1 :
名無し娘。 :
娘。にかこつけて遊びましょ。
2 :
名無し娘。 : 2000/12/14(木) 15:18 ID:???
さっきまで所々に黒い地肌を見せていた田畑は、列車が山に近付くにつれて、白い雪で覆われた大地
との境界線を徐々に失っていった。
流れていく景色は、線路脇の灯火が照らし出す若干の起伏を見せる雪原の白さと、その向こうの暗闇
だけだったが、私にとっては決して退屈なものでは無かった。
薄暗い車内、間近な雪しか見えない外、そしてそれらに挟まれた窓硝子。そこには、車窓の下に設け
られた出っ張りに肘を置いた私と、向かい側の席に座る少女が映っている。
前の停車駅からこの車両に乗り込んできたその少女は、圭織と名乗った。
硝子を介して圭織の様子を窺うと、彼女は赤い網に包まれていた蜜柑を一つ取り出し、お世辞にも器
用とは言えない手付きで皮を剥き始めるところだった。
「お一ついかがですか?」
長い黒髪に包まれた白く整った顔。寒さで凍える事など無さそうな、赤い唇が少し笑っている。
私は礼を言って圭織から蜜柑を受取った。案に外して綺麗に剥かれたそれは、大輪の菊の花を思わせた。
3 :
名無し娘。 : 2000/12/14(木) 15:25 ID:???
圭織は、歌手をしていたと言った。私については牧場で勤めている、とだけ言っておいた。牧場と聞いた
途端に彼女は目を輝かせ、しきりと私の話を聞きたがったが、話すほどの事は無い、とキツくならない程
度に断った。正直なところ、話して聞かせたい気持ちも有ったのだが、それ以上に圭織の話を私は聞きた
かったのだ。
圭織は語り始めた。かつては女性ボーカルグループの一員だった事、デビュー時の苦労話、追加メンバ
ーとの軋轢、仲間の脱退、初のミリオンセラー、続く脱退、更に追加されるメンバー、三度の脱退騒動、そ
して解散──。未だ二十歳にもならない彼女の波乱万丈な数年間は非常に興味深かったが、それ以上
に、くるくると変わる彼女の表情に私は大きく惹きつけられていた。
楽しかった事を話す時は腕を振り上げ、苦しかった時を思い出してはさも深刻そうに眉間に皺を寄せ、悲
しかった事を回想している時は目に涙さえ滲ませていた。
持参してきた文庫本「遠野物語」は、既に不要な物となっていた。
4 :
名無し娘。 : 2000/12/14(木) 15:30 ID:???
ふと会話が途切れた。車内の冷えた空気が頬を刺す。
圭織は先程までの快活さを潜め、両手を腿の上にきっちりと揃え、ただ静かに座っていた。伏せ気味の
瞼、長い睫毛、少し赤みを帯びた目尻、濃過ぎず薄過ぎない目下の隈。その目がゆっくりと上げられた。
私が見ていたのに気付いて、圭織は少し驚いた表情をした。それでも私は、彼女の目から視線を逸らす
気にはなれなかった。
「圭織は人をじっと見る癖があって、初対面の人によく誤解されるの。気持ち悪いなんて言われた事もある。
凄く悲しかった。カメラが回っているのは分ってたけど、泣いちゃうくらい、本当に悲しかった」
少し泣きながら、でも懸命に彼女は話した。目の淵が更に赤みを増した。
こんな綺麗な瞳で見つめられて何が不快だと言うのか? 圭織を悲しませた心無い加害者に、激しい憤
りを覚えた。
私は圭織の真っ直ぐな視線を受け止めながら、手に持った「遠野物語」の山女の描写を思い出していた。
長き黒髪を梳りてゐたり。顔の色きはめて白し。
身のたけ高き女にて、解きたる黒髪はまたそのたけよりも長かりき。
5 :
名無し娘。 : 2000/12/14(木) 15:31 ID:???
目的地はまだまだ先で、到着は明け方近く。
窓の外は暗く、殆ど何も見えない。たまに景色が変わるのは、凍てついた木々が山を視界から遮る時くらいだ。
「雪が好きなの?」
突然、圭織の方から話しかけてきた。私が相変わらず、飽きもせずに窓の外を見ていたせいかもしれない。
「うーん。雪そのもの、って言うより、この列車の窓から見る雪景色が好きなんだ」
すると、私の言葉を確かめるように、圭織が上体を傾けながら窓の外に目を遣った。しかし表情は変わらない。
「圭織は好きじゃないんだ、雪」
圭織が再び私に視線を戻す。
「雪より、雪が解けて出来た水が好き。だから、見るなら、ひんやりとした水が流れ込む池や川がいいな」
「ふーん、そうなんだ」
「綺麗な水のある場所なら、一日中見てても飽きないと思う。そんな所でイモリが浮いたり沈んだり…」
「イモリ? 身体が黒くてお腹が赤い、蜥蜴みたいなアレ?」
「そう。イモリは綺麗な水にしか棲めないんだよ」
そう言いながら、圭織は静かに目を瞑った。かつて見た水のある景色にでも、想いを馳せているのだろうか。
6 :
名無し娘。 : 2000/12/14(木) 15:32 ID:???
ぎぃ、と列車が停止した。もう、いくつ目の停車駅だろうか忘れてしまった。
この駅にも、乗り込んでくる客はいなかった。
ホームの中央に設けられた待合室が目の前に見える。窓から薄ぼんやりとした明かりが漏れ、周囲に
積もった雪を照らしている。
「誰もいない」
思わず口を突いて出た言葉がそれだった。ホームに積もった雪は踏みしめられた跡も無く、少し離れた
場所に見える改札口にも人気が無い。
駅員達は部屋に篭って出て来ないだけなのだろうか。
「ここから先は、ずっと、こんな感じだよ」
圭織が事も無げに言う。そして、目を丸くしている私を見てか更に続けた。
「圭織の故郷は雪で──」
しかし、車輪の軋む音で彼女の声はかき消されてしまった。
列車は次の駅に向けて、再び動き出した。
7 :
名無し娘。 : 2000/12/14(木) 15:33 ID:???
座席に深く掛け直し、列車の振動に身を任せる。あれから日付は変わったが、今のところ些かの眠気
も感じない。
また外が見たくなり、息で曇った窓をてのひらで拭いてみた。
そう言えば、圭織は何処で降りるのだろうか、まだ聞いてなかった気がする。さっき聞きそびれた言葉
の続きは何だったのだろうか。雪、故郷が雪で──。
不意に窓の外が真っ暗闇に変わった。雪が見えない。車内の蛍光灯が明るさを増したような気がした。
「一つ目のトンネル」
開いた左手の薬指を右掌で折りながら圭織が言う。二つの目の指を彼女が折った時、行く先を聞いて
みよう。
私の目的地は、トンネルを五つ潜り抜けた先にある。
8 :
名無し娘。 : 2000/12/14(木) 15:34 ID:???
また一つ暗渠のような洞を潜りぬけた。
「りんねは何処で降りるつもりなの」
不意に圭織が尋ねて来た。
トンネルを過ぎる度に次々折られる指を見つつ、さり気なく彼女の行く先を聞きだす機会を窺っていたの
だが、事もあろうに向こうから先手を打って来るとは思いも寄らなかった。
相変わらず真正面からこちらを見ている圭織に対して下手な誤魔化しは効きそうも無く、私は狼狽を押
し隠しつつ、「花畑駅で降りるつもり」と答えるので精一杯だった。
「じゃぁ次のトンネルを抜けたらお別れだね」
今や圭織の指で曲げられてないのは薬指のみで、やや下に傾けられた左のこぶしは、指きりげんまん
を躊躇う子供のような心細さを漂わせており、少しだけ私の胸を痛ませた。
「そうだね。でも、次のトンネルに差し掛かるのは、まだまだ何時間も先だよ」
今度は私が聞く番だ。視線にやや力を込めて圭織を見つめ返す。
「圭織は何処へ帰るの?」
9 :
名無し娘。 : 2000/12/14(木) 15:37 ID:???
「圭織の帰るところは、圭織の生まれた場所。そして圭織の死ぬ場所。あたりまえじゃん」
遠目には雪しか見えない。
巨大な雪塊が、人の命を、積み上げて来た物を、全てを、押し潰していた。
その山間の村は、大雪崩で全てが埋もれてしまっていた。
たった一軒、村外れで難を逃れた家の前で、年老いた女が膝を折り顔を冷たい地面に押し付け、声も無く泣いている。
地上の惨状を他所に、空は青く晴れ渡っていた。
村の中央に向かうに連れ、目立ち始める幾つかの起伏が、その下に在る家々の無残な姿を知らせる。
点々と黒い木片が散らばる雪上に一際目を引くものが有った。
白い小木のような、雪の中から突き出ている一本の腕が、血の気を失った白い五指を、宙を掻く姿のままに凍りつかせていた。
傍では、腕の主の物らしき髪が扇状に黒く咲いている。
あれは誰――
不意に幾千、幾万もの鋭い冷痛を伴った針が全身を苛み、更に、口の中へ雪が浸入する感覚に、堪らず咳き込んだ。
10 :
名無し娘。 : 2000/12/16(土) 05:46 ID:N8cmG/gM
咽って涙でぼやけた視界に、見慣れた車窓が戻って来た。体に感じる揺れで知るに、列車は何事もなく走り続けているようだ。
今の夢はなんだったんだろう。
雪崩で潰された村。泣き続ける老婆。そして雪に埋もれた女。
目覚める瞬間まで続いた死への恐怖。未だ口に残る、雪塊のざらっとした舌触り。全てがあまりに生々し過ぎた。
覚醒しきらない頭の何処かに、私はあそこで生き埋めのまま、死の間際の夢を見続けているのではないか、という思いが残り続けた。
向かいの席で圭織が、青白い夜明けの光に照らされ、静かな寝息を立てながら眠っている。膝の上に軽く置かれたこぶしから、薬指が緩い曲線を作っていた。
右手首に巻かれた腕時計に目を遣る。午前五時三十五分。見間違いではない。
眠っている間に花畑駅を乗り過ごしてしまったという事実は、少しだけ私の身体から体温を奪った。
11 :
名無し娘。 : 2000/12/19(火) 03:27 ID:9yY7/n26
程無く目覚めた圭織に私は、降車予定の駅を乗り過ごしてしまった旨を伝えた。
それを暫く、きょとんとした面持ちで聞いていた圭織だったが、
「じゃぁさぁ、この際だからうちに来ればいいよ。どうせ急ぐ用事でもないんでしょ?」
と、実にあっさりと言った。
正直、圭織の申し出は有難かった。これから引き返す事を考えると、うんざりするような距離を列車は既に駆け抜けているのだ。しかし、偶然、同じ車両に居合わせただけの他人にそこまで世話になれるほど、私は図々しくも無く、無防備でも無かった。
「気持ちは有難いけど、次の駅で降りて引き返すよ」
「ふーん、待合室も無い駅で一時間以上待つんだぁ。もしかしたら、りんね死んじゃうかもね」
からかうように圭織が言った。
12 :
名無し娘。 : 2000/12/20(水) 00:37 ID:WbVQylgg
「死……って、脅かさないでよ」
圭織は少し怯える私を見て、何故か満足げに微笑みながら、重ねてこう言った。
「だからさぁ、遠慮することなんて無いよ。うちはぁちょっとボロだけど、広いし、お客さんが一人増えたからって窮屈になんてならないし」
「でも……突然押しかけたりしたら、圭織の家族に迷惑がかかる」
そう言ってから後悔した。圭織はさっき迄の楽しげな笑みを消し、限りなく無表情になっていた。
「りんねの嘘つき」
「えっ?」
耳を疑った。
「本当は圭織の故郷に興味が有るくせに」
余りに断定的な圭織の言葉に、思わず知らず私の語気は荒くなった。
「どうしてそんな事がわかるの?」
13 :
名無し娘。 : 2000/12/22(金) 03:14 ID:zE3axCVA
薬指→小指
咽せって→咽せて
薬指はほんとに薬指、咽せってはおれが知らないだけでそうも言う
のかも。
14 :
名無し娘。 : 2000/12/22(金) 09:36 ID:ulLZoi2M
指に関しては明らかに間違ってました。
辞書を引いてみましたが、ご指摘の通り、咽って、という使い方はしないようです。
ありがとうございます。
15 :
名無し娘。 : 2000/12/25(月) 15:30 ID:PoEaZBME
小休止。
16 :
名無し娘。 : 2000/12/30(土) 04:05 ID:TeDnUTeo
age
17 :
名無し娘。 : 2000/12/30(土) 04:13 ID:FHG9UUTU
駄目です。
18 :
名無し娘。 : 2000/12/30(土) 13:38 ID:ghxKYoJY
再開してたのか
19 :
名無し娘。 : 2000/12/31(日) 04:27 ID:yOzlAg6M
粉雪混じりの風の中、少し離れたところで圭織が、灰色のストールを靡かせながら立っている。
圭織の言う故郷の駅はやはり無人駅で、私は改札口と思しき柵の中にぽつんと置かれた箱に自分の切符を、乗り越し分のお金を添えて入れた。
なぜ、こうなったのだろう。
私は圭織に上手く乗せられたのだろうか。
あれほどざわついていた心が、頑なに彼女の世話になる事を拒ませた気持ちが、霧消してしまっていた。
「降りよ」
と、圭織に手を強引に引かれ、蹴躓きそうになった時、車内に落としたのだろうか。
駅名が削り取られたように消えている案内板にもたれ、ぼんやりと辺りを見渡しながら、特徴の無い土地だな、などと考えていた。
20 :
名無し娘。 : 2001/01/03(水) 16:06 ID:Py1Rou4I
遜った言い方で、何も無いところですが、というのをよく聞くが、駅の周辺がまさしくそれで、建造物の類が一切見当たらなかった。
白い雪で埋め尽くされた視界に僅かばかりの彩りを添えるものが有ったと思えば、それは黒々と落ち込んだ道脇の用水路であったり、時代錯誤な赤い円筒形の郵便ポストであったり、電信柱に錆び付いた商品名さえ定かでない鉄看板であったりと、ただ寂寥をおぼえる物ばかりだったが、その中にひときわ私の気を引く物が有った。
それは駅の木壁に貼られたポスターだった。風雪に晒されて捲れた半身が醜く垂れ下がり、結果的に表面を全て隠していたが、覆いきれなかった下端が僅かに露出していた。
何か、
草のようなものが写っている――。
垣間見た緑色に胸の奥の血がざわめいた。堪らずに目を逸らした後、しばらくは抑えきれない不快感だけが残った。
独特の雰囲気に滅茶苦茶惹かれる。
続き待ってます。
22 :
名無し娘。 : 2001/01/13(土) 15:04 ID:EatzLR5s
勿体無いおことばです。ありがとうございます。
23 :
名無し娘。 : 2001/01/14(日) 23:16 ID:tW28fVGo
慣れた足取りで先を歩いていた圭織が、曲がり角のあたりで立ち止まり、私を手招きをしている。
圭織が立っている場所から先は道の様子が全く異なっており、両脇に背丈の倍はありそうな雪の壁が存在していた。
それは自然に出来たものではなく、明らかに除雪車によるものだった。
雪壁の威容に圧倒された私が、花畑ではこれほど雪が積もったのを見たことが無い、と洩らすと圭織は、
「毎年こんな感じだよ。それとね」
「この道はね、うちらの為に作られたようなものだよ」
と右手で二の腕を摩りながら言った。
怪訝な顔をしている私を見て、冬の間は駅と村を往き来する人も滅多におらず、道を通す必要など無い。でも、この時期だけは特別なので除雪車を使うのだ、と説明してくれた。
どう特別なのか、の問いに対しては、
「村に着けばわかるよ」
とだけ返された。えらく勿体をつけるものだと思ったが、来客に便宜を図る目的だろう、と勝手に解釈しておいた。
24 :
名無し娘。 : 2001/01/17(水) 00:22 ID:fWSJJtww
私を手招きをしている。 →私を手招きしている。
25 :
名無し娘。 : 2001/01/22(月) 20:28 ID:mXmusfPk
保全。
26 :
名無し娘。 : 2001/01/23(火) 13:29 ID:/TBdFUBs
これほどまでに慎ましい小説がこれまでにあっただろうか
27 :
名無し娘。 : 2001/01/25(木) 15:08 ID:08I/BLdc
保田。
28 :
名無し娘。 : 2001/01/27(土) 16:18 ID:itBMW9YA
めええ
29 :
名無し娘。 : 2001/01/29(月) 00:40 ID:.vwjlCIc
保全。
30 :
名無し娘。 : 2001/01/29(月) 00:42 ID:.vwjlCIc
保全。
31 :
名無し娘。 : 2001/01/29(月) 21:58 ID:W51tVRW2
保全ありがとうございます。
いい加減、けりをつけないといけませんね。
引っ張る程の話でも無かったのですが。
32 :
名無し娘。 : 2001/01/31(水) 02:23 ID:fHA7WkKs
作者さん、期待してますよ。
33 :
名無し娘。 : 2001/02/01(木) 23:29 ID:nnRpbe8k
ほぜむ
34 :
名無し娘。 : 2001/02/04(日) 00:20 ID:Z3phdkOs
再開はいつ?
35 :
ひ辻 : 2001/02/04(日) 09:26 ID:Fy7unooU
36 :
名無し娘。 : 2001/02/07(水) 02:29 ID:guGCkX/Q
ほぜん
37 :
名無し娘。 : 2001/02/09(金) 02:39 ID:DetTTXAo
さり気なく保全……。
38 :
名無し娘。 : 2001/02/11(日) 12:36 ID:639I6YIg
もう一回保全。なんとか。
39 :
名無し娘。 : 2001/02/14(水) 01:56 ID:0cb4XlUY
保全、、、
40 :
名無し娘。 : 2001/02/17(土) 01:00 ID:v6o6M7H2
さらに保全
41 :
名無し娘。 : 2001/02/19(月) 19:34 ID:SpGgZMXo
、、、
42 :
名無し娘。 : 2001/02/21(水) 23:09 ID:d4tOHtXs
何となく保全
43 :
名無し娘。 : 2001/02/25(日) 12:53 ID:PoEaZBME
、、、、、、
44 :
名無し娘。 : 2001/03/05(月) 03:18 ID:2OGjN4YM
スレ汚し失礼。続きが読みたいので保全。
45 :
名無し娘。 : 2001/03/11(日) 09:04 ID:hmgOEsqY
保全どうもです。
「何とかする」と言いながら、一ヶ月経ってしまった……。
46 :
名無し娘。 : 2001/03/13(火) 01:37 ID:7PczLkwg
何とかして〜。
47 :
t : 2001/03/15(木) 00:27 ID:hEsUYDSU
test
48 :
名無し娘。 : 2001/03/17(土) 11:17 ID:SvNekmwM
ふと大き目の曲がり角を過ぎた拍子に、小さな駅は見えなくなった。
歩きつづける私の遥か頭上を、風の音が通り過ぎる。時折、風から零れ落ち、壁を越え損ねた雪が、肩先に舞い降りてくる。
歩き始めてから小一時間ほど経ったろうか。
そろそろ、両足が疲れを訴えはじめ、寒さが体に応えだしてきた。
こんな状況を予期していなかったとはいえ、今の服装は、雪の中を歩くには余りに軽装過ぎたようだ。
体が冷えて行くにつれ、この先にある知らない村に対しての不安が内心に膨らんで来る。
だけど、後戻りは出来ない。戻ったところで、僅かな暖も取れない駅で、何時来るかも分からない列車を待ち続けなくてはならない。そう考えると、不安に気付かぬふりをして歩き続ける方が、幾分ましな事に思えてくる。
それでも重苦しい予感は、肌に感じる冷気とは質の違った冷たさで、確実に私の胃の辺りを侵し始めていた。
前を行く圭織は、相変わらな様子で黙々と歩み続けている。果たして、ただの行き摺りに過ぎなかった彼女を、ここまで無条件に信じて良かったのだろうか?
晴れてさえいれば、冬間のささやかな陽光でも、それを頼りに心を落ち着かせることが出来るのに――。
心做しか、やや薄暗さを増した気のする空を仰ぎ見ながら、私は恨み言を吐かずにはいられなかった。
49 :
名無し娘。 : 2001/03/21(水) 02:03 ID:nAYfs/K2
、、、
50 :
名無し娘。 : 2001/03/21(水) 02:06 ID:nAYfs/K2
あ、「相変わらず」だ、、、
51 :
名無し娘。 : 2001/03/24(土) 09:05 ID:QcyHK.jo
、、、、、、
52 :
名無し娘。 : 2001/03/29(木) 22:34 ID:dkW/eDSY
さよなら飯田さん……。
53 :
名無し娘。 : 2001/04/03(火) 00:21 ID:72K.1y6U
hozen
54 :
名無し娘。 : 2001/04/05(木) 03:31 ID:FMmcF3ZE
おもしろいです
55 :
名無し娘。 : 2001/04/07(土) 01:28 ID:gC1/1o5M
ここって羊の最古スレ?
56 :
名無し娘。 : 2001/04/07(土) 07:44 ID:Wt2LhO2E
最古スレは『石川の黒い日記帳(しつこい)』ですよ。
それにしても、何度見ても笑えるタイトルだ、、、
57 :
名無し娘。 : 2001/04/07(土) 09:27 ID:Wt2LhO2E
あ、笑えるってのは『石川の…』の事ね。
58 :
名無し娘。 : 2001/04/10(火) 03:09 ID:i1WS5KWs
花嫁は夜汽車に乗って何処へ逝くの〜♪
59 :
アップ職人 : 2001/04/11(水) 14:27 ID:5TlieNmc
これだけ古くてレスも少ない
60 :
名無し娘。 : 2001/04/14(土) 00:17 ID:rKDduL6w
保全
61 :
名無し娘。 : 2001/04/17(火) 00:53 ID:SvNekmwM
、、、
62 :
名無し娘。 : 2001/04/17(火) 22:27 ID:SvNekmwM
残念・・・
>>62のスレッドで続きが書かれる可能性があると解釈してもよろしいか?
個人的には是非続きを書かれることを所望するのでござるが…
65 :
名無し娘。 : 2001/04/19(木) 08:34 ID:lnq5wWI.
例えどんな結果になろうとも、完結だけは必ずさせます。
ありがとうございました。
66 :
名無し娘。:2001/04/21(土) 03:39 ID:d4tOHtXs
kitaihozen
67 :
名無し娘。:2001/04/24(火) 01:44 ID:7ZYGYyug
hozen.
68 :
名無し娘。:2001/04/25(水) 04:28 ID:73dFo.ac
hozen.
69 :
名無し娘。:2001/04/26(木) 01:17 ID:h8sqK8IE
いや、このスレは放置→dat送りの方向で、、、
>>62 に実質、移転しておりますので。
70 :
名無し娘。:2001/04/28(土) 04:15 ID:NqnODCOQ
移転って、あっちのスレは全然違う話だろ。
>>62>>69は本当にこの作者なのか?
71 :
名無し娘。:2001/04/29(日) 03:02 ID:dkW/eDSY
あっちのスレ立てたのは私ですし、保全にかこつけて2文字HNでしょーもない事やってるのも私です。
(羊)の総容量が厳しくなって来たというのに、一人でスレを二個も占有してるのもなんですし、練習スレの
意味が無くなって来たので統合という形にさせて貰いました。
あー、……そろそろこの口調も気持ち悪くなってきましたね。素に戻ります。
72 :
名無し娘。:
んじゃ!