1 :
吟遊詩人 :
2000/12/15(金) 17:30 ID:W/0IYYD.
2 :
名無し娘。 : 2000/12/15(金) 18:15 ID:MQK2QdqQ
乱れ雪月花のの
3 :
吟遊詩人 : 2000/12/15(金) 20:38 ID:aZDN2Zpw
ゼティマ本城、円卓の間。 相変わらず、中澤と保田がペチャクチャ喋っている。 「石川が倒れたんやってな。」 「うん。しゅうさんの体を調べに行って、なにか大きな音がしたから、 たいせーさんが見に行ったら、そこに倒れていたって。」 「一体何やろ?」 「わからない。でも多分呪いのせいだろうって。」 「うわー。めっちゃヤバいやん。どうすんねん。」 「困ったよね……。石川はさっきから、 ずっとうなされたまま気絶してるって。」 「ふーん。」 「そういえば吉澤達はどうなったん?」 「さぁ?連絡なし。」 「ふ〜ん。ま、ええか。」 当然この二人は、今ひとみと圭織が大ピンチを迎えていることなど知る由もない。
4 :
吟遊詩人 : 2000/12/15(金) 20:38 ID:aZDN2Zpw
「まったく、こんなときにつんくさんは何しとんねん。」 「さぁねぇ?しゅうさんの件が在っても、 『そっちに任せる』って言って帰って来ないし。 大体、石川に何の護衛もつけないで一人で帰らせるなんてどうかしてるわよ。」 「まぁ、石川なら大丈夫やろうけどな。」 「そりゃそうだけど……。」 保田は黙りこむ。おかしい。 一体つんくは何を考えているのか。 実際梨華は、エイベックスからゼティマまで、 瞬間移動で帰って来ているのだ。 魔物には、会い様がない。 つんくはそれを知っていて、 梨華を一人で帰したのだが。 保田にそんなことは、想像もつかない。 第一今日は先ほど以来、ほとんど梨華と話をしていない。
5 :
吟遊詩人 : 2000/12/15(金) 20:39 ID:aZDN2Zpw
「石川は今部屋で寝とるんやろ?」 「麻美が看病してる。」 「……で?ごっちんは。」 「やっと寝た。」 「……まったく。どうなっとんねん。」 中澤はそう言うと、懐から酒の小瓶を取り出し、 一気に煽った。 「また……。」 保田が憤慨する。 「もう夜も遅いんや。寝る前に一杯ぐらい……な?」 「……ハァ。」 保田は溜め息をついた。
6 :
吟遊詩人 : 2000/12/16(土) 16:28 ID:TGMMI5Yw
ドンドン。 ガチャガチャ。 キンキン、キーン。 ちゅどーん。 どっしーん。 ギャー! うわー! ……以上、全てゼティマとギザの戦闘の効果音である。 真夜中だと言うのに、 大きな音で鳴り響いている。
7 :
吟遊詩人 : 2000/12/16(土) 16:28 ID:TGMMI5Yw
ココナッツのメンバーの部屋の約1名、 アヤカは、眠れずにいた。 ダニエルもレフアもミカも、 大きないびきを掻いて寝ていたが、 どうしてもアヤカは眠れずにいた。 戦いの音がうるさすぎる。 なぜ私達の近くで戦いを行う? なぜ他でやらない? 「……fuck off……。」 アヤカはムクッと起き上がると、 寝巻きのまま寝室を出て、厨房へと向かった。
8 :
吟遊詩人 : 2000/12/16(土) 16:28 ID:TGMMI5Yw
厨房。 中学生では、ない。 程度が低いことでも、ない。 調理をする場所だ。 食器を洗う台の下には、 扉があり、その裏には、包丁がかけられている。 しかしそんないくらかの包丁の中に、 一本、鞘に収まった、 明らかに長い得物が在る。 アヤカの腰から地面に付くほどの長さだ。 それは、東洋製、呪いの魔剣鍛冶、 村正の太刀だった。
9 :
吟遊詩人 : 2000/12/16(土) 16:29 ID:TGMMI5Yw
アヤカは村正を取り出すと、 それを左手に持ち、 ゆっくりと厨房、そして店を出た。 スタスタとゆっくり、 戦場へと向かって歩いて行く。 戦いの騒音で、その場はそーとーうるさかったはずなのだ。 しかし、アヤカの回りだけは、妙に静かな感じがした。 青い月灯りが、頬を照らしていた。
10 :
吟遊詩人 : 2000/12/17(日) 01:26 ID:GIPpXnvM
「いちーちゃん……。」 花畑だ。真希は、そこをゆっくりと走っている。 誰かを追いかけて。 追いかけているのは、そう。市井だ。 追いかけても、追いかけても、追いつけない。 市井の顔が見えない。 しかし、それはそれで至福の時間。 いつまでも続いていればいいのに……。 そう思う時、突然、市井は立ち止まった。 「つーかまえったっ!!」 真希は、市井に後ろからガバッと抱きついた。 「真希〜〜。」 市井がゆっくりと振り帰る。 しかし……。 「キャァァァァァッッッ!!!!!」 真希は悲鳴を上げた。 市井が振り返ると同時に、市井の姿は突然ガラッと崩れ去る。 そして、何故か中からは、しゅうが出てくる。 同時に、背景がお花畑から三途の川へと変化。 「真希〜〜〜〜!!!!」 しゅうが、ブチュウっと真希にキスをしようとする。 怖い。本気で怖い。 「イヤァァァァァァァッッ!!」
11 :
吟遊詩人 : 2000/12/17(日) 01:27 ID:GIPpXnvM
真希はガバッとベッドから起きあがった。 真っ暗だ。もう真夜中。 先ほどから寝ていたのだが、 幸せな夢が、いつのまにか悪夢へ。 「……夢か。」 恐ろしい世界から逃げおうせたことに安堵のため息を漏らす。 「……。」 ふと、回りを見渡す。 亜依が、寝ている。 隣に寄り添うように、希美(注:稲葉に城へ連れてこられた)が寝ている。 少し離れて、鈴音が死にそうな顔で寝ている。 枕元に、去年死んだ友達が見えるのは気のせいだろうか。 ともかく鈴音からも少し離れたところでは、 アミと伊吹が、大いびきを掻いて寝ている。 全員、真希のグチの被害者だ。 「……鬱だ。寝よう。」 真希は再び布団を被った。
12 :
名無し読者 : 2000/12/17(日) 07:09 ID:ZPlh7F96
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
13 :
名無し娘。 : 2000/12/18(月) 01:07 ID:IPFfCBj2
見っけ♪
14 :
吟遊詩人 : 2000/12/21(木) 23:28 ID:2EbYPsTk
「……全軍突撃。」 ひとみは諦めたように指示を出した。 もはや、それ以外にとる行動がない。 逃げた所で、ふり切れはしない。 まして、戦いに民を巻き込むことになる。 覚悟を決めていた。 死ぬしかない、と。
15 :
吟遊詩人 : 2000/12/21(木) 23:28 ID:2EbYPsTk
先ほどから圭織の姿が見えない。 もう、戦死してしまったのか。 わからない。しかし、どうしようもない。 「15年か……短い人生だったな……。」 ひとみの誕生日から、まだ、一ヶ月も経っていなかった。 ひとみは、馬に蹴りを入れると、 敵軍へと向かって突っ込んで行った。 しかし……。
16 :
吟遊詩人 : 2000/12/21(木) 23:28 ID:2EbYPsTk
ガツンという音と共に、 ひとみは吹き飛ばされ、落馬した。 頭がくらくらする。 何が起こったのかわからない。 ふと回りを見渡すと、 何人もの兵士が倒れている。 ゼティマ、ギザを問わず、だ。
17 :
吟遊詩人 : 2000/12/21(木) 23:29 ID:2EbYPsTk
「……飯田さん!!」 ふと、圭織が倒れているのを発見した。 ひとみは慌ててかけより、 抱き起こす。見た所、外傷はない。 脈も、ある。だが、気絶している。 「飯田さん!!一体どうしたんですか!!」 「……ぁ……。」 虚ろな目つきで圭織は、 その大きな瞳を開けた。 「……ぅ……。」 「飯田さん!!一体何が……!! ……!!」 ふと、自分の後ろに、おぞましい気配を感じた。 振り返ろうとした時、女の声が聞こえてきた。 「安眠妨害逝ってよし!!」
18 :
名無し読者 : 2000/12/23(土) 06:51 ID:L6MORGzc
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
19 :
吟遊詩人 : 2000/12/25(月) 18:00 ID:hTJG9y.Y
刀の峰が、ひとみの頭へと振り下ろされた。 「!!」 辛うじてそれを交わすひとみ。 刀を振り下ろした女を見る。 ……アヤカだ。 「あなたはラーメン屋の……。」 言いかけたとき、 ギザの兵がアヤカへと飛びかかった。 しかし刹那、アヤカはカウンター、 刀の柄で殴り返す。 兵は、遥か遠くまで吹っ飛ぶ。 「……一体何が……。」 ひとみは言った。
20 :
吟遊詩人 : 2000/12/25(月) 18:00 ID:hTJG9y.Y
それを聞いてか、 アヤカがポツリと呟いた。 「I DECIDED I WOULD NEVER KILL A PEASON. BUT I NEVER FORGIVE TO MAKE ME FEEL SO BAD. I BREAK YOU INTO BROKEN. YOU'RE FRUSTRATION FOR ME.」 「???」 何を言っているのかが理解できない。 「FUCK U!!」 そう言うと同時に、アヤカは峰打ちの村正を振り下ろした。 「!!」 己の剣でそれを受けとめる。
21 :
吟遊詩人 : 2000/12/25(月) 18:01 ID:hTJG9y.Y
「……一体あなたは……。」 ひとみは頭のどこかで悟っていた。 勝てるはずがない、と。 一体どうすれば良いのか。 ますます、頭の中は混乱していた。
22 :
名無し読者 : 2000/12/26(火) 06:36 ID:yTwyxy0U
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
23 :
吟遊詩人 : 2000/12/28(木) 14:30 ID:4JLCt1k.
「なんか……ますますうるさくなってきたね……。」 なっちは言った。 先ほどまでに比べ、なおのこと外はうるさくなっている。 (アヤカのせいだ) なっちも紗耶香も、眠れずにいた。 「戦争……か。」 なっちは言う。 半開きのその目は、どこか悲しげだ。 紗耶香はなっちに背を向けたまま寝っころがっている。
24 :
吟遊詩人 : 2000/12/28(木) 14:31 ID:4JLCt1k.
「紗耶香……人を殺したこと……ある?」 なっちは紗耶香の背中に向かって言った。 「……あるよ。 旅をはじめて長いもん。 傭兵として戦争に参加したことだってあるし。 ……一人や二人……なんて話じゃないし。」 振り向かずに、紗耶香は言う。
25 :
吟遊詩人 : 2000/12/28(木) 14:31 ID:4JLCt1k.
「はじめて人を殺したのは……5、6年前だったかな……。」
26 :
名無し読者 : 2000/12/29(金) 06:43 ID:MhB77B/I
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
27 :
吟遊詩人 : 2001/01/04(木) 11:18 ID:JhBWho.2
ちょっと待ってね。 続き書いたのに消失して書き直しだから。 ちょっと番外編っぽい内容に逝く予定。
28 :
吟遊詩人 : 2001/01/04(木) 12:23 ID:LETU0QSM
昔、市井はソニー帝国の、 エーピックのあたりにある農村に住んでいたんだ。 お母さんと二人でね。 その頃の市井は、 はっきり言って、体が弱かった。 喘息を持っていたから、 ちょっと走っただけで、 息も切れちゃったし。 だから、近所の子供たちとも遊べなかったんだ。 田舎だから、運動以外に遊びごとなんてないからね。 だから、友達は一人もいなかった。
29 :
吟遊詩人 : 2001/01/04(木) 12:23 ID:LETU0QSM
いつだかに、 女の人が村に引っ越してきたんだ。 名前は、広瀬香美って言った。 昔どこかの国で、騎士をやっていたらしいんだ。 ……市井だけに教えてくれたんだけど、 ある事情があったんだって。 その事情って言うのは、後で話すよ。
30 :
吟遊詩人 : 2001/01/04(木) 12:23 ID:LETU0QSM
広瀬さんは、 元騎士で、東洋剣術の使い手だった。 だから村で、道場を開いたんだ。 流派は、『古蔭一刀流』。 でも、道場に入門する人はいなかった。 平和な村だったからね。 治安も良かったし。 剣術を覚えようとする農民なんていなかった。
31 :
吟遊詩人 : 2001/01/04(木) 12:23 ID:LETU0QSM
そしたら、お母さんが、 市井に剣術を習えって言ったんだよ。 体が弱い子だったから、体力付けないと、って。 嫌だったよ。嫌だったけど、とりあえず習うことにした。 その頃友達がいなかったから、 何かしていないと毎日暇だったし。
32 :
吟遊詩人 : 2001/01/04(木) 12:24 ID:LETU0QSM
広瀬さんは優しい人だったよ。 そうとう腕の立つ剣士だったのに、 全然運動のできない市井に、 一から付き合ってくれた。 少しずつ、少しずつ、 市井が運動苦手なのを克服できるように、 師事してくれた。
33 :
吟遊詩人 : 2001/01/04(木) 12:24 ID:LETU0QSM
それから一年くらい。 始めのうちは辛かったけど、 それでも市井は、地道に修練を重ねた。 あれほどまでひたむきに何かに打ちこんだのは、 初めてだった気がする。 ……まぁ、割りとまじめなお子様だったんだね。 で、前前が嘘みたいに、 市井には体力が付いていった。
34 :
吟遊詩人 : 2001/01/04(木) 12:24 ID:LETU0QSM
それからは、 本格的な剣術の修行に入っていったよ。 広瀬さんはさすがに達人だったし、 優しく教えてくれたから、 かなりのスピードで上達していったよ。 広瀬さんも驚いていたけど。 お母さんは喜んでたね。 あんな病弱だったさやが、 ここまで変わるものか、ってね。 そう言う意味で、 市井も、お母さんも、 広瀬さんには心から感謝していた。
35 :
吟遊詩人 : 2001/01/04(木) 12:25 ID:LETU0QSM
本日はここまで。
36 :
名無し読者 : 2001/01/05(金) 06:38 ID:6qCGIgHE
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
37 :
吟遊詩人 : 2001/01/06(土) 01:18 ID:30hRL5jc
入門してから2年経った。 11歳だったかな。 市井は子供なのに、 相当強かった。 でも、奥手な性格はあまり変わっていなかったし、 今度は剣術に没頭していたから、 相変わらず友達はいなかった。 でも、それで良かった。 いつまでもこうやって、 師匠と修行を続けて、 もっと強くなりたいって、 思うようになっていた。
38 :
吟遊詩人 : 2001/01/06(土) 01:18 ID:30hRL5jc
でも、そんな日常は、突然崩れ去ったんだ。 ある日突然、村に軍隊がやってきた。 ビクター騎士団だった。 広瀬さんを探しているみたいだった。 その日広瀬さんは、 たまたま村の外へ出かけていたんだ。 近くの洞窟に住み付いた魔物の群れが、 村の畑を荒らすからって言って、退治にね。 だから、留守だった。 ただ事じゃない事はすぐにわかった。 村の人たちは、広瀬さんを気に入っていたから、 そんな人知らないって、隠したんだ。
39 :
吟遊詩人 : 2001/01/06(土) 01:19 ID:30hRL5jc
市井は、こっそり村を抜け出して、 洞窟へ向かった。 広瀬さんに、逃げるように伝えようとおもったんだ、 洞窟の中の魔物と戦うのは始めてだったけど、 ハッキリ言って楽勝だった。 刀なんて持ってなくて、 しないで戦ってた 洞窟の最深部に着いたら、 広瀬さんは大きな魔物と戦っていた。 あれは、確かどーも君だったと思うな。 あの、茶色くて、でっかいヤツ。 結構強い魔物として知られているんだけど、 広瀬さんは完全に押していて、 今にも止めを刺すところだった。
40 :
吟遊詩人 : 2001/01/06(土) 01:19 ID:30hRL5jc
黙って見ていたよ。 もう、勝利は明らかだったから。 でも、そこでひとつだけ、 計算違いがあった。 後ろから……ビクターの兵が市井のことをつけていたんだ。 村を抜け出す時に見つかっていたんだね。 3人だけだったけど、 兵達は突然市井の後ろから飛び出して、 広瀬さんに斬りかかったんだ。
41 :
吟遊詩人 : 2001/01/06(土) 01:19 ID:30hRL5jc
不意を突かれた広瀬さんに、 兵士達の攻撃はマトモに入った。 どーも君に気を取られていたんだ。 ……あの時の広瀬さんの、 傷口から噴出した血の勢いは、 今でも忘れられないよ。 血って、あんなにも激しく流れるものだとは思っていなかった。 広瀬さんはその場に倒れ込んだ。 ……ショックだったよ。 目の前で師匠がズタズタにされたんだからね。
42 :
吟遊詩人 : 2001/01/06(土) 01:20 ID:30hRL5jc
ここまで。
43 :
名無し読者 : 2001/01/06(土) 07:19 ID:gj6d8Xns
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
44 :
吟遊詩人 : 2001/01/09(火) 16:29 ID:eMHFvRvI
市井は広瀬さんの体に駆け寄った。 広瀬さんはチラッと市井のことを見た。 あんな傷を負っているのに、 すごく、優しい目で。 でも、市井が声をかけるより早く、 広瀬さんは事切れた。 死んだのかそうでないのか、 市井にはとっさにはわからなかった。 でも、そんなに冷静でいられるはずもないからね。 市井は逆上した。 逆上して、広瀬さんが落とした刀を拾って、 広瀬さんを斬った兵士たちに斬りかかった。
45 :
吟遊詩人 : 2001/01/09(火) 16:29 ID:eMHFvRvI
兵士達は、どーも君を切り捨てて、 今にも帰ろうとしているところだった。 開いては油断していたから、 三人のうちの一人を、人たちで斬り捨てる事ができた。 残りの二人も、剣を抜いて襲い掛かってきたけど、 市井の敵じゃなかった。 ……アッと言う間に、斬り捨てた。 即死だったかもね。 とにかくそのとき市井は、 始めて人を殺した。
46 :
吟遊詩人 : 2001/01/09(火) 16:29 ID:eMHFvRvI
ここまで
47 :
名無し読者 : 2001/01/10(水) 06:57 ID:DD2JYiGg
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
48 :
吟遊詩人 : 2001/01/10(水) 16:57 ID:p9bT0jNY
事が済んだ時には、 広瀬さんはもう息をしていなかった。 体を外に運び出そうかとも思ったんだけどね、 そんな事できる精神状態じゃなかった。 市井は血の付いた刀を鞘に閉って脇に抱えて、 泣きながら、洞窟をまた登っていったよ。 親玉が死んだからか、 魔物の気配はしなかったな。 帰り道では。
49 :
吟遊詩人 : 2001/01/10(水) 16:57 ID:p9bT0jNY
外に出た。 晴れてて、すごく温かい日でね。 日差しが眩しすぎて、 なんだかますます悲しくなって来たのを覚えている。 村へ戻ってこっそり物陰から軍隊の集まりを見てみるとね、 もう帰る準備をして入るみたいだった。 三人組が市井の事を本部に伝えてなかったみたいだ。 それは、幸いだったよ。 でも、広瀬さんが死んじゃった以上、 もう、あまり関係のない事かもしれないかな。
50 :
吟遊詩人 : 2001/01/10(水) 16:57 ID:p9bT0jNY
広瀬さんの刀は、その日ずっと、 部屋の隅っこに隠しておいた。 村の人達は、 広瀬さんは軍が村にいることに気が付いて逃げたんだと思っていたみたい。 その日の夜も、次の日の朝も帰ってこなかったけど、 魔物だけはその日からぱったり出なくなったからね。 魔物だけ倒して、また遠くへいったんだって。
51 :
吟遊詩人 : 2001/01/10(水) 16:57 ID:p9bT0jNY
市井は、広瀬さんが人を殺したなんて、 信じられなかった。 自分だってつい前の日に、 男三人も殺しているのにね。 どうして広瀬さんがこの村に来たのかはわからなかったけれど、 市井だけが広瀬さんの最期を知っているんだってことだけは、 自覚していた。もちろん、誰にも、 お母さんにさえも、その事は話さなかった。
52 :
吟遊詩人 : 2001/01/10(水) 16:58 ID:p9bT0jNY
ここまで。
53 :
名無し読者 : 2001/01/11(木) 07:13 ID:/.PACMcM
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
54 :
吟遊詩人 : 2001/01/13(土) 17:28 ID:yIpYTRW2
広瀬さんが切られた次の日の昼間、 市井はまた洞窟にいった。 魔物はもう、全く気配を消していた。 別の居場所を探して出ていったんだろうね。 市井は、広瀬さんの死体があるはずのところまで、 刀を持って、歩いていった。 埋葬をするつもりだったんだよ。
55 :
吟遊詩人 : 2001/01/13(土) 17:28 ID:yIpYTRW2
……でも、信じられない事に、 広瀬さんは生きていたんだ。 傷だらけの体で、座り込んでいた。 鋭い目つきだった。 精一杯命をつなぎとめる事に、 集中していたんだと思う。 傷も、止血されていた。 広瀬さんは市井に気が付くと、 「やっぱり来たね。」 って言って、 ニッコリ笑った。
56 :
吟遊詩人 : 2001/01/13(土) 17:28 ID:yIpYTRW2
……正直あの時、 洞窟のフロアはそうとう臭かった気がする。 血の匂いと、腐敗臭と。 ビクターの兵士と、 どーも君の死体は、 たしかにそこにあったからね。 広瀬さんはよくも、 あんな環境で、あんな体で、 一日も耐えていられたと思うよ。
57 :
名無し読者 : 2001/01/14(日) 07:20 ID:Fumfy5B6
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
58 :
名も無き読者 :
2001/01/14(日) 08:01 ID:C7ZTn/Z6 師匠、生きてたんだ・・・ 市井ちゃんよかったね