はないたちの夜〜げろっぱのなく頃に〜 page.2

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1名無し戦隊ナノレンジャー!
1 名前:まりあ ◆BvRWOC2f5A [] 投稿日:2006/08/15(火) 01:51:48
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. レ (_ノ\/  ___|   レ     / ─    _ノ   ___    ノ│  / ヽ /
        \ノ\       / (___         / / ヽ   │ ノ \ /
                               ヽ/ _ノ   │    /\  
                                      |   ノ   \〜げろっぱのなく頃に〜
2名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/21(土) 01:36:21
2 名前:まりあ ◆BvRWOC2f5A [sage] 投稿日:2006/08/15(火) 01:52:42
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。
 従って、作品中に出てくる登場人物の性格・性別等についての質問にはお答えできません。

3 名前:まりあ ◆BvRWOC2f5A [sage] 投稿日:2006/08/15(火) 01:53:54
・要はかまいたちの夜のパクリです。
・このスレッドの目的は全てのシナリオをコンプリートする事です。
・選ぶ事の出来るシナリオの中から好きなシナリオを選んで下さい。
・華スレのテンプレに載っているコテはほとんど出てきます。
(クリア条件等によってプレイできない場合もあります)
(また、複数のコテハンで同じシナリオが進行する場合もあります)
・プレイ中、あなたを悩ませる様々な選択肢が出てきます。
・どの選択肢を選ぶかによってストーリーが変わってきます。
・ある条件をクリアすると新たなシナリオが追加されます。
(ひとつのシナリオでも選択肢の選び方によって結末が変わってきます)
・クリアするとシナリオ名が変わる事があります。
・スレッドの進め方によっては強制シナリオも発生します。
・シナリオタイトルがゲロッパしてたらまだフラグが立って無いということです。
(これ↓)
・*:.。.(゜ж゜).。.:*・゜
3名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/21(土) 01:37:13
前スレ
はないたちの夜〜げろっぱのなく頃に〜 @華スレ
http://tmp6.2ch.net/test/read.cgi/mog2/1155574308/

まとめwiki
ttp://www19.atwiki.jp/hanaitachi/
4まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/21(土) 02:20:31
スレ立てありがとうございます(´;ω;`)
5 ◆K.TAI/tg8o :2006/10/21(土) 02:48:28
そいやぁ
6可児玉:2006/10/22(日) 14:33:27
>>1
おつ
7キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/22(日) 22:27:36
保守
8泥犬:2006/10/23(月) 01:23:04
2006/10/23(月) 0:00:00解禁予定保守
9泥犬:2006/10/23(月) 01:23:55
まちゃがえた!
2006/10/24(火) 0:00:00
ですよね
24時と書くべきだったです
10キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/23(月) 01:37:16
クル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
蝶楽しみです
11名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/23(月) 02:12:07
早くあのコテやあのコテをだしてください保守
12キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/24(火) 01:07:18
解禁↓
13まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 01:12:29
【第5夜】
「俺には・・・誰も助けられないと思うんだ・・・・
 家族だろうが・・・仲間だろうが・・・誰も・・・」

僕は泣き出しそうなのを必死で堪えて、
吐き出すように彼女の背に言葉を投げた。
僕の言葉に彼女・・・ラチメチは、顔だけを少しこちらに向ける。

「ねぇ携帯・・・」

彼女の唇が僕の名を口にしたその時、
柔らかい風が彼女の髪を撫でるように通り抜けていった。

「私達・・・思い出に負けたの?」

風に揺られた髪が彼女の表情を隠してしまったせいで
僕は彼女の言葉の意図を推し量る事が出来なかった。
14 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/24(火) 01:14:38
主人公らしくなってきましたねついに
15キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/24(火) 01:16:21
ついに名前が
16まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 01:17:54
41.「帰郷」


2006年8月15日



午前七時、晴刷駅に着くと既にほとんどのメンバーが来ていた。

ニコフ 「おはよう鬱井。これで全員揃ったね」

そこには携帯の姿はなかった。

鬱井 「蟹玉・・・なんか連絡あった?」
蟹玉 「いや・・・・・・」

昨日の様子じゃそんな気はしていたが、やはり携帯は来なかった。

ポニー 「よし、それじゃ行こうか。そっちイノ君運転頼むよ」
イノセンス「あぁはい・・・」

先生の弟のポニーさんが用意してくれていた2台の車にそれぞれ乗り込む。

ポニー 「ラッちんは俺の方に乗りな」
ラチメチ 「え・・・あ、はい・・・」

僕はニコフがイノの運転する方に乗るのを見て、さりげなくそっちに乗り込んだ。
17 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/24(火) 01:23:56
ん?
18 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/24(火) 01:31:04
ア、アニメか!
19キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/24(火) 01:31:38
kwsk
20 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/24(火) 01:33:24
デスノアニメ
21まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 01:38:35
KIRA 「おい鬱井・・・どうしてこっちに乗るんだ」
鬱井 「なんだよ、俺がこっちじゃダメなのか」
KIRA 「そうじゃなく昨日の事を・・・」
鬱井 「昨日・・・・・・あ」

昨日の事・・・携帯の事だろう。

KIRA 「まぁいい・・・向こうに着いたらお前が聞けよ」
鬱井 「なんだよ!だったらお前が向こうに乗ってりゃいいだろ!」
ニコフ  「なんの話してるの?」
アンキモ 「朝から喧嘩しないでよ」
KIRA 「文句は鬱井に言ってくれ」
鬱井 「はぁ!?ふざ・・・」
シニア「うるさい!静かにしてようっさん」
鬱井 「なんだよ・・・もういいよ・・・」
アンキモ 「なにイジけてんの?キモイわぁ・・・」

こうして僕の8月15日はみんなの温かい声から始まった。
それからしばらくの間、僕は誰とも会話せずひたすら窓の外を眺めていた。

やがて景色は段々と都会っぽさが消え、車は山道に入る。
そこからは一本道でくねくねした上り坂のカーブが続く。
22 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/24(火) 01:39:22
事故りそうな予感が
23キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/24(火) 01:49:43
KIRAたちの方が事故るかな・・・
24まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 01:50:27
10分ほど上り続けたあと、今度はさっきとは反対に
緩やかな下り坂のカーブが続く。

ニコフ 「もうすぐだね」
鬱井 「なんかドキドキしてきたな」
KIRA 「ワクワクしてきたの間違いだろう。ガキめ」
鬱井 「うっせー」

山を降りるとすぐに大きな橋にさしかかった。
この橋を渡れば肝禿村だ。ここから一気に田舎くさくなる。

シニア「うーん改めて思ったけどウチらって超カッペだったんだよね」
イノセンス 「道路はアスファルトじゃないし・・・」
ニコフ  「右も左も田んぼばっかだし・・・」
アンキモ 「やたら空気が澄んでるし・・・」
鬱井 「おぉ・・・見事に携帯の電波が入らない・・・・・・さすがだ」
KIRA 「変わらんな・・・当然か」

僕が村を出てから何一つ変わっていない様に見える。
25キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/24(火) 01:51:29
田舎の規模はどのくらいなんだろうな
過疎なんだっけ普通なんだっけ
26 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/24(火) 01:52:36
ちょっと人数の多い弟切草と、2話目の金田一くんがミックスしたイメージ。いまのところ
27名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/24(火) 01:53:02
( ‘∀‘)o彡゜ 事ー故!!事ー故!!
28キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/24(火) 01:55:22
ここでニコフ退場か(´・ω・`)ショボーン
29まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 02:00:49
イノセンス 「でも昔はそんな事気にした事もなかったんだよなぁ」
ニコフ  「子供だったからね」
鬱井 「そうだな・・・大人になったって実感するよな」
アンキモ 「鬱井は全然変わってないじゃん。昔のまんまだよ。ガキ」
鬱井 「そう言われると照れちゃうな」
アンキモ 「いや誉めてないし・・・」
鬱井 「ふふふ・・・」
シニア「きめぇ」

そうこうしているうちに車はある民家の前で止まった。

鬱井 「ん?着いた?ここ誰の家?」
ニコフ  「忘れたの?先生の家じゃない」
鬱井 「あぁそうだっけ・・・そうだったね」

先生の乗ったもう一台の車も着きみんなぞろぞろと降りてくる。

ゲロッパ「さ、みんな入ってくれ」

先生が鍵を開けて中へと入る。
30名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/24(火) 02:01:37
シニアさんシニアさんアニメ始まりましたよ
31 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/24(火) 02:01:55
車椅子に乗ったミイラとか出て来ませんよね
32泥犬:2006/10/24(火) 02:22:31
>>30
やべえええええええええええ見てなかったwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
33名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/24(火) 02:23:10
そんなときこそようつべ
34まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 02:35:31
ポニー 「とりあえず家中の窓を開けてくる。埃くさくてかなわん」
アンキモ 「埃ってゆうか・・・カビくさい・・・」
イノセンス 「先生、でっかい蛾がいっぱい死んでるんだけど・・・」
ニコフ  「なにココ?なんかヌメヌメしてる!?」
ラチメチ 「さ、先に掃除した方がいいんじゃないですか」

正直僕の家とあまり変わらないので落ち着く・・・
だけどみんなはそうじゃないみたいだ。
何故かみんなで掃除するハメになった。

ポニー 「とりあえずこんなもんだろう。みんなすまんな」

ポニーさんがみんなにお茶をついでまわる。

鬱井 「せて・・・じゃ、これからどうする?」
ショボーン「漏れは実家に行ってきまつね。なにかったら呼んでくださひ」
シニア「KIRA、ちょっとブラブラしてきてい〜い?」
イノセンス 「え・・・じゃあKIRA、俺もい〜い?」
ニコフ  「KIRA、どうする?」
KIRA 「僕は調べたい事がある」
鬱井 「何を?」
KIRA 「鬱井お前は先に・・・」
鬱井 「・・・あぁ、はいはい」
KIRA 「じゃあニコフ、一緒に行こうか」
鬱井 「ちょ!待てよ!」
KIRA 「・・・なんだ」
35 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/24(火) 02:43:13
二部はラブコメサスペンス
36キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/24(火) 02:44:09
見事に連れ出したなぁ
37まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 02:45:15
なんでお前だけニコフと一緒やねん!
と激しくツッコミたかったがニコフ本人が目の前にいるので言えなかった。

鬱井 「・・・俺も後で行くよ。どこ行くんだ」
KIRA 「公民館だ」
鬱井 「わかった・・・・・・アンキモと蟹玉は?」
アンキモ 「うーん・・・私、実家がもう村にないしねぇ」
蟹玉 「俺もさ・・・俺はここにいるよ」
ラチメチ 「私は・・・」
鬱井 「あ、ラチメチちょっと一緒に・・・いいかな?」
ラチメチ 「え?うん・・・」

ラチメチを連れて外に出る。
外はまだ午前中だというのにうだるような暑さだった。

鬱井 「やべぇ暑すぎる・・・とりあえずどっか涼しい所に移動しよう」
ラチメチ 「ねぇ、まだ駄菓子屋さんやってるのかな?」
鬱井 「駄菓子・・・おお!ねるねのトコか!」

ねるねの実家は駄菓子屋だ。
小学校の頃は毎日通ってたっけ・・・
38キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/24(火) 02:59:01
dkdk
39まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 02:59:49
鬱井 「うわ、まだやってるよ」
ラチメチ 「ほんとだ・・・懐かしいね」

過疎化が進む肝禿村ではもうほとんど子供はいない。
それなのにまだやってるなんて・・・・・・感動した。

鬱井 「こんちわー」

店先から声をかけると、中からお婆さんが出てくる。
ねるねのお婆ちゃんだ。

ねる婆「あれま!鬱井君かぇ?」
ラチメチ 「お久しぶりです」
ねる婆「ありゃーラッちゃんまで」
鬱井 「元気そうで・・・相変わらずお婆ちゃんっすね」

僕が子供の頃からお婆ちゃんだったこのお婆ちゃんは
今も変わらずお婆ちゃんだった・・・なんだか胸に迫るものがある。
40名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/24(火) 03:01:16
ねるねるねるねは・・・ヒッヒッヒッヒ
って言いそう
41 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/24(火) 03:03:47
婆出てきちゃったよ
42キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/24(火) 03:07:39
怪しい・・・
43まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 03:09:01
ねる婆「やっぱりあれかぇ?アンタらも同窓会かぇ?」
鬱井 「え?」
ねる婆「うちのねるねも昨日から帰ってきてるけんどねぇ。
    なんじゃー言うてほれ、小学校の頃のクラスのみんなで
    同窓会やるっづってねぇ」
ラチメチ 「ねるね、いるんですか!?」
ねる婆「いんや今朝方ほれ、あの子・・・なんじゃ言うたかねぇ・・・
    アンタらのクラスで一番小さかったあの子が来てからよぉ」
ラチメチ 「もしかして・・・saoko?」
ねる婆「あーそうそう!その子とどっか行っづまったよぉ」

ねるねだけじゃなくsaokoも・・・
同窓会って事はやっぱり葉書が・・・?

ラチメチ 「どうする?探しに行く?」
鬱井 「いやどこ行ったかわかんないみたいだし話しながら待ってよう」
ラチメチ 「話?」
鬱井 「うん、でもその前に・・・おばあちゃーんこれちょうだい」

子供の頃と同じセリフでお菓子を買う。
だけどあの頃と違って金銭的に余裕があるので大人買いだぜ!
ねるねるふり〜すくを大量に買い込み店先のベンチに座る。
44名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/24(火) 03:10:51
公衆の面前で穴リスクキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
45キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/24(火) 03:11:31
ねるねるふりーすく(笑)
46名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/24(火) 03:12:33
さあどうやって練るんだ見せてみろ!!
47まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 03:14:29
ラチメチ 「で、話って?」
鬱井 「実は昨日・・・」

携帯の話を切り出そうとしたその時、

   「おー!鬱井!鬱井じゃん!?」
鬱井 「ふえっ!?」

誰かが遠くから馬鹿でかい声で僕を呼ぶ。
小柄な男・・・サングラスにアロハシャツ、微妙に後退してる前髪・・・
こいつはまさか!

鬱井 「下ネタマスク!?」
下ネタ「久しぶりじゃーん!やっぱお前も帰・・・ん?横にいんの誰・・・」
ラチメチ 「あ・・・」
下ネタ「ラ!ラチメチ!?うわっマジ!?やっべ!」
ラチメチ 「久しぶり・・・」
下ネタ「やっべ、マジやっべ!オニヒサ(鬼のように久しぶり)じゃん!?」

何がやばいのかわからないが下ネタはラチメチを見た途端
興奮しまくって一瞬で僕の存在を忘れてしまったようだ。
48名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/24(火) 03:14:39
それでも世界で最も邪悪な一族の末裔か!
49キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/24(火) 03:17:11
新キャララッシュや
50まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 03:21:35
下ネタ「うっわマジマジマジ・・・やっべ、超可愛くなってんし!」
ラチメチ 「あ、あはは・・・元気そうだね・・・」
鬱井 「あのさ」
下ネタ「おっ!?」

僕が声をかけると下ネタは驚いたような顔でのけぞる。
こいつマジで僕の存在を忘れてやがった。

鬱井 「下ネタ・・・さっ」
下ネタ「つっか、つっかさ、ありえなくね?奇跡じゃね?」
鬱井 「なにがだよ・・・」
下ネタ「だってマジ、ラチメチに会えるって思ってなかったし!」
鬱井 「俺は?」
下ネタ「つっかさ、今どこ住み?こっち系?」

自分の左下腹部を指して指をぐるぐるまわす。

鬱井 「はぁ・・・?」
下ネタ「ほらぁ!地図?地図的に!?」
鬱井 「あぁ・・・そういう事ね。うんそうだよ」

どうやら自分自身を日本地図に見立ててたらしい。
51まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 03:28:56
下ネタ「いや、俺鬱井に聞いてなくね!?ラチメチに聞いてんだけど」

この野郎・・・

ラチメチ 「あ・・・私いま晴刷市に住んでるよ・・・」
下ネタ「うっそマジ!?俺?俺は東京!?」

なんで疑問系なんだよ・・・つーか人の話聞かなさすぎじゃね!?

下ネタ「やっぱ?何するにしてもやっぱそっち系いっとくしかないみたいな!?」
鬱井 「あぁそう・・・それよりさ」
下ネタ「うーわやっべ!」

殺すぞ・・・
52まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 03:30:18
鬱井 「・・・何が」
下ネタ「だってマジ、ラチメチに会えるって思ってなかったし!」
鬱井 「さっき聞いたよ・・・で、あのさ・・・」
下ネタ「あのさー俺さー今さー」
鬱井 「殺・・・」
ラチメチ 「あ、あの!」
下ネタ「え?なになになに?」
ラチメチ 「さっき『やっぱりお前も・・・』って言ってたけど・・・」
下ネタ「お!そうそう知ってる!?みんな帰ってきてるんだぜ!?」
鬱井 「それだよ!それをさっきから・・・」
下ネタ「つっか今から集まんし。ラチメチも行かねぇ!?」
ラチメチ 「集まる?」
鬱井 「だからなんで俺を無視すんの」
下ネタ「学校よ学校!」
鬱井 「・・・!」
ラチメチ 「もしかして・・・葉書の?」
下ネタ「そうそう!マジビビリ入らなかったアレ!?誰だよ!みたいな」

まさかよりによって学校に集まってるなんて・・・
もしかしてそこに葉書の送り主がいるのか・・・・・・?
53まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/24(火) 03:34:39
41.「帰郷」/終
54さお:2006/10/25(水) 00:38:59
キタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆
まりあさん乙です゚・*:.。.☆
55名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/25(水) 00:42:25
第二部乙!
総動員の予感
56 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/25(水) 00:42:59
サオコが意外とセリフありそうですね

それにしても「ちょ!待てよ!」て
57名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/25(水) 01:14:54
ラっちん(*´▽`*)
58名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/25(水) 01:15:55
犯人はラチ
59蟹玉 ◆KANI/FOJKA :2006/10/25(水) 23:11:24
俄然ルビー説を唱えます!!
60 ◆ugougo.EKs :2006/10/25(水) 23:19:26
お、俺まだ・・・?
61蟹玉 ◆KANI/FOJKA :2006/10/25(水) 23:20:13
ひーろーはさいごに
62 ◆ugougo.EKs :2006/10/25(水) 23:25:33
最後・・・('A`)
63まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/26(木) 00:04:03
42.「準備」


鬱井 「つ、疲れた・・・」
ラチメチ 「鬱井、運動不足なんじゃないの?」
鬱井 「毎日歩いて通ってた子供の頃の自分を誉めてあげたい・・・」

ねるねの駄菓子屋を出てから歩く事約15分。
下ネタに誘われ一緒に学校へ行く事になった僕達は肝禿橋の手前まで来ていた。
橋のかかっている肝禿川は対岸まで約100m程。
年中とても流れが速く万が一落ちてしまったら大人でも岸まで辿り着くのは不可能に近い。
実際にこの橋から落ちてしまったのは僕が知る限りでは一人しかいないのだが・・・・・・

ラチメチ 「この橋も・・・懐かしいね」
鬱井 「うん・・・」

あの事件がきっかけでこの橋は新たに作り直される事になり、
今かかっている橋は鉄骨等でかなり補強されている。
この橋だけ明らかに近代的でなんだか村の雰囲気に合っていない。
64まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/26(木) 00:47:30
グラウンドに何人かいる。
僕達が気付くと同時に向こうもこっちに気付いたようだ。
はぁはぁ言いながらの再会もかっこ悪いので息を整えながら近づく。

インリン 「よぉ、お前らも帰ってきてたのか」

鳥肌実みたいな髪型したインリンが僕達に声をかける。

鬱井  「おっかけ・・・昔よりでかくなったな。今何cm?」

クラスで一番でかかったおっかけを見上げる。

おっかけ「あぁ、今193cmだよ」
鬱井  「すげぇな」
ugo   「元気そうだね」
鬱井  「えっ・・・あれ?」

後ろから声がしたので振り返ると誰もいない・・・と思ったら
目の前にふわふわした頭が。目線を落とすと・・・・・・ugoだ。
おっかけとは対照的にugoはクラスで一番小さかった。
ugoの「前へならえ」を一度も見た事がない。
65まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/26(木) 01:10:36
saoko  「ラチメチ久しぶり!」
ねるね 「元気だったー?」
ラチメチ  「二人とも相変わらず仲良いね」

手を繋いだままキャイキャイしてるねるねとsaoko。
女子の先頭と二番目だった二人は昔から仲がよかった。

鬱井  「・・・おう」
本家  「よう鬱井、相変わらずマヌケな顔してるな」
鬱井  「なんだこの野郎!やるか?」

そして再会早々いきなり喧嘩を売ってきたのは本家だ。
こいつとは昔から何度もやりあっているが一度も決着がつかないままだった。

本家  「ふ・・・それもいいが今はそれどころじゃない」
鬱井  「なに?」
インリン  「同窓会の準備中だよ」
鬱井  「同窓会・・・」
おっかけ「葉書来ただろ?」
ねるね 「鬱井にも来たでしょ?」

話を聞くとやっぱりみんなに届いていた。
そして今ここにいない他のクラスメイト達も全員村に帰って来てるという。
みんなは差出人不明な葉書の事を誰かのドッキリ企画だと思っているようだ。
66 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/26(木) 01:10:37
うっうごさんちっさいんですか
67 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/26(木) 01:18:47
本家がイイヤツそうだ
68まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/26(木) 01:20:24
saoko  「誰が送ったんだろうね」
下ネタ 「同窓会始まってからのお楽しみじゃね?マジサプライズだし」
鬱井  「ほんとにやるのか?」
ねるね 「うん。せっかくみんな集まったしね」
インリン  「で、俺らが実行委員って訳よ」
おっかけ「今日の夜教室でやるから来いよ」

どうやら他にもなにやら準備している奴がいるらしく本格的にやるようだ。
結局僕とラチメチは今日来たばっかりだし
何もしなくていいから夜になったら来いと言われた。
一応僕達の他にニコフ達や先生も来ている事も伝えて学校を出る。

鬱井  「まさか本当にやる事になるとはね」
ラチメチ  「ノートの事とか・・・聞かなくてよかったの?」
鬱井  「まぁ後でみんな集まるみたいだしその時にでも・・・
     事件の事とかも言わない方がいいかもしれない」

今言うとややこしくなりそうだし勝手な事すると
KIRAに文句を言われるかもしれない・・・
とにかく一度KIRAに合流してからだ。
69キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/26(木) 01:21:03
え。。。みんなはドッキリだと思ってるって・・・
愚鈍だな・・・みんな・・・
70 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/26(木) 01:25:38
今夜て

クライマックス近し・・・?
71キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/26(木) 01:27:12
六部くらい構想あるんじゃなかったっけ
72まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/26(木) 01:36:56
ラチメチ  「で、鬱井・・・さっき言ってた話って?」
鬱井  「あ!そうだ」

完璧に忘れてた・・・

ラチメチ  「・・・忘れてたでしょ」
鬱井  「い、いや違うよ?ちょうど今言おうかと・・・」
ラチメチ  「あはは・・・いいよ別に隠さなくたって・・・・・・それで?」

100%見透かされてた・・・
まぁいい、それより携帯の話だ!

鬱井  「・・・・・・実は昨日、携帯に会ったんだ」
ラチメチ  「えっ・・・」

僕が切り出すとラチメチは明らかに動揺した様子を見せた。

鬱井  「やっぱり・・・知ってるのか?」
ラチメチ  「・・・隠してた訳じゃないの」
鬱井  「じゃあなんで11日の事を黙ってたの?」
ラチメチ  「え?」
鬱井  「『え?』って・・・覚えてないの?携帯に電話しただろ?」
ラチメチ  「覚えてない・・・」
鬱井  「あら・・・そうなの。薬品のせいか・・・まぁそんな気もしてたけど」
ラチメチ  「ごめん」
鬱井  「いやそれはいいんだけどね。
     それでさ、携帯が番号教えた覚えないって言ってたけど・・・」
ラチメチ  「うん・・・私が勝手に調べちゃったの・・・」
鬱井  「マジで?」
73まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/26(木) 01:57:03
ラチメチ  「あの・・・鬱井あのね・・・」
鬱井  「え?は、はい」
ラチメチ  「先に言うけど携帯はほんとに何も関係ないの」
鬱井  「関係ないって・・・」
ラチメチ  「だから・・・私を襲った人達の事とか」
鬱井  「あぁ、それは昨日会ったから大体わかるけど・・・どうしたの」
ラチメチ  「うん・・・だから・・・その・・・携帯の事は・・・・・・あんまり・・・」
鬱井  「『聞かないで』・・・か」

二人揃って同じような事を言っている。
まぁ事件とは関係ないってのは嘘じゃなさそうだけど・・・

鬱井  「携帯がさ、『ノートを返せ』って言われたって・・・」
ラチメチ  「私が?」
鬱井  「うん」
ラチメチ  「何かの間違いだと思う・・・あの時はノートが何の事かも
     わかってなかったし・・・」
鬱井  「うーん・・・そうか・・・」
ラチメチ  「もしかして鬱井・・・私の事疑ってる?」
鬱井  「え!?いやいやそんなつもりじゃ・・・」

しかし心の中では正直怪しいと思ってしまっていた。
だけどKIRA曰く無理やり言わされたのかもしれないし・・・
74まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/26(木) 02:12:51
ラチメチ  「疑ってるのね?」
鬱井  「ちょ・・・読むなよ心を」
ラチメチ  「やっぱり・・・」

しまった。

鬱井  「いや、でも、うん。そんな訳ないよねラチメチがね。うん」
ラチメチ  「仕方ないよね・・・携帯の事隠してた私が悪いんだし」
鬱井  「と、とにかくKIRAに会おう。ね?」
ラチメチ  「うん・・・ごめんね変な事言って・・・」

すっかり雰囲気が悪くなってしまったので
強引に話を逸らしたが逆にフォローされてしまった。
なんだか無茶苦茶気まずい・・・
それから僕らは公民館まで無言で歩き続けた。

鬱井  「いやぁ着いた着いた。ここもまた相変わらず古いね!」
ラチメチ  「うん・・・」

公民館に着いたので空気を変えようと明るく言ったが
ラチメチは暗い返事だった。

鬱井  「さ、入ろう」

もう泣きそうになったので一秒でも早く
KIRAになんとかしてほしいと思った僕は急いで中に入った。
75キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/26(木) 02:14:55
なんかKIRAとニコフが死体で発見されそうな展開だ
76まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/26(木) 02:22:31
ラチメチ  「KIRAとニコフどこにいるのかな?」
鬱井  「調べるって言ってたけど・・・」
ラチメチ  「あ、じゃあ資料室?かな」
鬱井  「なるほど」

ロビーにある館内見取り図で資料室の場所を確認する。

鬱井  「2階の奥か・・・ていうか多分初めて入るなこんなとこ」

階段を上って奥の資料室に入るとKIRAとニコフがいた。

KIRA  「遅かったな」
鬱井  「あぁ実は・・・」

KIRA達に学校での事を話す。

KIRA  「ふむ・・・そうか」

KIRAは何かの本に目をやったまま言った。
机の上には何冊もの古い本が積まれている。
77まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/26(木) 02:24:35
鬱井  「それだけかよ。いいのかな止めなくて」
KIRA  「全員に華鼬の事を話す訳にもいかんしな・・・」
鬱井  「やっぱ言わない方がよかったんだよな」
KIRA  「それに・・・お前達がさっき会った中にいるのかもしれんぞ」
鬱井  「・・・!そうか、そうだよな・・・・・・もしかすると・・・」
ラチメチ  「それで何を調べてたの?」
KIRA  「ノートの事がわかった」
鬱井  「どういう事だ?」
KIRA  「結論から言うと・・・」

KIRAが本を閉じて僕の方を向く。

KIRA  「あのノートの力はどうやら本物のようだ」
鬱井  「なんだって・・・!?」

KIRAの一言で体が凍りついた。
まさか本当にあのノートにそんな力が・・・
人を殺すほどの力があるとでも言うのか・・・・・・?
78まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/26(木) 02:26:31
42.「準備」/終
79まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/27(金) 00:30:42
43.「裏表」


うだるような暑さの中、
余命を振り絞る様に鳴き喚く蝉の声にうんざりしながら
子供の頃に通いなれた道をひとり歩いていた。

「ふぅ・・・」

額にべっとりと張り付く前髪を掻き分けハンカチで汗を拭う。
あまりの暑さに歩いているだけで倒れそうになり
一休みしようと駄菓子屋に寄る事にした。

「いらっしゃい」

しゃがれた声と共に出てきたこのお婆さんは同級生の祖母だ。

「こんにちは」

軽く頭を下げて挨拶するとお婆さんがにっこり笑う。
80キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/27(金) 00:33:07
(`・д´・;)ゴクリ
犯人か
81まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/27(金) 00:41:26
「アンタもあれかぇ?今からみんなの所に行くんか?」

お婆さんが店の中にある椅子に腰掛けながら聞いてくる。

「はい、これから学校で集まるんです」

そう答えてジュースケースからラムネを取り出し、お金を払う。

「ねるねに会ったら晩飯までに戻るように言っとくれ」

そう言いながらお釣りを渡そうとする手は小刻みに震えている。
自分も年を取るとこうなるのかと思うと吐き気がした。
長く生きる事に何の意味があるのだろう。
こんな醜い姿を晒してまで生きていくなんて考えただけでゾッとする。
だけど当然そんな事は口に出さず笑顔を作ってお釣りを受け取る。

「ありがとう」

もう一度軽く頭を下げて店を出る。
少し離れてからお釣りを受け取った方の手をハンカチでゴシゴシと拭いた。
82 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/27(金) 00:41:46
俺じゃないですかね
83 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/27(金) 00:43:23
あぁ犯人か
84名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/27(金) 00:44:13
老いは醜いって戸愚呂(弟)さんも言ってたよね
85 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/27(金) 00:45:18
やるねェ
86まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/27(金) 01:05:09
「く・・・!」

駄菓子屋で買ったラムネを開けようとしたが開かない。
ラムネの口に玉押しを当てて力いっぱい押すがビクともしない。
子供の頃から自分で開けられた事が一度もない。

「うぅ〜!」

頭にきてラムネの瓶を思いっきり地面に叩きつける。
瓶は粉々に割れてラムネが飛び散り・・・・・・と思ったが割れすらしない。
余計にイライラしてきた。
何か瓶を叩き割れそうな物は無いかと辺りを見回すと
一匹の野良犬が下を出してこちらを見ている。

「あっちいけ!」

なんだか笑われているような気がして、イライラが更に募る。
手を大きく振って追い払う仕草をするが犬は何を勘違いしたのか
尻尾を振りながら近づいてきた。

「来るな!」

近づいてきた犬の腹を思い切りつま先で蹴り上げる。
犬は「ぎゃいん!」と悲痛な叫び声を上げ慌てたように走り去っていった。
その哀れな姿を見て少しだけ気持ちが晴れた。
87名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/27(金) 01:11:00
>下を出してこちらを見ている


いやん(〃∀〃)
88天然ショボーン ◆SoBON/8Tpo :2006/10/27(金) 01:12:52
最近のラムネはプラスチック容器・・・
89まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/27(金) 01:13:05
(*・ω・*) 下×
       舌○ 
90名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/27(金) 01:20:00
危険なにほひ…(;・`д・´)
91まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/27(金) 01:37:08
スッキリしたところでラムネの瓶を拾い上げ砂を払う。
学校に持っていって誰かに開けてもらおうと思ったのだ。
瓶を片手に鼻歌を歌いながら学校へ向かって歩く。
さっきまでの鬱陶しい日差しや蝉の声も急に気にならなくなった。
蒟蒻地蔵が立っているバス停を過ぎ、
公民館の前にさしかかったその時、中から三人の男女が出てきた。

「ショボーンの家ってどっちだっけ?」

一緒にいる二人の女にそう聞いている男の顔を見てすぐに誰だかわかった。
同級生の鬱井だ。一緒にいるのはニコフとラチメチ・・・
思った通り帰って来ていたようだ。彼らを見て不意に口元が緩む。
この三人が帰って来ているならKIRAや他の連中も一緒に違いない。

「確かバス停のとこから真っ直ぐ・・・・・・あ!」

ニコフがこっちに気付いた。
指をさして鬱井とラチメチにその事を知らせる。

「おお!久しぶり。」

鬱井が手を振りながら近づいてきた。
92名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/27(金) 01:39:58
ゆ・・・ゆとり教育の成果ですか!?
93まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/27(金) 01:41:27
(´・ω・`)ムー・・・・
94 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/27(金) 01:45:23
久しぶり・・・・・か
95まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/27(金) 02:06:00
「三人とも久しぶりだね・・・」

駄菓子屋の時と同じように笑顔を作ってみせる。

「ほんと久しぶりだな・・・って、なんかこっち帰ってきてからこればっか言ってる」

鬱井はそう言って頭を掻きながら笑った。

「久しぶりなのによく僕だってわかったね?」

頭を掻きむしる鬱井を上目に見ながらそう聞くと、彼は頭を掻く手を止めた。

「・・・・・・あ、これ?実はいまだに開けられなくて」

鬱井にラムネの蓋の部分を見せると、頭を掻いていた手で瓶を掴む。

「お前も変わってないな・・・ほれ、貸してみ」

返事をする間もなく瓶を取られる。
そして鬱井は造作も無く蓋を開けてしまった。

「うわっ!なにこれ振りまくっただろ!」

勢いよく中身が飛び出し地面にこぼれる。
96名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/27(金) 02:20:24
21世紀少年キター
97まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/27(金) 02:42:12
「あははは!ごめん」

慌てる鬱井を見てつい噴出してしまった。
それでも鬱井は勢いが止まるまで瓶を放さず持っていてくれた。

「もう・・・勘弁してよ・・・はいどうぞ。中身ほとんどないしベタベタしてるけど」

鬱井がふてくされた子供の様な口調で瓶をさし出す。

「公民館で何してたの?」

受け取った瓶をハンカチで拭きながら聞いた。

「久しぶりに帰って来たからちょっと村の歴史をね・・・」

ニコフがさらりとそう答えたが嘘だとすぐわかった。
ここで何を調べてたのかは大体検討がつく。
98まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/27(金) 02:55:22
「ところで・・・もしかして学校行くの?」

鬱井にそう聞かれ頷く。
話を聞くとさっきまで鬱井とラチメチの二人は学校に行っていたらしい。
学校にいる人間に今夜の同窓会の事も聞いたようだ。
これで準備は整ったも同然・・・

「じゃあ今夜、待ってるから」

公民館の前で鬱井達と別れ再び学校に向かって歩き出す。
しばらくしてから振り返り、鬱井達が見えなくなったの確認して
結局一口もつけていないラムネの瓶を田んぼの脇に投げ捨てた。
中身がほとんどなくなったからではなく、
鬱井が頭を掻きむしった手でこの瓶を触ったからだ。
その時どこかでさっきの犬の鳴き声が聞こえた。
また気持ちがざわついてきて、どうしようもなくイライラしてくる。
今すぐにでも殺してやりたい衝動を必死に抑え、
今夜どうすれば鬱井を苦しませてから殺せるかを考えながら学校までの道を歩いた。
99まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/27(金) 02:56:23
43.「裏表」/終
100名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/27(金) 03:00:15
ヒャー!

乙です!
101名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/27(金) 15:31:36
ん?
102携帯ショボーン ◆SoBON/8Tpo :2006/10/27(金) 16:50:15
┃ ∧
┃ω・)
┃o)

うっさん達に「久しぶり」言ってるってことは、あの犯人ぽい人は
今までに名前の出てない誰かということに…
行動は男性ぽい気もしまつが、ラムネの瓶が開けられない非力さから女性かも…
103キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/27(金) 17:04:10
犯人はヲタ
104まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/29(日) 02:13:26
44.「犬」


ショボーンの実家に来た僕達は、
縁側で冷たい麦茶を飲みながら卒業アルバムを見ていた。

ニコフ  「あのさぁ・・・ずっと思ってたんだけど
    なんで鬱井こんな変な顔してるの?」
鬱井 「え・・・あーこれ?これはね・・・」

ニコフが言ってるのは僕とKIRAが並んで写っている写真の事だ。
僕らの学年は2クラスしかないので「それじゃあまりにもページが少ない」
という事でアルバムを厚くする為に年中先生達が写真を撮りまくっていた。
すました顔のKIRAの横でひきつった笑顔をしている僕・・・

鬱井 「これ、ね・・・足がね、つってたんだよねこの時・・・」
ニコフ  「足?なんで?」

僕はKIRAよりほんの何cmかだけ背が低い・・・
並んだ時「負けてたまるか!」と思いつま先で立って写ったのだ。

ニコフ  「あはは!それで足つったの?どうでもいいじゃない」
鬱井 「この時の俺に言ってやってくれよ・・・」
105 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/29(日) 02:19:57
不意打ち
106まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/29(日) 02:32:30
ショボーン「背の順ではいつもうっさんの後ろがKIRAでつたね」
鬱井 「KIRAさえいなけりゃ俺は
    クラスでギリギリ背が高い方にランク入りできたのに・・・」
ニコフ  「鬱井ちょうど真ん中ぐらいだっけ?」
鬱井 「うん、それでさ・・・
    一時期俺の前だった携帯がやたら背が伸び・・・・・・っと」
ニコフ  「ん?」
ラチメチ 「・・・・・・」

別に悪い事言ってる訳じゃないがなんとなく携帯の名前が出しづらい。

鬱井 「そ、そういやラチメチも女子で真ん中ぐらいだったな」

僕はとっさにどうでもいい事を口走ってしまったがこれがまずかった。

ラチメチ 「ん・・・途中まで7番目だったけど・・・二学期からは、ほら・・・」
鬱井 「あ・・・」

僕達のクラスは6年に上がってから卒業するまでに男子と女子が一人ずつ減っている。
携帯が転校した後にLコテが・・・
しかもラチメチにとってLコテは・・・・・・
107まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/29(日) 02:51:11
鬱井 「え、えーとね・・・そうだ!ニコフとアンキモもいっつも前と後ろだったね」
ニコフ  「え・・・うん」

やべえ、すげぇどうでもいい・・・

鬱井 「お、俺もなーもうちょい背があればなー。
    おっかけまでとは言わないけど蟹玉ぐらいあれば・・・
    やっぱ180以上は欲しいなぁ。ゴメンなニコフ」
ニコフ  「は?何が?」
鬱井 「あ!?い、いや何も」

しまった・・・テンパってつい訳のわからない事を・・・

鬱井 「あーもう昼だな!さて、先生の家に戻ろっかな!?」
ニコフ  「はぁ・・・」

なんだかいたたまれなくなった僕は
ニコフ達を置いてさっさとショボーンの家を出てしまった。
ニコフとラチメチも僕に続いて出てきたが、なんとなく気まずくて
二人と微妙に距離を取りながら先生の家まで逃げるようにして帰る。
108 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/29(日) 02:59:20
なんかの伏線なんでしょうか
109名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/29(日) 03:02:32
ニコフ達を置いてさっさとショボーンの家を 出 て し ま っ た 辺り
110名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/29(日) 03:04:11
111 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/29(日) 03:05:41
身長とか ?
112名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/29(日) 03:08:06
>>109
どーゆー事?
113名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/29(日) 03:08:56
出た じゃなくて 出てしまった にしたあたり
に含みを感じたとか感じなかったとか
114名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/29(日) 03:11:44
先生の家に着くと、玄関の前で蟹玉とアンキモがしゃがみこんでいる。
よく見ると犬にエサをやっているようだ。

鬱井 「何してんの?」
アンキモ 「あ、お帰り・・・」
ニコフ  「その犬?」
蟹玉 「先生の命の恩犬さ・・・」
アンキモ 「また大げさな・・・」
鬱井 「え?どういう事?」
アンキモ 「鬱井達がここ出てった後にさ、先生が庭の掃除するって外に出たの」
蟹玉 「一時間ぐらいして・・・庭で彼の鳴き声がしてね・・・・・・」
鬱井 「彼?」
アンキモ 「この犬」
蟹玉 「俺が外に出てみると先生が倒れていて・・・その傍らに彼がいたのさ」
鬱井 「え!?先生が!?」
アンキモ 「あぁ大丈夫よ。今、上で寝てるけどもう落ち着いたみたい」
蟹玉 「どうやら暑さにやられたみたいさ・・・」
ニコフ  「そっか・・・よかった」
ラチメチ 「それでこの犬にエサあげてるの?」
蟹玉 「あぁ・・・今日から彼はこの家の一員さ」
鬱井 「飼うのかよ」
アンキモ 「首輪してないし野良だとは思うんだけどねぇ・・・」
115まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/29(日) 03:12:45
やべぇwww名前入れ忘れてたス(;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;・ω・´)
自演がバレるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
116名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/29(日) 03:14:39
つまり>>112がまりあさんですか
117 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/29(日) 03:17:38
語録に追加しました
118まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/29(日) 03:24:25
蟹玉 「マスターが彼の事を気に入ったみたいでね」
鬱井 「ふぅん・・・そういう事ね。名前は?」
蟹玉 「さぁ・・・先生が起きてから決めるんじゃないかい?」
ゲロッパ「そいつの名は“げろっぱ”に決めたよ」
鬱井 「ふえ!?」

突然先生の声が聞こえた。
が、先生はいない・・・
ま、まさか天に召されたのか!?

鬱井 「う、うわああ!せ、先生もうバケて出たのか!?」
ニコフ  「ちょっと!何縁起でも無い事言ってんの鬱井!上よ!」
鬱井 「う、上!?」

ニコフに言われ上を見ると二階の窓から先生が顔を出していた。

鬱井  「び、びっくりした」
アンキモ  「げろっぱって・・・自分の名前じゃん」
ゲロッパ 「はっはっは・・・」
蟹玉  「そうかい・・・改めてよろしくなげろっぱ・・・・・・」
げろっぱ「わおん!」
鬱井  「犬に自分の名前付けるなんて・・・」
ラチメチ   「う、うーん・・・」
鬱井  「犬を形見にする気か?」
ニコフ   「鬱井!」
鬱井  「ご、ごめん」

ニコフに怒られた。
でもほんとにそういうつもりで名付けたんじゃないだろうか。
119名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/29(日) 03:26:02
げろっぱ!
120 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/29(日) 03:28:44
やっぱ怪しいんですよ
最初っからイノセンス登場時から発作のフリじゃないんかと

いや、病気は本当なんでしょうけど
121 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/29(日) 03:30:41
>>120が日本語おかしいとかいうやつは俺のスレに文句タレにきなっ
122まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/29(日) 03:51:42
アンキモ  「なんでこんなとこ怪我したのかな」
ニコフ   「変だね。他は全然なんともないのに」
鬱井  「まさかアンキモ・・・」
アンキモ  「はぁ!?私が何よ?ぶっ殺すわよアンタ」
鬱井  「じょ、冗談だろ。キレすぎだよお前・・・」
アンキモ  「あ?アンタがくだらない事言うからでしょ」
ポニー  「おーいみんな、昼飯出来たぞー」
鬱井  「あ、わ、わーい!待ってましたー!」
アンキモ  「ちょっと!謝りなさいよ!」

アンキモを華麗にスルーして家の中に入ると
ポニーさん手作りの冷やし中華が出来ていた。
みんなで並んで座り手を合わせる。

鬱井  「いたーだきーまっす!」
ニコフ   「恥ずかしい・・・」
蟹玉  「昔に戻った気分さ」
鬱井  「みんな残すなよ。残したら校庭一周な」
アンキモ  「一人で走れば」
鬱井  「うるせーノリ悪いな」

せっかく昔っぽくしてやったのに・・・
123まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/29(日) 04:00:44
ふと時計に目をやると午後一時を過ぎていた。
僕は冷やし中華を食べながら携帯の事を思い出した。

鬱井  「あのさぁ・・・今ってこの村、一日何本ぐらいバス出てるのかな」
ポニー  「あぁ、一日ニ本出てるはずだ。今日だと後は夕方の一本だけだな」
鬱井  「あ、そうですか・・・」
ニコフ   「なんでそんな事聞くの?」
鬱井  「いや・・・別に・・・うっぷ食べ過ぎた・・・ごちそうさまえふ・・・」

食べ終わった僕は苦しくて横になった。

もし携帯が夕方に来たなら同窓会には間に合うかな・・・
僕はすっかり華鼬の事を忘れ、純粋に同窓会を楽しみにしてしまっている自分に気付いた。
ほんとは浮かれてちゃダメなんだろうけどやっぱりみんなに会いたいという気持ちも大きい。
まだ会ってない他の奴らはどんな大人になってるんだろうか・・・
そんな事を考えていると眠気が襲ってきた。

鬱井  「ごめんニコフ・・・ちょっとだけ寝るわ・・・」
ニコフ   「あっそう・・・起こさないよ」
鬱井  「そんな事言わな・・・・が・・・ま・・・・・・」


そして目覚めると、夜。
結局ニコフは起こしてくれなかった。
124まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/29(日) 04:01:40
44.「犬」/終
125携帯ショボーン ◆SoBON/8Tpo :2006/10/29(日) 08:36:42
わんこが出た時一瞬負け犬さんかと…
126キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/29(日) 14:35:51
鬱井が三枚目キャラになってきた
127名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/10/29(日) 21:41:46
鬱井と携帯は何故か最初から三枚目っぽいイメージがある
128姪探偵ユメソ:2006/10/29(日) 22:06:36
この事件、私が解決してみせるわ!
129まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/30(月) 00:44:59
45.「寄道」


ニコフ  「鬱井!いい加減起きて!」
鬱井 「ふぁぶっ!?」

ニコフに叩き起こされると既に夜になっていた。

アンキモ 「ったく何時間寝てんのよ」
鬱井 「だって・・・昨日全然寝れなかったんだもん・・・」
KIRA 「ガキめ」
鬱井 「おぉKIRA・・・帰ってたのか」

いつの間にかKIRAも戻ってきている。

KIRA 「いつまで寝てるんだ。もう行くぞ」
鬱井 「行くって・・・どこへ」

まだ頭が回っていない僕は寝転んだままKIRAに聞いた。

ニコフ  「どこって学校よ」
鬱井 「・・・・・・あぁ!そうだったな」
KIRA 「やっぱりお前は来なくていい・・・寝てろ」
アンキモ 「留守番よろしく」
蟹玉 「後は頼んだよ・・・?」
鬱井 「ちょっ・・・待てよ!」

ほんとに置いて行かれそうになったので飛び起きて上着に袖を通す。
130キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/30(月) 00:46:41
どじッ子鬱井ワロス
131まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/30(月) 00:55:21
ポニー 「早くしろ。鍵閉めるぞ」
鬱井 「ま、待って下さいって!」

ポニーさんが戸を閉めようとしたので足をひっかけて止める。
もう少しでポニーさんと二人っきりでお留守番させられるところだった。

鬱井 「いよいよだな・・・ドキドキしてきた」
ニコフ  「うん・・・」
鬱井 「今日でほんとに・・・あれ?先生は?」

よく見ると先生がいない事に気付いた。

アンキモ 「あぁ、先生はちょっと寄る所があるって・・・先に出たよ」
鬱井 「寄る所?」
KIRA 「・・・・・・」

学校へ向かう途中、蒟蒻地蔵が立っているバス停でショボーンと合流する。

KIRA 「ショボーン、どうだった?」
ショボーン「ごめんなさひ・・・一応少し探してみたんでつけど・・・」
KIRA 「そうか。まぁ仕方ない」
鬱井 「何の話だ?」
KIRA 「お前が寝ている間にもみんな動いていたんだ。
    役立たずは知らなくていい」
鬱井 「うっ・・・そ、そんな言い方しなくてもいいだろ・・・」

僕が寝てた事をKIRAは怒っているようだ。
何の話か教えてもらえなかった。
132 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/30(月) 01:29:10
えっ 一晩で完結しちゃうんでしょうかね
133キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/30(月) 01:32:09
でも二部も一部みたいに四夜くらいやるんじゃね?
あと35話くらい
134まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/30(月) 01:34:02
肝禿橋を越え学校に着くと、門の前に手製の看板が立っていた。

ニコフ  「6年2組同窓会会場案内・・・だって」
ラチメチ 「昼前に来た時はなかったのに」
イノセンス 「案内されなくても教室ぐらい覚えてるけどな」
鬱井 「・・・ど、どっちだっけ・・・・・・」
アンキモ 「忘れたの?さすが鬱井」
KIRA 「北校舎の四階だ」
鬱井 「あぁ・・・そうだったね」
蟹玉 「さぁ・・・・・・入ろうぜ?」

階段を上がり四階へ。
四階へ上がると教室の方から賑やかな声が聞こえてきた。

アンキモ 「もうみんな来てるっぽいね」
鬱井 「やべぇ緊張してきた・・・」
KIRA 「怖いなら帰れ」
鬱井 「はぁ!?誰が怖いって・・・」
シニア「ちょ、うっさん邪魔邪魔。早く入ってよ」
イノセンス 「ほら早く開けて早くほら」
鬱井 「うぇっうっっ・・・ふぁ」

みんなに押されてドアを開ける。
開ける瞬間僕の緊張はピークに達していた。

鬱井 「みふぃ、みんなー!ひっさしぶひ〜!?」

ドアを開けた瞬間、
中にいたみんなの視線が僕に集まり教室は一瞬で静まり返った。
135キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/30(月) 01:49:54
それって…ニコフ起こしてくれなかったっていう「犬」の末尾から『いい加減起きて』の「寄道」の冒頭のことかい
136まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/30(月) 01:57:50
鬱井 「あふぁっ・・・う、うついでしゅよ!?」

みんなが呆然として僕を見ている。
や、やばい部屋を間違えたのか!?
いやでもそんなはずは・・・・・・あれ!?

イノセンス 「だから・・・邪魔だって!」
鬱井  「ひゃうっ・・・」

イノセンスに後ろから突き飛ばされる。
その瞬間みんなが爆笑しながら僕を指差す。

ヲタヲタ 「やっぱ鬱井だな。変わってねー」

ベジータみたいな髪型したヲタヲタがニヤニヤしながら言う。

シーウーマン「がっははは鬱井ショボすぎ!」

涙目になるほど爆笑してるのはシーウーマンだ。
他のみんなの笑い声をかきけすほどのでかい声で狂ったように笑っている。
隣にいるキラヲタが両手で耳を押さえていた。
137まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/30(月) 02:15:06
鬱井 「な、なにがおかしいんだ!なにもおかしくなんかないもん!」

あまりにみんなが笑うので泣きそうになる。

アンキモ 「もうみんな来てるね。これで全員?」

教室を見渡すと昼前に会った奴らや他のみんなも来ている。
これで十数年ぶりにあの時のクラスメイト全員が揃った。


この中に葉書を送った人物がいるのだろうか・・・・・・?



僕にとって忘れる事の出来ない長い夜が始まった。
138まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/30(月) 02:16:05
45.「寄道」/終
139まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/31(火) 00:57:47
46.「挙手」


ゲロッパー「ふぅ・・・・・・おぉ、もうみんな集まってたのか」
イノセンス 「やっと来た・・・・・・と思ったら死にかけてるじゃん」
ゲロッパー「階段がきつくてな・・・はぁ」

僕達に遅れる事5分。
先生が息を切らしながら教室に入ってきた。

インリン 「うおお!先生!」
参号丸「お久しぶりですぅ」
アルケミ 「お元気でしたか・・・!」

みんな先生にかけよって再会の挨拶を交わしている。
中には涙を浮かべている女子までいやがる。
僕が入って来た時は笑ってたくせにどういう事だ。

インリン 「よっしゃ先生も来た事だし始めっか!」
ミサキヲタ 「みんなグラスを持ってくださーい」

インリンとミサキヲタが黒板の前に立つ。
140キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/31(火) 00:58:32
ヲタは犯人から除外・・・!?
141まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/31(火) 01:07:16
インリン 「只今よりぃ、97年度ぉ肝禿小学校6年2組卒業生による
    同窓会をぉ始めます!えー・・・」
ミサキヲタ 「それでは・・・カンパーイ!」
インリン 「っおい!まだ途中・・・」
一同 「かんぱーい!」

みんなで高々とグラスを掲げる。

インリン 「んじゃこっからフリートークタイムです!」
ミサキヲタ 「みなさん存分に語らってくださーい」
鬱井 「いや〜まさか教室でビールとは・・・なんだろうねこの背徳感!」
ニコフ  「なんか変な感じだね」
鬱井 「あー楽しくなってきた!ちょっとみんなとお喋りしてくる!」

グラスを片手に教室内をうろうろしてみた。

鬱井 「おっミサキヲタ」
ミサキヲタ 「久しぶりね」

さっき乾杯の音頭を取っていたミサキヲタに話しかけてみた。

鬱井 「相変わらずでっけぇなはっははは・・・」

ミサキヲタはかなりの長身で僕より少し背が高い。
中学のバレー部ではエースだった。
142まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/31(火) 01:19:10
ミサキヲタ 「アンタも相変わらず失礼ね」
鬱井 「いやいやそんなつもりじゃ・・・誉めてんだよ。
    バレーまだやってんの?」
ミサキヲタ 「やってるわよぉ。全日本に選ばれそうだし」
鬱井 「マジでー?すげぇ」

いやいやまさかそんなに頑張ってたとは・・・感心感心。

クロス「何を一人で頷いてるんだい?」
鬱井 「おぅ・・・!ク、クロスか。いやなんかこう感慨深いものがね・・・」
クロス「ふふ・・・・・・10数年ぶりだものな」

と、斜に構えて話すのはクロスだ。
こいつは蟹玉とは少し違うタイプのアレな人なのでどうも絡みづらい。

鬱井 「だ、だよねーはははは・・・」

苦笑いしながら逃げるようにクロスから離れる。

鬱井 「ん・・・?」

ふと目に留まったのはシニアと下ネタだ。
教室の隅っこで何やらボソボソと話している。
143まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/31(火) 01:39:31
下ネタ「・・・っからよ。いいっしょ!?な?」
シニア「うぜぇ。消えてよ」
下ネタ「あれあれ?いいんか?そんな態度とっちゃって」
シニア「は?それで脅してるつもり?」

何か・・・言い争ってる?

下ネタ「じゃーあ今からここで言っちゃうよ?いいの?」
シニア「・・・いいけど、ならこっちにも考えが───」
鬱井 「なに話してんの?」
下ネタ「うぉビビった!聞いてんなよ鬱井!」
シニア「・・・」
鬱井 「なんだよ・・・なんか喧嘩してなかったかお前ら」
下ネタ「べっつにぃ〜」
鬱井 「おい・・・」

僕が来ると下ネタはさっさと別のグループの所に行ってしまった。

鬱井 「・・・なんかあったの?」
シニア「べっつにぃ〜」
鬱井 「ちょ、お前もかよ」

何があったのか聞こうとするとシニアも僕から離れて行く。
なんなんだ一体・・・・・・
144まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/31(火) 02:09:20
インリン 「はーいみんなこっち向いてー」
鬱井 「なんだ・・・?」
インリン 「えーみなさんある日突然葉書が届いたと思うんですけどもー」
鬱井 「・・・!」
ミサキヲタ 「その葉書を送った人〜『ぶっちゃけ俺だ!私だ!』って人〜?」
鬱井 「マジで・・・?」

みんなキョロキョロと教室中を見回すが・・・

インリン 「あれ〜誰も名乗り出ないのかよー!」

一瞬もしかして・・・と思ったが名乗り出る者はいなかった。

ミサキヲタ 「じゃあ質問を変えて・・・葉書に『ノート持参』と書かれてた人〜?」

この質問には反応があった。

僕と一緒に来ているメンバーでノートの事が
書かれていたニコフ達は手を上げている。

そしてその他にも手を上げている人間が何人もいた。

インリン 「うわ多いな・・・半分ぐらいじぇねぇか」
ミサキヲタ 「うーんこの中に葉書を出した人がいるんでしょうか・・・多すぎですね」
インリン 「葉書出した奴が名乗り出ないとノートの意味がわかんねぇな・・・」
ミサキヲタ 「一応聞きますが・・・みんな何のノートの事かわかってるよね?」

みんな頷く。
145キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/10/31(火) 02:15:40
え、こういう展開!?
146 ◆K.tai/y5Gg :2006/10/31(火) 02:26:35
今のところKIRA連中視点でセリフが出てない男女キャラと、先生との三人が黒幕


って勝手な予想
147まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/31(火) 02:38:14
インリン 「そんじゃズバリ聞くけど・・・あのノート持ってるってこの中に・・・」
バジル「よそうよ・・・」

インリンの質問を遮ったのはバジルだ。

インリン 「なんだよ」
バジル「あのノートの話なんて今しなくてもいいだろ・・・」
インリン 「あ?何だよ別にいいだろ今更」
バジル「今更だって言うならそんな話するなよ。
    みんな思い出したくないだろそんな事」

バジルの言葉で教室が静まり返る。
確かにいくら十何年経ったからといって笑い話に出来るような事じゃない。

インリン 「な、なんだよ・・・俺はみんな気になってると思ったから・・・」
バジル「だからって・・・」
ミサキヲタ 「え、えぇ〜ではぶっちゃけコーナー終了です!」

なんだか雰囲気が悪くなりミサキヲタが強引に話を終わらせてしまった。
148まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/31(火) 02:53:33
ミサキヲタ 「じゃ、じゃあ気分を変えて次のコーナーに・・・」
インリン  「えーと・・・次は夏と言えばコレ!肝試しです」
鬱井  「き、肝試し・・・?」
ミサキヲタ「まずこの北校舎の一階にある3年1組の教室に牛乳瓶が置いてありますので
    それを取って南校舎にある給食室に向かってください。
    給食室の冷蔵庫に牛乳パックが入ってますので
    牛乳を瓶に移して下さい」
インリン 「それから校舎を出て体育館に向かって下さい。
    体育館の中にミルメークが人数分あるんでそれを取って
    ここまで戻ってくるように」
インリン 「冷蔵庫はちゃんと動いてるし牛乳もちゃんと冷えてるんでご心配なく。
    牛乳瓶も洗ってあるから大丈夫」
鬱井 「マ、マジでやんの?」
ニコフ  「怖いの?」
鬱井 「いや・・・・・・・・・・・・うん」
ミサキヲタ「出席番号順にスタートして5分置きに
     男子1番→女子1番→男子2番→・・・という順番です」
インリン 「じゃ、男子1番アルケミからスタート!」
鬱井 「ちょ・・・もうかよ!まだ心の準備が・・・」
149まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/10/31(火) 03:03:19
46.「挙手」/終


ほんとごめんなさい
中途半端だけど今日はここで終わり
すいません☆
150名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/01(水) 09:18:42
ほしゆ
151名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/01(水) 23:20:40
姐さんの発想力に脱帽
152まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 00:23:31
47.「順番」


止める間もなくいきなり肝試しが始まってしまった。
僕は足が震えているのをみんなに悟られないように
教室の隅っこで自分の順番を待つ。

インリン 「よし五分。次イノセンスGO!」
イノセンス 「はいはい・・・」

開始から十分。三人目のイノセンスがだるそうに教室を出て行く。

九州 「どうしたの?」
鬱井 「あ、いや・・・な、なんでもないよ」

次に教室を出て行く九州が僕に話しかけてきた。

九州 「鬱井、足震えてない?」
鬱井 「ばっ・・・馬鹿言っちゃいけないよ君?」
九州 「だってほら・・・」

九州が僕の足を指差す。
153 ◆K.tai/y5Gg :2006/11/02(木) 00:30:57
をっと
154 ◆K.tai/y5Gg :2006/11/02(木) 00:32:19
どうしても金田一くんのアノ事件が出てきてしまう
155まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 00:45:37
鬱井 「いやぁちょっとね。さっきワクワクしてそこでスクワットをね・・・
    筋肉痛だよ、うん」
九州 「ふふふ・・・じゃあそういう事にしといてあげる」
インリン 「よし次、九州GO!」
九州 「はーい」
鬱井 「き、気をつけてね!」
九州 「鬱井もね」

九州が出て行った。
これで僕の前にあと四人。
やべぇトイレ行きたくなってきた。
今のうちに行っとこうかな・・・
じゃないと万が一途中で・・・・・・

ニコフ 「う・つ・い」
鬱井 「ひぁ!?」
ニコフ 「やっぱびびってるでしょ?トイレ行っとかなくて大丈夫?」

ニコフがニヤニヤしながら話しかけてきた。

鬱井 「ニ、ニコフまでなーにをくだらない事を・・・・・・ぜんぜんびびってないよ!」
ニコフ 「あ、そう・・・ならいいけどね」

くそ!これでトイレに行くわけにも行かない・・・
156まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 00:56:23
インリン 「んじゃ次は俺ね。行ってきまーす」

インリンも出て行く。

更に五分。

ミサキヲタ「じゃ次キラヲタ」

これであとugoとsaokoの二人。
心臓の鼓動が速くなってくる。
僕は気を紛らわせたくて進行を務めているミサキヲタに話しかけた。

鬱井 「あ、あのさぁ・・・もう始まってからだいぶ経つけど
    まだ先頭のアルケミも帰って来てないよな?」
ミサキヲタ 「えーっと・・・」

ミサキヲタが時計を見る。

ミサキヲタ 「ほら、鬱井・・・ほら、ほら」
鬱井 「え?え?な、なになになに?」

ミサキヲタが僕をグイグイと押す。

鬱井 「ちょちょ・・・コケるって・・・なんだよ!」

押され押されて教室の前のドアに追いやられる。
157まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 01:04:58
ミサキヲタ 「そろそろかな・・・」
鬱井 「は?な・・・」

なにが?と言おうとした時、突然背後のドアが勢いよく開いた。

鬱井 「ぎ、ぎやあああああああああああああああああ!!!」
アルケミ 「う、鬱井?どうしたんだよ・・・鼻水出てるぞ・・・」
鬱井 「アファッ・・・ア、アルケミ!?」
ミサキヲタ 「だはははは!鬱井ダッセェーーーーーーーー!!!」
鬱井 「な、なんだよこれは!どういうつもりだ!」

鼻水を拭きながらミサキヲタに詰め寄る。

ミサキヲタ 「ここを出てから約25分・・・計算通りね」
鬱井 「25分?」

言われて時計を見ると確かにそれぐらい時間が経っている。

鬱井 「全部回ってもそんなにかかるのか?そんな広くないだろ」
ミサキヲタ 「ま、行けばわかるって・・・後は出てからのお楽しみ」
鬱井 「マジで・・・?」

25分も一人でこの夜の学校を往けと・・・・・・?
怖すぎる・・・でも言えない・・・
158まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 01:10:38
ugo 「じゃ、行ってきます」

ugoも出ていく。
僕の前にはあとsaokoのみ・・・・・・

アンキモ 「ただいまー」

アンキモが帰ってきた。

鬱井 「ど、ど、どうだった!?」
アンキモ 「はぁ?」
鬱井 「いや、あのー・・・ト、トラップとかあるのかな?」
アンキモ 「それはねぇ・・・・・・」
鬱井 「・・・・・・!」
アンキモ 「ふっふっふ・・・」
鬱井 「ちょ、言えよ!」
アンキモ 「何びびってんのよ」
鬱井 「び、びびびびってない!」
アンキモ 「じゃあいいじゃない・・・」
鬱井 「・・・・・・そ、そうだね」

とかやってる間にsaokoも出ていく。

鬱井 「い、いよいよか・・・」

緊張がピークに達したその時、イノセンスが帰ってくる。
159まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 01:21:19
イノセンス「いやー凝ってるね。てか手間かかってるね無駄に」
鬱井 「ど、どんな風に!?」
イノセンス「あ?どんなって・・・ここ出て」
ミサキヲタ「はい鬱井どぞー」
鬱井 「あっあっ・・・まだ・・・」
ミサキヲタ「ほら早く!つかえるから」
鬱井 「あぁ・・・ニ、ニコフー!」
ニコフ 「ばいばーい」

ミサキヲタに突き飛ばされ強引に教室の外に出された。

鬱井 「うぅぅぅわぁ〜こここここここえぇぇぇえぇ暗れぇぇぇえぇえ」

教室を出ると廊下は真っ暗だった。
廊下の窓から差し込む月明かりでなんとか足元が見えるぐらいだ。
来る時はみんな一緒だったから怖くなかったのに・・・

鬱井 「ま、まるで別世界だ・・・・・・ん?」
160まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 01:31:14
僕は教室の後ろのドアから出た。ていうかみんなそうだ。
ドアを出て右に行くとすぐにトイレになっていてトイレの横はもう階段だ。
ドアを出て左は廊下が続き、突きあたりが曲がり角になっている。
曲がり角を曲がると渡り廊下になっていて
そこを真っ直ぐ行くと南校舎の階段の踊り場だ。
階段を一番下まで下りて渡り廊下を渡ると玄関になっている。
来る時はそのルートで来て教室の前のドアから入ってきたんだが・・・

鬱井 「なんだこれ・・・ベニヤ板・・・」

廊下の、ちょうど教室の中央にあたるスペースがベニヤ板で封鎖されている。
しかもおもりまでついていてちょっと一人では動かせそうにない。
そういえばさっきのトークタイム中に何人が外に出て
ゴソゴソやってたのを思い出した。
なるほどこうすれば出て行った者と帰ってくる者がかちあう事がない。

鬱井 「無駄な演出しやがって・・・さて先に用を足して行こうかな・・・」

怖さを忘れようと無駄に独り言を喋りながらトイレに入った。

鬱井 「お、トイレは電気つくのか・・・」

ホッとしてチャックを下ろしながら便器に向かおうとしたその時、

鬱井 「うぐぁ!?」

トイレの奥にある窓に何かが動いたような影が写った。
161まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 01:43:29
鬱井 「あわわわわ・・・」

思わず腰が抜けそうになりその場にしりもちをついてしまった。

鬱井 「・・・・・・あ、もしかして・・・?」

ある事を思い出して立ち上がり窓に近づく。

鬱井 「やっぱり・・・これかよぉびびらせんな馬鹿野郎・・・」

窓を開けると校章が入った旗が揺れていた。

鬱井 「そうだそうだあったなこんなん・・・
    変な位置に立てやがってちくしょう・・・」

僕は一番奥の便器で用を足しながら窓の外を見ていた。

向こうに北校舎と同じく四階建てになっている南校舎が見える。
北校舎と南校舎の間は中庭になっており、
休み時間に中庭でキャッチボールをして先生に怒られたり
この旗のポールをよじ登って怒られたりしていたのを思い出した。

鬱井 「なんでこんな怒られてばっかりなんだ俺は・・・」
162まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 01:55:42
手を洗って外に出る。
既に2分は経った。
早くしないと僕の次の参号丸が出てきて一緒に行くはめになってしまう・・・
そうなったら帰った時にニコフ達に何を言われるかわからない。
暗がりで足元がよく見えなかったが僕は急いで階段を下りようとした。
が、階段はマジで暗かった。廊下の月明かりもほとんど届かず
本当に真っ暗だ。これはかなり慎重に行かないと怪我するかもしれない。

鬱井 「こ〜えぇよぉ・・・つーかあぶないだろぉこれはぁ常識的に考えて・・・」

そろりそろりと階段を下りる。

鬱井 「くんなよぉ・・・なんも出てくんなよぉ・・・」

階段を下りて左に曲がると4階と同じようにトイレがあり
それを過ぎると3年2組の教室で、1組の教室はその隣だ。
ちなみに2階は4年生、3階は5年生となっている。

鬱井 「あーこえぇ・・・中からなんか飛び出したりしないだろうな・・・」

ドキドキしながら教室のドアを開ける。
163まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 02:07:17
鬱井 「・・・・・・なにもないね?ないよな?」

どうやら仕掛けなどは無いようだ。
胸を撫で下ろし教室の中を見渡すと部屋の中央に机が並べられているのに気付く。
机の上にはたくさんの牛乳瓶が並べられていた。

鬱井 「これか・・・」

瓶を一本取ってさっさと教室を出た。

鬱井 「あら、ここも封鎖されてんのか・・・」

教室を出て左に行くと曲がり角になっていてそこを曲がると玄関だ。
が、その曲がり角の所が4階と同じ様に封鎖されている。

鬱井 「じゃあ中庭を通って行くのか・・・」

中庭に通じる道は一階の階段の裏にある扉からでないと出れない。
僕は来た道を戻って扉から中庭に出た。

鬱井 「うわぅ!」

扉を開けると、理科室に置いてあるはずの人体模型が立っていた。
164まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 02:15:11
鬱井 「もう・・・やめろよなぁ・・・」

軽く半泣きになりながら中庭を歩く。
反対側の校舎、つまり南校舎にも同じ様な扉がついていて
そこからしか南校舎には入れない。

鬱井 「やだな・・・これ開けたらまたなんかあんだろ・・・知ってるよ・・・ぶへっ!」

扉を開けると紐で吊るされた蒟蒻が僕の顎にヒットした。

鬱井 「やめろよぉ・・・こういう系はぁ・・・」

来るとわかっていたけどやっぱり怖い・・・
ベタだけど僕には効果抜群だった。

鬱井 「・・・は!?こ、この高さはもしや!?」

その時僕の体に稲妻が走り、ある事を思いついてしまった。

鬱井 「この高さ・・イケる!」
165まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 02:24:30
蒟蒻がちょうど僕の顎から首ぐらいまでの位置にある。
つまりこの位置は・・・・・・

鬱井 「ニコフの唇の高さとなる!わーい!」

僕はニコフの唇が来るであろう位置に3回ほど濃厚なキスをしてから校舎に入った。

校舎に入るとすぐが階段になっている。
左に行くと体育館に通じる扉があり、右は教室が並び向こうにも階段がある。
しかし例によってベニヤで封鎖されていて右には行けないようになっていた。
仕方なく階段を上がる。

鬱井 「こっちの階段も暗いよぉ怖いよぉ・・・」

階段を上がると一階と同じく反対側までズラっと部屋が並んでいる。
この階には職員室、校長室、応接室などがあり、
それらを過ぎると階段の踊り場に出る。
給食室は踊り場を更に過ぎた所、つまり一番奥にある。
166まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 02:43:31
鬱井 「あぁよく呼び出されたなぁ・・・・・・ぬおっ!?」

昔を思い出し、職員室を見ながら歩いているとベニヤ板にぶつかった。

鬱井 「いてーな!暗くて見えないだろ!バーカ!」

誰にと言う訳でもないが思わず文句を言ってしまった。

どうやら職員室の中を抜けていけという事らしい。
ベニヤ板に打ちつけた鼻をさすりながら後ろのドアから中に入る。

職員室の中は机や椅子で迷路のようになっていて
所々にシーツで掃除用具入れを包んで作ったオバケっぽいのや
音に反応して動くおもちゃなどが仕掛けられていた。

鬱井 「もう・・・迷路要素まで盛り込まなくていいのに・・・」

暗くてよく見えないせいもあって職員室を出るのに少し時間がかかった。

職員室の前のドアから廊下に出て奥に向かって歩く。
階段の踊り場にもベニヤ板が設置されていて階段が使えないようになっていた。
167訂正まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 02:46:35
すいません間違いです

>階段の踊り場にもベニヤ板が設置されていて階段が使えないようになっていた。

これは嘘です。
無かった事にしてください。
168訂正まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 03:47:30
鬱井 「で、ここで牛乳を入れると・・・」

給食室に入って冷蔵庫を開け、中からパックを取り出し中身を瓶に移す。

鬱井 「そんで・・・これに名前書くのか?」

冷蔵庫の扉に紙が貼ってあり、紐で吊るされた鉛筆がぶら下がっている。
紙には『チェックポイント』と書かれており
僕より先に出た者の名前が書かれている。

鬱井 「うーつーいっと・・・」

自分の名前を書いて給食室を出る。

鬱井 「そんで体育館か」

給食室を出てすぐの階段を下りて玄関へ。

鬱井 「ん?張り紙がしてある」

“体育館へはグラウンド側から回ってください”と書かれていた。
張り紙の指示に従ってグラウンド側から体育館へ。
中に入るとまた迷路になっていた。
しかも職員室と違いベニヤで作られており結構本格的だ。
169まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 03:54:31
鬱井 「なるほど・・・無駄に凝ってるな・・・」

イノセンスの言葉を思い出しながら迷路を進む。

何回か行き止まりにぶかりながら迷路を進むと
長机が置いてある少し広い空間に出た。
どうやら中間地点らしい。
長机の上にはミルメークが置かれていた。
そしてその隣に紙と鉛筆があり、『チェックポイント』と書かれている。

鬱井 「はいはい・・・うーつーいっと」

ミルメークをゲットして、紙に名前を書き
更に迷路を進むと体育用具室のドアが見えた。
ドアを開いて中に入る。

鬱井 「で、ここから出る・・・と」

外に通じる扉があり『ここから出てください』と書かれた張り紙がしてあった。

鬱井 「これであとは戻るだけ・・・か」

体育用具室から外に出ると看板が立っていて矢印が書かれていた。
それに従って進むと同じ様に看板がありまた矢印の方に進む。
そのまま矢印に従って歩いていくと玄関に戻ってきた。

鬱井 「意外と会わないもんだな・・・」

帰りには玄関を通らなければならないので
ほんの少しタイミングがずれればこれから外に出ようとする誰かに会いそうだ。
170まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 03:55:38
南校舎の階段を上って四階に上がり、渡り廊下を通って北校舎へ。

鬱井 「ふぅ・・・やっと着いた」

教室の前のドアを開けてゴール。
壁にかかった時計を見るとやっぱり25分ほどだった。

鬱井 「いやーただいまみんな。楽勝だねこんなもん!」

胸を張って教室に入ったが誰も僕の方を見なかった。

鬱井 「ねぇ!ただいまってば!」
ニコフ  「あぁお帰り鬱井・・・」
鬱井 「リアクション薄いな・・・」
ニコフ  「鬱井、途中でキラヲタ見なかった?」
鬱井 「え・・・?見てないけど・・・・・・」
ミサキヲタ 「まだ帰って来てないのよ・・・」
鬱井 「なんだって・・・?」

教室を見回すと確かに僕の前に出たキラヲタの姿が無い。
キラヲタの後に出て、僕より先に出たugoもsaokoも帰って来ている・・・
まさか・・・・・・何かあったのか・・・・・・?
171まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 03:57:05
47.「順番」/終
172名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/02(木) 09:56:08
うついのへんたーい
173まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/02(木) 23:59:49
48.「中止」


インリン 「え・・・と、次はシニアの番だけど・・・」
シニア「・・・・・・」
KIRA 「待て・・・中止だ。行くなシニア」
鬱井 「KIRA・・・」

順番が回ってきたシニアをKIRAが止めた。

ミサキヲタ 「ちゅ、中止って・・・」
KIRA 「全員戻ってくるまでキラヲタが戻ってこなかったらみんなでキラヲタを探そう」
鬱井 「全員って・・・」

この場にいないなのはキラヲタと・・・参号丸、おっかけ、シーウーマン、蟹玉だ。

KIRA 「予定通りならあと20分もすれば最後にここを出た蟹玉も戻ってくるはず」
鬱井 「おいKIRA・・・・・・」
KIRA 「僕は今から一人で探しに行く。後はみんな揃ってからにしろ」
鬱井 「お、おい・・・」
KIRA 「その前に確認しておくが・・・
     そのチェックポイントの紙とやらにはキラヲタの名前は書いてあったんだな?」
saoko 「うん・・・間違いなく書いてた」
KIRA 「よしわかった。じゃあ鬱井・・・・・・後は任せたぞ・・・探しに行く時は必ず複数で行動するように」

KIRAはそう言い残して一人でキラヲタを探しに行ってしまった。
174まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 00:04:29
ニコフ   「鬱井・・・まさか・・・・・・」
鬱井  「・・・・・・」

ニコフが何を言おうとしたのかすぐにわかったが返事をする事が出来なかった。

インリン  「なんか・・・変な空気になっちまったな・・・
     せっかく他の実行委員も驚かそうと思ってこっそり仕掛けたトラップとかあるのに中止か・・・」
バジル 「今そんな事言ってる場合じゃないだろ。キラヲタに何かあったのかも知れないんだぞ」
インリン  「なんだよさっきから・・・まだ何かあったとは決まってないだろ」
本家  「おいおいよせよお前ら・・・」
インリン  「うっせーなお前はひっこんでろよ」
本家  「俺と喧嘩したいなら買うぜ?」
インリン  「てめー・・・」
ミサキヲタ  「ちょっと・・・やめなよ」

なんだか険悪なムードになってきた。

鬱井 「な、なぁちょっと実行委員の奴に聞きたいんだけどさ」
インリン 「・・・なんだ?」

インリンが鋭い目で僕を睨む。
175まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 00:08:48
鬱井  「えーっとね・・・あ、そうだ。
     あのベニヤ板さぁ、全部の階に置いてあんの?」
ニコフ   「べにやいた?」
鬱井  「あぁ、ある程度通るルートが制限されてたみたいなんだけど・・・」
ミサキヲタ  「全部の階には置いてないわ」
インリン  「北校舎はここの外と一階の渡り廊下の所だけだ」
本家  「南校舎は一階の中庭から入ってすぐ右の所と二階の真ん中だな」
ミサキヲタ  「で、後は体育館の中だけかな・・・」
インリン  「ルート的にまず通らない所には置いてないよ」
ニコフ   「へぇ・・・そんな手の込んだ事までしてたんだ」
インリン  「手の込んだって言えば体育館の迷路だぜ」
ミサキヲタ  「そうそう。みんなでかなり考えて作ったもんね」
本家  「まぁ実行委員の奴じゃないと結構時間かかるだろうな」
インリン  「俺、迷路職人になろうかと思ったほどだよ」

僕の素晴らしいアシストのおかげで場の空気を変える事が出来たようだ。
まだキラヲタに何かあったと決まった訳じゃないのに喧嘩してたって仕方ない・・・

鬱井 「ニコフ、キラヲタ見つかったら俺がエスコートしてやるよ」
ニコフ  「はぁ・・・?」
鬱井 「もうこうなったら中止っぽいけどさ、是非ニコフの反応を見たい仕掛けがあるんだよね」
ニコフ  「反応?」
鬱井 「まぁまぁそれは見てからのお楽しみという事で・・・」
ニコフ  「ちょっと鬱井・・・なんでそんな近づくの」
鬱井 「え?いやいや・・・ちょっとニコフの身長をね・・・」

ニコフの横に並んでおおよその身長を測る。
僕が176cmだから・・・・・・約10cm差か。
176まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 00:10:31
鬱井 「うん、これならイケるね」
ニコフ  「わけわかんないんだけど・・・」

これならさっきの蒟蒻もばっちり唇にヒットするはずだ。

ニコフ 「何ニヤニヤしてんの・・・」
鬱井 「いやぁ・・・別に・・・・・・」

ニコフが不審に思っているようだが関係ない。
中庭にさえ連れて行けば勝ったも同然だ。あのトラップは初めてなら避けれまい。
やったもん勝ちだぜ・・・・・・とか考えてる間に
参号丸、おっかけ、シーウーマン・・・そして最後に出た蟹玉と、
教室を出て行った順に戻ってくる。
結局その間にキラヲタが戻ってくる事はなかった────
177まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 00:11:25
48.「中止」/終
178まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 00:26:14
49.「蒟蒻」


午後十時二十五分。
教室にはKIRAとキラヲタを除く同窓会参加者全員が揃った。
そして後五分で本格的にゲームスタートだ。
誰がノートを持っているかはわかった。
後は邪魔者を消していくだけ・・・
ノートの在り処を吐かすのはそれからでも充分だ。

「結局キラヲタは戻って来なかったな・・・」

インリンが誰にともなく呟いた。

戻って来れなくて当然だ。
キラヲタはもう死んでいるのだから。

「とにかくKIRAの言った通り皆で探しに行こうよ」

そう、KIRAの言った通りに・・・
KIRAじゃなくても鬱井か誰かがそう提案してくるのも予定通り・・・
KIRAが先に一人で行ってしまうとは思わなかったが計画に支障は無い。
179まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 00:33:03
「じゃあ手分けして探そうか・・・」

鬱井が皆に向かって言う。
・・・・・・・・・・・・そうだ鬱井だ。
こいつにはラムネの礼をしなければいけない。

「何人かはここに残ったままの方がいいな・・・どうしようか」

鬱井が誰を残そうか迷っている。
そんな事もすぐに決められないのか・・・
やっぱりこいつはKIRAのオマケに過ぎない。

「僕は行くよ」

手を少し上げて一歩前に出る。
ここに残されてしまうと計画が進まなくなってしまう。

「僕も実行委員だしね・・・僕らの指定したルートで転んで怪我でもしてたら・・・」

もっともらしい事を言って外に出る口実を作る。

「なら俺もだ。俺も行くよ鬱井」

インリンがしゃしゃり出てくる。
何だこいつ・・・人の真似しやがって・・・・・・
お前は自分のせいになるのが嫌なだけだろうが・・・・・・
180まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 00:45:26
「わかった。じゃあ二人は俺と一緒に行こうか」

鬱井と一緒なのは好都合だがインリンは邪魔だ・・・
どうにかしてこいつだけ先に消さないと・・・・・・

「よし。ここに三人残って後は三人一組で・・・えっと八班で手分けして探そう」

三人一組か・・・二人一組ぐらいが理想的だったのに・・・・・・インリンのせいだ。

「じゃあここに残るのは・・・」

鬱井が選ぶなら大体予想がつく。

「まぁ先生は体調もあんまりよくないし残ってもらうとして・・・・・ニコフ残る?」

やっぱりこの二人を選んだ。
鬱井が昔ニコフの事を好きだったのは知っていた。
昼前に会った時の雰囲気で今もそう想っているのもすぐにわかった。
どうせニコフを危険な目に合わせたくないと思っているんだろう。

「うぅん、私は行く」

・・・なんだこの女。
鬱井の気持ちなんてどうでもいいが
実行委員でもないお前が「残れ」と言われてるのに
何でわざわざ行こうとする?
まさか「キラヲタは大切な仲間だから」とか気持ちの悪い事を言うつもりだろうか。
181まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 00:58:27
「ニコフ・・・」

鬱井が情けない声を出す。
せっかくニコフの身を案じて残るよう言ってやったのに・・・という顔だ。

「だってKIRAも今一人で・・・」

KIRA・・・?
もしかしてこの女KIRAの事が・・・?
だとしたらおめでたい女だ。
KIRAがお前なんか相手にする訳無いだろうが・・・
お前ごときには鬱井程度がお似合いだというのがわからないのか。

「わかったよ・・・・・・気をつけろよ」

鬱井が頭を掻きながらそう言った時、
教室の窓がカタカタと震え、遠くからゲームスタートを知らせる音がした。
その音を聞き思わず口元が緩みそうになり必死でそれを堪える。

「なんだ今の音?雷か・・・?」

皆が一斉に窓の外を見た。
182まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 01:08:16
「ちょっと揺れなかったか?地震・・・?」

教室内が一瞬ざわついたが真相を知るのは自分一人。
何も言わず黙って皆が落ち着くのを待った。

「どうしたラチメチ?」

皆が窓の外を見ている中、ラチメチが一人うずくまっていた。

「ごめん鬱井・・・私ここに残っていいかな」

ラチメチが青ざめた顔で鬱井に言う。

「気分悪いのか・・・?わかったここで休んでてくれ」

体調が悪いのかなんなのか、ラチメチがここに残る事になった。
こいつとはあまり会話もしたくないので調度いい。
そして後一人はミサキヲタが残る事になった。
183まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 01:16:39
「よし、じゃあ行こう」

それぞれ班を組み教室を出る。

「とりあえず俺達は肝試しのルート順に調べていこうか」

鬱井の決定に従い、まずは階段を下りて3年1組の教室に入る。

「あのさぁこの牛乳瓶って何本用意したの?」

途中で中止になった為にまだ何本か瓶が残っている。
それを見て鬱井がインリンに尋ねる。

「人数分だ。生徒28人分」

今ここに残っているのは15本。

「シニアが出ようとした時に中止したから・・・合ってるな」

指を折りながら鬱井が数える。

「じゃ、キラヲタはここを通ってるって事か」

三人で一通り教室の中を探して外に出る。
当然キラヲタの死体がここにないのはわかっているが───
184まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 01:44:02
「次は中庭を通って南校舎だな」

鬱井に続いて中庭へ出る。

「ぬぁ!?」

中庭へ通じるドアを開けると人体模型が置いてある。
それを見て鬱井が声をあげた。

「なんつー声出してんだよ。さっき通ったんだろ」

驚く鬱井を見てインリンが鼻で笑う。

「い、いやわかってたんだけどね・・・リアクション芸をね・・・」

涙目で鬱井が強がる。
インリンが更にからかっていたが二人を無視して先に中庭に出る。

「あ・・・」

先頭を歩き、南校舎に通じるドアに手をかけたその時
後ろにいた鬱井が何かに気付いたような声を漏らした。

「なに?どうしたの鬱・・・ぅわっぷ!」

ドアを開けた瞬間ヌルヌルした何かが額に当たった。
185まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 01:57:30
「こ、蒟蒻・・・?」

どうやらドアを開けると中に入ろうとした人間にヒットするように仕掛けてあったみたいだ。

「よっしゃ成功!俺の仕掛けた実行委員用のサプライズトラップだ」

さっき教室で言ってたのはこれか・・・・・・下らない仕掛けを考えやがって。

「あ・・・そっか・・・そういえばこれって俺の後に通った奴にも・・・」

鬱井が拍子抜けしたような顔で独り言を呟いている。

「なにが?」

蒟蒻のヌメヌメをハンカチで拭きながら鬱井に聞いた。

「い、いやなんでもないよ・・・・・・そ、それよりこれってさ、
 インリンの背の高さを基準にして作ったのか」

鬱井が話を逸らそうとしているのがわかったが何の事だ?
まぁどうせ鬱井の考える事なんてたいした事じゃないだろうが・・・

「お、よく気付いたな。そうだよ。
 ちょうど俺の顔の真ん中にヒットするように作ったんだ。
 でもこれおっかけとかだとあんまり効果ないんだよなぁ・・・」

なるほど・・・
こんな下らない仕掛けに無駄に頭使いやがって・・・
186まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 02:03:20
「そうかぁ。いや作ったのがインリンでよかったよ。この高さが黄金率だな」

鬱井が訳のわからない事を言いながらひとりで頷いている。

「・・・もういいから入ろうよ」

人が不愉快な思いをしてるのに二人共楽しそうな顔しやがって・・・

「待てよ。一人で先に行くなってば・・・」

鬱井が声をかけるが無視して先に校舎に入る。
ハンカチに染み付いた蒟蒻のにおいが鼻につく。
お前ら二人共、絶対楽には死なせてやらないからな・・・・・・
187まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 02:04:30
49.「蒟蒻」/終

第六夜に続く。
188まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/03(金) 02:10:48
次回50.「鉄棒」


6年2組カレー事件前編でふ
189名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/05(日) 02:06:11
190姪探偵ユメソ:2006/11/05(日) 22:09:10
続きはまだかああああああ
191名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/06(月) 20:23:28
age
192まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/06(月) 23:59:02
お待たせしております・・・
193名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/07(火) 23:53:14
dkdk
194名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/08(水) 00:21:26
はないたちの夜〜げろっぱのなく頃に〜
現在野球中継のため時間を延長してお送り致します。
しばらくお待ちください。
195まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/08(水) 00:26:21
50.「鉄棒」


「やばい・・・・・・! はやくしないと・・・・・・」

誰もいない教室の中をバタバタと走り回る。
今日この日この時間の為に何日も前から計画を練っていた。
しかし実際に行動に移してみると思っていた様にはいかなかった。

「どれだよ・・・・・・くそっ」

片っ端から女子のロッカーを開けていくが中々“当たり”が出なかった。
もう時間がない。仕方なく彼は両手を使い二つずつロッカーを開けていく。
両方の手で同時に扉を開けて、同時に体操服の入った袋を取り出して
ロッカーの上に二つの袋を並べる。
袋には持ち主の名前が書いていない。
袋から体操服を取り出し、胸の部分に縫い付けられたゼッケンを見て
持ち主の名前を確認していく。

「シーウーマンかよ! きたねぇ」

顔をしかめて体操服を袋の中につっこみロッカーに戻す。
それを繰り返す事数回、ようやく“当たり”を引いた。
196まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/08(水) 00:40:26
「よし・・・・・・!」

思わず拳を握り締めて振り上げた。しかし喜んでる場合じゃない。
彼は振り上げた拳を解き、おもむろに体操服を握り締めた。

「では遠慮なく・・・・・・」

体操服をそっと顔に近づけたその時、チャイムが鳴った。
チャイムとほぼ同時に、隣の教室から一斉に椅子を引きずる音が聞こえた。

「うっぐ・・・・・・! ちくしょう!」

慌てて体操服を袋に詰めてロッカーに放り込み、急いで教室を飛び出した。
廊下に出て左右を見渡し誰もいないのを確認してトイレに入り、
便器には目もくれず奥の窓を開ける。
向かいの南校舎には二年生の教室があるがまだ誰も廊下には出ていない。
そのまま三階、二階、一階と視線を落としていくがどの階にも人影は無かった。
彼は窓枠に両手と右足をかけ、勢いよく窓の外へと飛び出した。
197まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/08(水) 01:11:55
彼が四階のトイレの窓から羽ばたいたその頃、
同じ北校舎の一階にある木工室から授業を終えた生徒達がぞろぞろと出て来ていた。

「よっしゃー給食だー!」

廊下に出るなり両手を広げて叫んだのは鬱井だ。

「今日はなんだっけ?」

隣にいたバケ千代が尋ねる。

「カレーか・・・・・・南校舎の方から薫るね・・・・・・」

坊主頭なのに髪をかきあげる仕草をしているのは蟹玉だ。

みんなで今日の給食の話をしながら階段を上がっている途中、
後ろから下ネタマスクが駆け上がってきた。

「お、下ネタ!」
「今までトイレに入ってたんか〜?」
「こいつ、ぜってーウンコだよー!」
「だから何だよ?カレーの前にカレー出しただけだっつーの!」

授業終了三分前に「トイレに行きたい」と席を立った下ネタをからかったが
彼はそんな鬱井達をギャグ(?)で一蹴した。
198まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/08(水) 01:35:29
下ネタの下ネタに爆笑する鬱井達。
そんな彼らを見て下ネタは密かに胸を撫で下ろしていた。

(よし・・・・・・こいつら疑いもしてないな・・・・・・)

つい先ほどまで自分が教室にいたなんて誰一人思ってないだろう。
計画は不完全に終わったが、教室で体操服のにおいを嗅ごうとしている所さえ
目撃されなければ何度でもチャレンジ出来る。

(今度こそは・・・・・・)

シミュレーション不足だった自分を戒めるかのように、
彼は唇を痛いほど噛みしめた。
199まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/08(水) 01:58:09
50.「鉄棒」/終
200蟹玉 ◆KANI/FOJKA :2006/11/08(水) 02:36:57
ktietaaaaaaaaaaaaaaaaaa
aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaあああ
ああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああ
201名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/10(金) 18:06:26
さてさて
202まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/11(土) 02:04:02
【第6夜】


この橋を最後に渡ったのはもう13年以上も前になる。
1学期の終業式の日、クラスの皆からの寄せ書き色紙を
この橋から投げ捨てたのを思い出した。

手すりから乗り出し、橋の下を覗き込んでみた。
川面に映し出された月がゆらゆらと揺れている。

「ある訳ないか・・・・・・」

当然あの日捨てた色紙などあるはずもなかった。
数年後、本当に会えると知っていたら色紙を捨てたりしなかっただろう。

その時、遠くから地鳴りの様な音が鳴り渡った。
手すりが微かに震える。
川の中の月がぐにゃりと歪み、二つに割れた。

音はすぐに鳴り止んだ。
川の中の割れた月はそれぞれに身を歪め、ひとしきり輪郭を震わせた後、
次第に重なって溶け合い、再びゆっくりと揺れ始めた。

地震? いや落雷だろうか・・・・・・
しかし空には雲一つなく、あるのは揺れていない月と、煌々と輝く無数の星だけだった。
203まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/11(土) 02:07:31
51.「演技」


南校舎に入った瞬間、悲鳴が聞こえてきた。

「な、なんだ!?」
「北校舎・・・・・・教室の方からだ」

鬱井とインリンが廊下の窓から北校舎を見上げる。
しかし悲鳴の出所は教室ではなくおそらく女子トイレだろう。

「なにかあったのかな」

二人と同じ様に見上げるとやはり女子トイレの窓から明かりが漏れていた。
ラチメチかミサキヲタがキラヲタの死体を見つけたのだろう。

「戻ろう」

鬱井がこわばった表情で踵を返した。
止める理由もないので無言で後に続く。
キラヲタの死体が発見されるまでに二人を殺したかったが仕方ない。
204まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/11(土) 02:13:41
中庭を抜け北校舎に戻る。
階段を駆け上がり、四階の踊り場に出ると教室に残っていた連中だけでなく
キラヲタを探しに出た何組かの班も戻ってきていた。
皆一様に青ざめた顔をして女子トイレの前で立ち尽くしている。

「どうした!? 何か・・・・・・あったのか?」

鬱井が息を切らしながら問う。

「キ、キラヲタが・・・・・・」
「しし、死んでるみたいなんだ」
「なんだって!?」
「な、中に・・・・・・」

ミサキヲタが震えながらトイレの中を指差した。
鬱井が無言でトイレの中に入っていく。
入れ替わる様に中から出てきたおっかけは、眉をひそめて肩を落としていた。
クラス一の木偶の坊が何だか小さく見えて、思わず噴出しそうになった。

「どうだった?」

ニコフが声をかけたが、彼は無言で首を横にふった。
205まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/11(土) 02:26:31
「やっぱり死んでたのか」

本家がため息混じりに呟く。
「なんてこった」と言わんばかりに、
肩をすくめて両手で何かを持ち上げる様な仕草を見せる。
どこの大根役者だ。どうせならOh!とでも叫んでろ。

「信じられない・・・・・・さっきまであんなに元気だったのに」
「おい・・・・・・しっかりしろ」

参号丸が両手で顔を覆ってその場に崩れ落ちそうになる。
隣にいたヲタヲタが参号丸の肩を抱いて支えた。なんだお前ら。

その場にいる皆が同じ様にうろたえ、中には涙を浮かべている者もいるので、

「誰がミサキヲタを・・・・・・」

と、肩を震わせながらかすれた声で呟いてみた。
平然としていると怪しまれるからだ。
どうせなら参号丸の真似をして膝から崩れ落ちた方がいいだろうか。
206まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/11(土) 02:35:33
「大丈夫か」

インリンが肩に手を回そうとしてきた。
その瞬間とっさにその場にしゃがみ込む。インリンに触れられるのが嫌だったからだ。

「何があった」

顔を上げるとKIRAが立っていた。
周りにいた人間の表情で察したのか、事情も聞かずトイレに向かって歩を進める。
KIRAはトイレの前で立ち止まり、トイレの中をじっと見た後、

「みんな教室に入っていてくれ」

と言ってトイレの中に入っていった。
KIRAに言われてみんな教室に入る。

トイレの前を通った時にちらっと中を覗いて見た。
個室の前でKIRAと鬱井が真剣な顔つきで何やら話していたが小声で聞き取れなかった。
トイレの前を通り過ぎようとした瞬間、KIRAがこっちを向き目が合った。
今日初めてだ。いやそれを言うなら十年ぶりだ。
昔と変わらず真っ直ぐで淀みの無い視線。
滅多な事では上がりも下がりもしなさそうなきりっとした眉。
すらりと通った鼻筋。無駄な事では開かなさそうな唇。

どんな時でも崩れそうに無いその表情は、
死ぬ直前でもやっぱり変わらないのだろうか。

下腹部から沸いたもやもやが胸と背中の間を通り抜ける。
さっきの演技とは違い、今度は本当に身体が震えて鳥肌が立った。
207まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/11(土) 02:36:47
51.「演技」/終
208名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/11(土) 02:50:31
鏡に映ったあの人みたいな
209訂正まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/11(土) 03:10:56
※お詫びと訂正

>>205の「誰がミサキヲタを・・・・・・」
はどう見てもキラヲタの間違いです。
撲殺してください。
210 ◆K.tai/y5Gg :2006/11/11(土) 23:34:05
本家なのぉ
211蟹玉 ◆KANI/FOJKA :2006/11/12(日) 00:24:11
>>209
読み返して?でした

誤植うめぇwww
212まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 00:34:33
52.「確認」


「みんな教室に入っていてくれ」

廊下から不意に声が聞こえた。
振り向くともうKIRAが中に入って来ていた。

「キラヲタか」
「・・・・・・あぁ」

確認するように聞いてきたKIRAに短く返事をする。

「他殺だな」
「だろうな」
「医者じゃないから正確にはわからんが……死後一時間、というところだろう」

北校舎四階の女子トイレ、入り口に一番近い個室の中でキラヲタは死んでいた。
事故・自殺を疑うまでもなく他殺だと一目でわかった。
個室の中で無造作に手足を投げ出して倒れているキラヲタの喉にはナイフが突き刺さっていた。

「うっ・・・・・・」
「吐くなら隣の男子トイレで吐いて来い」

口を抑える僕の方を見ようともせず冷たく言い放つ。
213まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 00:37:48
「お前・・・・・・よく平気だな」
「死体は初めてじゃないだろう」

相沢の事か・・・・・・確かに死体を見るのは初めてじゃないがあの時とは全然違う。
しかも十年ぶりとはいえ、小、中と同じ学校で過ごした人間だ。
正直そんなに仲がよかった訳ではないが、こんな姿を見て
まともな気持ちでいられるはずがない。

「よくもこんな・・・・・・ん? どうした、何見てんだ」

KIRAが廊下の方をじっと見ていたのでつられて僕もトイレの外に視線を向けたが
みんな教室に入ったらしく廊下には誰もいない。

「いや・・・・・・なんでもない」
「なんだよ。幽霊が覗いてたとか言うなよ」
「・・・・・・幽霊というよりは死神かもな」
「お前な、こんな時に冗談言うなよ」
「あぁ、冗談であってほしいな」

そう言ってKIRAはポケットからハンカチを取り出した。
指紋がつかないようにナイフを拾う為だろう。
214まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 00:40:36
「鬱井、顔色が悪いぞ。辛いなら外に出ていろ」
「お前・・・・・・」

KIRAが取り乱すとも思わなかったがいくらなんでも平然とし過ぎている。
こいつには悲しいとかそういった感情はないのだろうか。

「・・・・・・あまり話した事もなかったな」

KIRAはそう呟きキラヲタの口元にべっとりと張り付いていた血をハンカチで拭った。
眉一つ動かす事無く淡々と血を拭うKIRAはいつも通りの無表情だったが、
僕は少し胸が痛くなり、同時にKIRAを軽蔑した自分が恥ずかしくなった。
そうだ、辛いのは僕だけじゃないはずだ。
KIRAだって口には出さないだけで僕や他のみんなと同じような気持ちなのだろう。

「これは・・・・・・」
「どうした?」

真っ赤に染まったハンカチを見つめている。

「なんだ?」
「嗅いでみろ」
「な、なんでそんな悪趣味な事を・・・・・・」
「違う」
215まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 00:42:18
血の臭いを嗅げだなんて何を言い出すのか・・・・・・と思ったが
ハンカチを受け取り、鼻に近づけてみるとすぐに理由がわかった。
誰だって一度は嗅いだ事のあるだろう嫌な鉄の臭いに混じって、
どこかで嗅いだ覚えのある臭いが鼻をつく。

「これは・・・・・・Lコテカレーの臭い・・・・・・か?」
「あぁ、おそらくラチメチが拉致された時に使われた薬品と同じだろう」
「って事は・・・・・・」
「薬品で意識を奪った後にナイフで喉を・・・・・・という事だろうな」
「い、いやそれより・・・・・・同じ薬品って事はまさか」
「華鼬の仕業と考えていいだろう」

一瞬で背筋が凍った。
KIRAの言う通りで間違いないだろう。
キラヲタを殺したのは華鼬に違いない。

「ど、どうする?」
「一旦教室に戻ろう」

KIRAは立ち上がってすたすた歩いてトイレから出てしまった。
僕は震える足を手で抑えつけながら立ち上がってKIRAの後を追う。
216まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 00:47:09
「どわっ」

トイレを出た所でKIRAにぶつかりそうになった。

「なにを立ち止まっ・・・・・・」

言いかけて言葉を失った。
足を止めたKIRAの視線の先、教室のドアの前に一人の男が立っていた。
男は驚いた様な表情でこちら──というかKIRAを──見ていた。

「KIRA・・・・・・か?」

薄暗い廊下に突っ立っている男がこちらに向かって足を踏み出すと、
教室から漏れる明かりが男の顔をはっきりと映し出した。

「携帯!?」
「よう・・・・・・鬱井」

一瞬誰だかわからなかったのは暗さのせいだけじゃない。
昨日会った携帯とはまるで別人だったからだ。
ボサボサで伸ばしっぱなしだった髪は幾分か短くなっており、
右に左に飛び出していた毛先もある程度規則性をもって跳ねている。
口周りの髭畑もきれいに剃り落とされていた。
しかし服装だけは元々無頓着なのか、全体的にシンプルな印象というか、
見るからに金のかかっていない感じだった。
少しヨレ気味の白いTシャツ。夏だというのに長袖だったが、
生地が薄いせいかあまり暑苦しい印象ではなかった。
やや年季の入っているくたびれたジーンズの裾からは素足が見えている。
踵を潰された靴から垂れている二本の紐は蝶々型に結ばれる事もなく、
所在なさげに床の上で寝そべっていた。
217まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 00:48:33
「いつ来たんだ・・・・・・ていうか何でそんなとこに突っ立ってるんだ」
「いや・・・・・・入り辛くてな。中の様子が変だが、何かあったのか」
「・・・・・・とりあえず入ろう」

KIRAがドアを開けて中に入る。

「携帯・・・・・・入ろう」
「ん・・・・・・あぁ」

僕はなんとなく携帯が中に入るのを待った。
近くで見ると目の下にマジックで塗ったような深いクマが出来ているのに気付いた。
不健康そうな顔色は昨日と同じだ。
携帯は両手をポケットにつっこんだまま
やる気なさそうにゆっくり教室の中に入っていった。
携帯の後に続いて僕も教室に入る。

「だ、誰!?」

僕達が中に入った途端、教室がざわついた。
ここにいるほとんどの人間が十数年ぶりな上、
来ると予想していなかったので一目では携帯だと気付かないのだろう。

「鬱井、先にみんなに説明してやれ」
「え? あぁ・・・・・・」

KIRAに促され携帯の事をみんなに説明した。
218まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 00:52:13
携帯だとわかると途端にざわついた教室が静かになった。
みんな昔の事を思い出して負い目を感じているのだろう。

みんな携帯の方を見ようとしないし、
携帯も視線を落としたまま靴を脱ぎ(というか靴から足を抜いて)、
右足のつま先で、左足の付け根辺りをズボンの上からボリボリと掻いていた。

「来ると思ってたよ?」

蟹玉が笑みを浮かべながら携帯に話しかけた。
携帯はなおも足を掻きながらぼそぼそと何やら小声で話している。
そんな二人を尻目に、

「積もる話もあるだろうが今はキラヲタの事が先だ」

と、KIRAが切り出した。

「キラヲタは死んでいた」

誰も返事はしなかった。
219まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 00:54:52
「どういう事だ?」

携帯が、KIRAではなく僕に聞く。
僕は同窓会が始まってからの事を手短に説明した。
説明を終えると「なるほど」と小さくつぶやいた。
その表情には動揺の色もなく、まるで興味がないといった風に見えた。

「キラヲタは──」

KIRAがそこまで言いかけた時、もの凄い音と共に教室が大きく揺れる。
さっきとは比べ物にならないほどの衝撃が教室を襲った。
まるでこの校舎に雷が直撃したような凄まじい轟音が耳をつんざく。

「きゃあー!」
「こ、今度こそ地震か!?」
「ひぃぃ」

みんな一斉に床に伏せる。
が、どうやら地震ではなかったようですぐに揺れは治まった。

「何の音だったんだ・・・・・・」

やがて落ち着きを取り戻し、みんな立ち上がる。
220まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 00:56:50
「で、続きは?」

イノセンスがロッカーに腰掛けながらKIRAをじっと見つめる。

「──まず、キラヲタは死んでいた。おそらく他殺だろうと僕は考えている」

落ち着き払った様子で、確認するようにみんなを見渡す。
教室にいたほとんどの者が黙ったままKIRAを見据えていた。

「だ、誰がやったの?」

ミサキヲタがこわばった表情で尋ねる。
僕は一瞬どきっとしたが、考えてみればごく自然な質問だ。
僕やKIRAにしてみれば思い当たるフシはあるが、他のみんなからすれば
理解不能な出来事だ。質問したミサキヲタには他意はなく、
言葉そのままの意味で聞いているのだろう。

「わからない」

ミサキヲタの質問を受けてKIRAが短く答えたが、みんなの反応はなかった。
みんなが押し黙ったのを見てKIRAはインリンの方へ目をやった。
221まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 00:58:51
「電話は使えるのか?」
「……学校のか? だったら使えない。電気と水道は通ってるが──」

KIRAは「そうか」と言って今度は僕の方を見た。

「鬱井、村まで戻って警察に連絡してきてくれ」
「……わかった」

思わず一瞬間を空けてしまったのは僕もKIRAも警察なのにな、と思ったからだ。
しかし僕達二人で、何の用意もしていないこの状況では当然の事だ。
キラヲタの遺体もそのままにはしておけない。

「一人で大丈夫か?」

KIRAが教室を出ようとした僕に声をかける。
正直一人で出歩くのは怖かったが、
みんなの手前(特にニコフ)そんな事言える訳がなかった。
僕は「大丈夫だ」と、強めの口調で返事をしてからドアを開け、廊下に出た。
廊下は相変わらず薄暗く、やっぱり一人だとキラヲタが殺された事とは無関係に
背筋が寒くなる。僕は誰もいない廊下を早足で歩いた。
222まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 01:00:32
52.「確認」/終
223名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/12(日) 01:04:10
おつかれっした
こんなスリリングな展開をリアルタイムで読めて感動です
224 ◆K.tai/y5Gg :2006/11/12(日) 01:27:47
さあ活躍するぞ
225キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/11/12(日) 01:31:17
鬱井・・・一人で行くのは地獄への序曲すっか
226まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 02:06:35
53.「視線」


KIRAに命じられた鬱井が教室を出て行った。
が、どうせすぐ戻ってくる事になるだろう。

それにしても携帯が来た事は予想外だった。
鬱井が携帯に接触するであろう事は想定内だったが
まさか今更のこのこと皆の前に出てくるとは思わなかった。
晴刷市内に住んでいるのは知っていたが、携帯には葉書は送っていない。
今回の計画の対象外だったからだ。
鬱井が何か吹き込んだのか、親友(吐き気がする響きだ)だった蟹玉が
誘ったのかは知らないが、先ほどの二人とのやりとりを見た限りでは、
どうやら13年前の事件の結末も知っているようだ。
その上で、少なくとも鬱井、蟹玉とは和解している様に見えた。
しかし他の者達、ここ最近鬱井や蟹玉と行動を共にしていたニコフ達ですら
携帯に対してどこかよそよそしい視線を送っているところを見ると、
おそらく鬱井、蟹玉以外とは接触していないと見ていいだろう。
もちろんKIRAは携帯の動向も把握していたはずだが──

「さて、では今の間にみんなに聞いておきたい事がある」

教室の隅に立ったKIRAが、鋭い視線を右から左へと走らせる。
227まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 02:13:33
「この中で……心当たりのある者はいるか?」

KIRAの言葉でみんなの顔つきが変わり、教室にどよめきが起こった。
みんな困惑した表情でKIRAを見つめる。

面白い訊き方だな、と思わず感心してしまった。
KIRAが何をしようとしているかすぐにわかったので
KIRAと同じ視点になったつもりで教室を見渡してみた。

「どういう意味だよ」

インリンがいぶかしげな顔で聞き返した。
それに続いて何人かが同じ様な言葉をKIRAに投げかける。

これはKIRAの“選別”だ。
教室に入ってきた時点でKIRAは既にこの中に犯人がいると考えていただろう。
外部の者の犯行だという可能性ももちろん考慮しているだろうが、
既にKIRAはある程度目星をつけているのだろう。
ニコフ達は漠然と「この中にいるのかもしれない」と
考えているだろうがKIRAは違うはずだ。
KIRAならもう論理的・物理的に「内部の者にも犯行は可能」
だという事を可能性の一つとして導き出しているだろう。
心当たりのある者はいるか?という質問で、
教室にいた人間の思考・行動は3パターンに分かれる。
228まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 02:19:03
1.KIRAの言葉の意味を即座に理解し、黙っている者。
2.KIRAの言葉にある種の疑いの念が含まれていると勘ぐり、確かめようとする者。
3.KIRAの言葉をそのままの意味で受け取り、素直に考える者。

1は予め華鼬についてある程度の知識があるニコフ達だ。
ここ最近KIRAと行動を共にしていた連中(ニコフ達)は、
キラヲタが死んだとわかった瞬間、即座に葉書を連想したはずだ。
少なからず思い当たるフシもあるだろうからKIRAの言葉を聞いて
「やっぱりあの葉書を送った者の仕業ではないか」と考える。
しかしわざわざこの場でそれを言い出す者もいないだろう。
それにKIRAから「余計な事を言わない様に」と釘をさされていたのかもしれない。

それ以外の者達(もちろん実行委員含む)はこう捉えただろう。

2と3は送られてきた葉書にさしたる疑問を抱かなかった連中だ。
彼らはKIRA達と違い、葉書と今回の殺人を結びつける事など出来るはずもない。
当然「華鼬」なんて知るはずもない。

2はKIRAに対して
「まさか自分達の中に犯人がいると言いたいのか」と思った人間。
彼らはそんな事を毛ほども想像していないだろうから
無意識に外部の者の犯行だと決め付けているはずだ。
彼らはこれまでのKIRA達が掴んだ情報(あるいは体験した出来事)を
知らないので、自分達の中にそんな凶行に及ぶ人間がいるはずがない、と考える。
自分達の中に犯人がいるとでも言いたげなKIRAに憤りを感じているようだ。
229まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 02:24:46
3は2の人間と同じく外部の者の仕業だとは決め付け、
「この中に犯人がいるかもしれない」という想像が出来ない人間だ。
2と違うのは、馬鹿正直に「キラヲタが殺される理由なんてあっただろうか?」
と考える平和ボケしている点だろう。彼らはキラヲタに関する記憶を引っ張り出し、
彼女は誰かに殺されるほどの事をしたのだろうか、していたのだろうかと考える。
考えるだけで1と同じく黙ってはいるが、
KIRAからすればこれまで行動を共にしてきた1の人間とはまるで異なる存在となる。

1の人間以外で犯人を限定しようとしても、この時点では特定する事は出来ない。
が、KIRAは既に気付いているだろうが、
“ある条件”を元に考えれば2と3の中から数人、
あるいは十数人を容疑者としての対象から除外出来る。
それを踏まえた上でこちらが気をつけなければいけないのは
“余計な発言はしない事”だ。
この時点では自分から告白しない限りは犯人を特定する事は出来ない。
2のようにあからさまにKIRAに対して不信の念を抱いた様な態度を見せると
少なからずKIRAに疑いの目で見られてしまう。

なので黙って何かを考えるフリをしてやりすごした。
そしてこの後KIRAが言うであろうセリフも想像がつく。
230まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 02:27:50
「キラヲタには抵抗した様子が見られなかった」

やはり思った通りのセリフだった。

「何が言いたいんだよ?」

またも真っ先に口を開いたのはインリンだった。
そして先ほどと同じくKIRAに対して懐疑的な眼差しを向けている者、
KIRAの言葉の意味を理解し黙っている者、
理解できないので黙っている者、に別れる。

KIRAに対して不審な思いを抱いている2のインリン達は
先の質問と結び付けて憤慨している。

「……心当たりがある者はいない、という事だな」

KIRAはインリンの言葉を無視して、もう一度確認するように視線を流す。
その視線が求めているのは質問そのものに対する返答ではないだろう。

「おいKIRA、まさか俺達の中にキラヲタを殺した奴がいるって言いたいのか?」

インリンではなく、今度はおっかけがKIRAに詰め寄る。
しかしKIRAは涼しい顔でこう答えた。
231まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 02:31:45
「そうは言っていない。心当たりがあるか聞いたのは、
 キラヲタと交友関係がある者はいるか?という意味だ。
 ある者がいるなら、ここ最近キラヲタに何か変わった事はなかったかどうかを聞きたかった」
「だったら抵抗した様子がなかったってどういう意味だよ」
「そのままの意味だが」
「お前が言いたいのはこういう事だろう? 抵抗した様子がなかった、
 つまり“キラヲタは油断していた”って事だろう」

インリンが唾を飛ばしそうな勢いでまくしたてる。

「深読みしすぎだな」

そうだ、馬鹿のくせに。

キラヲタにはラチメチに使ったのと同じ薬品を嗅がせた。
1の人間──ニコフ達は華鼬の事をどこまで聞かされているかわからないが、
この際KIRAが掴んでいる情報全てを伝え聞いていると考えたほうがいいだろう。
それにラチメチも一緒に行動している。少し勘のいい者なら気付いたかもしれない。
1の連中の中にもラチメチの件を知っていればすぐに気付いた者もいるだろう。
気付かなくともKIRAの言っている意味は理解出来たのでやはり黙っている。

2はインリンが言った通り、
抵抗した様子がなかった=キラヲタは油断していた、
つまり“犯人はキラヲタの知る人間”という考えに至る。

3の人間はここで2と同じ発想に至る人間とそうでない人間に別れる。
しかしほとんどの人間が気付いただろう。
ここで気付かないと逆に怪しまれる可能性もある。
232まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 02:35:52
犯人である自分は最初の質問で3を選択している。
ここで2の考えに至ったフリをしてもよかったが、
ひとまずKIRAと2の人間のやりとりを見てみる事にした。

「じゃあどういうつもりだ」
「はっきりした事は調べなければわからんがキラヲタから薬の反応が見られた」
「なに?」
「くすり?」

インリンは目を丸くして驚いていたが、KIRAは彼を見ていなかった。
KIRAはそれ以上言わず、ぐるりと教室を見渡した。
今の言葉には皆がインリンと同じ様な反応をしている。

「……やはりみんな心当たりはなさそうだな」

そう言ってKIRAは少し残念そうな目をした……ように見えた。

1の連中はラチメチの件を知っているなら今のKIRAのセリフだけで全て理解できただろう。

しかし2と3の人間にとっては要領を得ない説明であり、そうでなければいけない。
これだけの説明では2と3の人間には、キラヲタの「何」から「何の」薬の反応が見られたのか、
薬とは何の事なのか、そしてそれが何を意味しているのか理解出来るはずもない。
もしもここで納得した様な反応をする人間がいて、
その人間がKIRAの考えているであろう“ある条件”に当てはまるならそれは犯人に他ならない。
233まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 02:38:45
そこでとっさに「くすり?」と、とぼけてみせた。
慌てて声を出したせいか思ったより声が上ずり、逆にわざとらしさを消せた。

「薬って何だ? 反応ってどういう事だよ」

2の人間(3から考えを移行した人間含む)が当然の様にKIRAに説明を求める。

「……あぁ、説明が足りなかったな」

KIRAはしれっとした顔で、事もなげにポケットからハンカチを取り出した。
おそらくは元々白無地であろうハンカチの大部分が赤く染まっていた。
皆、一目でその赤色の正体に気付き顔をこわばらせる。

「キラヲタの口元のあたりの血液から薬品の臭いがした。
 もしかすると何かの薬品を飲むなどして、意識を朦朧とさせた可能性もある」

と、KIRAは肝心な情報を上手く伏せながら説明を続ける。

この時、1の連中にもKIRAの言葉の微妙なニュアンスに混乱した者がいるだろう。
そこで、

「キラヲタは自殺した……って事?」

と、言っておいた。
234まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 02:41:53
これで1の連中の中にも「キラヲタは自殺だったのかもしれない」と考える人間が出てくる。
KIRAも自分の意図を1の連中にこの場で説明する訳にもいかないので、

「あくまで可能性の一つだが」

としか言わなかった。
これで1・2・3全てのほとんどの人間が同じ考えをするようになり、
KIRAの策がほとんど潰れたと言ってもよかっただろう。
しかし当然キラヲタは自殺ではないし、KIRAも殺人の可能性が高い事を示して
もう一度犯人を限定しようとしてくるのはすぐに予想できた。
この時KIRAは2と3の人間の出方を伺う様に黙っていた。
KIRAはおそらく“ある条件”に当てはまる自分がキラヲタの自殺を指摘した事で
疑いを濃くしたはず。

KIRAがハンカチを折りたたむ。
しかし、まだKIRAが肝心な事を濁したままにしているという事に
気付いていないのか、誰も口を開かない。
そこで、

「薬で死んだのなら、ナイフは?」

と、言ってみた。
途端にKIRAの視線が鋭くなった。
少し迷ったがどうせ誰かに言わせるよう仕向けてきただろう。
KIRAはナイフの存在を口にはしなかった。
自分以外にナイフの存在を口にする者がいれば
その人間こそが犯人に違いないと断定できるからだ。
しかし、
235まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 02:43:24
「そうだ、ナイフが喉に刺さってたじゃないか」

おっかけが思い出したように続いてくれた。

「……その前に」

KIRAが言葉を短く切り、こちらをじっと見つめる。
視線の意味はわかるが大丈夫だ。

「キラヲタの遺体を見た者は?」

視線をこちらから外しておっかけに向ける。

「最初にミサキヲタが見つけて……その後俺が入った」
「他には?」
「その後鬱井が来て──俺は入れ替わりでトイレから出た」

ふむ、とKIRAは息を漏らし、手を顎に当てて視線を落とした。
少しだけ何かを思案してから、

「……一応聞いてみようか、今日ナイフを持って来た者はいるか?」

と、視線を落としたまま誰にともなく問う。

「いる訳ないだろ」

インリンが吐き捨てるように答える。
KIRAは「だろうな」と呟き、視線を再びこちらに向けた。
236まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 02:46:53
目が合い、KIRAの口が開きそうになったのですかさず、

「ナイフってどんなナイフ?」

と、すっとぼけた口調でこちらから質問を投げかける。
口に出す瞬間、思わず笑いそうになった。
KIRAはやはり表情を変えずこちらをじっと見ている。

「さっきも言ったけど、こう……喉まで深く刺さってたから……
 正直、凝視出来なかったからあまり覚えてないんだ」

上手い事おっかけが答えてくれた。

「だろうね。僕も、とてもじゃないけどトイレに入る気にはなれなかったし」

トイレの中に入ったのはKIRA、鬱井、おっかけ、ミサキヲタだけだが、
中の様子はKIRAと鬱井がトイレに入っている間に、
皆おっかけやミサキヲタから聞いている。
つまりKIRA以外がナイフについて言及しても問題はないのだ。
KIRAの目の色が曇る。
237まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 02:53:00
「……おっかけの言う通りナイフは刃の根元まで深く刺さっていた」

仕方ない、といった口調でKIRAが説明する。
するとずっと黙っていたニコフが突然口を開いた。

「自分でそんなに深く刺せるのかな……」
「……あぁ、あくまで可能性の一つ……だよ」

ニコフは鋭い指摘をしたつもりなのだろうか?
全くKIRAの意図を汲み取れていない。

キラヲタがどんな風に死んでいたのかを知っているのは
直接死体を見たKIRAとミサキヲタ、おっかけ、そして犯人だけだ。
KIRAは皆がキラヲタは自殺だったかもしれないと思い始めたのを利用して、
直接死体を見た者にしか知りえない事を聞き出すつもりだったのだろう。
ニコフが自殺の線を否定する様な事を言わなければ
犯人がボロを出すかもしれない、と。

全く馬鹿な女だ。
その程度でKIRAのパートナーが務まるか馬鹿。
お前のおかげでKIRAの策が潰れた。馬鹿でありがとう。
238まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 03:01:58
と、心の中でほくそ笑んだ時、教室のドアが開いた。鬱井だ。
思ったより早かった。額に汗かき、息を切らしているところを見ると、
おそらく走って戻ってきたんだろう。

「た、大変だ! 橋が……肝禿橋がぶっ壊れてる!」
「えぇ!?」
「橋が? なんで?」
「何があったんだ!?」

皆が一斉に鬱井に詰め寄る中、
KIRAだけが苦渋の表情ながらも、時計に目をやり時刻を確認していた。
これはKIRAにとって更に犯人を限定する事が出来る重要なヒントにもなり得る。

が、鬱井の報告で場はそれどころではなくなった。
ひとまず“犯人探し”は後回しになるだろう。

不意に安堵のため息が漏れ、肩から力が抜けていくのを感じた。
KIRAとの“直接対決”をどこか楽しんでいる自分がいたが、
緊張で心臓が張り裂けそうになっていた事に気付く。
他の者ならともかくKIRA相手では言葉一つ、態度一つ間違えただけで
即、敗北に繋がっていただろう。
それでもなんとか正しい選択肢を選ぶ事が出来た。
今回のところは引分け……という事にしておこう。
その時、ふと視線を感じて振り返ると、
KIRAの隣で亡霊の様に突っ立っていた携帯がこちらを見ているのに気付いた。
KIRAとは正反対のまどろんだ瞳で、突き刺すようにこちらを睨んでいる。
生気のない視線が絡みつき、得体の知れない不安が身体を包み込んだ。
239まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/12(日) 03:03:26
53.「視線」/終
240 ◆K.tai/y5Gg :2006/11/12(日) 23:25:56
お約束の巨大な密室
241キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/11/12(日) 23:48:36
いわゆる一つのクローズドサークル
242名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/14(火) 02:31:14
243まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/14(火) 22:59:20
54.「悲鳴」


「状況を整理しよう」

重苦しい雰囲気の中、KIRAが口を開いた。

「一度目の音が聞こえたのが22時30分頃、ちょうどその時に
 携帯が肝禿橋を通った。間違いないな?」
「あぁ、間違いない」
「そして二度目の音……あれが23時。
 この時に肝禿橋が爆破されたと見て間違いないだろう」

みんな黙って頷く。

「一度目の音が何なのか、二度目の音……肝禿橋の爆破と関係があるのか
 どうかはわからないが、今、一つわかっているのは……
 村に戻る手段がなくなったという事だ」

KIRAが言葉を終えると、隣り合った者同士が不安な表情で顔を見合わせた。
244まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/14(火) 23:08:43
肝禿橋は爆破されていた。
一体どんな爆破物が仕掛けられていたのか想像もつかないが、
橋は見事なまでに綺麗さっぱり姿を消していた。
対岸までは約100m、橋を渡る以外に流れの速い川を渡る術はない。
そして橋を渡る以外に村に戻る道はない。

「戻れないって……どうするの?」
「橋が復旧されるまでここにいるしかないな」
「そんな……」

おそるおそる尋ねたsaokoにKIRAが冷たく返す。
隣にいるねるねが涙目でsaokoの腕を掴んでいた。

「とにかくキラヲタの事もある。みんな極力教室から出ないように」

それから、とKIRAが続けようとした時、

「きゃああああああ!」

耳を突き裂く様な悲鳴が教室に響き渡った。

「どうした九州!?」
「あ、あそこに誰か……」

真っ青な顔で窓の外を指差している。
245まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/14(火) 23:18:01
「い、今……向こうの校舎の2階に人が……」
「どこだ!?」

窓を開けて身を乗り出し、南校舎の2階に目をやったが、
見る限りでは誰もいない。

「誰もいないぞ」
「ほ、ほんとだって! 給食室の所あたりに」
「見間違いじゃ……おい、KIRA!?」

振り返るとKIRAが教室から出ようとしたのが目に入った。

「鬱井! ついて来い!」
「ちょ……待てよ!」
「俺も行く」
「イノ!?」

突然の事でおろおろしていた僕を置き去りにして、イノがKIRAの後に続く。
僕も慌てて二人を追って廊下に出た。

「KIRA」
「なんだ」

廊下に出て、突き当りの曲がり角のあたりでイノがKIRAに声をかけた。
246まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/14(火) 23:27:26
「もしキラヲタ殺った奴がいたら……」
「お、おいイノ!何を……!」

どこに隠し持っていたのか、イノの手にはいつの間にかナイフが握られていた。

「それで対抗出来る相手ならいいが」
「KIRAまで……! なんだお前ら!」

KIRAは当たり前の様に拳銃を手にしている。
何を考えてるんだこいつらは!

「何を動揺している鬱井。これはそういう事態だ」
「お前も持ってんだろ? せっかく堂々と使えるんだから抜いとけよ」

二人に言われて二つの事に気付いた。
KIRAの言う“そういう事態”……もしかすると給食室にいる(かも知れない)のは
キラヲタを殺した相手で、華鼬の人間かも知れないのだ。
しかも橋を爆破した人間かも知れない。
もしそうならそんな無茶苦茶な事をするほどの相手だ。当然といえば当然か。
そしてイノのセリフで僕も拳銃を持っている事を思い出した。
汗ばむ手で拳銃を抜き、握り締める。

渡り廊下を抜けて南校舎へ。
階段を静かに、且つすみやかに下りる。
247まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/14(火) 23:39:15
「静かに……」

2階と3階の間の踊り場で一旦足を止めて様子を伺う。
階段を下りてすぐが給食室だ。
もしもそこにキラヲタを殺した犯人が居て、
僕達が近づいて来ているのに気付き待ち伏せていたら……
無意識に鼓動が速くなり、呼吸をする度に肩が震える。

KIRAが目で合図を送り、無言で頷く。
一段、また一段と足をかけてゆっくりと階段を下りる。
踊り場の窓から差す月明かりが、床に四角い空白を映している。
僕達が一段ずつ降りるごとに、その白い枠に影が落ちていった。

2階の床に降り立った瞬間、僕の緊張はピークに達していた。
KIRA、イノに続いて一番最後に階段から降りたその時、
床に映った僕の影が歪な形に変わった。

──誰か後ろにいる。
不意に背後から人の気配を感じ、息を飲みながら振り返る。
反射的に銃を気配の方へ向けて身構えた。

「う、動くな!」
「よせ! 俺だ鬱井」
「ふぇ!?」
「俺だ、携帯だ!」
「け、携帯?」
248まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/14(火) 23:43:58
銃口の先で携帯が両手を上げていた。
僕は慌てて銃を降ろす。

「殺す気かよ」
「ご、ごめん」
「おい静かにしろ」
「もう遅いだろ……誰かいるならもう気付いてるって」
「お、おいイノ危ないぞ」

呆れた様に僕を一瞥して、イノはすたすたと歩き出した。
KIRAもふぅ、と息を漏らしてイノに続く。

「携帯、何も持ってないんだろ? 気をつけろよ」
「お前の方が気をつけたほうがいいんじゃないか?」

そう言って携帯も僕を追い越して給食室の方へと歩き出した。
せっかく心配して言ってやったのに……

「誰もいない……な」

給食室に入ったが誰もいなかった。
電気が点かない様にしてあるので暗かったが、
さっき肝試し中に通った時と変わった様子はない。
やっぱり九州の見間違いだったんだろうか。

「おい! これ見てみろ」

イノが冷蔵庫の前で声をあげる。
249まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/14(火) 23:53:41
「なんだ? チェックポ……ああ!」

思わず僕も声をあげてしまった。

冷蔵庫の扉には『チェックポイント』と書かれた紙が貼ってある。
ここを通った人間は、自分の名前をこの紙に書いていかなければならない。
紙にはさっき僕が通った時よりも多く名前が書かれていた。
が、

「これは……キラヲタの名前が塗り潰されているのか?」

紙には左上から通った順に名前が書かれている。
しかし、インリンとugoの間に書かれているはずのキラヲタの名前が黒く塗り潰されていた。

「まさか犯人が……?」
「いや……それより」
「え……」

肝試し中に通った時と変わっていたのは、
僕の後に通った人間の名前が増えていた事、キラヲタの名前が塗り潰されていた事、
そして紙の一番下に、

「“十三年前の忘れ物、欠けた五番の棺から三度目の鐘が鳴る”……?」

と、書かれていた。
250まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/15(水) 00:01:16
「なん……だこれ?」
「気持ち悪い字だな」

何かのメッセージなのだろうか。
かろうじて思いついたのは「十三年前」という部分だけだ。

「十三年前って、俺達が6年の時の事だよな」

と、背中越しにKIRAに問いかけてみたが返事がない。

「……今何時だ?」

食い入るように張り紙を見ていた僕達の後ろに突っ立っていた携帯が、
突然口を開いた。そしてKIRAがその言葉を聞いて表情を変えた。

「おい、KIRA……?」
「……戻ろう! 鬱井、その紙を剥がして持って来い!」
「え?」

KIRAが血相を変えて給食室を飛び出した。
携帯もその後を追って走り出す。

「な、なんだ!? どういう事?」

何が何だかわからないが、KIRAの迫力に気圧された僕は
言われた通り張り紙を剥がしてから給食室を出た。
251まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/15(水) 00:09:33
「あ、そういう事か?」

僕と同じタイミングで出たイノが腕時計を見ながら呟いた。

「え? わかったの? なんなの?」

階段を駆け上がりながら聞く。

「いや……全部はわからんが、KIRAの様子見ると
 多分教室爆破するって事なんじゃねーの」
「な、なんだって!?」
「いやでも後5分ぐらいあるから大丈夫だろ。間に合う間に合う」
「間に合うって……訳がわからん!」

イノの説明じゃさっぱりわからないので、とにかく教室に戻ってからKIRAに聞こう。
階段を上がって渡り廊下を通り北校舎へ戻る……と、

「みんな! はやく出ろ!」
「うわああああ」

渡り廊下の先の曲がり角から蜘蛛の子を散らした様にみんなが出てきた。

「うお!? な、なんだなんだ!?」
「鬱井!」
「ニコフ! どうなってるんだ」
「どうって……KIRAがロッカーに爆弾が仕掛けられてるって」
「ば、爆弾!?」
「外に逃げろって言うから出たんだけど……」

いつも冷静なニコフも突然の事で混乱している様だった。
252まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/15(水) 00:18:01
「KIRAは?」
「まだ中に……」
「わかった! ニコフはとにかく外へ!」
「う、鬱井!」
「大丈夫!」

グッと親指を立ててニコフに向ける。
ニコフが心配そうな顔をしていたが、それが何故か僕の中の恐怖感をやわらげた。

「KIRA大丈夫か……っておい!」

教室に足を踏み入れると、そこには誰もいなかった。

「あ、あれ?」
「鬱井! もうダメだ! はやく出ろ!」
「え? KIRA!? ど、どこだ!?」

教室の外、廊下から聞こえた気がしたが……

「あ! 向こう側か!?」

廊下にベニヤ板が設置してあったのを思い出した。
KIRAはその向こう側にいる様だ。
253まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/15(水) 00:25:05
「あれー!? いないじゃん! どこだよ!?」

教室の後ろのドアから出たがやっぱりKIRAの姿がない。

「鬱井! 行くぞ! 走れ!」
「お!?」

女子トイレから出てきたKIRAはすぐに階段の方へと駆け出す。

「……し早く気付いていれば……!」

階段を駆け下りながらKIRAが何か言っていたが聞き取れなかった。
階段を下りて中庭へ出ようとした瞬間、僕は「三度目の鐘」の意味を理解した。

瞬時に一度目、二度目と同じ音だったと理解したが、
まるで比べ物にならない。

「うわあああああああああ!」

頭の真上に雷が落ちたのかと言うほどの衝撃と轟音。
本能的に思わず頭を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった。
254まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/15(水) 00:39:49
「鬱井、大丈夫か?」
「あ、あぁ……」
「思ったより爆破の規模が小さかったな……」
「校舎全部吹っ飛ぶのかと思ったよ……」

がくがく震える足でなんとか立ち上がる。

「みんな大丈夫かな……」
「外に出てみよう」

タイミング的に多分みんな大丈夫だとは思うが、どうだろうか。
玄関から外に出たいが北校舎一階の奥が封鎖されているので
一度二階に上がってグルッと回らなければならない。

「で、KIRA……これ、どういう意味なんだ? お前はわかったんだろ」

冷蔵庫から剥がした紙を見せながらKIRAに聞いてみた。

「三度目の鐘、というのはもうわかっただろう」
「あぁ……でもなんでタイミングがわかったんだ」
「一度目が22時30分。二度目が23時。そして今が23時30分過ぎだ」
「30分おきか……なんで教室だと?」
「十三年前、欠けた五番というのはLコテの事だろう」
「Lコテ……? あ、女子の背の順か!?」
「あぁ、棺というのはロッカーの事だな。
 教室に入ってすぐにロッカーを調べたがひとつだけ開かなかった」
「Lコテが使ってたロッカーか……」
「おそらくあの中に何か仕掛けてあったんだろうが……」
255まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/15(水) 00:55:41
「って事はやっぱり」
「僕達の中の誰かが仕掛けたという事だろう」
「そんな……やっぱりそうなのか。でも一体誰が?」
「外部の者が入り込んでる事も間違いないとは思うんだが……」
「キラヲタを殺したのは外部の者なんだろうか?」
「可能性としては今のところそっちの方が高いが」
「高いって事は俺達の中にいる可能性もなくはない……って事か?」
「もう少し調べてみなければ断言出来んが、不可能ではないはずだ」
「もし俺達の中に犯人がいるとしたら……?」
「二人か三人……いや四人まで絞れる」
「マジかよ……でも、どうやって?
 そもそもキラヲタはなんであんな所で死んでたんだろうか」
「あんな所?」
「だって四階の女子トイレだぞ?
 普通に肝試しのルート通ったらゴール前にわざわざあんな所行かないだろ?
 体育館を出て北校舎の北側を回って玄関に戻る。
 で、一旦南校舎に渡って階段を上がって四階から渡り廊下を通って
 ゴールが普通じゃないか。ベニヤ板もあるし四階のトイレに行こうと
 思ったら3階か2階の廊下を通らないと行けないだろ?」
256まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/15(水) 01:13:17
「……キラヲタの死体は動かした形跡がなかった」

横目に見ながらKIRAが言う。

「あぁ、血の跡もトイレ以外にはなかったし、
 拭いてまわる時間なんてないはずだ。
 ナイフを刺したのはトイレだと考えても、
 眠らせてからトイレまで運ぶってのも無理だろ?」

トイレには電気が点いていた。
見た限りでは間違いないはずだ。

「そうだ。それとさっきも言ったがキラヲタの死亡時刻はあの時で約一時間前だ」
「えっと……じゃあ……おい、ちょっと待て、それじゃ……」
「キラヲタは教室を出てすぐに殺されたんだろう」

KIRAの言葉で頭の中がこんがらがって来た。
だって、

「チェックポイントはどうなる?」

そう、チェックポイントには名前が書かれていた……はず。
正直肝試しの時は書かれていたかはっきり覚えていない。
だが、他には覚えてる者もいるだろう。
それに3年1組の教室に置いてあった瓶の残りの本数にも
狂いはなかった……はず。
これも僕が実行委員じゃないから元々何本置いてあったかは
わからないが、インリン達と入った時は確かに残り15本で
肝試しに出ていない人数と同じだった。
257まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/15(水) 01:26:16
その事をKIRAに話すと、

「そんなものはどうにでも出来るはずだ」

と、あっさり言われてしまった。

「でもよ、キラヲタの後にugoが通ってるよな?
 これ見ろよ、塗り潰されてるのはキラヲタの名前だろ?
 左上から通った順番に名前が書かれてる。
 これを不自然じゃないようにしようと思ったら
 インリンが名前を書いた後で、ugoが来るまでに書かなきゃいけないんだぞ?
 インリンとugoに聞けば詳しい事もわかるだろうし」

僕は思いつく限りの事を早口でまくしたてた。
しかしKIRAは僕の方を見ようともせず、

「だからどうにでもなると言ってるだろう。
 後はお前の言う通りインリンやugo、
 それに他のみんなにも聞けば答えは見えてくる」

と、少しイラついた口調で返す。
その口調が意味するのは“もう黙れ”という意味だろう。
ここ最近の付き合いで、KIRAの言葉の裏に隠された意味が
理解出来るようになってしまった。
そしてこれ以上つっこむと怒鳴られる。
僕は小さく「はい」と返事した。
258まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/15(水) 01:52:29
しかしその返事はKIRAの耳には届かなかっただろう。
声が小さかったからではない。
僕が声を出したのと同時に、更に大きな声が聞こえたからだ。

「なんだ!? 悲鳴!?」
「まさか……!」

声……というよりは「音」に近かった。
ガラスを金属製の物で力任せにひっかいた様な、神経を逆撫でする音。
およそ人間が日常で発する事のない、普通じゃありえない状況に
出くわした時にしか出さないであろうその声は、
キラヲタが死体で発見された時に聞いた声と同種のものだった。

「行くぞ」

KIRAが再び拳銃を抜いて走り出し、僕もそれに習う。
もしかして、という嫌な予感が胸の奥から湧き上がる。
さっき見たキラヲタの姿が脳裏に蘇り、全身に寒気が走った。
僕は祈るような気持ちで声のした方へと急いだ。
259まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/15(水) 01:54:21
どこをどう走ったのか、気付くと南校舎の女子トイレの前だった。
目の前には散り散りになったみんながいる。

「どうした? 何があった?」
「中……」

KIRAの問いかけに震えた声で答えたのはわんたんだ。

わんたんの言葉を聞いてトイレの中に目を向けた僕が見たものは、
首から血を流して倒れている下ネタマスクと、
その傍らで血に染まったナイフを持って立っているシニアだった。
260まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/15(水) 01:55:47
54.「悲鳴」/終
261まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/16(木) 00:19:23
55.「質問」


「みんな! はやく出ろ!」

曲がり角の向こうからKIRAの声が響いた。
教室から飛び出してきたみんなが、我先にと廊下を駆けていく。

「鬱井!」
「ニコフ! どうなってるんだ」

僕達を見てニコフが立ち止まった。

「どうって……KIRAがロッカーに爆弾が仕掛けられてるって」

やはり思った通りだったようだ。

「KIRAは?」
「まだ中に……」

どうやらみんなを教室の外に追い出した当のKIRAはまだ中にいるようだ。
しかしもうそんなにゆっくりしている時間はないはずだが……
262まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/16(木) 00:25:33
「イノ! なんかやばいっぽいよ!」

と、すれ違いざまに声をかけてきたのはシニアだ。
声をかけただけで立ち止まろうとはせず、そのまま走り去っていった。

「う、鬱井!」
「大丈夫!」
「あ……おい」

鬱井が飛び切りの笑顔で教室の方へと走っていった。
一瞬ついていこうかとも思ったがこれ以上はやばい。
どうやら他のみんなは出たようだし、
今更僕一人がKIRAや鬱井に付き合って教室の中まで入ったって意味ないだろう。
教室で何をしているのか知らないが後はあの二人に任せてとにかく離れよう。

「イノ、どうしよう……鬱井が」

ニコフが心配そうな顔をして鬱井の姿が消えた廊下の先を見ている。

「KIRAもいるし大丈夫だろ。とにかく出よう」
「う、うん」

ニコフは一瞬とまどっていたが、僕が踵を返すと
教室の方を気にしながらも僕に続いて走り出した。
263まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/16(木) 00:37:59

渡り廊下を戻り、南校舎の階段を下りようとしたその時、
南校舎の奥で影が動くのを、目の端で捉えた。

「イノ!? どうしたの?」

足を止めた僕を追い越したニコフが振り向きながら声をかける。

「悪い、先に行っててくれ!」

突き放すように返事をして、僕は階段を下りずに
南校舎の奥に向かって走り出した。
走りながら廊下の窓を通して反対側の校舎に目をやると、
明かりが点いている6年2組の教室の中が見えた。
教室の中には誰もいない。KIRAも鬱井も脱出したようだ。

南校舎、2年1組の前で足を止めて、軽く深呼吸をする。
真っ暗な廊下に差し込む僅かな月明かりが、
窓の形に沿って床を四角くくり抜いていた。

右手を背中にまわしてTシャツの裾に手をかけた瞬間、
爆音と共に建物が大きく揺れた。
264まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/16(木) 00:46:28
「うお……すっげ」

思わず体ごと北校舎の方を向いてしまったがこれが失敗だった。

何か硬い物が後頭部に押し当てられ、ゴツッという音が頭の中で響いた。

「動くな」

背後から男の声。
直感で銃口をつきつけられていると感じた。

「両手を頭の上で組め」

声に従い、言われた通りにする。

「ゆっくり下がれ」

声が僕のTシャツの襟を掴んで引っ張り、そのままトイレに引き込まれた。
トイレに入ると、僕の喉を締め付けていたTシャツの襟が緩む。
265まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/16(木) 00:56:48
「なぜ逃げずにこっちに来た?」

背中越しに男が聞く。

「あんたが爆弾かなんか仕掛けたんだろ?
 こっちの校舎まで吹っ飛ぶほどの威力だったら
 仕掛けた奴がこんなとこに残ってる訳ないと思ったからだ」
「なるほど……」
「で、その爆弾魔がこんなとこで何やってんの?
 あれか? 放火犯が現場に戻るみたいな心境か?」

僕が質問を返すと、男は喉を鳴らして小さく笑った。

「しかしよく一人で来たな」
「失敗だったかな。他の奴がいると足手まといになるかと思ってね。
 例えば一緒に来た奴が、こんな風に人質にとられたりとかしたら邪魔くさいし」

僕は素直な気持ちを言ったつもりだったが、男はまたも小さく笑った。

「この状況で余裕だな。さすが吊の片腕だっただけの事はある」

男が吊の名前を口にした。
という事はもしかしてこいつが──?
266キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/11/16(木) 01:03:29
”男”…なんだな
267まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/16(木) 01:04:58
「なぁ、あんたもしかして……華鼬?」
「……だったら何だ?」
「別に……どんなツラしてんのかなぁ、と」
「ふん……」

ただの時間稼ぎではなく、これも素直な疑問だ。
しかし男は鼻で笑っただけで、否定も肯定もしなかった。

「さて……質問だ。ノートの在り処を知っているか?」

男が急に乾いた口調になった。
ノートの在り処……僕が知る訳ない。

「またそれか。何なんだよ一体」
「答えろ」
「俺が持ってるって言ったらどうするんだ?」
「……お前が持っていないのはわかっている。
 誰が持っているか、あるいはどこにあるかを知っているか、と聞いてるんだ」

僕が持っていないのは知っている……?
どういう事だ。あの時、吊もこう言っていた。
「ノートの行方を知っているか?」と。
どういう事かはわからないが、僕がノートを持っていないというのは知っている。
しかし肝心のノートがどこにあるかはわからない、という事か。
268まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/16(木) 01:12:19
確かに男の言う通り、僕はノートを持っていない。
そして誰が持っているのか、どこにあるのかも知らない。
そもそもあのノートがまだ存在しているとは思っていない。

男の求めている答えはわからないが、
正直にそう答えればきっと殺されるだろう。
後頭部に感じる銃らしき物の冷たさがそう言っている。
しかし、誰がノートを持っているか知っていると答えても、同じ事なのかも知れない。

「……知らないんだな?」

どの道どう答えても殺されるなら……
と、頭の上で組んだ手を緩めたその時、
思わず耳を塞ぎたくなるような悲鳴が聞こえた。
その瞬間、押し当てられた冷たい物が後頭部から離れる。

頭をかがめながら体を捻り、
視点が定まるより先に、男が伸ばした腕に自分の腕を絡める。
同時に腰に差したナイフを抜き取り素早く男の喉元に突きつけた。

後頭部に押し当てられていたのはやはり銃だった。
銃を握っている男の腕は押さえつけたものの、
相変わらず銃口はこちらに向いたままで、
引き金にはしっかり男の指がかかっていた。
269まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/16(木) 01:31:05
「ぐ……!」
「どうする? 一緒に死んどくか?」

引き金にかかった指に全神経を集中し、ナイフを固く握る。

「……どうなってる? まさかもう……」

男が何か思案しながら呟く。

「なにブツブツ言ってんだよ」
「……もう一度聞く。ノートの在り処は知らないんだな?」

迷っている様な、覚悟を決めたような目で男が聞く。

「だから知ってるって言ったらどうす……」
「そうか、ならいい」

引き金にかかった指が動く。

「ばっ……アホか!」
270まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/16(木) 01:48:46
喉元に突きつけていたナイフを引き、男が銃を握っている右腕に突き刺す。
同時に耳元で何かが破裂した様な音が鳴った。
男の手から銃が落ちたのを見て男の腕から左手を離してそれを拾う。
一歩退がって拾った銃を男に向けたが、男もまたこちらに銃を向けていた。

「もう一丁持ってたのかよ」
「……やってくれたな」

だらりと下がった男の右腕から血が滴り落ち、床が赤く染まっていく。

「てめー、“命は大事に”って習わなかったのか?
 あっさり撃ちやがって。何が目的か知らんけど、
 死んだらそれで終わりだぞコラ」

全身から汗が吹き出るのを感じた。本気で死ぬかと思った。

「死んだら終わり……か」
「あ?」
「……いつ終わったってかまわないさ」
「はぁ? 訳わかんねーんだよ」

うっすらと笑みを浮かべる男に言い知れぬ恐怖を感じた。

「刺し違えてもそれはそれ……どうせ元より死んだ身だ」
「……知るかボケ、だったらここでもっかい死んどけや」
271まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/16(木) 02:06:29
銃を向け合ったまま、時間だけが流れる。
お互いに目を逸らさず、相手に隙が出来るその一瞬を待った。

時間が経つにつれ、肩に何かじんわりとした温かいものが
広がっていくのを感じていた。そして段々と右の耳が
焼ける様に熱くなっていく。

おそらくさっきの発砲で耳を怪我したのだろう。
耳から出血した血が肩に垂れているに違いない。
じわじわと湿っていく右肩から血の臭いが漂ってくる。
耳はどうなっているんだろうか?
もしかすると右耳全部吹っ飛んでんじゃないだろうか。
確認したいがもし本当に無くなってたら泣いてしまうかも知れない。
それよりなにより男から注意を逸らせない。

本当に耳が吹っ飛んでいたのかどうかはわからなかったが、
少なくとも聴力は低下していた様だ。

右の耳がほとんど聞こえないせいで、
男がほんの一瞬だけ眉を動かした意味に気付けなかった。
272まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/16(木) 02:17:33
「イノ!」

不意に背後に人の気配を感じた。
僕の名を呼ぶ声が左耳にだけ届く。
聞き覚えのある声に思わず振り向いてしまった。

「蟹……」

振り返るとトイレの外に蟹玉が立っていた。
振り返った瞬間、全身に寒気が走る。
今まで何度か感じた事のある感覚、人が人を殺そうとした時に発する空気。

「伏 せ     ろ  !」

自分の発した声がまるで他人の声の様に聞こえる。
僕は男に背を向けたまま床を蹴った。
蟹玉に覆いかぶさるように飛びついた瞬間、銃声が響いた。
273まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/16(木) 02:19:14
55.「質問」/終
274アルケミ ◆go1scGQcTU :2006/11/17(金) 22:46:03
275まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 00:43:24
56.「罵声」


「シニア……まさかお前が……?」

南校舎一階女子トイレの中、ナイフを片手に立っているシニアを見て
思わず声が震えた。ナイフの切っ先からポタポタと血が垂れている。
そしてシニアの足元で、首元から多量の血を流して倒れているのは
下ネタマスクだった。
ピクリとも動かない下ネタを見て、手遅れだというのは一目でわかった。

「どうなんだシニア」

KIRAが懐に手を入れてトイレの中に足を踏み入れる。

「やってないよ」

近づくKIRAに身構える訳でもなく、シニアは髪をかきあげながら、
あっさりとそう答えた。
KIRAはシニアの目の前で足を止め、真っ直ぐ彼女の目を見る。
まるで「目を見ればわかる」とでも言いたげな視線だった。

「では説明してもらおうか」

そう聞きながら、倒れている下ネタの顔を覗き込むように膝を折る。
シニアが目の前で座り込んだKIRAの頭を睨んでいる。
276まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 00:51:47
「説明も何も、やってないものはやってないとしか言いようがないね。
 トイレに入ったらもうこの状態だったんだもん。
 あ、電気は私が点けたんだけどね」

動揺した様子もなく、まるで台本を読むかのようにすらすらと答える。

「そのナイフは?」

KIRAもまた、落ち着き払った声で淡々と聞く。

「横に落ちてた。あ、正確には顔の横、右横」

と、シニアはめんどくさそうに、
今まさに握っているそのナイフで下ネタの顔のあたりを指す。
あまりにも平然とし過ぎている。
本当にシニアが犯人だとして、こんな受け答えが出来るものなんだろうか。

「……何故わざわざ拾うんだ。しかも素手で」

KIRAが少し呆れた様な口調で聞き、

「あぁ、ごめん。これでやったのかな? と思って」

と、シニアは悪びれた様子もなく答えた。
277まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 01:01:37
「これどうしたらいい? 置いとくよ、ほら、ここにこう落ちてたの」

そう言いながら、
持っているナイフを下ネタの顔の右横に置く。
その時、背後から声がかかった。

「やってないんだな?」
「やってません」

KIRAがもう一度そう聞くと、シニアは素早くそう答えた。
その時、

「う、嘘よ! 嘘に決まってる!」

と、声をあげたのはわんたんだ。
ぶるぶると肩を震わせ、目にはうっすら涙を浮かべている。

「はぁ? なんで」

途端にシニアの目つきが変わった。

「だ、だって人が死んでるのよ!? どうしてそんなに平気な顔してられるのよ!」
「KIRAだって普通にしてるじゃん」
「それにナ、ナ、ナイフ! そんなの拾う訳ないじゃない!」
「だからこれでやったのかな、って思ったからっつってんじゃん」

わんたんの声がどんどん上ずっていく。
対照的にシニアはどこか冷めたような、げんなりした口調で返す。
278まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 01:02:45
>その時、背後から声がかかった。


あわわ・・・・
これ関係ないです汗
この一行なかったことにしてください><
279まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 01:11:17

「そ、そうだ! お前がやったんだろ!?」
「キラヲタを殺したのもシニアなんじゃないのか?」

わんたんに呼応したかのように、周りにいたみんなも一斉に、
キラヲタの件も含めてシニアを犯人扱いし始めた。

「なんなのみんな、うっざ」
「ふ、ふざけるな! 人殺し!」
「おいKIRA、早く捕まえろよ!」

みんな抑えていた感情をぶちまけたようにシニアを罵る。
それでもシニアはめんどくさそうに、

「もーなんなのこれ。ねぇイノは? イノどこー?」

と、自分に罵声を浴びせている連中を通り越して外に視線を送る。

「そうだ! 鬱井、そういえばイノが……」

隣にいたニコフが思い出したように口を開いた。

「イノがどうした?」
「さっき四階から降りる時に……」

慌てたように上を指差しながら説明する。
280まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 01:14:56
「南校舎の奥って……この上か?」

僕はトイレのすぐ横の階段に目をやった。

「ねー、イノ呼んできてよイノ!」

トイレの中からシニアが手を振って呼びかける。
すると、みんな一斉に僕の方を見た。

「わかった。俺が探してくるよ」

答えたのは僕ではなく蟹玉だ。

「はやくね、はやく!」

シニアがバタバタと手を動かして、急かす様に蟹玉に声を投げる。
蟹玉は人差し指と中指をくっつけて、シニアの方に向かって軽く指を振った。
みんなの視線が蟹玉に向いたが、彼は誰とも目を合わさず
長い足を交互に動かして、すたすたと階段の方へと歩いて行ってしまった。

「待てって蟹玉、俺も行くよ。KIRA、いいだろ?」
「あぁ、任せた。気をつけろよ」

一応KIRAに断ってから蟹玉の後を追う。
281まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 01:26:23
早足で階段を上り、蟹玉の横に並ぶ。

「蟹はどう思う?」
「シニアの事かい? 俺は違うと思うけどね……」

蟹玉はあっさりとシニア犯人説を否定した。

「なんでそう思う?」
「さぁ……直感、かな」
「勘かよ」

と、少し呆れたものの、僕もなんとなく違うんじゃないかなと思っていた。

その時、上の方から乾いた音が響いた。

「なんだ?」

蟹玉が階段の先を見上げた。
僕は一瞬足を止めてしまった。
この音に聞き覚えがあったからだ。

「まさか……」

銃声?
静かな校舎の壁に反射した音が頭の中で反芻する。
282まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 01:36:47
「急ごう」
「鬱井?」

嫌な予感がし、階段を蹴って駆け上がる。
まさかイノが……?

「蟹玉、ストップ……! 」

四階にあがる手前で一旦足を止め、懐から銃を取り出す。

「鬱井、まさか……?」
「しっ! 静かに……」

息を潜めて耳を澄ませる。
声……? 人の声が聞こえる。
男二人の話す声。近い。階段を上がってすぐぐらいか?
しかし声は少しくぐもっている。おそらく……トイレか?
そして片方の声、これは、多分、イノ。
誰と話しているんだ……?
目を閉じ、更に集中して耳を澄ます。
が、急に声が聞こえなくなった。

まさか……
最悪の光景が頭に浮かび、瞼を開くと、蟹玉の背中が目に映った。
283まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 01:51:56
「ちょ、待……」
「イノ!」

手を伸ばした時にはもう、蟹玉はトイレの前だった。
蟹玉は中を覗きこんで、イノの名前を口にした。
やはり中にイノがいたのか、と思った瞬間、
中から何かが飛び出して来た。
それがイノだと僕が認識したのと同時に、再び乾いた音が響いた。

「蟹玉! イノ!」

倒れこむ二人を見て、
トイレの中で、何かとんでもない事が起こっていたかも知れないという
想像が吹っ飛んでしまった。僕は思わず銃を放り出して二人に駆け寄った。

大丈夫か!? と、声をかけようとした時、
トイレの中からまた何か飛び出して来た。

「なっ!?」

視線をトイレの中に向けると、黒い物が目に飛び込んできた。
一瞬、目がおかしくなったのかと思ったがそうではなかった。
黒い物はすぐに右に流れ、視界から消えていく。

その黒い物は廊下をごつごつと打ち鳴らし、あっという間に遠ざかっていく。
僕は何が起こったのか理解できず、
黒い物から伸びた足の持ち主が、背を向て走り去っていくのをただ見送るだけだった。
284まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 02:09:32
「イノ! 大丈夫か!?」

蟹玉の声で我に返る。
視線をイノにやると、イノが床に片手をついてあぐらをかいていた。

「なぁ、俺の耳どうなってる?」

イノが自分の右耳を指差す。

「どうって……血が出てるよ。大丈夫か」

耳の、なんという部分なんだろう?
耳たぶの少し上のあたりから出血している。

「血? 血だけ? 耳、ちゃんとある?」

イノが真剣な顔で聞く。
が、見た感じでは少し切れているぐらいでどうという事もなさそうだ。
消毒して絆創膏でも貼っておけばすぐに治るだろう。
それを告げるとイノは心底ほっとした顔で大きく息を吐いた。
そんなイノを見て僕も肩の力が抜けていくのを感じた。

「イノ、今のは……」
「知らね」

廊下の奥を見たが当然姿はなかった。
285まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 02:25:54
「とにかく下に降りよう。歩けるか?」

イノに手を差し伸べたが「いらね」と断られた。
自分で立ち上がり、男が消えた廊下の奥を見つめる。

「わざと外しやがったな……あの野郎」

イノが唇を噛んで呟く。

階段を下りながら男の顔を思い出そうとしてみた。
が、あまりにも一瞬だったのでほとんど見えなかった。
かろうじてわかったのは同窓会のメンバーではなかったという事だ。

階段を下りるとみんなが僕達の方を見る。

「鬱井! 無事だったか」

どうやら、というか当たり前といえば当たり前だろうが、
さっきの銃声は下まで届いていたようだ。
おそらくKIRAも銃声に気付き上に上がってこようとしたのだろうが、
僕が銃を持っているのは知っているし、
みんなを置いて行く訳にはいかないと判断したんだろう。

「そうか、ということはやはり外部の人間の犯行……か?」

上での出来事を話すとKIRAは手を顎に当ててそう呟いた。
KIRAの言う通り、あの男が犯人でほぼ間違いないだろう。
286まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 02:41:34
「とりあえずどこかの部屋に移動しよう。みんな揃ってるか?」
「うん、揃ってる」

KIRAの言葉で気付いたが、四階に上がる前より人が増えている。
そんなに広くない廊下に約30人。
もし今さっきの奴が襲ってきたら身動きが取れない。

しかし教室には戻れない。
どこの部屋に? という声が次々と聞こえてくる。

「どこかの部屋使うなら鍵がいるな。
 肝試しに使う部屋以外は全部入れないようにしてある」

そう言ってインリンが一歩前に出る。

「鍵はどこにある?」
「職員室だ」
「……よし、ではみんなで上に上がろう」

KIRAが先頭に立ち、階段の方へとみんなぞろぞろ歩き出した。
その時、

「ちょっと待てよ」

イノがみんなを見渡して言った。

「携帯がいないぞ」
287まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/18(土) 02:43:50
56.「罵声」/終
288 ◆K.tai/y5Gg :2006/11/19(日) 03:01:23
いますよいます
289蟹玉 ◆KANi/6qufk :2006/11/19(日) 23:08:34
|´皿`)彡

吹いたwww

多分、あぼんされてんだよ…
290まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/20(月) 00:00:46
57.「自白」


イノの言う通り、携帯の姿が見当たらなかった。

「どこに行ったんだ?」

目を凝らしてもう一度一人一人の顔を確認していくが、
やはり携帯だけがこの場にいない。

「携帯を最後に見た者は?」

先頭に立つKIRAがそう言ってみんなの方に向き直る。

しかしみんな黙ったまま隣の者と顔を見合わせるだけで、
KIRAの問いに答える者はいなかった。

僕は教室が爆破される直前の事を思い出していた。
あの時、携帯は僕より先に給食室を出ていった。
そして僕はイノと一緒に四階に上がって、渡り廊下でニコフと……

と、記憶を辿っている途中にシニアが口を開いた。
291まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/20(月) 00:19:18
「携帯なら玄関出まで一緒だったよ」
「なに?」

シニアの発言にKIRAが顔をしかめた。

「KIRAと携帯が教室に帰って来て外に出ろって言って、
 みんな一斉に外出たでしょ?
 あの時、私の前走ってたから覚えてるよ。」

そうだ、今シニアが言った通りだった様な気がする。
あの時、渡り廊下でニコフと話している時、
シニアがイノに何か声をかけながら僕達の横を走って行ったのを思い出した。
一瞬シニアの方に目をやったが、確かにシニアの前を携帯が走っていたような……

「あぁ、俺もそれは覚えてる」

イノが僕の記憶を補足する様にそう証言した。
すると僕と同じ様にニコフも思い出したのか、

「うん、私も覚えてる」

と、イノに続いた。

二人の証言にKIRAが軽く頷いた。
292まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/20(月) 00:34:00
「玄関まで、とは?」
「玄関に着いた時にドカーンってなって、コケちゃったんだよね。
 で、起き上がって、校舎崩れる! とか思って、
 急いで外に出たけどその時にはもういなかったよ」
「なるほど」

シニアの説明はどうも要領を得ないものだったが、
KIRAには十分だったのか、納得した様子で顎に手を当てていた。

「大体の事はわかった。
 しかし携帯がどこに行ったかわからない以上、ここで待っていても
 仕方ない。とりあえず移動しよう」

KIRAはそう言って再びみんなに背を向け歩き出した。
その時、

「ちょ、ちょっと待てよ! 人殺しの言う事信じるのかよ!」

と、後ろにいた誰かが声をあげた。

「さっきの銃声でうやむやになりかけたけど、
 シニアが下ネタを殺した件はまだ終わってないだろ」
「そ、そうよ!」
「しつっこいな。やってないってば」
「は? なんだ? どういう事?」
293まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/20(月) 00:44:24
下ネタが殺したのはシニアだと決めつける者達、
相変わらずめんどくさそうに否定する当のシニア、
そしてそんなやりとりを見てイノセンスが、
訳がわからない、と言った表情で僕を見た。

「あぁ、実は……」

僕はトイレに指をさしながら、さっきこの場にいなかったイノセンスに
下ネタが殺されていた事を説明した。

「はぁ? マジで? おいシニア、お前殺っちゃったの?」
「だ・か・ら! やってないっつの! イノまでそんな事言うの」

イノの驚いた表情を見た途端、シニアが眉をへの字にして口を尖らせる。
イノなら自分を擁護してくれると思っていたのだろうか。

「いや、だってお前これは……」

イノがトイレの中を覗き込む。
すると、みるみるうちにシニアの眉がへの字からハの字に変わっていく。
右足の膝を腰のあたりまで上げて、シニアは大きく息を吸い込み、
叩きつけるように勢いよく床を踏み鳴らした。
294まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/20(月) 00:51:06
「あっそ! もういい! はいはい、私がやりました!
 これでいいですかぁ! だったらなんなんですかぁ! バーカ!」
「や、やっぱり!」
「きゃあああ!」

突然シニアが吐き散らす様にわめき出した。
彼女を取り囲んでいた人間が一斉に後ずさりする。

あまりにも突拍子のない展開に、僕は言葉を失ってしまった。
隣にいたイノも口をあんぐり開けて突っ立っている。

「これでいいんでしょ!? ほら、捕まえるなら捕まえたらいいじゃん!」

シニアが両手を突き出して僕の方に向かって歩いてくる。
しかし、どうしていいのかわからず、

「え……あう、KIRA!? ど、どうしる?」

と、思わず後ろを振り返りKIRAに助けを求めた。
しかしKIRAは僕には目を向けず、なんとも冷めた目つきで
シニアを見据えていた。

「本気で言ってるのか?」
「だってその方がいいんでしょ!? もうそれでいいよ! 好きにすれば!?」

シニアが両手を突き出したままKIRAに詰め寄る。
が、KIRAは腕を組んだまま動こうとしなかった。
295まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/20(月) 00:55:40
「なにやってんだよKIRA! 自分でやったって言ってるじゃないか!」
「は、はやく捕まえてよ!」

シニアを挟んだ廊下の向こうから無責任な声が飛ぶ。

「やれやれ……」

KIRAの視線はシニアから外れ、床に落ちた。
笑いを堪えているのかなんなのか、口元が歪んでいる。

「みんな少し頭を冷やしたほうがいい……」

視線を落としたまま、呆れた様な口調でKIRAが言う。

「な、なにを言ってるんだ! はやく捕まえろよ!」
「そうだよ! 私がやったって言ってんじゃん! はやく捕まえれば!?」

奇妙な光景だった。
犯人扱いされているシニア自身が、みんなと同じ様にKIRAに詰め寄っている。
296まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/20(月) 01:04:08
「シニア、お前も落ち着け……いくら自分が犯……」
「あ!? なにがぁ!?」

すっかり興奮したシニアをなだめる様に、
KIRAがやんわりとした声で話そうとしたが、
シニアはわめき散らして聞こうとしなかった。

「お、おいKIRA……どうすんだよ。イノ、お前もなんとか言えよ……」

僕はKIRAとイノの顔を交互に見ながら言った。
しかし二人とも同じ様に呆れた顔でシニアを見ているだけだった。

「仕方ない……鬱井」
「え?」

KIRAが僕に目をやりながら、何かを指示するように顎をくいっと動かす。
なんの事だかわからず戸惑っていると、小さくため息をついた。
組んでいる腕をほどいて、右手の人差し指で、
自分の左手の手首をとんとんと叩いてみせる。

「え、マジで言ってるのか?」
「一応……自白だからな」

KIRAの困った顔を久しぶりに見た。
その顔を見て僕もなんだか気が抜けてしまった。
297まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/20(月) 01:07:27
懐から手錠を取り出して、シニアの両手にかける。

「あ……なんか、紐でくくった方がいいのかな……」
「好きにしろ」

シニアに手錠がかけられたのを確認すると、
KIRAは背を向けて階段を上っていってしまった。

「お前……アホ」

イノが短くシニアに声をかけて階段を上っていく。

「アホはお前じゃアホー!」

シニアが手錠をジャラジャラさせて両手を振り回す。

「と、とりあえず行こうか……」

僕はシニアの腰に手を当ててそっと押した。

「触んな!」

シニアは腰を捻って僕の手を払うと、大股でKIRA達に続いて階段に消えていった。
僕は思わず小さな声で「ごめん」と謝ってしまった。

「……じゃ、じゃあみんな……上がろうか」

自分でもわかるほど力のない声だった。
まさかこれで事件解決になってしまうんだろうか……
298まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/20(月) 01:08:33
57.「自白」/終
299キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/11/20(月) 02:24:55
>>964
んじゃあそれでいきます(`・ω・´)
ありあとう(`・ω・´)


>KIRAの隣で亡霊の様に突っ立っていた携帯がこちらを見ているのに気付いた。
>KIRAとは正反対のまどろんだ瞳で、突き刺すようにこちらを睨んでいる。
この部分のイメージ絵描こうとしたけど自分の画力の無さに萎えて挫折した
300キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/11/20(月) 02:26:21
誤爆ごめん・゚・(つД`)・゚・
301泥犬:2006/11/20(月) 02:28:02
誤字に比べたら大したことありません
302泥犬:2006/11/21(火) 01:21:23
58.「舌打」


職員室に着き、壁にかかった時計に目をやると、
いつの間にか日付は変わっていて8月16日になっていた。
しかし僕達の悪夢の様な一日はまだ終わっていない。

「エアコンが付いてるのはこの階の部屋だけか」

どうせ使うならエアコンの付いている部屋がいい、と言う事で
この階の部屋を使うことになった。
校内でエアコンが付いているのは事務室、応接室、校長室、それとこの職員室だけだ。
小学校の頃、夏場は用もないのに職員室に涼みに来ていたのを思い出した。

「さて誰がどこの部屋を使う?」

インリンが職員室の壁にかけられた鍵を手に取る。

「とりあえずここの迷路撤去した方がよくない?」
「そうだな。ここが一番広いし」

職員室は普通の教室二つ分ぐらいの広さはあるが、
現在職員室は、肝試しの為に机や椅子が積み重ねられて迷路と化している。
303 ◆K.tai/y5Gg :2006/11/21(火) 01:31:26
固定をコッソリと修正しましょうね
304まりあ:2006/11/21(火) 01:32:25
改めまして
305まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/21(火) 01:39:34
「いや、ここはこのままにしておいてくれ」
「え? なんで?」

インリンとミサキヲタの提案をKIRAが却下した。

「少し調べたい事があるんだ」
「まぁいいけどよ。でも他の部屋だと一部屋にはみんな入れないぞ」

僕達がいる南校舎二階の部屋の並びは、東側の階段から順に、
女子トイレ、男子トイレ、職員室、校長室、応接室、事務室。
そして階段を挟んで一番奥に給食室、となっている。
ちなみに事務室から職員室までは部屋同士が繋がっていて、
廊下に出なくても隣の部屋に行き来できるドアが一つずつ付いている。

「仕方ない、何人かずつで部屋割りするしかないな」
「どうする? 誰がどの……ってKIRA、どこ行くんだ」

KIRAが廊下に出ようとしたので引き止める。

「携帯を探しに行って来る。とりあえず適当に決めておいてくれ」
「おいおい……」

一人じゃ危ないぞ、と言おうとした時、不意に職員室のドアが開いた。
まさかさっきの奴か!? と、慌てて懐に手を入れた。
が、

「……携帯!」

ドアを開けたのは携帯だった。
306キモハーゲニコフ ◆nikov2e/PM :2006/11/21(火) 02:13:07
携帯主人公の活躍に乞うご期待
307まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/21(火) 02:22:26
「どこに行ってたんだよ。心配したじゃないか」

胸を撫で下ろして懐から手を抜いた。

「橋を見に行ってた」
「橋? 肝禿橋か?」
「あぁ……」
「まぁ無事でよかったけど……」

心配など余計なお世話だ、という顔だった。
しかしこの状況で、よく一人で出歩く気になったもんだ。
結構度胸があるんだな、と思った。

一応携帯にも下ネタの事と四階での事を話しておいた。
しかし携帯は顔色ひとつ変えず頷くだけだった。
度胸があるというより、怖いとかそういった感情がないんだろうか?

「よし、じゃあ部屋割りはこれでいいな」

どうやら僕と携帯が話している間に部屋割りが決まったらしい。
308まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/21(火) 02:29:33
応接室に、
アルケミ、イノセンス、インリン、ugo、僕、おっかけ、蟹玉、KIRA、
クロス、携帯、バケ千代、バジル、本家、ヲタヲタ、ゲロッパー先生。

校長室に、
アンキモ、九州、saoko、参号丸、シーウーマン、ショボーン、
ちさこ、ニコフ、ねるね、ミサキヲタ、ラチメチ、わんたん。

そして話し合いの末、下ネタ殺しの容疑者となっているシニアは、
一人だけ事務室に隔離される事になった。

僕、KIRA、イノセンスの三人で一時間毎に、
そして応接室にいる他の人間からも同じ様に一人ずつ、
二人が廊下に立ち、一時間交代で見張りに付く事になった。

「廊下のベニヤ板はどうする?あれがあるとトイレに行き難いけど」

KIRAは撤去してもいい、と言ったが、
見張る方向も限定しやすくなるので結局そのままにしておく事になった。
それに撤去しようにも相当頑丈に作ってあるらしく、かなり時間がかかるらしい。
まぁそれならある意味バリケードにもなるだろう。
309まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/21(火) 02:36:00
「さて、ではイノ、最初の見張り頼めるか?」
「わかった」

KIRAに命じられ、僕達三人の中からはイノが最初の見張りに立つ事になった。
そしてもう一人は出席番号順、という事でアルケミが廊下に出る。

「鬱井」
「へ?」

見張りに立たなくていいんだと思って床に座ろうとした僕に
KIRAがある事を言いつける。

「……わかった。けど、お前は? まさか寝る気じゃ……」
「僕は外に出てくる。こっちは任せたぞ」
「えぇ? また一人で行く気か」
「大丈夫だ、心配するな。とにかく任せたぞ」
「別に心配なんか……」

……心配なんかしてねーよ、と言おうとしたが、
KIRAは僕が言い終える前に、背を向けて外に出て行ってしまった。

床に腰を下ろし、一息ついてから僕は動き出した。
まずは隣からだ。
310まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/21(火) 02:40:33
廊下には出ず、応接室の中にあるドアから事務室に入る。
中に入ると手錠をかけたままのシニアが一人、椅子に座っていた。

「何の用?」

愛想のない声が耳に刺さる。

「そう邪険にするなよ……」
「人殺し扱いされて手錠までされちゃってるのに?」

両手を僕に向かって突き出す。

「自分から手錠かけさせようとしてたじゃないか」

と、言うと、シニアは舌打ちして僕を睨んだ。

「で、なんなの」
「なにって……下ネタの事を聞きに来たんだよ」
「……うっさんはどう思ってるのさ」
「どうって……」

正直いくら自白したと言っても、僕にはシニアが犯人だとは思えなかった。

「俺はシニアじゃないって思ってるよ」

素直にそう言うと、シニアの眉間に寄っていたしわがほぐれたのがわかった。
311まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/21(火) 02:46:35
「でっしょ? ありえないでしょ……常識的に考えて……」
「だったらなんであんな事言ったんだよ。自分がやっただなんて……」
「だってみんな信じてくれなかったし、ムカついちゃって」
「あのなぁ……」

呆れて言葉を失いそうになった。

「あの状況じゃ疑われたって仕方ないよ」
「そんな事言ったってやってないものはやって……って、また繰り返しになるよ」
「うん、だからさ。この後みんなにも聞いて回るけど一から話を聞かせてくれ」
「一からってどこから」
「学校に着くまでは一緒だったからいいとして……
 肝試しが始まってからの事だよ。俺は途中教室出てたからな」

KIRAに言われたのは「全員に学校に来てからの事を詳しく聞け」という
ごくごく当たり前の事だった。
次から次へと色んな事が起こるので、まともに状況を整理する事が
出来なかったからだ。

「うっさんが肝試ししてる間は一歩も教室の外に出てないよ」
「あぁ。ま、それはみんなに聞けばわかるだろうけど」
「で、うっさん達が出てって、KIRAと携帯だけ戻ってきて……」
312まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/21(火) 02:55:33
KIRAに避難するように言われて教室を出て、
玄関まで行ったところで爆発があった、までは問題ないだろう。
これも他のみんなに確認すればわかる。

「その後は?」
「玄関を出て、どうしていいかわかんなかったんだけど、
 とりあえずグラウンドからグルッと回って……」
「ん!? ちょっと待った」

今のシニアの説明に何かが引っかかった。
グラウンドに出て回ったって事は……

「外に出たって事だよな?」
「そうだよ」
「もしかして学校を一周してもう一度玄関から入ったのか?」
「違うよ」
「え? じゃあどうやって……」

下ネタが死んでいたのは南校舎一階。
シニアが外に出たというなら一周して戻ってきたと思ったが
そうじゃないらしい。
しかし一周してきたなら結構な時間がかかるはずだが……あれ?
313まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/21(火) 03:02:48
「どうやってって……南校舎の東側のドアから入ったんだよ」
「なんだって?」

完璧に忘れていた。
南校舎の東側……確かに階段のすぐ横に、体育館へと続くドアがある。

「あぁ、確かにあるな……でも、鍵かかってなかったのか?」
「うん、だから入れたんだもん」

なるほど、そりゃそうだ。

「で、とりあえず中に入って、トイレに入ったら……」
「もう死んでた、と?」
「そう。で、ナイフ拾ったりしてるうちに、みんな集まってきてキャー! って」
「うぅむ……」
「どう? こんな感じだけど」
「え、あぁ……うん」

しかしこれだけではシニアが第一発見者という事になる。
それでは下ネタを殺していないという証拠にはならない。

「そうだ、順番はどうなる?」
「じゅんばん?」
「東側のドアから校舎に入った順だよ」
「私だけだよ。てか私しかグラウンド回ってないし」
「え、えぇ?」

詳しく聞くと、爆発の後玄関から外に出たのはシニアだけだったらしい。
これも他のみんなに聞けばわかるだろう。
でもこれじゃ逆にシニアが怪しくなっていく。
なにしろ爆発の後、シニアの行動を証言出来るのはシニアしかいなのだ。
もしかするとシニアが嘘を言っているのかも知れない。
314まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/21(火) 03:08:21
「あ! また疑ってるでしょ!」
「い、いやそういう訳じゃ」

顔に出てしまったのだろうか、シニアに鋭くつっこまれてしまった。

それからいくつかの質問をしたが、
シニアは再び疑いを持たれた事に気分を悪くしたのか、
外を見たまま簡潔に答えるだけだった。

「じゃ、じゃあとりあえず今はこれぐらいでいいよ」
「あっそ、じゃあもう出てってよ」

吐き捨てるようなシニアの言葉になんだか泣きそうになった。
僕はKIRAに言われた通りにしてるだけなのに……

何故か「すいません」と小声で謝って応接室に戻ろうとしたその時、

「イノは?」

シニアが背中越しに聞いてきた。

「え、イ、イノなら今廊下で見張ってるよ。後で交代するけど」
「ふぅん。じゃ、後でこっち来てって言っといて」
「は、はい」

仮にも殺人事件の容疑者として手錠をかけられているのに、
上から口調でものを言うシニアに何故か萎縮してしまった。

なんで僕ばっかりこんな目に遭うんだろう。
315まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/21(火) 03:09:54
58.「舌打」/終
316名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/21(火) 22:54:02
<<o(・∀・)o>>ハッ!!
317 ◆K.tai/y5Gg :2006/11/21(火) 23:54:59
>>316
この顔文字使いは3人程心当たりがあるような無いような
318蟹玉 ◆KANI/FOJKA :2006/11/22(水) 00:38:13
え(;^ω^)
ひとりしかわかんねーよ
( ゚▽゚)y─┛~~ 

おーるどファッション!
320名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/22(水) 19:50:43
あ?
321名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/23(木) 02:04:11
ぱっしょねーと
322まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/23(木) 04:52:57
59.「承知」


「大丈夫だ、心配するな。とにかく任せたぞ」
「別に心配なんか……」

鬱井が何か続けようとしていたが、無視して応接室の外に出る。

「ん、KIRA? どこ行くんだ」

廊下に出ると、応接室のすぐ前に立っていたイノが声をかけてきた。

「検証、さ」

と、短く返して、歩き出そうとした時、背後──校長室のドアが開く音がした。
振り返ると校長室の中からニコフが出てきた。

「KIRA? どこ行くの?」
「こっちのセリフだよニコフ」

普通に言ったつもりだったが、ニコフは何故か口元を緩めて小さく笑った。
323まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/23(木) 04:55:07
「ちょっと喉が乾いちゃって……給食室に飲み物があるって聞いたから。
 もしかしてKIRAも?」
「いや僕は少し調べたい事があってね」
「調べたい事?」
「あぁ、一度教室から順に校内をまわろうかと思ってね」

そう答えると、ニコフは視線を僕から外して一瞬迷った様な表情を見せた。
数秒ほど廊下の窓の外を見てから、視線をこちらに戻すと同時に口を開いた。

「私も行く」
「ニコフ……」

危険だぞ、という言葉が口から出る前に飲み込んだ。
ニコフは僕がそう言うのを見越していたのか、
危険は承知の上、という目をしていた。

「……わかった、行こう」
「うん。よかった、駄目だって言われるかと」

ニコフはほっとした様な顔を見せて僕の横に並んだ。

「さ、行きましょ」

そう言って僕の前を歩き出したニコフの声はどこか楽しそうだった。
324まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/23(木) 04:56:18
59.「承知」/終
325まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/23(木) 04:59:26
60.「予鈴」


「うっひょー! 俺、流川とっぴ!」
「なに言ってんだ。鬱井は要チェックでもしてろよ」
「おっかけゴリラダンク出来るようになったか?」
「俺、三井がいい」
「ふざけんなこないだシュート外しまくってたくせに!」

少年達が甲高い声を上げて次々と教室を出て行く。

「おい、はやくしないと女子がうっせーぞ」

体操服に着替え終わったインリンがそう言い残して教室を飛び出していった。

「携帯……早く行かないと」

坊主頭の蟹玉が髪をかきあげる仕草をしながら携帯に声をかける。
みんな着替え終わって体育館へと向かってしまった。
もう教室内には二人しかいない。
そして教室の外の廊下には、男子の着替えが終わるのを女子達が待っている。

「わかってるけど、くそっ紐が……!」

体操服袋を締めている紐を、爪で解こうと必死でかきむしる。
どうくくったのか、紐が固く結ばれていてほどけないのだ。
326まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/23(木) 05:01:35
「すまん蟹玉、先に行っててくれ」
「そうかい? じゃあ先に行って待ってるぜ?」

遂には蟹玉も出て行ってしまい、
広い教室内には、体操服袋と格闘する携帯一人だけとなってしまった。

「……よし、ほどけた!」

ようやくの事で紐をほどき、体操服を取り出して急いで着替える。


「もう誰もいない!? 遅いんだけど!」

教室を出た瞬間、携帯に怒鳴ったのはアンキモだった。

「うっせーな、もう誰もいねーよ」

悪いのは着替えが遅かった自分だとわかってはいたが、
携帯は素直に謝る事が出来ず、吐き捨てるように言ってしまった。

アンキモが何か大声で文句を言っていたが、携帯はそれを無視して廊下を走っていく。
327まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/23(木) 05:03:13
携帯が出て行き、今度は入れ替わりで女子達が教室に入る。
男子が──というより携帯が遅かったせいで五時間目が始まるまで時間がない。
みんな急いで自分のロッカーから体操服袋を取り出す。

「な、なにこれぇ!」

教室内に悲痛な叫び声が響いた。
みんな一斉に声の方に視線を向ける。
教室内にいた女子達の視線の先には、
自分のロッカーの前で立ちすくむラチメチの姿があった。

「うっわ゛! なに!? くっせぇ!」

半裸のシーウーマンが鼻をつまんでロッカーから遠ざかる。

「なにこれ……カレー?」

ミサキヲタが鼻に手を当てて、ラチメチの後ろからロッカーを覗き込む。
ラチメチが使っているロッカーの中がカレーまみれになっていた。

「ちょっと、これ……どうなってるの!?」

突然ニコフが声をあげた。
328まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/23(木) 05:06:04
「どうしたのニコフ!?」

アンキモが駆け寄ると、ニコフは握り締めていた体操服を広げて見せた。

「え? どういう事!?」

ニコフが広げた体操服の胸元には、
「6−2 ラチルメチル」と書かれたゼッケンが縫い付けられていた。
誰もが言葉を失ったその時、張り詰めた空気の教室内に、
授業開始五分前を知らせる予鈴が鳴り響いた。
329まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/23(木) 05:06:49
60.「予鈴」/終


第七夜へ続く
330まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/24(金) 00:14:54
【第七夜】


「お、お前がやったのか!?」

バジルが立ち上がって叫んだ。
視線をそちらに移すとバジルが俺を指さしている。
俺は黙ってバジルの指の先を見ていた。

「どうなんだ……?」

頭の上から鬱井が聞いてくる。
鬱井の声は微かに震えていた。
俺は目の前にある鬱井のベルトに視線を戻した。

「携帯……嘘だろ……?」

蟹玉が力ない声を漏らす。
蟹玉も声がとても遠くから聞こえたように感じる。
俺は頬のあたりに蟹玉の視線を感じていた。


俺はどこかでこんな場面があった事を思い出した。
なんだか懐かしい気分になって、その後すごく嫌な気分になった。

俺はなんだか説明するのが面倒くさくなってしまった。
あの時のように俺をかばってくれたラチメチがここにはいないからだ。
331まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/24(金) 00:35:12
61.「接触」


二分程経った。
少し迷ったが仕方ない。
隙があれば殺せばいいし、なければないでかまわない。
この状況ではろくに動く事も出来ずに世が明けてしまう。
頭の中で幾つかの展開をシミュレートしながら部屋を出た。

廊下に出るとイノセンスが指先で耳をさすっていた。
イノセンスは一瞬こちらに視線を向けたが、すぐに視線を外してアルケミの方に向けた。

「トイレか?」

アルケミが眠たそうに目をこすりながら声をかけてくる。

「うん」

小声で返事をして、急いでるのを悟られない程度に、出来るだけ大股に歩き出す。
渡り廊下を通って北校舎へ。

現在南校舎2階の廊下はベニヤ板で封鎖されている。
その為、廊下をぐるりとまわって北校舎まで行かなければ用を足せない。
332まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/24(金) 00:45:36
「……いない」

北校舎のトイレに入ったが、誰もいない。
まさか3階のトイレに行ったのだろうか?
いやそんな面倒な事をするはずがない。
トイレに行ったのではなく、給食室で飲み物でも飲んでいるのだろうか。

仕方ないので、せっかくだから用を足していこうかと思い
電気を点けようとスイッチに手を伸ばした時、
掃除用具入れの扉がゆっくりと開いた。
思わず見入ってしまい、手が止まった。

掃除用具入れの中から黒い影が出てくる。

「……君か」

幽霊などいるはずないとはわかっていたが、少しほっとした。
黒い影──彼は口元にうっすらと笑みを浮かべていた。
見透かしたようなその顔を見て、途端に腹が立った。

「ずいぶん勝手な……いや、余計な事をしてくれたね」

怒鳴りそうになるのを抑えて、出来るだけ小声で言った。
333まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/24(金) 01:03:19
「……すまない、でも──」
「でもじゃないよ。よりによって鬱井達に顔を見られるなんて。
 それに撃ったらしいね? 勝手な行動はするなとあれほど言ったじゃないか」

抑えていたつもりだが、言葉が進むにつれどんどん口調が荒れていくのが
自分でもわかった。

「イノはノートを持っていない。ノートの在り処も知らないようだった。
 だから──」
「それが本当かどうかは僕が判断するって言っただろう」
「しかし、イノはお前じゃ……」

彼はそこまで言いかけて口をつぐんだ。

「お前じゃ……何? 僕にはイノに勝てないって、そう言いたいのか」

思わず壁を手で叩いてしまった。
しかし、思ったより大きな音は鳴らなかった。
自分の非力さに余計に腹が立った。

「それに、あの時悲鳴が聞こえた。誰か殺ったんじゃないのか?」
「悲鳴? あぁ、下ネタだよ」
「下ネタ……待てよ、下ネタは確か──」
「あぁ、下ネタもノート所有者の可能性は高い。
 もしあいつがどこかに隠していたら、もう見つける事は出来なかったかもね」

そう言うと、彼はどういう事だ?と不思議そうな声で聞いてきた。
334まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/24(金) 01:20:03
「下ネタを殺したのは僕じゃない」
「という事は、他の誰かが……?」
「だろうね。一瞬君かと思ったけど、死体を見てわかったよ。
 君じゃないだろう?」
「あぁ、俺じゃない。けど、誰が?」

彼が眉をひそめる。

「シニアだろうね。状況的に」
「シニア……何故?」
「さぁ、そんな事はどうでもいいんだよ。それより……」
「なんだ?」
「ノートの所有者がわかった。もう一人一人確認する必要もない」
「本当か?」

彼は心底驚いた様子で声をあげた。
335まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/24(金) 01:21:10
「あぁ、間違いない。なんとかして君にその事を伝えたかったんだけど、
 君が余計な事をしてくれたせいで動き辛かった」
「すまん……だが、向こうの校舎にお前がいるのはわかってた。
 それでここで──」
「もういいよ。とにかくこれで後は皆殺しにするだけだ」

そう言うと彼は再び口元に笑みを浮かべた。

「わかった。で、これからどうする?」
「そうだね、とりあえず僕は行方不明にでもなろうかな」
「……なるほど。なら血痕だけでも残しておいた方が──」
「しっ! 誰か来た……隠れろ」

人の気配──というか、足音が近づいてきているのに気付いた。
彼と視線を合わし、用事用具入れを指さす。
彼は無言で頷いてその中に身を隠した。

さて、どうするか。
ここで殺すか、やり過ごすか──
336まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/24(金) 01:21:58
61.「接触」/終
337まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/24(金) 02:33:58
62.「空気」


「ふぅ……」

事務室と繋がるドアを閉めて応接室に戻った。

応接室に戻った瞬間、一気ににおいが変わる。
なんというか汗臭い……男だらけなので仕方ないといえば仕方ないが。

「みんな起きてる?」

ある者はソファに座り、ある者は床に寝そべり、みんな疲れた様子だった。

「……あぁ、とてもじゃないけど寝れないよ」

ソファーに腰掛けたまま、顔も上げずにそう言ったのはおっかけだった。

「あれ?」

室内を見渡してみて、一人足りない事に気がついた。
口の中で小さく数えながら、一人一人の頭に視線を移していく。
……が、やっぱり足りない。

「あぁ、トイレか給食室じゃね?」

声が漏れていたのか、床にあぐらをかいていたインリンがダルそうに言った。
338まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/24(金) 02:36:33
「あっそう……まぁいっか」

すぐ戻ってくるだろうと思って、あまり深く考えなかった。

「みんな、疲れてるところ悪いんだけどさ、
 ちょっと色々聞かせてもらえるかな……」

出来るだけ丁重に言ったつもりだったが、皆あからさまに嫌そうな顔をした。
無理も無い。これだけ色々な事が起こって、もううんざりしているんだろう。
みんな今日起こった事を忘れたい、思い出したくない、という顔だった。

みんなの顔色をうかがいながら、学校に着いてからの事を
一つ一つ丁寧に聞いていく。みんな嫌々ながらもちゃんと答えてくれた。

途中で部屋を出ていた一人も戻ってきて、なんとかみんなから
聞くべき事は聞けた。

次はお待ちかねの校長室だ。
汗臭いこの部屋と違ってさぞかしいい匂いがするだろう。

みんなに礼を言ってから、校長室へ繋がるドアをノックした。
中から誰かが「はーい」と返事をする。
339まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/24(金) 02:39:04
なんとなく深呼吸をしてからドアを開ける。
ドアが開いた瞬間、一気に空気が変わったのがわかった。
男だらけの応接室と違い、なんともいい匂いがしている。
僕はこれや、これやんけと胸を弾ませ中に入った。

「どうも、鬱井です。よろしく」

と、訳のわからない事を言ってしまった。
どうもテンションが上がってしまっているようだ。

女性陣が冷たい視線を僕に送っている。
どうやら思いっきりはずしたらしい。
恥ずかしさでテンションが一気に下がった。

「……ニコフは?」

テンションが下がり、冷静になって気付いた。ニコフがいない。

「帰って来ないんだよね。トイレにもいなかったらしいし」
「マ、マジで!?」
340まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/24(金) 02:48:38
「だーいじょぶだって。KIRAとどっか行ったんだってさ」

アンキモがニヤニヤしながら言う。

「へ? KIRAと? なんで……」

なんで僕じゃないの……と、思ったが、それよりKIRAとどこへ……

「安心しなよ。KIRAと一緒なら大丈夫だって。鬱井じゃないんだから」
「なにぃ……あのなぁ……」
「それよりさ、ニコフだけじゃないのよ」

僕が何か言い返そうとしていたのを遮るようにアンキモが続けた。
ニコフだけじゃない……?

「どういう事?」

僕がそう聞くと、アンキモは隣にいた九州と顔を見合わせたかと思うと、
僕に視線を戻すも何も言おうとせず黙ってしまった。
何だか胸騒ぎがして、僕も何も言えなくなってしまい、華やかだった校長室に嫌な空気が流れた。
その時、足を崩して座っていたわんたんが深刻な顔つきで口を開いた。

「……ちさこも帰って来ないのよ」
341まりあ ◆BvRWOC2f5A :2006/11/24(金) 02:49:51
62.「空気」/終
342名無し戦隊ナノレンジャー!:2006/11/24(金) 10:09:14
暇人
343名無し戦隊ナノレンジャー!
に見えて案外脱ぐとすごい人

乙です
…そうかそうだったのか…ふふ…