1 :
sage :
「なんて、ぼろいとこなんだろう・・」
どんなひとが住んでるのかな??
石川梨華は不安で足がすくんだ。
しかし、そうも言ってられない。
大きめのボストンバックを持って
このぼろい建物に、一歩足を踏み入れることにした。
3 :
名無し娘。 : 2001/02/05(月) 02:14 ID:i9v/Ft4E
誰も書かないの?
4 :
名無し娘。 : 2001/02/09(金) 05:15 ID:OXK7KOag
スレタイトルがイマイチ...
5 :
クズ学生 : 2001/02/10(土) 01:49 ID:XBQxMBws
「管理人さ〜ん、いませんか?」
家賃の安さから選んだ物件なんだが、いくら
何でもボロ過ぎる。引き返そうかと思いながらも
石川は気のない声で管理人を呼んだ。
(何だよ、誰もいねえのかよ、ここは)
そう思い、廊下の電灯を付けようとスイッチに
手を伸ばしかけたその時、右前の部屋の扉が
ゆっくり開いた。
6 :
クズ学生 : 2001/02/10(土) 02:55 ID:FW5FjOKs
「あ〜、誰やねん?・・・あ、あなた、
連絡入れてくれた石川さん?」
部屋の中からは少々疲れた顔をした女性が
出てきた。どうやらこの人が管理人らしい。
「はい、先ほどご連絡した石川です。
今後とも宜しくお願いします」
石川としても初対面で印象を悪くしたく
ないということもあり、ここは丁寧に挨拶を
した方がいいと思い、普段はしないような
丁寧な挨拶をした。
「よろしくね。私が管理人の中澤です。
はい、これがあんたの部屋のカギやさけ」
そう言って中澤は上着のポケットから小さな
キーホルダーのついたカギを取り出し、石川の
手のひらにそっと置いた。
7 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 20:30 ID:CPV1aa.s
クズ学発見!
続き書くの?
8 :
クズ学生 : 2001/02/10(土) 23:49 ID:vxcHEBUE
「あんたの部屋は手前の階段上がって2つ目の部屋、202号室や。
あれへんねやったら布団とかも用意出来るで、多少古いねやけど」
中澤はそういって部屋の位置やらアパート内の設備の説明を
始めた。どうやら築30年以上経ってる木造アパートらしく
一部の設備を除いて相当古ぼけていた。
「あ、そういえば今真っ昼間やけど、何人かはいるはずやけ
挨拶しといてや、な。これから世話になることもあるやろて」
「あ、はい。わかりました〜。ありがとうございます」
石川は中澤の言う通りに2階にあがり自分の部屋を探す。
(廊下も階段も歩くとミシミシいうな〜。ま、これも
味があるからいいと思うけど)
202号室の前に着きカギを開けようとした時、隣の部屋の窓が
ガラガラと大きな音をたてて開いた。
「ビクッ!」 石川は思わずびっくりして手を引っ込めた。
「あれっ、見慣れん人が来たね〜。あんた誰?」
昼間だというのに寝惚け眼の女性が一人、廊下に向いた明かり窓を
開け拡げ石川を見つめてそう言った。
「あ、・・・どうも。今度越してきました石川梨華と言います」
「あ〜、あんたが裕ちゃんが言ってた石川さんか〜。どうも〜。
私はこの201号室に住んでる安倍なつみって言います」
9 :
クズ学生 : 2001/02/10(土) 23:53 ID:vxcHEBUE
>7
はい、誰も書かなそうなんで乗っ取ります。
過去ログ置き場から消えたら止めますけど、
ある限りsageつつひっそり、あんまり急がず
書いていこうかな〜なんて思ってますがね。
10 :
クズ学生 : 2001/02/11(日) 01:02 ID:D/pj6.Qc
っていうかさ、ここって書き込まなかったり
sage続けると過去ログから消えちゃうの?
11 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 04:12 ID:4KeI70pY
>>10 オレもそれ気になってたので初心者板で聞いてきちゃった。
スレはsageでも書き込みし続けてれば消えないらしい。
板とんだときは?には答えてくれなかったけど。
まあ、とりあえず板とばない限りは消えないと思うから
頑張ってくれ。おもろいとおもうし、期待してるよ。
12 :
クズ学生 : 2001/02/11(日) 13:52 ID:Ye6n5MPg
「裕ちゃんって、どなたでしょうか?」
「あ〜、管理人の中澤さん。もう他人行儀なのもいやだから
裕ちゃんって呼んでるの、裕子だからさ」
この話を聞いただけでも、このアパートがアットホームな
雰囲気を持ったところだということがわかる。石川は、実家を
出てきて以来、始めてリラックス出来たかも知れない。
「あ、ごめんね。部屋入るんでしょ。途中で呼び止めちゃった
みたいで。部屋でゆっくりしたらうちの部屋来てよ」
「はい、わかりました〜。じゃ〜また」 ガチャッ
部屋に入ると、干してない畳の匂いがしてきた。が、そんなもの
慣れているから別に気にならない。窓をしばらく開け放しておけば
自然と取れていくもんだから。
部屋は6畳一間で流し場と押し入れが付いているだけの簡素な
作りで、家具がない分ガランとした印象を受ける。
石川は表向きの窓を開け、布団もない畳の上に仰向けに寝転んだ。
そして、シミの見える天井を眺めながら一人小さくつぶやいた。
「ここが今の私のスタート。私の居城なんだ。
でも、いつか這い上がってやるからな、絶対に」
13 :
クズ学生 : 2001/02/11(日) 13:56 ID:Ye6n5MPg
とりあえず「モー娘。妄想楽屋裏」のネタが
思い浮かぶまではここで1〜2日に1本くらいの
ペースで書こうかな〜なんて思ってる。
だけど、この先ちょいと忙しくなるんで、ちゃんと
続けられるかどうかはわかんないけど。
15 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 15:48 ID:MzyLMfkU
モー想やめた訳じゃなかったんだ。
あれもおもろいけど、こっちの続きが読みたいよぅ。
ということで、これ、小説総合スレでageちったよ。
16 :
クズ学生 : 2001/02/12(月) 00:15 ID:F.1Py/Nw
何でこんなにアガッてるんだ?
ひっそりやりたいんだけどな〜。煽りとか嫌やし。
あと、ひょっとしたらGMみたいなキショい
賛美文みたいになっちまうかも知らんけど
氏ね!とか書かんといてね。
妄言は「妄想楽屋裏」で吐いちゃってるから
こっちじゃあんまり出ないと思います。
17 :
クズ学生 : 2001/02/12(月) 00:33 ID:F.1Py/Nw
言い方悪かったね。
>14、15
ありがとうございます。
特に15、小説総合スレにageたことを
兎や角言ってるんじゃないから。
あと、言うほど賛美文にはならんだろうな。
「妄想楽屋裏」を基準に考えてたから。
そういえば、このスレ立てた人は何処に?
18 :
クズ学生 : 2001/02/12(月) 12:41 ID:JtC.4ym2
「・・・・あ、もう暗くなっちまったか」
石川は一刻ばかり寝てしまったらしく、気付くと日はすっかり
落ちていた。身体は少々冷えてしまったようで、バッグの中から
マフラーを取り出し首もとに巻いたが、なかなか暖まらない。
「あ、そういえば隣の部屋に行くんだった」
石川は懐から携帯を取り出し時間を確認する。午後6時を
回っていたことからもう部屋に入ってから3時間以上経って
いたことがわかった。身体が冷たいからイマイチやる気が
起きないものの、ゆっくり立ち上がり隣の部屋に向かった。
19 :
クズ学生 : 2001/02/12(月) 23:40 ID:nCWZAyy.
コンコンッ
「は〜い、あ、石川さん。いらっしゃ〜い」
「お邪魔しま〜す」
暖かい部屋の中、コタツの上からは湯気が発ち上がっている。
どうやら鍋ものを作っていたらしく、食欲のわく匂いがする。
「あ、貴方が石川さん?初めまして〜」
部屋の中にはもう一人いたらしく、コタツに入りながら石川に
手を振っている。ちょっと小さい感じの人だった。
「どうも、初めまして、石川梨華と言います」
「あの子は矢口真里ちゃん。204号室に住んでるの」
「うん、矢口真里です。よろしくね」
安倍に手を引かれ部屋に入る石川。こたつに入り対面に座ってる
矢口と握手する。矢口はこんな安アパートには不似合いなくらいに
派手な格好をしていた。悪く言えばケバい感じ。
「ちょうど石川さんの歓迎会みたいのやろうと思って鍋にした
んだけどさ、いいでしょ」
「え、いいんですか? ありがとうございます〜」
ここ二日くらい何も食べてなかった石川としては有り難い限り。
「今、飲みもんはビールか日本酒しかないけど、大丈夫だよね」
「え?・・・・あ、はい。頂きます」
20 :
クズ学生 : 2001/02/12(月) 23:46 ID:nCWZAyy.
っていうか、今書いてるんだけど、
全然終わんない!かなり長くなりそうだ。
終わらせられるんかな〜?
あと、みんなに質問。
石黒、福田、平家がどんな奴だったのか教えて。
全然データがないからわからん。簡潔に書いてちょ。
21 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 00:12 ID:V.V.xnWI
安倍の部屋にて鍋。
参加メンバー:安倍、石川、矢口
グツグツグツ
安倍:「じゃ〜、石川さんの入居を祝って、かんぱ〜い」カキ〜ン
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ
矢口:「プハ〜ッ、やっぱり鍋にはビールでしょ」
石川:(空きっ腹にアルコールはちょっとしんどいんだけどな〜。
まあ、最初っから断っても雰囲気悪いし、いっか)
安倍:「そうそう、石川さんって幾つなの?結構若く見えるんだけど」
石川:「あ、16です」 ゴクッ
矢口:「あ、そうなんだ。私より下なんだ」 パクッ、パクッ
石川:「え、矢口さんって幾つなんですか?」 ゴクッ
矢口:「18だよ。え、じゃ〜貴方はまだ高校生なんじゃないの?」
石川:「いや、それは・・・・」
矢口:「あ、ゴメン。・・・・いきなりそんなこと聞いちゃ
ダメだよね。ごめんね〜。ねっ、ねっ」
石川:「あ、いや、大丈夫ですよ。別に」 グビッ
安倍:「ま、ま〜ま〜。何といっても今日はめでたい日なんだからさ、
とにかくジャンジャン食べて飲むべ。今日のはうちの実家から
贈ってきた旬のシャケなんだから。おいしいってばさ」
石川:「あ、安倍さんの実家ってどこなんですか?」
安倍:「私は北海道から来てるんだよね。こっちも冬とか結構寒いけど
やっぱりうちの地元には適わんってよ」 パクッ、パクッ
22 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 02:23 ID:zS3w637c
何かすげ〜マタ〜リしてるな〜、このムード。
無理矢理すさんだ方向にしたいんだけど、
そうなってくんないんだよ。ま、いっか。
23 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 02:29 ID:zS3w637c
ちなみに、文章が下手なのは指摘するにとどめて。
罵倒はやめて、ヘコむから。
ま〜、これからもダラダラ何となく書いてくから。
状況説明が下手だから台詞のみで状況を進める
形式で今まで書いてたんだけどね。
24 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:38 ID:6r/DYCSY
明日、明後日と書き込めるかどうか
わかんないんで、書きためた分を
まとめて載せちゃいます。
あと、上に挙げた3キャラは自分で
勝手に作ったキャラで描きます。
25 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:39 ID:6r/DYCSY
グツグツグツッ
安倍:「本当は裕ちゃんとか岩石も呼びたかったんだけどね」
石川:「え、岩石って?」
矢口:「102号室に住んでる保田圭っていう子のことなのよ。
女の子なんだけど、ちょっと顔がやばくってね、ハハッ」
石川:(ほ〜、どんな顔か見てみてえもんだな〜、そりゃ)
安倍:「悪ィ〜悪ィ〜。いきなりあだ名で言ってもわかる訳ない
もんね。あと、会っても本人の前で言っちゃダメよ」
石川:「は〜い」 ゴクッ
安倍:「そういえばさ、これから何て呼んだらいいかな?ずっと
石川さんっていうのも他人行儀な感じがするでさ」
石川:「梨華でいいですよ」
矢口:「じゃ〜、梨華ちゃんでいいでしょ。ねっ」 ゴクッ
安倍:「そうね、じゃ〜梨華ちゃんって呼ぶわ、これから」パクッ
石川:「じゃ〜二人はどう呼んだらいいですかね〜?」
矢口:「安倍ちゃんのことは『なっち』って呼んでるけどね。
名前がなつみだから。それでいいんじゃない?」
安倍:「うん、私は別に構わんよ、それで。矢口はね〜、結構
『ぐっさん』とか『ぐっちゃん』って呼ぶことが多いかな」
石川:「じゃ〜、そう呼ばせてもらいますわ」
安倍:「あとさ、うちらは年齢とか関係なく付き合ってるからさ、
あんまり敬語で喋られるのも変な気分になるんだよね。
だから梨華ちゃんもタメ口でいいからね」 パクッ、パクッ
石川:「うん、じゃ〜これからあんまり遠慮しないよっ」
矢口:(こいつ見かけによらず結構さっぱりしてるな)
26 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:42 ID:V2ipTFQc
グツッ、グツッ
石川:「は〜、喰った喰った。やっぱり冬は鍋に限るな」
安倍:「梨華ちゃん、この鍋おいしかったでしょ」
石川:「うん、うまかった。ごちそうさま」 ゴクッ
矢口:「あ〜、梨華ちゃん顔真っ赤だよ。酔っ払った?」
石川:「久し振りに酒飲んだから、結構いい気分だね」
安倍:「そういえば梨華ちゃんの部屋には布団とかあるの?」
石川:「いや、ないんだけど。中澤さんが貸してくれるって
言ってたんだけど取りに行ってなかったんだよ」
安倍:「管理人室に置いてあるのよ。ちょっと古臭いんだけどね。
だから裕ちゃんに言ったら出してくれると思うけど、
急場凌ぎに私んとこの布団貸してあげるよ」
石川:「え?じゃ〜、なっちはどうやって寝んのよ?」
安倍:「大丈夫。ちょうど1セット分余ってるから。何だったら
あげようか。使わないから」
石川:「いいの?本当! ありがと〜。家財道具何も持って
来てないし、バイト見つかるまで何も買えないと
思ってたからどうしようかと思ってたのよ」
矢口:「なっち、彼の布団あげちゃうんだったらさ、彼が
使ってたもの全部あげちゃっていいんじゃないの?
梨華ちゃんが自分で家具買うまで使ってもらうように」
安倍:「こらっ!そのことを言うんじゃないの。忘れようと
してるんだからね、私だって」
矢口:「ハッハッハ、悪い悪い」
石川:「それじゃ〜、布団頂いてきますわ」
27 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:43 ID:V2ipTFQc
まだ家具もない部屋の真ん中に、ちょっと湿気っぽい布団をひく。
ベトついてて多少気分は悪いものの、これも明日ベランダに出して
乾かしとけばいいんだから、そんなに大した問題じゃない。
とりあえずは明日以降にバイト先を探さないといけないというのが
当面の問題だから。手持ちのカネが少ない以上、家具を買うのも
その後になるだろう。
石川はそんなことを考えつつも、漠然とした不安と妙な高揚感を
胸に抱きつつ、窓から入るネオンの光に妖しく彩られた部屋で
寝床についた。
石川は、寝床の中で、夢を見ていたようだ。
28 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:44 ID:V2ipTFQc
・・・・・
石川:「そんなこと言わないでよ、明日香!」
福田:「何よ、もう私を巻き込むのはやめて欲しいんだけど」
石川:「ずっと前から一緒に歌手になろうって言ってた
じゃないのよ。逃げるの?」
福田:「逃げるとかそういう問題じゃないよ。あんたも
いい加減現実を見据えたらどうなの?」
石川:「・・・・・」
福田:「やっぱり、普通に高校出て働いてでいいんじゃないの。
簡単に叶うような夢じゃないんだよ、だから・・・」
石川:「もういいよ!もう明日香には相談しないから!」
タッ、タッ、タッ
福田:「ち、ちょっと待ってよ、梨華!」
・・・・・
29 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:45 ID:V2ipTFQc
ピリリリリリッ、ピリリリリリリッ
ガチャッ!
寝覚めは、決して良くなかった。昨日のビールが残ってたのかも
知れない。けど、それだけじゃなかったはずだ。
親友だと思っていた子(いや、今でも親友だと思ってる子)と
最後に交わした会話が、何度もフィードバックされていたようだ。
ふと気付くと、涙ぐんでいた。
目覚まし時計に伸ばした手も、しばらく動かなかった。
「あ、あの時、何で・・・・」
石川はそう呟くと、また布団に潜ってしまった。
が、いつまでも布団に潜ってても何も始まらない。
そう思い立ち、布団をベランダに出して身支度をする。
天気予報では今日は晴れ。布団もちゃんと乾くだろう。
30 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:46 ID:V2ipTFQc
日もすっかり昇ってるのに、廊下や階段は何故か薄暗い。
部屋の窓は南向きだから日は差し込んでくるけど、廊下側の
窓は目の前にあるビルのせいもあって光は入って来ない。
でも、隣のビルもそんなすぐ近くにある訳じゃないから
風通りなんかは思ったほど悪くない。
石川は階段を降り管理人室を覗いてみた。中ではストーブの上で
湯が沸かしているようだけど、人の気配はなかった。
(えらい不用心だな〜、中澤さんって)
「何?うちに用事?」
石川の後ろから声が聞こえる。中澤が門付近の掃除を終えて
戻ってきたようだ。石川はちょっとびっくりしたが何も
なかったかのように挨拶した。
「あ、ごめんな。昨日は布団貸してあげるって言うとったん
忘れてもうてんか。昨日はどないして寝やってんか?」
「あ、隣の安倍さんから布団を頂いたんで、大丈夫でした」
「あ、ほんまに。そりゃ良かったやんの。あの子、喋りやすい
やろ。ここにいる子は基本的に悪い子おれへんさけの〜」
ここがアットホームな雰囲気である理由が何となくわかった。
この姐さんが管理人をして世話を焼いてくれるから、みんなの
雰囲気が和んでいくんだという気がした。
「そういえば石川さん、今日はこれから急ぎの用事とかなん?」
「いえ、別にそういう訳じゃないっすけど」
「じゃ〜ちょっとうちの部屋に来てや。お茶と菓子があるさけ」
そう言って中澤は管理人室に石川を誘った。
31 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:47 ID:V2ipTFQc
ガチャッ
中澤:「ま〜そこに座ってや。さっき買うてきた人形焼きがあんねん」
石川:「あ、はい。頂きます」
中澤:「そういうばまだ聞いてへんかってんけど、何で
あんたみたいな女の子が一人暮らししようとここに
来てん?親御さんとかおんねやろ」
石川:「え、そ、それは・・・・」
中澤:「言わなあかんで。一応ここでは私があんたの保護者みたいな
もんやけど、ほんまの保護者に迷惑かける訳にはいかんさけ、
あかんような理由やったら連絡せなあかんしな」
石川:「は、・・・・はい」
中澤:「さ、言うてみ。私かてそない頭の固いオトナちゃうで。
いざとなったらちゃんと親御さん説得したるさけ」
石川:「あの〜、私、歌手になりたくって、実家から飛び出して
来ちゃったんですよ。昔からの夢で」
中澤:「へ〜、かっこええやんの」
石川:「そうですか、どうも。・・・で、両親に言ってみたんですけど
猛反対を受けちゃって、思わず取るものも取りあえず家から
出てきちゃったんですよ。だから・・・」
中澤:「うん、若い頃に突っ走るのはよくあることや。別にそれを
咎めるつもりも止めるつもりもあれへん。せやけど、せめて
今自分が無事であるっちゅ〜ことはちゃんと親御さんに
伝えなあかんで。電話番号と住所教えて、実家の」
石川:「・・・・はい」
石川の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。言葉にしてみると、とても
幼稚な今の自分。そして、そんな情けない自分を受け入れてくれる人。
空しさとも憤りとも違う何かが、心の中を吹き抜ける。
32 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:48 ID:V2ipTFQc
中澤:「いや、別に泣くことないで。怒ってる訳ちゃうねんから」
石川:「はい、・・・・すいません」
中澤:「・・・あ、そういやあんた、バイト探してるって言うとった
やんか。うちの知ってんねやったら紹介したるで」
石川:「え、本当ですか?」
中澤:「ちょっと、水商売やねんけどな。ま〜、芸事でメシ喰うね
やったら人当たりとか礼儀とかの勉強もせなあかんやろし。
そういう意味ではいろいろ勉強になるはずやさけ」
石川:「あの・・・・その水商売って、風俗とかじゃないですよね」
中澤:「何でやねん!いくら私でもそないキツい仕事は紹介せえへんわ。
まあせやけど、多少ハードやから実入りはええで」
石川:「はい」
中澤:「やっぱり歌の練習とかすんねやろ。せやったらあんまり長い
時間拘束されるバイトやったらあかんやんか。せやから多少
実入りのええやつやないとな。私、そこのママに顔利くさけ
シフトとかも融通利くようにしたはるかんな」
石川:「すいません、ありがとうございます。本当に」
33 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:49 ID:V2ipTFQc
ピッピッピッ、ツルルルルルルッ、ツルルルルルッ
中澤:「あ、もしもし、定さん?中澤です〜。いつもお世話に
なってます〜。あの、今やったら平家さんいますよね。
ちょっと呼んで頂けますか?・・・・はい、どうも」
石川:「・・・・・」
中澤:「あっ、みっちゃん。私、裕子やで。・・・・ああ、でな、
うちに来た子がね、バイトの口探しとってな。・・・うん、
人足りひん言うとったやん。・・・え、いや〜、ええねんて。
うん、いやホンマ可愛い子やで、・・・・うん。あ、はい、
はい、じゃ〜お願いします〜。じゃ〜ね」 ピッ
中澤:「じゃ〜、明日のPM2:00から面接やて。場所は後で地図
みたいの書いたるさけ、部屋の前の郵便受けに入れとくわ」
石川:「いや〜、本当すいませんです」
中澤:「ええねん、ええねん。単なる世話好きやねんから」
34 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:50 ID:V2ipTFQc
アパートを出て改めて周りにある店屋などを確認する石川。
さすがに都内だけあって何でも揃いそうだ。そもそもこの都会に
場違いなのはあのアパートの方なんだろうけど、それでも何故か
変な気分になる。
あのアパートには共同トイレと炊事場はあるけど洗濯機はないし
共同浴場みたいなものもない。だからすぐ近くにある銭湯に
通うことになる。銭湯の隣にはコインランドリーがあるから
洗濯も風呂帰りにでも寄れば済む話で、別に不便とは感じない。
石川はコンビニに立ち寄って洗面道具を一式買い揃え、その足で
銭湯に向かった。冬とはいえさすがに汗を流さないとやばいなと
思っていたからだ。
「いらっしゃい。360円になります」
初老の女性が番台に座り料金を言い渡す。昔ならありふれた
光景だったろうが、今は内風呂が普及してることもあって
銭湯という文化も下火になっている。
石川は番台に小銭を置き脱衣所に入る。どうやら自分以外は
一人しか入っていないようだ。そそくさと服を脱いで中に入る。
先客も自分ほどじゃないにしてもかなり若い女性のようだ。
35 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:51 ID:V2ipTFQc
石川が身体を洗い始めた頃には既に身体を洗い終えていたらしく、
もう一人の女性は湯舟に浸かり目をつぶっている。
「は〜、気持ちいいな〜ッ。やっぱり風呂は大きくないとねッ」
独り言にしてはヤケにデカい声。自分に話しかけて来てるのかが
わからず、石川はどう応えていいものか迷いながら身体を洗っていた。
「ねえ、あんたあんまり見ない顔だね〜ッ。近くに住んでんの?」
「は、は〜・・・」
初対面とは思えないような馴れ馴れしい態度に少々いら立ちを
感じながら石川は答える。ふと見ると、ワイルドな顔立ち。
(おまえの顔こそ世間じゃあんまり見ねえ顔だっつうの)
身体を洗い終え、湯舟に浸かろうと思う石川だが、ここでもまた
戸惑ってしまう。人が二人しかいない風呂場で向こうがフレンドリー。
どうしようかと判断に困るシチュエーションではある。
とりあえず石川は彼女の近くに入ることにした。当たって砕けろである。
36 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:52 ID:V2ipTFQc
「あんた、ここに来るの始めて?」
「あ、は、はい」
「何よ、何か変に緊張してない?大丈夫よ、何もしないってば」
後ろの手すりに肩をかけて足を大股に広げながら湯舟に浸かる
20代前半と思しき女性の姿は圧巻である。そりゃ〜畏縮するわ。
「でもさ〜、ここらへんでも風呂付きじゃない家とか少ないでしょ。
あんたんところの内風呂が壊れたの?」
「いえ、昨日越してきたんですけど、そこが風呂無しのところで」
「あ、そういうことか。なるほどねッ」
37 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:53 ID:V2ipTFQc
身体が暖まってきたからか、それともしばらく喋ったからか
かなり緊張の度合いも弱まってきた。のぼせてるのかも知れない。
「じゃ〜さ、今日から友達にでもなろうよ、ねっ」
「は、は〜・・・」
ここまで強引な人に出会ったことのなかった石川としては少々
弱っていたんだけど、一人暮らしだとこんぐらいのこともあるかと
タカをくくってた部分もあったので、それほどダメージがある訳じゃない。
「私はここ出てすぐ東側にある『ふぁっきん娘。荘』っていう
所に住んでる保田っていうから、よろしくね」
「!?・・・・や、保田さん?」
「何、どうかしたの?」
「私、その『ふぁっきん娘。荘』に昨日越してきた石川って言います」
「え、マジで?・・・そうなんか〜。奇遇だね〜。よろしく」
確かにこの近くで内風呂のないアパートなんて限られてるんだから
あり得ない話じゃないとは思うけど、それにしても奇遇だろう。
これが、石川と保田の出会いだった。
38 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:54 ID:V2ipTFQc
脱衣所で服を着る石川の隣には、未だ全裸のまま大股開きで座り
煙草を吸っている保田の姿。これもまた圧巻である。
見ているこっちが恥ずかしくなるということで、声をかける石川。
「あの・・・、何か着た方がいいんじゃないっすか?」
「え?今服着たら汗でビチョビチョになっちゃうじゃん」
「ま、ま〜、そうですけど・・・」
そういう意味じゃない。その言葉が喉まで出かかったが止めた。
この人はそういう人なんだと思うのが一番だと思った。
自分でも損な性格だとは思う。いつも決めつけることで物事から
逃げている自分に対して嫌悪感みたいなものを感じざるを得ない。
「じゃ〜行こうか。私の部屋、寄ってってよ」
「はい、わかりました」
ようやく着替え終わった保田とともにアパートに戻る。
保田は冬だというのにTシャツに半纏、ジャージに雪駄である。
とても20代の女性の服装には見えない。第一寒そうだ。
それでも保田は我関せずと言った感じの堂々とした態度だ。
石川にとってはそんな保田が羨ましい反面、恥ずかしくもあった。
39 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:55 ID:V2ipTFQc
ギシィ〜ッ、ギシィ〜ッ
1階の奥には行ってなかったので、少々恐い気さえする。
まだ越して来てから二日しか経ってないんだからしょうがないけど
石川はまだこの暗くジメジメした感じには慣れていないようだ。
「じゃ〜、入って」
「お邪魔しま〜す」
102号室が保田の部屋らしい。ちょうど石川の部屋の真下にあたる。
ドア前の郵便受けからスポーツ新聞を抜き取って保田が部屋に入る。
そしてその後について部屋に入る石川。隣の部屋の電気が付いていた
のが少々気にはなったが、それでも構わず中に入る。
思ったよりも遥かに整理された部屋の中。ずぼらそうな
風貌からは想像つかなかった。そして部屋の中で最初に目に
付いたのは61鍵のキーボードとそれに繋がったパソコン。
石川としてはイマイチ彼女のイメージが掴めないでいた。
「あの〜、これ・・・・」
「え、これはキーボードだよ。見りゃわかるでしょ」
「ま〜、そうですけど」
「私、趣味で曲作ったりするんだよ。それでさ」
「あ〜、そうなんですか」
40 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:56 ID:V2ipTFQc
石川:「普段からスポーツ新聞とってるんですか?」
保田:「え?・・・あ〜、これは隣の奴が毎日買っててさ、
読み終わったら郵便受けに入れといてくれるんだよ」
石川:「は〜、103号室ですか?」
保田:「うん、101号室は空き部屋だしね。で、103号室には
男の学生が住んでてね。確か大学生だったかな。名前は
わかんないからうちらの間ではクズ学生って呼んでるんだ」
石川:「何かここって女性ばっかりみたいで、そんな中に一人
男性がいるのって恐くないっすか?」
保田:「あ、そういえばさ、私敬語使われんの嫌いだからさ、
タメで話してよ。ここってそういう雰囲気だし」
石川:「本当?じゃ〜、遠慮なく。そういや、何て呼んだらいい?」
保田:「圭って呼んでくれればいいよ」
石川:「うん、わかった。私の名前は梨華だから。で、
さっきの話の続きだけど・・・」
保田:「ま〜、確かに危ないと思うかも知れないけど、実際は逆。
女ばっかりの中にいる男だからさすがに何も言えないよ。
別に悪い奴じゃないしね。よく娯楽室で遊ぶし」
石川:「娯楽室?」
保田:「あ〜、裕ちゃん説明してないのか〜。じゃ〜ね、その
説明も兼ねてこのアパートの中の説明をするからね」
石川:「うん、ありがと〜」
41 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:57 ID:V2ipTFQc
保田:「玄関は東側にあるでしょ。でも103号室の脇から南向きの
出口があるから、そっちからも避難とかは出来るんだ。で、
1階北側には管理人室と裕ちゃんの部屋があるのね」
石川:「あ、中澤さんってあそこに住んでるんだ〜」
保田:「うん。だからいる時は大概うちらと一緒に遊んでるの。で、
1階南側には玄関側から物置きがあってトイレがあって階段が
あるでしょ、そして101号室から103号室まであるのね」
石川:「なるほど」
保田:「で、103号室の横を抜ける廊下があってその前に娯楽室と
共同炊事場があるのね。で、すごいんだけど、娯楽室には
全自動雀卓があって、みんなでよく麻雀やってるんだ」
石川:「あ〜、それ後で見に行きたいな」
保田:「うん、他のメンツが帰ってきたら行こうか。で、娯楽室には
他にもビリヤード台一つと昔の漫画がいっぱい置いてあるの」
石川:「は〜、何かすごいな〜、それって」
保田:「で、2階は東側は何が置いてあるのかわかんないんだけど、
西側には部屋があるでしょ。201が安倍なつみちゃん。
202があんただよね、確か」
石川:「うん、そう」
保田:「でね、203って誰が住んでるのかよくわかんないんだよ。
裕ちゃんに聞くと誰か住んではいるらしいんだけど、私は
一度も見たことないからさ」
石川:「え、そうなん? 何か恐いな〜」
保田:「で、204には矢口真里っていう子が住んでるのね。
後で紹介してあげるから」
石川:「いや、もう昨日二人とは喋ってるから、うん」
保田:「あ、そうなんだ」
42 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:58 ID:V2ipTFQc
カダッ、カダッ、カダッ
廊下で人が歩く音が聞こえる。誰か帰ってきたようだ。
気が付くと外はだいぶ暗くなっていた。もう7時は過ぎてるだろうか。
その音が聴こえてくると保田はおもむろに立ち上がり廊下に出た。
「なっち、おかえり〜」
「おう、圭ちゃん。ただいま〜」
帰ってきたのは安倍のようだ。石川も保田の部屋から出て軽く会釈。
何か買い物帰りのようで、両手に大きな買い物袋を下げていた。
「梨華ちゃんに娯楽室を見せたいんだけど、今時間ある?」
「あ、ちょっと待って。この荷物を部屋に置いてきてからでいいべ」
「うん、OK、OK」
安倍は重そうに荷物を抱えて階段を上っていった。
「・・・あ、梨華ちゃん。そういえばまだ自分の部屋に帰って
なかったよね。荷物、置いてきたら?」
「あ、そうだね。ちょっと待っててね」
保田の部屋から荷物を出して自分の部屋に戻る石川。
あまりにも順調過ぎるくらいの一人暮らしのスタートに、
少々不安を感じないこともなかった。が、それでも今は
非観的な考え方はやめようと思うしかなかった。
43 :
クズ学生 : 2001/02/14(水) 14:59 ID:V2ipTFQc
自分の部屋に入ると、布団が干しっ放しだったことに気付く。
石川は荷物を置き慌てて布団を取り込んだけど、陽も落ちたせいか
また多少湿っぽくなっていた。帰ってきてすぐに取り込んどけば
ちゃんと乾いていただろうけど、多少湿気は抜けてるんだし、
まあしょうがないかと思いつつ、畳の上で布団の形を整えていた。
石川が1階に降りると管理人室に中澤が戻っているのが見えた。
ちょっと覗き込んだ石川に気付いてか、中澤は管理人室から出て来た。
「あ、石川さん。一応親御さんに連絡しといたから」
「は、は〜、すいません」
「親御さんごっつい心配しとったで、ほんまに。ま〜、私がちゃんと
世話見るっちゅ〜のを条件に何とかOK出してもろたさけの〜。
せやから、これからは夢目指して、頑張りや〜」
「はい、頑張ります」
まだ会って二日しか経ってないというのに、中澤さんには随分
お世話になってしまったな〜。石川はそう思いつつ中澤に礼を言う。
「じゃ〜、みんな娯楽室で待っとるさけ、行こか」
「あ、はい」
タッ、タッ、タッ
「・・・・あ、石川さん。そういえば親御さんが言ってはったけど
仕送りはせえへんってよ。その分はあんたが実家に戻った後で
また学校に入れるように積み立てとくって言うとったで」
「は〜、わかりました」
44 :
クズ学生 : 2001/02/16(金) 01:42 ID:7FeWLYRs
そういえばここって、何で石川スレがやたら多いの?
いじり易いキャラだからかな〜。
ちなみにここも石川メインの小説だけど、主人公を
石川にしたのは、このスレを立てた人が石川メインで
始めたからそれを継承したまで。いざとなれば誰を
主役にしても出来たとは思うんだけどね。
45 :
クズ学生 : 2001/02/17(土) 02:00 ID:JCs25fuw
梨華が学校を辞めたこと、初めて知ったのは3日前のホームルーム。
担任教師の毛だるそうな言葉に、自分の耳を疑った。
「・・・おい、福田! 外見てるんじゃないぞ」
「はい、すいません」
あれから3日経ったというのに、福田は未だにぼんやりしていた。
(・・・・自分のせいだったんだろうか)
最後に会った日に彼女に言った言葉は、裏切りに捉えられたのかも
知れない。あの時は・・・・、あの言葉しか見つからなかったんだ。
小学生の頃、東京から転校してきた私に最初に話しかけてきて
くれたのは彼女だった。当時引っ込み思案だった私としては
すごく嬉しかった。あの時梨華が話しかけてきてくれなかったら、
今ほど明るく社交的な性格にはなれなかったかも知れない。
あの頃二人一緒に目指していた歌手への道。それに向かい今、
梨華だけが走り出そうとしていた。私は、どうしたらいいんだろう?
高校から帰る途中、福田は石川の実家に寄ることにした。
梨華の両親がどのくらい気落ちしているのかが心配だったし、
今梨華がどこにいるのかがわかるかも知れないと思ったからだ。
46 :
ナマコ娘。 : 2001/02/17(土) 02:13 ID:fRJ4Sy8k
妄想楽屋裏も頑張ってくれ。> クズ学
47 :
クズ学生 : 2001/02/18(日) 02:04 ID:NUvIJ5A.
ピンポ〜ン!
「はい〜。・・・・あ、明日香ちゃん。どうぞ」
「失礼します」
石川の母に挨拶をして、居間に通された福田。何回も見て来た家なのに、
何かが違う。妙に寂しい気分になるし、心無しかおばさんの背中も
寂しさを醸し出してるように見える。
「明日香ちゃん、紅茶でいいかしら?」
「いえ、お構いなく」
居間のソファ〜に腰掛けた福田にお茶を勧める石川の母。
福田も雰囲気の違いを察してか、妙に畏まっていた。
「あの〜・・・・、梨華が今どこに・・・」
「3日前に、梨華が引っ越したアパートの管理人さんから連絡があったの。
今東京にいるみたい。で、こちらで預かる限りは責任持って面倒見ます
って言ってたから、一応安心はしてるんだけどね」
「あ、・・・・そうですか」
福田はどう応えたらいいのかわからなかった。
その自称管理人の言い分を鵜呑みにするのもどうかとは思ったが、
その言葉を信じるなら梨華は東京にいるということがわかった。
それだけでも嬉しいは嬉しいんだけど、だからどうだと言われても
困るというような奇妙な心境に陥っていた。
48 :
名無し娘。 : 2001/02/18(日) 02:25 ID:MtS.zbSg
おもしろいっす。がんばれー。
49 :
クズ学生 : 2001/02/18(日) 02:27 ID:NUvIJ5A.
>>46 うん、向こうも思い浮かんだら適当に書くって。
こっちの終わりが見えてくるまでこっちに
掛かりっきりだと思うんだけどね。
ちなみに、こっちがつまんないから向こうでって
言い方はやめてくださいね、ヘコむんで。
50 :
クズ学生 : 2001/02/18(日) 02:41 ID:NUvIJ5A.
>>48 ありがとうございます。ま〜、sageつつ
ダラダラやってくんで。
でもな〜、全然収拾つかないんだよな〜
51 :
ナマコ娘。 : 2001/02/18(日) 14:39 ID:6TtRnBh2
>>50 こっちもオモロイから頑張ってくれ。sage
52 :
クズ学生 : 2001/02/18(日) 21:32 ID:6aIJZRMY
「でね、明日香ちゃんに頼みたいことがあるんだけど」
「・・・・はい」
福田は一瞬ギョッとした。が、すぐに落胆に似た思いを抱く。
おそらく、石川の母からは梨華を連れ戻してきてほしいと言われる
だろう。ただ、それで梨華を連れ戻したとしても、今後あの子が
どうなるのか、そしてあの子がどう思うのかということを考えると、
あまり乗り気になれなかった。
「梨華が・・・、元気かどうかを、見てきてほしいの」
「・・・・はい?」
自分が予想してなかった返答をされた時、人間はかくも情けない
受け答えをしてしまうのかという感覚になる。そう、石川の母が
頼んだ内容は、ちょっと拍子抜けになるような内容だった。
53 :
クズ学生 : 2001/02/20(火) 03:30 ID:2KF56qj.
「・・・いいんですか、連れ戻さなくって?」
そんなこと、聞く必要もないのに聞いてしまった。はっきり言って
余計なお世話であることはわかっていた。でも、聞いてしまった。
「うん、最初は私達が行って連れ戻そうかとも思ったんだけどね、
下手に私達が行ってもあの子、ムキになって怒るだけだと思うし
あの子なりに考えた上での決断なんだから、強引に抑えつけても
しょうがないかなって思ったの」
「・・・・・」
「でもね、やっぱりあの子のことが心配だから、・・・貴方に
見てきてほしいのよ、あの子の様子をね」
理解ある親だなと、福田は思った。うちだったら多分許してくれない。
石川の誘いを断ったのも、実はそのせいでもあった。
ただ、仮に親が許してくれたとしても、自分はこんな決断が出来たか
どうかと考えると、多分自分には出来なかったろうとも思った。
現実を見据えるって、夢を捨てることなんだろうかと、自問自答した。
「・・・はい、行ってみます」
「ありがとうね。じゃ〜、今から管理人さんに言われた住所を書くから」
友達の親御さんに頼まれたから行くというのもある。だけど、もう一度
梨華に会いたかったという方が圧倒的に大きな理由だ。ただそれも、
懐かしさからという訳じゃない。あんな煮え切らない別れ方をしたことを
後悔しているからだ。もう一度会って、ちゃんと自分の気持ちを
伝えたい。まだ未練の残る恋人と再会する前のような、そんな気分だった。
54 :
クズ学生 : 2001/02/20(火) 03:37 ID:2KF56qj.
>>51 ま〜なんとか書いてくつもりだけどね。
完結させられるようにガンバッてみるよ。
今日ミュージカル参加のメンバー写真を見て
生きる気力が無くなるような笑撃を覚えた。
一応この話はあいつらが入って来ようが来まいが
今まで出て来たメンバーで書いていくつもりです。
55 :
クズ学生 : 2001/02/21(水) 01:32 ID:uP5uvg0.
「あれ〜、ここらへんで合ってるはずなんだけどな〜」
PM1:00過ぎ。石川は普段行かないような歓楽街の中を歩いていた。
時々スカウトかキャッチの兄さんに呼び止められて胆を冷やすけど、
中澤の書いてくれた地図に従い、ある店を探していた。
「・・・・こ、ここかな?」
書かれた番地通りの場所に立ち止まり、店の名前を確認する。
『キャバレークラブ、落ち武者』
名前だけから想像するに、あまり繁盛してなさそうな店だった。
が、それ以上にこんな店でこれから働くのかということの方が、
石川にとってはずっと不安だった。
ガチャッ
「し、失礼します〜」
恐る恐る店のドアを開ける石川。まだ準備中というだけあって
店内の明かりはほとんどついておらず、シ〜ンと静まり返っていた。だが
誰もいないのかと心配になったのも束の間、奥から一人の女性が出てきた。
「あ〜、あんたが裕ちゃんの言っとった石川さんかな?」
「はい、石川梨華です。よろしくお願いします」
「は〜い、よろしくね。私がこの店でママやってる平家と言いま〜す」
56 :
クズ学生 : 2001/02/22(木) 02:50 ID:pW/SPvTE
57 :
クズ学生 : 2001/02/22(木) 02:58 ID:pW/SPvTE
ハキハキ喋り、器用そうな人。気立てのいいママと言った感じの
人だけど、そんなに歳喰ってるようには見えなかった。
「あの〜、・・・・。面接って・・・」
「あ〜、いや、別に形式上のものだから。うちは基本的に日本語が
ちゃんと喋れるならOKなんだ。だからあんたは合格」
「え、・・・いいんですか?」
「うん。OK、OK。何の問題もなしね」
石川は呆気に取られていた。こんなにいい加減でいいのか?
「で、シフトなんだけどね、基本的に週2日、但し月に1回だけ
週3日でやってもらうから。だから、月に9日かな、出勤は」
「はい」
「勤務時間はPM8:00からAM1:00までの一日5時間で
日給は1万円、即日手渡しね。残業手当ては出ません」
淡々と業務内容を説明する平家を見つめながら、石川は一抹の
不安を抱いていた。今までバイトの経験がない自分に、こんな
深夜の水商売なんて勤まるんだろうか。もし途中で投げ出したら
紹介してくれた中澤さんの顔に泥を塗ることになるんじゃないか。
「あ、そういえば石川さん、この後時間あるよね」
「は、はい。ありますけど・・・」
「この後圭織ちゃんっていう子が来るから、その子に仕事の
内容を教えてもらってね。あと、明日の夜に来てくんないかな。
見学してもらうから、どんな感じだってのをさ」
「はい。・・・わかりました」
泣き言を言ってもしょうがない。石川はそう自分に言い聞かせた。
58 :
クズ学生 : 2001/02/22(木) 20:11 ID:I6cwtECY
ガチャッ
突然後ろの方からドアの開く音がした。石川はその音につい
過剰な反応をしてしまった。それを見て平家がクスクスと笑う。
「おはようございま〜す。・・・・あれっ、その子は?」
「ああ、彩ちゃん、おはよう。この子は今度新しく入って
もらうことになった石川さんね」
「あっ、そうなんだ。よろしく、私、石黒彩っていうから」
「はい、石川梨華です。よろしくお願いします」
そう言って彼女は店の奥へと消えていった。どうやら奥には
従業員の控え室のようなものがあるらしい。彼女は背は少し高く、
言い方は悪いがいかにも水商売といった風貌の女性だった。
「平家さん、あの人は?」
「あの子は石黒彩ちゃん。一応ウチの看板ホステスね。まあ、
私とほとんど歳変わんないんだけどね」
「え、そうなんですか?」
「意外〜?私って結構若いんだよ」
59 :
クズ学生 : 2001/02/24(土) 00:07 ID:7GOrpPi2
ガチャッ
また同じ方からドアの開く音がした。普通の従業員さんや終日勤務の
ホステスさんはこのくらいの時間が入り時間のようだ。
「おはようございます。・・・その子ですか?」
「おはよ〜。うん、この子が昨日言ってた石川さん。
じゃ〜、この後は圭織ちゃんに説明してもらおうか、ねっ」
「初めまして、石川梨華です。よろしくお願いします」
「うん、私、飯田圭織って言います。よろしくね」
そういうと平家は店の奥に行ってしまった。どうやら開店準備の
途中で時間を割いていてくれてたらしく、少々慌てていた。
「じゃ〜ウチのシステムとか接客態度について説明するから、
よく聞いといてね。わかんないことがあったら聞き返して」
「はい、わかりました」
彼女は背も高く、セミロングの髪型がよく似合っている。丁寧な
説明の仕方から真面目な性格がうかがえたが、目付きは少々妖しかった。
石川はそんな風に飯田をチラチラ見ながら、彼女の説明に聞き入っていた。
60 :
クズ学生 : 2001/02/24(土) 04:20 ID:7GOrpPi2
何かヲタっぽい文章になっちまってるのかな〜?
まとめようとするとこうなっちゃうんだよな。
粗を探すと妄想楽屋裏みたいになっちゃうから
区別化も図ってるんだけどね。
あと、展開のテンポが異常に悪いね。どうしたら
いいんだろうか。所々にアクセントを入れてる
つもりなんだけど、本文自体のテンポがまるで
コントロール出来ねえ。難しいな〜。
61 :
クズ学生 : 2001/02/25(日) 00:59 ID:kkqZOfOQ
「は〜、今日は本当に疲れたよ。明日からがしんどそうだな〜」
日もすっかり落ち、ネオンライトが眩しい繁華街を歩き家路を急ぐ石川。
いきなり必要な知識をほとんど教えられたため、若干頭が混乱していた。
バイト先の店からアパートまでは徒歩でも十分行ける場所にあるものの、
足取りは少々重い。
カッ、カッ、カッ。 ギシ〜ッ、ギシ〜ッ
バタンッ!
石川は明かりも付けずに部屋に入り、そのまま布団に転がり込む。
そしてしばらく動くことなくうずくまっていた。
コンコンッ
「・・・・はい、どなたですか?」
「梨華ちゃ〜ん、おかえり」
安倍の声だ。石川が帰ってきた音を聞き付けてきたようだ。
62 :
クズ学生 : 2001/02/25(日) 16:18 ID:EBp4ignQ
「梨華ちゃんはもう御飯食べてきたの?」
「いや、まだなんだけど」
「じゃ〜一緒に食べない?今日はぐっちゃんがパスタ作って
くれるんだってさ」
「あ、本当?・・・・ちょっと待ってて、すぐ行くから」
そういうと石川は毛だるそうに立ち上がりドアを開ける。
横には安倍がニコニコしながら立っていた。
「今もう作ってるの?」
「うん、でもまだパスタ自体は茹でてないから、20分くらいは
かかるんじゃないかな、多分」
「じゃ〜、私風呂に入ってくるから。その後ぐっさんの部屋に
直接行けばいいんでしょ」
「うん、じゃ〜後でね」
石川は畳の上に置いていた洗面道具を手に取り、すぐに銭湯に
向かった。それでも、目付きは多少虚ろのままだった。
63 :
クズ学生 : 2001/02/26(月) 19:44 ID:Iy9f6UXE
銭湯に入ると、昨日とは違って何人か先客がいる。水の流れる音が
響き渡る中、一つ溜め息をつき服を脱ぎ始める石川。何でこんなに
気分が重いんだろう?
別に何も悪いことなんてなかったじゃないか。逆にバイトが正式に
決まったんだから、もっと喜んでいいんじゃないか。そう思いながらも、
心とは裏腹に身体は毛だるいまま。
それはここになっていっぺんに襲ってきた不安感から来ていたようだ。
それまで張り詰めてたテンションがふいに弛んだ瞬間に、自分の
今置かれてる状況がはっきりと見えてしまった。このままガムシャラに
突っ走っても大丈夫なんだろうか。そう思うと、手足が動かない。
頭を洗ってる時に、泡が目に入ったんだろうか。
石川の瞳からは、涙があふれていた。
64 :
クズ学生 : 2001/02/28(水) 02:39 ID:bsRf1of.
アパートに帰り薄暗い廊下を歩く。カビ臭い板張りの廊下は相変わらず
妙な音を起てて軋む。うつむいているから、自分の影ばかり見える。
ガヤガヤガヤ
2階に上がると、一番奥の部屋から騒がしく喋る声が聞こえる。
矢口の部屋には、何人くらい集まってるんだろうか。
ガチャッ
「あ〜、梨華ちゃん、おっかえり〜!」
「うぃっす!」
「お〜、もうちょっと待ってね」
矢口の部屋の真ん中にはコタツが置いてあり、そのコタツに入って
安倍と保田が暖まっている。矢口はドアの近くにある流し場で
茹であげたパスタをフライパンにかけて炒めていた。どうやら
オリーブオイルとからめているらしく、上品ないい香りがする。
「いい香りするね。本格的じゃん」
「でしょ〜。今日は特に気合い入ってんだからね」
何があったのかは知らないけど、とにかく矢口の機嫌がいい。
エプロン姿の矢口が台の上に乗りフライパンを上下させる姿は
いささか滑稽にさえ見えるが、石川はなぜか妙に冷めた笑みを
浮かべることしか出来なかった。
「あっ、ちょっと洗面道具置いてくるから」
「うん。もうすぐ出来るからね〜」
65 :
クズ学生 : 2001/02/28(水) 06:35 ID:zqnA93cY
ちょっとこの先しばらく書けるかどうか
わかんないんで、今書きためてる分を
まとめて載せます。
66 :
クズ学生 : 2001/02/28(水) 06:38 ID:zqnA93cY
矢口:「は〜い、矢口特製ペペロンチーニの出来上がり〜」
安倍:「ん〜、いい香りがするね〜。うっまそ〜、ハハッ」
石川:「ぐっさん、この黒くて小さいのは何?」
矢口:「それはオリーブの実をスライスして炒めたもの。おろした
ニンニクと塩コショウで味付けしてカリカリになるまで
炒めたんだよ。いいアクセントになってると思うよ」
保田:「うん、これも美味しい!」
矢口:「でしょ〜。何かそう言われんのって本当に嬉しいね〜」
安倍:「なんか飲むもんないかな〜、ちょっと喉につっかかるし」
矢口:「なっちの部屋に瓶ビールがまだ余ってるんでしょ。
あれ持ってきてよ。私だってカネ出してるんだからね」
安倍:「うん、じゃ〜持ってくるからコップ用意しといてね」
ガタガタッ、ガチャッ!
矢口:「なっちの部屋見たでしょ、あの子瓶ビールをケース買い
してるんだよね。酒問屋じゃないんだからね〜、本当」
石川:「ハッハッハッ、そうだよね、すごいすごい」
思った以上においしいパスタを食べられたからだろうか、それとも
気のいい人達と一緒にいるからだろうか、石川は心のしこりのような
ものが徐々に取れているように感じた。
67 :
クズ学生 : 2001/02/28(水) 06:40 ID:zqnA93cY
カチャッ、カチャッ
矢口:「あ、そういえばさ、梨華っちょってアイドル歌手を
目指してるんだったよね〜?」
石川:「えっ、なんで・・・・?」
安倍:「裕ちゃんが言ってたんだ。さっき会った時に言ってたよ」
石川:(何だよ、・・・・言わないでいて欲しかったんだけどな〜)
保田:「え、じゃ〜これから何かオーディションみたいの受けんの?」
石川:「うん、とりあえずはね〜、一番近くにあるオーディションが
3月あたまにあってね。まずはそれに応募してみようかなって」
安倍:「それって何のオーディション?」 モグッ、モグッ
石川:「あの〜、モーニング娘。っていうグループあんの知ってる?」
安倍:「あ〜、はいはい。あのグループか〜」
保田:「あ、ごめん。私そのグループ知らないんだけど」
矢口:「知らないの、圭ちゃん?モーニング娘。って言ったら最近
大人気の女の子3人組のアイドルグループなんだよ。すごい
若い子ばっかりなんだけどね」
保田:「ふ〜ん、私そういうのすげえ疎いからさ」
安倍:「リーダーの後藤真希ちゃんでさえ15歳だったかな。
あとの二人なんか13歳だったよ、確か」
保田:「そんな若いの?ガキんちょばっかりじゃん!」
安倍:「加護ちゃんと辻ちゃんでしょ。あの子達は五月蝿いよね」
石川:「で、メンバーの増員のために3月にオーディションがあるんで、
とりあえずそれに応募しようかな〜なんて思ってね」
矢口:「すごいじゃん、ガンバッてね、梨華っちょ」
石川:「うん、任しといてよ」
68 :
クズ学生 : 2001/02/28(水) 06:43 ID:zqnA93cY
翌朝、石川は近くの量販店に行き、持ってきていた有り金を粗方使って
テレビとCD&MDラジカセ、コタツになるちゃぶ台を買ってきた。
経済的には相当厳しくなるけど、これらのものがないとさすがに生活に
支障をきたすと思ったので、少々急いで買いに来た次第である。
コタツ布団は安倍がくれると言っていたので特に問題はないはずだ。
単純に収支計算をしてみると、バイトの収入が月9万(1万×9日)で
家賃が水道費込みで月2万5千だから、余剰分は月6万5千になる。
電話は親名義の携帯を使ってるからいいとして、電気・ガス・食費の他に
服代や化粧代を考えると若干厳しい。出勤日増やしてもらおうかな。
テレビとラジカセは店から配送してもらうことにしたが、ちゃぶ台は
すぐに使うということで背中にくくりつけて背負って家まで持ち帰る。
冬だというのに額に汗がにじむ。憧れの東京を歩く姿にしては少々寒い。
家に帰ってちゃぶ台を組み立てる頃には、もう陽も高くなっていた。
こんな時間に何もしていないことなんて、学校に行ってるうちには
決してなかったので、何か妙な気分になる。世間的に見たらただの
フリーターになってしまったことは頭ではわかってるんだけど、
それでもまだその状況に心が付いて来ていないようだった。
窓から入る風が妙に優しい。
このアパートでも、この時間だとさすがに人が少ない。この時間にいる人と
いったら深夜のバイトをやってるらしい矢口と103の大学生くらいなもの
だろうか。しかも矢口は夜のバイトに備えて寝ているようだから、特に
話し相手と言ったら中澤くらいなもんなんだけど、今日はなぜか管理人室に
いないようだ。そこで石川は事前に買っておいた履歴書用紙に自分の
プロフィールを書き込んでいた。モーニング娘。のオーディション一次審査
(書類選考)に必要だからである。
門前払いにならないようにしたいな〜と思いながら丁寧に書く。
69 :
クズ学生 : 2001/02/28(水) 06:44 ID:zqnA93cY
ガチャッ
「失礼します」
都内某所にある某芸能事務所。その最上階にある取り締まり役の部屋に
ビッチリと背広を着込んだ若い男が入る。どうやらその部屋にいる
取り締まり役の秘書にあたる人間らしい。
「おう、調べはついたかね?」
「はい、モーニング娘。追加メンバーオーディションの応募人数は
最終〆切の3日前にして25000人を突破しました。全国4ケ所の
二次オーディション会場も相当キャパ不足が見込まれますゆえ、
書類選考時にかなりの少数に絞る必要があると思われます」
どうやらこの人物はモーニング娘。オーディションに関してかなりの
重要人物であるらしい。彼は自分の椅子に座りながら秘書の話を聞いていた。
「・・・あのな、周防さん、知ってるだろ?」
「は、はい・・・・」
「あの人の知人に吉澤さんという方がいらっしゃるんだけどよ、
その吉澤さんの孫娘にあたるひとみちゃんがな、今回の
モーニング娘。オーディションに応募してるはずなんだよ。
それを探し出しておくようにと、伝えておいてくれないか?」
「・・・・は、はい。わかりました」
「寺田くんも、そう言えばわかってくれるはずだ」
その人物はそう伝えると机の後ろ全面に広がる強化ガラスの窓から
外を眺めながら手許の書類に目を通し始めた。
「・・・・それでは、失礼しました」
「ああ、ちょっと。・・・これはくれぐれも本人の耳には
届かないようにね。あくまで本人の実力で入ったということで」
「はい、・・・わかっております」
70 :
クズ学生 : 2001/02/28(水) 06:46 ID:zqnA93cY
都内某スタジオ。先ほどの秘書がとある人物に会うために
やってきた。彼はスタッフに案内されて会議室に通される。
ガチャッ
「失礼します」
「あ、どうも。お待ちしおりてました」
中には茶髪の不細工な男一人と5〜6人のスタッフがいた。
そしてその前には山と積まれた封筒が置いてある。
「あ、一応今来てる分は全部集めたんですね」
「こんなに来てるんだからほとんど捨ててもいいんですけどね。
何かあるといかんのでとりあえずここに集めときました」
スタッフの一人が秘書に説明する。秘書は席につきカバンから
書類数枚を出して自分の方の説明を始めた。
「記録が残るとトラブルの元になりかねませんので口頭で
お伝えします。みなさんも頭で覚えておいて下さい。
まず、この中に吉澤ひとみさんという子の履歴書がある
はずなんで、それを探し出してください。そしてその子を
新メンバーとして採用してください」
秘書がそう言うとスタッフのうちの何人かが山積みにされた
履歴書をまさぐり始めた。茶髪の不細工はその様子を惚けた顔で
ただ何となく眺めていた。
「他に何人か入れはるんですか?」
「いえ、一人だけです。でも、番組の都合上オーディションは
ちゃんと盛り上げないといけないんで、適当に何人か残して
ください。二次オーディション会場の出身地区分けに合わせて
くじ引きみたいに選べばいいんじゃないっすか」
「はい、わかりました」
71 :
クズ学生 : 2001/02/28(水) 06:48 ID:zqnA93cY
都会の空は黒くならないと言うけれど、その言葉が実感出来る時。
ネオンが目映く光る街の底辺からは月以外の星はほとんど見えない。
石川は前日と同じ道を通り、今度は裏口から店に入っていった。
が、さすがは歓楽街、昼間とは比べ物にならないほど物騒な雰囲気に
包まれていた。
ガチャッ
「失礼します〜」
「あ、はいはい。こんばんわね〜」
平家ママの気のない挨拶。忙しくて手が離せないという感じだ。
石川は邪魔にならないように端に寄ってただ立ち尽くしていた。
「あ、・・・そこでも邪魔になるから、こっち来て」
そういって手を引かれる石川。手を引くのは飯田だが、その飯田自身も
少々忙しそうにしている。どうやら指名がかかっているようだ。
石川は控え室と書かれた畳敷きの部屋に通され、座るように指示される。
「こんばんわ〜」
「あ、はい。初めまして〜」
「石川さん、ここから店の中が見えるでしょ。ここがマジックミラーに
なってるから向こうからは見えないんだ。とりあえずはここから
どんな様子か見といて。あとでまた来るから」
「はい、わかりました。どうも」
そういうと飯田はそそくさと店の中に戻っていった。石川は
マジックミラーの小窓から店内を覗きつつ、控え室にいるスタッフに
軽く会釈をした。
「初めまして、私、石川梨華と言います」
「はい、もうママに聞いてますよ。私はソニン、よろしくね」
72 :
クズ学生 : 2001/02/28(水) 06:50 ID:zqnA93cY
自分より幼げな顔立ちの子がいるということだけで幾分安心出来る
ところはあった。でも、話を聞く限り石川よりは年上らしい。
「キツいお客もいるけど、適当にあしらっとけばいいから」
「あ、は〜い。わかりました〜」
この控え室はかなり出入りが激しくほとんどの人が荷物を持って
来たり出たりしていた。店員の数自体が少ないかららしい。
「この店では何人くらいのホステスさんがいらっしゃるんですか?」
「最近何人か辞めちゃってね、人手が足りなくなってたんだよね。
私はバイトで入ってるんだけど、正採用されてる人って言ったら
石黒さんでしょ〜、飯田さんでしょ、あとは〜稲葉さんとか・・・
10人くらいだね。バイト採用も意外と多いから何とかなってるね」
ガタガタッ
「石川さ〜ん。ちょっとこっち来て」
「あ、はい!」
控え室のドアから平家が顔を出して石川を呼ぶ。寸暇を惜しんでる様子。
「あのね、出勤日のことなんだけどね、基本的に毎週月曜と木曜で。
それで月1で火曜日、最終週で入ってもらいます。おカネのことは
昨日言った通りで。シフトの変更は二日前までに連絡してね」
「はい、わかりました」
「ま〜、最初のうちは緊張すると思うけど、大概上の子がフォローして
くれるはずだから心配しないで。で、・・・あとね〜、うちは店内では
基本的に貴方達のことを源氏名で呼ぶようにしてます。だから貴方にも
勝手に源氏名をつけさせてもらいます」
「あ〜・・・・、はい」
「え〜っとね〜。あんたは〜、お嬢様っぽいから『チャーミー』で」
「?・・・・」
・・・・何だそりゃ?
73 :
クズ学生 : 2001/02/28(水) 06:52 ID:zqnA93cY
控え室に貼ってある出勤予定表にホステスの名前と通り名が
書かれていた。みんな適当につけたような通り名だった。
石川:「え〜っと、石黒さんが真矢で、飯田さんがジョンソンっと」
ソニ:「じきに覚えるでしょ。逆に会わなきゃなかなか覚えないって」
石川:「そういえばソニンさんって源氏名ですよね〜」
ソニ:「いや、本名だよ。私は在日だから。源氏名は『姫子』」
石川:「あ、・・・・そうなんっすか」
ソニ:「いや、別に気にすることねえって。・・・あ、そういえば
あんた出勤は月曜と木曜でしょ。だったら普段会うのは
その月曜と木曜の欄に入ってる人達ね。私も木曜入れてるし」
石川:「あ、本当ですね〜」
あまり流行ってなさそうな店内。店員もホステスさんもサバけた人が
多そうな雰囲気で、馴染むには多少時間がかかりそうだけれど
一度馴染んだら気楽に付き合えそうな人達だろうかという印象だった。
74 :
名無し娘。 : 2001/02/28(水) 22:42 ID:8k8CQ5nE
おつかれさん
75 :
名無し娘。 : 2001/02/28(水) 23:47 ID:l1KgRJ1w
りかっち順調ですね。
続き、気長に待ってます。
76 :
クズ学生 : 2001/03/03(土) 01:06 ID:6NdvBfSU
>>74 まだ終わる訳じゃないんで、待ってて下さいな。
>>75 今はとてもじゃないけど書ける状態じゃないんで
もうしばらく待ってて下さい。ま〜、そんなに
期待されるような内容にはなってないと思いますが。
77 :
ナマコ娘。 : 2001/03/03(土) 01:59 ID:UbBVc5rw
>>76 忙しそうだな。
マターリ頑張ってくれ。
楽屋裏ネタもよろしく頼む。
78 :
クズ学生 : 2001/03/04(日) 23:46 ID:XiaZnRp6
チュン、チュン
昨日はまだ仕事も始まってないのに緊張してたせいかすっかり
疲れ果ててしまいアパートに戻ってきたらすぐに寝てしまった。
で、気付けばもう陽も昇りかけの時間。まだ肌寒い。
昨日やったことと言えばオーディション用の履歴書を書いて
向こうに送ったこととバイト先に行って顔見せをしたくらいだ。
そう考えると、かなりダラダラと事を消化しつつ生活している。
で、昨日何故か平家さんにタクシー代と言って1000円ほど
頂いたので、とりあえずはそれで食事でも摂ろうと考えている。
ガラガラガラッ
「は〜っ、気持ちいい〜」
石川は窓を開けて新鮮な空気を取り込む。そしてやや赤みがかった
陽の光を浴びつつ、大きく背筋を伸ばし白い息を吐き出す。
「お〜ぅい、おっはよ〜っす」
ふいに下から声が聴こえた。石川は下の庭先に人がいたことに
気付いてなかったんでかなりびっくりした表情を見せた。
「おっ!おはよ〜う、圭ちゃん。すっげえ早くねえ?」
「うん、これから朝風呂に入りに行くんだ〜。梨華ちゃんも行く?」
「あ、行く行く〜」
下にいたのは保田。いつもの部屋着、半纏とジャージ姿だ。
軽く体操をしていたようだ。石川は急いで身支度をする。
79 :
ナマコ娘。 : 2001/03/05(月) 00:17 ID:50z9zngE
続き期待sage
80 :
クズ学生 : 2001/03/06(火) 17:23 ID:GtCaQpAg
カコ〜ン、カコ〜ン
朝の6時過ぎ。この時間でも開いてるのがここのいいところだ。
朝風呂目当てに来る人は結構多いけど、だいたいが老人ばかり。
この時間に来てる若い女性といえばこの二人くらいなもんだ。
二人はさっさと着替えて洗い場に入る。あんまり人の入ってない
綺麗な湯舟に浸かるのはやはり気持ちがいいもんだ。
バシャッ、バシャッ
石川:「圭ちゃんはいつもこの時間に風呂入りに来てんの?」
保田:「うん、朝さっぱりしてから学校行ってるんだッ」
石川:「あれっ、圭ちゃんって今学校行ってるんだっけ?」
保田:「うん、言ってなかったっけ?私今専門学校に通ってんだ」
石川:「あ〜、そうなんだ〜」
バシャッ、バシャッ
石川:「・・・えっ、何の専門学校に入ってるの?」
保田:「部屋に来てもらった時には趣味だって言ってたんだけど、
音楽関係の専門学校に行ってるんだよね、今」
石川:「そうか〜。あん時言ってくれればよかったじゃない」
保田:「まあね。で、あんたは歌手とか目指してるんでしょ。もし
よかったらアドバイスとかしていきたいし。そういうのって
教わる方だけじゃなくって教える方も勉強になるしね」
石川:「あ、うんうん。そういうのってすごい助かるんだけど。
どうやって取っ掛かったらいいのかわかんなかったんだよね」
81 :
名無し娘。 : 2001/03/07(水) 01:34 ID:6fEGa./I
おー。圭ちゃん教育係。
82 :
クズ学生 : 2001/03/08(木) 23:37 ID:TugpzaTc
>>81 果たしてこの先どうなるんだろうね〜(ニヤリ
まあ、今回は保田は教育係ということは敢えて
意識してないですね。
ちなみに、中澤が抜けてもこのメンツで書くよ。
83 :
クズ学生 : 2001/03/08(木) 23:39 ID:TugpzaTc
ガラガラガラッ
「ふ〜っ、いい湯だったね」
「うん。朝風呂っていいね、本当」
石川と保田が銭湯の玄関から出る頃には、陽もかなり昇っていた。
身体から若干の湯気を立ち上らせながら二人でアパートに戻る。で、
保田はこれからすぐに学校に行くようだが、石川は特にやることがない。
そこで石川は部屋に戻る前に保田に何か歌手になるためにした方が
いいことはないかについて尋ねてみた。
「うん、私も声楽を専門にやってる訳じゃないから詳しいことは
わかんないんだけど、声量を増やすためには筋トレとかした方が
いいとか言うし、音取りを安定させるためにはちゃんと鍵盤で
音取って発声練習をした方がいいってよく聞くよね」
「あ、そうか。じゃ〜そこらへんについて書いてある本とか
探してみるわ、今日のうちに」
「あ、待って。そういう本、私んとこの本棚にあるかも知らんから
授業終わって帰ったら探しとくわ」
「本当に? ありがと〜ね、圭ちゃん」
保田の好意に礼を言い2階に上がる石川。
部屋に戻って髪の形を直していたら、ドアを叩く音がする。
コンコンッ
「は〜い、どちらさまですか?」
「おはよ〜、梨華ちゃん。私、矢口」
タンッ、タンッ、ガチャッ
「お〜、おはよ〜。どうしたの?」
「もう起きたんでしょ。ちょっと眠れなくてさ〜、私の部屋来ない?」
「うん、・・・・いいけど」
「ありがと〜。ちょっと寂しかったんだ〜」
誘われるまま矢口の部屋に行く石川。コタツに入りテレビを見ながら
何でもないような事を喋り続けて時間が過ぎていく。こんな吹き溜まりの
ような生活をしてる自分に不安を感じつつも、つい楽な方に流れていって
しまう自分を止められないでいた。
84 :
クズ学生 : 2001/03/09(金) 20:00 ID:0JYCUhUk
テレビ収録が終わり楽屋に戻るモーニング娘。の3人。
AD:「みなさんお疲れ様でした」
マネ:「はい、今日もありがとうございました。またよろしく
お願いします。・・・はい、3人とも挨拶して」
3人:「ありがとうございました。お疲れ様でした」
AD:「はい、またよろしくお願いします」
タッタッ、タッタッ
マネ:「じゃ〜とりあえず3時ちょい前くらいに移動に入るから
それまでに衣装替えと化粧直しをしといてね」
3人:「は〜い、わかりました〜」
ガチャッ
加護:「ふ〜、ののピーもごっちんもお疲れ〜」パンパンッ
辻:「おう、お疲れ〜。いい仕事だったんじゃない?」
後藤:「加護、お前また共演者に勝手に声かけてただろ。
ああいうのやると結構煙たがられるぞ」
加護:「そないカタいこと言わんといてや。芸能人の役得やで。
そういうごっちんもジャニさん連中に声かけとるやん」
後藤:「ま〜ね。ハハハッ」
辻:「今日は何か反省点みたいなもんってあったか?」
後藤:「うちらよりカット割りの方に問題があったように
思うんだけどね〜。加護ちゃんはどう思うの?」
加護:「うん、言うほど問題点があったようには思わへんけどな。
ショーアップもだいぶわかってきたように思うしな」
辻:「OK、じゃ〜そういうことにしとこうか」
85 :
ナマコ娘。 : 2001/03/10(土) 14:15 ID:Zr3DkCGM
86 :
クズ学生 : 2001/03/11(日) 07:35 ID:klhi64AU
>>85 いや、そういう訳じゃないんだけどね(藁
今日と明日は身体がしんどそうなんで更新休み。
87 :
クズ学生 : 2001/03/14(水) 00:03 ID:d.eC3BpE
辻:「あ、そういえばさ、今度新しいメンバー入れるんだって」
加護:「え、ほんまなん?テコ入れみたいなもんなんやろか」
後藤:「3月あたりからオーディション始めて5月までに一人
追加メンバーを決めるんだって。別にテコ入れじゃないと
思うけどな〜」
加護:「ま〜、常に新しいことをやってかへんと飽きられるさけ
たまにはそういうこともあってええんちゃうの」
辻:「ま〜ね。でも、いくら新メンバー入れたりやっても
どうせなるようにしかならんだろうからな〜」
後藤:「あ、私ちょっトイレ行ってくるから」
加護:「うん。・・・あ、ごっちん。戻ってきたら3麻やろや。
今日はカード持ってきたはるさけ、ええやろ」
後藤:「オッケ〜!」 ガチャッ
加護:「ののピー、二萬から八萬抜くの手伝うてくれへん」
辻:「あ、うん。わかった〜」 シュッ、シュッ
加護:「あ、そういえばさ、この後仕事終わってからって
都合とかは付かはる?」
辻:「ん?何かあんの?」
加護:「パーティーがあってな、お○こする予定やねんか」
辻:「マジで。いくら芸能人の役得だって言ってもあんまり
無理するんじゃないよ」
加護:「わかっとるがな。せやけど、ヤレる時にヤッとかへんと
後々後悔するような気がすんねんか。せやからええねん。
で、どうなん?」
辻:「明日とかだったら空いてるんだけどな。今晩はちょっと
家で家族とやることがあるんだよ。ごめんな」
加護:「ああ、せやったらええわ。ごっちんでも誘ってみるさけ」
シュッ、シュッ
>>86 フムフムこういう展開なのか。
マターリ更新頼む。sage
>>88 まあ、ハッキリ言って無理して書くと
ロクなものにならんので、まあマタ〜リと
行かせてもらうわ。
あと、スレ違いなところで雑談したのはあかんかったな(汗
俺は所詮ネタ書きなんで、過度な雑談はなしという方向で(藁
>>89 無理せずマターリやってちょ。
楽しみに待ってるんで。
あれはあっしが声かけたのがまずかったな、すまん。m(__;)m
なんかクズ学さんと雑談したくなっちゃったんで。
クズ学応援スレとか立てちゃうか。(藁
91 :
クズ学生 : 2001/03/14(水) 23:52 ID:ww0HY//2
バイトを始めてから1週間ほど経っただろうか。まだ少々緊張するものの
石川もかなりバイト先の雰囲気に慣れてきたようだ。
ガチャッ
「お、お疲れ様で〜す」
「はい、お疲れ〜」
「じゃ〜、この後のお勤めもガンバッてください」
「わかってるよ、じゃ〜ね」
バタンッ
この職場は2交代制になっており、PM8:00からAM1:00までと
AM0:00から5:00までの二つに分かれている。間の1時間は
引き継ぎのための時間だ。この間にショーなどを入れている。
「あ、チャーミー。あんた歌手目指してるんだって」
「え、石黒さん、どうして知ってるんですか?」
「ソニンから聞いたんだけどね。普段歌の練習とかやってんの?」
「はい、友達に練習法を聞いて、発声練習とか体力作りのトレーニング
みたいのはやってますけどね。バイトの入ってない日とかに」
結局保田にボイストレーニングの本を借りてそれに従って
歌の練習を始めた石川。それでも、思った以上の効果は出ていないようだ。
「え、練習とかってどこでしてるの?場所とかあるの?」
「ま〜、近くにあるカラオケボックスに行ってやることが多いですね。
他に大声出せるところなんかないっすからね〜」
「じゃ〜さ、開店前だったらうちのステージあるじゃん。あれ使って
練習していいかどうかみっちゃんに聞いてみるからよ」
「え?・・・いいんですか?」
思いもよらない石黒の気遣いに少々戸惑う石川。かなり恐い人なんじゃ
ないかというイメージを持ってただけに、意外な反応だった。
92 :
クズ学生 : 2001/03/14(水) 23:56 ID:ww0HY//2
>>90 (ワラ
まあ、そういうスレ立てると大概煽られたり
荒らされたりするんで。それはそれで楽しいんだけど
その影響がネタスレに波及してきたら嫌だからな〜(汗
93 :
ナマコ娘。 : 2001/03/15(木) 00:29 ID:tQwKN1xM
>>92 確実に荒らされるに1000ペリカ(藁
せっかくのネタを荒らされるのは確かにイヤだからな。
今まで通りネタの所々でコメントいれとくよ。
って、オモロイとか頑張ってくれとかしか言ってないが。(汗
94 :
クズ学生 : 2001/03/15(木) 17:55 ID:ovkJgzBY
この店では壁際手前に小さな舞台があり、そこで店の女性などが
歌を唄ったり踊ったりする。たまに石黒なども唄ったりしているようだ。
「設備調整の意味も兼ねてだよ。開店前の1時間くらいとか
だったら私だって付き合うことも出来るからさ」
「え、いいんですか?そんな時間を取って頂いて?」
「うん、私なんかどうせ早くからここに入ってくるわけだし、
そういうのって何か面白そうじゃんかよ。だからさ」
「あ〜、ありがとうございます」
そういって石黒に軽く頭を下げる石川。願ってもないことだ。
「あ、それじゃ、お疲れ様でした〜」
「はい、次は木曜だね。遅れないで来なよ」
ガチャッ
石川は思わぬ収穫に心踊らせながらバイト先を後にした。
あんまり心休まらない日々が続いていたからかも知れないが、ふと
物事が好転しそうな予感がするだけで、幸せな気分になれるのだ。
95 :
クズ学生 : 2001/03/16(金) 15:41 ID:1gxTBdww
ちょっと更新頻度を下げます。しんどい(藁
っていうか、少々忙しくなってきたんで。
過去ログ置き場からなくなったら、誰か浮上
させておいてください。
2〜3日に1本くらいかな〜。全然話が
進まんようになるけどね(汗
96 :
名無 : 2001/03/17(土) 04:13 ID:40IA9oi2
気長にやりましょう。
とことん付き合いますよ。
97 :
クズ学生 : 2001/03/19(月) 17:52 ID:ZP9vMp6o
(は〜、何か腹減ったな〜。あのファミレスにでも寄るか)
妙な安心感と高揚感からか、石川は腹が空いてしまったらしく
目の前に見えたファミレスに寄ることにした。
カンラ〜ン、カンラ〜ン
「いらっしゃいませ、こんばんわ。こちらへどうぞ」
レジ付近にいる店員に案内されて窓際の席に。24時間営業のファミレスも
いろいろ大変なんだろうな。石川は深夜のサービス業をし始めてから
そういうことを考えるようになっていた。サービス業として働くことの
シンドさという、今まで意識しなかったことが徐々に見えてきたのだ。
スタッ、スタッ、スタッ
「お客様、御注文は・・・!」
「いや、まだなんですけど・・・・!」
注文を聞きに来たウェイトレスと顔を見合わせた瞬間、お互い
予期せぬことがあったかのように驚いた表情を浮かべた。
「ぐ、ぐっさん?」
「や、やあ・・・梨華ちゃん」
98 :
クズ学生 : 2001/03/19(月) 17:55 ID:ZP9vMp6o
>>96 ありがとさん。今のところ途中で投げる
つもりはないんで、何とかしますよ。
99 :
名無し娘。 : 2001/03/21(水) 16:36 ID:KCflu.HQ
保全sage
100 :
クズ学生 : 2001/03/21(水) 18:27 ID:TqM8F2lE
ファミレスの制服がやけに似合う矢口。
確かにウェイトレスにはピッタリと言った感じか。
「ここで、仕事してたんだ」
「う、うん・・・・、あんまり知られたくなかったんだけどね」
何やらバツが悪いな〜という感じの態度を見せる矢口。
それを察してかさっさと注文を済まそうとする石川。
「じ、じゃ〜、ディナーセットEで、飲み物はホットコーヒーで」
「あ、はい。わかりました」 ピッ、ピッ、ピッ
「じゃ〜、また後でね」
「う、うん」 スタッ、スタッ、スタッ
他にも仕事があったらしく早々に調理場に戻る矢口の
後ろ姿を見て、石川はなんとも形容しにくい心境に陥っていた。
このような都会の真ん中だと却って夜中の方が繁盛してる店も多く、
このファミレスも暇を持て余した若者や仕事帰りのリーマンなどで
結構席も埋まっていた。これは料理が来るのは遅いだろうと思った
石川は、手提げの中から読みかけの文庫本を出して読み始めた。
「・・・・」
「おい、ユウキ。何鼻の下伸ばして見てんだよ?」
「え、いや。別に何でもないっすよ・・・」
二人連れの若い男女。男の子の方がちょっと離れた席に座る
石川を遠目に眺めていたらしく、女の子の方が気にかけたようだ。
101 :
名無し娘。 : 2001/03/22(木) 03:29 ID:pWC3i4KY
クズ学生さん待ってたYo!
見てますんでがんばってくらはい。
102 :
クズ学生 : 2001/03/22(木) 14:52 ID:ON50Cs0g
>>101 ありがちょっす!
更新ペースは遅くなりますが、何とか
書いてくんで、気長に待っててもらえますか。
とはいえ最近ちょっと筆が走ってない。
こういうこともあるんだな〜。
103 :
クズ学生 : 2001/03/23(金) 14:50 ID:YaXRWM2k
104 :
クズ学生 : 2001/03/23(金) 18:20 ID:l9nvjToM
「あ〜、確かにカワイイね〜、あの子」
「やめて下さいよ、市井さん」
「若そうだけど・・・多分水商売だぜ、あいつ」
「あ〜、やっぱりそうっすかね〜」
この二人はカップルと言うよりは先輩後輩といった雰囲気を
漂わせてはいたものの、かなり仲が良さそうにも見える。
二人で石川の姿を眺めて憶測話を喋っていた。
「そういやさ〜、お前いつになったら姉貴に会わせて
くれるんだよ。実物どんなだか見てみてえじゃん」
「ま〜、あいつも最近ちょっと忙しくて仕事以外では
寝る時間くらいしかないっすからね〜。もうちょっと
待ってもらえますか」
そういって男の子はコーヒーを飲み干した。それを見て
女の子の方がテーブルの上のボタンを押して店員を呼ぶ。
ものの10秒もしないうちに、矢口が二人の席に来る。
「・・・はい、いかがいたしましょう」
「ホットコーヒーを2杯追加ね。で、皿は下げていいや」
「はい、かしこまりました」 カチャッ、カチャッ
105 :
名無し娘。 : 2001/03/24(土) 00:15 ID:kAyairZg
>>103 新スレ立ててくれ
詳しいことは分らないが、
スレが過去ログに逝かないと読めないと思う。
106 :
ナマコ娘。 : 2001/03/24(土) 00:37 ID:xvJUhAxI
>>103 昨日帰ってきてなかったんで今日見てビックリした。
マジで新スレ立ててくれ。
せっかくの名スレが無くなったのは口惜しくてならない。
107 :
ナマコ娘。 : 2001/03/24(土) 00:37 ID:xvJUhAxI
sage忘れた。スマソ。
108 :
クズ学生 : 2001/03/24(土) 00:45 ID:WT5E2gdU
109 :
クズ学生 : 2001/03/24(土) 01:13 ID:WT5E2gdU
110 :
ナマコ娘。 : 2001/03/24(土) 01:23 ID:xvJUhAxI
>>109 新スレのわりにはかなり下がってたから探すの大変だったぜ。
こっちも良い感じの流れだからユックリマターリ頑張ってくれ。sage
111 :
クズ学生 : 2001/03/25(日) 17:41 ID:nuGWDo8A
「お待たせいたしました。ディナーセットEと
コーヒーのホットになります」
「あ、はい」 カチャッ
ようやく石川の席に頼んだメニューが届く。矢口が重たそうに
しながら何人分もの料理を運んでいるようだ。
「そういえばぐっさん、何時くらいまで入ってんの?」
「今日は4時まで入ってるんだ。これからが正念場だね」
「じゃ〜、私は先に帰ってるから」
「うん、わかった。じゃ〜ね」 スタッ、スタッ、スタッ
軽く言葉を交わすとまた矢口は忙しそうに調理場に戻っていった。
石川は読みかけの本を手提げの中にしまい、音も立てずに
サラダを口にする。思ってた以上に量があるんで、残すかも知れないな。
112 :
クズ学生 : 2001/03/25(日) 17:45 ID:nuGWDo8A
>>110 うい、ユックリマターリやらせてもらうよ。
っていうか、今はこれ以上のペースでは書けん。
113 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 13:02 ID:jukQmHA2
非番の日。早く起きたつもりでも時計は14時を回っていた。
石川には布団をたたむという習慣がないため、押し入れの前で
敷きづめになった布団から手だけ出してコタツのスイッチを入れる。
そして、コタツが十分暖まった頃合を見計らって布団から這い出る。
女の子であるところを差し引いても、かなりだらしないだろう。
「・・・・あぁ、もうそろそろ出るか」
石川の部屋にはコタツ以外の暖房器具がないのでコタツから
出る時には相当の決意に似たものが必要なようだ。
一つ深呼吸をしてコタツから出る石川。押し入れの中から適当に
Tシャツとウィンドブレイカーを引っ張りだして着替える。
これは別に保田のようにフランクな格好で日々過ごそうという
訳ではない。非番の日は運動することを日課としているのだ。
ギシィ〜、ギシィ〜、カッカッカッカッカッ
階段を降りて外に出る途中、何の気なしに管理人室を覗いたら
中澤と矢口が眠そうな目をこすりながら喋っていた。一応昨日の
こともあるので挨拶しといた方がいいと思い、石川はドアを叩いた。
114 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 22:52 ID:28YeMRxs
>>112でユックリマターリなんて言ってるけど
それじゃ〜全然話が進まないんで、ちょっと
ペースを上げて書いてる。モー娘。が解散する
前には完結させたいから。さすがに娘。が解散
したらこの板もなくなるだろうからね。
115 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 23:02 ID:28YeMRxs
「どうも〜、おはようございます」
「よう、何やかえらいスポーツマン風やんの」
「最近川原でジョギングしたりしてるんですよ」
あんまり外に行く機会もないように思えるのに、何で中澤は
いつも念入りに化粧をしてるだろうか。そう思いながらも
口が裂けても言うまいと笑いをこらえる石川。
「おはよう、梨華っちょ」
「うん、おはよう。昨日はお疲れさま」
「あれ、昨日何かあってんか?」
「うん、バイト先で会ってね」
矢口はちょっと眉を下げつつ中澤の方を向いた。
「・・・あ、石川さん、そこ座りぃや」
「あ、はい。すいません」
中澤に勧められてストーブの近くにあるパイプ椅子に座る石川。
断るのもおかしいので、少々話していくことにした。
116 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 23:05 ID:28YeMRxs
中澤:「そういえば石川さん、バイトの方はどうなん?
みっちゃんとか結構厳しいんちゃうの?」
石川:「平家さんですか?平家さんはすごい仕事がテキパキ
してるんですよ。デキる人っていう感じですね」
中澤:「でもやっぱり大変やんな〜。残業とか入んねやったら
手当てくらい出せって言うといたるで」
石川:「はい、すいません」
中澤:「そういや矢口のバイトって相当深夜に入れてんねやんな〜。
昨日は何時頃に会うたん、君ら?」
矢口:「確か〜、1時半くらいだったかな〜」
石川:「そういえばさ、ぐっさん何かこのバイトのこと
秘密にしてなかった?」
矢口:「いや〜、何か恥ずかしかったんだよ」
石川:「何で?一生懸命やってるのは見てわかったよ。
そんな別に恥ずかしがることじゃないと思うんだけど」
中澤:「あれっ、矢口みんなには言うてへんかってん?言ったら
ええやん。矢口かてちゃんと目指してることがあんねやし」
矢口:「ちょっと〜、あんまり言わないでよ〜、裕ちゃん」
石川:「え、何かそんなに人に言いづらいことなの?」
矢口:「いや、そういう訳じゃないんだけどね。
・・・・私ね、イタリアに留学しようと思ってるんだ」
117 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 23:07 ID:28YeMRxs
石川:「え、そうなん?すごいじゃんの」
矢口:「いや、まだ全然カネが貯まってないから予定が立ってない
んだけどね、ある程度カネが貯まったら行く予定なんだ」
石川:「え、で、向こうに行ったら何を勉強するつもりなの?」
矢口:「料理の勉強しようと思ってるんだ。イタリア料理のシェフを
目指してね。だから多少実入りが少なくってもああいう
ところでバイトしてるんだよ」
中澤:「うちに来たのも家賃が安かったからやしな。苦学生みたいな
もんやね、ほんまに」
矢口:「まあね。仕送りとか一切ないから、普通のバイトで家賃払って
留学資金貯めてって言ったらここくらいしか見つかんなくってな」
中澤:「うちは何と言っても家賃の安さと雰囲気の良さが自慢やから」
矢口:「あと、美人の管理人もね」
中澤:「ハッハッハッ、照れるやんの〜」
矢口:「本気にするなよ〜。冗談だってば」
中澤:「何やねんな。ちょっとショックやわ〜、ほんま」
石川:「ふ〜ん、でもすごいじゃん。びっくりしたよ」
矢口:「ま〜、そうだろうね。まだ裕ちゃんにしか言ってないしね。
私の場合はまだ調理師免許が取れてないから、とりあえず
日本で免許を取った後に向こうに行こうかな〜ってね」
石川:「そうか〜、頑張ってね、本当に」
矢口:「うん、お互い頑張ろうぜ。な」
そう言って矢口と手を握りしめあう石川。小さくて女の子らしい手だけど
所々にマメやアカギレがある、働いてる手。そして、妙に暖かい。
石川は、矢口と見つめあいながら何か後ろめたい気分になっていた。
確かに芸能界を目指すと言って家を飛び出したものの、こんなに明確な
ヴィジョンを持っていた訳ではなかった。世間的に見たら、ただ子供が
わがままを言って駄々をこねてるのと同じようなことなのかも知れない。
石川は二人に適当に会釈をして管理人室から出る。そして、いつも行く
近くの川原までゆっくりと歩いていった。
118 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 23:10 ID:28YeMRxs
石川はあまり食事を摂らなくても済むように出来ているらしい。
一日にサラダ1皿、水をコップ1〜2杯で生活しても別に何の
苦もないというタイプだった。
ただ、その生活が出来る反面、体力が極端にないというのも
事実ではある。その体力不足を改善するために中学の時に始めたのが
テニスだった。確かにテニスの練習は体力増強には効果テキメンだった。
だが、ちょっとブランクが空くだけでまた貧弱な身体に戻ってしまう。
今後歌手として活動するためには、いや、最低限オーディションを
受けて通るためにはちゃんと体力作りをしておくべきと思った石川は、
保田の意見を参考にしながらトレーニングメニューをこなしていた。
アパートに近い幅広の河川敷。石川自体はもともと神奈川の人間だから
地名はよく知らなかったんだが、看板には「荒川」と書いてあった。
石川は河川敷に着くや否や鋪装された歩行者道を走り始めた。
119 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 23:12 ID:28YeMRxs
冬の晴れ上がった空というものは、何でこんなに清々しいんだろうか。
そう思えるくらいにカラッと晴れ上がった空。そして川岸に吹くのは、
冷たく乾いた風。川面が激しく揺れ、石川の顔をまばゆく照らす。
石川の走るペースはそんなに早い訳じゃなく、まさにジョギングと
言った感じだったが、20分も走れば額からは大粒の汗が流れてきていた。
この歩行者道では、石川以外にも走ってる人がチラホラ見かけられる。
でも、そんなに若い人は見かけない。大概が中高年のおじさんおばさん
といったような連中ばかりだ。この人達には、私はどういう風に写って
いるんだろうか。そう思いながらも、汗を拭きながら走る石川。
120 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 23:18 ID:28YeMRxs
石川が走り終える頃には空は暮れかかっていた。紅く染まり出す空に
妙な寂しさを感じながらも、夕日を顧みることなく家路を急ぐ。
ギィ〜ッ、ガタッ、ガタッ
「お〜ぅ、おかえり〜」
「あ、圭ちゃん、ただいま〜」
アパートの玄関を入ると、ちょうど保田が部屋から出ようとしてる
ところだったらしく、はち合わせという形になった。
「うん、何か健康的でいいじゃん」
「ま〜ね。言われた通りにやってますよ」
「あ、そうだ。私これから風呂入りに行くんだけど、一緒に行く?」
「うん、行く行く。さっさと汗流したいからね、やっぱり」
そういうと石川は急いで階段を駆け上がって2階の自分の部屋に行く。
ちょうど洗濯物も溜まっていたので銭湯帰りにコインランドリーに
寄ろうと思い立つ。汗まみれの服や下着をいつまでも放置しておく
訳にはいかないだろう。
そして部屋の鍵を出し、ノブに手をかけたところで、郵便受けに
何か封書が入っていることに気が付く。結構不意をつかれたような
感じがした石川は、部屋に入ってから郵便受けの中身を取り出し、
差出人欄を見る。すると、スタンプで捺された字でこう書いてあった。
『テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」内
モーニング娘。追加メンバー選考会事務局』
先週のうちに送ったオーディションの選考結果を通知する封書だった。
一瞬にして石川を緊張が包む。封を切ろうとする手が震える。
121 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 23:21 ID:28YeMRxs
封筒の封を開けると中には二枚の書類が入っていた。その一方を覗く。
『第一次審査・合格』
「?・・・・!」
一瞬ピンと来なかったものの、すぐに我を取り戻し、喜びが溢れてくる。
「いぃ〜、やった〜!」
おそらくアパート中に響き渡るような声だったんじゃないだろうか。
石川の歓声に驚いてか、保田が下から上がってきた。
「どうしたの、梨華ちゃん?そんな大きな声出して」
「やったよ〜、圭ちゃん。この前出したオーディションの一次審査、
受かってたんだよ〜。やあった〜!うわ〜っ」
「本当に?すごいじゃ〜ん!」
二人で手を握りしめながら喜びあう。汗はまだひいていなかった。
興奮覚めやらぬままに洗濯物を持ち銭湯に向かう二人。
石川に到っては、部屋の明かりを消し忘れてくるほどだった。
122 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 23:27 ID:28YeMRxs
「帰ったら祝杯だね」
「うん、じゃんっじゃんやっちゃいましょ!」
夕暮れ時は銭湯が一番混む時間帯でもある。とは言ってもここは
どんなに混んでも一遍に10人を超えることはそうないっていう
くらいに寂れた銭湯だから、このテンションで喋る二人は確実に
浮いていた。でも、そんなことは今の二人にとっては関係ない。
ガラガラガラガラッ
「ふ〜、気持ちよかったね」
「うん、満足満足〜」
銭湯から出て隣のコインランドリーに向かう二人。
そこで、石川はふと思い出す。
「あ!、圭ちゃんゴメン。ちょっと私の洗濯物見ててくれない?」
「うん、いいけど、突然どうしたの?」
「うちの電気消し忘れてたんだよ。今思い出した」
「何やってんのよ〜、ハハハッ。うん、消してきなよ」
「サンキュ〜。すぐ戻ってくるから」
そういうと石川は一人でアパートの方へと戻っていった。
保田はランドリー内にあった雑誌を手にとり椅子に座る。
「あ〜、やっぱり消してなかったよ〜」
遠目から見ても石川の部屋の明かりが付いていることは
容易に確認出来た。石川は小走りになりながらアパートに向かう。
そして、アパートの玄関に入ろうとした時、後ろから声が聞こえた。
それは、昔から聞き慣れた声だった。
「梨華!」
「あ、明日香・・・・」
123 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 23:31 ID:28YeMRxs
振り向いて福田の姿を見た瞬間、石川の思考は少々鈍った。
確かに親に連絡先を知らせてあるんだから、福田がここに来ても
おかしくないことはわかっていた。だが、ここ数日で自分の普段の
生活が急変してしまったため、それまでに自分が過ごしてきた現実が、
妙な非現実感を帯びるようになっていたようだ。
が、そんな石川の動転とは対照的に、福田はいたって冷静だ。
「久し振りじゃん。元気でやってる?」
「う、うん・・・」
石川の受け答えはとても歯切れが悪かった。何か後ろめたい
気分がするのだろうか。なぜか節目がちだった。
「あ、明日香。来る前に連絡入れてくれたって良かったじゃない」
「え〜。だってお前、携帯の番号こっちに来る前に変えてるだろ。
どうやって連絡しろっていうんだよ」
「あ、そうか、・・・・ごめん」
「そうだそうだ。今度の携帯番号とメアド教えてよ。別に
そんぐらい構わないでしょ?」
「うん、そうだね。明日香のやつは番号変わってないよね。
今かけるから」
久し振りに会ったというほど間が空いてる訳じゃないけど、
懐かしさに似たものを感じるのは、昔からずっと一緒にいた
からだろう。それでも、石川と福田の感じ方は、微妙に違っていた。
福田が番号登録のために携帯を見つめてる最中、石川は福田に
冷ややかな視線を送るようにして、こう呟いた。
「明日香・・・・、何しに来たの?」
「えっ?」
「うちのお袋に言われて来たんでしょ。私は戻んないからね」
「・・・・・・」
二人の間に沈黙が走る。それでも、福田はいたって平静だった。
124 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 23:39 ID:28YeMRxs
「せっかくオーディションも通ったんだから、絶対戻んないかんね!」
「あっ、オーディション通ったんだ。おめでとう」
「・・・・・」
石川のテンションとは裏腹に福田はかなり軽い感じで受け答える。
身構えてる自分が滑稽に思えるくらいに、肩に力が入っていたようだ。
ふと息をつくと肩が降りる。その様子を見て微笑む福田。つられて
微笑む石川。何とも変な気分だ。
「いや、別に連れて帰りに来た訳じゃないしね。ただ、
梨華が〜、元気でやってるのかな〜って思ってね」
「あ、・・・そうなの?」
すっかりリラックスした感じの石川。ふと考えると、今までなぜ
変なわだかまりのようなものを感じていたんだろうと思う。そうだよ。
こんなことぐらいで簡単に壊れるような仲じゃなかったんだよ。
「・・・・じゃあな、頑張れよ」
「うん、・・・・みんなにも、よろしく言っといてね」
「ああ・・・・」
二人向き合いながら、手を振り別れる。気付けば空も随分暗くなっていた。
さっきまで雲に隠れていた半月が、そっと顔を出す。
「梨華!」
「ん?」
玄関に戻ろうとする石川に向かって、呼びかける福田。
軽く振り向く石川の前には、目をパッチリと見開いた福田がいた。
「私だって、負けないんだからね。歌手になる夢は、今はおあずけだけど、
私は私なりのやり方で、夢を掴むからね。泣きっ面して帰ってくんなよ」
「・・・ハハッ、わかってるって。私だって頑張るんだからねっ」
半分叫ぶように答えた石川。気分は、とても晴れやかだった。
125 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 23:42 ID:28YeMRxs
明かりが着いたままだった部屋に戻る。適度に散らかった部屋だけど、
卓袱台の上だけはまっさらな状態にしてある。石川はまるで物が整理
出来ないタイプの人間なので、本当に重要な書類などだけをその机の
上に置いているのだ。今は昼間に届いたオーディション結果の書かれた
書類が置いてある。
ふと卓袱台の方に目をやると、先ほど見ていなかった書類があった
ことに気が付いた。何が書いてあるんだろう。石川は足許にあるゴミを
適当に放り投げ、卓袱台に手を伸ばす。手に取り広げた書類の上には、
石川の頭の影が覆い被さっていた。
『オーディション、第二次審査について』
一番上の行にそう書かれたこの書類、第二次審査についての詳細が
書かれていた。親切に会場の地図まで印刷されていた。
「日時は、2/14か・・・。会場はY体育館で、ソラで歌える
曲を2曲用意してオケをCDかMDで持参すること・・・か」
確かに今まで歌もダンスも見せてない書類選考の段階だったから、
二次審査では歌なりダンスなりが試されるというのはわかっていたんだが、
いざ示されると準備期間がかなり短いことに気付く。それも石川自身の
準備不足によるところが大きいのだが。
「あと10日くらいか・・・。どうしようかな〜。石黒さんに
相談してみよう。あと、圭ちゃん・・・・あっ!」
ガウィ〜ン、ガウィ〜ン
「あれ〜、梨華ちゃん遅いな〜。どうしたんだろ?」
携帯を忘れた保田が、ランドリーに一人で取り残されたままだった。
風が強くなる中、月が再び雲に隠れ、空はすっかり暗くなっていた。
126 :
クズ学生 : 2001/03/26(月) 23:56 ID:28YeMRxs
うきゃ〜、もうしんどかった。今日はこれで打止め。
明日書けるかどうかはわからんよ。
127 :
ナマコ娘。 : 2001/03/28(水) 01:42 ID:hy.EGbL.
>>112 解散て具体的に話でてないだろ?
それともそんなにかかりそうなのか?
>>126 お疲れさん。今日は結構長めに書けましたな。
テンポよく読めるのが結構ゐゐな。
続き待ってるよ。sage
128 :
クズ学生 : 2001/03/28(水) 06:03 ID:y62XbJQg
>>127 いや、長くなりそうなんだ(ワラ
今の時点で用意してるイベントの1/5も消化出来てない。
俺もいくらなんでも単なる暇人じゃないんで、ペースを
上げてかないと1年近くかかっちまうかも知れんのでな。
まあ、実際どんぐらいになるんかわからんけど。
少しずつメンバー各々の方向性みたいのが
見えてきた頃なんじゃねえかな〜。
でもな〜、この先から全然筆が進まないんですよ(ワラ
129 :
クズ学生 : 2001/03/29(木) 15:37 ID:pxxUvLJc
石川は、あまり「オトナの女性」というものに触れたことがなかった。
いや、このくらいの歳の女の子だったら大概そうだろうと思う。
ここでいう「オトナの女性」とは、単に年齢を重ねているだけの女性を
指しているのではなく、自分の生き方を明確に見定めようとしている
女性のことを指して言っている。語弊はあるけれど、働かずして主婦に
落ち着いてる人のことは指していない。
自分の周りにいるのは母親かそれと同じくらいの主婦層。あとは自分と
同じくらいの歳の娘達くらいだった。そんな石川が今、「オトナの女性」に
囲まれて働いている。これも単に憧れや美化が入ってきらびやかに見えて
いるだけなのかも知れない。それでも、石川にとってはバイト先の人達の
持つ雰囲気は、キツい薬を飲んだ時に似た酩酊を感じさせるものだった。
そんな中で、安っぽいマッチの焦げた匂いが、妙に鼻につく。
130 :
クズ学生 : 2001/03/30(金) 04:10 ID:/IV.fI3A
店が開く前のステージは、まだ照明が入ってないから薄暗い。
ステージを囲むソファには早番の石黒が煙草を燻らせながら座っていた。
そして石黒の前にはソファに手を掛け立つ石川がいる。昨日来た通知に
ついて相談したいことがあるということで、石黒に来てもらったのだ。
「・・・っていう訳なんですよ。そこで、お願いしたいんですけど」
「うん、いいよ。多分ここ1週間くらいは時間とれるから」
「あ、本当ですか?ありがとうございます〜」
石黒は煙草をろくに吸わないまま揉み消しては、新しい煙草を取り出し
店の紙マッチで火を付けていた。
「じゃ〜さ、何かステージで唄ってみてよ。10日くらいで
2曲モノにしないといけないんでしょ。相当しんどいよ」
「あ、はい。曲は一応用意してきました」
そう言って石川は、カバンの中から一枚のCDを取り出した。
ジャケットには「浜田省吾ベスト」と書かれていた。
131 :
名無し娘。 : 2001/03/31(土) 02:27 ID:x.4kMK6E
132 :
クズ学生 : 2001/03/31(土) 04:25 ID:B2Zq3.5o
>>131 いや、最近借りてなんとなく気に入ったから(ワラ
この文の場合は敢えてモノホンの娘。達の性格に
合わせないで書いてるところもあるし、本当に俺が
よく知らないから本人の好みとかと違うことを
してる場面もあると思うんだ。でも、そこらへんは
気にしないでくれ(ほんまのとこ、よう知らんし)。
133 :
名無し娘 : 2001/04/01(日) 06:12 ID:WwPkP8Ug
「オトナの女性」の定義のとこは名言。
134 :
クズ学生 : 2001/04/02(月) 00:02 ID:u8SpC0Ew
「定さ〜ん、ステージの照明着けてくんない。音テストついでに
こいつに唄わせるからさ」
石黒は立ち上がってスタッフの定さんにステージ調整を頼んだ。
どうやら石川の練習はステージ上の照明やアンプの音響チェックを
兼ねているらしい。というか、そうでもなきゃただで子供の道楽に
付き合ってくれるほどみんな暇じゃないというのは、わかりきっていた
ことではあったが。
「ほら、チャーミー。そこのマイクスタンド取って、マイクの
電源入れてみて。ちゃんと音が入るかどうか確かめるから」
「あ、はい。わかりました」
石川は石黒の言葉に少々焦り気味になりながらステージ上に立つ。
上正面から照りつけるスポットライトの明かりに、目が開けられない。
「おい、何やってんだよ?それじゃステージで唄えないだろ。
歌手になってコンサートとかやりたいんだろ?」
「はい、す、すいません」
石黒のキツ目の声が跳ぶ。それに対し石川はただアタフタするばかりだった。
石川は目を見開いて客席を見渡す。席は30〜40くらいしかなく、こちらに
背を向けるような席もある状況。そして今いるのは石黒一人だけ。しかし、
こんな状況であるにも関わらず、スポットライトに照らされた石川の顔には
極度の緊張の色が表れていた。何千人もの人を前にしたら、どうなるんだろう?
「チャーミー、どの曲唄うの?」
「あ、はい。『もうひとつの土曜日』っていう曲です」
「そう。・・・定さ〜ん、これボイスレスのエフェクトでかけて」
そう言って石黒は裸のCDを定さんに手渡した。大音量でオケが
響き渡る中、石川はそのオケに合わせてただ無我夢中で唄った。
135 :
クズ学生 : 2001/04/02(月) 00:07 ID:u8SpC0Ew
>>133 まあ、あれはかなり狙って書いてますからね。
最近まるっきり筆が進まない状態。展開はだいたい
決めてあるんですけどね。
136 :
名無し娘。 : 2001/04/02(月) 01:30 ID:jYLRMhRE
>>クズ学生
いつも読んでるYo!
ぼちぼちでも頑張って書いてくれ。
期待してるYo!
137 :
名無し娘。 : 2001/04/02(月) 05:20 ID:23zVpjJo
age
138 :
クズ学生 : 2001/04/03(火) 04:09 ID:O2cedG3g
>>136 うん、何とか書くよ。そんなに期待されても困るが。
は〜っ、これからもっと時間取れんように
なるのにな〜。
139 :
クズ学生 : 2001/04/04(水) 07:00 ID:EdaJaabA
「・・・・ふぅ〜っ」
唄い終わり、ふっと一息付く石川。たった一曲、5分程度の曲を唄った
だけなのに、額からはじんわりと汗がにじんで来ていた。
身体の火照りは、スポットライトの熱さだけのせいじゃない。
「・・・・・・」
「・・・・ど、どうでしょうか?」
音が鳴り止み、静かになったステージ。
定さんはそれまでの状況を見て、音響や照明の調節をしていた。
そして石黒はソファーに座ったまま顔を上げ、おもむろに話し出した。
「・・・・言っていいかな。あのね、ハッキリ言って全然ダメ。
ステージに立って舞い上がってたっていうのもあるんだろうけど、
声も出てないし音もよく外れてるし。練習不足だよ」
「・・・は、はい」
「あんたほとんど人前で唄ったことないでしょ。オーディションだったら
審査員を前にして唄うんだから、歌い慣れ以上に舞台慣れしとかないと
確実に落ちるからね。ここではステージ慣れを中心に何とかしよう」
「・・・・はい」
まるで自信がなかったので、多少のことは言われるだろうと
覚悟していたものの、これだけはっきり言われるとかなりヘコむ。
「あのね、歌をソラで唄えるようになるっていうのは、その歌が
どのような意図のもとに作られたのか、作詞家や作曲家が一体何を
訴えようとしているのかについて、自分なりに解釈した結果として
自然とついてくることなんだよね。逆にそういうのが出来ないと
ちゃんと唄えてることにはならないからね」
「・・・・・・」
その後も静かに淡々と語る石黒に対して、もう相槌を打つことも出来なかった。
石川は、下を向いたままになってしまった。
140 :
名無し娘。 : 2001/04/05(木) 13:36 ID:lPIM4..c
保全sage
141 :
クズ学生 : 2001/04/06(金) 06:19 ID:Zl7YAmkg
練習を終え石黒に一礼した後、控え室に戻る石川。
荷物を脇に置いて畳の上に座ると、そのまま俯いて動かなくなっていた。
いや、動けないという方が正確だろうか。
石黒の言うことはどれも石川にとって納得出来ることだったし、
自分の練習不足や向上意識の足りなさを自覚させるには十分だった。
以前一度感じたような焦燥感とは明らかに違う、無力感に似た感じの
ものが石川を襲う。それも漠然としたものじゃなく、はっきりしたもの。
自信を持つほどの実力もないのに、ただいきがってただけなんだな。
所詮は子供がわがままを言って、叶いもしない夢を追ってたような
もんだったんだな。そんな思いが溢れてきて、膝の上に涙が落ちる。
「おっはよ〜、・・・・ん?どうしたの?」
控え室のドアあたりから聞き慣れた声。どうやら飯田が出勤してきたらしい。
肩を震わす石川の姿を不自然に感じたらしく、石川に声をかけてきた。
「・・・・・泣いてるの?」
「・・・い、いえ。違います。何でもないです」
飯田は石川の肩に手を置き、しゃがんで石川の顔を見上げる。
石川はポケットから出したハンカチで目頭を押さえ、静かに受け答えた。
「・・・・石黒が何かしたの?」
「いや、そういう訳じゃ・・・・・」
「あいつが何かやったんでしょ。ちょっと注意してくるから!」
「ま、待って下さい! 本当に・・・・そうじゃ、ないんです」
立ち上がり控え室を出ようとした飯田を呼び止める石川。
振り返った飯田に対して、どういういきさつだったのかを話す。
142 :
クズ学生 : 2001/04/08(日) 01:09 ID:bQ13KP5Q
「・・・・そういうことだったの」
「・・・はい」
別に石黒に非がある訳じゃなく、自分自身が情けなくなったから
凹んでいたということを説明した石川。飯田は、しばらく黙り込む。
「まあね、あの子はちょっと言い方がキツい所があるんだよね。
すごく冷淡な物言いになる時があってね。でも〜、あんまり
気にすんなってば。ポジティブでいこうや、ねっ」
「あ、はい。ありがとうございます」
さばけた雰囲気を出そうとしているものの、必死に石川を慰めようと
している様子が見受けられる飯田。決して器用じゃないけど、本当に
心配してくれてるのが伝わってくる。そんな飯田の優しさに、また
涙が溢れてくる。が、顔は笑顔に戻っていた。
「ただね、そういうことだったら石黒の言うことはちゃんと聞いて
おいた方がいいよ。あの子はもともと音楽やってるし、いつもうちの
ステージとかに立ってるから、パフォーマンスに関してもプロ並みの
もの持ってるからね」
「あ、はい。わかりました」
143 :
名無し娘。 : 2001/04/08(日) 18:41 ID:g4bcow.k
いつも大変でしょうが頑張って下さい。
最近自分も小説を書き始めたので苦労が身にしみてわかります…
144 :
名無し娘。 : 2001/04/08(日) 19:21 ID:8n1gRayg
( ^▽^)< ホイッ!
145 :
クズ学生 : 2001/04/09(月) 03:36 ID:gRUnQeWY
夜、アパートに戻り荷物を置く石川。飯をどうしようかと
考えているうちに隣の安倍が夕飯に誘ってくれた。
安倍の部屋に入ると既に保田が座っていた。そしてコタツの上には鍋。
こんな頻度で鍋やる女がいるかよと思いながらも、一緒に席に着く。
グツグツ、グツグツ
安倍:「でもさ、梨華ちゃん。次のオーディションまで結構大変なんでしょ」
石川:「うん。やっぱり練習不足だったっていうのがよ〜くわかってね。
今日はバイト先の先輩に見てもらったんだけど、逐一言ってる事が
合ってるからさ、本当にへこんじゃってさ〜」
保田:「どうなんだろ。私のアドバイスってあんまり役にたってない?」
石川:「いや、そんなことないって。本当、協力してくれるだけで
ありがたいんだし」
保田:「そう。ま〜、今度うちのバンドのボーカルにも色々聞いてみるから」
石川:「え、圭ちゃんってバンドやってるの?」
安倍:「あれっ、圭ちゃん言ってなかったの?学校の人達で集まって
やってるんだよね。結構いいバンドだよ」 バクッ、バクッ
石川:「は〜、そうなんだ。ライブとかあるんだったら言ってよ。
今度見に行くからさ」
保田:「うん、ありがとね」 モグモグッ
146 :
クズ学生 : 2001/04/09(月) 03:43 ID:gRUnQeWY
>>143 どこで書いてはるんですか?羊ですか、それとも
全く別の場所ですか?よかったら紹介して下さい。
あと、俺の場合は書くのが遅いから苦労してるだけですよ。
>>144 あ、見てたんだ、チャーミー(ワラ
147 :
クズ学生 : 2001/04/10(火) 23:53 ID:KoviMvnk
今ちょっと書けないんで保全sage
148 :
名無し娘。 : 2001/04/12(木) 01:25 ID:UkDxDH92
保田全
149 :
クズ学生 : 2001/04/12(木) 04:32 ID:vRtc.8ow
2月14日、都内Y体育館には既に長蛇の列が出来上がっていた。
「浅草橋ヤング洋品店」から生まれた名物ユニット、モーニング娘。の
オーディションということで、多数の応募者と見られる女性の他にも、
あぶれた中からスカウトしようという二流芸能事務所のスカウトマンや
青田買い系のアイドルヲタクなども多数見られた。
石川は開場時間のギリギリに到着。人の多さに多少圧倒されながらも
書類に書かれた整理番号に合わせて指定のブースの前で待つことになった。
(は〜っ、緊張しちゃダメなんだ。リラックス、リラックス・・・)
そう自分に言い聞かせながらガチガチに緊張しながら必死に歌詞カードを
眺める石川。だが、これは石川に限ったことではなく、記念受験のような
冷やかしは兎も角としてちゃんと合格しようとしてる人間は皆緊張の色を
隠せないでいる。
「ねえねえ、すっげ〜緊張してるじゃん。大丈夫〜?」
「・・・・・・・」
隣に座った女の子が話し掛けてくる。かなりナーバスになってた
石川は、意図せずちょっとその子を睨んでしまったようだ。
「あ、何よ〜。恐い顔しないでよ。ごめんねっ」
「えっ、いや、そういう訳じゃなくって・・・・」
ふと顔を見上げると、思わぬ対応に困惑したような表情を浮かべた
一人の女の子が、手のひらを突き出していた。その子は背が高く
セミロングの似合うカワイイ子だった。頬はふっくらとしてるものの
気になる程肉付きしてる訳ではなかった。
150 :
名無し娘。 : 2001/04/12(木) 21:44 ID:w8ZQzmTI
頬がふっくらとしたあの娘がついに登場!?
151 :
クズ学生 : 2001/04/13(金) 17:17 ID:Ei62zHoI
>>150 そうなんだけどね(ニヤリ
出て来たはいいんだけど、どういうキャラにしようかなって
結構悩んでます。あと、またしばらく更新出来ないやも知らんっす。
152 :
150 : 2001/04/13(金) 22:26 ID:8bp3f5hg
>>151 遅くなっても全然かまいませんよ。じっくりアイディア
を練ってください。あの娘は好きですし。
153 :
クズ学生 : 2001/04/15(日) 23:54 ID:grTzjLOA
ガチャッ!
「はい、それじゃ〜整理番号160番から169番のみなさん、
整理番号票と荷物を持ってブースにお入り下さい」
係員がブースの扉を開けちょっと顔を出したまま、
待ってる女の子達を手招きするように呼ぶ。番号168である
石川も他の人と一緒にブースの中に入っていった。
ブースの壁際にはちょうど10人くらい座れるほどの長椅子があり
受験者はそこに番号順に座らされる。ブースは仮設ゆえにか天井がなく
他のブースの歌声などが丸聞こえという状況だ。しかも同じ立場の
受験生が後ろから見てるという、ある意味劣悪な環境とも言えよう。
でも、こんな状況でもちゃんと自己アピール出来るような人間じゃないと
オーディションを通らないことはわかっていた。そういう意識に関しては
石川は他の受験者より多少勝っていたかも知れない。
前には3人の審査員が座っていて隣にオペレータが一人立っていた。
いくら石黒を前にして練習して来たから人前は慣れているとはいえ、
冷淡な顔をしたオトナを前に唄うとなるとだいぶ勝手が違う。
10日前の状態だったら、きっと石川は途中で逃げ出していただろう。
そう思いながら、石川は他の受験者の唄う様子を凝視していた。
中には緊張で声が上ずる人や、歌詞がトンでしまって取り乱す人もいた。
154 :
クズ学生 : 2001/04/16(月) 21:12 ID:Ylx1yajs
「はい、整理番号と名前を言って下さい」
「はい。165番、吉澤ひとみです。よろしくお願いします」
「じゃ〜、持参のCDかMDを渡して下さい」
今までにないような元気のいい返事が聞こえて来た。
さっき声をかけてきた子だ。何とは言えぬ親近感のようなものを
持ちながらか、石川はその子の様子を特に集中して見ていた。
(この子が例の子か?)
(はい、そうです。吉澤ひとみさんです)
審査員が小声で相談している。その声は小さく、石川は勿論
吉澤にも聞こえない。が、吉澤はそんなことを気にすることもなく
堂々とした態度で歌始まりを待っていた。
オケの演奏が始まる。吉澤が選曲したのは、浜崎あゆみの「YOU」と
モーニング娘。の「Bridge People」の2曲。どちらもちゃんと
歌い上げなければサマにならないような曲だ。ノリでは唄えない。
吉澤の歌自体は決して上手いものとは言えない。でも声に非常に
特徴があるし、何より見ている者に訴えかけるものがあるように
感じられる。これ自体かなり漠然とした評価基準だから、確実な
こととしては言えないけど、こういうのを『スター性がある』と
言うんじゃないだろうかと石川は感じていた。
155 :
名無し娘。 : 2001/04/17(火) 12:23 ID:JYdsPnqY
更新遅えよ。さっさと書け。
156 :
名無し娘。 : 2001/04/17(火) 20:05 ID:FQMAyBiA
>>155 そんなに急かしちゃ悪いよ。
クズ学生さんだって忙しいんだし。
157 :
クズ学生 : 2001/04/17(火) 20:20 ID:BtLlSUp6
(ああ、この子なら通るかも知れないな)
石川は直感的にそう感じた。言葉で説明出来る理由が特にある
訳じゃない。だけど、歌手などの客を目の前にする商売においては
そんな直感的に感じるものこそ重要なパラメータたりうるんじゃ
ないかと思えてくる。
他の受験者が吉澤のパフォーマンスを見て圧倒され畏縮して
しまったのに対し、石川一人だけ気を噴いていた。何かが吹っ切れた
ようで、今まで感じていた重苦しい緊張感は一気になくなった。
最低限、あの子に勝たなきゃここを通るのは無理だという感覚が
石川の闘争心に火を着けたようだ。
・・・・・・
「はい、整理番号と名前を言って下さい」
「はい。168番、石川梨華です。よろしくお願いします」
「じゃ〜、持参のCDかMDを渡して下さい」
適度な高揚感が石川を包みこむ中、オケの演奏が始まる。
石川が選曲したのは前述の「もうひとつの土曜日」とシャ乱Qの
「上京物語」の2曲。浜田省吾のはただ何となく気に入った曲と
いうだけのものなんだけど、シャ乱Qの曲に関しては、この
オーディションがモーニング娘。のオーディションであるという
ことを意識した選曲だった。モーニング娘。のプロデューサーが
お水系ビジュアルバンド、シャ乱Qのボーカルをしているつんくで
あるというところから選んだ、かなり主催者に媚びた選曲である。
158 :
クズ学生 : 2001/04/17(火) 20:23 ID:BtLlSUp6
>>155 頼むから上げんといてくれ。
>>156 確かに更新頻度が遅いのは気にしてるんだけど
今はこれ以上のスピードじゃ書けないんですよ。
まあ、気長に待ってて下さいな。
159 :
156 : 2001/04/17(火) 20:58 ID:FQMAyBiA
>>158 もちろん待ってますよ。頑張って下さいね。
160 :
名無し娘。 : 2001/04/18(水) 00:56 ID:aR/ObV6.
楽屋裏のクズ学生が書いてると聞いて見にきたよ。
なんかすげーまじめな小説じゃないの(w
いろんな引出し持ってるね〜
こっちもお気に入りに入れとくよ。
更新がんばってね。
161 :
クズ学生 : 2001/04/18(水) 16:51 ID:04fR2bRs
こんな時間に繋いでる時点で暇人やんけとか
言われそうやけど、気にせんといてな。
>>159 は〜い。こういうのって焦って書けるもんちゃうんで
気長にやらせてもらいますわ。というのも、これだけの
長編になるのって今まで書いたことがないんで、全体と
しての組み立てを把握した上で続きを書くっていうだけで
結構時間を取られてしまうんですわ。それで更新頻度が
下がってるっちゅうのもあるんやけどね。
あと、俺には敬称付ける必要無し。敬語も必要無し。
>>160 ありがとさん。こっちの方は楽屋裏と違って宣伝せずに
sageで続けてるからあんまり知らないと思うんだ。けど
楽屋裏とは違うキャラ付けをしつつそれぞれの個性を
出そうかな〜って思ってるんでね。何とかしますわ。
ただ、悩みの種があんねやけど、このままだと加護とか
辻がほとんど活躍しないんだよね〜。その分楽屋裏の方で
十分活躍させようと思ってんねやけどな(ワラ
162 :
クズ学生 : 2001/04/18(水) 23:55 ID:L9.BL.WE
「・・・はい、お疲れ様でした」
「はい、ありがとうございました」 ペコッ
「じゃ〜、次の方どうぞ」
審査員の言われた通りに後ろの席に戻る石川。普段の練習通り出来たと
言ったら嘘になるような出来だが、本来練習通りに実力が発揮出来る
人なんてそういるもんじゃないんだ。だから、今出来ることはやった
という満足感はあった。ただ、練習以上のものを本番で出せるのがプロ
という考え方もあるが。
・・・・・・
「はい、お疲れ様でした。それじゃ〜みなさん、そちらの
出口から退出願います。その際に係員から次回選考以降の
予定について書かれた紙を受け取ってからお帰り下さい」
真ん中の審査員の挨拶によって、石川達の試験は終わった。
石川は前の子について出口から出る。出ると矢印が貼ってあり、
そのまま体育館から出られるようになっていた。
体育館を出ると、前の方からさっきの女の子が近付いてきた。
試験が終わったという開放感からか、安心した表情になっていた。
「ねえねえ、これから何か予定とかあんの?」
「え、いきなり何?」
「いや〜さ、さっきは緊張してたところで話し掛けちゃって
悪いことしたかな〜って思ってさ。時間あるんだったら
何かおごろうかな〜なんて思ってさ」
「いや、予定は・・・・・空いてるけど」
163 :
名無し娘。:2001/04/21(土) 03:39 ID:d4tOHtXs
h
164 :
クズ学生:2001/04/21(土) 06:56 ID:YjAu97lU
>>163 サンクスです。ちょっと見ないうちにごっそり
倉庫送りになってたみたいで。その保全sageが
なかったらこいつも倉庫送りになるところでした。
今日は1本書けそうですが、ここ2〜3日家を
離れるんで書き込めない可能性が高いです。
ここだとどんぐらい書き込まないと倉庫送りに
されるんでしょうか?
165 :
クズ学生:2001/04/21(土) 19:05 ID:.BjwpaQM
「石川梨華さんだっけ?何て呼んだらいいかな?」
「梨華でいいよ。貴方は〜っと、吉澤・・・・」
「吉澤ひとみです。とみ子って呼んでね」
「え、何で『とみ子』なの?」
「ひとみのとみで、『とみ子』なの」
「何だよ、それ。ハハハッ」
今日は非番の日なので、特に予定が入っている訳じゃない。
ということもあり、石川はとりあえずこの子と一緒に近くの
喫茶店に入った。ほとんど見ず知らずの人間と遊びに行く
なんてほとんどしたことなかったけど、今日は何故かそんな
気分だった。特に理由はないけど、今まで内に溜まってた
ストレスを何とか解消したいというのもあったのだろう。
「あ、そういや何でいきなり見ず知らずの私を誘ったの?」
「ナンパ、なんちゃって。ハハッ」
「ハハッ、何だよ、それ」
「いやさ、このまま家に帰っても別にやることないしさ。
クラスの友達とかはいるんだけどさ、最近なんかつまんなくて」
明るく見せるものの、何か物憂気な態度。一抹の寂しさを
滲ませてる、そんな感じの女の子に見える。ひょっとしたら
この子は、私みたいに夢を目指してというよりは、ただ現状を
打破したいだけなんじゃないだろうか。ふと、そう思う石川。
しばらく取り留めのない会話をした後、お互い家路につく。
その家路の途中、漠然とした不安感が石川を襲う。が、
結局理由はわからず終いだった。気が付くと周りはすっかり
暗くなり、上着なしでは肌寒くなっていた。
166 :
名無し娘。:2001/04/22(日) 08:34 ID:S.dmlTmI
はげしくあげ
167 :
名無し娘。:2001/04/22(日) 20:38 ID:sQu3ldeA
激しく応援さげ。時々応援カキコしてるべさ。
168 :
名無し娘。:2001/04/22(日) 22:43 ID:nxJBode2
いしよしか?! いしよしになるのかーっ!!
などと先走ってみたりする(ワラ
169 :
クズ学生:2001/04/23(月) 16:41 ID:dRKH3JC6
「ただいま〜」
アパートに戻る石川。玄関の蛍光灯は端が黒ずんで点滅している。
明けぬ冬のうら悲しさのようなものが石川を襲う。ふと目線を落とし
靴の泥を払っていたら、管理人室から中澤が顔を出してきた。
「あ〜、おかえり。でやった、今日のオーディション?」
「はい、やれるだけのことはやりましたんで、これでダメだったら
単なる実力不足っちゅうことで他のオーディションを探しますよ」
「よかったな。そんだけ言えんねやったら悔いはないってことやね」
とても20代には見えないような疲れた顔をしているものの、
なぜか中澤の顔を見ると安心出来る。まだここに来て短いけれど、
石川にとって中澤は、既にそんな存在になってるのかも知れない。
「あれっ、なっちは帰ってきてないんですか?」
「うん。あの子は何してんのかようわかれへんな〜」
このアパートの玄関には住人のネームプレートが下げてあり、
部屋に戻った人間は黒字の方に、外出中の人間は赤字の方に
しておかないといけないようになっている。寮じゃあるまいし
そんなの普通は守るやつもいないだろうと思っていたが、意外と
みんなが守ってるので、石川もいつの間にか習慣としていた。
「じゃ〜、また後で」
「うん、10時まではここにおるさけ」
そういって石川は1階奥に進み、保田の部屋をノックしようとした。
が、突然中から保田の怒号にも似た声が聞こえてきたので、石川は
びっくりして思わず手を引っ込める。何があったんだろうか。
170 :
クズ学生:2001/04/23(月) 16:45 ID:dRKH3JC6
171 :
クズ学生:2001/04/24(火) 23:41 ID:6zhd/JCw
ガチャッ!
「・・・・あ、あれっ、何してんの、梨華ちゃん?」
「い、いや・・・別に。いるのかな〜って思って」
「ああ、そう。ちょっと外出てるから」
ドアを開けて出てきた保田。普段の格好からは想像出来ないくらいに
カジュアルな格好をしていた。普段街に出る時なんかはこういう
ちょっとお洒落目な格好をしてるらしい。
そして、態度では平静を装っていたものの、目は真っ赤に充血していて
泣き腫らした後だというのが一目でわかった。
「じゃ〜ね」
「うん、・・・・じゃ〜ね」
保田は振り向きながら軽く手を振る。石川はそれにただ何となく
応えるだけだった。保田のことを多少気に留めながら、自分の部屋に
戻る石川。バッグを卓袱台の上に置き、明かりも付けずに布団に入る。
矢口はいるみたいだから、後で矢口の部屋に行こう。そんな風に
思いつつも、結局はそのまま眠りについてしまったようだ。
172 :
名無し娘。:2001/04/24(火) 23:44 ID:fWIiLikU
おっ、更新だべさ。待ってたべ〜。
173 :
名無し娘。:2001/04/26(木) 00:20 ID:acKRdxAU
sage
174 :
名無し娘。:2001/04/26(木) 07:43 ID:lbX9CM8s
保
175 :
クズ学生:2001/04/26(木) 19:56 ID:Ub1ROseg
コンコンッ!
「梨華っちょ、いる〜? 矢口だよ〜」
矢口がドアを叩く音で目が覚めた石川。ふと気が付くと時計の針は
既にPM9:00を回っていた。寝惚け眼をこすりながら矢口に応える。
「う、・・・・うん。いるよ〜」
「御飯食べてないでしょ。梨華っちょの分も作ったから
一緒に食べようよ」
「うん、ありがと〜」
石川はゆっくり起き上がり、窓のカーテンを閉めた後にキッチンの
流し場で顔を洗う。そしてさっぱりした所で矢口の部屋に入る。
部屋のコタツ机の上には、これぞ腕の見せ所と言わんばかりに
豪華なラザニア、イタリアンサラダ、スープのセットが置いてあった。
それもどうやらここ30分くらいずっと調理していたらしいんだが、
ぐっすり寝ていた石川はそれに全く気付かなかったようだ。
「うわ〜っ、すっごいじゃん!全部自分で作ったの?」
「そうだよ。ちょうど二人分くらいになったから、遠慮なくどうぞ」
「は〜い。いっただきま〜す」
いくら少食の石川とは言え、朝から緊張でろくすっぽ何も食べて
なかったから、お腹は相当空いていたようで。普段より箸が進む。
これがオフ会でも嫌われたというクズ学生の自称ネタスレか。確かにつまらない。
177 :
クズ学生:2001/04/27(金) 02:42 ID:yzQ6qRvc
>>176 まあ、そうかもね(w
ネタと言ってるのは違うスレなんだけどね、
そっちも俺より他の人の方がおもろい気がする(ウツダ
178 :
名無し娘。:2001/04/27(金) 14:57 ID:bm.rpTKI
晒しage
179 :
クズ学生:2001/04/27(金) 23:58 ID:k6D/vHrM
カチャッ、カチャッ
矢口:「あ、そうだ。今日オーディションだったんだよね。
どんな感じだったの?緊張した?」
石川:「うん。そりゃ〜緊張はしたけどさ、緊張したなりに
実力は出し切れたと思うから。これで落ちても後悔はないよ」
矢口:「そうなんだ。そう言い切れるんだったらすごいよね」
石川:「ハハッ。・・・あ、そうだ。オーディションの時に一緒だった
女の子と友達になったんだ」
矢口:「へ〜っ、そういうの結構あるんだね〜」
石川:「いや、その子以外はみんな緊張してて話し掛けてくるような
雰囲気じゃなかったんだけどね。その子は緊張したら却って
人に話し掛けちゃうみたいだったね」
矢口:「ふ〜ん。そうなんだ〜」
石川:「あ、そういえばさ〜、さっき圭ちゃん、泣いてたみたい
なんだけど、何かあったのかな〜。知ってる?」
矢口:「あ〜、この部屋でも聞こえてきてたよ。多分だけどさ、
圭ちゃん最近、バンドの人と意見が合わなくなってたみたいで、
電話で言い争ってたんじゃないかな〜」
石川:「ああ、そうだったんか〜」
矢口:「あの子はあの子なりに、自分の夢を叶えようと必死なんだよ。
実際プロを目指してるみたいだしね」
石川:「・・・・・・・・」
180 :
クズ学生:2001/04/28(土) 16:57 ID:VrL4FILs
食事を摂った後にビールを飲みつつ暫く談笑する。矢口は非常に人当たりが
軽い感じの人だから、誰とでも仲良くなれるタイプに見える。石川としては、
そんな人当たりの良さとかは見習いたいと思っている。だけど、矢口には
自分の内面を曝け出してくれないようなよそよそしさがある気がするから、
本当の友達になるのは結構難しいかも知れないな。
12時を回ったあたりで石川は部屋に戻る。アルコールが入ったからか、
随分と気分がいい。部屋の明かりも着けずに、服やゴミ袋に埋もれた
掛け布団を弄り返し、中に入り込む。そして天井を見上げながら、今の
自分が置かれた状況に関して思いを巡らせていた。
このようなアットホームなムードのあるアパートだと、周りに常に
知り合いがいる状況だから人恋しさから寂しくなることはないんだけど、
反面それが鬱陶しくなる時もあるだろうし、誰かと仲が悪くなった場合に
逃げだせないようなところはあると思う。それをどう思うかは本人次第
なんだろうけど、人見知りをしやすい石川がこんなに容易に溶け込めたのは
ここにいるメンツの人の良さがあるからこそなんじゃないかとも思っている。
最近全然親とも連絡取ってないな。明日香ともメールのやり取りくらいだし。
他の学校の子なんか、誰とも連絡取ってないし。ひょっとして、明日香以外の
みんなはもう私のことなんか忘れちゃったんじゃないかな。
バイト先で、私はどう思われてるんだろう。飯田さんとかはよく私の面倒を
見てくれるんだけど、本当はそういうのをウザがってるんじゃないかな。
石黒さんも結構面倒を見てくれるけど、不器用な私を嘲笑ってるだけなのかな。
そんなことを考えながら天井を走るネオンの影を見ていると、急に
寂しくなって涙がこぼれてきた。何も持たず実家を飛び出してきた自分が、
今後本当に夢を掴めるんだろうか。この夢を諦めざるを得なくなったら、
私はどうなるんだろうか。本当に、このまま突っ走っていいんだろうか。
石川は、薄く声をあげながら泣いた。そして、泣き疲れて眠りについた。
181 :
名無し娘。:2001/04/29(日) 13:44 ID:ZNQCdnIk
sage
182 :
クズ学生:2001/04/30(月) 12:56 ID:s7U2fXCI
非常に魅力的な世界だと思う。男はカネを出して夢を見る、女は時間と自由を
売り夢を捻出してはカネを得ている。それはホストクラブにおけるホストと
女性客の関係にも近いが、その性差は未だに埋め難いものなんじゃないだろうか。
石川は仕事中にふと、そんなことを思って客から焦点をずらした。
自分自身はどうなんだと考えると、確かにここの人達にはお世話に
なってるし、一緒に仕事していくという点においては何の問題も
ないと思ってはいる。でも、自分がこの仕事に向いてるのかという
判断をするには、まだ時間がかかりそうな気がした。それは、自分が
この仕事をすることを最終目標としている訳じゃないということも
理由としてある。だけど、なんといっても「やっていく自信がない」
というところが、一番大きいんじゃないかと思う。そう、思う。
「・・・・・チャーミーちゃん。どうしたの?元気ないね」
「・・・・えっ! あ、いや、そんなことないですよ、ホホホ」
今日のお付きは自称40代の証券マン。すっかり薄くなった額から
落ちる汗を拭く姿は、仕事中の癖が抜けないのか何か申し訳なさげだ。
それでも、すっかり石川の事がお気に入りのようで、3回連続で指名
している。石川は彼に対して、引きつった笑顔を見せていた。
「チャーミーちゃんは最近疲れてるの?顔色があんまりよくないよ」
「そ、そうですか。そんなことありませんのよ。健康第一ですもの」
「そ〜ぅ。よかった〜。チャーミーちゃんに会うのが僕の精力剤
なんだからね。もう、毎回指名してあげるからね」 サッ、ピタッ
「は、はあ〜い・・・・。ありがとうございま〜す。ホホホホ」
仮に援助交際などをよくしていて男の相手に困らないような日々を
送っていたのなら兎に角、やはりこの歳で普通に育っていたら、
中年男性から触られることに免疫がついてるはずがない。もうこの
バイトを始めて1ヶ月近く経とうとしているが、ヤリたいという
オーラを出しまくる中年リーマンに触られるのは、苦痛以外の
何物でもなかった。石川の表情は、より一層引きつる。
183 :
クズ学生:2001/05/01(火) 17:53 ID:TtbfV8pM
タッ、タッ、タッ、タッ
「あの〜、お客様」
「あ・・・・ジョンソンちゃん。どうしたの?」
「大変申し訳ないんですが、チャーミーの勤務時間は
もうそろそろ終了になりますんで」
「え、そうなの?もうそんな時間?しょうがないな〜」
テーブルの不穏な空気を察してか、飯田がフォローに来てくれた。
常勤ホステスにはこのように、酔っ払って始末に負えなくなった
客の相手をするという役割も科されているのだ。飯田は軽く石川の
手を引っ張り、席を立つように指示する。
『すいません、後はお願いします』
『うん、じゃ〜ね、お疲れさん』
「それじゃ〜、お先に失礼します。チャーミーでした」
「またね、チャーミーちゃん!」
石川は軽く会釈をして控え室に戻る。控え室は雑然としていたものの、
働いてる人は基本的に店内にいるので、2〜3人の話し声の他は
結構静かなもんだ。前の椅子には、石黒が煙草を燻らせながら座っていた。
「あ、石黒さん、お疲れ様です」
「お、おう、チャーミー。お疲れさん」
石黒は読んでいた新聞をたたみ、煙草の火を消して石川のいる方を
ぼんやり眺めていた。石川としては未だに石黒の前では畏縮してしまう。
今もじっと見つめられたまま、どう動いていいものか迷っていた。
「別に座っていいよ。あんま遠慮しなくっていいから」
「あ、はい。失礼します」
石川は石黒に勧められるまま、石黒のすぐ隣の席に座る。
保田も出番はまだか?
期待sage
185 :
クズ学生:2001/05/02(水) 17:34 ID:BMoj7Ke6
>>184 つい最近出てたと思うけど>保田
まあ、このような展開だとみんなをいっぺんに
出すっちゅうのには無理があるからさ。まあ
待ってて下さいな。
186 :
クズ学生:2001/05/03(木) 16:00 ID:h7fGYh1I
昨日は派手な荒らしが来たみたいね。
あんまり下がってると何らかの事故で
消えるかも知れないから、今日は上げときます。
187 :
クズ学生:2001/05/03(木) 23:35 ID:yoqD5jaM
石黒:「お前さ〜、本当に顔色悪くない?調子悪いの?」
石川:「え、いや。そういう訳じゃないんですけどね。ちょっと
疲れてるみたいでして。あんまり寝付きがよくなくって」
石黒:「そういうのを調子が悪いっつうんだよ、ハハハッ。まあ、
オーディションとかでも頑張ってるんだろ。こっちも
含めて身体が資本の仕事なんだから、気を付けろよな」
石川:「あ、はい。ありがとうございます」
石黒:「こっちもバイトに穴開けられたら大変だからな。まあ、
そういうもんだけどな。みっちゃんが胃ぃ〜痛めてたぜ」
石川:「は、はぁ〜っ、わかりました・・・・」
・・・・・・・
石黒:「あ、そういえばよ。さっきも飯田に尻拭いさせてたじゃ
ねえかよ。嫌だったら自分で体よく断るのも仕事の内だろ」
石川:「は、はい!すいませんでした」
石黒:「私に言ったってしょうがねえだろ。あとでちゃんと飯田に
礼と詫び言っとけよ」 シュボッ・・・・・フゥ〜〜ッ
石川:「は、はぁ〜っ、わかりました」
石黒:「まぁ〜な、こんな仕事いきなりちゃんと出来るもんじゃ
ねえからしょうがねえとは思うけどな。でもよ、歌で
メシ喰おうっつってもこういう所で覚えられる礼儀とか
接客の仕方とかな、無駄にはなんないんだからね」
石川:「はい。毎日、勉強になります」
188 :
クズ学生:2001/05/04(金) 16:24 ID:osn5Ln7I
「あ、そうだ。チャーミー、お前今度の木曜のナイトショーやれよ」
「ほいっ?」
「『ほいっ?』じゃなくってさ、来週の木曜のナイトショーさ、
お前がやってみぃっていうの。舞台に立って唄ったり踊ったりする
練習みたいのもしなきゃいけねえんだろ。ちょうどいいじゃん」
「えっ、ええっ?・・・・ら、来週ですか?」
思い掛けない石黒の提案に、思わず言葉を失う石川。以前歌の練習を
させてもらう前に罵倒された時のことが、脳裏に浮かんできた。
「あとでみっちゃんに言っとくからさ。出しもんの内容は
みっちゃんに聞いといてな。時間がありゃ練習に付き合うし」
「あ、あ、ああっ、は・・・・・・、はい。わかりました」
やりたくないんじゃない。だけど、客が見てる前でショーを
やるなんてことが今の自分に出来るんだろうかと、不安で
しょうがないのだ。特に年齢層が自分とだいぶ離れた中高年
ばかりだから、自分のパフォーマンスが受け入れてもらえるのか
どうかがわからず、一気に顔が青醒めてしまった。
仕事を終えて帰路につく石川。それでも、街はまだ眠らない。
確かにバイトは始めた当初よりはずっと軌道に乗ってると思う。
ステージでの練習を繰り返すうちに自分のパフォーマンスに
自信が着いてきたのも確かである。でも、それでも、もし
失敗して客やスタッフに罵倒されるようなことがあったら、
立ち直ることは出来るんだろうか。そう考えると、緊張で
ただひたすら喉が渇く。まだ何もしてないのに、喉が渇く。
189 :
クズ学生:2001/05/05(土) 04:39 ID:IepACw8w
毎日何らかの方法で保全しないといけないって
かなり異常な状況だと思うな、他板と比べても。
まあ、毎日のように跳ぶ狼よりはマシなはずだが(w
このペースで書き続けるのは本当にしんどい。
でもM-seekに行く気は今の所起こってないな〜。
とりあえず続く限り2日に1本以上のペースで
書いていく予定。倉庫送りになったらそこでおしまい。
190 :
名無し娘。:2001/05/05(土) 12:53 ID:SR1GYvoo
頑張ってよ〜。ある意味、死と隣り合わせの小説やね。
この小説自体が死ぬかもっていう。(w
そうならない事をクズ学生に希望ー!
191 :
名無し娘。:2001/05/05(土) 21:27 ID:E3ElfflA
クズ学生がいない間はうちら読者が保全するから
気にせず続けてくれYo!
192 :
クズ学生:2001/05/06(日) 02:48 ID:z29GdqdU
>>190,
>>191 すんません、あんがとさんっす。
今後も更新スピードはあがんないけど
それでもよかったら読んでやって下さいな。
なお、今夜中に1レス分書きま〜す。
193 :
190:2001/05/06(日) 02:53 ID:zqK8zFRE
>>192 おおっ!マジで!?よかった、夜更かししてて(W
でも、そろそろ限界かな。
194 :
クズ学生:2001/05/06(日) 03:47 ID:Rhj1p/96
石川が出て暫く経った店の控え室。石黒のところに飯田が
すごい剣幕で詰め寄ってきた。
「あんた、どういうこと? 平家さんに聞いたよ」
「は?何のこと?」
控え室にいた他のホステスなり従業員は皆、こんなところで
揉め事は起こさないでくれよと言った程度の冷ややかな視線を
送っていた。特に面倒なことが嫌いなソニンが飯田に声をかける。
「飯田さん、どうしたんですか?何かあったんっすか?」
「平家さんが言ってたんだけどね、来週木曜のナイトショーを
チャーミーにやらせるようにって言ってきたんだって、石黒が」
「うん、みっちゃんには確かにそう頼んだけど、それが何か?」
「あの子はまだ入って来たばっかりなんだよ。とてもじゃないけど
まともなパフォーマンスになんないって」
ソニンも確かにそう思った。自分もたまにナイトショーをやらせて
もらうけど、初めてやったのは働き始めて半年以上経った後のことだし
それでも緊張してまともには出来なかったことを覚えている。それを
働き始めて1ヶ月強の子にやらせるのは無理なんじゃないだろうか。
195 :
クズ学生:2001/05/06(日) 23:54 ID:HOT7uZXI
「あいつは歌手とか目指してるんでしょ。だったら少しでも早く
多くステージを経験させてやった方がいいんじゃない。違う?」
「だ、・・・・だけどさ、こんなに早く、しかも急場でステージに
立たせて、もし失敗とかしたらショックで立ち直れないかも
知れないでしょ。だから・・・・・・」
「そんな程度で諦められるような夢だったらさっさと捨てさせて
やった方がいいんじゃないの。その方がやり直し利くだろ」
飯田の戸惑い混じりの言葉に、冷然とした言葉を返す石黒。
決して間違った意見ではないんだろうけど、いくらなんでも
その言い草はないんじゃないかと、そこにいる皆が思った。
「真矢嬢、指名かかりました。3番卓お願いします」
「は〜い、わかりました〜」 ガサッ
指名を受けて席を立つ石黒。煙草を揉み消しハンガーに掛けておいた
上着を羽織り、控え室を出る。飯田も後を追うように部屋を出て、
平家に事情を聞いているようだ。ソニンは閉めかけのドアの隙間から
飯田を眺めつつ、ただ何となく髪型を直していた。
196 :
名無し娘。:2001/05/07(月) 02:06 ID:r6fly.0.
がんばってくださいなー
197 :
クズ学生:2001/05/07(月) 22:45 ID:h5qDP6BY
>>196 サンクス。最近ちょっとやることが詰まってたのと
この先の展開をどうしようかという段階で少々
煮詰まってるというのもあって筆が進んでませんが
まあ、スレが倉庫に逝かない程度の更新頻度は
保とうかと思ってます。
198 :
クズ学生:2001/05/08(火) 03:49 ID:OhNBLEFg
よかった〜〜、ギリで倉庫送りに
ならんかったみたいやね。ほっと一安心。
199 :
まだダメ:2001/05/08(火) 06:16 ID:9BDkfpMI
>>198 いや、この時点でだいぶ底の方やったで?悪いけどageとくわ。
「よいしょ!」
200 :
クズ学生:2001/05/08(火) 06:27 ID:OhNBLEFg
200get
>>199 すんません、あんがとござんす。
201 :
名無し娘。:2001/05/09(水) 01:53 ID:pUV141a2
age
こっちもいいけど「妄想楽屋2」もキバってくれ。
先が気になってしようがないぞ。
203 :
クズ学生:2001/05/09(水) 05:25 ID:js7CFBZg
帰り道に見える、派手なネオンの看板。いつも立ち寄るファミレスだ。
深夜枠とはいえ時間がきっちり決まった仕事だから、食事を摂る時間も
決まってくるものである。だから、帰り道にありその時間にいつも
空いている店に自然に立ち寄るようになるのは、当然のことなんじゃ
ないだろうか。あと、この時間だと矢口が働いていることが多いので
入り易いというのも多少はあると思う。石川は、まっすぐアパートに
戻る気がしないというのもあって、フラフラっとそのファミレスに入った。
カランカランッ、カランカランッ
「いらっしゃいませ〜、こちらにどうぞ」
石川は店員に誘われるままに窓際の席に着く。すると間もなく
メニューと冷やを持った矢口が、注文を聞きに近付いてきた。
「御注文はお決まりでしょうか?」
「ビネガーサラダとコーヒー、アメリカンで」
「はい、かしこまりました。少々お待ち下さい」
「・・・・ぐっさん、今日も4時まで入ってるの?」
「今日は早いんだ。あと30分くらいで抜けるから」
「じゃ〜、一緒に帰ろうか」
「うん、わかった。食べ終わったら出入り口の前で待ってて」
ガサッ、カッカッカッカッ
矢口の背中をぼんやり見つめながら、石川は冷やを軽く口に含み
ふっと溜め息をついた。そして、ゆっくりと目線を変えて
窓の外に映る街のネオンを眺めていた。
204 :
クズ学生:2001/05/09(水) 05:30 ID:js7CFBZg
>>202 ( ´v`)ノ < アーイ
最近時間がないこと以上に体調が悪くて
それどこじゃないんだよ。もちっと待ってくれ。
205 :
クズ学生:2001/05/09(水) 23:50 ID:7UAhWmcQ
「あの子・・・・、今日もいるな」
「ええ、行き着けみたいな感じなんじゃないっすか」
ここにも石川同様、このファミレスに通いつめてる客がいた。
この二人の若い男女は以前から石川がここに来てることに気付いて
いるが、石川はこの二人には気付いていない。二人のうちでも
特に男の子の方は石川のことが少々気になっているようだ。
「お前さ、いい加減声かけてみたら?プロのお姐さんだぞ〜。
いい夢見られんじゃねえの?」
「えっ?・・・・い、いやっ、いいっすよ」
「あっそ。つまんねえな〜」 カチャッ、ゴクッゴクッゴクッ
「あ、ユウキ。お前最近学校行ってんのかよ?」
「そうですね〜、・・・あんまし行ってないっすね」
「多分行っといた方がいいぞ。まあ、つまんねえんだったら
しょうがねえんだろうけどな」
「はい・・・・、でもそういう市井さんはどうなんっすか?」
「私っ? 私は・・・・・、全然行ってないな、ハハハッ」
「大丈夫なんっすか? ハハハッ」
この二人は別に仕事なりバイトなりの帰りに立ち寄ってる
訳でもなく、ただ夜遊びがてら家に帰るのが面倒になったから
時間を潰すために来てるだけだった。夜はこのファミレスなり
オールナイトのカラオケ屋などで時間を潰し、朝日が昇る頃に
家に帰って寝るような中身のない生活を続けているようだ。
206 :
クズ学生:2001/05/11(金) 00:13 ID:zBGyU9IE
矢口の言うように出入り口をちょっと出たところに待つ石川。目の前を
通り過ぎる人の数はあまり多くないものの、声をかけてくるホスト風の
男の数はこの時間が一番多いようだ。そんなホスト風情の男は、自分の
勤めてる店の名前を出すと大概退いてくれる。同業者はナンパで
引っ掛けるもんじゃないということなんだろう。ホストにハマる
ホステスもかなり多いようだが、そういう人間は大概自分からホストに
声をかけて行くようだ。
そうしてしばらく待つと矢口が出入り口から出て来た。服装は
アパートで見るよりも幾分派手な格好といった感じだろうか。
茶髪を隠すようにすっぽりと頭にハメた白いニットの帽子に
薄く色の入った度無しの眼鏡、厚底のブーツを履いたその容姿は
一昔前の女子高生のファッションなのだろうか。石川はそういう
流行には疎かったために、いまいちピンと来ないようだ。
二人で帰ることは今までほとんどなかったんだが、やはり知り合いと
一緒にいるということもあり帰路の安心度合いが格段に違う。
というのも、アパートが路地裏にあるから毎日暗い路地を抜けないと
いけないのだ。いくら女二人とは言っても、独りよりはずっとましだ。
ただ、だからと言って特に騒がしく喋りながら歩くという訳でもなく、
あまり言葉を発することもないままアパートに着き、部屋に荷物を置く。
「ぐっさん、ちょっとそっちの部屋に行っていい?」
「うん、構わないよ。いいお茶が手に入ったんだ」
「本当? じゃ〜、ちょっと頂きましょうかね」
そういってお互いの部屋に入る二人。矢口はコンロの火を着け、湯を
沸かし始めたようだ。石川は今着てるものを脱いでハンガーに吊るし、
棚から引っぱり出した部屋着に着替える。時期の割には寒そうな部屋着
だけど、特に気にはしていないようだ。
207 :
し:2001/05/11(金) 01:25 ID:WBnJOVwU
209 :
し:2001/05/11(金) 02:41 ID:Wvm4xBxU
210 :
クズ学生:2001/05/12(土) 00:25 ID:.wDJ5nIg
ガチャッ!
矢口:「おう、ちょっと待ってね〜。そこ座っといて」
石川:「は〜い。あ、いい香り〜」
矢口:「うん、香りがいいんだよね〜、これ」 ゴクッ
石川:「何っていうのかな〜。香ばしいよね、すごい」
矢口:「昼のうちにアメ横行って買って来たんだよ。何かね、
店のおいちゃんに話聞いたらね、発酵具合がちょうど
紅茶と烏龍茶の中間くらいなんだって」
石川:「え、それってどういうこと?」 ゴクッ、ゴクッ
矢口:「だからね、紅茶ほど渋味がないし烏龍茶ほどに苦味も
ないんだよ。すっごい飲み易いよね」 ゴクッ
石川:「うん。でもさ、何と言っても香りがすごくいいじゃない。
何かコツみたいのあるの、香りの出し方とか?」
矢口:「前に料理の先生と話した時に聞いてね、その入れ方を
今でも続けてるんだよ〜」
石川:「ふ〜ん、そうなんだ」 ゴクッ
矢口:「あのね、金属じゃなくってセラミックのポットを使ってね、
強火で必要な量だけ湯を沸かして、だいたい30秒くらい
経ったところで茶葉を入れて火を止めるのね。で、だいたい
1分くらいでコップに注ぐのね」
石川:「おっ、何かこだわってるね〜。でもさ、よく聞くのがさ、
お茶は最初の1杯目じゃなくって2杯目あたりがおいしい
っていうやつ。この入れ方だと2杯目って取れないでしょ」
矢口:「うん、茶漉しを使ってポットから直接注いでるからね。
でもこっちの方がおいしいと思うよ」
石川:「ふ〜ん、・・・・・おいしい」 ゴクッゴクッ
コンコンッ!
矢口:「は〜い、どなたですか〜」
安倍:「私〜、なっち。入っていいよね」
矢口:「うん、どうぞ〜」
211 :
クズ学生:2001/05/12(土) 00:28 ID:.wDJ5nIg
>>208 ( ´v`)ノ < アーイ
当方Macゆえ、こうじゃないと文字化けするんですよ。
212 :
名無し娘。:2001/05/12(土) 13:32 ID:A3XKtgYg
頑張ってくださいね。
213 :
クズ学生:2001/05/12(土) 14:09 ID:UvvMmKb2
ガチャッ!
安倍:「こんばんわ〜。あぁ〜、梨華ちゃんもいたんだ〜」
石川:「うん。ここ2〜3日会ってなかったもんね。最近元気?」
安倍:「元気だよ〜。あ、何かすごい紅茶みたいな香りが強く
するんだけど。いい香りだね〜」
矢口:「うん。昨日の昼のうちにアメ横で見つけてきたんだ。
なっちにも入れようか」 ガタッ
安倍:「飲みたい、飲みたいっ!ちょうだい」
矢口:「じゃ〜、ちょっと待っててね〜」
ス〜〜〜ッ、カチャッ、ボッ!
矢口:「あ、そういえば梨華ちゃんさ〜、さっきファミレスに
来てた時、結構落ち込んでたっぽい感じだったけど」
石川:「う、うん。そうなんだけどね・・・・・」
安倍:「あれっ、今日は二人一緒だったの?」
矢口:「梨華ちゃんはよくうちのファミレスに来てくれるんだ。
で、今日はたまたま私のハケ時間が早くってさ」
安倍:「あ、そうだったんだ。そうだよね〜、ぐっちゃん普段
この時間でも帰ってきてないもんね」
矢口:「あ、梨華ちゃんさ〜、聞いちゃダメだったかな〜。
別に言いたくなかったら構わないからさ」
石川:「いや、別にいいよ。何かぐっさんと喋りながらゆっくり
おいしいお茶飲んだら随分気が楽になったしね」
安倍:「何かあったの?」
石川:「うん、ちょっとね。詳しく説明するよ」
214 :
クズ学生:2001/05/12(土) 20:07 ID:yXT81RdQ
215 :
クズ学生:2001/05/13(日) 23:31 ID:vFAHv1tE
ヒュ〜〜〜〜ッ、コポコポコポ
矢口:「は〜い、なっち。お茶入ったよ〜」
安倍:「うぅっ、い〜い香り〜」 カチャッ!
石川:「バイト先の先輩で石黒さんっていう人がいるんだけど
その人が私にショーをやってみないかって言ってきた
んだよね。間を持たせるためにお客さんに見せるショーが
あるんだけど、それをね」
安倍:「えっ、梨華ちゃんって入ってそんなに経ってないでしょ。
それですぐにショーみたいのやらされんの?」
石川:「いや、普通はそんなに早くからやらせてもらえることじゃ
ないみたいなんだけど、歌手とか目指してるんだったら
少しでもステージ経験とか積んどいた方がいいんじゃない
っていうことで、石黒さんが気を使ってくれたみたい」
矢口:「ふ〜ん。だったら別に気落ちするようなことじゃないと
思うんだけどな〜。何かあったんじゃないの?」
石川:「う〜ん、別にそれ以外に何かあったっていう訳じゃない
んだけどさ、何って言うのかな〜。自信がないんだよね、
人前でちゃんとパフォーマンスするっていう自信がね」
安倍:「だったらやめとけばいいんじゃないの」
石川:「いや、でもせっかく石黒さんがそういう機会をくれた
んだからそれを反故にしたらいけないと思うのね。あと
人がくれたチャンスとかっていうのはその時にちゃんと
モノにしないと次なんてそう簡単には巡ってこないと
思うんだよ」
矢口:「まあね〜。そういうのあるよね。いくら自信がない
からって言ってもチャンスを断るっていうのはやっぱり
よくないよね。でもね〜、難しいよね〜」
安倍:「とりあえず自分の出来る限りでやるしかないっしょ。
多分ダメもとでいいと思うんだ、変な言い方だけどさ。
だってどんなに頑張っても自分の能力以上のことを出すのは
無理な話なんだからさ。まだプロじゃないんだしさ」
石川:「うん、そうだね。身体でぶつかっていくよ、本当」
矢口:「ハハハッ、何だよそれ」
216 :
名無し娘。:2001/05/14(月) 17:08 ID:EVXyv.Dc
age
217 :
クズ学生:2001/05/14(月) 23:37 ID:/p0WfhhU
「はい、ちょっと。そこまた音外れてるよ」 パンパンッ!
「はいっ!・・・ハァハァ、すいません・・・・」
スポットライトが照りつける小さなステージ。石川の額には
既に汗が薄らとにじんでいた。ステージ脇のキーボードの前に座り
石黒が石川の振り1つ1つに細かい指導をしていた。
半径2m程度の狭い円形ステージ。木曜のナイトショーに向けて
ステップ・振り・歌の流れを頭に、身体に刻み込むために
集中しながらの練習。指先に触れる空気の流れさえ感じ取れるほどに
研ぎ澄まされた感覚の中で、息を吸うタイミングも取れないほどだ。
たかがキャバクラのツナギにやるショーと言っても、客からカネを
取って見せる以上は半端なモノは出せないという店の方針もあって、
びっくりするくらいにハードな練習になっている。
「ストップ、ストップ! そこの『パッパッパッパッ』ってとこで
ちょっとテンポがずれちゃうんだよね〜。何とかならんか?」
「は、はいっ、・・・・・わかりました。ッハァハァ・・・」
ピッピッ、ピィ〜〜、パッパッパッパッ!
ショーで唄う曲のメインメロを弾いて音の取り方を自ら示す石黒。
この人はもともと音楽をやっていたらしく、大概の楽器が弾けるらしい。
キーボードを弾きながら唄う石黒の姿は、随分サマになっている。
218 :
クズ学生:2001/05/15(火) 23:21 ID:iFdUnJuE
今回は書けなかったんで保全sage
219 :
名無し娘。:2001/05/16(水) 01:54 ID:TLkwxiso
age
マターリsage
221 :
クズ学生:2001/05/17(木) 23:25 ID:OOvJnAlg
「・・・・ハァハァ、ハァハァ」
「あのね、ちょっと休憩ついでに聞いて。今はまだ余裕がないと
思うけどね、ステージに立ったらそういう余裕のない顔は絶対に
しちゃ〜いけないの。多少のミスはしょうがないけど、そこで
戸惑ったり取り乱したりする姿は一番見苦しい姿だから」
「っは、はい。わかりました」
曲が一通り終わるごとに石黒からアドバイスがなされる。
石川の額からは玉のような汗が落ち、薄く塗ったアイラインも
少し剥げてきて少々面白い顔になっていた。が、眼差しは鋭い。
「基本的にはやっぱりお客さんには愛想をふりまかないとダメ。
気が回る限り笑顔を見せておくこと。だけど、ショーの中でも
ビシッと決めないといけないところでヘラヘラしてたらダメ。
メリハリが大事なんだって、パフォーマンスではね。わかるよね」
「は、はいっ。わかりますっ」
石黒のアドバイスは石川にとっては非常に意味のあるものだった。
特にダンススクールとか歌の教室とかに通っていた訳ではない
石川にとっては、そのアドバイス1つ1つが今までの自分にはなかった
捉え方であり、今回限りのステージの練習にとどまらず、この先の
自分の歌やダンスへの取り組み方に大きな影響を及ぼしていくことは
指摘されるまでもなく予想出来る。今は何でも吸収しよう。
222 :
クズ学生:2001/05/19(土) 00:26 ID:QV9givhg
・・・・・・・・
「ふぅ〜〜っ、今日はこんぐらいで終わりにするか」
「・・・・ッハァハァ、はいっ、ありがとうございましたっ!」
「はい、お疲れ〜。あ、あとさ、その衣裳、店のだろ。
ちゃんとクリーニングボックスに出しときなよ、いいね」
「あっ、はい。・・・ッハァ、わかりましたっ」
タッ、タッ、タッ、タッ・・・・
「あ、チャーミー。お前結構汗かいてるだろ。2階にシャワーが
あるからよ、みっちゃんに言って使わせてもらえよ」
「はい、・・・すいません、ありがとうございます」
店の中に入り平家を探す石川。ふと見ると平家はカウンター裏で
スタッフ何人かと開店準備をしていた。恐る恐る声をかける石川。
「あの〜、すいません、チーフ」
「あ、チャーミー。ハハッ、すごい汗だね。何?」
「あの〜、石黒さんに言われたんですけど、2階のシャワーを
使わせてもらっても構わないでしょうか?」
「うん、いいよ〜。裏の階段あがってドア開けると事務所に
なってるから、そこ抜けて奥にシャワー室があるし」
「はい、ありがとうございます」
石川は控え室に戻り自分の荷物と私服を取り、裏口のドアを開ける。
ドアを開けると目の前には隣接するビルの壁。ビルの狭間は薄暗く
風もあまり通らない。ドアから向かって右側には2階に上がるための
少し錆びたスチールの階段があるが、まだ石川は2階に上がったことが
なかったから、少々恐い気もしていた。が、別にそんなことを気にしても
しょうがないのでとりあえずは階段を上る。手すりは少し歪んでいた。
223 :
クズ学生:2001/05/20(日) 01:59 ID:VJeUQVRU
スチールのドアを開けると事務所の明かりは着けっぱなしだった。
この時は鍵もかけないで不用心じゃないかと思ったけど、あとで
話を聞くと『こんなところどうせ人通りは少ないし、盗まれる時は
何をやっても盗まれるから関係ない』とのことらしい。
夜になると平家さんを含む何人かのスタッフがいて仕事をしている
らしいが、この時間ではまだ誰も来ていないようだ。石川は来客用と
思しき大きなソファーの横を抜けてシャワー室と書かれたドアを開ける。
ジャーーーーー!
「キャッ!だ、誰?」
「あ、あ、す、すいません!」
驚いたのは石川の方も変わりはない。中の水の音に気付かなかったのは
自分の落ち度であるとはいえ、鍵もかけずに店のシャワーを使うのは
どう考えても不用心過ぎるんじゃないか。事務所の明かりが着いてたのも、
この人がいたからだったようだ。
「ご、ごめんなさい。誰かが入ってるって気付かなくって。
すいません。出ます」
「ん? 石川?」
「え? はい。どなたですか?」
「私、圭織」
石川もひょっとしたらこの人なんじゃないかな〜っていう予感は
あったんだけど、まさか本当に飯田だとは。この人はこういう
ちょっと抜けたところがあるんだよな。
224 :
クズ学生:2001/05/20(日) 23:20 ID:2WdCKM2c
ガチャッ!
「ふぅ〜っ、気持ちいいね〜。お待たせ」
「あ、はい」
シャワー室から出てきた飯田。軽く色を抜いたストレートの
ロングヘアを丁寧に拭きながらソファーに腰掛ける。
「石川はここのシャワー使うの初めてだったよね。ここ
あんまりお湯の出がよくないからびっくりするかもよ」
「え、そうなんですか? ありがとうございます」
カチャッ
「練習、頑張ってるみたいだね。期待してるよ」
「は〜い。頑張りますよ〜。ハハハッ」
バタンッ。キュッキュッ、ッシャ〜〜〜〜!
・・・・・・・・
「あ、チーフ。ありがとうございました。お2階の戸締まりは
どうしましょうか?」
「はい、お疲れ〜。2階はね〜、すぐに定さんが行くからいいや。
でね、チャーミー。フロアの掃除してもらうから」
「あ、はい。わかりました」
ここ最近は非番の時にも練習などのためによく店に来ているんだが、
平家はそのたび石川に店内掃除などの比較的楽な仕事を言い渡す。
そしてその仕事が終わると小遣いと称して2000〜3000円程
渡してくれる。それに関しては石川としても多少気がひけるものの、
貰えるものは頂くのが礼儀ということで素直に受け取っている。
結局中澤さんの紹介ということで気を遣わせてるのかな〜と思うと
なかなか複雑な心境になる。仕方ないのかな。
225 :
名無し娘。:2001/05/21(月) 10:19 ID:Rfnltd3E
744 名前: クズ学生 投稿日: 2001/05/21(月) 01:27
>>741 羊よりはマシだと思うが
20 名前: クズ学生 投稿日: 2001/05/09(水) 05:50
こっちID表示されんの?
つまんなくなるね、そうなると
217 名前: 名無し募集中。。。 投稿日: 2001/05/08(火) 02:46
キショイなマジで。
ファンサイトと変わらんな。
223 名前: クズ学生 投稿日: 2001/05/08(火) 02:49
>>217 羊見て言え(w
344 名前: クズ学生 投稿日: 2001/05/07(月) 02:18
>>341 別にいいんじゃないの。羊はそんな感じの
ところだと思うし。GM一歩手前みたいな。
罵倒もOKなGMみたいな。
794 名前: クズ学生 投稿日: 2001/05/06(日) 20:19
>>792 一応雑談スレには住み着こうかと思ってるんだが。
羊の雑談スレはこっちより入りづらい(w
148 名前: 名無し中 投稿日: 2001/04/26(木) 13:26
>>146 ベーグル君じゃないかな?
154 名前: クズ学生 投稿日: 2001/04/26(木) 13:34
>>148 あいつは単なるクソ。
158 名前: クズ学生 投稿日: 2001/04/26(木) 13:48
>>157 塾長は最近あんまり来てないな〜。
でも、言うほど固定ハンいないし、羊
226 :
クズ学生:2001/05/21(月) 23:46 ID:nSh/a4J.
>>225 こんなのまとめて、俺より暇人なんじゃねえのか?
まあ、ここに書いてることは否定しないけどな。
俺の意見だよ。羊も狼もちゃんと使い分ければいい
ように思うんだよな。
>>226 これどっかのコピペだYo!
ま、2chですから。コテハンは叩かれてなんぼ。
こういうこともあるってことで。がんばっておくれやす。
228 :
クズ学生:2001/05/22(火) 03:55 ID:tcbGQJPY
>>227 いや、これ全部俺の発言なんだけどね(w
俺は八方美人でいられるような性格してないから。
でも、羊を卑下してる訳じゃないっていうこと
だけはわかってほしい。
229 :
まだダメ:2001/05/22(火) 13:26 ID:xFcxVr4s
つーかさぁ、・・・(続きはメールで・・・。)
230 :
クズ学生:2001/05/22(火) 15:57 ID:u1OOoO5U
「・・・・はぁ〜っ」
仕事場から早く帰ったとはいえ、まだ日の入りも早いために
空は既に薄く藍に染まり始めてる。鱗雲は夕焼けに照らされて
朱と灰色のコントラストを描いていた。
石川はまっすぐ家に帰る気にならなかったのか、いつも立ち寄る
ファミレスでしばし時間を潰していた。そしていつもは頼まない
ようなヨーグルトパフェを頼んで少しずつ口に運んでいた。
「はい、ありがとうございました。御会計840円になります」
「あ、はい。わかりました。どうぞ〜」 ガサッ、ゴソッ
「はい、1050円からのお預かりで。210円のお返しです」
「は〜い、どうも〜」 ガサッ、チャッチャリッ
「ありがとうございます。またお越し下さいませ」
会計を済ませながら、ふと店内を見回す。当たり前のことだけど、
まだ矢口は来ていない。石川は視線を落として財布を覗いた後
軽くレジに向け会釈をして店を出た。
風はまだ肌寒いものの、ほのかに春の気配を帯びているようだ。
ほ・ぜ・ん
232 :
クズ学生:2001/05/24(木) 00:48 ID:4urEwZxY
何となく普段と違う道を通って帰ろうと思い立ち、遠回りをして
公園に寄ることにした石川。だいぶ遠回りになるということで
普段はまず通らないルートだけど、夜道の安全を考えると多分
こちらの方がいいように思われる。ただ、この付近での夜歩きは
どっちにしろ危険だから、気分に差が出る程度のものだ。
公園は高層ビルを背にしながらも大通りに面しており、かなり
開けた感がある。中央の噴水は中からライトアップされているものの
公園全体を囲むように等間隔に立つ橙色の街灯の明かりが強いために
淡い赤橙色の影が石川の足元にゆるやかに伸びていた。そんな中で、
空に浮かぶやや欠けた月だけが、やけに白く目立っていた。
(・・・・夜だとあんまり人いないんだな)
手持ち無沙汰のまま何となく噴水に近付く石川。流れ出す水の音に
気を取られてたのか、近付いて来る物音には気付かなかったようだ。
ガァーーーーーーッ、ガッガッガッ
「あ、ごっごっごっ、ごめん!どいてーっ!」
「えっ、あ、キャーーー!」 ガツッ、ドッ、バシャ〜ッ!
ふと振り向くと一人の男の子が噴水の中に片腕まで突っ込んでいた。
どうやらスケボーで滑ってて制御がつかなくなったらしい。自分の
せいということもあり、石川は恐る恐るその男の子に声をかける。
「・・・・・あ、あの〜、大丈夫ですか?」
「あ、・・・・・う、うん」 ピチャッ!
「ハッハッハッ、な〜にやってんだよ〜、ユウキ」
公園内のちょっとした高台から一人の女の子が笑いながら降りてきた。
どうやらこの女の子と噴水に突っ込んだ男の子は知り合いのようだ。
石川はどう対処したらいいものかと思いつつ、ただ苦笑いを浮かべていた。
233 :
クズ学生:2001/05/26(土) 00:43 ID:bu.5PR4c
今日は書ける状態ではありませんでした。
保全sageです。
234 :
名無し娘。:2001/05/26(土) 02:22 ID:WKssGcqw
>>233 無理しないように書き続けてくれたらいいよ。
ずっと楽しみに読んでるから。
235 :
クズ学生:2001/05/26(土) 12:56 ID:Zddz4Yyw
「何やってんだよ〜。肩口までびしょ濡れじゃねえかよ」
「あ、ごめんなさい! とっさには避けられなくって・・・・」
「い、いや。大丈夫だから。僕が悪いんだし」
そういうと男の子は着ていた上着を脱いで袖の辺りを搾り上げ
始めた。その様子もまた何か頼りなさげで微笑ましく、連れの
女の子は終始笑いっ放しだった。
「ごめんなさい。クリーニング代とか出しますんで・・・」
「いや、いいよ。な、ユウキ」
「あ、はい。そんなに気ぃ遣わなくっていいよ」
「いいんですか? すいません〜、本当に」
「じゃ〜、そんなに言うんだったらメシとかおごってよ。
そんなに吹っかけることはないからさ」
「あ、はい。わかりました・・・・」
そういうと女の子はスタスタと歩き始めた。そしてその後を
追うように男の子もスケボーと上着を担いで歩き始める。
石川はちょっと戸惑いながらも二人の後について行く。
『何やってんだよ〜。まさかあの姐ちゃんに見とれてたんか?』
『いや〜、別にそんなんじゃないっすよ〜』
『ハハハッ、ま〜食費も浮くみたいだし、ラッキーだな』
(う〜ん、・・・・本当に見とれてたなんて、言えないよな)
236 :
クズ学生:2001/05/26(土) 12:59 ID:Zddz4Yyw
>>231 次のレスのメール欄にお礼は書いたんだけど、
普通は気付かんわな。まあ、保全ありがたいっす。
>>233 そう言われるとありがたいっす。ただ、いい加減
話を進めないといけないなとは思ってるんで、
ちょいと焦ってますよ。
237 :
クズ学生:2001/05/26(土) 13:01 ID:Zddz4Yyw
238 :
クズ学生:2001/05/27(日) 08:51 ID:iZl6xXf6
保全します
239 :
クズ学生:2001/05/27(日) 23:50 ID:dz9zX6Tk
女の子の後を追い歩き、着いたのはさっきまでいたファミレス。
石川はちょっと拍子抜けしたような表情を浮かべたが、すぐに
我に返り、二人と一緒に店内に入った。
(はぁ〜〜っ、しょうがないな。またドジっちゃったよ)
二人は見るからにいつも遊んでますという感じの風貌だった。
石川は昔からそういうタイプの人間には目を着けられ、からまれる
ような所があったので、今度もまたそうなのかな〜という思いが
何となくあった。自分が優柔不断で煮え切らない人間だというのは
わかっていたんだけど、だからといって自分の方から変わろうと
しない、そんな自分が情けなく感じられた。
「・・・・・・お〜い、何ボ〜ッとしてんだよ」
「・・・・えっ? あ、ああ〜。いや、何でもないです」
「何? 私らんこと怖がってない? 別に取って喰おうって
言ってるんじゃねえんだしさ〜。気楽にしてよ〜」
「何っすか、その口調。口説いてるみたいっすね」
「は〜っ、何言ってんだよ〜。バ〜カ、ハハハッ」
軽く冗談を言いながら二人が並んで席に着く。そして石川は
二人の向かいに座る。なぜか少し申し訳なさそうな顔をして。
注文を聞きに来たウェイトレスはついさっきも石川の注文を
聞いた人なんで、どうしたんだろうという困惑の顔をしていた。
「御注文の方はお決まりでしょうか?」
「じゃ〜、ディナーセットAとアメリカンで」
「あ、僕も同じやつで」
「あ、私はアメリカンで。お願いします」
「はい、かしこまりました。少々お待ち下さい」
ガサガサッ、タッタッタッタッ
240 :
名無し娘。:2001/05/28(月) 13:29 ID:MGwJ2IdM
( ^▽^)< 晒しage
241 :
名無し娘。:2001/05/28(月) 13:57 ID:ZohZ.KLo
>>228 >俺は八方美人でいられるような性格してないから。
お前バカじゃねえの?
こういうのは八方美人とかそんな次元じゃなくて
ただの陰口だろ
お前が他の場所で陰口叩いてたってことだろ
242 :
名無し娘。:2001/05/28(月) 19:12 ID:09uMLTxs
きたか。
ユウキ。
243 :
名無し娘。:2001/05/28(月) 19:15 ID:9BegAuYc
まぁまぁマターリマターリ
って言えば良いのか?この場合?
244 :
名無し娘。:2001/05/28(月) 19:43 ID:GN8aCApc
( `.∀´)<マターリしなさいよ!
245 :
クズ学生:2001/05/29(火) 00:41 ID:pd1QCoNw
>>241 あ、俺バカだよ(w
・・・まあ、そのことに関してははっきり言って
否定は出来ないな。気分を害した人間もいると思う。
フォローになってないとは思うけど、勘弁してくれ。
>>242 さて、どうなるんでしょうか?(w
>>243 すまん・・・
>>244 ごめん、ダーヤス・・・
246 :
まだダメ:2001/05/29(火) 02:17 ID:G6NAj8n2
保全&正解
クズ学生はオトコDEATH。
247 :
名無し娘。:2001/05/29(火) 17:57 ID:8CQmVTj2
age
248 :
クズ学生:2001/05/30(水) 01:56 ID:thezcssc
頼む・・・・・あんまageんといてや。
あかん、もう二日も書いてへん。筆が進まん。
エピソードの繋ぎがうまく行かねえんだよな。
という訳で、保全sageです。
249 :
まだダメ:2001/05/30(水) 02:22 ID:iCfq9Kcg
>>248 姐さん、ワタシもよ。筆おろし・・・じゃあなくって、筆がすすまないの。
整理痛だし、かなりブルー・・・。
250 :
名無し娘。:2001/05/30(水) 18:57 ID:uLDcrgmE
age
251 :
クズ学生:2001/05/30(水) 23:42 ID:6XpWAfls
ガヤガヤッ、ガヤガヤッ
市井:「えっ、あんたは食べなくっていいの?」
石川:「あ、はい。さっき食べたばっかりなんで」
ユウ:「そうなんだ〜」
市井:「あのさ〜、そういえばさ〜、あんた最近よく
ここで食べてるよね。結構見かけるんだよね」
石川:「はい。近くでバイトしてるんで、帰りに寄るように
なったんですよね。遅くまで開いてるんで」
市井:「あ、ごめん。多分歳とか近いだろうからタメ口で
いいよ。私の方が下だったら何か嫌だし」
石川:「私17ですよ、今」
市井:「あ、そう。私と同い歳なんかな、そうなると」
ユウ:(もっとオトナっぽく見えるんだけどな〜。
市井さんと同い歳なんだ〜)
石川:「それじゃ〜タメ口で行かせてもらうけど、貴方は
それでもいいんですか?」
ユウ:「あ、はい。僕は市井さんより年下なんで、問題ないっす」
市井:「まあ、歳云々でそういうの気にするのも古臭い性分だと
思ってるんだけどな、自分でも」
石川:「あ、ごめんなさい。二人の名前まだ聞いてないんだけど」
市井:「私は市井紗耶香。紗耶香って呼んでくれればいいから」
ユウ:「僕は後藤ユウキ。市井さんからはユウキって呼ばれてるけど
別に何て呼んでくれても構わないから」
石川:「じゃ〜、ユウちゃんでいい?」
ユウ:「あ、はい。わかりました。それでいいっすよ」
市井:「おいおい、な〜に顔赤くしてんだよ、ハハハッ」
ユウ:「いや、そんなんじゃないっすよ〜、市井さん」
市井:「で、あんたの名前は? まだ聞いてなかったね、ハハッ」
石川:「石川梨華。梨華って呼んでくれればいいから」
252 :
名無し娘。:2001/05/31(木) 00:07 ID:ZePiZXoE
( `.∀´)<ん?文章の書き方が変わったようね!
頑張んなさいよ!応援してるから!
253 :
名無し娘。:2001/05/31(木) 00:14 ID:JTnusnXM
一瞬、「妄想楽屋裏」かとオモタヨ(w
ちと動き始めたか? アラシに負けずにがんばれ
254 :
名無し娘。:2001/05/31(木) 18:16 ID:xrftgnwc
age
255 :
名無し娘。:2001/05/31(木) 18:56 ID:lpCaLIm.
( `.∀´)<筆が進まない時は、私のウインクで元気出しなさいよ!(二ターーリ、バチ、バチ)
どうよ!元気出たでしょ!
そして、sageとくわよ!
256 :
クズ学生:2001/06/01(金) 00:29 ID:IrFOz/1Y
いっぺんにレス。
>>246 こんな男臭えネナベはいないっすよ(w
>>249 大丈夫ですの? マタニティーブルー!
>>252 そうかしら? 人間日々変わりますしね
>>253 フランクな会話のみだとそう見えるのかも(w
>>255 は、はい・・・元気出ました。適度に頑張りまっす!
257 :
クズ学生:2001/06/01(金) 00:36 ID:IrFOz/1Y
カチャッ、カチャッ
店員:「お待たせ致しました。ディナーセットA二つと
アメリカン三つになります。御注文は以上で宜しいでしょうか」
市井:「はい。結構で〜す」
店員:「恐れ入ります。それではごゆっくりどうぞ」
石川:「あのさ〜、いきなりこんなに馴れ馴れしくっていいの?」
市井:「え? あ〜、別にいいんだよ。あんまり遠慮されるのも何か
ムカつくしさ。っていうかさ〜、あんたまだウチらのこと
怖がってない? 大丈夫だって、ウチら所詮ヘタレだからさ」
石川:「あ、ああ、そう? だったらいいんだけどさ」
市井:「まあそりゃ〜いきなり会ったばっかりでこんなに馴れ馴れしく
喋るっていうのに抵抗持つタイプもいるっていうのはわかるよ。
そういう意味じゃ結構古臭いタイプかも知んないね〜、あんた」
石川:「うん、そうかも知んない」 カチャッ、スーーーッ
市井:「あ、梨華〜。携帯あるでしょ。メアドとか教えてよ。あんたの
暇な時とか一緒に遊ぼうよ。いつもこいつとだとつまんねえし」
ユウ:「え、そうなんっすか?」
市井:「まあ、いつもお前とばっか遊んでる訳じゃねえけど、
代わり映えしないだろ、普段の知り合いばっかだとよ」
石川:「うん、それは別に構わないんだけど、私あんまりカネないよ」
市井:「大丈夫だって。うちらだってカネないのは同じだよ。そんな
カネのかかんない遊びばっかりやってるぜ、いつも」
石川:「あ、そうなんだ〜」
市井:「そうだよ〜。そんなカネだって湧いて出てくるもんじゃねえし」
石川としても、まだ完全に信用した訳ではないけど、こうなったら
あんまり警戒してもしょうがないんじゃないかという気も起こっていた。
都会に出てきて、多少今までより背伸びしてるんじゃないかと思うけど
今はとりあえず日々起こることを楽しみながら出来る限り何でも吸収して
いければいいんじゃないかと、前向きな展望をしている。とにかく
こっちに来てアパートの人以外で初めて出来た友達だというのもあり、
緊張してる反面、楽しんでるところもあるといった感じか。
258 :
名無し娘。:2001/06/02(土) 01:14 ID:tJ.iEVGk
sage
さげ
261 :
クズ学生:2001/06/03(日) 01:57 ID:0kyqcSXI
二人と別れて家路に着く石川。今度はいつも通りの道を歩く。
本当はカネの余裕が出来たら自転車でも買いたいと思ってるんだが、
そこまでの金銭的余裕はないというのと、バイト先に駐輪場が
ないというのが自転車購入の妨げになっているようだ。
いつものようにメールチェックをしていると、普段見慣れない
名前の人からメールが来てるのに気付く。何だろうと思いつつ
チェックすると、それは以前オーディションで一緒になった
吉澤ひとみという子からのメールだった。
(ん? 何だろう、あの子?)
そう思いながらメールを開けたら、これもまた妙にさばけた、
あの子らしいと思えるような文章が入っていた。
『やっほ〜、とみ子だぴょ〜ん!(0^〜^0)元気してる?
今度の日曜ヒマ?一緒に遊ぼうよ。返事待ってます。
以上、毎日退屈なとみ子でした〜。バハハ〜イ』
(・・・・・何かキャラが掴めないな〜。まあ、いっか。
日曜だったら空いてるから〜、OKっと)
少し困惑しつつも了解の返事を出す石川。あんまり友達付き合いが
増えるのはいかがなものかと思いながらも、寂しい思いをする
よりかはだいぶマシだなと、眉を下げて笑みを浮かべていた。
262 :
まだダメ:2001/06/03(日) 06:42 ID:vUkOXVJw
クズやん、先にこの板、抜けます。But、君とはずっと。な。
263 :
クズ学生:2001/06/03(日) 22:06 ID:h7fGYh1I
今日も書けそうにないんで保全sage
>>262 そんなこと言わんといて下さいよ。何か俺が
狼に行ってる間に色々叩かれたみたいですけど、
気にせずやっとけばいいんじゃないでしょうか。
詳しくはメールを下さい。
264 :
名無し娘。:2001/06/04(月) 01:48 ID:16SIudao
普通三人称の小説の地の文で「〜なんだが」っていうのは使わないんじゃないかい?
265 :
名無し娘。:2001/06/04(月) 02:08 ID:1g41/RZ2
おぉ、再びいしよしのヨカーソ(ワラ
266 :
クズ学生:2001/06/04(月) 04:35 ID:omkx518Y
>>264 どの時のことでしょうか?この文の中では地の文の人称をかなり
変えたりしてるんで、混乱するかも知れませんね。俺の場合表現が
拙いというのもあり、読みにくいかとは思います。その際には
指摘して頂けると非常にありがたいです。
>>265 さ〜、どうなるんでしょうね〜(w
っていうか、全然筆が進まないんじゃよ〜。
どうしようかな〜っていうんじゃなくって、
単純に表現方法に困ってる状況。参ったな〜
267 :
名無し娘。:2001/06/04(月) 08:22 ID:wKVPbD3I
>本当はカネの余裕が出来たら自転車でも買いたいと思ってるんだが、
ここだろ
268 :
クズ学生:2001/06/05(火) 00:38 ID:WDU/mo0s
>>267 あ、そこですか。
俺自身は書いてて全然気にならなかったんですが
多少普通の小説とかを読んで調べてみますわ
269 :
クズ学生:2001/06/05(火) 13:39 ID:6b66l1Q2
緊張し易いかどうかの程度差というのは人によっては結構如実に
違うんだろうが、人の前に立って何かするなら多かれ少なかれ緊張の
色は表われるものだ。それも、自分が普段から知ってるような人の
前でなら兎に角、知りもしない聴衆を目の前にしたらそれだけで声も
うわずったりして畏縮してしまうものだろう。特に日本人は一般に
演説なりパフォーマンスに不向きな傾向があるようだが、それも
人前で何らかの発表をしたりする機会が少ないことに起因するらしい。
そういう意味で言えば、今の石川の状況はありがたいものなんじゃ
ないかとは思われる。実際に客から間接的にとはいえカネを取ってる
状況の中で、人前でパフォーマンスをすることの練習をさせてもらえる
チャンスが与えられたんだから、かなり恵まれた環境にあると言えよう。
ただ、今の石川にはそんな悠長なことを言ってる余裕は微塵もなかった。
本番当日、開店前のリハーサルもそこそこにして普段通りの
接客をする石川。それでも、心ここに在らずという様子は
一緒に働いてるホステス連中から見れば痛々しい程にわかる。
「ん〜、チャ〜ミ〜ちゃん。どうしたのかな〜?何か
すごいモジモジしてるけど、気になることでもあるの?」
「・・・えっ、いえ、何もございませんことよ、ホホホッ」
「そ〜〜。だったらいいんだけどね、ハハハハッ」
「・・・・・あ、すいません〜。ちょっとお席外します」
「あ、そ〜? すぐに戻ってきてね〜」
「ハ〜〜イ、チャオ〜〜!」
スッ!タッタッタッタッ!
270 :
名無し娘。:2001/06/06(水) 17:35 ID:z29GdqdU
age
271 :
名無し娘。:2001/06/06(水) 23:21 ID:lPNbw/X2
地の文(客観描写)で片仮名"カネ"もちょっと気になるな。
どうだろう。
272 :
クズ学生:2001/06/06(水) 23:30 ID:Yt.qxfGg
>>271 「カネ」は一般名詞の「お金」のことですが、これは
俺の名詞の使い方だから、慣れなきゃ不自然に思われる
かも知れませんね。ただ、それは書き手の問題なんで。
何か「金」と書くと「きん」を連想しちゃうんですわ、俺。
273 :
名無し娘。:2001/06/07(木) 00:23 ID:ixmE3Mug
>>272 船戸与一はそれと同じ理由で「金銭」と書いて「かね」と読ませていたなあ
274 :
名無し娘。:2001/06/07(木) 00:32 ID:GPwqXaJ2
俺は「カネ」=「お金」って普通に読めたぞ。
ま、関西の人間だからかもしれんが。
275 :
クズ学生:2001/06/08(金) 01:59 ID:AcLzHz/s
これから始まるナイトショーの衣裳に着替えるため、控え室に
戻る石川。その控え室には何人かのスタッフが休んだりしていた。
緊張に指を震わせながら衣裳のボタンを閉じる石川の肩にふと
小さな掌がかぶさる。振り返り見上げると、ソニンの顔があった。
「チャ〜ミ〜、頑張りな。すっげえ緊張してると思うけど、
最初はみんなそんなもんだってば。な、気楽に行こうぜ」
「ソニンさん・・・・・・。はい、頑張りますよっ!」
先輩の気遣いに石川の心は多少の落ち着きを取り戻した。が、そんな
先輩もいる中、前に座り新聞を読む石黒は冷淡な言葉を投げかける。
「気楽に行くのもいいけどさ、客からカネ取ってやってる
っちゅうことだけは忘れないでやってくれよ」
「は、・・・・・はい。わかってます」
「・・・・・・・・」
その言葉にソニンは呆れ返っていた。これじゃ〜単に新人バイトを
いびって楽しんでるだけなんじゃないか。ただ、そう思ってたとしても
石黒に何か言える訳でもない。ソニンは自分にそんな度胸なんかない
ということをわかっていた。さっきよりも緊張の度合いを増した石川の
表情を伺いながら、ただ黙るしかないソニン。
「あ、チャ〜ミ〜ちゃん。もうそろそろ出番だから、ステージ裏に
スタンバッてちょうだいね。お願いしま〜す」
「はい、わかりました!」 ガタッ!
石川を呼びに来たフロアースタッフの声に応え、石川はステージ裏に
回り、次の指示を待つ。店内は紫を基調とした妖しいライトアップが
なされており、緩やかに回るミラーボールが何やら古めかしい。
276 :
クズ学生:2001/06/08(金) 02:02 ID:AcLzHz/s
>>274 いや、出身は関東なんだけどね。
関西来たのも大学からだし。でも、
そんなに不自然だったかな〜?
277 :
クズ学生:2001/06/08(金) 23:32 ID:Vjxk4GMY
保全します
278 :
271:2001/06/09(土) 11:06 ID:ObDQxyL2
>>276 い、いや、そんなに気にしないでくれ!そんなに気にされると
ヘコむ。好きなように書いてくれ!基本的には羊で一番の楽しみ
がこのスレなんだから。
279 :
クズ学生:2001/06/09(土) 23:34 ID:zsnfyNGQ
>>278 そう言ってもらえると嬉しいっす。いや、自分としても
読み易い表現法を探るために色んな人から建設的意見等が
あるようなら受け付けるという方針でやってるんで。
まあ、俺が普通の小説とかをもっと読めばいいんだろうけどね。
ちなみに、この先1週間ほど本当に一切更新出来ない可能性が
あります。出来る限り自分で保全sageをしますが、もし俺が
丸一日以上書き込みをしてない場合はどなたかに保全して
頂きたいと思います。手前勝手な言い分ですが、よろしくお願いします。
あいよ、やっときましょう。
281 :
リハ中:2001/06/10(日) 13:42 ID:oh6ousq6
クズ学がんがれ!
282 :
名無し娘。:2001/06/10(日) 21:45 ID:cMKGV0ZE
とりあえず
283 :
y2k:2001/06/10(日) 21:47 ID:SIEaqoiQ
284 :
271:2001/06/11(月) 02:10 ID:nj/eS7Kk
オゲ。hozen
285 :
リハ中:2001/06/11(月) 22:19 ID:D/1kkcgQ
ほぜ。
286 :
265:2001/06/12(火) 03:27 ID:owhkX3wA
いつも読んでるヨーン
更新なくて寂しいヨーン
早く帰ってきてくれヨーン
保全だヨーン
一回やってみたかったんだヨーン(ワラ
287 :
クズ学生:2001/06/12(火) 15:33 ID:ouvJt3lA
皆さんありがとうございます。
もうしばらくお待ちください。
保全しに来たYO!
289 :
クズ学生:2001/06/13(水) 23:17 ID:YRdQQE6s
モー。たいsage。
291 :
265:2001/06/15(金) 03:28 ID:7uHGlluA
サマレレ愕然ホゼン・・・眠・・・zzz
292 :
名無し娘。:2001/06/15(金) 03:54 ID:pdFwg.c6
こいつの文章ってどうなん?下手じゃねえ?
293 :
y2k:2001/06/15(金) 12:27 ID:Z5.zAK6.
まあ大丈夫だろうけど、保全。頑張れ。
294 :
265:2001/06/16(土) 03:02 ID:Axqo9Z5w
@ @
蝗を喰う( ‘д‘) 萌えホゼン
モウ 1シュウカン タタヨ ・・・
295 :
クズ学生:2001/06/16(土) 09:24 ID:aRYQbfVM
>>294 ゴメソ。今出先にいるんだよ。
月曜から始めるから、もし待ってくれるなら
待ってて下さい。もういいやっていうならそれは
それで構いません。
待つッス月曜までポイズン!
297 :
名無し娘。:2001/06/18(月) 00:28 ID:D46rVSFg
あしたかぁ。たのしみ
298 :
クズ学生:2001/06/18(月) 13:47 ID:g0fyyrDM
ザワッザワッ、ザワッザワッ
『え〜、皆様お楽しみの最中かと存じますが、ここで手前共に
よりますナイトショーを御覧頂きたいと思います』
「いよっ、待ってました〜! ヒュ〜ヒュ〜!」
「今日は誰だい? やっぱり真矢嬢かな〜?」
ガヤガヤッ、ガヤガヤッ
店内アナウンスの声が鳴り響き、照明パターンが変わる。普段からよく
来てくれる客は毎日こういったショーをやるということを知っているため、
歓迎の声をあげてくれる。が、あまり馴染みのない客だと少し戸惑い気味の
様子だ。普通こういった店ではこのようなショーのサービスはしないからだ。
というのも、一般にショータイムを設けるような店はランパブのような裸の
サービスをOKとしている店であることが多く、ここのように過激な
サービスを認めていない店でショーをやるところはほとんどないらしい。
『さて、今夜は当店期待の新人、チャ〜ミ〜によります
ソロパフォーマンスを御覧に入れます。それでは登場して
もらいましょう。チャ〜ミ〜、ソッ、カモーーーンッ!』
パチパチパチパチ、ワ〜〜ワ〜〜ッ!
「お〜〜! チャ〜ミ〜ちゃん、頑張って〜〜!」
「チャオ〜〜! チャ〜ミ〜でございま〜っす」
舞台袖から出てくる石川に、一応拍手を入れて盛り上がってくれる客達。
酔った中年層がほとんどとはいえ、かなり気を遣ってくれるいい客ばかりの
ようだ。先輩ホステスや従業員も盛り下がらないようにと声をあげてくれて
いる。そんな中、件の石川を贔屓にしている中年リーマンだけは妙な
盛り上がりを見せていた。彼の脂ぎった声援に手を振って応える石川。
そしてスポットライトも照明も落としたステージの上に昇り、正面に
かけてあったヘッドセットマイクを頭に装着して、オケが鳴るのを待つ。
更新おめでとsage
300 :
265:2001/06/19(火) 02:15 ID:XGuuKrVg
更新待ってたよsage
石川の運命は・・・・、たぶん(以下略
301 :
名無し娘。:2001/06/19(火) 13:23 ID:FpYpGEuo
sage
期待sage
303 :
クズ学生:2001/06/19(火) 23:46 ID:NSIbB582
『それでは、チャ〜ミ〜に唄って頂きましょう。曲は最近巷で若者に
大流行のあの曲、「ミニミニ!じゃんけんぴょん」です!』
カンカカラン、カンカカランッ・・・・ ツッカンカカラン、カンカカラン
パラパラッパッパッパッ、パッパッパラパパ〜♪
オケの音と共にステージの照明がつき、石川の身体を強く照りつける。
そんな中、石川は今までの練習の成果を発揮するように、笑顔をふり撒きつつ
身体いっぱいにダンスをこなしていった。軽快なオケに機敏なダンス。
その姿にあまり興味を示さなかった客でさえ多少身を乗り出して石川の
姿に見入っている。その様子を見ている従業員たちも、何とか場の雰囲気を
明るく持っていこうと手拍子を忘れない。
「赤あげて〜〜♪ 白あげて〜〜♪ じゃんけんぴょんの じゃんけんぴょん!」
多少息を切らしながらも、まっすぐ客の方を向いて笑顔を忘れずに
明るく唄い始める石川。この段階でかなり汗がにじんできていた。
一般にテレビなどでダンスしながら唄ってる姿をよく見かけるが、
普通は口パクでやることが多いようだ。というのも、別にインチキをして
歌をうまく見せようとしているんじゃなくって、あれだけの激しいダンスを
しながらだったら普通はまともに唄えるはずがないのだ。最近の歌の場合は
特にショーアップの要素が強くなってきてるから、盛り上がれるダンスが
要求されている。そんな中、特にアイドルなんかにまともに唄わせたら酷
というもんだ。だったらライブなんかもそうなのかというと、ことライブに
おいてはその歌手のパフォーマンスを目当てに来てもらうのが主目的なので
多少歌唱の質が落ちたとしても、ナマのパフォーマンスを見せるべきという
意見が一般的なようだ。
プロでさえそうなんだから、素人の石川としては大変な苦労だったようだ。
ナマのパフォーマンスに於いては、笑顔を保つことや発音をはっきりさせること
1つ1つが意識しなければすぐ疎かになってしまうくらいに難しいことなのだ。
304 :
名無し娘。:2001/06/20(水) 22:47 ID:5HAakWY.
更新みっけ
ほぜーむ
305 :
クズ学生:2001/06/21(木) 02:42 ID:.dmSUsdc
客を見ながら微笑んでるように見える石川だが、実はパフォーマンスを
始めてから客席に目の焦点が合っていない。いや、正確に言うと焦点を
合わせてる心の余裕がないという感じだろうか。客の反応がいかなるものか
見たいというのはあるし、見なければいけないというのも確かなことだ。
しかし、今は客の反応を受け入れられる状況ではない。客や従業員の声は
ほとんど雑音にしか聞こえないし、オケの音もちゃんと聞き取れてる
訳じゃない。ただリズムパートの早さに合わせて振りに対応するように
唄ってるだけなのだ。
客の反応はそこそこ良かった。特に石川に熱上げてる中年リーマンなどは
両手を挙げて喜んでいる。が、そんなもん興味ないよっていう感じの客も
勿論いるし、そういう人はステージの方なんぞ始めから向いちゃいない。
そしてもう一人、ステージの袖から苦い顔をしながら石川を見つめている
石黒の姿があった。客席で接客しながらステージを心配そうに見る飯田とは
好対照なくらいに厳しい視線を送っていた。
「おいし〜い〜 牛乳〜 飲むのだぴょ〜〜ん♪ カッカッ!
赤あげて! 白さげて! じゃんけんぴょん!」
パッパパッ、パッパッパパッ♪ パッパパラッパッ
歌も中盤に差し掛かり、ようやく客席の様子を見ようという余裕の
出て来た石川。決めポーズを取りながらお客に愛想を振りまく。
(このまま行けば大丈夫だよな。 うん、大丈夫だよ!)
そう思い客席を眺めながら次の振りに移行しようとした時、
ステージ上のタイルの目地の間に、靴のヒールが引っ掛かった。
「あっ!」
306 :
クズ学生:2001/06/21(木) 02:48 ID:.dmSUsdc
保全してくれる皆さん、本当にありがとう!
今までお礼言わなくってごめん!
>>299 いつも見に来てもらってるようでありがたい。
>>300 まあ、わかりやすい展開で書いてるからね(w
>>301 ageるなっちゅうの!(w
>>302 関西スレで見かけたけど、同一人物?
>>304 ここ最近本当に筆が進まなくって困ってるよ
307 :
302:2001/06/21(木) 23:01 ID:slje2.76
>>306 同一人物っすよ?
小説読むのが生きがいやからなー
関西スレは・・・
308 :
クズ学生:2001/06/22(金) 00:33 ID:/8d/infI
カツッ、ドタッ!
実際の時間にしたらほんの一瞬だったんだろうけど、石川にはその刹那は
時が止まったかのように長く感じられたし、また時を感じる暇さえない
程に短くも感じられた。
ステージに軽く尻餅をついた石川は、何があったのかというような
惚けた表情でキョロキョロと周りを見回す。事態が飲み込めてない
という雰囲気だった。横にいたスタッフがフォローに入ろうとした
その時、石川の眼に映ったのは、いつにも増して冷淡な表情を浮かべ
こちらを見る石黒の顔だった。石川はその姿を見た瞬間に我に返り、
床に手をつき軽快な動きで立ち上がった。
「ハッハッハッ、いいぞ〜。もっとやれ〜!」 パチパチ
「チャ〜ミ〜ちゃん! 頑張って〜〜!」 ワ〜〜ワ〜〜!
観客は思わぬハプニングに大ウケして、手を叩いて笑っている。
それに申し訳なさそうな顔をしながら舌を出す石川。だが、心中は
決して穏やかではない。今のアクシデントで歌詞はすっかりどっかに
飛んでいってしまった。しかし、練習を積むということは恐ろしいもので
オケの音を聞き取ると、口も身体も歌に合わせて勝手に動いてくれた。
あまり興味のないことを見せられている客からしたら当然のこと
なのかも知れないが、ちゃんとパフォーマンスをこなされるよりも
何らかのハプニングが起こることの方がよっぽど楽しいようだ。
今盛り上がったのも、そのハプニングによるところが大きい。
そんな状況を客と一緒に楽しんでいるスタッフ・ホステス連中と、
口を真一文字に閉じ眉間に皺を寄せながら眺める石黒の姿は、
あまりに対照的であった。
309 :
クズ学生:2001/06/22(金) 00:36 ID:/8d/infI
>>307 そうか〜。関西スレはね〜、あんまり流行んなかったしね(w
310 :
名無し娘。:2001/06/22(金) 21:13 ID:zLfnaHKg
hozen
311 :
クズ学生:2001/06/23(土) 01:07 ID:HJLlcJEA
「ミニミニです! ミニミニです! じゃんけんぴょん!」
パッパカパ〜〜ラッ
「じゃんけんぴょん!」
パチパチパチパチッ、パチパチパチパチッ!
「面白かったぞ〜、姐ちゃん!」 ワ〜〜ワ〜〜
「今度は頑張れよ〜、ハッハッハッ」 ワ〜〜ワ〜〜
パフォーマンスを終えた石川は、客席に向かい深々とお辞儀をする。
ほろ酔いの客に見せるんだったら堅苦しいシビアなショーよりかは
このくらいのコミカルなショーの方がウケがいいのだろう。拍手も
多いが笑い声も多く、いつものナイトショーの後に起きるような
どよめきとは全く違う雰囲気の声援だった。
「ありがとうございます。チャ〜ミ〜でした!」
タッタッ、タッタッ
石川は客席に向かいそう挨拶すると、ヘッドセットマイクを外して
元のところにかけ直し、足早にステージ裏に消えていった。そして
着ていた衣裳の上着を脱ぎ廊下にある脱衣籠に放り込む。
ガチャッ!
「あ、お疲れさ〜〜ん。よく頑張ったじゃない」
「あ、・・・・・お疲れ様です」
控え室に戻り、着替えを始める石川に対してねぎらいの声をかける
ソニン。だが石川はその声に対して別段振り返ろうともせず、ただ
うつむき衣裳を脱ぎながら応えるだけだった。緊張と疲労が入り交じり
気持ちのよくない汗がダラダラと溢れ出てくる。石川はその汗を衣裳の
襟や袖で拭きながらボタンを1つ1つ外していた。
保全。
313 :
クズ学生:2001/06/24(日) 01:54 ID:eISHqaWY
「お疲れ、チャ〜ミ〜」
「・・・・・お疲れ様です」
控え室の入り口、石川が振り返るとそこには腕を組んで壁に寄り掛かる
石黒の姿があった。石川はしばらく石黒の顔を見据えていたものの、
すぐにまた向きを戻し、私服のボタンをかけ始めた。
「お客のウケ、良かったじゃない。でもあれさ〜、ショーを
楽しんでたんじゃなくってさ〜、お前見て笑ってただけだよな」
「・・・・・・・・」
石黒の冷淡な一言に、場の空気は凍る。石川もボタンにかけていた手を
止め、ただうつむくばかりだ。顔を上げようともしない石川に対し
石黒はなおも言葉を続ける。
「途中まではちゃんとやってたよ。それは思う。だけどさ、お前
あの時客の顔とか全く見てなかったよな。そんなの傍から見てたら
まるわかりだぞ。仮にもプロになろうって人間が客の様子もまともに
伺えないでどうするんだよ?」
「・・・・・・・・・」
「でよ、途中でようやく客の表情とか見ようとした時があったけどよ、
あん時もそういう意識でじゃなくって、単に余裕が出て来たから、
このまま行けば乗り切れると思ったから見ただけなんだよな。要するに
気を抜いたってことだよな。で、案の定ミスして、頭ん中が真っ白に
なると。まあ、ありがちなパターンだけどよ」
ガタッ! カッカッ、カッカッ
これ以上聞いてられなかった。全て見透かされたいたという気分だ。
石川は石黒の言葉を遮るように大きな音を立て立ち上がり、自分の荷物も
取りあえず逃げるように控え室を出て、そのまま店の裏口から飛び出ていった。
石黒は首だけ後ろに向け、その姿を冷ややかな眼で見送っていた。
314 :
265:2001/06/24(日) 02:24 ID:gZMCH89g
実生活での昔の俺の姿にダブって見えて、
今回の話は読んでて辛いものがあった・・・
>ただうつむくばかりだ。
>全て見透かされたいたという気分だ。
余裕がない時ってほんとそんな感じなんだよな〜
わざわざ苦言を言ってくれてる人こそ大事にすべきなのに
それさえ聴くのが嫌になってる。
おっと、マジレスすまんね(w
315 :
クズ学生:2001/06/24(日) 02:32 ID:eISHqaWY
訂正:
全て見透かされたいた → 全て見透かされていた
>>314 この文を書いてて思うのが、とにかく主人公の石川に
共感を持ってほしいっていうのがあるんですわ。だから
そういう意見っていうのは結構嬉しかったりする。
苦言を呈してくれる人こそ自分のことちゃんと
見てくれてるんじゃないかな〜って思う、俺は。
>保全してくれる人
いつもありがとうです。ただ、保全カキコに対して
全部レスを返してるとスレ全体の密度も下がるんで、
今後は特別なことがない限り、保全のみのカキコには
レスを返しませんが、ご了承下さい
316 :
名無し娘。:2001/06/24(日) 10:51 ID:Ug6nar8s
確かにこの小説の石川って、なんというか、誰もが持ってる弱い部分
の象徴というか、そんな感じがする。
317 :
クズ学生:2001/06/25(月) 03:58 ID:LjLGVdjY
ダッ! ガバッ!
「おい、飯田! まだ仕事中だろ。勝手な真似すんなよ」
石川を追いかけるために店を出ようとする飯田に怒鳴り付ける石黒。
ちゃんと一部始終を聞いていた訳じゃないのではっきりしたことは
わからないけど、駆け出していった石川の後ろ姿を見た限り、石川と
石黒の間で何があったのかは粗方察しが付く。石黒の言葉に足を止めた
飯田は瞬時に踵を返し、石黒に詰め寄る。
「ねえ、いくらなんでも酷くないかい、さっきの言葉は?」
「うるさいよ、あんた。フロアまで響くだろ。もうちょっと声の
ボリューム下げてくんない? そんなデカい声じゃなくっても
十分に聞こえるからさ〜」
顔を真っ赤にして怒りの感情を露にする飯田に対しても、石黒は
別段何事もなかったかのようなシレッとした顔で応えるだけだ。
「そもそもあんた、人の心配してる余裕なんかないでしょ。
少しは自分の心配したらどうなの? 気合い入れて仕事しなって」
「な! ・・・・・・」
そういうと石黒は控え室に入りゆっくりと椅子に座り、おもむろに
煙草を取り出し店の紙マッチで火を着ける。その部屋にいる誰もが
居心地の悪さを感じている中、まるで動じずに煙草を吸う石黒。
ふと気になって、置き忘れの石川の荷物に目をやるソニン。
318 :
クズ学生:2001/06/25(月) 04:04 ID:LjLGVdjY
>>316 確かに今の段階だと夢と現実の差に落ち込む
弱い石川っていうのが前面に見えてくるけど、
今後は多少なり変化していくと思う。文章が
進むにつれ石川本人の心境に変化が訪れるはずだから。
・・・・・入り込み過ぎだな、俺(w
>>318 それは石川がポジティブになるってこと?(w
最近はage荒らしも無くてマターリしてていい感じですね。
更新頑張ってください。
320 :
クズ学生:2001/06/26(火) 02:26 ID:LEAbFfRo
今日は続きが思い付かんかった
>>319 かもね(w
ここに書かれてる石川は実際の石川をモチーフに
してるんだけど、かなり性格とかもオリジナルで
やっちゃってるからね。どう変わるかはわからんけど
321 :
名無し娘。:2001/06/26(火) 15:51 ID:bu.5PR4c
( ^▽^)< sarasiage
322 :
クズ学生:2001/06/26(火) 23:17 ID:kpRzy/hU
もうどのくらい走ったのだろうか。ただ無我夢中で走ってたから
服の乱れも滴り落ちる汗も気にかけてはいなかった。そして、
ふと足を止めると目の前には公園が見える。なぜ石川は、普段は
通らない方の道を走っていたのだろうか。石川が額を流れる汗を拭き
橙色ライトに照らされ影を作っていると、そこに現れたのは見慣れた顔。
「あ、梨華。どうしたの、そんな汗だくになってさ?」
「はぁっ、はぁっ、・・・・・さ、紗耶香」
息を切らせながら市井の呼びかけに応える石川だが、大粒の汗が流れ出し、
泣いているのと区別がつかない。そして眼はギョロリと見開いており
真っ赤に充血していた。いつもと違う様子であることは明らかだけど、
それでもまるで動じず普段通りの受け答えをするのが市井のいいところだ。
「うんっ、・・・・っち、ちょっとね」
「あ〜さ、こんなとこで立ち話もなんだからさ、
いつもんとこ行こうか。晩飯ってもう食べた?」
「んっ、・・・・っああ、まだなんだけどね」
「じゃ〜行こう。っていうか、いつになったら御馳走して
くれんだよ〜。待ってるんだぜ、うちら」
「ああ、ち、ちょっと待ってよ〜」
こんな時にも変に態度を変えたりしないのは市井なりの気遣い
なんだろうけど、それで今の気分が晴れるかと言ったらそうはいかない。
構わず歩き出す市井の後を追うように歩く石川の表情は、まだ暗いままだ。
323 :
名無し娘。:2001/06/28(木) 01:26 ID:wKdbUJW6
保全です
324 :
クズ学生:2001/06/29(金) 00:30 ID:I07o/OQQ
カランカランッ、カランカランッ!
「いらっしゃいませ。何名様でいらっしゃいますか?」
「あ、二人で、お願いします」
「かしこまりました。奥の席へどうぞ。ご案内致します」
市井と二人で着いたのはいつものファミレス。店員のテキパキとした
挨拶に応えながらスタスタと歩いていく市井の後を、虚ろな表情のまま
ついていく石川。汗を拭こうとするが荷物を店に忘れてきたことに
気付き、ポケットに入ってたティッシュで額を軽く押さえる。
「どうぞ、こちらになります。ご注文がお決まりになられたら
お申し付け下さいませ」
「あ、もう決まってますから。いいですか?」
「あ、そうでございますか。ではご注文はいかが致しましょう?」
「ディナーセットBで、サラダのドレッシングは無しで」
「かしこまりました。そちらのお客様はいかがなさいましょう?」
「え〜っと、・・・・・・じゃ〜、コーヒーセットで」
「かしこまりました。しばらくお待ち下さいませ」
ガサッ、カッカッカッカッ
店内はいつもより込んでおり、いつもの席には座れなかった。
二人の案内された席は店の一番奥にある席で、仕切りがあるため
他の客からはほとんど二人のことは見えない。そこで二人は向かい
合わせにならずに横に並ぶように座り、お互いの表情を横目で
確かめあっていた。暖房が利いている訳ではないものの、石川の
額からは未だ薄く汗が流れ落ちていた。
「・・・・・あ、そういえば、今日はユウちゃんは?」
「あ、ユウキは今日は来てない。家にいるみたいだったけど」
「ふ〜ん、・・・・・・そうか〜」
325 :
265:2001/06/29(金) 02:09 ID:0GisFIUs
久しぶりに最初から読み返してみた。
げ、3月の時点で、市井×ユウキを予測してたのか・・・、とか。
この世界のモーニング娘。たちは放置されっぱなしだなー、とか。
もう、連載開始から半年近くがたつんだなー、とか。
いろんな意味でシミジミしたよ(w
これからもマターリ続けてほしいんだけど、
連載終了までモ。板が持つのか、その辺がちと心配(w
326 :
クズ学生:2001/06/29(金) 03:16 ID:I07o/OQQ
>>325 スマソ、自分でも掲載ペースがあがってないのは
わかってるんだが、今書いてるところ辺りって
実は結構自分でもツラかったりするんだ。それで
筆の進みがかなり悪くなってるんだよね。別に
暇だから狼に行ってるって訳じゃなくって、筆の
進まんストレスを解消する意味で行ってんのよ(w
ただ、今のペースじゃはっきり言って話が進まんしな〜。
半年書いて終わらんつもりじゃなかったんだけどな(w
>この世界のモーニング娘。たちは放置されっぱなしだなー、とか。
これについても考えてない訳じゃないよ。話の中盤から
後半にかけて少々絡みがある予定。実はこの話、まだ
前半部分もロクに終わってないんだ(w
とにかく、読んでくれてる人に。少々ペースはあげる
つもりだけど、俺もこればっかり書いてる余裕もないんで
マターリ待ってて下さいなってことよ。
327 :
265:2001/06/29(金) 04:29 ID:DGFsgs8k
>>326 ありゃ、なんか誤解されちゃった?
他の読者はどうか知らないが、
別に狼に逝こうが他所のサイトに逝こうが
展開が遅いって責めてるつもりは全くないよ。
今までのレスの内容が拙かったのかもしれないけど、
マターリ更新してくれれば俺的にはOK。
つか、俺が読んでる小説スレ系では、
「シアター」・「BAD DAY...」・「共和国...」に次いで古株なんだな(シミジミ
をぉ、あんまり書きすぎると馴れ合いだ、って叱られるか(w
ま、すれ立てた奴は別人だが、今はもうあんたのスレになってるので
自分の思うようにマターリやってね。それだけ。
328 :
クズ学生:2001/06/29(金) 15:19 ID:1YYoO7mw
決して気まずい訳じゃないが、間の持たない沈黙が続く。そこで
石川は自分が仕事の時から客に勧められた酒以外何も飲んでおらず
喉がカラカラだったことに初めて気が付く。口の中も潤ってない
状況で言葉もうまく出ないので、出された冷やを一気に飲み干した。
一方市井はというと、元来冷やは飲まないらしく、冷やには全く
手をつけていない。コップの周りの水滴が、机の上に滴り落ちる。
そうしてしばらくすると、ウェイトレスが重そうにしながら
料理を両手に抱えて持ってきた。茶髪で小柄な、見慣れた笑顔。
「お待たせ致しました。ディナーセットAのお客様、失礼します。
あと、コーヒーセットのお客様、はい、失礼します」
「はい、どうも〜」
「梨華ちゃん、お友達?」
「うん、ちょっとね」
「そう。・・・・じゃ、また後でね」
「うん、じゃ〜ね」
・・・・・・
「ん、何。あの子、梨華の友達?」
「うん、住んでるアパートが一緒なんだ。お隣りさん」
「へ〜、お隣りさんとかと仲いいんだ〜」
「お互い一人暮らしだからかな。仲良くしてくれるね」
「え? 梨華って一人暮らしなの? 知らんかったわ〜」
「だって、言ってなかったもんね〜。聞かれなかったし」
「あ、じゃ〜今度梨華んち連れてってよ」
「いいけど〜、溜まり場にはすんなよ。狭いんだし」
「そんぐらいわかってるよ〜。やった!」
石川が一人暮らしだということは市井にとってはかなり信じ難い
ことだったらしく、驚きと好奇心が入り交じったような弾んだ声で
色々と問いかける。石川の汗も、かなりひいてきたようだ。
329 :
名無し募集中。。。:2001/06/30(土) 04:09 ID:8glhZP86
クズ晒しあげ
330 :
クズ学生:2001/07/01(日) 04:05 ID:nVQrxR0.
「・・・・・で、何があったの?」
「え? あ、・・・・・いや、別に」
市井は言葉を詰まらせてうつむく石川の顔をじっと見つめながら
そう切り出した。その真直ぐ自分を見据える視線に戸惑い、また
しばらく言葉をなくす石川だったが、ゆっくり市井の方を向くと
おもむろに言葉を発し始めた。市井はその様子を伺いながら、
コーヒーを飲む。音を起てないように静かに飲む。
「・・・・・あのね、この間さ、バイト先で自分の歌とダンスを
お客さんに見せるって言ったじゃない、私?」
「ああ、言ってたね〜。それが?」
「その発表の日っていうのが今日だったんだけどね、・・・・でね、
当然一生懸命練習して臨む訳じゃない? でも、実際にお客さんを
前にすると感覚って全然違うんだよ、やっぱり」
「う〜ん、まあそうだろうね〜。例えば学校でみんなの前とかで
発表させられる時とかも思いっきり緊張するしね」
「でね、歌が始まると同時に舞い上がっちゃったんだけど〜、
何か身体が覚えててくえたみたいで、ダンスとかもそれなりに
こなしてはいたんだよね」
「うん、それで、どうだったの?」
「でね、・・・・中盤まで来て多少余裕みたいのが出てきたんだけど
それでちょっと気が緩んだ時にさ、転んじゃってね。で・・・・
その後はね・・・・・・、もうね・・・・・・」
言葉は途切れ、肩はわずかばかり震えていた。石川は下を向いたまま
顔を上げようともしない。市井はその様子をじっと見つめていたが、
石川に触れることは出来なかった。食べかけの料理の湯気がわずかに
揺れて、吊された照明の熱に消えていく。
331 :
クズ学生:2001/07/01(日) 23:22 ID:VGDqqJ4.
「・・・・それで、その後どうしたの?」
長い沈黙の後、重い空気を取り払うようかのに質問する市井の言葉には
どこか怒りに似た冷淡さがこもっていた。石川は少し顔を起こしたものの
市井の方を向く訳でもなく、うつむいたままに答える。
「その後はね、・・・・・控え室に戻ったんだけど、今までその
歌とかダンスの練習に付き合ってくれた先輩が来てね、・・・・・
やってる間に自分がいけなかったと思ったところ、全部的確に
指摘してくれたんだよね」
「・・・・・・・・・」 スゥーーーーッ、ゴクッ
「それ聞いてさ、『あっ、この人、そんな所までちゃんと見てくれたんだ』
と思ってさ・・・・・・・嬉しかった。すっごく嬉しかったんだけどね、
・・・・私結局、その人の期待に応えられず、失敗しちゃったから。
しかもそれが努力及ばずっていうんじゃなくってさ、・・・・何か自分を
過信したからっていうさ、・・・・・何かね、情けなくなっちゃってさ」
石黒の言葉に対する怒りで逃げ出したのではない。自分に対する情けなさで
居ても立ってもいられなくなって、その場を逃げ出してしまったのだ。
そんな石川の言葉に対しても、市井は一言も発さず、ただ何となく石川を
眺めていた。だがしかし、視線は石川に向いていても、焦点は朧げにずれていた。
「それでね、何かいたたまれなくなっちゃってさ、気が付いたら
走り出してて、次に気が付いた時には、あの公園にいてさ、なぜか」
「・・・・・・で、これからどうするの?」
「・・・・うん、今、考えてたんだけどね、今日一日で今までやってきた
こと全部に、・・・・自信が持てなくなっちゃったみたいなの。だから、
どうしようかな〜って」
石川の口から出る弱音。自分に対する甘えと過信を見事に打ち崩された夜。
たった一度の失敗かも知れないけど、もう立ち直れないかも知れない。
そんな石川に対して市井が放った次の一言は、慰めでも哀れみでもなかった。
332 :
クズ学生:2001/07/02(月) 15:49 ID:BMoj7Ke6
>>327 遅レススマソ。いや、俺は馴れ合い云々は構わんと思ってるん
だけどね、そういうのが嫌いな人もいるようだし、そんなに
馴れ合いたかったら狼とかに行った方がいいと思うから。
ただ、感想や意見を述べてくれる書き込みまで排除しなきゃ
あかんなんていうことは一切思ってないし。その辺に関しては
お互いマターリ行きましょうという感じで。
今日は若干ペースをあげてみます。話が膠着気味なんで(w
333 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:44 ID:ctmSywfg
「・・・・・・やめちゃうの、もう?」
「う〜ん、・・・・・どうなんだろう。まだわかんない」
「・・・・お前、中途半端で逃げんのかよ?」
「えっ?」
石川の言葉に対し、市井は口調を荒げてそう言った。石川はその
市井からの思わぬ言葉に、少々戸惑いを覚え、市井の方に顔を向ける。
「そりゃ〜梨華が最初に歌手目指してるって言った時にはさ、
何言ってんだこいつって思ったよ。だけどさ、お前が頑張ってる
姿を見たらな、こいつ本気なんだなって、こいつ真剣に取り組んで
るんだなって思った訳よ。すげぇな〜って思った訳よ」
「・・・・・・・」
「だけどな、たった一度や二度の失敗でよ、もう諦めようかな〜
なんて言われたらさ、それこそ何言ってんだよこいつって思うのよ」
普段はおちゃらけて冗談ばかりの市井が、顔を真っ赤にして石川に
語りかける。そんな市井の姿を目の前にして、石川は何も言い出せない。
周りの客も減った店内、市井の声がより一層大きく聞こえる。
「確かに客を前にしてやったパフォーマンスが失敗したら誰だって
凹むと思うよ。だけどな、そういうのを繰り返しながら徐々に
成長していくもんじゃない、歌手とかって? プロとかだって
失敗したりするのに自分は一回失敗したからってもうやめます
なんて言うのは、あまりにプロの世界を舐めてるんじゃないの?」
「・・・・・・う、うん」
「こんな中途半端なやめ方して普通の生活に戻ってみろ。きっと
挑戦せずに普通に生活していた時より遥かに後悔することになるぞ。
今までの生活捨てて夢目指してんだろ? だったらもっとガムシャラに
突っ走ってもいいんじゃねえのかよ? お前の夢はそんなもんなのかよ!」
真剣な表情で石川を見つめる市井。その瞳はわずかながら潤んでいた。
しかし、その涙は石川に対する苛立ちではなく、自分に対するものだった。
334 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:46 ID:ctmSywfg
「・・・・・ごめん、ちょっと言い過ぎたな」
「い、いや、・・・・・いいんだよ」
「結局は梨華が決めることなんだし、今ツラいのは梨華の方なんだし」
乗り出していた身を戻して、椅子に腰掛ける市井。石川はその様子に
対して戸惑いを覚えながら、視線を落とし弱々しい言葉を返す。
きっと、今日起こったことを話しながら市井に慰めて欲しかったんだ。
弱音を吐いてる自分を見て、きっと市井は自分のことを慰めてくれるん
だろうと、心のどこかで期待してたんじゃないのか。そう思うと石川は
そんな卑しい自分に嫌気がさしてきた。
市井はそんなに優しくはなかったのだ。上っ面な優しさで、適当な慰めの
言葉を吐き捨ててその場を切り抜けようとするほど、石川から離れては
いなかったのだ。それは単に石川のことを思ってのことじゃないかも
知れない。何か市井自身に思い当たる節があったのかも知れない。ただ、
仮にそうだとしても、石川が市井の言葉に心を動かされたのは変わりない。
「私の方から勝手にメシ誘ったのに説教たれちまってごめんな。
気分悪くしたでしょ。今日は私がおごるからさ、それで勘弁してね」
「え、いや、いいんだってば。別にそんな訳じゃ・・・・」
「いやっ! そうでもしないと私の方の気が済まないんだよ」
そう言うと市井は隣の椅子の上に置いていたポーチから財布を
取り出し、2000円札を一枚取り出して伝票の上に置く。そして
そのままスッと立ち上がると、何も言わず帰り支度をし始めた。
「じゃ、また。今度暇な時とかあったら言ってね」
「あっ、ちょっと待ってよ!」
市井はそう言い残すと、石川が呼び止めるもの聞かず出口に向かい
そのまま店を出てしまった。店に残された石川は、依然困惑した
表情のまま、ただ出口の方をじっと眺めているしかなかった。
335 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:47 ID:ctmSywfg
カッ、カッ、カッ、カッ
「・・・・・フッ、何偉そうなこと言ってんだろうね、私」
真夜中の公園。暇を持て余した不良と、社会に捨てられた浮浪者しか
いない場所。市井はさっきまでいたその公園に戻ると、真ん中にある
噴水の周りを巡る囲いに腰掛け、腕で顔を被うようにして突っ伏した。
そしてしばらく、顔をあげることはなかった。周りにいる人間も多少
気にはかけるものの、特に何もないかのように見て見ぬフリをしていた。
カッ、カッ、カッ、カッ
「・・・・・・ハァ〜〜〜ッ」
声にもならないような低い溜め息を静かに吐く石川。帰り道を
行く足取りはあまりに重く、その道のりは悠久の時間の流れに
飲み込まれていくような感覚に襲われた。
市井の言葉が耳に残る。そして今、迷っている。もしこのまま
終わってしまったら、本当に後悔しか残らない人生を送ることに
なるんじゃないだろうか。それだったらわざわざ高校を辞めてまで、
普通に生きてた自分をリセットしてまで夢に向かって走り出した
意味は消えてなくなるんじゃないか。いや、夢に走り出す前よりも
一層修正のきかない生き方しか残ってないんじゃないだろうか。
そう考えては、また足が止まる。
ギィ〜〜ッ、ギィ〜〜ッ
やっとの思いでアパートに着き、薄暗い階段を昇る。頭の中ではまだ
どうしようか決まってない状況だが、時はそんなに待ってはくれなかった。
部屋のドアを見ると、郵便物受けに刺さっていたのは一本の封筒。表には
「浅草橋ヤング洋品店」の文字が。二次試験の結果通知である。石川は
その封筒を手に取って部屋に入り、朦朧とした意識のまま封筒を開けた。
336 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:48 ID:ctmSywfg
封筒の中身は2枚の紙と1枚のMD。そして、『二次審査の意図と結果』と
書かれた紙には、下記のような説明書きがなされていた。
『本人が選んだ2曲を唄わせるという方法の理由としては
(1)本人が選んだ曲ゆえ、本人が唄い易いと思ってる曲だと
推測される。つまり唄い易いと思ってる曲の唄い方を
聞くことによって、本人の出し易い音域や唄い易いテンポ
など、今の貴方が持ってる歌のスキルがよくわかるから。
(2)また、どのようなジャンルの曲を選ぶかということを
知ることにより、貴方の音楽の指向性などが見えてくるから。
(3)さらに、このようなオーディションの場でどんな選曲を
してくるかによって、貴方がいかにこのオーディションに
合わせようとしているのか(気遣いする意識)が見えて
くるんじゃないかと判断したから。
などの理由が挙げられます。
このような基準のもとに、さらに歌自体の能力を総合的に審査
した結果、貴方は二次試験を“通過致しました。三次試験に
つきましては同封の別紙を参照下さい”』
(※“ ”内は別印刷。おそらく不合格者にも“ ”内だけ違う
同内容の書類が送られていると推測される)
そう、石川は二次審査を合格していたのだ。そして、この通知を見た瞬間に、
石川の中で何かが吹っ切れたようだ。石川は険しい表情のまま夜の街を抜け、
バイト先の店を目指す。時計はAM5:00過ぎを指していた。
337 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:49 ID:ctmSywfg
ガヤガヤッ、ガヤガヤッ
「この荷物、どうしましょうか? チャ〜ミ〜来ますかね〜」
「まあ明日にでも来るでしょ。来なかったら裕ちゃんに連絡するし」
「まだあいつ、今日の日当貰ってないんでしょ」
「うん、渡してないね〜。あ、ま〜でも、まだ辞めるって
決まった訳じゃないしさ。そもそもあんた厳し過ぎない?」
「確かにね。でもこんぐらいで辞めるようだったら何やっても
続かないんじゃないの? 特に競争の激しい業界だったらさ」
「ま、そりゃ〜そうだけどね、ハハハッ」
「・・・・・・・・」
もはや早朝といった時刻。店に残ってるのはスタッフと後番の
ホステスが数人だけ。そんな中、仕事が一段落した平家が控え室に
来て石黒と一緒に話していた。控え室の中では後番で入っていた
ソニンを含む2〜3人のホステスが帰り支度をしている状態だったが、
その雰囲気は一様に重く暗かった。気落ちする石川に罵声に近い冷笑を
浴びせた石黒。そんな様子を目の当たりにしたら、いくらそんな
ことには慣れているホステス達とはいえ気分は決してよくないだろう。
「・・・・・・・」
「あ、ソニンちゃ〜ん。とりあえずチャ〜ミ〜の荷物を2階
事務所の机のとこに持ってっといてくんない?」
「は〜い。わかりました〜」 ガサガサッ
ガチャッ!
平家の指示に従いソニンが荷物を抱えたその時、裏口が開く音がした。
そして何だろうと思う暇もなく控え室のドアが開き、部屋の中に石川が
入ってきた。その表情は厳しく、いつものオドオドした雰囲気はなかった。
338 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:50 ID:ctmSywfg
カッ、カッ、カッ、カッ
「あら、チャ〜ミ〜おかえり。荷物そこにあるわよ」
平家の脳天気な言葉に耳を傾けることもなく石黒の前に向かう石川。
ひょっとしたら手を出すつもりなんじゃないかと思い緊張する周りを
後目に、平家だけは腕を組みにやけ半分にその様子を見ていた。
「・・・・何、チャ〜ミ〜?」
「・・・・・石黒さん」
石川は睨み付けるような視線で石黒を見つめ、さっきまで堅く
閉ざしていた口を開く。一方石黒はそんな状況においてもまるで
何事も起きてないかのように平然とした表情で椅子に座り、石川の
顔を見上げていた。灰皿においた煙草の煙は、少しもなびかない。
339 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:51 ID:ctmSywfg
「今後とも、御指導よろしくお願いしますッ!」 ガバッ!
「・・・・今度は失敗すんなよ。わかってんな?」
「はい! 一生懸命、頑張ります!」
威勢のいい声をあげて頭を垂れる石川に、激励の言葉をかける石黒。
一触即発の状況だっただけに、周りにいたスタッフやホステス達は
一様に唖然としている。そんな中、離れて見てた平家だけは思わず
笑みを漏らしていたようだ。
カッ、カッ、カッ、カッ
「はい、チャ〜ミ〜、今日の日当。ショーやってもらった分も
つけておいてあるからね」 ガサッ!
「チ、チーフ・・・・・」
「来週からも頑張ってもらうからね。休まず来てよね」
「は、はい! ありがとうございますッ!」
石川はさっきまでとはうって変わって、満面の笑みを浮かべながら
平家に礼を言い、荷物を受け取り店を後にした。その後ろ姿を見ながら
石黒は灰皿の煙草を揉み消し、また新しい煙草に火を着けていた。
340 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:53 ID:ctmSywfg
ガガガガッ、ガガガガッ! チュンチュン、チュンチュン
「ん? ・・・・・あ、朝か・・・・」
寝たのが朝方だったから、起きたら当然の如く日は真上にまで昇っていた。
石川は、何やら寝惚けたような虚ろな表情で布団から出る。昨日までの
慌ただしさが嘘のように静まり返って落ち着いた心。緊張の連続からやっと
解放されたというのに、特に嬉しい訳ではなく、却って物足りないような、
そんな気分になってしまうのはどうしてだろう。石川は顔を洗いながら、
ふとそんなことを思っていた。そして、顔を拭き布団の上に座り外を見ながら
ぼ〜っとしていると、刹那にある一人の顔が思い浮かんだ。
(・・・・・あの子は、どうだったんだろう?)
「あの子」というのは、吉澤のことである。これだけ競争率が高いんだから
自分が通っただけでもラッキーだっていうのに、あの子まで一緒に通ること
なんかあるんだろうか。もともと自分よりあの子の方が通るんじゃないかと
思ってはいたけど、いざ自分が通ってみると他人の心配が出来る立場に
なってしまう。随分偉そうなもんだなと思いながら、石川は吉澤と友達に
なったことを後悔していた。
341 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:54 ID:ctmSywfg
こういう時に、自分はどうするんだろうか。あの子の試験結果を聞くために
電話をかけるなりメールを送るなりすることが出来るのだろうか。
もし彼女が不合格で、そのことでかなり落ち込んでる状況で連絡を取ったり
したら、それは嫌味になるんじゃないだろうか。逆に、向こうから連絡を
取ってきた場合、自分はどう思うんだろうか。もし向こうが合格していて
なお自分に連絡を取ってきたんだったら、こっちが不合格である確率が
高い以上、それこそ嫌味な行為なんじゃないだろうか。また、もし向こうが
不合格で連絡を取ってきた場合は、向こうもこちらが不合格だろうという
気持ちでいる確率が高いので、嘘をついてでも不合格だったと言うべき
なんだろうか。どちらにしても日曜に会う約束はしてるから、この状況で
連絡を取らないのも不自然なんじゃないだろうか。そんな風に考え出すと
石川はすっかり混乱してしまい、立ち上がろうという気も起こらなかった。
ピリリリリッ!、ピリリリリッ!
「!?」
突然の着信音にびっくりする石川。サッと携帯をとり表示を見ると、吉澤の
携帯番号が表示されていた。それを見て石川は、恐る恐る通話ボタンを押す。
342 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:55 ID:ctmSywfg
ピッ!
石川:「はい、もしもし。とみ子?」
吉澤:『うん、私。トミ〜だぴょ〜ん』
石川:「うん・・・・・、で、何?」
吉澤:『うん。あのさ、ついさっきオーディションの事務局から
通知が来たんだけど、そっちは来た?』
石川:「う、うん。来たよ・・・・・」
電話の内容は、やはりオーディションの通知についてだった。吉澤の方から
連絡をとってきたことに対して、石川は何とも言えない侘しい気持ちに
なっていた。多分切り出して来るんならあの子の方からだろうなと思いかけて
いた矢先の電話だったから、納得はしていたんだが。
吉澤:『で、どうだったの?』
石川:「私? 私は・・・・・、とみ子から言ってよ〜」
吉澤:『え〜、何で〜?』
石川:「だって、そっちからかけてきたんでしょ。だからさ〜」
吉澤:『や〜だ〜よ〜。梨華ちゃんから言ってよ〜』
石川:「う、うん。私はね〜・・・・・通過しちゃいました〜!」
吉澤:『え、本当? マジで? よかったじゃ〜ん!』
石川:「でさ〜、そういうとみ子はどうだったの?」
吉澤:『実は・・・・・、私も通過してたよ〜〜〜ん!』
石川:「本当に!やったじゃん!すご〜い!二人とも受かってたんだね。
それって結構すごくない?よくなくなくなくなくなくな〜い?」
吉澤:『ハハハッ、本当本当。じゃ〜この話の続きは日曜にしようか』
石川:「そうだね。何か結構楽しみじゃない?じゃない?a,ha〜」
吉澤:『うんうん、オッケ〜オッケ〜。じゃ〜ね〜』
石川:「じゃ〜ね〜」
ピッ!
343 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:57 ID:ctmSywfg
喜び合う明るい声で電話を切った石川だったが、切った後の気持ちは
暗く重く沈んでいた。うつむいたまま、携帯を布団に放り投げる。
(何だよ、・・・・・結局自慢したかっただけなんじゃねえかよ)
こんなオーディションで知り合った友人なんだから、結局はライバルで
あることは間違いない。特に真剣にオーディションに臨んでいたのなら
合格・不合格に関して差が出た際に心の衝突が出来てしまうのは当然だと
思われる。ただ、吉澤が審査に通過してたから電話をかけてきたように
思えて、仕方が無かったのだ。そんな風に思うのは大人げないのかも
知れない。歳から言ったら自分の方が1つ歳上なんだから、彼女の行動を
寛大な思いで受け止めてやれなくてはいけないんじゃないかという思いは
あるものの、石川にとってはそんなに冷静に割り切れる問題ではなかった。
さっきも思ってたじゃないか。彼女が気を遣ってかけてきたのかも
知れないって。いくら理性ではそう思っていても、感情の抑えが利かない。
実際、彼女の行動にも腹が立っているし、そもそも彼女を許せない自分の
度量の狭さにも同様に腹が立っていた。石川はじっと黙り、布団の上に
寝転んだまま、動かなくなってしまった。時が経つのが、遅く感じる。
344 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:58 ID:ctmSywfg
「・・・・ふぅ〜〜っ」
ボーイッシュな外見に似合わず、意外に少女趣味な部屋。
吉澤は学校から帰って来たままの格好で、自分のベッドの上に
寝転んでいたようだ。携帯を充電器にかけるとスッと立ち上がり
着ていた制服をハンガーにかける。制服の皺になってるところを
丁寧に直す様子は何やら不釣り合いだ。
(梨華ちゃん、・・・・・・怒ってるかな?)
吉澤は私服に着替えベッドに寝転び、天井を見上げながら、ふと
そんな思いを巡らせていた。そしてまた、大きく1つ溜め息を付く。
そして寝返りを打って机の上にある審査通過の通知に手を伸ばす。
吉澤も石川と大差ないことを考えていた。どちらかが切り出さないと
それはそれで気まずい雰囲気になるんじゃないか。だから、こちらから
石川に電話をかけてみた。そして、自分が通過してたことを先に告げて
向こうが通過していなかった場合には、石川を傷付けてしまうだけなんじゃ
ないだろうか。そう思ったからこちらからは結果を告げず、向こうの結果を
聞いた上でどう答えるかを考えていたのだ。向こうが通過出来なかったと
言ってきたら自分も通過出来なかったと嘘を付こう。これも吉澤なりの
思いやりではあった。自分から声をかけて友達になったんだから、その
くらいのフォローはしないといけないだろうという思いからくるものだった。
結果的には両方通過してるという予想外のものだったけど、向こうが
内心どう思ってるのだろうと考えると、素直に喜べる心境にはならない。
吉澤は通知の紙を机の上に戻すと、またベッドの上で寝転がり、天井を
じっと見上げていた。思った通りの、誤解が生じていたことも知らずに。
345 :
クズ学生:2001/07/02(月) 23:59 ID:ctmSywfg
気が付くと空は少し赤味を帯びていた。どうやら石川は布団に
寝転んだまま、二度寝をしてしまっていたらしい。休日になるとすぐに
怠惰な生活サイクルになってしまうところは高校にいた頃と変わらず、
自ずからも情けなく思う次第だ。でも今日一日くらいはいいんじゃないか
みたいな思いは少なからずあった。ここ一週間ほど休みのない状態が
続いていただけに、多少気が抜けるところがあるのは仕方ないだろう。
ただ、このムードを明日にも持ち込んでしまったらズルズル行きそうな
気がしたんで、ここは気合いを入れようとダルい身体を揺り起こした。
コンコンッ!
「あ、はい!どなたですか〜?」
「梨華ちゃ〜ん、わったし〜だよ〜」
「あ〜、圭ちゃんか。おかえり〜。で、どうしたの?」
「いや、一緒に風呂入りにでも行こうかな〜って思ってさ」
「え、・・・・・・あ〜、もうそんな時間か〜。うん、
ちょっと下で待ってて。支度してすぐに行くからさ」
「う〜ぃ、待っとるでぇ〜」
そう言って石川は部屋の明かりをつけ、洗面道具をまとめ始める。
そうしてふと卓袱台の上を見ると、昨日読みかけで放り投げた
三次試験の詳細を通知する書類が見えたので、手に取ってみる。
そしてついでに脇にあった通知の入っていた封筒も手に取ると
中には一枚の歌詞カードとMDが入っていた。今までそれに
気付かなかった石川も石川だが、その歌詞カードを覗くと、
思わず苦笑してしまった。どういうことだ、これは?
愛を取り戻せ
歌/クリスタルキング 作詞/中村公晴
作曲/山下三智夫 編曲/山下三智夫・飛沢宏元
YouはShock 愛で空が落ちてくる YouはShock 俺の胸に落ちてくる
熱い心鎖でつないでも今は無駄だよ 邪魔する奴は指先ひとつでダウンさ
YouはShock 愛で鼓動早くなる YouはShock 俺の鼓動早くなる
お前求めさまよう心今熱く燃えている 全て溶かし無残に飛び散るはずさ
俺との愛を守る為 お前は旅立ち 明日を見失った
微笑み忘れた顔など 見たくはないさ 愛を取り戻せ
YouはShock 愛で闇を切り裂いて YouはShock 俺の闇を切り裂いて
誰も二人の安らぎ壊すこと出来はしないさ 引き付け合う絆は離れない二度と
俺との愛を守る為 お前は旅立ち 明日を 見失った
微笑み忘れた顔など 見たくはないさ 愛を取り戻せ
テレビ「北斗の拳」 オープニング(1984)
347 :
クズ学生:2001/07/03(火) 00:01 ID:JeD4Ttr6
『三次試験の開催日:3月25日(日) 場所:S区Y体育館
用意して頂くもの:動き易い服と着替え、昼飯、身分証明書(又は学生証)
三次試験の内容:
(1)身体能力検査 10:00〜12:00
身長・体重等の基本的な身体検査の他に、瞬発力・持久力などの
基礎体力の測定も目的としている。歌手として仕事をしていく上で
ある一定以上の体力も必要とされるので、その目安として審査する。
(2)休憩 12:00〜13:00
食事等の提供は出来ませんので各自で御用意して頂く。休憩場所は
用意出来るので、そこで休憩して頂いても構わない。
(3)歌唱能力検査 13:00〜15:00
二次試験に引き続き歌唱力の審査を行うが、今回はこちらの指定する
歌を唄って頂く。別紙記載の歌詞は暗記して頂く。そして封筒に添付
されているMDに録音してある2パートを両方とも披露して頂くゆえ
繰り返し練習しておいてほしい。
なお、二次試験と同様に交通費等の準備は出来ません。12歳以下の場合は
保護者と同伴して頂く必要がございます 』
(どうしてこの歌なんだろうな〜? こんな歌知らないよ〜)
その指摘、現在17歳の少女からしたら当然の指摘だろう。だが、その分
歌に先入観なく取り組めるということもあるだろう。そういう意味での選曲だと
信じたい。決して審査員の趣味じゃないと思いたい。が、多分気紛れなんだろうな。
そう思いながら石川は書類を卓袱台に置き、洗面道具を持ち部屋を出た。
348 :
名無し娘。:2001/07/03(火) 00:50 ID:fEHGzvzc
>>346 北斗の拳・・・(w
>>333-345までめっちゃええ感じやったのに、
そこでいきなりクリスタルキングかい!(w
349 :
クズ学生:2001/07/03(火) 02:56 ID:JeD4Ttr6
>>348 いや、たまにギャグ入れんとみんな飽きるかな思って(w
そういやこのスレが長いこと続いてるのは、単に
俺が書くスピードが遅くって話が消化出来ないから
なんじゃないかって最近気付いた。なかなか進まんな〜
350 :
名無し娘。:2001/07/03(火) 16:26 ID:h7fGYh1I
頑張って下さい
351 :
名無し娘。:2001/07/03(火) 20:16 ID:XZpLQwQY
応援sage。がんがれ
352 :
名無し祭:2001/07/03(火) 23:19 ID:elkadsTs
大量更新ワッショイsage
353 :
クズ学生:2001/07/03(火) 23:26 ID:/XmKMh5w
「ふぅ〜〜っ、だいぶ綺麗になったな。よしっ!」
この人にはちゃんと眼が付いてるんだろうか? さほど綺麗にもなってない
部屋の中を眺め、かなり御満悦という表情を浮かべている石川。
そもそもいっぱいになった半透明のポリ袋がゴロゴロ転がってるような
状況でよく暮らしていられるな〜と、他の住人は皆思っていた。今はまだ
寒い季節だから何とかなってるけど、暑くなりだしたらどうなるんだろうと、
不安に思っている住人も少なくない。
カラッと晴れた空のもと、日に当たらなきゃ勿体無いということで
窓を開けて新鮮な風を通す。いくら都会の薄汚れた空気とはいえ、
一日中閉め切った部屋の空気よりはだいぶ軽い。石川は敷き布団の上で
普段着に着替え、身なりを整える。今日は非番の日ゆえ、昼の空いてる
時間に銭湯に行き、さっぱりした後に買い物にでも行こうと計画していた。
かなりウキウキした表情の石川。さすがに部屋の中に転がるゴミ袋が
気になったのか、1つ1つ廊下に出し、空いたスペースに掛け布団を
放り投げる。このアパートでは、管理人室の後ろにあるゴミ置き場に
ゴミを指定ポリ袋に入れて出しておけば、後は全部管理人の中澤が
業者に出しておいてくれる仕組みになっていたので、石川は気兼ねなく
ゴミを溜めてしまっていたようだ。
「よ〜っし。ゴミも一掃。これから銭湯。何って爽やかなの、ハハハッ」
変にハイテンションになりながら廊下に出る石川だったが、ドアの鍵を
閉めようとした時、郵便物受けに何か入っているのが見えた。石川は、
身に覚えのない郵便物に首をかしげながら、中に入ってた封筒を取り出す。
354 :
クズ学生:2001/07/04(水) 23:13 ID:x4PKt5BI
ガサッ、ガサッ
石川:(・・・・・何だろうな〜。特に郵便物が来るようなことも
ないと思うんだけどな〜。・・・・・ん? 安倍なつみ様?)
封筒に書かれていた宛先は石川の名前ではなく、隣りに住む
安倍の名前だった。どうやら安倍の実家から送られてきたものの
ようで、おそらく実家の稼業であろう「(有)安倍酒店」という
印刷が施されていた。そしてしばらく封筒をボ〜ッと眺めていたら、
ちょうどそこに安倍が帰ってきた。
安倍:「よ〜〜っ、梨華ちゃん。昼間に会うのは久し振りだね〜」
石川:「あ、おっは〜、ってそんな時間じゃないか」
安倍:「ハハハッ。ん?・・・・・ち、ちょっと梨華ちゃん!今手に
持ってる封筒、私宛じゃない! 勝手に見ないでよね!」
石川:「いや、違うんだって。間違って私のとこの郵便物受けに
入ってたんだよ。そ、そんなに怒んないでよ〜」
安倍:「あ、・・・・・そうなんだ。・・いやっ、ごめんね〜。なっち
ちょっと勘違いしちゃったな〜。ハッハッハッ。ごめんネッ!」
石川:「い、・・・いや、こっちこそずっと持ってたら怪しまれても
仕方ないよね。ごめん」 サッ!
そして石川は慌てて安倍に封筒を手渡す。別に気にする程のこともない
些細なことなんだけど、ここに越して来て初めて見た安倍の真剣に怒る姿に
ちょっと戸惑いを隠せないといった感じだろうか。
355 :
クズ学生:2001/07/05(木) 15:50 ID:71bX37as
10個近くあったゴミ袋を2個ずつ両手に持ち下階に降ろしていく。
1階は2階とは違って、ビルの陰に隠れて昼もあまり明るくならない。
その上窓まで閉めていたんでは、陰鬱な空気が籠ってしまうだろうと
いうことで、廊下側の窓を開け放つ石川。風が通ると、廊下に漂う
カビ臭さも少しずつ抜けていく。
ゴミを出し終わった後、石川は銭湯に向かう。時間的には昼の営業を始めた
ばかりだから、客も石川以外にいない。そんなガランとした風呂場で湯舟を
縦横無尽に泳いで遊ぶ石川。ふと無邪気な女の子に戻るシチュエーション。
そうしてゆっくり遊んだ後にサウナに入り、じっと汗を流す。
アパートに戻ったら、冷たいビールでも飲もうかな。
さっぱりと汗を流して銭湯から出る石川。本来ならここで一度アパートに
帰ってから買い物に行くつもりだったんだけど、あんまりそんな気にも
ならなかったので、買い物には行かないことにした。別にたいしたことじゃ
ないんだろうとは思うけど、さっきの安倍の怒り方がちょっとばかり気に
かかったので、あんまり気分も乗らない。そこで、アパートに戻って自室に
洗面道具を置いてから、中澤に話を聞くことにした。
アパートに戻って隣りの部屋の音を聞く。どうやら安倍はすぐに外出して
しまって、いないようだ。石川は何となく安倍の部屋の前を眺めた後に
すぐ階下に降り、管理人室のドアをノックする。すると中からは予期せぬ
ノックの音に戸惑ったかのようなドタバタした足音が聞こえてきた。
「はいはい、どなたですか〜」 ガチャッ!
「あ、どうも〜、石川です〜。ちょっといいですか?」
「あ、石川さん。ちゃんとお昼に会うのって久し振りやね〜。
どないしてん? まあ、中入ってぇ〜や」
カタッ、カタッ、カタッ、カタッ
356 :
クズ学生:2001/07/06(金) 03:20 ID:Z4DFoW6A
っていうか、小説の更新って死ぬ程大変だな。
社会人とかでちゃんと更新してる人って本当に
すごいと思うぞ。すごい時間吸い取られるし。
ま、好きでやってるんだからしょうがないが(w
357 :
名無し娘。:2001/07/06(金) 11:30 ID:sdt9.6AQ
/■\ /■\
ち下さい ( ´∀`) そのままオニギリでお待ち下さい ( ´∀`) そのままオニギリでお待
( つ つ ( つ つ
/■\ /■\
( ´∀`) そのままオニギリでお待ち下さい ( ´∀`) そのままオニギリでお待ち下さい
( つ つ ( つ つ
/■\ /■\
そのままオニギリでお待ち下さい ( ´∀`) そのままオニギリでお待ち下さい ( ´∀`)
( つ つ ( つ つ
358 :
クズ学生:2001/07/06(金) 16:50 ID:z29GdqdU
>>357 モナーハケーン!
【本文では出てきそうにない詳細設定1】
石川の部屋の間取り:
和室(畳敷)で六畳一間(洗面台含む) + 押入れ一畳
北向きにドアと廊下側窓、南向きに外側窓(ベランダなし)
東側の壁向こうは階段の出口、西側の壁向こうは隣の部屋
水道・ガス・電話線有り、エアコン・風呂なし、共同トイレ
他の部屋の作りも粗方この作りに準拠。
359 :
リハ中:2001/07/06(金) 19:15 ID:4PgDrD7.
クズ学がんがれぃ!
360 :
クズ学生:2001/07/06(金) 23:23 ID:F6kJp4us
ガタッ、ガタッ
中澤:「あ、ちょっとそこに座っといてな。お茶入れたるさけ」
石川:「いえいえ、あんまりお気遣いなく」
中澤:「そない言わんとき。管理人に気ぃ遣う必要なんてないねんで。
人から貰えるもんは全部貰っといたらええねんて」 ガサッ!
石川:「あ、そうですか。それじゃ〜遠慮なく頂きます」
中澤:「今日はスーパーで玄米茶買うてきてんか。香ばしいで〜。
ちょ〜っと待ってな〜」 ・・・・コポコポコポコポッ
石川:「ああ、すいません。ありがとうございます」
カチャッ! カチャッ!
中澤:「で、どないしてん、今日は? 改まった顔してもうて」
石川:「いや、・・・・あの〜、安倍さんのことなんですけどね」
中澤:「なっちがどないしてん? 何かあってんか?」
石川:「今日安倍さんに手紙が届いてて、それが間違ってうちの
郵便受けに入ってたんですよ。で、それ渡そうとしたら
すごい剣幕で怒ってたんですよ」
中澤:「お茶入れるで」 コポコポコポコポ・・・・
石川:「あ、すいません」
中澤:「さよか〜。う〜ん、そんぐらいで怒るのも珍しいな〜。
あの子ってそない怒り易い子っていう訳ちゃうねんけどな〜」
石川:「まあ、私が結構マジマジと封筒を見てるのを見られちゃった
からっていうのもあるかも知れませんけどね〜」
中澤:「その封書って誰から来とってん? 都合の悪い人とかから
やったら怒るかも知れへんよ」 スゥーーーーッ
石川:「いや、親御さんからでしたよ」 ゴクッ!
中澤:「そうか〜。せやったら別に何もあれへんような気が
すんねんけどな〜。ひょっとして生理中やったんちゃうの?」
石川:「それも多分ないですよ〜。封筒見るまでニコニコしてましたし」
中澤:「いや〜、冗談やがな〜。本気でそない言わへんよ〜」
石川:「ハハハッ、そうですね。野暮でした」
361 :
名無し娘。:2001/07/07(土) 02:35 ID:35HpiiMQ
吉澤キャラ、あんなですな。まじで。
362 :
名無し娘。:2001/07/07(土) 02:38 ID:9I9cFX1U
オマエは荒らしてることに気付けよ
363 :
クズ学生:2001/07/07(土) 02:57 ID:V77Ggro6
364 :
名無し娘。:2001/07/07(土) 03:07 ID:xN46aek2
362はたぶんageた361に言ってるんじゃない?
365 :
:2001/07/07(土) 06:36 ID:LZDpnLNU
366 :
362:2001/07/07(土) 08:04 ID:mqYlRz5w
>>364 そう、そのとうりなのよ
言葉が足りなかったね
ゴメンねクズ学生
367 :
クズ学生:2001/07/08(日) 01:40 ID:4UVty8MY
カチャッ、カチャッ
石川:「そう言えば中澤さん、安倍さんって何やってるんですか?」
中澤:「あ、なっちは一応大学生やって聞いてるで」
石川:「え? そうなんですか? 知らなかった〜、ハハハッ」
中澤:「ま〜、せやろな〜。私かてあの子が授業行ってるのなんて最近
全然見ぃひんもん。あのね、去年の秋口あたりまではちゃんと
朝早う起きて大学に行ってたみたいやねんけど、冬あたりには
もう何やか訳わからんような生活スタイルになっとったな〜」
石川:「あ〜、そうなんですか〜」 ゴクッ、ゴクッ
中澤:「しかもあの子バイトしてるようにも見えへんねやんか。
どないしておカネ工面してんねやろかな〜」
石川:「あ、でもですね。安倍さんがその頃に大学とか行かなくなった
んだとしたら、保田さんとか矢口さんはその状況を見て何も
しなかったんですか? 何か冷たくないっすか?」
中澤:「圭ちゃんはここ越して来たんがちょうど去年の9月頃やねんか。
せやからもうあの子が来た頃にはなっちは今みたいな感じの
生活スタイルやってん」 スゥーーーーッ!
石川:「あ、結構最近だったんですね、越して来たの」
中澤:「後な、矢口はここ越してきて1年近く経つねんけどな、それって
ちょうどなっちと同じくらいの時期やってんか〜。せやから
あの二人ってごっつい仲ええねんな。でな、なっちが学校行かなく
なったらしいっていうのも矢口から聞いてんけど、矢口って結構
他人の生き方とかに干渉すんのが嫌いな子やねんか〜。せやから
何や兎や角言わへんかってな、そいで結局今まで来てんのよ」
石川:「う〜ん、な〜るほど〜。わかりました〜」 ガタッ!
中澤:「あ、もう部屋戻ってまうの? つれないわ〜」
石川:「それじゃ〜、お邪魔しました。玄米茶、ご馳走様でした」
中澤:「じゃ〜、また暇やったら来たってや。待ってるで〜」
ガチャッ!
368 :
クズ学生:2001/07/08(日) 01:43 ID:4UVty8MY
>>366 そうやってんか。ま、せやったら別にええわ。
369 :
クズ学生:2001/07/08(日) 23:13 ID:lgudwmtA
水商売のバイトを始めてなかったら、こんなに酒を飲む機会はまず
なかったであろう。石川は今まで箱入り娘として育てられてきたので
勿論酒の類いに手を出すことはなかったし、そういうものを恐いと
思うくらいにお堅い性格のところがあった。しかし家を出て一人で
暮らすようになってから、何か心の中でタガが外れてしまったらしく
仕事場に限らず酒を飲むことも多いようだ。
仕事の中では客を喜ばせつつ高い酒を注文させるテクニックが
必要となるので、付き合いで飲むことも多い。だから普段石川は
父親でさえ手が出ないような銘柄の酒を味わうことが出来るんだが、
仕事場ではどんなに付き合いで客と飲んだとしても本当に酔って
しまってはいけないので、気を緩ませることが出来ない。そして
そんな状況では決して酒の味を楽しめないというのも事実だ。
そこで、先輩ホステス達と飲みに行ったりするのかというと、それは
ほとんどないようだ。というのも、石川と同じ時間に仕事が終わる
ホステスも何人かはいるんだが、仕事が終わった後まで後輩を連れて
飲みに行こうという人間が少ないようで、石川を誘う先輩は皆無と
言っていい。第一石川は未成年な訳だから、店以外の場所でそれが
バレたらどうしょうもならないので、敢えて誘わないという側面も
あるのだろう。
そういう事情もあって、フリーの時はこのアパートに帰ってきてから
アパートの住人と飲むというのが大半である。あまりカネを出せない
石川の事情をわかってか、安倍なんかは一緒に飲む際にはかなり酒代を
出してくれる。石川は、安倍が色んな酒の銘柄なんかを知っているので、
何か酒造関係のバイトでもしてるのかなと思っていたのだが、実家が
酒屋ということなら納得行くなと今改めて思う。今度安倍を誘って一緒に
飲む際には、その話題から切り出していこうかな。最近の安倍が元気じゃ
ないのはきっとあの実家からの手紙のせいだろうと、余計な詮索をする石川。
もうすぐバイトの時間だというのに準備もせず、ただ天井を見上げていた。
370 :
名無し娘。:2001/07/08(日) 23:54 ID:dwIwrTXk
だいぶ話が進んできたので、この辺で一度
登場人物紹介を勝手にやってみる。
とりあえず主観は捨てて、ここに書かれている文章のみで
作ってみたんだけど、間違ってたら直してね <クズ学生
371 :
名無し娘。:2001/07/08(日) 23:59 ID:dwIwrTXk
【ふぁっきん娘。荘の住人たち】
石川梨華:本編の主人公。アイドル歌手を目指し高校を中退して上京。
『モーニング娘。』追加オーディションで第三次選考まで残っている。
中澤の紹介で『キャバレークラブ、落ち武者』で源氏名『チャーミー』として
バイト兼修行中。悩み多き17歳。202号室。
安倍なつみ:北海道から上京。部屋の中に瓶ビールをケースで置くほどの大酒飲み。
一応大学生らしいが毎日何をしてるのかは不明。201号室。
矢口真里:一見ギャル系でけばい容姿をしているが、実はイタリアンのシェフを夢見て、
料理の勉強をしにイタリアに留学するためにファミレスで
真面目に深夜勤務に励む18歳。204号室。
保田圭:通称『岩石』。冬だというのにTシャツに半纏、ジャージに雪駄という豪快さん。
音楽関係の専門学校に通いながらバンドを組んでプロを目指している。102号室。
中澤裕子:「ふぁっきん娘。荘」管理人。
いつも疲れた顔をしているらしい。
クズ学生:美女揃い(約一名は除く)の住人の中では唯一の男性という、
恐ろしく羨ましい環境にありながら未だ誰にも手を出せないヘタレな学生(w
たまーに休憩室などで絡むこともあるらしいが
他の住人は名前も知らないらしい。103号室。
372 :
名無し娘。:2001/07/09(月) 00:01 ID:SiIQctME
【キャバレークラブ 落ち武者の従業員たち】
平家みちよ:『落ち武者』のママ。
てきぱきとした仕事振りで個性の強い従業員をまとめているが、
石黒・飯田らに比べて影は薄いようだ。
石黒彩:『落ち武者』の看板ホステスで源氏名は『真矢』。
いかにも水商売といった風貌で冷淡な皮肉屋ながら、
意外に石川の成長を見守っている。歌唱力はプロと比べても遜色がなく、
実質的な石川の歌唱指導担当。
飯田圭織:『落ち武者』の先輩ホステスで石川の店内教育係。源氏名は『ジョンソン』。
真面目で面倒見がいい性格だが目付きは少々妖(怪?)しい。
ソニン:『落ち武者』の同僚で源氏名は『姫子』。在日韓国人。
稲葉:同じく同僚。
373 :
名無し娘。:2001/07/09(月) 00:03 ID:SiIQctME
【その他の人たち】
吉澤ひとみ:業界に強い影響力をもつ周防氏の知人である吉澤さんの孫娘。
石川と同じく追加オーディションを受けてはいるが、
単にモーニング娘。入りを夢見ているのではないようだ。
何気に石川の事を気に入っている。愛称は『とみ子』。
市井紗耶香:いつもユウキとつるんでいるが恋愛感情は全く無い。
遊びまわっていても、本当は中身のない生活に嫌気がさしている。
普段はクールだが常に胸の奥には熱い激情を隠している17歳。
後藤ユウキ:市井の遊び仲間で石川に一目惚れしている。
姉はモー娘。のリーダー後藤真希。
福田明日香:高校時代の石川の親友。
進む道は違っても彼女も歌手になる夢を持っているらしい。
モーニング娘。:シャ乱Qのボーカル『つんく』がプロデュースしている人気アイドルグループ。
リーダーは後藤真希(愛称 ごっちん)で15歳。
他のメンバーは辻(愛称 ののピー)と加護(愛称 加護ちゃん)で13歳。
3月に追加メンバー選考オーディションがあるが、実は当選は一人だけの予定。
最新シングルは「ミニミニ!じゃんけんぴょん」。
374 :
名無し娘。:2001/07/09(月) 00:04 ID:SiIQctME
勝手にしてごめんね。
荒らしじゃないけど荒らしみたいだ・・・(鬱
375 :
クズ学生:2001/07/09(月) 01:10 ID:js7CFBZg
>>374 いや、こういうのは言ってくれたら俺がやったのに。
別に俺は構わんが、そういうの嫌う読者もいるやも
知らんから、そういう同意は取って欲しかった。
内容に関してはおそらく間違いはないと思う。
改行をもうちょっとスムーズにやって欲しいが(w
っていうか、狼の雑スレに荒らしが来てたから、その
類いかと思って心配してもうた(w
376 :
クズ学生:2001/07/09(月) 03:30 ID:Aze1yIdE
>>374 あと、若干俺と人物の解釈が違うところもあるが、
それは読者と作者では違うのが当然だからご愛嬌
ということにしておきましょうか(w
あと、平家に関しては、石川が「チーフ」と
呼んでることからわかる通り、チーフママなんだよね。
で、店の事務所とかにも出入りしてることから、
マネージャ的な立場も兼ねてるようだ。まあ、詳しい
ことはこの先書いてく予定だけど。
それにしても、最近全然進まない(いつも言ってるが)。
しかも内容的に書いててどんどん鬱になるからツラい(w
377 :
クズ学生:2001/07/09(月) 23:15 ID:EY1Ihvj2
ガヤガヤッ、ガヤガヤッ!
「そういえば石黒さんってどこの出身でしたっけ?」
「えっ、何だよ急に。何かあったの?」
「いえ。そういう訳じゃないんですけど、ただなんとなく
気になったもんですから。あと、今までそういうことって
伺ってませんでしたしね〜」
店の仕事が始まる前、ホステス達は化粧や服のコーディネートなどで
大忙しだが、石川や石黒なんかは比較的早い時間から店に来ているので
準備も早くに終わり、よく控え室で喋ったりしている。特に石川は始めの
頃より勤務日数を増やしてもらってる関係上、以前にも増して店に来ている
時間は長くなり、その分ホステス連中と話す機会も多くなっているようだ。
「私は一応出身、北海道なんだけどね」
「えっ? 何かイメージ違いますね〜。関東の方かと思ってました」
「どんなイメージなんだかよくわかんねえけどな〜、ハハッ。あ、
そういえばあの、飯田いるだろ。あいつも確か北海道だったはず」
「あっ、そうなんですか〜。遠いところから来てるんですね〜」
「余計なお世話だって、ハハハッ。ま〜、しょうがねえことだよ。
東京来たいもんは来たいんだもんな」 シュボッ、フゥ〜〜〜ッ
いつものように煙草に火を着ける石黒を見ながら石川は、安倍宛ての
封筒の送り主住所が北海道だったことをふと思い出していた。
「それで〜、例えば石黒さんとかは上京するぞって家族の方に
おっしゃった際に、親御さんとかからの反対ってありませんでした?」
「ま〜、私の場合は家飛び出すように上京してきたからさ、そういうの
全然わかんないね。もう3年くらい電話もかけてねえしな〜」
「え〜〜? そんなに家族の方々とは御無沙汰してるんですか?」
「そうね〜。今頃このツラ下げて実家に帰る気はしないね〜」
378 :
クズ学生:2001/07/10(火) 23:25 ID:maVbijsg
仕事のうちとかは何かと厳しい石黒だが、こうやって仕事前に話して
いる限りでは別段恐いこともなく、むしろ面倒見のいい先輩といった
感じだろうか。物言いや考え方には少々キツい面もあるものの、その
仕事に打ち込む姿勢などでは誰からも評価されているようだ。特に
石川にしてみれば、自分の時間を割いてまで歌の練習等に付き合って
くれる先輩だけあって、尊敬の念も強いようだ。
「っていうか、そういう遠いところから娘を都会にやる親御さんって
どういう風に思ってらっしゃるんでしょうね。やっぱり寂しかったり
するんですかね〜?」
「そりゃ〜そうなんじゃねえかな〜、普通に考えたらよ。女の子を
都会で一人暮らしさせるっちゅうのは寂しい以前に心配だろ〜よ」
「ああ、そうですよね。色んな意味で危ないですしね、都会って」
「ハハハッ、わかったようなクチきいてよ。でも、こんな仕事してたら
特に感じるだろ、都会の恐ろしさってやつをよ」 フゥ〜〜〜ッ
「そうですね〜。私は東京来てまだ数カ月しか経ってませんけど、
それでも何か、人がたくさん集まるってだけですごい絡み合いを
してるんだな〜って感じますね。特に利潤関係の繋がりが本当に
ドロドロしてますよね〜。反吐が出そうなくらい」
石黒に話を振ったつもりがいつの間にか話を聞き出されてる石川だが、
以前まで持っていた緊張感などは若干残ってるものの、かなり薄まった
ようだ。言葉の途中に息を挟み、温くなったコーヒーを軽く口に含む。
「でもよ〜。実際親としてはせっかく育ってくれた娘なんだから
それなりに幸せになってほしいとか思うんじゃねえか」
「ま、おそらくそうだとは思いますけどね〜」
部屋内の慌ただしさに気付かないが如く、しみじみと話す二人。
石黒は仕事前の一服だと言いながら、また新しい煙草に火を着ける。
379 :
クズ学生:2001/07/11(水) 23:36 ID:jAhXxFbY
「ふぁ〜〜っ、眠いな〜、何か」
仕事も終わり家路を急ぐ石川だが、妙な眠気に襲われて思わず
足を止める。ここしばらくの寝過ぎな生活がたたっているのだろう。
最低限の練習はしているものの、三次試験までには時間的な余裕が
あるので、少々気が緩んでいるようだ。
しばらく都会の薄暗い路地を抜け、ようやくアパートに辿り着く
頃には余裕で午前2時を回ってしまう。それでも都会人の生活と
しては何の問題もなかろうと思っているのは、脳天気な石川の
性格が表われているところ。
アパートが見えてきたので灯りの着き具合を確かめると、1階では二つ
着いているものの、2階に到っては1つも着いていなかった。これは
実は普段からするとかなり珍しいことで、普段なら安倍の部屋の灯りは
大抵着いているものだ。別に憶測に過ぎないのかも知れないけど、
変に気にかかって眉をひそめる石川。自分の部屋にも戻らず、灯りの
着いていた保田の部屋に顔を出す。
コンコンッ!
「は〜い、どなたですか〜?」
「あ、圭ちゃん。私、梨華だよ〜」
「おう、こんばんわ。取りあえず入りなよ」 ガチャッ
パタッ、パタッ
「あ〜、今日は何? バイトの帰りだよね〜」
「うん、最近は慣れてきたが故の疲れみたいのが来るね」
「な〜に言ってんだよ、ハハハッ。で、どうかしたの?」
「あのね、なっちのことなんだけどね」
「ああ。私も最近のなっち、何かおかしいな〜って
思ってたんだけど、何かあったの?」
380 :
クズ学生:2001/07/12(木) 23:20 ID:ymAi/eEU
石川は部屋の真ん中にある折り畳み式のテーブル前に座り、足を伸ばして
くつろいでいる。そして保田は読書机の椅子に座りながら石川のいる方を
腕組みしながら眺めている。そんな、いつものようにくつろいでいた
二人だったが、石川が安倍についてという話題を振った瞬間、保田も
同様に関心があったのか少し身を乗り出して石川の方に近付く。
「あのね、ついこの間なんだけど、うちの郵便受けに手紙が
入ってたのね。なんだけど、それがなっち宛ての手紙が間違って
うちのとこに入ってたやつだったんだよ〜」
「うん。それで何かあったの?」
「でね、そこにちょうどなっちが帰ってきたんだけど、どうやら
なっちは私がなっちんとこの郵便受けを勝手に開けて中を見たん
だと勘違いしたみたいなのね。それでちょっと言い争いになって」
「でもさ〜、それはちゃんとどういう経緯でそうなったのかっていうのは
説明したんでしょ? それでもまだ機嫌悪くしてんの? だったら
何か大人げないよな、なっち」
「いや、それについては一応そん時にちゃんと納得してたし、そんな
細かいことを根に持つようなタイプじゃないでしょ、なっちは」
石川は真面目な顔で語りながらも、横目で冷蔵庫を見ながらドアを開け
麦茶の入ったペットボトルを取り出し、勝手に口を開けて飲み出す。
だからといって別に保田が注意することもなく、石川も何事もなかったかの
ように冷蔵庫に戻す。ここの住人はこの位のことなど気にしない程に皆
仲がいいのだ。それだけに、中に一人でも塞ぎ込んでる人がいたら必要以上に
心配する。それがムードメーカー的な存在である安倍だとしたら尚更だ。
「それでね、そん時私が見た手紙っていうのがなっちの実家から届いたもの
だったのね。で、これはあくまで私の推測なんだけど、その手紙の内容が
何か凹むような内容だったんじゃないかな〜って思うのよ〜」
「あ〜、そうなんかな〜。だったら直接聞ける話じゃない気もするしな〜」
お互い思い思いの思索を巡らすものの、結論も出る訳もなくただダラダラと
時間だけが流れていく。結局その日、安倍はアパートに帰って来なかったようだ。
381 :
名無し娘。:2001/07/13(金) 12:31 ID:nGFBckgo
( ^▽^)< あげちゃうよ!
382 :
名無し娘。:2001/07/13(金) 15:10 ID:2jtAJdSM
sage
383 :
クズ学生:2001/07/13(金) 23:46 ID:vWdscaL.
ガヤガヤッ、ガヤガヤッ!
「はしゃいじゃ〜〜って よいのかな〜〜♪」
「イエ〜〜イ! ヒュ〜ヒュ〜!」
深夜のカラオケボックス。陽気になって唄い踊る若い男女なんて、
いくらでも見られる光景である。というか、それ以外の場合の方が
珍しいだろうが。マイクを持ち唄うのは市井。それに石川とユウキが
合わせて手拍子なり合いの手の声を入れていた。
「パスポ〜〜ト〜 取〜ら〜な〜くっちゃ〜♪」
「イエッ! 最高〜〜」 パチパチパチ
「紗耶香、歌上手くなってない、最近?」
「そう? 自分じゃ別に変わってないと思うけどな〜」
ナイトショーの失敗の際に多少険悪な雰囲気になった市井と石川だが
そのことを気にしていたのは市井の方で、石川としてはああいう風に
言ってもらったことが却って嬉しかったようだ。ということも後で
ちゃんと話し合ったので、もう殊更そのことに触れることはない。
ガヤガヤッ、ガヤガヤッ!
「あ、僕ちょっとトイレ行ってきま〜す」
「マジで? じゃ〜1分で帰ってこい」
「勘弁して下さいよ〜、市井さ〜ん」 ガチャッ!
「ハッハッハッハッ! ユウちゃん、頑張れ〜」
石川としては今は安倍のことが気になっているものの、それ以外のことに
関しては順風満帆と言った感じか。バイトの方も軌道に乗り、もう次の
ナイトショーの練習を始めているし、オーディションの三次試験に
向けた練習も手探りの状態ながら保田に付き合ってもらいつつちゃんと
続けている。そう、こんなノってる状態だからこそ何も気にせず突っ走り
たいのだ。安倍との騒動を忘れようとするかのように、今はただ陽気に
振るまい歌う石川。その顔に陰りはない。
384 :
クズ学生:2001/07/15(日) 00:48 ID:tD0zwUIs
「じゃ〜ね。また今度〜」
「ああ、そいじゃね。おやす〜」
二人と別れ、暗い夜道を一人歩く石川。時計の表示は既にAM0:00を
軽く超えていた。楽しいことがあった後は大抵寂しくなるもんで、石川も
妙な孤独感に襲われていた。石川は高校を辞めて夜の仕事をしながら、
昼間や仕事のない夜なんかは時間を持て余してるし、二人は学校にも行かず
夜な夜な街に遊びに出てくるような、ある意味アウトローなメンツだから、
そのこともまた石川の不安感を煽ってるようだ。あの二人の生活を見て
学校に行った方がいいんじゃないかとは思うけど、学校を自主退学した身で
そんなことを言っても説得力がある訳がないというのもわかりきっていた。
そう思い、石川はまた肩を落とす。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ!
「・・・・・あっ、ぐっさんいるみたいだな〜」
アパートに近付き、ふと2階を見上げると矢口の部屋に明かりが着いていた。
そして、安倍の部屋の明かりはまた着いていなかった。自分でも少々気に
し過ぎなんじゃないかと思うくらいだが、とりあえず部屋に戻ろうという
ことで、薄暗い明かりに包まれた玄関に向かう石川。つい溜め息が出る。
ギィ〜〜ッ、ギィ〜〜ッ! カタッ!
「あ、・・・・・・なっち」
「お、おう・・・・・久し振り〜、梨華ちゃん」
2階に上がるとそこには安倍の姿が。安倍もちょうど今帰ってきたばかり
だったのだろう、手提げを置いて部屋の前で鍵を探していた最中であった。
お互いバツが悪いといった表情を浮かべながら、しばらく見つめあっていた。
廊下の蛍光灯の点滅に、影の形を微妙に変えながら。
385 :
クズ学生:2001/07/15(日) 15:18 ID:dOoLuHEc
やっぱりこういう小説もどきのモノを書いてたら
評判というのも気になる訳。というか、評判を
気にしなきゃいけないとさえ思うくらいだけど。
でも、羊内の小説評論系スレを見ても別に話題には
登んないし、更新ペースも早い訳じゃないし。
難しいもんだね、印象に残る作品を作るのって。
386 :
名無し娘。:2001/07/15(日) 16:26 ID:7EogYTlg
これ好きだよ
ちゃんと読んでるからがんがれ
387 :
名無し娘。:2001/07/15(日) 17:58 ID:Gdb9cKOU
俺も読んでます。っていうか、これしか読んでない。
今後も引き続き期待しております。
388 :
名無し娘。:2001/07/15(日) 22:16 ID:pGnK5TpM
石川の性格言動が本物と離れてるように感じるから
モー娘の小説とはあまり思ってないです。
1つの小説として毎日見ています。面白いのでがんばってください。
389 :
クズ学生:2001/07/15(日) 23:11 ID:eudyCv5g
「ん、どうしたの?」
「・・・・いや、別に」
階段を昇り切らぬままに突っ立っている姿がよっぽど奇妙に写ったん
だろうか。何の気なしに問う安倍の言葉にいささか戸惑いながら、自分の
部屋に向かう石川。やはり自分の心配は、単なる思い過ごしだったようだ。
ガチャガチャッ、ガチャッ!
「あ、それとさ、圭ちゃんに聞いたんだけど、あんたちょっと
余計な詮索はやめてくんないかな」
「!・・・・・・えっ?」
部屋に入ろうと思い鍵を開けていたその時、石川のふいを突く安倍の一言。
ハッとした石川は何のことだろうという疑問に近い表情を浮かべて振り向き
安倍の顔を見る。そこには、普段見たことがないような冷淡な顔の安倍が。
安倍はじっと石川のことを見つめていた。
「ね、そういうことされると迷惑だからさ。頼むよ」
「いや、でもさ・・・・、なっちあの後あたりから何か妙に
塞ぎ込んだりしてるように見えたんだよ〜。だから・・・・」
「そういうのを余計な詮索って言うの。仮に何かあったとしても
そんなの私個人の問題でしょ。いくら隣人だからってそこまで
干渉する権利はないと思うんだけど」
「あっ、でもね、やっぱり心配じゃない。いつも陽気にしてる
なっちが暗い顔してたら心配になるよ〜。あの時の手紙って
親御さんからのだったでしょ。何かあったの?」
「あんたちょっとね〜! そういう勝手なこと言わないでくれる?
別に何もないわよ。そんなことあんたには関係ないでしょ!」
「はいはいはいっ!もう二人ともヤメなさ〜い!」
二人が大声で言い合っていたんだから、こんな壁の薄いアパートなら
どの部屋にも筒抜けだったのだろう。自分の部屋から顔を出した矢口が、
二人の声を遮る。依然として二人は困惑した表情のままだ。
390 :
クズ学生:2001/07/15(日) 23:21 ID:eudyCv5g
>>386-388
ありがとうございます。何か愚痴っぽくなって
ごめんなさい。たまに読んでる人の反応とかが
聞きたくなるんですわ。
特に
>>388さん、俺としてもかなり本物の石川からは
乖離しちゃってるかな〜なんて思いながら全然方向修正
することなく続けてるけど、それでも読んでくれる人が
いるのは嬉しい限りですわ。
391 :
名無し娘。:2001/07/15(日) 23:56 ID:AVD5Rskc
感想とか書くとうざいかな、と思ったので書かなかったですけど
毎日楽しみに見てますよ。
392 :
クズ学生:2001/07/16(月) 16:27 ID:R4omQj2I
>>391 遅レスゴメソ。いや、ただ延々と自分の投稿だけが
載ってると独り善がりなんかな〜って思う時が
あるんで、ちょっとそう感じて寂しくなっただけです。
あと、今まで書きませんでしたが、スレの重さ等に
関係なく500レス超えた時点で次スレに移行します。
ちょっと山場っぽいね。
期待。期待
394 :
名無し娘。:2001/07/16(月) 22:20 ID:dR.fWIBY
毎日楽しみに読んでるよ。
キャラ全員がナマナマしい(本物っぽい)感じがして
オレは好きだな。クズ学生頑張って!応援sage。
395 :
クズ学生:2001/07/16(月) 23:25 ID:BZvbqtj6
「ぐっさん・・・・・」
「梨華ちゃん。ちょっと部屋に入っててくれる?」
石川の心配そうな声に対して、目も合わせずに軽く石川の肩に手を置き
小声でつぶやく矢口。その視線はずっと安倍の方に向いたままだった。
それを見て石川は渋々ながら自分の部屋に入る。
カッ、カッ、カッ、カッ
「なっち、ちょっといい?」
「・・・・・うん」
そういうと二人は揃って安倍の部屋に入る。安倍の部屋と石川の部屋の間には
階段の出口があるので、二人に小声で喋られたら話の内容は石川には一切
聞こえない。石川は煮え切らないままに明かりも着けず布団に潜り込む。
自分は触れてはいけない部分に触れてしまったんだろうか。今まで色々と
相談にのってくれた安倍。いつも優しくしてくれた安倍。その安倍が困って
いるんだとしたら、何とか力になれないものか。そう思ってかけた言葉も、
安倍にとっては迷惑なものでしかなかったんだろうか。
「・・・・・・そう。わかった。じゃ〜もう何も言わないよ」
「・・・・ごめん」
「別に、あんたが謝ることじゃないでしょ」
ガチャッ!
話が終わり、安倍の部屋を出る矢口の表情は、まるで冴えない。
結局何も聞きだせなかったようで、自分さえも蚊帳の外なのかと
いったような思いに、一抹の寂しさを隠せないといった感じか。
力なくドアを開け、自分の部屋に戻る。普段だったらすぐに矢口の
部屋をノックし、様子を伺う石川だったが、今日ばかりは何もせず
ただ部屋で寝たフリをしているだけだった。
396 :
クズ学生:2001/07/16(月) 23:38 ID:BZvbqtj6
>>393 そうね、ここは結構長丁場。何とか踏ん張るよ
>>394 俺的にも登場人物の実在感っていうのに注意してる
部分ってのはあるから、そう言ってもらえると嬉しい。
そういや、意識した訳じゃないけど24時間テレビ内の
ドラマでは安倍が主役。どうなんねやろな?
397 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:22 ID:BGag8fWc
自分でも気になっていたんだけど、きっと私は躁鬱気質があるんじゃ
ないだろうかと、ふと思い悩む石川。布団に身体を半分突っ込み
壁際に置いたテレビを見ながら微動だにしないまま、あっという間に
半日が過ぎてしまった。テレビ画面を見ていても、焦点は合わないまま。
画面に写る人物の声は意味をなさず、ただ雑音として耳から遠ざかる。
子供の頃からそうだった。何か一つでも自分の前に立ち塞がる障壁が
あったら、それが解決するまで他のこと一切に気が回らなくなってしまう。
それは劣等感から来るのかなと以前は思っていたんだが、最近になって
自分の完璧主義なところから来てるんじゃないかという風に思うように
なった。自分の現状に満足出来ずよりよい状態を目指すだけならいいが
その状態に至らない自分に対する自己嫌悪があまりに激しく、それに
耐えられなくなって自分の殻の中に閉じ篭ってしまうようだ。それを
もし親や家族が知ったら心配するだろうと思い、自分のそういう側面は
極力見せないようにしてきた。幸い小学校入学と共に個室を与えられた
石川は、そんな状況に陥った時には部屋の鍵をかけカーテンも閉めて、
ただ自分が動き出せるのを何もせずに待った。
そんな気質のせいもあってか、石川には実家にいた頃に二度程登校拒否を
していた時期があった。その時は親友である福田や家族の助けもあって
何とか登校出来るようになったが、今は自分を支えてくれる人がそばに
いる状況ではない。また、そんな周りの人間に支えられなければ平静を
保てなくなるような自分に対して余計に嫌悪感を持つから、なかなかこの
状況から抜け出せそうにない。それでも、ここで変わらないときっと
今後生きていく上で目の当りにするより高い障壁を超えることなど
出来ないだろうと思うから、今は他人の助けは借りたくない。そう思い
腕を組みながらテレビを眺めていると、もう既に日は暮れかけていた。
他の人にしてみれば、些細なことなのかも知れない。だけど、このまま
自分の気持ちを抑えたまま燻らせたくはない。だから石川は、安倍が
帰って来たらもう一度ちゃんと話し合おうと、堅く心に決めていた。
398 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:23 ID:BGag8fWc
ギィ〜〜ッ、ギィ〜〜ッ! カタッ、カタッ
あれからどれだけ経ったのだろうか。誰かが階段を昇ってくる足音が
聞こえる。携帯を手に取り見るとまだ10時も回っていない。こんな
時間に矢口が帰ってくるはずもないので、この足音の主は安倍だろうと
容易に察しがつく。石川はドアの閉まる音を確認した後、おもむろに
布団から抜け出して安倍の部屋に向かう。
・・・・コンコンッ!
「・・・・・は〜い。どなたですか?」
「私、梨華。入れて」
「・・・・どうぞ」
ガチャッ!
入ってもいいかという同意を求める言葉ではなく、入れてくれという
嘆願の言葉。そこに何か感じるものがあったのだろう、安倍は石川の
言葉を受け入れ、部屋の中に誘い入れる。安倍はコタツ机の脇に座り
石川の顔を見上げる。そしてそれに合わせ石川も安倍の前に座り込む。
「何、どうしたの? またこの間の話?」
「・・・・あのね、なっち。これってやっぱりおせっかいなのかなって
自分でも思うんだけど、もし悩んでることがあるんだったらみんなと
相談しようよって思うの。何か力になれればって」
「あ、そういう話だったら帰ってくんない?」
「ち、ちょっと待って、なっち。今なっちが気落ちしてるのは周りから
見ても明らかにわかるし、やっぱ一緒に住んでたら心配するもんでしょ」
「そもそもあんたここに来てどんぐらいになんのよ? まだ3ヶ月も
経ってないでしょ。あんたにそんなこと言われる筋合いないわよ!」
「ねえ、親御さんに何か言われたの? それとも実家で何かあったの?」
パシーーーーーーーーン! ・・・・
399 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:24 ID:BGag8fWc
石川の言葉を遮るかのように、身を乗り出し平手で石川の頬に
ビンタを浴びせた安倍。石川はすぐさま安倍の方に向き直すが、
とっさのことに言葉も出ない。そして安倍が息を粗げたまま怒鳴る。
「おせっかいなんだよ! さっさと出てってちょうだい!」
その安倍の鋭い視線に圧倒され、石川は何も言い返せない。そして
石川は安倍から目を逸らすとそのまま立ち上がり、振り返りもせず
一言だけ言い残し、部屋を後にした。
「・・・・・・ごめん」
ギィ〜〜、バタンッ!
「・・・・・エッ、エッ、・・・・グスッ、グスッ」
それは、昨日の晩に安倍が矢口に言ったのと全く同じ一言。おそらく、
全く同じ思いで、石川も自分に告げたんだろう。そう思い右手の掌を
見つめる安倍。石川の頬に叩き付けたその表面は少し赤味を帯び、
痛みに少々しびれている。その余韻を感じながら、目には大粒の涙を
溜めていた。この手の痛みなんかじゃない。石川の心の痛みを感じて、
涙をこらえる安倍。それでも、涙はこらえきれなかった。
ガチャガチャッ、バタンッ!
「・・・・・・・・」
自分の部屋に戻り、明かりも着けずに倒れ込むようにして布団の上に
寝そべる石川の姿は、さながら死人のように見える。事態が明らかに
悪化したことは、どんなに勘の悪い石川でもわかる。やっぱり自分は
おせっかいだったんだ。安倍のことを助けたいと言っていたのも、
自分の力を過信して自分ならきっと安倍を助けられると勘違いしてた
だけなんじゃないだろうか。軽く手を延ばしても、何も掴めず空を切る。
400 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:25 ID:BGag8fWc
身体を起こそうともせず、窓から差し込むネオンの帯に顔をふせもせず
ただ布団の上に寝転がる石川の横顔。枕に顔を埋めたまま、動かない。
虚ろな眼差しで、昔のことを思い出していた。
・・・・・・・・・・・
「あんた、おせっかいなんだよ!」 バンッ!
「なっ、そんな言い方ないじゃないのよ、明日香!」
「あくまで私個人の問題なんだからさ〜。これ以上余計な口は
挟まないでくれない? 頼むから」
「だって、自分一人じゃ解決出来そうにないって言ってたのは
明日香の方じゃないのよ〜。だから、私が何とか・・・・」
「だから先輩呼びつけて全部話したっていうの? それじゃ〜
先輩の方が悪いって言ってるようなもんじゃない。わかんない?」
「あ、・・・・・うん、そうかも知れないけど・・・・」
「・・・・梨華、そりゃ〜あんたなりの優しさからしたことなのかも
知れない。それはわかるよ、私でも。だけどね、・・・そういうのも
時にはプレッシャーになることだってあるんだよ、相手にとっては。
それだけはわかってちょうだい。ねっ」
「・・・・・・うん」
・・・・・・・・・・・・・
あの時も言われた、「おせっかい」という言葉。相手のことを思うなら
かえって見守っていた方がいい時だってある。今までそんなことに何故
気付かなかったんだろうか。いや、きっと気付いていたんだろうけど、
自分の衝動を抑えられなくなってしまう。それって自分の「いい」ところ?
それとも、「ダメな」ところ? 頭の中で整理が付かない意識の断片。
散らばったまま、拾い集める。鋭利に尖ったその断片が自分の手足を
傷付けるたび、その場でうずくまり、ただ傷が癒えるのを待つだけだった。
401 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:26 ID:BGag8fWc
「・・・・・うん、わかった。とりあえずそっち戻るから。・・・いや、
大丈夫だからさ、・・・・うん。・・・・うん、じゃ〜ね」 ピッ!
部屋を閉め切ったままで携帯のスイッチを切る安倍。目も虚ろなまま、
少々乱暴に携帯を放り投げ、一つ溜め息を付く。窓から入る木の影が
緩やかな風に揺れて、安倍の顔や肌をまだらに染める。そして、たまに
入り込む木漏れ陽が安倍の潤んだ瞳をきらめかせる。
ギィ〜〜〜ッ、ギィ〜〜〜〜ッ! カッ、カッ
「あ、なっち〜。ちょっとええかな〜?」
「え、・・・・・・何ですか?」
弱々しい足取りで階段を降りてきた安倍に対して声をかけたのは
中澤だった。その声に対して、虚ろな眼差しながら、笑顔で応える安倍。
手にはいつもとは違う大きめの手提げを持ち、よそ行きな格好をしている
ところを見ると、何か用事があって外に出るんだろうということは容易に
想像出来るが、中澤はそんな安倍を敢えて呼び止めた。
「ちょっと、・・・・・・うちの部屋に来てくれへんかな〜?」
「・・・・・・はい、いいですけど」 カッカッ、カッカッ
普段は中澤に敬語なんか使わない安倍が、今日はぎこちなく敬語で
受け答えしている。それは、何か中澤とも距離を取ろうとしてるかの
ようにさえ感じられた。だが、だからといって動じる中澤ではない。
半ば強引に安倍を管理人室に招き入れ、部屋の扉を閉める。だが、
鍵はかけないままだ。
「まだこないだの玄米茶が残ってんねんか〜。そいでええやろ?」
「う、うん・・・・・・で、何?」
「ああ、ちょっと聞きたいことがあんねんけどな」
402 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:27 ID:BGag8fWc
安倍:「・・・・・・何かあったの?」
中澤:「いやな、最近なっちの様子が妙なんちゃうかな〜って
感じてな。せやからそれこそなっちに何かあってんちゃう
かな〜思うやん。やっぱ管理人やし、心配んなるし」
安倍:「いや、別に何もないってば。みんな気にし過ぎなんだよ〜」
中澤:「そうは思えへんねんけど。あんた矢口とかにもちゃんとした
ところは説明してへんみたいやね。普段やったら何でも
言い合える仲やと思っててんけどな〜」
安倍:「ち、ちょっと待ってよ。それじゃ〜私が何か悪いことでも
してるみたいじゃないのよ〜。そんぐらい別にいいじゃない」
中澤:「ま、私の場合はさっきも言うた通りここの管理人としてあんたらの
親代わりになって世話せなあかんっちゅうのがあるけど、他の
みんなは別にそんな義理がある訳ちゃうねんで。せやんに何で
そこまで心配してくれるんか、わかるやろ」
安倍:「・・・・・・・・・」
中澤:「あんたのこと、ホンマの友達やと思ってるからやで。今の世の中、
そないな友達なんかそうは出来ひんと思うで。そういう関係は
大切にせなあかんよ、実際」
安倍:「・・・・・・うん」
中澤:「それとな、私は別にあんたの監視役ちゃうねんからあんたが
いくらのんべんだらりとした生活送っとっても親御さんには
何も言わへんよ。せやけどな、親御さんから何も伝わってへん
訳ちゃうねんで。それはわかるやんな〜」
安倍:「!」 ピクッ!
中澤:「あんたんとこのお父さん、えらい調子悪いらしいやん。そんな
親に余計な心配させたらあかんで。・・・・な、ちゃんと訳を
聞かせてくれへん。なっ」
安倍:「・・・・・・うん」 コクッ!
403 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:28 ID:BGag8fWc
安倍:「私ね、裕ちゃんには言ってなかったと思うんだけどね、こっち来て
獣医学部の学生をやってるのね」
中澤:「ホンマに? 全然イメージちゃうねんけど、ハハッ」
安倍:「そんなこと言わないでよ、自分でもそう思ってんだからさ。
・・・・・だけどね、本来うちの父ちゃんとか母ちゃんは
私が獣医を目指すのに反対だったのね」
中澤:「え、それは何でなん? 何か都合の悪いこととかあってん?」
安倍:「これは裕ちゃん知ってると思うんだけど、うちの稼業は酒屋なのね」
中澤:「あ、この前の御歳暮、ほんまありがとうな。なっちからも
親御さんにお礼言っといてくれへん?」
安倍:「うん。・・・・で、うちの兄弟って女ばっかりで家を継ぐ男が
いないのよ。だから長女の私に酒屋を継いで欲しいって思ってた
らしくて、獣医学部の受験はすごい反対されたのね」
中澤:「う〜ん、なるほどな」
安倍:「あと、うちはちょうどその年に上の妹の高校受験も控えてたから、
学費のかかる私立とかは受けちゃダメだって言われてたのね」
中澤:「えっ、私は大学のこととかってようわかれへんねんけど、私立
じゃないと見つかれへんの、獣医学部って?」
安倍:「いや、そういう訳じゃないんだけど〜、私の成績じゃとてもじゃ
ないけど国立の獣医学部は無理だったのね。だから、どっか私の
受けられる獣医学部のある私立はないかな〜って思って探してたら、
ちょうど都内にいいとこを見つけたんだよ〜」
中澤:「あ、でもな、私立行くのも経済的にあかんっちゅう状況でさらに
上京せなあかんってなったら余計にあかんやん。どないして
親御さん説得してん?」
安倍:「そりゃ〜すごい頼み込んだよ。それにちゃんと家賃の安いとこ
とか探し回ったしね。あと、妹も道立の高校に行くとか言って
やる気出して勉強してくれたし」
中澤:「ほ〜、せやってんか。それやったらよかったやん」
404 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:31 ID:BGag8fWc
安倍:「あのね、・・・・・うちのすぐ近くに牧場があってね、私が
子供の頃とかはよくそこで遊んだりしてたのよ〜」
中澤:「うんうん」 ゴクッ、ゴクッ
安倍:「でさ、よく馬とかと一緒に遊んでたんだけど、あの子達の
方が先に死んじゃうじゃない。あと、いくら病気とかに気を
付けてても感染症とかにかかっちゃうこともあるんだよね。
それでね、あの子達のことを看取る度に、自分の力で何とか
してあげられないかな〜って思ってたのね。悔しいし悲しいから」
中澤:「は〜、それで獣医を目指そうって思っててんな〜」
安倍:「うん、・・・・それが大きな理由だったんだけど、実際は
稼業の酒屋を継ぎたくなかったっていうのもあるんだよね。
ひょっとしたらそっちの方が理由としては大きかったかも
知れないな、今思うと。・・・・・逃げたかったんだな」
中澤:「・・・・・・まあ、自営業の家とかやったら親御さんは
どうしても子供に稼業を継がせたいって思うんやろな〜。
うちは別にそういう店やってたりとかちゃうかったから
そこらへんの心境はわかれへんのかも知れへんけど」
安倍:「そりゃ〜、先祖代々続いてる店を潰しちゃったらいけないとは
思うんだけどね、やっぱり近所に大型チェーンの店とかが
立つとうちらの資本力じゃ太刀打ち出来ないんだよね。だからと
言って大幅な店舗拡大とかをするにも先立つものが必要でしょ。
そう考えると、半端な気持ちで私があの店継いでもダメな気が
するんだよ〜、実際問題として」
中澤:「う〜ん、そういう細かい事情に関しては私がどうこう言える
立場ちゃうしな。それこそ当人ちゃうかったらわかれへんし」
安倍:「そうなると妹達に責任を負わせただけなんじゃないかって
いうのは思ったけどね。何か・・・・・甘えちゃってさ」
中澤:「ああ〜」 ゴクッ、ゴクッ
405 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:32 ID:BGag8fWc
安倍:「それで、何とか受験がうまくいって、こっち来て大学に
通うようになったんだよね。ねっ、来たばっかの頃から
裕ちゃんにはお世話になりっぱなしでね、ハハッ」
中澤:「そんなん別にええねん。こっちはあんたらの親代わりやねんから。
せやけど、こっち来たての頃とかやったら真面目に大学にも
行ってたように見えてんけど、9月過ぎあたりから何や全然
大学にも通ってへんかってんちゃうん?そこらへんはどうなん?
敢えて突っ込んで聞くことはなかったけど、今まで」
安倍:「うん、だいたいそうね。・・・・・裕ちゃんは動物的勘みたいな
やつがあるから薄々勘付いていたのかな〜とは思ってたんだけど、
確かに前期まではちゃんと行ってたんだ、大学には。でもね、
後期が始まったあたりかな、ちょうど実験動物を使った実習が
入るようになったのね。それでね・・・・・」
中澤:「・・・・・で、どないしてん?」
安倍:「何か・・・・・・恐くなっちゃったんだ」
中澤:「はぁ〜〜? どういうことやねん、それは? まさか、
動物の血ぃ見て嫌になったとか、そういうことなん?」
安倍:「ま〜、確かに、そういうのもあったんだけど〜、実験用にって
どんどん動物達が殺されていくのを見てね、『あ〜、私は
動物達をモノみたいに扱うようになっちゃうのかな〜』って
思ったのね。だって、最初は嫌だったけど、直にその検体の
処分とか慣れてってさ、何とも思わなくなってきたんだもん」
中澤:「・・・・・・・さよか〜」
安倍:「それでね、動物助けるためにどんどん動物を殺してってる状況で
何が何だかわかんなくなっちゃってさ。・・・・でね、大学さ、
・・・・・行きたくなくなっちゃって」
中澤:「それで今みたいな生活になったっちゅう訳やね」
安倍:「・・・・うん、一応休学っていうカタチは採ってるんだけどね」
そう言いながら、安倍は目に薄らと涙を浮かべていた。自分の生きるべき
道への葛藤、そしてそこからの逃避。どんなにか苦しかったことだろう。
そんな安倍に対して、中澤は顔を近付けて話し掛ける。
406 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:34 ID:BGag8fWc
中澤:「でもな、せやったら誰かに相談したらよかったんちゃうん?
親御さんとか家族もおったがな〜。友達でもいいし〜、私かて
言ってくれりゃ相談には応じたんに〜」
安倍:「・・・・うん、そうなんだけどね、そういうのって自分で
解決出来ないとダメなんじゃないかって思いこんじゃってて、
誰にも言わずにいたら、・・・・ズルズルとさ、こういう
生活になっちゃったんだよね」
中澤:「そいでもさ〜、あんた今の生活見てる限りではバイトとか全然して
なさそうに見えんねやんか〜。どないしてカネの工面してはんの?」
安倍:「それはね、・・・・・親に大学ちゃんと行ってるって嘘付いて〜
それまで通りに仕送りもらって何とかしてんの。ちょっとだけ
バイトもやってるんだけど〜、メインはそれだね」
中澤:「あかんやん。それは親に甘え過ぎやで、ちょっと」
安倍:「うん・・・・・・・・」
中澤:「で、それが最近のあんたの様子と、何か関係あんねやろ?」
安倍:「・・・・・・うん、それでね、うちは授業料を実家の方に直接
請求してもらうようにしてたんだけど〜、休学すると払わないと
いけない授業料が半額になるのね。その代わり大学施設は使えないし
単位認定も出ないんだけどね。それで、その通知が来て母ちゃんが
大学に問い合わせちゃって、・・・・・・バレちゃったの」
中澤:「は〜、それで手紙が来たんやな、こないだ言うとった」
安倍:「うん。で、手紙には『とりあえず一回帰ってこい』って書いて
あったんだけど、それもね、・・・・・恐くってさ」
中澤:「何やねん、あんた〜。恐がってばっかやんか〜」
安倍:「しょうがないじゃ〜ん。・・・・・いや、恐いっていうのもね、
怒られたり殴られたりするのが恐いとかそういうんじゃなくって
・・・・・苦労して私のために頑張ってくれてる父ちゃんや
母ちゃんに会ったら私、申し訳なくっていたたまれなくって、
絶対耐えられないんじゃないかって思うのよ。そういう恐さよ」
407 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:35 ID:BGag8fWc
「でも、一度帰ってみることに決めたんやろ? その大きな
カバン見りゃわかるで」
「・・・・・・・うん」
「やっぱりそういうのは、ちゃんと会うて話し合わなあかんで。
何でも恐い恐い言うとったら前には進まれへんねんから」
「・・・・うん、今の思い、話してみる。自分の悪かったところは
ちゃんと詫びる。そのつもりだよ」
「・・・・・・でもな、それでも許してもらえへんかったらさ〜、
実家戻ってこいってことになるかも知れんやんな〜?」
「うん、・・・・・多分そう言われると思うんだ。・・・だけどね、
今のまんまじゃ絶対実家には戻りたくない。・・・・あのね、
昨日、梨華ちゃんがね、うちの部屋に来てくれたのね」
「ああ、202の石川さんね」
「そいでね、・・・・・・梨華ちゃんがすっごい心配してくれて
いるのにさ、心にもないこと言っちゃってさ、私。しかもさ、
そんなに真剣に話してくれてるのに、『おせっかいなんだよ!』
って、言っちゃってさ・・・、ウゥッ・・・・」 ・・カタカタカタ
そう言いながら、安倍はうつむき肩を大きく震わせていた。涙をこらえる
ことなど、もう出来ないといった様子で、嗚咽の息をもらしていた。
「・・・・ヒッ、ヒッ。・・・・・みんなね、こんな私でも、心配して
くれるんだよ。こんな私なのにだよ。・・・・それなのに私は、そこまで
されて迷惑だみたいな態度しか取れなくってさ・・・・」
「・・・・・・・・」
「梨華ちゃんにもあんな罵声を浴びせちゃったんだよ。・・・・ヒッ、
・・・・そ、そんなままで、そんなままでここ離れたくないよ〜!」
「・・・・・・グスッ、・・・・グスッ」
「ちゃんと謝れるまで、ここ離れたくないよ〜! ずっとみんなといたいよ!
ずっとずっとみんなでここにいたいんだってば〜〜! ・・・・ヒッ、ヒッ」
泣き腫らした瞳で中澤を見つめ、涙声で叫ぶ安倍。その心からの叫びに、
中澤は涙を抑えることが出来ない。そしてしばらく、安倍の嗚咽のみが
誰もいないアパート中に響く。外の日射しは、あまりに晴れやかだった。
408 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:36 ID:BGag8fWc
「・・・・・・・・」
「なっち、水臭いじゃんねえ・・・・・」
その日の夜、喧噪の中にある都会とは対照的に沈み返る裏通り。
アパートの管理人室に、今いる住人4人と中澤が集まっている。
もうそろそろ暖房機具のしまい時なのか、別にストーブを焚く訳でもなく
4人が思い思いの場所に座る中、中澤が安倍の行動のいきさつについて
語っていた。ただそれも安倍がいないから言ってるという訳ではなく、
ちゃんと安倍から頼まれた上で4人に話しているのだ。
「・・・とまあ、そういう訳やねんか。せやから、どうなるかは
わかれへんけど、取りあえず1回は帰ってくる言うとったさけ、
詳しいことはその時にでも、面と向かって聞いたってや」
「・・・・・・・・・」
高い段になってる畳の上に座りながら申し訳なさそうに苦笑いを
浮かべる103の学生。その隣りに座る保田も、何か言いたそうだが
うまい言葉が見つからないといった表情を浮かべていた。一方中澤が
普段使ってる長机の前に座る矢口は、一点を見つめて言葉を発しよう
ともしない。そしてその真向かいに座る石川はと言えば、これもまた
心の整理がつかないといった困惑の表情で、少し唇を震わせていた。
(なっちの立たされてた状況の苦しさもわかる。だけど、そんな中
親のカネを使いながら遊び呆けてたのは、やっぱり逃げなんじゃ
ないの? 自分一人が苦しんでたんじゃないのに、そう思い込んで
私達を拒絶してたの? それって、卑怯なんじゃないの? 私は、
なっちを・・・・・・・許せるのかな〜?)
自分の置かれた立場から逃げ出す弱さは、人間誰にでもあるだろうと
いうのはわかっている。だけど、それが元で苦しんでる人もいる。
その人の実際を知らぬままに。そんな安倍を悲劇のヒロインのように
考えていいんだろうか。石川の心は、激しく揺れ動いていた。
409 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:37 ID:BGag8fWc
ガタッ!
「ま、心配しなくてもじき帰ってくるでしょ」
そう言って立ち上がったのは、矢口だった。見開いていた目を一度
ギュッと閉じたかと思うと、いつもの明るい表情に戻り、そのまま
部屋から出ていってしまった。そしてそれを追うように石川も部屋を
出ていく。二人の後ろ姿を見て少々心配そうな顔を浮かべる中澤に
対して、保田が背中越しに声をかける。
「裕ちゃん、言ってくれてありがと。多分二人もそう思ってるんじゃ
ないかな。・・・何て言うのかな〜、なっちって結構恥ずかしがりな
ところがあるじゃない。あと、真面目に話すの苦手っぽいとことか。
湿っぽく話すの似合わないしね、ハハハッ」
「あんた〜、そういうことちゃうんちゃう? も〜、本ッ当に〜」
「ま、何だかんだ言ってさ、なっち私達のこと信頼してくれてたって
ことでしょ。それだけでも嬉しいよ」
「ま〜、・・・・せやな〜」
そう言い顔に笑みを浮かべつつも、一つ大きく溜め息をつく中澤。
そんな中澤の顔を見つめながら、出された玄米茶を飲み干す保田。
部屋の窓からは、優しく晴れた薄緑の月夜が顔をのぞかせていた。
カッ、カッ、カッ、カッ
「ねえ、ぐっさん。どこまで行くの?」
「夜のお散歩だよ。気持ちい〜じゃん」
アパートを出て夜の住宅街を歩く石川と矢口。人通りは少ないものの
月明かりに照らされ、何か安心出来るのは気のせいだろうか。石川は
矢口の意図がわからないままだが、何か心配なところもあるので、
とりあえずただ後ろをついていく。影が重なり二人の足許を隠す。
410 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:38 ID:BGag8fWc
「あ、梨華ちゃん、梨華ちゃん。見て見て〜〜」
「えっ、何〜?」
「ほら、もう『La Mode』まで来ちゃった〜」
「あ、そうだね〜。もう10分くらい歩いたかな〜」
すっかり人のいなくなった住宅街の表道。裏の商店街と表の繁華街、
どちらからもちょうど同じくらい入った位置に来てるんだろうか。
矢口が指さしたのは明かりの消えた「La Mode」と書かれた看板。
民家を改装したらしい、どこにでもありそうな喫茶店だった。もう
春が訪れる頃なんだろうか、隣りに立つ自販機のまばゆいばかりの
白い明かりに釣られて、小虫が集まってきていた。
カッ、カッ、カッ、カッ
「あれっ、確かここって二人で来たんだっけ?」
「そうそう、私が非番の時にぐっさんと二人で来たんだよ。
ここのクリームチーズケーキ、すっげえおいしかったよな」
「うん。・・・・ここさ、なっちに教えてもらったんだ〜」
「あ、・・・・・・そうなんだ」
矢口は自販機の前に立ち、小銭入れを開けてながら石川に語りかける。
振り向くこともなく話しかける矢口に、石川はただ相槌を打つだけだ。
そして、ふと振り返ったかと思うと石川に向かって缶を放り投げる矢口。
石川はボ〜ッとしていたので、思わずその缶を取り損ねる。道路に落ちた
缶は鈍い音を立てたものの、夜の静寂を壊すほどの音でもなく、軽く
中身の揺れる音を立てただけで、たいして転がることもなかった。
「ハッハッハッ、何してんだよ〜。ちゃんと取れよ〜」
「っんだよ〜、いきなり投げないでよ〜。心の準備ってもんが
あるでしょうよ。・・・・・あ、これ飲んだことないわ〜」
「今日は特別、私のおごりね〜」 ・・・・ガチャン、カランカラン
「マジで? サンキュ〜〜」 プシュッ!
そう言ってわずかに付いた土をはらい、缶を開け味見をする石川。
缶コーヒーを飲むのなんて、いつ振りくらいだろうか。
411 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:39 ID:BGag8fWc
「・・・・・・・」
「梨華ちゃんさ〜、さっきの話聞いてなっちのことどう思った?」
「えっ? ・・・・・いや、そうだね〜」
「随分自分勝手な奴だとか思ったんじゃないの?」
「・・・・・・・・」 ゴクッ!
微かに夜風が吹く路地で、缶コーヒーの暖かさがちょうどいい。石川は
両手で缶を包み込むように持ち、静かに口に運ぶ。普段はブラックしか
飲まない石川だが、たまに飲むと甘いコーヒーも新鮮さを感じる。
「・・・・そうだね。ま、私の場合はさ、ちょっとおせっかいが
過ぎちゃったかも知れないけどさ〜、ぐっさんとかにはもうちょっと
事情を説明していってもよかったんじゃないかって思うしね」
「うんうん」 ゴクッ、ゴクッ
「なっちとしてもキツかったかも知んないけどさ〜、大学のことで
悩んだりしてるんだったらもっと早く親御さんとか友達とかに
相談してればよかったと思うのよね、どうしても」
「う〜ん、そうだよね〜」
「あとさ、大学に行かなくなった後にもそれまで通り仕送りもらって
遊び惚けてたのはどうかと思うよ。自分ちの家計がツラいってこと
わかってたんだろうにさ〜。それはよくわかんないんだよね」
「・・・・・・・・・」
石川の言葉に多少表情を曇らせながら、矢口は石川のいる壁際に
寄り添ってくる。手には石川が持っているのと同じ缶コーヒーを持ち
そのまま石川の横に並ぶように立つ。矢口と石川では若干身長差が
あるので、石川は少し目線を落として矢口の横顔を覗き込むような
姿勢をとる。手に持つ缶コーヒーも、既に人肌まで温くなっていた。
412 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:41 ID:BGag8fWc
「うん、そりゃ〜理屈で言ったらさ、なっちのしてたことは決して
褒められたもんじゃないよ。俗に言う親不孝みたいなもんだしね」
「・・・・・・・・」
「それと確かにね、私には言って欲しかったっていうのも正直
あるんだよね。でも、・・・・・・なっちは言ってくれなかった」
矢口がどこか遠くを見るような目をしながら自らの思いを語り始めた。
それは別に石川に対して言ってるという意識はなかったのかも知れない。
石川もここで敢えて口を挟む必要はないだろうという判断のもと、ただ
彼女の話に耳を傾けるだけだった。
「あのね、なっちと私ってちょうど同じくらいの頃にあのアパートに
越して来たんだ。もう丸一年近く経つのかな。その頃はうちの住人が
一番少なかった頃でさ、圭ちゃんも梨華ちゃんもいなくってそこが全部
空き部屋だったから、あとは1階に住んでるクズくらいしかいなかった
訳ね。で、歳も割と近かったし上京してきた者同士ってこともあって
私達いっつも一緒にいたんだよ〜」
「えっ、ぐっさんってどっか地方の出だったの?」
「うん、言ってなかったけど私も梨華ちゃんと同じ神奈川出身なんだよ。
でね、私も今の梨華ちゃんと同じように仕送りのない状況で何とか
バイト探して右往左往してたんだけど、やっぱ地元に色んなものを
残しちゃってる訳じゃない? 友達とか、家族とか、思い出とかさ」
「何かくっさい表現だね〜〜、ハハハッ」
「いいじゃねえかよ〜、ハハッ。・・・・・・でさ、そういうのも
あって寂しい時とか耐えきれない時とかもあったんだよ。今でも
あるけどさ、その頃は今よりずっと寂しかった。で、そういう時に
相談にのってくれたのが、裕ちゃんでありなっちだったんだよね」
「ああ〜・・・・・・・・」
「裕ちゃんの場合管理人ってこともあってまだちょっと距離もあった
んだけど、なっちはそれこそ親身になって相談にのってくれたし、
逆に触れて欲しくない時はそっとしておいてくれたんだよね」
「・・・・・・・・」
413 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:42 ID:BGag8fWc
「でもねっ、梨華ちゃん。逆にあの子の方から私に悩みの相談とかを
してきたことってのは今まで一度もないんだよね」
「えっ、・・・・・・そうなの?」
「うん。たまに浮かない顔してる時とかもあったんだけど、こっちから
理由を聞こうとすると大概笑い返したりおどけてみたりして話題を
逸らすんだよね。で、しばらくするといつもの陽気ななっちに戻って
何事もなかったかのように振る舞ってるんだよね。だから、今回
みたいに全然様子が戻んないで沈んだまんまっていうのは初めて
だったからさ、私もびっくりしてたんだよ〜」
「あ、そうだったんだ・・・・・・・」
「で、今度は私がなっちを支えてやる番なんじゃないかって思ったん
だけどね、・・・・・私の助けはいらなかったみたい」
さっきよりもよりうつむき加減で話し続ける矢口。その様子を見ながら
手持ち無沙汰な感じの石川は、飲み終わったコーヒーの缶を別にどうする
訳でもなく、ただ手の中で回しながらその話を聞いていた。
「でもね、だからって言ってなっちが、私達のことを邪険にしてた
訳じゃないっていうのだけは、梨華ちゃんにもわかってて欲しいの」
「・・・・・・・うん、わかってるよ」
「なっちって自分で全部背負い込んじゃうタイプなんだよ。それで
にっちもさっちも行かなくなっちゃったのに、誰にも助けを求め
られなくなっちゃったんだよ」
「・・・・・・・・・」
いくら数カ月とはいえ、一緒に過ごしてきたんだから、そのくらいの
ことはわかっていた。最初は水臭いじゃないかと思っていたようなことも、
なっちの性格上しょうがないのかな〜と、今はハッキリ感じている。
人間いろんなタイプがいる。そしてお互いが好意をもって接するなら、
どんな態度にも少なからずその人なりの思いやりの心情がこもってるのだ。
そんなことに、今更ながら気付く石川だった。
414 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:43 ID:BGag8fWc
「・・・・・・だからね、仮になっちが親御さんの苦労を無にするかの
ように仕送りを無駄使いしてたとしてもね、私は一概になっちを責める
ことって出来ないのね。贔屓目で見てるだけなんだろうけど」
「うん・・・・・・・」
「理屈で見たら悪いことなのかも知れない。納得出来ないことなのかも
知れないよ。だけどね、人間やっぱり理屈だけで人の好き嫌いって
はかれないんだよね。・・・・・梨華ちゃんとしては納得行かない
とは思うんだけど、私はそんななっちでも好きだから。だから・・・、
だから・・・・・・・、帰ってきて欲しいなって、思うの」
目に溜まる涙が落ちるのを堪えようと、空を見上げ鼻をすする矢口。
確かにそうだなって思う。人間理屈だけで人間と付き合えたらどんなに
楽なんだろうと思う時だってある。だけど、それじゃ〜味気ないと思うし
だからこそ深まる付き合いだってあるんだ。そう思いながら、石川はふと
以前バイト先で石黒に言われた言葉を思い出した。
・・・・・・・・・・・・
「でもね、チャ〜ミ〜。何だかんだ言って親ってさ、どんな手間のかかる
子供だってさ、その子が元気でいてくれることが一番嬉しいと思うんだ」
「そういうもんっすかね〜?」
「多分ね。だから親はどんなに苦労しててもさ、子供の喜んでる顔を
見たら全部チャラに出来ちゃうんじゃないかな〜。そんなもんでしょ」
・・・・・・・・・・・・
そして石川はふと夜空を見上げてみる。東京の星空はいつもしょっぱいな。
頬を伝う涙は唇を濡らし、淡い星のきらめきはネオンの光にかき消される。
415 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:44 ID:BGag8fWc
「・・・・・・・っしょっと。よいっ・・・っしょっと」
小春日和と言った天気、雲もない空がかえって閑散として見える。
高層ビルを近くに眺めて、住宅街の路地を歩いてくるのは、いつも
見慣れた可愛い笑顔。行きよりもずっと多い荷物を抱えて重そうに
しながらゆっくりと歩き、額には軽く汗をにじませていた。
「・・・・・・っしょっと。・・・・・?!」
ゆっくり歩きながらアパートの前に着いた瞬間、玄関口に待っていた
いつもの仲間が目に入る。その姿を見て感極まり、思わず駆け出す。
タッタッタッ、バサッ!
「ただいま、・・・・・みんな」
「おかえり、なっち」
手に提げていた荷物を地面に置き、石川の胸の中に飛び込む安倍。
そんな安倍の背中に、そっと手を延ばし包み込む石川。その顔は、
とても晴れやかだった。その様子を見ながら、すぐ後ろに立つ矢口と
保田は顔を向かい合わせて微笑む。
「梨華ちゃん、あの時はごめんね。みんなにも謝んないといけない」
「いいんだよ、もう」 ギュッ!
「な〜にメソメソしてんだよ〜。なっちらしくねえぞ〜〜」 ポンッ!
「そ〜んなことないよ〜。なっちだって女の子だもん!泣く時くらい
あるってもんだよ〜。第一な〜んだよ、ぐっちゃん、いきなり・・・」
「はいはいはい、なっち、もうええがな。その手に持ってたの、北海道
土産やろ。うわっ、うまそうやな〜。みんな、今日は鍋にしようや!」
「は〜い、賛成賛成〜! 今日は鍋パーティーで行きましょう!」
「ああ〜〜、裕ちゃんも梨華ちゃんも〜。も〜〜、・・・・じゃ〜今日は
鍋喰ってビール飲んでジャンジャン暴れるかんね〜。ハハハッ」
風はほのかな春の香りを感じさせつつ、いつもの光景を呼び戻してくれた。
ふと空を見上げると、一筋の飛行機雲が光のコントラストを作っていた。
416 :
クズ学生 :2001/07/17(火) 23:51 ID:BGag8fWc
次レスから新展開です。でも、うまいこと
先が思い浮かばへん。鬱だ・・・・・(w
417 :
394 :2001/07/18(水) 00:46 ID:wXDEOd3E
大量更新お疲れsage。
クズ学生の書く心理描写・内面描写がなんともいえんなぁ。
新展開楽しみだなぁ。
418 :
同胞県民 :2001/07/18(水) 01:38 ID:65ECvBhU
お疲れ様でした
本当にメンバーたちの演じる情景が脳裏に浮かんできました
新展開を期待しております
419 :
名無し娘。 :2001/07/18(水) 01:45 ID:Ocbn23uI
物語の中に「動く」クズ学がでてきたのって
初めてじゃなかったっけ?ちがった?
420 :
クズ学生 :2001/07/18(水) 12:30 ID:uwHJFoPc
>>417 ありがとうございます。俺の場合とにかく彼女らが
喋ってくれないと性格が全然掴めないから、すげえ
会話シーンが増えちゃうんだけど、その分心理描写が
細かく出来るようになると思うんだ。
>>418 どうも。っていうか、気になるな〜、そのHN(w
>>419 おそらく初めて。あんまり物語の中で自分を
動かしちゃうのも気持ち悪いし。妄想し過ぎって
感じになるやろうからな〜(w
421 :
う6ぉ2:2001/07/18(水) 22:24 ID:hdO84Gyg
汚し報告、知ってた?楽屋2倉庫イチャターヨ
422 :
クズ学生:2001/07/18(水) 23:48 ID:tHlGdClk
「あの〜、チーフ。ちょっと宜しいでしょうか?」
「ん、何、チャ〜ミ〜?」
いつものように仕事が始まる前の慌ただしい時、平家に恐る恐る
声をかける石川。別に恐い人という訳じゃないんだが、店の中でも
かなり偉い立場の人なのに気さくに話に応じてくれるから、それで
かえって遠慮してしまうようだ。
「結構前から思ってたんですけど、夜帰る時とかにこの辺って
かなり暗かったりするじゃないですか。だから灯りも着けられて
早く移動出来る自転車を通勤に使いたいんですけど」
「え、そんなの別に私に断る必要とかないよ。全然問題無し」
「あ、ま〜そうなんですけど、うちって駐輪場みたいのがない
じゃないですか。だから近くにいい駐輪場があったら是非
教えて頂きたいな〜って思ってるんですけど」
「あ〜、そうだね〜。裏口出たところに2階にあがる階段が
あるのはあんたも知ってるよね。その階段の下が空いてるでしょ。
そこ使って構わないからさ」
「あ、本当ですか? ありがとうございます〜」
前から思っていたことだけど、帰りの夜道は相当暗く、恐がりの
石川としては自転車が欲しかったのだ。そこで勤務日数を
増やしたりなんかして、ようやく生活費以外に8万ほどの余裕が
出てきた今、平家に許可を求めたようだ。実際東京に来てから
結構な日数が経つが、徒歩と電車だけでは移動範囲が限られて
しまうゆえ、少なからず不便だなと思っていたのは確かだ。
「あ、チャ〜ミ〜。あんた、証明書の類いとか持ってないでしょ。
この際免許取って原付買っちゃえよ。その方が便利だと思うぞ」
「えっ? あ、・・・・・そうですね〜」
原付という選択肢はほとんど考えていなかったので、何やら不意を
突かれたような感覚を覚える石川。確かに平家の言う通りだ。
423 :
クズ学生:2001/07/18(水) 23:53 ID:tHlGdClk
>>421 いや、さっきまで知らんかった。俺の中では
大きなものが終わりを告げたような感覚だね。
そういやあんまネタ以外で話さなかったけど、貴方とは
随分長い付き合いになるね。俺が書かなくなってからも
書いててくれて嬉しかった。面白かったよ。ありがとう。
424 :
クズ学生:2001/07/19(木) 17:14 ID:i4QHBe96
石川も17になった訳だから、もう原付の免許だけなら何の
問題もなく取れる。ただ石川は、免許が取れるかどうかという
ことじゃなく、自分が今まで自分を証明するものも持たずに
暮らしていたということに気付いて唖然としていた。
大概の場合はアパートに入居する際なりバイトを始める際なりに
何らかの身分証明書が必要とされるもんなんだが、石川の場合
アパートの入居は管理人の中澤が親に直接問い合わせて手続きを
してくれたし、バイトは契約書も何もない口約束でここまで来てる
から、特に身分証明書を必要とされるケースがなかったのだ。
そう考えるとタレントのオーディションもいい加減なもんである。
今までの段階ではまだ身分証明書や親の同意なりは要求されてない。
「あ、チャ〜ミ〜。指名入りました。5番卓お願いします」
「は〜い。わかりました〜」
タッ、タッ、タッ、タッ
別に水商売だからその辺りがいい加減だとか感じた訳じゃない。
というよりも、一人で暮らし始めたという自覚が足りてなかったん
じゃないだろうかと、却って自分の不注意を責めるような思いに
駆られていた。きっと高校生気分が抜けていなかったんだろう。
自分で特に必要と思わなければ、自宅に住んでる高校生なら
学生手帳を持っていれば十分事足りるから、そういう発想が
出て来なかったんだろう。ただ石川は、あまりに唐突に家を
飛び出してるから、健康保険証の類いさえも持ってきていない。
いざ急な病気にかかったりしたら、どうするつもりだったんだろうか。
425 :
クズ学生:2001/07/20(金) 01:33 ID:qu.0rx2Y
日付け的に今日、明日と更新出来ません。
ほせ
427 :
エオリア:2001/07/20(金) 09:16 ID:J5YxWaI2
ならばほぜむ
428 :
エオリア:2001/07/21(土) 22:24 ID:2bTQ5LOA
otukare
429 :
名無し娘。:2001/07/22(日) 03:41 ID:0vo3xvIk
免許ほしい。
430 :
名無し娘。:2001/07/22(日) 10:55 ID:QEcWdglQ
sage
431 :
同胞県民:2001/07/22(日) 21:46 ID:gC/qMQSE
>>418 HNですか?
某メンバーとお郷が一緒なんですよ
一押しではありませんがあしからず
回答保全
432 :
クズ学生:2001/07/22(日) 23:26 ID:8iPj/UJc
「皆さん、お疲れ様でした〜」
「あ、はい。チャ〜ミ〜お疲れ〜」
「じゃ〜ね、また来週かな」
自分の勤務時間も終わり帰り支度を済ませた石川。控え室にいる
同僚に挨拶をして席を立とうとした時、向かいに座ってたソニンが
突然思い出したかのように石川に話しかけてきた。
「チャ〜ミ〜、ちょっと待って。私ももう帰るからさ、
一緒に帰ろうよ。いいでしょ」
「は〜い、わっかりました〜」
石川はそう返事するとスッと立ち上がり、ソニンから軽く目線を外し
手提げカバンを椅子の上から机の上に移した。それを見るとソニンも
立ち上がり自分のロッカーの中から財布とカバンを出した。
「それじゃ〜行こうか」
「はい、行きましょう」
「じゃ、皆さんお疲れ〜」
カッ、カッ、カッ、カッ、バタッ!
よく考えるとソニンと一緒に帰るのは今回が初めてだった。だからと
いう訳じゃないんだろうけど、普段仕事の話しかしないからか、どう
話題を作ったらいいかに、少々戸惑っていた。
「あの、ソニンさんは普段はどうやって店まで通ってるんですか?」
「いやね、基本的には新宿駅から中央線で飯田橋まで出て、
そこから地下鉄に乗ってって感じかな。あんたはどうなん?」
「あ、私はそんなに近くはないけど、ずっと歩いて来てますね」
「ふ〜ん、そうなんだ」
433 :
クズ学生:2001/07/22(日) 23:42 ID:8iPj/UJc
>>431 そうでしたか。実は俺もそう。
誰とは言わないが
434 :
名無し娘。:2001/07/23(月) 12:44 ID:f8TMtxVg
あげ
435 :
やまだぁ:2001/07/23(月) 14:06 ID:hpHQ5slY
この話、とてもリアルですね。
読んでると、少し泣きそうになったりと・・・。
本出せば?って言いたくなります。
クズ学生さんこれからも頑張ってください。(おお、マジメなかんじ〜)
436 :
クズ学生:2001/07/24(火) 20:35 ID:5XwsiOuQ
タッ、タッ、タッ、タッ
「・・・・・・」
「あ、ソニンさん。ソニンさんって免許は持ってるんですか?」
「ん? うん、原チャのやつしかないけど、持ってるよ〜」
暗い夜道を二人で歩きながら帰る。ソニンは石川と比べて若干
歩くテンポが早いので、石川は早歩きのような感じでソニンの
横について一緒に歩いていた。それを見てペースを遅めるソニン。
ほんの些細なことだけど、それだけでも会話がぎこちなくなる。
「ああいうのってどうやって取るもんなんですか?」
「私に聞いてもあんま参考になんないでしょ。普通の人に
比べて必要な書類が多いからさ、私なんか」
「あ、・・・・・そうですか」
「ごめんね。まあ、あんたの友達とかでも免許持ってる人は
いるでしょ、多分。そういう人に聞いたらいいんじゃない」
「はい、そうですね」
「・・・・・あ、じゃ〜私はこれで。次は火曜だったよね。
遅刻するなよっ、ハハハッ。じゃ〜ね」
「あ、はい。お疲れ様でした〜」
そういうとソニンは地下道に通じる階段を降りていった。
その後ろ姿を見送ると、石川は踵を返し今来た道を戻り始めた。
せっかくソニンさんと一緒に帰るんだから、出来る限り長く
お喋りした方がいいだろうという石川なりの気遣いといった
ところだろうか。完全に逆方向になるという訳じゃないが、
普段より遠回りになるのは確かである。人付き合いってこんな
もんだろうなんて思いながら、石川は肩を落とし一人歩く。
437 :
クズ学生:2001/07/24(火) 20:39 ID:5XwsiOuQ
>>435 ありがとうございます。意見や感想を頂けるのは
ありがたいんですが、出来ればsageてもらえますか?
438 :
クズ学生:2001/07/25(水) 23:37 ID:UTUTtxBM
ガタガタッ、ガラッ!
「・・・・んあっ、おかえり〜、梨華ちゃん」
「あ、圭ちゃん。ただいま〜。みんないる?」
「えっとね〜、なっちは娯楽室で漫画読んでるはず。確か
クズも一緒にいたかな。矢口は上にいるんじゃないかな。
今日はバイトもないから早く帰って来てるはずだよ」
アパートに帰るとたまたま廊下に出ていた保田と顔が合う。保田は
上はTシャツ・下はジャージという相変わらずな格好だが、慣れると
何の違和感も感じない。むしろ外行きのオシャレな格好をしてる時の
保田の方がよっぽど違和感有りまくりである。
「あのさ〜、圭ちゃんは免許って持ってる?」
「自動車の?」
「いや、自動車じゃなくっても、原チャのでもさ〜」
「そういうの面倒臭いからさ、取ってないんだよ。どうせなら車の
免許取った方がいいじゃん。普通免許を取れば原チャも乗れるし。
でも、今んところそんなカネの余裕もないしね」
「そうか〜。あ、ありがとうね」 ガタッ、カッカッカッ
「あ、確か矢口が原チャの免許持ってるはずだからさ、
矢口に聞いてみなよ、そういうことは」
「うんっ、聞〜てみる〜」 カッ、カッ、カッ、カッ
二階に上がり自分の部屋に荷物を放り投げる石川。そして、二隣りの
矢口の部屋に明かりが着いてることを確認するとすぐに矢口の部屋の
前に行きドアをノックした。が、しばらく経っても何の反応もない。
ちょっと不自然に思った石川が2〜3回激しくドアをノックすると、
眠たそうに返事をする矢口の声が聞こえた。
「・・・・ふぁ〜い、どなた様ですかぁ〜〜?」
「ぐっさん、私、石川。ちょっといい?」
「あ、・・・私寝てたのか。・・・うん、ちょっと待ってね」
ガチャッ!
439 :
名無し娘。:2001/07/26(木) 00:44 ID:v/VbTI7E
ーp@y
440 :
クズ学生:2001/07/27(金) 15:28 ID:WjZZ61VI
ガタッ、ガタッ
石川:「あ、ぐっさん寝てたんだ。ごめんね、起こしちゃって」
矢口:「いや、いいよいいよ。電気付けっぱなしで寝てたんだから
却って礼を言わないといけないね。サンキューね」
石川:「ああ。っていうかね、電気が着いてたから起きてるかと
思ったんだよ。で、今は大丈夫?」
矢口:「うん、大丈夫だよ。そこ座っといて」
石川:「は〜い」 ガサッ、ガサッ
矢口:「あ、ちょっと待っててね。メイク落とさないで寝ちゃった
みたいなんだ。肌荒れちゃってる〜」 キュッ、ジャーーー!
石川:「ぐっさんって外だと眼鏡しないんだね〜。コンタクト?」
矢口:「うん、外行きって感じ? 家だったら別に眼鏡でいいんだけど
外で普通の眼鏡はちょっとね。サングラスならするけど」
石川:「ふ〜ん。やっぱり気になるもんなんだね、そういうのって」
矢口:「で、今日は何? 何か用事なんでしょ?」 シャーー、キュッ!
石川:「あ、そうだ。ぐっさんに聞きたいことがあったんだよ」
矢口:「よっこいしょっと。何? 恋の悩みとか? ハハハッ」 ドサッ
石川:「ハハッ、そんなんじゃなくてさ、圭ちゃんから聞いたんだけど
ぐっさん原付の免許持ってるんだよね〜。何か必要な書類とか
あんの? そういうのよくわかんなくってさ」
矢口:「あ、梨華っちょ免許取るんだ。あのね〜、私も結構前のことで
忘れちゃったんだけど、確か学生だったら学生証とか必要だった
んじゃなかったかな。梨華っちょはまだ学籍はあるんだっけ?」
石川:「いや、もうないはず。自主退学ってやつだから」
矢口:「そうなんだ。だったらね〜、住民票か何かが必要だったと
思うんだな〜、確か。あと検定料と判子くらいでよかったかな」
石川:「え、検定料って何?」
矢口:「いや、試験受けて免許を発行してもらうための料金」
石川:「え、免許取るのに試験するんだっけ?」
矢口:「何言ってんだよ〜、ハハハッ。そんな何もしないで貰える
もんじゃないんだよ、免許って。まあ、簡単な試験だけどね」
石川:「そうか〜、試験か〜。やだな〜」
441 :
やまだぁ:2001/07/28(土) 12:56 ID:wXXM2dik
この前はsageなくてすいません。
いつも楽しく読んでます。クズ学生さん頑張って!
442 :
クズ学生:2001/07/28(土) 17:04 ID:qZ9umHzM
石川はあまり寝覚めがいい方ではない。よく血圧が低いタイプの人は
寝覚めがよくないとか言われるけど、石川も少なからずそういうのが
あるらしい。いつものように日はすっかり真上に昇っていた。
ふらつくような足取りで窓際まで行き、カーテンを開け網戸にする。
まだ本格的な春とは行かないまでも、心地よい風が吹き抜けてくる。
ここ2〜3日部屋の換気を全くしてなかったので、廊下側の窓も開けて
さらに廊下の窓も開け放つ。すると籠っていた空気が一遍に廊下側の
窓から抜け、山間の滝から打ち付けてくる激しい水の流れのように
石川の部屋の中を洗い流していく。目を細め風を受ける石川だったが、
ふと部屋全体を見回すと床はゴミだらけ。脱ぎっぱなしの服やら
放りっぱなしの雑誌が散乱して、足の踏み場もなくなっていた。
さすがにこれはやばいだろうと言うことで、今日は天気もいいことだし
部屋の掃除と溜まってた洗濯物の洗濯もしてしまおうと妙に息巻く石川。
(・・・・・あ、メール来てた)
石川は昔から流行には疎かったし、そもそも友達が少ないというのも
あってか、一緒にメール交換をしてる人なんか本当に数えるくらいしか
いなかった。だから、メールというだけで大概誰なのか見当がつく。
『うぃ、私だ! 最近暇とかあんの? 今度遊ぼうぜ。
返事待っとるぞ〜〜 by 市井紗耶香 ヽ ^∀^ ノ』
(あ、市井ちゃんだ。どうしようかな〜、いつ空いてるっけ?)
石川は手提げカバンの中から手帳を取り出し今後の予定を確認し、
適当な日にちを見つけ市井に返信を送る。これでも文字を打つのは早い。
そして、メールを送り終えると携帯を床に置き、脱ぎ捨ててある服を
1つにまとめ始めた。手持ちの服はほとんど洗濯してないので、今着てる
ジャージくらいしか私服がない状況。すっかり保田化が進行している。
444 :
クズ学生:2001/07/29(日) 02:55 ID:PllieYjc
>>441 ありがとうございます。
>>443 どうなんでしょうね〜(w
何げにスレ立ってから丸半年。ようやるわ、俺(w
445 :
クズ学生:2001/07/29(日) 15:17 ID:l81uxuKw
部屋の中にある衣服のあらかたをスーパーのビニル袋に詰めて、そこに
洗剤の箱を放り込んで重そうに持ち上げる。両手が塞がる程になる前に
洗濯しとけばよかったな〜なんて思う石川だが、大概そんなことを
言ってるうちは面倒臭がって何もしないのが関の山という感じで。
両手いっぱいの洗濯物を持ち、部屋を出る石川。ちょっとした外出の際や
鍵をかけるのが面倒臭い時には鍵なんぞかけずにそのまま出ていってしまう。
今回にいたっては風通しのために廊下側の窓も開け放したままで出てるから
泥棒としては入り放題な状況であることは間違いない。ただ、本来こんな
危機管理じゃいけないんだろうけど、このアパート内ではちゃんと鍵をかける
人間自体が少ない。管理人がいるからという安心感と、こんなアパートに
盗みに入る奴なんていないだろうという感覚、あとアパート内の人間は疑う
必要がないという程の妙な信頼感が働いているからこうなるんだろう。
カッ、カッ、カッ、カッ
「あ、石川さん。こんにちわ〜」
「あ、どうも。いつもお世話になってます〜」
一階に降りると廊下の掃除をする中澤の姿が見える。生活時間帯がすっかり
ずれてしまってるというのもあると思うが、最近はあまり中澤とも顔を
合わせてないなと思う石川。擦れてきてるのかも知れないと恥ずかしくなり
すこしはにかんですぐ目線を下げる。が、それでも中澤はお構いなしに話す。
「最近なっちとかもちゃんと大学に行くようになってもうてんか。
それはめっちゃ嬉しいねんけど、すっかり話し相手がおれへんよう
なってもうてな〜。せやからごっつ寂しいねんや〜」
「そうですか? 矢口さんも昼間起きてる時もあるでしょうし、
私でよかったらお相手しますけど」
「ほんまに? いや〜、めっちゃ嬉しいわ〜。いつでも来てや」
「あ、すいません。ちょっとこれから洗濯しに行きますんで、後で
よろしいですか?」 ガサガサッ、ガサガサッ
「いや〜、そんぐらいその格好見たらわかるし〜。じゃ、後でな」
446 :
y2k:2001/07/30(月) 09:41 ID:yBJDOTE6
連載半年記念(?)保全。ま、マターリとね。
447 :
クズ学生:2001/07/31(火) 01:59 ID:oLomKeOg
「よいっ・・・・しょっと」 ガサガサッ、パッパッ!
手に提げていた袋の中から仕分けもせずに衣服を出し、端から
ランドリーの回転ドラムに放り込む。本来こういう洗い方をしちゃ
いけないものも混ざってるんだろうけど、そんなことを気にする
様子は微塵もない。石川はそういう点に関しては本当に無頓着だった。
そして、普段だったら着ているジャージの上くらいは一緒に洗って
しまうところなんだけど、そうするとさすがに帰る時に着るものが
なくなってしまうので、その状態で洗剤を入れコインを投入する。
洗濯物が重くて洗面道具を持ってこれなかったので、せっかく風呂場の
隣に来てるというのに特にやることがない石川。ベンチに座りドラムの
回転を見ながら、ふと思い出したかのように携帯を取り出す。
(あ、・・・・・そうだ。住民票がいるんだった)
そう思い激しい音の鳴るランドリーを出て、店の前で携帯のスイッチを
入れようとして、突然動きが止まる。明らかに動揺している様子。
(・・・・・実家に電話入れるのって、何日振りくらいだろう?)
便りがないのは元気な証拠というものの、最後に電話をしたのが
中澤に言われてあのアパートに入ると連絡したあの時だから、もう
丸2ヶ月くらいは電話も入れてないことになる。仕送りがないから
別に電話を入れるような用事もないなんて、そんな軽薄な関係じゃない。
まだ社会に出るには若過ぎるであろう我が娘の心配をしない親がいるか。
向こうとしては気を遣って敢えて電話をかけてこないんだろうが、
寂しく思ってるのは向こうもこっちも同じなんだろう。家族なんだから、
そんぐらいのことは信じていいんじゃないか。携帯を握る手が震える。
448 :
クズ学生:2001/07/31(火) 23:40 ID:1ksYbhLo
ピッ! プルルルルルルッ、プルルルルルルルッ
母:『はい、もしもし。石川ですけれども』
石川:「あ、もしもし、母さん? 私、梨華」
母:『あ、梨華! 元気でやってるの? たまには連絡くらい
入れなさいよね。どう? 身体壊してない?』
石川:「うん、それは大丈夫だよ。みんな元気なの?姉ちゃんは?」
母:『そりゃ〜元気よ。お姉ちゃんも父さんもみんな元気よ』
石川:「あ、そう。よかった・・・・・」
母:『あんた妹の心配もしてあげたら? あの子ショゲちゃうわよ』
石川:「いや〜、あの子だったらどうせ元気だろうと思ってさ、ハハッ」
久し振りに聞く母の声。以前は嫌と言うほど聞いてたからウンザリすることも
あったけど、しばらく聞いていないと、その声の響きから寂しさと嬉しさが
入り交じったような不思議な感覚に襲われる。そして、胸が熱くなる。
母:『あ、そういえばお姉ちゃん言ってたわよ。何で私が家で
クダ巻いてるのに梨華の方が先に家出ちゃうんだよ〜って』
石川:「ハハハッ、姉ちゃんらしいや。ところで母さん、ちょっと
用事があるんだけどさ〜」
母:『何? やっぱりおカネが足りないの?』
石川:「いや、今んところはまだいいや、カネは。そうじゃなくって
こっちで免許取ろうと思うんだけどさ、何か住民票が一枚
いるらしいんだよね。だからさ、こっちに送ってほしいのよ」
母:『あ、はいはい。わかったわ。そっちで免許取るの? じゃ〜
原付とか買うの? おカネ足りないんじゃないの、やっぱり?』
石川:「大丈夫だってば。何とか頑張ってるんだからさ。お願いね」
母:『うん、じゃ〜2、3日のうちに住民票取ってきて送るから』
石川:「住所は間違えないでね。ちゃんとそっちには伝わってるんだっけ?」
母:『大丈夫よ。管理人の中澤さんから地図付きのFAXが届いてるから』
石川:「あ、そうなんだ。 それじゃ〜、身体に気を付けてね」
母:『は〜い。ちゃんと栄養のあるもの食べなさいよ。じゃ〜ね』
ピッ!
449 :
エオリア:2001/08/01(水) 18:51 ID:pYsmJ1rI
オイラも弟の住民票取りに逝かなくっちゃ・・・。
リアルやのう。
450 :
名無し娘。:2001/08/01(水) 23:36 ID:YrcF0YvM
実家に電話か……。しばらくしていないな。
ところで、騙りが出て、大変だね。
451 :
クズ学生:2001/08/02(木) 01:04 ID:SrXp7J/E
携帯の通話を切り、しばらくうつむいて上を向こうともしない石川。
きっと傍から見たら変な様子に見えたんだろうけど、この銭湯前の
通りは人が少ないので、気に留める人間自体一人もいなかった。
そしてしばらく経った後、携帯をギュッと握りしめたかと思うと、石川は
突然ランドリーの奥に駆け入ってしまった。こんな短い会話の間に
洗濯が終わるはずもなく、洗濯ドラムの回転は一定のリズムを刻みつつ
相変わらずのデカい音を発し続けていた。洗濯ドラムは他にもいくつか
回っていたけど、ランドリーの中にいるのは石川一人だった。
そんな中、石川は椅子に腰掛け道路側に背を向けながら、泣いた。
今まできっかけがなかったから連絡が取れなかっただけなのかも
知れないと思う。もし家族の声を聞いてしまったら、張り詰めていた
緊張の糸が切れてしまうんじゃないかという心配を、無意識のうちに
していたのかも知れない。決意が揺らいでしまうんじゃないかと、
怖れていたのかも知れない。だが今はどうだったのかはわからない。
安堵感と焦燥感と不安感、そんな思いがいっぺんに濁流となり
押し寄せて来たような複雑な心境の中、石川はただ下を向き泣いた。
洗濯ドラムの轟音に嗚咽の声は掻き消され、打ち震える後ろ姿だけが
寂しくランドリーのガラス窓に写る。
452 :
クズ学生:2001/08/02(木) 01:11 ID:SrXp7J/E
>>449 実際一人暮らしをするっていうことを想定して
書いてますからね。こんだけ細かいことまで
書いてるから長くなるんですが、しょうがないっすね。
そこまで書かないと満足出来ないんだから。
>>450 そうね、最近騙られてるね。しょうがないかな。
本格的にウザがられてきてるみたいだしね。
453 :
クズ学生:2001/08/02(木) 23:35 ID:X6NTxhUA
実家に電話をかけて3日後、石川の部屋のドアにかかる郵便受けに
一枚の封筒が入っていた。石川は郵便受けからその封筒を抜き出して
部屋の中に入り、棚をまさぐりハサミを取り出した。封筒の中身を
見ると便箋が一枚、頼んでおいた住民票が一枚、そして剥き出しの
ピン札の一万円が五枚ほど入っていた。
(現ナマはこういう送り方したらダメじゃねえのか?・・・)
そう思いながらも苦笑いを浮かべる石川。決してよくない家計の中で
これだけのカネを工面してくれた両親の苦労が、働き始めた今だから
一層よくわかる。相当遅いけど、ホームシックにかかりそうだな。
そして現金と住民票を抜き出すと、封筒は棚の中にしまってしまった。
家族からの手紙なんだからすぐに読むべきなんだろうけど、今は
とてもじゃないけど読む気にならない。もうそろそろオーディションの
三次試験を迎えようという今、振り向いてはいけないという強がり。
だがそんなもの、不安から目を背けてるだけだ。そう思うと、虚しい。
翌日、バイトが非番だったため、必要書類等を持ち免許試験場のある
鮫洲に向かう。事前準備などは何もしていかなかったものの、試験は
ソツなくこなし合格。講習会では初めての原付乗車に戸惑いながらも
言われた通りに教習車を操っていた。意外にも結構楽しいな。
免許交付後、アパートに帰るとその足で矢口と一緒にバイク屋に向かう。
そして二人で相談しつつ、その場でカワイイと思ったホンダの原付を購入。
親の仕送りのおかげでかなり財布の中身が潤っていたため、耳を揃えての
一括払いである。矢口に「すげぇ〜!」と言われながらも少々恥ずかしい
思いをしていた石川であった。
454 :
クズ学生:2001/08/03(金) 04:12 ID:D6KPE5D2
500まで待とうかと思ったんだけど、キリがいいんで
新スレに移行します。
455 :
クズ学生: