1 :
マングース西浦 :
2000/12/17(日) 01:02 ID:NiliRguE
2 :
マングース西浦 : 2000/12/17(日) 01:19 ID:NiliRguE
(あ〜またいつもの説教だよ…) そう思いながら目を閉じた飯田の脳裏に、今まで見たことも無いような風景が広がった。 「え!?え?なにここ…」 ガリガリに痩せているのに、不思議に腹部だけを異常に膨張させ、手足の関節部を腫らした子供ばかりが目に入った。典型的な栄養失調の症状なのだろうが、そのことより飯田には気になることがあった。 「くさっ…臭い…」 つい、飯田はそのようなことを口にし、その声で一番近くにいた奇妙な体型をした子供の一人は飯田の存在を認識した。 「おねえちゃん…何か食べ物持ってないの…」 実際の年齢は10歳そこそこなのだろうが、中年のような顔つきをしている。心労のせいなのだろうが、この時の飯田には相手のことを思いやる余裕などあるはずも無かった。 「きも〜〜い!!!こっち来ないでよーーーーー!!!」 そう言った後で飯田ははっとした。言われた子供の目に涙が浮かんでいる。 (私…なんてことを…) 「ごめんね…ひどいこと言って…でも私本当に何も持ってないから…」 「いいよ…気にしないでお姉ちゃん…」 「よかった…じゃあちょっと待ってて、食べ物探してくるから」 「その必要は無いよ」 「え?」 「お姉ちゃんを……食べるからさっ!!!!!」
3 :
マングース西浦 : 2000/12/17(日) 01:20 ID:NiliRguE
飯田は逃げた。 (なんで!?なんでこんな目に合うの!?) 映画の撮影の為に駅伝の訓練を積んで来てよかったと少し思った時、視界に一つの小屋が飛び込んできた。 (この中でやりすごせるかも) とりあえず飯田はその小屋に飛び込み、息を殺した。 「なんで私がこんな目に…」 そう独り言をつぶやいていると、 「ねえ、ちょっとあんた」 ふいに背後から若い女の声がした。飯田は悲鳴を上げそうになったが、 「しっ!」 その背後の若い女が飯田の口を塞いだ。 (なんか聞き覚えのある声…) 振り返ると、そこには福田明日香の顔があった。その福田明日香ははっきり飯田の顔を見たが、すぐに目をそらすと、 「あんた、見ない顔だけど、どこから来たの?」 「どこからって…明日香こそどうしてこんなところにいるわけ?」 その福田明日香は驚いたように目をみはると 「どうして私の名前を…」 と言った。 その時、小屋の窓が開き、小さな突起の付いたボールのようなモノが飛び込んできた。 「しまった…!」 手榴弾が炸裂する閃きが飯田の視界を覆った。
4 :
名無し娘。 : 2000/12/17(日) 12:36 ID:PfvY.8uE
再開したのか、頑張ってちょ。 あげた方が良いのか下げた方が良いのか分からんので一応下げとく。 これは飯田の前世(?)の話なのかな。 石川と飯田どっちが勝つのだろう。マングースも石川モエなのか?
5 :
マングース西浦 : 2000/12/17(日) 23:06 ID:bP4T0hbM
(・・きて、圭織) (!?) 「起きて、圭織」 ようやく飯田は目を覚ました。目の前には見慣れた顔があった。戸田鈴音、カントリー娘の唯一のメンバーだ。当初いた他の二人のメンバーはすでにいない。 「あれ…ここって…」 周りには草むらが広がるだけだ。 「そ、花畑牧場だよ」 「やっぱり…初めて来たよ。どうやら、天国じゃないみたいだね」 「天国?圭織って時々わけわかんないこと言うから」 飯田はようやく少し微笑んだ。 「ほら圭織、紹介するよ。私の親友。ジョーっていうの」 精悍な顔付きをしたサラブレッドだ。 「へー、そうなんだ〜、かっこいい」 「ありがとう圭織。かっこいいって。ジョー。よかったじゃん」 その時、飯田は何かに気付いた。りんねの右腕が無い。 「あれ?りんね、右腕どうし…」 そこまで言ったところで気付いた。『ジョー』の口から人間の腕が生えている。 生えているのではなかった。『ジョー』はそのりんねの腕をかみ砕きながら飲み込んでいる。 「り…り…」 飯田は正気を失いかけていたが、りんねは平気な顔で 「大丈夫だよ。慣れてるから」 そう言うりんねの頭を、『ジョー』の強靭な顎が「ぐしゃ」という音と共に噛み砕いた。
6 :
マングース西浦 : 2000/12/17(日) 23:09 ID:bP4T0hbM
「ぎゃあああああーーーーーーーーーーー!!!!!!!」 さっきまで「彼女にしたい」しか言わなかった飯田が突然悲鳴を上げて石川の足元に倒れた。 「飯田さん?ちょっと…」 体のいたるところから煙を立て、ピクリとも動かない。 カウントを数えるまでもなく石川の勝利が確定した。 『六道輪廻』 相手の精神を一瞬のうちに地獄道、天上道、人間道、餓鬼道、修羅道、畜生道、あらゆる世界におくりこみ、破壊してしまう恐ろしい技だった。石川がこの技の使い手であることはつんくしか知らず、石川梨華本人すら自覚していない。 少しならば害悪は無いが、長く聴取し続けると恐ろしい世界に送り込まれてしまう。石川梨華はそのような特別な声の持ち主だった。 「石川が話す内容に薄ら寒いものを感じる」 という評判が後に広まるが、それは錯覚にすぎず、彼女の声帯から生み出される音波に神経の一部を犯されている証拠だった。
7 :
Ver.Na : 2000/12/19(火) 04:21 ID:tOYYFok2
フッ
8 :
名無し娘。 : 2000/12/20(水) 16:32 ID:YhX7SRa.
マングース西浦・・・ハアハア
9 :
名無し娘。 : 2000/12/21(木) 21:18 ID:fGi8c24I
続きは?
10 :
マングース西浦 : 2000/12/22(金) 00:01 ID:GKCvuqoQ
「飯田さん…」 飯田はもう動かない。 時空を飛び越えた飯田のプログラムはその限界を超え、崩壊してしまっていた。 ● 飯田圭織(1分3秒 システム破壊) 石川梨華○ という記録が残された。 矢口真里の台頭がはじまるのはこの時期からだ。機を見るに敏な矢口の機転にチャンスを持ち去られてしまう飯田圭織だった。
11 :
マングース西浦 : 2000/12/22(金) 00:02 ID:GKCvuqoQ
「そっか…圭織負けたんだ…」 吉澤ひとみ、辻希美と新メンバー勢を連破し、このまま4連勝で行きたかったオリジナルメンバー勢(厳密には平家はモーニング娘。のメンバーではないが)だったが、それを阻まれた。それだけでなく石川がどうやって飯田圭織を破ったのかが傍目に見ていた誰にも分からず不気味ではあったがしかし、今の保田圭は、次の試合へと意識を移している。 一回戦で受けたダメージは尋常ではなかったが、今ではほぼ問題無く回復している。 一回戦で稲葉貴子を破った小柄な少女は、一目見ただけで相手の技を寸分違わずコピーしてのけた。 (でも、コピーがオリジナルを超えることはありえない) そう信じている。福田明日香のことを忘れることは無いが、もう過去に左右されることはない。第一、市井紗耶香が脱退することによってプッチモニは当面後藤真希との二人での活動になるのだろう。 計り知れない潜在能力を感じさせる後藤ではあるが、その分市井紗耶香を失った時、その隠れた可能性がどういう方向に進むか、不安も大きい。保田圭には重大な責任がかかっていると言っていいだろう。 この時人より責任感の強い保田に緊張するなというのは無理な相談だった。
12 :
マングース西浦 : 2000/12/22(金) 00:03 ID:GKCvuqoQ
「あ…もう大丈夫なんですか?」 「うん、少し寝たからもうなんともないや」 (強いな…) 先程まで敬意が変化したライバル意識を後藤真希に対して持っていた吉澤ひとみだったが、先程まであったライバル意識は今ではほぼ元の敬意に戻っている。 後藤真希から肘打ちをもらった箇所はまだ痛む。すでにベッドから立ち上がった後藤を見上げるしかない吉澤ひとみだった。 「あ、あの子なんていうの?」 後藤が部屋の隅のベッドに寝ている少女に気付いた。 「あ、あの子なら加護亜依ちゃんと仲良くて、辻希美ちゃんって言うんです」 「へー、そうなんだ」 後藤が辻のベッドに近づこうとした瞬間 「のんちゃーーーん!!」 部屋に飛び込んできたのは加護亜依だった。 「うわっ」 後藤を押しのけながら加護は辻のベッドに近づいた。
13 :
マングース西浦 : 2000/12/22(金) 00:04 ID:GKCvuqoQ
「のんちゃん、元気?」 「あ…亜依 ちゃん 」 「のんちゃん、なんかほしいものある?」 「なん か 喉 かわいた よ…」 「のんちゃん喉渇いたんだね、分かった。あ、後藤さんジュース買ってきて!」 「あ、うん」 後藤真希は咄嗟にこう返事した。部屋を出ようとしたところでおかしいことに気付いたが、咎めるのも大人げ無いような気がして、そのまま部屋を出た。 「じゃあジュース来るまでものまねしてあげるね」 「わ ーい !」 「ぼちぼちでんなぁ〜なにゆうてまんねん!つんくでんがな!」 「あ は はは ははは!!似 てる 〜!!!」 それを見ていた吉澤は無邪気に笑う辻を不思議そうな顔で見ることしか出来なかった。 (あれをものまねと言えるかどうか…) 「石川梨華、おピンク大好き15歳です!」 「あはは は は!!ひー ひー…」 辻はすでに腹をよじらせながら笑っている。
14 :
マングース西浦 : 2000/12/22(金) 00:05 ID:GKCvuqoQ
15 :
Ver : 2000/12/22(金) 01:45 ID:cp2mgVQc
フッ
16 :
Ver.Na : 2000/12/22(金) 01:45 ID:cp2mgVQc
フッ
17 :
名無し娘。 : 2000/12/22(金) 09:57 ID:F9tdsuf6
>>15 >>16 まちがえたのかにゃー
現在勝ち残りが
後藤
平家
石川
次の試合が
加護X保田ということでいいのかな
18 :
マングース西浦 : 2000/12/26(火) 01:30 ID:42yW2ycg
「おまたせー…ってあれ!?」 後藤真希が戻ってきたとき既に辻は笑い疲れて寝ており、加護は既にいなかった。 吉澤はすまなさそうな顔で後藤の表情をうかがっていたが、 「加護は次の試合があるんでいっちゃったみたいです」 (これだけの短時間で疲れて寝るのってなんか不自然…) 吉澤の声は聞こえていたはずだが、それより気になることだった。
19 :
マングース西浦 : 2000/12/26(火) 01:31 ID:42yW2ycg
「初めましてほったさん」 「は?」 「ほったさんじゃ無いんですか?」 「あのね、やすだけい。『ほった』じゃなくて『やすだ』だから。こちらこそよろしくね」 保田圭は決して気の長い方ではなかったが、子供の間違いを許すくらいの寛容さは持っている。 「まあそんなことどうでもいいんですけどー、ほったさんってどうしてモーニング娘。になろうなんて思ったんですか?」 (……こいつわざとか?) 「どうでもいいってあんたね…後で覚えておきなさいよ。モーニング娘。になろうって思ったのは小さい頃から歌手になるのが夢だったからね。あんた…加護だっけ?あんたはどうなの?」 「私のことはどうでもいいじゃないですか。それより、モーニング娘。になれて嬉しかった?」 加護はいつの間にか敬語すら忘れている。 「……それは嬉しかったよ。あんただってそうでしょ」 「それは嬉しいですよね。ほったさんみたいな人なんて誰も受かるなんて思ってなかったもん。加護は受かるって分かってたからそんなに嬉しくなかった」 「はぁ!?あんた自分が何言ってるか分かってる?」 「ふふふ」 「………!!」 (挑発に乗ったら駄目だよ圭ちゃん…) 市井の忠告が届くことはない。
20 :
マングース西浦 : 2000/12/26(火) 01:32 ID:42yW2ycg
「はじめ!」 その声が響くと同時に保田は構えた。 「あんたもねえ、中一なら善悪の区別くらい付けなさいよ」 保田と同じ構えを取る加護。 「あんたもねえ、おばさんなら善悪の区別くらい付けなさいよ」 そっくりの口調で言い返す。 どちらも待ちの戦術を得意としているため、暫く双方攻めあぐね、小康状態が続いた。 この間に少し筆を休めて閑話休題としたい。 『マブチモーター』という誰でも一度はその名を耳にしたことがあるであろう企業がある。 この企業は古くは玩具の為の精密小型モーターの専業メーカーだったが、その分野でいつしかシェアをほぼ独占してしまうに到る。企業というものは利潤を最優先するものであるため、一つの分野でトップを取ってしまえばそれを維持すると共に業務を拡大するのが当然であると考えられている。 しかし、マブチモーターはそれをしなかった。 「車のエンジンから見たらおもちゃのモーターの会社なんて…」 そういう見方が一般的であったろう状況をも、気にすることがなかった。 そしてブリキのおもちゃからプラスチックのおもちゃ、そしてミニ四駆へ… いつしか、マブチモーターは『小型精密モーター』という分野これだけにおいては世界中でも他に並ぶものが無いというほどのノウハウを身につけていた。 現在ではオーディオ機器、ゲーム機、PCなどに使われる精密小型モーターのかなりのシェアを所得する国際企業になっている。 ただ一つのことだけに打ち込んできたことの成果が最大限に報われた好例と言えるのではないだろうか。
21 :
マングース西浦 : 2000/12/26(火) 01:32 ID:42yW2ycg
この点、保田圭にも似ている。 歌手になるために社会との接点を一切絶ち、湖の中でひたすら歌い続けると言う十数年を過ごして来た過去がある。日本に伝わる人魚伝説のほぼ全てが保田圭をモデルにしているという事実からしても、そのすさまじさは伝わるだろう。 ただ、皮肉なことに今はその誇りがあせりに変わってしまっている。
22 :
マングース西浦 : 2000/12/26(火) 01:33 ID:42yW2ycg
ようやく動き出そうとしたのは保田のほうだった。 成人を間近に控えた保田圭と、まだ十二歳の加護。もし打ち合いになっても年齢差から来る体力差で、保田が勝つだろう。 (大人げない) とは思わなかった。 「!」 保田が下段に蹴りを放つと彼女の視界は旋回し、視界が薄暗い闇になって止まった。 (あ…あれ?) 目の前にあるのはリングの床だった。 「あはははははは!!ほったさんかっこわるーい!」 その加護の声に保田はあわてて顔を上げようとしたが、その瞬間後頭部に衝撃を受け、前額部をしたたか床に打ち付けた。 「ほったさんって引っかかりやすーい!」 保田が頭を上げるのを見計らって放たれた加護のかかと落とし。 保田の意識は既に朦朧としているが、かろうじて残っている意識でなぜ最初の下段を払われたかを考えていた。 (そんなに読まれやすい蹴りじゃなかったはず)
23 :
マングース西浦 : 2000/12/26(火) 01:35 ID:42yW2ycg
24 :
Ver.Na : 2000/12/26(火) 01:40 ID:yTwyxy0U
フッ
25 :
名無し娘。 : 2000/12/27(水) 11:14 ID:kd0n9HXE
更新されてた。 加護は相手をすごく疲れさすという特技も持ってるのか?
26 :
マングース西浦 : 2000/12/28(木) 01:09 ID:GTlSyBiA
(差別的な表現が含まれています) 加護は三十路に入って間もない両親を持っている。 加護亜依はその二人が若くして手にした宝だった。 しかし、現実として生活は苦しく、二人の考えたそれの解決法は、 『万引き』 ただの万引きではなかった。見回りの店員の動きを読む。 二人はいつしか、見回りの店員の気配だけでなく、次の行動が読めてしまうようになっていた。 この科学では説明のつかない不思議な能力を受け継ぎ、さらに発展上昇させたのが、加護亜依というこの二人の一粒種だった。 十字路に差し掛かろうとしている人間の足音と視線の微妙な変化によってその相手が右に曲がろうとしているのか、左に曲がろうとしているのか、直進しようとしているのかを判断する。そこから始めた。 要するに、ものまねでは無い。言うならば先読み。したたかと言うべき擬態だった。
27 :
マングース西浦 : 2000/12/28(木) 01:10 ID:GTlSyBiA
しかし当然、他の誰もが加護の取り柄はものまねだと信じきっている。 この保田圭も例外では無かった。 「どんっ!」 背中に強い衝撃を感じた保田。 「はやくう〜!立って〜!ほったさ〜ん!」 どうやら加護は保田の背中で飛び跳ねているらしい。 (ふざけるな!) 保田が両腕の力でその状態を起こしたとき、すでに加護は背中から降りていた。 「くっ!」 そのまま低姿勢で加護にタックルをかけようとする保田。かなり意識が朦朧していたことと、加護が跳び箱の要領で避けたということの為に保田は場外に転がり落ちかけたが、なんとか踏みとどまる。 「え!?」 振り返るとその目の前には加護がおり、それに突き落とされた。 一回戦で見事な逆転劇を演じた者にしては無様な敗北だったと言っていい。
28 :
マングース西浦 : 2000/12/28(木) 01:11 ID:GTlSyBiA
風車の理論の保田圭と、先読みの加護亜依。保田のとって最悪の相性だったが、その通り最悪の結末で報いられた。 完敗と言っていい結果だった。 (相手が悪かったね…) 市井はそう思ったが、加護の実力が上だったということではない。相性が悪かったのだと考えている。 しかしながら流石の市井にも加護の技の性質は分かっていない。
29 :
マングース西浦 : 2000/12/28(木) 01:11 ID:GTlSyBiA
『モーニング娘。は日本一のアイドルグループ』 『後藤真希はモーニング娘。の一番人気』 よって後藤真希は日本一のアイドル。一見強引にも見えるこの三段論法が大袈裟でもないように感じられる。 それほど、この頃の後藤は華やかさ、そして風格のようなものすら漂わせていた。 ゛ASAの日本一゛後藤真希。 市井紗耶香、吉澤ひとみを破ってここまで勝ち上がった。
30 :
マングース西浦 : 2000/12/28(木) 01:12 ID:GTlSyBiA
「平家みちよでいかがでしょうみなさん!?」 このはたけ(バラクーダ)の言葉によって勝利を得て約三年。 当時、この涙の結果発表を目にしたもので今日の平家みちよの状況、 モーニング娘。の台頭を予想できたものはいなかったのではないか。 ゛平家の末裔゛平家みちよ 中澤裕子、辻希美を破ってここまで勝ち上がった。
31 :
マングース西浦 : 2000/12/28(木) 01:13 ID:GTlSyBiA
「なぜの嵐」 現在のりかっちの頭の中を一言で表すならば、これがもっとも相応しいだろう。 まさかここまでやれるとは思っていなかった。 しかし、りかっちは「小湊さんと飯田さんの為にがんばらなくっちゃ」今はこう考えるかわいい女の子だった。 ゛最も神に近い女の子゛りかっち 小湊美和、飯田圭織を破ってここまで勝ち上がった。
32 :
マングース西浦 : 2000/12/28(木) 01:13 ID:GTlSyBiA
「あと二回や」 加護は保田から勝利を奪った瞬間こう言っていた。 まるで決まったレールの上を走るようにここまで勝ち残った。 そしてまだ、その能力の全てを見せてはいない。 ゛先読み゛加護亜依 稲葉貴子、保田圭を破ってここまで勝ち上がった。
33 :
マングース西浦 : 2000/12/28(木) 01:14 ID:GTlSyBiA
34 :
Ver.Na : 2000/12/28(木) 01:22 ID:IAV55kzg
フッ
35 :
名無し娘。 : 2000/12/28(木) 17:42 ID:68kL/xso
再開してたのね。相変わらず面白いな。 ところでどうでもいいんだけどせっかく新スレ立てたんだから タイトルから「第一回」は排除した方が良かったのでは…
36 :
名無し娘。 : 2000/12/28(木) 23:05 ID:rMzHw/iM
>>29 -32 が、バキの最大トーナメント編選手紹介風で良い
37 :
マングース西浦 : 2000/12/29(金) 02:19 ID:AEc34LC6
>>34 、、、
>>35 ありがとうございます。再開してました。
・・・なるほど。確かに第一回でも無かったですね。
>>36 こういうの好きなので何回もやりたいんですがやりすぎるとうざく感じるでしょうし、
ここまでの経過を説明するという意味をこめてきりのいいところでやってみました。
38 :
マングース西浦 : 2000/12/29(金) 02:23 ID:AEc34LC6
「あっそう!後藤、平家、石川、加護な」 都内某所でここまでの結果だけを聞かされたこの多忙な男は『つんく』と名乗っている。 「おー平家がんばっとるやないか。さすが『末裔』だけあるわ」 彼は良く笑う男ではあったが、その笑顔からはしばしば「うるせえ死ね」などの言葉が唐突に飛び出すために簡単に気を許すことが出来無さそうな印象がある。 第一、彼の考えたことの為に今現在も16人もの若い女性達が振り回されている。 これからも今の状況は続くのだろう。 「後藤が二回戦で負けとったらどうしようかおもっとったわ。じゃああれは準備出来とるな?」 「その点は抜かりなく」 「市井が抜けたんは痛いけどな。このぐらいは乗り越えてもらわんとこれからも使い続けていくことは出来んわ」 三回戦が開始されるまでにあったやり取りのひとつだ。
39 :
マングース西浦 : 2000/12/29(金) 02:24 ID:AEc34LC6
第二次追加オーディションからただ一人の勝ち残り。ここからモーニング娘。の一番人気と呼ばれるまでの後藤真希の快進撃は始まっている。 ブラウン管に頻繁にその姿を見せるようになって以来、その勢いは留まるところを知らないように見えるが、実際の学校内での後藤真希は決して目立つ存在ではなく、勉強においても、運動においても目立った成績は残していない。言うなればその外見の美しさからくる異性への人気があるが、それでも後藤真希以上の存在は常にいた。 これらは逆説的に後藤真希の持つ資質というものがどれだけ芸能界という虚構と虚飾の世界でのし上がるのに適していたかを証明する材料ではあるが、 得た名声に反して失ったものもあったに違いない。 それらは彼女が成長してから気づくべき性質であるものが多いが、今の後藤真希でも気になっているものがある。 「ユウキって今何してるの?」 たまに実家に帰るたびに常に外出している弟のことを聞いても、いつも母親ははぐらかした。 しばしば彼女の中で膨らみ、忙しさの為に収縮していってしまう疑問だった。 対戦相手の平家との昨年の因縁を思ったために久しぶりに膨らんできた忘れ難い関心事だ。 「平家さん…勝てるかな…自信ないや」 複数のことを同時に考えられない彼女の脳の構造に起因するやる気の無い性格が出かかっている。
40 :
マングース西浦 : 2000/12/29(金) 02:26 ID:AEc34LC6
「あの糞餓鬼…今度会ったらしばいたろ思っとったのに」 奇遇にもこれから対戦しようとしている二人の女性は同じ男のことを考えてた。片方は重く、片方はごく軽いという程度の差はあったが… 「まあええわ…おおっぴらに復讐できるチャンス与えてくれて感謝するわ。つんくさん」 これらは全て独り言だが、まるで目の前にいる相手に話し掛けているかのように実感が篭もっていた。 昨年、平家みちよはこの大会に参加していない。 自分の意思ではなく、他人のエゴによって出場を阻まれた。その他人というのが今目前に対戦を控えている後藤真希と、その弟である後藤ユウキだった。 今大会、平家みちよは秘密奥義をひっさげて雪辱を誓いながら今大会に望んでいる。それを使わなかった為に辻希美との対戦では苦戦を強いられたが、気兼ねはもはや必要無かった。 この対戦の為に今大会に臨んでいると言っていい。 なぜか7人のモーニング娘。が集まると視線が後藤真希に向いた。それに嫉妬の気持ちを含めていたつもりはなかったが、それ以上に後藤真希の華やかさに魅かれているもう一人の自分がいるのが嫌でもあり、悔しくもあった。 (そういった華やかな部分が、自分には欠けているのだろうか) こういう思考をするあたり、職業として歌い手を務めている者の本能と言えなくもなかったが、平家みちよ本人がそれで納得出来る筈が無かった。 「とにかく、勝つ」 それが今出来る最上で、最善のことだと思っている。
41 :
マングース西浦 : 2000/12/30(土) 00:28 ID:qtiMdBLk
「なんやねんこのルール!」 平家が不機嫌そうに怒鳴り散らしている。 天下一武道会において、リングへの武器の持ち込みは禁じられている。そのため、リングに上がる前に係員によって軽いボディーチェックがあるのだが… 「没収…中坊以来やわ」 ゛秘密奥義゛ベアークローはあえなく没収された。 「フッ…武器を持ち込むときはもっと上手くやるのだな…失格にならなかっただけ有難く思え」 後にこの係員は平家によって顎が砕けるほどに殴られることになる。 「あれ作んのにどれだけかかった思っとんねん!」 しかしもはやどうしようもない。平家は決意した。 (あれを使わざるを得んか…) 平家の気迫に反比例するように後藤は心ここにあらずとでも言うような顔をしている。
42 :
マングース西浦 : 2000/12/30(土) 00:29 ID:qtiMdBLk
しばしばやる気の無さそうな表情をブラウン管上にさらす為にあらぬ誤解を受けることもしばしばな後藤真希ではあったが、彼女には当然悪意は無く、これは複数のことを同時に考えられないという彼女の脳の構造に起因している。 (プッチも娘。もあるよ…あー…) こう思った時点でやる気無しモードに移行してしまう為に、いつもそばにいた市井紗耶香などはどれだけ大変な思いをしてきたか知れない。その度ごとに後藤の頭を切り替えてやる必要があった。 しかし、最近は露骨に気の抜けた表情をさらすことも少なくなり、他のメンバーも余り気にかける必要が無くなっている。 ―――あくまで仕事上では。 プライベートの後藤に関しては、市井ですら余り知らなかった。
43 :
マングース西浦 : 2000/12/30(土) 00:29 ID:qtiMdBLk
「はじめ!」 その声がかけられても後藤はまだ心ここにあらずといった顔をしている。 (後藤やる気出せ!) 悪い癖がまた出始めたことに気づいた市井が心の中で叫び声をあげた時、 「ぱぁん!」 リング上に何かが破裂したような音が響いた。 「いったーーーい!!なにすんの平家さん!?」 「今のあんた倒しても嬉しくもなんともないわ」 しかしこのことで後藤の気持ちはしっかり試合に向けて方向を修正された。 平家が後藤の脳の構造の話を知っていたかは分からないが、この時市井がひそかに (しめた) と思っていたのは事実だった。
44 :
名無し娘。 : 2000/12/30(土) 04:02 ID:H0q0xugM
なんだyo
45 :
マングース西浦 : 2000/12/31(日) 01:11 ID:Sr7mzB8c
復讐戦にしては静かな立ちあがりだった。 どちらからと無く組み合いになると、始めは力で勝る後藤が優勢になったが、それを嫌った平家が素早く組み合いを抜け、ネックロックの体勢に入る。今度は後藤がそれを強引にバックドロップに切って取ろうとしたが、技量で僅かに勝る平家が体勢を入れ替え、首投げで返す。 そのままグランドのネックロックに移行したが、そこで平家はこっそり後藤の耳に囁いた。 「去年のこと忘れてへんやろな?」 「わ…わすれてないよ」 「だったらなんか言うことあるやろ!?」 「ご…ごめんなさい……」 そこで平家は後藤の首を腕の縛めから開放すると、 「あほか!ごめんで済んだら警察いらんわ」 そう言いながら平手で後藤の頭を叩いた。 「じゃあどう言ったらいいの?」 そう言いながら後藤は素早く立ちあがり、 「そのくらい自分で考え!」 平家はこう言いながら素早く立ちあがる。
46 :
マングース西浦 : 2000/12/31(日) 01:11 ID:Sr7mzB8c
ここで一瞬の睨み合いがあった。 先手を取って平家が動こうとした瞬間、会場に若い声が響いた。 「おーい!おねえちゃーん!」 「!」 「!」 平家みちよと後藤真希、二人の動きが同時に止まった。 「ユウキ!?」 「…」 入場口に少年が立っていた。後藤にとっては血を分けた唯一の兄弟。ユウキだった。 「なんでこんなとこに…っていうかいつもどこ行ってたのアンタ?」 「……」 ユウキは暫く息を整えていたが 「あのさお姉ちゃん」 そこまで言ったところで『後藤』の背後で何かが動いた。その何かは色白な若い女だったが、ユウキの前に立ちふさがった。 「なんだよじゃますんなよ」 その女はユウキに何か耳打ちをし、抵抗するその『後藤』を強引に引きずっていった。
47 :
マングース西浦 : 2000/12/31(日) 01:12 ID:Sr7mzB8c
(つんくさんの小細工が始まった) 平家はそう察し、 (これ以上邪魔はさせない) こう考えた。 「ほら!ごっつぁん!」 また完全に他のことに気を取られていた後藤の気持ちを引き戻すと、意識が試合に戻る寸前の一瞬のすきをついて素早く背後に回った。 「な…何!?」 平家はまず後藤の右腕を逆間接に取り、残った左腕も同様にし、上半身を前傾に傾けた。 「ずーるーいー!!」 後藤の抗議も空しく響き、平家の両足が後藤の両足に絡み付き、没収されたベアークローに次ぐもう一つの゛秘密奥義゛パロ・スペシャルが完成した。 「う…あ……!」 「もう決まりや…絶対逃げられへんよ!」 そう言いながら平家は後藤の上半身にさらに体重を加えていく。 「もう…だ…」 後藤は既に苦悶の表情を浮かべている。
48 :
マングース西浦 : 2000/12/31(日) 01:12 ID:Sr7mzB8c
リングに続く廊下を若い二人が歩いていた。 「なんだよ何の為にこんなとこまで来たんだよ!?」 「知らない。私は言われたことをやってるだけだから」 ユウキより四年年長のこの少女は感情で動くということがあまり無い。 融通が利かなさ過ぎるところがあり、ユウキにとって苦手な相手だった。 名前は、ソニンと言う。高知県出身の在日韓国人だ。 「で?今度はどこに行くの?」 「帰るの」 「帰るって…なんなんだよ?ぼくらこんなとこまでなにしに来たわけ?」 「さっき言ったでしょ。私は知らないって」 「ソニンってさぁ…」 そこま言って何かに気づいたように虚空を捉えるユウキ。 「おねえちゃん?」 そう言ったと思うと、今来た道を駆け戻った。 ソニンも若いとはいえ、ユウキがこういう無軌道な行動を取るとき、彼女はいつも年齢を感じる。 「若いのう…」 しかしこれは年寄り言葉ではなく、土佐訛りだった。
49 :
マングース西浦 : 2000/12/31(日) 01:13 ID:Sr7mzB8c
「負けちゃ駄目だ!そんなおばさんに負けたらだめだよ!」 ギブアップの声を挙げようとした後藤が顔を上げると、そこにはまたユウキが立っていた。一瞬自分かと見間違えるくらい顔立ちが似た、彼女の弟だった。 「おば…!?」 今日一日だけでそう呼ばれたのは二度目だった。 「あっ!やってもうた!あの餓鬼…」 ユウキの゛ふいうち゛によって一瞬平家の力が抜けたことで後藤は技を抜けることに成功した。 「でもな、今更抜けても遅いで!パロ・スペシャルはな、ただの間接技やない。相手のスタミナを奪う技でもあるんや」 自らも足元をふらつかせながら言う平家。 (自分の体力も消耗すんのが最大の難点やな…) しかし、それ以上に後藤は消耗しきっている。 「完全に本意というわけではないけれども…」 平家は再び後藤の後背に回り込み、同じ技で決着を計る。 後藤の片腕を取ろうと右腕を伸ばしたその瞬間、平家はかすかに後藤の声を聞いた。 「ごっちん…」 平家が覚えていたのはここまでだった。
50 :
マングース西浦 : 2000/12/31(日) 01:13 ID:Sr7mzB8c
「ごっちん…ストライク・スリーーーー!!!」 平家が伸ばしてきた方腕を取ると、それに交差するようにもう片方の腕も取り、その両腕が交差した点を膝で蹴り上げ、その勢いで後方に放り投げる。 不完全な決まりかたではあったが、この極め技、打撃、投げ技が一体になった複合技を受けた平家は白目を向いて餌を求める鯉のように空しく口をパクパクさせている。背中を強く打ったせいで呼吸困難に陥っているのだろう。 後藤の勝利が確定した。 人間には追い詰められてようやく力を発揮するタイプと、よりよい結果を得る為に準備を積み重ねるタイプがあるが、後藤の場合典型的に前者で、平家はどちらかと言えば後者に分類されるのではないか。後者の人間は前者の人間を『天才』と呼ぶが、前者の人間にとって後者の人間は侮りがたい敵となる場合が多い。 ともあれ、平家は復讐戦に挫折した。復讐は今後に持ち越されることになる。 ベアークローを没収した係員が顎が砕けるほどに殴られるのは、久しぶりに平家の血を顕在化させて眠りから覚めた平家によってだった。
51 :
マングース西浦 : 2000/12/31(日) 01:14 ID:Sr7mzB8c
「ユウキーー!?」 試合後、疲労した体を引きずりながら会場内を市井紗耶香をはじめとした数人のメンバーで弟を探した後藤だったが、結局見つけることは出来なかった。 すでにこの時ユウキは車中の人になっている。 「結局なにも話せなかったよ」 「話していいのはデビューが決まってからってつんくさんも言ってたでしょ」 「だけどさー久しぶりに会ったのにあれはひどいよ」 (私達はつんくさんの道具なの) ソニンは口には出さずそう思っていた。 ともあれ、後藤の決勝戦進出が決定し、準決勝一試合目は幕を閉じた。
52 :
マングース西浦 : 2000/12/31(日) 01:14 ID:Sr7mzB8c
「りかっちは世界一かわいい」 これは公理と呼ばれるべき性質のものであり、証明出来る出来ないといった次元の話ではない。りかっちがこの宇宙に誕生して以来、 「人は必ず死ぬ」 という公理と並ぶ真理として定められた。 それでもあえてりかっちのかわいさを説明するという前人未到の領域に足を踏み入れるのであれば、まず、りかっちが大好きな色として世界的に有名な『ピンク』という色がある。このピンクという色は服飾学や様々な学問上、『膨張色』として分類されているという事でも知られる。要するに、ピンク色の服を着用した場合、実際よりも太って見えてしまうということなのだが、なんとりかっちはとってもほっそりしていて、ピンクの服を着ると逆にますますかわいくなってしまうのである。 それにりかっちの大好きなキャラクターとしてサンリオの『キティーちゃん』があるが、このキャラクターはりかっちが大好きなキャラクターとして世界的に有名で、米国のNYを始めとして世界各国に『キティーちゃんショップ』が出店されており、毎日数万人の客が訪れているという。(私事ながら先日マレーシアに足を運んだ際、デパート内でキティーちゃんショップを発見し、りかっちのかわいさを改めて痛感した次第である) 加えて、タカラ株式会社が発売するリカちゃん人形がある。賢明な読者諸兄の推察通り、あの人形とりかっちの間には密接な関係が無い。そうであるのに、りかっちを小さくしてリカちゃんハウスに住ませて(監禁して)あげたいと思うのは筆者だけだろうか。 まだまだりかっちのかわいさについて述べていないところは広がりつづけるアフリカ大陸の砂漠地帯のごとき広大さを持って我々に感動を与えつづけているが、ここはりかっちのかわいさを述べるのに適した場所ではない。
53 :
マングース西浦 : 2000/12/31(日) 01:15 ID:Sr7mzB8c
54 :
Ver.Na : 2000/12/31(日) 01:37 ID:VMYhFm5I
フッ
55 :
名無し娘。 : 2000/12/31(日) 01:45 ID:KztFV/mM
やはり出たかパロスペシャル。
このまま本格?格闘物で行くかと思ったら
>>52 ここに来て本領発揮だにゃあ。
善き哉、善き哉。
56 :
マングース西浦 : 2001/01/02(火) 00:21 ID:1Ov2iTQw
準決勝を目前としたりかっちはかわいそうに、震えていた。当然それは武者震いなどではない。これまで幸運にも(なぜか)相手にも、自分にも痛い思いをさせずに勝ちあがってきた。しかし、次の対戦相手である加護亜依は、一筋縄ではいかなそうな予感がしている。 オーディションの過程で加護を始めてみた時の印象は、 (かわいい子だな…) という12歳という年齢を除けば普通で無難なものだった。しかしオーディションが進むにつれ彼女の明るいキャラクターは参加者の間でも目立つようになっていき、 (多分あの子は合格確定なんだろうな) という空気すら漂わせるほどになっていた。それに反比例するようにりかっちの自信は萎んでいった。 「私なんて加護ちゃんみたいにかわいくないし、歌も下手だし、ダンスだって上手じゃないし…」 それでも予想を裏切って合格はしたものの、一対一では四歳も年下の同期に敵わないのではないか… どんどん落ち込んでいくネガティブりかっちだった。
57 :
マングース西浦 : 2001/01/02(火) 00:22 ID:1Ov2iTQw
オーディションの過程でもほとんど接点は無かった。ただ慣れるまで時間がかかるあの声だけが印象に残っている。上下の白い歯の間から甲高いというのとも少し違うあの声で、内容が全く無いつまらない話ばかりをいつもしている様子を見て、 (あれは、鳥だ) 加護にとって、石川とはスズメかなにか、その程度の認識でしかなかった。 合宿の時もメニューに鶏肉が出ると(実際は精進料理の為、鶏肉に似たものに過ぎなかったのだが)、 「石川、鳥類だめなんです…」 などと言っているのを横目で見て、 (同族嫌悪か) などと心の中で嘲笑すらしていた。 逆にいつも共に行動していたのは辻希美だったが、それは辻に好意を持っていたからでは未だかつて、石川梨華という存在が加護の視野の中心にあったことはない。 なく、チャンスさえあれば潰してやろうという魂胆があったからだ。しかし意外なしたたかさを持つ辻を潰すことは出来なかった。それ以来取り合えず不可侵条約を(加護が一方的に)結んでいる。 合格発表の際、石川の名前が呼ばれた事は正直、意外だった。 (石川?そんな人いたっけ?…あ、あのスズメか…) その程度の印象だった。しかし今、そのスズメが梟のごとき不気味さで自分を脅かそうとしている。 「5分」 5分で片付ける。加護は未だかつて自分の未来を信じなかったことはない。
58 :
マングース西浦 : 2001/01/02(火) 00:24 ID:1Ov2iTQw
59 :
名無し娘。 : 2001/01/02(火) 04:01 ID:AeL5G/zE
ひょっとしてごっちんはモモタロウ?
60 :
Ver.Na : 2001/01/02(火) 13:30 ID:VX4sTqBY
フッ
61 :
マングース西浦 : 2001/01/03(水) 02:53 ID:NkB0KdxU
未だかつて、石川梨華という存在が加護の視野の中心にあったことはない。 オーディションの過程でもほとんど接点は無かった。ただ慣れるまで時間がかかるあの声だけが印象に残っている。上下の白い歯の間から甲高いというのとも少し違うあの声で、内容が全く無いつまらない話ばかりをいつもしている様子を見て、 (あれは、鳥だ) 加護にとって、石川とはスズメかなにか、その程度の認識でしかなかった。 合宿の時もメニューに鶏肉が出た時など(実際は精進料理の為、鶏肉に似たものに過ぎなかったのだが)、 「石川、鳥類だめなんです…」 などと言っているのを横目で見て、 (同族嫌悪か) などと心の中で嘲笑すらしていた。 逆にいつも共に行動していたのは辻希美だったが、それは辻に好意を持っていたからでは なく、チャンスさえあれば潰してやろうという魂胆があったからだ。しかし意外なしたたかさを持つ辻を潰すことは出来なかった。 それ以来取り合えず不可侵条約を(加護が一方的に)結んでいる。 合格発表の際、石川の名前が呼ばれた事は正直、意外だった。 (石川?そんな人いたっけ?…あ、あのスズメか…) その程度の印象だった。しかし今、そのスズメが梟のごとき不気味さで自分を脅かそうとしている。 「5分」 5分で片付ける。加護は未だかつて自分の未来を疑ったことはない。
62 :
マングース西浦 : 2001/01/03(水) 02:59 ID:NkB0KdxU
あれ?57少し変だぞ?
と言うわけで自己満足の修正です。
>>59 もう読んでる人も少ないし好き勝手にしてます。
日本一だからモモタロウにしました。
>>60 、、、
63 :
Ver.Na : 2001/01/03(水) 04:59 ID:DqGa4b9Q
フッ
64 :
59 : 2001/01/04(木) 02:04 ID:9qY7RCK6
モモちんってことは、あと残っている必殺技は・・・あれか!? アイドルとしてはよろしくなさそーな・・・ とにかく、更新楽しみにしてます。頑張って下さいね!
65 :
名無し娘。 : 2001/01/05(金) 16:45 ID:YtXwQ/tY
つづきまだかにゃー 確か加護も割とお気に入りだったんだよね どっちが勝つのかな。
66 :
マングース西浦 : 2001/01/06(土) 01:41 ID:ZI/6zQCk
「よろしくね加護ちゃん」 「呼び捨てでいいよ。私も梨華ちゃんって呼ぶから」 加護はあくまで笑顔でそう言い、そのおかげで石川の緊張はやや解けた。 「ねえ、加護ちゃ…じゃなかった加護知ってる?この天下一武道会!?って、モーニング娘。のリーダーを決めるために毎年やってるんだって。知らなかったよねそんなこと…それで話変わるけど私、実は中学の時テニス部の部長やってたの」 石川が゛テニス部の部長゛という単語を口から出す瞬間、微かに得意げな表情を浮かべたことに気づいた加護だったが、気づかないふりをして笑顔を続けた。 「それで私たいへんだったんだけど一年間つとめてみて、こういう責任感のある立場もけっこういいかなーって思ったの。加護ってまだ12歳だよね?だから、まだリーダーとか大変だと思うの」 「ふーん…梨華ちゃんってそういう人だったんだ」 (鳥がまたさえずっている) くらいに聞き逃そうとしていた加護だったが、思わぬ方向に話が進もうとしていることに気づきそれを断ち切った。 「え?」 「だから梨華ちゃんは加護に手加減してわざと負けてほしいの?」 「ち…違うの、そういうことじゃなくて…」 「見そこなっちゃったなー…梨華ちゃんのこと」 「だ…だから、もし加護ちゃんが大変だなーって思うんだったら…」 「加護って呼んでよ。さっき言ったの聞いてなかったの?」 「あ、ご…ごめ…」
67 :
マングース西浦 : 2001/01/06(土) 01:41 ID:ZI/6zQCk
ついにあやまりだした石川の様子を見て加護は笑いを堪えていたが、このような状況の中試合は開始された。 二回戦で飯田圭織を破った六道輪廻を破られた格好になった石川は桜の樹の枝のようにしなやかで細い首を前方に傾けながら (アドバンテージ加護) 頭の中でそう捉えている。 (私にはリーダーなんて無理…) 既にネガティブの極みに陥っている石川だが、対照的に加護は勝利を信じて全く疑わない。 (次は後藤さんだしここはさっさと終わらせな…) 「梨華ちゃん、ちょっと痛いよ」 先天的に備わった先読みの能力の他に加護が没頭しているものがあった。 一回戦で稲葉貴子を破ったあの物真似だった。 「刺殺怒瑠鞭捕蛇撃乱!!」 石川はテニスで培ったサイドステップでそれをかわす。 「ひやあああ!!」 恥ずかしい悲鳴を上げながら。 しかし、この技で決めるつもりは加護には無かった。 「どう?梨華ちゃん。当たったらすごく痛いよ」 戦意を喪失させるのが目的だった。
68 :
マングース西浦 : 2001/01/06(土) 01:42 ID:ZI/6zQCk
(痛いのはいや…でも) 「私、負けたくない」 石川自身にも自分のこの時の気持ちはなんだったのかわからなっかたが……声を失う加護。 「梨華ちゃん…頭悪いよね。手加減は出来ないよ」 加護は完全に石川を見くびっていた。体力の温存の為にも楽に終わらせたかったのに… (飼い鳥に手を噛まれるとはこのこと) 「えいっ!」 そんな少し洒落たことを考えていた時、石川の右手が飛んできた。 (こいつ!) テニスのフォアからのレシーブの要領で放たれたフックだった。しかし、見るとスピードも、パワーも感じられない。 (避けるまでも無い) 一回の腕立て伏せも出来ない石川の非力なそれを片手で受けると、そこに加護は容赦無く重い頭突きを放つ。 「かい・おう・けーん!!」 無防備の状態でこの辻希美決め技をくらってしまい、 「!!」 悲鳴を挙げる間もなく後方に吹き飛ばされる石川。
69 :
マングース西浦 : 2001/01/06(土) 01:43 ID:ZI/6zQCk
(手応えありや…!!?) しかし石川は何事も無かったように立ちあがる。 「あれ?なんで?」 両者ともが驚いた表情をしていたが、どちらかと言えば石川の表情のほうに度合いの強さが見られる。 「痛くない…」 「うあ…な…なんで!?」 蹴りを放った加護の左足の皮が裂け、血が噴き出す。 誰も理由は分からない。ただ、戦慄だけが走った。 試合の様子を見ていた後藤の横で吉澤が口を開いた。 「モーニング娘。はみんな実力のある人の集まりです。でも…梨華ちゃんだけは違う…梨華ちゃんは最も神に近い女の子なんです…でもまさか本当だったなんて…」 吉澤の口から出た余りに突飛な話の内容に目を見張りながらモニターから視線を外す。 「神に近い?それってどういう…」 促され、以前石川本人から聞かされた話を後藤に伝える吉澤。
70 :
マングース西浦 : 2001/01/06(土) 01:44 ID:ZI/6zQCk
15世紀から18世紀にかけてヨーロッパ地方に吹き荒れた魔女狩りの嵐。 その残忍さと無意味さは改めて記す必要も無いが、数千万とすら言われる犠牲になった女性達の中に、リーカッチ・ストーンリバーという女性がいた。 なんの科学的根拠も無く行われた魔女狩りではあったが、その犠牲になった女性の中には一厘にも満たないながら本当の魔女も含まれていたという。 このリーカッチという哀れな女性もその中の一人。 未婚でありながら子を身篭り、それを隠し続け、ついには出産してしまったという、そんな理由で魔女と判断された。 魔女でなければ結婚前に妊娠などするはずが無いというのがその根拠だった。 ただ、驚くべきことにリーカッチは未だ異性と肉体関係を持ったことが無かったのである。 その他にも、手をかざすだけで病をたちどころに直してしまったり、次の日の天気を正確に言い当ててしまうなど、近所でも評判の『神の使い』であったらしい。 幸いにもこの哀れな子供は隠し通され、遠い異国の地に送られたという。その遠い子孫が石川梨華その人だと言うのだ。
71 :
マングース西浦 : 2001/01/06(土) 01:44 ID:ZI/6zQCk
加護は奥歯を噛み締めていた。 (なんで…) 先読みの加護は認めたくなかった。ここまで何事も無く勝ちあがってきたのに… (自分が負ける姿しか見えへん…) 足から血が噴き出した瞬間から自分が勝利する未来が全く見えなくなってしまっていた。 「加護…大丈夫?」 石川が不安そうに顔色を伺っているが、もう一度攻撃したら今度は骨を砕かれそうに思えた。 「負けました」 加護が敗北を宣言し、準決勝第二試合は幕を閉じた。 「後藤さん、一つだけ教えておきます」 「…なに?」 「梨華ちゃんの目を閉じさせないでください。梨華ちゃんの目が閉じられたとき、周りの人間は全て死んでしまうそうです」 「…大丈夫」 後藤は一息ついて、 「私、神とか仏様とか信じないほうだからさ」 そう言った。吉澤を安心させる為に言っているようにも見えた。
72 :
マングース西浦 : 2001/01/06(土) 01:49 ID:ZI/6zQCk
>>63 、、、
>>64 あれ・・・と言っても色々ありますよね。
アグラツイストとか。頑張ります。
>>65 トーナメント表を決めた当初と全然違う展開になっています。
移り気だから。読んでくれてありがとうございます。
73 :
Ver.Na : 2001/01/06(土) 01:50 ID:zB.ZH7V.
フッ
74 :
マングース西浦 : 2001/01/07(日) 02:40 ID:hH7va5a.
試合前の石川と同じに、加護が一人、トイレに閉じこもり震えていた。 「な…なんやあいつ…こわい、怖すぎる」 自分の能力が見せた光景が恐ろしかった。 「地獄って始めた見た…」 誤解を避けるために言えば、加護は預言者ではない。加護の先読みはほんの少し先に起こることが分かるという程度のものだ。 なのに、はっきりと自分が負ける未来が見えた。 石川の膨大な小宇宙(コスモ)と、加護の先読みの能力が共鳴して起こったことかもしれなかった。 負けたことの悔しさよりも (この程度で済んだ) 応急処置を済ませた左足を見下ろしながらそのことに安堵していた。 ことあるごとに 「梨華ちゃんかわいい」 というフォローを入れるようになったのはこの時からだ。 (後藤さん…せいぜい死なんように) あえて後藤に忠告する必要を加護は感じなかった。メリットが無いからだ。
75 :
マングース西浦 : 2001/01/07(日) 02:41 ID:hH7va5a.
「ダ…だメダ!!」 特別な医務室で修復を行われていた飯田が突然目を覚ましたのはこの頃だった。 「駄目なのはお前だ!寝ていろ!」 科学班の命令にも飯田は耳を貸さない。 「い…イシかわはとタタかッてはならん…」 飯田が朦朧とする意識の中で必死に送ろうとした忠告だったが、モーニング娘。の誰にも届くことはなかった。 やむなくエネルギーの供給をストップされ、沈黙する飯田。その目には涙が浮かんでいるようにも見えた。 「真希、今なら引き返せるよ」 一回戦での対戦以来、直接口を聞いたのはこれが最初だった。 「紗耶香…分かってるよね。私は負けられない。紗耶香の為にも、みんなのためにも、そして、私自身の為にも」 一年前の後藤ならこんなことは決して口にしなかったに違いない。その成長が嬉しくないはずは無かったが、しかし市井の心中は複雑だった。 (死んだらなんにもならないんだよ)
76 :
マングース西浦 : 2001/01/07(日) 02:41 ID:hH7va5a.
石川が決勝戦進出の権利を得て新メンバー用の控え室に戻ってきたとき、そこには誰もいなかった。 つまり、りかっちはひとりぼっちだった。 「…私って一体なにものなんだろう」 おっちょこちょいなりかっちは寂しさのあまりついにひとりごとを始めた。 意識の外にもう一人の自分がいるような気がする。 「お母さんに聞かされたことがある。遠い先祖のことを…あの時は絶対に冗談だって笑いながら聞き流してた。でも今は…」 ただ寝ているだけなのに、ふと目をさますと汗をびしょりかいていることがあるのはどうしてだろう。 ちゃんと片付けたはずのものが無くなってしまうのはどうしてだろう。 お料理が好きでいっぱい食料品買ってきても使うと無くなってしまうのはどうしてだろう? 草が青いのはどうして? どうして昨日のことは思いだせるのに明日のことは思い出せないの? どうして月は丸いの? どうして足にも指がついているのかしら。 全てが、もう一人の自分の仕業に違いない… おっちょこちょいなりかっちは、はやとちりが大の得意だった。
77 :
マングース西浦 : 2001/01/07(日) 02:42 ID:hH7va5a.
「ごっつぁん、がんばれよ!」 「油断しないでね」 「ベストをつくしてくればいいと思うよ」 「後藤、負けて帰って来たらリンチやからな」 数々の激励を受けて控え室を出た後藤はリングへ続く廊下を、市井と並んで歩いていた。 「真希、これだけは忘れないでいて。あんたの後ろにはいつも私がいるから」 「ありがと…紗耶香」 「あんたが危険になったら私、黙ってるつもり無いから」 「……」 (紗耶香には…無理) 今の市井では石川を止めることなど出来まい…一年前はまさか自分が市井のことを心配する立場になるなどとは思ってもいなかった。いつも心配ばかりかけていた。 「私…もっと楽しくやりたいよ。第一これは喧嘩じゃないんだし」 もはやそのレベルの戦いでは無くなっているのは明らかだったが、それは後藤の本音でもあった。 「喧嘩じゃない…ってあんた、圭織がどうなったか知ってるでしょ?」 「心配してくれて嬉しいけど…私は自分の力で勝ちたい」 「とにかく………絶対に生きて帰ってくるんだよ」 入場口で二人は別れた。 (優勝者として再びこの入場ゲートをくぐろう) リーダーになるという建前とは全く違う方向に、この優勝への意欲のベクトルは向かっている。
78 :
マングース西浦 : 2001/01/07(日) 02:43 ID:hH7va5a.
79 :
名無し娘。 : 2001/01/07(日) 07:22 ID:/7p4TdHs
過去ログ読んだ。 マングース西浦はWコージのラジオ聞いてたのか?稲葉って確か、2代目3か代目の アシだったな。かなり面白かったのに終わっちゃうし・・。今は「いろもん」が救いって 感じだ。 ところで何か途中から急に石川大好きになって無いか?何キッカケ? 面白いのでどーでもいーが
80 :
Ver.Na : 2001/01/07(日) 07:32 ID:xb1P5cjo
フッ
81 :
名無し娘。 : 2001/01/07(日) 16:14 ID:h0vn/4qU
リーカッチ・ストーンリバーに、ブリジストンなみに萌え
82 :
名無し娘。 : 2001/01/07(日) 23:28 ID:n7/H1M5c
83 :
名無し娘。 : 2001/01/07(日) 23:29 ID:n7/H1M5c
スマソ。あげちゃった。
84 :
マングース西浦 : 2001/01/09(火) 12:59 ID:REFmp1CE
今はレスだけ・・・
>>79 ありがとうございます。
聞いてましたよ。私が聞いてたのは稲葉が担当してた後半くらいですけど・・・
声がかわいかったので印象に残ってました。
>>80 、、、
>>81 ??
おリバーストーンとかリカッティ・オリバストンとか色々考えてました。
別になんでもよかったんですけど。
85 :
マングース西浦 : 2001/01/09(火) 16:11 ID:jN6gIdzg
ハロープロジェクト大運動会ってなんだあれ・・・萎える・・・
86 :
名無し娘。 : 2001/01/09(火) 22:27 ID:wb0UzXpQ
リバーストーン・スティンギーアイズッッ!!
>>76 こういうの書かせるとさすがに上手いね
>>77 を読んでなんとなく悟空と御飯の関係を思い出した
(勝手に思っただけだから気にしないように)
>>85 なんじゃ?それ詳細が知りてーにゃ―
87 :
マングース西浦 : 2001/01/09(火) 23:56 ID:qYKkkvlc
もう少しで終わる・・・
>>86 細かい感想ありがとうございます。
ハロプロ大運動会はファミリーマートでなんかやってますよ。
何円か以上のレシート集めて送ると観戦チケットが当たるとか。
今日ファミリーマート行ったらそんなキャンペーンやっててこけそうになりました。
88 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:29 ID:GLRRoj3A
「もうそろそろお時間…誰も来てくれなかったね…」 腰を上げ控え室を後にし、一人試合会場に向かおうとするりかっち。 「梨華ちゃーーん!!」 後方で声がする。つい先程敗北を認め、決勝進出を断念した加護亜依だった。 「加護…足大丈夫?」 「大丈夫。心配しないで。梨華ちゃんこそ疲れてない?大丈夫?」 自分の左足を叩きながらそう言った加護だったが、その額には薄く脂汗が浮いている。 「ありがとう。心配してくれて私は確かに最も神に近い女の子緊張でほら。手にすごい汗かいてるの」 「?梨華ちゃんどうしたの?なんか今変なこと言わなかった?」 「??え?また私フッ、好きな地獄はどこだなんか変なこと言った? …加護は少し後ずさりすると、 「り…梨華ちゃん緊張してんだよね。だよね。…じゃ、頑張ってね!」 こう言いながら逃げるように走り去った。 全速力で駆けながら加護は (やっぱりあいつにはなるべく近寄らんほうがいい) そう思っていた。
89 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:30 ID:GLRRoj3A
「よろしく。後藤真希です」 そう言いながら片手を差し出された石川の緊張は頂点に達していた。 「よろしくお願いします。石川梨華です。か、神奈川県出身15歳」 「15かー、じゃ高一?」 「そ…そうです」 「じゃあ石川さんって呼んだほうがいいのかな?なんかこういう時って難しいよね」 「石川とよ…呼んで下さい」 視線をあげて後藤の表情をうかがうと、いつもTVで見るのと同じ、完璧な笑顔をしている。 (やっぱりモーニング娘。は違う…) 自分もその一員になったということも忘れ、後藤のオーラに圧倒される石川。 「じゃ、゛梨華ちゃん゛でいい?」 「は…構いません」 「あはははは、梨華ちゃんって面白いね」 後藤のこの笑い方は市井紗耶香から習ったものだ。 しかし、゛面白い゛と誉められたことで石川の緊張は幾分和らいだ。
90 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:31 ID:GLRRoj3A
「始め!!」 これまでの試合と同じように、この第三回天下一武道会決勝戦も開始された。 「梨華ちゃん、痛くないようにするから。ごめんね。…ごっちん…」 (危なくなる前に一気に決めなきゃ) 「え?え?」 後藤の構えを見て不安に駆られる石川。後藤は下半身を踏ん張り、上半身を捻る体勢を取っている。 「ま、まさか?」 医務室のモニターで試合の様子を見ていた吉澤が驚愕の声を揚げる。 「あの技で私は…」 記憶が飛んでいて自分が負けた瞬間のことは覚えていないはずの吉澤だったが、体が覚えていた。 「でもあの技は咄嗟に出たものだったはず…」 しかし、ここまでの短い時間で対吉澤戦でまぐれで出た技を完全に自分のものにしているのが後藤真希という天才だった。
91 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:31 ID:GLRRoj3A
「ファァァイナル・エルボーーー!!!」 準決勝第二試合において加護の左足の皮を引き裂いた石川を包む防護壁のようなものも貫いて、石川に直接ダメージを与える。 「!!」 悲鳴を上げる間もなくリング際まで吹き飛ばされた石川を見て追い討ちをせず、ダウンカウントを待つ後藤。 「小僧…ッ!!」 モニターで試合の様子を見ていた市井が小さくうめいた。 それはダウンしている今の内に石川を場外に落すなりなんなりして試合を終わらせようとしない後藤への苛立ちから出た言葉だった。 (なんでこう詰めの甘さが取れないんだあの子は…) 入場口へ急ぎ、直接後藤へ叱咤を送ろうとした市井は、そこで信じられないものを見た。 目を閉じたままの石川が立ち上がり、ダウンした後藤を見下ろしていた。
92 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:32 ID:GLRRoj3A
「!!?」 市井が控え室を出た直後、ダウンしていた石川が上体を起こした。まだカウントは殆ど進んでいなかった。 「梨華ちゃん…平気なの?」 石川は唇の端から軽く血を流している。口の中をどこか切ったのだろう。 「フッ…このリーカッチに手傷を負わせるとは」 「…?」 よく見ると、石川は目を閉じたままだ。 「しかし行儀が悪いな君は…試合が始まるなり私に突っかかって来るとは」 口調も変わっている。 「フフフ…私の目を閉じさせたのは失敗だったな。愚かなお前には餓鬼道こそ相応しい…」 「り…梨華ちゃん!?」 "π(オーム)!!!" 「う…あぁぁぁぁ…!」 不思議な声とも音とも取れる波長で空気が振動し、辺りが光ったかと思うと、後藤は倒れ、動かなくなっていた。 ゛天魔降伏゛ 「この技を受けて立ち上がることが出来たら人間ではない」 そういうと、石川はリングを去ろうとした。
93 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:33 ID:GLRRoj3A
「ま…待て!!今リングを降りたらあなたの負けだ!」 「!」 虚を突かれた石川が振り返った先には市井紗耶香が立っていた。 「ほう…こんなところまで来るとは。君は何者だ!?」 そう言いながら石川が振り返った先には市井紗耶香が立っていた。 「私は…市井紗耶香。その子の…仲間であり、親友でもある」 「その市井紗耶香が何の用かな!?」 「あなたはなぜこんな…ここまでやる必要がどこにある!?」 「それはこの子が罪を犯したからだ」 「罪!?一体どんな!?」 「小さい頃にむやみに草花を摘んだ。虫を面白がって殺した。友達を泣かせた。砂場を荒らした。父親の通夜で笑った。昼寝をせずに遊んだ、弟をいじめた。夕食が食べれなくなるほどお菓子を食べた。小学生の頃弱いものいじめをした。忘れ物をした。無駄話をした。教師を先公と呼んだ。夜更かしをした。ぶりっこをした。消しゴムを使い切る前に捨てた。ランドセルを嫌がった。…………どうだ!?まだまだある。聞きたいか?」 「…なんて下らない…」 「何がだ、何が下らない!?」
94 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:34 ID:GLRRoj3A
「だってそうじゃないか…あなたは一体何様のつもりなんだ!?」 「何様…か。最も神に近い人間…とでも言っておこう……」 「最も神に近いだなんて…馬鹿げてる!!…それに、そんなことが罪になるのか!?今あなたが罪として挙げたものなんて、小さい頃は誰だってやることじゃないか!!違うか!?」 「………その問いに答えることが出来るのは『神』だけだ」 石川は即答する。 「……ふざけるな!!!」 "π!!" 「あうっ…!!」 二度目の゛天魔降伏゛の直撃を受け、倒れる市井。 「君は少し頭を冷やしたほうがよさそうだ」 「お前もな…」 「なにっ!?」 石川が振り返った目の前には後藤の顔があった。 「打撃が効かないんなら…!!これで……ごっちん・ストライク・スリー!!!」
95 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:35 ID:GLRRoj3A
両腕をホールドされている為受け身を取れず、背中を強打する石川。 「あんた…リーカッチなんでしょ!?」 背中を強打しつつも何ごとも無かった様に立ち上がる゛リーカッチ゛に後藤は問う。 「ほう……私のことを知っているとはな…」 「分かるよ…あんたみたいな目にあったら私だって人間を怨むかもしれない」 吉澤から聞いた、゛魔女裁判゛にかけられ、苛烈な拷問の末無残に処刑された石川の遠い先祖の話を思いながら後藤は言った。 「ははははは…君に何が分かる!?私はもう少しで神になれたのだ。それを…」 ゛リーカッチ゛は自分のことを話し始めた。子供の頃、いくつもの超常現象を起こし、神童と呼ばれていたことを。その力を教会の権力闘争に利用された振りをして利用し、いつしか権力を手にし、もう少しで金も、地位も、名誉も、全てを手に出来るというとき、小癪な策謀で全てを失い、挙げ句の果て人心を惑わしたとして拷問の末処刑されたという話を… 「そんな、違う……違い過ぎる…」 吉澤の話との余りの格差に気が動転する後藤。醜い話ほど汚れの無い美談にされやすいものはない。 「私は待った…永い間、私に相応しい体が現われるのを…そしてようやく、この石川梨華と巡り合うことが出来たという訳だ…この世界一かわいい石川梨華の体と…」
96 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:36 ID:GLRRoj3A
「なんてことを…梨華ちゃんの体を返せ!!」 「返して欲しければ力ずくで私を倒してみろ…さもなくば、この地球は私のものだ!!!」 「地球は渡すものか!!!!この青い星は…そして、日本の未来は…よし!腕相撲で勝負だ!!」 「ははははは…なんと無謀な…それが…若さか…いいだろう。君の挑戦を受けよう」 二人はリングに寝そべると、お互いの手を握り合い、スタンバイの体勢を取る。 「それではおふたかた、準備はよろしいですかな!?腕相撲ファイト!!!レディーーーー・ゴォーーーーー!!!!」 ダン!! 勝負開始の直後、石で出来たリングに手が叩きつけられる音が響いた。
97 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:37 ID:GLRRoj3A
゛リーカッチ゛は目を疑った。 「…馬鹿な」 ゛リーカッチ゛の手の甲がリングに接している。 「………私…力では負けたことが無いの」 この後藤の声で゛リーカッチ゛は何かに気付いたように目を見開いた。 「そうか…確かに私は神に近い力を手にいれた。しかし、今のこの体はあくまで腕立てふせの一回も出来ない石川梨華のものだった…そういうことか……」 「成仏してね…リーカッチ………」 「力で敗れれば……私は成仏するしかない……ということか……ははははは…私の人生、最期の最期で君のような人間と闘えてよかった…」 「私も…なんか楽しかったよ。ありがとう…」 「我が人生……一点の……悔い…無……し………」 この言葉を最後に、二度とりかっちがリーカッチになることはなかった。 ……こうして、地球の危機は去り、平和が訪れた。 「こんな平和が永遠に続けばいいのに…」 遠い目をしながら世界を救ったスーパーヒロインはつぶやいた。
98 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:38 ID:GLRRoj3A
世界を救った後藤を称えるセレモニーは盛大に執り行われた。 「我々人類は、これまでいくつもの艱難を乗り越えてまいりました。有史以来、二度繰り返された世界大戦も、冷戦も乗り越え、そして今回、私達はただ一人の少女に未来を救われたのです!!!それでは入場して頂きましょう!!!21世紀のジャンヌ・ダルク、後藤真希さんです!」 「裕ちゃん知ってる?ジャンヌダルクって処刑されたんだよ」 「大事なセレモニーや。黙っとき。屁理屈は後で聞いたるから」 「同じモーニング娘。になれて少しは近づけたと思ったのに、また遠い人に…」 「明日香がここにいたらどんな顔してたかな…」 「そうだね…圭織も明日香の顔久しぶりに見たくなったよ」 「でもこれで、あやっぺの赤ちゃんも安心して暮らせるね」 「亜依 ちゃん、あそこ の テーブル の アロエヨーグルト おいしそ う」 「あとであとで。話終わったら腹いっぱい食わしたるから。…私はムースポッキーにしとく」 「アロエって美白によさそう。ののちゃん、後で一緒に食べようか」 「にしても黒いな自分。ナチグロンみたいやで」 小声のやり取りが平家の分かり難い例えで締めくくられた頃、後藤のスピーチは始まった。
99 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:39 ID:GLRRoj3A
「今回こんなに素敵なお祝いをしてもらって、『きゅ!?』で流行語大賞を取った次くらいに光栄です。そして、どのくらい嬉しいかと言うと、紗耶香に歌とかダンスを誉めてもらった次くらいに嬉しいです!」 スタンディングオべーションに沸く場内。会場のところどころではすすり泣きも聞こえている。 「そのサヤカとは一体ダレだ!?」 という疑問の声も聞こえている。しかしその市井は今この会場にはいない。余りの肉体の酷使の為、体中の筋肉、骨格が老人並みの衰えを見せていることが発覚し、即入院と診断された為だった。 スピーチも終え、壇を降りた後藤がふと会場に酢こんぶが無いことに気付くのとほぼ同時だった。 会場に設置された巨大プラズマビジョンの映像が切り替わった。 わざとらしいほどににハワイアンな格好をした4人の女が映っている。
「シンノヒロインハワタシタチデース!!」 見覚えのある顔だ。半年ほど前ともに戦った仲間、『ココナッツ娘。』の一人、身長こそ無いものの、ウェイトではハロープロジェクト中では安倍なつみと争う、ダニエル。 「ヘナチョコオンナハダメ、ダ〜メ♪」 色々な意味で今だなぞのベールに包まれている部分の多い、レフア。 「ハワイから生中継でお送りしていまーす!」 後に確固たる地位を築くことになる、ミカ。 「という訳で、これから日本を侵略します」 理知的な顔立ちが、知性の泉の無限な広がりを感じさせる、アヤカ。 「なっ…日本を侵略するだと!?一体何を考えている…」 「昨日の味方は今日の敵……リメンバー・パールハーバーってことかい…」 まるで昔を懐かしむように中澤がうめき、その頃辻はアロエヨーグルトに夢中だった。 会場がどよめきに包まれている時、 ポロロロン… と、ギターの音色が響き、会場が静けさに支配された。
「後藤さん…あんた、ヒロインの中じゃ一番目だ……北海道の一番は…この私よ!」 「りんね!」 場違いに呆けた飯田の声が会場に響く。 「北海道代表、カントリー娘のりんね。今度は本州を制覇しにきたよ」 当初3人でスタートしたカントリー娘も今ではりんね一人。一人を作業中の事故死で、もう一人は諸事情による脱退という形で失っている。そして皮肉にも、それがりんね個人の勢力を拡大する方向に働いた。 「りんね…私も北海道なんだよ」 この安倍の言葉をりんねは完全に無視した。そのころ、加護はマスコミのカメラの前でムースポッキーを食べるのに夢中になっている。 「地球は、狙われている!」 突然、会場に複数の若い女性による深刻な声が響いた。
「私達は、バレリーナ戦隊、メロン!」 一段と響く声を持った斎藤が口火を切った。 「現在地球は、凶悪な宇宙人に狙われています!」 生真面目そうな顔をした大谷が言ったのを受け、 「しかも、その宇宙人はとても強いんですよ」 最年少の柴田がそう言い、 「よって、善良な宇宙人である私達がお前らを守ってやる。感謝しろ」 何を考えているのかよく分からないところのあるリーダー、村田がまとめた。 「よく分からないけど…地球は色々な危機にさらされてるんだね…」 スーパーヒロインがそういうと、会場の空気は一気に盛り上がった。 そう。戦いはまだ始まったばかりなのだ。 ―――――戦いは、これからだ!――――― 完
103 :
マングース西浦 : 2001/01/10(水) 00:45 ID:GLRRoj3A
打ち切り風最悪の終わりかた
104 :
名無し娘。 : 2001/01/10(水) 01:07 ID:1f/tzAS2
面白いけどいいのか、そんな終わり方で?
105 :
名無し娘。 : 2001/01/10(水) 01:46 ID:hizJ5sWI
最終回ワラタ 男坂以来の衝撃だ。 とりあえずお疲れ。
僕の名はカズムン・アルティア 僕は彼女ら・・・乙女賢者たちによりプロデュースされた 神殿騎士団ナイツオブライディン(昇輝の騎士と呼ぶ)13人の内の一人・・・ 彼女ら13人に出会ってなければ僕はこうにはならなかった 真実を知ろうとしたあの日が無ければ・・・ (注)この騎士は、なっちが担当した騎士である。
カズムン「つんく様は、教会の軍事力強化のために 賢者である彼女らに我々騎士団を結成されたのだ が・・・彼女らには彼女らの思惑があるらしい・・・ いったい何を・・・」
天下一武道会 外伝1 〜バレリーナ戦隊メロン〜 蒼き流星 あゆみ
3月22日 3rdシングル、『電話待っています』リリースです。
朝になれば日が昇り、夜になれば日が沈む。 そんな生活を放棄して新しい惑星に旅立ったひとつの宇宙船団が宇宙の暗闇を進んでいた。 その内の一つは村田めぐみ、斎藤瞳、大谷雅恵の三人が操船を行っている。三人ともが優秀な宇宙飛行士であり、また優秀なファイターでもあった。 「あああああ、私達いつになったら新しい星に着くんだ?」 三人のうちの最年長でありリーダー格の村田めぐみがあくび混じりにぼやく。 「確かに…ずっと長いこと船の中にいたからさぁ…少し太ったんだよね」 他の二人に比べてやや太目の斎藤瞳も村田につられる様に不満をこぼす。 「瞳が太ったのが長い宇宙船生活のせいかどうかは別にして…確かに、早く新しい惑星を見つけないと…ダイエットを気にする前に餓死してしまうかもしれませんね」 大谷が冷静な分析を下す。一見冷酷にも見える態度だが、いざとなった時の大谷の勇気は誰もが認めている。 「は?それってどういう意味?」 大谷の言葉の気になる点を正そうとした斎藤をよそに、再び村田が不満を口にする。 「餓死って言うとあれか?腹減って死ぬわけか?あ〜〜〜、サイアク。せめてベジタリアンの私だけでも助けてくれんかな」 「動物性タンパクを全く取らないほうがむしろ体には悪いんですよ」 「うるせえ……うわっ!?」 三人が搭乗する宇宙船の船体が大きく傾いだのはそんなときだった。
「な…なになに?今の!」 斎藤は驚きを隠さない。 「な…馬鹿な…!!」 そして珍しく驚きを露わにする大谷。 「なんだ!?…どうした大谷?」 リーダー大谷の問いに僅かに冷静さを取り戻しながら大谷が答える。 「せ…先行グループ、消滅しました」 「そ…そんな!?」 この船団は戦闘を目的としたものではないため全て合わせてわずか四隻というの小型の船団で、先行グループは、そのうち二隻で構成されていた。その二隻の反応が、レーダーから突然消えた。先行グループは最悪の場合なにものかに攻撃され、破壊されたに違いない状況だった。 「ち…ちくしょう…大谷!団長の船に繋いでくれ!!」 ほどなく、正面のモニターに船団長の顔が大写しになる。 「団長…これはどういうことだ!?戦闘があるなんて聞いてねえぞ!!明らかな契約違反だ!!帰らせてもらう!!」 村田の剣幕にうろたえを隠しきれない様子で団長が答える。 「き…君達も確認したようだな…しかし、これはイレギュラーだ。現在確認を急がせている」 そのとき、船団長の声に混じり、オペレーターのヒステリックな声が聞こえる。 「未確認反応一機、いや2機!?、前方からとてつもないスピードで接近して来ます!!か…回避行動!!!ま…間にあいませ…」 そこで通信は途絶えた。
「……ははは……」 斎藤瞳が無気力な笑いをこぼしたが、実際この時の状態は最悪だった。 故郷の星から遠く離れ、文字通り孤立無援の状況で、村田はこれ以上の案は考えつかなかった。 「回頭しよう…そして逃げる。出来るだけ遠くへだ!!」 この村田の指示を聞いた大谷は振り返り、 「瞳、オペレーティングを頼みます」 「え…!?大谷、どこに行くの?」 「…パイロットスーツに着替えてきます」 大谷はこの船に2機だけ搭載された小型の戦闘艇でまだ見ぬ敵と闘い、命と引き換えにしても時間を稼ぐつもりだった。 「許可出来るかそんなこと…大谷、お前死ぬ気だな!?」 「大丈夫。時間を稼いでみるだけです」 「ここに積んである小型戦闘艇は弾薬も、燃料も、使ったらそれっきりだ。替えは無い。実際の戦闘を想定した設計になんかなってねえんだよ。それでどうやって生きて帰って来るつもりだ?」 「………」 大谷は沈黙するしかなかった。
「ちょっと待って…」 斎藤が沈黙を破った。 「さっきから敵機らしいのが二機確認できるんだけど…この動き、おかしくない?」 言われた大谷と村田がレーダーを覗き込むとすぐに分かった。 「この二機は仲間同士じゃない…敵同士で争っているようですね…」 「……ってことは…私達は、この二機の争いに巻き込まれて、とばっちりを受けた。そういうことか?……なんてことだ…ゆるせねえ…」 ほどなくして、二機あった未確認物体の片方が消滅し、もう一方の動きも止まった。 「……あの未確認反応の生き残りが通信を求めてきてるけど……どうする!?」 周囲を見渡しただけも宇宙船の残骸ばかりが目に付く。もはや同じ宙域には自分達が乗っている船と、その未確認物体の二機しか存在していなかった… 「………面白い………逃げる余力が無くなって弁解でもするつもりか?ふん…殺す前に言い訳だけでも聞いてやるか」 「!」 モニターに映った憎い゛殺人者゛は、意外にも自分達と同年代の女の子に見えた。
115 :
Ver.Na : 2001/01/11(木) 07:26 ID:7GOBBEvo
ふっ
116 :
名無し娘。 : 2001/01/11(木) 13:16 ID:5TlieNmc
「あなたたちは…狙われています!!」 モニターに映し出されたその若い女は、開口一番そんなことを言った。 「私達が…?」 「く…詳しいことは……一刻を争う状況です。そちらに…くっ……直接お話しなければなりません…」 「…はっ!!」 村田が嘲笑した。 「無抵抗のこっちを好きなように蹂躪してくれたお前を受け入れろだと!?ふざけるな!!斎藤!!ロボットアームであの間抜けを握り潰してやってくれ」 「あっちはかなり傷を負ってるみたいだし…受け入れても危険はないと思うよ!?」 「斎藤!!聞こえなかったか!?握り潰してやれと言っている!!リーダーは私だ!!忘れたのか!?」 「瞳…あなたが出来ないなら私がやります。どいて下さい」 大谷が斎藤のシートを奪うと、すぐにロボットアームを作動させる。そして゛殺人者゛の乗った戦闘機を掴むと、船内に収容した。 「大谷っ!!お前!!」 「処刑ならいつだって出来ます。それとも、手負いの少女に全滅させられるほど私達はやわですかめぐみ!?」 「……好きにしろ…」
「当然の処置です…さすがメロン星でも指折りの戦士だけはある…」 応急処置をほどこされたうえで手足に縛めをされた゛殺人者゛はあくまで冷静にそう言った。 「なるほど…私達のことを少しは知っているようですね…」 大谷は意外なことに少し眉の位置を上げたが、村田はずっと奥のほうで壁にもたれかかり視線を落し、沈黙を守っている。斎藤はシートに腰掛け、周囲の宙域を警戒しているようだ。 「当然です。あなた達はメロン星の有名な戦士ですから。それにしてもあなたがたは賢明でした。他の三隻は突然私達が現われたことで縮み上がり、否応なく打ち落とされたというのに…」 「………」 三人が急に沈黙したのは少し不思議だったが、゛殺人者゛は気にせず本題に入った。 「実は私はあなた方と同じメロン星から来た柴田あゆみと言って、あなた方の無事を守りに来ました」 「私達を守りに来た…?随分と自分の腕に自信があるようですね」 「…あなたがたの力をみくびっているわけではありません。しかし、現在メロン星は恐ろしい敵に狙われていて、その敵は手始めにあなたがたを血祭りに挙げようとしているのです」 バレリーナ戦隊メロン。この3人は母星に名前を轟かせる傭兵だった。
作り話ならもう少しましなものにしてくれ、と内心大谷も少し思わないでは無かったが、 「にわかには信じられない話ですね…それに恐ろしい敵と言ってもメロン銀河が他の惑星に侵略されそうになった過去などありませんし」 そう大谷が言ったところで黙って話を聞いていた村田が口を開いた。 「話は終わりか?」 「え…ええ。しかし、今は一刻を争う状況です。今すぐ向かわなければならない場所があります」 「大谷、そいつの縄をほどいてやれ」 「めぐみ……」 なぜかためらう大谷の様子を不可思議な目で見ていた柴田だったが、その理由はすぐ分かった。 村田が柴田の額の中央に狙いを定めるように銃を構えている。 「めぐみ…まだこの人には聞くことがあります」 「黙れ」 大谷の制止を一言で止める村田。 「信じてもらえ無かったようですね…残念です」 そこまで言ったところで がっ!! 村田が柴田を銃のグリップの底で殴り付け、鈍い音が響いた。
「お前が…お前が破壊した宇宙船の内の一つにはな……私の…私の父親が乗っていたんだよ」 座り込んだ柴田は一瞬目を見張ると、自分の不覚を後悔し、恥じた。 「すみません………私が…もう少し早くあいつを撃墜していたら…」 どっ… 「は…『すみません』だと!?」 村田は柴田の肩口を蹴り上げた。 「己惚れんな…お前が……お前が来たせいで…私の父さんは!みんなは!殺されたんだ!!お前さえ来なかったら……!!!!お前なんかがいなければ!!!お前も一緒に死ね!!死ね!!!死ね!!!!」 あえて大谷も、斎藤も、村田を暫く止めることをしなかった。しかし村田が両手で数え切れないほど手足をふるったところでようやく大谷が止めた。村田が非力でなかったら、柴田はすでに死体になっていたかもしれなかった。単純な腕力では、村田はペットボトルの蓋も開けられないほどに非力だった。 「いいか…私は絶対にお前を認めない。絶対に、死ぬまで認めないからな!!大谷!!そいつは物置にでもほうり込んでおけ!!」 中型クルーザー程度の船の為、懲罰房のような設備は無かった。 「ち…地球に向かうんだ……地球に……」 柴田の小声の訴えは誰にも届かなかった。
122 :
Ver.Na : 2001/01/12(金) 02:18 ID:0syzQ6HI
フッ
「すみません…しかし、本当にこんな場所しか無いんです。許して下さい」 大谷は物置の前で柴田に説明した。 「そ…そんなこと気にしないで下さい……」 「ねえ、あんた…なんで殴られるままになってたの?」 後方からの声にはっとして二人が後を見ると、そこには斎藤がいた。 「あれじゃあ、めぐが一方的に悪者みたいに見えるじゃない。なんで一発もやりかえさなかったの?あんたは悪くない。あなたは私達を襲おうとした奴と戦って、倒してくれただけ。そのことはめぐだって分かってる。でも、きっとどうにもならないだけだと思うんだ」 「……」 柴田はしばらくの沈黙を経て、口を開いた。 「……いいんです……あの人の肉親を救えなかったのは事実なんですから…そ…そんなことより…急がなくては……地球に……」 「チキュウ!?」 珍しく大谷と斎藤の二人が声を合わせる。 「そう…母星での研究の成果で分かったんです……ここから一番近い太陽系に、知的生命体が住む惑星がある……まずはそこに逃げ込み、協力を仰ぎましょう…3日もあれば着きますから…」 柴田の話に大谷と斎藤の二人は顔を見合わせる。 「…本当なんですね?…瞳…この人の言うことを信じますか?」 「この子は嘘を言ってる目はしてないと思う」 「同感です」 再度珍しく、この二人の意見が一致した。
「お前らこんな時に二人一緒に何してたんだよ。もう惑星探査班の船も沈んだ。引き返すしか無さそうだな…ち…任務失敗か…参ったな」 元の部屋に戻ると、村田は柴田のことなど無かったかのような様子だった。 (あの子が言ってたってことは言わないほうがいいね) (……ええ、私に任せて下さい) 小声でそう言って斎藤を納得させると大谷は一つの提案をした。 「めぐみ、私と一つ賭けをしませんか?」 「……大谷らしくも無い…お前が賭け事やるなんて初耳だぞ!?」 「…聞いて下さい。私達は移住可能な惑星が発見できた時に、その惑星での探索時に起こりうるあらゆる危険から探査班を護衛する、というのが元々の任務だったはずです」 「改めて確認するまでも無い…そうだ。そして、私達はその任務を達成出来なかったわけだ…私達傭兵は信頼を失ったら終わりなのにな…」 「だったら、その失った信頼を取り戻せるだけの仕事を私達だけでやってみればどうか!?ということです。3日…3日だけで結構です。その間に周辺宙域を探査し、もし何も発見できなかったら…私になんらかのペナルティーを課してくれて結構です」 「そ……そうだね…それくらいの間の食糧ならまだ充分あるし…いいんじゃない?やってみる価値はあると思う」 「……いいだろう。ペナルティーは、もし何も発見できなかった時に私が考える。それでいいな?」 斎藤のフォローを受け、村田も賛同した。 「…結構です」
1日目は何ごとも無く、何も発見できないまま過ぎた。 「…雅恵……どうするの?もし何も発見出来なかったら…」 「大丈夫。私がペナルティーを負えばいいことです。それより…柴田さんの具合が気になります」 「…そうだね…昨日は何も食べてなかったし…めぐみに内緒で食糧渡して来ようか?…来た!!」 後方のドアが開き、村田が入ってくる。 「なんだ?どうした二人とも…なんか変だぞ?」 「そ…そうかな?そんなこと無いよ…あ、めぐみ、食糧持って来てくれたんだ」 斎藤がそこまで言ったところで大谷が村田の手中の食糧の数に気付く。 「食糧の数が…一つ多いですよ!?」 一回分の食糧は一人分一パックになっていて、内容はカロリーキューブ2つ、サプリメントの錠剤がいくつか、ミネラル補給のドリンク一つとなっている。味に飽きることの無いよう、カロリーキューブには味のバリエーションがいくつかあるが、長く口にしている者にとっては慰みにもならなかった。…とにかく村田は、それを4パック持っていた。 「…もしかして、あの子のぶんも持ってきたってわけ?」 「……まあな」 少し表情を暗くして村田は答えた。 「めぐみ…私が持って行きましょうか?」 「いや。いい。私が持っていく」 「めぐに持っていかせてやりなよ。昨日のお詫びがしたいんだよ。めぐは」 「……」 楽観的な斎藤の言葉に大谷が沈黙している間に、村田は部屋を出、柴田のいる物置に向かった。
斎藤が毎日同じ食糧であることに不平を漏らしながらパックを開け、中のカロリーキューブを口にしようとした時、大谷は席を立った。 「ちょっと…様子を見てきます」 「様子って…めぐの?べつにそんな必要ないとおもうけど…分かった。じゃあ私はここで計器見てるから」 部屋を出ると、物置に続く曲がり角の先から村田の声がした。
「ほら、食糧だ。腹減ってるんだろ?」 物置の扉を開けた村田は最初にそう言った。 柴田は何時間かぶりに見た光にまぶしそうにしながら村田の表情を見上げた。村田の口元に僅かに笑みが浮かんでいる。 「あ…ありがとう…」 あわてて立ち上がり、柴田が食糧を受け取ろうとすると村田はパックの封を切り、内容物を全て床にぶちまけた。 「ははは…ほら、食えよ」 「……」 柴田が視線を落し沈黙すると村田はカロリーキューブに足を乗せ、一気に踏み砕いた。 「どうした…私が持ってきた食糧は食えないとでも言うつもりか?」 「……」 まだ柴田は下を向いたまま黙っている。今度はドリンクの入ったチューブを踏み潰す村田。 がっ… 黙ったままの柴田を村田は殴りつける。一度は堪えた柴田だったが、2度目の拳で倒れた。 「…てめえ……私の父親はなあ…もうなにも喋れない…てめえのせいでな…てめえには喋れる口があるだろ……」 村田はそれでもだまったままの柴田に唾を吐くと、 「私もてめえと同じメロン星人だと思うと虫酸が走る」 そう言って物置を後にした。
「!」 村田が曲がり角を曲がって部屋に戻ろうとすると、そこで待っていた大谷に突き当たった。 「…大谷……私を責めるつもりなのか?」 しかし大谷の目は村田を責めるような光は発していない。ただ、黙っていた。 「……そうかい。お前もだんまりかよ」 そう言うと村田は部屋に戻っていった。
130 :
Ver.Na : 2001/01/13(土) 05:14 ID:Sohesjt6
フッ
131 :
名無し娘。 : 2001/01/13(土) 19:11 ID:pIcCmjic
村田ってこんなキャラだっけ?
132 :
名無し娘。 : 2001/01/13(土) 19:21 ID:zWgithBE
続いてたのか。 最近メロン押してるね、メロンは柴田以外はわかんないや。 ちょっとバイファムを思い出した。
あ・・・Ver.Naさん意外のレスが・・・
>>130 、、、
>>131 台詞だけで誰か分かるようにキャラを分けてみました。
まだ誰がどういうキャラか把握出来ていないので・・・
なんかしゃべりかたがぶっきらぼうな印象があるので村田はこうしました。
>>132 メロン記念日だけに下げの方向で行こうと思ってたんですが・・・
元ネタありですよ。タイトルはそのまんまです。
大谷が物置に駆け込むと、柴田はまだうずくまっていた。 大谷が入って来たというのに、身動き一つする様子が無かった。 「昨日瞳が言ったと思いますが……」 「……いいんです…」 「!」 大谷の言葉を遮るように上げられた柴田の顔を見て大谷は絶句した。柴田の両目からは止めど無く涙が流れている。 「……お願いします……一人にして下さい…」 これっきり柴田は一言も発することがなかったため、大谷はそのまま部屋を出て行くしか無かった。
柴田にはまだ三人に話していない出生の秘密があった。 メロン星人である柴田の父親はかつて今の彼女らと同じように惑星探査に出かけ、思わぬ事故から遭難し、幸いにも知的生命体の存在する惑星に漂着した。 そしてその第一発見者が柴田の母親となる女性だった。 その惑星の人は皆気性が優しく、二人は柴田あゆみという子をもうけ、幸せに暮らしていた。 ところが柴田あゆみが16回目の誕生日を向かえて1ヶ月ほどが経ったある日、突然変異的に現われた強烈なリーダーシップを持った指導者によって政体が一変され、その指導者はメロン星を足がかりに遠い『地球』を侵略するという政策を掲げた。 その際柴田の両親は政府によって捕らえられ、おそらくは処刑されてしまったのかもしれなかった。 その際柴田はその父が極秘に開発していた蒼い宇宙戦闘機を託され、その星を脱していた。 つまり柴田はメロン星と今まさにそのメロン星を侵略せんとしている惑星の混血なのだが、父親に蒼い宇宙戦闘機を託された時彼女は決意していた。 (メロン星人として侵略者と戦う) と… 「私だって…メロン星人なのに…」 そう言いながら柴田は涙が止まらなかった。
そして3日目…まだ目指す惑星には着いていなかった。 「どうやら賭けは私の勝ちだったな大谷!?慣れないことはするもんじゃないな」 「…」 (どうするの!?もし今日中に見つからなかったら引き返さないとなんないでしょ!?) 小声で大谷に問う斎藤だったが、大谷は耳を貸さなかった。ただ柴田の言ったことを信じて、計器に目を走らせている。 「どんなペナルティーがいい!?希望だけは聞いてやってもいい」 「あのさめぐ、雅恵をかばうつもりじゃないんだけど…もう一日待ってもらえないかな」 斎藤がそう言った時、 「…これだ…」 大谷が前方に惑星を確認した。 「見つかったのか?」 「賭けは私の勝ちです……」 「や…やったじゃん雅恵!!……!!!」 突然、レーダーに未確認の反応が複数現出した。 「ま…まさか?こないだの敵と同じ…」 「私達のいるところを狙って亜空間飛行で先回りしてきたようです…」
137 :
名無し娘。 : 2001/01/14(日) 00:59 ID:XyNQfZ5o
>>133 タイトル見直してみて元ネタ分かったよ
オマエモナーにちょっと音感が似たやつだよね。
同じ大河原メカ(だったと思う)物というところだけあってたのか。
138 :
Ver.Na : 2001/01/14(日) 02:08 ID:MQfy303.
>>137 そうです・・・バイファムも好きですけどね・・・
15少年漂流記とか、ああいうジュブナイルな雰囲気が。
>>138 、、、?
すごいですねそれ。
完全にうろ覚えで書いてたんですけど・・・
オープニングにハイライトシーンが流れるのが好きでした。
「1、2、3、…5機か……今回は逃げ切れそうに無いな……」 そう言う村田に大谷が振り返り、 「……今度は…出ます。いくら止められても」 出撃の許可を求める。 「すまない…こちらこそ頼む…せっかく賭けに勝ったのにな…」 メロン星人は宇宙空間での戦闘はほとんど体験しておらず、それは名だたる傭兵のバレリーナ戦隊メロンの三人も同様だった。三人の宇宙船に搭載された戦闘機にしても敵のものからすれば玩具のようなものだ。 立ち上がろうとした大谷が通信機に通信が入っているのを確認した。急いで繋ぐと、慌てた若い女の声がした。 「頼みます!!!私の出撃を許可して下さい!!!」 柴田あゆみの声だった。 「!!なんだ!?なぜ物置から出られた!!!」 村田の叱責にもかかわらず、斎藤が柴田の戦闘機が収容されているハッチを開いた。 「斎藤!!!お前…」 「どうせ溺れるんなら藁でも掴んでからにしたほうがいいんじゃない?」 逆境も極わまるとこの太めの隊員は逆に肝が座るらしかった。 「…!!大谷!!何してる!!早く出ろ!!」 大谷に当たろうとした村田だったが、すでに大谷は声の届くところにはいなかった。
「……すごい……」 小型の戦闘機に乗って出撃した大谷は血で血を洗う戦場で、余りにも美しいものを目の当たりにしていた。まるで、 「…蒼い流星」 重力下での戦闘体験は何度かあった大谷だったが、宇宙空間での戦闘は全くの始めてと言ってよかった。しかし大谷はその何度かの重力下での空中戦の経験から相手の後ろにつくことが出来れば8割は勝利を確信出来るということを知っている。 しかし、今大谷が見ている光景はそんな生半可な大谷の知識を打ち破った。柴田が搭乗している蒼い戦闘機はまるで意志を持った流星のように宇宙空間を縦横無尽に飛び回り、敵を完全に翻弄している。
142 :
マングース西浦 : 2001/01/16(火) 00:42 ID:qMhp/rZY
「落ちろぉぉ!!」 ようやく柴田の背後を取り、そうさけんだバレリーナ戦隊メロンにとっての敵兵はその次の瞬間、自らが搭乗する戦闘機の爆発に巻き込まれ宇宙にその命を散らした。 この敵兵の動体視力を遥かに上回るスピードで、柴田は後方を取り返していた。 「許して……」 ようやく一機を撃墜したが柴田が口にした言葉はそれだった。今は敵になっているものの相手は皆元はといえば自分が生まれ育った星の住民だったからだったが、一方の柴田自身にも必要以上に相手のことを気にしている余裕は無かった。 柴田が搭乗する戦闘機は、そのすさまじいスピードのために搭乗者の神経を相当以上に酷使する。 (やっと一機…) それが実感だった。 「柴田さん!!」 突然、コックピットに斎藤の声が響いた。 「雅恵が危ないの…援助してもらえる?」 その方向を確認するとそれらしき機体が敵の追尾を受けている。 「わ…分かりました」 一気にスピードを上げ、大谷の救助に向かう柴田。 その途中に立ち塞がった機体をも撃墜し、敵機を残り3機にする柴田。
143 :
Ver.Na : 2001/01/16(火) 07:00 ID:3A7Y6joE
フッ
「く…なにもできずに…」 そう大谷が死を覚悟した時、その後方に蒼い一筋の閃光が生まれた。 「大丈夫ですか雅恵さん!!」 「し…柴田さん…!?こんな私を…」 軌道を変え、さらに大谷に詰め寄る敵機。 「くっ…蒼いやつが来た!!何をしていた貴様ら!!」 柴田がすぐに救援に来たことに対する驚きから大谷を追撃するパイロットが生き残りの他の二機を叱責する。 どうやら彼がこの戦闘機小隊の小隊長だったらしい。彼は突如スピードを緩め、 「……青二才……貴様には分かるまい!!これが我々軍人の務めだ!!!」 そう叫ぶと柴田の戦闘機に突っ込んだ。 「な…突っ込んでくる!!!」 予想外の敵機の挙動に一瞬躊躇する柴田。その刹那、 「!!うおっ!!?」 突如放たれた横からの敵弾に咄嗟に反応する小隊長。 「今です」 その大谷の言葉が聞こえるか聞こえないかのタイミングでの柴田の戦闘機の攻撃によって小隊長機が散華する。
「……そういえば」 外とは対照的に静かな船内で斎藤が口を開く。 「賭けには雅恵が勝ったんだよね?」 「…こんなときに無駄話はやめろ」 村田の制止が聞こえていないはずは無かったが斎藤は構わず続けた。 「もし雅恵が負けたらあんたのいいなりになるってことだったけど…あんたが負けたらどうするかって決めてなかったんじゃない?」 (気付いたか…) と珍しく鋭い斎藤の勘に驚いた村田だったがそれを顔に出すことはしなかった。 しかしそんなことはあの大谷のこと、とうに何か考えているだろう。そうも村田は思っていた。 「それとさ…」 沈黙する村田に再び斎藤が口を開く。 「……あの柴田って子さ……まだ許せない?」 父親を殺した相手を許せるのか、などと赤の他人が出来る質問では無いはずだったが斎藤がそういう質問をする時、そこに邪気は篭らない。 村田は視線を自分の足元に落とし、そこにある紙袋を見た。 (死ぬなよ…大谷……)
「あ…ありがとうございます雅恵さん、助かりました!」 「それはこちらのセリフですよ…また来ます…気を緩めないで」 「ハハハ…どうやら小隊長は名誉の戦死を賜ったらしいな」 「しょ…小隊長を見殺しに…こ…こんなことをしてただでは済みませんよ!!」 残り二機の間で通信が交わされていた。 「貴様も残り三機が戦闘している間戦線を離脱していた…要するに、貴様も共犯だってことよ」 「く…それはあなたが…」 「あの蒼いのを仕留めれば二階級特進ものだ…お前にとっても悪い話じゃないはずだ、行くぞ!」 「き…来ます!!雅恵さん、下がって!!」 柴田の乗る蒼い戦闘機に向かって゛一機゛が突貫してくる。 「みんなを死なせる訳にはいかない…」 無数の弾道を描きながら突貫して来た一機に対し、余裕を持って正確な狙撃を行う。 「!!?」 敵機がその狙撃をかわすと同時にその後方から一本の光線が柴田に向かって走る。 「うわぁっ!!」 辛うじてそれをかわした柴田だったが、咄嗟の出撃だったためにパイロットスーツを着用していない柴田の体を容赦無く熱波が襲った。
「ハハハハ…かかったぞ素人め…」 「や…やったぞ…これで二階級特進だ!ハハハハハ!!」 コンビネーションで柴田にダメージを与えた二人の間で通信が交わされる。 「まだだ、落ち着け。功を焦ると死ぬぞ…奴に集中しろ!!」 「柴田さん!?柴田さん!!」 大谷の呼びかけに柴田からの返答は無かった。 その蒼い戦闘機は操縦者がシートベルトの締め付けの為に意識を失った瞬間、これまで働いていなかった機能を発動させようとしていた。 メインモニターがその光を失い、コントロールパネルが不規則な変動を見せる。 「テッキ カクニン。 センメツ スル」 「な…なに!?」 その機体自身から発した声で柴田は意識を僅かに取り戻したが、何が起きているのかまでは分からなかった。 第一、コックピット内は今や完全な闇に支配されている。 「な…なんだ!?あ…あの蒼い戦闘機の様子が変です」 「見れば分かる!!」 蒼い戦闘機がまばゆい光を放ったかと思うと、機体全体が薄いヴェールに包まれた。 「て…敵機、こっちを向きます!!」 「見れば分かるって言ってるだろ!!」 「き…来た!!!」 光のヴェールに包まれた機体が二人に向かって突貫する。
「う…うわぁ!!!」 二機の内の片方が恐怖におののき逃げようとする。 「逃がすかよてめえ!!」 逃げようとした機体は味方の攻撃によって四散した。 「盾の役にも立たなかったか…ふん…ハハハ敵前逃亡した臆病者は銃殺刑に処断致しました…ハハハハ」 「味方を攻撃した!?なんてことを…」 仲間殺しを目の当たりにした大谷はそうこぼしたが、その次の瞬間に起こったことには完全に言葉を失った。 「ハーハッハッハッハ!!!かかってきやがっ…れ!?」 この兵士がセリフを最後まで口から発することは出来なかった。 この短いセリフがまさに終わろうとした瞬間、その搭乗機には大穴が空き、搭乗者を宇宙空間に死体として排出していた。 敵の戦闘機に突貫した蒼い戦闘機は、敵の戦闘機の゛中゛を強引に通り抜けて直進していた。光のヴェールに包まれた蒼い戦闘機の方には傷一つ無い。 宇宙空間をすさまじいスピードで大きく旋回した蒼い戦闘機は再び敵の戦闘機を――先程とは違う場所を――貫いて、突き抜けた。 そしてその゛作業゛を何度か繰り返すと、もはや敵の戦闘機は誰の目にも戦闘機には見えない姿に成り果てていた。 そしてかつて戦闘機だったものがただの鉄屑になったころ、蒼い戦闘機はその動きを止め、光のヴェールを脱いだ。
「テッキ ショウメツ ヲ カクニン M−MAXもーど シュウリョウ」 「…な…なに…なんだったの今のは…!?」 朦朧とした意識の中で柴田は自分の搭乗する父親の形見に問うた。 「敵の気配が…消えてる……よ…よかった…」 そのまま柴田は意識を失った。
「ん………」 「やっと目が醒めたね」 柴田が眠りから覚めて最初に見たのは斎藤の顔だった。 「ひ…瞳さん……でいいんですよね!?ここはどこなんです?」 「安心して。天国じゃないから」 柴田はほっとして一瞬上体を起こそうとしたが違和感を感じそれを断念した。 「敵は…敵はどうなったんですか?まだ二機いたはず…」 「敵って…あんたが全部撃墜したじゃない…覚えてない?」 「わ…私が!?」 斎藤は微笑すると席を立ち、 「なんか…色々話さなきゃならないことがあるんじゃない?二人呼んでこようか?」 「その必要は無い」 そう言いながら右手に紙包みを持った村田が入室してきた。大谷はその後ろにいる。 「めぐみ…彼女は怪我人です」 「分かってる」 大谷に目で促され、柴田は自分の生い立ち、これまでの経緯を説明した。しかし蒼い戦闘機のことは父親が極秘裏に開発したものであるということ以上のことは知らなかったため、その旨を説明した。 マニュアルに目を通して見てもついさっきの現象についての説明は無かった。
「そう…あなたの両親も…」 「あなたが全てを捨てて来てくれていなかったら私達は今ごろ宇宙の藻屑になっていたでしょうね…」 ―――話の内容の衝撃の為にこの後しばらく沈黙が続いたが、大谷がそれを破った。 「めぐみ、何か言うことはないんですか?」 「…」 大谷に促された村田は無言のまま、手に持った紙包みを柴田に放った。 「めぐみ!?」 紙袋の内容物を曲げて察した斎藤があわてて村田の方を見たが、村田は表情を変えず 「安心しろ。爆弾なんか入ってない」 そう言った。 紙袋を持ったまま3人にかわるがわる視線を移している柴田に大谷が 「開けてみたらどうですか?」 そう促し、促された柴田が村田に視線を移すと、村田も開けるように促していた。 「こ…これは…?」 中にはピンクのレオタードと、ステッキが入っていた。
「め…めぐみ!?」 驚いた斎藤が村田を見る。 「柴田さん、それは私達バレリーナ戦隊メロンの、戦闘コスチュームです。リーダーである村田めぐみがあなたにそれを渡したということは、あなたを私達の仲間の一員として認めたということなんです。―――で、いいんですねめぐみ?」 村田は気まずそうに視線をずらすと、 「私は…『あなたのお父さんを殺してごめんなさい』とか…謝罪の言葉なんか聞きたくも無い…そして私も『殴ってごめんなさい』とか…『食べ物を粗末にしてごめんなさい』とか謝るつもりなんか毛頭無い…だが、今あんたは大谷の命を救ってくれた。そして私達の命も……まあ、そういうことだ」 「そ…『そういうことだ』ってあんた…それじゃ何の答えにも…」 「ありがとうございます…私も、一緒にメロン星の為に戦わせてください」 斎藤を制して柴田がそう言ったため、斎藤は黙るしかなかった。 「ま…人は多すぎても困るけどもう一人増えるくらいならねそれに柴田さんなら……あ、そうだ。柴田さん、ずっとなにも食べてないでしょ?はい、これ。不味いけど腹は膨れるからさ」 そう斎藤が食糧を渡しながら言いきったところで柴田の腹が大きく鳴った。 そして、本当に久しぶりに船内に笑い声が起きた。 地球を救った゛スーパーヒロイン゛後藤真希を称えるセレモニーにこの4人が乱入するのはこの2日後のことだった。
天下一武道会外伝1 〜バレリーナ戦隊メロン〜 つっこみどころ満載のまま終了
154 :
Ver.Na : 2001/01/18(木) 02:30 ID:Ybc7Ce8U
フッ
155 :
名無し娘。 : 2001/01/18(木) 09:58 ID:J.pkt31o
M-maxって何の略かにゃ― 他の外伝も続くの?
>>154 、、、
>155
柴田さんの搭乗機に組み込まれた危機回避システムのことをそう呼ぶそうです。
名前の由来は知りません。
次は平家さん、その次はカントリー娘。を予定してるそうです。
157 :
名無し娘。 : 2001/01/18(木) 21:33 ID:hjiYmR7o
次はみっちょんか、楽しみだ。 ヲーズマン路線で行くんだろか?
>>157 あくまで予定は未定ですので、適当に続けます。
天下一武道会外伝2 〜みちよとミチヨ〜
「ふう…今宵の熊鉄はよく切れる」 第三回天下一武道会を終え、3日後に後藤真希を称えるセレモニーを控えた平家みちよは山中の人になっていた。 二年続けて後藤真希に敗れた反省の意味を込めた山篭もりの修行に早くも入っていたのだが、木の幹を蹴り、落ちてきた枯れ葉が地に落ちるまでにベアークローで切り裂くという修行はストレス解消以外の何の意味も無いように見えた。 それに自らの片手に装着されたベアークローに゛熊鉄゛などと名前を付けているのは正気の沙汰とも思えない。 ともあれ、平家は何かを見つけようとしていた。 振り切ったはずの平家の呪われた血が久しぶりに顕在化したのは何故だったのか。 2年前の中澤との対戦以来表に出ることの無かったもう一人の自分。 「!!!」 その時不意に背後に気配を感じた平家はその方向に自慢の゛熊鉄゛を投げつける。 かっ という音と共にベアークローが突き刺さった木の影から 「危ないなあ…」 というセリフと共に人影が現われた。
「なんやあんた…」 木の影から現われたその人影は平家の問いには答えず、木に刺さったままのベアークローを引き抜いた。 「こういう物騒なものは…」 そう言いながらベアークローを投げ返す。 「うわっ!危なっ!!」 驚きながらもなんとかそれを上体を反らしながらキャッチした平家はその人影に詰め寄る。 「あのなあアンタ、刃物を人に渡す時は相手に柄の方を向けてっ……て!?」 軽く笑みを浮かべたその相手の顔はなぜか見覚えがあった。 (なんやこの底意地の悪そうな吊りあがった目……それにこの白雪姫かなんかに出ててくる魔女みたいにとんがった鼻と薄情そうなうっすい唇……) 「…って私やないの…どうりでめちゃくちゃかわいいと思ったわ」 第三回天下一武道会決勝戦で起こった奇跡を見た後の平家にとってこのことはそれ程の驚きではなかった。 「は…」 その人影は馬鹿にしたような顔で平家を見ると 「はははははははは!!!私があなただって!?笑わせないでほしいよ」 そう言い放った。
その人影はなおも続けた。 「私の名前は源氏ミチヨ。あなたとは全くの別人なんですよ」 「なんや…どういうこと?」 ミチヨはその笑顔に今度は嘲笑の色を混ぜながら続けた。 「あなたはモーニング娘。という太陽が無いと光れない、月みたいなものなんですよ」 そこで平家は少し表情を引き締めた。 「月っていうのはね、所詮ただの木偶の坊です。私はね、同じ名前と顔を持った人間としてあなたの存在が許せないんです。 と、言うわけで、あなたを消しに来ました」 平家は一瞬絶句したが、暫くして口を開いた。 「…私は…太陽なんかより月のほうが好きやけどな…月見ゆうのはあるけど太陽見ゆうのは聞いたことないやろ!?月見団子とか好きやねん私」 「ははは…月見があって太陽見が無いのは、月と違って太陽は見ようとしなくても眩しさでつい目に入るからです。月はね、見ようと思って気にしないとその存在を忘れてしまう…月見っていうのは、そんな存在感の無い月に対する哀れみなんですよ」 「…ややこしいこと言うなアンタ…ま…ええわ…アンタ、私を消しに来たんやろ!?早いとこ済ませたらどう!?…もっとも、私はアンタの思い通りになるつもりなんか毛頭無いけどな」 「ふっ…今のあなたでは逆立ちしたって私には勝てない…」 「ウギャァァァァァァァーーーーー……!!!」 山中に断末魔の声が響いた。
―――山中に断末魔の声が響いたのとほぼ同時刻、都内某所のレコーディングスタジオ スタジオ内のはたけはかつて師弟関係にあった平家のことを忘れたことは無かった。がしかし、いつも平家のことを思っていたわけでも無かった。 事実、既に彼は平家みちよのプロデューサーという立場に無かったし、彼自身シャ乱Qのメンバーとしての活動に加え、個人的に別のユニットも並行して運営するという多忙の中にあったからだ。 この時も昼夜の別無いスタジオワークに没頭していた。 「はたけさん入りまーす」 その声ではたけがソファーから立ち上がろうとしたその瞬間だった。 ブチッ… 「!?」 (…!靴紐が切れた…) 「どうしました?はたけさん」 中腰になったままのはたけにスタッフが聞くと、 「すまん、ちょっと外出てくるわ」 「え?外って…」 「しばらく俺抜きでやっといてくれ」 久しぶりにはたけの心の中心に平家がいた。
164 :
Ver.Na : 2001/01/19(金) 04:10 ID:HbX1tUsE
フッ
165 :
名無し娘。 : 2001/01/23(火) 14:26 ID:/TBdFUBs
掴もうぜドラゴンボール
166 :
名無し娘。 : 2001/01/23(火) 19:53 ID:HVcbtaNc
167 :
名無し娘。 : 2001/01/23(火) 20:00 ID:9Xsty6lE
168 :
名無し娘。 : 2001/01/25(木) 13:25 ID:FQWM6AV.
時よ!動け!!
169 :
名無し娘。 : 2001/01/27(土) 16:16 ID:itBMW9YA
ぐひょひょ
170 :
名無し娘。 : 2001/01/28(日) 00:07 ID:ju/IIkFQ
「よう寝とったな…」 平家が目を覚まし、はたけのこの声を聞いたのは都内の病院の一室だった。 体全体にかかる圧力と、仄かな薬剤の臭いからそれは目覚めたばかりの平家にも判断出来た。 「バ…はたけさん私……え?」 久しぶりに師の顔を見て安心して口を開こうとした平家の目の前に血のついた手紙が差し出された。 端のほうに小さな穴が4つ開いている。差出人は不明だが、宛名が自分になっている。平家はだまって手紙を受け取った。 「その手紙はお前が引っかけられとった木の幹に貼り付けられとったもんや…まだ封は切ってへん」 その説明で差出人をほぼ断定出来た平家は慌てて封を切る。 「!!」 その手紙に目を通した平家は表情を変え、それを取り落とした。 「読ませてもらってええな?」 平家はなおも放心状態だったが、はたけは手紙に視線を移した。 手紙は殴り書きで、ごく短いものだった。 『平家さん、今日はいきなり現われてあんな酷いことをしてすみませんでした。 2日間だけ猶予を与えます。その間に色々お別れとか済ませておいて下さい。 2日後があなたの人生最期の日になります。 ―――源氏ミチヨより 』 「これは…平家…何があったか教えてくれへんか?」 「角…角が生えたんです」 平家はあの森の中ではたけが来るまでになにがあったのか、喋り始めた。
「フッ…今のあなたでは逆立ちしても私には勝てない…」 「抜かせ!!必殺!!゛スクリュードライバー゛」 飛び上がって手近の枝に掴まり素早くそれの上に立ちあがると、ベアークローを装着した右腕を突き出し、回転しながら相手に突貫する。 この時平家は相手に対して手加減をしようという余裕を失っていた。 平家が飛び上がったのを見計らい、ミチヨは手を後に回すと、二本の太く長いツノのようなものを取り出し、 それを頭部に装着した。 「飛んで行け!!!゛ハリケーン・ミキサー゛!!!」 角を装着した頭で平家をカウンターの形で突き上げる。 ガシャッ… という地味な音と共にベアークローは砕かれ、平家は回転したまま中空に突き上げられた。 「な…ベアークローが砕かれるやなんて…」 「驚きましたか?ガラスのツメが砕かれたくらいで?もう一回!!゛ハリケーン・ミキサー゛!!」 落ちてきたところを再び突き上げられて平家は気を失い、目が覚めたらこの病院のベッドの上にいた。
「そうか…」 はたけはそう言いながら息をもらした。 「はたけさん…私、逃げません。あいつに…思い知らせてやりたいんです。 私は…あのバラクーダの弟子だということを」 あんなやつに負けていては後藤真希に勝つなどということは夢のまた夢だ… 今の平家にとっては命の心配よりも自分の誇りを守ることのほうが遥かに高い比重を持っている。 「平家…超人強度って聞いたことあるか?」 「超人強度!?」 平家が聞き返すと、はたけは説明を始めた。 「俺達超人には必ず全員に超人強度ゆう数値が設定されている」 「超人!?」 平家は再び聞き返したがはたけはそれには反応せず、 「勿論その数値が高いほうが戦闘能力、筋力、身体能力なんかも高いということになる」 全くの初耳だったのだろう。今では平家は無言で話に聞き入っている 「俺の超人強度は95万パワー、お前の超人強度は100万パワーってことになってる」 「!はたけさんより私の方が上なんですか?」 「だから俺はお前を選んだ…お前は俺の可能性やったんや」
173 :
Ver.Na : 2001/01/28(日) 01:34 ID:V0uulEi6
フッ
174 :
名無し娘。 : 2001/01/28(日) 05:09 ID:a8SCvZiY
両手につけるのか? 三倍飛ぶのか? バラクーダは96万パワーじゃなかったのか? ネタばらしになってるか?
175 :
名無し娘。 : 2001/01/28(日) 14:19 ID:Rob35h3A
わーい再開したよ。
さらっと「俺たち超人」とかいってるところが笑った。
>>174 それは避けて通れない、絶対あるはず(プレッシャーをかけてみた)。
あのパワー計算のなぞを解き明かしてくれることを切に願う(うそ)。
あと、確か二倍ジャンプで三倍回転だとおもった(2×2×3)。
同時に、もうひとりのミチヨがヅラだったらやだなあとも思った。
>>174 96万?私が見たサイトにはバラクーダは不明ロビンマスクは95万となっていたんですが・・・
ネタばらしにはなっているかもしれません。
>>175 実はウォーズマンってキン肉マン戦以降王位争奪戦まで一勝もしてないんですよね。
それにしてもタイトルが藤子F不二雄先生の「みきおとミキオ」からのパクリなのには誰も気付くこと無く・・・
内容とは全く関係無いんですが。
以前はたけの体は見たことがある。 昔受けた傷のせいでもう充分に戦うことは出来なくなっているという。 「後藤真希は145万パワー、中澤裕子が97万パワー、安倍なつみは80万パワー、福田明日香は95万パワー、石黒彩は90万パワー、保田圭は85万パワー、矢口真里…は不明か…市井紗耶香が95万パワー、なぜか飯田圭織は250万パワーだ」 「ごっつぁんは145万…」 後藤の超人強度を聞いて驚く平家にはたけは更に続けた。 「後藤で驚くことはないやろ…飯田は250万。要するに、必ずしも超人強度なんてものは絶対や無い」 はたけは何かを言うのをためらっている。平家はそれに気付いていた。 「で…あの源氏って子は一体…」 はたけはしばしのためらいに続いて口を開いた。 「正確な数字は分からん…しかし、お前の傷の具合から見て多分…」 とまで言って口を閉ざしたはたけに 「多分?」 と平家が促すと、はたけは意を決して口を開いた。 「…1000万近いやろな」
「い…一千万て…」 本当に傷の具合で超人強度が分かるのかは不明だったが、その数値は平家に衝撃を与えた。 1000万と言えば平家の超人強度の10倍であり、ライバル視している後藤真希の超人強度の7倍に近い数字だった。 モーニング娘。の全員を足しても敵わないではないか… 「闘いに勝利するのに一番大事なのは超人強度なんかやない…そうでなかったらお前が飯田に勝つなんてことは有り得んかったはずや」 「そ…それはそうですけど」 第二回大会において、平家は飯田圭織からリングアウトを奪い勝利を得ている。 「インサイドワーク…最も大事なのはそれや」 「インサイドワーク」 超人強度の数字には肉体的な力のみが判定の材料とされ、頭脳力は考慮されていない。 それはラッカ星出身の超人ビーンズマンの超人強度がわずか10とされていることからも分かる。 インサイドワークとは狭義では試合運びの巧妙さを言う。はたけが今言っているのはまさにそのことだった。 「闘いってのは力と力のぶつかり合いだけやない…やりかたと特訓でどんな相手にだって勝てる」 そして、そのやり方を俺は知っている…はたけはそれを言いたいのだ。平家は察していた。
――翌日早朝 「もう怪我は大丈夫なんやな?」 平家は怪我を理由に弱音を吐くような人間ではない…そう分かってはいたもののあえてしたこの問いに平家は 「全く問題ありません。なにもしなかったら明日私は死ぬんです」 そう答えた。 「よし…それじゃあまず、俺の考えを伝えておく」 はたけの考えはこうだった。現状の平家の超人強度は100万パワーに過ぎない。 それでも正義超人としてはトップクラスに位置しているが、相手の超人強度は1000万。 単純計算で超人強度を10倍にする必要がある。 それにはまず、平家の隠し玉とでも言うべきベアークローを両手に装着する。それで100万×2、 次にスクリュードライバーの際の回転の速度を3倍に高める。それによってさらに3倍して600万の超人強度が望める。 「…それでやっと半分ちょっと…」 最後に2倍高く跳躍するということをまず考えたはたけだったが、それをしてかわされてしまった場合、 技を放った平家自身がしたたか地面に叩きつけられ、死んでしまうことになる… 平家のコンディションが万全でないこともありそれはどうしても出来なかった。 「私に圭織くらいの超人強度があれば…」
「無いものをねだってもしょうがないな…」 はたけは正面からぶつかることは止め、まず最初に400万パワーのスクリュードライバーで相手の角(ロングホーン)の一本をへし折り、その時に生まれるであろう虚を突き、パロ・スペシャルを決める。 「かなりざっくりした作戦で…」 机上の理論にしか見えないやりかただが、パロ・スペシャルという技は一度決まれば抜けることは決して出来ない。 少なくともこれまではそうだった。後藤真希との対戦においても、この技で決まっていてもおかしくはなかったほどだ… ともあれ、二人は特訓に入ろうとした…その時。 「ちょっと待った!」 二人のそばの茂みから声がした。 「あんただけにかっこいいところ持っていかせると思う?」 そこから現われたのは見覚えのある四人組…太陽とシスコムーン、改めT&Cボンバー。 「ほら、はたけさんは歳なんだからその辺にすわってて下さいよ」 「お前ら…」 「練習台は私達に任せて」 4人ははたけが突然レコーディングスタジオを飛び出したと聞いて駆けつけて来た。
「ガハァッ…」 そんな苦しみに満ちた声と共に最後まで夜通し付き合ってくれた信田美帆が力尽きた時、平家の特訓は完成した。 「ごめんみんな…」 「き…気にすることは無い…わ…私達以外の奴にあんたが…倒されるのが我慢ならなかっただけだ……ガクッ…」 「し……信田さぁーーーーん!!」 「平家……悲しんでいる暇はなさそうだ……もう夜も明ける」 平家の肩に優しく掛けられた手の陰から朝日がさし始めている。
182 :
Ver.Na : 2001/01/29(月) 00:09 ID:xL/m/Azg
フッ
183 :
名無し娘。 : 2001/01/30(火) 23:44 ID:bGyL2HeA
「行きますよ」 「…最後の仕上げや」 頭に木の枝を括り付けたはたけが平家と対峙している。 「゛ハリケーン・ミキサー゛!!」 平家は脳天を突き出して突進してきたはたけの頭にくくりつけられた枝を掴み、そこに一瞬倒立すると、 そのままはたけの後方に倒れ込み、その勢いではたけを投げる。 前後を失いながらも立ち上がったはたけは次の瞬間既に木の上に登っていた平家の゛スクリュードライバー゛で枝の一本をへし折られ、パロ・スペシャルを決められていた。 「見事だ…平家…この勝負…お前が勝つ」 平家みちよ、そしてその後方にはたけ。 その二人に向かって歩みを進める人影が一つ。 既に陽は3人の頭上にある。 その朝日には平家にとって人生最後のそれになる可能性があったが、傍目には全く普段と変わらないそれだった。 「…ようここが分かったもんやな」 「ははは…あなたの行動くらい全部お見通しなんでね」 そう言って見せた笑顔はこれから殺人者になろうという者のものとは思えなかった。 広葉樹の茂る森…腐葉土の強い土の臭いが鼻をつくがすでにその臭いは平家にとって心地よいものになっている。 (地の利を得たり…) 平家もはたけもそう確信している。
「ミスターバラクーダ、手出しは無用でお願いしますよ」 「ほう…俺のことも知ってるとはな」 初めてフルネームでその名を呼ばれたはたけは勿論元より手出しをするつもりは無かったが、 もし平家の身に何か起こった場合、ミチヨが無事に帰るのを見逃せるかどうかははたけ自身分からなかった。 初めてオーディションの選考で平家の歌う姿を見た時のこと、面接で直接顔を合わせた時、 デビューイベントを前にして緊張している姿、初めてのレコーディングの時のことなどが 走馬灯のように頭の中を駆け巡り、それを振り払っていた。 (縁起でも無い…) 「その傷…」 ミチヨは平家の肘や膝に付いた擦り傷を見ている。 「どうやら、付け焼き刃の用意に余念が無かったみたいですね」 「嫌味な奴やな…」 顔が同じということもあり、このミチヨはもう一人の自分なのではないかという気持ちにすらなってきている。 しかし、平家の一日の特訓が付け焼き刃かどうかは 「やってみな分かれへんやろ」 既に平家は臨戦体勢に入っている。
「無駄話は止め」 平家のその言葉が始まりだった。 出足の読み合いに続いてミチヨはブルーザー・ブロディ(バッファローマン)よろしく毛皮を巻いた両手両足を操り平家に前蹴りを放つ。 平家はそれをかわし足払いを掛けるが、ミチヨは全く微動だにすらしない。 「くっ…これが1000万パワー…」 足払いから立ち上がり一瞬棒立ちになった平家にショートレンジでラリアットをかけるミチヨ… が、ここは舗装されたアスファルトの上でも無ければ石で出来たリングの上でもない。 平家は足場の悪さから動きの切れが鈍ったそれを見切り、バックドロップに切って取る。 しかし、腐葉土の柔らかさでダメージはさほどではなかったろう。現にミチヨはすぐに立ち上がった。 「さすが平家の末裔だけのことはある…」 「よう知ってるな…」 立ち上がりながらもらしたミチヨの言葉に平家はそう返したが、その時あることに気付いた。 (゛源氏゛ミチヨ!?) なぜ今まで気付かなかったのだろう。源氏と言えばかつて壇ノ浦で平家の一族を滅ぼした宿敵ではないか…
「遊びはここまでです。さようなら、平家さん」 ミチヨはそう言いながら後ろ足に土を蹴っている。 (来る) 「゛ハリケーン・ミキサー゛!!」 はたけのそれよりもT&Cボンバーのそれよりも早い。それでいて力強さも段違いだったが、 平家は特訓の成果でそれを見切り、ロングホーンを掴むとそのままミチヨの頭に倒立する。 「な…゛ハリケーン・ミキサー゛を見切るとは…」 平家はそのまま勢いをつけてミチヨの後方に向けて倒れ込み、その勢いで相手を投げ飛ばす。 ミチヨは一回転して後頭部から倒れた。 「くっ…ここまで見切られるとは」 頭を打ったのと宙で一回転を強制されたせいで視界が定まらないまま立ち上がったミチヨだったが、 その視界のどこにも平家はいなかった。 「こっちだ!!゛スクリュードライバー゛!!」 ミチヨのロングホーンの一方が折れ、放物線を描き、湿った腐葉土の大地に突き刺さった。
「な…馬鹿な!?ダイヤの角が…ガラスの爪なんかに…」 信じられない表情のミチヨに素早くパロ・スペシャルをかける平家。 「うぐぁ…!!」 苦悶に顔を歪めるミチヨ。一連の動きが川の流れのようにスムーズだったせいで何が起きたのかすら分かっていない と、その様子をつぶさに見ていたはたけは思った。 「うわぁ…た…助けてくれー」 (!?) ミチヨの苦しみ方がどこかおかしい…はっきり言えばわざとらしいということに平家は気付いていた。 ただの強がりだろうか? 「早いとこ参ったせんと五体バラバラになるで!!」 最初の警告に対し、 「は…」 ミチヨは笑い出した。 「はははは!!!五体バラバラ!?やれるもんならやってみてくださいよ」 (!?) 「これはねえ、遊びじゃないんですよ。命のやりとりをしているというのに…」 そういうと、ミチヨは強引に力でパロ・スペシャルを外した。 「そんなだから平家は滅んだ…戦場で扇を射らせるような呑気なことをしてるから平家は滅んだんですよ!!」 確かに…平家に、自分が殺し合いをしているという意識は希薄だった。 座り込んだまま見上げるミチヨは実際よりかなり大きく見えていた…
188 :
名無し娘。 : 2001/01/31(水) 02:37 ID:mQXzdP0w
名勝負見守りsage
189 :
Ver.Na : 2001/01/31(水) 03:41 ID:M50p8C5c
フッ
「ほら、そんなところに座ってたら汚れますよ」 そう言いながら髪を掴み、無理矢理平家を立ち上がらせる。 「2000年の壇ノ浦も源氏の勝利で終わります」 「やっぱり…私は滅びる運命やったんやろか」 「知りませんね!!そんなこと!」 そう言うとミチヨは腕力にものを言わせ平家を中空に放り投げる。 「平家ーーーー!!!」 はたけの叫びも空しく既にミチヨはフィニッシュの体勢に入っている。 「゛ハリケーン・ミキサー゛!!」 放り投げられ、落ちてきたところを再び突き上げられる平家。 「平家!!!お前それでええんか!!!後藤から負けたままで逝ってええんか!!!」 「うるさいですよミスターバラクーダ」 既に平家の視界は黒く染まっている。 しかしそれは気を失っているせいではなく目をつぶっているからだったが。 「゛ハリケーン・ミキサー゛!!!」 再度突き上げられ更に高く上空に飛ばされる平家。 「諦めたんか!?お前はこんなところで終わる人間なんか?」 「だまれと言ったはずだミスターバラクーダ!!」 (諦めたんじゃない…でも…だって勝てるはずあれへんやんか)
「゛ハリケーン・ミキサー゛!!」 三度突き上げられた平家はかなりの高さまで飛ばされている。あのまま落ちれば間違いなく全身打撲、 下手をすれば死んでしまうほどの高さだろう。そう思った時はたけは無意識に歌を口ずさんでいた… 「コトバはなんて難しいんだろう 伝え切れないね半分も 解ってくれる。解ってあげてる。 思い込んでただけなのかナ」 平家主演映画『モーニング刑事』の劇中歌『強くならなくちゃ…ね』の一部だった。 「もう二度と笑顔や 痛みを分け合える 同じ瞬間 あなたと 過ごせないかも知れない」 (はたけさん!?) 「強くならなくちゃ…ね 怖がってばかりいないで ひとりでも歩いて行ける私 に 変わりたいから」 「ミスターバラクーダ!!!下手な歌はやめろ!!!」 そう言いながら四度目のハリケーンミキサーで平家を更に高く跳ね飛ばすミチヨ。
「ま…負けられない!!はたけさんの為にも…私自身の為に…そして、私がこんなところで死んだら、 何の為にあの厳しいオーディションを勝ち進んだか…これまで頑張ってきた証が全部消えてしまう!!」 そういうと、平家は空中で体勢を立て直しながら近くの木の枝を掴んで体の回転を止めようとする。 ミシッ… 骨のきしむ音が聞こえる。 「無駄だ!!!1000万パワーで与えた回転がたかが100万パワーで止められるはずが無い!! 落ちてきたところを串刺しにしてや…ゲーーーーーーーーッ!?」 平家は両腕で木の枝に取り付き゛ハリケーンミキサー゛の回転を止め、その上に立ちあがった。 3倍逆回転のスクリュードライバーと、ベアークローを両手に装着したことにより2倍になった腕力。 特訓の成果だったが、それでも1000万パワーには満たず、両腕はかなり疲労してしまっている。 今の状態ではスクリュードライバーなら一度が限界だろう。 しかも、今平家が立っている枝の位置は余りにも高すぎた。 おそらく4階建てビルの屋上程の高さはあるだろう。
そのような平家の悪い都合までは分からないミチヨは正直に平家の精神力に驚愕している。 「な…なんて人だ…ここまでやるとは」 (やめろ平家…そこからのスクリュードライバーは無茶だ…しかも滞空距離が長すぎる 絶対に軌道を読まれてかわされる…そうなったらお前は…) そんなはたけの心の声は聞こえてはいないだろう。 平家はその枝の上で両腕を挙げた。 (まさかお前…!!) 普段の5倍の高さはある…命中すれば1000万パワーのミチヨとはいえひとたまりも無いだろう。 単純計算で超人強度はミチヨの3倍の3000万パワーになる。 しかし、それは命中すれば、の話だ… 「゛スクリュードライバー゛!!」 「止めろ!!」 時既に遅く、平家の両足は枝から離れていた。 「?」 しかし、それは全くミチヨのいる場所とは見当違いの方向に向かっている。
「ははは…゛ハリケーン・ミキサー゛の食らい過ぎで頭がおかしくなったようですね」 ところが見当違いの方向に進んでいた゛スクリュードライバー゛が他の枝に激突しそうになった時、 信じられないことが起きた。 「ゲーーーーーーーッ!!!???」 光が反射するかのように、平家の゛スクリュードライバー゛が枝の所で方向を転換したのだ。 その後もめまぐるしいスピードで枝と枝の間を方向転換を繰り返しながら 飛び回り着実にミチヨのいる方向に向かっている。 「こ…これはもしや八丁跳び!!」 はたけは源平の闘いにまつわる一つの伝説を思い出していた。 鞍馬天狗…源平の合戦に参戦したとある武将に八丁跳びを伝授したとされる伝説の人物(?)だ。 その武将は壇ノ浦の戦いにおいて掟破りの船頭射ちを行い、動きの止まった敵の船の間を 単身跳び回って移動し、数多くの武将を討ち取ったとされる… その功績を恐れられ後に彼は悲劇的な最期を迎えることとなるがそれはまた別の話だ。 (この時代、戦闘に使われる船の船頭は近くの漁業民が請われて努めるもので、あくまで民間人なため 戦闘の際それを撃つことはしてはならないこととされていた と、関係の無い話をしてみる) そのとある武将とは確か… 「゛八丁跳び・スクリュードライバー゛!!!!」 それは完全に足が竦んで身動き出来ないミチヨにまともにヒットした。 「グ…グワァァ!!!」 「源義経やないか」 はたけのつっこみがミチヨの断末魔とほぼ同時に炸裂し、闘いに終止符が打たれた。
「平家…こいつのことはどうするつもりだ?警察に突き出すか……止めを刺すか?」 本来ならここで平家は止めをさしてやるべきだったのかもしれない。しかし、 「病院に運びましょう」 こう言うのが平家の人柄だった。はたけは表情を緩めた。 陽はわずかに西に傾いている。 「なんやろ…」 その太陽が時につれ光の面積を増してきている。 「なんか太陽でかすぎじゃないですか?」 今では余りのまばゆい光にはたけの姿もかすんでみえる。
「―――ちゃん…―――っちゃん!!!」 「あぁ!?」 顔を上げるとそこには各国の首脳、各種のマスコミが多数集まっていた。 「もう、みっちゃん寝てたら駄目じゃんか。明日の新聞載っちゃうよ!ほら、よだれよだれ!!」 そう言ってハンカチを差し出す相手の顔を見ると 「なんや、ウルフマンかいな」 安倍なつみだった。 「は?ウルフマン?なんのこと?」 いや、なんでもない、そう訂正しながら平家は思い出していた。 そう、私は今゛スーパーヒロイン゛後藤真希を称えるセレモニーに参加していたのだった。 しかし、居眠りする前には無かったはずの両肘両膝の無数の擦り傷、両腕の疲労感、 そして、源氏ミチヨのことも鮮明に覚えていた。 (あれは…夢なんかやない…) よだれを垂らしながらそう確信する平家。怪訝な表情でそれを見つめる安倍… これからも平家が源氏の幻影から完全に逃れることは出来ないのだろう。 だが、それに負けることはもう決してない。 それは完全な自信を持って言えることだ…しかし平家はまだ気付いていない。 八丁跳びスクリュードライバーは足場の無いリングの上では使えないということに。 ともあれこうして誰にも知られること無く20世紀最後の源平の合戦は幕を閉じた。
平家さんも終了
199 :
名無し娘。 : 2001/01/31(水) 21:39 ID:RFHbK6kI
おお3000万パワー!、ビバゆで理論! 次はカントリーだっけ? ますますキャラがわからん。 顔と名前くらいはわかるのだが。
200 :
174 : 2001/02/01(木) 01:26 ID:nElFIXm6
ロビンマスクの正式な超人強度は95万やね・・・すまん。 でも、初期のコミックでは96万になっていたんす。マジッス。 しかも三倍飛ぶって何やねん自分・・・。 平家VS源氏ミチヨ 面白かったッス。 次も期待してます。
201 :
Ver.Na : 2001/02/01(木) 06:43 ID:DM5nq716
フッ
カントリー娘。研究中・・・
>>199 ありがとうございます。
次はカントリー娘。・・・
かなり薄ら寒いことになります。
これまで以上に。時期的にあさみはまだカントリー娘。ではないし・・・
>>200 そうなんですか・・・
あの作者って本当に適当ですからね。
そういうところが面白いんですが。
感想ありがとうございます。
>>201 、、、
203 :
Ver.Na : 2001/02/02(金) 01:28 ID:0a38XUso
>>203 う・・・そういう書かれ方されるとこっちが一方的に間違ったようでかなり寒いことになる・・・
そう、『はっそうとび』ですよね?私もそうだと思ってたんですが確証はなくて
私が調べたところによると↓
http://www.asahi-net.or.jp/~pk3k-iszk/ ここの壇ノ浦の合戦について書かれた部分に
> この戦いにおいて、義経は、平能登守教経の攻撃を逃れるようにかわし、
>いわゆる「八丁跳び」を見せたといわれています。
とあり、これを全面的に信用したんですが・・・
どうなんでしょう?二通り呼び方があるのか?それとも別物?
はっきり言えばどうでもいいんですが日本史は嫌いじゃないので少し知りたい・・・
205 :
名無し娘。 : 2001/02/02(金) 09:27 ID:ee.kHjJI
>>204 八艘飛びとも八丁飛びとも言うみたいだよ。
意味的には「八艘」飛びなんだろうけど
相撲には八双飛びってのもあるみたい。
206 :
Ver.Na : 2001/02/03(土) 00:50 ID:.Ny0lao6
フッ 「八艘飛び」>「八丁跳び」
>>205 なるほど・・・二通りの呼び方があると。
と言ってももともと伝説上のことだから
当時の人が名付けたものじゃないんでしょうね。
はっそうとびで変換すると八双飛びになりますね。
>>206 でしょうね・・・
>>205 なるほど・・・二通りの呼び方があると。
と言ってももともと伝説上のことだから
当時の人が名付けたものじゃないんでしょうね。
はっそうとびで変換すると八双飛びになりますね。
>>206 でしょうね・・・
今度は徹底的に寒い
天下一武道会外伝3 〜カントリー娘。〜 あさみの花畑牧場日記
1999年 4月 はじめまして。木村麻美です。 中学を卒業してここ、『花畑牧場』で働くことになりました。 といってもここには小学生のころから犬ぞりの特訓のために来たりしていて、 顔見知りの人が沢山います。 花畑牧場は4月中旬まで冬休みなんですが、その間私達は搾乳をしたり、乗馬をしたり、 犬ぞりをしたり、ディスクドッグをしたりして過ごしています。 特に私は犬ぞりが好きで、花畑牧場でも毎年1月頃犬ぞりの大会が開催されていて、 毎年その頃になると毎日夕方暗くなるまで練習しています。 世界チャンピオンになるのが夢です。 それから、花畑牧場には『カントリー娘。』っていうグループの人達がいて、一緒に働いています。 小林梓さんと柳原尋美さんと戸田鈴音さんの3人です。私も搾乳とかはここで働く前までは したことが無かったので一緒に勉強しているっていう感じ。 小林さんはきれいだし、柳原さんは明るいし、戸田さんは馬がとても好きみたい。 7月にCDを出すらしくて、いつも牧場にいるわけでは無いんですが、仲良しです。
1999年5月 カントリー娘。のみんなはCDの準備のために月の半分は東京に行っていて、帰ってくるといつも東京の話をしてくれる。 あさみは北海道の田舎のほうでうまれたので東京には行ったことが無いからとても嬉しい。 小林さんは東京でロボットと話をしてきたらしいし、柳原さんは宇宙人を見て来たらしい。 戸田さんによると東京にはなんでもあって、車も電車も全部宙に浮いているらしい。 いつかあさみも東京に行ってみたいと思った。 小林さんはなにか悩み事がありそう。私でよかったら話して欲しい。 子供だから相談されても困るかもしれないけど… 柳原さんは車が運転出来るから、こっちにいるときは移動が楽。 それにすごく明るいから、一緒にいると楽しい。 戸田さんは柳原さんの次くらいに好き。 馬がすごく好きで、競馬場の受付のおねえさんになりたいとも思ったことがあるらしい。 あさみはというと、毎日朝早く起きて、畑仕事や動物の世話をしてる。 牧場には馬や牛や犬やうさぎ、にわとり、羊がいて、今度はヤギも来るらしい。 仕事は大変だけど毎日がすごく楽しいから、一度もやめたいなんて思ったことはない。 それに牧場では自家製のパンや、チーズなんかを出していて、それがとってもおいしい。 「今まで食べてたパンとかチーズってなんだったの?」っていう感じ。 毎日パンだとご飯が欲しくなるんだけど、ここではそんなこと思いません。 ぜひ皆さんにも食べて欲しいです。
1999年6月 今月は私がここに来て初めて牧場破りが来た。 北海道の牧場ではこういうことが時々あって、もしその牧場破りに負けることがあると、 牧場の看板を持っていかれてしまうらしい。 牧場破りは仲間を二人も連れて来ていて、あさみがびっくりして何も出来ないでいると、 カントリー娘。の戸田さんが一歩前に出て、 「今は田中さんもいないのでいる時にもう一度来て下さい」 って言ったんだけど牧場破りは聞かなくて、無理矢理看板を持っていこうとした。 すると仕方なく戸田さんが相手をすることになったんだけど、 その前に何か契約書みたいなものにサインをさせていた。 あさみは後で教えてもらったんだけど、その契約書には、 「もし負傷したとしてもその程度の大小に関わらず、全責任は私自身にあります」 って書いてあったらしい。最初あさみは意味が分からなかったんだけど、 「死んでも全部私のせい」っていう意味なんだそうです。少しびっくりしたけど、 その後の戸田さんの強さにはもっとびっくりした。私に「下がっていろ、シューマイ」と言うと、 「かいてんりゅうびきゃく」っていうキックで簡単に牧場破りをやっつけてしまった。 道場破りは領毛あゆみっていう人で、戸田さんと同い年くらいの女の人。 今月はこれが一番大きなニュースでした。来月は牧場破りが来ないといいな。
214 :
Ver.Na : 2001/02/03(土) 23:43 ID:.Ny0lao6
フッ
215 :
名無し娘。 : 2001/02/03(土) 23:56 ID:9bnyJQmk
就職先見つかるといいね
216 :
名無し娘。 : 2001/02/04(日) 16:44 ID:KsQLZ1Mc
今度は中華麺路線ですか? 手から虎とかだしたりするのかにゃー
>>214 、、、
>>215 はあ?
>>216 そこまでいくつもりはないです・・・
ちなみにあさみの花畑牧場日記は実在します。
花畑牧場のサイトへどうぞ・・・
内容は本人達が書いたとは思えないほど宣伝丸出しの内容となっております。
短いし。
1999年7月 今月は、とても悲しいことが起こりました… デビュー曲のレコーディングも終わって、CDの発売もあと一週間後になって、 そんなカントリー娘。のみんなが充実していた7月16日、柳原尋美さんが亡くなりました… 柳原さんは主に畑仕事担当、小林さんと戸田さんは主に酪農の担当で、 あさみも主に酪農の担当だから仕事の時はそんなに一緒になることが無かったんだけど、 仕事中に車の事故で急に…いつも通り朝挨拶して別れてあれが最期になるなんて 全然思ってなくて、最初聞いたときは冗談としか思えなかった。 だって、柳原さんは一番明るくて、すごい頑張りやさんだったから… 田中さんも急遽牧場に戻って来て、戸田さんも小林さんもあさみも涙が止まらなかった。 その翌日通夜が終わると、小林さんが牧場から消えていた。 公道を運転するわけじゃないからと思ってシートベルトをしていなかったのが こんな悲しいことになった原因だって警察は言ってたけど、 私とりんね(今度からこう呼びます)さんだけは分かってしまったんです。 柳原さんが事故を起こしたところに目立たないように落とし穴が掘ってあったのを見つけたんです。 その落とし穴に落ちて柳原さんは…最初戸田さんは小林さんを疑おうともしてましたけど、 私はそうは思いません。もしかしたら先月の道場破りの人が… でも、今はただ、柳原さんのご冥福をお祈りします。 P.S デビュー曲「二人の北海道」は予定通り発売されました。 歌手になるのが夢だった柳原さんの最期の歌声がつまっています。 みなさんにぜひ聞いてほしいです。
1999年8月上旬 私はどうしてこんなにドジなんだろう。 りんねさんの前で、もしかしたら6月に来た道場破りが犯人じゃないかって口を滑らしてしまった。 そうしたらりんねさんは一気に表情が変わって、あの道場破りを探しに牧場を出て行こうとした。 私があとを追いかけて外に出ると、りんねさんは見覚えのある人たちと一緒にいた。 モーニング娘。の石黒彩さんと安倍なつみさんと飯田圭織さん。 あさみもテレビで見たことがある人たちだったからすごくびっくりした。 りんねさんはこの人達と知り合いらしい。りんねさんは本当にすごい。 安倍さん達は、「あいつを探すのは私達に任せて、りんねは牧場を守れ」というと、 バラバラの方向に走っていった。 りんねさんは「しょうがない」という感じで牧場に戻ったけど、 仕事に身が入らないみたいで、牛の糞掃除の時、何回もうんこを踏んでいた。 少し心配。 小林さんもあれから何も音沙汰が無いし、こっちもすごく心配です。 P.S りんねさんに歌を聴かせてもらった。 すごく感情がこもっていて上手で、感動した。でもりんねさんは少し寂しそう。 やっぱり3人で歌いたかったのかな。
1999年8月下旬 8月も終わりに近くなった頃、あさみが大好きな犬とディスクドッグの練習をしていたとき、 モーニング娘。の安倍さんたちが牧場に来た。 あの牧場破りの領毛あゆみっていう人が見つかったというのでりんねさんは ファームショー中の馬にまたがると 牧場は営業時間なのに風のように職場を出ていってしまった。 あさみは安倍さんたちと一緒に走ってりんねさんを追いかけた。 あさみは毎朝5キロくらいはジョギングをしているから負けないと思っていたのに、 モーニング娘。の人達はぐんぐん私を引き離して行った。テレビにでている人はすごい。そう思った。 やっとあさみも領毛あゆみのアジトに着いた時、りんねさんはもう領毛さんやその子分達をみんなやっつけていた。 でも、領毛さんが言うには、領毛さんは犯人じゃないらしい。 北海道には皇帝っていう偉い人がいて、カントリー娘。が有名になるのを恐れて柳原さんを… あさみは信じられなかったけど、りんねさんはそれを信じて牧場に戻った。 りんねさんは皇帝と戦うつもりなのかな…あさみにはりんねさんが何を考えているのか、 分からない。怖くて、そのことは聞けない。 P.S 小林さんから手紙が来ました… プライベートなことだから詳しくは書けないけど、 「精神的に疲れたから、脱退する」そうです。りんねさんも寂しそうでした。
1999年9月 りんねさんはもしかしたら皇帝と戦うつもりなのかな… そう心配に思っていましたけど、どうやら、その気は無いみたい。 毎朝早く起きて一緒に仕事をしたり、乗馬やディスクドッグをしたりしている。 あさみもほっとひと安心。もう誰かがけがしたりするのは見たくない。 りんねさんも時々笑顔を見せるようになりました(時々厳しい顔になる時もありますけど…) 11月には新しいCDを出すことも決まって、時々東京にも行ってる。 でも、前と違って仲間がいないから大変だって私に言ってくれました。 あさみがふと「でもりんねさんは歌も上手だしすごく強いし、うらやましい」 って言ったら、りんねさんは教えてくれた。 「花畑牧場には沢山の犬がいる。でもその一匹一匹に違う役割がある。シッドはニュージーランドで 数100匹の羊を追っていた牧羊犬だし、ファンタみたいにディスクドッグが得意なフリスビー犬 もいれば、あさみが得意な犬ぞりのそりを引いてくれる犬もいる」 人間も同じで、一人一人役割がある。だからりんねさんは私に犬ぞりを頑張れって 言いたかったんだと思う。なるほどな、と思った。 りんねさんは優しくて歌が上手なだけじゃなくて、とても頭がいい。
1999年10月 10月。この月が終わると花畑牧場は4月中旬まで長い冬休みに入る。 営業は10月31日までです。みなさんとあえなくなるのは寂しいですけど、 私達は来年4月の営業開始を準備を万全にして待っています。 休みの間も牧場ではチーズやバター、あとはハムやソーセージとかも作っていて、 全国有名百貨店で発売しています。 中でも「トム・ド・花畑」っていうチーズはチーズの有名な賞を受賞したりしているけど、 りんねさんに食べ物は何が好きか聞いたら、「メン類」だそうです。 やっぱりりんねさんは札幌出身だけあってコーンやバターが入ったラーメンが好きなのかな。 あさみはここで出しているトムチーズが好きだし、チョコレートやさくらんぼ、スイカとかが好きです。 あと冬休みに入ったら、りんねさんは犬ぞりに挑戦したいそうです。 あの悲しい出来事を忘れたわけではないけど、りんねさんに犬ぞりを教えられるのが楽しみです。 出来たら2月初めに行われる大会にも参加したいらしくて、乗馬もすぐに上手になったりんねさんなら ちゃんと練習すればきっといいところまで行けると思う。私もりんねさんに抜かれないように頑張りたい。
223 :
Ver.Na : 2001/02/04(日) 23:09 ID:LYM.ip5I
フッ
2000年11月上旬 柳沢さんのことがあった時に一緒にいなくなっていた小林さんの行方が分かりました… それというのも、あの憎い皇帝からこんな手紙が届いたから。 「お前たちの元仲間、小林梓は預かった。今月中に助けに来なければ 裸にして写真を撮ったり写真集を出版したりしてやるぜグェヘヘヘ…」 すごく変態的な手紙であさみは吐き気がした。しかもこの人…こいつは、柳沢さんの仇なんだ… きっとこいつは今月末に発売される予定の新曲『雪景色』の発売を邪魔したいんだ。 それはあさみにも分かった。こいつは絶対罠をしかけて待っているに決まっている… 忘れかけていた、いや忘れようとしていた柳沢さんのことをりんねさんは完全に思い出した。 りんねさんはすぐ田中さん宛てに置き手紙を書くと、(こっそり差出人にあさみの名前もつけたしておいた) 同じ北海道出身の仲間、石黒彩さんと飯田圭織さんと安倍なつみさんを呼び寄せて修行に入った。 少し驚いたのはどこから聞きつけたのか領毛あさみさんも駆けつけてきたことだった。 「これで北海道の拳聖五歌仙勢揃いだ」 とか訳の分からないことを言いながら。みんなは最初領毛さんを無視していたから領毛さんは 私に話しかけてきた。領毛さんはいつか他の拳聖五歌仙に並ぶのが目標らしい。 いつか同じ舞台に立ってやる。とも言っていた。その時の目はとても真っ直ぐで、 悪い人には見えなかった。 あさみはというと勝手に牧場を抜け出して来てしまって、犬ぞりどころじゃない。 でも後悔はしていません。 ただ、――田中さんごめんなさい――
1999年11月下旬 (前) 特訓のせいもあって、拳聖五歌仙のみんなは勿論、あさみもかなり強くなった。 りんねさんの「かいてんりゅうびきゃく」も見よう見まねで使えるようになった。 でも、りんねさんによると、「生兵法が一番危ない」らしい。生兵法の意味は分からなかったけど、 「調子に乗るな」と言ってくれているということは分かった。 飯田さんは「どくしゅ」安倍さんは「かいてんあんざんこ」石黒さんは「さんだんりゅうせいきゃく」 そして領毛さんは「しょうこくろうごく」それぞれ必殺技を考え出して皇帝のもとに向かった。 皇帝の呼び出した場所に着くと、思った通りわなが仕掛けてあって、沢山の敵が待ち伏せをしていた。 「おれたちのことは気にするな!先に行けーーー!」 という安倍さん達の言葉に甘えてりんねさんとあさみが先を急ぐと、皇帝の部屋についた。 皇帝は見るからに嫌いな顔で、見るだけで寒気がした。
1999年11月 (後) りんねさんは「やめろーー!!お前にも妻と子供がいるのだろう!!!」と言うと、 「めいだつほうかいけん」という技で皇帝を殺した。 りんねさんは「仕方が無かったのだ…」と言いながらとても寂しい顔をしていた。 あさみが皇帝の死体を蹴って恨みを晴らしていると部屋の奥から小林さんが現われた。 りんねさんは無事だった小林さんにカントリー娘。に戻るように言ったようだけど、 小林さんは何も言わずにふるさとの千葉に帰ってしまいました… 外で皇帝の子分たちと戦っていたみんなも無事で(領毛さんはかなり疲れていたけど)、 みんなで牧場に戻った。 そしてその日は一緒に牧場で食事をしてお風呂に入って寝て、 次の日にはそれぞれの場所へと帰っていった。 りんねさんは皇帝を倒したこの日から北海道では『美来斗利偉(ビクトリー)りんね』 と呼ばれることになったけど、何も無かったかのように翌日から新曲の宣伝のために 東京に行ってしまった。 残念だけど、犬ぞりの練習はまだしばらく一緒には出来なさそうです。 P.S 石黒さんは 「俺にとってこれは拳聖五歌仙として最後の戦いになるだろう。後はお前らに任せるぜ」 と言っていました。どういうことなんだろう。
1999年12月 あさみにとって嬉しいけど、少し寂しいニュースがありました。 りんねさんが東京でテレビ番組の司会をすることに決まったんです。 同じ拳聖五歌仙の飯田さんと二人で、様々な修行をする番組なんだそうです。 りんねさんも「ウム…私の行いが認めてもらえるのは光栄なことだ」と、 まんざらでもなさそうで、あさみも一緒に喜びました。 でも、やっぱりますますりんねさんと一緒の時間は短くなるのかな… そう思うと、胸が「きゅん」となる。 一回目は『こんにちは計画演舞会』の裏側を取材しに行くのだそうで、 「私自身の井の中の蛙ぶりをとことん知っておくにもいい機会だろう」 と、とても意気込んで牧場を出て行きました。 あさみはと言うと、毎日犬ぞりの練習をしているのは勿論、 りんねさんがいないぶんも仕事を一生懸命しているし、 勝手に仕事を休んだ埋め合わせの為に3倍は頑張っているつもりです。 それにここでは営業中毎日ファームショーというものがあって、 お客さんの前でディスクドッグをしたり、牧羊犬と一緒に羊飼いの実演をしたり 乗馬のインストラクターをしたりするんですけど、 早く一人前になってみなさんの前で出来るようになるためこういうことの練習をしたり、 とても充実した毎日を過ごしています。 P.S 拳聖五歌仙の一人だった石黒さんがモーニング娘。を止めてしまうそうです。 あさみはびっくりしたけど、りんねさんは余り驚いていなかった。 りんねさんには分かっていたみたいです。 おまけ クリスマスには毎年恒例のディナーショーが開かれて、忙しい中りんねさんも歌ってくれました。 とても楽しかった。みなさんにもぜひ来てほしいです。
やっぱり反応は皆無か… 自分でもかなり寒いしな… 一応、領毛あゆみはシェキドルの北上アミの本名です つっこみがあったら答えようと思ってたけど どうせ無いだろうから
230 :
名無し娘。 : 2001/02/06(火) 01:38 ID:s5gwT4Lw
ちゃんと読んでるよー。
個人的には
>>226 とか
>>227 のくだりは爆笑なのだが
一般的な人がどれほどわかるかは確かに心配。
ところであさみって本当にカントリーに入る前から牧場にいたの?
>>230 途中まで書いて気付きました
225は1999年の間違いだし、
あさみが働き始めたのは2000年3月からです
出鱈目もいいところです
この通りだとあさみは今高二ということに・・・始まった時からミスを犯してました
そうか・・・一般性も無いのか・・・ありがとうございました
あ、そうだいい言葉があった これはパラレルワールドです
233 :
Ver.Na : 2001/02/06(火) 02:12 ID:9vwUrFHU
フッ
234 :
名無し娘。 : 2001/02/06(火) 17:27 ID:LtEAT0uA
楽しく読んでるよ。 ラーメンマンネタはきついと思うけど。
235 :
名無し娘。 : 2001/02/06(火) 21:54 ID:s5gwT4Lw
236 :
マングース西浦 : 2001/02/07(水) 03:31 ID:iK2XAOAo
>>233 、、、
>>234 ありがとうございます。
やっぱりきついですか・・・
私自身よく知らないのでラーメンマンネタはあくまで
スパイス程度にしているつもりなんですが・・・
>>235 そ・・・それは基礎どころか・・・
というかキン肉マンだけじゃなくて
そっちも再開してたとは・・・全く知りませんでした。
いつまで続くんだリバイバルブーム・・・
237 :
マングース西浦 : 2001/02/07(水) 03:32 ID:iK2XAOAo
>>233 、、、
>>234 ありがとうございます。
やっぱりきついですか・・・
私自身よく知らないのでラーメンマンネタはあくまで
スパイス程度にしているつもりなんですが・・・
>>235 そ・・・それは基礎どころか・・・
というかキン肉マンだけじゃなくて
そっちも再開してたとは・・・全く知りませんでした。
いつまで続くんだリバイバルブーム・・・
238 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 10:44 ID:8o3pTNpg
>>236 >>237 マジレスだけど、あれは現在連載中と仮定するネタスレですよ。
しかし、粗筋かいてあるだけなのになんであんなに面白いんだろう。
ガンダム、ホーガン最高。関係ない話でごめん。
次はどうなるの?新たな大会が始まるのか、
放置されているココナツ娘の話になるのか。謎は深まるばかりです。
>>238 あ、気付かなかった・・・
しかしマニアックな・・・4巻くらいまでしか見たことないから
よく知らないんですよ実は・・・
次は・・・
2000年1月 正月、りんねさんは『こんにちは計画演舞会』に行っていていなかったんだけど、 あさみは実家に帰って初日の出は見たし、初詣はしたし、初夢を見た。 初夢はあさみより大きな蜂に追いかけられる夢だった(正夢になりませんように…) 今年は思いっきり正月してるって感じで、とてもリフレッシュ出来ました。 ありがとう。 それから2月に開かれる犬ぞりの大会にりんねさんが出場することになりました。 りんねさんが東京でやっている番組の中で修行のひとつとして放送するらしいんですが、 飯田さんはモーニング娘。の仕事が忙しいからと出場はしないそうです。 りんねさんは番組とかそういうことは意識せずに時間が無い中で精一杯のことをしています。 さすがのりんねさんという感じで、見る間に上達していくのが分かる。 時々転んで引きずられたりしても立ち上がって復帰したりするのはすごい。 あさみも根性では負けないつもりだけど、時々敵わないと思ったりもする。 とにかく、来月が楽しみ。
2000年2月 今月は犬ぞり大会があった月。 結果から先に言うと、あさみは六頭引きの部で優勝したんだけど、 りんねさんは練習期間が短かったせいもあって犬との意志の疎通が上手くいかなくて 犬がみんなバラバラの動きをしたりしたせいもあって、 何回も転んでしまって残念な結果に終わってしまった。 勿論あさみは嬉しくなかったわけはないけど、 りんねさんが他人の目も気にせずに泣き出してしまったのにはとても驚いた。 北海道を代表する武術家でも、やっぱりまだ19歳の女の人なんだな、と思った。 でも最後にあさみに約束してくれました。来年もきっと出場してくれるそうです。 大会の興奮もまだおさまっていなかった大会の翌日、りんねさんは驚くべきことを私に話した。 実は東京では毎年「てんかいちぶどうかい」というものが開かれていて、 それには拳聖五歌仙のりんねさんと領毛さん以外の三人も出場している。 しかも、あの強い安倍さんたちですら一回戦を勝ち進むのも難しいほどハイレベルな大会らしくて、 りんねさんはそれに出場したいらしい。 その為にりんねさんはその大会があるという4月に向けて北海道拳聖五歌仙の歌の準備を始めた。 タイトルはもう決まっているらしい。 『北海道舎羅雷』 完成したらみなさんにも聞いてほしいです。
2000年3月 あさみがこの花畑牧場で働くようになってちょうど一年が経った。 楽しいことや嬉しいことも、悲しいことや辛いこともあったけど、 そんなことを全部すっかり洗い流してしまうほど北海道の風は澄んでいて、毎日がとても新鮮です。 花畑牧場では来月の営業再開に向けてあさみも、 りんねさんも従業員一同のみんなも全員が気を引き締めています。 営業が再開したらぜひ一度足を運んで、私やりんねさんが絞った牛乳や、それで作ったチーズを みなさんにも食べてほしいです。チーズは花畑牧場のチーズ工房で一つ一つ丁寧に手作りしていて、 こちらまで足を運ぶのが大変な人にも大丈夫なように全国の有名百貨店で小売りも行っています。 カントリー娘。がりんねさん一人になってから2枚目のCDは来月に発売されます。 なぜかタイトルは『北海道シャララ』に変わってしまったけど、予定通り発売になります。 そしてこの曲が出来たらりんねさんは東京に…あさみも一緒に行きたかったけど、 あさみはまだ修行が足りないらしい。 あさみにはやっぱり犬ぞりを頑張ってほしいみたい。 東京までは一緒に行けないけど頑張って来てほしい。
243 :
名無し娘。 : 2001/02/08(木) 01:55 ID:iSD61pwc
シューマイがんばれ。
244 :
Ver.Na : 2001/02/08(木) 07:22 ID:alGtFsK6
フッ
2000年4月上旬(1) 思ってもいなかったことが起こりました。 りんねさんが殺したはずの皇帝がまだ生きていたんです。 なぜそれが分かったかというと最近りんねさんはパソコンを始めたのですが、 「Dear りんね 皇帝を倒した美来斗利偉りんねとか呼ばれていい気になっているらしいな。 だが、お前もそれまでだ。私は生きている。今度は俺様がお前にビクトリー して美来斗利偉の名前は俺様がいただくぜカカカカカ… From皇帝」 こんな下らなくて笑えるメールが4月初めに届いたからです。 「手紙からメールに進化したことは誉めてやるがこいつが 生きていては安心して東京には行けない」 りんねさんはこう言って今度こそ決着をつけると決意しました。 それからこのメールが届く少し前にに領毛さんが牧場に来て、 あさみは一瞬また牧場破りに来たのかと思ったけど違って、 今度は一人仲間を連れていました。その人は大木衣吹という人で、 小林梓という人に力になるように頼まれて千葉からわざわざ来たらしい。 小林梓…あの元カントリー娘。の小林さんと同姓同名だけど、同じ人なのかな…それは分からないけど、 とにかく領毛さんは 「こいつと一緒に俺もすぐに東京に行ってやるぜ。首を伸ばして待ってろよ」 と言っていました。 前から思っていたけど領毛さんは余り頭がよくなさそうです。
2000年4月上旬(2) まず最初に領毛さんと大木さんが私達に「今回お前らの出番は無いぜ」と言いながら皇帝のところに向かった。 あさみたちが二人の帰りを遅いなと思いながら待っていると、また下らなくて笑えるメールが届いた。 「りんねへ 仲間の二人は預かった。助けに来ないとこいつらはたいせープロデュースで デビューさせてやるぜカラカラカラカラ… 皇帝より」 意味が分からないけど領毛さんたちがつかまってしまったことは分かった。 りんねさんは 「し…しまった!彼女らを思って手柄を立てさせようとしてやったことが 彼女らを捕らわれの身にする結果になってしまったーーー!!」 と言いながら牧場を飛び出して、あさみがやっと皇帝のところについた頃には 皇帝はもうりんねさんの「きゃめるくらっち」で殺される寸前に見えた。 なのに皇帝は突然体をグニャっと曲げて「こうていなんたいがえし」と言いながら りんねさんを投げ飛ばしてしまった。 りんねさんはそれで気を失ってしまって、皇帝はあさみに近づいてきた。
2000年4月下旬(3) 皇帝があさみに近づいて来て、あさみはすごく怖くて目をつぶった。 心の中で「助けて!!」と祈っていたのを覚えている。 ついに皇帝の足音があさみのすぐ近くにまで来た時、皇帝の悲鳴が聞こえた。 あさみは何が起こっているのか分からないし怖くてずっと目をつぶっていると、 いつの間にか音が止んでいて、その時誰かに肩を叩かれて、びっくりして振り返ると、 そこにはりんねさんがいた。りんねさんは「みごとだ、シューマイ」と誉めてくれたけど、 あさみには何がみごとだったのか分からないし、なんで皇帝が傷だらけで死んでいるのかも分からなかった。 領毛さん達も無事だったけど、このせいでりんねさんは天下一武道会には間に合わなくなってしまった。 それでもりんねさんは新曲の宣伝のために東京に行った。 営業再開まで戻って来られるかも分からないらしい。 戻ってきた時に困らないようにりんねさんの分も頑張りたいと思う。
こうして北海道に一応の平和が戻ったが、 この翌月にはカントリー娘。主演のカンフー映画の撮影が始まる。 ただ、この時カントリー娘。というユニット名はりんね個人を指すものでは無くなっていた。 戸田鈴音、木村麻美二人組のカントリー娘。として、初の映画主演に望むことになる。 この短い間に何があったか…りんねが東京で何をしたか… それはまた別の話。 そして大木衣吹、領毛あゆみ改め北上アミの二人組「シェキドル」がデビューするのは それからさらに約一ヶ月後のことだ。
終了しました
天下一武道会 〜第二部〜 『マキ』
―― 序章 ―― 『シンクロニシティー』それは『信じられない偶然の一致』を意味する言葉である。 哲学界に例を求めるならば、限界効用革命の中心となったエヴァンス、マーシャル、 メンガー、ワルラスの゛4人の天才゛などがあげられだろう。 何の接点も無かったこの国籍もそれぞれ違うこの四人は、19世紀末、ほぼ同時期に同じ学説を立てた。 また、筆者の個人的な経験を述べるならば、例えば2000年4月頃、ASAYANというTV番組において モーニング娘。の第三次追加メンバーオーディションを見ていた時、私は始めて「石川梨華」という 当時15歳の高校一年生の少女を見た。その時テレビを見ていた私とつんく氏の魂はひとつとなり、 彼女を合格へと導いたのである。 これ以降も、私はつんく氏と魂が同化した経験をいくつか持っている。 その度ごとにりかっちはチャ−ミー石川というポジションを得たり、ソロパートを得たりしてきた。 そして2001年5月、前回の第三回天下一武道会からほぼ1年がたったある日、 最大のシンクロニシティーが起ころうとしている。 それともこれはただの必然だったのだろうか。 ともあれ、何かに導かれるように゛スーパーヒロイン゛後藤真希は天下一武道会の会場に来ていた。
「だ…脱獄だと!?」 都内にある、とある牢獄兼研究施設に深刻な声が響いた。 この施設に゛実験動物゛として集められていた4人の宇宙人が脱走したという。 その4人はそれぞれ柴田あゆみ、村田めぐみ、斉藤瞳、大谷雅恵という名前があったが、 この施設の中では1,2,3,4という認識番号でしか呼ばれたことは無かった。 「ば…馬鹿な…こんなことが…」 4人はほんの少しの隙をついて脱走したため施設内の研究員にとってはただの不注意としか 思えなかったが、実際は4人は何ヶ月も前から綿密に練った計画を実行したというただそれだけのことだった。 「ふざけやがって…」 憤慨する村田。約一年前、後藤真希を称えるセレモニーに乱入した4人はそのまま取り押さえられ、 保護施設に送られた。にわかには信じがたかったが、4人が搭乗していた宇宙船を見た時、 誰もが彼女らが本当の宇宙人であると信じないわけにはいかなかった。 その事実が彼女らに対する感情を警戒心を通り越して恐怖に変えるのは早く、 4人は保護を名目として研究施設に送り込まれた。 「行きましょう…」 なぜかバレリーナ戦隊メロンの4人の頭の中には同じ目指すべき場所が示されていた。
「東京…」 あさみにとってこれは既に初めての東京では無かったが、何度来ても東京の空気の不透明さに 慣れるということは無かった。 カントリー娘。の二人として既に「恋がステキな季節」という曲も発表し、 これからも活動範囲を増やすというのが今回の目的だった。 前回゛スーパーヒロイン゛後藤真希を称えるセレモニーにりんねが単身乗り込んだ際、 りんねはまだ北海道ローカルの戦士でしかなく、誰の目にも止まることはなかった。 あの時の屈辱をりんねは忘れていない。 そして修行の一環として、良き相棒でもあるあさみをも伴ない東京に降り立った。 すでに目指す場所は決まっていた。 「行こうか…」 そう言ってりんねはタラップに一歩を踏み出した。
後藤真希を称えるセレモニーにおいて、日本侵攻を宣言したココナッツ娘。の4人組ではあったが、 その後何度も日本の『神風』に上陸を阻まれ、今日この日まで待たされた。 その分4人のフラストレーションははちきれんばかりの戦意へと変化している。 船内でダニエルデラウニーはサンドバックを叩き、レフアサンボは「座禅」をし、 ミカトッドはシャワーを浴びアヤカキムラは読書と、思い思いのことをしながらも、 頭の中では全員が同じ場所を頭に浮かべていた。
「シンクロニシティー…」 先に会場に着いていたマネージャーからの説明を受けて後藤は呟き、続いて見慣れた人影に気付いた。 「あ、裕ちゃん相変わらず早いね」 後藤に続いて会場入りしたのは中澤だったが、それに続いてモーニング娘。の現メンバー、 そして既にモーニング娘。でない3人も会場に到着した。何かに導かれるように… 「あやっぺ、子供の世話はいいの?」 「大丈夫。ちゃんと預けてきたからさ」 そのすぐそばでは矢口と福田が談笑している。 新メンバーの4人にとってそれは初めて見る光景だったが、 その光景に見慣れたメンバーが次々加わってくる。平家みちよ、元太陽とシスコムーンの面々、 カントリー娘。の二人、前田有紀、シェキドルの二人、そしてココナッツ娘。 最後にそこにバレリーナ戦隊メロンが到着したとき談笑は止み、31の視線はマネージャーに注がれた。
「またくじ引き?」 そう尋ねたのは中澤裕子だったが、その予想は外れた。 「今回は、前田光世方式を採用します」 前田光世…この伝説の空手家が考案したと言われる決闘方法で、 指定された街の中をを別々に自由に徘徊し、出会ったところで雌雄を決する。 相手と出会わないまま数週間が過ぎてしまうこともあるという。 単純明快なほぼノールールと言っていい方式ではあるが、それを彼女らがやるのには問題がある。 「でもそれって野次馬とか大丈夫なんですか?」 福田明日香の質問はただ単に野次馬の心配だけでなく、今をときめくモーニング娘。が街中を 歩けば様々な問題が生じるだろうということを見越してのものだった。 「心配はありません。今回はそれ専用の街を用意しました」 それ専用の街…つまり、人里離れたところにオープンセットのようなものを作り、そこが 一つの街として機能しうるほどの数のエキストラを配置している… 「そんなお金どっから出てきたわけ?何億どころのお金じゃないでしょ!?」 矢口の質問に答えが与えられることは無かった。
ただ、街中の到る所にカメラが設置されており、エキストラの中には純粋に住民としての役割をする 者だけではなく、中には小型カメラを持ったカメラマン役の者もいれば、審判の役割を持ったものもいる ということが付け加えられた。 「そして、ここからが大事なのですが」 というセリフに続いて、幾つかの注意事項が示された。 その「街」は半径6キロの円形の敷地となっているということ、そして、一日ごとに半径1キロぶんづつ 外側から立ち入り禁止とされていくということ…つまり6日以降には半径1キロ内でしか行動が出来なくなる。 また、ユニット対抗戦の意味も持っている為、もし誰も欠けること無く全メンバーが残った ユニットはそのユニットのメンバー全員を優勝者とする。 無論、このルールでは人数の多いモーニング娘。は不利ということになる。 だが、そこに対して不平を言うものはいなかった。誰もが自分が優勝者になれるという自負を 持っていたからかもしれないし、話が長くてよく分からない者もいただろう。 「亜依 ちゃん、 話 わ かった?」 「ん〜ん…多分最後まで残ればいいっていうことやと思う」
「それではみなさんに大事なカードをお渡しします。このカードは2万円ぶんのプリペイドカード として、そしてこの「街」での身分証明書としての役割を持つことになります。 そしてこのカードを奪われたものはその時点で負けということになります」 「なるほどね…」 思ったより薄くペラペラとしたそのカードを陽の光にかざしながら市井はつぶやいた。 「ねえ…紗耶香、一緒に行動しない?」 市井に後藤は声を掛けたが、すでに先約があるという…この時点で吉澤という選択肢もあったはずだったが、 市井に断わられたショックでそれは思い付かなかった。 「それでは、会場の「街」に向かいます」 それぞれ違った面持ちで、31人は会場へと向かうバスへと乗り込んだ。
「す…すごいよ…」 会場となる「街」はオープンセットなどと呼べる域を越えていた。 「街」の中央にある広場で一度一同は解散し、それから一時間後、皆がバラバラに散らばったところで 試合開始のアナウンスが行われるらしい…が、その広場に向かう途中後藤の目に入ったのは、 駄菓子屋から風俗店まで、無いものは無いのではないかと思えるほどに普通の「街」だった。 ベビーカーに座った赤ん坊から、スーツを着た中高年までエキストラの年齢も幅広い。 そんな光景をつぶさに見ている間に、後藤は何かこれから始まることが楽しみなような、 ある意味異常な精神状態になりかたりもしたが、 後の席で遠足気分の二人組の騒ぎ声がそれを何度も引きとめた。 「あ、のんちゃん貴重品持ってきた?」 「う ん」 「のんちゃん、それは飴玉やがなー」 「あ は はー!」 「きゃー!!」
「それでは、1時間後に試合開始ということで…解散します」 後藤は一人で行動することに決めていたが、出来るだけ早く行動して有利な場所を確保しようとは 考えなかった。そんなことをしても意味が無いと思ったし、何より面倒臭かった。 後藤は皆がどのような行動を取りながらこの広場を出て行くのか漠然と観察していた。 ココナッツ娘。とバレリーナ戦隊とシェキドルはそれぞれまとまって会場を出ていった。 カントリー娘。とT&Cボンバーはばらばらに、残りは思い思いにグループを作って行ったり、 後藤と同じに一人で出ていった者もいたが、その組み合わせを覚えていられるほど後藤の頭は 優秀では無かった。 しかし、自分に対していくつかの刺すような視線があったことには気付いていた。 最後に後藤も会場を出て行き…1時間後に゛試合゛は開始された。
―― 一章 ―― 大通りを、どちらかと言えば大柄な女と、どちらかと言えば小柄な女が並んで歩いていた。 安倍なつみと、飯田圭織。生まれた日時も、場所もほとんど同じで、 モーニング娘。になった日時も、場所もほとんど同じな二人だった。 二人は普段それほど言葉を交わすことは多くは無いが、 二人の間には心のどこかに絆のようなものがあると本人達も、周りも思っていたし、 そういう「運命」というものを信じたがる二人だった。 だからこそ、言葉をかわさずにマネージャーがルール説明を行っているときにアイコンタクトを取り、 それだけで一緒に行動しようと二人は決めた。 「…結構歩いたね」 最初に飯田が口を開いた。 「ちょっと休まない?」 安倍はそう言ってガードレールを見た。二人はそれに寄り掛かるように腰を掛けると、 話し始めた。 「なっちはなんでここに来たの?別に断わることも出来たのに…」 『ここ』とはこの「街」のことを指しているのだろうか? 「何か…神様がここに来いって言ったような気がして…」 「かおりもそうだよ…」 しかし、ここに来たらまた闘わなければならない。そのことも承知の上だった。 「もしなっちとかおりが最後の二人になったらどうする?」 飯田の言葉に安倍は沈黙した。そして何かに気付いたような表情をすると、 「思ったんだけどさぁ、こんな大通りだと誰かに逢いそうな感じしない?」 質問がはぐらかされた格好になったが飯田もそう思い、二人は路地に消えた。
「どうして私がこんな…」 人気の無い裏通りを一人で歩いているのは前田有紀だった。 一緒に行動しようと思っていた飯田は前田には目をくれることもなく、 安倍なつみと一緒に行ってしまった。 (人をさんざんゆきどん呼ばわりしておいて…) 不満タラタラだったが、とりあえず出来ることは可能なだけ他人と合わないようにして、 潰しあいで勝手に人が減ったところで、漁夫の利を得るということぐらいな自分が情けなかったが、 それ以上の策は思い付かなかった。 (でも、大丈夫…) 師匠にあたる五木ひろしを頭に浮かべた瞬間、 ガァン! という音と共に後頭部にすさまじい衝撃が走った。 たまらず倒れた前田だったがなんとか後ろを振り返ると、そこに立っていたのはスラリとした 体つきの外国人だった。 (か…考えごとをしてて気付かなかったなんて…) その外国人は顔に薄ら笑いを浮かべながら右手に持っている鉄パイプでゆっくり肩を叩いている。 (え…英語で参ったってどう言う…) 咄嗟のことでギブアップも思い付かなかった前田がポケットに手を伸ばしカードを取り出そうとした瞬間… 鉄パイプが渾身の力で振り下ろされた。 「ハハハ…GUNヲトリダソウトシタノカトオモッタ」 前田のポケットの中からカードを発見したレフアサンボは鉄パイプに付いた血を舐めながらそう言って笑った。 (残り30人)
264 :
Ver.Na : 2001/02/10(土) 00:15 ID:tQGaVGZE
...
265 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 00:39 ID:0lFw/EKo
>こんな下らなくて笑えるメール ワラタ あと、結局皇帝をどう倒したのか全く説明がないのがらしい感じ 第二部 オホーッついにきたねバキネタッ! 俺はバキネタはいろんな板のネタスレ巡回してるほど好きなのだ。 +αでBR法もちょっと入ってるのかな。 誰が花山の役割かな、そしてドリアンさんは!?楽しみだ。 名勝負を期待する。
266 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 00:41 ID:.4vpvcio
えっと、、バトルロワイアル? 31人? めちゃくちゃ壮大ですな。。。楽しみにしてます。 とりあえず、モーニング再登場が嬉しい。
>>264 、、、
>>265 くだらなくて笑えるメールはお約束・・・
皇帝をどうやって倒したのかは一応これから出すつもりですけど
あまり期待しないで・・・
二部
死んだりするのは生々しくて嫌なので、
メインキャラが死なないバキと混ぜてみました。
ルールも一応オリジナリティのようなものを加えつつ。
悪役とか作らないで全員が主役のように書きたいんですけど・・・
そうすると話しが進まない。感想ありがとうございました。
>>266 確かに壮大・・・でも最初からこれがやりたかったもので。
だからこそわざわざ外伝とかでキャラを掴んだりしてました。
感想ありがとうございます・・・
268 :
名無し娘。 : 2001/02/10(土) 15:21 ID:I.pcS0v.
いよいよ集大成といった感じですな。 達人は誰がやるのやら・・・
269 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 02:05 ID:HjBeVGnY
バキは良く分からないけど、期待大。
270 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 14:42 ID:vY0FSJ1o
保田→花山で一つなんとか…。
271 :
名無し娘。 : 2001/02/12(月) 00:27 ID:PyK8Il8.
飯田さんはついにロボットから人間になたのでしょうか? 夜の公園編、学校編、地下隠れ家編、夜の遊園地編を期待してます(笑)
あーあ・・・妹の引越しの手伝いで休み3日パー・・・
収穫は日立のエアコンのパンフレットのみ・・・
>>268 ありがとうございます。達人は・・・
>>269 はっきり言って人数が違いすぎるので一緒にはならないと思います。
>>270 う・・・
>>271 、、、
人間な飯田さんなんて飯田さんではないと思っています。
さすがに遊園地はちょっと・・・
あ、日立じゃない、ナショナルか・・・ それより続きに取り掛からなくては・・・
274 :
名無し娘。 : 2001/02/13(火) 10:23 ID:SswNbBzs
市井→烈ということでどうかひとつ…。
275 :
マングース西浦 : 2001/02/13(火) 18:10 ID:lI3PCLjk
>>274 やっぱり烈を当てはめるならそうなると思います。
「ふーん…」 繁華街を見て歩いていた石黒彩は衣料品店を目に留め、足を止めた。 服飾の勉強を理由の一つにモーニング娘。の脱退をも決めた彼女だった。 新しい衣料品店を見掛けて一瞬とも足を止めるのは若い女性の本能とも言える習性だが、 石黒彩のそれは特に強い。 「…まあ…こんなものかな…」 どんな安物の服でも、その裏にあるデザイナーの影が見える。 それが石黒の誰にも出来ないが、自慢だった。しかし、この衣料品店の衣服には全くそれが見えない。 全く純然とした工業製品にしか見えなかった。 いくら「街」としての体裁は整っていても、こういったところは必要最低限か… そう思いさっさと店を出ようとした石黒は甲高い声を聞いた。 「これめちゃくちゃかわいくないですかー!?」 左右を見たがその甲高い声の持ち主以外には自分以外誰もいない。 どうやら自分が話し掛けられているらしいと察した石黒は とりあえずその甲高い声の持ち主の方向に向きかえった。そこにいたのはどちらかと言えば色黒な 普通の女子高生に見えたが、その手が持つ衣料品は全てショッキングピンクに染め上げられている。 「……」 石黒は言葉を失ったが、別に人の好みをとやかく言うことはあるまい… 第一エキストラとファッションセンスについて話をしてもしかたがないだろうと思い 「…いいんじゃないですか?」 そうだけ言ってその場を離れた。 こうして今大会における名字に同じ一字を持つ二人、石黒彩と石川梨華の最初で最後の対面は、 互いに気付くことすらなく終了した。 石黒彩は入れ物を見る能力には優れていたが、その中身を見る力は欠けていたのかもしれない。
昼下がりの裏通りを並んで歩く人影が二つ。 一歳年上の北上アミと、一歳年下の大木衣吹の二人組。 言わずと知れていない二人組ユニット゛シェキドル゛だった。 「いつまで歩くの!?疲れたんだけどー!」 「いいから!この大会が長期戦になるのは分かりきってる。 だったら最初は出来るだけ敵と会わないように街の中心から遠く離れて、 敵同士お互いに潰し合って数が減るのを待つのが賢いやりかたなの」 不満を垂れる大木に義務の様に説明的セリフを吐く北上。 ストレートに感情を表現する大木衣吹と臆病に限りなく近いほど慎重な北上アミは相性がいい。 そして、これまで大木は北上に頼ることが多かったが、それで大きな間違いを犯したことがなかった。 「でもさ、この街って半径6キロだよ!?めちゃくちゃ広いのに そんなすぐ知ってる人と顔会わせるはずないじゃん」 「……」 北上は一瞬納得しかけたが、足を止めた大木を振り返ると 「駄目!大は小を兼ねるって言うの聞いたことない?」 こう言った。 「…その使い方って正しいの?」 仕方なくもう少し歩くと観念し頭を上げた大木は前方に先程までは無かったはずの人影を見た。
「ダ……ダ…ダニ…」 「誰がダニだ…」 一瞬自分のことを言われたかと思った北上だったが、大木の視線は自分の後方に向いている。 振り返ったところにいたのはダニエルデラウニー、ココナッツ娘。の重量級メンバーだった。 顔には満面の笑みを浮かべている。しかし逆にそれが二人にとっては不気味で仕方が無い。 「ど…どうする?アミちゃん!?」 「ど…どうするもなにも…私英語分からないし」 (逃げよう) 北上がそう思った時大木は思いも寄らない行動に出た。 「わ…私は逃げないよ…」 一瞬北上は耳を疑った。 「これまで…アミちゃんと一緒にやってきて、いつもダンスも歌もアミちゃんのほうが飲み込み早かったから、 私は次の日早く入ってアミちゃんにダンスのチェックとかしてもらってたよね?」 北上が首肯したのを確認すると大木はさらに続けた。 「そして私が出来るようになるとアミちゃんはまるで自分のことのように喜んでくれた。 そしていつも本番では二人で完全燃焼したし、お客さんもすごく盛り上がってくれた… そうしてる内に思った。もしかして私達は二人一緒になると無敵なんじゃないかって」 北上は何も言えなかった。
ただ年長者として、仲間としてやるべきことをやっただけ… 北上が次の行動に移れないでいると大木が先んじて動いた。 「一対一ならともかく、二対一なら!」 北上の視界の中央で、大木はダニエルが後ろ手に取り出した角材を受けた。 大木が角材を受けた部位に血の華を咲かせそのまま倒れるのを、北上は何も出来ずに見ていた。 「ハハハ…」 ダニエルは北上に視線を合わせたまま寝転んだ大木に駄目押しの蹴りを入れるとカードを奪った。 ダニエルの蹴りに「うっ!」とうめき声をこぼした大木を見ても北上は動けなかった。 更にはそのまま背を向けて引き返していくダニエルを北上はただ、見送った。 その上我を失った北上は負傷した大木を放っておいたまま逃げ出した。 逃げながら北上は涙を流していたが、それは目にゴミが入ったせいなのか、恐怖のためか 悲しみによるものなのか、自分の不甲斐なさを恥じてのものだったのかすら分からなかった。 そして息が切れるまで走り続け、呟いた。 「なんで…なんで私なんかを頼ったんだよ…」 (残り29人)
280 :
名無し娘。 : 2001/02/13(火) 18:28 ID:CBzDoXMk
できれば雑魚キャラにも光を・・・・
281 :
名無し娘。 : 2001/02/13(火) 21:51 ID:SswNbBzs
三三三三三三三 ( | マングース西浦ッ! 三三三三三 )) | 三三三三)ミ,((^^彡ミ彡 / きさまッ!ちゃんと見ているから、 三三三三 ((三三 6)彡//\ 三三三∩三ミl三三 /ミ彡 /) | がんばってちょッッ! 三三三|彡ミ三l三 / \ / /、 | 三三三ヽ_)二 | ̄ ノ / ミl :l、\ 三 /二 /ミ ‐v-― ´/ )ミ/ / /ヽ ̄ ̄ ̄ ̄ 三/  ̄ /ミ lミ (_/ 三`´`´`´
282 :
名無しさん : 2001/02/13(火) 21:52 ID:A/IuCJQ6
こんなのテレトじゃない! みんなこんなんでいいのか?満足なのか?
283 :
Ver.Na : 2001/02/14(水) 00:38 ID:cCO5zZHE
...
284 :
マングース西浦 : 2001/02/14(水) 01:14 ID:/oH6fxaY
(誰や…) 平家は微かに下り気味だが真っ直ぐな道を歩きながら違和感を感じていた。 背中に刺さる視線と自分に歩調を合わせた足音はほんの少し前から続いている。 「さっきからビリッビリ感じとるで…」 意を決して放ったこの一言で足音が止んだ。 「アンタ…オレに惚れたやろ」 「あは…」 続けて放った一言で、今度は笑いが起きた。 「あはははははは!!」 振り返ったところにいたのは中澤裕子だった。 「ね…姉さんやったんかい…」 しかし警戒は解かず、中澤の意図を読み取ろうとした。 「なあ…平家うちと行かへん?」 一緒に行動しようと言うことか? 「い…一緒にって、わたしら敵同士でっせ?」 「固いこと言わんでええやんか」 「ルールがありますやろ」 「ルール?」 やはり、中澤はルールを把握していなかったらしい。 (人の話聞かん人やな…) 同一ユニット内のメンバーとならともかく、別ユニットのメンバーと組んでも意味は無い。 そういうルールになっているということを平家は知っていた。 しかし、それに続いて中澤が話した内容に平家は説明しようとする口を塞いだ。
「そんなことより平家は後藤が目当てなんやろ?」 別に中澤の前に限らず、人前で後藤を気にしているというそぶりは見せた覚えが無い。 なのに、中澤は平家の意図を読んでいた。 後藤が目的とはいえ、最初に後藤を狙わなかったのは、 最初に後藤を倒して消耗してしまうのは賢くないという戦略的な意味があったし、 どこかで好きなものは後に取っておこうと考えたからであるかもしれなかった。 しかし平家は中澤の尋問に「そうだ」と即答はせずに、 「だったら?」 と匂わせるに止めた。 「私と組めば後藤と合う前に下手打たんで済むんやないかなー…と」 「…分かった」 確かに、私と中澤が組めば敵はいないだろう。 最後に中澤と二人で残れば中澤との決着もつけられる。一石で二鳥を得られる可能性もあった。 利害を考えた上で平家は駆け引きに応じた。 「やっぱ運命やな。平家さんとは離れられんわ」 そう言って笑う中澤を見て、平家もそれまで緊張していた頬を少し緩めた。
「ねえ 亜依 ちゃん、アメ なめる?」 「……のんちゃん今なめてんの、これ始まってから何個目?」 「1, 2, 3… たくさん」 3まで数えてたくさんと答えた辻を見て 「ちょうど10個目だよ」 あきれながら加護は言った。 解散と同時に当然のように一緒に行動を始めた二人は何をするわけでもなく、 開始以来こうして散歩を続けている。 加護はモーニング娘。のオーディションに参加して以来、 辻の飴袋から飴が切れたところを見たことが無い。 そういった意味で辻と一緒に行動していれば飢えてもそう簡単に死ぬことは無いだろうし、 加護が辻と一緒に行動しようと思ったもう一つの理由は辻の鋭い勘に期待したからで、 そういうものこそこの戦いにおいては必要なのだと加護は本能的に察していた。 「あれ?ミカちゃん…」 何の前触れも無く前方から近づいてきたのはココナッツ娘。の一員、 そしてミニモニで活動を共にしたミカトッドだった。 「…Hi!」 「ハァイ!」 加護は状況を忘れてつい気軽に返事をしたが、隣を見ると辻の様子がおかしい。
「あ…あれ?」 「ミカ ちゃん なんか へん」 ミカは少し片方の眉を上げた。 少し気をつけて見ると加護もすぐに気付いた。 「ミカちゃん、後ろに回してるほうの手に何持ってるの?」 「…」 ミカは黙ると、表情を強張らせた。 しかし、すぐに表情を元の笑顔に戻すと後ろに回していた右手を前に出し、逆に左手を後ろに回した。 (のんちゃん…逃げるよ) 小声でそう言うと、辻は振り返り一目散に駆け出した。 「あ…ま…まってのんちゃん!!…うわっ!!」 辻を追うように駆け出した加護は今度は急に立ち止まった辻の背中に激突した。 「あ、 アメ…」 激突の衝撃で飴の袋から飴が零れ落ちたが左手に短い木刀を持ったミカは見る間に近づいて来ている。 「ひ…拾ってたらダメだよのんちゃん!!」 そう言われて駆け出した辻の飴袋はその後も内容物を吐き出し続け、 それらは本来の目的を外れて役立った。 無数の球形の飴は何度もミカを転倒させ、二人を無事に逃がした。
「手応えが無さ過ぎる」 そう言いながらデスクに放られたカードにはシェキドルの片割れ、 大木衣吹の顔写真がプリントされていた。 「遅かったね」 そのカードの隣には前田有紀のカードがあった。 「そっちはエンカの奴一人だったんだろ?こっちは二人だったんだよ」 「フッ…でも持ってきたカードは1枚じゃないか」 少し興奮するダニエルを座禅したまま鼻で笑ったのはレフアだった。 「チッ…もう一人は逃げやがったんだよ。背中見せれば追いかけてくると思ったのに… だいたいなんだよそのポーズ…仏教徒にでもなったのか?」 「フッ…これはヨガだよ仏教とは全然違う」 ダニエルは少し考えるような表情を浮かべると視線を移動しさせ、 「…ヨガってなんだよ?」 黙ってモニターの放つ光を顔面で反射させ続けていたアヤカにダニエルは聞いた。 「インドから広まった瞑想法。今では瞑想法と言うより 美容法や健康法の一種としてよく知られている」 淀み無く答えたアヤカに軽く驚嘆の表情を浮かべたダニエルにレフアは 「それだけじゃない」 こう言って付け足した。
「自分の体の仕組みに対する理解が深まる」 「体の仕組み?」 同じ言葉を繰り返したダニエルにレフアは実演を始めた。 3人がいる廃ビルの地下室を早足で一周してみせたレフアに、アヤカは軽い驚愕を、 ダニエルは怪訝をその表情に浮かべた。 「部屋を一周回ったからってなんだ?」 「…足音が全くしなかった」 レフアは満足そうな表情をすると、 「さすがアヤカ」 そう言いながら危険な笑顔に変わった。 「20センチのピンヒールでマーブルの床を歩いても足音を立てない自信がある」 レフアは前田有紀の後方に回ったとき、この特技を使っている。 「…ふん…そんな小細工こっちには必要無い。正面から殴り倒して、それで終わりだ」 ダニエルがそんな負け惜しみを言った時に、両肩を下ろしたミカが戻ってきた。 「ごめん…カード持って帰れなかったよ…」 ダニエルは見下した視線をミカに向けると、 「あの二人は任せろって言ったのはお前だろ」 そう責めたが、アヤカはそれを諌めた。 「いいんだ。ミカは無事に戻って来てくれた…それでいいんだよ」
アヤカは超小型の発信機をいくつかとそれと対になった受信機を三つ母国から持ち込んで来ている。 日本を侵略するのならこれくらい当然の備えだというのがアヤカの言い分だった。 それに、ルールでこういうものの持ち込みは禁止されていない。 ただ、失敗だったのは全員に発信機を仕掛けることが出来なかったということだ。 こういった状況に不慣れなもの、警戒心の弱いもの、注意が不十分なもの、 自分に気を許しているものにしか仕掛けることが出来なかった。 しかし、アヤカはまだまだ隠し玉は持っていたし、それは仲間である3人にも明かしていない。 「ごめんねみんな…いざあの二人を前にしたら緊張しちゃって…」 ミカはまだ謝り続けていたが、アヤカは聞いていない。 確かにミカが辻希美か加護亜依のいずれかのカードを持って来てくれれば儲けものだったが、 それには全く期待してはいなかったからだ。 ミカが途中で誰かに倒されていたらダニエルとレフアを繋ぎ止めておくことが出来なくなってしまう。 むしろアヤカはミカにはだまってこのアジトにいてほしいと思っている。
292 :
名無し娘。 : 2001/02/14(水) 05:57 ID:bBAtSLm.
久々に見に来たら、結構進んでるな。 頑張れよ。
293 :
マングース西浦 : 2001/02/15(木) 00:55 ID:x0C6FQh2
>>292 はい。ありがとうございます。
陳腐ですが頑張ります。
「喉がカラカラだ…」 民家の立ち並ぶ住宅街で村田めぐみが無意識に発した言葉だった。 そんな声に大谷雅恵、斉藤瞳、柴田あゆみの3人は研究施設を脱走して以来 自分達が何も口にしていないということに気付かされた。 「そう言えば私達1日以上何も食べてないんじゃない?」 空腹すら忘れるほどに緊張感に支配されいたことに気付いた4人は一瞬の絶句に続いて 声を合わせて笑い、緊張感からの支配を脱した。 しかしその代わりに襲ってきた空腹感に4人は力を失い腰を下ろした。 「誰かが食糧を調達してくる必要がありますね」 その大谷の提案を受けて立ち上がったのは一番若い柴田だった。 「食べ物を扱ってそうな店ならさっき見かけましたよ。 私達の口に合うかは分かりませんがいくつか見繕ってきます」 食糧の調達に4人揃って行ってもしょうがない。 それに菓子作りを趣味としている柴田の味覚は信頼に価する。 「柴田、私はベジタリアンだからな!」 「私はベジタリアン」というのは村田がよく言うセリフだったが、 それよりも今は地球の変な動物の肉を食べたくないという気持ちが強いのかもしれない。 ともあれ柴田は笑みを返して「分かってますよ」と言いながら一人コンビニに向かった。
「早く宇宙船を取り返してメロン星に帰らないとな…」 「そのためにはこの戦いで4人揃って勝ち残らないと…」 母星であるメロン星での騒乱に巻き込まれ地球にたどりついたバレリーナ戦隊の4人は、 4人揃ってこの大会に勝ち残り、宇宙船の返還を求める算段を立てている。 「しっ…誰か来ます」 大谷の言葉に声を潜めた3人が物陰から見たのは不安げに左右を見ながら スタスタ足音をたてて歩く小柄な少女だった。 「あれは…エキストラか?それとも…敵か?」 木村麻美という名前までは分からないものの、大谷は会場で一度見たその姿形を覚えていた。 「…敵です」 「間違い無いな?」 確認する村田の方を向きかえった大谷ははっきりと首肯した。 「めぐみ…どうする気なの?」 「当然だ。あれが一人でいる今のうちに潰しておく」 一瞬好戦的な表情を浮かべた村田を見て大谷は少し慌てながら提案した。 「柴田が戻って来てからでも遅くないのでは?」 「だったらお前はここで待っていろ」 しかし小柄な少女に只者ではない何かを感じた大谷は斉藤と共に村田についてあさみの尾行を始めた。
「あれ?また行き止まり…」 入り組んだ住宅街の道路網に戸惑いながら振り返ったあさみが見たのは 同じくらいの身の丈の3人の女だった。 3人とも、殊に中央の痩せた女は敵意をむき出しにしてこちらを見ている。 (エキストラさんじゃなさそう…) あさみは戦闘が避けられないと理解した。 りんねはこれも修行の一環だからと、あえてあさみを突き放し、一人街中に消えていった。 仕方なく一人「街」を散策していたあさみだったが、 花畑牧場のある雄大な北海道と違いこの会場の「街」はごみごみしている上に道が入り組んでいて この行き止まりはあさみにとってもう5度目のそれだったが、振り返った後ろに敵がいたのは さすがにこれが始めてだった。 「3対1ですか?ずるいなあ…」 冷静を装ってあさみが言ったその言葉に中央の痩せた女は不敵な笑みを浮かべながら 一歩前に出て他の二人に目配せをすると、 「お前らは手を出すな」 そう言った。
おそらくこの痩せた女一人に勝ったとしても残りの二人がいる。無事には済まないだろう。 それは分かっていたが、不思議とあさみは落ち着いていた。 勿論北海道での修行がその背景にはあったが、それ以外にあさみ自身にしか分からない予感があった。 (研究所暮らしのウサ晴らしをさせてもらう) 村田は一気に踏み込むと、あさみの右袖口を掴む。 (リ…リーチが…) 村田の細い腕はまるでカエルに狙いを定めて飛びつく蛇のようにあさみに向かって伸びた。 慌ててその手を振り払おうとしたあさみだったが、 村田の細い腕があさみの右袖口を掴んだ手首を素早く返し下に向かって引くと あさみの両膝はまるで緩みきった蝶番のようにカクンと曲がり、 その姿勢で足を払われたあさみは脆くも崩れ落ちた。 (合気…!?) 相手の属性は読めたあさみだったが、合気道の使い手とはこれまで出会ったことが無い。 掴んだ右袖を離さず本人の意志を無視してあさみを立たせた村田はその後頭部に右手を掛け、 その右手を下に押す。 するとあさみは顔面からアスファルトの地面に叩き付けられた。 (ぐ…グラグラする…) 辛うじて顔を上げたあさみだったが、脳に受けた強い衝撃のためその視線は定まらない。 達人級の村田の腕に歯が立たず (て…手が出ない) そう観念した正にその時だった。
「止めを刺させてもらう…」 村田が笑いを堪えながらそう言った時だった。 「うわっ!!」 「な…なに!?あれ?」 突如横から飛んできた何かが村田の側を通った直後、 あさみを押さえつけていた村田の腕から血が吹き出した。 斎藤と大谷も同時に驚愕の表情を浮かべている。 「あ…あれは…」 母星であるメロン星には存在しない生物…地球の研究所で何度か見た記憶がある ゛犬゛だった。 牧場で毎日動物と接し、犬ぞりの達人でもあるあさみはいつしか見ず知らずの犬とでも 心を交わせるようになっていた。 そして、あさみが危機に陥るといつも必ずどこかから犬が助けに来てくれた。 グルルル… 今回あさみの危機に駆けつけてきたのら犬は一匹だけだったが、 それの牙で傷つけられた村田の苦しみかたは尋常ではなかった。 「ち…畜生!!…失せろ…バケモノ…うぁ!」 傷口からはグリーンの血が止めど無く流れている。 (東京には宇宙人がいるって本当だったんだ…) 先程まで自分を脅かしていた危機を忘れ関係の無いことに関心しているあさみを余所に、 斉藤と大谷の二人は素早く村田を抱きかかえるとその場を逃げ出した。
傷口からの出血は止まったものの一年間研究施設に閉じ込められていた村田の体を メロン星には存在しない゛犬゛の牙に付いた無数の未知の雑菌は急速に虫食んだ。 「だ…だめ!熱が下がらないよ」 「く…ど…どうしたら…」 公園の茂みに紛れた三人の内の二人は悲壮な声をあげていた。 村田は青ざめた顔と虚ろな目をしたまま息を切らせている。 明らかに危険な状態だった。 「め…めぐみ…」 それでも村田は震える手を後ろポケットへと運ぶと、自分の顔写真がプリントされたカードを取り出した。 「こ…これを持って…さ…さっさとき…消えろ」 「!!…リーダーを置いて行けるはずが無いじゃない!!」 既に斎藤は目に涙を浮かべているが、大谷の考えは違った。 「情に流されて全滅するなんて…兵士としては三流以下ですよ。瞳」 斎藤がはっとして振り返って見た大谷は視線を落とし微かに震えていた。 「…とりあえず…めぐみを病院に運ぼう」 「わ…悪いな…二人とも」 斎藤と大谷の二人は村田が無事病室に収容されたのを確認すると、 村田のカードを受け取り別れの言葉は残さずその場を去った。 「待ってて。ぱぱっと済ませてすぐ戻ってくるからさ…」 (絶対…私達の誰かが最後まで残るんだからね…) 「あ…あれ?村田さーん!斎藤さーん!…大谷さーん!!」 その頃柴田は一人分が無駄になったとも知らず四人分の食糧と飲み物を持ったまま途方に暮れていた。 (残り28人)
夕方に差し掛かった住宅街を小走りに駆けるのは小湊美和だった。 (犬…ね) 口元に笑みを浮かべながら小湊はバレリーナ戦隊の一角を崩したあさみの 鮮やかな゛技゛を脳裏で反芻していた。 それでもなお笑っていられるのは (私には通用しない…) そんな自信があるからだった 彼女は元の仲間達とは当然のように別行動を取っており、それは他の三名も同様だった。 稲葉貴子はクラブで踊りながらテンションを上げていたし、 信田美帆はどこかの体育館で体の感触を確かめ、RuRuは何かを探しながら「街」を散策していた。 そして四人が共通して優勝を目指している。
301 :
Ver.Na : 2001/02/15(木) 01:32 ID:fHWniTyE
...
既に三人が戦線から脱落したなどということは露知らず、誰とも出会うこと無く、 開始直後以来ずっと団地の側の公園のベンチに佇んでいるのは ゛スーパーヒロイン゛後藤真希だった。 若い母親達が砂場で子供を遊ばせているのを眺めている内に自分を置いて行った市井紗耶香のことも 現在の状況も忘れ既に子供がいる姉のことを思い出していた。 (あの子おっきくなってるかな…) そんなのんびりとした時間に身を任せている内に眠気に誘われた後藤はすんなり 眠りへといざなわれた。 もはや公園には後藤以外の誰もいない。 知ってか知らずか軽い寝息を立てながら後藤はベンチにその身を横たえた。 その公園の前の道路を走り抜けていく吉澤ひとみの存在にも気付かずに。
(どこにいるんだろう…) 既にかれこれ半日近く走って休むを繰り返していたのは吉澤ひとみだった。 彼女は試合開始直後、同じ新メンバーの仲間である石川梨華と一緒に行くか、 辻希美加護亜依の二人組と一緒に行くかで右往左往し、 結局後藤真希と一緒に行こうと決心した時にはその姿を見失っていた。 「街」の中央にほど近い公園にそれが佇んでいるとも知らず既に20キロは歩いているかもしれない。 これだけ動き回った彼女がこれまで強敵と出合わずに済んだのは幸運という他なかったのだが、 岩のような固い意志を持つ吉澤は自分の身の心配はしていない。 ただ後藤真希のことを思っていた。 テレビで見るだけだった後藤真希には好意を持つには到らなかったのに、 仲間になったらこんなにすぐ打ち解けてしまったのはなぜだろう… (ごっちんは私のことを求めていたんだ…) 最初は単に歳が近いからという理由だったにせよ、 自分に対して初めて笑ってくれたメンバーは後藤真希だった。 そして最初に泣いた顔を見たのも後藤真希のそれだった。
後藤は普段は何ごとにも無感動そうに見えるのに、 時としてたがが外れたように感情を吹き出させることがある。 そんな時いつも後藤は目を疑うような感情の高ぶりを見せ、自制が効かなくなり止めど無く涙を流す。 市井紗耶香の最後のステージで間近にそれを見た吉澤は本能的に自分が市井の代わりに ならなければと思ったし、意識の内でそうなりたいとも思った。 そして最近それに近づいて来ていたと思っていたのになぜ一緒に行こうと声を掛けなかったか 後悔してもしきれない思いだったが、 それには一応理由があった。市井紗耶香がきっと後藤と一緒に行動するのだろうと思っていたから。 なのに市井は誰か他のメンバーと行動を共にした。 感情のたがが外れた時の後藤を見てみたい…吉澤はそう思っている。 これまでの様に仲間を失うことによってではなく、他人を倒す為にたがを外した後藤を… 自分の為に感情のたがが外れた場合後藤はどうなるのだろう… 石黒彩の脱退、市井紗耶香の脱退の時に見せた後藤の感情の量は尋常ではなかった。 あれはおそらく片鱗でしかない。 自分で自分の感情をコントロールを出来るようになったら後藤はスーパーヒロインどころではなくなる… あえて言いかえるならば゛地上最強の生物゛そんな言葉が相応しい存在になると吉澤は確信している。 そしてそうさせる鍵を持っているのは自分だと信じて日の暮れた 「街」を後藤を捜し求め歩き続ける吉澤ひとみだった。
「あはははっ!!」 すっかり日も暮れた中そんな矢口真里の笑顔を横目で見ながら (変わってないなぁ…) そう思うのは福田明日香だった。 試合が開始される前からほとんど休むことの無い矢口の口だが、疲れた様子は全く見せない。 「でさー、裕ちゃんが…」 それでも喋り続ける矢口の口を見ながら福田は思っていた。 (なんで変わってないの!?) 矢口の口から出る固有名詞は祐ちゃん、かおり、なっち、圭ちゃん、さやか、あやっぺ、 そしてせいぜいつんくさんまでに限定されていた。 福田がモーニング娘。を脱退して早くも二年以上が経ち、福田の身にも様々な変化があったし、 矢口の身にはそれ以上に変化があっただろう。 それはテレビでモーニング娘。の活躍を日々目にするだけでもある程度は分かる。 なのに、矢口はなぜかあえて過去の福田と関係のある固有名詞しか使わずに話しをする。
二年もあれば人は180°変わることだって出来る。 なのに矢口はまるで福田の成長を認めずに過去の話ばかりをし、 『明日香は私にとって過去の人』とでも言いたそうな態度を取っているように、 福田には見えていた。 しかし反面矢口には悪意が無いということも分かっており、笑顔を作るのすら苦痛なほどだった。 (第一、なんで私は矢口と一緒に行動しているんだろう?) ルールの説明中も休み無く小声で矢口の話は続き、そのまま一緒に会場を出て今に到っている。 敵を作らない矢口の性格を考えれば、私以外にも一緒に行動する仲間はいくらでもいたはず… そんな時、ようやく、矢口の話の流れが変わった。 「でさあ、明日香って今どういうことしてるの?」 ようやく矢口が切り出した゛現在゛の話だった。 「あ、あたし?ちゃんと毎日学校行ってるよ…」 「そういうことじゃなくてさ」 (え!?) 「ボイトレとかやってるの?」 この瞬間、福田の中で何かが切れた。
(私が歌手の道を外れて何年経ったと思ってる!? あんたの中で私はいつまでも歌手なのか? ボイトレやってない普通の高校生の私は私じゃないのか!? 普通に好きな勉強をしている私をあんたは認めないとでも言うつもりか!?) それでもかろうじて頭の中で思うだけに止めた福田だったが、それだけで精一杯で、 一歩でも歩いたら口から悪口雑言がほとばしり出そうだった。 「あ…あれ、どうしたの?」 隣にいたはずの福田がいないことに気付いた矢口が振り返ると福田は下を向いて立ち止まっていた。 「あ…そっか、そういえば疲れたよね。ほとんどずっと歩きっぱなしだったし… ちょうどここにベンチあるし休んでいこっか」 その言葉にはっとした福田は自らを恥じた。 (なんだろう私…少し被害妄想入ってたかもしれない…) 矢口の言う通り公園にあるベンチで休んで頭を冷やすことにした福田が 矢口と一緒にベンチに向かって歩くうち、 そのベンチに先客がいるのが分かった。 「あれ?」 先に気付いた矢口に大分遅れてそれが誰なのか、福田にも分かった。 「後藤真希…!?」 「なにこんなとこで寝てんの!ごっつぁん!風邪引くよ!」 それでも起きず肩を揺すられてようやく目を覚ました後藤は寝ぼけた頭で二人を見上げた。 「…あ!?あれ?やぐっちゃんと…なっち?」 矢口はまだ寝ぼけている後藤を呆れたように見ると肩をすくめ、福田のほうを見た… 「……明日香!?」 明日香の目は敵意しか篭らない両目で後藤を見下ろしている。 (これが…矢口の゛現在゛…私が抜けてからモーニング娘。を引っ張ってきた子…) 「や…やだな明日香…怖い顔して…紹介するよ。ごっつぁん勿論知ってるだろうけどこの人は…」 「…てよコノヤロウ…」 矢口の紹介を遮って福田が口を開いた。 「立てよコノヤロウッ!!」 その声と同時に福田の全力の平手打ちを受けた後藤は目を回し、 何が起きたか分からないでいる。 「な…なにすんの明日香!?」 「矢口…今の私の歳…今私何年生だか知ってる?」 「な…何が言いたいの?分からないよ明日香…」 「私はね…今高校二年生なんだ…もうとっくに中二じゃ無いんだよ」
「?????」 福田が何を言っているのか分からず矢口がオロオロしている間にも福田は後藤の髪を掴んで立ち上がらせ、 髪を掴んだ逆の手を後ろに引き絞ると、一気にそれで後藤を打ち抜く。 福田のナックルアローを受け、ようやく後藤は目を覚ました。 「何度で〜も〜え〜が〜お〜に〜な〜れ〜る〜よ〜」 今度は福田は狂ったように歌い始めた。 「地球が〜丸いから〜……ははは…はははははははははは!!!!」 後藤は呆気に取られている。 人を殴っておいて歌い出したうえに笑い出すなんて… 「私は誰だ!?私は、福田明日香様だ!!」 (…) 矢口は分かりかけていた。 一番若いくせに大人ぶって、それでいて甘える時は歳相応以上に子供っぽかった福田… (そうだよね…明日香も…もう大人になろうとしてるんだ…なのに私…) とにかく、明日香を止めないと… そう思った時後藤が立ち上がった。 「ちょっと!!いきなりなんてことすんの!?」 そしてそう言いながら福田の肩を突いた。
「ちょっとやぐっちゃんこの人……!?」 矢口は泣きそうな顔で福田を見ている。 「明日香…さっきはごめんね…なんか延々自分の話ばっかりして…」 その言葉を聞いた福田の表情から狂気が消えた。 「いいの…気にしないで。矢口」 福田は落ち着いて矢口の話を流そうとした。 (どうせ…矢口に私の気持ちなんか分からない… 分かってもらいたいと思った私が馬鹿だったんだから) 「私…今でも明日香のこと仲間だと思ってるから…」 福田ははっとした。 「明日香と゛現在゛の話をしたら明日香がなんか…遠い人になっちゃう気がして…」 (!!) 今の福田と矢口の置かれている状況は全く違う。 そんな中で現在の話をしたら、もう二人の接点が無いことがはっきりしてしまう。 矢口はそれを恐れていた。だからこそ二人が昔と同じ仲間でいられると、 その間だけでも錯覚出来るよう、矢口は必死で゛現在゛の話をしないようにしていた。 「…ごめんね…矢口…分かってなかったのは私の方… 矢口ってそういう…優しい人だったんだよね…」 「じゃ…じゃあ…」 「そうだね…だからこそ、この子とは決着をつけなくちゃならない」 矢口の望みは断たれた。
「この子を倒して…私が成長したことを見せるからさ」 福田はそう言って構えた。元祖挌闘王の片鱗を示す構えだ。 戸惑いながら、後藤も構える。どちらもよく似たファイタースタイルの構えだったが、 体は後藤のほうが大きい。しかし厚みのある福田の身体はウェートでの不利を感じさせない。 「後藤…」 矢口の不安そうな声が耳に入ったが、福田の迫力に圧倒される後藤はそちらを見る余裕が無かった。 福田は後藤を見据えたまま動かない。 仕方なく後藤が踏み込んだのと、福田が動いたのはほぼ同時だった。 ごんっ! カウンターの形で福田のナックルアローが火を吹いた。 (!?) ローキックの出鼻を挫かれた後藤はそのまま後方に倒れる。 「立って来いよ…」 福田は無表情のまま後藤を見下ろしている。
「立って来いよコノヤロウ!!」 そう言うと福田は座り込んだ後藤に蹴りを入れ始めた。 (ア…アリキック) かつて元祖挌闘王が時のボクシングヘビー級世界チャンピオンと対戦した際に見せた技… しかし、あの状況とは全く違う。元祖挌闘王が上、スーパーヒロインが下という当時とは 逆の状況で休み無くその技は放たれている。 (や…止めて明日香!) その瞬間、福田の視界が旋回した。゛ドラゴンスクリュー゛相手の蹴り足を取り、 そのまま自分の体を回転させて相手をスリップダウンさせる技だ。 しかし、この技はそれだけでなく相手の膝間接にも大きなダメージを与える。 「ま…まさかこの状況で冷静に蹴り足を取るとは…」 後藤本人も何が起こったのか分からなかった。ただ、体が勝手に動いた。 再び体が動くと、今度は後藤は福田をグラウンドの卍固めで固めていた。 「ま…まさか掟破りの逆卍だって…!?」 ゛神様゛カール・ゴッチ直伝のオクトパスホールドという別名を持つ この技は理論的にも正当性があり、相手の゛ギブアップ゛の言葉を聞くまでは決して 外れることが無いと言われる。 「!?」 しかし福田の体は技の戒めを解かれた。
「…決着をつけましょう…福田さん…」 後藤はもう二年近く付き合ってきた矢口も見たことが無いような穏やかな表情をしている。 「…いいだろう…」 そう言って福田は立ち上がった。返し技で勝利を奪っても禍根を残すだけ… それを分かっていた後藤はグラウンド卍固めを解き、立ち上がった。 福田もそれについて立ち上がり、距離を取った。 「後藤真希…あんたのレボリューションを見せてみなよ…」 そういうと、福田は後藤に向かって走り出した。 (レ…レボリューション…恋愛レボリューション…恋愛革命…革命…か…革命戦士!?) その言葉が頭に浮かんだ瞬間、後藤の右腕は福田の首を刈り取るように薙ぎ払われていた。 かつて革命戦士と呼ばれた男のフィニッシングホールド、゛リキラリアット゛ 完全なタイミングと、完璧な力の入り方、抜け方で決まったそれは福田の身体を宙で一回転させ、 頭から地面に叩き付けた。福田はだらしなく舌を出し、身を痙攣させている。 その様子は第一回IWGP決勝戦における元祖挌闘王の姿を思わせた… 「…ありがとうございました…」 意識を失った福田に礼を言った後藤を突き飛ばす勢いで矢口が福田に駆け寄った。 「後藤のバカ!!」 矢口の目は悲しみと怒りで満たされていて、後藤を圧倒した。
「大丈夫…明日香…?」 あれからどのくらい経ったのだろう。 はっきりと覚えてはいないが自分が後藤真希に敗れたということは体の感覚が教えていた。 「ほら、バカ後藤、明日香に謝りなよ」 「ば…ばか後藤って…」 しかし福田は 「なんで謝る必要があるの?」 とそれを辞した。 「私は全力で後藤真希と闘って、そして負けた…それだけのことだよ」 「だ…だって私達仲間同士じゃない…なのに後藤が…」 矢口は最初に仕掛けたのが福田であることをすっかり忘れている。 「ほら」 福田は自分のカードを後藤に差し出した。 「な…なんで?私達仲間なのに仲間同士で潰し合う必要なんて無い…」 福田は後藤の方を見て聞いた。 「あんたも受け取るつもりは無いの?」 「私も…福田さんと一緒に勝ち残りたい…矢口さんと同じ考えです」 ビッ… 福田はカードを引き裂いた。 「な…なんてこと」 この時点で福田の脱落が決定した。 (残り27人)
やっぱり陳腐だなあ…福田がなんで怒るか分からないし
316 :
Ver.Na : 2001/02/15(木) 23:53 ID:w5lkSolY
...
317 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 00:56 ID:GepaTvEg
まぁ、そんなに卑下しなさんな。 先は長いんだし、マターリ行きましょう。
>>316 、、、
>>317 腫れ物に触れるようなリアクションは結構だ(冗談ただし一部本音含む
やっぱり駄目だなあ・・・何が悪いのか・・・文章が下手なのは分かってるけど
319 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 01:35 ID:hl5v/xvc
文章は上手いと思うよ。 ただ、いろんな所からネタを拾ってきて無理矢理当てはめているから 小説全体として何が書きたいのかよくわからなくなってるっていうの はあると思う。 まあ1つ1つの戦いは楽しく読んでるけど。
320 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 01:45 ID:dZVl3lJw
過去ログねえよ? ツーか最初の俺が立てた気もするなあ
321 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 02:04 ID:GepaTvEg
俺は充分、面白いけどなぁ。 読んだ後にそう駄目駄目言われると、多少腹が立つだけかな。
322 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 02:17 ID:GHBXG1wI
保田刑と同等
323 :
マングース西浦 : 2001/02/16(金) 18:55 ID:NqNeUuzc
「かおり外で寝るのって中学のときのキャンプ以来かもしれなーい」 「あ、なっちも多分そう」 宿泊施設を使用せず゛野宿゛というものをしてみようと二人で決めた安倍なつみと飯田圭織は 後藤がいた所とは別の木々の茂る緑地公園の中にいた。 「枯れ葉とか集めてさー、焚き火とかしてみようよ」 「ははは、キャンプファイヤーっていうんだよね!?」 「でさ、枯れ葉でベッドとか作ってそこで寝ようよ」 飯田にある少女趣味を安倍は知っていたし、安倍も飯田のそういう部分は嫌いではなかった。 パチッ…パチッ… 焚き火にあたりながら二人は試合開始直後のやりとりを思い出していた。 もし、このまま運よく二人で勝ち残り、自分達が最後の二人になったらどうするか。 その飯田の質問を安倍は受け流していた。 「もし…かおりとなっちが二人で残ったらさ…」 「…うん…」 「かおりに勝ちをゆずるよ」 その答えに飯田は目を見開いた。 「ずるいーー!!かおりもそう答えようと思ってたのにー!」 「あははは!まじでー!?」 がさっ… 二人の後ろの茂みで音がしたのは二人がささやかな幸せに包まれたそんな時だった。
「ア…アヤカちゃん!」 茂みから現われたのはアヤカキムラ、かつて安倍は同じ黄色5の一員として活動したことがある。 「あ…安倍さん…飯田さん…」 脅えるような表情を浮かべるアヤカを安心させるように安倍が言った。 「か…かおり、私達今から寝ようと思ってたんだよね」 「う…うん」 「よかったらさ、アヤカちゃんも一緒に寝ようよ。なんか二人だけだと心細くてさ…ね!?圭織」 戸惑いながらも首肯する飯田を見て、アヤカは心底からほっとしたような表情をした。 「わ…私、ダニエル達を探してたんです。でもなかなか逢えなくて… でも、焚き火を見つけて、やっと逢えたのがなっちさん達でよかった」 それを聞いて安倍と飯田は笑うと、アヤカも誘って枯れ葉集めを始めた。
「あ〜あ…こんなところでよく寝てられるよ」 二人が寝静まった頃アヤカは立ち上がり、 あらかじめ近くに隠しておいたカバンの中からノート型のPCを取り出した。 「ごめんなさいね…お二人さん」 それを起動させ作業を始めようとした瞬間、 ガバッ! という音とともに飯田が突然上体を起こした。 「!!!!」 アヤカは喉から心臓が飛び出そうな思いだったがなんとかそれを堪えた。 「あれ?アヤカちゃん何してんの?インターネット?」 絶体絶命かと思われたが、飯田の両目は定まっていない。 「メ…メールですよ。下らなくて笑えるメールなんか来てないかなーと思って」 言い訳にもなっていなかったが 「あ、そうなんだ」 そう言って飯田は安倍の方に視線を移した。 「はは…なっち笑ってるよ」 (起きてるのか寝ぼけているだけかはっきりしてくれ…心臓に悪い…) 「おいしいもの食べる夢でも見てるのかな?」 「は…ははは…」 飯田の言葉にアヤカは心からの笑いをこぼしかけたが、 気付くと当の飯田はいつのまにか再び寝ていた。
アヤカは周囲を警戒すると、静かに飯田の後ろ髪を掻き揚げた。 (あった…) 髪の中から現われた人間で言う延髄の位置にある接続端子を確認し、会心の笑みをこぼすアヤカ。 「アヤカちゃん、何してんの?」 (ギャアッ!!!) 突然後ろから聞こえた安倍の声に、アヤカは悲鳴をあげかけた。 しかし両手で口を塞ぎ物理的にそれを抑えると、決死の言い訳を始める。 「あ…あの、ちょっとトイレに行ってて、戻ってきたら飯田さんの 葉っぱが少なくなってたから、そ…その…」 「あ、かおりが風邪引かないようにしてくれたんだね」 「そ…そうです!」 その自分の「そうです」の言い方が志村けんに似ているように感じられ、 アヤカは必死で笑いを堪えた。ここで笑ったら志村けんの話が始まってしまう。 そうすれば飯田も目を覚まして二人とも目が冴えてしまい、計画がパアに… 「…ありがとうね」 よかった…しばらくすると、安倍はまた寝息を立て始めた。 再び慎重に飯田の髪に手を掛けようとした時、 「あ、アヤカちゃん」 「はいっ!」 心地よい返事とともに飯田の髪にかけようとしていた両手を素早く後ろに回し 安倍のほうに振り返ると、安倍の瞳が再びアヤカを見据えていた。
「ど…どうしたんですか?」 あくまで冷静を装うアヤカ。 「アヤカちゃんってさあ、寝起きいいんだね」 (!!!) たぬき寝入りがばれてしまったのか?こうなったら…密かに片手を握り締める。 「そ…そうですか?…自分では余り…」 無難な返事をしながら安倍の表情を伺うアヤカ。 しかしその表情は全く変わらない。 「かおりはそうでもないんだけど、なっちすっごい寝起き悪いんだ…」 (で…?) 「悪いんだけど、明日寝坊しそうだったら起こしてくれる?」 アヤカは体中から力が抜けていくのを感じた。背中はもう汗でびっしょりになっている。 「わ…分かりました。安心して寝ていて下さい」 (二度と起きてくるな) 心の中でそう言うと、安倍が寝息を立て始めるのを待って飯田の後ろ髪に隠れた接続端子に 持参したコードを使ってノートPCを接続し、 「散々てこずらせてくれたお礼です」 そう言いながらモニターの゛送信゛をクリックした。 「よい目覚めを」 アヤカは本心と逆の言葉を残し、その場を去った。
「じゃ、私はこれで脱落だね」 「明日香…」 矢口と後藤は何も言えず、そのまま福田明日香を見送った。 二人残された矢口真里と後藤真希。 「やぐっちゃん…どうするの…?」 「……」 「ねえ…」 矢口はしばらく沈黙したままだったが、 「うるっさい!!」 そう言って走って立ち去った。 福田明日香がいた頃のモーニング娘。のことを後藤はほとんど知らない。 モーニング娘。のメンバーになるまでは矢口のことなど「知」だと思っていたほどだ。 しかしその後藤の知らない世界に、矢口が強い思い入れを持っていたということが後藤にはショックだった。 パチパチパチ… 静まり返った公園に突然拍手の音が響いた。
拍手の音が聞こえる方向から現われたのは市井紗耶香だった。 「さ…さやか!」 「よっ」 市井はまるで街中で偶然友人と顔を合わせた時のように軽く手を挙げた。 しかし後藤は違和感を感じた。確か紗耶香は誰か他のメンバーと先約があるからと、 一緒に行けない由を後藤に説明し、そして別れたはず。なのに今市井は一人でいる。 先約の相手は誰だったのか?そしてなぜ今市井は一人でいるのか。 「見てたよ。明日香を…あんな風に倒せる人なんていないとおもってた」 実績から言えば福田は第一回天下一武道会一回戦で保田に勝利したものの、 ドクターストップがかかりそのせいで二回戦進出を逃している。 言い換えれば実力では一度も負けていない唯一のメンバーと言えた。 しかし、そんなことよりも後藤は不思議で堪らなかった。 「み…見てたらなんで出て来てくれなかったの? 紗耶香が出てきたらあんなことにはならなかったかもしれないのに…」 市井は首を横に振りながら諭すように説明する。 「後藤…分からないの?もう明日香も私も…あやっぺもモーニング娘。じゃないの。 もう仲間じゃないんだよ。明日香も矢口もあんただって…私にとっては敵なんだよ」 「そ…そんな」 後藤は体から力を失いかけたが市井は付け足した。 「でも違う…後藤だけは…あんただけは」 「…」 「言ったでしょ?――本当の妹みたいだった――って」
後藤は表情に光を取り戻し、市井に抱きついた。 市井に持っていた猜疑の念は早くも後藤の中から一掃された。 市井が昔と変わらない笑顔で受け入れてくれたことが、ただ嬉しかった。 「ところで後藤、泊まるとこあるの!?」 え?後藤は全く意外だった。 後藤はどこでも寝れるタイプの人間だったから、 ベンチに新聞紙でもあればそれでいいと思っていたからだ。 「ま…まさかあんた、ベンチで寝泊まりしようとか思ってなかったでしょうね!?」 「あは…あははは……」 図星を突かれた後藤はただ笑うしかなく、市井は全くしょうがない…と母親のような表情で後藤を見た。 「ユースホステルみたいなのあったからさ、あそこに泊まろうよ」 「ゆ…ゆーすほすてる?」 いいから、と腕を引かれ後藤は一日目の宿泊先に向かった。 すでに公園の時計は深夜の二時を指していたが、 その時計は実際の時間より三十分先の時間を刻んでいた。 脱落者(脱落順) 前田有紀 大木衣吹(シェキドル) 村田めぐみ(バレリーナ戦隊メロン) 福田明日香(元モーニング娘。)
―― 二章 ―― 「――おはようございます」 二日目朝の放送が始まった。毎朝この放送がモーニングコール、エリア縮小の知らせ、脱落者の報告 などの役割を果たすことになる。 「皆さん、よく眠られたでしょうか。現在の時刻は午前六時となっております。 無論、この放送があったら必ず起きなければならないということではありません。 ただ、この放送を聞いて頂いたほうが戦略も立て易くなるでしょうし、 皆さんがアーティストとして、どのような状況にあっても自覚を持ち、摂生した生活を 送られることを我々主催者は望みます…おっと、バレリーナ戦隊の皆さんは違いますね」 「前振り長いねん」 放送が始まる一時間前には起床していた中澤がこぼす。 「それでは、第一日目、試合開始からこの放送が開始されるまでの脱落者を脱落順に発表します。 前田有紀さん。大木衣吹さん…」 自ユニットのメンバーの名前を聞いた北上アミは木の幹に拳を叩き付ける。 拳は既に血だらけで、目は充血していた。自らのふがいなさを恥じ、 一睡もせずに一夜を過ごしたからだ。 「村田めぐみさん…」 柴田あゆみはまだ熟睡中でこの放送を聞くことは無かったが、大谷は村田のカードを握り締めた。 そしてそれよりも残りの二人の名前に「街」の数々の場所が震撼した。
「福田明日香さん…」 「あ…明日香が?」 矢口保田市井以前のメンバーはそれぞれ驚きの表情を露わにした。 「あ…明日香だけは絶対に無事だと思ってたよ…」 中でもショックが大きかった一人は石黒彩だった。 彼女の資質はリングの上でより現在のようなストリート上での闘争に適していたが、 福田はそれと逆だったとでも言うのか… 石黒は誰一人侮ることは出来ない…と気を引き締めると共に、一日目で強敵と 出遭わなかった幸運に感謝した。 「明日香…何も話出来んかったな…」 遠い目をする中澤を見て、平家も今大会のレベルの高さを再認識した。 「そして…」 最後の脱落者が発表される。 「安倍なつみさんです」 モーニング娘。のメンバーも、そうでない者も問わず驚きに包まれたが、 ただ一人、アヤカキムラは高笑いを上げながら安倍のカードを朝日にかざした。
――30分前 (な…なんか寒気がする…) 飯田は強い悪寒に襲われていた。 (な…なんだろ…どうして?) 飯田は目を覚ましたが、一緒に寝ていたはずのアヤカがいないことにすら気付かない。 「な…なんか自分が自分じゃ無いみたい…」 今まで感じたことの無い違和感だった。体がプラモデルから超合金へ、そしてロボットへと 変化した時にも感じたことの無い感覚…怖い… そう感じた飯田は安倍を起こそうとした。 「なっち、てめえぶっ殺してやる……はっ!!」 (か…かおり今なんか変なこと言ったような…) まだ起きていない安倍に肩を置くと、その小柄なメインボーカルは目を覚ました。 「!!」 目が覚めて安倍が見た飯田の顔は、まるで昔見たアニメ番組の悪役のように片方半分は普段の飯田の表情、 そしてもう半分は…肌が赤く変色して、鬼のような形相に変わっていた。 「な…なっち…早く逃げて…私が…悪に支配される前にげたらぶっ殺すぞ!!!」 飯田は理由までは分からないものの、自分の体にどういうことが起きかけているのか、 ある程度理解していた。 しかし、その飯田の理性は風前の灯火のごとく消えかけている。 「逃げて…逃げないとコロス…逃げたらブッコロスぞ!!!!!!」 顔の片方半分、まだ飯田の理性を示していた側の顔も肌が青く変色し、こちらは冷酷な表情に変わった。 完全に自我を喪失した飯田は安倍の襟首を掴んで手近の木に叩き付けると枯れ葉のベッドを足蹴にし、 そのまま一夜を過ごした緑地公園を出ていった。
木に叩きつけられ気絶した安倍の服からカードを奪い取ったのはアヤカキムラだった。 「強烈なウイルスだとは思ってたけど…ここまでとはね」 昨晩飯田に送信したのはアヤカが独自に開発したコンピューターウイルス。 ロボットを相手に使用するのは始めてだったが、それはアヤカに対して最上の結果をもたらした。 「はははは……ははははははははは!!!!!」 アヤカは一睡もしていないことすら忘れ、止まらない高笑いにその身を委ねた。 ――現在 「これでシェキドル、バレリーナ戦隊メロン、モーニング娘。のユニット勝ち残りの 可能性は消えました。 そして、ただ今から1時間後、外環1キロ圏を立ち入り禁止とします。 もし一時間後の時点でそこに留まっていた者は無条件で脱落とします。 それでは二日目も皆さんにとって有意義な日でありますように」
はぁ…はぁ… この様な状況下にあっても信田美帆は毎朝の習慣である朝のジョギングを欠かさない。 引退したスポーツ選手とは言え、幼児期からの習慣が消えることはない。 信田は朝の放送で元メンバー達の脱落が発表されなかったことに安堵していたし、 それが当然だと思っていた。 (腰の調子もいい…) 信田美帆は万全のコンディションで今大会に臨んでいる。 「あ!?」 古そうなアパートの横を通り過ぎようとしていた信田はその部屋から出てくるかつての仲間を発見した。 「あっちゃん!?」 「み…美帆ちゃん…なんでこんなとこ走ってんねんな?」 思わぬところで稲葉貴子と顔を合わせた信田は足を止めた。 「な…なんでって、習慣だからさ…えっと、あっちゃんこの部屋借りてんの?」 「さあ?知らんけど空き家みたいだからさ…勝手に使っててんけど」 ふうん…と息をついた信田は口を紡いだ。 「なんかさ…゛決勝で逢おうぜ゛って感じだね」 お互いにそれぞれ誇れるものを持ち、競い合えるメンバーだった。 だからこそ馴れ合うことはせず、今回はバラバラに行動している。 二人が別れようとした瞬間…隣のドアが開いた。
「コミ!」 ただの偶然だろうか、稲葉の隣の部屋には小湊美和が泊まっていた。 「なんか外で話し声してるからさぁ…誰かと思ったら美帆ちゃんとあっちゃんだったんだよね」 ははは…と嬉しい再開を喜んだ三人。 「こういうのがあれだよね。゛シンクロナイズド゛だっけ!?」 「ちゃうちゃう、゛シンクロナイズドスイミング゛やって」 「……?」 ゛シンクロニシティー゛という言葉が思い出せずしばし沈黙する三人だったが、 そこにまた一つの偶然が訪れた。 「あれ?なんで揃ってる?」 驚きでくわえていた肉まんを落としそうになったRuRuが三人の視線の先にいた。 「し…信じらんない」 「ちょっとこれは無理あるやろ…」 驚きを隠さない四人だったが、気付いた。 今は再会を喜んでいる時ではない… 「じゃあ、あれやっとく!?」 信田が他の三人の顔を見渡す。 「恥ずかしいけどね」 そう言いながら差し出された小湊の手に他の三人の手が重ねられた。 「T&Cボンバー・Let's Go!」 こうして四人はそれぞれ別の方向に歩き始めた。しかしその先に見えているものに違いはない。
338 :
名無し娘。 : 2001/02/16(金) 23:34 ID:490CFLBM
第二部、なんかいい感じで進んでるね。 ココナツが大会のカギを握ってるのかな(死刑囚的役回り?) 外伝のほうでココナツが放置されてたのにも ちゃんと理由があったんだね。
し・・・しまった・・・安倍なつみのところに(残り26人)を書くのを忘れた・・・
>>338 ありがとうございます。
はっきりいうとココナッツでは話が作れなかったからなんですけど…
一度主役にすると愛着を感じて悪役には出来なくなってしまうんですね。
どうでもいいか・・・
「こ…こんなことしててもしょうがないな…」 眠れない夜を過ごした北上アミはそう独り言を言いながら腰を上げた。 「おっと…」 ふらつく足を平手で叩き、自分に喝を入れる。 (このまま…このまま脱落するわけにはいかない) このまま脱落したら大木衣吹は私を許してくれるだろうか… 協力を申し出た大木を見殺しにし、その上ダニエルに倒された大木を放置した自分。 再び大木が倒れた現場に戻った時、すでにその姿は無かった。 誰かが病院にでも運んでくれたのだろうか…きっと大木は私を怨むに違いない。 今更何をしても無駄に決まっている。だが、 脱落するのは誰か一人でもこの手で誰かを脱落させてからだ。 もはや北上の表情に臆病者の面影は無くなっていた。 「…」 その時北上の視界に誰かが入って来た。 「あんた確か…」 「キムラアヤカです」 「!!」 大木を倒したダニエルが所属するユニット、ココナッツ娘。の中心的メンバーだった…
「き…キサマッ…!」 「キャッ!!」 「!?……゛きゃ゛って…」 余りにも女性的なリアクションに北上の闘争心は萎えた。 「ダニエルデラウニーの居所…知ってる?」 「ダ…ダニエルに何か用があるんですか?」 「アンタには関係無い。知ってるか知らないかを聞いてるんだよ。 …衣吹をやったやつの…居場所を」 アヤカは探るような視線を向けてみると、言った。 「ダニエルに復讐するなんて…あなたには無理ですよ」 「な…なんだって…!?」 「ち…違います!」 襲い掛かろうとする北上を慌てて制するとアヤカは説明を始めた。 「今の北上さんはボロボロです。恐らく見た感じ北上さんは一睡もしてなさそうです。 そして多分ダニエルはゆっくり寝てると思いますし、多分無傷です。多分っていうのは、 こういう時は最悪の状況を想定しておいたほうがいいってことですよ」 北上は自分の血だらけの拳を見た。 「だからって…私は諦めるわけにはいかないんだ」 アヤカは同情を滲ませたような表情をすると、ポケットから何かを取り出した。 「これ…ダニエルとははぐれてしまって行き先はちょっと …分からないんですけど…復讐…したいんですよね!?」 「こ…これってまさか…」 アヤカが取り出して見せたのは、゛悪魔の薬゛ステロイドだった。
「アハハハハハハ!!!」 高笑いをあげながらアジトに戻ってきたアヤカを三人は不思議そうな目で見ていた。 「徹夜でおかしなテンションになってるみたいだな」 「まあ、アベナツミのカードを持ってきたんだから上等だね」 ダニエルとレフアはそれほど心配してはいない様子だったが、 ミカの感情は違っていた。アヤカの豊富な知識と、それを操る縦横無尽な知恵をもってすれば、 今大会において私達四人はかなり優勝に近い位置にいると言える。 しかし…アヤカのやりかたに賛同出来ないもう一人の自分がいるのも確かだった。 純粋なアメリカンであるダニエルとレフアと違い、日本人の母親とオーストラリア人の父を持つ ミカはどちらかと言えばアヤカのほうに近しいものを感じている。 だからこそアヤカのやりかたに異議を唱えたいのだが、かと言って、 自分に優れた戦略眼があるわけでもない為、ただいいなりになっているしかなかった。 「じゃあ、私は出てくる。誰かさんと違って必ずカードは持ちかえってくるからな」 ミカの方を見ながらそう言うとダニエルは出ていった。 朝のヨガ体操を終え、長い髪をきつく縛るとレフアは無言で出ていき、 アジトにはアヤカとミカの二人だけになった。
「あのさ…アヤカ…」 沈黙を破って口を開いたミカだったが、 「んーーーー!?」 アヤカはすでに半分眠りの世界の住人になっていた。 アヤカは一晩外で動いていたんだ…起こしちゃ悪いと思い、 「ううん、なんでも無い」 と言った。 暫くするとアヤカは寝息を立て始め、廃ビルの地下室にあるアジト内はその音で満たされた。 アヤカ…ハワイ大学の学生ってどんなカバン持ってるんだろう… 少しためらったが、ミカはアヤカがここに来て以来手放さないバッグを手に取った。 「…普通」 何の変哲も無いバッグに過ぎなかったことに多少の落胆を覚えたミカは、 今度はその中身へと関心を移した。 (だ…駄目だよ勝手に見ちゃ…) (ばれなきゃ大丈夫だって!) 相反する二つの内面だったが、興味の後押しを受け、あっけなく後者が勝利した。
中には、ノート型のPC、訳の分からない薬物類、そして機械的な部品類… どれを取ってもミカの興味を引くものは無かったが、最後に見つけたものを手に取った。 「どこの鍵だろ…」 古めかしい鍵をバッグの隅に見つけたミカはアジトの扉に差し込んでみた。 違う…その鍵は壁に掛けてある。 鍵穴を探して部屋を見渡したミカはデスクの引き出しにそれがあるのに気付いた。 普段はアヤカはこのデスクで作業をし、レフアとダニエルはソファーでくつろいでいる。 (アヤカは今ソファーで寝てるし…) 意を決して引きだしの鍵穴に鍵を差し込んだ。 がちっ… と留め金が外れる音と共にその鍵がそこのものであるということを手応えで教えた。 (ごめんねアヤカ) 心の中で謝罪しながら引き出しを開けたミカは、しかし驚きでその身を凍らせた。 (た…大変…は…早く片さなきゃ…) 幸いアヤカが目覚める前に全てを元どおりに片付けたが、ミカの体の震えは止まらなかった。 (どうしよう…どうしよう…) ミカは必死で考えをまとめようとしている。
「あ、よっすぃー!!」 ゲームセンターから出てきた吉澤を発見した加護は声を張り上げた。 「加護…辻…」 二人の姿を発見した吉澤は胸を撫で下ろした。 一日目に誰とも出会わず、このまま無益に時間をすごしてしまうのかと思っていたからだ。 まだ午前中の内にメンバーと出会えたということは幸先がいい。 これが辻と加護ではなく、後藤であればもっと良かったのだが… 「よ っす ぃー、プリ クラ 撮って たの!?」 相変わらずな辻に少し安堵する吉澤だったが、まだ気を緩めるのは早い。 「プリクラじゃなくてね…人探ししてるの」 人数が少なくなってから後藤と出遭っても仕方が無い。 後藤のたがが外れるのは決まって感情が極限の状態になったときだから… ある程度の安全が確保されてからでは遅い気がする。 「ごっちん見なかった?」 「見 たよ」 思いがけない辻の答えに吉澤は身を乗り出した。 「ま…マジ!?いつ?」 「き のう ここに来た 時」 「のんちゃん、それは当たり前やがなー!」 「あ はは ー!」 「………」
「あ!よっすぃー待ってー!」 無言で立ち去ろうとする吉澤を引きとめる加護。 「あのね、私急いでるの。ごめんね」 「う…うん。こっちこそごめん。ごめんついでなんやけど…よっすぃー飯田さん知らん?」 そう言えば…それは吉澤にとっても気になることではあった。 この日朝の放送で脱落の発表が合ったのは安倍なつみだけで、 それと一緒にいたはずの飯田の名前は発表されなかった。 「飯田 さん …」 不安げな表情をする辻だったが、吉澤は飯田どころか、 開始以来仲間と出会ったのはこれが始めてだった。 「うーん…ちょっとわかんない。ごめんね…」 「そう…のんちゃんが心配してるみたいやったから… あ、よっすぃーずっと一人なの?」 「うん。ごっちん探してるんだけどね…なかなか見つかんなくて」 落ち込む吉澤を見て辻が口を開いた。 「よっ すぃー、気を 付け て ね」 「う…うん。そっちも気を付けてね」 それぞれ求める人の状況を知らないまま一人と二人は別れた。
「はあ…早くちゃんとしたもの食べたいよ」 石黒彩はファーストフード店でハンバーガーにかぶりつきながら不平をこぼした。 しかし反面普段は子供と一緒のため子供の体の体を考えジャンクフードを控えているため、 口内に広がる味を懐かしく思っているのもまた確かだった。 ズンッ… そんな時隣の席に腰を掛けてきたのは微妙に茶色に染まった長髪を持つ背の高い女だった。 しかしその髪はボサボサに振り乱され、顔も見えないほどだ。 (な…なにこの人…エキストラにしては存在感ありすぎるんだけど) 「イラッシャイマセーーー…」 「!?」 隣に座った女が発した言葉だった。 「オキヲツケテ逝ッテラッシャーイィィ…」 と言いながら両手を持ち上げると、 ダンッ!!! それを振り下ろし、テーブルを破壊した。 「!?」 (ま…まさかこの子…) 乱れた髪から覗く顔を半分ずつ赤と青に塗り分けてはいるが、 確かにそれは飯田圭織だった。
「ど…どうしたの!?圭織!?」 間合いを嫌って距離を取った石黒ではあったが、 まだ飯田が自分を攻撃してくるなど信じられないでいる。 モーニング娘。内ユニット第一号として発足したタンポポの一員として共に活動した仲間。 そしてだからこそ石黒は飯田の優しい性格をよく知っている。 「ア…アシュラマンみたいな顔して!!」 薙ぎ払われる鋼鉄の腕を避けながら飯田を懐かしい漫画のキャラクターに例える。 もうすぐ一歳になる自分の子供…守る者がいるということはそれだけで強さに変わる。 店内のインテリアを破壊しながら薙ぎ払われる腕を石黒はよく避けた。 ドッ… しかし遂に石黒の背中は壁に押しつけられた。 部屋の隅に追いつめられ、絶体絶命のピンチに陥ったように見えた石黒だったが、 覚悟を決めたその瞬間、幸運が起きた。 相変わらず横薙ぎにはらわれた腕が壁にめりこみ、石黒にヒットする直前で止まったのだ。 (…そ…そこで頭冷やしてろ…) そう思いながら飯田の横をすり抜けて逃げる石黒。 (た…助かった…) そう思った瞬間、石黒の耳に飯田の声が聞こえた。 「逝ッテヨーーー死…」 ボッ… という低い音と共に飯田の壁にめり込んでいない方の腕の一の腕が発射され、 石黒の背中にヒットした。 「がっ…」 無意識の言葉を発して石黒は前のめりに倒れ、二度と動かなかった。
「な…なにこれ…」 徹底的に破壊された店内を見て後藤真希が呟く。 「あ…あれ!?」 店内に倒れている女が…近づいてみると、それは石黒彩だった。 ほんの数分前に店内を破壊し尽くした張本人は店を出ていった後で既にいない。 「あ…あやっぺ!!」 しかし市井は後藤の肩に手を掛ける。 「動かさないほうがいい…」 明らかに右肩甲骨あたりが不自然に凹んでいる。 「救急車は!?」 市井に問われたエキストラは手配したのでもうすぐ来るだろうとだけ答え、 やったのが誰かという質問に対しては答えることをしなかった。 「ひどい…ひどすぎる…」 後藤の目に涙が浮かんでいるのを市井は確認したが、 それが零れることはなかった。 (まだか…) 「騒ぎを聞きつけて人が来るかも知れない…すぐこの場は離れた方がいい」 「うん…ごめんあやっぺ…」 「おっと、あやっぺのカード持っていかないと」 石黒の後ろポケットから覗くそれを取り出そうとする市井を後藤は咎める。 「な…なんで!?」 「だって、どうみてもあやっぺ再起不能でしょ」 「だ…だからってなんで私達があやっぺのカード取らないといけないの?」
「相変わらずだだっ子だねあんた…ほら!どいて!」 「いやだ!」 市井の前で正直な感情を発露する後藤。 (いい傾向だ…) 後藤の表情を見てそう思う市井だったが、それを表情に出すことはしない。 むしろ優しい表情で後藤を諭す市井。 「…あやっぺもきっと私達が持っていくことを望んでるんだからさ…」 「……あやっぺが望んでる?」 「そ。もし他のやつらが持っていったらそいつらがあやっぺのカード使っちゃうんだよ」 今大会での勝敗を分ける役割を持つこのカードはその他に身分証明書、そして二万円分の プリペイドカードの役割を持っており、敵のカードを奪えばそれを使うことも出来る。 「……分かった……」 市井はようやく折れた後藤の頭に手を乗せると 「合理的にいかないとね」 そう言って石黒からカードを奪った。 「ごうりてき…」 (また説明しないとなんないの!?) という顔をしながら市井が外を見ると、恐れていた事態が既に二人を待っていた。 (残り25人)
「あの片方は…見覚えがあります」 外から店内の様子を伺うバレリーナ戦隊メロンの大谷雅恵が言った。 「確か…スーパーヒロインの…」 「ええ。ゴボウマキです」 斎藤瞳の出したキーワードからゴボウ巻きを連想する大谷。 二人は少し震えている。しかしこれは恐怖から来るものではなく、 初めて地球人の、しかもトップクラスのスーパーヒロインへの期待から来るものだった。 「もう一人は見たことが無いんじゃない?」 「ええ…多分ゴボウの部下か何かでしょう…」 「なるほどね…」 そう言って店に足を踏み入れる二人。
(ちっ…やっかいな相手が来た…) バレリーナ戦隊メロンは生っ粋の軍人、言わば根っからのストリートファイターとも 言いかえることが出来た。 既にその程度のデータを入手していた市井は 「逃げるよ」 そう後藤に指示した。 裏口から逃げ出した二人は後背に 「瞳は太りすぎなんですよ!!」 という声を聞きながら楽に戦線離脱に成功した。
「逃がして…くれませんよね?」 カントリー娘。の小柄なメンバーあさみは元T&Cボンバー、小湊美和を見上げていた。 「分かってるなら聞かないように」 この日の朝他の元メンバーと必勝を必勝を期して別れた小湊は昼下がりのこのとき、 ようやくターゲットの捕捉に成功している。 カントリー娘。のもう一人のメンバーであるりんねとは何度も対面したことのある小湊だったが、 このあさみとは全くの初対面だった。 (随分小さいな) という印象を持ったが、バレリーナ戦隊メロンの一角を鮮やかに崩すところを見て以来、 (私の獲物) という認識を持っている。 さっ… と自然に構えるあさみを見てただものでは無いと認識する小湊だが、彼女も負けてはいない。 「族上がりを舐めたらいかんよ」 そう言うと無防備な前蹴り――ケンカキック――を放つ。 しかしそこは百戦錬磨の小湊、あさみのガードをかいくぐり的確にそれをヒットさせる。 「うっ…」 後ろに転げるあさみ。
「はっ!」 追い討ちをかけようとした小湊だったが、 あさみは素早くヘッドスプリングで立ち上がりそれを牽制する。 (身のこなしなら負けないっ!) 素早く距離を詰め、得意の技を放つあさみ。 「回転龍尾脚!!」 完全なタイミングで放たれたそれはしかし 「おっと」 空しく空を切る。 (そ…そんな!?修行では一度も外したことが無いのに!) 「うわっ」 着地のタイミングを狙って放たれた足払いで変な転びかたをしてしまうあさみ。 「悲しいけど…これって、戦争なのよね」 と言いながらマウントポジションを取りメリケンサックをはめると、 小湊はあさみに殴り掛かる。 「本気なんだよ!こっちは!」 あさみから見れば小湊が放つパンチはどれもフォームが目茶苦茶だったが、 それにメリケンサックが加わり、容赦無くあさみの体にダメージを積み重ねる。
「手足が短いから当たらないんだよ…致命的だったね」 あさみはショックを受けた。 (そ…そんなバカな) ほぼ勝利が確定したと言っていい小湊だったが周囲への警戒を怠らない。 「決勝でみんなが待ってるんだ!」 ぐるる… あさみの危機に駆けつけた野良犬はすでに3匹にのぼっている。 (ほら…さっさとかかってこい…) ガウッ…!!! 一斉に動き出したその瞬間、 キャインッ!!! しかしすぐに情けない声を上げてうずくまる野良犬達。 (な…なに?どうしたの?) 急におとなしくなった犬達に驚くあさみ。 (そ…そんなバカな) 0歳の頃から民謡の英才教育を受け続けた小湊の喉は゛犬笛゛と同じ周波の音波も発することが 可能となっている。
(ふふ…勝った……!?) 「がっ…」 小湊は自分の状況が把握出来ていなかった。 (な…なんで…!?) 私はあさみを圧倒し、そしてあさみの危機に駆けつけた野良犬たちも押え込んだ。 なのに… (私が首を絞められている!?い…いやだ…ま…まだ…み…みんなが待って…る) そのまま小湊は気を失った。 「はぁ…はぁ…強かった…」 しかし、あさみは不思議でしかたがなかった。 あさみを押え込んだ小湊は突然攻撃の手を緩め、勝利を確信したような顔をした。 その隙にあさみは小湊からの押さえつけを抜け出し、スリーパーホールドで勝利を奪取した。 常に犬の動きに注意していた小湊があさみを殴る手に込める力は中途半端だったし、 犬が動き出してからは゛犬笛゛を発する口に意識が集中するあまり手が完全に留守状態になっていた。 あさみは、 「いただきます」 そう言って小湊のカードを奪い、喝を入れて小湊の意識を戻すと、 野良犬たちに礼を言って今だ状況が把握出来ていない小湊のもとを去った。 (残り24人)
357 :
Ver.Na : 2001/02/18(日) 01:02 ID:eB2XNq8E
...
358 :
名無し娘。 : 2001/02/18(日) 01:20 ID:g8cHruLE
最近更新の勢いがすごいな。 見てるこっちとしては嬉しいけど。 そういえば石黒彩ってキン肉マンヲタだったんだよな…。合掌。
359 :
名無し娘。 : 2001/02/18(日) 01:24 ID:c2/4ZH9s
更新早いね。のってきたのかな。 今のところお気に入りは誰も脱落してないな。 今回更新分を読む限り 後藤=バキ 市井=勇次郎 という感じもする。 あと、飯田のはどっちかと言うとあしゅら男爵ではないのかなあとも思った。
360 :
名無し娘。 : 2001/02/18(日) 16:58 ID:90BoHNU2
2部おもしれよ〜。 2部おもしれ〜から、飛ばして読んでなかった外伝も一気に読んだよ。 つづきに期待。
361 :
マングース西浦 : 2001/02/18(日) 17:18 ID:atWw1yLA
こうレスが沢山つくと励みになるなあ…ありがとうございます。
>>357 、、、
>>358 これからもペースを落とさないでいけたらいいな…と思います。
キン肉マン好きっていうくらいしか掴み所が無かった・・・
>>259 乗ってます。それに前までみたいに行き当たりばったりな書き方
を止めてみたので書きやすいというのもあります。
当てはめは…答えないでおきます。ごめんなさい。
そう、中澤裕子があしゅら男爵に例えるっていうのを入れようと
思ったんですがどうしても入れられず…
>>360 ありがとうございます。
そういうのがはげみになります。
(明日香の気持ち…分かってきたよ) 気持ちを整理しきれていなかったために後藤と変な別れかたをしてしまった矢口だったが、 ようやくその整理がつき始めていた。 (自分が正しくないと思ったことははっきり正しくないって言う… そんなまっすぐな子だったよね…明日香って) だから、後藤から敗れた福田は敗者としてこの大会から自ら脱落することを選んだ。 しかしつい先程までの矢口はそれを理解できずに悩んでいた。 (でもさ…そういう生き方って辛いよ明日香) 世の中には妥協しなければならない局面が多いし、それを拒否することは生きる術を失う ことを意味する場合すらある。 (…でも…明日香なら…明日香ならきっと大丈夫) 「あっ、矢口さん!」 横から雑音が聞こえたのはそんな時だった。 「ほら!このお洋服かわいくないですか?」 矢口の視界にショッキングピンクが広がったが、その意識までは届かない。 (最後まで私に色んなことを教えてくれたんだね明日香…) 「あれ?ちょっと矢口さん」 「私も…明日香みたいに、精一杯生きてみる。見てて…明日香」 そう言うと矢口は走り出した。 どんっ… 「あっ!……」 矢口はその肩を石川梨華の手にぶつけると真新しいピンクのワンピースに 幾つかの足跡を残して去って行った。
(はぁ…はぁ…急がなきゃ…) 昨晩遅くまで仲間達の居場所を探していたからとは言え、昼過ぎまで爆睡していた柴田は、 出遅れを取り戻すために、しかしあても無く「街」を走っていた。 (なんで待っててくれなかったんですかみんな…) 自ら食料調達係に立候補したのはいいが、コンビニでの清算に戸惑い、 ようやく戻った時、すでに仲間たちは元いた場所にいなかった。 (み…みんな無事なんですよね!?) 心の中に何度も浮かんだ自分以外全員が脱落した情景を必死で打ちそうとしている柴田だった。 「!」 その時、前方に自分と同年輩くらいの女がいるのを発見した柴田は反射的に電信柱に身を隠す。 その女は道に直に座ってピンク色の服についた汚れを落とそうと四苦八苦している様子だった。 (敵…それとも…!?) しかしそのオロオロした様子はとても手強い相手には見えない。 一対一なら戦闘になっても何とかなるに違いない…そう判断し、 柴田は電信柱から身を乗り出した。
「こんにちは…」 突然横から聞こえた挨拶に服を叩く手を休め身を縮こまらせる石川。 (この人も参加者か…) リアクションでそう判断した柴田は緊張を新たにし、 「私は…バレリーナ戦隊メロンの柴田あゆみです」 (ば…ばばば バレリーナ戦隊!?) それが敵グループの一つの名前であることに気付き、一気に逃げようとする石川。 「あなたは?」 しかし柴田はそれを上回るスピードで石川の前方に回り退路を断つ。 (ちゃ…チャ−ミーを殺さないで…) と助けを求める石川だったが、近くには二人以外の参加者はいないようだった。 しょ…しょうがないと意を決した石川はしかし、 「石川梨華、神奈川県出身15歳!今日はあんまり考えないで楽しみたいと思います!」 とデビュー時の自己紹介そのままに口を動かしてしまう。 「…」 柴田はしばらく考えるような表情を浮かべると、聞いた。 「仲間と…はぐれたんですか?」 (え!?) 意外な質問に顔を上げる石川。
石川は開始直後、順に吉澤、矢口、後藤、辻、加護、中澤、飯田、安倍の順に近づき、 結局誰にも一緒に行こうと言うことが出来ず、必然的に一人で行動することになってしまった。 ついさっき矢口と出遭ったりもしたものの、矢口は石川の存在に気付くことすらなく行ってしまった。 (で…でも) 「そ…そう。はぐれちゃったんです」 一人ぼっちと分かられたらそこに付け込まれてしまう… 石川がその16年の人生で身につけた知恵だった。 「やっぱり…実は私もそうです」 (な…なんなんだろう) 言いたいことが分からず戸惑う石川に柴田は続けた。 「それならこんな取り引きはどうですか?」 ゛取り引き゛と言う大人な響きに戸惑う石川だったが、それは石川にとって悪いものでは無かった。
「私と、石川さん。仲間とはぐれてしまった二人がいます。 その二人が一緒に二人でいるのと、それぞれ一人づつでいるのと… どちらが安全だと思いますか?」 考えるべくも無い。 柴田は、同盟を結ぼうと申し出ている。 「二人一緒の方が安全…です」 そう答えた石川に首肯すると柴田は微笑んで続けた。 「それぞれがはぐれた仲間に出会うまでの関係です。もし石川さんが仲間と出遭うことが出来れば、 石川さんはその仲間に説明して、私を無事に逃がすと約束して下さい。 そしてもし私が私の仲間と合流出来たら、説明して石川さんは無事に逃がします」 特別断わる理由も無いが一応困ったような顔をしてみせた石川に柴田は付け足した。 「もし断わるのなら、石川さんとはここで決着をつけなければなりませんね」 (け…決着?) 突然飛び出した物騒な言葉に否応無く石川は同盟の締結に同意した。 「それから…」 「え?」 柴田は 「裏から叩くといいですよ」 石川の汚れた服を見てそう言った。
「こんなところにあったんだね…諦めかけてたよ」 この日の朝仲間との再会を果たしたRuRu本田はその内の一人が惜しくも戦線を脱落したことを まだ知らない。 しかしながら、求めていたものを見つけて満足な表情を浮かべるRuRu。 「もう日が暮れちゃったよ」 約一日半をかけてRuRuが探し続けていたのは中華街だった。 満足そうにそこに足を踏み入れいて行くRuRuは朝に食べたコンビニの肉まんの味を 思い出していた。 (あんなの中華まんじゃないよ) もともと商品名が違うのだから違って当然だったがRuRuは中華まんを無償に懐かしく思っていた。 16歳で母親と二人だけで来日し、それから皿洗いのバイトをしながら独学で日本語を学んだ日々。 そんな辛い日々に温もりを与えてくれたのは母親の中国の家庭料理だったし、 肉まんのような庶民的な中国の味だった。 (やっぱりこれが無いと…) そう思いながら店頭販売の列に並ぶRuRuの横に現われた女がいた。
「こんにちは。RuRuさん」 「!ちッ…!」 舌打ちとともに距離を取ったRuRuが見たのはカントリー娘。のリーダー的存在、りんね。 同じ系統のキャラクターを持つ飯田圭織に密かなライバル心を持っていたRuRuは、 アイドルをさがせなどの番組でりんねと顔を合わせることがあっても、 その存在を徹底して無視してきた。 「どうしたんですか?割り込んでもいいんですか?」 あくまで白々しいりんねの態度に業を煮やすRuRu。 「あ、私あそこのラーメン屋さんで食べてきたばっかだから別に中華まんはいいや」 「ちょっと…りんねちゃんふざけないで」 その言葉に表情を引き締めるりんね。 「私…あさみちゃんより先に消える訳にいかないんですよ」 「私だって…みんなより先には負けられないよ」 それぞれに負けられない理由を持つ二人が構える。
「馬は連れて来てないの?」 RuRuはりんねが牧場で馬や様々な他の動物の世話をしていることを知っている。 「馬がいなくても…勝ち残ってみせますよ」 りんねの視界の中でRuRuはゆったりした動きを始める。 片足立ちから片方の足に重心を乗せもう片方の足は爪先だけを地面に付ける… (太極拳か) りんねはその独歩から虚歩への移動動作で相手の技を読んだ。 RuRuは弓歩の体勢で両の拳を引いた姿勢で止まり、言った。 「いくよりんねちゃん」 「待ちくたびれましたよ」 そう答えたりんねは驚愕した。 「゛狼牙風々拳゛!!」 (は…早い!!!) 先程までのゆったりした動きを100倍速にしたようなほどのスピードで休み無く繰り出される 拳、掌、鈎手、剣指を必死にガードするりんね。 (こ…これが全国レベルの闘い…でも…) 「一発一発が軽い!」 ゛破裏拳(ハリケーン)゛一発で狼牙風々拳を止めてみせるりんね。
無意識に頬に手を当てるりんね。 「…くっ…」 その頬に当てた手には血が付いている。 「ちっ…こうも簡単に狼牙風々拳を止められるなんてね」 そう言うRuRuだが、意外にその表情にショックは浮かんでいない。 (ま…まだ奥の手があるって言うの?) 「りんねちゃん、゛気゛って知ってる?」 勿論聞いたことはある。 人体に流れる生体エネルギーだとかなんとか… よくインチキ臭い中国人が気で難病が直ったなどと喧伝するのを見るが、 りんねは余り信じてはいない。 「勿論…聞いたことはありますけど…」 さっ… RuRuは突然片手を上に上げる。 「手が上に上がると体が下に下がる…」 そしてもう片手を下げると、 「手が下に下がると体は上に上がる」 そう言った。
「な…なんですか?」 「゛気゛は体がどうして動くか、教えてくれる」 そしてRuRuは両手を正面で合わせると、 「これで体の軸が中心に来た…」 と言いながらそれを自分の方に引きつける。 「か〜…め〜…は〜…め〜…」 (まさか!) 「破!!!!」 という言葉と共に両手が前方に突き出される寸前、 りんねは横飛びに飛んだ。 後方で炸裂音がする直前までにりんねは一気に間合いを詰め、 「゛烈火太陽脚゛!!」 渾身の飛び蹴りを放つ。 「あぁっ…!」 決め技を外された上に飛び蹴りを叩き込まれ、 屋台を破壊しながら豪快に吹き飛ばされるRuRu。 「くっ…かめはめ破を避けるなんて」 「覚悟して下さい!」 畳み掛けようと間合いを詰めるりんね。
「゛百戦百勝脚゛!!!…うわっ!?…あっ!!」 しかしRuRuはその攻撃をそばに転がった中華鍋で受け、 「中華鍋炒め物返し!!」 それを炒め物を返す要領で上空高く放り投げる。強力なスナップの力が無ければ不可能な技だ。 どんっ… そのまま地面に叩き付けられるりんね。 「はぁ…はぁ……もう動けないね…」 「く…足が…」 中華鍋を直撃した足も勿論ノーダメージではない。 それどころか立ち上がることすら困難なダメージを現在のりんねに与えている。 「悪く思わないでね…」 そう言うとRuRuは再びかめはめ破の構えを取る。 中国の4000年に及ぶ気功の歴史が産んだ技がりんねを今まさに絶体絶命に追い込もうとしていた。 「か〜…め〜…は〜…」 RuRuの詠唱を聞きながら目を閉じ、覚悟を決めるりんね。 (ごめん…あさみちゃん…先に脱落するよ) 「破!!!!」 その声とともに身を強ばらせたりんねだったが、その身には何も起こらない。 目を開くと、RuRuは片膝をつき動けないでいる。
「る…RuRuさん…」 片足を引きずりながら近づくとRuRuは大きく肩で息をついている。 「り…りんねちゃん、私の負けだね…」 RuRuの大袈裟な発汗は、その゛気゛が尽きたことを示していた。 「なんで…かめはめ破を途中で止めてしまったんですか?」 りんねは納得のいかない勝利に憤りを覚えていた。 RuRuは口を開くのも面倒だ、と言わんばかりに自らのカードを取り出すと、 りんねに差し出した。 「ちゅ…中華まんがあったら…」 RuRuがようやく発した言葉でりんねは察した。 りんねは中華まんを買う列に並んでいたRuRuに闘いを挑んだ。 そのせいでRuRuは空腹のまま闘わざるをえなくなり、 その空腹の為に肝心なところで゛気゛が切れてしまった。 「中華まんがあったら…RuRuさんが勝っていました」 そう言って頭を下げるとカードを受け取り、りんねはRuRuの元を去った。 「ベストを尽くして負けた…悔いはないよ」 脱落者となったRuRuが最初に発した言葉だった。 (残り23人)
374 :
マン糞研究家 : 2001/02/18(日) 18:34 ID:QvXDaZ1.
375 :
名無し娘。 : 2001/02/18(日) 23:47 ID:fhs711NA
( `.∀´)<ちょっと作者さん!どうなってるのよ!! 二部に入ってあたしがまだ一度も出てきてないじゃない!! それとも、主役は満を持して登場ってことかしら!?
376 :
Ver.Na : 2001/02/19(月) 00:50 ID:kAk/tIxU
...
377 :
名無し娘。 : 2001/02/19(月) 00:57 ID:x7rg74lE
>>375 保田は市井と後藤がイチャイチャしてる後ろで
人知れずココナッツの面子と戦うと予想してみた。
378 :
マングース西浦 : 2001/02/19(月) 20:39 ID:F7ObaHL6
閉店するレンタルCDショップでハロープロジェクト関係のCD
いくつか買って来てしまった・・・平家さんのsceneがいいなぁ・・・
>>374 見たこともありません。
しかし古いものを・・・
>>375 う・・・伏線(のつもり)はいくつか既に出してるんですけど・・・
勿論忘れているから出ていない訳ではありません。
>>376 、、、
「ハァッ…ハァ…」 飯田圭織は胸のあたりを抑えながら壁にもたれかかり、 その歩を進めていた。 飯田のプログラムは通常時ならフルパワーの30%程度の力に抑えるリミッターが 働くようになっているものの、 現在の崩壊した飯田圭織のシステムはそのリミッターを解除し、 全力を開放している。 そしてそれによって石黒彩に反撃を許さず勝利するほどの力を手にしているが、 その力は飯田の体の限界を優に超えており、 完全にオーバーヒートしてしまっている。 「ヒ…ヒヤシテクレ…」 辛うじて働く危機管理システムが、体の危険を訴えるとともに、 「ナンニンタオセバヒエルンダ…」 とアヤカのウィルスは間違った情報を与えていた。 飯田の頭の中にはかつての仲間達の顔が゛敵゛として浮かんでおり、 その中には当然飯田の身を心配する辻希美のものも含まれていた。
時間は既に9時半を回り、「街」はすっかり夜の装いをたたえている。 そしてその「街」を一人歩くのはモーニング娘。とタンポポのメンバーで ミニモニのリーダーでもある矢口真里だった。 (頑張るって言っても…何もやることが無いなあ…) 何よりも集中力が問われる状況に合ったが、 矢口は何より飽きっぽいところがあったし、 それほど孤独に耐えるような性格ではない。 (あぁ…なっちはいなくなっちゃったし…祐ちゃんはどこにいるかわかんないし…) そう思いかけたところで福田の顔を思い出し、再び気を引き締める矢口だった。 (ん…なんだろ…) 途切れ途切れに街灯で照らされているものの基本的には闇に支配された裏通りのため その姿は見えないが、少し遠くから話し声がする。 「こ…こっちに来そう」 小柄な体を操り素早く物陰に隠れやりすごそうとする矢口。 「今日も誰とも逢わんかったなあ」 「このままやったらうちら二人で行ってまうんちゃいます?」 すっかりリラックスしたような関西弁の二人… 声を聞いただけですぐ分かってしまう二人、 モーニング娘。の中澤裕子と…平家みちよだった。 (あれ!?なんで祐ちゃんみっちゃんと一緒にいるわけ?) 偶然にも捜し求めていた一人と接近遭遇した矢口だったが、 その心臓の鼓動は緊張に高鳴っている。 (祐ちゃんとみっちゃん仲いいのは知ってるけどなんで…!?) そう思っている間にも二人は物陰に隠れた矢口の前を通りすぎて行こうとしている。 出ていくべきか、留まるべきか散々迷った矢口だったが、 ついに孤独に耐え切れず物陰から身を乗り出す。
「姉さん朝早いからこっちきついっすわ」 「そんなん別にほっといて寝とったらええやんか」 この日中澤につられて久しぶりに朝五時前に起床するという体験を強要された平家。 朝の風がすがすがしかったのは確かだが、昼頃に襲ってきた強烈な眠気は難物だった。 それさえ乗り越えればむしろ快適な一日が過ごせるのだが… 「ほっといて…って姉さんが起こすんやないか!」 「そうやった?覚えてへんわ」 そんな時後ろから声がした。 「祐ちゃん!!」 二人が同時に振り返ると、そこには矢口が街灯に照らされて立っていた。 その顔は緊張のためか紅潮している。 「や…矢口やんか」 中澤は表情を緩めたが、平家の表情は硬い。 「矢口!来い!」 まるで小動物をおびき寄せるような仕種をする中澤を、しかし平家は諌める。 「な…なんでや?矢口も仲間でええやんか」 「…あきません」 「なんでやねんあんた前゛真里ちゃんはええ子やな〜゛とか言うてたやんか!」 子供のような中澤の口振りに呆れそうになる平家だったが、 「そ…それとは話しが別ですやんか」 矢口はそんな二人を不安な瞳で見つめている。
「姉さん…ルール把握してないんやろ?」 「ルールってなんやねん!?」 問う中澤に平家はここで問題になるルールについて説明を始めた。 この大会は個人戦の他に団体戦の意味合いも持っていて、 もし最後にモーニング娘。の10人全員が残れば10人全員が優勝になる。 しかし逆に言えば平家のようにソロで活動している者が優勝するには、 最後の一人になるしかない。 そして既にモーニング娘。からは安倍なつみが脱退しているため、 これ以上生き残り工作をする必要は無い。 「な…なんで先に言わんねんそれを!!」 「最初に説明しとったやないですか!!」 …一瞬口を噤いだ中澤は続けた。 「それやったらうちら゛アイさがコンビ゛でええやんか」 「それやったらやっぱり真里ちゃんは敵やな」 「あっ…!」 アイさがとはアイドルをさがせという昔二人で司会を務めていた深夜番組の略称だったが それはここでは余り関係の無い話だ。 平家に言われて気付いた中澤が振り返って見た 街灯に照らされた矢口の隣には銀色の棒が浮かんでいた。
よく見るとその銀色の棒の端にはそれを握る人間の手が付いている。 そしてゆっくりとその手の持ち主が街灯の光の領域に入り込んでくるうち、 中澤の背筋に嫌な予感が走った。 「や…矢口!来い!」 おどけていたさっきとは違い中澤の声には鬼気迫るものがあったが、 矢口は一瞬戸惑い、それが明暗を分けた。 「真里ちゃん!後ろ!!」 矢口がその平家の言葉に振り返った時は既に後方に迫ったレファサンボが冷笑を浮かべ、 鉄パイプを振り下ろさんとしていた。 明らかに頭頂部を狙ったそれを肩口に受けた矢口だったが、 「あっ!!」 その一撃で完全に持ち味の機動性を失い、その後はめった打ちにされるに任せた。 「ALOHA〜!!」 呆然とした中澤の意識を、このレファの舐めた挨拶が現実に引き戻した。 変わらず冷笑を浮かべながら血の付いた鉄パイプをひと舐めすると矢口のカードを奪い、 逃げ出すレファ。 「や…矢口……」 そう言いながら一気に駆け出す中澤を 「ふ…深追いしたらあきませんて姉さん!!」 平家の言葉は止めることが出来なかった。 一旦ピクリとも動かない矢口のところで止まった中澤は平家に救急車を呼ぶように指示すると、 再び駆け出した。 (残り22人)
(三十六計逃げるに如かず…か) アヤカは同じ黄色5の仲間として面識のあった平家に発信機を取り付けることに成功していた。 そしてそれをこの日の正午頃から密かに尾行し続けていたレファだったが 中澤と一緒に行動している平家が隙を見せることは無かった。 しかしそこに幸運にも(矢口にとっては不幸にも)飛び込んできたチビがいた。 (フフフ…大物だね) はるか後方で鈍足を必死で動かす中澤を余裕で振り返ろうとしたレファだったがしかし… (は…早い!!) 中澤はすぐ後ろまで迫って来ていた。 「待てやヤン公!!!」 しかしレファにその言葉の意味までは分からない。 レファがT字路に差し掛かった時、そこに幸運が待っていた。 T字路を曲がったところで中澤に向きかえるレファ。 その表情には疲労が張り付いてはいたものの、どこか余裕も浮かんでいた。 「ハァ…ハァ…ハァ…GO HOME……… JAP…」 「な…なんやて?」 聞き返す中澤に問答無用で鉄パイプを振りかざすレファ。
「ハァッ!!…ハァッ!!」 繰り出される鉄パイプを余裕でかわす中澤。 「と…止まって見えるわ…アホ!」 それでも繰り出される銀色の棒をかわし続けた中澤だったが、 突然後ろから腰を抱きかかえられるのを感じた。 「だ…誰や!?」 「カワイイデスネ〜〜」 数少ない覚えた日本語の内の一つを中澤の耳元で囁いたのはダニエルデラウニー、 「!!は…放せや!!」 偶然T字路に差し掛かったところだった。 「オハヨウゴザイマ〜ス!!」 本来ならばオヤスミナサイと言うべきところを覚えているボキャブラリーで代用した ダニエルはそのまま中澤を後方に投げた。バックドロップ、別名゛岩石落とし゛。 ストリートで使用するのは非常に危険な技だった。 救急車の手配をしてようやく追いついた平家が見たのは道路に仰向けに寝たまま 悔し涙ぽろりしている中澤だった。 「せっかく追いついたのに…結局ByeByeByeかいな…」 (残り21人)
市井紗耶香はユースホステルの一室で窓から遠い目で外を見つめる後藤真希の横顔を見ていた。 「後藤…何考えてるの?」 「…この生活…あと何日続くのかな…」 (もう嫌になってきたのか?) と一瞬市井は思ったが、それも仕方が無い。 もともと後藤の集中力は長続きするほうではないし、 昼間に見た石黒彩の無残な姿を見ればなおさらだろう。 「何日だろうね…わかんないけど、世の中には゛永遠゛なんて無いよ」 「…そうだね。ありがとう。紗耶香」 市井は深い意味を込めたつもりは無かったが、 後藤にとってそれは実感だった。 ゛永遠゛に続くと思っていた初期のプッチモニ… それは市井紗耶香の脱退という形で突如幕を下ろした。 『モーニング娘。は゛永遠゛に7人です』って言ってたのに… 「後藤、早く寝ようよ。風邪ひいてまた倒れられたらかなわないからさ」 「あはは…それって紗耶香のほうじゃん」 「はは…うん。…じゃあ、また明日ね」 明日からはさらに辛い出来事が待っているんだから… という言葉を飲み込んで、市井は眠りの世界に入った。
矢口真里と中澤裕子のカードを持ってアジトに戻るダニエルデラウニーとレファサンボ。 そしてその二人の血塗られたカードを見てショックを受けるミカ。 ついに二日目も後藤に出会えなかった吉澤は焦燥とともに眠りに入る。 そして悪魔の薬を握り締めた北上は迷いの眠りから目覚めた。 幾つかの思いを飲み込んで二日目も終わろうとしている。 脱落者(脱落順) 安倍なつみ(モーニング娘。) 石黒彩(元モーニング娘。) 小湊美和(元T&Cボンバー) RuRu本田(元T&Cボンバー)矢口真里(モーニング娘。)中澤裕子(モーニング娘。)
―― 三章 ―― 「――おはようございます」 三日目の朝の放送が始まった。 相変わらず抑揚の無い声で前日既に脱落者となった中澤裕子が 『長いねん』と評した前振りに続き、脱落者の発表を始めた。 何となく前日と同じくらいの時間に目が覚めてしまった平家みちよは 一人でその放送を聞いている。 「それでは、二日目、前回放送からこの放送が開始されるまでの脱落者を脱落順に発表します。 まず、石黒彩さん、小湊美和さん、RuRu本田さん…」 この時に一瞬歯磨きの手を止めたのは稲葉貴子だった。 しかし、小湊は昨晩隣の部屋に戻って来なかったからもしやという予感はあったし、 きっとRuRuも負けたとしてもただ何もせず負けたということは無いに違いない… 結果はどうあれ必ずベストを尽くすのが自分達だと思ってた彼女にショックは無かったし、 それは信田美帆も同様だった。 「…矢口真里さん、中澤裕子さん。以上六名です」 「そ…そんな…」 仲間の脱落を耳にすることに慣れることはない。 それはきっと最後までそうだろう。 後藤はやはり心細さを覚えたし、辻や加護はユニットのリーダーが脱落したことにショックを隠せない。 吉澤は焦燥の念を強めたし石川はまだ熟睡していた。 しかし市井はただ、意外だった。 (脱落順がおかしい…) そのイレギュラーの原因がアヤカだとは気付いていないが、大勢に影響はあるまい… そう思っている。
(す…すごい…これほどとは思わなかった…) ほとんど一日悩み続けた末に悪魔の薬に手を染めたシェキドルの北上アミは興奮のピークに 達していた。最初の投薬の時は心臓が波打つような感覚を覚え、 体中の血の流れが早くなったと思うと、次に神経が研ぎ澄まされるのを感じた。 そしてついさっきまでは木の弾力に負けて弾き返されるだけだった拳が、 今では木の弾力をものともせずにめり込んでいく… (これなら衣吹の仇を…いや、それどころじゃない…) そう思いながら北上はさらに錠剤を手に取り、口内にほうり込むと、 それを噛み下す。 ドクン… 再び心臓が波打つような感覚… 視界すら波打って見えた。 「は…ははははは……」 北上の口からは自然と笑い声がこぼれた。 「勝つためになら死んだっていい…いや、 勝った上に明日も生きるなんて…それは冒涜以外のなにものでもない…」 (まだだ…まだ足りない!!) ドカッ!! 北上の蹴りを受けた若い木は幹から折れてその葉を散らした。 (スーパーヒロインになれたら…その瞬間に死んだっていい) 北上の目には尋常ではない光が宿っている。
レフアサンボをレファサンボに改めました。 小さいァです。
391 :
名無し娘。 : 2001/02/19(月) 23:18 ID:0Ugk02zA
>>378 「scene」は、みっつぃ自身アンコールに持ってくるだけ
思い入れのある曲だからね。
と言う訳で、シングルベストと新曲を買いましょう。
392 :
Ver.Na : 2001/02/20(火) 00:36 ID:qPrWXpQ6
...
393 :
名無し娘。 : 2001/02/20(火) 02:11 ID:5Q4xTuj.
かつての一押し、あっさり脱落させちゃったね…
394 :
ビスケット柵崎 : 2001/02/20(火) 22:59 ID:SVOfnpKs
>>391 あ、そうなんですか・・・冗談抜きでいいですね。
深呼吸しよう!!とFall the raineもいいなあ・・・あ、これはカップリングか。
ベスト本気で欲しくなってきましたよ。
>>392 、、、
>>393 かつての一押し?
誰ですか?個人的に仲間の為に命を捨てるとか
善戦空しく敗れるとか少年漫画的な展開が好きなので、
むしろ好きでも嫌いでも無かったりした方があとまで残るかもしれませんよ。
皆好きですけどね。
395 :
ビスケット柵崎 : 2001/02/20(火) 23:02 ID:SVOfnpKs
「はぁ…地球の食べ物が口に合わないからこんなに太っちゃったよ…」 「……」 斎藤瞳の言葉に、しかし大谷雅恵は耳を貸さない。 毎日その活動拠点を移動させている二人はこの日大通りに面したビルの2階にある 喫茶店の窓際に陣取り、そこから見える大通りの歩道を通る人々を監視している。 今大会においては食糧調達は重大な要素の一つであり、 そしてこの大通りには食糧を扱う店舗が密集している。 現に大谷と斎藤も一日に一度はこの通りを通ったし、石黒が脱落したのもこの通りだった。 二日前にはぐれた柴田あゆみがここを通る可能性も高いに違いない。 「…ちょっと!もしかしてシカトこいてんの?」 「……」 相変わらずの大谷に斎藤はため息をつきストローに口をつけると、 コップに満たされた甘いジュースを口内に導いた。 それによって少し気持ちを落ち着けた斎藤は生真面目な大谷を振り向かせようとする。 「そんなに真面目に見てたからそこを柴田が通るなんていう 保証があるわけでもないんだからさぁ…ほら、このジュースおいしいよ」 「瞳…」 「なに!?」 「ちょっと静かにしていて下さい」 「!!」 しかし何とか言葉を口内に止めた斎藤は椅子に深く腰をかけ、 ふて寝のポーズを取ってしまう。
「…そうなんだ…」 なぜかモーニング娘。の石川梨華に近しいものを感じていた柴田あゆみは、 自分の生い立ちについて全て話してしまっていた。 自分がメロン星と凶悪な宇宙人の星の人間との混血であること、 自分は凶悪な宇宙人の星で生まれたために友達はほとんどいなかった。 しかし始めて出会ったメロン星人が今の大事な仲間で、 それが初めての友達であり…だから、絶対に裏切ることは出来ない、と。 あえて善悪を分けて単純化して説明したのは、 石川にはそのような説明の仕方のほうが分かりやすいと考えたからだ。 しかし柴田はそんな自分自身の心の動きが不思議でならなかった。 (なんでこんなに正直に話せたんだろう…) 思いながら見つめる石川は話の途方も無さに目を点にしている。 「梨華ちゃんは…」 いつのまにか石川を下の名前でその名を呼んでいた柴田は話を促した。 「石川は…中学の時中学のときテニス部の部長だったの」 「チュウガク?テニスブ?」 初めて聞く言葉を説明し合う内に更に打ち解けていく二人。 「そろそろ出ようか。梨華ちゃん」 柴田について出かける準備をすませる石川。 「うん」
「今日はアヤカはどうする?」 ダニエルの言葉にアヤカは、 「私はここでミカと…今後の作戦について話し合ってるつもり。 悪いけど…ダニエルとレファには期待してるからさ…頑張って来てよ」 そう言うとこっそりミカにウインクを送る。 ダニエルはふうん…と二人を交互に見ると出ていき、 暫くするとレファも出ていった。 (アヤカ…私と作戦について話すなんて嘘のくせに…) 心の中でミカはそう思っていたが口には出さない。 ミカを気遣うアヤカの気持ちを無には出来なかったからだが、 しかしミカの気持ちは前日アヤカのデスクの中を見てから揺れていた。 「ねえ、ミカ」 「え!?」 突然アヤカはデスクを立つと、ミカが座るソファーの正面に腰をかけた。 「な…なに?アヤカ…!?」 ミカは気付いた。アヤカの体が小刻みに震えていることに。 「ミカ…ミカだけは私を裏切らないで…」 (え!?) 余りに意外なアヤカの言葉にミカは言葉を失った。 「は…はははは…え!?」 無理に笑顔を作ってみたミカだったが、アヤカの様子は変わらない。 「゛だけ゛…ってどういうこと!?アヤカにはダニエルもレファもいるじゃん…」 しかしアヤカは素早く首を振って否定した。 「あ…あいつらは違うよ!仲間なんかじゃない!…ただの…駒だよ」 ミカは衝撃を受けた。
アヤカは自分ともほかの二人とも同じようにつきあっているように見えた。 なのにダニエルとレファの二人を゛あいつら゛呼ばわりなんて… 「こ…駒って…」 「ミ…ミカはあいつらとは違う…いつも笑ってて…いつも私の後ろについて来てくれた… ミカはすごい小さくて…なんか妹みたいでさ…ミニモニとかやってたとき… 私…すごいさみしかったんだよ!?知ってた?」 ミカは嬉しさより先にアヤカに潜む異常性に恐怖を感じた。 自分のことをそのように思っていてくれたことが嬉しくないわけではないが、 アヤカは一番年上で頭もいいから後をついていただけだし、 いつも笑っているのは両親からの影響で、何より別に小さくなりたくて小さい訳ではない。 黙り込むミカの表情を覗き込んでアヤカは尋ねる。 「…迷惑…!?」 「う…ううん!そんなことないよ!…うれしいよ…本当に」 そう言いながらもミカはアヤカの精神に巣食う゛天才の孤独゛に戸惑っていた。 アイドルという職業に留まるには出来すぎた頭が色々なものを吸収しすぎ、 歳の近いダニエルやレファとの静かな権謀術数に疲れてしまったのだろう。 だから、素直で正直で…一種従順なミカの方にアヤカは引かれていった… 自然な流れと言えたが、ミカにはそれは余りにも重過ぎた。 (アヤカ…駄目だよ…そんなんじゃ…) 強敵達の何人かを間接的に、また直接的に脱落させたアヤカは僅かに気を緩めたのか… ミカはその小さな体で大きな決断をしようとしている。
「瞳…瞳!!起きて下さい!!!」 喫茶店内にこんな大谷の声が響いたのはふて寝のポーズをしていた斎藤が本当に 眠りの世界に入ってしまってから暫くしたときのことだった。 「んぁっ!?」 大谷は間抜けな声を上げる斎藤の口を塞ぐと窓の外に視線を移し、斎藤にも外を見るよう促す。 そこにある斎藤は目を見張った。 「し…柴田じゃん…」 ただしそれは一人ではなく、見覚えの無い誰かと二人で楽しげの談笑しながら大通りを歩いている。 だ…誰だろう…二人とも分からずに戸惑ったが、どちらからとなく 「とりあえず、事情を聞きましょう」 「とりあえず、外に出よう」 と言うと席を立った。 この時の二人の心の中には一種冷たいものがうずまいている。 それは戦場で生きてきた者の本能だったのかもしれない。 二人の優しさは仲間に対してのみ働くものであり、敵対する者に対して働くことは決して無い。
「でね、今地球では゛そぅとぅ゛っていうのが流行ってるの」 「そ…そーとー…!?」 「違う違う、゛そぅとぅ゛あ、そうだ、チャ−ミー石川のそぅとぅ語講座ー!」 薄ら寒いタイトルコールに続いて不器用な手付きで実演する石川を さらに不器用な手付きで真似ようとする柴田。 「あはは…あゆみちゃん面白い」 端から見ればどっちもどっちと言えたが、少し優越感を覚えた石川は笑い声をこぼす。 ざっ… そんな二人の行く手を突然遮ったのは大谷雅恵、斎藤瞳の二人だった。 「さ…斎藤さん、大谷さん!」 二人に近づこうとする柴田を、 「待った」 しかし制する斎藤。 「!?」 柴田と二人を交互に見ながらオロオロする石川に心配しないで、 と制する柴田にバレリーナ戦隊メロンの先輩二人はさらに表情をきつくする。 「…村田さんは?」 「めぐみは脱落しました…」 そ…そんな…と体中の力を失う柴田に構わず斎藤が続ける。 「その前にそっちが説明しなさいよ。誰…その子は」 柴田はちらっと石川をかえりみると、経緯の説明を始めた。
「そう…」 「よく…分かりました」 説明を理解してもらえたと思った柴田は緊張した面持ちを隠さない石川に向き返ると、 「梨華ちゃん…次に逢う時は敵同士だね…」 そう言ったが、後方からは信じられない言葉が飛んできた。 それと同時に柴田は肩を掴んで横にどけられ、 「石川さん…だよね!?痛い目見る前にカード出しなよ」 (えっ!?) 斎藤の声に石川と同時に表情を変えさせられることになった。 「な…なに言ってるんですか斎藤さん!」 「あのねえ、眠いこと言ってるんじゃないよ柴田」 「これは…戦争なんですよ…あゆみ」 めずらしく自分を名前で呼んだ大谷に向きかえる柴田。 「せ…戦争…!?…戦争にだってルールはあるでしょう!!」 「は…」 柴田の訴えに笑い出したのは斎藤だった。 「ははははは!!!゛戦争にもルール゛!?さすが甘ちゃんは言うことが違うね!!!」 笑う斎藤をよそに大谷は柴田を諭す。 「戦争におけるルールっていうのは…パワーバランスの裏付けがあって始めて成り立つものですよ。 はっきり言って…石川さん側で戦力になりそうなのはスーパーヒロインの…ゴボウマキのみ」 「後藤真希ですよ大谷さん」 え!?と柴田の指摘に顔を赤くする大谷だったが更に続ける。
「…それに対してこちら側には瞳、私、そしてあゆみ、あなたがいる… さすがのスーパーヒロインと言えど、この三人掛かりを相手には出来ないでしょう」 この分析が正しいかはともかく、柴田は反論が出来なかった。 「よ…よく分からないけど…おカードを渡してそれで解決するなら…」 カードを取り出そうとする石川に気付いて柴田はそれを慌てて制する。 驚く三人をよそに、柴田は整理しきれない内面に苦しんでいた。 (もう…裏切りたくない…誰も裏切りたくない…) 母親の母星を飛び出し、父親の母星メロン星のために母親の母星の人間と闘っている自分… そして今、地球人との約束と、メロン星の仲間との血の繋がりの狭間にいる自分。 (どうしたらいいんですか!?お父さん!!) 「…」 黙り込む柴田を見て、斎藤が石川からカードを受け取ろうとしたその瞬間だった。 バシッ!! 斎藤の手をはたき、石川の手を取る柴田。 「な…なにすんの?柴田!」 柴田は斎藤に向きかえり頭を下げた。 「瞳さん…雅恵さん、あなた達は私の大事な仲間…いや、大事な友達です! でも…私はもう…誰も裏切りたくない…自分に…嘘をつきたくないんです! だから…今度逢う時笑顔でいられるように…今は……さよならです!!」 そう言うと、柴田は目を点にした石川の手を引いて駆け出した。 「……行ってしまいましたね…」 残された二人の片方が口を開く。 「……めぐは残念だよね…あんなに早く脱落しちゃってさ」 え?と自分を見る大谷に斎藤はさらに続けた。 「折角こんなに楽しくなってきたのにさ」 大谷は笑うと、再び歩き始めた。
きつくなってきたなあ・・・ 今回は娘。がほとんど出てないか・・・
404 :
Ver.Na : 2001/02/20(火) 23:58 ID:qPrWXpQ6
...
クズの立てやがったOFF会スレに偽者がいますね。 やはりクズがクズを呼ぶのでしょうか・・・
406 :
名無し娘。 : 2001/02/21(水) 07:24 ID:hkHYI4/Y
相変わらずの更新の量、ごくろうさま。 読みごたえがあっても、一気に読み終えて、更に続きが読みたくなる。 今、この小説に、はまりまくっているんです。
407 :
マングース西浦 : 2001/02/21(水) 15:22 ID:cLnRYVGI
家じゃないところから覗いてみる…HN間違ってたな…それに誤字も多い…
>>404 、、、
>>405 あぁ、そうですか
>>406 うーん…そういう方にお聞きしたいんですがどこが面白いんですか?
どういう所を面白がってもらえてるのか知りたい…
笑わせようと思ってるところで笑ってもらえてるのか、
それとも全体的なばかっぽさを笑われてるのか…
アイデアは完全にパクリですけど曲がりなりにも展開とか、
戦闘シーンとかは少し考えて書いてるつもりなので…
408 :
名無し娘。 : 2001/02/21(水) 15:44 ID:75/c95CM
>>407 >どういう所を面白がってもらえてるのか知りたい…
あんたこれは殺生ちゅうもんやで…。
409 :
マングース西浦 : 2001/02/21(水) 15:54 ID:cLnRYVGI
>>408 うーん…
それはそうです…というか、モーニング娘。が出ていないところも
同じように面白がってもらえてるのかなぁ…とか…
主役と市井以外は同程度の出番の多さにしているつもりなので…
つまらないことを聞いてしまった…
411 :
マングース西浦 : 2001/02/21(水) 22:48 ID:BQUhNCfA
「カ…カワク…」 今の飯田圭織を苦しめるのはオーバーヒートによる熱ばかりでは無くなっていた。 燃料が切れかけていることから来る喉の渇き。 しかしそれでも消えない破壊衝動。 アヤカキムラのウィルスの優秀さを示しているが、 当の飯田にはそれどころではなかった。 「ハァ…ハァ…ハヤクダレカヲブッコロサナクテハ…」 ゛誰かを殺さなくては自分が死ぬ゛ 飯田のプログラムはそんな強迫観念に支配されていた…
その頃辻希美と加護亜依の二人は相変わらず「街」を散歩し続けている。 これまで初日にミカトッドと出会って以降一度も強敵と出遭うこと無く済んでいたのは二人の 運の良さを示しているが、その反面捜し求める飯田圭織とも出会えていない。 それは実は幸運なことだったが、今の二人にとっては不運なことに感じられている。 「お 母 さん…」 突然ホームシックにかかる辻を、しかし加護は笑えなかった。 自分自身も似たようなものだったから… 「のんちゃん、そういうこと言うたらこっちも寂しくなるやんかー…」 「うん……お 母 さん…」 「……」 沈黙する二人。つい先程までつまらない話で二人元気にはしゃいでいたはずなのに 突然静かになってしまう。 どちらが本来の姿なのか、当人たちにも分からなかった。
「!?」 それまで下を向いて歩いていた辻が突然顔を上げる。 「ど、どうしたの?のんちゃん!?」 (のんちゃんの勘が働く時が来た…) 加護は辻のそういった本能的な部分に期待して行動を共にしている… 時に忘れかけることもあったが、加護は計算ずくで行動しているつもりだった。 そう…のんちゃんを利用して私は最後まで残るんや…無邪気な顔に隠れたもう一つの顔。 「飯田さん…」 辻は表情に光りを取り戻すと、突然駆け出す。 「ま…待ってのんちゃん!!」 いくつかの曲がり角を曲がり、袋小路でようやく辻は足を止めた。 「はあ、はあ、のんちゃん、なんでいつも急に走り出すの…」 「…」 辻は沈黙している…そして、微動だにしない。 それを怪訝がる加護は顔を上げ…そこに飯田であって飯田でないものを見た。 「い…飯田さんその顔何!?」 「逝ッテヨシ…」 問う加護を無視して顔の片側を赤い憤怒の表情に、一方の片側を青い冷酷の表情に染めた 飯田は両手を振り上げる。
それでも微動だにしない辻に飯田が迫る。 「危ない!!」 間一髪辻に飛びついて飯田の腕を避ける加護。 「!!いった…飯田さん何するんですか!!」 かすっただけだと言うのに飯田の腕は加護の足に激痛を与えた。 しかし飯田は加護の抗議など意に介する様子すら見せず両腕を振り上げる。 だが、自分自身の身の危険にも関わらずそれでも辻の目は一点を見据えて動かない。 「の…のんちゃん!!!しっかりして!!」 「いや…」 ようやく口を開いた辻だがしかし、 「いやーーーー!!!!!」 探していた飯田の思わぬ豹変のために完全に現実から逃避してしまっている。 手を引いても動かない。動こうともしない辻を見て加護は決心した。 (や…やったる…) 「の…のんちゃん、見とってや!!」 加護はそれでも視線を動かない辻を祈るような表情で見つめると、 飯田のほうに視線を移した。
物真似を得意とする加護はその観察力に定評がある。 辻が直感的な動物の真似を得意とする反面加護は人間の真似を得意としており、 中でも学校の教師の物真似はそれを見る者を凍り付かせるし、 矢口真里や飯田圭織の物真似などはそれを見る者の心を暖かくする。 物真似とは、他人の真似であると同時に、何ごとにも役立つツールである、 というのが加護のポリシーだった。 (い…いつもの飯田さんやない…) 加護ほどの観察力が無くともそこまでは分かる。 しかし、加護は飯田の腕の動きにまず注目していた。 両腕を振り上げて、それを振り下ろす… 今まで飯田はその動きしか見せていない。 振り下ろされる腕のすさまじいスピードと威力を除けば、 あとは付け入る隙がいくらでもある。 そう分析した加護は自ら飯田との距離を詰めていった。 「な…なんで飯田さんがうちらにこんなことすんのか分かりませんけど… うちらもただやられるだけなんて嫌です!!だから加護、飯田さんと闘いますよ!」 飯田の表情に微妙な変化があったのはこの時だったが、 この時の加護は残念ながらそれには気付かない。 (の…のんちゃん…もし駄目やったらごめんな…)
タッ!! 素早く飯田の懐に潜り込む加護。 振り上げられた飯田の腕が動き出す寸前、加護は横飛びに飛ぶ。 (よ…よっしゃ、避けた…!?) しかしその加護の動きをホーミングするように横薙ぎに振り払われる飯田の腕。 (よ…横ッ…!?) バキッ… 飯田の腕をその右の二の腕に受けた加護は、不吉な音を立てながら吹き飛ばされ、 塀に全身を叩きつつける。 「だ…駄目やった…」 (た…たった一発で…) 今の飯田の腕力は、たった一発で人間を破壊出来る威力を持っている。 腕の痛みとその衝撃の為に気を失いかけてしまう加護。 (…な…なんで…うち飯田さんと戦おうなんて思ったんやろ…) 加護は朦朧とする意識の中でふと大元に立ち返った。 (まさか…のんちゃんの為に!? 別に…のんちゃんが動かんのやったら置いて行ったらええのんちゃうの…?) なのに、それをしなかった。 (うちは、のんちゃんを利用しとるだけや) … (うちさえ、うちさえ残ればええんや…このまま寝たふりしてれば… 飯田さんは行ってまうやろ…別に飯田さんに勝つ必要なんて無いねん…) その時、飯田の声が聞こえた。 「ツジ…テメエブッコロシテヤル…」
「いやーーーーー!!!」 (あれ!?うち何してんやろ!?) 目の前には飯田がいて、その両腕を受け止めているのは、 (う…うちの手やん…なんで!?うち寝とったはずやのに…) 「あ…亜依 ちゃん!!だ…大丈 夫!?」 後ろから肩を押さえてうちの心配してくれてんの…誰やろ… だ…大丈夫なわけないやんか…腕の骨…どうにかなってもうてる… 「だ…だめーーーーー!!!!!!」 辻は加護の前に飛び出ると、両手を広げる。 「の…のんちゃん…よかった…正気取り戻したんやね…!?」 辻の肩越しに見える飯田の表情が変化している。 片側は赤い憤怒の表情のままだが、もう片側が… (な…泣いてる…!?) 「つ…ツジ…ハヤク…早く逃げナサイ!!」 口の半分だけを使ってそういう飯田だが、もう片側の顔はそう言ってはいない。 「オマエヲコロセバ…ヒエル…逝ケ…」 そう言ったもう一方の側、憤怒の表情の瞳の中心、漆黒の瞳孔が広がっていく。 加護でなければそれに気付くことはなかっただろう。 「゛ディアービーーーム(仮称)゛!!!」 「危ないのんちゃん!!!」 そう言って辻を突き飛ばした加護の体を飯田の瞳から発せられた光の筋が貫いた。
(や…やってもうた…) 加護の両の瞳は力を失い、ただ一点、光の筋が貫通した場所からゆっくり流れる血を ただ、見つめていた。 「あ…亜依 ちゃ ーーーん!!!!!」 辻の絶叫が聞こえる。続いて聞こえるその泣き声。 (な…泣いてくれてるんやね…うちのために……ん!?) 「は…ははは…」 絶体絶命のはずの加護の口から力の無い、 しかし実感に溢れた笑い声が零れたのはこんなときだった。 (な…なんで飯田さんと戦う…やて?) 「と…友達やからに…決まってるやんか…なぁ…」 のんちゃんが…うちの友達だからやんか… そう口から出た時、加護は燃え尽きたはずの蝋燭に再び火が点くのを感じた。 「ま…まだや…やらせへん!!」 その力をふりしぼり、加護は飯田にまとわりついた。 「ウオッ!?ハッ…ハナセ!!ナ…ナントイウチカラダ…!!」 辻は二度と動かないと思った加護が動いたことに嬉しさよりも先に驚きを発露させた。 「あ…亜依 ちゃん!!駄目ーーーー!!!死ん じ ゃう!!!」 「だ…大丈夫や!!…急所は外れてるし!!」 (知らんけど…んなことより) 「のんちゃん!!!はよ逃げて!!」 「嫌!!」 「お願いやから!!逃げて!!」 「だっ て!!!亜依 ちゃん が死んだら、私 悲 しい も ん!!!」 (私だって…のんちゃんに死んで欲しくないんだよ…ごめん…)
加護は辻の角度から自分の顔が見えないように頭を動かすと、口を開いた。 「……アホーーーー!!!!お前なんか嫌いなんじゃ!!」 「え!?」 「お前となんか…もう一緒にいたないんじゃ!!」 辻が決して見ることのない加護の顔は涙で濡れている。 「さ…さっさと消えて無くなれ!!ボケ!!カス!!」 「な…なんで そん な 酷い こと 言うの…!?」 「ま…前から…お前のことが世界で一番嫌いやったんじゃーーーー!!!!」 思わぬ加護の言葉に後ずさる辻。加護の本心が伝わることはない。 辻はただ目の前の光景と、絶望的な状況に精神を再び錯乱させてしまい、 絶望のうちにその場を走り去った。 (ご…ごめん…のんちゃん…こうするしかなかったんや…) 辻が去って気が緩み、気を失おうとする加護の頭に何かが乗せられた。 (い…飯田さんの…手!?) その手は次に頬にあてられ、その涙を拭う。 朦朧とした意識で見上げる飯田の表情は、いつもの微笑を浮かべたそれに戻っていた。 「い…飯田さん…」 「ごめんね…加護…」 いつもの飯田さんや…と分かった加護は安心に表情を緩めた。 「う…ううん…飯田さんも戦ってた…うちには分かってん…」 気を失おうとする加護は無意識に聞いた。 「飯田さん…今何がしたい!?」 「海の中に住みたい…熱い体を冷やしたいよ…そして …林檎の木を育てるの……加護は…!?」 「う…うち・は…早く…お母さんに……亜依…た…い」 それっきり、二人は動かなくなった。
「あーあ…後藤、昨日もほとんど寝てないでしょ… 昨日だってちょっとしか寝てないんだからちゃんと寝とけって言ったのに」 並んで歩きながらも視線を定めることをしない後藤真希に市井紗耶香が呆れて言った。 「だってなんだか眠れなくて…なんか…寝ようとすると胸の奥が… こう…熱くなってくるんだよ…」 既に仲間を何人も失い、そのうちの石黒彩はその最後を看取った。 かつて無い経験の連続が後藤の心に及ぼした影響に関心を持った市井だったがそれを表には出さない。 ただ横目でその表情を伺うだけに留めた市井は前方から迫る影を目に留めた。 「あ…あれって確か…」 「辻ちゃんだよ!…!?加護はどうしたんだろ…」 後藤にねえ!と呼び止められた辻だったが、気付かないのか、そのまま側を駆け抜けてしまう。 「ちょ…ちょっと待ちなさいよ」 市井に腕を掴まれようやく止まった辻だがその目はどこを見ているのかも分からず、 体は小刻みに震えている。 「つ…辻ちゃんどうしたの!?加護は!?」 後藤に問われる辻はただ口を動かすだけで言葉を発することをしない。 出来ないと言ったほうがふさわしいのかもしれなかった。 「…あ…あい…あい…いいだ さん が…あい…あい…」 もと来た道を指差しながらようやく言葉を発したがそれは日本語にもなっていない。 「か…加護になんかあったの!?」 ゆっくりうなずく辻を見た後藤は市井と視線を合わせる。 「ま…私にとっては敵のことだけど…後藤にとっては仲間だからね…」
「辻ちゃん…案内して」 しばらく不安そうに視点を泳がせた辻だったが、うなずいた。 「よし…じゃ…行こっか」 後藤はうなずくと、ゆっくり走り出す辻について駆け出した。 しかし途中辻の足は戸惑い、何度もその歩みを止める。 「辻ちゃん…もう少し急げないかな!?」 辻は下を向いたまま僅かにうなずく。 いつもの元気は微塵にも感じられなかった。 次第に辻は足の動きを早め、次第に動きを緩めると、やがてそれを止めた。 「な…なんてこと…」 辻が足を止めた袋小路には抱き合ったまま動かない加護亜依と飯田圭織、二人の姿があった。 呆然と立ち尽くす後藤の肩を避けて市井が前に出た。 「なんでここまでやる必要があるの…」 市井は自分の服の袖を口を使って引き裂くと加護に応急処置をほどこした。 「圭織はそんなじゃないけど…もう一人がかなりキテるね…」 不自然な方向に曲がっている両手と、脇腹からの止まらない出血。 目をそらす後藤に市井は救急車の手配を指示した。 「つ…辻ちゃん…ここで待っててね。すぐ戻ってくるから…」 「いや…」 「え?」
「いやぁーーー!!!」 耳元で大声を出されて聴覚を過度に刺激された後藤をよそにその場から逃げ出す辻。 「真希!!あの子を追ってる暇は無いよ!」 仲が良かったはずの加護を置いて逃げ出した辻の方に踏み出した足を一歩目で止め、 「…わかった…」 一瞬のためらいを経て後藤は救急車の手配に向かった。 「これでよし…急所は外れてるみたいだし… …死にはしないでしょ…問題は…真希だね」 一応の処置を済ませた市井は立ち上がり周囲に目を走らせると、 ある一点を見つめ、うなずいた。 (あと少し…あと少しです…) そんな時、 「市井ちゃーーん!!!」 救急車の手配を終えた後藤が戻ってきた。 「加護と圭織…大丈夫!?」 市井はうなずきに続いて口を開いた。 「多分ね。一応応急処置は済ませたけど、後は運頼みかな」 「い…一応?運頼み?な…なにそれ」 取り乱す後藤に、あくまで冷静に市井は続ける。 「私医者じゃないしさ…こんな重傷だからね…」
「そ…そんな…」 後藤はなんとかならないの?という表情で市井を見るが、 市井は目を合わせずに口を開いた。 「じゃあさ、この二人のカード取ってよ。誰かが来たら大変じゃん。 こんな袋小路に追いつめられたら最悪だよ」 え!?という表情で市井を見る後藤。しかし市井は早くしてよ、とでも言うように顎を動かす。 「い…嫌だよ…救急車来て無事だって分かるまで見守ってないと駄目だよ…」 飯田圭織との闘いで瀕死の重傷を負っている加護亜依は、 その加入当初後藤自身が進んで教育係を努め、特に可愛がったメンバーだった。 だからこそその明るさも、もう一面の寂しがり屋な一面もよく知っていた。 (置いて行けない…圭織だってこんなに煙出して…) 加護だけではない。飯田も体中のいたるところから煙を吐き出し、 死んだように動かない。 「グズグズしてると…また昨日みたいに邪魔ものが来ちゃうよ…」 それでも動こうとしない後藤に パァン… 市井の平手が飛んだ。
「なんで一度言って分からないかな…あんたは!」 「……」 後藤は渋々加護と飯田の側に腰をかけ、 一言ずつごめんね…と言いながらカードを奪った。 「これでいいんでしょ…」 市井とわざと視線を合わせずにそう言った後藤に、 「やれば出来るじゃん」 軽い口調で答える市井。 加護亜依が命の危険にさらされていることなど全く意に返さないような市井の態度に 驚きを通り越して怒りを感じる後藤。 「!!」 その時市井は自分に対してこれまで一度も見たことの無いような鋭い視線を向ける後藤に気付いた。 背筋にゾクッとするものが走り、つい笑みに歪みそうになった口を慌てて押さえ、 下を向き咳き込むふりをしてそれをごまかした。 「先を急ぐんでしょ…」 そう言って駆け出す後藤の僅か後ろにつきながら、 その間市井は唇の端が歪むのを隠さなかった。 (残り19人)
425 :
Ver.Na : 2001/02/22(木) 00:23 ID:TjUQtCVA
...
426 :
客なっち : 2001/02/23(金) 00:32 ID:bcMBl.QU
きっと世間に認めてもらいたいだけなんだねマングースあげ(わら
428 :
客なっち : 2001/02/23(金) 00:40 ID:bcMBl.QU
>>427 -428
よく飽きずに続けられますね。
およそ知能をごく最小でも有する者にとって、
お前のようなクズと面白さを分かち合うことはまず不可能でしょうね。
馬鹿は死んでも治らないといいますが、
このクズは例え殺しても馬鹿なままなのでしょう。
>>425 、、、
>>429 私が大馬鹿者です・・・・・馬鹿は死ななきゃ治らない・・・・・・
しかもレス番号は正しくは
>>426 -428ですね・・・
431 :
名無し娘。 : 2001/02/23(金) 14:27 ID:BWbyDlgA
432 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 00:40 ID:QcAX4aL6
作者さん、週末は忙しいんかいな? 最近の更新がすごかったから、2,3日止まっているだけで気になってしまう。 応援してます故、頑張って下され。
433 :
マングース西浦 : 2001/02/25(日) 00:57 ID:lUR.jFug
>>432 済みません…
なんかオフ会があるとかで変なのが出てきたもので
このままフェードアウトしようとか思ってました
でも応援してくれてる人がいるならアップしてみます
「朝風呂っていうのもいいものだね…」 そう言いながら銭湯ののれんの「女湯」の文字を眺めるのは、 カントリー娘。の戸田鈴音、通称りんねだった。 既に時刻は正午前になっていて既に朝と呼べるような時間では無くなっているが、 まだ外の空気は涼しく、朝のすがすがしさを保っていた。 牧場では朝早くから仕事があるためろくに朝の身支度も出来ず、 それが当然だと思いかけていたが、ここ数日の「街」での暮らしで、 りんねは牧場で働く前の生活を思い出していた。 「うっ…」 しかしのれんをくぐったりんねはその脱衣場内の雰囲気に圧倒された。 「な…なに…なんなの一体…」 その漂う雰囲気の中心の方向には、 とても女性とは思えない筋骨隆々の後ろ姿があった。 一度のれんの外に戻って確かめたがやはり間違いない。 (ここは女湯だ…) その時、その後ろ姿がりんねの方向に振り返るように動いた。 「あ…あなたもしかして…」 振り返った筋骨隆々の体には、それに似つかわしくない若い女性の顔が付いていた。
「シェキドルの…北上…アミちゃん!?」 「ハハ…弟よ…」 なぜか悟りを開いたような表情でりんねを弟と呼んだそれはもはや紛れも無い、 シェキドルの北上アミだった。 「…そ…その体…一体どうしたの?」 薬物使用以外に考えられない体つきの変化だったが、りんねはそれを信じたくなかった。 (アミちゃんあんなに衣吹ちゃんと仲良くひたむきにやってたじゃない…) ハロープロジェクトの一員、後発の二人組ユニットとしてデビューした二人。 当然いいことばかり起こる訳はなく、辛いことも多い。 それでも前を向いて歩いていかなければならない。 そんな時に励まし合い、互いの悩みを相談し合える関係を築いていた二人。 後発としては20歳と19歳、年齢層が高めの二人はハロープロジェクトの中でも 異色の存在と言えたし、 緊張した時はいつも二人手を繋ぎ、周囲から「そんなことしてても裏では仲悪いんでしょ」 などとからかわれてもこれが私達の気合の入れ方!と答えていたコンビネーションの良さ。 そしてりんねは同じ北海道出身の一人として北上には関心を持っていた。 しかし今目の前にいる北上はりんねが親近感を持っていた彼女とは全くの別人に見えた。
「さあ…弟よ…存分に潰し合おうではないカ…」 ゆっくりと自分の方に詰め寄る北上の周りを弧を描くように歩き、 間合いを調節するりんね。 (な…なんで…なんでそうなったの…) しかし、北上の表情は空虚な微笑に満たされ、そんな質問を受け入れそうには見えない。 とにかく、話を聞ける状況にしなくちゃ… 「!!!」 そう思った瞬間、二人の間合いが触れ合い、一気に踏み込んだ北上のフックが りんねのガードを突き破った。 後背のガラス戸を突き破り、浴場まで吹き飛ばされるりんね。 ヒットの瞬間後方にジャンプしダメージを軽減はしたものの、 両腕のしびれは普通ではない。 「衣吹…悪かったナ…今そっちに一人送るからナ…」 (じょ…冗談じゃない…) 既に勝利を確信したような北上に憤りを隠さないりんねはその隙に自分の両脇を見た。 そこにあったあるものを手に取り、背中に隠すりんね。 「アミちゃん…今のあなたが勝っても…衣吹ちゃんは喜ばないよ」 その言葉を耳にした北上は片方の眉を上げたが、動じる様子は無かった。 「私は…勝ってなおかつ生きようなどト思うほドおこがましくはないヨ…」 この子今日死ぬ気だ…その為に、体を清める為に銭湯に… りんねは察し、そうはさせない…と後ろに回した手に力を込めた。
「私は負けない…そして…アミちゃんも死なせはしない」 表情を変えない北上の前で、りんねは後ろに回していたモノを上方に振りかざした。 「洗面器をかかげて…それがどうしタ? フフフ…洗面器でディスクドッグでもするつもりかネ!?」 と上手いことを言う北上にりんねは苦笑したが、すぐに気を引き締めた。 片手で持つ銭湯の黄色い洗面器は三個重ねだと言うのに思った以上に軽い。 「アミちゃん…覚悟はいい?」 北上は表情を変えず、構えも変えない。 (…) 意を決したりんねはその洗面器を放り投げた。 「これは…私の仲間の技だ!!」 と言って放り投げた洗面器を追いかけるように飛び上がるりんね。 さすがに北上もこの動きは予測がつかなかったのか、警戒を強める。 「食らえ!!゛散弾流星脚ーーーー゛!!!」 そう言って放たれた飛び蹴りは空中で洗面器をコナゴナに破壊し、 それらをまるで流星のように北上に向けて降らせた。 「クッ!!」 なんとか両腕でガードした北上だが、その体には無数の傷がついている。 (なんてこと…) しかし、全てがカスリ傷で北上に致命的なダメージを与えるには到らなかった。 (北海道に伝わる伝説の奥義が…)
「フフフ…私の体に傷をつけたのは君が始めてダ弟ヨ…」 と嘘をつきながら迫る北上をただ見上げるりんね。 「これガ洗面器ではなく巨大な瓶かなにかだったらまた結果は違っていただろうガ…」 やはり洗面器では色々な意味で無理があったか… と後ろに下がったりんねは、しかし諦めてはいない。 「終わりだナ……ンッ!?」 突然姿勢を崩し片膝をつく北上。 心配して駆け寄るりんねをしかし五月蝿い!!と撥ね退けた北上だったが、 その目には涙が浮かんでいる… 良く見ると、北上の右足の脛には洗面器の細かい破片が一つ突き刺さっていた。 (そ…そうか!弁慶の泣き所…) かの豪傑、武蔵坊弁慶の伝説をりんねは思い出した。 どれだけ鍛えても脛は痛い…殊に体を急激に鍛えた北上はそうだったのかもしれない。 「うわあああぁぁぁぁーーーーん!!!」 しかし北上の泣き方は尋常ではない。 「ゲロげろ下呂…」 ついで嘔吐まで始める北上。 その様子はただごとではない。ドーピングで研ぎ澄まされた神経が破綻をきたしたようにも見える。 (ま…まさか…゛マックシング゛!?)
ドーピングに虫食まれた体は内臓や骨を脆くし、そして隆々としていたはずの筋肉は いつしかゴムのような弾力だけを残し、その体力を奪っていく。 例え生き長らえたとしても晩年は車椅子での生活を余儀なくされるケースが多い。 しかし、まれに度を越えたトレーニングや強靭な精神がそれに打ち勝つことがあるという… ドーピングに人体が勝利するケース…それが゛マックシング゛ 今まさに北上はその精神力でドーピングに打ち勝とうとしている… 「げろ下呂ゲロ…」 体中のありとある穴という穴から液体を垂れ流す北上。 そしてそれをりんねは成すすべなく見守っていた…
それから暫くして… 「アミちゃん…」 ようやくマックシングの症状が収まった北上は立ち上がった。 その顔は頬がこけ、体は一本一本の筋肉の筋が見えそうな程に細く、筋張っている。 その姿はまるで飢餓民のようにも見えたが、目に宿る強烈な光がそうではないことを物語っていた。 「オムガズムを感じたことはあるかネ…」 異常な瞳がりんねを見ている。 (浴場で欲情などと洒落のつもりだろうか) 「私は…たった今初めて感じたヨ…」 北上は再びりんねとの距離を詰めだした。
シュッ… と風を切るような音がしたかと思うと、北上は既にりんねの目の前にいた。 「どうしたのかネ!?」 「くっ!!」 (な…なんて早さ…動きが見えない!) 素早く距離を取るりんねだったが、もはや北上は人間ですら無くなっていたのかもしれない。 北上は再びりんねの目の前に現われると、そのボディーに強烈なブローを叩き込んだ。 「がッ…」 急速に力を失い折れ曲がろうとする足をしかしりんねは叱咤し、再び後方に下がる。 「うおッ!?」 北上が盛大な音を立てながら転倒したのはその次の瞬間だった。 そう、りんねは体を清める為に銭湯に来ていた北上に闘いを挑んだ。 そのせいで北上は銭湯で闘わざるをえなくなり、 その環境の為に北上は肝心なところで石鹸を踏んでしまったのだ… その隙にりんねは正面から北上の首を取った。 「この技を耐え切れたら…アミちゃんの勝ちだよ…」 「ググ…ッッッ!!」 しかし一気に全力を込められたその技のために、北上は程無く意識を失った。 決め技は゛風呂斗寝苦麓゛(フロントネックロック)。 北海道の伝説にまた新たな一頁が刻まれた。
喝を入れられて目覚めた北上は目の前のりんねの表情を見て、 自分が敗れ去ったことを知った。 「石鹸が無ければ…アミちゃんが勝ってたよ」 その言葉に北上はカードを差し出し、脱落が決定した。 「なんで…あんな無茶をしたの?それに…ステロイドなんてどこから手にいれたの!」 北上はうつむいて答えた。 「衣吹ちゃんに…顔向け出来るようにしたかった…それだけ… でも、薬のことは言えない…きっと善意で渡してくれたんだって信じるから…」 自分がアヤカキムラに利用されたことを知らない北上はあくまで薬の出所については 話さなかったが、しかしりんねは今大会に渦巻く悪意を感じていた。 そして早くあさみと合流しなければ…と思うと共に、 「衣吹ちゃんはきっと…アミちゃんが無事で帰ってくる… そのことを一番望んでるんじゃないかな…」 その言葉を残してドーピングに勝って石鹸に負けた女のもとを去った。 (残り18人)
「あれ!?」 りんねが銭湯を出て初めて見た人間は木村麻美、カントリー娘。の通称あさみだった。 そのカントリー娘。の小柄なメンバーは、 偶然の再会を喜ぶよりもまずりんねの様子を見て聞いた。 「なんでりんねさんお風呂から服まで濡らして出てくるんですか?」 聞くと、丁度あさみも銭湯に来ようと思っていたという。
でもモーニング娘。の出番は無しです やっぱり加護さんを早くに脱落させないほうがよかったのかな…
445 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 02:05 ID:uMBk6O3c
散弾流星脚sage >風呂斗寝苦麓 ワラタ 民明書房スレを思い出した。 ここでもう最大トーナメントのクライマックスを使っちゃうのか 贅沢な話だね。 >でもモーニング娘。の出番は無しです 今の流れでも面白いし、俺的には全然かまわないよ。 それはそうと北上アミは飯田ロボを操って なぜか何の脈絡もなく全身の骨がバラバラになる役割ではなかったのですか?
性懲りもなくこの更新の量、ごくろうさまなことですね。 長いばっかりで、読むのが疲れます、書いてるキミ一人だけ楽しんでるみたい。 今、この小説が、一番出来が悪いです。
447 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 03:43 ID:HMn3ZsG6
>>446 やっぱ真性モーヲタにはつらいのかな、娘の出番がないのは。
逆に娘だろうが、ハロプロだろうがネタになれば良いって奴には面白いだろうね。
俺は、ココが一番面白い。狼、羊、小説板合わせて。
448 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 08:09 ID:FAtflkqY
私はこの小説の更新が一番楽しみだけどね。 元ネタ知らん人にはきついと思うけど。
449 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 09:30 ID:39jrcfx2
マングース、俺も応援しているぞ。 また、ガンガン更新して欲しいぞ。
これだけのレスを負担に感じてしまう今日この頃・・・
>>445 そうですね、変なのが出てきたので多少展開を省略気味にしております。
本当は別の構想を練っていたのですが・・・
でもまだ幾つかのクライマックスといいますか、ヤマ場は考えております。
それから、内容の具体的な部分についての質問は、
お気持ちは大変よく分かるのですが、ご遠慮頂けますでしょうか。
>>446 そういうご感想は始めてですので、詳しくお聞きしたいものです。
具体的にどういう所が面白くないのでしょう。
全体的なばかっぽさを真に受けて出来が悪いとお思いでしたら残念です。
また疲れさせるようで恐縮ですが、ぜひお答え頂きたいものです。
>>447 応援ありがとうございます。
お気持ちは大変有難いのですが、自分で書いていると思われますので今後はご遠慮下さい。
>>448 上に同じく。
しかし、元ネタを知らなければきつい、ですか・・・
そんな風に読まれているわけですね・・・
>>449 さらに同じく。
>具体的にどういう所が面白くないのでしょう。 か、書ききれん・・・。
452 :
445 : 2001/02/25(日) 12:45 ID:aOJFQOnE
453 :
マングース西浦 : 2001/02/25(日) 15:07 ID:GjviCKFs
>>445 いつもレスありがとうございます
この技の為に銭湯で戦闘させたと…
都合よくパクっています
>それはそうと北上アミは飯田ロボを操って
>なぜか何の脈絡もなく全身の骨がバラバラになる役割ではなかったのですか?
この元ネタがよく分からないんですけど…
>>446 >>450 ID一緒ですよ…
>>448 -449
ありがとうございます
それにしてもオフ会告知始まってからレス増えたな…
>>451 まあ批評するのは難しいですよね
自分で書くほどではないでしょうけど
>>452 気にしないで下さい
バレリーナ戦隊メロンの柴田あゆみは数時間前に大谷雅恵、斎藤瞳の二人と袂を分かち、 モーニング娘。の石川梨華と行動を共にすることを選んだ。 しかし、現在そのことは逆に石川を追い込む結果になっている。 元々柴田と行動することになったのは、お互い仲間とはぐれた二人が、 はぐれた仲間と合流することが出来るまでという約束で始まっている。 そして柴田は仲間と出会ったのにそれと合流することをせず、 石川との二人の関係を続けることを選んだ。 しかし、実は石川には合流するべき相手など最初からいなかったのだ。 柴田は、 「梨華ちゃんの仲間と早く会えるといいね」 そう言って笑うが、本当は合流するべき仲間などいないと分かったらどんな顔をするだろう。 怒るに違いない、いや、優しい性格の柴田のこと、怒りはしないかもしれない。 でも…怒っていないふりをして微笑んで、心の中で軽蔑するのかもしれない… それには敏感なほうでは無い石川とはいえ、耐えられなかった。 「良かったの…!?本当に…お仲間と別れちゃって…」 石川は何度も確認したが、その度に柴田は、 「梨華ちゃんの仲間ってどんな人なのか、見てみたいんだ」 気にしないで、という言葉のかわりにそう言って、憂いを含んだ笑顔を返してくれた。 (私はあゆみちゃんを裏切ってる…) どうしても消えないわだかまりだったが、石川にそれを告白する勇気は無かった。
初日にアヤカキムラが数人の敵に取り付けた発信機のほとんどはすでに 紛失するか故障またはバッテリー切れなどでその役目を終えていた。 当ても無く「街」をさ迷うことになったダニエルデラウニーとレファサンボはまだ若く、 更にそれ専用に創られた「街」とは言え故郷であるハワイ島のそれとは余りに違う街並みに 心細さを感じたのか、アジトを出ると近くの交差点で落ち合い、行動を共にしていた。 「……」 特に何も話すことが無い二人はただもう既に見慣れた街並みを並んで歩いていた。 カラン…カラン… 一歩一歩歩く度にアスファルトに触れて鳴る鉄パイプを見てダニエルが言った。 「うるさいなそれ…」 「あ、そうか。あんたが意外に神経質だってこと忘れてたよ」 レファはまるで慈しむように鉄パイプをさするとそれを肩に乗せ、 今度は足音を出さずに歩き始める。液体が流れるように滑らかに歩くレファを、 ダニエルは不気味に思うがそれより気になるのは鉄パイプだった。 「汚いな…なんでいつも持ち歩くんだよ…」 レファはくくく…と不気味に笑いながら 「守護神なんだよ…」 そうとだけ答えて、前田有紀と矢口真里、中澤裕子の血を吸ったそれを舐めた。 その目は異常な光を放っている。
既に開始から三日目となっており、「街」の移動可能範囲は当初の半径6kmから 半径4kmに狭まり、それでも直径で言えば8kmと充分な広さを持ってはいるが、 三日目にもなるとこういった状況に慣れた者ならばともかく、 無意識に自らに縄張りのようなものを設け、その小さい行動範囲から出ないようになってしまう。 その行動範囲は歩きならばせいぜい半径1kmに留まり、それが各々の世界の全てになっていた。 柴田あゆみと合流した石川はその行動範囲を広げはしたものの、せいぜい半径2km圏に留まっている。 そして、今まさにその圏内に入り込もうとしていたのはダニエルデラウニーとレファサンボだった。 「HEYHEYHEY!!!」 ガアン!ガアン! レファは手に持った鉄パイプで塀を叩きながら歩き苛立ちを隠すことをしない。 彼女は普段ダニエルと比べれば大人しいほうと言えるが、その欲求が満たされないと感じる時、 感情を露わにする。 「BE SILENT!!」 ダニエルの抗議も耳に入らない程、すでにレファの感情は高ぶっている。 そしてそのかき消されようとするダニエルの声も聞こえるほど二人の近くにいたのは、 石川梨華と柴田あゆみの二人だった。
457 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 20:43 ID:UIdXVBfo
>
>>446 >>450 ID一緒ですよ…
ニセ作者の低脳厨房くんがここを一生懸命荒らしているのね(w
458 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 21:49 ID:uMBk6O3c
>>453 あれ、北上アミは犬操的役割じゃなかったっけ。
対暗器5点星戦でラーメンマンロボを操っていて
「ラーメンマンロボを操れるのはラーメンマンだけだ」
とか言われて全身の骨が砕けたところです。
(思い違いだったらスマソ)
459 :
Ver.Na : 2001/02/26(月) 00:01 ID:9lm/JilQ
...
460 :
名無し娘。 : 2001/02/26(月) 00:08 ID:fnjttSrY
まさに「羊にいらっしゃるときは気をつけて」だな 今度から気をつけよ
461 :
マングース西浦 : 2001/02/26(月) 22:19 ID:eWTRn0rc
>>457 確信犯なのかと思ったんですけど…
460を見るとそうじゃなかったみたいですね
>>458 あー…実はあの漫画よく知らないんです…
犬操に関しては「弱い、目立たない」というくらいしか…
外伝とはわざと繋がらないようにしています
>>459 、、、
「なんて悪意…」 レファの鉄パイプが奏でる雑音に軽く青ざめる柴田の表情を見ながら石川は不安を募らせていた。 石川はその悪意を発する二人が誰なのか分かりかけている。 (ココナッツのダニエルさんとレファさん…) モーニング娘。のメンバーは誰一人英語を解さないために彼女らとはココナッツの残り のメンバーであるアヤカキムラかミカトッドを介してコミュニケーションを取ることになるが それではとても充分にコミュニケーションを取ることなど出来ようはずも無く、 互いにどこか異物のように思っていた部分があった。 当然このような状況になった場合二人がどのような行動を取るのかなど分かろうはずも無い。 「…梨華ちゃん!…」 そんなことを考えながら意識を飛ばしていた石川は自分を呼ぶ柴田の声に暫く気付かなかった。 「あの人達が梨華ちゃんの仲間?」 柴田の声にようやく反応した石川は首を横に振ったが、 ダニエルとレファのことを敵と断定することも出来なかった。 (もしかしたらこれを機会に仲良くなれるかも…) 「…まずお話してみようよ…」 柴田はひとまず石川の判断に賛同したが、嫌な予感は消えなかった。
「ハロー…」 ダニエルとレファの前に姿を晒した二人の内黒い方が発した言葉に、レファの鉄パイプの音は止んだ。 「HI…」 とりあえずと言った雰囲気で挨拶を返したダニエルとレファは不気味に顔を歪ませて笑った。 「…えーと…えーと…゛チャオ!チャーミー石川です゛って英語でなんて言うの?」 「……」 しかしその石川の問いに柴田は無言を返しダニエルらから視線を外さなかった。 二人は僅かずつこちらに近づいて来ている… (やる気だ…) 柴田はそう察した。 「梨華ちゃん…駄目…話は通じそうにないよ」 「な…なんで?」 一見笑顔に見える表情を浮かべる二人だったがその目に込められているのは悪意以外の何でも無かった。 レファの鉄パイプを握る手はそれに込められた力のために小刻みに震えている。
「コロシテヤル」 レファの歪んだ表情に付いた口が聞き取れない程に小さな声を発しながら動いた。 そしてそれと同時に柴田の口も密かに動いた。 「アン・ドゥ…」 「わあぁ!!」 驚きに満ちた石川の声が発せられる直前レファが鉄パイプを振り上げ、 二人との距離を一気に詰めた。 「トロァ!!」 ドンッ… という鈍い音と共に次の瞬間、レファサンボは雲一つない青空を見上げていた。 「…WHAT?」 柴田はレファが振り上げた鉄パイプを振り下ろす、その勢いを利用して相手を投げ飛ばしてみせた。 払い腰、かの嘉納治五郎が創設した格闘技の決まり手の一つだった。 「…JUDO…」 「梨華ちゃん!!もう一人を押さえて…」 しかし次の瞬間立ちすくむ石川を見て柴田は関節技への移行を断念した。
バシッ… 差し出されたダニエルの手を払いながら立ち上がったレファサンボの表情は 受けた屈辱の大きさに完全に歪んでいる。 「クククク…ダニエル…アレヲタノム…」 こうなれば逆らわないほうがいいな…そう察したダニエルが首肯する。 「ワカッタヨ…」 一方柴田は石川を守りながら二人と戦わなければならないと察し、 気を焦らせていた。 「ご…ごめんなさいあゆみちゃん…」 謝ってどうなるという状況でもないが石川が出来るのは本当にそれだけだった。 「気にしないで…梨華ちゃんは私が守るから」 「ハハハ…デキノワルイアイボウヲモツトソンダナ」 笑いながら鉄パイプを振り回すレファは僅かに口元を歪めると再び鉄パイプを振りかざした。 「アン・ドウ…!?うわぁ!!」 レファから視線を外さずタイミングを測っていた柴田の目元に何かが当たった。 そして柴田はその隙をつかれ肩口に鉄パイプの直撃を受けてしまう。 「くっ…」 ハワイの少女野球リーグに所属していたダニエルが柴田の視界から死角になる場所から投げた小石… 柴田の注意をそらしたのはそれだった。
「あ…あゆみちゃん!!」 「こ…来ないで…うわぁっ!!」 石川を制する間にもレファに打ち据えられる柴田はそれでも闘志を消さない。 僅かに地響きを立てて迫るダニエルを仄かに暖かいアスファルトに感じながら 柴田は思っていた。 (地球人相手には使いたくなかった…) 「ハハハハ…アンシンシロ、アイボウモスグニアトヲオワセテヤル」 そう言いながら柴田をストンピングで踏みつけるダニエル。 「ハハハハハハハ!!!……!?」 再度鉄パイプを振り下ろそうとしたレファの笑い声が止まった。 その鉄パイプは今レファサンボ、柴田あゆみ二人の手で握られている。 「SHIT…ハ…ハナセ!!」 「ちぇーーんじ・バレリーナ戦隊!!」 叫ぶレファ、そしてダニエルをその瞬間眩い光が包んだ。 「あ…あゆみちゃんその格好…」 柴田はいつのまにかピンク色のレオタードに身を包んでいる… 「私は…バレリーナ戦隊メロン!」 ピンク色のレオタードはバレリーナ戦隊の戦闘コスチュームであり、 それを身に纏うことにより柴田並びに他のメンバーはいくつかの バレリーナ戦隊専用の必殺技の使用が可能となる。
「ナ…ナンダッテソンナバカナ…」 「カ…カマワネエ…ヤッチマエ!!」 構わず柴田に突っかかった二人だったがしかし、 「゛バッセ゛!!」 再び二人を光が包む。 「ウ…ウワアッ!!」 柴田は背筋を伸ばし片方の足の爪先をもう片方の足の膝に引きつける… ゛バレエ゛で言う゛バッセ゛の体勢を取っている。 その動作の応用なのだろう。ダニエルとレファは既にかなりダメージのを受けている。 「バ…バカナ…ナントイウカワイラシサダ…」 なんとか立ち上がるダニエルとレファの二人だったがそのダメージは大きい。 「梨華ちゃん…逃げて…」 「ど…どうして!?」 すっかり呆気に取られていた石川だったが、この柴田の声で我に返った。 「この技は見ている梨華ちゃんも危険なの…分かるでしょ?」 ゛バッセ゛の恐るべき威力を目の当たりにした石川はようやく肯き、 「ぜ…絶対に無事でいてね!!」 そう言って走り去った。
「チッ…」 石川の後ろ姿を名残り惜しそうに見送った二人は柴田に目線を戻した。 「オマエハゼッタイニユルサナイ…」 憎悪に歪んだ表情を向けるレファだったが、 柴田はあくまで冷静に゛バッセ゛の体勢を解いた。 再び柴田に突貫したその二人を再度弾き返したのは゛プリエ゛ 足を開いたまま背筋を伸ばした姿勢で膝を曲げる。この時後ろに尻が出ると全てが台無しになってしまう。 これもバレエの基本動作の一つの応用だった。 「グ…グワァッ!!」 (も…もう立ってこないで…) しかし何とか立ち上がる二人。カウンターで食らったレファはともかく、 ダニエルはまだ余裕がありそうに見える… (こ…これを使う日がこんなに早く来るなんて…) 柴田はゆっくりと゛プリエ゛の姿勢のまま二人の方向を見た。 その悲しげな瞳は降伏を意味しているようにも見えた。 「ト…トウトウカンネンシタナ」 そう言った二人をこれまでで最高の光が包んだ。 ゛バランセ゛!!!
その技が放った光は周囲を光の世界に変えた。 「はあ…はあ…もう立ってこないで…」 最終奥義を放った柴田はもはや変身が解け、 服装も変身以前の格好に戻ってしまっている。 レファは愛用の金属棒も取り落とし、完全に気を失ってしまっている。 「よ…良かった…早く梨華ちゃんの後を追わないと…」 疲れ切った体を励まし立ち上がろうとした柴田だったが、 その目に次に飛び込んできた光景はその希望を断ち切るものだった。 「ハハハハハハ…」 気を失っていたレファの体が僅かに動いたかと思うと、 それは見る間に柴田の身長ほどまで持ちあがった。 そして、それを持ち上げたのはダニエルデラウニー、 先程の最終奥義で仕留めていなければならなかった相手だった。 ダニエルは持ち上げていたレファを放り投げると、柴田に歩み寄って顔を近づけ、白い歯を見せた。 (な…仲間の体を遮蔽壁に使うなんて…) レファの後ろに隠れて゛バランセ゛をやり過ごした非情なダニエルをもはや体中でそこにしか 闘志の宿らない瞳で睨み付けた柴田だったが、その瞳が見る世界は次の瞬間、闇に変わった。 「ハハハ…1on1ダッタラコッチガマケテイタカモナ…」 (残り17人)
(アヤカ…ごめんね…) その頃仲間の二人が一人の敵を倒すのに大苦戦を強いられていたことを知らない ミカトッドは一人「街」をさ迷い歩いていた。 (アヤカはこれ以上私と一緒にいちゃいけない…) 勿論アヤカキムラのもとをこっそり抜け出したミカは心細くて堪らないが、 それよりもアヤカのことを心配していた。 今のまま優勝してしまったらアヤカはますます孤独に陥ってしまう… それは優勝する喜びなどで補える問題ではなかった。 取りあえずもう一度辻ちゃんと加護ちゃんに逢って、 ちゃんと説明しよう…そう思っていた。 「!!…あれは…吉澤ひとみちゃん…」 周囲を見回しながら正面から歩いてくるのはモーニング娘。の吉澤ひとみだった。 その表情には疲労が浮かんでいる。 (か…隠れなきゃ…) そう思ったが周囲に隠れられそうなものは… (あった!) ミカは小柄な体を畳んでゴミ捨て用のポリバケツの中に身を隠し、 吉澤はそれに気付くこと無くすれ違った。
471 :
名無し娘。 : 2001/02/27(火) 01:49 ID:UKUYAwfs
確信犯だと思われてるようでしたので… 460でようやくお分かり頂けたみたいですね
472 :
Ver.Na : 2001/02/27(火) 07:02 ID:mIFUnCRg
...
473 :
マングース西浦 : 2001/02/27(火) 23:09 ID:UHLEziLk
474 :
名無し娘。 : 2001/02/27(火) 23:17 ID:bf.PI5xw
「ごっちんどこ…!?どっかに隠れてるの…?」 求める相手と逢えないまま既に三日を浪費しようとしている吉澤はさすがに 焦燥を通り越して諦めの気持ちを芽生えさせ始めていた。 せめて何かあてがあれば… そう思いながら吉澤は既に何度か訪れたことのある四階建てのスーパーに足を踏み入れた。 (ごっちんがいそうなのって人が多いところだと思うんだけど…) 一階の食料品売り場を素通りし、二階衣料品売り場に直行する吉澤。 「三日目だし服が無くなってきてもおかしくないと思うんだけど…」 エスカレーターが吉澤を二階まで運びきり、 それを降りた吉澤は視界に入った二人の姿を見て反射的に柱に身を隠した。 (ご…ごっちんだ!や…やっと…も…もう一人は……市井さん…!?) あ…あれ?市井さんは確か…ごっちんとじゃなくて他の誰かと行動してたはず… 飯田さんと安倍さんは違う…福田さんと矢口さんも違う… 多分石黒さんでも無い気がするし…中澤さん?うーん…や…あっ!! 市井が袖の破けた服を屑篭に捨て、新しい服を着ている。 そしてその脇で後藤は清算を…ど…どうしよう…ここでまたはぐれたら…でも… そう思っている間に後藤は清算を済ませ、二人で下りのエスカレーターに向かってしまった。 (…と…取りあえず尾行しないと!!) 「あれ?ヨッシーやんか」 その時柱から身を乗り出した吉澤に声をかけたのは丁度一階から エスカレーターで昇ってきたところの元T&Cボンバー、稲葉貴子だった。
「い…稲葉さん…」 その時無意識に吉澤が後藤と市井の方向に視線を向けたことを稲葉は見逃さなかった。 「後藤真希ちゃんらと一緒やったん?…ええの?行ってまうけど…」 一瞬吉澤はしまったという表情を浮かべたが、すぐに表情を戻した。 どうしよう…後藤達に声を掛けるか…悩む吉澤だったが、 「そう言えば一年前あんたには美帆ちゃんがお世話になったなあ」 その言葉に後藤たちに掛ける声を飲み込んだ。 今から約一年前、第三回天下一武道会において吉澤ひとみは一回戦で信田美帆と対戦し、 それを一蹴している。 「あれが美帆ちゃんの実力や思ったらあかんよ…あんたがラッキーやっただけやねんから…」 吉澤は闘いが避けられないと察した。 (せ…せっかくごっちんと逢えたのに…) 先程まで二人がいた場所にはもう誰もいない。 「゛悪魔の魔術師(デビルマジシャン)゛と呼ばれた私の技…とくと見さらせ」
「だ…誰も呼んでませんけど…」 吉澤の指摘を無視して稲葉は横に視線を移すと、 そこにあった特売品のベルトを数本手に取った。 パシン…パシン… 具合をためすようにそれで床を叩く稲葉。 「あんたは武器とかいらんの?」 「い…いりません」 ほう…と感心したような表情を一瞬浮かべた後に稲葉は笑みを浮かべた。 「私ぐらいが相手やったら武器なんかいらん言うことかい」 「……」 吉澤が返した沈黙が戦闘開始の合図となった。 ピュンッ! ピュンッ! 風をきる音と共に巧みに繰り出されるベルト。 まるで猛獣使いが獣を飼い慣らす為に使う鞭のようだが、しかし… (こ…このスピードなら避けられる) ビシッ!! 「うわっ!!」 そう思ったのとベルトの直撃を食らったのはほぼ同時だった。
478 :
Ver.Na : 2001/02/28(水) 00:02 ID:7ME9gec2
...
いえーい!
次は意外なあいつが脱落するぜ!
>>478 、、、
「前回加護ちゃんとやった時はキックやったけどなあ…今回は鞭やろ… 実はこっちの方が本式やねん」 そう言いながら得意の゛怒瑠鞭゛を繰り出す稲葉。 そのスピードは次第に速さを増している。 「うぅっ…!」 もはや目にも止まらぬ早さになっている鞭のスピードのため 完全に防戦一方に回っている吉澤。鞭の音に混じって稲葉の声が聞こえる… しかし何を言っているかまでは分からなかった。 「RuRuもコミも行ってもうたからな…うちは絶対に残らなあかんねん… 早いけど…バイバイやな…」 (こ…ここまでなの…) 両腕のガードをかいくぐって稲葉の腕の動きを観察する吉澤。 …その腕が止まった。 「覚悟しいや…」 パァンッ!!! その止めた腕を素早く振ると、空中で何かが破裂するような強烈な音が響いた。 それはその瞬間ベルトの先端が音速の壁を越えたことを意味している。
「はあ…はあ…」 すでに吉澤の両腕には血が滲み、かなり腫れている。 元々白い肌に赤いものが目立つのは想像以上に凄惨だった。 「悪いな…ヨッシー。早いけど終わりにさせてもらうわ」 「くっ…」 下がって距離を取ろうとする吉澤。 しかし稲葉はそれを素早く詰める。 「あんたも運動神経はええかもしれんけどな…喧嘩慣れはしてへんやろ!」 片側に環を作ったベルトの一本を吉澤の方向に投げる稲葉。 「な…なに!?」 それは吉澤の腕に巻きついて締まった。 「これで逃げられへん…」 (も…もう駄目…) そう思った瞬間、吉澤の耳に約三日ぶりの声が聞こえた。 「よっすぃー!大丈夫!!」 「ご…後藤真希ちゃん…!?」 稲葉もその瞬間注意を後藤のほうに逸らした。 (今だ!!) 飛び上がって゛スパイク゛を放とうとした吉澤だったが、それを稲葉は見逃さなかった。 「゛刺殺怒瑠鞭畝打撃乱゛!!!」
「うわぁっ!!!」 まるで予めリハーサルしておいたかのように声を合わせて相打つ二人。 「ち…かすっただけやのに…」 吉澤の゛スパイク゛は稲葉の肩をかすめただけだったが、 その鎖骨は数秒前とは微妙に違う形を見せている。 「な…なんてことや…」 吉澤は稲葉の決め技をノーガードで食らった為に立ち上がれないでいるが、 しかし… 「後藤!!稲葉さんを逃がしたら駄目だよ!!」 「わ…分かった!よっすぃーのことは頼むね!」 戦闘の騒ぎを聞きつけたのか戻ってきた市井と後藤の為に形勢は完全に逆転されてしまった。 (に…逃げなあかん…) 後藤に背を向けて逃げ出した稲葉だったが、 (あ…あかんわ肩めっちゃ痛い) 周囲を見ると、帽子売り場がある。 (こ…これや) 稲葉はそこにあった阪神の帽子を手に取ると、それを後藤の方向に投げる。 そして後藤の目の前で鳩を飛び出させてみせた。 「わーい、鳩だー!待ってーーーー!!!………はっ!」 気付いたとき、既に稲葉は消えていた。
「ごめん…稲葉さん逃げちゃった…」 「馬鹿だねあんた…何やってんの?私見てたんだからね」 顔を赤くする後藤。そして吉澤は市井の膝の上で息を荒くしている。 市井は脇腹に手をあて骨などに異常が無いか調べているがそれによって吉澤は時々苦悶の表情を浮かべる… 特に右脇腹の一点が痛むらしい。 「…よっすぃーは…どうなの!?」 「…あんたねえ…ふぅ、どうかな…無理しないならこのまま病院行ったほうがいいとおもうけど…」 病院に行くというのはこのまま脱落するということを意味するのか… 「だ…大丈夫です。大したこと無いですから…」 自分の体の具合をある程度分かった吉澤はしかし市井の提案を辞した。 立ち上がろうとする吉澤に肩を貸す後藤は市井の表情を見た。 「よっすぃーも一緒に行っていいよね?」 「…ま…構わないけど…後藤の友達みたいだしね。ただ、何があっても私は知らないよ」 吉澤の横顔を介してその言葉を聞いた後藤は肯いた。 「ごめんごっちん…世話かけることになっちゃって…こんなつもりじゃなかったのに…」 「いいって。一階に降りようとしたら二階のほうから騒ぎ声がしたから 戻って来てみたらよっすぃーいるんだもん…びっくりしたよ…でも、嬉しかった」 そんな話をする二人の後ろで一人頬を歪めるのは市井紗耶香だった。 (何があっても知らないよ…か……くくく)
いくら待っても追ってこない柴田を心配して別れた場所まで戻った石川が見たものは うつ伏せで倒れたままの柴田の姿だった。 「あ…あゆみちゃん!!」 介抱されて目を覚ました柴田は最初に自分を介抱する人間の顔を見た。 一瞬まだ戦闘が続いていると思った柴田は表情を強張らせたが、 その顔が石川のものであるとすぐに気付いて落ち着き、自分が敗北したことを確認した。 「だ…だめだったよ…私はここでおしまい…」 「挑戦…それは勝利を目指して全力を尽くすこと…チャオ!チャ−ミー石川です」 挑戦に敗れた柴田は石川に何かを差し出した。 「梨華ちゃん…こないだ私にY字バランス見せてくれたよね!?」 かつてモダンバレエを習っていた石川は体の柔らかさに定評があり、 石川自身それを自慢のたねにしていた。 「これ、メロン帽っていうんだけど…」 一見ただの帽子に見えるそれは変身の掛け声一つで中から戦闘コスチュームが飛び出し、 一瞬にしてそれを使う者に戦闘体勢への移行を可能にする。 「で…でもこのお帽子って…」 「いいの…梨華ちゃんに貸すから…きっと…最後まで残って」 石川を最後まで守ることが出来なかった柴田の最後のお詫びの気持ちだったのかもしれない。 「わ…私本当は…」 最初から、っていうかいつも一人で仲間なんていなかったの… 本当のことを告白しようとした石川だったが何かを察したのか柴田はそれを遮った。 「告白記念日は…梨華ちゃんが最後まで残った日にしよう… もし梨華ちゃんが最後まで残ったらその時は…電話待っています(3月7日発売)」 ゆっくり肯くと、石川はそれを受け取った。
485 :
マングース西浦 : 2001/03/01(木) 01:28 ID:pNn7tWbY
ち…はあ…今日新宿のさくらやホビー館に行ってきましたけど モーニング娘。のトレーディングカードってそんなに売れてないのかな? いっぱい売ってたし売り上げトップ3に入ってないみたいだったなあ… ちなみに一位は女子プロレスのやつで 二位と三位はいわゆるギャルゲーのカードだった それについで四位…二位と三位がギャルゲーで一位が女子プロレスっていうのが さっぱり分からない
あれ? sageで書いたハズなのに…すみません
平家さんの曲ヘッドホン全開にしながら書いてる… 頭おかしくなりそう…でも平家さんはこれから大活躍させる… とまた煽ってから寝てみる
488 :
Ver.Na : 2001/03/01(木) 07:20 ID:DM5nq716
...
489 :
マングース西浦 : 2001/03/01(木) 22:59 ID:1JJEFP2M
マロンメロンか…
あんまり出鱈目なことはやらないで欲しかった…
タイトルがメロン記念日のデビュー曲に似てるなぁ…
なんとなく
>>488 、、、
最近は小説がメイン? また、面白いネタキャラも楽しみにしてるよ。
ネタキャラ? なんのことやら…とりあえず、レスありがとうございます 我が闘争は私も読みました
すっかり日も暮れた三日目の夜の「街」の中をレファサンボはダニエルデラウニーに肩を 抱えられながら歩いていた。 「悪いね…ダニエル」 「気にしなくていい…仲間…じゃないか」 (仲間…か…ふん) 口にするのもはばかられる単語だったが、その言葉を聞いたレファも苦笑している。 今のココナッツ娘。は四人揃って勝ち残る、 いわゆる文殊の知恵を期待してそれだけの利害関係をもって結びついている。 ただの仲間とすら言えないもろい関係だった。 その亀裂を最も理解していたのはアヤカキムラだった。 「ミ…ミカ!?ど…どこ!?」 既にミカがアジトを抜け出して数時間を経ているが、 アヤカの動転はいまだ続いている。 (う…嘘…ミカが…ミカちゃんが私を裏切るはずが無い…) 定まらない視線を部屋の中に漂わせながら、アヤカはこれまでに無いほど 無駄に時間を浪費していた。 ガタッ… 「ミ…ミカちゃん!?」 前触れもなく開いた入り口のドアを振り返ったアヤカだったが、 そこに立っていたのはダニエルとレファの二人だった。
「な…なんだあんた達か…」 「なんだってことはないだろ…こっちは疲れて帰って来てるのに」 言われて気付いたアヤカはごめん、とだけ言うと、 二人が帰ってきたことで緊張の糸が僅かに緩んだのか、 デスクに深く腰を掛け深いため息をついた。 「はぁ…」 それを見て怪訝な表情を合わせるダニエルとレファの二人。 どう見ても普段のアヤカとは何かが違う。 「そう言えば…ミカはどうしたんだ?」 レファをソファーに掛けさせ部屋を見渡したダニエルが聞いた。 「分からない…帰って来ないんだ…」 「な…なんだって?」 嘘だろう!?という口調で聞き返したダニエルだったが、 アヤカの首が縦に振られることはなかった。 「何か心あたりとかは!?」 問うレファだったが、アヤカは再び首を横に振った。 この日の午前に自分がミカに対して行った告白が、ミカに重荷を与えることになったことには気付かない。 アヤカはそういう人間だった。 「まあいい…もう少し待とう…」 そう言うレファに、ソファーに腰を掛けるダニエルだった。 「探しに行って擦れ違いになってもしょうがない…夜も遅いしな」
「はぁ…はぁ…どうしよう…やっぱり広すぎるよ…誰がどこに居るかなんて見当もつかないよ…」 アジトを飛び出してみたのはよかったものの、それ以降の計画を全く建てていなかったミカは完全に行き詰まっていた。 (こ…こういうときは…初心に帰ったらいいのかな…) 試合が開始される前にみんなが一度集合した中央の広場に向かおう… そう思った。アジトからさほど遠くない場所にそれはあった。 そこに行けばなにか思い付くかもしれない… 程無くそこに着いたミカは思いがけず人影を見た。 ビクッ! 一瞬震えたその人影は次に逃げ腰になった。 その小さい人影は… 「も…もしかして、つ…辻ちゃん…!?」 ゆっくり肯くその人影。この暗闇でも相手がミカであることには気付いているのだろう。 今のミカは二日前に出会った時の様に害意を放ってはいない。 それに気付いたのだろうか、辻は逃げ腰を止めた。 「辻ちゃん…ここで何してるの…?」 「帰り たい の…」 …同じ気持ちだよ…そう言いかけたミカだったが、 アヤカの元を勝手に去っておいてそんな無責任なことは出来ないと気持ちを引き締めた。 「加護ちゃんは…どうしたの?」 黙って首を横に振る辻。
そうなんだ…もう… 暗闇に慣れたミカの目が捕らえた辻の表情には全く覇気が無い。 「でもここにいたって帰れないんだよ…辻ちゃん。分かるでしょ!?」 辻の様子がおかしい…両肩が揺れている…いや、震えていた。 続いてきこえたうめきでミカは察した。 「泣いちゃ駄目だよ辻ちゃん…もう二年生でしょ!?」 (私だって泣きたいのに) 「だって …もう 帰れ ないん だ もん…」 「か…帰れないって!?…これが終わったら帰れるよ」 辻の言うことが分からないミカは辻を諭そうとするが、辻の泣き方はエスカレートする一方だった。 ど…どうしたらいいんだろう…矢口さんならこんな時… 「飯田さん は怖い人 に なって…亜依 ちゃん は私の ことが 世界一 キライ だって 言った んだ よ…私 もう…帰り たい のに…どこに も 帰れ ない…」 その言葉を最後に後は辻は泣きじゃくるのみになったが…ミカはその言葉で察した。 アヤカだ…アヤカがやったんだ…アヤカは言っていた。 「なっちさんのカードは必ず持ってくる…自分の手は汚さずにね」 何をどうやったのかは分からないが、アヤカは飯田さんに何らかの操作を… ミカの視界の中の辻が涙で急速に歪んでいった。 (酷いよアヤカ…こういうことだけはやっちゃいけない… 人の心を弄ぶことだけはやっちゃいけなかったんだよ…)
ふと気付くと、ミカは自分の泣き声を聞いていた。 (あ…あれ…なんで泣いてるんだろう…私…!?) ふと気付くと辻はきょとんとした表情で自分を見つめている。 「ミカ ちゃん も 悲しい の?」 (辻ちゃん…) ミカは慌てて涙を拭くと、辻に向かって精一杯の笑顔を見せた。 辻ちゃんより私の方がお姉さんなのに、私が泣いてどうするの… 自分に言い聞かせながら辻の肩に手を置いた。 「辻ちゃん…私のこと…信じてくれる?」 肯く辻。 「今の ミカちゃん は いつも の 優しい ミカちゃん だから」 その言葉に肯くと、ミカは表情を引き締めた。 「ミニモニは二人きりになっちゃったけど…」 加護のことを思い出したのか再び寂しげな表情を浮かべる辻だったがミカは続けた。 「…私が矢口さんになったつもりで頑張るから…辻ちゃん私について来てくれる?」 辻は無理に微笑を浮かべながら首肯した。 (アヤカ見てて…私、出来るところまでやってみるから)
「よっすぃー…本当に大丈夫なの?目茶苦茶汗かいてるじゃん」 「だ…大丈夫だから。ちょっと暑いよね、今日って」 まだ五月と言えば朝晩は涼しい。むしろ寒いと感じる時すらある。 今晩はどちらかと言えば涼しいほうだった。 「ね…ねえ!市井ちゃん!よっすぃー本当に大丈夫なの!?」 「だからー…私医者じゃないって言ってるでしょ」 吉澤は顔色も悪い。 素人目に見ても大丈夫では無いことは明らかだった。 (最悪、肋骨が内臓に刺さってたりでもしてなけりゃ大丈夫でしょ) 内心でそう言う市井。 自分の体は自分が一番分かる、と言って吉澤は後藤を納得させようとしている。 後藤はようやく納得したのか、吉澤を楽な姿勢で寝かせると、 「そういえばさあ、この三人でプッチモニ出来るんじゃない?」 そう話始めた。 「ははは…プッチは圭ちゃ…」 とまで言いかけて口を噤む市井。 その市井が微妙に軽率な発言を悔いるような表情を浮かべていることに吉澤は気付いた。
「あー、圭ちゃん大丈夫なのかなあ…」 呑気に答える後藤の横顔を通して見る市井の表情は既に冷静を取り戻していて、 後藤の言葉に冷静に 「圭ちゃんなら心配要らないよきっと」 そう答えた。 「そうだね…あ、そう言えば、もしプッチモニのうちらと圭ちゃんが残ったらどうなるの? 四人優勝ってことになるの?」 うーん、と一瞬考える表情を浮かべた市井だったが、思い付いたアイデアを話した。 「四人優勝ってことはないね多分…」 後藤も肯いた。 「市井ちゃんがやめて、それで一回プッチモニは終わったんだって、 前に圭ちゃんが言ってた。よっすぃーが入ることによってプッチは 全く別のグループになったんだって…」 その言葉には吉澤も肯いた。その吉澤を見て、市井は僅かに唇の端を歪めて後藤に聞いた。 「もしさ…初代プッチと新生プッチ――私か…この吉澤――どっちか 選べって言われたらどっちを選ぶ…?後藤はさ…」
「い…市井さんそれは…」 口を挟む吉澤に平手を向けることでそれを一喝した市井は、 後藤の瞳を正面から見据えている。 「圭ちゃんに相談してからとか言うのはナシでさ…後藤の正直なところ…聞かせてよ」 後藤は市井から目を逸らすことはしないが、肝心の口は動かない。 「そ…そんなの選べるわけ無いじゃん!市井ちゃんもよっすぃーもどっちも大事なんだから!」 ついに目を逸らした後藤はそう答えた。 僅かに失望の表情を浮かべた市井は吉澤に飄々とした視線を向けると 「だってさ、吉澤」 そう言った。 それには吉澤も下を向くしかない。 (市井さんって答えてくれてよかったのにさぁ…でも、少し嬉しいよ) 「よっすぃー、気にしないでね…なんか市井ちゃん最近変なの」 最近と言ってもここ数日の話だ。しかしそれは実際の日数より遥かに長く感じられていた。 「ま、安心しなよ。もしも四人が残ることになったら私が身を引くからさ」 そんな…という表情を浮かべようとした後藤だったが、肯いた。 「最近の市井ちゃん…よくわかんないや…優しくなったり…急に酷いこと言ったり…」 「ははは…私の歳で一年経って何も変わらなかったらバカだよ」 そう言って翌日に備えて睡眠に入った市井に、他の二人も続いた。
煮え切らないまま三日目を終えようとする平家みちよ。 石川梨華はメロン帽が自分にぴったりなことに喜ぶ。 稲葉の無事を信じて眠る信田と肩の痛みに眠れない夜を過ごす稲葉。 数日ぶりに一緒の夜を過ごすあさみとりんね。 斎藤と大谷は抜かり無く、ミカを除いたココナッツの面々は策謀の夜を迎える。 脱落者(脱落順) 飯田圭織(モーニング娘。) 加護亜依(モーニング娘。) 北上アミ(シェキドル) 柴田あゆみ(バレリーナ戦隊メロン)
―― 四章 ―― 「――おはようございます」 四日目の放送が始まった。 「みなさん、大会四日目の朝、心地よく迎えられたでしょうか? 正直な話、ここまでの戦いに疲れ果て、゛もう帰りたい゛などと 言っている方もいらっしゃるようです」 「そうか…私達の行動って全部見られてるんだったね…」 最初の説明を思い出したミカは辻に説明した。「街」には到るところにカメラが 設置されており、それで私達は行動の全てを監視されている… 「そんな方に朗報です。本日この放送までに参加者がようやく半分以下に減りました 脱落された方を気の毒に思う必要はありませんよ。皆さんは自分の意志でここまで来たのですから」 ほっとする辻の横で体に嫌な予感を走らせるミカだった。 (残り15人)
「それでは昨日の放送から今放送までの脱落者の発表を行います。 飯田圭織さん、加護亜依さん…」 その発表を聞いても動じない後藤と市井に驚く吉澤。 「ど…どうして平気なんですか?二人とも…飯田さんと加護が…」 市井はうつむく後藤を横目に吉澤に言った。 「あの二人のカードはさ…真希が奪ったんだ」 「!!…違うでしょ紗耶香!!」 市井の言い方に反発する後藤だったがその次の句が出なかった。 「違わないじゃん。それから彩っぺのカードを奪ったのも、 明日香を脱落させたのもこの子なんだ。全く…すごいよこの子は」 そう言って頭に乗せられた市井の手を後藤は振り払った。 「ごっちん…本当なの?」 「私は…もう怪我で続行出来ないメンバーのカードを受け取っただけ…」 「あのねぇ、後藤、゛受け取った゛っていうのは双方に合意があった場合にだけ使える言葉なんだよ」 「紗耶香が゛取れ゛って言ったんでしょ!!」 「ふーん…じゃあさ、私が゛殺せ゛って言ってたら殺してたの!?」 その言葉に顔面を蒼白にした後藤を見て市井はついに我慢しきれず笑い出した。 「あははははは!冗談だよ、冗談。後藤って怒らせると面白くてさ あはははは、ほら見なよ吉澤、後藤涙目になってるから…」 「……」 ついていけない吉澤はただ黙って二人のやり取りを見ていた。
「北上アミさん、柴田あゆみさん…」 斎藤瞳と大谷雅恵はただ顔を合わせた。 ここが戦場ならば死人に掛ける慰めの言葉など無いからだ。 ただ柴田は行動の選択を誤り、そして散った。 それだけの話…しかし、無意識に二人の内面に燃え上がるものは確かにあった。 「…」 次に読み上げられた名前に「街」にいた唯一のオーストラリア人と日本人のハーフは表情を歪めた。 ――三時間前 ほとんどの参加者が夢の世界の住人になっていたこの頃、暗闇で動き出す影があった。 「誰…?ミカか!?」 それに気付いたレファサンボは肌身離さず身の回りに置いていた金属の棒を探り、 それを掴んだ。 暗闇に慣れてきたレファは目の前のダニエルデラウニーに気付いた。 「なんだ…ダニエルか…」 「゛なんだ゛ってことはないだろ…」 そう言いながら両手を振り上げるダニエル。その両手には太い何かが握られている。 (ま…まさか!!) ダニエルの様子に尋常でないものを感じたレファは゛守護神゛を横に構えて ダニエルの振り下ろしたものを受け止めようとしたが、しかし… ダニエルが振り下ろした角材はレファの゛守護神゛を小枝のようにへし折ると、 レファの額を砕いた。 「あのバレエ女の技でお前が寝てた時にそいつに亀裂を入れておいて正解だったよ」
デスクに就いたまま寝ているアヤカキムラのほうに視線をうつすダニエル。 (寝てるな…) 足音を忍ばせ、アヤカに近づこうとしたダニエルだったが、 突如聞こえたアヤカの声にその歩みを止めた。 「ダニエル…なんのつもり!?」 暗闇でアヤカの瞳が鋭く光っている。 「ハハハ…狸寝入りか…やられたな」 笑ってごまかそうとすダニエルだったが、アヤカはそれに乗ろうとはしない。 「ミカが帰ってくるまで待つんじゃなかったの?」 しかしその問いにダニエルは苦笑するのみだった。 「もう帰ってこないよ…あいつは…」 「なんでそう思う…」 うろたえを隠して聞いたアヤカにダニエルは答えた。 「ミカはお前と居る時はいつも萎縮してたじゃないか…あいつはお前が苦手なんだよ」 「そ…そんなことはない!」 何か痛いところを突かれたのか、アヤカは声を荒げた。 しかしダニエルは意に介さず、再び角材を振りかぶって言った。 「終わりだ…」
一方通行ほどつまらないことはないな… まあ別にいいけど元ネタ無しの展開だときついかな…
506 :
名無し娘。 : 2001/03/02(金) 01:43 ID:q19G6La6
( `.∀´)<いーかげん待ちくたびれたわ! 私は一体何処で何してんのよ!
507 :
名無し娘。 : 2001/03/02(金) 22:15 ID:OeRlYVsQ
少しこれなかった間になにやら怒涛の展開
柴田あっさり脱落しちゃったのね。
最初はバキとBRに添った形で話が進むのかと思ったら
だいぶ違ってきて話の先が読めなくなってきた。
この先の展開も期待してますよ。
>>506 と同じく( `.∀´)の活躍も楽しみ。
508 :
マングース西浦 : 2001/03/02(金) 22:55 ID:MsWZhEiY
そろそろ平家さんが出てくるぞ…
>>506 次回出てきます
平家さんも…
>>507 柴田様は終盤を待たずに去られたのです
レスありがとうございます
ここから脱落するペースが上がっていくのです
「……くそ……」 しかしダニエルはその腕の動きを止めた。 アヤカの手には黒い金属光沢を持った何かが握られていたからだ。 「そんなものまで持って来ていたとはな…」 「転ばぬ先の杖だよ、ダニエル」 しかし自分に銃口を向けられたこの状況でダニエルは笑っている。 「何が可笑しい」 「撃てるのか?この私を…」 アヤカは表情を変えなかった。 「近づくなダニエル」 摺り足で接近するダニエルを威嚇するアヤカ。 しかしダニエルは従わない。 「近づくな!」 ガチッ! しかしダニエルの足元に向けて引きがねを引かれた銃の口から火が吹かれることは無かった。 「な…不発!?」 前日に自分が寝ている間デスクの引き出しからそれを発見したミカが 弾丸を全て抜いておいたということをアヤカは知らない。 「ははははは…間抜けだなアヤカ!」 「く…っ!!」 アヤカはデスクをダニエルに向かって蹴り飛ばし、素早く立ち上がった。
飛んできたデスクを力任せに角材で打ち返したダニエルだったが、 元いた場所にアヤカは既に居ない… (どこだ!!) 周囲に視線を走らせたダニエルだったが、探し人の声は自分の真後ろから聞こえた。 「はねっ返るな…怪力バカが」 デスクを蹴り上げたアヤカは素早く椅子に立ち上がると跳躍し、 自らが蹴り上げたデスクに飛び乗り、そのデスクをダニエルが打ち返す瞬間 そこから飛び上がりダニエルの後方に回るという芸当を全てダニエルの死角でやってのけた。 「……アヤカ………済まなかった……」 小声で言うダニエル。聞き取れないアヤカがダニエルの方に顔を近づけたその瞬間… ダニエルの後頭部がアヤカの顔面を直撃した。 「うわぁっ!!」 たまらず前かがみになったアヤカを笑いを含んだ表情で見上げたダニエルはそれを抱え上げると、 地面に叩き付けた。プロレスで言うパワーボムの形だった。 「ハハハ…怪力バカと思われてたほうが都合がよかったんだよ」 そう言ってもはや用の無いアジトを出ようとドアノブに手を掛けた瞬間、 ダニエルは右足、続いて右腕に熱いものを感じた。 確認すると、そこにはレファの折れて二本になった゛守護神゛が突き立っていた。 そして後方には顔を赤く染め、痙攣しながらも立ち続けるレファがいる。 「やってくれたな…レファ…」 「カ…カカカ…気にするな…仲間…じゃ……ない…かっ…」 そうとだけ言ってレファは昏倒し、動かなくなった。 こうして充分な能力を持ちながらも自分の力を過剰評価する余り周囲の人間を過小に評価してしまった アヤカはこの大会から脱落した。
――現在 「…レファサンボさんと、アヤカキムラさん、以上六名です」 「アヤカ…」 横で辻に見られていることもはばからずミカトッドは仲間の名前を口にした。 (やっぱりアヤカ…こうなっちゃったんだね…) ふと辻の視線を横顔に感じたミカは辻のほうを見た。 辻は改めて飯田と加護の脱落を確認したことによる脱力の他に、 ミカを心配するような表情まで浮かべている。 「ミカちゃん…大丈夫なの?」 「だ…大丈夫だよ!ほら…辻ちゃんも元気出して!もう半分まで来たじゃない」 ミカは肯く辻を確認しながら自分を叱った。 また辻ちゃんを心配させて…駄目だなぁ私… 矢口さんや…アヤカみたいにはまだまだなれないよ… そう思いながらも不気味なのはまだダニエルの名前が呼ばれていないことだった。 ダニエルはどうなったんだろう… しかしその他に考えるべきことがいくつもあったミカは、 それ以上ダニエルのことを思うことをしなかった。
一方そのダニエルは止まらない体の震えを両腕の力で強引に押さえつけようとしていた。 その震えは右手足から止めど無く血液が流れ出る為に体温を奪われ続けている ことから来るものであったし、 もう一つはアヤカキムラとレファサンボを仕留めてアジトから出て初めて見た相手が放つ 異様なオーラを感じたからでもあった。 (万全な体調だったらともかく今あんな奴と逢ったら私はそこで終わりだ…) その相手とは三日通して一度も戦闘らしい戦闘をこなしていない平家みちよだった。 溜まったフラストレーションを戦意に変えた平家はそれを隠さず、 深夜の「街」を徘徊していた。 物陰に隠れてそれをやり過ごしたダニエルだったが、 もし見つかっていたら今ここにいることはなかっただろう。 しかし、それを隠れてやり過ごすことが出来たから、今私はここにいる… (私は、運がいい) そう思ってふと頬を緩めた時のことだった… 「ヘイ!ダニエル!」 ダニエルは身を強ばらせた。聞きなれた日本訛りのきつい貧困なボキャブラリーで強引に 迫ってくるそのジャパニーズイングリッシュの使い手は、信田美帆だった。
「アーユーオーケイ!?」 信田は警戒するそぶりを全く見せない。 大方、怪我をして病院を探しているとでも思っているのだろう… (所詮、ヨーイドンが無いと走り出せないアスリートだな) そう察した。 その間にも信田はダニエルに近づくとすぐ側にしゃがみ込み、ダニエルの右足の様子を見ている。 「ダーティー、ダーティー!」 ただ突き刺さった鉄パイプを無造作に引き抜き、アジトに用意してあった薬を適当に塗って そこらにあった布を巻きつけただけ…それを汚いとシノダは言いたいのだな、 ダニエルはそう察した。 「ゴーホスピタル、ウィズミー、オーケイ!?」 相変わらずLとRの発音が分かり難い…そう思いながらも信田が差し出した肩を借りるダニエル。 (ククク…絞め殺してやる) そう思いながら信田の肩に掛けた腕に力を込めようとした瞬間、 ダニエルの腰に信田の両腕が回された。 そしてダニエルは一瞬浮遊感を感じ、次の瞬間そのまま後頭部から地面に墜落した。
ダニエル自身、何が起こったのか分からなかっただろう。 それ程信田の芝居は完璧だった。 純粋なアスリートが数年の芸能生活で身につけた狡猾さ…それを生かしてみせた信田は満足げに微笑んだ。 ともあれ、ダニエルデラウニーは自らが中澤裕子を脱落に追い込んだ゛バックドロップ゛ という投げ技でまるで因果応報のごとくこの大会からの脱落を余儀なくされた。 「でもさ…一緒に病院に行こうっていうのは嘘じゃないよ。 その怪我は普通じゃない。早く病院に行かないと破風症になっちゃう」 くっ…重い…そう言いながらダニエルの腕を引いた信田は腰に違和感を感じた。 チクッっと何かが刺さるような感覚…信田美帆は長い運動選手生活の代償として腰に爆弾を抱えている。 そしてそれは治療によって直るようなものではなく、 一生付き合って行かなければならない性質のものだった。 (まさか…) そう思いながらもダニエルを抱えようとした信田は突如片膝をついた。 もともとバックドロップという技は掛ける側の腰にも圧力のかかる技だった。 (やっちゃったよ) そう思いながらも信田は電話のあるところに辿り着くと、救急車の手配をした。 しかしそれは自分の為ではなくダニエルの為にだった。 (残り14人)
「あ〜ぁ…なんで誰とも会えんのやろ…」 初日に中澤と、二日目に矢口真里、レファサンボと顔を合わせている平家みちよだったが それ以外には誰とも顔を合わせておらず、 本格的な戦闘に到っては今大会において未だ一度も経験していない。 「適当にウロウロしてるだけなんがあかんのかなあ…」 自分が知らず知らずに人通りの少ない道を選んでいるとは気付かない。 ここ半日だけで負傷者脱落者が頻発している中誰とも会わず、 平穏に過ごせているのは実際運がいいと言う他はない話だったが、 平家は平穏を望む性格は持ちあわせていない。 こういった機会ならばなおさら平穏では無い状況を望んでいた。 体の奥から湧き出る好戦的なものを発散させながら、 それのはけ口を求めて歩く朝方の平家だった。
「なんかこういう場所って思い出さない?牧場のこととかさあ…」 りんねの言葉に肯くあさみ。 二人は一面に芝生の広がる運動公園を、周りより少し高くなっている噴水広場から見下ろしていた。 「でも…動物いませんよね…いるのは人間ばっかり。それに近くにビルとかも見えるし」 ……沈黙する二人。 既に念願だったメジャーデビューを果たし、忙しい毎日を過ごすことも多くなった二人は、 必然的に牧場での生活をある部分美化し、懐かしいとすら思うことがあった。 みんなどうしてるかな…二人は同時に思った。 ゛みんな゛とは牧場の従業員の仲間は勿論、自分達が世話をしていた動物達のことも指していた。 二人が見下ろす芝生には子供を遊ばせている親達や、犬に芸を仕込んでいるエキストラ達が大勢いる。 犬に投げたフリスビーをキャッチさせる芸を仕込んでいる者もいた。 「あっ、そうじゃないよ…下手だなあ…」 相手には聞こえるはずも無いあさみの注意をりんねは笑って聞いた。 「ちょっとりんねさん、あの人に教えて来ていいですか?」 りんねが笑って肯いたのを受けてディスクドッグをしている飼い主の方向に駆け出したあさみだったが、 その駆け足は数歩で止まった。
「どうしたのあさみちゃん?」 「……」 黙り込むあさみは一点を見つめている。 その方向にはわき目も振らずこちらに向かってくる二人の女… 「りんねさん!敵です!」 そう言って振り返り、走ってきたあさみに対し、りんねは言った。 「敵を目の前にして逃げたら…臆病者になっちゃうよ」 あさみは肯き、バレリーナ戦隊メロンの斎藤瞳と大谷雅恵を迎えた。 二人の前で止まった斉藤と大谷の二人。 「下からあなた達二人とも丸見えでしたよ。 戦場だったら狙い撃ちにされて二人とも死んでいたところです」 先に大谷が口を開いた。 「そっちの小さいほうにはめぐみがお世話になったよね」 斎藤は皮肉を込めて言ったつもりだったがそれに対してへへと笑うあさみに斎藤は眉を引きつらせた。 「あさみちゃん、会ったことあるんだ」 肯くあさみを確認し、りんねは二人に視線を戻した。 「じゃあ…そろそろ始めますか」 そう言って大谷は斎藤と視線を合わせた。
(瞳…作戦通りいきますよ) (分かってる) 息を合わせて二人同時にゆっくり間合いを詰める斉藤と大谷の二人。 その二人をりんねとあさみは交互に見ていた。 タッ… 先に大谷が踏み込んだ。 「初弾ッ!!」 ゴッ! 「うあっ!」 鈍い音と共に後方に倒れたのはあさみでは無く、りんねの方だった。 そして倒れ込んだりんねを斉藤が素早くスリーパーホールドに切って取る。 「最初の一撃…すなわち――初弾――これをどれだけ正確にヒットさせられるかで 勝負の半分は決まると言っても過言ではありません」 解説する大谷を無視してりんねに駆け寄るあさみの前に立ち塞がったのは無視された大谷だった。 「あなたの相手は私ですよ」 大谷はあさみと寸分違わない構えを取っている。 「どいてくださーい!゛回転龍尾脚゛!」 バキッ… しかし、゛回転龍尾脚゛で吹き飛ばされたのはあさみのほうだった。 「あ…あれ?」 大谷はあさみと同じ構えを取ったまま余裕の笑みを浮かべている。
「くっ…!!」 チョークスリーパーで絞められるりんねは既に意識を失いかけていた。 (こ…こんなあっさり負ける訳にはいかないのに…) 「戦場でのクリーンファイトっていうものを教えてあげる…」 チョークスリーパーを決めたままグラウンドの体勢から立ち上がると、 斉藤はそのままりんねと共に噴水の方に向かって歩き出した。 「悪く思わないでよ…」 そのまま斎藤はりんねの抵抗などものともせずりんねの顔を水面につけた。 「りんねさん!!」 そう言って助けに入ろうとするあさみを、 バキッ! 蹴り飛ばす大谷。 「あなたの相手はこの私ですよ」 (つ…強い…) あさみがそう思った時、周りから数多くの獣のうめき声が聞こえた。 公園にいた犬達があさみの救出に駆けつけたのだろう。 「私達を学習能力の無いバカだとでも思っていたんですか!?」 そう言うと大谷は懐から金属製の酒入れを取り出した。 大谷はその内容物を辺りに撒き散らし、そこに火の点いたライターを投げる。 「けだものは火を怖がる…残念でしたね。既に研究済みです」 「そ…そんなバカな」 あさみの切り札も完全に破られた。
520 :
マングース西浦 : 2001/03/03(土) 22:56 ID:1H0JUIgo
ガードマンの加納とガイアの部下の軍人です
521 :
名無し閣下 : 2001/03/03(土) 23:00 ID:X8Mdb0C6
ミニモニあげ
「そろそろ止めておかないと死んじゃうか…」 そう言って斎藤はりんねの顔を水面から離したが、 もはやりんねはピクリとも動かなかった。 「それじゃあ…駄目押しッ!!」 そう言ってチョークスリーパーを掛けたままりんねをスープレックスの形で後方に投げた。 りんねの体はおかしな方向に折れ曲がり、全く動かなくなった。 斎藤が、りんねの服を物色してカードを探そうとしたその時、 「危ないりんねさーん!」 突如横から来た飛び蹴りをかわし切れず、直撃を受けて吹き飛ばされる斎藤… 「痛…雅恵なにやってんの!」 「す…済みません!!」 (なんという瞬発力…) りんねの危機を察してそれを救出したあさみの動きを、大谷は追い切れなかった。 「でも…形勢はまだこちらのものです…」 そう言って大谷はあさみとの間合いを詰めた。 その大谷に対し、拳や掌を突き出すあさみ。しかし大谷はそれら全ての動きをコピーし、 あさみに釣りを付けて返した。 (リ…リーチが違う…だから同じ攻撃でもこっちはダメージが大きくてあっちは小さいんだ…) あさみは自分の動きをコピーするだけの大谷が自分より優位に立っている理由が分かったが、 しかしあさみは攻撃の手を緩めなかった。
「くっ…くっ!!」 (こ…これだけ攻撃してもスピードが緩まないなんて…) 大谷は焦っていた。あさみの攻撃は収まるどころか、次第にそのスピードを増して来ている。 こんな相手は始めてだ…大谷があさみのスタミナに脅威を覚え始めたその時だった。 「やるじゃん、あんた…」 横から斎藤の声と、前蹴りが飛んできた。 「おっと…えっ!?」 その前蹴りは避けたあさみだったが、その次にその前蹴りが蹴り上げた砂があさみの目を直撃した。 「うわぁっ!!…わざとやったなっ!!」 「はははっ…゛わざとやったなっ!!゛…だってさ、雅恵」 「これは試合―― リハーサル ――とは違うんですよ」 子供に教えるような口調の大谷に斎藤は笑うとあさみの腹部に蹴りを入れた。 倒れ込むあさみからマウントポジションを奪うと、そのまま殴りつけようとする斎藤。 その前に大谷の方を振り返り、 「雅恵!!あんたは今の内あっちのカードを……!?」 大谷の後ろに人影が見えた。 そしてその人影は斎藤が見ている前で大谷の首に腕を巻きつけるとその意識を奪った。
「ま…雅恵…」 大谷はだらしなく地面に肢体を投げ出してしまったまま動かない。 斎藤は声を掛ける暇すらなかった。 「り…りんねさん!?」 かろうじて目を開けてあさみはりんねの顔を見たが、その目は閉じられたままだ。 時に一流の挌闘家は意識を失っても、無意識の状態のままで闘い続けることがあるという… 呆気に取られる斎藤のマウントポジションから脱するあさみ。 「しまった…!」 あれしかない…そう言って斎藤は 「ちぇーーーんじ・バレリーナ戦隊!」 バレリーナ戦隊へと変身した。 「な…なんなのその変態的なコスチューム…」 変身ぶりに引くあさみに構わず、斎藤は必殺技をたたみかけた。 ゛バッセ゛!!゛プリエ゛!!…゛バランセ゛!!! しかしそれらの技が放たれる度にりんねはあさみの前に立ち塞がり、 あさみを守り通した。 「な…なんて精神力なの…も…もう駄目…」 体力を使い果たした斎藤が意識を失うのを待つようにして、りんねも倒れた。
「り…りんねさん!!」 介抱されてりんねは目を覚ましたが、もはやその目に生気は無かった。 「あさみちゃん…私のぶんも頑張るんだよ」 心身ともに困憊な状態のりんねはあさみにカードを手渡した。 もはやこれ以上闘い続けるのは無理… あさみにもそれが分かっていた。 本来ならば斎藤のスープレックスで終わっていても不思議では無かったのに、 りんねはあさみを守る為に何度も立ち上がって来てくれた… 分かってはいたが、あさみは悲しかった。 「分かりました。…りんねさんはゆっくり休んでて下さい」 しかし涙を堪えてあさみは立ち上がった。 そして三人を日陰に寝かせると、その場を去った。 (残り11人)
527 :
名無し閣下 : 2001/03/03(土) 23:09 ID:X8Mdb0C6
済まぬ済まぬオフスレと間違えーたマルガリータ 八代英太は衆院議員だ、りかっちりかっち
「…?あれ…」 平家みちよは前方に物陰から何かを伺うような後ろ姿を見つけた。 見覚えのある後ろ姿だった。かつて同じユニットのメンバーとしても活動したことがある… 「圭ちゃんやんか!」 ビクッ! あからさまに驚いて転びそうになったが何とか踏みとどまったその後ろ姿は振り返った。 その顔にはサングラスとマスクで変装が施されてはいるものの、 その顔の輪郭は間違いない…同じ黄色5のメンバーである保田圭だった。 保田はあたふたしながらマスクの上から口の位置に人差し指を立てている。 「何見てんの?」 保田の黙って欲しいというジェスチャーにも気付かぬ振りをして距離を詰めていく平家。 これまで一日以上知った人間と誰とも会っていない平家は保田が相手ならば申し分ないとも思っていた。 ついにマスクを外して 「しーー!!」 と言う保田だったが平家は足を止めない。 ついに保田は平家に背中を向けて逃げ出してしまった。 追いかけようとした平家だったが、保田は何を見ていたのだろう… 気になった平家は保田が見ていたものを覗いてみることにした。 (!!) そこにいたのは後藤真希、市井紗耶香、吉澤ひとみの三人。 (あ…あかんこっちも逃げな!) 平家も保田とは別の方向に逃げ出した。
「ミカ ちゃん 、あめ 舐め る?」 「あ、今はいいよ。ありがとう」 ミカはほぼ30分ごとに辻のこのセリフを聞いている。 あんまり甘いもの舐めてるとあとでごはん食べられなくなっちゃうよ そう言うとその度に辻は肯くが、暫くするといつの間にか新しい飴を口にしている。 その繰り返しだった。 ミニモニのリーダーである矢口の大変さの一端が理解出来たような気がするミカだった。 リーダーというよりまるで保護者… (加護ちゃんがいないのがせめてもの…) ミカはそう思いかけてその不謹慎な考えを取り消した。 加護ちゃんは辻ちゃんにとっては大事な仲間なんだから… そう思いながら差し掛かった十字路のミカ達が進む道に垂直に交わる道を小走りに 駆けてきたのは平家みちよだった。 ミカはその姿を見て身を硬直させたが、辻は逆に声を掛けた。 「あ 、 平家 さん」 「つ…辻ちゃん!」 慌てて辻の口を塞ごうとしたミカだったが全ては後の祭りだった。 「あれー!?今日は珍しく色んな人と会うわ」 口調はあくまで飄々としている平家だったが、その目に宿る光は鋭い。
「辻ちゃんとミカちゃんて…これまた変わった組み合わせやね…」 そう言いながら徐々に平家は二人との距離を縮める。 (やる気だ…) 察したミカは徐々に辻を守りながら後ずさった。 「どう?辻ちゃん、ミカちゃんは優しくしてくれんの?」 「… うん」 笑顔で問う平家に恐る恐る首肯する辻。 「あー、そうなんやー………ってんなことどうでもええねん!!」 一気に踏み込んで辻に向かってトラースキックを放つ平家。 「うわぁ!!」 しかしそれで飛ばされたのは辻ではなく、 それをかばったミカのほうだった。 「ミカちゃん…余計なことせんでええんよ…辻ちゃんってこう見えて 実際はとんだ食わせもんなんやから…ミカちゃんも分かってるやろ!?」 「そ…そんなこと無いと思います…」 ミカはそう言って立ち上がると、再び辻の前に立ち塞がった。 「意外としつこい子やねミカちゃんって…ハワイ人ゆうたら みんなもっとカラッとしとるもんやと思っとったわ」
(は…迫力が違う…) ミカは同じココナッツ娘。の仲間達とはまた違う種類の圧倒的な迫力を持つ平家 に圧倒されようとしていた。 (わ…私なんかが勝てるはずが無い…) 一瞬逃げ腰になろうとしたミカだったが、腰の辺りを掴まれる感覚がした。 「ミカちゃん…」 辻ちゃんがまるですがるように私の服を掴んでる… そうだ…飯田さんも加護ちゃんも失って、私まで居なくなったら辻ちゃんは… ミカは辻を振り返って笑顔を見せた。 「だ…大丈夫…大丈夫だから!辻ちゃん…怖がらなくていいよ…」 辻は恐る恐る首を前に傾けると、ミカの服を掴む手を開いた。 平家のほうに向きかえるミカ。 平家は腰に片手をあてて待ちくたびれたようなジェスチャーをしている。 (ち…力では敵わないかもしれないけど…すばしっこさなら…!!) 活路を見出したミカは素早く平家の横に回り込もうとした…が、 カウンターで横蹴りを胸に受けたミカはその場で失神KOされた。 「あ、ごめんごめんボディー狙ったのに背ぇ小さいから胸に入ってもうたわ ベイベー、故意にノックアウトした訳やないで……あかんわ最近親父ギャグばっかりや」 そう言いながら平家はあっさりとミカのカードを奪った。 (残り10人)
メロン記念日は短く切り上げました
533 :
名無し娘。 : 2001/03/03(土) 23:29 ID:qpvWMTao
一気に減らしましたね。 そろそろ終盤戦ですか?
534 :
名無し娘。 : 2001/03/03(土) 23:33 ID:oEN9rjH.
>>520 ネタバレか?
加納のほうは「初弾」でわかったよ
でも、渋いとこから持ってくるね。
ヤッスーの見せ場はまだ先なのだろうか。
期待していいの?
( `.∀´)<たまには普通に感想書くわよ! 悪の親玉っぽい雰囲気のココナッツ娘。にはもうちょっと頑張って 欲しかったわね。平家さんの暴れっぷりに期待するわ。 あと、挙動不審(?)な紗耶香が何を企んでいるかも気になる所ね。 後半戦も楽しみにしてるわ!
536 :
マングース西浦 : 2001/03/04(日) 21:21 ID:qnJlt9fk
更新は少し先だぜ…と…
>>533 そろそろ終盤戦…
一気にくたばっていくぜ
>>534 メロン記念日は当初から決めてた訳じゃないので
好きに当てはめてみたぜ…ガイアの部下のナイフでも双子でもないやつだぜ…
保田の見せ場は保田の見せ場があるときだぜ…
どうしても伴宙太が頭から離れねえ
>>535 ココナッツはこれ以上出過ぎると存在感が大きくなりすぎるぜ…
だからバランス取りの為に脱落してもらったぜ…
ネタバレだぜうふふ…あれ以上出すと贔屓になるからな…
みっちゃん様には取って代わってもらうつもりだぜ…
なんつっても主役はきまってるからな…
柴田様はキャラが作りにくかったぜ脱退してもらってせいせいしてるぜ
「あれ?どないした辻ちゃん」 視界の先で辻は肩を震わせている。 「今のそないに面白かった?」 … しかし辻の様子がおかしい。 僅かに口が動いているが勿論笑っている訳ではないし、何を言っているのかも聞き取れない。 「辻ちゃん、なんて!?」 「………ド……」 「゛ド゛!?」 「トッドーーーーー!!!」 辻は突然感情を発散した。 「トッドって…ミカちゃんのセカンドネームやったか…ミカトッドとか…!?」 気付くと、辻の周りには青い何か透明なものが漂っている。 言うなれば悲しみのオーラのような… 加護飯田ミカと、大事な人を次々に失った辻は救いようの無いほどの悲しみに落ち込んでいた。 「つ…辻ちゃんちょっとおかしいでそれ…」 なぜか辻の体は次第に大きくなって来ている。 すまない今はシラフじゃねえぜ…
538 :
名無し娘。 : 2001/03/04(日) 22:20 ID:uAoc46dk
シラフかどうかなんてどうだっていいよ キャラつくりに凝ってたあんたしか見たくなかったな
539 :
名無し娘。 : 2001/03/04(日) 22:39 ID:mQC585k2
540 :
マングース西浦 : 2001/03/04(日) 23:28 ID:PnOLF00E
言うまでもなく514は破傷風の間違い
>>538 確かにどうでもいいです済みません
別にキャラ作りに凝ってはいません
>>539 トッドギネスです
ベタだと感じる人にはベタです
「よう育ったなあんた…」 すでに辻の身長は5m近くにまでなっている。 「トッド…マーベル…キーン…」 「トッドは分かるにしてもマーベルとキーンって誰やねん…」 悲しみのオーラが辻の体をハイパー化(巨大化)させてしまった。 既にこれまでの三日間で疲弊していた辻の精神にミカの無残な最期は余りに強烈だった。 疲弊した精神は悲しみのオーラの増大に耐え切れず、 その他の優しさや、思いやりといった自制の感情を追い出してしまった。 そしてそれに応じるように体も巨大化し、悲しみを晴らす為の力を手にした。 「め…目の錯覚やろこんなん…」 試しに石を投げてみた平家だったが、3メートルほどの高さで辻はそれをキャッチした。 「……あ…あかんわ…私起きたまま夢見るようになってもうた…」 しかしなぜか平家は恐怖を感じない。むしろ、血沸き肉踊るような感情の高ぶりを感じていた。 「…悪く思うなよ…辻ちゃん」 そう言いながら平家は二つの拳にベアークローを装着した。 「手柄を立てればママに楽をさせてやれる…」 我を失った辻は意味不明な言葉を吐きながら平家に平手を放つ。
辻がただ振り回しただけの腕が生み出す突風は、それだけで凶器に成り得た。 「うわっ…」 辻の平手を避けた平家だったがそれが生み出した突風で壁との激突を余儀なくされる。 「…常識ってもんが無いんかあんた…」 咳き込みながら全高5mの辻を見上げる平家。打つ手は無さそうに見えた。 しかしなぜか平家は絶望感のようなものは微塵にも感じていない。 逆に表情には笑いの亀裂が入っていた。 「ただで済む思うな…」 再び振り払われる辻の巨大な平手を避けると同時に平家はそれに飛び乗り、 それを踏み台にして塀に飛び乗った。 「遊びは終わりや…」 そう言って平家は゛スクリュードライバー゛を放った。 一度目のそれを巨大化したにもかかわらず機敏な動きで避けた辻だったが、 その後背で平家は゛八丁跳び゛の要領で技の方向を転換する。 「くっ…!!」 脇腹をかすめる平家の゛八丁跳びスクリュードライバー゛。 (こ…こんなかすり傷…) そう思った辻だが、間髪入れず次のスクリュードライバーは迫ってくる。
ピシャッ…ピッ… (な…なんだろう…) ピッ… (この臭い……!?) ミカはその寝顔に掛かる液体の冷たさと、その臭いの為に目を覚ました。 その独特な鉄分の臭いは疑いようもなく血液だった。 「…!!!」 目を醒まして始めて見た光景にミカは言葉を失った。 なぜか5m程の身長になった辻が両腕で顔面をガードする姿勢になったまま、 立ったまま動かなくなっていた。 「い…いやぁあああ!!」 辻の体は傷がついていない場所を探すのが難しいほどの状態で、 ところどころ皮膚が裂けて肉が丸出しになっている部分まであった。 とても寝起きのミカの精神に耐えられるような光景では無かった。 「ミ…ミカちゃん…」 悲鳴で気付いたのか、巨大化した辻がこちらを見ている。 心なしか体が少し縮んでいるように見える。 (気…気のせいじゃない!) 後ろに倒れ込みながら縮小していく辻の方向に走り、ミカはそれを受け止めた。
「辻ちゃん…辻ちゃん…」 辻の体の傷は巨大化していた時ほど酷くは無かった。 悲しみのオーラが辻の体をガードしてくれたからなのかも知れないが、 それでも無傷で済むはずはなく、満身創痍の辻は体中から血を流し、 二本しかないミカの腕ではとても押さえ切れなかった。 血が止まらない辻の前で涙が止まらないミカ。 「はあっ…はあっ…はあっ…」 ミカは辻に気を取られてたった今まで側で仰向けに寝たまま息を切らす平家の存在に気付かなかった。 ようやく地に手をついて立ち上がった平家はミカのほうに片手を突き出した。 辻のカードをよこせということなのだろう。 大人しく要求に答えたミカだったが、一つ聞いた。 「なんでここまでやるんですか…」 「はぁ…はぁ…私…時々…自分でも押えが利かなくなることがあんねん… 辻ちゃんは気の毒やったな…ミカちゃん…悪いけどその子頼むね……」 去って行く平家の背中を見ながらミカはつぶやいていた。 「私…一体なにしてるんだろう…私が余計なこと考えて辻ちゃんを巻き込んで… 辻ちゃんがこんなことになったのだって…私のせいなんだ…」 (残り9人)
今日は少な目です 次回は主役登場です みっちゃん様の゛HeyHeyGirlsSoul!゛最高おやすみなさいませ
546 :
名無し娘。 : 2001/03/05(月) 00:00 ID:w17KnWwM
終盤にきて作者様も壊れ気味ですね。 そういうキャラもけっこう面白いです。
547 :
538 : 2001/03/05(月) 01:00 ID:/pXUUBBY
マジかよ・・・・ 突っ込まれて簡単に謝るなんてよ・・・・ 寂しいぜ
548 :
マングース西浦 : 2001/03/05(月) 09:19 ID:8sORS.vs
「ミカちゃん」 去ったと思った平家の声がミカの顔を起こさせた。 「平家さん…」 なんで戻ってきたんだろう…そう思いながら見上げた平家の顔には優しい笑みが浮かんでいた。 「辻ちゃんな…ミカちゃんが気絶した時目茶苦茶悲しんどったよ…なんかショックで我失って…」 ミカは辻の安らかな寝顔を見下ろした。 (辻ちゃん…) 「辻ちゃんはあんたのこと怨んでなんかおらんよきっと…むしろ感謝してると思う」 「でも…私…何も辻ちゃんにしてあげられなかった…」 平家は落ち込むミカの肩に手を当てて言った。 「でもミカちゃんは一生懸命何かをしようとしてくれてたやないの… 辻ちゃんはそれに気付かないようなアホの子やないって… ミカちゃん、この子目醒めるまで一緒にいてやってな」 その言葉に肯くとミカは堰を切ったように涙をこぼれさせた。 今度こそ二人に背を向けてその場を去る平家の顔には好戦的な笑みが張り付いていた。 (あのままやったら完全に悪役になってまうところやった…)
550 :
マングース西浦 : 2001/03/06(火) 22:51 ID:aQwy09XY
昨日は平日一人東京タワー見物という離れ業をして来ました おみやげやさんが面白い アイドルの写真とかキーホルダーを扱ってる店が結構あるんですが モーニング娘。は加護、矢口、辻、後藤ものばっかり 次点で石川、吉澤、安倍が探せばあるくらいで 飯田、中澤、保田は皆無…残酷だなあ… ハロープロジェクトショップにも初めて行って来てしまった… シェキドルと前田有紀の写真が無い…
「他のみんなはどうしてるんだろう…」 石川梨華は暇を持て余していた。 もともと自分から積極的に揉め事を起こすタイプでは無かったから (結果的に起こすことはよくあったにしても)、 この様な形式の大会では知らぬ内に問題の起こりにくい道を選んで歩いていた為でもある。 シャリ… 石川はフォークに刺したレタスを口に運んだ。 この日の夕飯はコンビニから買ってきたコーンサラダ。 もともと食が細かった石川は、今大会に入ってますますその傾向を強めていた。 「うふふ…」 コーンサラダを食べながら一人笑う石川。 先に他の野菜を食べて、残ったコーンを一粒ずつフォークで刺して食べる。 石川の中で最近流行している一人遊びだった。 「やった、一気に三個取れちゃった、食っちゃった…あはは…」 …… モーニング娘。の第一号ミニユニットタンポポからは既に石川以外、 石黒彩を含む全員が脱落してしまっている。
オリコンチャートで未だ一位の経験が無いタンポポ。 そのことを飯田や矢口は気にしていたから、その影響で石川もいつしか プッチモニのことをライバルとして意識するようになっている。 (もしプッチモニに会ったら…) ぶっ飛ばしてやる…そう心の中で続けようとした石川だったが、 保田圭や市井紗耶香、後藤真希らの顔が頭に浮かび身震いした。 (絶対に逃げなきゃ……?) 膝の辺りに冷たいものを感じた石川は自分がコーンサラダのカップをひっくり返していることに気付いた。 「やっちゃった…」 それを拭こうと立ち上がった石川は側に置いていたメロン帽に気付いた。 「あゆみちゃん…」 一日前まで一緒に行動していた柴田あゆみが石川に託していってくれたものだ。 ピンク色のそれは石川の感性にマッチしてはいたが、 それが相手を倒す為の道具だと思うと、あまり側に置いておきたい気にはならなかった。 しかし、いつかは使わなければならない時が来る… 参加者が減る度にその時は近づいて来ているのだということを忘れてはいない。
「このまま私死んでまうんやろか…」 元T&Cボンバーの稲葉貴子は前日の吉澤との戦闘で負った負傷個所を庇いながら大通りを歩いていた。 その箇所は既に普段の二倍近く赤く腫れ上がっており、熱も持ち触れるだけで激痛が走った。 昨晩はそのせいで眠るどころではなかったため、ただ横になって日が昇るのを待った。 (病院行こうかな…) そうとも思ったがもし入院が必要な怪我だったりしたら、 受付に聞いて病室に踏み込まれる可能性がある… そのため薬局で適当に痛み止めの薬っぽいものを買って来て飲んではみたものの、 全く痛みが引く兆候すら感じられず、逆に熱が上がってしまったような気すらする。 「やっぱり売り薬は信用したらあかん…」 よく言われる言葉を無意識に吐きながらのどの渇きを覚え、 ビルに設置された水撒き用の蛇口を捻る稲葉。しかし蛇口は ゴポッ… っと空気の抜けるような音を一度発したきり、水を吐き出すことはなかった。 元栓が締められているのだろう。 「分かった分かった、水はそこらで買え言うんやろ!」 被害妄想気味に蛇口に蹴りを入れて再び歩き出そうとした稲葉は前方に信号を渡れず 困っているらしい腰の曲がった老婆らしい人の姿を見つけた。
(困ってる人おったらほっとけへんのよね私って…) そう思いながら老婆に近づき、声を掛けようとする稲葉。 しかし近づいてみて分かったが、体つきが老婆とは程遠い。 若い女性…しかも両肩の肉は盛り上がり、鍛えられた体つきをしている。 (えらい元気そうな腰曲がり婆さんやな…) それでもそれを老婆と信じて疑わない稲葉は声を掛けた。 「おばあちゃん、信号渡れへんの?」 「誰がおばぁっ…!!」 腰を曲げたまま無理に振りかえって顔を苦悶に歪めたのは同じ元T&Cボンバーの ハロープロジェクト内では最年長の信田美帆だった。 その顔は脂汗で濡れている。 「み…美帆ちゃんやんか…どないしたん!?」 「あ…あっちゃんか…腰がさ…見ての通りなんだけど…」 信田は決して他人の前で涙を見せようとしない人だったし、 他人に弱いところを見せることを極端に嫌う人間だった。 ダンスレッスン中にも腰が痛んだ時はコルセットをはめてでも練習を続行する程だった。 その信田が、耐え切れない程の腰の痛みとは… 「駄目だよ美帆ちゃん、さすがにもうこれはギブアップせなあかんって… …下手したら一生歩けへんようになるかもしれへんのやろ?」
しかし信田は首を横に振った。 「な…なんで?こんなところで一生棒に振ることになってもええの?」 「い…言ったでしょ…決勝で逢おうって…」 大会二日目朝、既に脱落している小湊美和とRuRu本田を含めた元T&Cボンバーの 四人が顔を合わせるという偶然があり、その時四人は優勝を誓い合って別れた。 しかし、今はあの時の状況とは違う。 それでも何も言うことが出来ずに口を閉じてしまった稲葉。 (あ〜どうしたらええんやろ〜…) 周囲に視線を旋回させた彼女は自分達に近づく三つの人影を確認した。 「あー、稲葉さんと信田さんじゃないですかー!」 そう言う市井紗耶香の側に従う二人は後藤真希と吉澤ひとみの二人だった。 余裕の笑顔を作る市井とは対照的に稲葉と信田は表情をこわばらせた。 「…なんや…ヨッシー、怪我は大丈夫なん?」 ヨッシーじゃなくてよっすぃーだよね、とどうでもいいことを言う後藤の声を聞きながら、 吉澤は稲葉の声で思い出した脇腹の痛みをこらえた。 市井はどうか分からないが後藤は気付いていない。 吉澤は一日前の稲葉との戦闘以来脇腹の痛みと闘っていた。 「稲葉さんこそ…」 言われた稲葉は自分の肩に視線を移した。
556 :
名無し娘。 : 2001/03/06(火) 23:25 ID:3Qcsia12
>>550 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
.| ヤッスーのグッズは. |
オレ | きっと売り切れてたんだよ |
↓ \ そうに決まってる・・・ / Λ⌒Λ
∧__∧ レ‐――――――――‐ ' (ノ~\\ ホットイタレヤ…
( ´∀`) ∧__∧ L`∀.´」
( つ( ´∀`)トホホ ( )
| | | ( ∪ ∪←マングース |||
(__)_) ,,と_)⌒) (_)__)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
>>556 まぁ保田なんて、どーでもいいですけどね(みつまJAPANばりの気楽さで)
電話まっています最高
石川売り出しの側だけに立ち
カントリー娘。側に立っていないレンタル最低
マジファンも最低
おやすみなさいませ
558 :
名無し娘。 : 2001/03/07(水) 21:44 ID:0vJzliHA
作者氏はoff会に逝きますか?
559 :
マングース西浦 : 2001/03/07(水) 23:32 ID:FYvmzgfw
あの人がいってしまうのは全く予想してなかったな…
>>558 天地身命に懸けて行きません
こないことは私が保証します。
「―――で、どうします!?二対三ですけど…」 市井の言葉に一旦視線を上げた稲葉だったが、すぐに視線は信田のほうに移した。 自分は兎も角としてどう考えても信田は闘える状態ではない。 なのになぜか信田の目に宿る闘志は稲葉の『逃げよう』と言おうとする口を塞いだ。 「逃げたかったら逃げても構いませんよ。追いかけるつもりはないですから…」 思いがけない市井の言葉に稲葉は視線を動かした。 「み…美帆ちゃん…」 信田に声を掛けながら三人に背を向けようとした稲葉だったが、 それを信田は追ってこない。 「美帆ちゃん!」 語気を強めた稲葉に対しても信田は反応しなかった。 「私は逃げないよ…」 ようやく開かれた信田の口から飛び出したのは、しかし稲葉にとっては予想だにしないものだった。 「逃げてどこかで行き倒れるくらいなら…私はここで燃え尽きたい」 もはや逃げるだけの体力すら無い信田は、気力を振り絞って上体を起こした。 それには稲葉が背を見せた時に僅かに失望の色を表情に浮かべた市井も満足そうだったが それとは関係の無いところで稲葉も覚悟を決めた。 「……わかったよ…美帆ちゃん、私も付き合わせて」 後藤と吉澤はただ戸惑うだけだった。
表情を殺して振り返った市井の表情を、二人は呆然として見た。 「稲葉さんも信田さんも逃げるつもり無いんだってさ…どうする!?」 (逃げられたらどうしようかと思った) 本心を隠して発せられた市井の言葉に顔を見合わせる後藤と吉澤の二人。 信田と稲葉の気迫に押されて口を開けない吉澤に先んじて後藤が口を開いた。 「だ…だってでも三対二じゃ…それに信田さんも稲葉さんも怪我してるし…」 「そ…そうですこんなの…」 おかしいですよと続けようとした吉澤の言葉を遮ったのは市井だった。 「さすが余裕だね後藤…」 含み笑いでそう言う市井の肩から覗く稲葉と信田の表情が一瞬こわばった。 しかし訳の分からない後藤。更に市井は続けた。 「゛怪我をしてる稲葉さん達なんか私一人で充分だ゛ってことだよね!?」 「!!」 顔面を蒼白にする後藤だったが既に遅く、稲葉と信田は後藤一人に視線を合わせ、 既に近づきはじめていた。 それに気付いた市井は後藤の後ろに回る。 「ほら、後藤…やっちゃいなよ」 『やっちゃいなよ』という言葉の持つ陰惨な印象に吉澤は表情をしかめる。 「なんで…なんで紗耶香…!?」 市井は成り行きが分からずただ戸惑う後藤に対し、感情の無い瞳で後藤を見て言った。 「まさかあんた、逃げ出したりしないよね!?」 既に二人は目の前にまで迫っていた。
「な…なんで!?なんで私こんなところにいるの!?紗耶香…なんで私こんなことしてるの?」 ほとんど錯乱状態に陥ったような後藤が市井の名を呼んでいる。 しかし吉澤が見る市井の横顔は変わらず後藤の挙動を見守っていた。 (私は肝心なところで蚊帳の外にされてる) 市井の行動の違和感には気付いていたが、具体的に分かっているのはその程度までだった。 「美帆ちゃん…絶対に無理したらあかんよ」 「あっちゃんこそ…」 そう答えた信田に稲葉は目を見張った。 信田の前では自分も怪我が痛むとは言っていないはずなのに… T&Cボンバーとして共に活動した期間は決して短くない… (美帆ちゃんには何も隠されへんな…) ということは、今の自分が例え信田と束になっても後藤には敵わないだろう。 そう思っていることもおそらく信田は分かっているのだろう。 しかし、それも悪くない… 稲葉はそう思いながら眼前の後藤を見ていた。 (これまでも、勝ち目のある闘いなんて一回も無かったんやから…) その時稲葉は横から信田の思わぬ言葉を聞いた。 「私が後藤の動きを止めるから…あっちゃん、サポートよろしく」 サ…サポートって…戸惑う稲葉に関わらず、信田は痛めた腰を省みず一気に踏み込んだ。
565 :
名無し娘。 : 2001/03/08(木) 12:49 ID:YluYZsWs
いやーん
566 :
マングース西浦 : 2001/03/09(金) 00:21 ID:hWyZE/CU
初めて中澤さんのオールナイトニッポン聞いたな…
>>565 ?
(は…早い!!) 信田を侮っていた訳ではないが、信田を怪我人としてしか見ていなかった後藤は完全に虚を突かれた。 早さだけで言うならばこれまで対戦した相手の中でも最速かもしれない… そう思わせるほどのスピードでその元一流体操選手は後藤の正面に回った。 「う…うわぁ!」 相手を怪我人としか見ていなかった後藤は驚きの声を上げる。 右腕が飛んできたと思った頃には左足が、 左足が飛んできたと思った頃には左腕が飛んできた。 それらをなんとかガードし切った後藤だったが、ガードの為に上げた右足を取られ、 後方に倒される後藤。 「あっちゃんはやく!チャンスだよ!」 あっという間に後藤をマウントポジションに押え込んだ信田は稲葉の名を呼んだ。 「わ…分かった!」 鬼気迫る信田に圧倒された稲葉がようやく動き出したのはこの時だった。 「ご…ごっちん!」 後藤の救出に入ろうとした吉澤だったが、次の瞬間市井に後ろ襟を掴まれ、 引きずり倒された。 「い…市井さんなんで…!?」 「折角信田さんたちが体張ってくれてるのに…邪魔したら駄目じゃん」 そう言う市井の表情は何かを堪えているように見えた。
後藤を押さえつける信田の背中に向けて稲葉は駆け出した。 しかし、駆ける稲葉の視界の中で信田は突然腰の辺りを押さえ姿勢を崩す。 「み…美帆ちゃん…」 マウントポジションから抜け出した後藤に見下ろされながら、 信田は稲葉を向きかえって言った。 「ご…ごめん…もたなかったよ…」 み…美帆ちゃんもう無理しないで…首を横に振った稲葉。 後藤に視線を移すと、そのスーパーヒロインは同情の篭った目で自分を見ている。 「なんやごっつぁんその目…もう勝った気でおるんか?」 決して弱みを見せないつもりで口を開いた稲葉だったが、 しかし後藤は表情を変えない。 「もう…嫌だよこんなの…」 「なんやて?」 チッ… という舌打ちに続いて 「何言ってるんだよ後藤…」 吉澤の隣で市井の声がした。しかし、隣を見た時既に市井はいない。 既にその時市井は後藤の後背にまで迫っていた。
「こんなひどいことをして勝っても嬉しくないよ…」 そう言って振り返った後藤は間近に市井の表情を見た。 その表情は僅かに笑っているようにも見えた… 「さ…紗耶香!?」 市井は驚く後藤を無視し、稲葉に視線を合わせ、後藤の前に出た。 「あんたがやれないんなら…私がやってあげるよ… そして教えてあげる。闘いに敗れるってことがどういうことか…」 「え!?」 驚きを通り越して間抜けな表情をする後藤に構わず市井は 「構いませんよね?」 稲葉に確認する。 稲葉はしゃあないとそれを認めたが信田は顔を上げることすら出来ないでいる。 「真希…あんたは下がって見てなよ」 そう後藤に告げた市井の目は氷のように冷えていた。
「稲葉さん…稲葉さんはどうして逃げなかったんですか!? 逃げたいなら逃げてもいいって言ったのに…」 稲葉と対峙した市井は始めにそう言った。 信田は体を地に投げ出したままそれを聞いている。 「誇りの為…」 寝そべったままそう言った信田に市井は僅かに頬を緩めると、更に問うた。 「勝ち目があると少しでも思ったんですか!?」 鼻で笑う市井。 沈黙する二人に市井は本題を切り出した。 「稲葉さん、それじゃあ゛自分達はT&Cボンバーとして中途半端な結果しか残せていないのに それで功が成ったと勘違いし、怪我をした体でも優勝候補筆頭である後藤真希に勝てると思った 愚か者だ゛ということを認めて下さい」 はぁ!?と言う顔をする稲葉に、密かに屈辱に顔をしかめる信田。 「どういうことやねん…それ」 「゛私達T&Cボンバーは馬鹿の集まりだ゛と言って下さいということです…稲葉さんの口から」 稲葉達よりも先に顔を蒼白にしたのは後藤と吉澤だった。 「さ…紗耶香なんてこと…」 後藤の声など聞こえてもいないように市井は続けた。 「中国には゛黄河は水たまりを叱りはしない゛という諺があるそうですけど私の考えは違います」
571 :
マングース西浦 : 2001/03/10(土) 00:37 ID:31kK.WrM
シェキドルって面白いキャラだったんだな… もうちょっと考えれば良かった 特に大木衣吹
「うちらがナイル川かもしれんとは考えなかったんか?」 強がった笑いを見せながらそう言う稲葉を市井はただ嘲笑の目で見る。 (舐めくさって…) 踏み出そうとした稲葉の目の前に市井の足刀が現われた。 一瞬足を止めてガードを固めようとした稲葉の両腕をかいくぐり、 二発目の足刀が痛めた鎖骨に的確に入る。 「…〜〜〜!!!!」 声にならない悲鳴を上げながら後ろに下がる稲葉をゆっくり追って距離を縮めた市井は、 今度は稲葉のみぞおちに前蹴りを深々と差し込んだ。 稲葉は一瞬両足が地から離れたかと思うと、そのまま地に叩き付けられた。 「あ…あっちゃ…」 という信田の叫び声は頭頂に入った市井のカカト落としで遮られた。 「さ…紗耶香…!?」 一瞬の出来事に声を震わせる後藤。 吉澤は何が起こったかも分かっていないように目を丸くして微動だにしない。 「真希…良く見ておきなよ…闘いに負けるっていうのはこういうことなんだから…」 その諭すような市井の声に続いて残酷ショーが始まった。
残酷ショーを止めようという発想を持つことが出来た者はその場には一人もおらず、 観客の二人はただ頭の中を真っ白にしてその光景を眺めていた。 「真希…ちゃんと目を開いて見ておきなよ…」 残酷ショーも佳境に入ったその時、残酷ショーを披露していた人間が発した声は市井のそれだった。 ようやく我に返った後藤は市井の片手がピースサインに、 ただし、それは人差し指と中指の指先を、髪を掴んで無理矢理顔を上げさせた 血塗れの稲葉の顔に光る両目に向けて差し出されていることに気付いた。 (ま…まさか…!紗耶香!!) 「サヨウナラ稲葉さん…」 冷たい声と共に稲葉の両目から永遠に光を奪おうとした市井のピースサインを、 後藤は間一髪で止めた。 パァン!! 後藤の平手が市井の頬を叩いたその激しい音は、吉澤の意識も現実へと戻した。 「こ…こんなの…紗耶香じゃない!!」 そう言ってその場から逃げ出した市井を 「ご…ごっちん!!」 吉澤が追って行った。 「ははははは…逃げちゃったか…」 一人残された市井の足元には数分前まで強い意志を持っていた二つの体が 紅く染まって転がっていた。 (残り7人)
「一日目からちょっとずつ慣らしてきたつもりだったけど… ちょっと今回は刺激が強すぎたかな」 そう言って稲葉と信田の二人を見下ろす市井は、 近くの物陰で人影が蠢くのに気付いた。 「誰…!?」 ―――なんだ…ほっと表情を緩めた市井だったが、 その物陰から現われた人物の浮かべる表情は険しい。 しかしふと何かに気付いたように眉を上げると、 「後藤から叩かれたところ大丈夫!?かなり赤いよ!?」 その人物は市井とは最も深い信頼関係を持っていた。 大丈夫だよと答える市井を見て肯くと、その人物は切り出した。 「…紗耶香…いつまで私こうしてないといけないの…!?」 「言ったでしょ…最後まで信じて欲しいって」 市井の言葉に一瞬引き下がる構えを見せたその人影だったが、 まだ去りがたい様子を見せている。 「この役目が出来るのは………だけだって…分かるでしょ!?」 その人影は渋々肯いて、最後の質問をした。 「紗耶香…本気で稲葉さんの目を潰すつもりだったの!?」 「まさか…」 そう言って冷たい笑いを浮かべる市井に、信じていいんだよね!? という目をしてその人物は去った。 「まさか…本気に決まってるじゃん…」
575 :
名無し娘。 : 2001/03/10(土) 08:48 ID:9NliFhSU
いよいよ佳境に近づいてきたのか? …は市井と通じていたのか。 目的はなんなのかにゃー やっぱりイメージは市井=烈+勇次郎なのかナー
576 :
名無し娘。 : 2001/03/10(土) 17:21 ID:A8dz80X.
577 :
名無し娘。 : 2001/03/10(土) 21:14 ID:3jGbvVvU
おもしれぇなぁ。 今日も更新、待ってるよ。
578 :
マングース西浦 : 2001/03/10(土) 23:55 ID:WvKr1LUQ
今日池袋のメロン記念日イベント行って来た人いるかなあ…
整理券あっという間になくなったらしいけど
>>575 佳境です
どれだけ佳境かというと登場人物が多すぎて誰が残っているか分からないほどです
ちなみにあさみ、石川、市井、後藤、平家、保田、吉澤です
市井のイメージはそうです 役割も同じかは分かりません
>>576 ふーん…
>>577 ありがとうございます
はげみになりますはげになったら困りますが
「紗耶香…私参っちゃいそうだよ…」 市井と別れて再び物陰に隠れたその人物は深いため息を吐いた。 市井一行の尾行を四日の続けてきたこの人物の疲労はピークに達しようとしている。 初日に最初に市井紗耶香から行動を共にしようと持ち掛けられたこの人物は、 開始直後に市井からある注文を受け、それを承諾した。 それからずっと現在の状況は続いているが、どちらかといえば我慢強いこの人物とは言え、 それも限界に近づいている。 市井から言われたことの一つはこれだった。 「私がどんな行動をしても、それを見守っていて欲しい」 しかし、これまでこの人物が見て来た市井の行動は不可解なものばかりで、 肉体的な疲労だけでなく精神的な疲労も蓄積されてしまった。 しかもこれまでなんとか誰にも気付かれず続けて来れたものの、 ついにこの日朝始めて尾行しているところを目撃されてしまった。 (もうあんなヘマはしないようにしないと…) そんな時だった――― 「ごめんな圭ちゃん、全部聞いてもうたよ」 「みっちゃ…!!」 大声を出そうとしたその人物 ―― 保田圭 ―― はしかし、 平家みちよの掌によってその口に蓋をされた。
「朝も会うたなぁ、圭ちゃん」 口に蓋をされたまま顔を引き攣らせる保田を、冷静な瞳で見つめる平家。 保田は微動だに出来なかった。 「全部聞いてたって…どこから…!?」 平家は露骨に笑うと、 「全部いうたら全部やろ」 そう言った。 平家は市井が稲葉と信田を叩きのめしているところに偶然通り掛かり、 慌てて物陰に隠れると、その後の一部始終を全て目撃した。 「あんたらチームとか組んで小細工しとったんやな」 保田は口の辺りに冷たいものを感じた。 そこに当てられている平家の掌から発汗しているらしい。 平家の顔はいつのまにか紅潮して、目は好戦的な光を放つようになっている。 「あははは…」 無意識なのだろう。平家の口から笑い声が零れた。 「ええもん見せたるわ圭ちゃん」 そう言って平家は後ろに手を回すと、二枚のカードを取り出した。 「こ…これ、ミカちゃんと…辻!?」 しかも辻のほうのカードには赤黒い染みが付いている。 間違いなく乾燥した血液だった。 「圭ちゃんのカードもここに加えてあげるわ…ありがたく思っとき」
「こっちは戦うつもりなんか無いのに…」 その保田の声など聞こえてもいないかのように戦闘体勢を取る平家。 ただカードが欲しいだけならば不意打ちすればそれは可能だったはず。 なのになぜそれをしなかったか… しかし、それは平家の表情を見れば明らかだった。 (みっちゃんは楽しんでる…) 例外無くオーディションの勝ち残りというデビューへの経緯を持つ ハロープロジェクトの全メンバーにあって、平家みちよは優秀な歌い手であると共に、 優秀な批評家でもあった。 繊細にして冷静な観察眼を持つ彼女は、周囲について冷静な分析を下してきたし、 自分の立場に関しても良く理解していた。 だからこそ常に彼女は゛いい人、嫌味の無いキャラクター゛を演じてきた。 そして周囲にもそう思われることに成功し、自分自身そういう人間なのだと思うところまで来ている。 常に他人にどう思われるかを意識してきた平家は、心の底にある妬みの感情を表に出すことは決して無い。 それを唯一見破ったのは中澤裕子だったが、彼女は既に脱落している… 常に後世の人間にどう思われるかを考えてきた平家は今始めて゛現在゛のことだけを考えている。
「あんたら何たくらんでんのよ!?」 企んでるとかそんなんじゃない…私はただ紗耶香のことを信じてるだけ。 しかしそう口には出さなかった。 自分が何をしているか分からないなどと答えても信じてもらえるはずが無いから。 沈黙を返す保田を見て微笑む平家。 「どうせここでその企みも終わりやねんけどね」 平家の鋭い視線は保田の瞳からはずれない。 決して気圧された訳ではないが、保田がつい視線を外した瞬間、平家が動いた。 「!!」 その鋭い蹴りが間一髪下がった保田の頬をかすめた。 平家と対戦した相手が必ず持つ感想。 他の誰もが自己流の戦い方なのに対し、平家のそれは違う。 ミスターバラクーダに仕込まれた技の数々は、 他の多くの者のそれが木刀とすれば、真剣に喩えられる程の鋭さを持っている。 しかし得物が木刀であろうと真剣であろうと相手に当たらなければ意味は無い。 の、はずなのに… 「くっ…!」 「け…圭ちゃん!?」 続いて放たれた鋭いローキックを、保田は仁王立ちで受けた。
583 :
マングース西浦 : 2001/03/11(日) 23:09 ID:36JJI6qs
0930の太いほうがかわいく思えてしょうがないな…
「あぅっ!!」 続いて放たれたミドルキックも保田は仁王立ちで受けた。 しかし、保田は姿勢を崩さない。 「け…圭ちゃん…」 自分の蹴りが相手にどの程度のダメージを与えているかは分かる。 さすがに心配する表情を浮かべた平家だったが、 「どうしたの?もう終わり!?」 余裕とも取れる笑みを見せる保田に、再び戦意を取り戻す。 (なんちゅう根性や…) 根性という一点では誰にも負けないはずだったのに… しかし、それに応えなければならない。 全力を持って、保田圭を倒す。 なぜか保田は自分から仕掛けてくることをしない。 「ほら、圭ちゃん…来なよ」 挑発にも乗ってこなかった。 (くっ…) その後も何度も強烈な蹴りを命中させたにも関わらず、 逆に脅威を感じたのは平家のほうだった。 (手応えがおかしい) 確かに保田の体に命中しているはずの蹴り足、拳、掌に伝わる感触がおかしかった。 的確に命中しているのに受け流されているような…
はぁ…はぁ… 両者共に息を切らす中、口を開いたのは平家だった。 「もう限界や…私の体力も…圭ちゃんの体も」 衣服に覆われている下半身の様子は伺えないが、 袖無しの服を着ている為に丸出しの両腕は赤く、腫れて太くなっている。 そしてそれは攻めている側の平家も同様だった。 「悪いな圭ちゃん…なんべん蹴っても倒れないあんたが悪いんやからね」 保田が止まったまま見ている中、平家は素早く電信柱を登り始めた。 息を切らしながらも頂上近くにまで辿り着いた平家は両手にベアークローを装着した。 「逃げへんの!?」 「来てみなよ…みっちゃん、私はここに居るから」 その言葉が終わるか終わらないかのタイミングでなんとかの一つ覚えのごとく、 平家のフィニッシングホールドが放たれた。 「゛スクリュードライバー゛!!」 バキッ!! 次の瞬間、地に叩き付けられたベアークローが折れる音が響いた。 保田式゛風車の理論゛二度目の開眼だった。
保田に向かって放たれた゛スクリュードライバー゛は゛風車の理論゛の応用によって受け流され、 その勢いを利用され平家は体ごと地面に叩き付けられた。 平家には受け身を取る暇すら与えられなかった。 「くっ…」 苦悶の表情を浮かべながら片膝をつく保田。 第三回天下一武道会一回戦において安倍なつみを葬った゛風車の理論゛が再び開眼するかどうかは、 完全に賭けだった。しかし、保田はそれに勝った… 「!!」 保田が片膝をついた自分を睨み付ける鋭い視線の視線の存在に気付いたのはこの時だった。 「み…みっちゃん!!」 平家は上体を起こすと、保田が信じられない表情を浮かべるのにも構わずあっという間に立ち上がった。 体中到るところから出血している平家だが、瞳には鉄板をも斬り裂くほどの鋭い戦意が込められている。 (も…もう私は立てない…) 保田はこの瞬間頭を下げ、負けを覚悟した。 …しかし、いくら待っても攻撃は飛んでこない。顔を上げた保田は察した。 平家みちよの立ち往生…平家は立ったまま意識を失っていた。 (残り6人)
587 :
名無し娘。 : 2001/03/11(日) 23:33 ID:YYTs3ScE
侠立ちは保田かと思いきや、getみちよのほうでしたか。
っていうかをーずの大往生か。
保田打たれ強いのね、易筋行でも会得してるのかと思った。
残り6人か、いよいよクライマックスかな。
果たして石川は活躍するのか?
なんか現実が激しく動いてるから
どういう落ちが待ってるのかいやでも期待してしまう
>>583 太いほうといわれてもどっちかよくわからん。
でも彼女らおもろいね。
もう個人的に好きなメンバーは全員脱落してしまった…
あとは終わりまで行くだけなんですが、
実は来週中にも再び海の外に…数週間来れません
それまでに終わるか・・・まあ無理か、終わるのは先になってしまうな…
すみません
>>587 現実激しく動きすぎですね
それから立ち往生は、平家なのに源氏側の武蔵坊弁慶…と
八丁跳びも平家なのに源氏側の源義経…というつながりです
期待に応えられればいいな…としかし帰ってくるまでこのスレが無事かどうか
太い方はなんか「うめぱら」とかいう名前だったかと…
寝よう
589 :
名無し娘。 : 2001/03/12(月) 00:16 ID:qqYAsN4E
>>588 >好きなメンバーは全員脱落してしまった…
あれ?石川は?
ちなみに俺はまだ3人残ってる ワーイ。
>それから立ち往生は、平家なのに源氏側の武蔵坊弁慶…と
>八丁跳びも平家なのに源氏側の源義経…というつながりです
そうだったのか。てっきりバッファローマン戦のウォーズマンの立ち往生
から来てるのかとおもった。
へえ、海外か、また東洋かな
ウメパラ似の天使様に会えることをお祈りしておきます。
590 :
マングース西浦 : 2001/03/13(火) 00:36 ID:1C17lYag
十四日の便で海の外へ…
明日更新できるかは微妙次は数週間後…
その頃まで生きてるかな?
>>589 りかっちはもういいや…判官贔屓なもので
王様のレストラン初めてやってシェキドルの二人を一緒に神まで育ててしまった…
ウォーズマンも勿論考えてました
それから祈ってくれてありがとうございます
まずは生きて帰ってこないと…
不覚にもこの頃保田の身に何が起こっていたかを知らない市井紗耶香は 行動を共にしていた二人を探していた。 夜も更け視界も狭まってきてはいるが、 それでも市井は自信があった。 (後藤…あんたは私から離れられない) そして事実程無くして後藤、それから吉澤がコンビニの外の車輪止め辺りに たむろしているのを発見した。 そちらに歩を進めるうち、先に吉澤が気付いた。 「ごっちん、市井さんが…」 後藤は一瞬視線を上げたがすぐにそれを下げた。 何を考えているかは分からなかったが、市井を歓迎してはいないということは分かった。 歩を緩めずそのまま後藤の隣にとりついた市井。 しかしそこに腰を下ろそうとすると、逆に後藤は市井に背を向けるように立ちあがった。 「私…紗耶香が分からないよ…なんで紗耶香…私を困らせることばっかりするの!?」 「私が真希を困らせた?一体いつの話よそれ」 白々しい市井の態度に後藤は苛立ちを隠さない。 「福田さんの時も…彩っぺの時も…加護とかおりの時もそう!! 私に嫌なこと全部押し付けて…私にずっと意地悪してたじゃん!!」 ゛意地悪゛という言葉の響きに少し笑いをこぼす市井。 吉澤は後藤と一緒になって市井に厳しい視線を投げかけていた。
「そうだね…後藤には少し意地悪をしたかもしれないよ」 思わぬ言葉に、市井には背を向けたまま目を見張る後藤。 しかし市井の言葉はそこでは止まらなかった。 「でもさ…なんで後藤は断わらなかったの?明日香が攻撃してきても、無抵抗でいれば良かった。 あやっぺが心配だったらどんなに敵が集まって来てもずっと側にいてやれば良かった。 かおりと加護の時もそう…なのにあんたは、自分の身の安全の為に、稲葉さんや信田さん、 そして仲間までみんな途中に置いてきた…」 後藤は反論の弁を持たなかった。 なぜ自分が今ここまで勝ち残ってきたか… それは自ら勝ち残るということを選んできたからだった。 「でもさ、真希、それは正しいことなんだよ。後藤はスーパーヒロインとして強くあらなければ ならない。そして真希はしっかりそれを体現してきた。誰にでも出来ることじゃないんだよ…」 「嬉しくないよそんなの……それに紗耶香、稲葉さん達にあそこまでやることなかったじゃない!!」 思い出したように怒りを爆発させる後藤。 吉澤は周囲の空気が震えるのを感じた。
「稲葉さんや信田さんは自分が怪我してるからって、相手に手加減してほしいとか思う人かな!?」 後藤は言い返せなかったが、初めて吉澤が反駁した。 「ごっちんが言いたいのは程度の問題だと思います…明らかに市井さんはやり過ぎでした」 肯く後藤をよそに冷笑を浮かべる市井。 (何も出来ずに突っ立って見ていただけのくせに) 「程度の問題……ねぇ…」 おどけるような表情が勘に障ったのか、吉澤は続けた。 「そうですよ…信田さんはごっちんとやった時にはもう動けなくなっていたし、 稲葉さんだって肩を怪我してました。あそこまで痛めつける必要は無かったと思います」 ふっ… 市井は鼻で笑うと、 「だったらなんで自分でやらなかったわけ!?」 吉澤を一喝した。 数多くの選択肢があったにもかかわらず、後藤と吉澤はその内一つを選び、 そしてその自分の選択の誤りを市井の責任にしようとしていた。 そう気付かされた二人はさ…行くよ そう促す市井の後について夜の『街』を歩いた。
脱落者(脱落順) レファサンボ(ココナッツ娘。) アヤカキムラ(ココナッツ娘。) ダニエルデラウニー(ココナッツ娘。) 大谷雅恵(バレリーナ戦隊メロン) 斎藤瞳(バレリーナ戦隊メロン) りんね(カントリー娘。) ミカトッド(ココナッツ娘。) 辻希美(モーニング娘。) 稲葉貴子(元T&Cボンバー) 信田美帆(元T&Cボンバー) 平家みちよ 残り6名(あいう順) あさみ 石川梨華 市井紗耶香 後藤真希 保田圭 吉澤ひとみ
吉澤がどんどんアホの子になっていく… 帰ってくる時誰か死んでたりしませんように
596 :
名無し娘。 : 2001/03/13(火) 12:45 ID:C0mkryXw
なんか、プッチモニVSカントリーの戦いになるんじゃないかと期待しております。
597 :
マングース西浦 : 2001/03/13(火) 23:43 ID:GmjmR176
あーあ、今日は寝ないで朝まで起きて、
飛行機の中で寝よう…みっちゃん様の誕生日までは帰って来れるな
>>596 その辺は三週間先ということで…
―― 五章 ―― 五日目朝の放送が終わった。 そしてそれによってこれまでで最大の人数が一日で脱落したという結果を、 残りのメンバーは知った。 あさみは既にその頃は表に出て、朝の清々しい空気を吸いながら聞いていたし、 石川梨華は放送の途中で目を覚まし、誰が脱落したのかという最も大事な部分を聞き逃がしてしまった。 その為、もう残った人数がわずか六人となってしまったことを未だ知らない。 「今日も一日がんばろーっと」 誰に言うわけでも無くそう呟いたあさみ。 モーニング娘。のメンバーで無い者のなかで残っているのはこの小柄な少女だけだった。 しかしそのことに対する気負いは無い。その瞳はただ真っ直ぐ先を見ていた。 保田圭は体に無数に出来た打撲傷の痛みで目を覚ました。 昨晩平家みちよの野心を断ち切ってみせた保田だったがその代償は大きかった。 一晩寝れば引くと思っていた痛みは、逆に一晩を経て増幅されてしまった。 「無茶し過ぎたかな…」 意を決して上体を起こした保田だったが、それによって再び痛みが襲ってくる。 保田は深いため息をついた。 「紗耶香…今日で終わりそうだね…」 保田が一夜を過ごしたその隣室には市井紗耶香ら三人が宿泊していたが、 その間で言葉が交わされることは、一晩中ついぞ無かった。 「ふぅ…」 放送を聞き終え、多数の強敵が去ったことを知ったことを知り、 無意識に深い息をついた後藤真希は、隣で市井が何か作業をしているのに気付いた。
「紗耶香…何してるの!?」 吉澤もつられるように寄ってくる。 「ん…別に」 市井の肩越しにある市井の足元の屑篭の中にいくつもの紙切れが見えた。 引き裂かれ、ただの紙屑と成り果ててしまっているそれらは、どうやら一日前に脱落した面々の 顔写真のようだった。 「こ…これって辻ちゃんの…これは稲葉さん…平家さんのも、ミカちゃんのもある」 一つ一つ拾って確かめる吉澤。 「ほら、残りのうちらのはこっちにあるし。こうしてたほうが分かりやすいでしょ!?」 「確かにそうだけど…」 何も顔写真を破ることは無いんじゃ…そう続けようとしたが口からは出なかった。 何か言ったらますます紗耶香との距離が離れてしまう気がする…後藤は無意識に萎縮してしまっていた。 「吉澤何してんの?」 市井の見ている前で拾った゛かつて写真だったもの゛を、吉澤が 朝食の入っていたビニールの袋に詰めている。 「ここに置いて行ったら可哀相です」 「…よっすぃー…」 後藤は驚きの表情を浮かべ、戸惑いの後ゆっくり吉澤に近づくと、拾うのを手伝った。 「昨日までのはもう持ってないよ…それにそんなのただのゴミじゃん… …汚いよ屑篭から拾ったりしてさぁ」 「ゴミなんかじゃない…写真の中のみんなの目が私達を見てるんです」 珍しく反論する吉澤に、小声で 「馬鹿じゃないの…!?」 そう言うと、市井は目を反らして言った。 「さ、気が済んだら早く行くよ」
メロン記念日の新曲のCMいい感じなのになぁ… 結果を知るのが先送りに出来てよかった
601 :
名無し娘。 : 2001/03/14(水) 00:03 ID:2Oc2MhvI
>>600 そうか…また海外行ってしまうんだな…
その前にどうしても聞きたい事があるんだ
↓コレなんだが、率直にどう思う?漠然としてるけど許してくれよな
アンdについて手レトがどんな風に感じてるのかも興味あるんだ、是非答えてくれ
364 名前:名無し閣下ts1.kitanet.ne.jp投稿日:2001/03/13(火) 22:07
>>361 元気なのはいいことだが、たまにネタレスしてみろ、案豚(わら
602 :
名無し娘。 : 2001/03/14(水) 00:26 ID:2Oc2MhvI
そうか…もう旅立ってしまったか… 達者でな…無事帰って来いよ… 体に自信あってもあんまり無理しないようにな…
>>601 -602
さぁ…羊しか見ていないから分からないですけど、
害はないんじゃないですか?
一つのスレッドでだけやってるようですし
まだ行ってません電車待っています状態になりますから
始発まで
604 :
名無し娘。 : 2001/03/14(水) 01:04 ID:2Oc2MhvI
>>603 まずレス感謝するよ。でも俺は好きだな、アントン。
>害はないんじゃないですか?
>一つのスレッドでだけやってるようですし
流れのこと言ってるのかと思ったぜ。
605 :
名無し娘。 : 2001/03/14(水) 01:11 ID:2Oc2MhvI
そもそも俺が聞きたかったのは、名無し閣下の書込みについてだったんだが、それはどーでもいいや
606 :
名無し娘。 : 2001/03/14(水) 03:09 ID:bXCZ5QRU
あさみと石川がどう絡んでくるかが楽しみだね。 勝手に想像してるけど。 みっついの誕生日なら、4月6日か。 約3週間、道中お気をつけて。それまで適度に保全しとくよ。
最後の最後にシェキドル増員か…
>>604 -605
好きとか嫌いとか言えるほど知らないんです…
すみません
>>606 みっちゃん様の誕生日より前には帰ってこれます…多分
適度に保全して頂けたらありがたいです
…これが人生最後の書き込みになったら楽しいな
行こう
手動保全にご協力下さい
609 :
名無し娘。 : 2001/03/16(金) 08:19 ID:kogjcxNY
消えないように書き込みしてやるか。
手動保全にご協力下さい
611 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 01:00 ID:08Pk10Do
さて、念のため保全しておくとするか。
612 :
名無し娘。 : 2001/03/18(日) 12:09 ID:EL3QXOsQ
やっぱり市井には対戦相手の臍に指突っ込むぐらいやって欲しい
kurukotohadekitemokakenaina... korenaraissokorenihougaiiya... honnyakusohutonoseide 608to609to610to612nannigakaitearukawakaranaisi
>>613 >...korenihouga...
"korenaihouga" no machigai desyo?
kekkekkekke ukkyokkyokkyo ohhohhohhohho
aaan iyan dameeeeen dopyu dopyu jupo jupo ikuuuun!!!
tokorode by the way ima kimi ha where you are?
how long itsumade soko ni irutsumori?
>>608 name:hayo koushin seiya 1
message:syudou hozen ni gokyooryoku kudasai
>>609 name:nanashimusume.
message:kienai youni kakikomi shite yaruka.
>>610 name:hayo koushin seiya 3
message:syudou hozen ni gokyooryoku kudasai
>>611 name:nanashimusume
message:sate,nennnotame hozen siteokuto suruka.
>>612 name:nanashimusume
message:yappari ichii niha taisen aite no heso ni yubi tsukkomu gurai yatte hoshii
615 ha detarame kaitandakedona
Full it care Cow was to become with not
618 :
hozenn : 2001/03/20(火) 01:28 ID:ZS15/jJQ
( `.∀´)
619 :
manngu-sunisiura : 2001/03/20(火) 15:03 ID:6yg7CUGA
>>614 mittyannsama no tannjoubi made ha kaererutte
kaitanndakedona...
matigai ha sonotooridesu
>>615 arigatougozaimasu
>>616 detaramedehanaidesu
itibu mojibake siteirudakenanodedaitaihawakarimasu
>>617 mattaku no imihumei
usinohanasihakottideyokusiterunndesuga...?
hozennsitekureteruhitohaarigatougozaimasu
kinou ha hiragana ga yomete kyouha itibu no kannji ga mirete hiragana ha zennbu`??????????`ninaru... kinounohougamadamasidattana...
nakatomikazumi ga kanyuusurunndesuka? warito mo-ninngumusume no kotoha doudemoiidesukedo syekidoru no hougakininaru...
mo-ningumuaume nomo meronkinennbi nomo kikeru kannkyouni arukedo mittyannsama no kyoku sika kitenaina... kottino hitoni meron kinenbi no sinnkyoku no mihiraki no koukokuwomisetara `naze kituraha kasyunkuseni kennka wo uru youna tura wo siteirunodesuka?` kyoku no ime-ji ni awaseteirunodato setumei sitanodesuga nattokuittenaiyoudesita mo-ningumusume ni kannsiteha yagutisann nokotowo `Looks like a doll` tujisann no kotoha`Not so beautiful` nakazawasannnokotoha`Her hair too bright`dasoudesu kanari doudemoii hitorigoto desita
sekkakukretemo ro-maji ja aiteni sitemoraenakute samisii... suvivor2 wo itiwa mita. Amber toiu ko ga 1 no tokino kori-n no youma yakuwari nanokana... kinnkoturyuuryuu na kokujinn no onnnanohitoga ita 1 no saihousou mo siteite kori-n no koega igaini kanari hikui kotowo sitta konosureddo ni kannkei no aru hanasi tositeha `rurouni Kennsin`ga `Samurai X`toiu sutekina taitoru de housou sareteiru toiukotokana... iya,amari kannkei nakattaka...
>>621 nakatomi kazumi ha otitayo.
nakatomi ga itiban kurou sitesoudasi ouen siteta noni zannen.
26no obahan to itiban uta ga heta na kabata ga goukaku.
morning-musume niha sasugani hairanaidarou to omotteru kedo.
kankeinaikedo oreha ro-maji talk tokui dazei.
kaigai mono no net game yatteta karana.
yaguchi wo miteite suki ni natte iku jibun... mada wakaindesyo? shikkari shiteru to iuka , kenage ni ganbatteru youna insyou ga koukan moteru ne
>nangu-sunisiura goji ga ooime!
>nangu-sunisiura anta ga kaette kuru made kono sure 800 itteru kara hozen mo kuso mo kankei ne-yo! ba----ka!!
She's care so young Iwan issue meal Send me no call way
>>628 issue ha issues ni naruna...
630 :
N : 2001/03/20(火) 18:51 ID:cee1STOo
...
632 :
名無し娘。 : 2001/03/20(火) 19:28 ID:qfeKq5Uo
>>631 (&nbsp;&nbsp;' v`)< You Too!
ueno mieruka?
633 :
名無し娘。 : 2001/03/22(木) 06:15 ID:UTi4nTLQ
Yo! gennkika? Kawaiiko irukai? Hetanakotosite tsukamarunayo! ja-ne. zai jian!
634 :
mangu-sunisiura : 2001/03/22(木) 16:04 ID:1RRT.aL.
>>624 nakatomikazumiha otitanoka...
anonakadeha itibann koukann wo motiurutaisyoudattanndakedo...
official page ttenanndattannda?
>>625 hu-n...
yagutisannha 18saidesuyo
>>unkoman
kamattekuretearigatougozaimasu
>>633 kawaiikomo nanimo mawariha hitodumabakari...
demo mekisikan no hito to nakayokunaretetanosiidesu
rutyaribure no hanasi ippai kiitarisimasita
tadasi ninpu desu
kaerumade kokoha ro-maji de nikkiwo kaku basyonisyou... kyouha toaru kankoutini CCgirls no syasin ga kazattearu nowo mita ato doudemoiikedo omottanoha mainiti nerutokiha mittyansama no uta wo kiiteite, kousite nanika konoyo ni katatini narumonowo nokosereba tatoe sekaijuuni tattahitoridemo (mittyannsamaga sou datoiukotodehanakute) kanndousitari,iyasaretarisuru hito ga irunndarounato jikkannsita. amatyua no konnku-ru no yuusyousya ga sinnsain no sukikirai de kimeraretara komarukedo, puro no kasyu no CD wo sukikirai igaino riyuudakede katteha ikenai toomotta tokoroga konosukikirai toiu kannjoumo,dokokara waitedetekurunokaga wakaranakute, dakarakoso kouiubasyo ga arunndakedo,`taninnga hometeirukara``minnnaga kiiteirukara` dakeno riyuude puro no uta hakiite ha ikenai sukikiraide kikukakikanaikawo kimeyou kaette yomikaesitara kitto koukaisuru
suki ni naru riyuu... kirai ni naru riyuu... hito ni taishite mo geijutsu ni taishite mo onnnaji nandaroune kirai ni naru riyuu ha mitsuketari kimetari surukoto ha youi na baai ga ooi kedo, suki ni naru riyuu ha, meijou shigatai to iuka miidase nakute munasawagi dake suru nantekoto aruyone
sukikirai no kanjou dake wo kijun ni shite geijutsu ni sessuru noha doukana...? puro to amatyua tode wakeru mono demo naito omou. atsui kimochi wo buchimaketakatta dakenara, mizu wo sasudake, yokei na osewa dayona... hito no nikki no naiyou ni iken suru nomo akusyumi kamo shirenaishine... tada, geijutsu ni sessuru kikkake ya douki ha nandatte iihazu. ongaku datte kiiteru uchini suki ni natte iku koto datte arushi. iimono niha nanika riyuu ga aruhazuda to shinjite sakuhin no rikai ni tsutomeru kateide, geijutsu wo kansyou suru chikara ga yashinawarete ikunja naidarouka. gyaku na mikata sureba sorega geijutsuka wo sodateru koto nimo tsunagarudaroushi. rikutsuppoina... tatoeba heike michiyo ni totte ha doudarouka? suki to iwarete warui kiha shinaidarou kedo, settokuryoku no aru setsumei de, yoi to hyouka sarerukotowo mushiro mezashiterunja naikana? kanojo no puro ishiki ga tsuyokereba naosara.
demo tashikani hyouronka ya hito no iken dakede jibun no hyouka wo kimeteshimau yatsu ooine. utada hikaru no arubamu ga annanimade uretanomo, souiu yatsura ga ookatta kara daroune. CD ga nannmai uretaka ga kasyu no hyouka wo kimeru wakedeha naittekoto desune. nanka karamawari shiteruya... unko-!!chimpo-!!
639 :
N : 2001/03/22(木) 23:58 ID:TjUQtCVA
...
kyou ha nani shite as o bo u k a n a
hozen
ageteshimatt a
uzaiyatuhamusisurebaiiyo
644 :
名無し娘。 : 2001/03/27(火) 23:09 ID:tNDFNniY
hozen no tameni kakikondeokouka
645 :
mangu-sunisiura : 2001/03/28(水) 19:45 ID:4FcOSg6Q
poppusu ha geijutu datoha omottemasennyo tadasi iiimide. amatya ha ongakusei dake de hyouka sarerubekidakedo. puroha soujanai. soregaiitakatta watasiha ongaku no syumi nadotoiu mono niha dokusareteimasenn. ongaku wo kiite itumademo nokoru kandou wo ataerareru kotoha attemo hihyoude soreto onaji kotowo kanjirukotohadekinai. sono atarimae no kotowo kouiu joukyou ni okarete jikkann sitatoiu hanasi.
646 :
名無し娘。 : 2001/03/28(水) 23:34 ID:4/kvlAgw
>>645 yake ni tetugaku tekina hanasi dane!!
647 :
N : 2001/03/29(木) 00:16 ID:xL/m/Azg
...
648 :
mangu-sunisiura : 2001/03/29(木) 16:46 ID:PKXRdbiI
くsoukyou haki- bo do.ganai. ...
649 :
名無し娘。 : 2001/03/29(木) 23:21 ID:2g9qr7FA
COPY&PASTE de kaiterunoka?
650 :
N : 2001/03/30(金) 00:30 ID:QYpXcU92
...
2ch nakunattyau kamo... demo daijo-bu! "N"no ottyannga nanntokasitekurerusa!
jamasurude
jamasurunara kaetteya
hona kaerimasuwa...tte,nandeyanen!!
655 :
hiro : 2001/04/02(月) 22:33 ID:J24CA9zw
taiyou no hikari abite mayuge bo-n!
656 :
名無し娘。 : 2001/04/02(月) 22:42 ID:ioK3mkTA
>>655 sorya yoshida hiro dengana !
teretoumirohaimagoro dousiterunndarou geridenayannderukotohamatigainaina
658 :
名無し娘。 : 2001/04/03(火) 22:59 ID:VMI.vapw
659 :
名無し娘。 : 2001/04/04(水) 00:51 ID:AhVul0Lo
hayaku tuduki ga yomitaiyo
sorosoro kaettekurunokana?
oregatabetayomangu-su
662 :
マングース西浦 : 2001/04/05(木) 01:31 ID:8lR042Og
帰ってきた… しかしなんだろうなぁ… ここでやることはもう無い気がする
663 :
名無し娘。 : 2001/04/05(木) 20:35 ID:QfdHuzdA
>>662 復帰第一声がそれとはつれないな
よっぽど幻滅させてしまったのかな
664 :
名無し娘。 : 2001/04/06(金) 01:05 ID:8m0ZxuPU
あんたにそれを言われたらガックリくるよ。
665 :
名無し閣。 : 2001/04/06(金) 10:03 ID:9eFbgmEU
なんだかんだいってあんたが消えると寂しいな。 と珍しくマジレス
666 :
名無し娘。 : 2001/04/06(金) 18:31 ID:Ub1nOBGE
あんたにそれを言われたらガックリくるよ。
667 :
マングース西浦 : 2001/04/07(土) 02:05 ID:2a7/ZAAY
人の善性を信じたいという気持ちになって帰ってきて、 ここを見ればそういう気持ちにもなる しかし楽しすぎると色々なものを忘れてしまうな… ここがここでなければ帰ってこないところだ …さて、馬鹿は放っておいて…
天下一武道会外伝4 〜石川梨華〜 日々の始まり 神はヒトに対して他の動物に対してよりも多くのものを与えてくれたかもしれないが、 なぜか与えてくれなかったものがあるとすればそれは「現状に満足する」 ということだったかもしれない。 常に上を見ている人間には、周囲というものが見えなくなってしまうものだ。 ここに一人の少女がいたが、彼女も現状には満足していない。 このころはまだ自分に与えられたものが自分にふさわしいものであるのかどうか、 判断しきれていなかったからだ。 彼女に与えられたものとは゛いじめられっこキャラ゛ 「また今日もいじめられた…」 楽屋に一人きりになった彼女は再び独り言を始める。これは珍しい事ではなかった。 「ババアとチビとノッポとデブとブサイクとガキと魚顔と吉澤は死ね今すぐにでも死にやがれ」 短い独り言が終わると、再び沈黙に支配される楽屋。彼女はペンと紙を手に取った。 「中澤はもっとババアになって死ね安倍はもっと太って死ね飯田はもっと伸びて死ね 矢口はもっと縮んで死ね保田はもっとブサイクになって死ね後藤はもっと魚っぽくなって死ね 加護と辻はもっとガキになって死ね吉澤は…吉澤…よっすぃー…」 何の捻りも無い恨みの句を口に出しながら紙にしたためていた彼女だったが、 とある人物に行き当たったところで筆を止めた。
(そうだ…私にはよっすぃーがいる…余りにも身近で気づかなかったけど… よっすぃーだけは私をいじめないし、私とも仲良くしてくれる…そうか…そうだったんだ… よっすぃーさえいれば私はやり直せるんだ) 彼女の後ろからその吉澤本人の声がしたのはその時だった。 「…梨華ちゃん何してんの…!?」 「あっ、ちなみによっすぃーはどんな死に方がいい!?……はっ!」 おっちょこちょいなりかっちは全てを言い終えてから自分の失言に気づいた。 吉澤の視線は石川の手元の紙に落ちている。 恨みの句をしたためるのに夢中になる余り、物音に対して不注意になっていたらしい。 その視線には見てはならないものを見てしまったという戸惑いの光が含まれていた。 「お前何しとんねん!?」 何の脈絡も無く吉澤の後ろにいた中澤の声が石川の耳に入った。 「別に」 「ええからちょっと一緒に来い」 なぜか少し嬉しそうな表情を浮かべながら連行されていく石川を吉澤は複雑な表情で見送った。 「カントリー娘。への無期懲役」 翌朝石川に下った判決はそれだった。
外伝4終了
671 :
名無し娘。 : 2001/04/07(土) 02:39 ID:51llrz7Y
祝再開。
672 :
名無し娘。 : 2001/04/07(土) 04:29 ID:0umrp266
レス病を克服して帰ってきたってことか
673 :
N : 2001/04/07(土) 07:06 ID:KLTEINaM
...
674 :
マングース西浦 : 2001/04/08(日) 00:40 ID:PPyvBzmM
下らない、ああ…戻りたい、 定住したい…
675 :
名無し娘。 : 2001/04/08(日) 00:46 ID:bTRSpuYw
どこにやねん。 外国か?
676 :
マングース西浦 : 2001/04/08(日) 00:49 ID:PPyvBzmM
そう、馬来西亜に… みっちゃん様さえ心の中にいれば生活の場などどこであろうと関係無い
天下一武道会外伝5 〜タンポポ−2〜 三角関係の悲劇 実際、二人には多くの共通点があった。 同じ神奈川県出身であること、誕生日は一日違いだったし、 二人ともニックネームは下の名前に゛っ゛ともう一文字を付け足すという形式だったし、 そして二人は同じタンポポのメンバーだった。 そうであるのに、決して二人が馴れ合うことをしなかったのは、 二人があるものを争うライバル関係にあったからだ。 「あら矢口さん、ご機嫌いかが?」 「あら梨華ちゃん、そちらこそ体の具合はいかが?」 この二人が楽屋で二人きりになると、なぜかどちらからとなく二人はこの口調に変わる。 「私の裕子ったら、昨日も私を殴ったのよ。お陰でカントリー娘。に無期懲役になってしまったわ」 「私の裕子は私を殴ったりしないわ。いつも私のことを愛情を込めて抱きしめてくれるの」 すかさず言い返した矢口だったが、その表情には隠し切れない羨望の念が浮かんでいた。 「裕子が来ると大変よ。殴られた勢いで頭を打って死ぬといけないからあわてて角のとがった テーブルなんかは片付けないといけないの。特に昨日は激しかったわ。 裕子ったら私の髪を掴んで45分間引き回して壁に叩き付けると、 崩れ落ちた私に鉄拳の雨を降らせたのよ。 その上、意識朦朧とした私に煙草の煙を吹きかけると裕子はこう言ったわ。゛死ね゛ってね」
「ちっともうらやましくなんかないわ」 矢口はそう言ったが、本当に羨ましくないと思ったらそうは言わないものだ。 「もしそこに愛情があるなら、殴ったりすることなんて無いと思うわ。 私の裕子は顔を合わせるといつも゛矢口かわいい゛って言って私を抱きしめてくれるの」 矢口ははっとしてさっきと同じことを言ってしまった自分に気づいた。 「私はそうは思わないわ。愛情があるからこそ、殴ったりすることも出来るんだと思うわ。 それに殴った後はいつも消毒の為と言ってお酒を吹きかけてくれるの。 しかもそれはブランデーやウォッカなんかじゃなくて、焼酎の大五郎なの」 ブランデー?ウォッカ?大五郎?石川は中澤の影響でお酒に詳しくなってしまったらしい。 石川の話がさっぱりわからない矢口の嫉妬は頂点に達しようとしていた。 「でも、どうしてあなたの裕子はあなたを殴るの?愛情があるからと言っても、 何か理由はあるはずでしょう?」 矢口のもっともな問いに、しかし石川は軽い笑いを返した。 「あるときは゛ウザいから゛という理由で殴るわ。 そしてまたある時は゛ウザくないから゛という理由で殴るの。 要するに理由なんて無いのよ。私を殴れればそれでいい。 ただ一つ確かに言える事は裕子が私を愛してるってことね」 矢口の中である決意が固まった。 元々欲望という感情の体積が他と比べて大きかった矢口は 流行遅れのなんでも欲しがる真里ちゃん状態になっていた。 (私も殴られてみたい。抱きしめるだけ抱きしめて、優しいだけなんてもう嫌。 殴るのも抱きしめるのも全力な裕子じゃないともういやなの) 「それに最近はみちよも私のお尻を…」 「それは全く羨ましくないわ」 続きそうだった石川の自慢話を矢口は冷静に阻止した。
その晩矢口は行動に移った。 中澤の泊まっている部屋のドアの前に立つと、ベルを鳴らした。 程なくしてドアが開くと、中澤はいつものように矢口を抱きしめると、 部屋に招き入れた。 「裕子」 部屋に入るなり、矢口は口を開いた。中澤は突然のことに目を丸くしている。 「部屋をこんなふうに散らかして…服は脱いだら脱いだまま…お酒の缶やビンは飲んだらそのまま… そうしてまたいつものように梨華ちゃんに片付けさせるつもりなの!? この甲斐性無し!ろくでなし!ごく潰し!役立たず!」 そう言うと矢口は中澤に殴りかかった。 矢口に殴られた中澤はあえなく椅子から転がり落ちた。 矢口はすぐに目を瞑ると中澤の鉄拳が飛んでくるのを待った。
「矢口さん、もしかして…!?」 となりの中澤の部屋から聞こえてきた矢口のものらしい叫び声、椅子が倒れる派手な音を 聞いた石川は素早く部屋を出た。 中澤の部屋のドアノブに手を掛けようとした石川だったが、突然開いたドアに顔面を打ちつけた。 しかし、ライバルの喜びは自分の喜びでもある。石川は痛みを感じなかった。 「矢口さん、やったの?裕子は殴ってくれたの?」 しかし矢口は悲しそうに顔面を歪めると、石川の胸に飛び込み、すすり泣きを始めた。 「私…裕子に殴ってもらいたくて…思いっきり罵りながら裕子を殴ってやったの。 そしたら…そしたら裕子ときたら…どうしたと思う? 掃除を…泣きながら部屋の掃除を始めてしまったのよ!」 矢口に一発KOされ涙ぽろりしながら部屋の掃除を始めた中澤が体力の限界を理由に脱退を 発表したのはこれからすぐ後のことだった。そして中澤の全権の七割は矢口が握る事になる。
外伝5終了 タイの女性に対してこれまで食べたものの中で最も驚いたものは? という質問をしてみたところ、「カエル」というお答え… なんと、日本人のタイ人に対するイメージが歪んでいる事か… しかもその後私が日本人であるということに気づき、 その小柄なタイ人の女性は飛び上がりながら「ケロピー!ケロピー!」 と騒ぎ出したのです一瞬何の事かわかりませんでしたが、 補足の説明で気づきました ケロピーとは、サンリオのキャラクター゛けろけろけろっぴ゛のことだったのです どうでもいい死ね しかし飛び上がる小柄なタイ人の女性のなんと可愛いらし
682 :
名無し娘。 : 2001/04/08(日) 01:14 ID:bTRSpuYw
リアルタイムで読んでしまった。 よくわからん嫉妬心を持ったマゾな2人が滑稽でおもしろかった。 俺も外国行ってみたいな。
683 :
名無し娘。 : 2001/04/08(日) 01:24 ID:/GWMMSRU
なんか初期の味わいが戻ってきたな。 最近の作風もいいが、これもいい。 ところで >しかし飛び上がる小柄なタイ人の女性のなんと可愛いらし 結局これかよッ!
684 :
名無し娘。 : 2001/04/08(日) 01:35 ID:h3FgAQa2
帰ってきたかい。 バキはまだドリアン編だよ ジョジョは隔離房が舞台だよ
685 :
名無し娘。 : 2001/04/08(日) 21:17 ID:9ImPQsyE
おぉ、帰ってきている。 お帰りなさい、待ってたよ。 つづき、やっと読める(涙 本編の更新も楽しみにしているよん♪
686 :
マングース西浦 : 2001/04/09(月) 00:14 ID:fqTbEtQM
本日は更新をお休みして、最新のみっちゃん様ランキングをお送りします 1. 深呼吸しよう! 100P 2. HEY!HEY!GIRLS SOUL 99P 3. ひとりぐらし 95P 4. 黄色いお空でBOOMBOOMBOOM 93P 5. 強くならなくちゃ…ね 92P 6. 結局BYEBYEBYE 90P 7. あなたの夢になりたい 89P 8. 素敵な恋素敵な夜 88P 9. スキップ 86P 10. scene 83P (当ランキングは作者の好き度によって順位を算出しています)
687 :
名無し娘。 : 2001/04/09(月) 00:18 ID:2omHJdcA
>>686 結局BYEBYEBYEこのまえ千葉テレビでPVみたけど
かなり色っぺかったね。
予定はなかったがキャプってしまった。
堂々とコンサートの話をしている…変わったものだ
689 :
N : 2001/04/09(月) 01:09 ID:q0Um7Lqk
...
690 :
マングース西浦 : 2001/04/09(月) 23:38 ID:K70s9rxk
このNとかいうのは何なんだ? 日本料理店の入り口に置いてある盛り塩に興味を持つ タイ人の小柄な女性。 「これはなんのために置いてあるの?」 「さあ…知らないけど魔除けかなにかのためかな」 そう言うとそのタイ人の小柄な女性は嬉しそうに 飛び跳ねながら四方に日本式の゛お辞儀゛をしたのです。 その可愛らしさとい
なぜ石川梨華がここまで激戦の中脱落せずに残って来れたか… それには柴田あゆみの存在があったし、 彼女が人並みはずれた幸運の持ち主であったということもある。 しかし、最も大きな理由はそれらではなかった。 ただ、石川は臆病だった。そしてそれが最大の要因だった。 怖い思いをしたくない、痛い思いをしたくない。 しかし、あっさり降参して他のメンバーから軽蔑の視線を向けられるのはもっと怖い。 度を越えた臆病は勇敢と見分けがつかなくなる。 今の石川の状態がまさにそれだった。 逃げ出したら臆病者になってしまう…逃げるのではなく、隠れよう。 石川が必死で出した結論はそれだった。 いよいよ゛街゛の半径は2kmにまで狭まれられた。 下手に動かないほうがいい。隠れて、チャンスを伺おう。 珍しく知恵を働かせようとした石川だったが、その実践に戸惑った。 (どこに隠れよう…) これまで特に何も考えずに過ごしてきた石川はこの゛街゛の構造をほとんど把握していない。 無防備に道を歩いていると、後ろのほうから声がした。 「梨華ちゃん!」
もし石川の心臓に少しでも障害があったら、この瞬間、石川は十五年の短い人生を終えていただろう。 それ程この時の驚きは石川の心臓に急激な運動を強いた。 石川が血走った目で振り返った先には、カントリー娘。のあさみがいた。 あさみにとって師匠と仰ぐべき存在はりんねただ一人だったが、 もう一人それと似たような存在がいた。それをあさみは区別の為に゛先生゛と呼ぼうとしたが、 本人に遠慮された為今はそれを゛梨華ちゃん゛と呼んでいる。 しかし、心の中では今でも先生と呼んでいることに変わりは無かった。 「梨華ちゃん無事だったんだね」 何事も無かったように屈託の無い笑顔を向ける元の仲間に怒りもどこかに 行ってしまった石川は緊張を解いた。 「りんねさんはどうしたの?」 「あれ?梨華ちゃん放送聞いてなかったの?」 石川はこの時初めてりんねの脱落を知った。 そしてその後りんねがどれだけ立派だったかも、あさみから十分過ぎるほどに聞かされた。 「梨華ちゃんその帽子なに?」 りんねの話をした後、次にあさみはバッグから覗くピンク色の帽子に興味を持ったようだった。
あさみは石川がピンク色を好きだという事は知っていた。 しかしその帽子はただピンク色の帽子というだけではない、 なにかただならぬオーラのようなものを漂わせているように感じられたからだ。 「これは、バレリーナ戦隊の柴田あゆみちゃんからもらったの…」 経緯を聞いたあさみは目を輝かせた。 「やっぱり梨華ちゃんはすごいや…モーニング娘。をやって、タンポポも青色7もチャーミー石川も、 カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)もやって、その上バレリーナ戦隊なんて…」 「そ…そんな、たいしたこと無いよ」 何が゛たいしたこと無い゛のか、場合によってはかなり失礼なことになる発言だったが、 おだてられた石川はそんなことには気づかなかったし、 ゛先生゛の偉業に感激しているあさみもそれは同様だった。 「梨華ちゃん、一緒にりんねさんのかたきを討とうよ!そしてみんな蹴散らして優勝しちゃおうよ!」 (え!?) 「で…でも…あの…」 どもるだけで先に進まない口のせいで、石川はあさみに押し切られた。 (隠れようと思ってたのに…)
゛セパラドス゛とはどういう意味ですか? と尋ねたら゛一緒にやろうよ゛とわざわざ和訳してくれた 日本留学の経験を持つメヒコの妊婦さん。 「It's special experience...」 が口癖の可愛らしい感激屋の 台湾人の若奥様。
695 :
N : 2001/04/10(火) 00:20 ID:tQGaVGZE
....,.... .......... ..,...............
696 :
名無し娘。 : 2001/04/10(火) 00:27 ID:iE5UdFAQ
・・・恋?
697 :
マングース西浦 : 2001/04/10(火) 23:40 ID:jLRLaBqc
変な奴は放っておいて… マレーシアで 『池袋ウエストゲートパーク』とかいうドラマのVCDが 『池袋西口公園』とそのまま漢字のタイトルに直されて売っていた 少し笑いそうになったけど、今考えると別に面白くない マレーシアは華僑が多い
「目覚めたか…平家」 昨晩保田圭に敗れて以来眠り続けていた平家が目覚めた時、 一番最初に声を掛けたのははたけ、別名ミスターバラクーダだった。 「あ…あれっ!?なんで私こんなところに…」 自分が敗れて運ばれたということに気付くのに一瞬の間があったが、 そのあいだはたけは声を掛けずにただ側にいた。 「そうか…私、圭ちゃんとやって、あの時…」 少し沈んだ表情を浮かべた平家だったが、すぐに疑問が浮かんだ。 「なんではたけさんこんなところにいるんですか?」 はたけは肯きに続いて口を開いた。 「お前は俺のミスターバラクーダとしての姿しか知らないやろ… 実は俺にはもう一つの顔がある。つんく四天王がひとり、はたけとしての顔がな」 「つ…つんく四天王!?なんですかそれ?」 つんく四天王とは゛青いスポーツカーの男゛まこと、゛秋葉原の帝王゛たいせー、 ゛ロビンマスク゛はたけ、そして既に行方をくらましているしゅうからなる 実質三天王のことだった。
「つんく四天王…そんなものがあったやなんて…でも、はたけさんがなんでこんなところ にいるのか、まだ答えてもらってないですよ」 「何者かに呼び出されたんや…つんく四天王の一人としてのこの俺がな」 他の四天王のメンバーのまことは青いスポーツカーの内輪差に巻き込まれて負傷、 たいせーは元ネタが古すぎるという理由からそれぞれ駆けつけることがかなわなかったという。 しゅうに到っては連絡すら取れない状況だった。 「つんくさんが…何かをやろうとしてるってことなんですか?」 「だろうな」 「……あれ?隣の部屋から話し声が聞こえますけど…」 それは中澤裕子と矢口真里の甲高い声だった。 気を付けてみると、それに混じって様々な種類の声が聞こえた。 「気付いたか…そう、ここは敗れ去った奴等が集められる場所… ここではお前が一番の新入りやな…実際中には何人かまだ治療中の奴もおれば、 修理中の奴もおるけどな」 (修理中!?) 聞き返すより先に体が動いた。 そして平家はドアノブに手を掛けて、ドアを開いた。
「あ、平家さんだ」 誰かの声に続いて視線が平家に集まり、それに続いて平家に対する賞賛の声が、 いくつかの非難に混じって飛び交った。 賞賛の声は保田戦での戦い振りについてのものだったし、 非難の声は辻戦についてのものだった。 「こ…これって一体…」 「これまでの経緯は随時ここに入ってくる。今、モーニングの石川とカントリーのあさみが 合流したところらしい」 「そういうことか…」 部屋にはいくつものモニターが設置してあった。 そしてそれらのモニターにはそれぞれのハロープロジェクトのメンバーが、 脱落の際にどんな勇気を見せたか、どんな過ちを犯したか、どんな友情を守って脱落していったか、 あるいは、それぞれのメンバーがどのような思いで闘いに臨んでいたか、 隠しカメラが映し出した映像が繰り返し流されていた。
「でも、なんでこんなことすんのやろ」 意図が読めなかった。 なんでこんなことをするのか。 シェキドルやバレリーナ戦隊は結束を深めた様子を見せているが、 ココナッツ娘。の四人は居心地が悪そうに部屋の隅に固まっていた。 「終わった時に分かる…そう信じるしかないな」 はたけの声に平家は肯いた。
やっぱりメヒコの妊婦さんはミルマスカラスを知っていたドスカラスも知っていた それよりも日本式に「ミルマスカラス」と発音してそれで通じたのに驚いた AAAのドン、サントはメキシコ人なら誰でも知ってる名前らしい 新日に時々来日してなぜかタイトルに挑戦して負けて帰る あの銀色のマスクの小柄な選手…メキシコでは馬場猪木並みの知名度らしい しかし小柄なサントがトップロープから飛び上がる姿の可愛らし
703 :
名無し娘。 : 2001/04/11(水) 00:30 ID:qAf.cPog
>>699 負けた人がちゃんと生きてるのっていいね(あたりまえだけど)
バトロワ読んだ後だと余計そう思う。
>>701 気になる。。。
>>702 サント様小柄で可愛らしいお姿?(すまん、プロレスはよくわからない)
704 :
N : 2001/04/11(水) 01:12 ID:MW0Klo0M
It can do and can do... What is said in the social position of a coward? Having changed is saying that it is the direction of you.
705 :
名無し娘。 : 2001/04/12(木) 04:17 ID:L3M8VcHk
一応保全書き込み。 ぼよよん。
706 :
名無し娘。 : 2001/04/12(木) 20:33 ID:3Ob7hbuQ
あ保全
村田めぐみ 特技 : どんな犬とも仲良くできること …か…よりによって…意外だな動物とか嫌いそうだと思ってた
708 :
名無し娘。 : 2001/04/13(金) 02:03 ID:CmTL7b2Y
>>707 それ先に知ってたら展開変わってた?
犬を逆に手懐けたりして。
709 :
マングース西浦 : 2001/04/13(金) 22:41 ID:yVGZmpNQ
710 :
名無し娘。 : 2001/04/13(金) 23:10 ID:Opa9SEiQ
自虐的だな。
711 :
N : 2001/04/14(土) 00:34 ID:cCO5zZHE
Moreover, a rebellious age
712 :
名無し娘。 : 2001/04/14(土) 11:08 ID:fNc00TvI
>>711 腰抜けはほっておけって言ったお前が何してるんだ?何がしたいんだ?
優柔不断な奴だな。それとも健忘症か?お前こそ腰抜け
マレーシア豆知識 一言にマレーシア人と言っても、大別してマレー系、中国系、インド系が 混合されているのですが、その内のマレー系だけ、四人までの妻帯が 法律で認められています。中国系とインド系には認められていません マレー系、中国系、インド系それぞれに違った文化を持っている為に、 一本化した゛マレーシア文化゛というものは無いようです そういった意味で日本は文化のある国であると再確認できましたマレーシアに行くことで逆に日本への愛着も深まりました 四月一日は中国系の人達にとって、一年に一度先祖を奉る日なのだそうで、 中国系の墓がある場所には線香の煙がたちこめます それでいて、エイプリルフールの文化もある 歌謡曲は殆ど欧米のものばかり中国系、インド系、それに日本のものもある 一見これは素晴らしいことのようにもみえるけれど、 実際はマレーシアには固有の文化が無いと言うことを 証明してしまっているのではないか しかしマレー系の゛シティ ノハリザ゛という女性歌手は 例えるなら中山エミリの前のASAYANのアシスタント(名前ど忘れ) に似た可愛らしいルックスをしているそれでいて歌も上手 つまり何が言いたいかというと、別に言いたいことは無いのです
714 :
名無し娘。 : 2001/04/15(日) 01:25 ID:5d1dyxTM
.
715 :
名無し娘。 : 2001/04/15(日) 01:45 ID:eYZfinFo
俺は言いたいことがある。 「胃が痛い」 胃痛い いいたい ・・・ これが本場ジャパニーズジョークだ。
716 :
マングース西浦 : 2001/04/15(日) 14:01 ID:V7XxnodQ
それではこちらはマレーシアジョークです マレーシアのマレー語の授業では、しばしば生徒が教師に対して 「Teacher! are you baka?」と質問し、「Yes! of course I'm baka」 と答えさせる光景が見られるそうです なぜなら、゛baka゛とはマレー語で゛専門家゛という意味だからです 勉強になりますね そしてこれはマレーシア豆知識2でもあるのです
717 :
名無し娘。 : 2001/04/15(日) 14:12 ID:oxz9qT/c
718 :
たゆとうもの : 2001/04/15(日) 14:16 ID:/zfDyjA6
おいおい。手の字だよ!ついに来日したか・・・
719 :
たゆとうもの : 2001/04/15(日) 14:17 ID:/zfDyjA6
ココだけ更新してたのか・・・。久々に名前見たら興奮しちまった・・・ 鬱だ・・・下げよう・・・
720 :
マングース西浦 : 2001/04/15(日) 14:23 ID:V7XxnodQ
こっちはあんたのことなんか、知らない
721 :
メロン記念日解散記念日 : 2001/04/15(日) 14:35 ID:PuYwKs6M
おひさしぶりですね そろそろヤグヲタに戻りましたか? 未だ、柴田とやらに現を抜かしているのでしょうか? (;´д`)ハァハァ・・・
722 :
マングース西浦 : 2001/04/15(日) 14:49 ID:V7XxnodQ
今はみっちゃん様しか見えない 強いて娘で挙げるならやはり矢口かな メロンなら村田
723 :
名無し娘。 : 2001/04/15(日) 14:53 ID:eYZfinFo
村田と大谷の区別がいまだにつきません。 ロッテとロッチのごとく似ております。
724 :
マングース西浦 : 2001/04/15(日) 15:02 ID:V7XxnodQ
>>723 下半身が細い方が村田、太い方が大谷です
あなたの目では上半身で見分けるのはおそらく無理です
いまだに後藤真希のソロ曲を聞いていません
725 :
名無し娘。 : 2001/04/15(日) 15:15 ID:eYZfinFo
後藤真希のソロ曲は聴くものではなく見るものです。 揺れを。
726 :
マングース西浦 : 2001/04/15(日) 15:25 ID:V7XxnodQ
まあ後藤真希はそのうち聞くとして こないだの日本テレビの番組の水族館のコーナーで イカを食べてる場面見てたら マレーシアで 「日本人は魚を釣ったらそのままかぶりつくんだろ!?」 と聞かれたのを思い出した 生で魚を食べる=料理せずに食べる 素晴らしい勘違いをしているらしい
727 :
メロン記念日解散記念日 : 2001/04/15(日) 15:41 ID:4GfFaLwE
(;´д`)あさみタン ハァハァ・・・
728 :
マングース西浦 : 2001/04/15(日) 15:50 ID:V7XxnodQ
雑談スレッドの人か… マレーシアに行く場合、ランカウイはあまりお勧めしませにんよ ランカウイとKLではまるで別の国です 新婚旅行で行くならやっぱりペナンかな
729 :
ゾマホン : 2001/04/15(日) 15:54 ID:c6Ls7paw
ベ、ベベ、ベナンイイ国!! い、1回、い、いい、行ったホウガいいネ! ゾマホンも、う、う、うれしいヨ!
730 :
マングース西浦 : 2001/04/15(日) 16:00 ID:V7XxnodQ
ペナンです ベナンではありません それから、マレーシアに行ったら是非ドリアンに挑戦してみて下さい 日本ではドリアンはかなり高価な上、大体がタイで作られたものです ドリアンはマレーシア製が一番 そして鮮度が命です
731 :
名無し娘。 : 2001/04/15(日) 17:46 ID:adlecqKY
9人目の保田萌えって閉鎖騒動のときとかよく叩かれてたけど、あれってあなたがやってたの?
732 :
名無し娘。 : 2001/04/15(日) 17:48 ID:Ag3X9.ng
ハヤクツヅキカケヨ アト70シカネエゾ
733 :
マングース西浦 : 2001/04/15(日) 18:02 ID:Gv2301Dk
>>731 初心者には排他的でありたいと常々思っているので
「死ね」
とだけ言っておきます
734 :
名無し娘。 : 2001/04/15(日) 18:10 ID:adlecqKY
作者っす支持でずっときていたお前が、某スレで名無しで煽りしてるのを見たから聞いたんだけどね 古参ならその質問に対する答を持ってるとでも言いたいのか? 質問に答える気はないの?
735 :
マングース西浦 : 2001/04/15(日) 18:15 ID:Gv2301Dk
>>732 何の続きですか?
>>734 作者っすの時のあの人は支持しても
9人目の時のあの人は支持するつもりは無いだけ
よく知らないし
別に理由なんか無い
736 :
名無し娘。 : 2001/04/15(日) 18:17 ID:adlecqKY
お前がずっと持たせようとしてきた今まで通りの印象に基づいて解釈すればいいってことかな? しかし、あのスレで9人目があんな風に処理できてなかったら、お前のやってることってただのアンチと同じだけどな
737 :
名無し娘。 : 2001/04/15(日) 18:19 ID:adlecqKY
おっとっとレスがあったか。 しかしあんな風に名無しで人を罵倒したりすることって結構やってるのか? お前だってわかるやり方でやってるときは別にして。
738 :
マングース西浦 : 2001/04/15(日) 19:10 ID:rwr.2p3s
ただ「死ね」の二文字を書いたことが 罵倒したって言うほどのことなんですか? というか今は何をする時も名無しですよここ以外は
739 :
大竹しのぶ : 2001/04/15(日) 20:40 ID:adlecqKY
そうか。でも名無しで書かれたらやっぱりイイ気はしないもんだぜ。俺が言うのも変な話だけどな。 まあ結局最初の質問から何一つまともに回答をもらえてないんだが、こっちで適当に解釈するか それとあんたのことすごく好きだって連中は今でも結構多いぜ この世からいなくなったら、俺も寂しく思うだろうな
740 :
マングース西浦 : 2001/04/15(日) 23:23 ID:Ts9JHT52
なんだろうな…何がしたいのか分からないぞ… 別にどうでもいいことなのに
741 :
名無し娘。 : 2001/04/15(日) 23:54 ID:c6Ls7paw
なんでもやってみたらいいんじゃないかね。
742 :
名無し娘。 : 2001/04/16(月) 00:15 ID:8PjtzpME
大竹は手レトに 聖人君子になれ とでも言いたいのかね 名無しで煽ろうが何しようが勝手のはずなんだがな 好きにやるだけだろ 枷にはめようとしてる様で見ててきもいよ
743 :
マングース西浦 : 2001/04/16(月) 00:51 ID:dHIbG.os
>>741 全くの意味不明
マレーシア料理でお勧めしたいのは、
ロティチャンナという料理です
マレーシアに行ったら探してみて下さい
少し探す必要がありますが…
すぐに見つかるものだと、クイテャオタンというのがおいしかった
744 :
大竹しのぶ : 2001/04/16(月) 08:31 ID:TLtfpj8w
745 :
名無し閣。 : 2001/04/16(月) 08:53 ID:DtNq2Bzs
まあ、適当にやってくれ。俺も適当に読ませてもらう。
746 :
マングース西浦 : 2001/04/16(月) 23:35 ID:wdcTYzxU
>>744 私がHNを騙ってたっていうことですか?
名無しで煽ってたっていうことですか?
どっちにしても違いますけど
>>745 なるほど、レスも適当なら読むのも適当ですか
誰も敵わないなそりゃ
あんたの為にやってるわけじゃないですよ
勘違いしないでくださいね
そろそろ続きを書かなくては
747 :
名無し娘。 : 2001/04/17(火) 03:05 ID:hyH9QHzU
いつも楽しく読ませて頂いてます。 帰国されてからも変わらずお元気なようで何よりです。 ところで、マングース西浦というHNは将棋の日浦六段と何か関係あるのでしょうか? 彼は羽生(ハブ)という人に強いので「マングース」というあだ名がついているようですが…
748 :
名無し娘。 : 2001/04/17(火) 19:01 ID:wVeWpkwc
あの手レトにマジレスさせる名無し閣下はそれだけ偉大ってことかも。 こんなこと書くと手レトに口撃されそうだ。 でもどんな風に言われるのかちょっと期待してる自分・・・。 放置しないでね。
749 :
名無し閣。 : 2001/04/18(水) 13:08 ID:Hy7otQTk
>>746 あんたのためじゃない、当たり前だろ!
ただ、義務感だけでやってもね、っておもったりして。
所詮どんなに偉大なコテハンも、井の中の蛙にすぎないのだよ。
マングース君。
まあ、小説スレを荒らすのは本意ではないのでやめときます。
750 :
名無し娘。 : 2001/04/18(水) 20:28 ID:sSEKLCxE
さあ面白くなってきたぞ 俺のためにやりあってくれ二人とも
751 :
名無し娘。 : 2001/04/18(水) 23:20 ID:ukPwvjIs
749は偽物でしょ? いくらなんでも頭悪すぎるよ。 こんなこといちいち書き込むことかしらん? こりゃ頭悪いかよっぽどマングースのことが嫌いかどっちかだね。
752 :
名無し娘。 : 2001/04/20(金) 02:56 ID:MrHNO/T2
羊はどれくらいで消えるのかわからないけど一応保全書き込みしとくかな。 狼だと2日書き込みないと消えることあるし。
753 :
名無し娘。 :2001/04/21(土) 09:07 ID:Dm3fSFw.
ahozen
754 :
名無し娘。 :2001/04/21(土) 21:04 ID:z3bLAVwM
奴は来てないのか?
引き際(めんどくさい)
756 :
N :2001/04/22(日) 07:08 ID:TjUQtCVA
...
757 :
名無し娘。 :2001/04/22(日) 09:47 ID:ikhg5.x.
こんな終わり方って嫌すぎ
758 :
名無し娘。 :2001/04/22(日) 23:55 ID:4XrG60ik
めんどくさいと言わずにぜひ続きを。待っています。
759 :
名無し娘。 :2001/04/23(月) 00:27 ID:HtaZe4E6
やる気がねーやつの作品を一生懸命読んでたのかと思うと腹が立つ。
760 :
名無し娘。 :2001/04/23(月) 02:11 ID:Q0P/XJgg
ここの作者随分横柄だなぁ・・・ 人間もっと謙虚になるべきだべ!!
761 :
名無し娘。 :2001/04/23(月) 02:34 ID:IvivTac6
まあ、他人が何と言おうともここの作者は自分の好きなようにするだろうさ 別にいいんじゃない?
762 :
名無し娘。 :2001/04/23(月) 22:22 ID:iL2XqEKk
つづき期待して、これまで待ってきたけど作者が書く気ないんじゃあ、もうしょうがないか。 ブックマークからも消す事にしよう。
うざっ鯛と腐っても鯛は似ているようで似ていない 鯛は煮て食べるものだ似て食べてはいけない それは料理では無いからだ
764 :
名無し娘。 :2001/04/24(火) 00:54 ID:T4N3l6BA
プペラ
765 :
760 :2001/04/24(火) 01:15 ID:wUNWZXCU
>>763 あんたやっぱおもろいわ!!態度がちょっと悪いのが気になるけど
、センスはかなりいいね!俺はあんたを応援するぜ。
766 :
名無し娘。 :2001/04/24(火) 01:21 ID:lu0uHlUU
ってか、もう小説書く気がないんだろ。 でも気になってここには、来るんだね。
767 :
名無し娘。 :2001/04/24(火) 01:25 ID:gunfuUCE
マングースも帰国後は態度が豹変してしまった。 前は感想レスに対して、丁寧に「ありがとうございます」なんて返して いたのに・・・。
鳥を鳥カゴに閉じこめちゃいけないのさ。
∀は小説版が最高だな ロランがハリーを殺すし、ディアナがグエンを殺す ディアナは死ぬし、泣き虫女や顔にペイントしたキチガイ男は最初から出てこない こっちのほうが富野らしい テレビでも皆殺ししてくれればよかったのにな 人が死なないガンダムとかいうレッテルを貼られてうざったかったことだろう 小生は、絶好調である! 小説では月光蝶出てきたかな? 小説でギレン総統の演説とかクワトロの演説とかまで出てきたのは驚いたぜ
マレーシアに小説本六冊持っていったけどあっちで全部読み切って 六冊じゃ足りなかった
アルジャーノンに花束をも読んだ なんて救いの無い話なんだ そうとしか思えなかった
夏にもマレーシアに行くだろう
その次にマレーシアに行く時はおそらく年単位になる それが何を意味するのか分かるだろうか? 全てはロールプレイだ世の中は全てロールプレイングゲームなんだ でも私はロールプレイングゲームを好きではない
初めてドラゴンクエストをやったのはおそらく小二のころ 最初の場面で王様のことを鎧だと思い込んで それを取ろうとして一日以上の時間を浪費した
Oヘンリ短篇集も読んだ そして充分パクらせてもらった
子供の頃読んで感動したおそ松くんの1エピソード 前科者であるチビ太を追い回すイヤミ チビ太は銀行強盗の過去を利用して 金庫に閉じ込められた想い人の命を救う しかしそれをイヤミは見て見ぬふりをして見逃す これはOヘンリの短編のパクリなのだ 子供の頃そんなことには気付かなかった
Oヘンリの短編、「よみがえった改心」を読むまでそんなことは知らなかった
800まで到達すればこのスレッドは終わるのだろう 終われば全て消える
知識は周囲の人との間に楔を打ち込む
これはアルジャーノンに花束をのパクリ
堂々と好きな漫画家を問われて赤塚不二夫と答えることは出来ない
どうせ現実から離れるのならば、 出来るだけ離れてしまおうと思うのは私だけだろうか?
現実とは一体何だろう 現実とは現世のことか? だとしたら私にとってそれは遠いものになりつつある
784 :
名無し娘。 :2001/04/24(火) 02:03 ID:7HT/T5N2
マングース西浦 やつれたな… 魅力がなくなった…
なぜだろうカントリー娘の曲がステキに思えてしょうがない 最初歌番組で見た時は同情の目でしか見れなかったのに
確かにやつれただろう 帰国してから10kg近く減量した
もしこれからホームステイなどをしてみる予定がある人がいるのなら 忠告しようホストファミリーの人は 「食べさせなければ死ぬ」 という強迫観念に支配されている それを解くのが第一の道だ
788 :
名無し娘。 :2001/04/24(火) 02:10 ID:7HT/T5N2
>>マン 太って、やせたのか?
現地の人は「美味しいカニ料理のところに行こう」 と私に行った確かにそれは本当だった しかし、突然カニを口にしながら彼女は口を開いた 「ここはかつてマレーシアに侵攻した日本軍が駐留した場所なんだ」
「今でもこのあたりじゃ日本軍に首を切られたマレーシア人の幽霊が出るんだよ」 「まあ昔の話だ君にはカンケイの無い話しだけどね」 関係無いはずがないしかし私は学校でそんなことを習った覚えは無い
私は何も反論出来なかったそれは私に知識が無かったから 隣にいた台湾人まで口を開いた 「台湾にも日本兵の話は伝わっているわ でもあなたは悪い日本人ではないでしょう? 今私達を攻撃しようとあなたは思う?」 この質問に対して思わず生唾を飲んだ自分を嫌悪した
日本の日本史教育はおかしいこれは現地で実感したことだ 「日本の歴史教育は自虐史観」 これは考え方の一つとして受け止めていたことだが、 イギリスの歴史教育ではジョージワシントンは 反乱軍の頭目に過ぎないように、 どの国でもジブンの国を中心に据えている 日本人は自分の国に誇りを持たなくてはならない 持つだけでは足りないその根拠も持っていなければ
しかしそんなことはどうでもいいことだ 最近は後藤真希がかわいく思えて仕方が無い 周りが笑っているのに一人だけ素の顔でいるのが面白く思えて仕方が無い
集団の一人でありながら集団の行く末に興味が無い それは誰にでも出来ることではないだろう
集団に埋没しない後藤真希はソロの素質があるのだろう
集団に埋没していないと不安を感じる それが凡人の常識なのかもしれない 常識に捕らわれないものを天才、もしくは世捨て人と呼ぶ
後藤真希が前者で、私は後者だろう
そして平家みちよも天才
天才と世捨て人の境界は
何だろう
匣に入ってるか否か
もうその名前を捨てるのなら「さよなら」と言おう。 まだ捨てないのであれば「またな」と言おう。 どちらにせよ、世界は回り続けるよ。
803 :
N :2001/04/24(火) 07:40 ID:yQ//0grQ
at least -- there is no front at genius It is a free coward.
804 :
名無し娘。 :2001/04/24(火) 09:55 ID:T4N3l6BA
マングース西浦のオナニー・スレと化してる(W
805 :
名無し娘。 :2001/04/24(火) 10:30 ID:NyQxkkCU
>嫌いなものは自分 >嫌いなものはこの世からなくなればいいのに 自分が嫌になったとき、私は人を好きになってみる。 そうすれば、その人に自分も近づける気がするから。
うざったい とはっきり書かないと分からないのかねこいつは?
マレー風焼き魚を OTAK OTAK と言います
809 :
名無し娘。 :2001/04/25(水) 08:11 ID:9YaHrAQ.
810 :
名無し娘。 :2001/04/25(水) 12:56 ID:YTQVdFyk
>>807 誰に言ってるのか知らないが、はっきり言った方がいいよ。
811 :
名無し娘。 :2001/04/25(水) 19:45 ID:L03YX4tg
812 :
ハブ南山 :2001/04/25(水) 22:07 ID:5fDaaKt6
マングースは俺が倒した。 もう奴はこの世にいない。
騙るやつなんているわけがないだろうに… もう保全する必要は無いので書かないで下さい 気が向いた時に続けます
814 :
N :2001/04/26(木) 00:30 ID:FWYhL/Ck
As usual, if gentle, there is nothing.
>>813 他人のHNを無断使用するな
とはっきり書かないと分からないのかねこいつは?
>>815 下らない…やる気が失せる…
なんでこうも思った通りのことしか出来ないんだろう…
もう少しひねったことをしてほしかったですよ
817 :
名無し娘。 :2001/04/26(木) 08:31 ID:gyR0Kq8I
>>816 ほんとにひねったことしたらうざがるくせに
818 :
名無し娘。 :2001/04/26(木) 10:57 ID:KxoXEwkg
>>813 >もう保全する必要は無いので書かないで下さい
みんなもうやめようぜ。
もう800越えてるしな。
819 :
名無し娘。 :2001/04/29(日) 02:28 ID:C9iaIQOU
.
。。。。。。。。
821 :
名無し娘。 :2001/05/04(金) 19:11 ID:726h7KFI
.
822 :
名無し娘 :2001/05/06(日) 19:16 ID:C63QzINA
フ ァ イ ナ ル フ ラ | | | | | | | | ッ シ ュ !
823 :
名無し娘。 :2001/05/06(日) 19:31 ID:5h5vjM7.
>>822 馬鹿か?
作者がやる気のねえスレ保全なんかすんじゃねえよ
おとなしくdat逝け
824 :
名無し娘。 :2001/05/08(火) 06:47 ID:AKtB.8/w
.
825 :
名無し娘。 :2001/05/09(水) 18:42 ID:vcOTRayc
a
826 :
名無し娘。 :2001/05/11(金) 06:17 ID:4Anl0meA
.
827 :
名無し娘。 :2001/05/14(月) 02:53 ID:wiKK1Xwo
.
828 :
名無し娘。 :2001/05/16(水) 03:11 ID:dma7V2UA
.
829 :
名無し娘。 :2001/05/19(土) 12:31 ID:YJj/R/a.
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830 :
名無し娘。 :2001/05/22(火) 08:54 ID:6nFlBWqw
hozenshitemita
831 :
名無し娘。 :2001/05/25(金) 21:51 ID:zGUMx81c
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832 :
名無し娘。 :2001/05/26(土) 09:28 ID:U2NrSEds
保全止めろ。削除依頼は出してある。
833 :
名無し娘。 :
2001/05/29(火) 09:24 ID:HKcIXIyA hozenshitemita