モナーの絵日記

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8月 8日 晴れときどき釣り人
 魚の王様から魚の着物を貰った。
 着物を着るとまるで本物の魚になれたように、自由自在に水の中を泳ぐことが出来た。
 ボクは嬉しくなりいろいろな美しい場所を巡った。青い水の上に躍るよう陽光を心ゆくまで眺めたり、風の無い静かな水面に映る丘や樹々の美しい影に見とれ、水面に近づきすぎて通り過ぎる人の顔が見え、声まで聞こえた事もあった。
 だが、こうして遊んでいるうちに、お腹が減ってきた。
 何か食べ物はないかと、泳いでいると美味そうな匂いがしてきた。匂いのする方へ行くと、餌のついた釣針が見えた。釣り人は誰だろうと上を見ると、そこにはぼんやりと釣竿を握っているお父さんがいた。
 こんな物に引っ掛かるものかと、ボクは他の餌を探し始めた。だが、運悪く餌は見つからず、空腹は耐え難いものへとなっていった。
 ボクは親父が釣りをしていた場所に戻ると、どうしたものかと思案した。親父ならボクに危害を加えないだろうと、思いボクは餌に喰らいついた。
 その途端、親父は糸をたぐり、ボクを捕まえた。ボクは叫んだ「痛いじゃないか。放してくれ。」けれどもお父さんはボクの声が聞こえないように、素早くボクの顎に縄を通した。それからお父さんはボクを家へと運んだ。
 家に着き、ボクをお母さんの前に出すと、お母さんはこんな大きな魚は見たことは無いと、喜んだ。
 ボクはあらん限りの大声で叫んだ。「ボクは魚じゃない! ボクはお母さんの息子だ!」
 だがボクの言葉に気づいてはくれない。お母さんはボクを台所にもっていき、まな板の上に投げた。
 そこには鋭く研いだ包丁が載っている。お母さんはボクの左手で強く押えつけ、右手に包丁を持った。
 ボクは絶叫した。「このボクをなぜむごたらしく殺すのか。ボクはあなたの息子ではないのか。助けてくれ、助けてくれ。」
 その瞬間、刃物が自分を切り裂くのを感じた。ひどい痛みだった。その時、ボクは目が覚め、気がつくと自分の部屋にいた。
 夢だったか、と胸を撫で下ろしていると「モナー、夕飯が出来たわよ」と、お母さんがドア越しに呼び掛けてきた。もう夕飯の時間らしい。
 「モナー、おかずはお父さんが釣ってきたお魚よ。」