其後の房擬古はだうなつたか?――それは壱々話さずとも、色々の新聞に伝えられてゐます。大方どなたも御存じでせう。
度々危い人命を救つた、勇ましい壱匹の擬古の在るのを。
また一時『義古』と云ふ活動写真の流行したことを。あの擬古こそ房擬古だつたのです。
______ホウホウ
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ヽ ( ノ
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||==/ |2CH2002| ヽ==|| プォォォ!プォォォォーーーッ!
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|__________| シューッ!
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└─ ヽ(´Д`;)ノ ああああああ〜ッ!!
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,, / \ ッ
昨伍日午前捌時肆拾分、奥羽線上り急行列車が田端駅附近の踏切を通過する際、
踏切番人の過失に依り、会社員Z武某の長男(四歳)が列車の通る線路内に立ち入り、
危く轢死を遂げやうとした。
ヽ ( ( )) メ )
( ( ノ ) ノ
ミ ヽ ( 彡 ノ
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ノ ̄,_|__|◎|__|_,,ヽ――.、
〆 / ____\^ .||
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|| |┌-.\, ヽ____ノ ノ――||  ̄ ̄ ̄/ /| /| ./|
|| | Φ ┌ヽ、___,,/┐ || ___/ / 、| / 、| / 、.|
||_|_)(二| 二二二二二二.|二二_||
|_____┌-┐メ_____|
ケ| | Щ∧∧-┘ノ_ш∧∧ |ト ー―――=二三 ∧ ∧
∧∧ 彡( °Д)―――( °Д)―――=二三 ( °Д°)っ
( °Д) / つ つ――/ つ つ――――=二三 / つ(´Д`;)ノ_
ノ 彡( ノー―――( /ー―――――=ニ二三 ノ、 (__/_/◎
UU U U――――(/ U ー―――――=≡ 彡ノ U ◎
その時逞しい擬古が壱匹、稲妻のやうに踏切へ飛びこみ、
目前に迫つた列車の車輪から、見事にを救ひ出した。
この勇敢なる擬古は人々の立騒ひでゐる間に何処かへ姿を隠した為、
表彰したいにもすることが出来ず、当局は大いに困つてゐる。
/ ̄ノ\ / ハイハイ、壱寸待つて下さいね
| τ | ギコヂェクトエェーックス ∧_∧ /ハヽ
\_ヽ/ \ (´∀` ) (д゚*
‖ ∧ ∧お〜い、始まるぞ〜 ⊂ y _ノつ ⊂
| ̄◎ ̄| !( ゚Д゚)∧ Y 人 ドタドタ
|◎ ◎ | ∩ヽ/||⌒!つ (_)'J ==
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
昭和X年○月△日、〜〜町の旅館「新日本」で、火災が発生した。
火の回りが速く、地元の消防団の装備では、手が…つけられなくなつてゐた。
しかし、弐階には、子供が壱人、取り残された。
そして、義古が…現れた。
空が…燃えていた
ン :: ∵ ノ ∴) |
∵ ::) ノ ン ノ |
( ∵)ノ∧∧ ‖ |
__(;´Д`)ウェーン .|
――U U―┘ ))) | (((
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\_从从_\_\_\λ从::人 λ ノヽ:::ヽ_
\_\_\_\从从_\_\λ\_\_\从从_
ニニニニニニニニニニニニニニニニニoノ
) ,,, )____ | | |
,,)ノ――人――┐|λ | | |
ノ λ 从从 λ /( ,,ノ ) |ニ| |
从 从 从 从 ノ) | | |
人:( , )::, 人 λ ,., | | |
) )) もう一度逝かせて下さい!
ヾ ( ,, ノ ) ∠⌒Oヽ /O⌒ゝ
ノ √;`Д´) ググッ(゚Д゚;ヽ〉
ザワザワ だめだ… とても…助からない || ⌒ゝ
∧_∧ ∧∧ ∧_∧∩_∩ ∧_∧ ,へ_,;へ、 ∧ ∧モウダメダーヨ
; )(Д゚; )(Д`∧_∧ (` ∧∧ U(ー`; )
_∧ ∧_∧ < ;ヽ`>∩_∩(゚*; ) > /
)(・; ) / (Д`; ) / /
建物内にほとんど酸素は残つていないと思われた。
酸素ボンベも、底を尽きかけてゐた。決死の突入を志願する隊員もゐた。
隊長は、難しい顔をした。
義古が、人込みを掻き分けて前へ出てきた。
ざわざわ ムチヤダ ざわざわ アンタモシヌゾ! ざわざわ
∧_∧ ∩_∩ ∧∧ /O⌒ゝ ∧∧ ∧_
( ;´Д`) ;・∀・) (゚Д゚;)(`Д´;!ゝ(゚ー゚*;)・Д
く y ゝ <V>) ∧ ∧ y > / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|"~~~~~| |__|:_| ___( °Д°) < 俺が行く
(__)_)__)_)(_____ノ \_____
UU UU
…義古猫判断だった。
義古は炎の中へと姿を消した。
( ( ::: )...) ノヾ ,人, ( ,,) ン
ヽλ λ ) )λ 从 ヽ ::.. ソ ノ
)::) y ) )∧ ∧( ( 从 .. )::)
λ:::λ ) トーウ ( °( λ ( (:::::( ( ..)
(:::::::::::::::::::)人) / /つ )::::)( ):::::::::)
λ):::) (::::::λ ( / 从(::::::::::( ( ....
(:::::::( )::::::)(/ (/
彡
刻壱刻と時間が過ぎて行く。残された子供の体力も限界を越えてゐるはずだつた。
人々の中に焦りが広がつていつた。
そして…
突然爆発した。フラツシユ・バツクが起こつたのだ。
衝撃で、義古は投げ出された。
―――――――― ∧,,^'^.、┘∧^/| どかーん!!
ミ ((" ,; ;:: ; , ,, '' ;".. )) 彡
___ (("∴∵'; ' ., ," ;:'' ;..))
| 《 '~,,.. ,:; ∵ ;" : . .,,"》: =三 ミ,,;;∧∧ ミ,,
| ≡ ≪;:: "; ∵∴, ,; '" ≫ =ミ'',;;= °Д)――
| = 〈〈 " ,; ;.. 、.., ';, > 彡 =ー;;=; ,,=,; ⊂)-
| |/\/ .;: |/;: ,. \ ミ ミ(/,=;;/ ――
 ̄ ̄ ̄ ̄' V V y  ̄ 二三 ーーU―
彡 /// || \ \
||
∧_∧ ∧_∧ ∧∧
ヒュ〜〜 (・∀・; )! (´Д`; ) (゚Д゚*)
\\ ∩ \\\ ( つy つ ⊂ ⊂ ) ⊂|_ v/⌒ノつ
\ ⊂, '⌒,,〜 \\\ 〉~~~~~~) ∧∧ Y 人 )) [二]~(
\\ \,;: ';::ヽ \\ (__)_ミ (゚Д゚,,)のわつ! U \)
\ \:∧∧〉 べちゃ ( ミ⊂< y ノっ
) ⊂(;' ,°Д) て ⊂_⊂ノ〜
)へ ⌒\∧/ V ⌒
からうぢて、火柱と黒煙の中から、義古は還つてた來た
義古の腕にはしつかりと、子供が抱かれてゐた。
∠ Oヽ ( ;´∀`) (・∀・; )<ヽ`∀´>(゚ー゚;*)
√;゚Д)大丈夫か! つ (
( _|]つっ ∧ ∧この子を…すぐ、病院へ…
/__||| ∧∧Д°,,;;)
U U ⊂(д-;⊂ノ
UU );;/
UU´,,/〜
(/ (/
子供は、からうぢて命を取り留めた。
その報せを聞いた義古は、
∧∧
___(;;;;;;;;,,,,°)…よかつた
(;;;;;;;;;;;;;;;;;,,ノ
UU UU
;;;;;,,,,,,,,,,;;;;...
'''''''''''''''';;;;;;;;;;;;;
;; ;;
それだけ言い残し、立ち去つた。
…この話は、天聴にも達し、賞されることとなつた。
しかし、肝心の…義古の行方は、やうとして知れない。
\ 羊 十 二 土i 日 日 /
\ 我 口 の ノ 人 | 豆寸 | /
\_____________/
これが今流行つてをる活動か/_|_|_|_|_|_|_|
 ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_|_|_|_|_|_|_|
_|__∧∧ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|_|_⊂⌒つ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_|_( ゚Д) |_|(∀` )<ええ、もう何と云つても義古ものですよ
_|_く > |_|_< y > \______
_|_ |~~~~| | ノノハ)リ)》 _|_|_|_|_|_|_|
U U | | (_(__)_|_|_|_|_|_|_|
;″: .;":
;″:.;": ;″:.;":
\___\ :.;″:.; .;":; .;
||\ . \ 待て! :.;″: .;":
|| .\___\ ΛΛ :.;″:.;":
|| ||\ ⊂ ( °Д°) ビ
|| || \__⊂⌒\、 .;":;": . ヨ オ
|| || ||\ \l .;":;": . . ォ オ
\l || || :.;″: ._.\ :.;″:.;": :.;″: ォ
\.\ .|| || :.;″: :.;″:.;": :.;″:.;" ォ
\ \ | || || \___\ :.;″:.;": ォ
\ \ . || || .||\ .\ :.; ″: .;":
. .\ \ .|| || . || \___\
\ \\ || . || .||\ \ Λ◆Λ オ?
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\ .\\l . || .|| ||\ ( つ==,======`
|.\ ..\\ . || .|| || \_ |  ̄ ノ
|. \ .\\l || || |l\ (__)__) .;":; .;":;": .
|. \ .. \\ .|| || ||.. \___.\
|. \ ...\\l . || || |l\ \
|. l\ ..\\ || || || .\___\
|. |.l.\ . \\.|| || || |\ \
ホホゥ
コイツァ オモシレェ
オレサマト ヤロウツテノカ
数々の悪行、もはや許せぬ Λ◆Λ ズチヤ
(∀´ )
ヾ゛ ΛΛ | つ )).||
〜( ( °Д) フ〜ツ! | | .||
> ))\\\ ( ( ) .||
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″:.;":
ビ ヨ オ
″:.;": ; ″:.;": ォ オ オ
″: .;": ;″ ォ ォ
Λ◆Λ ″: .;": ;″:
″:.;": ;″:.; (∀´ )
″:.;": ヾ゛ ΛΛ ι ι)″:.;
〜( ( °Д) | |
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ザシュッ!!
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( イ. ⌒lノ て ⊃
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( イ. ⌒lノ て ⊃
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ニヤΛ◆Λ ミ ΛΛ ウツ
.'〃 ̄ (∀´ ) (; °Д)
 ̄\ '〃 ̄ ) / 〈_つ)
| ) .( ⌒ノ U ガクツ
( イ. ⌒lノ て ⊃
 ̄ ̄ ̄ .|| ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄.|| ̄ ̄ ̄ ̄.|| ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄.|| ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄
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. ・ *;:・ ブシュウゥゥッ
. ・ *`*:。
. ・ `*・;
* `・;*Λ◆Λ
.' *・*(∀´ ) ∧ ∧
;*`・'〃 ̄ ) _,(;°Д°)ハアハア
;・ ) ( |メ⊂ノ
( イ. ⌒l と_) Uてつ
 ̄ ̄ ̄ .|| ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄.|| ̄ ̄ ̄ ̄.|| ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄.|| ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄
斯くして、村に平和は戻つた。しかし、義古の旅に終はりは來ない。
義古猫……、下州新田郷満月村の貧しい農家に拾われたと聞く。
参歳の時に故郷を捨て、其の後、其の壱家は離散したと伝へられる。
天涯孤独な義古猫が、だういふ経路で無宿渡世の道に入つたかは、定かではない
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∧ ∧ ベンベン
( ゚Д゚) [|] _
< y~|⊃ |講|
/旦 ̄ ̄ ̄ ̄\|談|
,| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||擬|
.| ||古|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
・
・
・
或る真夜中のこと、体も心も疲れ切つた房擬古は、主人の家に帰つて來ました。
今は誰壱人として起きてゐる者も在りますまい。
ひつそりした裏庭の芝生の上に、唯高い棕櫚の木の梢に白い月が一輪浮んでゐるだけです。
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;;;;;;;;;;;;;;;;; フラフラ ;;;;;;;;.,,.∧ ∧,,,;::......,,,,,,,,,'ii'' | ||||,,,,,,,,.
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;;;;..::,,,.....(( , (ノU ,,,,,,,,,(/U;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
房擬古は昔の小屋の前に、露に濡れた体を休めました
それから寂しい月を相手に、斯う云ふ独語を始めました
ヾ;;\;;iiヾ; ;" ; ; ; ゞ γ´⌒ヽ、
ヾ;\;;iiゝゞ ; ;iメソ マター ( ´ー` )ーリ
!!;;;;;((,,,):,,:| ヽ:,,.._.,ノ´
iii;;..;;i;;: ::..|
iii;.: ;:,;;;::::::|__
ii;:..:;;:/^\___\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
iiii; :;l|フサ |::::::::::::::::::::| ,, | 御月様!御月様!俺は擬古を見殺しにしてしまつた。
!!!,..;;|┌┐ |:::::::::::::::::::.| ,,, . | 俺の体がフサしくなくなり、醜くづれたのも大方そのせいだらうと思う
...,,:,--ー;、∧ ∧ 。o O でも、俺は嬢ちやんや坊ちやんと別れてから、あらゆる危険と闘つて來た
(てっ、、 ,,つ;,,..°Д°)つ| 其れは壱つには何かの拍子にこのづれた体を見ると、臆病を恥ぢる気が起つたからだ
"",,'''""" """""""'''"",,.." \けれども――
"""""""''"""''''""'"""""  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヾ;;\;;iiヾ; ;" ; ; ; ゞ γ´⌒ヽ、
ヾ;\;;iiゝゞ ; ;iメソ マター ( ´ー` )ーリ
!!;;;;;((,,,):,,:| ヽ:,,.._.,ノ´
iii;;..;;i;;: ::..|
iii;.: ;:,;;;::::::|__
ii;:..:;;:/^\___\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
iiii; :;l|フサ |::::::::::::::::::::| ,, | ――けれども、このづれた俺を殺したさに、或いは火の中に飛び込んだり
!!!,..;;|┌┐ |;;∧ ∧,,, . | 或いは、無法者と戦ひもした。だが、俺の命はどんな強敵も奪ふことができなかつた。
...,,:,--ー;(;;,,°Д°)。o O死でさへも俺のゆがんだ顔を見ると、何處かへ逃げ去つてしまふ。
(てっ、、 ,, ⌒つ⊂) | 俺はもう…自殺することに決心したよ。
"",,'''""" """""""'''"",,.." \只、自殺をするにつけても……
"""""""''"""''''""'"""""  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヾ;;\;;iiヾ; ;" ; ; ; ゞ γ´⌒ヽ、
ヾ;\;;iiゝゞ ; ;iメソ マター ( ´ー` )ーリ
!!;;;;;((,,,):,,:| ヽ:,,.._.,ノ´
iii;;..;;i;;: ::..|
iii;.: ;:,;;;::::::|__
ii;:..:;;:/^\___\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
iiii; :;l|フサ |:::::::::∧ ∧ 。o O 自殺するにしても壱目会ひたいのは可愛がつて呉れた御主人だ。
!!!,..;;|┌┐|::::::::(;;,,...°Д) | 恐らく嬢ちやんも坊ちやんも、俺を野良擬古だと思ふだらうよ。
...,.. | |..,,;-ー´ ̄ ノ | ことによれば、棒で叩き殺されるかもしれない。
(てっ、、 ,, て つっ,, ,.... \しかし…それでも良いんだ。
"",,'''""" """""""'''"",,.."  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
"""""" "''"""''''""'"""""
ヾ;;\;;iiヾ; ;" ; ; ; ゞ γ´⌒ヽ、
ヾ;\;;iiゝゞ ; ;iメソ マター ( ´ー` )ーリ
!!;;;;;((,,,):,,:| ヽ:,,.._.,ノ´
iii;;..;;i;;: ::..|
iii;.: ;:,;;;::::::|__
ii;:..:;;:/^\___\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
iiii; :;l|フサ |:::::::::∧ ∧ | 御月様!御月様よ!
!!!,..;;|┌┐__(;;;;;;,,.,,..;°)< 俺は御主人の顔を見る他に、何も願うことはありません。
...,.. | |..,(___ ノ | その為今夜は、はるばるとまう壱度此處へ帰つて來ました。
U U,, U U,, ,.... \だうか夜の明け次第、お嬢さんや坊ちやんに会はして下さい
"",,'''""" """""""'''"",,.." "  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
"""""" "''" ""''''""'" """
房擬古は独語を云ひ終ると、芝生に顎をさしのべたなり、
いつかぐつすり寝入つてしまひました
""ヾ;;;:,,,\;;iiヾ; ;" ; ; ; ゞ" γ´⌒ヽ、
ヾ; ;:.,\;;iゝゞ ; ;iメソ ( ´∀` )
!!;;;;;((,,,):,,:| ヽ:,,.._.,ノ´
iii;;..;;i;;: ::..|
iii;.: ;:,;;;::::::|__
ii;:..:;;:/^\___\
iiii; :;l|フサ |::::::::::::::::::::| ,,
!!!,..;;|┌┐ |:::::::::::::::::::.| ,,, ,,,,,,,.........ト,,,,,.........,,...y...
...,,:,--ー;、∧ ∧
(てっ、、 ,,つ;,,..ーДー)つ"",,'''""" """""""'''"",,.."
"""""""''"""''''""'"""""
「驚いたわねえ」 「だうしたんだらう?姉さん」
.:; ,,.. ,::.. .;: ,;''":;,. '';:;,. ;::,. ,.;;: ;;::.,.
;; "'';;: ':,..,;'' , ;;::,. ";;:,. ;;;;" ';;:
;: :::::::::::::::::: '';;..;:::..::::..,,;;:: ;;:: ;;;;;: ';;;''''''''';;:: ;;;;;; ;::;
';; ;;'';;;; ;;, ;;:" ';; ;;:" ,,.:;;:
`;, '" ;;; "'';;,.. .,:;' '':;' ..,,;::;.
房擬古は小さい主人の聲に、はつきりと目を開きました
見ればお嬢さんや坊ちやんは小屋の前に佇んだまま、
不思議さうに顔を見合せてゐます
∧n∧
( *゚ー) ∧_∧ ____
〈 U填 (∀・* )/^\__\
/___〉 く y >フ サ| |
UU ((ハ(リii(| |┌┐.| |
房擬古は壱度挙げた目をまた芝生の上へ伏せてしまひました
お嬢さんや坊ちやんは、あの日にもやはり今のやうに驚いたものです
――あの時の悲しさを考えると…
その途端…
\お父さん!お母さん!房擬古がまた帰つて來ましたよ!/
∧n∧  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( *゚ー) ____ ∧_∧
|U填 /^\__\ ( *・∀・)
/___| ! | フ サ| | ⊂[_ y _ノつ
UU ∧,,∧ ┐.| | ≡ノノノノハ)))
,,,;;''ミ,,゚Д゚彡 ガバツ!
'';;u,,,,,;;U U ミ
「房擬古」が! 房擬古は思はず飛び起きました
すると逃げるとでも思ったのでせう。
お嬢さんは両手を延ばしながら、しつかり房擬古を抱きかかへました
∧n∧∧,,∧
( *゚ー)Д゚,,彡
| ^つU ,,ミ
/___| UUミ"
UU
同時に房擬古はお嬢さんの目へ、ぢつと視線を移しました
其の中には、豊かな毛を蓄えたフサフサとした擬古が映つてゐるのです
房擬古はただ恍惚とその姿に見入りました
あら、房擬古つたら泣いてゐるわよ |l |||l l
__ ___________/ l || l
\| ∧,,∧ |:l||l || l lゞ
∧n∧ミДT,,彡 """"""" 'ノメ''"ゞ ^メヽ""
( *;´ー)っ;;Uミ "",, ∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
""" | ノ'UU,ミ (・∀⊂ヽ<へつ、姉さんだつて泣いてゐる癖に!
,, ,,, /___| く y ~ノ \________
UU """""" """"ノノノハ)リ( """"
"""""""""""""""""""""""""""""""""""
「フサ」(芥川龍之介「白」翻案) 〜〜了〜〜