■■■■■■■■■■■■■■真紅■■■■■■■■■■■■■■
今から60年以上も昔、当時の翠星石は素直な良い娘であった。
ある青年のもと、幸せな日々を送っていた。そんなある日・・・
「どうしたですか、マスター?」
「今日、僕に赤紙が送られてきたんだ」
「では、行くですか?」
「ああ・・・翠星石、ひょっとしたら僕は・・・」
「ダメです!翠星石を置いて逝ってしまってはダメです!
マスターがいなくなったら、私・・・」
「あ、ああ・・・必ず生きて帰ってくるよ」
「約束、ですぅ。翠星石とマスターとの約束ですぅ」
「ああ、約束しよう。・・・そうだ、もう一つ約束しよう。
僕が戻ったら、結婚しよう」
「!!」
それからというもの。翠星石は鞄の中で待ち続けた。彼がこの鞄を開けてくれるのを。
しかしながら、1年たっても、2年たっても鞄が開けられることは無かった。
鞄が開けられたのは、10年以上のち、彼以外の手によるものだった。
翠星石は、とある博物館に展示されていた。“ある兵士の遺品”として。
「遺品・・・翠星石は遺品ですか・・・」
それ以来、彼女は性悪な娘となった。