ミッチーファンクラブ 77 〜 大空に消えたホモ 〜

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1モノクロームの追憶:2005/08/06(土) 03:26:24
─ 1945 九州・鹿屋基地 ─
「じゃあな、いちご。」
立ちすくむいちごへ微笑みを投げ、ミッチーが愛機へと歩き出す。
出撃命令が降り、慌しく滑走路脇に集合してからの、五分足らずの決別だった。
整備兵たちの敬礼に送られながら搭乗員が遠ざかっていく。
彼らは出撃後、基地には帰らない。片道分の燃料と爆弾を抱えて空へ
そして靖国へと旅立つことが既に決まっている。特攻なのだ。
「ミッチー。」沈んだ顔でミッチーの背中を見送るいちご。
駆け出したい誘惑に駆られる。走って、彼に追い付き
泣きすがって引き止めたい。それが心からの本音だった。
「ミッチー。」足が動かない。感情と強い抑制がいちごを絞めつける。
双眸に涙が満ち、ミッチーの背中を歪ませながら溢れて
赤く染まっていく頬を伝う。それでも足は動かなかった。
彼への想い、軍人としての理性、抗命への恐怖。なによりも愛しい者を失う恐怖。
不甲斐ない自分と今を憎む。いったい、どうすればいい…
「いちご少尉、そこは作業の邪魔です。どうか向こうへ」
不意に肩を叩いた整備班長が指さす先は
よりミッチーの機体に近い整備兵の待機場所だった。
本人達は隠しているつもりでも、誰もが彼らの仲を知っていたのだ。
感謝の頷きとともに、振るえる膝を殴り付けるといちごは走った。
最後の瞬間まで、少しでもミッチーの傍に居たかった。
「ミッチー」今度は声を出して叫ぶ。力の限り。
始動したエンジンの爆音でかき消されるのはわかっている。それでも。
想いが通じたのだろうか、ミッチーがいちごの方へ視線を向けた。
微笑みを含んだ敬礼。そして風防ガラス越しに口を動かす。
(いちご、おまえは生きろ)。機体はゆっくりと進んでいき
プロペラの起こした風の中に、いちごは取り残された。

ミッチー少尉:http://jbbs.livedoor.jp/music/12438/
戦死後、二階級特進・大尉:http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/music/12438/
停戦命令により、出撃を免れたいちご少尉の手記にはホモであったことが記されている。
http://asadadada.hp.infoseek.co.jp/oekaki.html