季節はすっかり春。
一緒に映画でも見に行こうと工くんに誘われ、街に出た。道すがら、卒業式と思われる女子高生が二人、小さな花束をバックにいれて歩いているのとすれ違う。若さとは華やかだねと工くんは穏やかに呟く。
「卒業式ですかね?そうか、もうそんな季節なんですね」
「真太郎くんはどんな高校生だったの?」
「普通ですよ」
「遊んでたんでしょ?」
「至って真面目な男子でしたよ」
つまんないのー、とそう言いながら工くんはクスクス笑い、人通りも多い道で腕を絡めて来るもんだから心臓に悪い。
「あ、良いこと思い付いた」
「何ですか?」
「映画が見終わったら、ちょっと買い物付き合って」
「何を買うんですか?」
「良いもの」
また工くんは笑って、俺の腕を取って颯爽と歩き出す。