界を去って数年経っても、まだ彼女は自分は一般人ではない、と
思っているのだろうか。私はあまり気は進まなかったが、とりあえず空いている
一番安い部屋をとった。
私がまず最初に尋ねたのは、メンバーを辞めてから現在に至るまでの経緯であった。
彼女は今、インポートものの雑貨店に勤務しているという。モーニング娘。
を辞めてから一年後に始めた仕事だそうである。
次に、彼女が脱退した本当の理由を聞いてみた。
「辞めたときはいろいろ言われましたけど、やっぱり、自分の時間がまったく
ない、っていうのが一番の理由です。男性関係とかも言われましたけど、
それの根拠は写真週刊誌に載ったアレですよね?彼はただの友人です。あのくらい
の年令のとき、異性の友人がいるって、当たり前のことだと思うんですけど...」
とりわけ、ネタになりそうな話でもない。
このあとも、彼女の口からでる言葉はどれも私にスクープの確信を与えるものでは
なかった。暴露するつもりだったのが、いざ私を目の前にして怖じ気付いたのだろうか。
メンバーのだれとだれが仲がよかった、悪かった、だのというレベルの話
は、はっきりいってどうでもいい。
私が今回の取材に求めていたのは、もっと内面的なものであった。
何を思いアイドルになったのか。光を求める人間は例外はあるが
必然的に心にある種の引け目をもっている。
何人かの「成功者」たちへの取材から感じたことだった。
そして私が彼女への取材に求めていたものは、彼女が周囲へのコンプレックス、あるいは
なにかネガティブな感情から(実際メンバー在籍中も彼女は自分が非常に悲観的な思考を
もつことを語っていた)アイドルを目指し、そこで栄光を勝ち取ったものの真実の幸福
はこれではない、ということに気付きメンバーを去り、当時より現在の身近な幸せを大事にしたい、
そのこと真の幸福であった、というストーリーだ。自意識過剰で、派手なことがすばらしいと
思っている現代の若者たちに警鐘をならす意味でも、そのような内容ならば十分に
アイドルの暴露本以上の読み物になると考えていた。
しかし、私の想像とは裏腹に、依然として彼女は大袈裟にメンバーの内ゲバを
語っている。
そんな彼女が、少し、みじめに思えた。
そして私が彼女への取材に求めていたものは、彼女が周囲へのコンプレックス、あるいは
なにかネガティブな感情から(実際メンバー在籍中も彼女は自分が非常に悲観的な思考を
もつことを語っていた)アイドルを目指し、そこで栄光を勝ち取ったものの真実の幸福
はこれではない、ということに気付きメンバーを去り、当時より現在の身近な幸せを大事にしたい、
そのこと真の幸福であった、というストーリーだ。自意識過剰で、派手なことがすばらしいと
思っている現代の若者たちに警鐘をならす意味でも、そのような内容ならば十分に
アイドルの暴露本以上の読み物になると考えていた。
しかし、私の想像とは裏腹に、依然として彼女は大袈裟にメンバーの内ゲバを
語っている。
そんな彼女が、少し、みじめに思えた。
9 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 01:38 ID:ZPhHx4mE
>>作者さん
また楽しみに読ませてもらってます。期待してます。
そういえば前、テストが終わったとか言ってたけど、大学生?
10 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 04:52 ID:Ii/BVl/M
告知ありがとう。前スレから飛んできました。
またガラリと変わりましたね。期待しています。
11 :
アルティメット娘。 : 2001/02/07(水) 22:21 ID:P4tE2n3k
>>9
ありがとうございます。
それと、いま大学生です。
まだまだ未熟者ですが、今回の小説も最後までよんでもらえれば
幸いです。
>>10
前回、漫画的、という指摘があったので、
ちょっと背伸びして書いてます。
またぼろがでるかも。
13 :
名無し娘。 : 2001/02/08(木) 10:12 ID:HxqMrsAo
いままでとは一味違う雰囲気に期待age
14 :
名無し娘。 : 2001/02/08(木) 11:12 ID:Wr6a5Uos
今思ったんだけど、石川ってネガティブ思考か?
単に明るくなくて自信がないだけじゃないか?
ポジティブ(プラス)思考とかネガティブ(マイナス)思考ってのとは
ちょっと違う気が・・・。
ネガティブ思考っていうのは、物事に対して常に最悪の事態を想像して
悲観的になるという感じ。
あの石川がそこまで考えてる様にみえるか?
15 :
名無し娘。 : 2001/02/08(木) 14:14 ID:zAj6yrHA
「え?そんなことできません」とよく番組で口にしていた。
飯田などの話によれば、本当に「できない」ことで悩んでいたらしい。
一所懸命さがからまわりして、マイナス思考が深みにはまっていく状態を
ネガティブ(負の方向)というんだろう。
まわりから見れば、そんなことぜんぶ自分で背負う必要ないのに・・、と
かわいそうにもなる。
以前はそんな感じだったが、今はあいかわらず自信なくても、
マイナスの連鎖ないように見える。
中澤がANNで言っていたように、「石川はネガティブじゃないと思う」。
ポジティブになってきているのは感じられる。
(「歌おうぜ ベイベ ヘタクソで いいんじゃな〜い」とひらきなおっていない
ことを祈るが・・)
でも、芸能界に入って、めまぐるしい毎日の中で、欠点を克服してゆける
のは、自分を見失っていないと思うし、やはり資質なんだろう・・・
結局その日は踏み込んだ質問はせず、次の取材の日だけを約束し、別れた。
私の現在の仕事は彼女の取材だけではない。今日もこれから仕事でいかなければ
ならないところがある。そういうわけで、次に彼女に会う日は、五日後にした。
私の仕事はフリーのライターである。若いころはそれこそなんでも取材した。
芸能人のゴシップから、障害者のお涙頂戴ものの本まで。そこそこ売れたものもあるが、
どれも、さしたる満足を得られた内容のものはない。そんな仕事を続けるうち、
「いいものを書く」という野心も薄れてきた気がする。適当にまとめ、良識派
からの文句がこないような文章を書くことだけはそこそこ上手になった。飯を食っていく
ぐらいの収入もなんとか稼げている。
...今回も、無難にこなすか。
取材前にあった期待は、半ば消えかけていた。
2度目の取材の日。同じホテルの同じ部屋。
今回は、私から積極的に質問をし、彼女のペースにならないよう話を進めた。
とりあえず、答えやすそうな話題から始める。
ギャランティーについて。
どの程度の金額をもらっていたのか。メンバー間の格差はあったのか。
暴露本を出す気なのだから、この程度はすらすらとでてくるものだと思っていた。
が、思いのほか彼女は明確な答えが出せずにいた。こうゆうことはあまり気にしていなかった
のかもしれない。
グループを抜ける決意をした時期と理由について。
これにはすぐに答えた。彼女が語りたかったのはこちらなのだろう。
暴露本というよりも、自分史的なものが作りたかったのだろうか。
やはり彼女はどこかで自分を、世間からみて特別なものだと考えている。
彼女はまだ、「モーニング娘。の石川梨華」を捨てきれてはいないのだ。
身体的な自由が欲し、グループはやめたが、その名声だけは捨てたくない。
私の描いていたストーリーは、完全に逆だったようだ。
その日の取材から帰る途中、街中で声をかけられる。
「ひさしぶりだな」
2年ぶりだろうか。彼は自分で大きな事務所をもつジャーナリストであり、
私の恩人である人だった。
大学に行き、無駄な時間を過ごすくらいならすぐに社会にでたい、と考えて
いた私は、高校在学中から当時彼のやっていた雑誌に文を送り、卒業と同時
にアルバイトとして雇ってもらった。彼がその雑誌を人にまかせ、編集長を辞める
まで、いろいろと面倒をみてもらっていた。
「ちょっとコーヒーでも飲もうや」
今日はこの後これといった仕事もない。私は彼に付き合うことにした。
私が高卒という学歴でこの世界で食っていけるのは、彼の作っていた雑誌のスタッフ
であったということが大きいだろう。その雑誌の政治、経済、教育問題などに対する他に類を
みない切り口の論調は、常に物議をかもしていた。そのなかで私もいくつかの記事を書き、
話題になったこともある。
「最近どんな仕事をしてるんだい」
いくつかの仕事を説明する。
「そうかい...ちょっと小耳にはさんだんだけどな、君、元アイドルの取材してる
そうじゃないか」
彼にはあまり知られたくなかったことだ。彼が雑誌を辞めた後、私もフリーとなった。
その後の仕事は、彼に自信をもって話せるものは何一つない。
「まさか君がアイドル、しかもモーニング娘のことを書くなんてな。意外だったよ」
まだ書くと決めたわけではない、という私の言葉を遮り、彼が言った。
「最後までやったほうがいい。君にはそれは必要なことだよ。君、今年でいくつ
になる?」
27歳。
「まだそんな年なのに、君はなにを焦っているんだ。君はいつもいつも自分を年寄り
みたいな言い方をする。本当はまだ自分と向き合えてもいないのにな。その取材が
終わったら私のところへ戻ってきたっていいんだよ」
私は彼のことを心底尊敬していた。だからこそ彼の偉大さに気付き、彼の下でやっていた
のでは追いつけない、と感じた。そして、彼とはまったく違うところで、違うジャンルで、
一から始めようと思った。彼の持たない視点を探すために。
そのあとは彼が現在取り組んでいる問題についていくつか話を聞て、時間は過ぎた。
帰り際、彼は、
「余計なお世話かもしれないが、やはりそのアイドルのことはきちんとやれよ。
彼女の言葉だけで書かなくても、きっといいものができるさ。書くのが君ならね」
そういって、去っていった。
私は間違っていたのかもしれない。自分の気持ちを彼女に代弁させ、自分の溜飲を
下げようとしていた。彼女と同じく、私も現在の自分に満足はできてはいない。
そのため彼女は過去にすがり、私は過去を忌み嫌った。
そのことで私は、自分自信を狭めていってしまっていたのか。
今の私には、過去を過去として受け入れることが必要だということだろうか。
...まずは、彼女と向き合うことから、かな。
私、福田明日香はそう決心し、彼女に次の約束の電話をした。
ー完ー
一応、終わりです、違った展開期待していた人がいたら、ごめんなさい。
感想とかきけたら、うれしいです。
22 :
名無し娘。 : 2001/02/09(金) 08:08 ID:v.5nv5y.
なるほど、そっちに持ってきたか。
ちゃんと伏線になってたんだな。
うまくひっくり返したね。
23 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 13:07 ID:wK5AKdtQ
面白かったぞage
24 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 19:12 ID:0Lgu0sqY
予想外の終わり方がおもしろい!
次回作にも期待!!
>>22ー24
読んでくれてありがとう。
また、内容がまとまったら書きたいです。
はじめたら告知しますね。
26 :
( ´ : 2001/02/15(木) 04:34 ID:g1YzGDqQ
福田明日香のことをもっとよく知ってたら
面白かったんだろうなぁ、って思います。
あと、後半もう少し丁寧に書いて欲しい。
次回も期待っす。
>26
まさしく御指摘のとうりです。
僕はあまり古いファンではないので...。
後半はいきおいで書き過ぎました。
こういう意見はとてもうれしいです。